JP6213493B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、キャニスタから脱離させた蒸発燃料を含むパージガスが吸気通路に供給可能に構成されたエンジンの制御装置に関する技術分野に属する。
従来より、例えば特許文献1に示されているように、パージ流量とパージガスの燃料濃度とに基づいてパージ燃料流量を推定し、パージ燃料流量に対するシリンダ吸入量を推定し、該シリンダ吸入量推定値に基づいて燃料噴射量を推定するものが知られている。このときのシリンダ吸入量は、パージ燃料流量に対して、輸送時間遅れ分を遅らせるとともに、パージガスの中の粒子径(重さ)のバラツキに起因した進行方向に対する移動バラツキを考慮するようになましを入れて算出している。
特開平6−101517号公報
導入されたパージガスは吸気マニホールド内を層流(ポアズイユ流れ)となって流れ、その分布は時間とともに吸気マニホールドの内径中心から放射状に拡散するようなテーパー状になる。つまり、パージガス導入後は、輸送遅れ時間が経過したのち、吸気マニホールドの内径中心部分のパージガスから先に気筒内に流入し、その後パージガスが吸気マニホールド全体に拡がって一定のパージガスが気筒内に入るようになる。このときの輸送遅れ時間とパージガスの先端部分の流入が完了するまでの時間は充填量によって変化するが、特許文献1ではそのことが考慮されていない。このため、特許文献1に開示されたエンジンの蒸発燃料処理装置では正確な噴射量制御が困難である。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パージガス導入後の過渡時においてもより正確に気筒内に流入するパージガス量を推定して燃料の噴射制御を行うことができ、エミッションを向上させることにある。
上記の目的を達成するために、本発明では、キャニスタから脱離させた蒸発燃料を含むパージガスが吸気通路に供給可能に構成されたエンジンの制御装置を対象として、上記パージガスを上記エンジンの吸気通路に供給するパージを実行するパージ実行手段と、上記パージ実行手段による上記パージの実行時に、過渡変化後の定常状態において上記エンジンの気筒内に導入されている上記蒸発燃料の供給量を推定する蒸発燃料供給量推定手段と、上記エンジンの排気量、上記エンジンの回転数、上記気筒の吸気ポートの燃焼室側の開口を開閉する吸気弁の開タイミング、及び上記気筒の燃焼室への吸入空気量を調整するスロットルバルブの開度から単位時間当たりに上記気筒内に流入する空気量である気筒内流入空気量を算出し、予め計算して記憶部に記憶している吸気管内ガス流路体積を上記気筒内流入空気量で除算して流路体積処理時間を算出し、上記蒸発燃料供給量推定手段の出力値の変化の開始タイミングを上記流路体積処理時間に応じて遅らせるとともに該出力値の変化をなますように該出力値を補正して、上記気筒内に流入する蒸発燃料を推定する気筒内流入蒸発燃料推定手段と、上記気筒内流入蒸発燃料推定手段の出力値に基づいて、インジェクタにより噴射される燃料噴射量を制御する燃料噴射制御手段と、を備える、という構成とした。
上記の構成により、蒸発燃料のパージ実行後の過渡時において、単位時間当たりにエンジンの気筒内に流入する空気量に応じて、気筒内に流入する蒸発燃料の輸送遅れ時間を調整することができ、より正確に気筒内に流入するパージガス量を推定して燃料の噴射制御を行うことができ、エミッションを向上させることができるようになる。
上記エンジンの制御装置において、上記気筒内流入蒸発燃料推定手段は、上記気筒内に流入する空気量が多いほど上記蒸発燃料供給量推定手段の出力値の変化の開始タイミングの遅延量を小さくするように該出力値を補正するように構成されている、ことが好ましい。
この構成により、気筒内に流入する蒸発燃料の推定が好適に実現される。
上記エンジンの制御装置において、上記気筒内流入蒸発燃料推定手段は、上記気筒内に流入する空気量が多いほど上記蒸発燃料供給量推定手段の出力値の変化を急峻にするように該出力値を補正するように構成されている、ことが好ましい。
