以下、電力変換装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態における電力変換装置1-1の回路構成図である。電力変換装置1-1は、電力変換回路11-1とそのコントローラ(制御手段)12-1とを備える。
電力変換回路11-1は、第1及び第2の半導体スイッチ(以下、単にスイッチと称する)S1,S2と、第1及び第2の平滑コンデンサ(以下、単にコンデンサと称する)C1,C2と、第1及び第2のインダクタL1,L2と、第3のコンデンサC3と、ローパスフィルタLPFと、ハイパスフィルタHPFとを含む。第1及び第2のスイッチS1,S2は、いずれもN型チャネルのMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)を使用する。
電力変換回路11-1は、第1のスイッチS1のソース端子を第2のスイッチS2のドレイン端子に接続する。また、第1のコンデンサC1と第2のコンデンサC2とを直列に接続する。さらに、第1のコンデンサC1の前記第2のコンデンサC2とは接続されていない側の端子を前記第1のスイッチのドレイン端子に接続し、第2のコンデンサC2の前記第1のコンデンサC1とは接続されていない側の端子を前記第2のスイッチのソース端子に接続する。
電力変換回路11-1は、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2との接続点と第1のコンデンサC1と第2のコンデンサC2との接続点との間を、交流電源E,ローパスフィルタLPF及び第1のインダクタL1を順に直列接続してなる第1の直列回路111と、第2のインダクタL2,第3のコンデンサC3及び負荷Mを順に直列接続してなる第2の直列回路112との並列回路で接続する。また、電力変換回路11-1は、交流電源EとローパスフィルタLPFとをバイパスする経路113を備え、この経路113にハイパスフィルタHPFを介挿する。
電力変換装置1-1は、電力変換回路11-1の回路電流Isを検出する回路電流検出ユニット(回路電流検出手段)13と、電力変換回路11-1の電源電圧Vinを検出する電源電圧検出ユニット(電源電圧検出手段)14とを含む。回路電流検出ユニット13は、上記並列回路を流れる回路電流Isを検出する。電源電圧検出ユニット14は、交流電源Eに対して並列に接続されており、交流電源Eの電圧Vinを検出する。
回路電流検出ユニット13は、検出した回路電流Isをコントローラ12-1に与える。電源電圧検出ユニット14も、検出した電源電圧Vinをコントローラ12-1に与える。
コントローラ12-1は、回路電流Isと電源電圧Vinとに基づいて、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2とをスイッチング動作させるための第1及び第2のパルス信号P1,P2を生成する。そしてコントローラ12-1は、第1のパルス信号P1を第1のスイッチS1のゲート端子に供給し、第2のパルス信号P2を第2のスイッチS2のゲート端子に供給する。
第1のスイッチS1は、ゲート端子に第1のパルス信号P1が供給されている間、導通する。第2のスイッチS2は、ゲート端子に第2のパルス信号P2が供給されている間、導通する。
このような回路構成において、本実施形態では100V[ボルト]で50Hz[ヘルツ]の商用電源を交流電源Eとして使用する。そして今、負荷Mに200W[ワット]の電力を供給する場合を想定する。この場合、電圧は100Vであるから、200Wの電力を得るためには2A[アンペア]の電流が必要となる。つまり、最終的にローパスフィルタLPFを通過して交流電源Eに流れ込む電流が2Aであれば、200Wの電力を負荷Mに供給できる。
ローパスフィルタLPFを通過する電流は、50Hzの低周波成分の電流である。一方、ハイパスフィルタHPFを通過する電流は、例えば100KHzの高周波成分の電流である。つまり回路電流Isは、低周波成分(50Hz)の電流と、高周波成分(100KHz)の電流とが混在する。かくして電力変換回路11の全体では、これら2種類の周波数が異なる交流が混在して動作する。
高周波成分(100KHz)の電流は、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2とを交互に高速で開閉させることによって得られる。そのためには、回路電流Isのピークを規定する正負一対の正弦波状のエンベロープを生成し、これらエンベロープの間で電流の向きが切り替わるように、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2とを交互にスイッチングさせればよい。この手順について、図2を用いて説明する。
図2の波形Waは、電源電圧Vinを示す。交流電源Eの場合、電源電圧Vinは、正弦波状に変化する。交流電源Eが100Vの商用電源の場合、電源電圧検出ユニット14で検出される電源電圧Vinの波形は、波形Waに示すように正のピーク値が141Vで、負のピーク値が−141Vの正弦波となる。そこで本実施形態では、電源電圧Vinの波形を基に正弦波状のエンベロープを作成する。そして、この電源電圧と等しい周期の正弦波状で2Aの電流を交流電源Eに流す。
図2の波形Wbは、電源電圧と等しい周期の正弦波状で2Aの電流波形を示す。図示するように、この波形の正のピーク値は2.82Aとなり、負のピーク値は−2.82Aとなる。すなわち、電源電圧Vinに対して係数k=0.02を乗算した値が目標となる電流値Itとなる。
図2の波形Wcは、回路電流Isの向きが切り替わる基準として必要な正弦波状のエンベロープ(電流ピーク目標値)を示す。エンベロープには、正の回路電流Isの向きが切り替わる基準を決定する正のエンベロープ+eと、負の回路電流Isの向きが切り替わる基準を決定する負のエンベロープ−eとがある。正のエンベロープ+eは、目標となる電流値Itに対して幅dを加算することで生成される。負のエンベロープ−eは、目標となる電流値Itに対して幅dを減算することで生成される。幅dは、正(負)のエンベロープ+e(−e)の負(正)のピーク値に対して若干のマージンを加えた値とする。その理由は、電流値が負(正)のピークのときに正(負)側にエンベロープを残すためである。
波形Wbは、正のピーク値が2.82Aであり、負のピーク値が−2.82Aである。目標となる電流値Itを波形Wbとすると、幅dは例えば“3”とする。そうすることにより、電流が負側のピークのとき、正のエンベロープ+eは0.18(=−2.82+3)となって、正の領域にエンベロープ+eを維持できる。同様に、電流が正側のピークのとき、負のエンベロープ−eは−0.18(=2.82−3)となって、負の領域にエンベロープ−eを維持できる。
コントローラ12-1は、回路電流Isが正のエンベロープ+eに達したときと負のエンベロープ−eに達したときに、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2との開閉が逆になるように、第1のパルス信号P1と第2のパルス信号P2とを生成する。そうすると、回路電流Isは、波形Wdに示すように、電源電圧と等しい周期の低周波成分(50Hz)に、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2との開閉により生じる高周波成分(100KHz)が混在したものとなる。なお、高周波成分の周波数は、固定ではなく、あくまで正負のエンベロープ+e,−eによって決まる。
電力変換回路11-1には、低周波成分と高周波成分とが混在した回路電流Isが流れる。回路電流Isは、第2のインダクタL2及び第3のコンデンサC3を経由して負荷Mに流れる。図3の波形Weは、負荷Mに流れ込む電流、いわゆる負荷電流Is2を示す。第3のコンデンサの容量を、100kHzの高周波成分は通すが50Hzの低周波成分は通さない比較的小さい容量に設定する。そうすると、負荷電流Is2は、波形Weに示すように、低周波成分によるうねりが除去されたものとなる。かくして、負荷Mには、常に一定の高周波電力が印加される。
