JP6214054B2 - エレクトレット構体及びその製造方法並びに静電誘導型変換素子 - Google Patents

エレクトレット構体及びその製造方法並びに静電誘導型変換素子 Download PDF

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Description

本発明は、高温に晒されたり、絶縁層と強く接触したりしても高い電荷保持率が維持できる、耐熱性及び耐圧性を備えたエレクトレット構体と、その製造方法と、そのエレクトレット構体を用いて構成するエレクトレットコンデンサマイクロフォン(ECM)等の静電誘導型変換素子に関する。
帯電された電荷を半永久的に保持し続けるエレクトレットは、ECMを始めとして、超音波センサ、加速度センサ、地震計、発電素子、エレクトレットフィルターなどに広く用いられている。図24は、ECMの構造の一例を示している。このECMは、音圧で振動する振動電極10と、スペーサリング14で保持されるギャップを介して振動電極10に対向するエレクトレットフィルム11と、エレクトレットフィルム11の背面に固定された背面電極12と、背面電極12から出力される信号を増幅するFET13と、振動電極10と電気的に接続する金属ケース15とを備えている。
なお、本明細書では、図24に示されたようなエレクトレットフィルム11と、それに一体化された背面電極12との構造体及びこれに類似の構造体を「エレクトレット構体」と称する。
エレクトレットフィルム11及び背面電極12には、振動電極10の振動を抑制しないように、ギャップ空間に通じる孔16a,16bが設けられている。又、金属ケース15は接地され、FET13を駆動する直流電源Eが抵抗Rと共に外付けされている。FET13のゲート電極は背面電極12に接続し、ソース電極は金属ケース15を通じて接地され、増幅された音声信号を出力するドレイン電極は、結合容量Cを介して外部機器に接続している。エレクトレットフィルム11には、高い電荷保持特性を持つフッ素樹脂のフィルムが広く用いられている。代表的なエレクトレット材料としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素樹脂が挙げられる。
このECMの製造過程で、背面電極12を取り付けたエレクトレットフィルム11に対し、コロナ放電やプラズマ放電により負電荷が注入される。この負電荷は、エレクトレットフィルム11の表面や内部にトラップされ、エレクトレットフィルム11は、この負電荷を保持し続ける。エレクトレットフィルム11にトラップされた負電荷から電界が生じるため、振動電極10及び背面電極12により、外部からのバイアス電圧の印加を必要としないコンデンサが形成される。振動電極10が音圧で振動すると、このコンデンサの静電容量が変化し、それによって生ずる振動電極10と背面電極12との間の電圧変化がFET13で増幅されて外部に出力されることで、音声信号を電気信号として取り出すことができる。
しかし、エレクトレット材料としてフッ素樹脂フィルムを使用したECMは、基板への実装に際して、Pbフリー半田を用いたリフローが実施できない、と言う欠点がある。図25は、携帯電話等の基板に部品を実装する際に用いられるリフローの温度プロファイルの一例を示している。近年、有害物質除去の観点からPbフリー半田を用いたリフローが行われているが、この場合、実装部品は、リフロー過程で、217〜260℃に30〜60秒程度保持され、260℃において5〜10秒程度加熱される。フッ素樹脂フィルムは、このように250℃を超える高温に晒されると、トラップしていた負電荷を保持することができず、その多くが失われる。
このフッ素樹脂の高温における電荷保持率の低下を抑えるため、放射線を照射してフッ素樹脂を改質したり(特許文献1参照。)、フッ素樹脂に無機微粒子を含めたりする(特許文献2参照。)試みが行われている。又、フッ素樹脂に代えて、高温でも良好な帯電安定性を有するシリコン酸化膜をエレクトレット材料に用いたECMも提案されている(特許文献3参照。)。なお、本発明の発明者は、先に、背面電極を下面に有するエレクトレット層の上面にエレクトレット絶縁層を接合し、振動電極の下面に振動電極絶縁フィルムを設け、エレクトレット絶縁層と振動電極絶縁フィルムとの間に粒径が10nm〜40μmの絶縁体の微粒子をスペーサとして介在させた機械電気変換素子を提案している(特許文献4参照。)。
エレクトレットフィルム11の電荷保持率は、高温時に、次のような原因で低下する。図26に示すように、エレクトレット構体1pを構成するエレクトレットフィルム11にトラップされた負電荷aは、高温時に、エレクトレットフィルム11の欠陥準位を経由して、その一部がエレクトレットフィルム11の表面方向に拡散し、電荷保持率が低下する。又、トラップされた負電荷aの他の一部は、高温時に、エレクトレットフィルム11の欠陥準位を経由して、エレクトレットフィルム11の厚さ方向に拡散する。一方、背面電極12に誘起された正電荷bは、背面電極12とエレクトレットフィルム11との界面欠陥(又は背面電極12の表面粗さに起因する電界集中部)からエレクトレットフィルム11に注入され、厚さ方向に拡散する。拡散した負電荷と正電荷とが結合すると、負電荷は消滅し、電荷保持率が低下する。
又、特許文献3には、従来のシリコン酸化膜エレクトレットについて、耐湿特性が大きく低下し、実用に耐えない、と記載されている。これは、親水性が高いシリカの性質が影響している。空気中の水分は、親水性が高いシリコン酸化膜に吸着され、この吸着水を介して電極の正電荷がシリコン酸化膜の表面を経由して拡散し、負電荷と結合して負電荷が消滅する。
特開2006−287279号公報 特開2009−253050号公報 特開2002−33241号公報 国際公開第2009/125773号パンフレット
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、高温でも高い電荷保持率を維持できる新たなエレクトレット構体、このエレクトレット構体の製造方法、さらに、このエレクトレット構体を用いた静電誘導型変換素子を提供することを目的としている。
本発明の第1の態様は、フッ素樹脂フィルムと、フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成された電極と、フッ素樹脂フィルムの他方の面に形成されたシリカ(酸化ケイ素、SiOx、x=1〜2)層とを有するエレクトレット構体であることを要旨とする。本発明の第1の態様に係るエレクトレット構体のシリカ層は、互いに孤立した状態でフッ素樹脂フィルムを被覆する複数の島状シリカ領域からなり、この島状シリカ領域に負電荷が付着されている。ここで、第1の態様に係るエレクトレット構体の「電極」とは、例えば、本発明のエレクトレット構体をエレクトレットコンデンサマイクロフォン(ECM)に適用した場合には、ECMの「背面電極」又は「振動電極」のいずれか一方の、エレクトレット構体を構成する側の電極が対応する。
コロナ放電やプラズマ放電により島状シリカ領域に注入された負電荷は島状シリカ領域の深いトラップ準位に固定されるため、リフロー処理温度においても、負電荷がフッ素樹脂フィルムに拡散することはない。その結果、図26に示す負電荷の表面及び厚さ方向への拡散が発生しない。そのため、島状シリカ領域で保持された負電荷の消失は、電極から拡散する正電荷(正孔)との結合による消失だけとなり、高温時の電荷保持特性が向上する。さらに、島状シリカ領域は、表面抵抗が高いフッ素樹脂フィルム上で各々が孤立しているため、室温において、図26に示す負電荷の表面方向への拡散は殆ど発生せず、又、室温における電極からの正電荷の拡散は、フッ素樹脂フィルムにより遮られる。そのため、高湿下においても島状シリカ領域の吸着水による耐湿特性の低下は生じない。
本発明の第2の態様は、第1の態様で説明したフッ素樹脂フィルムと、フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成された電極と、フッ素樹脂フィルムの他方の面に形成されたシリカ層とを有するエレクトレット構体の製造方法に関する。第2の態様に係るエレクトレット構体の製造方法は、非晶質シリカの微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルをフッ素樹脂フィルムの他方の面に吹き付けて、複数の島状シリカ領域を互いに孤立した状態で他方の面上に形成し、複数の島状シリカ領域によってシリカ層を形成し、島状シリカ領域に負電荷が付着させることを含むエレクトレット構体の製造方法であることを要旨とする。
本発明の第3の態様は、第1の態様で説明したフッ素樹脂フィルムと、フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成された電極と、フッ素樹脂フィルムの他方の面に形成されたシリカ層とを有するエレクトレット構体の製造方法の製造方法に関する。第3の態様に係るエレクトレット構体の製造方法は、物理的気相堆積(PVD)又は化学的気相堆積(CVD)により非晶質シリカ又は多結晶シリカの薄膜からなる複数の島状シリカ領域をフッ素樹脂フィルムの他方の面上に互いに孤立した状態で形成し、複数の島状シリカ領域によってシリカ層を形成し、島状シリカ領域に負電荷が付着させることを含むエレクトレット構体の製造方法であることを要旨とする。
本発明の第4の態様は、第1の態様で説明したフッ素樹脂フィルムと、フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成されたシリカ層と、フッ素樹脂フィルムの他方の面に形成された電極とを有するエレクトレット構体の製造方法の製造方法に関する。第4の態様に係るエレクトレット構体の製造方法は、フッ素樹脂フィルムの一方の面にシリカ層を構成する複数の島状シリカ領域を互いに孤立した状態で形成し、その後、フッ素樹脂フィルムの他方の面に電極を溶着で形成するときに、同時に、島状シリカ領域への負電荷の付与を行うことを含むエレクトレット構体の製造方法であることを要旨とする。
本発明の第5の態様は、フッ素樹脂フィルムと、フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成された背面電極と、フッ素樹脂フィルムの他方の面に形成されたシリカ層と、フッ素樹脂フィルムの他方の面上のシリカ層に対向して配置された振動電極と、この振動電極のシリカ層への対向面に設けられた絶縁層と、を備える静電誘導型変換素子であることを要旨とする。第5の態様に係る静電誘導型変換素子のシリカ層は、互いに孤立した状態でフッ素樹脂フィルムを被覆する複数の島状シリカ領域からなり、島状シリカ領域に負電荷が付着されている。第5の態様に係る静電誘導型変換素子では、音圧で振動電極が振動し、振動電極側の絶縁層が島状シリカ領域に接触した場合でも、島状シリカ領域の深いトラップ準位に付着した負電荷は絶縁層に拡散せず、ECMの劣化が回避できる。そのため、ECMの最大許容音圧を大幅に向上させることができる。
本発明の第6の態様は、フッ素樹脂フィルムと、フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成された背面電極と、フッ素樹脂フィルムの他方の面に形成されたシリカ層と、フッ素樹脂フィルムの他方の面上のシリカ層に対向して配置された振動電極と、を備える静電誘導型変換素子であることを要旨とする。第6の態様に係る静電誘導型変換素子のシリカ層は、互いに孤立した状態でフッ素樹脂フィルムを被覆する複数の島状シリカ領域からなり、この複数の島状シリカ領域のフッ素樹脂フィルム上での分布密度が、振動電極の周辺部に対向する領域で高く、振動電極の中央部に対向する領域で低いことを特徴とする。第6の態様に係る静電誘導型変換素子における島状シリカ領域の配置は、インクジェットプリンティングやスクリーン印刷で任意に設定することができる。周辺部の島状シリカ領域の面密度を高めると、周辺部の電界が中心部よりも高くなるため、ECMの有効エリアが振動電極の周辺部にまで広がり、静電容量の変化が増大する。その結果、ノイズの低減や感度の向上が可能になる。
本発明によれば、高温でも高い電荷保持率を維持できる新たなエレクトレット構体、このエレクトレット構体の製造方法、さらに、このエレクトレット構体を用いた静電誘導型変換素子が提供できる。
