実施の形態1.
図1〜図7を用いて、本実施の形態による焦点位置調整方法を説明する。
図1は、焦点位置の調整に使用される光学系の模式図の一例である。この光学系は、検査対象となるパターンが形成された試料11を照明する照明光学系aと、照明された試料11のパターンの像をセンサ13の受光面に結像する結像光学系bとを有する。
照明光学系aは、光源1と、レンズ2,4,5,8と、開口絞り3と、焦点位置検出用の投影パターンが形成されたマスク6(第1の遮光部)およびマスク7(第2の遮光部)と、ハーフミラー9と、対物レンズ10とを有する。一方、結像光学系bは、ハーフミラー9と、対物レンズ10と、レンズ12と、センサ13とを有する。ハーフミラー9と対物レンズ10は、照明光学系aと結像光学系bに対して共通の光学要素となる。つまり、照明光の光路と、試料11で反射した反射光の光路とは、試料11からハーフミラー9までで共通している。
試料11は、X方向、Y方向およびZ方向に移動可能なステージ14の上に載置されている。試料11としては、例えば、微細な回路パターンをウェハやガラス基板などに転写する際に使用されるマスクが挙げられるが、これに限られるものではなく、マスク上のパターンが転写されたウェハやガラス基板などとすることもできる。
光源1は、レーザ光源、例えば、190nm〜200nm程度の波長のDUV(Deep Ultraviolet radiation:遠紫外)光を出射する光源とすることができる。光源1から出射された光は、光軸15に沿って伝播していく。そして、この光は、レンズ2に入射する。レンズ2は、入射した光を屈折して開口絞り3へ導く。開口絞り3は、光束の太さ、すなわち、開口数(NA)を調整する。開口絞り3は、照明光学系aの瞳、例えば、対物レンズ10の瞳と共役な位置に設けられる。開口絞り3を透過した光は、レンズ4に入射して集光された後、レンズ5によって平行光となり、マスク6を均一に照明する。マスク6を透過した光は、続いて、光軸15に沿ってマスク6から離間して配置されたマスク7に入射する。
マスク6は、例えば、クロム膜を用いたライン・アンド・スペースパターンが、透明なガラス基板上に形成された構成とすることができる。このとき、ライン・アンド・スペースパターンは1種類でよい。つまり、検出感度を上げるための細いライン・アンド・スペースパターンと、検出範囲を拡げるための太いライン・アンド・スペースパターンとを設ける必要はなく、1種類のライン・アンド・スペースパターン、例えば、1μmL/Sのパターンのみでよい。また、ライン・アンド・スペースパターンに代えて他の投影パターンを設ける場合にも、同様に1種類でよい。
マスク6において、ラインパターンの部分は遮光パターンとなる。したがって、マスク6に入射した光の一部はこの遮光パターンによって遮光され、遮光パターンがない領域を透過した光が、マスク7を均一に照明する。
マスク7も、マスク6と同様の構成を有している。すなわち、上記例であれば、透明なガラス基板上に、マスク6と同様のライン・アンド・スペースパターンが形成されており、ラインパターンの部分が遮光パターンとなる。
ここで、光軸15に垂直な平面をXY平面とすると、XY平面において、マスク7のパターンは、マスク6のパターンとは異なる位置に配置されている。例えば、マスク6とマスク7の中心をXY平面上の原点(0,0)とする。そして、マスク6の原点(0,0)とマスク7の原点(0,0)が、いずれも光軸15に一致するように配置されているとする。この場合、光源1の側から見て、例えば、マスク6のパターンは、第1象限(X>0、Y>0)と第4象限(X>0、Y<0)に配置され、マスク7のパターンは、第2象限(X<0、Y>0)と第3象限(X<0、Y<0)に配置される。つまり、XY平面において、マスク6の遮光パターンは、マスク7の遮光パターンと重なっていない。尚、マスク7のパターンとマスク6のパターンとの配置関係はこれに限られるものではなく、両パターン、特に、マスク7の遮光パターンとマスク6の遮光パターンとがXY平面上で重ならなければ他の態様であってもよい。
マスク7を透過した光は、レンズ8に入射する。レンズ8は、入射した光を屈折して集光する。レンズ8は結像レンズであり、光源1の像を結像する。すなわち、レンズ8は、対物レンズ10の瞳の位置に、光源1の像を結像する。
レンズ8で屈折された光は、ハーフミラー9に入射する。ハーフミラー9は、例えば、光軸15に対して45度傾いて配置されている。ハーフミラー9は、入射した光の約半分を反射して、残りの半分を透過する。したがって、レンズ8からハーフミラー9に入射した光の一部は、試料11の方向に反射される。つまり、光軸15は、ハーフミラー9によって90度曲げられることになる。
ハーフミラー9で反射された照明光は、対物レンズ10に入射する。対物レンズ10は、鏡筒内に複数のレンズが配置された構造とすることができる。対物レンズ10の瞳は、光源1の像を結像する。対物レンズ10は、入射した光を屈折した後、試料11を照明する。上記したように、照明光は、マスク6,7を透過している。したがって、マスク6,7のパターンが試料11に投影されている。このとき、マスク6のパターンと、マスク7のパターンとは、試料11上で異なる位置に投影される。すなわち、マスク6のパターンと、マスク7のパターンとは、試料11上で重なっていない。
試料11で反射された光は、ハーフミラー9までは照明光と共通の光路を伝播していく。すなわち、反射光は、対物レンズ10で屈折されてハーフミラー9に入射する。対物レンズ10で屈折された光は、略平行な光束となる。そして、この光の一部は、ハーフミラー9を透過してレンズ12に入射する。
レンズ12は、結像レンズであり、試料11の像をセンサ13の受光面に結像する。合焦位置の場合、試料11のパターン面は、センサ13の受光面と共役な結像関係になっている。
センサ13としては、例えば、撮像素子であるCCDカメラを一列に並べたラインセンサが挙げられる。ラインセンサには、例えば、TDI(Time Delay Integration)センサを用いることができる。この場合、センサ13の受光画素は、例えば、X方向またはY方向に沿って配列されている。そして、ライン状の受光画素が投影パターンの像を横切るように配置されている。受光画素列では、マスク6,7の投影パターンに応じた明暗が繰り返される。例えば、ラインパターンと、ライン間のスペースに対応するパターンとの境界において、ラインパターンの側は暗部の受光画素に対応し、スペースに対応するパターンの側は明部の受光画素に対応する。したがって、センサ13で検出される像には、ライン・アンド・スペースパターンに応じたコントラストがある。暗部の受光画素では、受光量が低くなり、明部の受光画素では、受光量が高くなる。
