JP3644952B1 - 耐熱性エレクトレットおよびその製造方法、並びに静電型音響センサー - Google Patents
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Abstract
【課題】 金属部材とPTFEフィルムとの接着性を向上させ、高温での電荷保持性能が高いエレクトレットを提供する。
【解決手段】 金属部材3の表面に樹脂フィルム2を接着した耐熱性エレクトレット用積層板1であって、樹脂フィルム2がポリテトラフルオロエチレンからなり、樹脂フィルム2の片面の水滴接触角が110°以下であり、樹脂フィルム2の前記片面と金属部材3とが接着されている耐熱性エレクトレット用積層板を用いてエレクトレットを作製する。
【選択図】 図1
【解決手段】 金属部材3の表面に樹脂フィルム2を接着した耐熱性エレクトレット用積層板1であって、樹脂フィルム2がポリテトラフルオロエチレンからなり、樹脂フィルム2の片面の水滴接触角が110°以下であり、樹脂フィルム2の前記片面と金属部材3とが接着されている耐熱性エレクトレット用積層板を用いてエレクトレットを作製する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、イヤホン、ヘッドホンまたはマイクロホン等に使用されるエレクトレットおよびその製造方法、並びに静電型音響センサーに関する。
従来よりイヤホン、ヘッドホンまたはマイクロホン等に使用されるエレクトレットとしては、金属シートにエレクトレットを構成しうる熱可塑性樹脂フィルムをラミネートし、この樹脂をエレクトレット化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)の微粒子が分散された有機溶媒を金属板に塗布して薄膜を形成し、その薄膜をエレクトレット化する方法(例えば、特許文献2参照。)、また金属板にFEPの微粒子が分散されたスプレー液を噴霧した後、焼成してエレクトレット化する方法(例えば、特許文献3参照。)等も提案されている。
特開昭64−44010号公報
特開平11−150795号公報
特開2000−115895号公報
しかし、従来のFEPを使用したエレクトレットを用いてマイクロホン等を製造する際にフロー装置やリフロー装置による半田付けを行うと、半田付けの際の高温によりエレクトレットの機能が低下するという問題があった。特に最近では鉛フリー半田が多用されるにともない、半田付け時の温度がさらに高温の260℃程度となり、エレクトレットの機能自体が喪失するという大きな問題が生じるおそれがある。
この問題を解決するために、耐熱性が高いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるフィルムを使用してエレクトレットを製造することも考えられる。しかし、純粋なPTFEからなるフィルムは接着性が悪く、金属板と貼り合わせてエレクトレットを製造すると、金属板からPTFEフィルムが剥がれ易く、エレクトレットの性能を維持できなくなるという問題があった。
本発明は、エレクトレットに用いるPTFEフィルムの接着性を向上させ、耐熱性が高いエレクトレットおよびそれを用いた静電型音響センサーを提供する。
本発明の耐熱性エレクトレットは、金属部材の表面に樹脂フィルムを接着した耐熱性エレクトレットであって、前記樹脂フィルムがポリテトラフルオロエチレンからなり、前記樹脂フィルムの片面の水滴接触角が110°以下であり、前記樹脂フィルムの片面と前記金属部材とが接着されていることを特徴とする。
また、本発明の耐熱性エレクトレットは、金属部材の表面に樹脂フィルムを接着した耐熱性エレクトレットであって、前記樹脂フィルムがポリテトラフルオロエチレンからなり、前記金属部材側の前記樹脂フィルムの片面のみが、易接着処理されていることを特徴とする。
また、本発明の耐熱性エレクトレットの製造方法は、ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルムの片面に易接着処理を施す工程と、金属部材の表面に、前記フィルムの易接着処理を施した面を接着する工程とを含むことを特徴とする。
また、本発明の静電型音響センサーは、上記耐熱性エレクトレットを備えたことを特徴とする。
PTFEからなるフィルムの接着面に易接着処理を施すことにより、PTFEフィルムの接着性を向上して、高温での電荷保持性能が高いエレクトレットを提供できる。
先ず、本発明の耐熱性エレクトレットの実施の形態について説明する。
本発明の耐熱性エレクトレットの一例は、金属部材の表面に樹脂フィルムを接着した耐熱性エレクトレットであって、上記樹脂フィルムがポリテトラフルオロエチレンからなり、上記樹脂フィルムの第1主面の水滴接触角が110°以下、より好ましくは60°以下であり、上記樹脂フィルムの第1主面と上記金属部材とが接着されていることを特徴とする。