本発明の第1の実施形態に係る静電誘導型変換素子(ECM)を示す模式的な断面図である。 第1の実施形態に係る静電誘導型変換素子に用いるエレクトレット構体の測定試験用サンプルを示す平面図である。 第1の実施形態に係るエレクトレット構体を模式的に示す断面図である。 第1の実施形態に係るエレクトレット構体の製造方法として、スプレー法によるシリカ凝集体の形成方法を示す模式的な断面図である。 第1の実施形態に係るエレクトレット構体の耐湿試験結果を示す図である。 第1の実施形態に係るエレクトレット構体の被覆比率と被覆面積の積と、電荷保持率の関係を示す図である。 第1の実施形態に係るエレクトレット構体の加熱試験結果を示す図である。 第1の実施形態に係るエレクトレット構体の被覆面積と被覆比率との関係を調べるための加熱試験に用いられた昇温−降温の温度プロファイルを示す図である。 図8の昇温−降温の温度プロファイルを用いて加熱試験を行った結果得られた、第1の実施形態に係るエレクトレット構体の保持時間と電荷保持率の関係を示す図である。 第1の実施形態に係るエレクトレット構体の被覆面積と電荷保持率の関係を示す図である。 フッ素樹脂フィルムの厚さを7μmまで薄くした第1の実施形態に係るエレクトレット構体を、室温に放置した場合の電荷保持率の変化を示す図である。 第1の実施形態に係るエレクトレット構体への熱処理が、電荷保持率に与える影響を示す図である。 第1の実施形態に係るエレクトレット構体の熱処理による電荷保持率rの変化を、溶着不良部を導入したサンプル(□印)と溶着良好なサンプル(○印)を比較して示す図である。 図8の昇温−降温特性と同様のリフロー試験を繰り返し行ったときの、第1の実施形態に係るエレクトレット構体の電荷保持率の変化を、シリカ凝集体があるサンプル(□印)とシリカ凝集体がないサンプル(○印)を比較して示す図である。 図15(a)は、島状シリカ領域の脱落防止用被覆を設けた本発明の第1の実施形態の変形例(第1変形例)に係るエレクトレット構体を示す模式的な断面図図で、図15(b)は、第1の実施形態の第2変形例に係るエレクトレット構体を示す模式的な断面図図である。 本発明の第1の実施形態の変形例(第3変形例)に係る静電誘導型変換素子(ECM)を示す模式的な断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る静電誘導型変換素子(ECM)を示す模式的な断面図である。 本発明の第3の実施形態に係る静電誘導型変換素子(ECM)を示す模式的な断面図である。 本発明の第4の実施形態に係る静電誘導型変換素子を示す模式的な断面図である。 図20(a)は、第4の実施形態に係るフレキシブルな静電誘導型変換素子を2つ折りにするための第1の折り曲げ線の位置を示す模式的な断面図で、図20(b)は、図20(a)で2つ折りした静電誘導型変換素子をさらに2つ折りにするための第2の折り曲げ線の位置を示す側面図で、 図20(c)は、図20(b)で2つ折りにされ、最終的に4つ折りに畳み込まれた静電誘導型変換素子に、引出電極を取り付けた第4の実施形態に係る変換素子の完成図を示す側面図である。 図20(c)で4つ折りに畳み込まれた第4の実施形態に係る変換素子を加速度センサとして用いて、市販の加速度センサとの出力比の周波数特性を測定するための実験装置の主要部の概略を説明する模式的なブロック図である。 図21に示す実験装置を用いて、第4の実施形態に係る静電誘導型変換素子と市販の加速度センサとの出力比の周波数特性を測定した結果を示す図である。 本発明の第5の実施形態に係る静電誘導型変換素子を示す模式的な断面図である。 従来のECMを示す断面図である。 Pbフリー半田によるリフロー処理の温度プロファイルを示す図である。 従来のエレクトレット構体の負電荷消失の原因を説明する模式的な断面図である。
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第5の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
又、以下に示す第1〜第5の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る静電誘導型変換素子(ECM)は、平坦な振動面を有する導電体からなる振動電極(振動子)10と、振動電極10の振動面に対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義されたフッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルム21の上面(第1主面)に形成されたシリカ層20と、フッ素樹脂フィルム21の下面(第2主面)に接合された背面電極22と、振動電極10の振動面の変位に伴い振動電極10と背面電極22間に誘導される電荷を測定する静電誘導電荷測定手段(13,R,C,E)とを備えるマイクロフォンカプセルである。シリカ層20は、互いに孤立した状態でフッ素樹脂フィルム21に被着された複数の島状シリカ領域201で構成されているが、図3(a)及び(b)に示すように背面電極22から複数の島状シリカ領域201のそれぞれの下面に向かうフッ素樹脂フィルム21中の分極方向が揃っている。
第1の実施形態に係る静電誘導型変換素子(ECM)においては、図1に示すフッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルムの下面に形成された背面電極22と、フッ素樹脂フィルム21の上面(第1主面)に形成されたシリカ層20とを備える積層構造体の全体を「エレクトレット構体」と称する。なお、図16を用いて後述するように、「エレクトレット構体」を構成するフッ素樹脂フィルム21の一方の面に形成される電極は、振動電極10であっても構わない。即ち、本発明の「エレクトレット構体」を定義する構成の一部をなす「フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成される電極」は、振動電極でも背面電極でも構わない。
フッ素樹脂フィルム21及び背面電極22には、振動電極10の振動を抑制しないように、フッ素樹脂フィルム21と振動電極10との間に定義される「ギャップ空間」に通じる孔16a,16bが設けられている。第1の実施形態に係るエレクトレット構体1及び振動電極10は、導電性(金属製)の金属ケース15に収納されているが、金属ケース15は接地されている。無負荷時には、フッ素樹脂フィルム21の第1主面(上面)は、振動電極10の振動面に平行に対向している。ここで、静電誘導電荷測定手段(13,R,C,E)は、背面電極22に接続され。金属ケース15の内部に収納された増幅器(FET)13と、FET13に接続された出力回路(R,C,E)を備える。出力回路(R,C,E)は、金属ケース15の外部に外付けされ、一方の端子を接地し、FET13を駆動する直流電源Eと、この直流電源EとFET13との間に接続された出力抵抗Rと、出力抵抗RとFET13との接続ノードに一方の電極を接続し、他方の電極を出力端子とする結合容量Cを備える。
FET13のゲート電極は背面電極22に接続され、ソース電極は金属ケース15を通じて接地され、増幅された音声信号を出力するドレイン電極が、結合容量Cを介して、図示を省略した外部回路(外部機器)に接続している。即ち、静電誘導電荷測定手段(13,R,C,E)の出力端子となる結合容量Cの出力端子には、外部回路が接続され、外部回路によりマイクロフォンに接続される通信装置や記録装置に必要な信号処理がなされる。第1の実施形態に係るECMの静電誘導電荷測定手段(13,R,C,E)は、エレクトレット構体1を構成する背面電極22と振動電極10間の電位をFET13で増幅することにより、振動電極10の振動面の変位に伴い、シリカ層20に静電誘導される静電誘導電荷を測定している。

平面図や鳥瞰図の図示を省略しているが、図1に示すマイクロフォンカプセルの振動電極10、フッ素樹脂フィルム21及び背面電極22はそれぞれ半径3〜40mmの円板形状である。図1に示すように、円板状のフッ素樹脂フィルム21と振動電極10の間には絶縁体のスペーサリング14が挟み込まれている。スペーサリング14の上端面には、円板状の振動電極10の周辺部が接続されている。このため、エレクトレット構体1、スペーサリング14及び振動電極10が金属ケース15に収納されてマイクロフォンカプセルを構成している。
即ち、スペーサリング14は、互いに平行に対向する振動電極10とフッ素樹脂フィルム21との間隔を規定している。フッ素樹脂フィルム21の厚さは例えば10〜400μm程度、背面電極22の厚さは例えば10〜500μm程度、振動電極10の厚さは例えば1〜100μm程度に選定することができるが、振動電極10、フッ素樹脂フィルム21及び背面電極22の具体的な厚さや半径は、要求される性能や仕様に応じて決定されるものである。
なお、図1では図示を省略しているが、エレクトレット構体1、を絶縁体のスペーサリング14とホルダとの間に挟み込むようにしてもよい。ホルダは金属ケース15の内壁に外周が接する、ほぼスペーサリング14と同様な円筒形状をなすように絶縁体で構成すればよい。
FET13は、背面電極22の中央部近傍に融着された半田を介して、背面電極22に電気的に接続されている。背面電極22及びフッ素樹脂フィルム21には、背面電極22及びフッ素樹脂フィルム21を貫通する孔16a,16bが設けられているが、孔16a,16bは、フッ素樹脂フィルム21と振動電極10とのギャップ空間に、(必要に応じて)絶縁性の高い気体(絶縁ガス)を封入し、孔16a,16b等を用いて封じるようにしてもよい。絶縁ガスとしては、窒素,6フッ化硫黄などが採用可能である。絶縁ガスの他、シリコーンオイルなど絶縁流体をフッ素樹脂フィルム21と振動電極10とのギャップ空間を満たしても、絶縁破壊強度が増し、放電が生じにくくなる。その結果、放電により付着するフッ素樹脂フィルム21の表面の電荷量を低減でき、感度が向上する。絶縁ガスや絶縁流体を満たす代わりに、フッ素樹脂フィルム21と振動電極10とのギャップ空間を真空状態としても、感度を向上させることができる。
なお、振動電極10、エレクトレット構体1はそれぞれ円板形状である必要はなく、楕円形、矩形等他の幾何学的形状でも構わないし、この場合、金属ケース15等他の部材も、振動電極10、エレクトレット構体1の幾何学的形状に適合するように設計されることは勿論である。
なお、島状シリカ領域201をそれぞれ構成するシリカは、SiOx(x=1〜2)で表される酸化ケイ素である。フッ素樹脂フィルム21には、表面抵抗が1016Ω/sq.以上であり、耐熱性、絶縁性に優れ、撥水性が高いことが求められるが、エレクトレットとして一般的に使用されているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)又はポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等であれば、その条件を満たしている。これらの樹脂は、表面抵抗が1016Ω/sq.以上であり、耐熱性・絶縁性に優れているため、高温や高湿下での表面方向への電荷の拡散が抑制される。又、撥水性が高いため、島状シリカ領域201の形成が容易である。又、背面電極22には、導電性でリフロー温度に耐えられることが求められる。例えば、Al合金、ステンレス、Ti合金、Ni合金、Cr合金、Cu合金などが使用可能である。
図2(a)は、シリカ凝集体を塗付していない厚さ12.5μmのPFAからなるフッ素樹脂フィルム21を厚さ0.1mmのAl板の片面に真空溶着したサンプルNと、サンプルNのPFAからなるフッ素樹脂フィルム21の全面にシリカゾル(コロイダルシリカ、20wt%、一次粒子径40〜50nm、スノーテックス20L、日産化学社製)を吹き付けてフッ素樹脂フィルム上の全面にシリカ凝集体を形成したサンプルUを示すが、図2(b)、(c)には、フッ素樹脂フィルム21上に配置された島状シリカ領域201の平面図を示している。
図2(b)は、サンプルNに用いたのと同じPFAからなるフッ素樹脂フィルム21の上に、図4(b)に示すようなAlパンチ板のマスク31を置き、コロイダルシリカをフッ素樹脂フィルム上に吹き付けて、孤立したシリカ凝集体を三角格子状に形成したサンプルU(凝集体の径:1.5mm)及びサンプルU(凝集体の径:0.5mm)を示す。図2(c)は、コロイダルシリカをインクジェットプリンティング装置(LabJet,マイクロジェット社製)により1点360pl(ピコリットル)の吐出量でフッ素樹脂フィルム上に塗付して、孤立したシリカ凝集体を100μmピッチの正方格子状に形成したサンプルIを示す。なお、サンプルU、U、Uの形成に当たり、超音波ネブライザーによって霧化されたコロイダルシリカを吹き付けているが、 図2(b)、(c)は実験用に形成したものであり、実際のECMに使用するエレクトレット構体の島状シリカ領域201の配置及び形状は、これに限らない。
又、図3(a)は、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1の断面構造の詳細を模式的に説明するもので、断面から見た島状シリカ領域201とフッ素樹脂フィルム21と背面電極22との関係を示している。この島状シリカ領域201は、非晶質シリカ微粒子の凝集体からなる。非晶質シリカ微粒子は、一次粒子の平均粒径が4〜450nmの微粒子であるが、溶液中で数百nm〜数μmの凝集体となって分散する。この凝集体が分散された溶液をフッ素樹脂フィルム21上に塗布すれば、非晶質シリカ微粒子の凝集体からなる島状シリカ領域201を形成することができる。非晶質シリカの凝集体は、表面積が大きいため、多量の水分子が表面に吸着し、その影響で凝集体の見掛けの誘電率が増加する。その結果,コロナ放電やプラズマ放電でエレクトレット化するときに、非晶質シリカの凝集体に電界が集中し、負電荷が島状シリカ領域201に選択的に付着することができる。
なお、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1の島状シリカ領域201は非晶質シリカの凝集体に限定されるものではなく、例えば、島状シリカ領域201を図3(b)に示すように、非晶質シリカや多結晶シリカの薄膜で形成してもよい。図3(b)に示す非晶質シリカや多結晶シリカの薄膜は、真空蒸着、スパッタリング、化学的気相堆積(CVD)法や物理的気相堆積(PVD)法等で形成することができる。後述するように、真空蒸着、スパッタリング、CVD法やPVD法に際し、フッ素樹脂フィルム21の表面をマスキングすれば、フッ素樹脂フィルム21上に島状シリカ領域を選択的に形成することができる。