図1に示すように、マスク6とマスク7は、光軸15の方向にずれて配置されている。このため、マスク6のパターンの結像位置と、マスク7のパターンの結像位置とは異なっている。すなわち、対物レンズ10によるマスク6のパターンの結像位置は、試料11のパターン面の前側になる。ここで、「前側」とは、光源1からセンサ13に向かって伝播する光路の光源1の側を言う。一方、対物レンズ10によるマスク7の結像位置は、試料11のパターン面の後側になる。「後側」は、光源1からセンサ13に向かって伝播する光路のセンサ13側である。つまり、マスク6のパターンの結像点は、試料11のパターン面よりも光源1の側にあり、マスク7のパターンの結像点は、試料11のパターン面よりもセンサ13の側にある。
試料11のパターン面が合焦位置から前側(光源1の側)にずれ、マスク6のパターンが試料11のパターン面に結像すると、センサ13で検出されるマスク6のパターンのコントラストは最大となる。一方、試料11のパターン面が合焦位置から後側(センサ13の側)にずれ、マスク7のパターンが試料11のパターン面に結像すると、センサ13で検出されるマスク7のコントラストが最大となる。
マスク6とマスク7の間の面における像が試料11のパターン面で結像するとき、試料11のパターン面は合焦位置にある。すなわち、合焦位置において、試料11のパターン面は、マスク6とマスク7の間の面と共役な結像関係になっている。このとき、マスク6のパターンの結像位置と、マスク7のパターンの結像位置とは、試料11のパターン面から所定距離離れている。そして、これらの結像位置の間に試料11のパターン面がある。したがって、試料11上で、マスク6の投影パターンとマスク7の投影パターンは、いずれもぼやけた状態となる。
図2は、結像位置の関係を示す図である。この図において、Z軸は、光軸に一致する。マスク6のパターンの結像位置は、試料11のパターン面からずれている。図2において、F1は、マスク6のパターンの結像位置(合焦位置)である。同様に、マスク7のパターンの結像位置も、試料11のパターン面からずれている。図2において、F2は、マスク7のパターンの結像位置(合焦位置)である。そして、試料11のパターンの結像位置(合焦位置)は、図2のF0になる。このように、光軸(Z軸)上における、試料11のパターン面の結像位置F0は、F1とF2の間にある。したがって、試料11のパターン面の結像位置が、センサ13の受光面上にあるとき、マスク6のパターンの結像位置は、受光面の前側にあり、マスク7のパターンの結像位置は、受光面の後側にある。
上記したように、試料11は、X方向、Y方向およびZ方向に移動可能なステージ14の上に載置されている。したがって、ステージ14をZ方向に移動させることにより、対物レンズ10と試料11との距離を変えて、焦点位置を調整することができる。具体的には、ステージ14の位置を変えることにより、センサ13で検出される、マスク6のパターン像のコントラストが変化する。同様に、センサ13で検出される、マスク7のパターン像のコントラストも変化する。
センサ13は、試料11のパターンからの反射光を検出する第1の受光面と、マスク6のパターンからの反射光を検出する第2の受光面と、マスク7のパターンからの反射光を検出する第3の受光面とに分かれて構成されている。各受光面は、同一の平面(XY平面)上に配置されている。換言すると、3つの受光面は、結像光学系bの結像面に配置されている。また、各受光面は、この平面上でずれて配置されている。つまり、対物レンズ10の視野において、各受光面は、異なる位置からの反射光を受光して、それに応じた検出信号を出力する。
尚、センサ13は、独立した3つのセンサ、すなわち、試料11のパターンからの反射光を検出するセンサと、このセンサの近傍に配置されてマスク6のパターンからの反射光を検出するセンサおよびマスク7のパターンからの反射光を検出するセンサとによって構成されていてもよい。この場合にも、これらのセンサの受光面は、同一平面(XY平面)上に配置される。そして、対物レンズ10の視野において、各センサは、異なる位置からの反射光を受光して、それに応じた検出信号を出力する。
図3は、マスク6のパターンについてのセンサ13の検出信号を示す図である。また、図4は、マスク7のパターンについてのセンサ13の検出信号を示す図である。これらの図では、いずれも上から順に、図2中のF2,F0,F1の位置における検出信号が示されている。尚、横方向は、センサ13上の位置に対応し、縦方向は、信号強度(受光量)に対応する。
図1において、ステージ14が対物レンズ10に近付いて行くと、マスク6のパターンが試料11のパターン面に結像するようになる。このとき、試料11のパターンの結像位置は、図2のF1になる。したがって、マスク6の投影パターンは、試料11上ではっきりしたものとなる。つまり、試料11上におけるマスク6の投影パターンは、センサ13の受光面からずれた位置に結像するが、マスク6のパターンの結像位置は、試料11のパターン面に一致するようになる。ここで、図1の照明光学系aと結像光学系bは、試料11のパターンの結像位置が合焦位置から前側にずれたとき、マスク6のパターンについてのセンサ13の検出信号が大きくなるように配置されている。したがって、マスク6のパターンが試料11のパターン面に結像するとき、センサ13には、マスク6のパターンに対応する明暗がはっきりと現われ、センサ13で検出されるマスク6のパターンのコントラストは最大となる(図3のF1)。
これに対して、ステージ14が対物レンズ10に近付いて行くと、マスク7の投影パターンは、試料11上でぼやけたものとなる。つまり、マスク7のパターンの結像位置は、試料11のパターン面から大きくずれる。また、試料11上におけるマスク7の投影パターンも、センサ13の受光面からずれる。このため、センサ13で検出されるマスク7のパターンのコントラストは低くなる(図4のF1)。
次に、ステージ14が対物レンズ10から少し離れるようにすると、試料11のパターンは、図2のF0の位置、すなわち、合焦位置に結像するようになる。このとき、試料11上でのマスク6の投影パターンは、試料11のパターンの結像位置がF1にあるときよりもぼやけたものとなる。つまり、試料11におけるマスク6の投影パターンは、センサ13の受光面に結像するが、マスク6のパターンは、試料11のパターン面からずれた位置に結像する。このため、センサ13で検出されるマスク6のパターンのコントラストは低下する。
一方、センサ13におけるマスク7のパターンは、試料11のパターンの結像位置がF1にあるときよりも、はっきりとするようになる。これは、試料11上でのマスク7の投影パターンがセンサ13の受光面に結像し、さらに、マスク7のパターンの結像位置が、試料11のパターンの結像位置がF1にあるときよりも、試料11のパターン面に近付くためである。したがって、試料11のパターンがF0の位置に結像するとき、センサ13で検出される、マスク6のパターン像とマスク7のパターン像は、同程度にぼやけたものとなる(図3のF0、図4のF0)。