金属部材側の樹脂フィルムの片面(第1主面)における水滴接触角を110°以下とすることにより、金属部材と樹脂フィルムとの接着性が向上し、エレクトレットの性能が安定的に維持できる。また、樹脂フィルムにPTFEフィルムを用いることにより、エレクトレットの高温での電荷保持性能を向上できる。さらに、樹脂フィルムとしてPTFEフィルムを用いることにより、製品表面に防汚性、耐薬品性、撥水性、耐候性等の優れた機能を付与でき、エレクトレットのフレキシビリティが損なわれず、また、エレクトレットのエンボス加工なども比較的容易に出来る。
また、金属部材と反対側の樹脂フィルムの片面(第2主面)における水滴接触角を111°以上とすれば、高温での電荷保持性能をより効果的に維持できる。
なお、本発明における水滴接触角とは、蒸留水を用いて測定した接触角を意味する。
また、本発明の耐熱性エレクトレットの他の一例は、金属部材の表面に樹脂フィルムを接着した耐熱性エレクトレットであって、上記樹脂フィルムがPTFEからなり、上記金属部材側の上記樹脂フィルムの片面のみが易接着処理されていることを特徴とする。
これにより、金属部材と樹脂フィルムとの接着性が向上し、エレクトレットの性能が安定的に維持できる。また、樹脂フィルムにPTFEフィルムを用いることにより、エレクトレットの高温での電荷保持性能を向上できる。さらに、樹脂フィルムとしてPTFEフィルムを用いることにより、製品表面に防汚性、耐薬品性、撥水性、耐候性等の優れた機能を付与でき、エレクトレットのフレキシビリティが損なわれず、また、エレクトレットのエンボス加工なども比較的容易に出来る。
また、樹脂フィルムの片面のみを易接着処理することにより、高温での電荷保持性能を維持できる。
上記易接着処理としては、化成処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタリング処理などが含まれ、これらの中でも特に簡易な製造設備で実施できる化成処理がより好ましい。
上記金属部材と上記樹脂フィルムとの180°ピール強度は、0.5N/cm以上であることが好ましく、1.0N/cm以上であることがより好ましい。
また、上記樹脂フィルムは、その誘電率が2.1以下であり、その体積抵抗率が1.0×1018Ωcm以上であることが好ましい。なお、誘電率の下限値は、空気の誘電率=1に近いほど好ましい。
上記PTFEフィルムの厚さは特に限定されないが、通常5〜400μm、好ましくは10〜50μmである。この範囲内であれば、エレクトレットの特性を維持しつつ、エレクトレットの薄型化、小型化が図れるからである。
上記金属部材としては、例えば、金属板、金属シート等を使用できる。また、上記金属部材は、黄銅、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、チタン、洋白、リン青銅、それらの合金、それらがメッキされた金属およびそれらが蒸着された金属から選ばれた少なくとも1つから形成されていることが好ましい。これらの金属は耐蝕性、電気伝導性、加工性の点で優れているからである。
次に、本発明の耐熱性エレクトレットの製造方法の実施の形態について説明する。
本発明の耐熱性エレクトレットの製造方法の一例は、PTFEからなるフィルムの片面に易接着処理を施す工程と、金属部材の表面に、上記フィルムの易接着処理を施した面を接着する工程とを含むことを特徴とする。
これにより、金属部材と樹脂フィルムとの接着性が向上し、性能が安定したエレクトレットを提供できる。また、樹脂フィルムにPTFEフィルムを用いることにより、高温での電荷保持性能が向上したエレクトレットを提供できる。なお、PTFEの融点は約330℃であるため、加工温度が300℃程度になるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いてもマイクロホン等を製造できる。さらに、樹脂フィルムとしてPTFEフィルムを用いることにより、製品表面に防汚性、耐薬品性、撥水性、耐候性等の優れた機能を付与でき、エレクトレットのフレキシビリティが損なわれず、また、エレクトレットのエンボス加工なども比較的容易に出来る。
上記易接着処理としては、化成処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタリング処理などが含まれ、これらの中でも特に簡易な製造設備で実施できる化成処理がより好ましい。
上記金属部材としては、例えば、金属板、金属シート等を使用できる。なお、上記金属部材の使用にあたっては、先ず油脂等の付着のないものを用い、さらには上記樹脂フィルムとの接着性を良くするために下地処理を行うことが好ましい。下地処理としては、例えば、陽極酸化、化成処理による皮膜の形成或いはカップリング剤の利用、その他接着性を改善する方法等が挙げられる。
上記金属部材と上記樹脂フィルムとの接着は、加熱ロールおよび加熱源を有さないロールの一対からなる圧着ロールのうち、加熱ロール側に金属部材を供給し、加熱源を有さないロール側に樹脂フィルムを供給しつつ、上記圧着ロールの間に上記金属部材および上記樹脂フィルムを挿入し、上記金属部材と上記樹脂フィルムとの接触時間を1〜3秒、接触帯幅を1〜20mmに制御し、上記金属部材と上記樹脂フィルムとを熱圧着することにより行うことができる。
