図1に、棒状部材を曲げ加工する加工装置の概要を正面図により示している。加工対象(ワーク、ワークピース)となる棒状部材の一例はパイプ(管状部材)である。加工装置1は、架台2と、水平方向にワークWであるパイプを支持するワーク支持ユニット5と、ワーク(加工対象)Wを曲げ加工する加工ユニット10と、加工ユニット10を架台2に対して上下に移動するように支持する移動ユニット80と、制御ユニット9とを含む。制御ユニット9は、ワーク支持ユニット5、加工ユニット10および移動ユニット80をそれぞれ制御する機能を含む。ワークWは、パイプであってもチューブであっても他の棒状部材であってもよい。
ワーク支持ユニット5は、ワークWを水平方向に把持するホルダ(クランプ)5aと、ホルダ5aを、ワークWの長手方向の軸(中心軸)を中心として回転させるモータ5bと、ワーク支持ユニット5を架台2の上で移動させて加工ユニット10との距離を制御する移動ユニット5cとを含む。移動ユニット5cはワークWの長手方向の加工位置を制御する。この例では、移動ユニット5cはワークWを水平方向に移動させる水平移動ユニットである。ワーク支持ユニット5は、ワーク支持ユニット5を架台2の上で上下に移動させてホルダ5aで把持したワークWの高さを変更するユニットを含んでいてもよい。
制御ユニット9は、ワーク支持ユニット5のモータ5bおよび水平移動ユニット5cを制御して、加工ユニット10とワークWとの相対的な角度、および加工ユニット10とワーク支持ユニット5との距離を制御する加工位置制御機能(加工位置制御ユニット)9aを含む。加工ユニット10とワーク支持ユニット5との相対的な位置を変えたり、角度を変えることで、加工ユニット10とワークWとの相対的な角度、および加工ユニット10とワーク支持ユニット5との距離を制御できる。
制御ユニット9は、加工ユニット10を制御して、ワークWの曲げ方向と、曲げ方法(引き曲げおよび押し曲げ)とを制御する曲げ加工制御ユニット9bを含む。加工制御ユニット9bは、左引き曲げ加工を行うモード1(M1)と、右引き曲げ加工を行うモード2(M2)と、左押し曲げ加工を行うモード3(M3)と、右押し曲げ加工を行うモード4(M4)とを含む。
制御ユニット9は、さらに、加工ユニット10および移動ユニット80を制御して、ワークWを加工ユニット10が所定の位置で把持(クランプ)あるいは開放(リリース)するクランプ制御機能(クランプ制御ユニット)9cを含む。クランプ制御機能9cは、左右曲げを切り替えたりする際に、移動ユニット80を用いて加工ユニット10を上げ下げして左右曲げの所定の位置でワークWをクランプする機能を含む。
移動ユニット(クイックターンユニット)80は、加工ユニット10とワークWとの位置関係を、加工ユニット10を動かすことにより、左曲げと右曲げとの位置に切り替える。移動ユニット80は、加工ユニット10をワークWに対していったん下方に動かしてワークWを加工ユニット10から開放し、加工ユニット10を上方に動かして姿勢を変えた加工ユニット10でワークWを把持する。
図2に、加工装置1を加工ユニット10の側から見た様子を示している。加工ユニット10は曲げ軸(第1の軸)11が鉛直方向に対して傾くように架台2に取り付けられている。左曲げの際と右曲げの際とでは、後述するように曲げ軸11の傾き方向を逆にする必要がある。移動ユニット80は、ワーク支持ユニット5に支持されたワークWの未加工部分の中心軸を、加工ユニット10の設定中心Cにセットする第1の動作と、設定中心Cから離れた退避位置にセットする第2の動作とを行う。したがって、一点鎖線89に示すように、移動ユニット80は、加工ユニット10を左右に搖動させながら上下に直線的に動かし、結果としてクランプする部分をU字またはC字を描くようにワークWに対して下げ上げし、その間に曲げ軸11の傾きを逆転させる。この移動ユニット80の動きにより、加工ユニット10はワークWに対し、ワークWをクランプする位置(設定中心)Cに直線的に動く。ワークWは、加工ユニット10に対して相対的に、退避する位置からクランプ(把持)される位置Cに直線的に動く。
図3に、加工ユニット10を抜き出して概要を示している。図4に、加工ユニット10の曲げ軸11に沿った断面を用いて概略の構成を示している。加工ユニット10は、曲げ軸(第1の軸)11を中心に回転する曲げ型クランプ20と、曲げ型クランプ20と協働してワークWを曲げる直線状のプレッシャ31を含むプレッシャユニット30と、曲げ型クランプ20を曲げ軸11を中心に回転する第1の駆動ユニット(第1の回転ユニット、引き曲げ機構)40と、プレッシャユニット30を第1の駆動ユニット40とは独立して曲げ軸11を中心に回転する第2の駆動ユニット(第2の回転ユニット、押し曲げ機構)50と、曲げ型クランプ20およびプレッシャユニット30を開閉する開閉ユニット69とを含む。開閉ユニット69は、曲げ型クランプ20を上下に開閉する型開閉機構(第1の開閉ユニット)60と、型開閉機構60と連動してプレッシャユニット30を曲げ型クランプ20に対して搖動させるリンクユニット(プレッシャ開閉機構、第2の開閉ユニット、プレッシャ搖動機構)70とを含む。プレッシャユニット30は、プレッシャ開閉機構70により開閉されるベースユニット(ベース)90を有し、プレッシャ31はベースユニット90に対して、駆動モータ97を含むプレッシャ駆動ユニット(プレッシャ駆動機構)96によりクランプ20の前後方向(左右方向)に移動される。加工ユニット10は、移動ユニット80を介して架台2に対しスライド可能に取り付けられるスライド板49を有し、これらの機構40〜70はスライド板49を介して支持される。
曲げ型クランプ20は円弧状の部分、本例ではリング状の曲げ溝24を含む上下一対の割り型(上下型、第1および第2のユニット)23および22を含み、曲げ溝24に沿ってパイプなどのワークWを曲げ加工するために用いられる。上下一対の割り型23および22は、曲げ溝24を含む上下一対の割り型部23aおよび22aと、曲げ溝24に挿入された棒状のワークWを保持する上下一対のクランプ部23bおよび22bとを含む。曲げ型クランプ20は、曲げ溝24を含む割り型と、ワークWを曲げ溝24に対して保持した状態で曲げ型と同期し第1の軸11を中心に回転するクランプとを独立に設ける構成としてもよい。プレッシャ31は、曲げ型クランプ20の断面が半円状の曲げ溝24に棒状のワークWを、曲げ溝24の外周側から保持する断面が半円状でワークWに沿って直線状に形成された保持溝32を含む。
曲げ型クランプ20を回転駆動する引き曲げ機構(第1の駆動ユニット)40は、スライド板49に対し曲げ軸11の周りに回転するように支持された中空軸45と、中空軸45を駆動する第1のモータ(引き曲げモータ)41と、引き曲げモータ41と中空軸45とを連結する歯車42aおよび42bとを含む。引き曲げモータ41は、スライド板49に対し支持板48aを介して固定されている。中空軸45は、スライド板49に固定された支持板48bおよび48cに対し軸受け47aおよび47bを介して回転可能に取り付けられている。中空軸45が引き曲げモータ41により回転駆動されると、中空軸45とともに回転する上型開閉軸63および下型開閉軸62を介して曲げ型クランプ20が曲げ軸11を中心に回転駆動される。
プレッシャユニット30を回転駆動する押し曲げ機構(第2の回転ユニット、第2の駆動ユニット)50は、中空軸45の周りに回転可能に取り付けられたハウジング55と、ハウジング55を回転駆動する第2のモータ(押し曲げモータ)51と、押し曲げモータ51とハウジング55とを連結する歯車52aおよび52bとを含む。プレッシャユニット30は、プレッシャ開閉機構70を介してハウジング55に取り付けられており、押し曲げモータ51がハウジング55を回転駆動すると、ハウジング55とともにプレッシャユニット30が曲げ軸11の周りに回転する。ハウジング55は、中空軸45の外周に設けられた軸受け57aおよび57bにより中空軸45に取り付けられている。押し曲げモータ51は支持板48cによりスライド板49に固定されている。