図3において、波形Wfは、第1の直列回路111を流れる回路電流Is1を示す。回路電流Is1は、50Hzの低周波成分と100kHzの高周波成分とが混在する。回路電流Is1は、ローパスフィルタLPF側とハイパスフィルタHPF側とに分離する。波形Wgは、ローパスフィルタLPFを流れる回路電流Is1Lを示す。波形Whは、ハイパスフィルタHPFを流れる回路電流Is1Hを示す。図示すように、ローパスフィルタLPFは、50Hzの低周波成分のみを通す。したがって、交流電源Eに流れ込む電流は、目標となる電流値It=2Aとなる。
なお、本実施形態では、第3のキャパシタC3の特性を、50Hzの低周波成分は通さないが100kHzの高周波成分は通す容量のものとした。しかし、第3のキャパシタC3の特性は、これに限定されるものではない。例えば、負荷Mがヒータのように加熱されるものであった場合、どのような周波数で駆動しても構わない。このため、第3のキャパシタC3は、低周波成分がある程度透過する容量に設定することも可能である。
図4は、コントローラ12-1の具体的構成を示すブロック図である。コントローラ12-1は、電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124及びラッチ回路125を備える。
電流目標値決定部121は、電源電圧検出ユニット14で検出される電源電圧Vinの信号を入力とし、この信号に対して所定の係数kを乗算して、目標となる電流値Itを決定する。そして電流目標値決定部121は、この電流値Itに相当する信号をエンベロープ生成部122に供給する(決定手段)。
エンベロープ生成部122は、電流値Itに相当する信号に幅dを加算して正のエンベロープ+eを生成する。またエンベロープ生成部122は、電流値Itに相当する信号から幅dを減算して負のエンベロープ−eを生成する。そしてエンベロープ生成部122は、正のエンベロープ+eに相当する信号を上判定部123の第1の入力端子に供給し、負のエンベロープ−eに相当する信号を下判定部124の第1の入力端子に供給する(エンベロープ生成手段)。
上判定部123及び下判定部124の各第2の入力端子には、回路電流検出ユニット13で検出される回路電流Isの信号がそれぞれ供給される。上判定部123は、エンベロープ間、つまりは正のエンベロープ+eと負のエンベロープ−eとの間を上昇する回路電流Isが正のエンベロープ+eに接したか否かを判定するもので、接したことを検知する毎にトリガ信号Tr1をラッチ回路125の第1の入力端子に供給する。下判定部124は、上記エンベロープ間を下降する回路電流Isが負のエンベロープ−eに接したか否かを判定するもので、接したことを検知する毎にトリガ信号Tr2をラッチ回路125の第2の入力端子に供給する(判定手段)。
ラッチ回路125は、第1の入力端子にトリガ信号Tr1が入力された場合に、第1のパルス信号P1を“0”、第2のパルス信号P2を“1”の状態に保持する。また、ラッチ回路125は、第2の入力端子にトリガ信号Tr2が入力された場合に、第1のパルス信号P1を“1”、第2のパルス信号P2を“0”の状態に保持する(パルス生成手段)。
図5は、コントローラ12-1の動作を説明するための信号波形図である。波形Wiは、エンベロープ生成部122で生成される正のエンベロープ+e及び負のエンベロープ−eと、回路電流Isとの関係を拡大して示す。波形Wjは、上判定部123から出力されるトリガ信号Tr1を示す。波形Wkは、下判定部124から出力されるトリガ信号Tr2を示す。波形Wlは、ラッチ回路125から出力される第1のパルス信号P1を示す。波形Wmは、ラッチ回路125から出力される第2のパルス信号P2を示す。
図5に示すように、エンベロープ間を変動する回路電流Isが正のエンベロープ+eに接すると(時点t1,t3,t5,t7,t9)、第1のトリガ信号Tr1が出力される。そうすると、第1のパルス信号P1が“0”となり、第2のパルス信号P2が“1”となって、その状態が保持される。その結果、第2のスイッチS2が閉塞し、第1のスイッチS1が開放するので、回路電流Isは減少に転じる。
その後、回路電流Isが負のエンベロープ−eに接すると(時点t2,t4,t6,t8)、第2のトリガ信号Tr2が出力される。そうすると、第1のパルス信号P1が“1”となり、第2のパルス信号P2が“0”となって、その状態が保持される。その結果、第1のスイッチS1が閉塞し、第2のスイッチS2が開放するので、回路電流Isは上昇に転じる。
かくして回路電流Isは、エンベロープ間を折り返して上昇と下降を繰り返す。そして、回路電流Isが折返す都度、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2とが交互に切り替わる。その結果、交流電源Eの低周波成分(50Hz)に高周波成分((100KHz)が混在した回路電流Isが電力変換回路11-1に流れる。そして負荷Mには、第3のコンデンサC3を通過した高周波成分のみの電流が供給される。一方、交流電源Eには、ローパスフィルタLPFを通過した低周波成分のみが流れる。したがって、外部に高周波成分が漏れることはない。
このように第1の実施形態によれば、簡単な回路構成の電力変換回路11-1と、簡素な機能構成のコントローラ12-1とによって、電源電圧波形と同じ正弦波状の電流波形を生成することができる。電源電圧波形と同じ正弦波状の電流波形を生成できるということは、電流高調波の抑制機能が備わっていることを意味する。つまり、低コストで電流高調波の抑制機能が備わった電力変換装置1を提供できるので、産業上、大変有益である。
また、負荷Mを駆動するインバータとしてみた場合、たった1段で交流電源Eから高周波交流への変換が可能であり、しかも、その高周波交流への幅が電源電圧の低周波位相にも拘らず常に一定とすることができる。このように、1段で変換できることは極めて高効率の電力変換ができることを意味しており、産業的な効果は絶大である。しかも、負荷Mに対して一定の電力を供給可能であるから、回路が簡素であっても安定した動作を実現できる。
その上、本実施形態によれば、負荷Mを流れる電流を高周波成分のみとすることができる。したがって、低周波成分を含まない均一な高周波駆動をしたい場合に、大変効率的である。しかも、第1のインダクタL1側を流れる電流からは高周波成分が低減できる。したがって、ローパスフィルタLPFやハイパスフィルタHPFの負担を軽減できる。具体的には、ローパスフィルタLPFを構成するコイルのインダクタンス値を小さくできる上、ハイパスフィルタHPFを構成するコンデンサの容量を小さくできるので、ユニットの小型化,低コスト化が可能となる。
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、第1のパルス信号P1と第2のパルス信号P2とが同時に切り替わるため、切替の瞬間に第1のスイッチS1と第2のスイッチS2とが同時にオンする危険性がある。この危険性を回避するために、第2の実施形態は、第1のパルス信号P1と第2のパルス信号P2とを切り替える際に遅延時間(デッドタイム)Δtを設けて、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2とが同時にオンしないようにする。
図6は、第2の実施形態における電力変換装置1-2のコントローラ12-2の具体的構成を示すブロック図である。第1の実施形態のコントローラ12-1と共通する部分には同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。また、電力変換回路11-2については、第1の実施形態と同一なので、ここでの説明は省略する。
