以下、本実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の情報処理装置を示す図である。情報処理装置1は、発熱する複数の物体を冷却する複数の送風機の風量を計算する。情報処理装置1は、記憶部1aと演算部1bを有する。記憶部1aは、RAM(Random Access Memory)などの揮発性記憶装置でもよいし、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置でもよい。演算部1bは、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを含み得る。演算部1bはプログラムを実行するプロセッサであってもよい。ここでいう「プロセッサ」には、複数のプロセッサの集合(マルチプロセッサ)も含まれ得る。
記憶部1aは、各物体に対する各送風機による冷却の寄与度の情報を記憶する。冷却の寄与度(冷却寄与度)は、ある物体の発熱量のうち、ある送風機から送られる風が奪う熱量を示す指標である。冷却寄与度は、1つの物体の冷却について各送風機がどの程度寄与するかを示す度合ともいえる。具体的には、1つの物体に着目し、複数の送風機を用いてその物体を冷却するときの全送風機による冷却寄与度の合計を1とする。その合計の中で、各送風機がどの程度、その物体の冷却に寄与するか(その物体の発熱量に対し、どの程度の熱量を奪うか)という割合が、その物体に対する送風機毎の冷却寄与度となる。物体に対して当たる風量が大きい程、奪う熱量も大きいと考えられるから、冷却寄与度は、ある物体に対して送られる風量の送風機毎の比率と考えることもできる。冷却寄与度は、0より大きく1より小さい正の実数である。
例えば、送風機3,4および発熱する物体5,6を空間2に配置し、送風機3,4により物体5,6に送風することで、物体5,6を冷却することを考える。この場合、記憶部1aは冷却寄与度α11,α12,α21,α22を記憶する。冷却寄与度α11は、物体5に対する送風機3の冷却寄与度である。冷却寄与度α12は、物体6に対する送風機3の冷却寄与度である。冷却寄与度α21は、物体5に対する送風機4の冷却寄与度である。冷却寄与度α22は、物体6に対する送風機4の冷却寄与度である。α11+α21=1である。α12+α22=1である。これらの冷却寄与度を、所定のシミュレーションにより演算部1bを用いて予め計算し、記憶部1aに格納しておくことができる。
また、記憶部1aは、各物体が耐え得る上限温度の情報を記憶する。例えば、物体が電子回路であれば、電子回路を適切に動作させるための上限温度が記憶部1aに予め格納される。
演算部1bは、送風機毎の第1の風量で各送風機を動作させたときの各物体の所定温度からの温度上昇量と、各物体の当該所定温度からの温度上昇の許容量とを用いて、温度上昇の許容量に対する温度上昇量の割合を物体毎に算出する。以下では、この割合を温度上昇割合と呼び、βで示す。この場合、温度上昇の許容量を1とすれば、1−βを冷却の余裕度(冷却余裕度)と呼ぶことができる。物体の温度上昇の許容量に対して、現状の温度上昇割合はβなので、物体の温度上昇について1−β分の余裕があると考えることができる。
例えば、物体5の温度上昇量ΔT1は、送風機3を風量Q1、送風機4を風量Q2で動作させたときの物体5の温度から空間2内の温度を引いた温度として計算できる。物体6の温度上昇量ΔT2も同様に求まる。温度上昇量ΔT1,ΔT2は、送風機3,4および物体5,6を空間2に配置した実機を用いて実験で求めた値でもよい。温度上昇量ΔT1,ΔT2は、送風機3,4および物体5,6を空間2に配置した場合を想定したCFDによるシミュレーションで求めた値でもよい。
また、物体5の温度上昇の許容量ΔT01は、送風機3を風量Q1、送風機4を風量Q2で動作させたときの物体5の上限温度から空間2内の温度を引いた温度として計算できる。物体6の温度上昇の許容量ΔT02も同様に求まる。ここで、例えば、送風機3,4の風量Q1,Q2は、ΔT1<ΔT01、ΔT2<ΔT02となるように選択される。
この場合、物体5の温度上昇の許容量ΔT01に対する温度上昇量ΔT1の割合β1(温度上昇割合)は、β1=ΔT1/ΔT01である。したがって、物体5に対する冷却余裕度は、1−β1である。同様に、物体6に対する冷却余裕度は、温度上昇割合β2=ΔT2/ΔT02を用いて、1−β2となる。この場合、物体5,6は冷却余裕度の分だけ過剰に冷却されていることになる。したがって、物体5,6それぞれについて、これらの冷却余裕度で表される割合だけ、送風機3,4による風量を削減できると考えられる(すなわち、現在の風量“1”に対して、送風機3,4の風量を温度上昇割合βまで削減してよい)。
演算部1bは、物体毎の温度上昇割合と記憶部1aに記憶された冷却寄与度の情報とに基づいて、送風機毎の第2の風量を計算する。例えば、送風機3に対して風量Q1から変更する風量の割合(比率)をq1(0≦q1)とし、送風機4に対して風量Q2から変更する風量の割合(比率)をq2(0≦q2)とする。すなわち、送風機3の変更後の風量をQ1×q1と表せる。送風機4の変更後の風量をQ2×q2と表せる。
すると、物体5に対する送風機3,4の冷却寄与度による重み付けを考慮して、q1,q2が次の不等式(1)を満たせば、物体5の上限温度以下になるよう物体5を冷却できると考えられる。現在の風量(“1”とする)に対して冷却余裕度1−β1の分だけ物体5に対する風量を削減しても、物体5を上限温度以下に維持できると考えられるからである。
同様に、物体6に対する送風機3,4の冷却寄与度による重み付けを考慮して、q1,q2が次の不等式(2)を満たせば、物体6の上限温度以下になるよう物体6を冷却できると考えられる。現在の風量(“1”とする)に対して冷却余裕度1−β2の分だけ物体6に対する風量を削減しても、物体6を上限温度以下に維持できると考えられるからである。
例えば、演算部1bは、不等式(1)、(2)の不等号を等号に置き換えた連立方程式を解くことで、不等式(1)、(2)を同時に満たす最小のq1,q2を計算することができる。そして、例えば、演算部1bはQ1×q1を送風機3の新風量(第2の風量)とする。また、Q2×q2を送風機4の新風量(第2の風量)とする。
ここで、上記の連立不等式は、送風機の数をm個(mは2以上の整数)および物体の数をn個(nは2以上の整数)の場合に拡張できる。具体的には、次のような連立不等式(3)を作成できる。
qmは、m個目の送風機に対して変更する風量の割合である。αmnは、n個目の物体に対するm個目の送風機の冷却寄与度である。βnは、m個の送風機それぞれを第1の風量で動作させたときのn個目の物体の温度上昇割合である。そして、q1,・・・,qmがより小さくなるように連立不等式を解くことで、複数の物体に対する複数の送風機の風量を一度に決定できる。式(3)は、m個の未知数とn個の温度上昇割合との関係式であるといえる。
例えば、m=nであれば、不等号を等号とした連立方程式を解くことで、q1,・・・,qmを求めることができる。ただし、何れかの送風機の第2の風量が負の値として求まることも考えられる。その場合は、その送風機の風量を0とする(送風機を停止させることに相当する)。m≠nであれば、q1,・・・,qmに初期値(例えば、1)を与え、その初期値から所定割合ずつ小さくしながら、連立不等式を満たす、より小さなq1,・・・,qmを求めることができる。
情報処理装置1によれば、送風機毎の第1の風量で各送風機を動作させたときの各物体の所定温度からの温度上昇量と、各物体の所定温度からの温度上昇の許容量とを用いて、温度上昇割合が物体毎に算出される。物体毎の温度上昇割合と各物体に対する各送風機による冷却寄与度とに基づいて、送風機毎の第2の風量が計算される。これにより、送風機毎の風量を効率的に決定できる。
ここで、例えば、1つの物体に着目して複数の送風機の風量を調整したとしても、その調整結果が他の物体でも適切とは限らない。1つの物体に着目して複数の送風機の風量を調整すると、他の物体が却って過剰に冷却されてしまったり、他の物体が上限温度を超過してしまったりすることもある。各送風機の風量を変えながら実験やシミュレーションを行い、全物体が上限温度に達しないよう試行錯誤で各送風機の風量を調整することも考えられるが、この方法では、各送風機の風量の決定までに手間と時間がかかる。送風機および物体の数が増大するほど、この問題は顕著になる。
一方、第1の実施の形態の方法によれば、冷却寄与度を考慮した不等式(1)、(2)(あるいは、連立不等式(3))を用いて、複数の物体の温度上昇に応じた複数の送風機の風量を一度に決定できる。このため、各送風機の風量を試行錯誤で調整する場合に比べて、送風機毎の風量を決定する手間と時間を低減でき、送風機毎の風量を効率的に決定できる。特に、各物体を、物体毎の上限温度の近傍で動作させるよう各送風機の風量を調整できるので、各送風機により各物体が過剰に冷却されることを抑制できる。すなわち、送風機の過剰分の風量を削減できる。風量の削減により、送風機の回転数を抑えられるので送風機の消費電力や騒音を低減できる。
[第2の実施の形態]
図2は、第2の実施の形態の検証装置のハードウェア例を示す図である。検証装置100は、CFDを用いた熱流体解析を行うコンピュータである。例えば、検証装置100は、複数の送風機(送風機をファンと呼ぶこともある)および複数の発熱体(例えば、電子部品)を有する電子機器の開発に用いられる。
検証装置100は、実機における各送風機および各発熱体の構造をシミュレーションにより再現し、各発熱体の温度上昇に応じた各送風機の風量および回転数の決定を行う機能を提供する。その結果を、個々の送風機に対する制御情報として実機に格納し、実機が備える電子部品の温度上昇に対して、過冷却とならないよう各送風機の風量(回転数)を制御する。これにより、各電子部品の温度上昇に応じて、各送風機の動作の最適化を図る。
第2の実施の形態では、特に、送風機の数と発熱体の数とが同じである場合を想定する。送風機の数と発熱体の数とが異なる場合については、後述の第3の実施の形態以降で例示する。ここで、検証装置100は、第1の実施の形態の情報処理装置1の一例である。
検証装置100は、プロセッサ101、RAM102、HDD103、通信部104、画像信号処理部105、入力信号処理部106、ディスクドライブ107および機器接続部108を有する。各ユニットが検証装置100のバスに接続されている。
プロセッサ101は、検証装置100の情報処理を制御する。プロセッサ101は、例えばCPU、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGAまたはPLD(Programmable Logic Device)などである。プロセッサ101は、マルチプロセッサであってもよい。プロセッサ101は、CPU、MPU、DSP、ASIC、FPGA、PLDのうちの2以上の要素の組み合わせであってもよい。
RAM102は、検証装置100の主記憶装置である。RAM102は、プロセッサ101に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部を一時的に記憶する。また、RAM102は、プロセッサ101による処理に用いる各種データを記憶する。
HDD103は、検証装置100の補助記憶装置である。HDD103は、内蔵した磁気ディスクに対して、磁気的にデータの書き込みおよび読み出しを行う。HDD103には、OSのプログラム、アプリケーションプログラム、および各種データが格納される。検証装置100は、フラッシュメモリやSSD(Solid State Drive)などの他の種類の補助記憶装置を備えてもよく、複数の補助記憶装置を備えてもよい。
通信部104は、ネットワーク10を介して他のコンピュータと通信を行えるインタフェースである。通信部104は、有線インタフェースでもよいし、無線インタフェースでもよい。
画像信号処理部105は、プロセッサ101からの命令に従って、検証装置100に接続されたディスプレイ11に画像を出力する。ディスプレイ11としては、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイなどを用いることができる。
入力信号処理部106は、検証装置100に接続された入力デバイス12から入力信号を取得し、プロセッサ101に出力する。入力デバイス12としては、例えば、マウスやタッチパネルなどのポインティングデバイス、キーボードなどを用いることができる。
ディスクドライブ107は、レーザ光などを利用して、光ディスク13に記録されたプログラムやデータを読み取る駆動装置である。ディスクドライブ107は、例えば、プロセッサ101からの命令に従って、光ディスク13から読み取ったプログラムやデータをRAM102またはHDD103に格納する。