続いて、ステージ14が対物レンズ10からさらに遠ざかると、試料11のパターンの結像位置は、図2のF2になる。このとき、センサ13で検出されるマスク6のパターン像は、試料11のパターンがF0の位置に結像するときよりも、一層ぼやけたものとなる。これは、マスク6のパターンの結像位置が、試料11のパターン面から大きくずれ、さらに、試料11上におけるマスク6の投影パターンも、センサ13の受光面からずれるためである。したがって、センサ13で検出されるマスク6のパターンのコントラストは低下して、図3のF2のようになる。
これに対して、センサ13におけるマスク7のパターンは、試料11のパターンがF0の位置に結像するときよりも、さらにはっきりするようになる。この場合、試料11上に投影されたマスク7のパターンの結像位置は、センサ13の受光面からずれるが、試料11上に投影されるマスク7のパターンの結像位置は、試料11のパターン面に一致する。ここで、図1の照明光学系aと結像光学系bは、試料11のパターンの結像位置が合焦位置から後側にずれたとき、マスク7のパターンについてのセンサ13の検出信号が大きくなるように配置されている。したがって、マスク7のパターンが試料11のパターン面に結像するとき、センサ13には、マスク7のパターンに対応する明暗がはっきりと現われ、センサ13で検出されるマスク7のパターンのコントラストは最大となる(図4のF2)。
このように、マスク6およびマスク7の各投影パターンを試料11のパターン面に投影し、これらの投影パターンの像をセンサ13で検出してコントラストを比較することにより、光源1から出射された照明光の焦点位置を検出することができる。次に、検出した焦点位置が試料11のパターン面に位置するよう調整する方法について述べる。
図5は、センサ13で検出される、マスク6のパターン像のコントラストと、マスク7のパターン像のコントラストとの差分を示したものである。横軸は、Z方向、すなわち、図1の光軸15の方向を表している。また、縦軸は、マスク7のコントラストの値からマスク6のコントラストの値を引いた差分値(D)を表している。
図5では、F1の位置において差分値が極小値をとり、F2の位置において差分値が極大値をとっている。F1の位置では、マスク7のパターン像のコントラストは低いが、マスク6のパターン像のコントラストは最大となる。したがって、F1の位置において、差分値は極小となる。一方、F2の位置では、マスク6のパターンの像のコントラストが低くなり、マスク7のパターン像のコントラストは最大となる。したがって、F2の位置において、差分値は極大となる。尚、F1からF0を経てF2に向かう間、差分値は単調に増加する。
焦点を調整するには、(図5に示すような)光軸上での結像位置と差分値との関係に基づいて、差分値が所定値となるように、すなわち、結像位置がF0の位置となるようにする。具体的には、ステージ14を移動させて、試料11と対物レンズ10との距離を変える。例えば、試料11のパターンの結像位置が、合焦位置F0からF1の方向にずれた場合、差分値は小さくなる。したがって、差分値が増える方向にステージ14を移動させる。一方、試料11のパターンの結像位置が、合焦位置F0からF2の方向にずれた場合、差分値は大きくなる。したがって、差分値が小さくなる方向にステージ14を移動させる。
上記のようにしてステージ14を移動させることにより、焦点位置を合焦位置に近付けることができる(粗アライメント)。続いて、ステージ14の位置を微調整して、焦点位置が正確に合焦位置に来るようにする(精アライメント)。ここで、粗アライメントを行うにあたっては、焦点位置の検出範囲を広くする必要がある。一方、精アライメントを行うにあたっては、検出感度を高くする必要がある。
焦点位置検出に対する感度が高いということは、合焦位置から僅かにずれただけでも大きな光量変化を示すということである。試料11のパターン面がセンサ13の合焦面の近傍にある場合には、このパターン面の位置を精アライメントすることになるので、高い検出感度が必要とされる。一方、粗アライメントでは、焦点位置に対する検出感度よりも検出範囲の方が優先される。すなわち、検出感度を高くすると、合焦位置からのずれ量が所定値以上になれば、センサ13にパターンが結像しなくなる。この状態は粗アライメントに適さない。粗アライメントでは、合焦位置からのずれ量に対する光量変化が小さくても、センサ13に結像可能なずれ量の範囲が大きくなる状態の方が好ましい。
本実施の形態では、図1の構成によって、焦点位置に対する高い検出感度と広い検出範囲とを両立するため、照明光学系aに開口絞り3を配置する。開口絞り3の開口部の径を変えると、照明光学系aの開口数(NA)と、検出光学系bの開口数(NA)との比(σ;照明光学系のコヒーレンスファクタ)が変わる。そして、σ値が小さいほど、合焦位置からのずれに対するコントラストの変化が小さくなる。したがって、この場合は、焦点位置を検出できる範囲が広くなる。一方、σ値が大きくなると、合焦位置から僅かにずれただけでも大きなコントラスト変化を示すようになる。したがって、σ値が大きいほど、高い検出感度が要求される場合に適している。
一般に、照明光学系の開口絞りの開口径をφ1とし、結像光学系の開口絞りの開口径をφ2とすると、σ値は次式で表される。
図1の構成においては、結像光学系bに開口絞りは設けられないので、σ値は、照明光学系aの開口絞り3で決まる。つまり、開口絞り3の開口部の径が大きくなるほど、検出感度が高くなるので、精アライメントに適するようになる。一方、開口絞り3の開口部の径が小さくなるほど、検出感度は低くなるが検出範囲が広くなるので、粗アライメントに適するようになる。
開口絞り3は、開口部の径を変更可能な構造とすることができる。あるいは、開口部の径が異なる複数の開口絞り3を用意し、精アライメントを行うときと、粗アライメントを行うときとで、異なる径の開口絞り3を使い分けるようにしてもよい。後者であれば、照明光学系aを、開口絞り3が光軸15上から抜き差し可能な構成とすることが好ましい。
図6は、センサ13におけるマスク6のパターンの出力波形の一例である。横軸は、センサ13上での位置を表しており、縦軸は、出力、すなわち、試料11からの反射光の光量を表している。また、実線は、合焦位置での出力波形である。結像位置が合焦位置から1μmずれると、波形は大きく変化して点線のようになる。さらに、結像位置がずれ、ずれ量が2μmになると、波形は1点波線のようになる。尚、ずれ量が3μmになると、センサ13にパターンが結像しなくなり、波形は得られない。
上述したように、ずれ量の変化に対する光量変化の大きさ(コントラストの変化)は、σ値と線形関係にあり、σ値が大きいほど光量変化も大きくなる。つまり、σ値が大きいと、僅かのずれ量に対しても光量変化が大きくなるので、検出感度は高くなる。一方、σ値が小さいと、ずれ量に対する光量変化は小さくなる。しかし、この場合、僅かなずれ量の変化でパターンがセンサ13に結像しなくなるということがなくなるので、検出範囲は広くなる。したがって、粗アライメントを行う際には、開口絞り3の開口を調整してσ値が小さくなるようにし、精アライメントを行う際には、σ値が大きくなるように開口絞り3の開口を調整する。例えば、図6の例では、σ値を1.0とすることができる。ここで、粗アライメントにおける開口絞り3の開口部を第1の径とし、精アライメントにおける開口絞り3の開口部を第2の径とすると、第2の径は第1の径より大きくなる。