コントローラ12-2は、電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124及びラッチ回路125に加えて、デッドタイム生成部126を備える。デッドタイム生成部126は、ラッチ回路125から出力されるパルス信号P0を入力とする。そしてデッドタイム生成部126は、このパルス信号P0に応じて、第1のパルス信号P1と第2のパルス信号P2とを生成し、第1,第2のスイッチS1,S2にそれぞれ供給する。
図7は、デッドタイム生成部126の動作を説明するための信号波形図である。波形Wpは、上判定部123から出力されるトリガ信号Tr1を示す。波形Wqは、下判定部124から出力されるトリガ信号Tr2を示す。波形Wrは、ラッチ回路125から出力されるパルス信号P0を示す。波形Wsは、デッドタイム生成部126から出力される第1のパルス信号P1を示す。波形Wtは、デッドタイム生成部126から出力される第2のパルス信号P2を示す。
図7に示すように、ラッチ回路125は、トリガ信号Tr2が入力されると、パルス信号P0を“1”としてその状態を保持する。またラッチ回路125は、トリガ信号Tr1が入力されると、パルス信号P0を“0”としてその状態を保持する。
デッドタイム生成部126は、パルス信号P0が“1”になると、第2のパルス信号P2を“0”としてその状態を保持する。そしてパルス信号P2を“0”にしてから所定の遅延時間Δtが経過すると、デッドタイム生成部126は、第1のパルス信号P1を“1”にしてその状態を保持する。また、デッドタイム生成部126は、パルス信号P0が“0”になると、第1のパルス信号P1を“0”にしてその状態を保持する。そしてパルス信号P0を“0”にしてから所定の遅延時間Δtが経過すると、デッドタイム生成部126は、第2のパルス信号P2を“1”としてその状態を保持する。ここに、パルス生成手段は、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2とが同時に切り替わらないように、第1のスイッチS1に対するパルス信号P1と第2のスイッチS2に対するパルス信号P2との出力タイミングをずらす遅延手段を含む。
このように第2の実施形態によれば、デッドタイム生成部126の作用により、第1のパルス信号P1と第2のパルス信号P2とが同時に切り替わることはない。したがって、第1のスイッチS1と第2のスイッチS2とが同時にオンする危険性を回避できる。その他、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を奏することは言うまでもない。
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態における電力変換装置1-3の回路構成図である。電力変換装置1-3は、電力変換回路11-3とそのコントローラ12-3とを備える。電力変換回路11-3は、第1の電流検出ユニット13aと第2の電流検出ユニット13bとを含む。第1の電流検出ユニット13aは、第1の直列回路111を流れる回路電流Is1を検出する(第1の回路電流検出手段)。第2の電流検出ユニット13bは、第2の直列回路112を流れる回路電流Is2を検出する(第2の回路電流検出手段)。回路電流Is2は、負荷Mを流れるので、負荷電流Is2と称する。第1の電流検出ユニット13aと第2の電流検出ユニット13bとは、それぞれ検出した回路電流Is1及び負荷電流Is2をコントローラ12-3に与える。
コントローラ12-3は、回路電流Is1及び負荷電流Is2と、電源電圧Vinとに基づいて、第1及び第2のパルス信号P1,P2を生成する。そしてコントローラ12-3は、第1のパルス信号P1を第1のスイッチS1に供給し、第2のパルス信号P2を第2のスイッチS2に供給する。
図9は、コントローラ12-3の具体的構成を示すブロック図である。コントローラ12-3は、電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124、ラッチ回路125及びデッドタイム生成部126に加えて、電流加算部127を備える。電流加算部127は、回路電流Is1と負荷電流Is2とを加算する(電流加算手段)。そして電流加算部127は、加算結果である回路電流値Is1+Is2を回路電流Isとして、上判定部123と下判定部124とに与える。
電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124、ラッチ回路125及びデッドタイム生成部126の動作は、第2の実施形態と同一である。したがって、第3の実施形態においても、第2の実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
ここに、回路電流検出手段は、第1の直列回路111を流れる回路電流Is1を検出する第1の回路電流検出手段と、第2の直列回路112を流れる回路電流(負荷電流)Is2を検出する第2の回路電流検出手段とからなる。コントローラ12-3は、第1の回路電流検出手段により検出される回路電流Is1と第2の回路電流検出手段により検出される回路電流(負荷電流)Is2とを加算する電流加算手段を含む。
因みに、第2の実施形態は、第1の実施形態のコントローラ12-1にデッドタイム生成部126を追加したものである。したがって、上述した第3の実施形態の構成を、そのまま第1の実施形態の電力変換装置1-1に適用できることは言うまでもないことである。
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について説明する。なお、この第4の実施形態において、第2の実施形態と共通する部分には同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。
図10は、第4の実施形態における電力変換装置1-4の回路構成図である。電力変換装置1-4は、電力変換回路11-4とそのコントローラ12-4とを備える。電力変換回路11-4は、第2の実施形態の電力変換回路11-2に、第1の容量電圧検出ユニット15と第2の容量電圧検出ユニット16とを追加する。
第1の容量電圧検出ユニット15は、第1のコンデンサC1の両端に生じる電位差を容量電圧Vc1として検出する(第1の容量電圧検出手段)。第2の容量電圧検出ユニット16は、第2のコンデンサC2の両端に生じる電位差を容量電圧Vc2として検出する(第2の容量電圧検出手段)。第1及び第2の容量電圧検出ユニット15,16は、検出した容量電圧Vc1,Vc2をそれぞれコントローラ12-4に与える。
コントローラ12-4は、回路電流Is及び電源電圧Vinと各容量電圧Vc1,Vc2とに基づいて、第1及び第2のパルス信号P1,P2を生成する。そしてコントローラ12-4は、第1のパルス信号P1を第1のスイッチS1に供給し、第2のパルス信号P2を第2のスイッチS2に供給する。
図11は、コントローラ12-4の具体的構成を示すブロック図である。コントローラ12-4は、電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124、ラッチ回路125及びデッドタイム生成部126に加えて、容量電圧負帰還部128を備える。
容量電圧負帰還部128は、電流目標値決定部121で使用する係数kを設定する。すなわち容量電圧負帰還部128は、第1の容量電圧検出ユニット15で検出される第1のコンデンサC1の容量電圧Vc1と、第2の容量電圧検出ユニット16で検出される第2のコンデンサC2の容量電圧Vc2とを入力する。そして容量電圧負帰還部128は、容量電圧Vc1と容量電圧Vc2とを加算した総容量電圧Vc1+Vc2が第1のしきい値SH1よりも高いか低いかを判定し、高い場合には、係数kを第1の値k1に設定する。これに対し、容量電圧が第2のしきい値SH2(<SH1)よりも低い場合には、容量電圧負帰還部128は、係数kを前記第1の値k1よりも小さい第2の値k2に設定する(容量電圧負帰還手段)。
