以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して鉄道車両1の構成について説明する。図1は本発明の一実施の形態における鉄道車両1の側面図である。なお、図1では、鉄道車両1のうち先頭車両2の後尾に連結される後続車両3のレール方向の一部の図示を省略している。
図1に示すように鉄道車両1は、先頭車両2と、その先頭車両2の後尾に連結される後続車両3とを含む複数の車両により構成される。先頭車両2は、乗客を収容する客室が設けられた車体4と、レール方向(図1左右方向)に間隔をあけて配置される第1台車10及び第2台車20とを備えている。後続車両3は、乗客を収容する客室が設けられた車体5と、車体5のレール方向に間隔をあけて配置される第3台車30及び第4台車40(図2(a)参照))とを備えている。車体4,5は、車体4,5の床下の両端部に取り付けられた連結器7により連結される。連結器7は、先頭車両2と後続車両3とを連結すると共に、先頭車両2と後続車両3との間隔を適切な範囲に保ち、加減速で生じる牽引力や制動力を伝達するためのものである。
車体4は、乗務員室4aが先頭に設けられ、乗務員室4aと客室との間に衝撃吸収機構4bが介設されている。衝撃吸収機構4bは、衝突時に変形を誘発させてエネルギーを吸収するための機構(クラッシャブルゾーン)である。衝撃吸収機構4bが衝突時に変形することにより、乗務員室4a及び客室に過大な変形が生じることを防止できる。なお、乗務員室4aの最前部には、エネルギーの吸収容量を増大させるため、アルミニウム製のハニカムパネル(図示せず(衝撃吸収機構))が配設されている。
第1台車10は、車体4の先頭側を支持するものであり、台車枠11と、台車枠11に回転自在に軸支される車輪12とを備えている。第2台車20は、車体4の後尾側を支持するものであり、台車枠21と、台車枠21に回転自在に軸支される車輪22とを備えている。第3台車30は、車体5の先頭側を支持するものであり、台車枠31と、台車枠31に回転自在に軸支される車輪32とを備えている。
次に図2を参照して列車の垂直座屈(三角座屈および垂直座屈)について説明する。図2(a)はレールRを走行する通常形態の鉄道車両1の模式図であり、図2(b)は三角座屈が生じた鉄道車両1の模式図であり、図2(c)は台形座屈が生じた鉄道車両1の模式図である。なお、図2(a)から図2(c)では、車体4,6のレール方向の一部の図示を省略している。
図2(a)に示すように、車体5,6は、車体5,6の床下の両端部に取り付けられた連結器8により連結される。第4台車40は、車体5の後尾側を支持するものであり、台車枠41と、台車枠41に回転自在に軸支される車輪42とを備えている。第5台車50は、車体6の先頭側を支持するものであり、台車枠51と、台車枠51に回転自在に軸支される車輪52とを備えている。
車体5は、第3台車30に配置された第3空気ばね33により台車枠31との間で先頭側が支持され、第4台車40に配置された第4空気ばね43により台車枠41との間で後尾側が支持される。車体5と同様に、車体4は、第1台車10(図1参照)に配置された第1空気ばね13(図3参照)により台車枠11との間で先頭側が支持され、第2台車20に配置された第2空気ばね23により台車枠21との間で後尾側が支持される。車体6は、第5台車50に配置された第5空気ばね53により台車枠51との間で先頭側が支持され、後尾側は、第5台車50と間隔をあけて位置する台車(図示せず)に配置された空気ばねにより支持される。
車体4,5,6は、各台車枠21,31,41,51の中心軸線上となる車体4,5,6の床下の位置に、高さセンサ73b,73c,73d,73eが配置される。高さセンサ73bは、第2台車20からの車体4の床面高さを検出するためのセンサであり、高さセンサ73cは、第3台車30からの車体5の床面高さを検出するためのセンサである。高さセンサ73dは、第4台車40からの車体5の床面高さを検出するためのセンサであり、高さセンサ73eは、第5台車50からの車体6の床面高さを検出するためのセンサである。なお、車体4の先頭部の床下には、台車枠11からの車体4の床面高さを検出する高さセンサ73a(図3参照)が配置される。