機器接続部108は、検証装置100に周辺機器を接続するためのインタフェースである。機器接続部108は、例えば、プロセッサ101からの命令に従って、外部記憶装置14、または、リーダライタ装置15などを介してメモリカード16から読み取ったプログラムやデータをRAM102またはHDD103に格納する。
図3は、第2の実施の形態の検証装置の機能例を示す図である。検証装置100は、記憶部110、冷却寄与度算出部120および風量算出部130を有する。記憶部110は、RAM102やHDD103の記憶領域を用いて実現できる。冷却寄与度算出部120および風量算出部130は、プロセッサ101により実行されるプログラムのモジュールとして実現できる。
記憶部110は、冷却寄与度算出部120および風量算出部130の処理に用いられる各種の情報を記憶する。記憶部110が記憶する情報は、定義情報、冷却寄与度テーブル、PQ(Pressure - Quantity)テーブル、風量テーブルおよび温度別回転数テーブルを含む。
定義情報は、熱流体解析の対象となるモデル(解析対象モデル)を定義するための情報である。冷却寄与度テーブルは、各発熱体に対する各送風機の冷却寄与度を登録した情報である。PQテーブルは、送風機の属性(大きさや回転数)毎に、静圧や風量などの関係を登録した情報である。
風量テーブルおよび温度別回転数テーブルは、風量算出部130により生成される情報である。風量テーブルは、各発熱体の温度上昇量に対する各送風機の風量を登録した情報である。温度別回転数テーブルは、風量テーブルに登録された各風量およびPQテーブルを基に、各発熱体の温度上昇値に対する送風機毎の回転数を求めたものである。
冷却寄与度算出部120は、CFDによるシミュレーションを行うことで、各発熱体に対する各送風機の冷却寄与度を算出する。冷却寄与度算出部120は、算出した冷却寄与度を各発熱体に対応付けて冷却寄与度テーブルに登録する。
風量算出部130は、シミュレーション結果に基づいて、複数の送風機が複数の発熱体を冷却するための風量を算出する。具体的には、風量算出部130は、複数の送風機を初期風量で動作させたときの発熱体毎の温度上昇割合を算出する。温度上昇割合は、発熱体の温度上昇の許容量に対し、発熱体の温度がどの程度上昇したかを示す割合である。
風量算出部130は、発熱体毎の温度上昇割合と各発熱体に対する各送風機による冷却寄与度とに基づいて、送風機毎の新風量を計算する。具体的には、風量算出部130は、各発熱体の種々の温度上昇量に応じて、送風機毎の初期風量に対して、風量の変更の比率(風量比率という)を求め、風量比率テーブルに登録する。そして、風量算出部130は、風量比率テーブルに登録された風量比率を初期風量に乗じることで、各発熱体の温度上昇量に応じた送風機毎の新風量を計算し、風量テーブルに登録する。
更に、風量算出部130は、記憶部110に記憶されたPQテーブルおよび新風量に基づいて、各発熱体の温度上昇量に応じた送風機毎の回転数を決定し、温度別回転数テーブルに登録する。
図4は、第2の実施の形態の解析対象モデルの例を示す図である。図4では、解析対象とする筐体200を例示している。このような解析対象モデルは、シミュレーション用の仮想的な環境として、後述する定義情報を用いて検証装置100により構築される。筐体200には、送風機F1,F2および発熱体H1,H2が配置される。
筐体200は直方体である。筐体200には、送風機F1,F2に対応する位置(紙面に向かって左側の側面)に孔が設けられている。筐体200の紙面に向かって右側の側面は開口部である。筐体200の6つの面は、この孔および開口部を除き、筐体パネルで閉塞されている。筐体200の6面で囲われた空間は、筐体200の内部である。それ以外の空間は筐体200の外部である。
送風機F1,F2は、筐体200の外部から空気を取り込み、筐体200の内部の空間に放出する。送風機F1,F2により筐体200の内部に放出された空気は、筐体200の内部を開口部側へ流れる。送風機F1,F2により放出された空気は、発熱体H1,H2から熱を奪い、外部へ運び去る。これにより、発熱体H1,H2が冷却される。
図5は、第2の実施の形態の定義情報の例を示す図である。定義情報111は、記憶部110に予め格納される。定義情報111は、項目名、名称および属性の項目を含む。
項目名には、定義される項目の名称が設定される。名称の項目には、定義される部品などの名称が登録される。ただし、名称が設定されない場合は設定なしを示す“−”(ハイフン)が登録される。属性の項目には、定義される項目の属性が登録される。
例えば、定義情報111には、項目名が“環境温度”、名称が“−”、属性が“30℃”という情報が登録されている。これは、筐体200の内外の温度の初期値を30℃とすることを示す。名称“−”は、名称の設定がないことを示す。
また、例えば、定義情報111には、項目名が“部品”、名称が“送風機F1”、属性が“配置:P1,風量:3m3/min,回転数:3000rpm”という情報が登録されている。これは、部品として、筐体200内の位置P1に送風機F1を配置することを示す。また、送風機F1の風量が3m3/minであり、回転数が3000rpmであることを示す。定義情報111では、送風機F2も同様に定義されている。
更に、例えば、定義情報111には、項目名が“部品”、名称が“発熱体H1”、属性が“配置:P3,許容温度:80℃”という情報が登録されている。これは、部品として、筐体200の位置P3に発熱体H1を配置することを示す。また、発熱体H1に対して許容される上限の温度(許容温度という)が80℃であることを示す。定義情報111では、発熱体H2も同様に定義されている。
図6は、第2の実施の形態の冷却寄与度テーブルの例を示す図である。冷却寄与度テーブル112は、記憶部110に格納される。冷却寄与度テーブル112は、発熱体、送風機F1および送風機F2の項目を含む。
発熱体の項目には、発熱体の名称が登録される。送風機F1の項目には、その発熱体に対する送風機F1の冷却寄与度が登録される。送風機F2の項目には、その発熱体に対する送風機F2の冷却寄与度が登録される。
例えば、冷却寄与度テーブル112には、発熱体が“発熱体H1”、送風機F1が“70%”、送風機F2が“30%”という情報が登録されている。これは、発熱体H1に対する送風機F1の冷却寄与度が70%であることを示す。また、発熱体H1に対する送風機F2の冷却寄与度が30%であることを示す。冷却寄与度テーブル112には、発熱体H2に対する送風機F1の冷却寄与度“40%”、送風機F2の冷却寄与度“60%”も同様に登録されている。
図7は、第2の実施の形態のPQテーブルの例を示す図である。PQテーブル113,113a,113b,113c,113dは、記憶部110に予め格納される。ここで、送風機F1,F2は、一例として、120mm角×38mm厚の送風機であるとする。PQテーブル113,113a,113b,113c,113dは、この条件を満たす送風機のPQテーブルである。
PQテーブル113,113a,113b,113c,113dは、それぞれ回転数5000rpm,4000rpm,3500rpm,3000rpm,2500rpmの場合の風量と静圧と騒音との関係を示す。以下では、PQテーブル113を主に説明するが、PQテーブル113a,113b,113c,113dも同様のデータ構造である。
PQテーブル113は、風量、静圧および騒音の項目を含む。風量の項目には、風量が登録される。風量の単位は立方メートル毎分(m3/min)である。静圧の項目には、静圧値が登録される。静圧値の単位はパスカル(Pa)である。騒音の項目には、騒音値が登録される。騒音値の単位は、デシベル(dB)である。
例えば、PQテーブル113には、風量が“3.37”、静圧が“69”、騒音が“60.2”という情報が登録されている。これは、送風機F1または送風機F2を回転数5000rpm、風量3.37m3/minで動作させたとき、静圧値が69Pa、騒音値が60.2dBであることを示す。
なお、記憶部110には、上記以外の他の回転数(回転数5000rpmよりも大きな回転数や回転数2500rpmよりも小さな回転数)に対応するPQテーブルも予め登録されている。
図8は、第2の実施の形態の風量比率テーブルの例を示す図である。図8(A)は風量比率テーブル114を例示している。風量比率テーブル114には、送風機F1の風量比率が登録される。図8(B)は風量比率テーブル114aを例示している。風量比率テーブル114aには、送風機F2の風量比率が登録される。風量比率テーブル114,114aは、風量算出部130により生成され、記憶部110に格納される。以下では、風量比率テーブル114を主に説明するが、風量比率テーブル114aも同様のデータ構造である。
風量比率テーブル114は、発熱体H1,H2の各温度上昇量に対する送風機F1の風量比率を示している。具体的には、列L1は、発熱体H1の温度上昇量の系列である。行L2は、発熱体H2の温度上昇量の系列である。風量比率テーブル114を参照すれば、発熱体H1,H2の温度上昇量に応じた送風機F1の風量比率を得ることができる。
例えば、発熱体H1の温度上昇量が30℃であり、発熱体H2の温度上昇量が30℃であれば、送風機F1の風量比率は0.6である。したがって、送風機F1の初期風量に風量比率0.6を乗じれば、新風量を得られる。
このとき、風量比率テーブル114aを参照することで、同条件における送風機F2の風量比率を得ることができる。具体的には、同条件(発熱体H1,H2の温度上昇量が共に30℃)における送風機F2の風量比率は0.6である。したがって、送風機F2の初期風量に風量比率0.6を乗じれば新風量を得られる。
図9は、第2の実施の形態の風量テーブルの例を示す図である。図9(A)は風量テーブル115を例示している。風量テーブル115には、風量比率テーブル114に基づいて算出された送風機F1の風量が登録される。図9(B)は風量テーブル115aを例示している。風量テーブル115aには、風量比率テーブル114aに基づいて算出された送風機F2の風量が登録される。風量テーブル115,115aは、風量算出部130により生成され、記憶部110に格納される。以下では、風量テーブル115を主に説明するが、風量テーブル115aも同様のデータ構造である。
風量テーブル115は、発熱体H1,H2の各温度上昇量に対する送風機F1の風量(単位はm3/min)を示している。具体的には、列L3は、発熱体H1の温度上昇量の系列である。行L4は、発熱体H2の温度上昇量の系列である。風量テーブル115を参照すれば、発熱体H1,H2の温度上昇量に応じた送風機F1の新風量を得ることができる。
例えば、発熱体H1の温度上昇量が30℃であり、発熱体H2の温度上昇量が30℃であれば、送風機F1の風量は1.8m3/minである。
このとき、風量テーブル115aを参照することで、同条件における送風機F2の新風量を得ることができる。具体的には、同条件(発熱体H1,H2の温度上昇量が共に30℃)における送風機F2の新風量は1.8m3/minである。
図10は、第2の実施の形態の風量と静圧との関係の例を示す図である。図10では、紙面に向かって左下の頂点を原点Oとする。原点Oに対して右方向の座標軸は、風量を示している。原点Oに対して上方向の座標軸は、静圧を示している。図10では、5000rpm、4000rpm、3500rpm、3000rpm、2500rpmの場合の風量と静圧との関係を示す系列Z1,Z2,Z3,Z4,Z5が例示されている。また、送風機F1,F2のシステムインピーダンス曲線Rpも例示されている。
ここで、系列Z1は、PQテーブル113の風量対静圧の関係をグラフ化したものである。系列Z2は、PQテーブル113aの風量対静圧の関係をグラフ化したものである。系列Z3は、PQテーブル113bの風量対静圧の関係をグラフ化したものである。系列Z4は、PQテーブル113cの風量対静圧の関係をグラフ化したものである。系列Z5は、PQテーブル113dの風量対静圧の関係をグラフ化したものである。系列Z1,Z2,Z3,Z4,Z5を、風量と静圧との特性を示す曲線ということもできる。一方、システムインピーダンス曲線Rpは流路抵抗を示している。系列Z1,Z2,Z3,Z4,Z5とシステムインピーダンス曲線Rpとの交点が、送風機F1,F2の動作点となる。
これらの曲線を用いれば、風量算出部130は、送風機F1,F2の新風量に対する回転数を求めることができる。例えば、新風量がシステムインピーダンス曲線Rpと何れかの系列との交点の風量に一致するなら、送風機の回転数をその系列に対応する回転数とする。また、例えば、新風量がシステムインピーダンス曲線Rpと系列Z5との交点の風量に一致すれば、回転数を2500rpmと決定できる。
また、新風量が与えられた系列の間にある場合も、各曲線を用いて送風機F1,F2の回転数を求められる。一例として、新風量が3.5m3/minである場合を考える。この場合、システムインピーダンス曲線Rpから、新風量に対応する回転数の系列は、回転数3500rpmの系列Z3と、回転数3000rpmの系列Z4との間にあると考えられる。