この構成により、気筒内に流入する蒸発燃料の推定が好適に実現される。
上記エンジンの制御装置において、上記気筒内流入蒸発燃料推定手段は、2次フィルタリングにより上記蒸発燃料供給量推定手段の出力値の変化をなますように該出力値を補正するように構成されている、ことが好ましい。
このことで、気筒内流入蒸発燃料推定手段による推定値を実測値によく追従させることができる。
以上説明したように、本発明のエンジンの制御装置によると、気筒内流入蒸発燃料推定手段が、推定された蒸発燃料の供給量の変化の開始タイミングを、短時間当たりに気筒内に流入する空気量に応じて遅らせるとともに該蒸発燃料の供給量の変化をなまして、気筒内に流入する蒸発燃料を推定するように構成されていることにより、パージガス導入後の過渡時においてもより正確に気筒内に流入するパージガス量を推定して燃料の噴射制御を行うことができ、エミッションを向上させることができる。
本発明の実施形態に係る制御装置により制御されるエンジンの概略構成を示す図である。 エンジンの制御系の構成を示すブロック図である。 気筒内流入蒸発燃料推定の処理内容を示すブロック図である。 気筒内流入空気量が少ない場合の気筒内流入蒸発燃料の実測値及び推定値を示すグラフである。 気筒内流入空気量が多い場合の気筒内流入蒸発燃料の実測値及び推定値を示すグラフである。 制御装置による燃料噴射制御の処理動作を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置100(図2参照)により制御されるエンジン1の概略構成を示す。このエンジン1は、車両に搭載された過給機付きガソリンエンジンであって、複数の気筒2(図1では、1つのみ示す)が直列に設けられたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配設されたシリンダヘッド4とを有している。このエンジン1の各気筒2内には、シリンダヘッド4との間に燃焼室6を区画するピストン5が往復動可能にそれぞれ嵌挿されている。このピストン5は、コンロッド7を介して不図示のクランク軸と連結されている。このクランク軸には、該クランク軸の回転角度位置を検出するための検出板8が一体回転するように固定され、この検出板8の回転角度位置を検出することでエンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ9が設けられている。
上記シリンダヘッド4には、各気筒2毎に吸気ポート12及び排気ポート13が形成されているとともに、これら吸気ポート12及び排気ポート13の燃焼室6側の開口を開閉する吸気弁14及び排気弁15がそれぞれ配設されている。吸気弁14は吸気弁駆動機構16により、排気弁15は排気弁駆動機構17により、それぞれ駆動される。吸気弁14及び排気弁15は、それぞれ吸気弁駆動機構16及び排気弁駆動機構17により所定のタイミングで往復動して、それぞれ吸気ポート12及び排気ポート13を開閉し、気筒2内のガス交換を行う。吸気弁駆動機構16及び排気弁駆動機構17は、それぞれ、上記クランク軸に駆動連結された吸気カムシャフト16a及び排気カムシャフト17aを有し、これらのカムシャフト16a,17aはクランク軸の回転と同期して回転する。また、吸気弁駆動機構16は、吸気カムシャフト16aの位相を所定の角度範囲内で連続的に変更可能な、液圧式又は機械式の位相可変機構(Variable Valve Timing:VVT)を含んで構成されている。
上記シリンダブロック3の上側(シリンダヘッド4側)端部には、各気筒2毎に、燃料(本実施形態では、ガソリン)を噴射するインジェクタ18が設けられている。このインジェクタ18は、その燃料噴射口が燃焼室6に臨むように配設されていて、圧縮行程上死点付近で燃焼室6内に燃料を直接噴射供給するようになっている。尚、インジェクタ18は、シリンダヘッド4に設けてもよい。