図2(a)に示すように、列車が上下方向に折れ曲がる垂直座屈が生じていない通常形態の場合には、車体4,5,6を連結する連結器7,8は略水平に保たれる。しかし、自連力(連結器7,8に作用する力)によって連結器7,8がレール方向に傾くと、図2(b)に示す三角座屈や図2(c)に示す台形座屈が生じる。三角座屈や台形座屈が進行すると、車輪にかかる垂直方向の荷重(輪重)が小さくなり、さらには車輪が浮き上がったり車体4,5,6と台車とが分離したりする。特に図2(b)に示す三角座屈は、座屈に至る自連力が、図2(c)に示す台形座屈に至る自連力より小さいことに加え、減速に伴って車体4,5,6が前のめりになるため、台形座屈より発生し易い。
三角座屈(図2(b)参照)や台形座屈(図2(b)参照)が生じた状態で鉄道車両1(図1参照)の先頭車両2の先頭部が障害物等に衝突すると、衝突時のエネルギーを衝撃吸収機構4bが想定通りに吸収できないことがある。衝撃吸収機構4bは、通常形態(図2(a)参照)で先頭部が障害物等に衝突することを前提に設計されているからである。衝突時のエネルギーを衝撃吸収機構4bが十分に吸収できないと、乗務員室4aや客室の保護の信頼性が低下するという問題が生じる。本発明は、乗務員室4aや客室の保護の信頼性を向上させるため、通常形態(図2(a)参照)で先頭部が障害物等に衝突できるようにするものである。
次に図3を参照して、第1空気ばね13、第2空気ばね23及び第3空気ばね33の高さを調整する高さ調整機構14,24,34について説明する。図3は鉄道車両1の高さ調整機構14,24,34及び電気的構成を示すブロック図である。なお、図3では、電気信号の流れを実線で図示し、空気の流れを破線で図示する。また、第4空気ばね43及び第5空気ばね53(図2(a)参照)の高さを調整する高さ調整機構は、高さ調整機構14,24,34と同様に構成されているので、図示を省略する。
図3に示すように鉄道車両1は、第1空気ばね13の空気の給排を制御するための高さ調整機構14が、空気タンク15(元空気溜)と第1空気ばね13との間に介設され、第2空気ばね23の空気の給排を制御するための高さ調整機構24が、空気タンク15と第2空気ばね23との間に介設されている。高さ調整機構14,24は、それぞれ、空気配管により接続された高さ調整弁16,26、給気弁17,27、遮断弁18,28及び排気弁19,29を備えている。
遮断弁18,28は、第1空気ばね13及び第2空気ばね23の給排気時に高さ調整弁16,26(後述する)と第1空気ばね13及び第2空気ばね23との間の空気配管を開閉する弁である。給気弁17,27は、第1空気ばね13及び第2空気ばね23に給気する弁である。給気弁17,27、遮断弁18,28及び排気弁19,29は、一方が第1空気ばね13及び第2空気ばね23に連通し、遮断弁18,28の他方は高さ調整弁16,26の一方に接続される。排気弁19,29の他方は開放状態とされ、高さ調整弁16,26及び給気弁17,27は他方が空気タンク15に連通する。
また、鉄道車両1は、第3空気ばね33の空気の給排を制御するための高さ調整機構34が、空気タンク35(元空気溜)と第3空気ばね33との間に介設されている。高さ調整機構34は、空気配管により接続された高さ調整弁36、給気弁37、遮断弁38及び排気弁39を備えている。
遮断弁38は、第3空気ばね33の給排気時に高さ調整弁36(後述する)と第3空気ばね33との間の空気配管を開閉する弁であり、給気弁37は、第3空気ばね33に給気する弁である。給気弁37、遮断弁38及び排気弁39は、一方が第3空気ばね33に連通し、遮断弁38の他方は高さ調整弁36の一方に接続される。排気弁39の他方は開放状態とされ、高さ調整弁36及び給気弁37は他方が空気タンク35に連通する。
車体4,5(図2参照)は、第1空気ばね13、第2空気ばね23及び第3空気ばね33の伸縮に基づき下降または上昇移動し、高さ調整弁16,26,36は、車体4,5の下降または上昇移動に伴って傾動するリンク機構(図示せず)の傾動量に応じて開閉される。遮断弁18,28,38を開弁しておけば、高さ調整弁16,26,36の開度に応じて第1空気ばね13、第2空気ばね23及び第3空気ばね33に給排される空気量が調整され、車体4,5の高さが自動的に調整される。高さ調整弁16,26,36及びリンク機構は周知であるから、ここでの説明は省略する。