そこで、風量算出部130は、システムインピーダンス曲線Rpおよび系列Z4の交点の風量Rp1と、システムインピーダンス曲線Rpおよび系列Z3の交点の風量Rp2とを用いて、新風量3.5m3/minに対する回転数を近似的に求める。具体的には、これら交点を結ぶ直線を考える。そして、系列Z3,Z4の風量差500rpmに対し、その直線上で、新風量3.5m3/minがどの程度の割合だけ系列Z3または系列Z4側に寄っているかを算出する。例えば、新風量−風量Rp1=風量Rp2−新風量であれば、回転数を3000+500×1/2=3250rpmと決定する。あるいは、新風量−風量Rp1=4×(風量Rp2−新風量)であれば、回転数を3000+500×4/5=3400rpmと決定する。
図11は、第2の実施の形態の温度別回転数テーブルの例を示す図である。図11(A)は温度別回転数テーブル116を例示している。温度別回転数テーブル116には、送風機F1の温度別回転数が登録される。図11(B)は温度別回転数テーブル116aを例示している。温度別回転数テーブル116aには、送風機F2の温度別回転数が登録される。温度別回転数テーブル116,116aは、各PQテーブルおよび風量テーブル115,115aに基づいて、風量算出部130により生成され、記憶部110に格納される。以下では、温度別回転数テーブル116を主に説明するが、温度別回転数テーブル116aも同様のデータ構造である。
温度別回転数テーブル116は、発熱体H1,H2の各温度上昇量に対する送風機F1の回転数(単位はrpm)を示している。具体的には、列L5は、発熱体H1の温度上昇量の系列である。行L6は、発熱体H2の温度上昇量の系列である。温度別回転数テーブル116を参照すれば、発熱体H1,H2の温度上昇量に応じた送風機F1の回転数を得ることができる。例えば、発熱体H1の温度上昇量が30℃であり、発熱体H2の温度上昇量が30℃であれば、送風機F1の回転数は1800rpmである。
このとき、温度別回転数テーブル116aを参照することで、同条件における送風機F2の回転数を得ることができる。具体的には、同条件(発熱体H1,H2の温度上昇量が共に30℃)における送風機F2の回転数は1800rpmである。
次に、第2の実施の形態の解析処理の手順を説明する。以下では、検証モデルの一例として、前述の筐体200を想定する。
図12は、第2の実施の形態の解析処理の例を示すフローチャートである。以下、図12に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
(S11)冷却寄与度算出部120は、記憶部110に記憶された定義情報111を参照して、CFDによるシミュレーションのための初期設定を行う。具体的には、冷却寄与度算出部120は、筐体200内の送風機F1,F2および発熱体H1,H2の配置および属性値(環境温度も含む)の情報を読み込む。ここで、以下の説明において、送風機F1の風量をA0、送風機F2の風量をB0、環境温度をTa、発熱体H1の許容温度をTw1、発熱体H2の許容温度をTw2とおく。
(S12)冷却寄与度算出部120は、解析対象モデルに対してCFDによるシミュレーションを行い、その結果を用いて発熱体H1,H2に対する送風機F1,F2の冷却寄与度を算出する。冷却寄与度の算出方法については、後述する。冷却寄与度算出部120は、算出した冷却寄与度を冷却寄与度テーブル112に登録する。冷却寄与度算出部120は、当該シミュレーションの結果として、定義情報111の内容で送風機F1,F2を動作させたときの、定常状態における発熱体H1の温度Ts1および発熱体H2の温度Ts2を得る。
(S13)風量算出部130は、定義情報111の風量で送風機F1,F2を動作させたときの発熱体H1,H2毎の温度上昇割合T1,T2を、以下の式(4)を用いて算出する。
温度上昇割合T1,T2または冷却余裕度(1−T1や1−T2で表される量)は、シミュレーションにより求まった発熱体H1,H2の温度上昇量の許容温度Tw1,Tw2に対する乖離状況を示す量ということもできる。温度上昇割合T1,T2が小さい程、過剰冷却の度合いが大きい。冷却余裕度が大きい程、過剰冷却の度合いが大きい。
(S14)風量算出部130は、風量A0に対する新風量A1の風量比率Xa(以下、比率Xaと略記することがある)および風量B0に対する新風量B1の風量比率Xb(以下、比率Xbと略記することがある)を求める。比率Xa,Xbは次の式(5)で表せる。
また、風量算出部130は、比率Xa,Xbを送風機F1,F2に対する未知数とし、発熱体H1,H2に対する送風機F1,F2の冷却寄与度で比率Xa,Xbを重み付けた値の総和と、温度上昇割合T1,T2との関係式を発熱体H1,H2毎に決定する。まず、発熱体H1に着目すると、発熱体H1に対する送風機F1の冷却寄与度a1で比率Xaを重み付ける(Xa×a1)。発熱体H1に対する送風機F2の冷却寄与度b1で比率Xbを重み付ける(Xb×b1)。風量算出部130は、重み付け後の総和と、温度上昇割合T1との関係式を決定する。具体的には、1−T1の分だけ、送風機F1,F2の風量を削減できると考えられるから、Xa×a1+Xb×b1≧1−(1−T1)=T1という関係を得る。発熱体H2に着目した場合も同様である。よって、風量算出部130は、次の連立不等式(6)を決定する。
なお、式(6)の第1式(上側の式)は、発熱体H1に対する送風機F1,F2の冷却寄与度a1,b1で比率Xa,Xbを重み付けた総和と、発熱体H1の温度上昇割合T1との関係を示しているということもできる。また、式(6)の第2式(下側の式)は、発熱体H2に対する送風機F1,F2の冷却寄与度a2,b2で比率Xa,Xbを重み付けた総和と、発熱体H2の温度上昇割合T2との関係を示しているということもできる。
式(6)では、不等号を等号とすれば、連立方程式の解として比率Xa,Xbの最小値を求められる。2つの送風機に関する2つの未知数に対し、2つの発熱体に関する2つの関係式を得られているからである。そこで、風量算出部130は、式(6)の不等号を等号とし、連立方程式を決定する。風量算出部130は、その連立方程式を解くことで、比率Xa,Xbを計算する。ここで、風量算出部130は、計算した比率Xaまたは比率Xbの解が0以上であるか否かを判定する。風量算出部130は、何れかの比率で0より小さい解となった場合は、その比率の解を0とする。風量算出部130は、発熱体H1の温度上昇量Ts1−Taおよび発熱体H2の温度上昇量Ts2−Taに対応付けて、求めた比率Xa,Xbを風量比率テーブル114,114aに登録する。
(S15)風量算出部130は、ステップS14で算出した比率Xa,Xbおよび式(5)を用いて、風量A1,B1を求める。風量算出部130は、発熱体H1の温度上昇量Ts1−Taおよび発熱体H2の温度上昇量Ts2−Taに対応付けて、求めた風量A1,B1を風量テーブル115,115aに登録する。風量算出部130は、求めた風量A1に応じた送風機F1の回転数を、各PQテーブルに基づいて決定する。同様に、求めた風量B1に応じた送風機F2の回転数を、各PQテーブルに基づいて決定する。回転数の決定方法は、図10で例示した通りである。風量算出部130は、発熱体H1の温度上昇量Ts1−Taおよび発熱体H2の温度上昇量Ts2−Taに対応付けて、決定した送風機F1,F2の回転数を、温度別回転数テーブル116,116aに登録する。
具体的な数値を上記の各ステップに当てはめると、風量算出部130は次の処理を実行する。まず、定義情報111によれば、環境温度Ta=30℃である。送風機F1,F2の風量A0=B0=3m3/minである。発熱体H1,H2の許容温度Tw1=Tw2=80℃である。
また、冷却寄与度テーブル112によれば、発熱体H1に対し、送風機F1の冷却寄与度a1=70%、送風機F2の冷却寄与度b1=30%である。発熱体H2に対し、送風機F1の冷却寄与度a2=40%、送風機F2の冷却寄与度b2=60%である。
また、ステップS12で、シミュレーションの結果として、定常状態における発熱体H1の温度Ts1=60℃、発熱体H2の温度Ts2=50℃であったとする。
このとき、発熱体H1の温度上昇割合T1=(60−30)/(80−30)=0.6(60%)となる。これは、許容温度に対して、発熱体H1の温度上昇量が60%であることを示す。すなわち、許容温度に対して、1−0.6=0.4(40%)の割合の温度上昇が許容されており、過剰に冷却していることになる。言い換えれば、40%の温度上昇分だけ余裕があり、送風機F1,F2の風量をその分だけ削減する余地があることになる。したがって、発熱体H1に対する風量を現在より40%削減してよいと考えられる。
よって、風量算出部130は、発熱体H1に対して、冷却寄与度による重み付けを考慮し、関係式“0.7Xa+0.3Xb≧0.6”を得る。
発熱体H2に対しても同様に考えると、発熱体H2の温度上昇割合T2=(50−30)/(80−30)=0.4(40%)となる。したがって、発熱体H2に対する風量を現在より60%削減してよいと考えられる。よって、風量算出部130は、発熱体H2に対して、冷却寄与度による重み付けを考慮し、関係式“0.4Xa+0.6Xb≧0.4”を得る。
この2つの関係式の不等号を等号とすることで、連立方程式とし、比率Xa,Xbの最小値を求めることができる。具体的には、“0.7Xa+0.3Xb=0.6”、“0.4Xa+0.6Xb=0.4”という連立方程式を得る。この連立方程式を、Xa,Xbについて解くと、Xa=0.8、Xb=0.133となる。
風量算出部130は、式(5)を用いて、風量A1,B1を算出する。この場合、風量A1=2.4m3/min、風量B1=0.4m3/minとなる。風量算出部130は、図10で例示したように、風量A1に対応する送風機F1の回転数および風量B1に対応する送風機F2の回転数を決定する。
風量算出部130により計算された結果は、風量比率テーブル114,114a、風量テーブル115,115aおよび温度別回転数テーブル116,116aに登録される。この場合、風量算出部130は、発熱体H1の温度上昇量30℃、発熱体H2の温度上昇量20℃に対応付けて、各計算結果を各テーブルに登録する。
なお、検証装置100は、上記のステップS11〜S15を、異なる定義情報(例えば、環境温度が異なるもの)に対して繰り返し実行することで、風量比率テーブル114,114a、風量テーブル115,115aおよび温度別回転数テーブル116,116aを埋めていくことができる。また、上記の説明では、送風機の数を2とし、発熱体の数を2とした場合を例示したが、送風機の数が3以上、発熱体の数が3以上の場合も同様にして、各送風機の風量や回転数を求めることができる。
このように、第2の実施の形態によれば、複数の送風機により複数の発熱体H1,H2が過剰に冷却されている場合に、各送風機の風量および回転数の決定を効率的に行える。ここで、例えば、1つの発熱体に着目して複数の送風機の風量を調整したとしても、その調整結果が他の発熱体でも適切とは限らない。このため、各送風機の風量を変えながら実験やシミュレーションを行い、全発熱体が上限温度に達しないよう試行錯誤で各送風機の風量を調整するとしても、各送風機の風量の決定までに手間と時間がかかる。送風機および発熱体の数が増大するほど、この問題は顕著となる。
更に、温度別回転数テーブル116,116aを、製品の開発段階で予め作成する場合のように、複数の発熱体の温度上昇量の様々な組み合わせに対して、複数の送風機の風量や回転数を決定するとなると、その作業コストは一層増大することになる。
一方、第2の実施の形態の方法によれば、冷却寄与度を考慮した連立方程式を用いて、複数の発熱体に対する複数の送風機の風量を一度に決定できる。このため、各送風機の風量を試行錯誤で調整する場合に比べて、各送風機の風量を決定する手間と時間を低減でき、送風機毎の風量を効率的に決定できる。このとき、各送風機の過剰な風量を削減できるので、温度別回転数テーブル116,116aを用いて実機に搭載された各送風機の回転数を制御すれば、各送風機による消費電力の削減を図れる。また、風量の削減に伴って送風機の回転数も低減できるので、騒音の低減も図れる。次に、温度別回転数テーブル116,116aの冷却への活用例を説明する。
図13は、第2の実施の形態の冷却の具体例を示す図である。ここでは、一例として、電子機器400の冷却制御を制御装置500によりを行う場合を考える。温度別回転数テーブル116,116aを制御装置500に格納することで、電子機器400が有する電子部品の温度に応じた冷却制御を行える。
電子機器400は、図4で説明した解析対象モデルに対応する(配置や属性が同じである)部品を備えている。具体的には、電子機器400は、送風機410,420および電子部品430,440を有する。
送風機410は、上述の解析対象モデルにおける送風機F1に対応する。送風機420は、送風機F2に対応する。送風機410,420の回転数は可変である。送風機410,420は、制御装置500からの指示に応じて、回転数を変更する。電子部品430は、発熱体H1に対応する。電子部品440は、発熱体H2に対応する。