型開閉機構(第1の開閉ユニット)60は、プレッシャ開閉機構(第2の開閉ユニット)70とともに、上型(第1のユニット)23、下型(第2のユニット)22、およびプレッシャ31を、ワークWの設定中心Cに対し3つの異なる方向に開閉する開閉ユニット69を構成する。第1の開閉ユニットである型開閉機構60は、曲げ型クランプ20の上下一対の割り型部である上型(第1のユニット)23と下型(第2のユニット)22とを上下に開閉する機構である。型開閉機構60は、中空軸45の内部に曲げ軸11に沿って上下にスライド可能に挿入された下型開閉軸62と、下型開閉軸62の内部に曲げ軸11に沿って上下にスライド可能に挿入された上型開閉軸63と、下型開閉軸62および上型開閉軸63と左右異なるネジを備えた左右ネジ65と、左右ネジ65を回転駆動する第3のモータ(型開閉モータ、開閉モータ)61とを含む。型開閉モータ61は支持部48dを介してスライド板49に固定されており、左右ネジ65は軸受け67を介して回転可能に支持板48aに取り付けられている。
曲げ型クランプ20の上型23は上型開閉軸63にねじ固定され、下型22は下型開閉軸62にネジ固定されている。上型開閉軸63および下型開閉軸62は、上型23、下型22および中空軸45と繋がる部分(貫通する部分)の少なくとも一部は四角断面等の周り止め形状を含み、相互に曲げ軸11の周りに連動して回転するようになっている。左右ネジ65は、上型開閉軸63に接続する部分にたとえば左ネジ部(左雄ネジ)65bを備え、下型開閉軸62に接続する部分に右ネジ部(右雄ネジ)65aを備えている。上型開閉軸63は左雌ねじ部63aを含み、下型開閉軸62はナット64に形成された右雌ねじ部62aを含む。左ネジと右ネジとは逆であってもよい。したがって、左右ネジ65を型開閉モータ61により正逆回転すると、上型開閉軸63および下型開閉軸62は上下異なる方向に動き、上型23および下型22を上下に平衡(共に動いて)に開閉(平衡開閉)する。
第2の開閉ユニットの一例であるプレッシャ開閉機構(リンクユニット)70は、曲げ軸11の周りを回動するハウジング55とプレッシャユニット30のベースユニット90とをリンクする機構である。プレッシャ開閉機構70は、プレッシャユニット30のベースユニット90を回転可能に支持する支点ピン72と、支点ピン72を介してベースユニット90が搖動して曲げ型クランプ20に対して開閉するようにハウジング55に対して支持するステー74と、下型開閉軸62と一体になり上下動する円筒カム75と、円筒カム75の外周に接してベースユニット90を搖動するカムフォロア73とを含む。
曲げ型クランプ20の上下型23および22を開くとき(型開き時)は、プレッシャユニット30の自重によりプレッシャユニット30が傾き、その結果、プレッシャ31が曲げ型クランプ20に対して開く。上下型23および22を閉じるとき(型閉じ時)は下型開閉軸62に設けた曲げ型クランプ20の方向が狭く下側に広がったスカート状の円筒カム75でカムフォロア73を円筒カム75の傾斜面75aに沿って揺動させる。カムフォロア73と一体になり、ステー74に対して支点ピン72で曲げ軸11に対して斜めに搖動するように支持されたプレッシャユニット30のベースユニット90がカムフォロア73とともに搖動し、プレッシャ31をワークWに当接する位置まで閉じる。曲げ加工の際は、カムフォロア73が円筒カム75の傾斜面75aの外側の外筒部75bに接し、カムフォロア73が曲げ軸11から離れた位置で曲げ軸11の周りに回転する。このカムフォロア73がプレッシャ31の開き力を受けて、曲げ型クランプ20とともにワークWを型締めする。
このため、加工ユニット10においては、左右引き押し曲げの4モードの全ての曲げ開始位置および曲げ終了位置、またはその途中のどの位置でも曲げ型クランプ20とプレッシャ31の同時従動開閉が可能であり、かつ曲げ反力を円筒カム75の外周で受けることで、型締め力の保持エネルギーが不要となる。また、上下型23および22とプレッシャ31とを型開閉モータ61により開閉でき、型開閉機構60とプレッシャ搖動機構70とにより1モータ三方向開閉の機構を実現できる。このため、加工ユニット10においては、小型省エネの開閉手段により上下型23および22とプレッシャ31とを同期して開閉している。
さらに、プレッシャ開閉機構(リンクユニット)70においては、支点ピン72を介してベースユニット90を搖動可能に支持するステー74が、下型開閉軸62の周りに回転可能に連結する連結部74aを含む。連結部74aは滑り軸受けを含み、ステー74の支点ピン72の近傍の荷重を曲げ軸11に沿って延びた下型開閉軸62に伝達する。したがって、ワークWを上型23、下型22およびプレッシャ31で挟んで曲げ加工するときにリンクユニット70に作用する曲げ反力を曲げ加工部である曲げ型クランプ20の近くで受けることができる。このため、ハウジング55に連結する軸受け57aおよび57b、他の曲げ軸11の周りの軸受け47aおよび47bなどの荷重を低減できる。また、ステー74などを含むリンクユニット70の曲げモーメントによる変形も低減でき、いっそう精度よくワークWを把持できる。リンクユニット70の曲げモーメントによる影響を考慮する必要が少ない場合には、ステー74が連結部74aを含まない構成としてもよい。
図5に、加工ユニット10の曲げ型クランプ20およびプレッシャユニット30が閉じた状態を拡大して側面図により示し、図6に平面図により示している。図7に、プレッシャユニット30を抜き出して、その構成を平面図により示している。なお、図5においては、プレッシャユニット30の構造がわかるように、プレッシャユニット30を支持するステー74の手前側の一部を切り欠いて示している。
プレッシャユニット30は、第2の回転ユニット(押し曲げ)機構50により回転されるベース(ベースユニット)90と、ベースユニット90に支持された状態で回転するプレッシャ31とを含む。プレッシャ31は、曲げ溝24にワークWを挟み込んだ状態で保持する直線状の溝32を含む。プレッシャ31は、ベースユニット90に対して図6の上下方向、すなわち、クランプ部22bおよび23bの前後方向に動く。このため、プレッシャ31は、ベースユニット90とクランプ部22bおよび23bとを位置合わせした状態、すなわち、曲げ加工を開始する状態(初期状態、初期位置)で、ベースユニット90に対しクランプ部22bおよび23bの反時計方向の第1の位置P1と、反対側の時計方向の第2位置P2とに設定できる。プレッシャ31がクランプ部22bおよび23bに対して時計方向の第2の位置P2にセットされた具体的な状態は、たとえば、図11(b)、(c)に示している。
ベースユニット90は、ベースユニット90に対し、プレッシャ31を第1の位置P1と第2の位置P2と間でスライドさせるガイド(スライドホルダ、スライドガイド)91と、スライドホルダ91が搖動軸93aの周りに旋回するように支持する基部92と、プレッシャ31およびスライドホルダ91を搖動軸93aの周りに旋回するとともにプレッシャ31をスライドホルダ91に対してスライドさせるプレッシャ駆動機構96とを含み、プレッシャ駆動機構96は基部92に取り付けられた駆動モータ(スライドモータ)97により駆動される。プレッシャ駆動機構96は駆動モータ97により駆動される歯車98aと、搖動軸93aの周りに回転する歯車98cと、歯車98aおよび98cとの間で動力を伝達する歯車98bとを含む。搖動軸93aと同軸で回転する歯車(ピニオン)98cは、プレッシャ31の下側に設けられたラック(直線歯車)33と噛み合い、駆動モータ97によりプレッシャ31をスライドホルダ91に対して左右、すなわち、第1の位置P1と第2の位置P2とに動かす。同時に、搖動軸93aと同軸で回転するピニオン98cがプレッシャ31とプレッシャ31をスライド支持するスライドホルダ91とを搖動軸93aの周りに旋回させる。
すなわち、図6において、プレッシャ駆動機構96がピニオン98cを反時計方向に回転させるとプレッシャ31は上側(右側、クランプ22bおよび23bの反時計側)の第1の位置P1に移動するとともに、プレッシャ31およびスライドガイド91は基部92に対して時計方向に旋回する。プレッシャ駆動機構96がピニオン98cを時計方向に回転させるとプレッシャ31は下側(左側、クランプ22bおよび23bの時計側)の第2の位置P2に移動するとともに、プレッシャ31およびスライドガイド91は基部92に対して反時計方向に旋回する。
また、基部92は、一方の先端付近をリンクユニット70の支持ピン(支点ピン)72により支持されており、第2の駆動ユニット50により、リンクユニット70ともに第1の軸11の周りを回転駆動される。したがって、プレッシャ31は基部92に対し第1の位置P1または第2の位置P2に移動し、また、オフセットされた状態で第1の軸11の周りに駆動される。また、基部92は支持ピン72の周りに上下に搖動するようになっており、プレッシャ31は基部92とともに上下にも搖動する。