電流目標値決定部121は、電源電圧検出ユニット14で検出される電源電圧Vinの信号を入力とし、この信号に対して上記係数k(k1またはk2)を乗算して、目標となる電流値Itを決定する。エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124、ラッチ回路125及びデッドタイム生成部126の動作は、第2の実施形態と同一である。
図12は、電力変換装置1-4の作用説明に用いる波形図である。図12において、波形Wuは、回路電流検出ユニット13で検出される回路電流Isを示す。回路電流Isは、電源電圧Vinと等しい周期の低周波成分(50Hz)に、第1のスイッチS1及び第2のスイッチS2の開閉により生じる高周波成分(100Hz)が混在したものである。
波形Wvは、ローパスフィルタLPFを通過し、交流電源Eを流れ込む回路電流Isを示している。図示するように、ローパスフィルタLPFで高周波成分が除去されるため、交流電源Eには50Hzの低周波成分のみの電流が流れる。
このような動作環境において、入力電力を増減したい場合、電源電圧Vinは共通であるため入力電流Iinを増減すればよい。入力電流Iinを増減させるためには、第1の実施形態で示した電源電圧Vinの波形に係数kを掛けて目標となる電流値Itを決定する過程において、係数kを変化させればよい。例えば、波形Wvを目標となる電流値Itとし、この電流値Itのピークが2.82Aだとすると、入力電流Iinを増やすにはピークが例えば2.9になるように係数kを大きくする。逆に、入力電流Iinを減らすにはピークが例えば2.7Aになるように係数kを小さくする。
波形Wwは、係数kが小さい場合であり、50Hzの低周波成分のうねり具合は小さい。しかし、幅dで決まるエンベロープ間の間隔は不変なので、この間を往復する高周波成分(100KHz)のスイッチング周波数は殆ど影響を受けない。スイッチング周波数が変わらなければ、インバータとして駆動される負荷Mでの消費電力は殆ど変わらない。すなわち、出力電力は変わらずに入力電力のみが減少する。このため、やがて入力電力<出力電力の関係になる。そうなると、第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2の電荷を消費する。すなわち、総容量電圧Vc1+Vc2が減少する。
そこで容量電圧負帰還部128は、総容量電圧Vc1+Vc2が第2のしきい値SH2よりも低くなると、係数kを第1の値k1に設定する。その結果、目標となる電流値Itのうねり具合が大きくなるので、入力電流Iinが増大する。
波形Wxは、係数kが大きい場合であり、50Hzの低周波成分のうねり具合は大きい。しかし、幅dで決まるエンベロープ間の間隔は不変なので、この間を往復する高周波成分(100KHz)のスイッチング周波数は殆ど影響を受けない。スイッチング周波数が変わらなければ、インバータとして駆動される負荷Mでの消費電力は殆ど変わらない。すなわち、出力電力は変わらずに入力電力のみが増加する。このため、やがて入力電力>出力電力の関係になる。そうなると、第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2に電荷が蓄積される。すなわち総容量電圧Vc1+Vc2が増加する。
そこで容量電圧負帰還部128は、総容量電圧Vc1+Vc2が第1のしきい値SH1(SH1>SH2)よりも高くなると、係数kを第2の値k2(k2<k1)に設定する。その結果、目標となる電流値Itのうねり具合が小さくなるので、入力電流Iinが減少する。
このように、第1のコンデンサC1の容量電圧Vc1と第2のコンデンサC2の容量電圧Vc2とを加算した総容量電圧Vc1+Vc2は、入力電力と出力電力、すなわち負荷Mでの消費電力とのバランス関係で変動する。通常、負荷Mのインピーダンスは変化するので消費電力は随時変動し、この変動に追従して総容量電圧Vc1+Vc2も変動する。
第4の実施形態においては、このような総容量電圧Vc1+Vc2を回路電流Isの目標値を決定する際の係数kに負帰還する。具体的には、総容量電圧Vc1+Vc2が高ければ係数kを小さくして、回路電流Isの目標値を低くする。逆に、総容量電圧Vc1+Vc2が低ければ係数kを大きくして、回路電流Isの目標値を高くする。こうすることにより、負荷Mのインピーダンスが変化しても総容量電圧Vc1+Vc2を安定に維持できる。
このように第4の実施形態によれば、出力電力(負荷Mの消費電力)と切り離して入力電力のみを制御することができる。したがって、簡素な構成ながら制御性に優れた電力変換装置1-4を提供できる。構造が簡素でかつ制御しやすいことは、産業上、大変有益である。
なお、第4の実施形態において、第1のしきい値SH1と第2のしきい値SH2との関係を[SH1>SH2]としたが、[SH1=SH2]としてもよい。
因みに、第2の実施形態は、第1の実施形態のコントローラ12-1にデッドタイム生成部126を追加したものである。また、第3の実施形態は、第2の実施形態の電力変換回路11−2の電流検出ユニット13を第1,第2の電流検出ユニット13a,13bに分割するとともに、コントローラ12-2に電流加算部127を追加したものである。したがって、上述第4の実施形態の構成を、そのまま第1の実施形態の電力変換装置1-1あるいは第3の実施形態の電力変換装置1-3に適用できることは言うまでもないことである。
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態について説明する。第4の実施形態では、出力電力(負荷Mの消費電力)と切り離して入力電力を制御する場合を示した。第5の実施形態では、回路電流Isの大小により負荷Mを流れる電流を制御する場合を示す。なお、この第5の実施形態において、第4の実施形態と共通する部分には同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。
第5の実施形態の電力変換装置1-5は、電力変換回路11-5とそのコントローラ12-5とを備える。電力変換回路11-5は、第4の実施形態における電力変換回路11-4と同一の構成である。
図13は、コントローラ12-5の具体的構成を示すブロック図である。コントローラ12-5は、電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124、ラッチ回路125、デッドタイム生成部126及び容量電圧負帰還部128に加えて、回路電流負帰還部129を備える。
回路電流負帰還部129は、回路電流Isを入力とする。そして回路電流負帰還部129は、回路電流Isが第3のしきい値SH3より多い場合には係数jを“1”より小さい値j1に設定する。これに対し、回路電流Isが第4のしきい値SH4(<SH3)より少ない場合には、回路電流負帰還部129は、係数jを“1”より大きい値j2にする。回路電流負帰還部129は、係数jをエンベロープ生成部122に与える(回路電流負帰還手段)。
エンベロープ生成部122は、予め設定された幅dに係数jを乗算して積jdを求める。そしてエンベロープ生成部122は、目標となる電流値Itに相当する信号に積jdを加算して正のエンベロープ+eを生成する。またエンベロープ生成部122は、上記電流値Itに相当する信号から積jdを減算して負のエンベロープ−eを生成する。そしてエンベロープ生成部122は、正のエンベロープ+eに相当する信号を上判定部123の第1の入力端子に供給し、負のエンベロープ−eに相当する信号を下判定部124の第1の入力端子に供給する。
上判定部123,下判定部124、ラッチ回路125及びデッドタイム生成部126の動作は、第4の実施形態と同一である。
図14は、電力変換装置1-5の作用を説明するための波形図である。図14において、波形Wyは、回路電流検出ユニット13で検出される回路電流Isを示す。回路電流Isは、電源電圧と等しい周期の低周波成分(50Hz)に、第1のスイッチS1及び第2のスイッチS2の開閉により生じる高周波成分(100KHz)が混在したものである。