インジェクタ18は、燃料供給管21を介して燃料タンク22に接続されている。この燃料タンク22内には、燃料ポンプ23が燃料に浸るように配置されており、この燃料ポンプ23は、先端にストレーナ24が接続されかつ燃料を吸い込む吸込管23aと、その吸い込んだ燃料を吐出する吐出管23bとを有し、この吐出管23bはレギュレータ25を介して上記インジェクタ18に接続されている。そして、燃料ポンプ23は、吸込管23aより燃料を吸い上げて、その燃料を吐出管23bより吐出して、レギュレータ25により調圧した状態でインジェクタ18へ送出する。尚、詳細には、燃料供給管21は、気筒列方向に延びる燃料分配管(図示せず)に接続され、この燃料分配管が、各気筒2のインジェクタ18に接続され、該燃料分配管により、燃料ポンプ23からの燃料が各気筒2のインジェクタ18に分配されるようになっている。
シリンダヘッド4には、各気筒2毎に、点火プラグ19が配設されている。この点火プラグ19の先端部(電極)は、燃焼室6の天井部近傍に位置している。そして、点火プラグ19は、所望の点火タイミングで火花を発生するようになされており、この火花により、燃料と空気との混合ガスが爆発燃焼することになる。
上記エンジン1の一側の面には、各気筒2の吸気ポート12に連通するように吸気通路30が接続されている。この吸気通路30の上流端部には、吸入空気を濾過するエアクリーナ31が配設されており、このエアクリーナ31で濾過した吸入空気が吸気通路30、及び吸気ポート12を介して各気筒2の燃焼室6に供給される。
上記吸気通路30におけるエアクリーナ31の下流側近傍には、吸気通路30に吸入された吸入空気の流量を検出するエアフローセンサ32が配設されている。また、吸気通路30における下流端近傍には、サージタンク34が配設されている。このサージタンク34よりも下流側の吸気通路30は、各気筒2毎に分岐する独立通路と該独立経路が集合する集合部とを有する吸気マニホールド33によって構成されており、これら各独立通路の下流端が各気筒2の吸気ポート12にそれぞれ接続されている。サージタンク34には、該サージタンク34内の圧力を検出する圧力センサ35が配設されている。
さらに、吸気通路30におけるエアフローセンサ32とサージタンク34との間には、ターボ過給機50のコンプレッサ50aが配設されている。このコンプレッサ50aの作動により吸入空気の過給を行う。
さらにまた、上記吸気通路30におけるターボ過給機50のコンプレッサ50aとサージタンク34との間には、上流側から順に、コンプレッサ50aにより圧縮された空気を冷却するインタークーラ36と、スロットルバルブ37とが配設されている。このスロットルバルブ37は、駆動モータ37aにより駆動されて、該スロットルバルブ37の配設部分における吸気通路30の断面積を変更することによって、上記各気筒2の燃焼室6への吸入空気量を調節する。スロットルバルブ37の開度は、スロットル開度センサ37bにより検出される。
また、本実施形態では、吸気通路30には、コンプレッサ50aをバイパスする吸気バイパス通路38が設けられ、この吸気バイパス通路38には、エアバイパスバルブ39が設けられている。このエアバイパスバルブ39は、通常、全閉状態にあるが、例えばスロットルバルブ37が急激に閉じられたときに、吸気通路30におけるスロットルバルブ37よりも上流側で圧力の急上昇及びサージングが生じてコンプレッサ50aの回転が乱れることにより大きな音が発生するので、それを防止するためにエアバイパスバルブ39が開けられる。
上記エンジン1の他側の面には、各気筒2の燃焼室6からの排気ガスを排出する排気通路40が接続されている。この排気通路40の上流側の部分は、各気筒2毎に分岐して各気筒2の排気ポート13の外側端にそれぞれ接続された独立通路と、該各独立通路が集合する集合部とを有する排気マニホールドによって構成されている。この排気マニホールドよりも下流側の排気通路40に、上記ターボ過給機50のタービン50bが配設されている。このタービン50bが排気ガス流により回転し、このタービン50bの回転により、該タービン50bと連結された上記コンプレッサ50aが作動する。