本実施例においては、スライドホルダ91は、ワークWの軸方向に沿って延びる内レール91aと、内レール91a内に形成されたガイド溝95とを含む。プレッシャ31は、スライドホルダ91の内レール91aに噛み合う外レール31aと、スライドホルダ91のガイド溝95内をスライドし、ガイド溝95の両端面に突き当たるストッパピン34とを含む。したがって、プレッシャ(スライドプレッシャ)31は、ラック33およびピニオン98cにより、スライドホルダ91に沿って第1の位置P1と第2の位置P2との間をスライドする。
このプレッシャユニット30としては、プレッシャ31を第1の位置P1および第2の位置P2に固定する機構として、スライドホルダ91の側に設けられたガイド溝95と、プレッシャ31の側にストッパピン34とを含むが、スライドホルダ91の側にストッパピン34を設け、プレッシャ31の側にガイド溝95を設けてもよい。プレッシャ31を第1の位置P1および第2の位置P2に固定する機構は、これらに限定されず、ローラなどの回転式の部材を用いてもよい。さらに、プレッシャ31を第1の位置P1と第2の位置P2とに設定する構成は、ラックアンドピニオン方式でなくてもよく、適当なリンク機構であってもよく、エアシリンダなどを用いてもよい。
ベース90は、さらに、基部92に対しスライドホルダ91を第2の軸(搖動軸)12の周りに所定の角度だけ搖動するように支持する支持部93を含む。支持部93はスライドホルダ91が第2の軸12の周りに所定の角度だけ搖動したときにスライドホルダ91が当たり停止するストッパ94を含む。支持部93は、基部92に対してスライドホルダ91を搖動支持する搖動軸93aと、ストッパ94の上面に配置され、搖動軸93aの上端が挿入される軸受93bとを含む。搖動軸93aの中心が第2の軸12となる。
ストッパ94は、基部92の上面に、スライドホルダ91に対しプレッシャ31とは反対側に配置されており、曲げ型クランプ20が回転し、プレッシャユニット30も回転する第1の軸11とプレッシャユニット30の搖動軸12とを結んだプレッシャユニット30の中心線13に対して、プレッシャ31を搖動軸12の周りにオフセット角(搖動角)θ1だけ旋回したときに接してオフセット角θ1を制限する当接面94aを含む。したがって、プレッシャユニット30は、ベースユニット90を、ワークWである直管に対し直交する方向14からオフセット角θ1だけ傾けた状態でプレッシャ31をワークWに垂直に当てて保持できる。すなわち、プレッシャユニット30は、第2の駆動ユニット50によりオフセット角θ1だけ回転された位置で、曲げ型クランプ20と接し、曲げ型クランプ20と協働してワークWである直管、または直管の部分を曲げ溝24の接線方向に把持できる。したがって、この位置におけるワークWの中心位置が曲げ加工の開始位置(曲げ点)27となる。曲げ型クランプ20には、この状態で直管または直管部分を保持できるように曲げ溝24に繋がった溝25および26が形成されている。
プレッシャユニット30を第1の軸11の周りにオフセット角θ1だけ回転させるとともに、スライドホルダ91を第2の軸12の周りをオフセット角θ1だけ搖動させることにより、第2の軸12を第1の軸11に対してワークWに沿った方向に長さL1だけ移動できる。したがって、プレッシャユニット30およびスライドホルダ91を回転および搖動させることにより、搖動させない場合に比較して、スライドホルダ91のワークWの軸方向に沿った長さを、左右にそれぞれL1ずつ短くしても、同等にプレッシャ31を支持できる。このため、スライドホルダ91が、クランプ部23bおよび22bの位置からワークWの先端方向に対して突き出すことを回避できる。したがって、曲げ加工したワークWとスライドホルダ91との曲げ干渉域を低減でき、1回の曲げ動作で曲げられる曲げ量を増やすことができる。したがって、加工ユニット10を小型化できるとともに、効率よく曲げ加工できる。
プレッシャ31の搖動角(オフセット角)がゼロの場合は、ワークWの軸方向とプレッシャ31およびスライドホルダ91を平行にする旋回(搖動)をなくすことができるが、オフセット角θ1によるスライドホルダ91のオフセット長L1もゼロになり、その分スライドホルダ91のガイド長を曲げ開始時のセット位置P1とP2の両側に延長する必要があり、曲げ型クランプ20のクランプ幅L2(図10参照)より突出しワークWとの曲げ干渉が大きくなる弊害がある。一方、オフセット角θ1が大きくなるとオフセット長L1が長くなる分スライドホルダ91のガイド長を更に短くできるが、支点ピン72を支点にプレッシャ31が搖動しワークWに当接する手前で直線状の保持溝32とワーク軸との平行ズレ角度が大きくなる。この平行ズレ角度は半円状保持溝32がワークWに当接する曲げ加工位置ではゼロになるため、オフセット角θ1が小さいと問題がないため、オフセット角θ1はパイプ曲げ干渉の発生しない範囲の適当な小さい角度にすることが望ましい。
このため、オフセット角θ1の上限は、45°以下であることが好ましく、30°以下であることがさらに好ましい。また、オフセット角θ1の下限は、ゼロであってもよいが、オフセット長L1を確保するためには、3°以上であることが望ましい。また、ベースユニット90のオフセット角θ1は、(割型23及び22と同時に)プレッシャ31を型閉めする際に、ベースユニット90のオフセット角をθ1より若干小さく設定してプレッシャ31を型閉めし、型閉め後にθ1に回転させてもよい。これによりプレッシャ31がワークWから若干離れた位置で型閉めされ、その後で曲げ位置であるオフセット角θ1の第1の位置P1あるいは第2の位置P2にプレッシャ31を移動し、ワークWに当接させることで、型閉め時にカムフォロア73に作用するスラスト力の低減と、割型23および22へのワークWの噛み込みを防止できる。
図6に示したクランプ22bおよび23bとプレッシャ31との関係は、図11に示すワークWを左引き曲げ加工を行うモード1(M1)と、右押し曲げ加工を行うモード4(M4)の曲げ加工の初期設定状態に対応する。一方、プレッシャ31を第2の位置P2にスライドするとともにプレッシャユニット30を反対方向にオフセット角θ1だけ回転させ、プレッシャ31をクランプ22bおよび23bの時計方向にセットすることにより、図11に示すワークWを右引き曲げ加工を行うモード2(M2)と、左押し曲げ加工を行うモード3(M3)の曲げ加工の初期設定状態を実現できる。したがって、この加工装置1においては、1つのプレッシャ31を備えたプレッシャユニット30により、上記の4つの加工に対応することができる。
プレッシャユニット30においては、プレッシャ31のスライド移動は、ストッパピン34がスライドホルダ91のガイド溝95の両端面に突き当たることにより停止し、スライドホルダ91の搖動は、ストッパ94の当接面94aに突き当たることにより停止する。プレッシャ31のスライドと、スライドホルダ91の搖動とは、同時またはいずれが先に行われるようにしてもよいが、プレッシャ31のスライドとスライドホルダ91の搖動がいずれも停止した時は、スライドモータ97がトルクの増大を感知して停止するように構成されている。プレッシャ31の位置決めおよびスライドホルダ91のオフセット角θ1の位置決めは、それぞれセンサを設置して行うようにしてもよい。その場合、スライドモータ97は、数値制御なしのモータであってよいが、数値制御可能なサーボモータ等を使用することが望ましい。サーボロックにより、プレッシャ31の開閉時等にプレッシャ31およびスライドホルダ91の位置決め保持が可能となる。
図8に、上下型23および22、およびプレッシャ31の開閉の様子を示している。図8(a)は型開き状態を示す。曲げ型クランプ20の上型23と下型22とプレッシャユニット30とが、ワークWがセットされる位置(ワークWの中心軸の位置、設定中心)Cを中心として三方向に開いた状態を示している。図8(b)は、型閉め状態を示す。曲げ型クランプ20の上型23と下型22とプレッシャユニット30とが閉じた状態を示している。
この加工ユニット10においては、曲げ型クランプ20の上型23と下型22とを開閉する型開閉機構60とプレッシャユニット30を開閉するプレッシャ搖動機構70とがスカート状円筒カム75を介して連動して動き、プレッシャユニット30の開閉が上下型23および22の開閉に従動して同時に行われる。このため、プレッシャユニット30の開閉用アクチュエータが不要となり、開閉位置を検出するセンサも不要であり、プレッシャユニット30の動作を制御するための機構も不要となる。