次いで、制御装置60の詳細構成について説明する。図3に示すように制御装置60は、CPU61、ROM62及びRAM63を備え、それらがバスライン64を介して入出力ポート65に接続されている。また、入出力ポート65には、高さ調整機構14,24,34等の装置が接続されている。なお、制御装置60は、鉄道車両1に搭載される。
CPU61は、バスライン64により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM62は、CPU61により実行される制御プログラム(例えば、図4及び図5に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。RAM63は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、減速フラグ63aが設けられている。
減速フラグ63aは、鉄道車両1が所定の減速状態にあるか否かを示すフラグであり、後述する減速判断処理(図4参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。CPU61は、減速フラグ63aがオンの場合に鉄道車両1が所定の減速状態にあると判断し、減速フラグ63aがオフの場合に鉄道車両1が所定の減速状態にないと判断する。
非常ブレーキ71は、鉄道車両1を緊急に停止させるための装置であり、線路上への落石や倒木、線路内へ進入した動物(人を含む)、踏切に立ち往生した自動車等の障害物がある場合に、ブレーキハンドル(図示せず)の操作または自動列車制御装置(信号保安装置)を介した車内信号の操作によって作動される。非常ブレーキ71は、非常ブレーキ71が作動したことをCPU61に出力する出力回路(図示せず)を備えている。
なお、進路上の障害物と鉄道車両1とに距離がある場合など、障害物を運転士が目視により発見できないことがあるので、運転士の目視以外の手段によって進路上の障害物が検出され、その検出結果が運転士に報知される。運転士が障害物を発見するより先に運転士に障害物の存在を知らせて、非常ブレーキ71を早期に作動させ、衝突を回避するためである。
障害物を検出する手段としては、例えば、落石検知装置、踏切障害物検知装置、踏切支障報知装置、列車非常停止警報装置が挙げられる。落石検知装置は、落石が発生する可能性のある防護壁に電線を配設し、落石によって断線されることで落石の発生を検出するものが例示される。踏切障害物検知装置は、踏切警報発令中に自動車等の障害物が踏切道に存在することを検出する装置であり、光センサ式、超音波センサ式、ループコイル式、レーザレーダ式等の各種方式が例示される。踏切支障報知装置は、押ボタンスイッチ、信号炎管および軌道短絡器を備えるものが例示される。踏切支障報知装置の押ボタンスイッチを通報者が操作することによって信号炎管が発火し、さらに軌道短絡器により軌道回路が短絡されることで障害物が検出される。
列車非常停止警報装置は、プラットホーム下の線路上に設置された転落検知装置により異常(障害物の存在)が検出された場合や、プラットホームから線路へ転落した人などを発見した駅係員や乗客が、プラットホームに設置された非常停止ボタンを押下した場合に作動する。
落石検知装置、踏切障害物検知装置、踏切支障報知装置、列車非常停止警報装置等によって障害物が検出されると、その検出結果は、信号機や特殊信号発光機、信号炎管の発火等の信号表示によって、走行中の鉄道車両1の運転士に報知される。その信号表示を視認した運転士によってブレーキハンドル(図示せず)が操作され、非常ブレーキ71が作動される。
また、駅構内で非常事態が発生したことを通報する保安装置(列車非常停止警報装置)により非常ブレーキ71が作動されることもある。非常停止ボタンの押下や転落検知装置により保安装置(図示せず)が作動すると、自動列車制御装置(信号保安装置)等を介して鉄道車両1の車内信号が絶対停止を現示する。これにより非常ブレーキ71が作動される。
コントローラ72(主幹制御器)は、運転士によるハンドル操作によって鉄道車両1の力行・惰行・制動の指示を主制御器(図示せず)に与える装置であり、ノッチ情報(段数情報)を処理してCPU61に出力する出力回路(図示せず)を備えている。
高さ検出装置73は、各台車(第1台車10、第2台車20及び第3台車30)からの車体4,5の床面高さを検出する装置である。高さ検出装置73は、各台車枠11,21,31の中心軸線上となる車体4,5の床下の位置に配置される高さセンサ73a,73b,73cと、それら高さセンサ73a,73b,73cの検出結果を処理してCPU61に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。なお、高さセンサ73d,73eは、高さセンサ73a,73b,73cに係る構成と同様なので、説明を省略する。