なお、電子機器400の所定の位置や電子部品430,440には温度計が設けられている。各所に設けられた温度計は、電子機器400の内外の温度や、電子部品430,440の温度を計測する。
制御装置500は、記憶部510、温度検出部520、回転数制御部530および送風機駆動部540,550を有する。記憶部510は、温度別回転数テーブル116,116aを記憶する。温度検出部520は、電子機器400の各所に設けられた温度計を監視し、電子機器400内の空間の温度や電子部品430,440の温度を検出する。
回転数制御部530は、温度検出部520により検出された温度に応じて、温度別回転数テーブル116,116aを参照し、送風機410,420の回転数の変更を送風機駆動部540,550に指示する。送風機駆動部540は、送風機410に動作変更を指示する。送風機駆動部550は、送風機420に動作変更を指示する。
例えば、送風機410,420は、3000rpmで動作しているとする。このとき、温度検出部520は、環境温度(電子機器400が設置された室内の温度など)として30℃を検出する。また、温度検出部520は、電子部品430の温度60℃、電子部品440の温度50℃を検出する。
すると、回転数制御部530は、電子部品430について、環境温度30℃からの温度上昇量30℃を算出する。同様に、電子部品440について、環境温度30℃からの温度上昇量20℃を算出する。すると、回転数制御部530は、温度別回転数テーブル116を参照し、送風機410の回転数を2400rpmとするように、送風機駆動部540に指示する。送風機駆動部540は、指示に応じて、送風機410の回転数を2400rpmに設定する。
また、回転数制御部530は、温度別回転数テーブル116aを参照し、送風機420の回転数を400rpmとするように、送風機駆動部550に指示する。送風機駆動部550は、指示に応じて送風機420の回転数を400rpmに設定する。
このように、温度別回転数テーブル116,116aを用いることで、電子部品430,440それぞれの温度上昇に応じて、送風機410,420の風量および回転数を最適化できる。これにより、送風機410,420による電子部品430,440の過剰冷却を抑えられる。すなわち、送風機410,420の風量および回転数を電子部品430,440の温度上昇量に合わせて、より小さく設定できることになる。このため、送風機410,420の負荷を抑え、消費電力を低減できる。また、送風機410,420の回転数を低減することで騒音も低減できる。上記の例では、送風機410に比べて、送風機420の回転数を大幅に低減でき、送風機420の騒音を大幅に低減している。
なお、上記の例では、各送風機の初期風量を同じ風量としたが異なる風量でもよい。その場合、例えば、最大の風量の送風機の回転数を所定値だけ低減させ、その上で、上記の方法を用いて各送風機の風量を調整するという利用方法も考えられる。
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態を説明する。前述の第2の実施の形態と相違する事項を主に説明し、共通する事項の説明を省略する。
第2の実施の形態では、送風機の数と発熱体の数とが同じである場合を説明した。一方、送風機の数と発熱体の数とが異なっている場合にも各送風機の風量や回転数の決定を効率化し得る。そこで、第3の実施の形態では、送風機の数と発熱体の数とが相違する場合に風量を計算する機能を提供する。特に、第3の実施の形態では、送風機の数が、発熱体の数よりも少ない場合を想定する。送風機の数が、発熱体の数よりも多い場合については、後述の第4の実施の形態で説明する。
ここで、第3の実施の形態の検証装置は、第2の実施の形態の検証装置100と同様である。第3の実施の形態の検証装置のハードウェアおよび機能ブロックは図2,3で説明した検証装置100のハードウェアおよび機能ブロックと同様である。そこで、第3の実施の形態でも、第2の実施の形態と同様の名称および符号を用いる。
第3の実施の形態では、検証装置100は、連立不等式に加え、各送風機の風量と騒音との関係を考慮して、各送風機の風量を決定する。各送風機の風量と騒音との関係は、図7で例示したPQテーブル113,113a,113b,113c,113dから把握できる。
図14は、第3の実施の形態の風量と騒音との関係の例を示す図である。図14では、紙面に向かって左下の頂点を原点Oとする。原点Oに対して右方向の座標軸は、風量を示している。原点Oに対して上方向の座標軸は、騒音を示している。図14では、5000rpm、4000rpm、3500rpm、3000rpm、2500rpmの場合の風量と騒音との関係を示す系列Z6,Z7,Z8,Z9,Z10が例示されている。
ここで、系列Z6は、PQテーブル113の風量対騒音の関係をグラフ化したものである。系列Z7は、PQテーブル113aの風量対騒音の関係をグラフ化したものである。系列Z8は、PQテーブル113bの風量対騒音の関係をグラフ化したものである。系列Z9は、PQテーブル113cの風量対騒音の関係をグラフ化したものである。系列Z10は、PQテーブル113dの風量対騒音の関係をグラフ化したものである。系列Z6,Z7,Z8,Z9,Z10を、風量と騒音との特性を示す曲線ということもできる。
風量算出部130は、図14のPQテーブルの回転数以外の回転数に対応する系列を、これらの系列から求めることができる。例えば、回転数2750rpmに対応する系列Z11を求めたい場合は次のようになる。回転数2750rpmの系列Z11は、系列Z9,Z10の間に存在すると考えることができる。そこで、系列Z9,Z10上にプロットされた各点(PQテーブル113c,113dで与えられた点)を1つずつ対応させて、点の組を決定する。その組の1つが、例えば点Z9aと点Z10aとの組である。PQテーブル113c,113dで与えられた点に対して、このような組を複数決定できる。
更に、風量算出部130は、このように決定した組に含まれる点同士を結ぶ複数の直線を求める。ここで、回転数2750rpmは、回転数2500rpmと回転数3000rpmとの中間値である。そこで、風量算出部130は、求めた複数の直線の中間点を結ぶ新たな系列を回転数2750rpmに対応する系列Z11とする。回転数2900rpmの系列を求めたければ、求めた各直線を4対1(系列Z10側の長さと系列Z9側の長さとの比が4対1)に分割する点を結ぶ新たな系列を回転数2900rpmの系列とすればよい。このように、風量算出部130は、各送風機の風量と回転数とから、騒音を得ることができる。
次に、第3の実施の形態の風量比率の計算処理の手順を説明する。以下の説明では、送風機の数が2個、発熱体の数が3個の場合を想定する。この場合、定義情報111に2個の送風機、3個の発熱体の情報が登録されることになる。具体的には、定義情報111において、送風機F1,F2および発熱体H1,H2の他に、発熱体H3の情報が追加される。発熱体H3は、位置P6に配置されるものとする。また、発熱体H3の許容温度は、80℃であるとする。
図15は、第3の実施の形態の風量比率計算の例を示すフローチャートである。図15に示す手順は、図12に示したステップS14の代わりに実行される。冷却寄与度算出部120は、ステップS12で、発熱体H3を考慮したシミュレーションを実行しており、発熱体H1,H2,H3の温度上昇量や発熱体H1,H2,H3に対する送風機F1,F2の冷却寄与度を予め求めている。この場合、風量算出部130は、比率Xa,Xbに対し、式(6)で示した2つの不等式に、以下に示す式(7)を加えた連立不等式を得る。
ここで、a3は、発熱体H3に対する送風機F1の冷却寄与度である。b3は、発熱体H3に対する送風機F2の冷却寄与度である。図15の説明では、式(6)の上側の不等式を指して第1不等式、式(6)の下側の不等式を指して第2不等式、式(7)を指して第3不等式と呼ぶことがある。更に、各風量の比率を各冷却寄与度で重み付けた後の値Xaa1,Xbb1,Xaa2,Xbb2,Xaa3,Xbb3を次の式(8)のように表すものとする。
以下、図15に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
(S21)風量算出部130は、比率Xa,Xbおよび変数iに1を代入する。
(S22)風量算出部130は、Xaa1,Xbb1を計算する。
(S23)風量算出部130は、変数Xaoに比率Xaを代入する。風量算出部130は、変数Xboに比率Xbを代入する。
(S24)風量算出部130は、(Xaa1−Xaa1×0.01)/a1の計算結果を比率Xaに代入する。風量算出部130は、(Xbb1−Xbb1×0.01)/b1の計算結果を比率Xbに代入する。
(S25)風量算出部130は、更新後の比率Xa,Xbに対して第1不等式が成立するか否かを判定する。成立する場合、処理をステップS26に進める。成立しない場合、処理をステップS34に進める。
(S26)風量算出部130は、Xaa2、Xbb2を計算する。
(S27)風量算出部130は、Xaoに比率Xaを代入する。風量算出部130は、Xboに比率Xbを代入する。
(S28)風量算出部130は、(Xaa2−Xaa2×0.01)/a2の計算結果を比率Xaに代入する。また、風量算出部130は、(Xbb2−Xbb2×0.01)/b2の計算結果を比率Xbに代入する。
(S29)風量算出部130は、更新後の比率Xa,Xbに対して第2不等式が成立するか否かを判定する。成立する場合、処理をステップS30に進める。成立しない場合、処理をステップS34に進める。
(S30)風量算出部130は、Xaa3、Xbb3を計算する。
(S31)風量算出部130は、Xaoに比率Xaを代入する。風量算出部130は、Xboに比率Xbを代入する。
(S32)風量算出部130は、(Xaa3−Xaa3×0.01)/a3の計算結果を比率Xaに代入する。また、風量算出部130は、(Xbb3−Xbb3×0.01)/b3の計算結果を比率Xbに代入する。
(S33)風量算出部130は、更新後の比率Xa,Xbに対して第3不等式が成立するか否かを判定する。成立する場合、処理をステップS22に進める。成立しない場合、処理をステップS34に進める。
(S34)風量算出部130は、比率XaにXaoを代入する。風量算出部130は、比率XbにXboを代入する。Xao,Xboには、第1〜第3不等式の何れかが不成立となる直前の比率Xa,Xbが代入されることになる。そして、Xao,Xboに代入されていた比率Xa,Xbを再度、比率Xa,Xbに代入する。こうして、風量算出部130は、比率Xa,Xbを決定する。
(S35)風量算出部130は、変数iが1であるか判定する。変数iが1でない場合、発熱体H1,H2,H3それぞれの温度上昇量に対応付けて、比率Xa,Xbを風量比率テーブル114,114aに登録し、処理を終了する。変数iが1の場合、風量算出部130は、式(5)を用いて、風量A1,A2を算出する。そして、風量算出部130は、処理をステップS36に進める。
(S36)風量算出部130は、図10で例示した方法により、風量A1,B1に対応する送風機F1,F2の回転数を取得する。
(S37)風量算出部130は、送風機F1の回転数aと送風機F2の回転数bとの差分の絶対値が1200rpmよりも小さいか否かを判定する。1200rpmよりも小さい場合、処理をステップS38に進める。1200rpm以上の場合、処理を終了する。
(S38)風量算出部130は、回転数が大きい方の送風機の回転数を1200rpm上げる。これにより、送風機F1,F2の回転数差が増大する。
(S39)風量算出部130は、変数iに0を代入する。そして、処理をステップS22に進める。
このように、送風機の数が発熱体の数よりも少ない場合にも、各送風機の風量比率を1から徐々に下げながら、連立不等式の何れかが不成立となる風量比率を特定する。なお、上記の例では下げ幅を0.01(1%)としたが、他の下げ幅としてもよい。そして、決定した風量に対して決定された回転数について、2つの送風機で回転数差が1200rpmよりも小さくなる場合には、両送風機の回転数差を増大させる。
ここで、送風機間の回転の周波数差が20Hz(1200rpmに相当)よりも小さいと、人間はうなり騒音を感じてしまう。そこで、ステップS37の判定では、送風機間の回転数差が1200rpm(周波数20Hzに相当)よりも小さい場合に、ステップS38の処理により両送風機間の回転数差を1200rpm以上とする。これにより、うなり騒音を軽減できる。なお、ステップS37における1200rpmの閾値は一例であり、他の値を用いてもよい。