これらの方法により得られたエレクトレット用積層板は、所定の大きさに切断され、次にコロナ放電等により分極帯電された後、エージング処理が行われてエレクトレットが完成し、このエレクトレットはイヤホン、ヘッドホンまたはマイクロホン等に利用される。
次に、本発明の静電型音響センサーの実施の形態を説明する。
本発明の静電型音響センサーの一例は、上記で説明した本実施形態の耐熱性エレクトレットを備えたことを特徴とする。これにより、性能が安定した静電型音響センサーを提供できる。静電型音響センサーとしては、例えば、マイクロホン、イヤホン、ヘッドホン、補聴器、超音波センサー、加速度センサーなどが含まれる。
以下、実施例と比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
化成処理により片面のみが易接着処理されている厚さ25μmのPTFEフィルム(日東電工製“921UL”)を準備した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を蒸留水を用いた接触角計(協和界面科学製“CA−DT”)により測定したところ、易接着処理がされている面では53°、易接着処理がされていない面では118°であった。
化成処理により片面のみが易接着処理されている厚さ25μmのPTFEフィルム(日東電工製“921UL”)を準備した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を蒸留水を用いた接触角計(協和界面科学製“CA−DT”)により測定したところ、易接着処理がされている面では53°、易接着処理がされていない面では118°であった。
次に、このPTFEフィルムの易接着処理された面と、厚さ0.2mmのステンレス鋼板とを、エポキシ系接着剤を介して加熱ロールを用いて熱圧着し、縦50cm、横20cmの大きさに切断して実施例1のエレクトレット用積層板を作製した。熱圧着は、温度340℃、圧力0.5MPaで行った。
図1は、本実施例で作製したエレクトレット用積層板の断面図である。本実施例のエレクトレット用積層板1は、PTFEからなるフィルム2とステンレス鋼板3とがエポキシ系接着剤(図示せず)を介して熱圧着されて形成されている。
(実施例2)
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)の片面に、化成処理剤(潤工社製“テトラエッチA”)を塗布して10秒間保持し、その後メタノールで洗浄後、さらに水で洗浄して乾燥させることにより、化成処理により片面が易接着処理されているPTFEフィルムを準備した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、易接着処理がされている面では44°、易接着処理がされていない面では112°であった。
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)の片面に、化成処理剤(潤工社製“テトラエッチA”)を塗布して10秒間保持し、その後メタノールで洗浄後、さらに水で洗浄して乾燥させることにより、化成処理により片面が易接着処理されているPTFEフィルムを準備した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、易接着処理がされている面では44°、易接着処理がされていない面では112°であった。
次に、このPTFEフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のエレクトレット用積層板を作製した。
(実施例3)
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)の片面をマスクし、プラズマ処理装置(日放電子製“PCB”)によりプラズマ処理を行った。プラズマ処理の条件は、プラズマ発生源の周波数:40kHz、電源出力:5kW、使用ガス:窒素および酸素の混合ガス、ガス圧力:33Pa、電極温度:25℃、照射時間:5秒であった。その後、マスクを除去することにより、プラズマ処理により片面が易接着処理されているPTFEフィルムを準備した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、易接着処理がされている面では106°、易接着処理がされていない面では118°であった。
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)の片面をマスクし、プラズマ処理装置(日放電子製“PCB”)によりプラズマ処理を行った。プラズマ処理の条件は、プラズマ発生源の周波数:40kHz、電源出力:5kW、使用ガス:窒素および酸素の混合ガス、ガス圧力:33Pa、電極温度:25℃、照射時間:5秒であった。その後、マスクを除去することにより、プラズマ処理により片面が易接着処理されているPTFEフィルムを準備した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、易接着処理がされている面では106°、易接着処理がされていない面では118°であった。