波形Wzは、ローパスフィルタLPFを通過し、交流電源Eに流れ込む回路電流Isを示す。ローパスフィルタLPFで高周波成分が除去されるため、交流電源Eには50Hzの低周波成分のみの電流が流れる。
このような動作環境において、回路電流Isが増加したために負荷Mに供給される電流を減少させたい場合、回路電流負帰還部129は、係数jを“1”より小さい値j1に設定する。そうすると、波形Waaに示すように、正のエンベロープ+eと負のエンベロープ−eとの間隔が狭くなる。エンベロープ間の間隔が狭くなると、この間隔内を回路電流Isが往復するように制御が働くため、回路電流Isが減少する。また同時に、回路電流Isに混在する高周波成分の周波数が高くなる。かくして、負荷Mに供給される電流が減少する。
逆に、回路電流Isが減少したために負荷Mに供給される電流を増やしたい場合、回路電流負帰還部129は、係数jを“1”より大きい値j2にする。そうすると、波形Wbbに示すように、正のエンベロープ+eと負のエンベロープ−eとの間隔が広くなる。エンベロープ間の間隔が広くなると、回路電流Isが増加する。また同時に、回路電流Isに混在する高周波成分の周波数が低くなる。かくして、負荷電流Is2が増加する。
一方、ローバスフィルタLPFを通って交流電源Eに流れ込む電流は、正のエンベロープ+eと負のエンベロープ−eとの中心線の波形に相当して変化する。このため、幅dに係数jを乗算することでエンベロープ間の間隔がいかに変化しても、交流電源Eに流れ込む電流のうねり具合は変化しない。電流が変化しないということは、入力電力も変化しない。
このように第5の実施形態によれば、交流電源Eに流れ込む回路電流Isに基づいて、負荷Mを流れる電流を制御することができる。したがって、簡素な構成ながら負荷Mに対する制御性に優れた電力変換装置1-5を提供できる。構造が簡素でかつ制御しやすいことは、産業上、大変有益である。
なお、この第5の実施形態において、第3のしきい値SH3と第4のしきい値SH4との関係を[SH3>SH4]としたが、[SH3=SH4]としてもよい。
また、この第5の実施形態では、第4の実施形態のコントローラ12−4に回路電流負帰還部129を設けたものとして説明した。第1乃至第3の実施形態のコントローラ12-1〜12-3に回路電流負帰還部129を設けても、第5の実施形態で説明した作用効果を奏することは言うまでもないことである。
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態について説明する。第5の実施形態では、回路電流Isの大小により係数jを決定し、正負のエンベロープ+e,−eの間隔を調整する場合を示した。第6の実施形態は、負荷Mに供給される電流、いわゆる負荷電流Is2を検出し、この負荷電流Is2の大小により係数jを決定して、正負のエンベロープ+e,−eの間隔を調整する。
図15は、第6の実施形態における電力変換装置1-6の回路構成図である。電力変換装置1-6は、電力変換回路11-6とそのコントローラ12-6とを備える。電力変換回路11-6は、第4の実施形態の電力変換回路11-4に、負荷電流検出ユニット18を追加する。負荷電流検出ユニット18は、負荷電流Is2を検出する(負荷電流検出手段)。負荷電流検出ユニット18は、検出した負荷電流Is2をコントローラ12-7に与える。
コントローラ12-6は、負荷電流Is2及び電源電圧Vinと各容量電圧Vc1,Vc2とに基づいて、第1及び第2のパルス信号P1,P2を生成する。そしてコントローラ12-6は、第1のパルス信号P1を第1のスイッチS1に供給し、第2のパルス信号P2を第2のスイッチS2に供給する。
図16は、コントローラ12-6の具体的構成を示すブロック図である。コントローラ12-6は、電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124、ラッチ回路125、デッドタイム生成部126及び容量電圧負帰還部128に加えて、負荷電流負帰還部130を備える。
負荷電流負帰還部130は、負荷電流Is2を入力とする。そして負荷電流負帰還部130は、負荷電流Is2が第5のしきい値SH5よりも多い場合には係数jを“1”より小さい値j1に設定する。これに対し、負荷電流Is2が第6のしきい値SH6(<SH5)より少ない場合には、負荷電流負帰還部130は、係数jを“1”より大きい値j2にする。負荷電流負帰還部130は、係数jをエンベロープ生成部122に与える(負荷電流負帰還手段)。
エンベロープ生成部122は、予め設定された幅dに係数jを乗算して積jdを求める。そしてエンベロープ生成部122は、目標となる電流値Itに相当する信号に積jdを加算して正のエンベロープ+eを生成する。またエンベロープ生成部122は、上記電流値Itに相当する信号から積jdを減算して負のエンベロープ−eを生成する。そしてエンベロープ生成部122は、正のエンベロープ+eに相当する信号を上判定部123の第1の入力端子に供給し、負のエンベロープ−eに相当する信号を下判定部124の第1の入力端子に供給する。
上判定部123,下判定部124、ラッチ回路125及びデッドタイム生成部126の動作は、第4の実施形態と同一である。
かかる構成の第6の実施形態によれば、交流電源Eに流れ込む回路電流と切り離して負荷電流Is2を制御することができる。したがって、簡素な構成ながら負荷Mに対する制御性に優れた電力変換装置1-6を提供できる。
なお、この第6の実施形態において、第5のしきい値SH5と第6のしきい値SH6との関係を[SH5>SH6]としたが、[SH5=SH6]としてもよい。
[第7の実施形態]
次に、第7の実施形態について説明する。第6の実施形態では、第4の実施形態の電力変換回路11-4を有する電力変換装置1-4において、負荷電流Is2を制御する場合を例示した。第7の実施形態は、第3の実施形態の電力変換回路11-3を有する電力変換装置1-3において、負荷電流Is2を制御する場合である。
図17は、第7の実施形態における電力変換装置1-7の回路構成図である。電力変換装置1-7は、電力変換回路11-7とそのコントローラ12-7とを備える。電力変換回路11-7は、第3の実施形態の電力変換回路11-3に、第1の容量電圧検出ユニット15と第2の容量電圧検出ユニット16とを追加する。
第1の容量電圧検出ユニット15は、第1のコンデンサC1の両端に生じる電位差を容量電圧Vc1として検出する(第1の容量電圧検出手段)。第2の容量電圧検出ユニット16は、第2のコンデンサC2の両端に生じる電位差を容量電圧Vc2として検出する(第2の容量電圧検出手段)。第1及び第2の容量電圧検出ユニット15,16は、検出した容量電圧Vc1,Vc2をそれぞれコントローラ12-7に与える。
コントローラ12-7は、回路電流Is1及び負荷電流Is2と、電源電圧Vin及び各容量電圧Vc1,Vc2とに基づいて、第1及び第2のパルス信号P1,P2を生成する。そしてコントローラ12-7は、第1のパルス信号P1を第1のスイッチS1に供給し、第2のパルス信号P2を第2のスイッチS2に供給する。
図18は、コントローラ12-7の具体的構成を示すブロック図である。コントローラ12-7は、電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124、ラッチ回路125、デッドタイム生成部126及び電流加算部127に加えて、容量電圧負帰還部128と負荷電流負帰還部130とを備える。
容量電圧負帰還部128は、容量電圧Vc1と容量電圧Vc2とを加算した総容量電圧Vc1+Vc2と、第1のしきい値SH1または第2のしきい値SH2との関係に基づき、電流目標値決定部121で使用する係数kを決定する。
負荷電流負帰還部130は、負荷電流Is2と、第5のしきい値SH5または第6のしきい値SH6との関係に基づき、エンベロープ生成部122で使用する係数jを決定する。