図4(a)は、マスクを用いずに、フッ素樹脂フィルム上に水溶性のシリカゾルをスプレーノズル30からの噴霧量を調節して塗布する例を示す。図2(b)、(c)に示すは、サンプルU,U,Iの形成では、図4(b)に示すように、フッ素樹脂フィルム21の上に島状シリカ領域201の形状・位置を規定するマスク31を配置し、スプレーノズル30からシリカゾルの水溶液の液滴の霧(ミスト)201rをマスク31越しにフッ素樹脂フィルム21に吹き付けて島状シリカ領域201を形成している。フッ素樹脂は撥水性が高いので、フッ素樹脂フィルム21に到達したシリカゾルの水溶液の液滴の霧(ミスト)201rは、球に近い形状の水滴となってフッ素樹脂フィルム21に付着する。シリカ凝集体の大きさは、フッ素樹脂上に形成される水滴の大きさ、及び、シリカゾルのシリカ濃度(10〜50wt%)により決まる。水滴の大きさは、スプレーノズル30で散布されるシリカゾル液滴の大きさ(1μm〜1mm)だけでなく、フッ素樹脂フィルム上に付着したシリカゾル水溶液の液滴の霧(ミスト)201rに、別の霧(ミスト)201rが繰り返し付着して合体することも影響する。フッ素樹脂フィルム21に付着した水滴が乾燥すると、孤立したシリカ凝集体からなる島状シリカ領域201が形成される。
島状シリカ領域201を形成したエレクトレット構体に対して、次に、コロナ放電やプラズマ放電により負電荷を帯電させるエレクトレット化の処理が行われる。このエレクトレット化の処理自体は従来から広く行われており、ここでは詳述しないが、エレクトレット化の処理を施すことにより、図3(a)に示すように、島状シリカ領域201に選択的に負電荷が付着する。これは、表面積が大きいシリカ凝集体の表面に、空気中に含まれる多量の水分子が化学的に吸着し、島状シリカ領域201の見掛けの誘電率が増加するためである。その結果、エレクトレット化の処理時には、島状シリカ領域201に電界が集中し、負電荷が島状シリカ領域201に引き寄せられて、大部分の負電荷が島状シリカ領域201に付着する。
第1の実施形態に係るエレクトレット構体1は、表面抵抗が高いフッ素樹脂フィルム21の上に島状シリカ領域201が各々孤立しているため、Pbフリー半田のリフロー処理温度においても、図18に示す負電荷の表面方向への拡散やフッ素樹脂フィルム21の厚さ方向への拡散が殆ど発生しない。そのため、島状シリカ領域201で保持された負電荷は、背面電極22から拡散する正電荷(正孔)と結合するときにだけ消失する。
フッ素樹脂フィルム21中には一定の割合で絶縁性に劣る欠陥部が存在しており、その欠陥部を通じて背面電極22から正孔(正電荷)が拡散し易い。そのため、島状シリカ領域201がフッ素樹脂フィルム21の欠陥部の上に存在すると、その島状シリカ領域201に付着した負電荷は、高温時に失われる可能性が高くなる。島状シリカ領域201がフッ素樹脂フィルム21の欠陥部の上に存在する確率は、個々の島状シリカ領域201の面積に依存し、その面積が広いと確率は高くなり、面積が狭いと確率は低くなる。したがって、島状シリカ領域201全体の合計面積が小さくなり過ぎない範囲で、個々の島状シリカ領域201の面積を小さくすることにより、正電荷(正孔)との結合による負電荷の消失を減らすことができ、Pbフリー半田のリフロー処理温度における電荷保持率を高めることができる。そのため、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1を組み込んだECMは、基板への実装に際してPbフリー半田のリフロー処理が可能である。
なお、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1では、シリカゾルをフッ素樹脂フィルム21に吹き付けて、孤立状態のシリカ凝集体を形成しているが、シリカゾルをインクジェットプリンティングやスクリーン印刷でフッ素樹脂フィルム21上に塗布して、孤立状態のシリカ凝集体を形成することもできる。
次に、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1の各種特性に関する測定結果を説明する。
(耐湿特性)
親水性が高いシリカを含むことで懸念されるエレクトレット構体の耐湿特性について測定した。ここでは、図2(a)に示すように、シリカ凝集体を塗付していない厚さ12.5μmのPFAフィルムを厚さ0.1mmのAl板の片面に真空溶着したサンプルNと、サンプルNのPFAフィルムの全面にシリカゾル(コロイダルシリカ、20wt%、一次粒子径40〜50nm、スノーテックス20L、日産化学社製)を吹き付けてフッ素樹脂フィルム上の全面にシリカ凝集体を形成したサンプルUと、図2(b)に示すように、サンプルNのPFAフィルムの上にAlパンチ板のマスクを置き、コロイダルシリカをフッ素樹脂フィルム上に吹き付けて、孤立したシリカ凝集体を三角格子状に形成したサンプルU(凝集体の径:1.5mm)及びサンプルU(凝集体の径:0.5mm)と、図2(c)に示すように、コロイダルシリカをインクジェットプリンティング装置(LabJet)により1点360pl(ピコリットル)の吐出量でフッ素樹脂フィルム上に塗付して、孤立したシリカ凝集体を100μmピッチの正方格子状に形成したサンプルIとを用意した。なお、サンプルU,U,Uの形成に当たり、超音波ネブライザーによって霧化されたコロイダルシリカを吹き付けている。
これらのサンプルU,U,U,Iに対してコロナ放電によるチャージを行い、負電荷を付着させた。このとき、サンプルU,U,U,Iの表面電位は、いずれも−1kVとした。そして、各サンプルU,U,U,Iを室温(15〜25℃)で湿度30〜90%の雰囲気中に110日間放置し、その間、サンプルU,U,U,Iの表面電位を随時測定し、各サンプルU,U,U,Iの電荷保持率(表面電位測定値と当初表面電位との比率)を調べた。この測定結果を図5に示している。
サンプルI及びサンプルUは、サンプルN(シリカ凝集体無し)と比較しても、電荷保持特性に変化がなく、シリカ凝集体による耐湿性の低下が解消されている。サンプルUは、サンプルNより若干電荷保持率が低下したが、10日程度経過するとそれ以上の電荷保持率の低下は見られなかった。サンプルU(シリカ凝集体全面塗布)は、単調に電荷保持率が低下しており、シリカ凝集体により耐湿性が大きく悪化したことを示している。
表1には、110日後のサンプルU,U,U及びIの測定結果を示している。表1では、サンプルU,U,U及びIの電荷保持量とサンプルNの電荷保持量との比を電荷保持率として示している。又、Dsは凝集体の径、Asは凝集体1個当たりの塗布面積(=被覆面積)、Rsはフッ素樹脂フィルム表面積に対するシリカ凝集体の塗布面積の比率(塗布面積比(=被覆比率))を示している。
サンプルUの電荷保持率がサンプルUやサンプルIの値より若干低下したのは、シリカ凝集体の被覆面積Asが大きいことに起因する。
(被覆面積と被覆比率との関係)
前述するように、シリカ凝集体1個当たりの被覆面積Asが大きくなると、フッ素樹脂フィルム21の欠陥部の上に位置する確率が高まり、電荷保持率が低下する。表1において、サンプルUの電荷保持率がサンプルUやサンプルIの値より低下しているのは、そのためである。そうかと言って、シリカ凝集体1個当たりの被覆面積Asを小さくし、その結果、すべてのシリカ凝集体の被覆面積Asの合計面積がフッ素樹脂フィルム21の表面積に占める割合(被覆比率)Rsが極めて小さくなると、シリカ凝集体を設ける効果が薄れるのは明らかである。
そこで、被覆面積Asと被覆比率Rsとの関係について考察する。フッ素樹脂フィルムの表面積をAf、フッ素樹脂フィルム表面での単位面積当たりの欠陥の数をPd、単位面積当たりの凝集体の数をNs、フッ素樹脂フィルムの欠陥部上に塗布されたシリカ凝集体の一定時間後の電荷保持量の低下率をfsとすると、サンプル全体の一定時間後の電荷保持率rは、以下の式(1)で表される:

r=1−Ns・As・Pd(As/Af)fs
=1−Rs・As・Pd・fs ………(1)

よって、電荷保持率rは、被覆比率Rsと被覆面積Asの積Rs・Asに比例する。図6は、表1の測定結果から求めた、積Rs・Asと、電荷保持率rとの関係を示している。
この関係から、積Rs・Asが0.5mm2以下であれば、フッ素樹脂フィルムにシリカ凝集体を塗付しても、それを塗布しないフッ素樹脂フィルムと比較して、電荷保持率rは10%以下の低下率で抑えられることが分かる。フッ素樹脂フィルム21中には一定の割合で絶縁性に劣る欠陥部が存在し、そこを通じて電極から正孔(正電荷)が容易に拡散する。そのため、島状シリカ領域201がフッ素樹脂フィルム21の欠陥部の上にあると、その島状シリカ領域201に付着した負電荷は高温時に失われ、電荷保持率が低下する。よって、電荷保持率rが、島状シリカ領域201のすべてによる被覆比率Rsと、島状シリカ領域1個当たりの被覆面積Asとの積に比例することとなり、この積Rs・Asが0.5mm2以下であれば、高温での電荷保持率rの低下が抑えられるのである。
(耐熱特性)
第1の実施形態に係るエレクトレット構体1の耐熱特性を次の方法で測定した。サンプルN及びサンプルIと同じ条件のサンプルを用意し、コロナ放電により表面電位が−1kVになるようにエレクトレット化した。そして、各サンプルをホットプレート上で4℃/minの昇温速度で緩やかに300℃まで加熱し、その間、5分置きにサンプルの表面電位を測定して電荷保持特性を調べた。図7(b)には、測定時の昇温特性を示している。この測定結果を図7(a)に示している。サンプルNと同じ条件のサンプルの電荷保持率rを○印、サンプルIと同じ条件のサンプルの電荷保持率rを△印で示している。
シリカ凝集体を持たないサンプルNと同じ条件のサンプルは、180℃付近から電荷保持率rの低下が始まり、260℃では電荷がほぼ消滅した。一方、シリカ凝集体を有するサンプルIと同じ条件のサンプルは、180℃付近から電荷保持率rの低下が始まるものの、低下率はサンプルNと同じ条件のサンプルよりも小さい。その結果、260℃でも42%の電荷を保持していた。
この実験の昇温速度は実際のリフロー処理よりも大幅に遅く、217〜260℃への昇温に650秒を要している。一般的なリフロー処理では、217〜260℃の温度区間が60秒程度である。電荷の保持率は加熱時間のべき乗に依存することから、図7(a)の結果から217〜260℃℃の保持時間が60秒のときの電荷保持率rを算出すると、サンプルNと同じ条件のサンプルでは59%であるのに対して、サンプルIと同じ条件のサンプルでは92%となり、大幅に耐熱性が向上することが分かる。
次に,リフロー炉を用いて、サンプルN及びサンプルIと同じ条件のサンプルとを用意して、バッチ式リフロー炉によりリフロー処理を想定した加熱試験(以下,リフロー試験)を行った。このときの昇温−降温の温度プロファイルを図8に示す。このとき,ピーク温度は262℃,217℃以上の保持時間は151秒であった。図9は図7の結果と、図8の結果から、217℃以上の保持時間と電荷保持率rの関係をプロットしたものである。又、図9の曲線は電荷保持率rが加熱時間のべき乗に依存するとして図7の結果から予想した電荷保持率rと保持時間の関係である。○印で示したサンプルIと同じ条件のサンプルは,電荷保持率rが保持時間のべき乗に依存していることが図9から分かる。
しかし、△印で示したサンプルNと同じ条件のサンプルは,リフロー試験時の電荷保持率rは保持時間のべき乗則から予想された値より大幅に低くなっている。この原因は不明であるが、トラップ準位に捕獲された負電荷の加熱時のホッピング伝導が関係していると推測される。トラップ準位に捕獲された負電荷は加熱時他のトラップ準位にホッピング伝導することを繰り返し、最終的に伝導帯に達して、フィルム内部を拡散していく。このとき,昇温速度が遅いと、低温でのホッピングで逆により深いトラップ準位に負電荷が捕獲され,安定化する可能性がある。したがって、サンプルNと同じ条件のサンプルは,昇温速度が遅いホットプレートによる加熱時は負電荷が安定化し易かったため図9のような結果となったと考えられる。
一方,サンプルIと同じ条件のサンプルについては,シリカ凝集体表面には深いトラップ準位が豊富に存在するため、容易に負電荷が安定化し、昇温速度に関わらず電荷保持率rが保持時間のべき乗則の関係を示したと考えられる。したがって、フッ素樹脂フィルム21上にシリカ凝集体を形成することで,昇温速度に関わらず安定した電荷保持特性が得られる。又、新たに作成したサンプルN及びIと同じ条件のサンプルをコロナ放電により表面電位-0.3kVとし、上記条件でのリフロー試験の前後に,サンプルN及びIと同じ条件のサンプルを、図1のエレクトレット構体1として、外径10mmの図1のような第1の実施形態に係るECMを製造した。そのときの100Hz〜10kHzの平均感度を測定した結果を表2に示す。
サンプルIと同じ条件のエレクトレット構体1は、感度低下は3dBに抑えられている。通常,ECMは2回のリフロー処理後の感度低下を3dB以内とすることが求められており、これを達成するために厚さ25μmのPTFEがエレクトレットに用いられている。
表2の結果は,217℃以上の保持時間は151秒であり、これは2回のリフロー処理の保持時間の合計を上回る。したがって、フッ素樹脂フィルム21上にシリカ凝集体を形成することで,PTFEより安価なPFAを用い,さらに半分の厚さ12.5μmでもリフロー処理に耐えうるエレクトレット構体1が製造可能であることが分かる。
又、図10には、被覆比率Rsと電荷保持率rとの関係を測定した結果について示している。ここでは、インクジェットプリンティングによるシリカ凝集体の塗布間隔を変えることで、被覆比率Rsの異なる複数のサンプルを用意し、これらのサンプルを図7(b)の昇温特性に従って250℃まで加熱し、250℃における電荷保持率rを測定した。図10では、横軸に被覆比率Rsを示し、縦軸に250℃の電荷保持率rを示している。リフロー処理のピーク温度は少なくとも250℃を見込む必要があり、217℃〜250℃の保持時間を60秒として電荷保持率rを90%以上とするためには、図10において40%以上の電荷保持率rが必要になる。