図7は、センサ13におけるマスク6のパターンの出力波形の他の例である。この例では、σ値を0.2としている。σ値が小さくなると、ずれ量に対する光量変化が小さくなることが分かる。すなわち、結像位置が1μmずれても波形は図6ほど変化しないが、合焦位置からのずれ量が5μmになっても出力波形が得られている。
図6の例は精アライメントに適しており、図7の例は粗アライメントに適している。そして、マスク7のパターンについても、図6や図7のような出力波形が得られる。そこで、これらを用いて、マスク6のパターン像のコントラストと、マスク7のパターン像のコントラストとの差分値を、精アライメントと粗アライメントのそれぞれについて得る。焦点位置の調整をする際には、まず、粗アライメント用の結像位置と差分値との関係を用いて、結像位置を合焦位置の近傍まで近付ける。続いて、精アライメント用の結像位置と差分値との関係を用いて、結像位置の微調整を行う。これにより、結像位置が正確に合焦位置となるようにすることができる。
本実施の形態の焦点位置調整方法によれば、検出感度を高くするための投影パターンと、検出範囲を広くするための投影パターンの2種類を用意する必要がない。したがって、これらの投影パターンを切り替えるための機構も不要となる。よって、簡単な構成でありながら、高い検出感度と広い検出範囲で焦点位置を検出して調整することが可能となる。
実施の形態2.
本実施の形態では、ダイ−トゥ−データベース方式による検査方法を述べる。したがって、検査対象の光学画像と比較される基準画像は、設計パターンデータから生成された参照画像である。但し、本発明は、ダイ−トゥ−ダイ方式による検査方法にも適用可能であり、その場合の基準画像は、検査対象とは異なる光学画像になる。
図8は、本実施の形態における検査装置の概略構成図である。図8において、図1と同じ符号を付した部分は同じものであることを示している。
尚、図8では、本実施の形態で必要な構成部を記載しているが、検査に必要な他の公知の構成部が含まれていてもよい。また、本明細書において、「〜部」または「〜回路」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができるが、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せやファームウェアとの組合せによって実施されるものであってもよい。プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置などの記録装置に記録される。
図1に示すように、検査装置100は、光学画像取得部を構成する構成部Aと、構成部Aで取得された光学画像を用いて検査に必要な処理などを行う構成部Bとを有する。
構成部Aは、実施の形態1で説明した図1の光学系、すなわち、焦点位置の調整に使用される光学系として、検査対象となるパターンが形成された試料11を照明する照明光学系と、照明された試料11のパターンの像をセンサ13の受光面に結像する結像光学系とを有する。
照明光学系は、光源1と、レンズ2,4,5,8と、開口絞り3と、焦点位置検出用の投影パターンが形成されたマスク6(第1の遮光部)およびマスク7(第2の遮光部)と、ハーフミラー9と、対物レンズ10とを有する。
マスク6とマスク7は、光軸方向にずれて配置されている。マスク6は、例えば、クロム膜を用いたライン・アンド・スペースパターンが、透明なガラス基板上に形成された構成とすることができる。このとき、ライン・アンド・スペースパターンは1種類でよい。例えば、1μmL/Sのパターンのみでよい。また、ライン・アンド・スペースパターンに代えて他の投影パターンを設ける場合にも、同様に1種類でよい。マスク7も、マスク6と同様の構成を有している。すなわち、上記例であれば、透明なガラス基板上に、マスク6と同様のライン・アンド・スペースパターンが形成されている。
結像光学系は、ハーフミラー9と、対物レンズ10と、レンズ12と、センサ13とを有する。ハーフミラー9と対物レンズ10は、照明光学系と結像光学系に対して共通の光学要素となる。つまり、照明光の光路と、試料11で反射した反射光の光路とは、試料11からハーフミラー9までで共通している。
センサ13は、試料11のパターンからの反射光を検出する第1の受光面と、マスク6のパターンからの反射光を検出する第2の受光面と、マスク7のパターンからの反射光を検出する第3の受光面とに分かれて構成されている。各受光面は、同一の平面(XY平面)上に配置されている。換言すると、3つの受光面は、結像光学系の結像面に配置されている。また、各受光面は、この平面上でずれて配置されている。つまり、対物レンズ10の視野において、各受光面は、異なる位置からの反射光を受光して、それに応じた検出信号を出力する。
尚、センサ13は、独立した3つのセンサ、すなわち、試料11のパターンからの反射光を検出するセンサと、このセンサの近傍に配置されてマスク6のパターンからの反射光を検出するセンサおよびマスク7のパターンからの反射光を検出するセンサとによって構成されていてもよい。この場合にも、これらのセンサの受光面は、同一平面(XY平面)上に配置される。そして、対物レンズ10の視野において、各センサは、異なる位置からの反射光を受光して、それに応じた検出信号を出力する。
また、構成部Aは、X方向、Y方向およびZ方向に移動可能なステージ14と、センサ回路106と、レーザ測長システム122と、オートローダ130とを有する。ステージ14は、水平方向(X方向、Y方向)に移動可能なXYステージと、このXYステージの上に載置されて垂直方向(Z方向)に移動可能なZステージとからなる構成とすることができる。XYステージは、回転方向(θ方向)にも移動可能な構成とすることができる。
検査対象となる試料11は、ステージ14の上に載置される。本実施の形態では、試料11を、微細な回路パターンをウェハやガラス基板などに転写する際に使用されるマスクとする。但し、試料11は、マスクに限られるものではなく、マスク上のパターンが転写されたウェハやガラス基板などとすることもできる。
構成部Aでは、試料11の光学画像、すなわち、マスク採取データが取得される。マスク採取データは、試料11の設計パターンデータに含まれる図形データに基づく図形が描画されたマスクの画像である。例えば、マスク採取データは、8ビットの符号なしデータであって、各画素の明るさの階調を表現したものである。