風量算出部130は、上記の手順により比率Xa,Xbを求めると、図12で示したステップS15の処理を実行することになる。具体的には、比率Xa,Xbおよび式(5)を用いて、風量A1,B1を求める。風量算出部130は、発熱体H1,H2,H3それぞれの温度上昇量に対応付けて、風量A 1 ,B 1 を風量テーブル115,115aに登録する。風量算出部130は、風量A 1 に応じた送風機F1の回転数を、各PQテーブルに基づいて決定する。同様に、風量B 1 に応じた送風機F2の回転数を、各PQテーブルに基づいて決定する。回転数の決定方法は、図10で例示した通りである。風量算出部130は、発熱体H1,H2,H3それぞれの温度上昇量に対応付けて、決定した送風機F1,F2の回転数を、温度別回転数テーブルに登録する。
図15では、回転数差に基づいて、送風機間の回転数差を増大させるものとしたが、送風機間の騒音差に応じて、送風機間の回転数差を増大させ、改めて新風量を決定してもよい。そこで、送風機間の騒音差に応じて、送風機の風量を調整する機能を説明する。
図16は、第3の実施の形態の風量比率計算の他の例を示すフローチャートである。以下、図16に示す処理をステップ番号に沿って説明する。図16の手順は、図14の手順の一部を変更したものである。具体的には、風量算出部130は、図15のステップS36,S37,S38に代えて、ステップS36a,S37a,S38aを実行する。そこで、これらのステップを主に説明し、その他のステップについては説明を省略する。
(S36a)風量算出部130は、図10で例示した方法により、風量A 1 ,B 1 に対応する送風機F1,F2の回転数を取得する。また、風量算出部130は、図14で例示した方法により、送風機F1,F2の当該回転数に対応する騒音値を取得する。
(S37a)風量算出部130は、送風機F1の騒音aと送風機F2の騒音bの差分の絶対値が3dBより大きいか判定する。3dBより大きい場合、処理をステップS38aに進める。3dBより小さい場合、処理を終了する。
(S38a)風量算出部130は、騒音値が小さい方の送風機の回転数を15%上げる。なお、騒音が回転数の5.5乗に比例すると仮定すると、3dBの騒音差は、約13%の回転数差に相当する。そこで、再度、風量を計算したときに回転数が下がることを考慮して、騒音値が小さい方の送風機の回転数を15%上げるものとしている。
このように、送風機間の騒音差が小さくなるように回転数を調整してもよい。騒音差が小さくなるよう調整することで、人間の感じる騒音を軽減できる。なお、ステップS37aにおける3dBの閾値は一例であり、他の閾値を用いてもよい。
以上のように、検証装置100は、送風機の数が発熱体の数よりも小さい場合にも、各送風機の風量を効率的に決定することができる。このとき、各送風機の回転数差や騒音差に応じて、各送風機の回転数を調整することで、騒音を軽減できる。
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態を説明する。前述の第2,第3の実施の形態と相違する事項を主に説明し、共通する事項の説明を省略する。
第4の実施の形態では、送風機の数が発熱体の数よりも多い場合を想定する。第4の実施の形態の検証装置は、第2の実施の形態の検証装置100と同様である。第3の実施の形態の検証装置のハードウェアおよび機能ブロックは図2,3で説明した検証装置100のハードウェアおよび機能ブロックと同様である。そこで、第4の実施の形態でも、第2の実施の形態と同様の名称および符号を用いる。
以下の説明では、送風機の数が3個、発熱体の数が2個の場合を想定する。この場合、定義情報111に3個の送風機、2個の発熱体の情報が登録されることになる。具体的には、定義情報111において、送風機F1,F2および発熱体H1,H2の他に、送風機F3の情報が追加される。送風機F3は、位置P5に配置されるものとする。送風機F3の風量は3m3/min、回転数は3000rpmであるとする。
図17は、第4の実施の形態の風量比率計算の例を示すフローチャートである。図17に示す手順は、図12に示したステップS14の代わりに実行される。冷却寄与度算出部120は、ステップS12で、送風機F3を考慮したシミュレーションを実行しており、発熱体H1,H2の温度上昇量や発熱体H1,H2に対する送風機F1,F2,F3の冷却寄与度を予め求めている。また、風量算出部130は、比率Xa,Xbに加え、比率Xcを考慮する。比率Xcは、送風機F3の初期風量C0に対する新風量C1の比率である(Xc=C1/C0)。
この場合、風量算出部130は、比率Xa,Xb,Xcに対し、以下の式(9)に示す連立不等式を得る。
図17の説明では、式(9)の上側の不等式を指して第1不等式、式(9)の下側の不等式を指して第2不等式と呼ぶことがある。また、各風量の比率を各冷却寄与度で重み付けた後の値Xaa1,Xbb1,Xaa2,Xbb2を前述の式(8)で示したように表し、値Xcc1,Xcc2を以下の式(10)で表すものとする。
以下、図17に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
(S41)風量算出部130は、比率Xa,Xb,Xcに1を代入する。
(S42)風量算出部130は、Xaa1、Xbb1、Xcc1を計算する。
(S43)風量算出部130は、変数Xaoに比率Xaを代入する。風量算出部130は、変数Xboに比率Xbを代入する。風量算出部130は、変数Xcoに比率Xcを代入する。
(S44)風量算出部130は、(Xaa1−Xaa1×0.01)/a1の計算結果を比率Xaに代入する。また、風量算出部130は、(Xbb1−Xbb1×0.01)/b1の計算結果を比率Xbに代入する。風量算出部130は、(Xcc1−Xcc1×0.01)/c1の計算結果を比率Xcに代入する。
(S45)風量算出部130は、更新後の比率Xa,Xb,Xcに対して第1不等式が成立するか否かを判定する。成立する場合、処理をステップS46に進める。成立しない場合、処理をステップS50に進める。
(S46)風量算出部130は、Xaa2、Xbb2、Xcc2を計算する。
(S47)風量算出部130は、Xaoに比率Xaを代入する。風量算出部130は、変数Xboに比率Xbを代入する。風量算出部130は、変数Xcoに比率Xcを代入する。
(S48)風量算出部130は、(Xaa2−Xaa2×0.01)/a2の計算結果を比率Xaに代入する。風量算出部130は、(Xbb2−Xbb2×0.01)/b2の計算結果を比率Xbに代入する。風量算出部130は、(Xcc2−Xcc2×0.01)/c2の計算結果を比率Xcに代入する。
(S49)風量算出部130は、更新後の比率Xa,Xb,Xcに対して第2不等式が成立するか否かを判定する。成立する場合、処理をステップS42に進める。成立しない場合、処理をステップS50に進める。
(S50)風量算出部130は、比率Xaに変数Xaoを代入する。風量算出部130は、比率Xbに変数Xboを代入する。風量算出部130は、比率Xcに変数Xcoを代入する。
このように、送風機の数が発熱体の数よりも多い場合にも、各送風機の風量比率を1から徐々に下げながら、連立不等式の何れかが不成立となる直前の風量比率を特定することで、比率Xa,Xb,Xcを計算することができる。
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態を説明する。前述の第2〜第4の実施の形態と相違する事項を主に説明し、共通する事項の説明を省略する。
第3,第4の実施の形態では、送風機の数と発熱体の数とが異なる場合の風量の計算方法を例示した。これらの方法に対し、送風機または発熱体をグループ化し、1つのグループを1つの送風機または1つの発熱体とみなすことで、連立不等式に関する計算を、連立方程式に関する計算とすることができる。連立方程式に関する計算とすれば、風量の計算を容易に行える。そこで、第5の実施の形態では、送風機の数が発熱体の数よりも少ない場合に、発熱体をグループ化して、各送風機の風量を求める機能を提供する。なお、送風機の数が発熱体の数よりも多い場合については、後述の第6の実施の形態で説明する。
ここで、第5の実施の形態の検証装置は、第2の実施の形態の検証装置100と同様である。第5の実施の形態の検証装置のハードウェアおよび機能ブロックは図2,3で説明した検証装置100のハードウェアおよび機能ブロックと同様である。そこで、第5の実施の形態でも、第2の実施の形態と同様の名称および符号を用いる。
まず、各発熱体に対する何れかの送風機の冷却寄与度に基づいて、発熱体をグループ化する例を説明する。ここで、冷却寄与度は、後述の計算方法で示されるように、ある送風機に着目すると、その送風機と発熱体との相対的な位置関係を反映したもの(その送風機からの風が当たり易い)と考えることができる。すなわち、着目する送風機との相対的な位置関係が近似する発熱体が複数存在する場合、これら発熱体に対する送風機の冷却寄与度も近似すると考えられる。この性質を利用して各発熱体のグループ化を行う。
図18は、第5の実施の形態の解析処理例(その1)を示すフローチャートである。以下、図18に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
(S51)冷却寄与度算出部120は、記憶部110に記憶された定義情報111を参照して、CFDによるシミュレーションのための初期設定を行う。ここで、定義情報111で定義される解析対象モデルにおいて、送風機の数は発熱体の数よりも少ないものとする。
(S52)冷却寄与度算出部120は、解析対象モデルに対してCFDによるシミュレーションを行い、その結果を用いて各発熱体に対する各送風機の冷却寄与度を算出する。冷却寄与度算出部120は、算出した冷却寄与度を冷却寄与度テーブル112に登録する。冷却寄与度算出部120は、当該シミュレーションの結果として、定義情報111の内容で各送風機を動作させたときの、定常状態における各発熱体の温度を得る。
(S53)風量算出部130は、何れかの送風機を選択し、その送風機の各発熱体に対する冷却寄与度がおおよそ一致(例えば、任意の中央値から±5%の範囲内で一致)する発熱体同士をグループ化する。風量算出部130は、任意の送風機を選択することができる。ここで、風量算出部130は、グループ化されていない発熱体の数とグループの数との和が送風機の数に一致するようにグループを作成する。このグループ化を行った後も、グループの数と、グループ化されていない発熱体の数との和が送風機の数よりも多い場合、±5%の範囲を拡張してもよい(例えば±7%に変更するなど)。あるいは、風量算出部130は、グループに含まれる発熱体のうち、選択した送風機の冷却寄与度の一致度の低いもの(例えば、グループに属する発熱体に対する冷却寄与度の平均からのずれが大きい発熱体)をグループから除くことで、グループ化されていない発熱体の数を調整してもよい。
(S54)冷却寄与度算出部120は、発熱体の1つのグループを1つの発熱体とみなして解析対象モデルを更新する。このとき、グループ化して得た発熱体の許容温度を、そのグループに属する発熱体の許容温度のうち、最低の許容温度とすることが考えられる。また、例えば、グループ化して1つとみなされた発熱体を、グループに属する各発熱体を囲う1つの多面体(2次元では多角形)として定めることができる。冷却寄与度算出部120は、更新後の解析対象モデルに対してCFDによるシミュレーションを行い、その結果を用いて各発熱体に対する各送風機の冷却寄与度を算出する。冷却寄与度算出部120は、算出した冷却寄与度を冷却寄与度テーブル112に登録する。冷却寄与度算出部120は、当該シミュレーションの結果、更新後の解析対象モデルでの定常状態における各発熱体の温度を得る。
(S55)風量算出部130は、ステップS54の結果を用いて、発熱体毎の温度上昇量を算出し、発熱体毎の温度上昇割合を算出する。
(S56)風量算出部130は、ステップS55で算出した温度上昇割合を用いて、各送風機の風量比率を算出する。算出方法は、図12のステップS14と同様である。この場合、ステップS53で送風機の数と発熱体の数とが一致するように発熱体をグループ化しているので、風量算出部130は、ステップS14と同様に、各送風機の風量比率に関する連立方程式を得ることができる。風量算出部130は、その連立方程式を解くことで、各送風機の風量比率を算出できる。
(S57)風量算出部130は、ステップS56で算出した風量比率に基づいて、各送風機の風量を計算し、当該風量に対応する回転数を決定する。各送風機の風量の計算および回転数の決定は、図12のステップS15と同様に行える。
図19は、第5の実施の形態の解析処理の具体例(その1)を示す図である。図19(A)は、更新前の解析対象モデルを例示している。図19(B)は、更新後の解析対象モデルを例示している。
まず、図19(A)について、更新前の解析対象モデルでは、送風機F1,F2および発熱体H1,H2,H3,H4,H5,H6が筐体200内に配置されている。この解析対象モデルでは、送風機F1,F2を用いて、発熱体H1,H2,H3,H4,H5,H6を冷却する。この場合、送風機F1,F2の数“2”は、発熱体H1,H2,H3,H4,H5,H6の数“6”よりも少ない。