次に、このPTFEフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のエレクトレット用積層板を作製した。
(実施例4)
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)の片面をコロナ放電処理装置(ナビスタ製“ポロダイン1”)によりコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理の条件は、印加電圧:10kV、電極−試料間距離:2mm、処理速度:4.5m/分であった。このようにしてコロナ放電処理により片面が易接着処理されているPTFEフィルムを準備した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、易接着処理がされている面では100°、易接着処理がされていない面では124°であった。
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)の片面をコロナ放電処理装置(ナビスタ製“ポロダイン1”)によりコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理の条件は、印加電圧:10kV、電極−試料間距離:2mm、処理速度:4.5m/分であった。このようにしてコロナ放電処理により片面が易接着処理されているPTFEフィルムを準備した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、易接着処理がされている面では100°、易接着処理がされていない面では124°であった。
次に、このPTFEフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のエレクトレット用積層板を作製した。
(実施例5)
厚さ25μmのPTFEフィルム(日東電工製“920UL”)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして実施例5のエレクトレット用積層板を作製した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、易接着処理がされている面では102°、易接着処理がされていない面では121°であった。
厚さ25μmのPTFEフィルム(日東電工製“920UL”)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして実施例5のエレクトレット用積層板を作製した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、易接着処理がされている面では102°、易接着処理がされていない面では121°であった。
(比較例1)
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)の両面を化成処理したこと以外は、実施例2と同様にして比較例1のエレクトレット用積層板を作製した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、ステンレス鋼板側の接着面では49°、他方の非接着面では60°であった。
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)の両面を化成処理したこと以外は、実施例2と同様にして比較例1のエレクトレット用積層板を作製した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、ステンレス鋼板側の接着面では49°、他方の非接着面では60°であった。
(比較例2)
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)の両面をマスクせずにプラズマ処理したこと以外は、実施例3と同様にして比較例2のエレクトレット用積層板を作製した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、ステンレス鋼板側の接着面では108°、他方の非接着面では107°であった。
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)の両面をマスクせずにプラズマ処理したこと以外は、実施例3と同様にして比較例2のエレクトレット用積層板を作製した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、ステンレス鋼板側の接着面では108°、他方の非接着面では107°であった。
(比較例3)
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)の両面をコロナ放電処理したこと以外は、実施例4と同様にして比較例3のエレクトレット用積層板を作製した。
このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、ステンレス鋼板側の接着面では109°、他方の非接着面では102°であった。