図10から、被覆比率Rsが5%以上あれば、上記の条件を満たすことが分かる。島状シリカ領域201のすべてによる被覆面積の被覆比率Rsが5%以上存在しないと、高温での電荷保持特性の向上が見込めない。図10に示すように、被覆比率Rsが5%であっても高温時の電荷保持特性が大幅に向上するのは、前述するように、シリカ凝集体の表面に多量の水分子が化学的に吸着して誘電率が増加し、エレクトレット化の処理時に、大部分の負電荷がシリカ凝集体に付着するためである。
なお、被覆比率Rsが90%を超えると、表面抵抗が一桁落ちてしまい、図26に示す表面方向への電荷の漏れが無視できなくなる。エレクトレットとして使用するためには、表面抵抗は1016以上が必要である。そのため、被覆比率Rsは、5〜90%の範囲に設定する必要がある。図10から明らかなように、被覆比率Rsの望ましい範囲は6〜25%である。又、シリカ凝集体同士の間隔(シリカ凝集体から別のシリカ凝集体までのフッ素フィルム上に沿った最短距離)が100nm以下になるとトンネル効果による漏れ電流が無視できなくなる。そのため、シリカ凝集体同士の間隔は100nm以上が必要であり、1μm以上が望ましい。
(表面電位の大きさ)
フッ素樹脂フィルム21上にシリカ凝集体を形成したエレクトレット構体1は、シリカ凝集体を有しないフッ素樹脂フィルム21のみの従来のエレクトレット構体に比べて、大きい表面電位を維持することができ、高い電界を放出することができる。比較のために、Al電極に厚さ12.5μmのPFAフィルムを溶着したエレクトレット構体に対し、コロナ放電により、PFAフィルムが絶縁破壊を生じない範囲で、負電荷を可能な限り付着させたところ、表面電位は−1.76kVに達した。
しかし、そのまま放置すると、表面電位の大きさは徐々に減り、1時間放置すると−1.26kVにまで減少した。一方、サンプルIと同条件でシリカ凝集体をフッ素樹脂フィルム21上に形成した第1の実施形態に係るエレクトレット構体1に対し、コロナ放電により可能な限り負電荷を付着させたところ、表面電位は−1.98kVに達した。そして、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1を放置しても、表面電位は変化しなかった。したがって、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1によれば、最終的には、フッ素樹脂フィルム21上にシリカ凝集体を形成することで表面電位の大きさは凡そ50%以上向上したことになる。
これは、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1において、フッ素樹脂フィルム21上にシリカ凝集体を形成することで、一定の表面電位を得るために必要なフッ素樹脂フィルム21の厚さを34%以上減らせることを意味する。したがって、フッ素樹脂フィルム21の厚さをより薄くすることができる。フッ素樹脂フィルム21の薄膜化はECMの静電容量の増加につながり、その結果、ノイズの低減、又は、さらに小型化が可能となる。
フッ素樹脂フィルム21に用いるPFAフィルムの厚さを7μmまで薄くし、Al電極に溶着したエレクトレット構体(サンプルN(7μm))と、サンプルIと同条件でシリカ凝集体を厚さ7μmのPFAフィルム上に形成したエレクトレット構体(サンプルI(7μm))に対し、コロナ放電により表面電位を-1.4kVとし、室温で放置したときの電荷保持率rの挙動を図11に示す。過大なチャージを行った場合,フッ素樹脂フィルム21上にシリカ凝集体を塗布することにより、表面電位の劣化が大幅に抑制されている。通常、フッ素樹脂フィルム21の厚さを10μm以下とすると厚さのばらつきやピンホールなどの欠陥の増加により、安定したエレクトレットとして機能する誘電分極板を作製することはできない。しかし、図11の結果から、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1によれば、シリカ凝集体により、フッ素樹脂フィルム21の薄膜化が可能となることが分かる。
(耐熱特性のさらに向上)
第1の実施形態に係るエレクトレット構体1は、次のような処理を施すことで高温時の電荷保持特性のさらに向上が可能である:
a.シリカゾルを用いてフッ素樹脂フィルム21上にシリカ凝集体を塗付した場合、シリカ凝集体内部の毛細管などに過剰な水分が保持されたままになっている場合がある。特にインクジェットプリンティングやスクリーン印刷においては、その傾向が顕著である。このようにフッ素樹脂フィルム21上のシリカ凝集体に物理的に吸着した余分な水分が存在すると、余分な水分を介してシリカ凝集体からフッ素樹脂フィルム21表面に一部の負電荷が拡散するため、耐熱特性が低下する。そのため、エレクトレット化処理の前にエレクトレット構体1を加熱してシリカ凝集体に吸着した余分な水分を除去することで高温時の電荷保持率rが向上する。
図7(a)では、インクジェットプリンティングでフッ素樹脂フィルム21上にシリカ凝集体を塗付してシリカ層20を形成したサンプルを250℃まで加熱(予加熱)して余剰な水分を除去し、その後にチャージを行った場合の特性を四角で示している。図7(a)から明らかなように、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1の耐熱特性はさらに向上している。予加熱の温度は、化学的な吸着水以外の不必要な水分を除去できればよいので、100℃以上でよいが、水分の除去時間を短縮するためにはより高温の方が好ましい。逆に300℃以上に加熱して、フッ素樹脂フィルム21が溶融しても、フッ素樹脂とシリカの密度に大きな差はないことから、シリカ凝集体がフッ素樹脂フィルム21中に沈み込むことはない。したがって、フッ素樹脂フィルム21が分解を始める400℃まで加熱することも可能である。
b.エレクトレット化処理を行ったエレクトレット構体1を加熱し、その後、再びエレクトレット化処理を行うことで高温での電荷保持特性が向上する。これは、1度エレクトレット化した後に、加熱処理を行うと、シリカ凝集体の深いトラップ準位に付着した負電荷が加熱後も残存するためであり、残存した負電荷に対して、さらに再度のエレクトレット化で負電荷が加わるため、電荷保持特性が向上する。図12には、インクジェットプリンティングによりフッ素樹脂フィルム21上にシリカ凝集体を塗付したエレクトレット構体1について、1度エレクトレット化した後に、300℃までの加熱試験を行ったときの電荷保持率rの測定値(△)と、そのサンプルを再度エレクトレット化して、300℃までの加熱試験を再び行ったときの電荷保持率rの測定値(四角)とを示している。図12から明らかなように、加熱処理及び再エレクトレット化を行うことにより、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1の電荷保持特性が向上している。このチャージ後の加熱温度は、図12において電荷保持率rが低下を始める180℃以上とし、300℃以下とすれば高温での電荷保持特性が向上する。実際上は、リフロー処理温度である250〜260℃で熱処理することが望ましい。
c.シリカ凝集体のエレクトレット化処理を高温中で行うことにより、高温での第1の実施形態に係るエレクトレット構体1の電荷保持特性が向上する。これは、高温中でのエレクトレット化処理で、シリカ凝集体の深いトラップ準位に負電荷が捕捉され、負電荷が拡散し難くなるためである。図12には、コロナ放電によるエレクトレット化を250℃で行ったエレクトレット構体1の加熱試験結果を○印で示している。図12から明らかなように、エレクトレット化を250℃で行うことで電荷保持特性が向上している。シリカ凝集体を塗布しない通常のフッ素樹脂フィルム21では、250℃でチャージすることができないが、フッ素樹脂フィルム21上にシリカ凝集体を塗布した場合は、250℃の温度でもシリカ凝集体に負電荷を付着させることが可能であり、実際、表面電位−1kVのエレクトレットが得られている。第1の実施形態に係るエレクトレット構体1においては、フッ素樹脂フィルム21として用いるPFAフィルムの融点310℃直下の300℃でも−0.7kVまでチャージすることができた。このチャージ中の加熱温度は、図12において電荷保持率rが低下を始める180℃以上とし、300℃以下とすれば高温での電荷保持特性が向上する。実際上は、リフロー処理温度である250〜260℃に設定することが望ましい。
d.フッ素樹脂フィルム21と接合する背面電極を改善することで、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1の高温での電荷保持特性を向上させることができる。フッ素樹脂フィルム21上に互いに孤立した島状シリカ領域201を設けることで、図26に示す表面方向の負電荷の漏れを防ぐことができるが、背面電極22からの正孔の注入は防ぐことができない。そのため、高温での電荷保持特性の向上を図るためには背面電極22からの正孔の注入を防ぐことが重要である。背面電極22からの正孔の注入の原因は、大きく分けて二つあり、1つは、界面の欠陥及び不純物層に起因するトラップ準位を介して正孔が注入されることであり、他の1つは、背面電極22の表面粗さに起因してフッ素樹脂フィルム21と背面電極22との密着性が低下し、局部的な電界集中が発生して正孔が注入されることである。
フッ素樹脂フィルム21と背面電極22との密着性については、図13に示すような加熱試験による電荷保持率rの変化が示される。図13では、背面電極22としてのAl電極に、フッ素樹脂フィルム21として厚さ12.5μmのPFAフィルムを溶着したエレクトレット構体に対し、フッ素樹脂フィルム21の溶着温度を下げ,意図的に溶着不良部を導入したサンプル(□印)と○印で示した溶着良好な通常サンプルについて電荷保持率rの変化をそれぞれ示す。図13では、図7(b)に示したのと同様な昇温特性で加熱試験を行った。□印で示した溶着不良サンプルは、200℃以下から電荷保持率rの低下が始まっており、背面電極22とフッ素樹脂フィルム21との接合部の密着性が電荷保持特性の改善において重要であることが分かる。以下においては、高温での電荷保持特性の向上を図るための3つの手法(d−1,d−2,d−3)について述べる。
d−1.背面電極の平滑化(電界集中の低減):
(1)背面電極22を研磨して表面粗さを低減した後にフッ素樹脂フィルム21を溶着する。
(2)フッ素樹脂フィルム21に蒸着、物理的気相堆積(PVD),スパッタリングにより導電性材料(Al、Ti、Cr、Ni、Agなどの金属やカーボン)をコートして平滑な背面電極22を形成する。
(3)背面電極22に蒸着、PVD、スパッタリングにより導電性コーティング(導電性フッ素樹脂、カーボン、Al、Ti、Cr、Ni、Agなどの金属)を施して平滑化処理した後にフッ素樹脂フィルム21を溶着する。
このように、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1では、フッ素樹脂フィルム21の一方の面に形成される背面電極22の表面を、平滑化処理することが望ましい。エレクトレット構体1を構成する背面電極22の表面が粗いと、背面電極22とフッ素樹脂フィルム21との界面の密着性が低下し、局部的な電界集中が発生する。この局部的な電界集中により、背面電極22からフッ素樹脂フィルム21に正孔が容易に注入され、エレクトレット構体の電荷保持率が低下する。背面電極22の表面を平滑化することで、局部的な電界集中による背面電極22からフッ素樹脂フィルム21への正孔の注入が抑制できる。
d−2.絶縁コーティング(欠陥層の低減):
あらかじめ背面電極22に耐熱性の高い絶縁材料をコーティングし、背面電極22と密着性が良好な絶縁層を形成する。絶縁層形成のために、以下の方法が考えられる:
(1)PTFEディスパージョンやポリイミドワニスをスピンコーティングやディッピングで背面電極22に塗付し加熱して絶縁層を形成する、
(2)酸化物(アルミナ、酸化クロム、チタニア、ジルコニアなど)を蒸着、PVD、化学的気相堆積(CVD)、スパッタリングで背面電極22にコーティングする。そして、その上にフッ素樹脂フィルム21をさらに溶着した後にシリカ層20を塗布する。PTFEコーティングの場合、その上に直接シリカ層20を塗布してもよい。
このように、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1では、フッ素樹脂フィルム21の一方の面に形成される背面電極22の表面を、耐熱性が高く密着性の良好な絶縁層で被覆することが好ましい。エレクトレット構体1を構成する背面電極22に密着性の良好な絶縁層をコーティングすることによって、背面電極22とフッ素樹脂フィルム21との界面欠陥を減らすことができ、界面欠陥による背面電極22からフッ素樹脂フィルム21への正孔の注入が抑制できる。背面電極22を絶縁コーティングした場合は、 図1に示すフッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルム21の下面に形成された背面電極22と、背面電極22とフッ素樹脂フィルム21の間に設けられた絶縁層と、フッ素樹脂フィルム21の上面に形成されたシリカ層20とで、第1の実施形態に係るエレクトレット構体が定義されることは勿論である。
d−3.溶着時にチャージ:
フッ素樹脂フィルム21に背面電極22を溶着する前に、フッ素樹脂フィルム21にシリカ凝集体を塗付し、それからフッ素樹脂フィルム21を背面電極22に溶着し、この溶着時に同時にコロナ放電によるチャージを行い、負電荷の付着を行う。こうすることで、欠陥や電界集中部のないフッ素樹脂フィルム21上に塗布されたシリカ凝集体の深いトラップ準位に負電荷を付着させることができる。なお、フッ素樹脂フィルム21に背面電極22を溶着する前にコロナ放電によるチャージをしてから溶着を行っても、同様の効果が得られるが、溶着時にチャージした方が効果は大きい。
次に、島状シリカ領域201の形成方法について説明する。