電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123,下判定部124、ラッチ回路125、デッドタイム生成部126及び電流加算部127の動作は、第3の実施形態と同一である。
かかる構成の第7の実施形態においても、交流電源Eに流れ込む回路電流と切り離して負荷電流Is2を制御することができる。したがって、簡素な構成ながら負荷Mに対する制御性に優れた電力変換装置1-7を提供できる。
[第8の実施形態]
次に、第8の実施形態について説明する。第5〜第7の各実施形態では、負荷電流Is2を制御する場合を示した。第8の実施形態では、負荷Mに印加される電圧が一定となるように制御する場合を示す。このような制御は、一般に、電圧供給型のインバータ制御と称される。なお、この第8の実施形態において、第4の実施形態と共通する部分には同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。
図19は、第8の実施形態における電力変換装置1-8の回路構成図である。電力変換装置1-8は、電力変換回路11-8とそのコントローラ12-8とを備える。電力変換回路11-8は、第4の実施形態の電力変換回路11-4に、負荷電圧検出ユニット17を追加する。負荷電圧検出ユニット17は、負荷Mの両端に生じる電位差を負荷電圧Voutとして検出する(負荷電圧検出手段)。負荷電圧検出ユニット17は、検出した負荷電圧Voutをコントローラ12-8に与える。
コントローラ12-8は、回路電流Is、電源電圧Vin、各容量電圧Vc1,Vc2及び負荷電圧Voutに基づいて、第1及び第2のパルス信号P1,P2を生成する。そしてコントローラ12-8は、第1のパルス信号P1を第1のスイッチS1に供給し、第2のパルス信号P2を第2のスイッチS2に供給する。
図20は、コントローラ12-8の具体的構成を示すブロック図である。コントローラ12-8は、電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124、ラッチ回路125、デッドタイム生成部126及び容量電圧負帰還部128に加えて、負荷電圧負帰還部131を備える。
負荷電圧負帰還部131は、負荷電圧Voutを入力とする。回路電流Isが一定であっても負荷Mのインピーダンスが変化した場合、負荷電圧Voutは変動する。負荷電圧負帰還部131は、負荷電圧Voutが第7のしきい値SH7より高い場合には、係数jを“1”より小さい値j1に設定する。これに対し、負荷電圧Voutが第8のしきいSH8(<SH7)値より低い場合には、負荷電圧負帰還部131は、係数jを“1”より大きい値j2にする。負荷電圧負帰還部131は、係数jをエンベロープ生成部122に与える(負荷電圧負帰還手段)。
エンベロープ生成部122は、予め設定された幅dに係数jを乗算して積jdを求める。そしてエンベロープ生成部122は、目標となる電流値Itに相当する信号に積jdを加算して正のエンベロープ+eを生成する。またエンベロープ生成部122は、上記電流値Itに相当する信号から積jdを減算して負のエンベロープ−eを生成する。そしてエンベロープ生成部122は、正のエンベロープ+eに相当する信号を上判定部123の第1の入力端子に供給し、負のエンベロープ−eに相当する信号を下判定部124の第1の入力端子に供給する。
電流目標値決定部121、上判定部123,下判定部124、ラッチ回路125及びデッドタイム生成部126の動作は、第4の実施形態と同一である。
電力変換装置1-8の作用説明には、図14の波形図をそのまま用いることができる。すなわち、負荷電圧Voutが増加したために負荷Mに印加される電圧を減少させたい場合、負荷電圧負帰還部131は、係数jを“1”より小さい値j1に設定する。そうすると、正のエンベロープ+eと負のエンベロープ−eとの間隔が狭くなる。エンベロープ間の間隔が狭くなると、負荷Mに印加される電圧が減少する。
逆に、負荷電圧Voutが減少したために負荷Mに印加される電圧を増加させたい場合、負荷電圧負帰還部131は、係数jを“1”より大きい値j2に設定する。そうすると、正のエンベロープ+eと負のエンベロープ−eとの間隔が広くなる。エンベロープ間の間隔が広くなると、負荷Mに印加される電圧が増加する。
一方、ローバスフィルタLPFを通って交流電源Eに流れ込む電流は、正のエンベロープ+eと負のエンベロープ−eとの中心線の波形に相当して変化する。このため、幅dに係数jを乗算することでエンベロープ間の間隔がいかに変化しても、交流電源Eに流れ込む電流のうねり具合は変化しない。電流が変化しないということは、入力電力も変化しない。
このように第8の実施形態によれば、入力電力を変えることなく負荷Mに印加される電圧が一定となるように制御することができる。このことは、負荷Mの急変に対して高速応答制御しても、その影響が入力電流波形に影響しないことを意味する。すなわち、負荷の変動に要求される高速応答性と、入力電流高調波を常に抑制するという2つの側面を同時に満たすので、産業上の効果は大きい。
なお、この第8の実施形態において、第7のしきい値SH7と第8のしきい値SH8との関係を[SH7>SH8]としたが、[SH7=SH8]としてもよい。
[第9の実施形態]
次に、第9の実施形態について説明する。第8の実施形態では、第4の実施形態の電力変換回路11-4を有する電力変換装置1-4において、負荷電圧Voutを制御する場合を例示した。第9の実施形態では、第7の実施形態の電力変換回路11-7を有する電力変換装置1-7において、負荷電圧Voutを制御する場合である。
図21は、第9の実施形態における電力変換装置1-9の回路構成図である。電力変換装置1-9は、電力変換回路11-9とそのコントローラ12-9とを備える。電力変換回路11-9は、第7の実施形態の電力変換回路11-7に、負荷電圧検出ユニット17を追加する。
第1の電流検出ユニット13aと第2の電流検出ユニット13bとは、それぞれ検出した回路電流Is1及び負荷電流Is2をコントローラ12-9に与える。第1及び第2の容量電圧検出ユニット15,16は、検出した容量電圧Vc1,Vc2をそれぞれコントローラ12-9に与える。負荷電圧検出ユニット17は、検出した負荷電圧Voutをコントローラ12-9に与える。
コントローラ12-9は、回路電流Is1及び負荷電流Is2と、容量電圧Vc1,Vc2と、負荷電圧Voutとに基づいて、第1及び第2のパルス信号P1,P2を生成する。そしてコントローラ12-9は、第1のパルス信号P1を第1のスイッチS1に供給し、第2のパルス信号P2を第2のスイッチS2に供給する。
図22は、コントローラ12-9の具体的構成を示すブロック図である。コントローラ12-9は、電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124、ラッチ回路125、デッドタイム生成部126、電流加算部127及び容量電圧負帰還部128に加えて、負荷電圧負帰還部131を備える。
負荷電圧負帰還部131は、負荷電圧Voutを入力とする。回路電流Isが一定であっても負荷Mのインピーダンスが変化した場合、負荷電圧Voutは変動する。負荷電圧負帰還部131は、負荷電圧Voutが第7のしきい値SH7より高い場合には、係数jを“1”より小さい値j1に設定する。これに対し、負荷電圧Voutが第8のしきいSH8(<SH7)値より低い場合には、負荷電圧負帰還部131は、係数jを“1”より大きい値j2にする。負荷電圧負帰還部131は、係数jをエンベロープ生成部122に与える(負荷電圧負帰還手段)。
電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124、ラッチ回路125、デッドタイム生成部126、電流加算部127及び容量電圧負帰還部128の動作は、第7の実施形態と同一である。したがって、第9の実施形態においても、第8の実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