冷却寄与度算出部120は、この更新前の解析対象モデルについて、各発熱体に対する送風機F1,F2の冷却寄与度を算出する。例えば、各発熱体に対する送風機F1の冷却寄与度は、次の通りである。発熱体H1に対する冷却寄与度c1=71%。発熱体H2に対する冷却寄与度c2=69%。発熱体H3に対する冷却寄与度c3=42%。発熱体H4に対する冷却寄与度c4=38%。発熱体H5に対する冷却寄与度c5=39%、発熱体H6に対する冷却寄与度c6=40%。各発熱体に対する送風機F2の冷却寄与度も同様に算出される。
風量算出部130は、送風機F1を選択し、送風機F1の各発熱体に対する冷却寄与度がおおよそ一致(例えば、ある値から±0.05(冷却寄与度±5%)の範囲内で一致)する発熱体同士をグループ化する。
例えば、風量算出部130は、各発熱体の中で送風機F1の冷却寄与度が比較的近い値となっている発熱体H1,H2に対する冷却寄与度c1,c2の平均(71+69)/2=70%(中央値)を算出する。冷却寄与度c1=71%は、平均値70%±5%の範囲に含まれる。また、冷却寄与度c2=69%も平均値70%±5%の範囲に含まれる。よって、風量算出部130は、発熱体H1,H2をグループ化する。グループ化した発熱体を発熱体H1aとする。例えば、発熱体H1aの領域は発熱体H1,H2の領域を合わせた領域に相当する。図19の例では、発熱体H1,H2が占める連続した領域が発熱体H1aの占める領域となる。
同様に、風量算出部130は、各発熱体の中で送風機F1の冷却寄与度が比較的近い値となっている発熱体H3,H4,H5,H6に対する冷却寄与度c3,c4,c5,c6の平均(42+38+39+40)/4=39.75%≒40%(中央値)を算出する。この場合、冷却寄与度c3,c4,c5,c6は、平均値40%±5%の範囲に含まれる。よって、風量算出部130は、発熱体H3,H4,H5,H6をグループ化する。グループ化した発熱体を発熱体H2aとする。例えば、発熱体H2aの領域は発熱体H3,H4,H5,H6の領域を合わせた領域に相当する。図19の例では、発熱体H3,H4,H5,H6の各発熱体の間に、紙面縦方向に空間が存在する。発熱体H3,H4,H5,H6の領域と発熱体H3,H4,H5,H6の間の紙面縦方向の各空間の領域とを含めた連続した領域を発熱体H2aの領域と考えてもよい。
図19(B)について、更新後の解析対象モデルでは、送風機F1,F2および発熱体H1a,H2aが筐体200内に配置されている。発熱体H1aは、発熱体H1,H2をグループ化して1つの発熱体とみなしたものである。例えば、発熱体H1aの許容温度を発熱体H1,H2の許容温度のうち最低の許容温度とすることが考えられる。発熱体H2aは、発熱体H3,H4,H5,H6をグループ化して1つの発熱体とみなしたものである。例えば、発熱体H2aの許容温度を発熱体H3,H4,H5,H6の許容温度のうち最低の許容温度とすることが考えられる。
この更新後の解析対象モデルでは、送風機F1,F2を用いて、発熱体H1a,H2aを冷却する。この場合、送風機F1,F2の数“2”と発熱体H1a,H2aの数“2”
とは一致する。冷却寄与度算出部120は、送風機F1について、発熱体H1aに対する冷却寄与度a1、および、発熱体H2aに対する冷却寄与度a2を算出する。同様に、送風機F2について、発熱体H1aに対する冷却寄与度b1、および、発熱体H2aに対する冷却寄与度b2を算出する。風量算出部130は、これらの冷却寄与度を用いて、連立方程式(6)と同様の連立不等式を決定でき、その連立不等式の不等号を等号とした連立方程式を得ることができる。
このように、発熱体の数が送風機の数よりも多い場合は、冷却寄与度の値が近似する発熱体をグループ化することで、発熱体の数と送風機の数とを一致させることができる。そして、第2の実施の形態と同様に連立方程式を決定し、その連立方程式を解くことで、新風量を求めることができる。
次に、各発熱体間の距離に基づいて発熱体をグループ化する例を説明する。具体的には、発熱体間の距離が近似する発熱体同士をグループ化する。
図20は、第5の実施の形態の解析処理例(その2)を示すフローチャートである。以下、図20に示す処理をステップ番号に沿って説明する。ここで、以下の手順では、図18のステップS52,S53に代えて、ステップS52a,S53aを実行する。そこで、図18と異なるステップのみを説明し、その他のステップについては説明を省略する。
(S52a)風量算出部130は、何れかの発熱体を選択し、その発熱体と他の発熱体との間の距離を求める。風量算出部130は、求めた距離のうち最大の距離を特定する。例えば、定義情報111では、各部品の配置が座標(筐体200内の空間で部品の中央点に対応する点の座標や筐体200内の部品を設置する面上で部品の底面(当該部品を設置する面に接する面)の中央点に対応する点の座標など)で与えられる。風量算出部130は、その座標を用いて、発熱体間の距離(例えば、発熱体の中央点間の距離)を求めることができる。
(S53a)風量算出部130は、ステップS52aで選択した発熱体を基準に、最大の距離に対して所定比率の範囲内に配置された発熱体同士をグループ化する。所定比率の範囲とは、例えば、最大の距離に対して0〜20%である。このグループ化を行った後も、グループの数と、グループ化されていない発熱体の数との和が送風機の数よりも多い場合、グループ化されていない発熱体を対象として、ステップS52a,S53aを再実行する。また、グループの数と、グループ化されていない発熱体の数との和が送風機の数よりも少なくなる場合、風量算出部130は、グループに含まれる発熱体のうち、基準となる発熱体から、より離れた発熱体をグループから除くことで、グループ化されていない発熱体の数を調整してもよい。
図21は、第5の実施の形態の解析処理の具体例(その2)を示す図である。図21(A)は、更新前の解析対象モデルを例示している。図21(B)は、更新後の解析対象モデルを例示している。
図21(A)について、更新前の解析対象モデルでは、送風機F1,F2および発熱体H1,H2,H3,H4,H5,H6が筐体200内に配置されている。この解析対象モデルでは、送風機F1,F2を用いて、発熱体H1,H2,H3,H4,H5,H6を冷却する。この場合、送風機F1,F2の数“2”は、発熱体H1,H2,H3,H4,H5,H6の数“6”よりも少ない。
風量算出部130は、基準となる発熱体として、発熱体H1を選択する。風量算出部130は、発熱体H1と他の発熱体との間の次の距離を計算する。発熱体H1,H2の距離d1=50mm。発熱体H1,H3の距離d2=250mm。発熱体H1,H4の距離d3=260mm。発熱体H1,H5の距離d4=270mm。発熱体H1,H6の距離d5=280mm。
風量算出部130は、求めた距離の中から最大距離d5を特定する。風量算出部130は、最大距離d5に対し、発熱体H1から一定比率(一例として20%とする)の範囲内にある発熱体同士をグループ化する。
具体的には、風量算出部130は、最大距離d5の20%である56mm(280×0.2)を算出する。すると、風量算出部130は、発熱体H1から距離56mmの範囲内に配置されている発熱体H2を特定する。そこで、風量算出部130は、発熱体H1,H2をグループ化する。この場合、当該グループ化を行っても、グループの数と、グループ化されていない発熱体の数との和が、送風機の数よりも多いので、風量算出部130は、グループ化されていない発熱体H3,H4,H5,H6についても、再度グループ化の処理を行う。そして、風量算出部130は、発熱体H3,H4,H5,H6をグループ化する。
図21(B)について、更新後の解析対象モデルでは、送風機F1,F2および発熱体H1b,H2bが筐体200内に配置されている。発熱体H1bは、発熱体H1,H2をグループ化して1つの発熱体とみなしたものである。例えば、発熱体H1bの許容温度を発熱体H1,H2の許容温度のうち最低の許容温度とすることが考えられる。発熱体H2bは、発熱体H3,H4,H5,H6をグループ化して1つの発熱体とみなしたものである。例えば、発熱体H2bの許容温度を発熱体H3,H4,H5,H6の許容温度のうち最低の許容温度とすることが考えられる。グループ化の方法には、図19で例示した方法と同様の方法を用いることができる。
この更新後の解析対象モデルでは、送風機F1,F2を用いて、発熱体H1b,H2bを冷却する。この場合、送風機F1,F2の数“2”と発熱体H1b,H2bの数“2”
とは一致する。冷却寄与度算出部120は、送風機F1について、発熱体H1bに対する冷却寄与度a1、および、発熱体H2bに対する冷却寄与度a2を算出する。同様に、送風機F2について、発熱体H1bに対する冷却寄与度b1、および、発熱体H2bに対する冷却寄与度b2を算出する。風量算出部130は、これらの冷却寄与度を用いて、連立方程式(6)と同様の連立不等式を決定でき、その連立不等式の不等号を等号とした連立方程式を得ることができる。
このように、発熱体の数が送風機の数よりも多い場合は、各発熱体間の距離が近似する発熱体をグループ化することで、発熱体の数と送風機の数とを一致させることができる。そして、第2の実施の形態と同様に連立方程式を決定し、当該連立方程式を解くことで、新風量を求めることができる。
[第6の実施の形態]
次に、第6の実施の形態を説明する。前述の第2〜第5の実施の形態と相違する事項を主に説明し、共通する事項の説明を省略する。
第6の実施の形態では、第5の実施の形態に続き、送風機の数が発熱体の数よりも多い場合に、送風機をグループ化して、各送風機の風量を求める機能を提供する。
ここで、第6の実施の形態の検証装置は、第2の実施の形態の検証装置100と同様である。第6の実施の形態の検証装置のハードウェアおよび機能ブロックは図2,3で説明した検証装置100のハードウェアおよび機能ブロックと同様である。そこで、第6の実施の形態でも、第2の実施の形態と同様の名称および符号を用いる。
まず、各発熱体に対する各送風機の冷却寄与度に基づいて、各送風機をグループ化する例を説明する。ここで、冷却寄与度は、後述の計算方法で示されるように、ある発熱体に着目すると、その発熱体と送風機との相対的な位置関係を反映したものと考えることができる。すなわち、着目する発熱体との相対的な位置関係が近似する送風機が複数存在する場合、着目する発熱体に対する送風機の冷却寄与度も近似すると考えられる。この性質を利用して各送風機のグループ化を行う。
図22は、第6の実施の形態の解析処理例(その1)を示すフローチャートである。以下、図22に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
(S61)冷却寄与度算出部120は、記憶部110に記憶された定義情報111を参照して、CFDによるシミュレーションのための初期設定を行う。ここで、定義情報111で定義される解析対象モデルにおいて、送風機の数は発熱体の数よりも多いものとする。
(S62)冷却寄与度算出部120は、検証モデルに対してCFDによるシミュレーションを行い、その結果を用いて各発熱体に対する各送風機の冷却寄与度を算出する。冷却寄与度算出部120は、算出した冷却寄与度を冷却寄与度テーブル112に登録する。冷却寄与度算出部120は、当該シミュレーションの結果として、定義情報111の内容で各送風機を動作させたときの、定常状態における各発熱体の温度を得る。
(S63)風量算出部130は、何れかの発熱体を選択し、その発熱体に対する各送風機の冷却寄与度がおおよそ一致(例えば、任意の中央値から±5%の範囲内で一致)する送風機同士をグループ化する。風量算出部130は、任意の発熱体を選択することができる。ここで、風量算出部130は、グループ化されていない発熱体の数とグループの数との和が送風機の数に一致するようにグループを作成する。このグループ化を行った後も、グループの数と、グループ化されていない送風機の数との和が発熱体の数よりも多い場合、±5%の範囲を拡張してもよい(例えば±7%に変更するなど)。あるいは、風量算出部130は、グループに含まれる送風機のうち、選択した発熱体に対する冷却寄与度の一致度の低いもの(例えば、グループに属する送風機の当該発熱体に対する冷却寄与度の平均からのずれが大きい送風機)をグループから除くことで、グループ化されていない送風機の数を調整してもよい。
(S64)冷却寄与度算出部120は、送風機の1つのグループを1つの送風機とみなして解析対象モデルを更新する。このとき、グループ化して得た送風機の風量を、そのグループに属する送風機の風量の総和とすることが考えられる。また、例えば、グループ化して1つとみなされた送風機を、グループに属する各送風機を囲う1つの多面体(2次元では多角形)として定めることができる。冷却寄与度算出部120は、更新後の解析対象モデルに対してCFDによるシミュレーションを行い、その結果を用いて各発熱体に対する各送風機の冷却寄与度を算出する。冷却寄与度算出部120は、算出した冷却寄与度を冷却寄与度テーブル112に登録する。冷却寄与度算出部120は、当該シミュレーションの結果、更新後の解析対象モデルでの定常状態における各発熱体の温度を得る。