速度検出装置74は、鉄道車両1の走行速度を検出すると共にその検出結果をCPU61に出力するための装置であり、鉄道車両1の走行速度を検出する速度センサ74aと、その速度センサ74aの検出結果を処理してCPU61に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。なお、速度センサ74aは、車両駆動用の電動機(図示せず)からの出力信号に基づいて走行速度を検出するものでも良い。CPU61は、コントローラ72から出力されたノッチ情報と、速度検出装置74から出力された走行速度とに基づいて、鉄道車両1の加速度(進行方向を正とする正の加速度)及び減速度(進行方向を正とする負の加速度)を算出する。
他の入出力装置80のうち、入力装置としては、例えば、上述した落石検知装置、踏切障害物検知装置、踏切支障報知装置、列車非常停止警報装置等が発信した障害物の検出結果(防護無線信号)を受信する信号受信器(図示せず)が挙げられる。また、鉄道車両1が走行する地点情報を検出してRAM63(バッファメモリ)に出力する自動列車制御装置(信号保安装置)、進路上の障害物を運転士が発見したときに操作される通報装置(図示せず)が挙げられる。通報装置は、運転士に操作される押ボタンスイッチ等の操作部と、操作部が操作されたことをCPU61に出力する出力回路とを主に備えている。
信号受信器は、受信装置(図示せず)と、その受信装置の受信結果を処理してCPU61に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。なお、信号受信器は、落石検知装置、踏切障害物検知装置、踏切支障報知装置、列車非常停止警報装置等による検出結果を、自動列車制御装置(信号保安装置)を介して受信し、その受信結果を処理してCPU61に出力するものであっても良い。
他の入出力装置80のうち、出力装置としては、非常ブレーキ71や警笛(図示せず)が作動したときや通報装置が操作されたときに、乗客に衝突告知や注意を促すためのアナウンスを行う表示装置やスピーカ(いずれも図示せず)が挙げられる。表示装置やスピーカは、乗客が収容される客室に配設される。
次に図4を参照して減速判断処理について説明する。図4は減速判断処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置60の電源が投入されている間、CPU61によって繰り返し(例えば0.2秒間隔で)実行される処理であり、鉄道車両1が所定の減速状態にあるか否かを判断する処理である。
CPU61は減速判断処理に関し、まず、速度検出装置74の出力信号から鉄道車両1の走行速度を取得し(S11)、コントローラ72の出力信号からノッチ情報を取得する(S12)。次にCPU61は、非常ブレーキ71が作動したか否かを判断し(S13)、非常ブレーキ71が作動していない場合には(S13:No)、取得した走行速度およびノッチ情報から鉄道車両1の減速度を算出し、減速度が所定の減速度より大きいか否かを判断する(S14)。なお、S14の処理では、CPU61はROM62に予め記憶された所定の減速度(閾値)と算出された減速度とを比較する。
その結果、鉄道車両1の減速度が所定の減速度(閾値)より大きい場合には(S14:Yes)、鉄道車両1はブレーキ時等の減速状態にあるので、CPU61は減速フラグ63aをオンして(S15)、この減速判断処理を終了する。
一方、S14の処理の結果、減速度が所定の減速度以下の場合には(S14:No)、鉄道車両1は通常の走行状態であるので、CPU61は減速フラグ63aをオフして(S16)、この加減速判断処理を終了する。これに対し、S13の処理の結果、非常ブレーキ71が作動した場合には(S13:Yes)、鉄道車両1は減速状態にあるので、CPU61は減速フラグ63aをオンして(S15)、この減速判断処理を終了する。
次に図5を参照して高さ調整処理について説明する。図5は高さ調整処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置60の電源が投入されている間、CPU61によって繰り返し(例えば0.2秒間隔で)実行される処理であり、鉄道車両1の車体4,5,6(図2(a)参照)の高さ(姿勢)を調整するための処理である。