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)の両面をコロナ放電処理したこと以外は、実施例4と同様にして比較例3のエレクトレット用積層板を作製した。
このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、ステンレス鋼板側の接着面では109°、他方の非接着面では102°であった。
(比較例4)
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)に化成処理を一切行わなかったこと以外は、実施例2と同様にして比較例4のエレクトレット用積層板を作製した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、ステンレス鋼板側の接着面では118°、他方の非接着面では125°であった。
厚さ25μmのPTFEフィルム(中興化成工業製“MSF−100”)に化成処理を一切行わなかったこと以外は、実施例2と同様にして比較例4のエレクトレット用積層板を作製した。このPTFEフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、ステンレス鋼板側の接着面では118°、他方の非接着面では125°であった。
(比較例5)
両面とも易接着処理がされていない厚さ25μmのFEPフィルム(ダイキン工業製“NF−0025”)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例5のエレクトレット用積層板を作製した。このFEPフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、ステンレス鋼板側の接着面では111°、他方の非接着面では118°であった。
両面とも易接着処理がされていない厚さ25μmのFEPフィルム(ダイキン工業製“NF−0025”)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例5のエレクトレット用積層板を作製した。このFEPフィルムの表面の水滴接触角を実施例1と同様にして測定したところ、ステンレス鋼板側の接着面では111°、他方の非接着面では118°であった。
次に、これらの実施例1〜5および比較例1〜5のエレクトレット用積層板を用いて、ステンレス鋼板と樹脂フィルムとの180°ピール強度、およびエレクトレット用積層板の表面電位残存率を測定した。また、エレクトレットの実際の製造工程を模したプレス加工試験と洗浄試験とを行った。
180°ピール強度は、ピール強度試験機(島津製作所製“AGS−H”)を用いて測定した。
また、エレクトレット用積層板の表面電位残存率は、次のようにして測定した。まず、マイナスのコロナ放電にて温度25℃でエレクトレットを分極処理し、その直後の表面電位を表面電位計(Trek社製“model 344”)にて測定した。続いて、270℃にて10分間保持した後、その表面電位を同様にして測定した。そして、エレクトレット用積層板を分極処理した直後の表面電位を基準(100%)として、270℃で10分間保持した後の表面電位をその相対値(%)として求めた。なお、上記コロナ放電処理の条件は、印加電圧:−5kV、グリッド電圧:−200V、電極−試料間距離:2mm、処理時間:10秒とした。
プレス加工試験は、実施例1〜5および比較例1〜5で縦50cm、横20cmの大きさに切断したエレクトレット用積層板を、20tonのプレスを用いて直径4.5mmの円盤状に打ち抜き、エレクトレットの端部におけるステンレス鋼板と樹脂フィルムとの剥離具合を観察した。
洗浄試験は、上記プレス加工したエレクトレットを超音波洗浄機(シャープ製“UT−604R”)を用いてアセトン中で5分間超音波洗浄し、エレクトレットの端部におけるステンレス鋼板と樹脂フィルムとの間へのアセトンの浸入具合を観察した。
以上の結果を表1に示す。表1において、プレス加工試験と洗浄試験の結果は、両試験の後のエレクトレットを観察し、樹脂フィルムの剥離がなく、アセトンの浸入がないものを○、樹脂フィルムの剥離はないが、アセトンの浸入が若干見られるものを△、樹脂フィルムの剥離が発生し、アセトンの浸入があるものを×として示した。
また、表2には、参考までに実施例1〜5および比較例1〜5で使用した樹脂フィルムの接着面と非接着面の表面粗さRaを示した。上記接触角の大きさは、表面粗さに影響されるからである。表面粗さは、小阪研究所製の表面粗さ計“SE−3500”を用いて測定した。
表1から明らかなように、実施例1〜5は、表面電位残存率がすべて20%以上となり、プレス加工試験および洗浄試験においてもほぼ満足する結果となった。特に、化成処理を施した実施例1および実施例2は、従来のFEPを用いた比較例5と同程度のピール強度を示した。一方、無処理のPTFEを用いた比較例4はプレス加工試験および洗浄試験でPTFEフィルムの剥離によるアセトンの浸入が認められ、FEPを用いた比較例5は表面電位残存率が0%となり、いずれもエレクトレットとしては不適格であった。