(S65)風量算出部130は、ステップS64の結果を用いて、発熱体毎の温度上昇量を算出し、発熱体毎の温度上昇割合を算出する。
(S66)風量算出部130は、ステップS65で算出した温度上昇割合を用いて、各送風機の風量比率を算出する。算出方法は、図12のステップS14と同様である。この場合、ステップS63で送風機の数と発熱体の数とが一致するように発熱体をグループ化しているので、風量算出部130は、ステップS14と同様に、各送風機の風量比率に関する連立方程式を得ることができる。風量算出部130は、その連立方程式を解くことで、各送風機の風量比率を算出できる。
(S67)風量算出部130は、ステップS66で算出した風量比率に基づいて、各送風機の風量を計算する。ここで、風量算出部130は、グループ化により1つの送風機とみなされている送風機に対して風量を計算することになる。そこで、風量算出部130は、そのグループに属する各送風機で、計算された風量を等分することで、当該グループに属する各送風機の風量を得ることが考えられる。グループ化により1つの送風機とみなされている送風機およびグループ化されていない送風機の風量の計算は、図12のステップS15と同様に行える。風量算出部130は、各送風機に対して決定した風量に対応する回転数を決定する。各送風機の回転数の決定も図12のステップS15と同様に行える。
図23は、第6の実施の形態の解析処理の具体例(その1)を示す図である。図23(A)は、更新前の解析対象モデルを例示している。図23(B)は、更新後の解析対象モデルを例示している。
まず、図23(A)について、更新前の解析対象モデルでは、送風機F1,F2,F3および発熱体H1,H2が筐体200内に配置されている。この解析対象モデルでは、送風機F1,F2,F3を用いて、発熱体H1,H2を冷却する。この場合、送風機F1,F2,F3の数“3”は、発熱体H1,H2の数“2”よりも多い。
冷却寄与度算出部120は、この更新前の解析対象モデルについて、発熱体H1,H2に対する送風機F1,F2,F3の冷却寄与度を算出する。例えば、発熱体H1に対する送風機F1,F2,F3の冷却寄与度は次の通りである。送風機F1の冷却寄与度e1=90%。送風機F2の冷却寄与度e2=80%。送風機F3の冷却寄与度e3=10%。発熱体H2に対する送風機F1,F2,F3の冷却寄与度も同様に算出される。
風量算出部130は、発熱体H1を選択し、発熱体H1に対する冷却寄与度がおおよそ一致(例えば、ある値から±0.05(冷却寄与度±5%)の範囲内で一致)する送風機同士をグループ化する。
例えば、風量算出部130は、発熱体H1に対する各送風機の中で冷却寄与度が比較的近い値となっている送風機F1,F2の冷却寄与度e1,e2の平均(90+80)/2=85%(中央値)を算出する。冷却寄与度e1=90%は、平均値85%±5%の範囲に含まれる。また、冷却寄与度e2=80%も平均値85%±5%の範囲に含まれる。よって、風量算出部130は、送風機F1,F2をグループ化する。図23の例では、送風機F1,F2の間に、紙面縦方向に空間が存在する。送風機F1,F2の領域と送風機F1,F2の間に存在している紙面縦方向の空間の領域とを含めた連続した領域を送風機F1,F2の領域と考えてもよい。
図23(B)について、更新後の解析対象モデルでは、送風機F1a,F3および発熱体H1,H2が筐体200内に配置されている。送風機F1aは、送風機F1,F2をグループ化して1つの送風機とみなしたものである。例えば、送風機F1aの風量を送風機F1,F2の風量の総和とすることが考えられる。送風機F3は、グループ化されていない送風機である。
この更新後の解析対象モデルでは、送風機F1a,F3を用いて、発熱体H1,H2を冷却する。この場合、送風機F1a,F3の数“2”と発熱体H1,H2の数“2”とは一致する。冷却寄与度算出部120は、送風機F1aについて、発熱体H1に対する冷却寄与度a1、および、発熱体H2に対する冷却寄与度a2を算出する。同様に、送風機F3について、発熱体H1に対する冷却寄与度b1、および、発熱体H2に対する冷却寄与度b2を算出する。風量算出部130は、これらの冷却寄与度を用いて、連立方程式(6)と同様の連立不等式を決定でき、その連立不等式の不等号を等号とした連立方程式を得ることができる。
このように、送風機の数が発熱体の数よりも多い場合は、発熱体に対する送風機の冷却寄与度の値が近似する送風機をグループ化することで、送風機の数と発熱体の数とを一致させることができる。そして、第2の実施の形態と同様に連立方程式を決定し、当該連立方程式を解くことで、新風量を求めることができる。
次に、各送風機間の距離に基づいて、送風機をグループ化する例を説明する。具体的には、送風機間の距離が近似する送風機同士をグループ化する。
図24は、第6の実施の形態の解析処理例(その2)を示すフローチャートである。以下、図24に示す処理をステップ番号に沿って説明する。ここで、以下の手順では、図22のステップS62,S63に代えて、ステップS62a,S63aを実行する。そこで、図22と異なるステップのみを説明し、その他のステップについては説明を省略する。
(S62a)風量算出部130は、何れかの送風機を選択し、その送風機と他の送風機との間の距離を求める。風量算出部130は、求めた距離のうち最大の距離を特定する。例えば、定義情報111では、各部品の配置が座標(筐体200内の空間で部品の中央点に対応する点の座標や筐体200内の部品を設置する面上で部品の底面(当該部品を設置する面に接する面)の中央点に対応する点の座標など)で与えられる。風量算出部130は、その座標を用いて、送風機間の距離(例えば、送風機の中央点間の距離)を求めることができる。
(S63a)風量算出部130は、ステップS62aで選択した送風機を基準に、最大の距離に対して所定比率の範囲内に配置された送風機同士をグループ化する。所定比率の範囲とは、例えば、最大の距離に対して0〜20%である。このグループ化を行った後も、グループの数と、グループ化されていない送風機の数との和が発熱体の数よりも多い場合、グループ化されていない送風機を対象として、ステップS62a,S63aを再実行する。また、グループの数と、グループ化されていない送風機の数との和が、発熱体の数よりも少なくなる場合、風量算出部130は、グループに含まれる送風機のうち、基準となる送風機から、より距離の大きな送風機をグループから除くことで、グループ化されていない送風機の数を調整してもよい。
図25は、第6の実施の形態の解析処理の具体例(その2)を示す図である。図25(A)は、更新前の解析対象モデルを例示している。図25(B)は、更新後の解析対象モデルを例示している。
まず、図25(A)について、更新前の解析対象モデルでは、送風機F1,F2,F3および発熱体H1,H2が筐体200内に配置されている。この解析対象モデルでは、送風機F1,F2,F3を用いて、発熱体H1,H2を冷却する。この場合、送風機F1,F2,F3の数“3”は、発熱体H1,H2の数“2”よりも多い。
風量算出部130は、基準となる送風機として、送風機F1を選択する。風量算出部130は、送風機F1と他の送風機との間の次の距離を計算する。送風機F1,F2の距離g1=60mm。送風機F1,F3の距離g2=300mm。
風量算出部130は、求めた距離の中から最大距離g2を特定する。風量算出部130は、最大距離g2に対し、送風機F1から一定比率(一例として20%とする)の範囲内にある送風機同士をグループ化する。
具体的には、風量算出部130は、最大距離g2の20%である60mm(300×0.2)を算出する。すると、風量算出部130は、送風機F1から距離60mmの範囲内に配置されている送風機F2を特定する。そこで、風量算出部130は、送風機F1,F2をグループ化する。グループ化の方法には、図23で例示した方法と同様の方法を用いることができる。
図25(B)について、更新後の解析対象モデルは、図23(B)の例示と同様となる。具体的には、送風機F1b,F3および発熱体H1,H2が筐体200内に配置されている。送風機F1bは、送風機F1,F2をグループ化して1つの送風機とみなしたものである。例えば、送風機F1bの初期風量を送風機F1,F2の風量を加算した風量とすることが考えられる。送風機F3は、グループ化されていない送風機である。
この更新後の解析対象モデルでは、送風機F1b,F3を用いて、発熱体H1,H2を冷却する。この場合、送風機F1b,F3の数“2”と発熱体H1,H2の数“2”とは一致する。冷却寄与度算出部120は、送風機F1bについて、発熱体H1に対する冷却寄与度a1、および、発熱体H2に対する冷却寄与度a2を算出する。同様に、送風機F3について、発熱体H1に対する冷却寄与度b1、および、発熱体H2に対する冷却寄与度b2を算出する。風量算出部130は、これらの冷却寄与度を用いて、連立方程式(6)と同様の連立不等式を決定でき、その連立不等式の不等号を等号とした連立方程式を得ることができる。
このように、送風機の数が発熱体の数よりも多い場合は、各送風機間の距離が近似する送風機をグループ化することで、送風機の数と発熱体の数とを一致させることができる。そして、第2の実施の形態と同様に連立方程式を決定し、当該連立方程式を解くことで、新風量を求めることができる。
(冷却寄与度の算出方法について)
ところで、上記の第1〜第6の実施の形態では、複数の送風機により複数の発熱体を冷却する場合の、各発熱体に対する各送風機の冷却寄与度を用いるものとした。以下の説明では、冷却寄与度算出部120による冷却寄与度の算出方法を具体的に説明する。
以下では、一例として、3つの送風機と2つの発熱体を含む解析対象モデルを想定する。具体的には、送風機F1,F2,F3および発熱体H1,H2である。定義情報111には、これら送風機および発熱体の属性などが設定されることになる。
図26は、冷却寄与度の算出の説明で想定する解析対象モデルの例を示す図である。図26(A)は、解析対象とする筐体200の外観モデルを例示している。筐体200は、基板201と蓋202とを有する。基板201は、部品を設置するための部材である。蓋202は、基板201の上部を基板201と接する壁面および基板201と離隔した壁面で覆い、基板201と蓋202とで覆われる領域に空間を形成している。筐体200の紙面手前側は、開口されている。筐体200の紙面奥側は、閉塞されている。基板201および蓋202によって形成される空間を筐体200の内部の空間ということができる。ただし、筐体200の内部の空間は、上記開口部分によって筐体200の外部の空間と連続している。
図26(B)は、筐体200の蓋202を取り外した状態を例示している。基板201上に、送風機F1,F2,F3および発熱体H1,H2が設置されている。送風機F1,F2,F3および発熱体H1,H2の配置や風量などは、前述のように定義情報111により定義される。ここで、蓋202には、送風機F1,F2,F3に対応する位置に孔が設けられ、送風機F1,F2,F3が筐体200の外部から空気を取り込み、筐体200の内部の空間に放出できるようになっている。すなわち、送風機F1,F2,F3により筐体200の内部に放出された空気は、筐体200の内部を紙面手前の開口部側へ流れる。その際に、送風機F1,F2,F3により放出された空気は、発熱体H1,H2により発せられた熱を得て、運び去る。これにより、発熱体H1,H2が冷却される。
図27は、セル配置の例を示す図である。筐体200の内部の位置は、基板201の上面(送風機や発熱体が設置される面)を格子状に区切ったセルと呼ばれる単位で区別される。例えば、紙面左上を原点とし、紙面横方向をX軸、紙面縦方向をY軸とする。X軸を19、Y軸を26に分割すれば、19×26個のセル位置を管理できる。セルの細かさは任意に変更できる。例えば、セルを更に細かく定義してもよい。セル座標を(X,Y)と表す(以下の説明では、X,Yの図示を省略する)。ここで、Y=27は、空気の“出口”であることを明記するためのセルである。
例えば、送風機F1の配置“P1”は、{(4,1)、(5,1)、(6,1)、(7,1)}である。送風機F2の配置“P2”は、{(10,1)、(11,1)、(12,1)、(13,1)}である。送風機F3の配置“P5”は、{(19,16)、(19,17)、(19,18)、(19,19)}である。
例えば、発熱体H1の配置“P3”は、{(8,6)、(9,6)、(10,6)、(8,7)、(9,7)、(10,7)、(8,8)、(9,8),(10,8)}である。発熱体H2の配置“P4”は、{(8,16)、(9,16)、(10,16)、(8,17)、(9,17)、(10,17)、(8,18)、(9,18)、(10,18)}である。