上記排気マニホールドよりも下流側でかつタービン50bよりも上流側の排気通路40は、第1通路41と第2通路42とに分岐している。第1通路41には、タービン50bに向かう排気ガスの流速を変更するための流速変更バルブ43が設けられている。第2通路42は、流速変更バルブ43の下流側でかつタービン50bの上流側で第1通路41と合流する。
上記排気通路40には、エンジン1の排気ガスを、タービン50bをバイパスして流すための排気バイパス通路46が設けられている。この排気バイパス通路46の排気ガス流入側の端部(上流側の端部)は、排気通路40における第1通路41と第2通路42との合流部と、タービン50bとの間の部分に接続され、排気ガス流出側の端部(下流側の端部)は、排気通路40におけるタービン50bの下流側であって後述の上流側排気浄化装置52の上流側に接続される。
排気バイパス通路46の排気ガス流入側の端部には、駆動モータ47aにより駆動されるウエストゲートバルブ47が設けられている。このウエストゲートバルブ47は、制御装置100によって、エンジン1の運転状態に応じて制御される。ウエストゲートバルブ47が全閉であるときには、排気ガスの全量がタービン50bへと流れ、それ以外の開度であるときには、その開度に応じて、排気バイパス通路46に流れる流量(つまりタービン50bへ流れる流量)が変化する。すなわち、ウエストゲートバルブ47の開度が大きいほど、排気バイパス通路46に流れる流量が多くなり、タービン50bへ流れる流量が少なくなる。ウエストゲートバルブ47の全開時においては、ターボ過給機50は実質的に作動しないことになる。
排気通路40におけるタービン50bよりも下流側(排気バイパス通路46の下流側の端部が接続される部分よりも下流側)には、酸化触媒等で構成されて排気ガス中の有害成分を浄化する排気浄化触媒52,53が配設されている。本実施形態では、上流側排気浄化触媒52と下流側排気浄化触媒53との2つの排気浄化触媒が設けられているが、上流側排気浄化触媒52のみであってもよい。
排気通路40における上流側排気浄化触媒52の上流側近傍には、排気ガス中の酸素濃度に対しリニアな出力特性を示すリニアOセンサ55が配設されている。このリニアOセンサ55は、燃焼室6内の空燃比をフィードバック制御するために排気ガス中の酸素濃度を検出する空燃比センサである。また、排気通路40における上流側及び下流側排気浄化触媒52,53間には、上流側排気浄化触媒52を通過した後の排気ガスの空燃比がストイキないしリッチであるか、又はリーンであるかを検出するOセンサ56が配設されている。
上記エンジン1は、その排気ガスの一部が排気通路40から吸気通路30に還流されるように、EGR通路60を備えている。このEGR通路60は、排気通路40における第1通路41と第2通路42との分岐部の上流側部分と、吸気通路30におけるサージタンク34よりも下流側の各独立通路とを接続する。EGR通路60には、内部を通過する排気ガスを冷却するためのEGRクーラ61と、EGR通路60による排気ガスの還流量を調節するためのEGRバルブ62とが配設されている。
また、エンジン1は、燃焼室6から漏れ出たブローバイガスを吸気通路30に戻すための第1及び第2ベンチレーションホース65,66を備えている。第1ベンチレーションホース65は、シリンダブロック2の下部(クランクケース)とサージタンク34とを接続し、第2ベンチレーションホース66は、シリンダヘッド4の上部と吸気通路30におけるエアクリーナ31とコンプレッサ50aとの間の部分とを接続している。
上記燃料タンク22は、接続管71を介して、内部に活性炭等の吸着剤を収容したキャニスタ70と接続されており、燃料タンク23内で蒸発した蒸発燃料が、接続管71を介してキャニスタ70へと流れて、該キャニスタ70(吸着剤)にトラップされる。キャニスタ70の内部は、外気連通管72を介して外気と連通されている。