次に、実施例2および比較例1〜3のエレクトレットを用いて耐湿試験を行った。耐湿試験は、エレクトレット用積層板を温度60℃、湿度80%の雰囲気に配置して、経過時間毎の表面電位残存率を前述と同様にして測定した。即ち、マイナスのコロナ放電にて温度25℃で試料を分極処理し、その直後の表面電位を表面電位計(Trek社製“model 344”)にて測定した。続いて、エレクトレット用積層板を温度60℃、湿度80%の雰囲気に配置して一定時間経過後にその表面電位を同様にして測定した。そして、エレクトレット用積層板を分極処理した直後の表面電位を基準(100%)として、一定時間経過後の表面電位をその相対値(%)として求めた。なお、上記コロナ放電処理の条件は前述と同様とした。その結果を図2に示す。
図2から明らかなように、接着面のみを化成処理した実施例2は150分経過しても表面電位残存率はほとんど低下しなかった。一方、比較例1〜3は時間の経過に伴って表面電位残存率が低下した。特に、両面を化成処理した比較例1は耐湿試験開始直後から急激に表面電位残存率が低下した。これは、PTFEフィルムの両面を化成処理したことにより、エレクトレット用積層板の表面が極めて濡れやすくなり、水分の付着により電荷が中性化したものと考えられる。
PTFEからなるフィルムの接着面にのみ易接着処理を施すことにより、PTFEフィルムの接着性を向上でき、高温での電荷保持性能が高いエレクトレットおよびそれを用いた各種の静電型音響センサーを提供でき、その工業的価値は大である。
1 エレクトレット用積層板
2 フィルム
3 ステンレス鋼板
2 フィルム
3 ステンレス鋼板
Claims (11)
- 金属部材の表面に樹脂フィルムを接着した耐熱性エレクトレットであって、
前記樹脂フィルムが、ポリテトラフルオロエチレンからなり、
前記樹脂フィルムの片面の水滴接触角が、110°以下であり、
前記樹脂フィルムの片面と前記金属部材とが接着され、
前記金属部材と前記樹脂フィルムとの180°ピール強度が、0.5N/cm以上であることを特徴とする耐熱性エレクトレット。 - 金属部材の表面に樹脂フィルムを接着した耐熱性エレクトレットであって、
前記樹脂フィルムが、ポリテトラフルオロエチレンからなり、
前記樹脂フィルムの片面の水滴接触角が、110°以下であり、
前記樹脂フィルムの片面と前記金属部材とが接着され、
前記樹脂フィルムは、その誘電率が2.1以下、その体積抵抗率が1.0×10 18 Ωcm以上であることを特徴とする耐熱性エレクトレット。 - 金属部材の表面に樹脂フィルムを接着した耐熱性エレクトレットであって、
前記樹脂フィルムが、ポリテトラフルオロエチレンからなり、
前記金属部材側の前記樹脂フィルムの片面のみが、易接着処理され、
前記金属部材と前記樹脂フィルムとの180°ピール強度が、0.5N/cm以上であることを特徴とする耐熱性エレクトレット。 - 金属部材の表面に樹脂フィルムを接着した耐熱性エレクトレットであって、
前記樹脂フィルムが、ポリテトラフルオロエチレンからなり、
前記金属部材側の前記樹脂フィルムの片面のみが、易接着処理され、
前記樹脂フィルムは、その誘電率が2.1以下、その体積抵抗率が1.0×10 18 Ωcm以上であることを特徴とする耐熱性エレクトレット。 - 前記易接着処理が、化成処理、コロナ処理、プラズマ処理、およびスパッタリング処理から選ばれた少なくとも一つの処理である請求項3または4に記載の耐熱性エレクトレット。
- 前記金属部材が、金属板である請求項1〜5のいずれかに記載の耐熱性エレクトレット。
- 前記金属部材が、黄銅、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、チタン、洋白、リン青銅、それらの合金、それらがメッキされた金属およびそれらが蒸着された金属から選ばれた少なくとも1つから形成されている請求項1〜6のいずれかに記載の耐熱性エレクトレット。
- 請求項3〜7のいずれかに記載の耐熱性エレクトレットの製造方法であって、
ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルムの片面に易接着処理を施す工程と、
金属部材の表面に、前記フィルムの易接着処理を施した面を接着する工程と、
を含むことを特徴とする耐熱性エレクトレットの製造方法。 - 前記易接着処理が、化成処理、コロナ処理、プラズマ処理、およびスパッタリング処理から選ばれた少なくとも一つの処理である請求項8に記載の耐熱性エレクトレットの製造方法。
- 前記金属部材が、金属板である請求項8または9に記載の耐熱性エレクトレットの製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の耐熱性エレクトレットを備えたことを特徴とする静電型音響センサー。
Priority Applications (8)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003383818A JP3644952B1 (ja) | 2003-11-13 | 2003-11-13 | 耐熱性エレクトレットおよびその製造方法、並びに静電型音響センサー |
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