試料11は、オートローダ130によって、ステージ14の上に載置される。尚、オートローダ130は、オートローダ制御回路113によって駆動される。また、オートローダ制回路113は、制御計算機110によって制御される。試料11がステージ14の上に載置されると、試料11に形成されたパターンに対し、ステージ14の下方に配置された光源1から光が照射される。より詳しくは、光源1から照射される光束が、照明光学系を介して試料11に照射される。試料11で反射した光は、結像光学系によってセンサ13に結像する。
検査に好適な光学画像を得るためには、試料11に照射される光の焦点位置を正確に検出して焦点合わせをすることが重要となる。そこで、検査装置100では、焦点位置に対する高い検出感度と広い検出範囲とを両立するため、照明光学系に開口絞り3が配置されている。
開口絞り3は、開口部の径が変更可能な構造であることが好ましい。あるいは、検査装置100が、開口部の径の異なる複数の開口絞り3を有していてもよい。この場合、照明光学系は、光軸上から開口絞り3を抜き差しできる構成であり、焦点合わせをする際、精アライメントを行うか、粗アライメントを行うかによって、適当な径の開口絞り3を使用するようにする。
開口絞り3の開口部の径を変えると、照明光学系の開口数(NA)と、検出光学系の開口数(NA)との比(σ;照明光学系のコヒーレンスファクタ)が変わる。そして、σ値が小さいほど、合焦位置からのずれに対するコントラストの変化が小さくなる。したがって、この場合は、焦点位置を検出できる範囲が広くなる。一方、σ値が大きくなると、合焦位置から僅かにずれただけでも大きなコントラスト変化を示すようになる。したがって、σ値が大きいほど、高い検出感度が要求される場合に適している。
精アライメントに適したσ値と、粗アライメントに適したσ値とは、予め、検査装置100の仕様、例えば、想定している試料11のパターンサイズ(マスクパターンの線幅など)、センサ13の画素数、対物レンズ10の仕様などを考慮して決定される。そして、これらの値に対応するよう、開口絞り3の開口部の径を変える。あるいは、これらの値に対応した径を有する開口絞り3を用意しておき、精アライメントを行うか、粗アライメントを行うかによって使い分ける。粗アライメントにおける開口絞り3の開口部を第1の径とし、精アライメントにおける開口絞り3の開口部を第2の径とすると、第2の径は第1の径より大きくなる。
尚、検査装置100は、試料11の上方から光を照射し、透過光をセンサ13に導く構成としてもよい。この構成と、図8に示す構成とを併せ持つことにより、透過光と反射光による各光学画像を同時に取得することが可能である。
センサ13に結像した試料11のパターン像は光電変換された後、センサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。センサ13としては、例えば、TDI(Time Delay Integration)センサなどが挙げられる。
検査装置100の構成部Bでは、検査装置100全体の制御を司る制御部としての制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較部の一例となる比較回路108、参照画像生成部の一例となる参照回路112、展開回路111、焦点位置調整部の一例となる焦点位置調整回路125、オートローダ制御回路113、ステージ制御回路114、保存部の一例となる磁気ディスク装置109、ネットワークインターフェイス115およびフレキシブルディスク装置116、液晶ディスプレイ117、パターンモニタ118並びにプリンタ119に接続されている。ステージ14は、ステージ制御回路114によって制御されたX軸モータ、Y軸モータおよびZ軸モータによって駆動される。これらの駆動機構には、例えば、エアスライダと、リニアモータやステップモータなどとを組み合わせて用いることができる。
図8で「〜回路」と記載したものは、既に述べたように、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができるが、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せやファームウェアとの組合せによって実施されるものであってもよい。プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置109に記録されることができる。例えば、センサ回路106、オートローダ制御回路113、ステージ制御回路114、焦点位置調整回路125、展開回路111、参照回路112、比較回路108および位置回路107内の各回路は、電気的回路で構成されてもよく、制御計算機110によって処理することのできるソフトウェアとして実現されてもよい。また、電気的回路とソフトウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
焦点位置調整回路125は、センサ回路106からの情報を受け取って、焦点位置を検出する。具体的には、試料11のパターン面に投影された、マスク6とマスク7の各投影パターンの像情報を受け取り、実施の形態1で述べたようにして、これらのコントラストを比較する。これにより、光源1から出射された照明光の焦点位置が検出される。
また、焦点位置調整回路125は、検出した焦点位置が試料11のパターン面に位置するよう、ステージ制御回路114を介して、ステージ14のZ方向の位置を調整する。この調整は、粗アライメント、精アライメントの順で行われる。
焦点位置調整回路125には、予め、マスク6のパターン像のコントラストと、マスク7のパターン像のコントラストとの差分値を、精アライメントと粗アライメントのそれぞれについて得たデータが格納されている。焦点位置の調整をする際には、まず、粗アライメント用の結像位置と差分値との関係を用いて、検出された焦点位置を合焦位置の近傍まで近付ける。続いて、精アライメント用の結像位置と差分値との関係を用いて、焦点位置の微調整を行う。
制御計算機110は、焦点位置調整回路125から、粗アライメントのための位置情報と、精アライメントのための位置情報を読み出す。そして、この情報に基づき、ステージ制御回路114を制御して、ステージ14をZ方向に移動させる。これにより、焦点位置が正確に合焦位置となるようにすることができる。
また、制御計算機110は、ステージ制御回路114を制御して、ステージ14をX方向およびY方向にも駆動する。XY方向におけるステージ14の移動位置は、レーザ測長システム122により測定されて位置回路107に送られる。
さらに、制御計算機110は、オートローダ制御回路113を制御して、オートローダ130を駆動する。オートローダ130は、試料11を自動的に搬送し、検査終了後には自動的に試料11を搬出する。
データベース方式の基準データとなる設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に格納されており、検査の進行に合わせて読み出されて展開回路111に送られる。具体的には、次の通りである。