[第10の実施形態]
第1〜第9の実施形態において、電力変換装置1-1〜1-9の動作中、電力変換回路11-1〜11-9の第1のコンデンサC1の容量電圧Vc1と第2のコンデンサC2の容量電圧Vc2とを加算した総容量電圧Vc1+Vc2は一定である。しかしながら、第1,第2のスイッチS1,S2の駆動のばらつきなどに起因して、容量電圧Vc1と容量電圧Vc2とが次第に乖離することがある。乖離の度合いが大きくなった場合、一方のコンデンサは耐圧を越える危険性があり、他方のコンデンサは電圧がなくなって回路動作が成立しなくなる危険性がある。ただしその場合でも、総容量電圧Vc1+Vc2は変化しない。このため、総容量電圧Vc1+Vc2を検出していたのでは、容量電圧Vc1と容量電圧Vc2との間に乖離が生じていることを検出できない。そこで次に、このような不具合を解消する第10の実施形態について説明する。
第10の実施形態の電力変換装置1-10は、電力変換回路11-10とそのコントローラ12-10とを備える。電力変換回路11-10は、第6の実施形態における電力変換回路11-6と同一の構成であるので、ここでの説明は省略する。
図23は、コントローラ12-10の具体的構成を示すブロック図である。コントローラ12-10は、電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124、ラッチ回路125、デッドタイム生成部126、容量電圧負帰還部128及び負荷電流負帰還部130に加えて、アンバランス検出部132を備える。
アンバランス検出部132は、第1の容量電圧検出ユニット15で検出される容量電圧Vc1と、第2の容量電圧検出ユニット16で検出される容量電圧Vc2とを入力する。そしてアンバランス検出部132は、容量電圧Vc1から容量電圧Vc2を減じた値Vc1−Vc2が正になるか負になるかを判断する。値Vc1−Vc2が正になるとき、アンバランス検出部132は、正のアンバランス信号(+)を電流目標値決定部121に与える。これに対し、値Vc1−Vc2が負になるとき、アンバランス検出部132は、負のアンバランス信号(−)を電流目標値決定部121に与える。値Vc1−Vc2が“0”のときには、アンバランス信号を電流目標値決定部121に与えない(アンバランス検出手段)。
電流目標値決定部121は、アンバランス検出部132から正のアンバランス信号(+)を受信した場合、容量電圧負帰還部128により設定される係数kに所定の係数h1を乗算する。係数h1は、電源電圧Vinが正のときには“1”より小さい値であり、負のときには“1”より大きい値である。電流目標値決定部121は、電源電圧Vinの信号に係数k×h1を乗算して、目標となる電流値Itを決定する。そして電流目標値決定部121は、この電流値Itに相当する信号をエンベロープ生成部122に供給する。
同じく電流目標値決定部121は、アンバランス検出部132から負のアンバランス信号(−)を受信した場合、容量電圧負帰還部128により設定される係数kに所定の係数h2を乗算する。係数h2は、電源電圧Vinが正のときには“1”より大きい値であり、負のときには“1”より小さい値である。電流目標値決定部121は、電源電圧Vinの信号に係数k×h2を乗算して、目標となる電流値Itを決定する。そして電流目標値決定部121は、この電流値Itに相当する信号をエンベロープ生成部122に供給する。
因みに、正または負のアンバランス信号を受信していない場合には、電流目標値決定部121は、係数kをそのまま使用する。すなわち電流目標値決定部121は、電源電圧Vinの信号に係数kを乗算して、目標となる電流値Itを決定する。そして電流目標値決定部121は、この電流値Itに相当する信号をエンベロープ生成部122に供給する。
エンベロープ生成部122、上判定部123,下判定部124、ラッチ回路125、デッドタイム生成部126及び負荷電流負帰還部130の動作は、第6の実施形態と同一である。
図24は、第1のコンデンサC1の容量電圧Vc1と、第2のコンデンサC2の容量電圧Vc2とが、バランスを崩す例を示す波形図である。図24において、波形Wccは、電源電圧Vinの波形である。第1,第2のスイッチS1,S2の駆動にばらつきがないとき、第1のコンデンサC1の容量電圧Vc1と第2のコンデンサC2の容量電圧Vc2とは、波形Wddに示すように、180度位相をずらして変動する。このため、電力変換装置1-10の動作中、総容量電圧Vc1+Vc2は一定を保つ。
ところが、第1,第2のスイッチS1,S2の駆動にばらつきが生じると、波形Weeに示すように、容量電圧Vc1と容量電圧Vc2とが徐々に乖離することがある。しかしながら、容量電圧Vc1と容量電圧Vc2とが如何に乖離しても、総容量電圧Vc1+Vc2は一定であり、変動しない。
図25は第1のコンデンサC1の容量電圧Vc1が小さくなり、かつ第2のコンデンサC2の容量電圧Vc2が大きくなって、アンバランスが生じた場合の作用を説明する波形図である。図25において、波形Wffは、電流目標値決定部121で決定される目標となる電流値を示す。
波形Wffにおいて破線は、容量電圧Vc1と容量電圧Vc2との間にばらつきがない状態のときの目標となる電流値It1であって、正側と負側が対称形である。実線は、容量電圧Vc1と容量電圧Vc2との間に[Vc1<Vc2]の関係があるときの目標となる電流値It2である。すなわち、容量電圧Vc1から容量電圧Vc2を減じた値Vc1−Vc2が負となる場合である。この場合、アンバランス検出部132は、負のアンバランス信号(−)を電流目標値決定部121に与える。したがって、電流目標値決定部121は、係数kに係数h2を乗算する。その結果、電源電圧Vinが正のときには、目標となる電流値It2のうねり具合が大きくなる。逆に、電源電圧Vinが負のときには、目標となる電流値It2のうねり具合が小さくなる。
エンベロープ生成部122は、電流目標値決定部121で決定される電流値It2に相当する信号に幅dを加算して正のエンベロープ+eを生成する。またエンベロープ生成部122は、電流値It2に相当する信号から幅dを減算して負のエンベロープ−eを生成する。そしてエンベロープ生成部122は、正のエンベロープ+eに相当する信号を上判定部123の第1の入力端子に供給し、負のエンベロープ−eに相当する信号を下判定部124の第1の入力端子に供給する。
かくして、図25の波形Wggに示すように、振幅の幅は変わらないが、電源電圧Vinが正のときと負のときとでうねり具合が異なる回路電流Isが負荷Mに流れる。その結果、電源電圧Vinが正のときには第1のコンデンサC1にチャージされる電荷量が増え、負のときには第2のコンデンサC2から放電される電荷量が増えるので、結果として容量電圧Vc1と容量電圧Vc2とのアンバランスが解消される。
図26は第1のコンデンサC1の容量電圧Vc1が大きくなり、かつ第2のコンデンサC2の容量電圧Vc2が小さくなって、アンバランスが生じた場合の作用を説明する波形図である。図26において、波形Whhは、電流目標値決定部121で決定される目標となる電流値を示す。
波形Whhにおいて破線は、容量電圧Vc1と容量電圧Vc2との間にばらつきがない状態のときの目標となる電流値It1であって、正側と負側が対称形である。実線は、容量電圧Vc1と容量電圧Vc2との間に[Vc1>Vc2]の関係があるときの目標となる電流値It3である。すなわち、容量電圧Vc1から容量電圧Vc2を減じた値Vc1−Vc2が正となる場合である。この場合、アンバランス検出部132は、正のアンバランス信号(+)を電流目標値決定部121に与える。したがって、電流目標値決定部121は、係数kに係数h1を乗算する。その結果、電源電圧Vinが正のときには、目標となる電流値It3のうねり具合が小さくなる。逆に、電源電圧Vinが負のときには、目標となる電流値It3のうねり具合が大きくなる。