(1)スプレーを用いたシリカゾルの塗付
フッ素樹脂フィルム21上にスプレーで水溶性のシリカゾルを塗布する例は、先に説明した(図4(b))。そのとき、マスク31を用いてシリカ凝集体の形状や形成位置を規制したが、図4(a)に示すように、スプレーからの噴霧量を調節して、マスクを用いずに孤立状態のシリカ凝集体をフッ素樹脂フィルム21上に形成することも可能である。フッ素樹脂は撥水性が高いので、シリカゾルの液滴又は霧201rは、フッ素樹脂に付着して球形に近い形状の水滴になり、乾燥すると孤立したシリカ凝集体が形成される。又、シリカゾルの散布には、園芸用の散水ノズル、塗料の吹付け用のノズル、ミスト生成用のノズルなど様々なものを用いることができ、粒子径に応じて選択する。又、超音波ネブライザーに用いられるような超音波による霧化も有効な手法である。
フッ素樹脂フィルム21としての厚さ25μmのPTFEを、背面電極22としてのステンレス電極に焼き付けたエレクトレット構体に対して、ノズル口径0.3mmのスプレーガンとコロイダルシリカ(日産化学工業,20L)を用いて図4(a)に示すような手法で,図2(b)のようなシリカ凝集体を塗布したエレクトレット構体1を作製した。そして、コロナ放電により表面電位を-0.4kVとし、図8の昇温−降温特性と同様のリフロー試験を繰り返し行ったときの電荷保持率rの挙動を調べた。その結果を図14に示す。○印で示したシリカ凝集体を塗付しないサンプルは,3回のリフロー試験後に電荷保持率rは80%を下回った。一方,□印で示した、シリカ凝集体をスプレーガンで塗布してシリカ層20を構成したエレクトレット構体1は,3回のリフロー試験を行った後も電荷保持率rは90%を上回った。この結果から、スプレーガンのような簡便な手法でも,第1の実施形態に係るエレクトレット構体1によれば、シリカ凝集体によりフッ素樹脂フィルム21上にシリカ層20を構成することにより、電荷保持率rの改善が有効であることが分かる。
シリカゾルの一次粒子径は、コロイド溶液としての状態を維持するために、4〜450nmの範囲で選択可能である。一次粒子径が小さいほど、コロナ放電によるチャージ時に負電荷がシリカ凝集体に集まり易いため塗付面積比を小さくできるが、凝集体内部の余分な水分が抜け難くなるため、余分な水分除去のための熱処理又は加熱中のチャージが必要になる。シリカ凝集体の高さは、第1の実施形態に係るECMのギャップ幅より小さくすることが必要である。一般的にECMのギャップ幅は25μm以下である。ギャップ幅を増すことも可能であるが、シリカ凝集体の高さが50μm以上となるとフッ素樹脂フィルム21上から脱落し易くなる(通常、シリカ凝集体はエレクトレット化することで、静電力によりフッ素樹脂上に強く付着している)。又、シリカゾルの一次粒子径が4nm以上であることから、これ以下の高さとすることはできない。さらにコロイド溶液中でシリカ微粒子は既に凝集が始まっており、そのサイズは数百nm〜数μmと考えられる。したがって、凝集体の高さは4nm〜50μmであり、1μm〜25μmが望ましい。
なお、図4(b)に示すように、スプレーノズル30とフッ素樹脂フィルム21との間にマスク31を置く場合は、マスク31により必ず孤立したシリカ凝集体が散布されるので、水溶性のシリカゾルだけでなく、有機溶媒を分散剤としたシリカゾルも使用可能である。有機溶媒としてはエタノール、メタノール、アセトン、イソプロパノール、エチレングリコールなどが挙げられる。有機溶媒を使用すると乾燥が速く、余分な水分を除去する熱処理も不要となる。
(2)エレクトロスプレーデポジション(ESD)を用いてシリカゾルを塗付:
図4(b)に示すように、スプレーノズル30とフッ素樹脂フィルム21との間にマスク31を置く場合、スプレーノズル30をフッ素樹脂フィルム21に設置された電極より負の電位にすることで、負電荷を有する液滴を複数の島状シリカ領域201としてフッ素樹脂フィルム21に付着させることができる。これは、エレクトロスプレーデポジションと呼ばれる手法であるが、これによりナノレベルの径の複数の島状シリカ領域201を散布できるので、シリカ凝集体の塗付パターンの精度が向上することが期待できる。さらに、負電荷を有する液滴からなる複数の島状シリカ領域201がフッ素樹脂フィルム21上に付着するため、エレクトレット化を同時に行うことが可能である。なお、エレクトロスプレーデポジション(ESD)は、静電噴霧法、静電塗付法とも呼ばれる。
この手法は、図4(b)の噴霧装置において、スプレーノズル30又は噴霧液体の霧201rを負の電位(塗布するフッ素樹脂フィルム21に取り付けた背面電極22に対して負)に設定し、さらに、金属板などの導体で形成したマスク31を負の電位に保持して塗布を行う方法に対応する。又、これは通常のコロナ放電によるエレクトレット化と類似した手法である(針電極から負電荷を放出させ一定電位のマスク31を通してフッ素樹脂フィルム21上に負電荷を付着させることにより表面電位を制御する)。そのため、スプレーノズル30とマスク31の電位を適切に設定することにより、フッ素樹脂フィルム21上のシリカ凝集体からなる島状シリカ領域201の塗布量とエレクトレットの表面電位の両方を制御することができる(通常、背面電極22に対するスプレーノズル30の電位は−1〜−50kV、背面電極22に対するマスク31の電位は−0.1〜−5kVに設定される)。又、このとき、霧201rの液滴の大きさは、スプレーノズル30から噴射される溶液の流量、溶液の誘電率、温度などにより決定されるため、霧201rの大きさを数nmから数mmオーダに制御することができる。スプレーノズル30から噴射されるシリカゾルは水溶性及び有機溶媒分散性のいずれでも構わない。
図4(a)の噴霧装置において、スプレーノズル30又は噴霧液体を負の電位(塗布するフッ素樹脂フィルム21に取り付けた背面電極22に対して負)に設定しても、フッ素樹脂フィルム21の撥水性により、シリカゾルは球に近い形状の水滴の霧201rとなってフッ素樹脂フィルム21に付着する。この場合、シリカ層20の大きさは、付着する霧201rの大きさに依存するため、均一な大きさとはならない。しかし、フッ素樹脂フィルム21の表面電位は、塗付した霧201rの塗付量と背面電極22に対するスプレーノズル30の電位の積に比例する。そのため、マスク31がなくても霧201rの塗布量とスプレーノズル30の電位により表面電位を容易に制御できる。この手法を用いると、ナノレベルの凝集体を塗布させることができるので、凝集体高さを1μm以下とすることが可能である。
(3)インクジェットプリンティング及びスクリーン印刷によるシリカゾルの塗付:
インクジェットプリンティング技術及びスクリーン印刷技術を用いれば、フッ素樹脂フィルム21上の任意の場所にシリカゾル液滴からなるシリカ層20を描画することが可能になる。この手法を用いると均一なシリカ凝集体からなるシリカ層20を得ることができる。このとき、シリカゾルは水溶性及び有機溶媒分散性のいずれでも構わない。
(4)真空蒸着、PVD、CVD、スパッタリングによる薄膜状の島状シリカ領域201の形成:
ガスバリアフィルムに使用されるシリカコーティング技術を用いて薄膜状の島状シリカ領域201を形成することも可能である。真空蒸着、PVD、CVD、スパッタリングによりマスキングされたフッ素樹脂フィルム21上に薄膜状の島状シリカ領域201を形成すればよい。図3(b)には、この方法で形成した薄膜状の島状シリカ領域201とフッ素樹脂フィルム21と背面電極22との関係を模式的に示している。ただし、この場合、シリカ凝集体と比較すると吸着水が少ないため、チャージ時に負電荷をシリカ層20のみに選択的に付着させることはできない。そのため、被覆比率Rsは高くする必要があり、Rs=80〜90%が望ましい。なお、シリカの多孔質膜が形成できれば、シリカ層20への吸着水が増加し、負電荷のシリカ層20への選択的な付着が可能になる。
薄膜状の島状シリカ領域201の高さは、シリカのバンドギャップ構造が形成される必要があるため1nm以上必要である。又、10μmを越える厚さの薄膜状の島状シリカ領域201を真空蒸着、PVD、CVD、スパッタリングで形成するのは非常に時間を要するために現実的ではない。したがって、高さは1nm〜10μmであり、1nm〜1μmが望ましい。又、この場合も、薄膜状の島状シリカ領域201は、被覆比率Rs×被覆面積Asが0.5mm2以下となるように塗布することが必要である。
第1の実施形態に係るエレクトレット構体1において、薄膜状の島状シリカ領域201が多孔質膜であることが望ましい。多孔質膜は、表面積が大きいため、多量の水分子が表面に吸着して見掛けの誘電率が増加する。その結果,コロナ放電やプラズマ放電でエレクトレット化するときに、多孔質膜からなる薄膜状の島状シリカ領域201に電界が集中し、負電荷が島状シリカ領域201に選択的に付着することができる。
以上述べたとおり、第1の実施形態に係る静電誘導型変換素子のエレクトレット構体1によれば、Pbフリー半田のリフロー処理温度に晒されても高い電荷保持率rを維持することができる。そのため、このエレクトレット構体1を有する第1の実施形態に係る静電誘導型変換素子は、Pbフリー半田を用いたリフローで基板に実装することが可能になる。又、第1の実施形態に係るエレクトレット構体1は、負電荷が島状シリカ領域201の深い準位にトラップされるため、電荷はフッ素樹脂フィルム21に拡散せず、高い電荷保持率rが維持できる。そのため、このエレクトレット構体1を有する静電誘導型変換素子の最大許容変位が向上する。
次に、フッ素樹脂フィルム21からの島状シリカ領域201の脱落防止策について、図15に示す第1及び第2の変形例を用いて説明する。フッ素樹脂フィルム21を被覆する島状シリカ領域201は、負電荷が付着することでフッ素樹脂フィルム21を介して背面電極22との間に強い静電力が働く。例えば、フッ素樹脂フィルム21の厚さ12.5μm、比誘電率2.2で表面電位−1kVの場合、島状シリカ領域201には124kPa以上の静電力が作用する(静電力は、誘電率と電界強度の二乗の積で表される)。このような強い静電力により吸着しているため、日常生活での振動や落下程度の衝撃では、島状シリカ領域201が脱落することはない。それでも島状シリカ領域201の脱落が懸念されるような衝撃が加わる場合は、図15(a)に示すように、シリカ凝集体からなる島状シリカ領域201の上に、フッ素樹脂からなる被覆フィルム301を積層することで脱落を防ぐことができる。
図15(a)に示す本発明の第1の実施形態の変形例(第1変形例)に示すように、島状シリカ領域201からなるシリカ層20が形成されたフッ素樹脂フィルム21の面を覆う被覆フィルム301を設け、この被覆フィルム301を、島状シリカ領域201の上面、及び、島状シリカ領域201の間のフッ素樹脂フィルム21の上面(表面)に被着されるようにすれば、このエレクトレット構体1aでは、負電荷が付着した島状シリカ領域201と背面電極22との間に、フッ素樹脂フィルム21を介して強い静電力が働くため、日常生活での振動や落下程度の衝撃では、島状シリカ領域201がフッ素樹脂フィルム21から脱落する恐れはない。それでも島状シリカ領域201の脱落が懸念されるような衝撃が加わる場合は、シリカ層20が形成されたフッ素樹脂フィルム21上にフッ素樹脂などの被覆フィルム301を積層することで脱落を防ぐことができる。
図15(a)に示す第1の実施形態の第1変形例においては、フッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルムの下面に形成された背面電極22と、フッ素樹脂フィルム21の上面に形成されたシリカ層20を構成する島状シリカ領域201と、島状シリカ領域201を被覆する被覆フィルム301によって、エレクトレット構体1aが定義される。
島状シリカ領域201の上に積層する被覆フィルム301は、基材のフッ素樹脂フィルム21上に単に積層し、被覆フィルム301とフッ素樹脂フィルム21とが乾燥接触しているだけでもよく、又、加熱して被覆フィルム301とフッ素樹脂フィルム21を溶着しても構わない。又、エレクトレット化するときは、基材のフッ素樹脂フィルム21上にシリカ凝集体からなる島状シリカ領域201を塗布後、コロナ放電によるチャージを行って島状シリカ領域201に負電荷を付着させてから、被覆フィルム301を積層してもよいし、被覆フィルム301を積層後に、チャージを行い、積層した被覆フィルム301上に負電荷を付着させた後に、150℃〜300℃の加熱により負電荷を拡散させて島状シリカ領域201に付着させてもよい。
電極のない被覆フィルム301では、150℃から正孔(正電荷)の拡散が始まる。島状シリカ領域201に接した被覆フィルム301の表面では、負電荷が島状シリカ領域201に拡散し、フッ素樹脂表面に残存する正孔(正電荷)により中和されている。そのため、加熱により正孔が拡散すると島状シリカ領域201に拡散した負電荷だけが残存する。又は、150℃〜300℃に加熱しながら、コロナ放電によりチャージすることでもシリカ凝集体からなる島状シリカ領域201に負電荷を拡散させることができる。
又、図15(b)に示すように、真空蒸着やスパッタリングで島状シリカ領域201を形成した場合は、島状シリカ領域201の脱落の恐れはさらに少なくなるが、島状シリカ領域201の上に上述した手法でフッ素樹脂からなる被覆フィルム301を積層してもよい。図15(b)に示す本発明の第1の実施形態の変形例(第2変形例)においても、図15(a)の第1変形例と同様に、フッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルムの下面に形成された背面電極22と、フッ素樹脂フィルム21の上面に形成されたシリカ層20を構成する島状シリカ領域201と、島状シリカ領域201を被覆する被覆フィルム301によって、エレクトレット構体1bが定義される。又、第1の実施形態の第2変形例に係るエレクトレット構体1bでは、島状シリカ領域201の形成後に、PTFEディスパージョン(AD911L、旭硝子など)をスピンコーティング、ディッピング、スプレーコーティングなどで塗布し、加熱してPTFE膜からなる被覆フィルム301を形成してもよい。