CPU61は高さ調整処理に関し、まず、第2台車20、第3台車30、第4台車40及び第5台車50からの車体4,5,6の床面高さを取得する(S21)。S21の処理は、高さ検出装置73からの入力信号に基づいて行われる。なお、CPU61は、鉄道車両1に配設された全ての台車からの車体の床面高さを取得するが、理解を容易にするため、ここでは図2(a)に示す第2台車20、第3台車30、第4台車40及び第5台車50からの車体4,5,6の床面高さを取得するものとして説明する。
次にCPU61は、取得した床面高さに基づいて、連結器7を挟んでレール方向両側に位置する第2台車20及び第3台車30の床面高さの差、連結器8を挟んでレール方向両側に位置する第4台車40及び第5台車50の床面高さの差をそれぞれ算出する(S22)。
次いでCPU61は、減速フラグ63aがオンであるか否かを判断し(S23)、減速フラグ63aがオンである場合には(S23:Yes)、S22の処理で算出した床面高さの差が所定値(閾値)以上の連結器があるか否かを判断する(S24)。なお、S24の処理では、CPU61はROM62に予め記憶された所定値(閾値)と算出された床面高さの差とを比較する。その結果、床面高さの差が所定値(閾値)以上の連結器がある場合には(S24:Yes)、その連結器のレール方向両側に位置する台車の高さ調整機構を作動させて、床面高さの差が小さくなるように空気ばねの空気を排気した後(S25)、この高さ調整処理を終了する。
例えば、図2(b)に示す三角座屈の場合には、連結器7,8が水平になるように、連結器7,8のレール方向前側にそれぞれ位置する第2空気ばね23及び第4空気ばね43の空気を排気する。また、図2(c)に示す台形座屈の場合には、連結器7,8が水平になるように、連結器7のレール方向後側に位置する第3空気ばね33の空気を排気し、連結器8のレール方向前側に位置する第4空気ばね43の空気を排気する。
一方、S24の処理の結果、床面高さの差が所定値(閾値)以上の連結器がない場合には(S24:No)、鉄道車両1は座屈が生じておらず通常形態(図2(a)参照)に近いと考えられるので、S25の処理をスキップして、この高さ調整処理を終了する。また、S23の処理の結果、減速フラグ63aがオフである場合には(S23:No)、鉄道車両1に垂直座屈が生じる事情は発生していないと考えられるので、S24及びS25の処理をスキップして、この高さ調整処理を終了する。
以上のS21〜S25の処理(高さ調整処理)によれば、減速度が大きい場合に慣性力によって車体4,5,6が前のめりになり三角座屈が生じるところ(図2(b)参照)、連結器7,8のレール方向前側にそれぞれ位置する第2空気ばね23及び第4空気ばね43の空気を排気することにより、鉄道車両1を通常形態(図2(a)参照)に近づけることができる。また、車体4,5,6が上下方向に変位して台形座屈が生じる場合にも(図2(c)参照)、連結器7のレール方向後側および連結器8のレール方向前側にそれぞれ位置する第3空気ばね33及び第4空気ばね43の空気を排気することにより、鉄道車両1を通常形態(図2(a)参照)に近づけることができる。
これにより垂直座屈を抑制できるので、鉄道車両1の先頭部が障害物に衝突する場合には、衝突時のエネルギーを衝撃吸収機構4b(図1参照)に十分に吸収させることができ、乗務員室4aや客室の保護の信頼性を向上できる。また、垂直座屈を抑制できるので、輪重が小さくなることを防ぎ、車両が浮き上がったり車体4,5,6と台車とが分離したりすることを防止できる。さらに、減速時に車体4,5,6が前のめりになることを防止できるので、減速時に乗客が体感する減速度を低減できる。
また、S23の処理において減速フラグ63aがオンであると判断される場合に(S23:Yes)、空気ばねの高さ調整を行うので(S25)、加速時や定速走行時に、高さ調整処理(図5参照)において空気ばねの高さ調整が行われることを回避できる。その結果、加速時や定速走行時に高さ調整のために空気ばねの給排気が行われることを防ぎ、制御を簡素化できる。