図8(a)に示したように、開閉機構上型(第1のユニット)23と下型(第2のユニット)22とは型開閉機構60により曲げ軸11に沿って上下均等(平衡)に開閉し、プレッシャ31はプレッシャ搖動機構70により型開閉機構60に連動して曲げ軸11に対してほぼ垂直な方向(直交する方向)15に開閉する。したがって、これら上型23、下型22およびプレッシャ31は、曲げ加工するための、すなわち、未加工のワークWのセンター(中心軸、設定中心)Cを中心に3つの異なる方向に、ワークWが移動する際に干渉しない程度の距離を開けて開閉できる。このため、ワークWを設定中心Cと退避位置Eとの間で直線的な経路16に沿って動かすことができる。
この加工装置1においては、ワークWの位置は実質的には動かず、加工ユニット10が移動ユニット80により上下に動く。したがって、ワークWを鉛直方向(垂直方向)に出し入れする場合は、図8(c)に示すように、左曲げ加工するときは、鉛直方向にワークWが干渉しないで移動できる隙間が上型23およびプレッシャ31の間に生じるようにワークWに対して曲げ軸11を図面上左側に傾けて(回転させて、搖動させて)、加工ユニット10を上方(鉛直方向)に直線的な経路16に沿って動かすことによりワークWにアクセスできる。この際、加工ユニット10は、上型23のクランプ部23bが経路16と干渉しない角度まで傾けてもよく、曲げ型クランプ20を曲げ軸11の周りに回転することによりクランプ部23bを経路16と干渉しない位置に退避してもよい。加工ユニット10の傾きが大きくなるとモータ等の重量物の負荷(モーメント)が大きくなるので、曲げ型クランプ20を回転させてクランプ部23bの干渉を回避することが望ましい。ワークWのセンターが設定中心Cに達した状態で上型23、下型22およびプレッシャ31を閉じることによりワークWをクランプして曲げ加工を開始できる。
曲げ加工の角度を変える必要があるときは、図8(a)の型開き状態で加工ユニット10の曲げ軸11を所定の角度まで回転させてもよいし、ワーク支持ユニット5がワークWを所定の角度になるように回転させてもよい。ワークWを開放するときは、再び、上型23、下型22およびプレッシャ31を3方向に開き、加工ユニット10を下方に経路16に沿って下げてもよいし、ワークWを開放した状態でワーク支持ユニット5によりワークWを適当な距離だけ移動させたり、所定の角度だけ回転させたりすることができる。また、加工ユニット10を移動ユニット80により上下する代わりに、ワーク支持ユニット5により上下させてもよい。
一方、ワークWを右曲げ加工するときは、図8(d)に示すように、移動ユニット80により、ワークWに対して曲げ軸11を図面上右側に傾けた状態で、加工ユニット10を上方(鉛直方向)に直線的な経路16に沿って動かすことによりワークWにアクセスできる。図8(c)と図8(d)における直線的な経路16は、左右曲げ共通の経路である。したがって、ワークWの右曲げおよび左曲げの切り替えを移動ユニット80により加工ユニット10を上下に動かしながら、曲げ軸11の周りのプレッシャ31の配置と、曲げ軸11の傾きを変えるだけで簡単に行うことができる。
図9に、曲げ型クランプ20の概要を示している。図9(a)に、加工ユニット10を上方、すなわち曲げ型クランプ20の方向から見た状態を拡大して、曲げ型クランプ20の部分を中心に示している。図9(b)に曲げ型クランプ20のクランプ溝25によりワークWを把持した状態をワークWの延長方向(クランプ溝25の延長方向)から見た様子を示している。図9(c)は、曲げ型クランプ20の第2のクランプ溝26によりワークWを把持した状態を第2のクランプ溝26の延長方向から見た様子を示している。
図10は、曲げ型クランプ20の下型22を代表して抜き出して示しており、図10(a)は平面図、図10(b)はクランプ溝25の延長方向の側面図、図10(c)は第2のクランプ溝26の延長方向の側面図である。下型22と一対をなす上型23の構成も、下型22と共通であり、図示を省略する。
曲げ型クランプ20は、円弧状の部分を含む曲げ溝24を含む上下一対の割り型部23aおよび22aと、曲げ溝24に挿入された棒状のワークWを保持する上下一対のクランプ部23bおよび22bとを含む。上下一対のクランプ部23bおよび22bは、上下一対の割り型部23aおよび22aから曲げ溝24の周方向に突き出ている。このため、上下一対のクランプ部の上側の第1のクランプ部(上側のクランプ部)23bと上下一対の割り型部の上側の第1の割り型部(上側の割り型部)23aとは一体となり上型(第1のユニット)23を構成している。また、上下一対のクランプ部の下側の第2のクランプ部(下側のクランプ部)22bと上下一対の割り型部の下側の第2の割り型部(下側の割り型部)22aとは一体となり下型(第2のユニット)22を構成している。
上下一対のクランプ部23bおよび22bのそれぞれは、X字状に交差し、曲げ溝24に対し曲げ溝24の接線方向に延びるようにそれぞれ繋がったクランプ溝25および26を含む。クランプ部23bおよび22bは、上下割り曲げ型外周の一箇所から外周側に台形状に突き出た突起部であり、そこに曲げ溝24の曲げ半径に接線で繋がる左右曲げ用の2条のパイプクランプ用の半円溝25および26が左右対称に交差角θ2でX字状に交差して集約して設けられている。それぞれの半円溝25および26は、曲げ溝24の接線方向にパイプ(ワークW)の直管部を保持するように形成されており、曲げ溝24から接線方向に延びたワークWの外周側の半分強を、それぞれの半円溝25または26の領域28aまたは28bでパイプを狭持し、引き曲げの際はパイプを曲げ方向に引っ張り、押し曲げの際はパイプを保持する。交差角θ2は、20〜40°程度であることが好ましい。クランプ溝25および26は、その一方を左曲げ、他方を右曲げ用のパイプ狭持溝として使用される。本例では、クランプ溝25が上から見てワークWを左に曲げるためのクランプ溝であり、クランプ溝26が上から見てワークWを右に曲げるためのクランプ溝である。
このように、クランプ溝25および26をX字状に集約して設けることにより、曲げ点27から台形部の斜面までのクランプ長L2を、ワークWの直径dの0.8〜1.5d程度の必要最小限の長さにすることができる。したがって、クランプ部23bおよび22bの突起形状を小さくでき、プレッシャ31との相対位置の入れ替え時に、プレッシャ31の逃がしストロークを小さくできる。さらに、左右引き押し曲げ共用の曲げ型クランプ20のクランプ長を一方向曲げのクランプ長と同等程度に短縮することで、引き曲げと押し曲げの選択使用により、曲げ始め・曲げ間・曲げ終りのストレート長制約を短くできる。このため、簡素な構成で効率よく曲げ加工できる加工装置1を提供できる。
この曲げ型クランプ20は、1つで左曲げおよび右曲げに対応しており、左右曲げ共通の曲げ型クランプである。このため、この曲げ型クランプ20を採用した加工ユニット10および加工装置1においては、パイプ、チューブ等の棒状部材(ワーク)Wをフレキシブルに、効率よく加工できる。
図11に加工ユニット10により実行できるいくつかの曲げ加工を示している。図11(a)は左引き曲げ加工(第1のモード)を示し、図11(b)は右引き曲げ加工(第2のモード)を示し、図11(c)は左押し曲げ加工(第3のモード)を示し、図11(d)は右押し曲げ加工(第4のモード)を示す。それぞれの図は、曲げ開始位置を示す。曲げ型クランプ20は360度回転可能である。プレッシャユニット30はスライド板49およびスライド板49と加工ユニット10とを接続する支持板48bなどに干渉しない範囲を回動可能である。
図11(a)の左引き曲げ加工(第1のモード)においては、ワークWを曲げ型クランプ20の右側にセットし、曲げ型クランプ20のクランプ部23bおよび22bを曲げ方向にセットする。さらに、プレッシャユニット30はクランプ部23bおよび22bに対して反時計方向にセットされ、プレッシャ31を第1の軸11に向かって右側にスライドさせるとともに第2の軸12に対して時計方向に搖動させ、プレッシャ31をクランプ部23bおよび22bの反時計方向の第1の位置P1にセットする。この状態でプレッシャ31はワークWと平行になり、ワークWを直交する方向から押えて把持できる。この後、引き曲げモータ41を駆動して引き曲げ機構40を使い、曲げ型クランプ20を上から見て左側(時計方向、第1の回転方向)に回転する。プレッシャユニット30は回転させず、プレッシャユニット30に対して曲げ型クランプ20を回転させる。曲げ加工開始後は、スライドホルダ91はワークWの曲げ反力で、オフセット角θ1が維持される。一方、プレッシャ31の位置は、第1の位置P1から曲げ加工されるワークWの動きに追従してスライドホルダ91のレール91aに沿ってスライドする。