なお、図1では、エレクトレット構体1の電極が背面電極22である場合を示したが、図16に示すように、エレクトレット構体1cの電極は、振動電極10であっても構わない。図16に示す本発明の第1の実施形態の変形例(第3変形例)においては、フッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルム21の上面に形成された振動電極10と、フッ素樹脂フィルム21の下面に形成されたシリカ層20とによって、エレクトレット構体1cが定義される。第1の実施形態の第3変形例に係るエレクトレット構体1cにおいては、フッ素樹脂フィルム21の下面に形成されたシリカ層20は、互いに孤立した状態でフッ素樹脂フィルム21に被着された、複数の島状シリカ領域201で構成されている。図16に示した第1の実施形態の第3変形例から理解できるように、本発明の「エレクトレット構体」の構成の一部を定義する「フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成される電極」は、振動電極でも背面電極でも構わない。
(第2の実施形態)
図17に示すように、本発明の第2の実施形態に係る静電誘導型変換素子(ECM)は、平坦な振動面を有する導電体からなる振動電極(振動子)10と、振動電極10の下面に設けられた絶縁層40と、絶縁層40に対向した平坦な第1主面及びこの第1主面に平行に対向する第2主面で定義されたフッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルム21の上面(第1主面)に形成され、分極方向を揃えたシリカ層20と、フッ素樹脂フィルム21の下面(第2主面)に接合された背面電極22と、振動電極10の振動面の変位に伴い振動電極10と背面電極22間に誘導される電荷を測定する静電誘導電荷測定手段(13,R,C,E)とを備えるマイクロフォンカプセルである。シリカ層20は、互いに孤立した状態でフッ素樹脂フィルム21に被着されたシリカ凝集体からなる複数の島状シリカ領域201で構成されているが、背面電極22から複数の島状シリカ領域201のそれぞれの下面に向かうフッ素樹脂フィルム21中の分極方向が揃っている。
第1の実施形態に係るECMと同様に、第2の実施形態に係るECMにおいても、図17に示すフッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルムの下面に形成された背面電極22と、フッ素樹脂フィルム21の上面に形成されたシリカ層20とを備える積層構造体の全体によって「エレクトレット構体」が定義されるが、図1に示した第1の実施形態に係るECMの構造と比べて、振動電極10の島状シリカ領域201との対向面側に絶縁層40が形成されている点だけが相違している。フッ素樹脂フィルム21及び背面電極22には、振動電極10の振動を抑制しないように、フッ素樹脂フィルム21と振動電極10との間に定義されるギャップ空間に通じる孔16a,16bが設けられ、さらに、エレクトレット構体1及び振動電極10が、金属ケース15に収納されている等の他の特徴は、第1の実施形態に係るECMと同様であるので、重複した説明を省略する。
図17に示す第2の実施形態に係るECMでは、過大な音圧により振動電極10及び絶縁層40が大きく撓み、シリカ凝集体からなる島状シリカ領域201が絶縁層40に接触しても、島状シリカ領域201の深いトラップ準位に付着した負電荷は絶縁層40に拡散することはない。図7(a)で説明した第1の実施形態に係るエレクトレット構体1に対する加熱試験の場合と同様に、第2の実施形態に係るエレクトレット構体1においても、フッ素樹脂フィルム21上の負電荷は260℃で漏れてしまうが、島状シリカ領域201を構成するシリカ凝集体の負電荷は漏れない。これは、第2の実施形態に係るエレクトレット構体1においても、負電荷が島状シリカ領域201を構成するシリカ凝集体の深いトラップ準位に付着しているためであり、その結果、フッ素樹脂フィルム21に負電荷が拡散することはない。
そのため、第2の実施形態に係るECMによれば最大許容音圧が向上したマイクロフォンカプセルを作製することができる。一般的にECMは、音圧により振動電極10がエレクトレットであるフッ素樹脂フィルム21に接触し、負電荷が漏れることで劣化が生じる。そのため、ECMの最大許容音圧は、このような接触が生じない音圧とされている。しかし、図17に示した第2の実施形態に係るECMでは、振動電極10の下面に設けられた絶縁層40が島状シリカ領域201に接触しても、島状シリカ領域201に付着した負電荷は、絶縁層40に拡散することがないため、ECMは劣化しない。そのため、第2の実施形態に係るECMによれば、最大許容音圧を大幅に向上させることができる。
第2の実施形態に係るECMの絶縁層40は、リフロー温度に耐える耐熱性の高い材料で構成する必要がある。第2の実施形態に係るECMの絶縁層40の形成には、次のような方法が考えられる:
(1)フッ素樹脂、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、 PEN(ポリエチレンナフタレート)などのフィルムに振動電極10を蒸着、PVD,スパッタリングで形成し、フィルムを絶縁層40とする、
(2)フッ素樹脂フィルム21を振動電極10に溶着する、
(3)PTFEディスパージョンやポリイミドワニスをスピンコーティングやディッピングで振動電極10に塗付し加熱して絶縁層40を形成する、
(4)酸化物(アルミナ、酸化クロム、チタニア、ジルコニアなど)を蒸着、PVD、CVD、スパッタリングで振動電極10にコーティングする。
以上述べたとおり、第2の実施形態に係るエレクトレット構体1によれば、Pbフリー半田のリフロー処理温度に晒されても高い電荷保持率rを維持することができる。そのため、このエレクトレット構体1を有する第2の実施形態に係る静電誘導型変換素子は、Pbフリー半田を用いたリフローで基板に実装することが可能になる。又、第2の実施形態に係るエレクトレット構体1は、負電荷が島状シリカ領域201の深い準位にトラップされるため、島状シリカ領域201に振動電極10側の絶縁層40が強く接触しても、負電荷は絶縁層40に拡散せず、高い電荷保持率rが維持できる。そのため、このエレクトレット構体1を有する静電誘導型変換素子は、振動電極10側の絶縁層40が島状シリカ領域201に接触する程の大きな変位にも対応可能であり、静電誘導型変換素子の最大許容変位が、第2の実施形態に係るエレクトレット構体1を用いることで向上する。
(第3の実施形態)
図18に示すように、本発明の第3の実施形態に係る静電誘導型変換素子(ECM)は、平坦な振動面を有する導電体からなる振動電極(振動子)10と、振動電極10の振動面に対向した平坦な上面及びこの上面に平行に対向する下面で定義されたフッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルム21の上面に形成され、複数の島状シリカ領域201と、フッ素樹脂フィルム21の下面に接合された背面電極22と、振動電極10の振動面の変位に伴い振動電極10と背面電極22間に誘導される電荷を測定する静電誘導電荷測定手段(13,R,C,E)とを備えるマイクロフォンカプセルである。互いに孤立した状態でフッ素樹脂フィルム21に被着された複数の島状シリカ領域201がシリカ層を構成しているが、背面電極22から複数の島状シリカ領域201のそれぞれの下面に向かうフッ素樹脂フィルム21中の分極方向が揃っている。
第3の実施形態に係るECMにおいても、第1及び第2の実施形態に係るECMと同様に、図18に示すフッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルムの下面に形成された背面電極22と、フッ素樹脂フィルム21の上面に形成された複数の島状シリカ領域201とを備える積層構造体の全体によって、「エレクトレット構体」が定義されるが、第1及び第2の実施形態に係るECMの構造と比べて、フッ素樹脂フィルム21上のシリカ凝集体からなる島状シリカ領域201の分布密度が均一でない点だけが相違しているが、エレクトレット構体1及び振動電極10等が金属ケース15に収納されている等他の特徴は、図1に示した第1の実施形態に係るECMと同様であるので、重複した説明を省略する。
図1に示した第1の実施形態に係るECMのようにフッ素樹脂フィルム21上の島状シリカ領域201の分布密度が均一なECMでは、振動電極10の中心部が大きく撓んでギャップ幅が狭まり、中心部のみがECMとして有効なエリアとなる。これに対して、図18に示す第3の実施形態に係るECMでは、周辺部のシリカ凝集体からなる島状シリカ領域201の面密度を高めているため、周辺部の電界が中心部より高くなり、振動電極10の周辺部の撓が大きくなる。
その結果、第3の実施形態に係るECMによれば、ECMとして有効なエリアが広がり、図1に示した第1の実施形態に係るECMの構造と比べてギャップ間の静電容量が増加する。そのため、ノイズを低減でき、感度の向上につながる。又、面積あたりの静電容量が増加することにより、ECMを小型化することが可能となる。このように、第3の実施形態に係るECMのエレクトレット構体1は、複数の島状シリカ領域201を構成するシリカ凝集体の形成パターンを制御してエレクトレット構体1の電位分布を制御することが可能である。
以上述べたとおり、第3の実施形態に係るのエレクトレット構体1によれば、Pbフリー半田のリフロー処理温度に晒されても高い電荷保持率rを維持することができる。そのため、このエレクトレット構体((201,21,22)を有する第3の実施形態に係る静電誘導型変換素子は、Pbフリー半田を用いたリフローで基板に実装することが可能になる。又、第3の実施形態に係るエレクトレット構体1は、負電荷が島状シリカ領域201の深い準位にトラップされるため、電荷はフッ素樹脂フィルム21に拡散せず、高い電荷保持率rが維持できる。そのため、このエレクトレット構体1を有する静電誘導型変換素子の最大許容変位が向上する。
(第4の実施形態)
図19に示すように、本発明の第4の実施形態に係る静電誘導型変換素子(ECM)は、平坦な振動面を有する導電体からなる振動電極(振動子)10と、振動電極10の下面に設けられた絶縁層40と、絶縁層40に対向した平坦な上面及びこの上面に平行に対向する下面で定義されたフッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルム21の上面に形成され、複数の島状シリカ領域201と、フッ素樹脂フィルム21の下面に接合された背面電極22とを備える。互いに孤立した状態でフッ素樹脂フィルム21に被着され、それぞれがシリカ凝集体からなる複数の島状シリカ領域201で、フッ素樹脂フィルム21上にシリカ層を構成しているが、背面電極22から複数の島状シリカ領域201のそれぞれの下面に向かうフッ素樹脂フィルム21中の分極方向が揃っている。図示を省略しているが、振動電極10の振動面の変位に伴い振動電極10と背面電極22間に誘導される電荷を測定するFET等の静電誘導電荷測定手段が設けられている。
第1〜第3の実施形態に係るECMと同様に、第4の実施形態に係るECMにおいても、図19に示すフッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルムの下面に形成された背面電極22と、フッ素樹脂フィルム21の上面に形成された複数の島状シリカ領域201からなるシリカ層とを備える積層構造体の全体によって「エレクトレット構体」が定義される。第4の実施形態に係るECMは、振動電極10の下面に絶縁層40が設けられている点では、図17に示した第2の実施形態に係るECMと類似な構造ではあるが、フッ素樹脂フィルム21上に形成した島状シリカ領域201を、振動電極10側の絶縁層40とフッ素樹脂フィルム21との間隔を保つスペーサとしても利用している点が、第2の実施形態に係るECMとは異なる。
第4の実施形態に係るECMにおいて、島状シリカ領域201の深いトラップ準位に付着した負電荷は、島状シリカ領域201が絶縁層40と接触しても、絶縁層40に拡散することはない。したがって、第4の実施形態に係るECMは、振動電極10と背面電極22との間に極めて狭いギャップ(マイクロギャップ)を有するように構成することが可能であり、耐圧に優れている。このため、第4の実施形態に係る静電誘導型変換素子はECMの他、超音波などを検出する検出装置に適用することも可能であり、広帯域に対応できる。
第4の実施形態に係るECMの製造は、次のように行う。振動電極10のギャップ空間側にフッ素樹脂フィルム等からなる絶縁層40を形成する。次に、フッ素樹脂フィルム21を背面電極22に溶着し、フッ素樹脂フィルム21上に島状シリカ領域201を形成してコロナ放電によりチャージを行う。次に、島状シリカ領域201をスペーサとして、絶縁層40を形成した振動電極10を積層し、ECMを組み立てる。なお、島状シリカ領域201は、振動電極10側の絶縁層40上に形成してもよい。
図19に示す第4の実施形態に係るECMの構造をすべてフッ素樹脂フィルムで作製し、折り畳むことにより高性能で薄くフレキシブルな加速度センサを製造することができる。具体的なフレキシブルな加速度センサの製造例を以下に示す。