上記キャニスタ70は、パージ管73(パージライン)を介して、吸気通路30と接続されている。本実施形態では、パージ管73の吸気通路30側の端部は、吸気通路30におけるコンプレッサ50aの下流側部分であるサージタンク34に接続されている。
パージ管73には、パージバルブ75が設けられている。このパージバルブ75が開状態にありかつサージタンク34内の圧力が負圧である(つまり、ターボ過給機50のコンプレッサ50aにより吸入空気が過給されていない)ときに、外気連通管52内に外気(空気)が導入され、この空気の流れによって、上記キャニスタ70にトラップされている蒸発燃料が該キャニスタ70から脱離して、該脱離した蒸発燃料が上記空気と共にパージガスとしてサージタンク34に供給される(パージが実行される)。サージタンク34(吸気通路30)へのパージガスの供給流量(又は供給量)は、パージバルブ75の開度と、サージタンク34内の圧力(圧力センサ35による検出圧力)と大気圧(後述の大気圧センサ91による検出圧力)との差圧Pdと、で決まる。
図2に示すように、スロットルバルブ37(詳しくは、駆動モータ37a)、インジェクタ18、点火プラグ19,パージバルブ75、流速変更バルブ43、ウエストゲートバルブ47(詳しくは、駆動モータ47a)、EGRバルブ62及びエアバイパスバルブ39は、制御装置100によって、その作動が制御される。制御装置100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納する記憶部90と、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている(記憶部90のみ、図2に示す)。
制御装置100には、エアフローセンサ32、スロットル開度センサ37b、エンジン1が搭載された車両の乗員によるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ92、リニアOセンサ55、Oセンサ56、圧力センサ35、エンジン回転数センサ9等の各種センサの出力値の信号が入力される。本実施形態では、制御装置100には、大気圧を検出する大気圧センサ91が内蔵されている。制御装置100は、各種センサの出力値に基づいて、上記バルブ等の作動を制御する。特に、インジェクタ18の作動制御(燃料噴射制御)は、制御装置100内の燃料噴射制御部100a(燃料噴射制御手段)により行われ、点火プラグ19の作動制御は、制御装置100内の点火制御部100bにより行われ、パージバルブ75の作動制御(開度制御、つまりサージタンク34へのパージガスの供給流量の制御)は、制御装置100内のパージバルブ制御部100cにより行われる。尚、パージバルブ制御部100cによるパージバルブ75の作動制御は、パージバルブ75への制御信号のデューティ比の制御(パージバルブ75のデューティ制御)によって行われる。
また、制御装置100内には、後に詳細に説明する、蒸発燃料供給量推定部100d(蒸発燃料供給量推定手段)、及び、気筒内流入蒸発燃料推定部100e(気筒内流入蒸発燃料推定手段)がさらに設けられている。
上記パージバルブ制御部100cは、エンジン1の運転状態に応じてパージバルブ75の作動(サージタンク34へのパージガスの供給流量)を制御する。本実施形態では、パージ管73(パージライン)、パージバルブ75、及び、パージバルブ制御部100cが、上記パージガスをエンジン1の吸気通路30に供給するパージを実行するパージ実行手段を構成することになる。
例えば、本実施形態では、エンジン1の運転状態が、ターボ過給機50を作動して吸入空気を過給する運転状態にあるときには、サージタンク34内の圧力が負圧にならないので、パージバルブ制御部100cは、パージバルブ75を全閉とし、エンジン1の運転状態が、ターボ過給機50を作動させない運転状態にあるときに、上記パージを実行する。
エンジン1の通常運転時におけるパージの実行時に、不図示の蒸発燃料濃度推定部が、リニアOセンサ55の出力値による空燃比のフィードバック補正量に基づいて、上記パージガス中の蒸発燃料の濃度を推定学習して、その蒸発燃料の濃度の学習値を記憶部90に記憶(更新)する。燃料噴射制御部100aは、上記フィードバック補正量、上記学習値、及び気筒内流入蒸発燃料推定部100eの出力値に応じて燃料噴射量を補正する。