図11(b)の右引き曲げ加工(第2のモード)においては、ワークWを曲げ型クランプ20の左側にセットし、曲げ型クランプ20のクランプ部23bおよび22bを曲げ方向にセットする。さらに、プレッシャユニット30はクランプ部23bおよび22bに対して時計方向にセットされ、プレッシャ31を第1の軸11に向かって左側にスライドさせるとともに第2の軸12に対して反時計方向に搖動させ、プレッシャ31をクランプ部23bおよび22bの時計方向の第2の位置P2にセットする。この状態でプレッシャ31はワークWと平行になり、ワークWを直交する方向から押えて把持できる。引き曲げモータ41を駆動して曲げ型クランプ20を上から見て右側(反時計方向、第2の方向)に回転する。プレッシャユニット30は回転させず、プレッシャユニット30に対して曲げ型クランプ20を回転させる。
図11(c)の左押し曲げ加工(第3のモード)においては、ワークWを曲げ型クランプ20の右側にセットし、曲げ型クランプ20のクランプ部23bおよび22bに対してプレッシャユニット30を曲げ方向である時計方向にセットする。さらに、プレッシャ31を第1の軸11に向かって左側にスライドさせるとともに第2の軸12に対して反時計方向に搖動させ、プレッシャ31をクランプ部23bおよび22bの時計方向の第2の位置P2にセットする。この状態でプレッシャ31はワークWと平行になり、押し曲げモータ51を駆動して押し曲げ機構50を使い、プレッシャユニット30を上から見て左側(時計方向)に回転する。プレッシャ31は、第1の軸11の周りに、初期状態の、ワークWの延びた方向(曲げ溝の接線方向)に並行になった状態を維持したまま回転し、ワークWに対して垂直な方向から力を加えて曲げ加工する。曲げ型クランプ20は回転させず、曲げ型クランプ20に対してプレッシャユニット30を回転させる。
図11(d)の右押し曲げ加工(第4のモード)においては、ワークWを曲げ型クランプ20の左側にセットし、曲げ型クランプ20のクランプ部23bおよび22bに対してプレッシャユニット30を曲げ方向である反時計方向にセットする。さらに、プレッシャ31を第1の軸11に向かって右側にスライドさせるとともに第2の軸12に対して時計方向に搖動させ、プレッシャ31をクランプ部23bおよび22bの反時計方向の第1の位置P1にセットする。この状態でプレッシャ31はワークWと平行になり、押し曲げモータ51を駆動して押し曲げ機構50を使い、プレッシャユニット30を上から見て右側(反時計方向)に回転する。プレッシャ31は、第1の軸11の周りに、初期状態の、ワークWの延びた方向(曲げ溝の接線方向)に並行になった状態を維持したまま反時計方向に回転し、ワークWに対して垂直な方向から力を加えて曲げ加工する。
加工ユニット10においては、曲げ型クランプ20の回転を引き曲げモータ41、プレッシャユニット30の回動を押し曲げモータ51で独立して選択的に行う。それとともに、直線状の溝32を含むプレッシャ31を、左右にスライド移動するとともに第2の軸12に対して搖動するスライドホルダ91で、クランプ22bおよび23bに対して異なる第1の位置P1と第2の位置P2とに移動する。これらの機構により、左右曲げと引き押し曲げの4パターンの混合曲げが可能となっている。
さらに、曲げ型クランプ20においては、曲げ軸11の方向に開閉する上下割り型22および23の外周の一箇所に左右曲げ用のクランプ溝25および26を左右対称に集約して設けている。このため、クランプ機構(クランプ部)23bおよび22bの曲げ軸11の径方向と回転方向の干渉を最小化できる。さらに、プレッシャ位置とクランプ位置とを、左右引き押し曲げの開始位置および終了位置を含め、曲げ軸11の周りのさまざまな角度に自由に回転移動させることもできる。
また、直線状のプレッシャ31をクランプ部23bおよび22bと近接してセットすることができるとともに、曲げ点27から遠いワークWの部分を直線状の溝で保持できるため、曲げ半径の小さな曲げ加工に対しても、ワークWに皺が発生しにくく、ワークが捩れにくいために加工精度を上げることができる。このため、プレッシャユニット30は、大きな曲げ角度に対応可能な左右引き押し曲げ共用のプレッシャユニット30であり、プレッシャユニット30を採用して曲げ型クランプ20と独立して回転可能にした加工ユニット10は、さまざまな曲げ加工が可能であり、大きな曲げ角にも対応できる。
図12および図13に移動ユニット(ターンユニット)80の概略構成を示している。図12(a)、(b)および(c)は、移動ユニット80を示し、図12(d)、(e)および(f)は加工ユニット10を含めて示している。図12(a)は図12(d)に示すように、移動ユニット80により加工ユニット10を曲げ型クランプ20の上方から見て左側(時計方向)に位置する左曲げの状態にセットした状態を示している(第1の動作)。図12(c)は図12(f)に示すように、移動ユニット80により加工ユニット10を右曲げの状態にセットした状態を示している(第1の動作)。図12(b)は図12(e)に示すように、移動ユニット(クイックターンユニット)80により加工ユニット10をいったん下方に移動して左曲げから右曲げ、あるいはその逆に切り替える(クイックターンする)状態を示している(第2の動作)。また、図13(a)は移動ユニット80の横方向の断面図であり、図13(b)は移動ユニット80の中心軸に沿った縦方向の断面図である。
移動ユニット80は、加工ユニット10を上下に移動しながら左右に搖動する第1の移動ユニットとしての機能を含む。移動ユニット80は、架台2に連結し固定される連結板(ベース)81と、連結板81に対して搖動軸82を中心に(支点として)左右に搖動するように支持される板状のホルダ83と、ホルダ83の長手方向(軸線方向)83cにスライドするスライド板49とを有する。スライド板49に加工ユニット10が取り付けられる。連結板81の下端81aは搖動軸82の中心を中心として円弧の一部をなすように凸状に湾曲している。ホルダ83は連結板81の下端81aに沿ってホルダ83が左右に搖動するようにガイドするガイド駒83aを含む。ガイド駒83aの上面83bは、連結板81の下端81aに接触する凹状のガイド面となっている。
移動ユニット80は、ホルダ83の中央の軸線(軸線方向)83cに沿った位置に回転可能に組み込まれ、偏心した位置にターンローラ84aが取り付けられた円盤状のターンプレート87と、ターンプレート87を回転駆動するターン軸84と、架台2に固定され、ターン軸84に接続された連結歯車86bを、ベルト86cにより連結歯車86bを介して駆動するターンモータ85とを含む。ターン軸84は、架台2の取付部2aに対し回転可能に取り付けられており、ターン軸84と連結したターンプレート87が回転する。ターンローラ84aは、中間部がホルダ83の軸線83cに沿って鉛直方向(垂直方向)に延びた第1のカム溝83xを介してスライド板49に形成された丸穴49xに挿入されている。したがって、ターンプレート87が回転すると、ターンローラ84aが第1のカム溝83xに沿って上下に動くことにより、ホルダ83が搖動軸82を中心に左右に搖動し、それと共に、ターンローラ84aが上下することによりスライド板49がホルダ83内を上下に動く。
ワークWは連結板81の軸線81cの上にワーク支持ユニット5により支持される。加工ユニット10は曲げ軸11がホルダ83およびスライド板49の軸線83cに一致するように支持される。したがって、図12(b)に示した状態からターンモータ85によりターン軸84が反時計方向に回転駆動されると、ターンプレート87に取り付けられたターンローラ84aが第1のカム溝83xに沿って上下に動き、スライド板49は搖動軸82を中心に反時計方向に旋回するとともに軸線83cに沿って上方に移動し、図12(a)に示した状態になる。