設計者(ユーザ)が作成したCADデータは、OASISなどの階層化されたフォーマットの設計中間データに変換される。設計中間データには、レイヤ(層)毎に作成されて試料に形成される設計パターンデータが格納される。ここで、一般に、検査装置は、OASISデータを直接読み込めるようには構成されていない。すなわち、検査装置の製造メーカー毎に、独自のフォーマットデータが用いられている。このため、OASISデータは、レイヤ毎に各検査装置に固有のフォーマットデータに変換された後に検査装置に入力される。フォーマットデータは、検査装置に固有のデータとすることができるが、試料にパターンを描画するのに使用される描画装置と互換性のあるデータとすることもできる。
図8において、上記のフォーマットデータは、磁気ディスク装置109に入力される。すなわち、試料11のパターン形成時に用いた設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に記憶される。
設計パターンに含まれる図形は、長方形や三角形を基本図形としたものである。磁気ディスク装置109には、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形などの図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報であって、各パターン図形の形、大きさ、位置などを定義した図形データが格納される。
さらに、数百μm程度の範囲に存在する図形の集合を一般にクラスタまたはセルと称するが、これを用いてデータを階層化することが行われている。クラスタまたはセルには、各種図形を単独で配置したり、ある間隔で繰り返し配置したりする場合の配置座標や繰り返し記述も定義される。クラスタまたはセルデータは、さらにストライプと称される、幅が数百μmであって、長さが試料11のX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の短冊状領域に配置される。
上述したように、磁気ディスク装置109に入力されたフォーマットデータには、設計パターンデータが格納されている。この設計パターンデータは、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して展開回路111によって読み出される。
展開回路111では、設計パターンデータがイメージデータ(ビットパターンデータ)に変換される。すなわち、展開回路111は、設計パターンデータを図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして、2値ないしは多値のイメージデータに展開される。さらに、センサ画素に相当する領域(マス目)毎に設計パターンにおける図形が占める占有率が演算され、各画素内の図形占有率が画素値となる。
展開回路111で変換されたイメージデータは、参照画像生成部としての参照回路112に送られて、参照画像(参照データとも称する。)の生成に用いられる。
センサ回路106から出力されたマスク採取データは、位置回路107から出力されたステージ14上での試料11の位置を示すデータとともに、比較回路108に送られる。また、上述した参照画像も比較回路108に送られる。
比較回路108では、マスク採取データと参照データとが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。図1の構成であれば、反射画像同士での比較となるが、透過光学系を用いた構成であれば、透過画像同士での比較、あるいは、透過と反射を組み合わせた比較判定アルゴリズムが用いられる。比較の結果、両者の差異が所定の閾値を超えた場合には、その箇所が欠陥と判定される。
上述したストライプは、適当なサイズに分割されてサブストライプとなる。そして、マスク採取データから切り出されたサブストライプと、マスク採取データに対応する参照画像から切り出されたサブストライプとが、比較回路108内の比較ユニットに投入される。投入されたサブストライプは、さらに検査フレームと称される矩形の小領域に分割され、比較ユニットにおいてフレーム単位で比較されて欠陥が検出される。比較回路108には、複数の検査フレームが同時に並列して処理されるよう、数十個の比較ユニットが装備されている。各比較ユニットは、1つの検査フレームの処理が終わり次第、未処理のフレーム画像を取り込む。これにより、多数の検査フレームが順次処理されていく。
このような本実施の形態の検査装置によれば、焦点位置の検出感度を高くするための投影パターンと、焦点位置の検出範囲を広くするための投影パターンの2種類を用意する必要がない。したがって、これらの投影パターンを切り替えるための機構も不要となる。よって、簡単な構成でありながら、高い検出感度と広い検出範囲での焦点位置検出が可能となるので、高い精度で検査を行うことができる。
次に、図8の検査装置100を用いて試料11を検査する方法の一例を述べる。
<焦点位置調整工程>
まず、実施の形態1で述べたようにして、試料11に光源1からの光を照射して焦点位置を検出し、検出した位置が合焦位置となるように調整する。
具体的には、マスク6およびマスク7の各投影パターンを試料11のパターン面に投影し、これらの投影パターンの像をセンサ13で検出する。ここで、センサ13は、試料11のパターンからの反射光を検出する部分と、マスク6のパターンからの反射光を検出する部分と、マスク7のパターンからの反射光を検出する部分とに分かれて構成されており、各部分は、対物レンズ10の視野の異なる位置からの反射光を受光して、それに応じた検出信号を出力する。
焦点位置の検出は、センサ13で検出された投影パターンの像のコントラストを比較することにより行う。具体的には、センサ13に結像した試料11のパターン像は光電変換された後、センサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。焦点位置調整回路125は、センサ回路106からの情報を受け取って焦点位置を検出する。
例えば、ステージ14が対物レンズ10に近付き過ぎると、マスク6のパターンが試料11のパターン面に結像する。このとき、センサ13には、マスク6のパターンに対応する明暗がはっきりと現われる。そして、センサ13で検出されるマスク6のパターンのコントラストは、例えば、実施の形態1で説明した図3のF1に示すようになる。一方、マスク7のパターンの結像位置は、試料11のパターン面から大きくずれ、また、試料11上におけるマスク7の投影パターンも、センサ13の受光面からずれるので、センサ13で検出されるマスク7のパターンのコントラストは、例えば、図4のF1に示すように低いものとなる。