すなわち、吸気通路30のサージタンク34にパージガス(蒸発燃料)が供給されることによる燃焼室6内の空燃比のずれが、リニアOセンサ55により検出される。そして、燃料噴射制御部100aは、その検出値(出力値)に基づいて空燃比(つまり燃料噴射量)をフィードバック補正するとともに、蒸発燃料の濃度の学習値に応じた燃料噴射量の補正によって、そのフィードバック補正の応答遅れを補う。さらに、後述するように、燃料噴射制御部100aは、気筒内流入蒸発燃料推定部100eによって推定された気筒2内に流入する蒸発燃料の変化を考慮して目標となる燃料噴射量を設定し、インジェクタ18による燃料の噴射を制御する。
蒸発燃料供給量推定部100dは、上記パージの実行時に、サージタンク34への上記蒸発燃料の供給量を推定する。
具体的には、先ず、上記減速燃料カット時における上記パージの実行時の目標空燃比(目標A/F)を算出する。例えば、上記学習値と上記目標A/Fとの関係をマップにして予め記憶部90に記憶しておき、このマップを用いて、上記学習値から目標A/Fを算出する。
また、上記学習値より、パージガス全体に対する蒸発燃料の質量比raを算出する。さらに、上記パージの実行時に、燃焼室6内に吸入されかつ排気通路40に排出される全空気質量qaを、エアフローセンサ32の出力値と、上記質量比raと、リニアOセンサ55の出力値とに基づいて算出する。
燃焼室6内の蒸発燃料の質量(パージガス中の蒸発燃料の質量と同じ)をggasとすると、
目標A/F=qa/ggas
という関係より、
ggas=qa/(目標A/F)
となり、この式に、上記算出した目標A/F及び全空気質量qaを代入して、燃焼室6内の蒸発燃料の質量ggasを算出する。
また、パージガス中の空気の質量をgairとすると、
(1−ra):ra=gair:ggasより、
gair=ggas・(1−ra)/ra
となり、この式より、パージガス中の空気の質量gairを算出する。
パージガスにおける蒸発燃料と空気とのトータル質量をgprgとすると、
gprg=ggas+gair
となり、これを体積に置き換えたパージガス体積qprgは、パージガスの密度をcpとして、
qprg=gprg×cp
となる。このパージガス体積qprgは、過渡変化後の定常状態において気筒2内に導入されている蒸発燃料の供給量に相当する。尚、パージガスの密度cpは、パージガス全体に対する蒸発燃料の質量比raに対応した値が、予め記憶部90に記憶されている。
パージバルブ75の開度は、上記パージガス体積qprgと上記差圧Pdとに基づいて決定することができる。
蒸発燃料供給量推定部100dは、上記パージガス体積qprgと上記差圧Pdとに基づいて決定した上記パージバルブ75の開度と、上記学習値とに基づいて、上記パージの実行時の、サージタンク34への蒸発燃料の供給量を推定する。
気筒内流入蒸発燃料推定部100eは、サージタンク34に導入されて気筒2内に流入するパージガスを推定する。上述したように、サージタンク34に導入されたパージガスは吸気マニホールド33内を層流(ポアズイユ流れ)となって流れ、パージガス分布は先端部分が伸びるような形になる。つまり、パージガス導入後は、輸送遅れ時間が経過したのち、先端部分から気筒内に流入し、その後、一定のパージガスが気筒内に入るようになる。そこで、気筒内流入蒸発燃料推定部100eは、パージガスがサージタンク34に導入されて気筒2内に流入するまでのパージガスの輸送遅れ時間、及び気筒2内に流入するパージガスの濃度分布変化を考慮して気筒2内に流入するパージガスを推定する。