この結果、図12(d)に示すように、加工ユニット10は移動ユニット80による第1の動作により、スライド板49に取り付けられた加工ユニット10は、曲げ軸11が傾いた状態で上方に移動し、ワークWは、左曲げの初期位置にある上型23、下型22およびプレッシャ31が開いた状態の設定中心Cに到達する。従って、加工ユニット10はこの状態で上型23、下型22およびプレッシャ31を閉じてワークWを所定の位置で把持し、左曲げ加工を開始する。
左曲げ加工が済んだ後に、右曲げ加工にシフトする場合は、図12(a)に示した状態からターンモータ85によりターンプレート87を時計方向に回転駆動すると、移動ユニット80は図12(b)に示した状態になる。したがって、図12(e)に示すように、スライド板49に取り付けられた加工ユニット10は、移動ユニット80による第2の動作により、下方に移動し、ワークWは、設定中心Cから、加工ユニット10から上方に離れた退避位置Eに移動(相対的に移動)する。
さらにターンモータ85によりターン軸84を時計方向に回転駆動すると、ターンローラ84aが第1のカム溝83xに沿って動き、スライド板49は搖動軸82を中心に時計方向に旋回するとともに、軸線83cに沿って上方に移動し、図12(c)に示した状態になる。
この結果、図12(f)に示すように、スライド板49に取り付けられた加工ユニット10は、曲げ軸11が図12(d)とは逆の方向に傾いた状態で上方に移動し、ワークWは、右曲げの初期位置にある上型23、下型22およびプレッシャ31が開いた状態の設定中心Cに到達する。従って、加工ユニット10はこの状態で上型23、下型22およびプレッシャ31を閉じてワークWを所定の位置で把持し、右曲げ加工を開始する。
したがって、加工ユニット10は、図2に示したように、いったん下方に下がって左右逆方向に揺れ動き、上型23、下型22およびプレッシャ31の向きを変えて再び上昇することにより右曲げから左曲げ、またはその逆にワークWを曲げ加工できる。図11に示したように、右曲げおよび左曲げともに引き曲げでもよく、押し曲げでもよい。
搖動軸82の位置、ターンローラ84aの回動半径と回動角度は、加工ユニット10を上方に動かしたときに左右曲げの棒状部材(ワーク)Wの動きと加工ユニット10の給排経路16とを一致させるように選択できる。また、搖動軸82の位置、ターンローラ84aの回動半径と回動角度は、曲げ軸11の左右を切り替えるときに、加工ユニット10が、ワークWが逃げた位置Eに適当なクリアランスを持って迂回するために必要な軌道と昇降ストロークとが確保できるように選択できる。この際、ワークWの直線的な移動経路16に対して、クランプ一体型の曲げ型クランプ20のクランプ部分が干渉することがあれば、曲げ型クランプ20を第1の軸11の周りに回転することにより干渉を避けることができ、ワークWを直線的に給排できる。
なお、上記では、ターンモータ85が架台2に固定され、ベルト86cによりターン軸84を回転駆動する例を説明しているが、ターンモータ85がターン軸84に直接接続されていてもよい。さらに、ターンモータ85がホルダ83に固定され、連結歯車86aおよび86bなどを介してターンプレート87を回転駆動するように構成してもよく、これにより、移動ユニット80をロータリー曲げなどにも適用できる。また、加工ユニット10の上下動と左右の傾きの切り替えとを順番に行ってもよい。加工ユニット10が昇降するストロークや、ターン軌跡を適当に変えることも可能である。加工ユニット10がワークWから退避している間は、上下型23、22およびプレッシャ31を開き状態で適当な角度だけ曲げ軸11の周りに旋回し、曲げ型クランプ20のクランプ(突起)23bおよび22bがワークWに干渉しない位置にセット(回転退避)することが望ましい。
移動ユニット80は、さらに、図13(b)に示すように、スライド板49を上方に加圧(押圧)するバランス機構88aと、ホルダ83が左右に搖動した状態でホルダ83を連結板81に対しロックするロック機構88bとを備えていてもよい。
移動ユニット80で加工ユニット10を上下する代わりに、ワーク支持ユニット5に昇降機能を持たせてワークWを退避位置Eに移動してもよい。この場合は、単純に加工ユニット10の曲げ軸11を左右に傾ける構成としてもよい。
加工ユニット10の向きを切り替えるユニット(移動ユニット)としては、XY直交スライドなどの他の機構を備えていてもよい。この移動ユニット80は、アクチュエータおよび構成部品が少なく小型軽量化できる特徴と、パイプ軸固定で、曲げ点間のパイプ送り・ひねりとラップして、ターンプレート87の1回転未満の回転で左右曲げ位置に瞬時に切替えできる。このため、左右曲げ切替え時間を大幅に短縮できる。
図14に、加工装置1によりワークWを加工する製造方法(加工方法、加工装置の制御方法)の概要をフローチャートにより示している。ステップ101で、制御ユニット9のクランプ制御機能9cが型開閉機構60を制御して上型23、下型22およびプレッシャ31を設定中心Cを中心として3つの異なる方向に開いて、ワークWを開放する。さらに、加工位置制御ユニット9aがワーク支持ユニット5を制御してワークWを、加工する位置が加工ユニット10に到達するように移動する。また、曲げ方向が所望の方向を向くようにワークWの角度(回転角)も制御する。
ワークWが曲げ加工するポイントに到達すると、加工制御ユニット9bが、ステップ102で加工モードを判断し、第1のモードM1の左引き曲げ加工であればステップ103で第1のモード(左引き曲げ加工)に加工ユニット10をセットする。すなわち、上型23と、下型22と、プレッシャ31とを、ワークWの設定中心Cに対して3つの異なる方向に開いた状態で、加工ユニット10を傾けて、曲げ型クランプ20のクランプ部23bおよび22bを曲げ加工開始位置14に対して時計方向の左引き曲げ位置にセットする。それと同時に、または前後して、プレッシャユニット30を第1の軸11の周りに曲げ加工開始位置に対して反時計方向にオフセット角θ1だけ回転させる。さらに、スライドモータ97を駆動してプレッシャ31を右方向にスライドさせるとともに、ガイド91を時計方向に搖動させる。これによりプレッシャ31はクランプ部23bおよび22bの反時計方向の第1の位置P1にセットされ、ワークWを垂直な方向から押えることができる。その後、設定中心CにワークWを相対的に直線状に動かしてセットする。
ステップ109で、クランプ制御機能9cが上型23、下型22およびプレッシャ31を閉じてワークWをクランプし、セットされたモードで曲げ加工を行う。先に行った曲げ加工と異なるモードであれば、ステップ103において、加工制御ユニット9bが移動ユニット80を用いて上述したように加工ユニット10を上げ下げし、ワークWに対する加工ユニット10の向きを変える処理を行う。
曲げ型クランプ20のクランプ位置とプレッシャユニット30との左右曲げ位置切り替えは、加工ユニット10の下降後にプレッシャユニット30を次の曲げ開始位置に回動移動し、上昇端で曲げ型クランプ20のクランプ部(突起部)22bおよび23bを曲げ開始位置に回転移動するようにしてもよい。これらの左右曲げ、押し曲げ、引き曲げの切り替え処理は、ステップ101のワーク送りと並列に行うことも可能である。左右曲げ位置の切り替えはパイプチャック(ワーク支持ユニット)5側の昇降と加工ユニット10の曲げ軸11の左右移動で行ってもよいし、ワーク支持ユニット5側の昇降および回転により行ってもよい。
同様に、ステップ104で第2のモードM2の右引き曲げ加工であればステップ105で、ワークWを割り型クランプ20の左側にセットし、プレッシャ31をクランプ部23bおよび22bの時計方向の第2の位置P2にスライドさせる第2のモード(右引き曲げ加工)に加工ユニット10をセットし、ステップ109で、ワークWをクランプし、セットされたモードで曲げ加工を行う。ステップ106で第3のモードM3の左押し曲げ加工であればステップ107で、ワークWを割り型クランプ20の右側にセットし、プレッシャ31をクランプ部23bおよび22bの時計方向の第2の位置P2にスライドさせる第3のモード(左押し曲げ加工)に加工ユニット10をセットし、ステップ109で、ワークWをクランプしてセットされたモードで曲げ加工を行う。これらのモードでなければ、ステップ108で、ワークWを割り型クランプ20の左側にセットし、プレッシャ31をクランプ23bおよび22bの反時計方向の第1の位置P1にスライドさせる第4のモード(右押し曲げ加工)に加工ユニット10をセットし、ステップ109で、ワークWをクランプしてセットされたモードで曲げ加工を行う。