エンベロープ生成部122は、電流目標値決定部121で決定される電流値It3に相当する信号に幅dを加算して正のエンベロープ+eを生成する。またエンベロープ生成部122は、電流値It2に相当する信号から幅dを減算して負のエンベロープ−eを生成する。そしてエンベロープ生成部122は、正のエンベロープ+eに相当する信号を上判定部123の第1の入力端子に供給し、負のエンベロープ−eに相当する信号を下判定部124の第1の入力端子に供給する。
かくして、図26の波形Wiiに示すように、振幅の幅は変わらないが、電源電圧Vinが正のときと負のときとでうねり具合が異なる回路電流Isが負荷Mに流れる。その結果、電源電圧Vinが正のときには第1のコンデンサC1から放電される電荷量が増え、負のときには第2のコンデンサC2にチャージされる電荷量が増えるので、結果として容量電圧Vc1と容量電圧Vc2とのアンバランスが解消される。
このように第10の実施形態によれば、第1のコンデンサC1と第2のコンデンサC2の容量電圧Vc1,Vc2を適正な範囲で維持できるので、耐圧を超えてコンデンサが破損したり、電圧不足で回路動作が不安定になったりすることを未然に防止できる。このことは、比較的簡素な制御でバランスを維持できるので、産業上利用しやすいものとなる。
なお、この第10の実施形態では、第6の実施形態のコントローラ12−6にアンバランス検出部132を設けたが、第3〜第5または第7〜第9の実施形態のコントローラ12-3〜12-5または12-7〜12-9にアンバランス検出部132を設けてもよい。その場合も、第10の実施形態で説明した作用効果を奏し得る。
[第11の実施形態]
次に、第11の実施形態について説明する。第4の実施形態で説明したように、入力電力を増やす場合、容量電圧負帰還部128の機能により係数kを大きくする。そうすると、目標となる電流値Itのうねり具合が大きくなる。また、第6の実施形態で説明したように、出力電力を減らす場合、負荷電圧負帰還部131の機能により係数Jを小さくする。そうすると、正のエンベロープ+eと負のエンベロープ−eとの間の間隔が狭くなる。
図28において、波形Wjjは、正常な状態にある回路電流Isを示す。この状態から、入力電力を増やすとともに出力電力を減らす場合、上述したように、係数kを大きくして目標となる電流値Itのうねり具合を大きくするとともに、係数Jを小さくしてエンベロープ間の間隔を狭くする。その結果、エンベロープが反対側の極性の領域に入り込むことがあり得る。
図28において、波形Wkkは、区間T1では負のエンベロープ−eが正の領域に入り込み、区間T2では正のエンベロープ+eが負の領域に入り込んだ場合の回路電流Is示している。この場合、本来は正負を繰り返すはずの回路電流Isは、区間T1ではずっと正の値を取り続け、区間T2ではずっと負の値を取り続ける。したがって、その間は正しいスイッチングが行われないため、過大な電力損失が発生する。第11の実施形態は、このような不具合を解消するためのものである。
第11の実施形態の電力変換装置1-11は、電力変換回路11-11とそのコントローラ12-11とを備える。電力変換回路11-11は、第10の実施形態における電力変換回路11-10と同一の構成であるので、ここでの説明を省略する。
図27は、コントローラ12-11の具体的構成を示すブロック図である。コントローラ12-11は、電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、上判定部123、下判定部124、ラッチ回路125、デッドタイム生成部126、容量電圧負帰還部128、負荷電圧負帰還部131及びアンバランス検出部132に加えて、第1,第2のZVS(Zero Volt Switching)補償部133,134を備える。
第1のZVS補償部133は、エンベロープ生成部122で生成される正のエンベロープ+eを入力とする。そして第1のZVS補償部133は、正のエンベロープ+eが正の領域の下限値Aminにあるか否かを検証する。正のエンベロープ+eが正の領域の下限値Aminを上回っているとき、第1のZVS補償部133は、そのまま正のエンベロープ+eを上判定部123に与える。これに対し、正のエンベロープ+eが下限値Aminを下回ったならば、第1のZVS補償部133は、無条件に正のエンベロープ+eを下限値Aminに置き換える。つまり第1のZVS補償部133は、下限値Aminを正のエンベロープ+eとして上判定部123に与える(第1の補償手段)。
第2のZVS補償部134は、エンベロープ生成部122で生成される負のエンベロープ−eを入力とする。そして第2のZVS補償部134は、負のエンベロープ−eが負の領域の上限値Bmaxにあるか否かを検証する。負のエンベロープ−eが負の領域の上限値Bmaxを下回っているとき、第2のZVS補償部134は、そのまま負のエンベロープ−eを下判定部124に与える。これに対し、負のエンベロープ−eが上限値Bmaxを上回ったならば、第2のZVS補償部134は、無条件に負のエンベロープ−eを上限値Bmaxに置き換える。つまり第2のZVS補償部134は、上限値Bmaxを負のエンベロープ−eとして下判定部124に与える(第2の補償手段)。
第1,第2のZVS補償部133.134よりも前段の電流目標値決定部121、エンベロープ生成部122、容量電圧負帰還部128、負荷電圧負帰還部131及びアンバランス検出部132と、後段の上判定部123、下判定部124及びラッチ回路125の動作は、第10実施形態と同一である。
図28の波形Wllは、同図の波形Wkkで示した回路電流Isが得られる場合において、ZVS補償を施した後の回路電流Isである。波形Wllに示すように、負のエンベロープ−eが負の上限値Bmaxを上回る区間T1になると、第2のZVS補償部133が負のエンベロープ−eを負の上限値Bmaxに置き換えるので、負のエンベロープ−eが正の領域に入り込むことはない。
同様に、正のエンベロープ+eが負の下限値Aminを下回る区間T2になると、第1のZVS補償部133が正のエンベロープ+eを正の下限値Aminに置き換えるので、正のエンベロープ+eが負の領域に入り込むこともない。
したがって、回路電流Isは正負を常時繰り返すので、第1のスイッチS1または第2のスイッチS2がオンするときには当該スイッチS1,S2の両端電圧が常にゼロである。このため、極めて電力損失の少ないスイッチング動作を得ることができる。
なお、この第11の実施形態では、第10の実施形態のコントローラ12−10に第1,第2のZVS補償部133,134を設けたが、第3乃至第9の実施形態のコントローラ12-3〜12-9に第1,第2のZVS補償部133,134を設けてもよい。その場合も、第11の実施形態で説明した作用効果を奏することができる。
[他の実施形態]
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではない。
例えば前記各実施形態では、単相の交流電源Eを用いたが、交流電源Eは単相に限定されない。三相あるいはそれ以上の多相の交流電源を用いることも可能である。
また、前記各実施形態では、交流電源EとローパスフィルタLPFとをバイパスする経路にハイパスフィルタHPFを設けたが、ハイパスフィルタHPFは省略してもよい。
また、前記各実施形態では、第1及び第2のスイッチS1,S2として、MOS型電界効果トランジスタを例示したが、第1,第2のスイッチS1,S2は、これに限定されるものではない。例えば、バイポーラトランジスタ、IGBT、GaN、SiC等の半導体素子を用いたスイッチでもよい。あるいはリレーのような機械的なスイッチとダイオードとを組み合わせて、第1及び第2のスイッチS1,S2を形成してもよい。
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。