振動電極10及び背面電極22はいずれも厚さ10μmのAlフィルムとし、絶縁層40及びフッ素樹脂フィルム21は厚さ12.5μmのPFAフィルムとした。PFAフィルムからなる絶縁層40はAlフィルムからなる振動電極10に溶着し、PFAフィルムからなるフッ素樹脂フィルム21はAlフィルムからなる背面電極22に溶着した。シリカ凝集体からなる島状シリカ領域201は図7のサンプルIと同様の手順と条件でインクジェットプリンティングによりフッ素樹脂フィルム21に塗布した。
そして、エレクトレット構体1にコロナ放電によるチャージを行い、その表面電位を-1kVとした。そして、エレクトレット構体1と対向する電極層(10、40)を積層し、図20(a)に示すような40×40mmの大きさのフレキシブル構造を実現した。図20(a)に示すように、このフレキシブル構造は、振動電極(振動子)10と、振動電極10の下面に設けられた絶縁層40と、絶縁層40に対向したフッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルム21の上面に形成された複数の島状シリカ領域201と、フッ素樹脂フィルム21の下面に接合された背面電極22とを備える。
その後さらに、銅テープを用いて背面電極22の一部に背面電極側引出電極51を設けた後,図20(a)に示すように、背面電極22の側が折り込まれるように、第1の折り曲げ線I−Iを介して、この40×40mmの大きさのセンサを両面テープ52を用いて2つ折りに折り畳んで接着すると、図20(b)に示すように40×20mmの大きさになる。さらに、図20(b)に示すように、第2の折り曲げ線II−IIを介して、この40×20mmの大きさのセンサを両面テープ53を用いて2つ折りに折り畳んで接着し、最終的に4つ折りに畳み込んで、図20(c)に示すように、20×20mmの大きさに小型化した。
そして、銅テープを用いて振動電極10に振動電極側引出電極54を設け、表面保護のために表面に厚さ40μmのPPテープを接着して、第4の実施形態に係る変換素子64を製造した。
この4つ折りに畳み込まれた第4の実施形態に係る変換素子64を加速度センサとして用いて、図21のような測定を行った。厚さ2mm,300x400mmのアルミニウム板61に、第4の実施形態に係る変換素子64と市販の加速度センサ63(富士セラミックス,S2SG)63を、振動発生点62から対照の位置となるように取付た。第4の実施形態に係る変換素子64と市販の加速度センサ63のそれぞれの出力は、電荷増幅器(チャージアンプ)65を介してオシロスコープ66に接続した。そして、アルミニウム板61の振動発生点62を手で叩く、アルミニウム板61の振動発生点62の上にゴム球や鉄球を落下させる、アルミニウム板61の振動発生点62を圧電アクチュエータで振動させるなどして、1Hz〜100kHzまでの振動をアルミニウム板61の振動発生点62に発生させ,その際のアルミニウム板61の表面の加速度を測定した。
その結果を図22に示す。図22は、市販の加速度センサ63に対する製造した第4の実施形態に係る変換素子64の出力比の周波数特性を示しているが、1Hz〜10kHzにおいて、市販の加速度センサ63より第4の実施形態に係る変換素子64の感度が高いことが分かり、その平均出力比は10dBであった。
市販の加速度センサ63の体積は、123mm3に対して、製造した第4の実施形態に係る変換素子64の体積は200mm3であり、やや大きいが十分小型化されている。又、第4の実施形態に係る変換素子64の厚さが0.5mmであることから容易に変形可能であり、第4の実施形態に係る変換素子64は曲面などにも取り付け可能である。市販の加速度センサ63は取付のためにネジなどの固定具が必要であるが、第4の実施形態に係る変換素子64は両面テープで強固に取り付けることが可能である。
以上述べたとおり、第4の実施形態に係るエレクトレット構体1によれば、Pbフリー半田のリフロー処理温度に晒されても高い電荷保持率rを維持することができる。そのため、このエレクトレット構体1を有する第4の実施形態に係る静電誘導型変換素子は、Pbフリー半田を用いたリフローで基板に実装することが可能になる。又、第4の実施形態に係るエレクトレット構体1は、負電荷が島状シリカ領域201の深い準位にトラップされるため、島状シリカ領域201に振動電極10側の絶縁層40が強く接触しても、負電荷は絶縁層40に拡散せず、高い電荷保持率rが維持できる。そのため、第4の実施形態に係るエレクトレット構体1を有する静電誘導型変換素子は、振動電極10側の絶縁層40が島状シリカ領域201に接触する程の大きな変位にも対応可能であり、静電誘導型変換素子の最大許容変位が、第4の実施形態に係るエレクトレット構体1を用いることで向上する。
さらに、市販のECMと同等のコストで第4の実施形態に係る変換素子64を製造できることから、第4の実施形態に係る変換素子64は市販の加速度センサ63より大幅にコストを削減できる。このように図19に示した第4の実施形態に係る静電誘導型変換素子の構造を利用することで、高性能かつ安価な加速度センサの製造が可能となる。又、第4の実施形態に係る静電誘導型変換素子に交流電圧を負荷すると、静電力により静電誘導型変換素子が振動し、スピーカとして使用することができる。第4の実施形態に係る静電誘導型変換素子によれば、エレクトレット構体1によりギャップ部に高電界が作用しているため、エレクトレット構体1を使用しない静電スピーカより大幅に大きな静電力を得ることができる。
(第5の実施形態)
図23に示すように、本発明の第5の実施形態に係る静電誘導型変換素子(ECM)は、平坦な振動面を有する導電体からなる振動電極(振動子)10と、振動電極10の下面に設けられた絶縁層40と、絶縁層40に対向した平坦な上面及びこの上面に平行に対向する下面で定義されたフッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルム21の上面に形成され、複数の島状シリカ領域201と、フッ素樹脂フィルム21の下面に接合された背面電極221とを備える。互いに孤立した状態でフッ素樹脂フィルム21に被着され、それぞれがシリカ凝集体からなる複数の島状シリカ領域201で、フッ素樹脂フィルム21上にシリカ層を構成しているが、背面電極22から複数の島状シリカ領域201のそれぞれの下面に向かうフッ素樹脂フィルム21中の分極方向が揃っている。
図示を省略しているが、振動面の変位に伴い振動電極10と背面電極221間に誘導される電荷を測定するFET等の静電誘導電荷測定手段が設けられている。第1〜第4の実施形態に係るECMと同様に、第5の実施形態に係るECMにおいても、図23に示すフッ素樹脂フィルム21と、フッ素樹脂フィルムの下面に形成された背面電極221と、フッ素樹脂フィルム21の上面に形成された複数の島状シリカ領域201からなるシリカ層とを備える積層構造体の全体によって「エレクトレット構体1d」が定義される。
第5の実施形態に係るECMは、図19に示した第4の実施形態に係るECMとほぼ類似な構造をなしているが、図19に示した第4の実施形態に係るECMと違って、背面電極221の厚さを振動電極10と同程度の厚さに設定し、フレキシブルなECMを構成している。又、フッ素樹脂フィルム21と絶縁層40との間に定義されるギャップ空間を、複数の空間に分けるための空洞部411が設けられたフッ素樹脂フィルムからなるスペーサ層41fが、絶縁層40とフッ素樹脂フィルム21との間に配置されており、スペーサ層41fの空洞部411の位置に、スペーサを兼ねるシリカ凝集体からなる島状シリカ領域201が配置されている。このフッ素樹脂フィルムからなるスペーサ層41fは、ECMが曲げられたりしたときに、振動電極10と背面電極221との間に大きなずれが発生する可能性があるため、それを防ぐ目的で設けられている。スペーサ層41fと絶縁層40、及び、スペーサ層41fとフッ素樹脂フィルム21の間は、接着するようにしてもよい。
第5の実施形態に係るECMの製造は、次のように行われる。振動電極10のギャップ空間側にフッ素樹脂フィルムからなる絶縁層40を形成する。次に、フッ素樹脂フィルム21を背面電極22に溶着し、フッ素樹脂フィルム21に、空洞部411が設けられたフッ素樹脂フィルムからなるスペーサ層41fを積層して一体化する。次いで、空洞部411の位置のフッ素樹脂フィルム21上に島状シリカ領域201を形成してコロナ放電によりチャージする。次に、その上に振動電極10を重ね、フッ素樹脂フィルムからなるスペーサ層41fを加熱・溶着して、振動電極10と背面電極22同士を接着し、変形によるずれを防ぐ。
スペーサ層41fの加熱には、スペーサ層41fのみに接触する孔の空いた金属板や金属製の突起をスペーサ層41fに押し当て、金属板又は突起を加熱する。この処理で溶融したスペーサ層41fに対し、振動電極10の絶縁層40を押し付けて、絶縁層40をスペーサ層41fに溶着する。このとき、溶着には310〜400℃程度の温度に加熱することが必要となるため、スペーサ層41fの周辺部も300℃近い温度に達する恐れがある。しかし、島状シリカ領域201をエレクトレット化すれば、高温での電荷保持特性が向上するので、このような溶着にも耐えられるフレキシブルECMを作製することが可能となる。なお、スペーサ層41fを挿入せずに、孔の空いた金属板や金属製の突起を島状シリカ領域201が形成されていないフッ素樹脂フィルム21の部位に押し当てて加熱溶融し、溶融箇所に振動電極10の絶縁層40を押し付けて、絶縁層40をフッ素樹脂フィルム21に溶着しても構わない。
第5の実施形態に係るECMは、非常に薄く製造することが可能である。例えば、フッ素樹脂フィルム21と絶縁層40に、厚さ12.5μmのPFAフィルムを使用し、島状シリカ領域201の高さを25μmとし、振動電極10と背面電極221をアルミニウム蒸着層とした場合、厚さ50μm程度のフィルム状センサとなる。これは容易に折り畳み可能な厚さであるため、大面積のフィルム状センサを、図20に示したのと同様に、折り畳んで小型化することが可能である。この場合、センサの静電容量を飛躍的に高めることができるので、回路の寄生容量の影響が無視できるようになる。そのため、図16等に示す増幅器(FET)13を第5の実施形態に係るフィルム状センサから離して設置することや、増幅器(FET)13を用いずに直接電気信号を得ることが可能となる。
なお、本発明者が先に提案した特許文献4には、絶縁体の微粒子の粒径によって規定される極めて狭いギャップを有しているため、超音波プローブとして使用することができる機械電気変換素子について記載されている。この特許文献4に記載の機械電気変換素子においては、エレクトレット層と絶縁層との間に定義されるギャップ空間に配置された絶縁体の微粒子が、ギャップ空間のスペーサとして機能している点で、第5の実施形態に係るECMとは異なる。即ち、第5の実施形態に係るECMのような、絶縁体の微粒子に負電荷を選択的に付着させ、負電荷が保持された絶縁体の微粒子をエレクトレット構体の一部として用いるというような技術的思想は、特許文献4に記載された発明には開示も示唆もされていない。しかしながら、特許文献4に記載された機械電気変換素子と同様な手法を用いれば、第5の実施形態に係るECMを、マイクロフォン以外の超音波プローブ等に応用できることも可能である。即ち、第5の実施形態に係るECMも、スペーサ層41fと島状シリカ領域201とによって規定される極めて狭いギャップ空間を有しているため、超音波プローブとして使用することができる。
本発明の第5の実施形態に係る静電誘導型変換素子(ECM)は、ギャップ空間のスペーサを兼ねる島状シリカ領域201がエレクトレット化されている点で、特許文献4に記載された機械電気変換素子と全く異なっているが、狭いギャップ空間を有する点では類似しており、特許文献4に記載された機械電気変換素子と同様に、超音波プローブとしても使用することができる。第5の実施形態に係る静電誘導型変換素子(ECM)は、島状シリカ領域201の深いトラップ準位に負電荷が付着しているため、高温での電荷保持特性が優れており、リフロー処理に耐えられる超音波プローブを作製することができる。又、この超音波プローブの島状シリカ領域201に付着した負電荷は、島状シリカ領域201が絶縁層40と接触しても、絶縁層40に拡散することがないため、特許文献4に記載された機械電気変換素子と同様に耐圧性に優れている。
第5の実施形態に係るエレクトレット構体1dによれば、Pbフリー半田のリフロー処理温度に晒されても高い電荷保持率rを維持することができる。そのため、第5の実施形態に係るエレクトレット構体1dを有する第5の実施形態に係る静電誘導型変換素子は、Pbフリー半田を用いたリフローで基板に実装することが可能になる。又、第5の実施形態に係るエレクトレット構体1dは、負電荷が島状シリカ領域201の深い準位にトラップされるため、島状シリカ領域201に振動電極10側の絶縁層40が強く接触しても、負電荷は絶縁層40に拡散せず、高い電荷保持率rが維持できる。そのため、第5の実施形態に係るエレクトレット構体1dを有する静電誘導型変換素子は、振動電極10側の絶縁層40が島状シリカ領域201に接触する程の大きな変位にも対応可能であり、静電誘導型変換素子の最大許容変位が、第5の実施形態に係るエレクトレット構体1dを用いることで向上する。