試料11のパターンが合焦位置に結像するとき、試料11上でのマスク6の投影パターンは、試料11のパターンの結像位置がF1の状態にあるときよりもぼやけたものとなる。このため、センサ13で検出されるマスク6のパターンのコントラストは低下する。一方、センサ13におけるマスク7のパターンは、試料11のパターンの結像位置がF1の状態にあるときよりも、はっきりとするようになる。つまり、試料11のパターンが合焦位置に結像するとき、センサ13で検出される、マスク6のパターン像とマスク7のパターン像は、図3のF0と図4のF0に示すように、同程度にぼやけたものとなる。
ステージ14が対物レンズ10から遠ざかり過ぎると、センサ13で検出されるマスク6のパターン像は、試料11のパターンが合焦位置に結像するときよりも、一層ぼやけたものとなる。したがって、センサ13で検出されるマスク6のパターンのコントラストは低下して、例えば、図3のF2に示すようになる。一方、センサ13におけるマスク7のパターンは、試料11のパターンが合焦位置に結像するときよりも、さらにはっきりするようになる。すなわち、センサ13には、マスク7のパターンに対応する明暗がはっきりと現われ、センサ13で検出されるマスク7のパターンのコントラストは、例えば、図4のF2に示すように最大となる。
このように、マスク6およびマスク7の各投影パターンを試料11のパターン面に投影し、これらの投影パターンの像をセンサ13で検出してコントラストを比較することにより、光源1から出射された照明光の焦点位置を検出することができる。
次に、検出した焦点位置が試料11のパターン面に位置するよう調整する。具体的には、焦点位置調整回路125が、検出した焦点位置が試料11のパターン面に位置するよう、ステージ制御回路114を介して、ステージ14のZ方向の位置を調整する。この調整は、粗アライメント、精アライメントの順で行われる。
焦点位置調整回路125には、予め、マスク6のパターン像のコントラストと、マスク7のパターン像のコントラストとの差分値を、精アライメントと粗アライメントのそれぞれについて得たデータが格納されている。このデータは、次のようにして得られる。
まず、開口絞り3の開口部の径を変えて、実施の形態1で説明した図6および図7に示すような波形、すなわち、センサ13におけるマスク6のパターンの出力波形を得る。同様にして、マスク7のパターンについても、センサ13におけるパターンの出力波形を得る。
開口絞り3の開口部の径が大きくなるほど、検出感度が高くなるので、精アライメントに適するようになる。一方、開口絞り3の開口部の径が小さくなるほど、検出感度は低くなるが検出範囲が広くなるので、粗アライメントに適するようになる。つまり、粗アライメントにおける開口絞り3の開口部を第1の径とし、精アライメントにおける開口絞り3の開口部を第2の径とすると、第2の径は第1の径より大きくなる。
例えば、図6の例(σ=1.0)は精アライメントに適しており、図7の例(σ=0.2)は粗アライメントに適している。検査装置100では、精アライメントに適したσ値と、粗アライメントに適したσ値とは、予め、検査装置100の仕様、例えば、想定している試料11のパターンサイズ(マスクパターンの線幅など)、センサ13の画素数、対物レンズ10の仕様などを考慮して決定されている。
次に、得られたパターンの出力波形を用いて、マスク6のパターン像のコントラストと、マスク7のパターン像のコントラストとの差分値を、精アライメントと粗アライメントのそれぞれについて得る。
焦点位置の調整をする際には、まず、粗アライメント用の結像位置と差分値との関係を用いて、結像位置を合焦位置の近傍まで近付ける。続いて、精アライメント用の結像位置と差分値との関係を用いて、結像位置の微調整を行う。
制御計算機110は、焦点位置調整回路125から、粗アライメントのための位置情報と、精アライメントのための位置情報を読み出す。そして、この情報に基づき、ステージ制御回路114を制御して、ステージ14をZ方向に移動させる。これにより、焦点位置が正確に合焦位置となるようにすることができる。
このような焦点位置の調整方法によれば、検出感度を高くするための投影パターンと、検出範囲を広くするための投影パターンの2種類を検査装置100に用意する必要がない。したがって、これらの投影パターンを切り替えるための機構を検査装置100に設ける必要もない。よって、検査装置100を簡単な構成とすることができる一方、この検査装置100によれば、高い検出感度と広い検出範囲で焦点位置を検出して調整することが可能となる。
<光学画像取得工程>
上記のようにして、焦点位置を検出してその調整を終えた後は、図8の構成部Aにおいて、試料11の光学画像を取得する。開口絞り3を上記目的以外に使用しない場合には、この工程において、開口絞り3は不要であるので、光源1からの光束の太さに影響を与えない径とするか、あるいは、照明光学系から取り外しておくことができる。尚、開口絞り3を照明光学系に配置したままの状態とし、目的に応じて使用できるようにしておくことも可能である。
図9は、試料11に形成されたパターンの光学画像の取得手順を説明する図である。
図9で試料11は、図1のステージ14の上に載置されているものとする。また、試料11上の検査領域は、図9に示すように、短冊状の複数の検査領域、すなわち、ストライプ201,202,203,204,・・・に仮想的に分割されている。各ストライプは、例えば、幅が数百μmであって、長さが試料11のX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の領域とすることができる。
光学画像は、ストライプ毎に取得される。すなわち、図9で光学画像を取得する際には、各ストライプ201,202,203,204,・・・が連続的に走査されるように、ステージ14の動作が制御される。具体的には、ステージ14が図9の−X方向に移動しながら、試料11の光学画像が取得される。そして、図8のセンサ13に、図9に示されるような走査幅Wの画像が連続的に入力される。すなわち、第1のストライプ201における画像を取得した後、第2のストライプ202における画像を取得する。この場合、ステージ14が−Y方向にステップ移動した後、第1のストライプ201における画像の取得時の方向(−X方向)とは逆方向(X方向)に移動しながら光学画像を取得して、走査幅Wの画像がセンサ13に連続的に入力される。第3のストライプ203における画像を取得する場合には、ステージ14が−Y方向にステップ移動した後、第2のストライプ202における画像を取得する方向(X方向)とは逆方向、すなわち、第1のストライプ201における画像を取得した方向(−X方向)にステージ14が移動する。尚、図9の矢印は、光学画像が取得される方向と順序を示しており、斜線部分は、光学画像の取得が済んだ領域を表している。
図8のセンサ13上に結像したパターンの像は光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。その後、光学画像は、センサ回路106から図8の比較回路108へ送られる。