図3は、気筒内流入蒸発燃料推定部100eの内部処理(気筒内流入蒸発燃料推定の処理)を示すブロック図である。サージタンク34〜吸気マニホールド33〜吸気ポート12を一つの吸気管と考えて吸気管設計諸元201及び流路調整係数202から吸気管内ガス流路体積203が計算される。吸気管設計諸元201は、例えば、吸気管としてのサージタンク34の長さ、吸気マニホールド33の長さ、吸気ポート12の長さ、吸気マニホールド33の内径等である。吸気マニホールド33及び吸気ポート12の長さについては、複数個の吸気マニホールド33及び吸気ポート12を直列配管したときの長さとする。これら吸気管設計諸元201から得られる吸気管の内容積に流路調整係数202を乗じることで吸気管内ガス流路体積203が計算される。尚、吸気管内ガス流路体積203はエンジン1の固有値であるため、都度計算せずに予め計算して記憶部90に記憶しておくとよい。
また、エンジン排気量204、エンジン回転数205、吸気弁タイミング(吸気弁14の開タイミング)206、及びスロットル開度(スロットルバルブ37の開度)207から単位時間当たりに気筒2内に流入する空気量である気筒内流入空気量208が計算される。気筒内流入空気量208は、エンジン回転数205やスロットル開度207に応じて変化するため、気筒内流入蒸発燃料推定部100eは、気筒内流入空気量208を都度計算する。
そして、気筒内流入蒸発燃料推定部100eは、吸気管内ガス流路体積203を気筒内流入空気量208で除算して流路体積処理時間209を算出する。この流路体積処理時間209が、パージガスがサージタンク34に導入されてその先端部分が気筒2内に流入するまでの輸送遅れ時間に相当する。気筒内流入空気量208が多いほど流路体積処理時間209は短くなる。
気筒内流入蒸発燃料推定部100e(蒸発燃料輸送遅れ処理ブロック211)は、蒸発燃料供給量推定値210に流路体積処理時間209を適用して蒸発燃料の供給に輸送遅れ時間を反映させる。蒸発燃料供給量推定値210は、蒸発燃料供給量推定部100dによって推定された上記パージガス体積qprg、すなわち、蒸発燃料供給量推定部100dの出力値である。具体的には、蒸発燃料輸送遅れ処理ブロック211において、流路体積処理時間209を内部クロック信号のカウント数に変換し、蒸発燃料供給量推定部100dの出力値の立ち上がりを当該カウント数だけ遅延させることで蒸発燃料の供給に輸送遅れ時間を反映させる。
さらに、蒸発燃料供給量推定部100dの出力値の立ち上がりは直線的であるのに対して、実際に気筒2内に流入するパージガスはテーパー状になるため、蒸発燃料供給量推定部100dの出力値の立ち上がり変化になまし処理が必要である。気筒内流入蒸発燃料推定部100eはそのようななまし処理を行う。
具体的には、蒸発燃料変化なまし処理ブロック212において、蒸発燃料輸送遅れ処理ブロック211による輸送遅れ処理後の出力値に対して、2次フィルタリングにより、その立ち上がり変化をなます。そして、なまし処理後の信号を、気筒内流入蒸発燃料推定値として出力する。
より好ましくは、気筒内流入空気量208に応じてフィルタリング特性を変更させるとよい。具体的には、気筒内流入蒸発燃料推定部100eは、気筒内流入空気量208が多いほど蒸発燃料供給量推定部100dの出力値の立ち上がり変化がより急峻になるようにフィルタリング特性を線形に変化させる。
図4は、気筒内流入空気量208が少ない場合の気筒内流入蒸発燃料の実測値及び推定値を示すグラフである。図5は、気筒内流入空気量208が多い場合の気筒内流入蒸発燃料の実測値及び推定値を示すグラフである。両グラフから分かるように、気筒内流入空気量208が多いほど、気筒2内へのパージガスの輸送遅れ時間が短くなるとともにパージガスの供給量の変化が急峻になる。そして、気筒内流入蒸発燃料推定部100eによって推定された気筒2内に流入する蒸発燃料推定値は、実測値によく追従している。
次に、燃料噴射制御部100aによる燃料噴射制御について、図6のフローチャートにより説明する。
最初のステップS1で、気筒2内への吸気の充填量を読み込み、次のステップS2で、気筒内流入蒸発燃料推定値を読み込む。この気筒内流入蒸発燃料推定値は、気筒内流入蒸発燃料推定部100eの出力値である。