曲げ加工では、曲げ型クランプ20の上下型23および22とプレッシャ31とを閉じた状態で、上下型23および22の一方のクランプ溝部25または26でワークWを把持する。上下型23および22を回転する引き曲げの場合は引き曲げモータ41により歯車42aおよび42bを介して曲げ中空軸45とともに上下型23および22を回転させる。ハウジング55に支持されたプレッシャユニット30を回動する押し曲げの場合は、押し曲げモータ51により歯車52aおよび52bを介してプレッシャユニット30を曲げ型クランプ20の周りを回動させて、ワークWを上下型23および22に形成した曲げ溝24に沿わせて曲げ加工する。
ステップ110で曲げ加工が終了したか否かを判断し、次の曲げ加工があればステップ101に戻って処理を繰り返す。この製造方法(制御方法、加工方法)を制御する制御ユニット9はCPUおよびメモリを備えたコンピュータ資源で実現でき、加工方法(制御方法)はプログラム(プログラム製品)として適当な記録媒体に記録して提供できる。
この方法により、パイプなどの棒状のワークWの後端をパイプ送りユニット(ワーク支持ユニット)5でチャックし、ワークWの先端側の第1の曲げ点からチャック側の最終曲げ点に向かってパイプ送りユニット5で曲げ送りとひねりを行い、さまざまな形状にワークWを加工できる。
ワークWの軸方向の送りは、加工ユニット10と左右曲げ位置を切替える切替ユニット(移動ユニット)80とを送りユニットに搭載して送り、パイプひねりチャック(パイプ送りユニット)側の機構を固定した形態としてもよい。
この加工装置1においては、左右曲げ方向および引き押し曲げ方式を混合した(組み合わせた)連続曲げ加工が行える。このため、曲げ加工用の制御プログラム(加工データ)は、曲げ箇所毎に干渉が無い曲げ方向と曲げ方式とを選択指定して生成できる。たとえば、一般的な一方向一方式の曲げ制御のプログラム(データ)に対し、曲げ箇所毎の送り・ひねり・曲げの加工データテーブルに曲げ方向と曲げ方式の識別フラグを追加してもよい。選択指定された識別フラグに対応した制御プログラムにより、加工装置1では、曲げ型クランプ20とプレッシャユニット30とを曲げ開始位置へ回転移動し、必要であれば左右曲げ位置の切り替えを移動ユニット80により行う。それ以降の曲げ動作は一般的な一方向一方式の曲げ動作制御と同様でよい。曲げ方向および曲げ方式の切替え動作は、曲げ点間の送り・ひねり動作とラップして自動で連続的に行うように制御できる。
また、曲げの円弧長分のパイプ送りのために、制御ユニット9は、曲げ半径と曲げ角度に応じた円弧長の自動計算機能を備えていてもよい。引き曲げ時は曲げ回転と同期して送り、押し曲げ時は曲げ点間の直管長分の送りに加えて曲げ加工の前に送るようにワークWの送りを制御できる。
上記の加工ユニット10は、クランプ一体曲げ型のワークWのクランプ中心Cを中心とした平衡開閉により、ワークWの径に必要な隙間を加えた最小の開閉ストロークで送り、ひねり、曲げ戻しをラップ動作で行える。このため、高速曲げが可能である。さらに、上下曲げ型(上型および下型)23および22とプレッシャ31とを型開閉機構60およびプレッシャ搖動機構70を用い1モータで三方向に開閉する。このような省エネ開閉手段を採用することにより、小型軽量で種々の曲げ加工を高速で実行できる加工ユニット10を提供できる。
さらに、上述した加工装置1は、左右曲げ共通位置でワークWの軸(たとえばパイプ軸)に直交する方向の短距離で直線的な給排が可能である。加工装置1は、クランプ一体上下曲げ型20とプレッシャ31を、加工対象のパイプ軸Cを中心に三方向に開閉する加工ユニット(曲げユニット)10を備えており、上型23とプレッシャ31との開き隙間をパイプ軸中心(設定中心)Cを結ぶ直線の給排経路16上でパイプ外径に干渉しない開き隙間隔にして、その直線給排経路16が給排ローダー(パイプ送りユニット)5の給排方向と一致するように加工ユニット10の曲げ軸11を傾けて配置している。また、給排時に曲げ型クランプ20のクランプ突起部(クランプ部)23bおよび22bをパイプ給排経路16に干渉しない位置に回転退避させる。これにより、パイプ軸に直交方向の直線経路給排とパイプ軸固定の一方向送りとを可能にし、左右曲げの場合は移動ユニット(クイックターンユニット)80により、加工ユニット10の曲げ型クランプ20をワークWの下を迂回して、左右曲げ共通のパイプ軸および給排経路16に切り替える。このような構成により、左右曲げ共通位置の直線経路給排とパイプ軸固定(ワークWの設定中心C固定)の一方向送りを可能にしている。したがって、パイプ軸固定で送り、ひねり、曲げ戻し、左右曲げ位置切替えのラップ動作を可能にした高速パイプ曲げ加工装置を提供できる。
図15に、加工装置1により曲げ加工したワークWの一例を示す。このワークWは、両端にコネクタ(継手)CTが接続されているタイプのパイプであり、ワーク支持ユニット5のホルダ5aがこのコネクタCT部分を把持した状態で加工ユニット10が曲げ加工を行う。コネクタCTがないワークWであっても、同様に加工装置1により曲げ加工できる。ワークWは、曲げ始めB1を左引き曲げ加工され、破線で示した中間部にも適当に曲げ加工が施された後、曲げ終わりBnを右押し曲げ加工されている。したがって、曲げ始めB1および曲げ終わりBnからそれぞれの先端のコネクタCTまでのストレート長が、クランプ部23bおよび22bのクランプ長L2程度に短く加工された曲げ加工製品である。
この加工装置1の曲げ型クランプ20においては、上下割り型22および23の外周の一箇所に左右曲げ用のクランプ溝25および26を左右対称に集約して設けている。このため、クランプ部23bおよび22bの曲げ軸11の径方向と回転方向の干渉を最小化できる。さらに、プレッシャ31の位置とクランプ部23bおよび22bの位置とを入れ替え可能であり、プレッシャ31とクランプ部23bおよび22bとによりワークWを保持した状態で、第1の回転ユニット40によりクランプ部23bおよび22bをプレッシャ31と反対方向に回転させるか、または第2の回転ユニット50によりプレッシャ31をクランプ部23bおよび22bと反対方向に回転させることにより、直線状のプレッシャ31を使用して左右引き押し曲げが可能である。
したがって、ワークWの曲げ始めB1は、図11(a)に示すように、ワークWの一方の先端(前端)のコネクタCTの近傍をクランプ部23bおよび22bで把持した状態で左引き曲げの初期状態にセットするとともに、プレッシャ31を第1の位置P1にセットし、第1の回転ユニット40により、クランプ部23bおよび22bを時計方向に回転する。これにより、ワークWの先端のストレート長をクランプ長L2程度に短くした左引き曲げ加工を行える。ワークWの曲げ始めB1を右引き曲げから始めるときは、図11(b)に示すように、クランプ部23bおよび22bを右引き曲げの初期状態にセットするとともに、プレッシャ31を第2の位置P2にセットし、第1の回転ユニット40により、クランプ部23bおよび22bを反時計方向に回転すればよい。
一方、ワークWの曲げ終わりBnは、ワーク支持ユニット5のホルダ5aにより支持したワークWのコネクタCTが、クランプ部23bおよび22bに可能な限り接近した状態で、図11(d)に示すように、クランプ部23bおよび22bでワークWの末端(後端、他方の先端)を把持して右押し曲げの初期状態にセットするとともに、プレッシャ31を第2の位置P2にセットし、第2の回転ユニット50によりプレッシャ31を反時計方向に回転する。これにより、ワークWの末端のストレート長をクランプ長L2程度に短くした右押し曲げ加工を行える。ワークWの曲げ終わりBnを左押し曲げ加工で終了する場合は、図11(c)に示すように、クランプ部23bおよび22bを左押し曲げの初期状態にセットするとともに、プレッシャ31を第2の位置P2にセットし、第2の回転ユニット50により、プレッシャ31を時計方向に回転すればよい。
このように、ワークWの曲げ始めB1をクランプ23bおよび22bでワークWの先端を保持したまま引き曲げで曲げ加工を開始し、曲げ終わりBnをクランプ23bおよび22bでワークWの末端を保持した状態でプレッシャ31により押し曲げ加工することにより、ワークWの両端のストレート長をクランプ長L2程度に短くした製品を、一台の加工ユニット10により、途中で持ち替え等を行うことなく製造できる。曲げ開始B1および曲げ終わりBnの曲げ方向は、左右のいずれでも自由に組み合わせることができる。