尚、A/D変換されたセンサデータは、画素毎にオフセット・ゲイン調整可能なデジタルアンプ(図示せず)に入力される。デジタルアンプの各画素用のゲインは、キャリブレーション工程で決定される。例えば、透過光用のキャリブレーション工程においては、センサが撮像する面積に対して十分に広い試料11の遮光領域を撮影中に、黒レベルを決定する。次いで、センサが撮像する面積に対して十分に広い試料11の透過光領域を撮影中に、白レベルを決定する。このとき、検査中の光量変動を見越して、例えば、白レベルと黒レベルの振幅が8ビット階調データの約4%から約94%に相当する10〜240に分布するよう、画素毎にオフセットとゲインを調整する。
<参照画像生成工程>
(1)記憶工程
ダイ−トゥ−データベース比較方式による検査の場合、欠陥判定の基準となるのは、設計パターンデータから生成する参照画像である。検査装置100では、試料11のパターン形成時に用いた設計パターンデータが磁気ディスク装置109に記憶される。
(2)展開工程
展開工程においては、図8の展開回路111が、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出された試料11の設計パターンデータを2値ないしは多値のイメージデータ(設計画像データ)に変換する。このイメージデータは参照回路112に送られる。
(3)フィルタ処理工程
フィルタ処理工程では、図8の参照回路112によって、図形のイメージデータである設計パターンデータに適切なフィルタ処理が施される。その理由は、次の通りである。
試料11のパターンは、その製造工程でコーナーの丸まりや線幅の仕上がり寸法などが加減されており、設計パターンと厳密には一致しない。また、図8のセンサ回路106から得られた光学画像としてのマスク採取データは、光学系の解像特性やセンサ13のアパーチャ効果などによってぼやけた状態、言い換えれば、空間的なローパスフィルタが作用した状態にある。
そこで、検査に先だって検査対象となるマスクを観察し、その製造プロセスや検査装置の光学系による変化を模擬したフィルタ係数を学習して、設計パターンデータに2次元のデジタルフィルタをかける。このようにして、参照画像に対し光学画像に似せる処理を行う。
フィルタ係数の学習は、製造工程で決められた基準となるマスクのパターンを用いて行ってもよく、また、検査対象となるマスク(本実施の形態では試料11)のパターンの一部を用いて行ってもよい。後者であれば、学習に用いられた領域のパターン線幅やコーナーの丸まりの仕上がり具合を踏まえたフィルタ係数が取得され、マスク全体の欠陥判定基準に反映されることになる。
尚、フィルタ係数の学習に検査対象となるマスクを使用する場合、製造ロットのばらつきや、検査装置のコンディション変動といった影響を排除したフィルタ係数の学習ができるという利点がある。しかし、マスク面内で寸法変動があると、学習に用いた箇所に対しては最適なフィルタ係数になるが、他の領域に対しては必ずしも最適な係数とはならないため、疑似欠陥を生じる原因になり得る。そこで、面内での寸法変動の影響を受け難いマスクの中央付近で学習することが好ましい。あるいは、マスク面内の複数の箇所で学習を行い、得られた複数のフィルタ係数の平均値を用いてもよい。
<ダイ−トゥ−データベース比較工程>
光学画像取得工程で取得されたマスク採取データは、センサ回路106から比較回路108へ送られる。また、参照回路112からは、参照データが比較回路108へ送られる。比較回路108では、マスク採取データと参照データとが、ダイ−トゥ−データベース方式によって比較される。具体的には、撮像されたストライプデータが検査フレーム単位に切り出され、検査フレーム毎に、欠陥判定の基準となるデータと適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。そして、両者の差が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定される。欠陥に関する情報は、マスク検査結果として保存される。例えば、制御計算機110によって、欠陥の座標、欠陥判定の根拠となった光学画像などが磁気ディスク装置109に保存される。
例えば、試料11に格子状のチップパターンが形成されているとする。検査対象としてn番目のチップを考えると、ダイ−トゥ−データベース比較方式においては、n番目のチップの光学画像におけるパターンと、n番目のチップの参照画像におけるパターンとの差が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定される。
欠陥判定は、より具体的には、次の2種類の方法により行うことができる。1つは、参照画像における輪郭線の位置と、光学画像における輪郭線の位置との間に、所定の閾値寸法を超える差が認められる場合に欠陥と判定する方法である。他の1つは、参照画像におけるパターンの線幅と、光学画像におけるパターンの線幅との比率が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する方法である。この方法では、参照画像におけるパターン間の距離と、光学画像におけるパターン間の距離との比率を対象としてもよい。
<レビュー工程および修正工程>
保存されたマスク検査結果は、レビュー装置に送られる。レビュー装置は、検査装置の構成要素の1つであってもよく、また、検査装置の外部装置であってもよい。レビューは、オペレータによって、検出された欠陥が実用上問題となるものであるかどうかを判断する動作である。オペレータは、例えば、欠陥判定の根拠となった基準画像と、欠陥が含まれる光学画像とを見比べて、修正の必要な欠陥であるか否かを判断する。
レビュー工程を経て判別された欠陥情報は、図8の磁気ディスク装置109に保存される。レビュー装置で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、試料11は、欠陥情報リストとともに、検査装置100の外部装置である修正装置に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リストには、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
以上述べた本実施の形態の検査方法によれば、焦点位置の検出感度を高くするための投影パターンと、焦点位置の検出範囲を広くするための投影パターンの2種類を用意する必要がない。したがって、これらの投影パターンを切り替えるための機構も不要となる。よって、簡単な構成でありながら、高い検出感度と広い検出範囲での焦点位置検出が可能となるので、高い精度で検査を行うことができる。
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
また、上記各実施の形態では、装置構成や制御手法など、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての検査方法または検査装置は、本発明の範囲に包含される。