次のステップS3で、ステップS1で読み込んだ充填量と、ステップS2で読み込んだ気筒内流入蒸発燃料推定値に基づいて、目標となる燃料噴射量を設定する。そして、次のステップS4で、目標燃料噴射量となるようにインジェクタ18による燃料の噴射を制御し、しかる後にリターンする。
以上のように、本実施形態では、蒸発燃料供給量推定部100dが蒸発燃料の供給量を推定し、気筒内流入蒸発燃料推定部100eがその推定された蒸発燃料の供給量の変化の開始タイミングを、短時間当たりに気筒2内に流入する空気量に応じて遅らせるとともに該蒸発燃料の供給量の変化をなまして、気筒2内に流入する蒸発燃料を推定するので、パージガス導入後の過渡時においてもより正確に気筒2内に流入するパージガス量を推定して燃料の噴射制御を行うことができ、エミッションを向上させることができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上記実施形態では、エンジン1が過給機付きエンジンであるとしたが、過給機を有しないエンジンであってもよい。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
1 エンジン
2 気筒
18 インジェクタ
30 吸気通路
70 キャニスタ
73 パージ管(パージライン)(パージ実行手段)
75 パージバルブ(パージ実行手段)
100 制御装置
100a 燃料噴射制御部(燃料噴射制御手段)
100d 蒸発燃料供給量推定部(蒸発燃料供給量推定手段)
100e 気筒内流入蒸発燃料推定部(気筒内流入蒸発燃料推定手段)

Claims (4)

  1. キャニスタから脱離させた蒸発燃料を含むパージガスが吸気通路に供給可能に構成されたエンジンの制御装置であって、
    上記パージガスを上記エンジンの吸気通路に供給するパージを実行するパージ実行手段と、
    上記パージ実行手段による上記パージの実行時に、過渡変化後の定常状態において上記エンジンの気筒内に導入されている上記蒸発燃料の供給量を推定する蒸発燃料供給量推定手段と、
    上記エンジンの排気量、上記エンジンの回転数、上記気筒の吸気ポートの燃焼室側の開口を開閉する吸気弁の開タイミング、及び上記気筒の燃焼室への吸入空気量を調整するスロットルバルブの開度から単位時間当たりに上記気筒内に流入する空気量である気筒内流入空気量を算出し、予め計算して記憶部に記憶している吸気管内ガス流路体積を上記気筒内流入空気量で除算して流路体積処理時間を算出し、上記蒸発燃料供給量推定手段の出力値の変化の開始タイミングを上記流路体積処理時間に応じて遅らせるとともに該出力値の変化をなますように該出力値を補正して、上記気筒内に流入する蒸発燃料を推定する気筒内流入蒸発燃料推定手段と、
    上記気筒内流入蒸発燃料推定手段の出力値に基づいて、インジェクタにより噴射される燃料噴射量を制御する燃料噴射制御手段と、を備えたことを特徴とするエンジンの制御装置。
  2. 請求項1記載のエンジンの制御装置において、
    上記気筒内流入蒸発燃料推定手段は、上記気筒内に流入する空気量が多いほど上記蒸発燃料供給量推定手段の出力値の変化の開始タイミングの遅延量を小さくするように該出力値を補正するように構成されていることを特徴とするエンジンの制御装置。
  3. 請求項1又は2記載のエンジンの制御装置において、
    上記気筒内流入蒸発燃料推定手段は、上記気筒内に流入する空気量が多いほど上記蒸発燃料供給量推定手段の出力値の変化を急峻にするように該出力値を補正するように構成されていることを特徴とするエンジンの制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジンの制御装置において、
    上記気筒内流入蒸発燃料推定手段は、2次フィルタリングにより上記蒸発燃料供給量推定手段の出力値の変化をなますように該出力値を補正するように構成されていることを特徴とするエンジンの制御装置。
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