又、第5の実施形態に係る静電誘導型変換素子は、耐圧性に優れることから振動電極10の厚さを増せば、振動による振動電極10の慣性力を電気信号に変換することで、加速度センサとして使用することも可能である。第5の実施形態に係る加速度センサは、折り曲げ可能であるため、従来の加速度センサでは設置が困難な曲面などの複雑な形状面にも容易に貼り付けて使用することができる。又、図23のような構造で大面積に製造することも容易であり、例えば安価な平面スピーカとしての利用が考えられる。第5の実施形態に係る静電誘導型変換素子は、4つ折り等に折り畳めることから持ち運びが容易であり、表面保護層を印刷面とすればポスターとしても利用できる。即ち,第5の実施形態に係る静電誘導型変換素子は、平面スピーカの特長である高い指向性と、表面が印刷可能な高いデザイン性,折り畳や貼り付けが容易な高い携帯性を併せ持つフレキシブルスピーカとしての利用することも可能である。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1〜第5の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、図15(a)に示した第1の実施形態の第1変形例、又は図15(b)に示した第1の実施形態の第2変形例の構造を、図16に示す第1の実施形態の第3変形例に係るエレクトレット構体1cに適用してもよい。第1の実施形態の第3変形例に係るエレクトレット構体1cに適用した場合も、島状シリカ領域201が形成されたフッ素樹脂フィルム21の面を覆う被覆フィルムを設け、この被覆フィルムを、島状シリカ領域201の上面、及び、島状シリカ領域201の間のフッ素樹脂フィルム21の表面に被着されるようにすれば、このエレクトレット構体1では、負電荷が付着した島状シリカ領域201と振動電極10との間に、フッ素樹脂フィルム21を介して強い静電力が働くため、日常生活での振動や落下程度の衝撃では、島状シリカ領域201がフッ素樹脂フィルム21から脱落する恐れはないように構成できる。それでも島状シリカ領域201の脱落が懸念されるような衝撃が加わる場合は、シリカ層20が形成されたフッ素樹脂フィルム21上にフッ素樹脂などの被覆フィルム301を積層することで脱落を防ぐことができる。
同様に、上述した第1の実施形態に係るエレクトレット構体1の背面電極22の表面の平滑化処理を、図16に示す第1の実施形態の第3変形例に係るエレクトレット構体1cに適用してもよい。図16に示す第1の実施形態の第3変形例に係るエレクトレット構体1cでは、フッ素樹脂フィルム21の一方の面に形成される振動電極10の表面を、平滑化処理すればよい。振動電極10の表面が粗いと、振動電極10とフッ素樹脂フィルム21との界面の密着性が低下し、局部的な電界集中が発生する。この局部的な電界集中により、振動電極10からフッ素樹脂フィルム21に正孔が容易に注入され、エレクトレット構体の電荷保持率が低下するので、振動電極10の表面を平滑化することで、局部的な電界集中による振動電極10からフッ素樹脂フィルム21への正孔の注入が抑制できる。
同様に、上述した第1の実施形態に係るエレクトレット構体1の背面電極22の表面の絶縁層コーティングの処理を、図16に示す第1の実施形態の第3変形例に係るエレクトレット構体1cに適用してもよい。図16の第1の実施形態の第3変形例に係るエレクトレット構体1では、フッ素樹脂フィルム21の一方の面に形成される振動電極10の表面を、耐熱性が高く密着性の良好な絶縁層で被覆すればよい。エレクトレット構体1を構成する振動電極10に、密着性の良好な絶縁層をコーティングすることによって、振動電極10とフッ素樹脂フィルム21との界面欠陥を減らすことができ、界面欠陥による振動電極10からフッ素樹脂フィルム21への正孔の注入が抑制できる。
よって、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
本発明のエレクトレット構体は、Pbフリー半田のリフロー処理が可能であり、エレクトレット構体が組み込まれるECM、超音波センサ、加速度センサ、地震計、発電素子,スピーカ、イヤホンなどの技術分野に利用可能であり、これらの技術分野における製造工程を大幅に改善することができる。
1,1a,1b.1c,1d,1p…エレクトレット構体
10…振動電極
11…エレクトレットフィルム
12…背面電極
13…FET
14…スペーサリング
15…金属ケース
16a,16b…孔
20…シリカ層
21…フッ素樹脂フィルム
22…背面電極
30…スプレーノズル
31…マスク
40…絶縁層
41f…スペーサ層
51…背面電極側引出電極
52,53…両面テープ
54…振動電極側引出電極
61…アルミニウム板
62…振動発生点
63…加速度センサ
64…変換素子
66…オシロスコープ
201…島状シリカ領域
201r…霧
221…背面電極
301…被覆フィルム
411…空洞部
63…加速度センサ

Claims (25)

  1. フッ素樹脂フィルムと、
    前記フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成された電極と、
    前記フッ素樹脂フィルムの他方の面に形成されたシリカ層と、
    を有し、前記シリカ層が、互いに孤立した状態で前記フッ素樹脂フィルムを被覆する複数の島状シリカ領域からなり、前記島状シリカ領域に負電荷が付着されていることを特徴とするエレクトレット構体。
  2. 請求項1に記載のエレクトレット構体であって、前記フッ素樹脂フィルムが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)又はポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)の少なくとも1を含むことを特徴とするエレクトレット構体。
  3. 請求項2に記載のエレクトレット構体であって、前記島状シリカ領域のすべてによって被覆される被覆面積の前記フッ素樹脂フィルムの前記他方の面全体の表面積に対する被覆比率が、5%以上、90%以下であり、
    1つの前記島状シリカ領域によって被覆される被覆面積と前記被覆比率との積が0.5mm2以下であることを特徴とするエレクトレット構体。
  4. 請求項3に記載のエレクトレット構体であって、前記島状シリカ領域の相互間の間隔が100nm以上であることを特徴とするエレクトレット構体。
  5. 請求項4に記載のエレクトレット構体であって、前記島状シリカ領域が非晶質シリカ微粒子のシリカ凝集体からなることを特徴とするエレクトレット構体。
  6. 請求項4に記載のエレクトレット構体であって、前記島状シリカ領域が非晶質シリカ又は多結晶シリカの薄膜からなることを特徴とするエレクトレット構体。
  7. 請求項6に記載のエレクトレット構体であって、前記薄膜が多孔質膜であることを特徴とするエレクトレット構体。
  8. 請求項1に記載のエレクトレット構体であって、前記シリカ層が形成された前記フッ素樹脂フィルムの面を覆う被覆フィルムを有し、該被覆フィルムが、前記島状シリカ領域の上面、及び、前記島状シリカ領域の間の前記フッ素樹脂フィルムの上面に被着されていることを特徴とするエレクトレット構体。
  9. 請求項1に記載のエレクトレット構体であって、前記フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成される前記電極の表面が、平滑化処理されていることを特徴とするエレクトレット構体。
  10. 請求項1に記載のエレクトレット構体であって、前記フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成される前記電極の表面が、絶縁層で被覆されていることを特徴とするエレクトレット構体。
  11. フッ素樹脂フィルムと、前記フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成された電極と、前記フッ素樹脂フィルムの他方の面に形成されたシリカ層とを有するエレクトレット構体の製造方法であって、
    非晶質シリカの微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルを前記フッ素樹脂フィルムの前記他方の面に吹き付けて、複数の島状シリカ領域を互いに孤立した状態で前記他方の面上に形成し、前記複数の島状シリカ領域によって前記シリカ層を形成し、
    前記島状シリカ領域に負電荷が付着させること、
    を含むことを特徴とするエレクトレット構体の製造方法。
  12. 請求項11に記載のエレクトレット構体の製造方法であって、前記フッ素樹脂フィルムの上方に前記島状シリカ領域の形状を規定するマスクを配置し、該マスクを通して前記シリカゾルを前記フッ素樹脂フィルムに吹き付けることを特徴とするエレクトレット構体の製造方法。
  13. 請求項12に記載のエレクトレット構体の製造方法であって、前記シリカゾルを吹き付けるスプレーノズル、及び、金属で形成した前記マスクを負電位に設定し、前記フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成した電極を正電位に設定して、前記シリカゾルを前記フッ素樹脂フィルムに吹き付けることを特徴とするエレクトレット構体の製造方法。
  14. 請求項1に記載のエレクトレット構体の製造方法であって、非晶質シリカの微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルをインクジェットプリンティングで前記フッ素樹脂フィルムに塗布し、前記島状シリカ領域を形成することを特徴とするエレクトレット構体の製造方法。
  15. 請求項1に記載のエレクトレット構体の製造方法であって、非晶質シリカの微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルをスクリーン印刷で前記フッ素樹脂フィルムに塗布し、前記島状シリカ領域を形成することを特徴とするエレクトレット構体の製造方法。
  16. 請求項11、14又は15に記載のエレクトレット構体の製造方法であって、前記フッ素樹脂フィルム上に前記島状シリカ領域が形成された前記エレクトレット構体を加熱することを特徴とするエレクトレット構体の製造方法。
  17. 請求項16に記載のエレクトレット構体の製造方法であって、前記島状シリカ領域に負電荷が付着される前の前記エレクトレット構体を100℃以上に加熱して、前記島状シリカ領域から余剰な水分を除去することを特徴とするエレクトレット構体の製造方法。
  18. 請求項16に記載のエレクトレット構体の製造方法であって、前記島状シリカ領域に負電荷が付着された後の前記エレクトレット構体を180℃以上、300℃以下に加熱し、その後に、前記島状シリカ領域への負電荷の付着を再び行うことを特徴とするエレクトレット構体の製造方法。
  19. 請求項16に記載のエレクトレット構体の製造方法であって、前記島状シリカ領域に負電荷を付着する際に、前記エレクトレット構体を180℃以上、300℃以下に加熱しながら前記負電荷の付着を行うことを特徴とするエレクトレット構体の製造方法。
  20. フッ素樹脂フィルムと、前記フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成された電極と、前記フッ素樹脂フィルムの他方の面に形成されたシリカ層とを有するエレクトレット構体の製造方法であって、
    PVD又はCVDにより非晶質シリカ又は多結晶シリカの薄膜からなる複数の島状シリカ領域を前記フッ素樹脂フィルムの前記他方の面上に互いに孤立した状態で形成し、前記複数の島状シリカ領域によって前記シリカ層を形成し、
    前記島状シリカ領域に負電荷が付着させること
    を含むことを特徴とするエレクトレット構体の製造方法。
  21. フッ素樹脂フィルムと、前記フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成されたシリカ層と、前記フッ素樹脂フィルムの他方の面に形成された電極とを有するエレクトレット構体の製造方法であって、
    前記フッ素樹脂フィルムの一方の面に前記シリカ層を構成する複数の島状シリカ領域を互いに孤立した状態で形成し、
    その後、前記フッ素樹脂フィルムの他方の面に前記電極を溶着で形成するときに、同時に、前記島状シリカ領域への負電荷の付与を行うこと
    を含むことを特徴とするエレクトレット構体の製造方法。
  22. フッ素樹脂フィルムと、
    前記フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成された背面電極と、
    前記フッ素樹脂フィルムの他方の面に形成されたシリカ層と、
    前記フッ素樹脂フィルムの他方の面上の前記シリカ層に対向して配置された振動電極と、
    該振動電極の前記シリカ層への対向面に設けられた絶縁層と、
    を備え、前記シリカ層が、互いに孤立した状態で前記フッ素樹脂フィルムを被覆する複数の島状シリカ領域からなり、前記島状シリカ領域に負電荷が付着されていることを特徴とする静電誘導型変換素子。
  23. 請求項22に記載の静電誘導型変換素子であって、前記島状シリカ領域が、前記絶縁層と前記フッ素樹脂フィルムとの間隔を保つスペーサを兼ねていることを特徴とする静電誘導型変換素子。
  24. 請求項23に記載の静電誘導型変換素子であって、前記背面電極が折曲可能な厚さを有し、全体が柔軟性を有することを特徴とする静電誘導型変換素子。
  25. フッ素樹脂フィルムと、
    前記フッ素樹脂フィルムの一方の面に形成された背面電極と、
    前記フッ素樹脂フィルムの他方の面に形成されたシリカ層と、
    前記フッ素樹脂フィルムの他方の面上の前記シリカ層に対向して配置された振動電極と、
    を備え、前記シリカ層が、互いに孤立した状態で前記フッ素樹脂フィルムを被覆する複数の島状シリカ領域からなり、
    該複数の島状シリカ領域の前記フッ素樹脂フィルム上での分布密度が、前記振動電極の周辺部に対向する領域で高く、前記振動電極の中央部に対向する領域で低いことを特徴とする静電誘導型変換素子。
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