また、床面高さの差が所定値以上の連結器について(S24:Yes)、その連結器の両側の空気ばねの高さ調整を行うので(S25)、全ての連結器の両側の空気ばねの高さ調整を行う場合と比較して、高さ調整を行う空気ばねの数を減らすことができる。また、全ての連結器の両側の台車について空気ばねの高さ調整を行う場合と比較して、効果的に空気ばねの高さ調整を行い、垂直座屈を抑制できる。また、S25の処理において床面高さの差が小さくなるように空気ばねの空気を排気するので、空気ばねに給気して床面高さの差を小さくする場合と比較して、車体4,5,6の重心高さを抑えることができる。
なお、請求項1記載の走行状態取得手段としては、図4に示すフローチャート(減速判断処理)におけるS11,S12の処理、S13の処理中の非常ブレーキ71の出力信号を受け取る処理が該当する。減速状態判断手段としては、図5に示すフローチャート(高さ調整処理)におけるS23の処理が、高さ調整手段としてはS25の処理が該当する。請求項3記載の高さ取得手段としては、図5に示すフローチャート(高さ調整処理)におけるS21の処理が、請求項3記載の高低差算出手段としては、S22の処理が該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、各車体4,5,6を支持する複数の台車の数(本実施の形態では2台)は一例であり、適宜選択できる。
上記実施の形態では、減速度判断処理において、鉄道車両1に搭載された速度検出装置74によって鉄道車両1の走行速度を検出し、ノッチ情報に基づいて減速度を算出する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、速度検出装置74に代えて、自動列車制御装置(信号保安装置)や鉄道制御システムによって鉄道車両1の走行速度を検出することは当然可能である。また、鉄道車両1の走行速度およびノッチ情報から減速度を算出するのに代えて、加速度センサを鉄道車両1に搭載し、その加速度センサによって鉄道車両1のレール方向の減速度を取得することは当然可能である。
また、車両の走行速度およびノッチ情報から減速度を算出して車両が減速状態にあるか否かを判断する代わりに、車両の走行速度およびノッチ情報をパラメータとする変換テーブルを予め設定し、その変換テーブルから、車両が所定の減速状態にあるか否かを判断することは当然可能である。
上記実施の形態では、高さ調整処理において、鉄道車両1の減速度が所定の減速度より大きい場合に(減速フラグ63aがオンである場合に)所定の減速状態にあると判断し(S23:Yes)、排気弁19,29,39を操作することにより第1空気ばね13、第2空気ばね23及び第3空気ばね33(空気ばね)の空気を排気する場合について説明した(S25)。この場合に、減速度に応じた排気弁19,29,39の操作量を、予め変換テーブルとして設定することは当然可能である。変換テーブルはROM62(図3参照)に記憶される。このようにすることで、排気弁19,29,39を減速度に応じて所望に開閉操作できるので、車体4,5,6の高さ(姿勢)をきめ細かく制御できる。
上記実施の形態では、高さ調整処理において、減速時に伸長した空気ばねの空気を排気して連結器7,8の水平度を調整する場合について説明したが(S25)、必ずしもこれに限られるものではない。減速時に収縮した空気ばねに給気して連結器7,8の水平度を調整することは当然可能である。空気ばねの給気は、空気ばねの空気の排気に比べて短時間で完了させることができるので、空気ばねの空気を排気する場合と比較して、垂直座屈を解消する効果を早く得ることができる。
また、高さ調整処理において、伸長した空気ばねの空気を排気し、且つ、収縮した空気ばねに給気して連結器7,8の水平度を調整することは当然可能である。空気ばねの給排気を組み合せることにより、連結器7,8の水平度をきめ細かく調整できる。
上記実施の形態では、高さ調整処理(図5参照)において、各台車からの車体4,5,6の床面高さを取得し(S21)、取得した床面高さに基づいて給排気を行う空気ばねを決定する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、各台車からの車体4,5,6の床面高さを取得することなく、予め定められた空気ばねの空気を給排気することは当然可能である。