図16に、クランプ駒ユニットを含むプレッシャの概略構成を拡大して平面図により示している。図17にクランプ駒ユニットを含むプレッシャを抜き出して断面図により示している。プレッシャユニット30は、プレッシャ31の直線状の溝32の側に配置され、ワークWをクランプするクランプ駒ユニット35を含む。本実施の加工装置1においては、プレッシャユニット30は、クランプ駒ユニット35を2つ含み、ワークWの軸方向に沿ったプレッシャ31の両端付近に1つずつ配置されている。クランプ駒ユニット35は、ワークWをクランプする半円状の溝36aを含む上下一対のクランプ駒36と、上下一対のクランプ駒36の各クランプ駒36を、プレッシャ31に対してワークWの挿入方向に対して回転可能に支持する一対の支持ピン37と、上下一対のクランプ駒36をプレッシャ31に対してワークWの挿入方向に付勢する弾性部材38とを含む。弾性部材38は、上下一対のクランプ駒36を共通で付勢するように構成されており、バネ、ゴムまたはクッション材などを用いることができる。
上下一対のクランプ駒36の曲げ溝36aは、ワークWをクランプするために搖動するのに必要な分、プレッシャ31の曲げ溝32よりもワークWの中心側(曲げの中心方向)に若干突出するように形成されている。プレッシャユニット30を閉じると、プレッシャ31の締め力でクランプ駒36の溝36aが曲げの外側方向に押されることにより、支持ピン37を中心にそれぞれのクランプ駒36が、弾性部材38により付勢される力に対抗して曲げの外側方向に搖動し、クランプ間口L3が狭まる。これにより、上下一対のクランプ駒36はワークWの直径方向を上下方向にクランプ(セルフクランプ)する。
クランプ駒36は、半円状の溝36aの周囲の一部に沿って形成されたスリット溝39aを含み、スリット溝39aの中心側(ワークW側)にクランプ部(把持部)39が形成されている。曲げ点27に近い側のクランプ駒ユニット35のクランプ駒36は、プレッシャ31よりも曲げ型クランプ20の側にわずかに突出しているため、曲げ型クランプ20の外周部で押されることにより、さらに搖動して間口L3が狭まる。したがって、スリット溝39aを設けることにより、ワークWに過大な把持力がかかりワークを潰したり、傷つけたりすることを抑制できる。さらに、クランプ部39は、ワークWの径バラツキを吸収する締め代を確保する機能も備えている。
図18に、異なるクランプ駒ユニットを含むプレッシャの概略構成を断面図により示している。図19に、このクランプ駒ユニットを含むプレッシャがワークをクランプした状態を側面図により示している。
このクランプ駒ユニット35は、ワークWをクランプする半円状の溝36aを含むクランプ駒36と、クランプ駒36をプレッシャ31に対してワークWの挿入方向に対して前後にスライド可能に支持する上下一対の支持ピン37と、上下一対の支持ピン37がスライドするスリット37aと、クランプ駒36をプレッシャ31に対して挿入方向に付勢する上下一対の弾性部材38とを含む。
このクランプ駒ユニット35は、図17に示したクランプ駒ユニット35と異なり、クランプ駒36の搖動でクランプ間口L3を狭めるのではなく、ワークWの径よりも狭いクランプ間口L3で形成したクランプ部39でワークWを把持する。したがって、クランプ駒36の曲げ溝36aはワークW側に突出させず、バネ38はワークWが把持部39に滑り込む力よりわずかに大きなバネ力のものを使用している。クランプ駒ユニット35は、クランプ駒36が曲げ加工により曲げ型クランプ20の外周部で押されると、上下一対の支持ピン37が、スリット37a内を相対的にスライドすることにより、プレッシャ31の内側(曲げの外側方向)に移動する。これにより、ワークWがつぶれたり、傷ついたりすることを抑制できる。クランプ駒ユニット35の構成はこれらに限定されず、ワークWを潰したり傷つけたりしなければ他のセルフクランプ機構であってよい。また、プレッシャ31に配置するクランプ駒ユニット35の数は、1つでもよく、3つ以上であってもよい。
一般的に、引き曲げの場合は、曲げ箇所の両側をパイプチャック(ワーク支持ユニット)と曲げ型クランプ20とで拘束して曲げ加工できるが、押し曲げの場合は曲げ箇所の先はパイプクランプ機能がなく片側非拘束曲げになる。このため、パイプ材(ワーク)の特性によっては、コイル材から直管矯正されたパイプ周方向の物性及び寸法バラツキ等により、押し曲げによりパイプが軸回転方向に捻れ、ひねり角度のバラツキが大きくなる場合がある。これに対し、この加工ユニット10においては、スライドプレッシャ31に設けたクランプ駒ユニット35でワークWをセルフクランプして、曲げ型クランプ20とにより両側拘束で曲げ加工することにより、押し曲げによる捻れを防止できる。さらに、プレッシャ31の長さ方向の両側にセルフクランプ機構であるクランプ駒ユニット35を内蔵することで、ワークWのストレート長制約を拡大することなく左右両方向の押し曲げ時のパイプ捻れによる曲げ角度(ひねり角度、ワークの傾斜角度)のバラツキを抑制できる。したがって、ワークWの特性(状態)のよらず、さらに精度のよい曲げ加工ができる。
図20に、異なる円筒カムの概要を示している。図20(a)は平面図、図20(b)は側面図、図20(c)は異なる方向から見た側面図である。この円筒カム75においては、傾斜面75aおよび外筒部75bに、傾斜面75aおよび外筒部75bの一部をカットした形状の切欠き部75cを含む。切欠き部75cは、傾斜面75aおよび外筒部75bの外周に、基準線14に対してオフセット角θ1に対応する位置に4か所形成されている。カムフォロア73が、この切欠き部75cに沿って上下動することにより、曲げ型クランプが閉じる際にプレッシャ31の閉じるタイミングの調整と、プレッシャ31の閉じ力の低減とをおこなうことができる。特に、クランプ駒ユニット35を含むプレッシャ31の場合には、プレッシャ31を閉じる際に閉じ力とワークWを曲げ型クランプ20の中心方向に押す力とが発生するため、これらの力を低減するために、切欠き部75cを傾斜面75aおよび外筒部75bに設けることが望ましい。尚、切欠き部75cの4か所は、図20(a)における隣接する上下の2か所を連続させた左右2か所の切欠きとしてもよい。
以上に説明したように、本発明の曲げ装置(加工装置)1は、曲げ干渉が少ない一対の曲げ型クランプ手段20とプレッシャ手段30の簡素な構成で、左右引き押し曲げの4モード混合連続曲げによる干渉低減と、両端末および曲げ間ストレート長の短い曲げが可能である。さらに、左右曲げ位置の入れ替えを行うクイックターン手段80によりパイプ軸固定による曲げと、最小のクランプ開閉ストロークで送り、ひねり、曲げ戻しのラップ動作を可能とした高速曲げとによる生産性の大幅向上、および曲げ形状制約の少ない曲げ加工を提供できる。
また、左右押し引き曲げに直線スライドプレッシャ31を用いることで、例えばローラータイプのプレッシャに比べ曲げ半径の小さい曲げにおけるワークの扁平及びシワの成形を改善できる。さらに、セルフクランプ内蔵スライドプレッシャにより、直線状のプレッシャに起因するストレート長の制約を拡大することなく押し曲げのパイプ捻れバラツキを低減できる等、曲げ品質を向上できる。また、左右引き押し曲げを一対の曲げ型クランプ手段20とプレッシャ手段30で可能にし、それらを一つのモータで開閉する簡素な構造により、小型軽量化した曲げユニットを安価に提供できる。
なお、上記の加工装置1は一例であり、曲げユニットである加工ユニット10を固定してパイプ側(ワーク側)でひねりと送りを行う装置の代わりに、加工ユニット10の側をひねるようにしてもよく、ロータリー曲げ装置や、曲げユニットを可搬するロボット曲げ装置に本例の加工ユニット10を組み込んでもよい。加工ユニット10をロボットで可搬しロボット側で送りとひねりを行う形態の場合、加工ユニット10は簡易な構成で軽量化できるため可搬重量の軽減と、短ストローク開閉とラップ動作による高速曲げに加え、ロボット曲げで干渉が多く動作時間の長いひねり動作範囲を左右曲げにより半分にできる。このため、ロボット曲げを高速で行うことが可能になる。
以上に説明したように、本発明の加工ユニットおよび加工装置は、上記の実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。