例えば、減速時には慣性力によって車体4,5,6が前のめりになるので、台形座屈(図2(c)参照)は生じ難く、三角座屈(図2(b)参照)が生じ易い。そこで、鉄道車両1が減速状態にある場合に、連結器7,8のレール方向前側に位置する第2台車20及び第4台車40にそれぞれ配置された第2空気ばね23及び第4空気ばね43の空気を排気するように、予め設定することは当然可能である。各台車からの車体4,5,6の床面高さを取得しなくても、連結器7,8のレール方向前側に位置する第2空気ばね23及び第4空気ばね43の空気を排気することで、三角座屈を解消できる。
この場合には、高さ調整処理(図5参照)においてS21,S22及びS24の処理を省略し、S25の処理において、連結器7,8のレール方向前側に位置する第2台車20及び第4台車40にそれぞれ配置された第2空気ばね23及び第4空気ばね43の空気を排気するように処理する。この処理が請求項4記載の排気手段に該当する。このように処理すれば、各台車からの車体4,5,6の床面高さの取得を要しないので、高さ検出装置73を省略できる。これにより部品点数を削減できる。また、高さ調整処理(図5参照)においてS21,S22及びS24の処理を省略できるので、空気ばねの給排気制御(高さ調整処理)を簡素化できる。
また、鉄道車両1が減速状態にある場合に、連結器7,8のレール方向前側に位置する第2空気ばね23及び第4空気ばね43の空気を排気するのに代えて、又はこれに加えて、各車体4,5,6のレール方向の先頭の台車(第1台車10、第3台車30及び第5台車50)に配置された第1空気ばね13,第3空気ばね33及び第5空気ばね53に給気するように、予め設定することは当然可能である。この場合も、各台車からの車体4,5,6の床面高さを取得することなく、第1空気ばね13、第3空気ばね33及び第5空気ばね53に給気することで、三角座屈を解消できる。
この場合には、高さ調整処理(図5参照)においてS21,S22及びS24の処理を省略し、上記変更後のS25の処理に代えて、又は変更後のS25の処理に加えて、各車体4,5,6のレール方向の先頭の台車(第1台車10、第3台車30及び第5台車50)に配置された第1空気ばね13,第3空気ばね33及び第5空気ばね53に給気するよう処理する。この処理が請求項5記載の給気手段に該当する。
このように処理すれば、各台車からの車体4,5,6の床面高さの取得を要しないので、高さ検出装置73を省略できる。これにより部品点数を削減できる。また、高さ調整処理(図5参照)においてS21,S22及びS24の処理を省略できるので、空気ばねの給排気制御(高さ調整処理)を簡素化できる。さらに、空気タンク15,35内の圧縮空気を第1空気ばね13,第3空気ばね33及び第5空気ばね53に供給する速度は、第2空気ばね23及び第4空気ばね43の空気を排気する速度より大きいので、三角座屈を素早く解消することができる。
なお、各車体4,5,6のレール方向の先頭の台車(第1台車10、第3台車30及び第5台車50)に配置された第1空気ばね13,第3空気ばね33及び第5空気ばね53に給気し、且つ、連結器7,8のレール方向前側に位置する第2空気ばね23及び第4空気ばね43の空気を排気することより、連結器7,8の水平度をきめ細かく調整できる。また、連結器7,8の水平度の調整の自由度および調整可能な範囲を大きくできる。
上記実施の形態では、先頭車両2の先頭部が線路に対して略垂直な切妻型車両(鉄道車両1)の場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、先頭部が流線形に形成される鉄道車両(新幹線(登録商標)車両など)とすることは当然可能である。
上記実施の形態では、車体4の先頭部に形成された衝撃吸収機構4bが、クラッシャブルゾーンとアルミニウム製のハニカムパネル(衝撃吸収部材)とを備える場合について説明したが、衝撃吸収機構は必ずしもこれに限られるものではない。クラッシャブルゾーン、ハニカムパネルの一方を省略したり、ハニカムパネルに代えて他の衝撃吸収部材を採用したりすることは当然可能である。
また、衝撃吸収機構4b(クラッシャブルゾーン)が乗務員室4aの後方に配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。クラッシャブルゾーン及びサバイバルゾーンの配置は適宜設定できる。例えば、乗務員室4aの先頭部分全体をクラッシャブルゾーンとして変形させ、運転士座席は、前面フレームに固定した高床ごと後方のサバイバルゾーンに移動させる構造を採用することは当然可能である。