前述のように、送風機F1,F2の紙面上側および送風機F3の紙面右側から筐体200の内部に空気が流入し、“出口”側から筐体200の外部に流出する。以下では、送風機F1,F2,F3により筐体200の内部に流入した空気が混合した空気を、混合空気と称することがある。
図28は、冷却評価の処理例を示すフローチャートである。以下、図28に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
(S101)冷却寄与度算出部120は、記憶部110に記憶された定義情報111を参照して、熱流体解析のための初期設定を行う。具体的には、冷却寄与度算出部120は、筐体200内の送風機F1,F2,F3および発熱体H1,H2の配置や属性値(発熱体H1,H2の発熱量も含む)の情報を定義情報111から読み込む。
(S102)冷却寄与度算出部120は、CFDの手法を用いて、筐体200内の混合空気の定常状態の温度分布(T(x))と、混合空気の速度分布(ベクトルV(x))と、各送風機からの空気の流量分布(qn(x))とを算出する。ここで、各分布の変数であるベクトルxは、筐体200内の空間の位置を示す位置ベクトルx=(x,y,z)である(ただし、zは一定とし、xy面での分布を考える)。なお、x軸はX軸と重なる軸であり、y軸はY軸と重なる軸である。z軸は、x軸、y軸と直交する軸である。離散化の度合い(座標の区切り)は同じとする。また、nは送風機F1、送風機F2および送風機F3の何れかである。ここで、数式の中で各送風機を次のように表記する。送風機F1はn=fan1である。送風機F2はn=fan2である。送風機F3はn=fan3である。なお、Tの単位はケルビン(K)である。ベクトルVの単位はメートル毎秒(m/s)である。
(S103)冷却寄与度算出部120は、混合空気に対する授受熱量分布h0(x)を算出する。h0の単位はワット(W)である。ここで、移流拡散方程式を式(11)のように記述できる。ただし、位置ベクトルxの記述を省略している(以下の説明でも省略することがある)。
tは時間(s)である。ρは空気の密度(kg/m3)である。Eは速さの2乗(m2/s2)である。∇(ナブラ:nabla)は空間に対するベクトル微分演算子である。ベクトルVは混合空気の速度分布である。pは圧力(Pa)である。kは空気の熱伝導率(W/(m・K))である。Tは温度分布である。Sは発熱密度(W/m3)である。式(11)の左辺第1項を非定常項と呼ぶことがある。同左辺第2項は移流項と呼ぶことがある。同右辺第1項を熱伝導項と呼ぶことがある。同右辺第2項を発熱項(ソース項)と呼ぶことがある。ここで、式(12)のようにψ(エネルギー密度)を定義する。ψの単位はジュール毎立方メートル(J/m3)である。
すると、式(11)において、定常状態かつ各セルで発熱しないと考えて、非定常項と発熱項とを無視することで式(13)を得る。式(13)にステップS102で求めた温度分布Tを代入して授受熱量分布h0を得る(式(14))。
aはセル当たりの体積(m3)である。z軸方向の高さを考慮してセルの体積を考えることができる(例えば、基板201の上面から基板201と対面する蓋202の内側の面までの長さを高さとし、基板201上の1つの格子の面積を底面積とした直方体の体積をセルの体積と考えてもよい)。
(S104)冷却寄与度算出部120は、式(15)を用いて送風機単位の授受熱量分布hn(x)の初期値を算出する。hnの単位はワット(W)である。
qnはステップS102で求めた各送風機からの空気の流量分布である。また、q=Σqnである(Σはnについて和をとることを示す)。括弧で括られた上付きの添え字は、計算を繰り返した回数i(iは0以上の整数)を示しており、i=0、すなわち“(0)”は初期値であることを示す。なお、以下の説明では、上付きの添え字“(i)”の表記を省略することがある。hnは式(16)により授受熱量密度分布Snに変換される(式(16)は任意のiについて利用し得る)。熱の湧き出しを発熱ととらえることができるから、授受熱量密度分布Snは各セルにおける空気の発熱密度を示しているということもできる。
(S105)冷却寄与度算出部120は、式(17)、(18)を用いて送風機単位の保有熱量分布Wn(x)の初期値を算出する。Wnの単位はワット(W)である。
ここで、初期値について求めるからi=0である。式(17)は、式(11)から非定常項と熱伝導項とを無視した移流方程式である。定常状態を考えており、速度分布Vによる空気の移流に対し、授受熱量密度分布Snで示される各セルでの熱の湧き出し(熱の授受)を与えるエネルギー密度の分布ψnを求めるためである。分布ψnは、各送風機からの各流体により各セルで保有されるエネルギー密度の分布ということができる。
(S106)冷却寄与度算出部120は、送風機単位の授受熱量分布hnを更新する。すなわち、冷却寄与度算出部120は、i番目に求めたhnを用いて、i+1番目のhnを算出する。具体的な算出方法は後述する。hnは式(16)により授受熱量密度分布Snに変換できる。
(S107)冷却寄与度算出部120は、式(17)、(18)を用いて送風機単位の保有熱量分布Wnを更新する。すなわち、ステップS106で更新したSnを用いてWnを更新する。
(S108)冷却寄与度算出部120は、送風機単位の保有熱量分布Wnの残差が収束したか否かを判定する。収束していない場合、処理をステップS106に進める。収束した場合、処理をステップS109に進める。
(S109)冷却寄与度算出部120は、発熱体H1,H2それぞれについて、熱授受に関わるセル範囲を特定する。具体的には、所定のルールに基づいて、筐体200内の空間から発熱体H1の周囲の所定のセル範囲を抽出する。同様に、筐体200内の空間から発熱体H2の周囲の所定のセル範囲を抽出する。
(S110)冷却寄与度算出部120は、授受熱量分布hnとステップS109で抽出されたセル範囲とを用いて、発熱体H1,H2それぞれに対する送風機F1,F2,F3の冷却能力を評価する。冷却寄与度算出部120は、ディスプレイ11に評価結果を表示させる。
このようにして、冷却寄与度算出部120は、保有熱量分布Wnの残差が収束するまで授受熱量分布hnを更新し、最終的に得られた授受熱量分布hnを用いて、発熱体H1,H2それぞれに対する送風機F1,F2,F3の冷却能力を評価する。
図29は、混合空気の速度分布を示す図である。図29では送風機F1,F2,F3を全て稼働させたときの定常状態における混合空気の速度分布Vを例示している。例えば、送風機F1,F2からの空気は紙面上側から下側へ向けて流れて混ざり合う。送風機F3からの空気は、紙面右側から左側へ向けて流れる。このとき、送風機F3からの空気は、発熱体H2に当たって上下に移動する。この移動した空気が送風機F1,F2からの空気の流れに対するあおりとなって送風機F1,F2,F3からの空気が混ざり合う。送風機F2からの空気は、送風機F1からの空気よりもあおりの影響を大きく受ける。
図30は、流量分布の例(その1)を示す図である。図30では送風機F1,F2,F3を全て稼働させたときの送風機F1からの空気の流量分布qn(n=fan1)を例示している。各セルに付された数値は流量割合qn/q(n=fan1)である。色の濃いセルほど流量が大きく、色の薄いセルほど流量が小さい(以下に示す他の流量分布も同様)。送風機F1に関する流量分布では、流量の比較的大きな領域がX=1〜8辺りのセル範囲に分布している。
図31は、流量分布の例(その2)を示す図である。図31では送風機F1,F2,F3を全て稼働させたときの送風機F2からの空気の流量分布qn(n=fan2)を例示している。各セルに付された数値は流量割合qn/q(n=fan2)である。送風機F2に関する流量分布では、流量の比較的大きな領域がX=9〜19かつY=1〜13辺りのセル範囲に分布している。
図32は、流量分布の例(その3)を示す図である。図32では送風機F1,F2,F3を全て稼働させたときの送風機F3からの空気の流量分布qn(n=fan3)を例示している。各セルに付された数値は流量割合qn/q(n=fan3)である。送風機F3に関する流量分布では、流量の比較的大きな領域がX=11〜19かつY=14〜26辺りのセル範囲に分布している。
図33は、混合空気の温度分布の例を示す図である。図33は送風機F1,F2,F3を全て稼働させたときの定常状態の温度分布Tを例示している。各セルに付された数値は、温度(T−273.15)(℃単位)である。色の濃いセルほど温度が高く、色の薄いセルほど温度が低い。例えば、温度分布Tによれば、発熱体H1,H2の風上側の温度が比較的低く、風下側の温度が比較的高いことが分かる。冷却寄与度算出部120は、図29〜33に示した各分布を、図28で説明したステップS102(CFDによる熱流体解析)の処理により求める。
図34は、授受熱量分布の例を示す図である。図34は温度分布Tに対する授受熱量分布h0を例示している。図28のステップS103で説明したように、冷却寄与度算出部120は、温度分布Tを式(13)に代入することで、授受熱量分布h0を得る。例えば、授受熱量分布h0によれば、発熱体H1,H2の風上側で授受熱量が大きく、風下側で授受熱量が小さいことが分かる。
図35は、送風機単位の授受熱量分布(初期値)の例(その1)を示す図である。図35では送風機F1に対する授受熱量分布hn(n=fan1)の初期値を例示している。これは、図34で例示した授受熱量分布h0に送風機F1からの空気の流量比(qn/q)(n=fan1)を乗じたものである。例えば、あるセルのh0の値に、当該セルにおけるqn/q(n=fan1)の値を乗じれば、当該セルのhn(n=fan1)の値が求まる(以下、同様)。
図36は、送風機単位の授受熱量分布(初期値)の例(その2)を示す図である。図36では送風機F2に対する授受熱量分布hn(n=fan2)の初期値を例示している。これは、図34で例示した授受熱量分布h0に送風機F2からの空気の流量比(qn/q)(n=fan2)を乗じたものである。
図37は、送風機単位の授受熱量分布(初期値)の例(その3)を示す図である。図37では送風機F3に対する授受熱量分布hn(n=fan3)の初期値を例示している。これは、図34で例示した授受熱量分布h0に送風機F3からの空気の流量比(qn/q)(n=fan3)を乗じたものである。冷却寄与度算出部120は、図35〜37に示した各分布hnを、図28で説明したステップS104の処理により求める。
図38は、送風機単位の保有熱量分布(初期値)の例(その1)を示す図である。図38では送風機F1に対する保有熱量分布Wn(n=fan1)の初期値を例示している。これは、図35で例示した授受熱量分布hn(n=fan1)を用いて、式(17)、(18)から保有熱量分布Wn(n=fan1)を求めた結果である。
図39は、送風機単位の保有熱量分布(初期値)の例(その2)を示す図である。図39では送風機F2に対する保有熱量分布Wn(n=fan2)の初期値を例示している。これは、図36で例示した授受熱量分布hn(n=fan2)を用いて、式(17)、(18)から保有熱量分布Wn(n=fan2)を求めた結果である。
図40は、送風機単位の保有熱量分布(初期値)の例(その3)を示す図である。図40では送風機F3に対する保有熱量分布Wn(n=fan3)の初期値を例示している。これは、図37で例示した授受熱量分布hn(n=fan3)を用いて、式(17)、(18)から保有熱量分布Wn(n=fan3)を求めた結果である。冷却寄与度算出部120は、図38〜40に示した各分布Wnを、図28で例示したステップS105の処理により求める。次に、図28のステップS106の送風機単位の授受熱量分布の更新の手順を例示する。
図41は、送風機単位の授受熱量分布の更新処理の例を示すフローチャートである。以下、図41に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
(S111)冷却寄与度算出部120は、未処理のセルの中からセルを1つ選択する。
(S112)冷却寄与度算出部120は、送風機単位の保有熱量Wnから送風機単位の授受熱量hnを減算して、送風機単位の流入熱量(Wn−hn)を算出する。ただし、Wnおよびhnの値は、ステップS111で選択されたセルにおける値を示す(以下、同様)。
(S113)冷却寄与度算出部120は、式(19)を用いてセルに流入する送風機ごとの空気の温度τn(x)を算出する。
Cは空気の比熱(J/(g・K))、ρは空気の密度である。qnは流量である。
(S114)冷却寄与度算出部120は、各送風機の空気のうち、温度Tnが最低値である送風機の空気に、ステップS112で減算したΣhn=h0(Σはnについての和をとることを示す)の一部を分配する。h0の値は、ステップS111で選択されたセルにおける値を示す。1回に分配する量は、任意に決定できる。例えば、分配する量はh0/100やh0/50のように冷却寄与度算出部120に予め与えられる。送風機ごとの分配量の積算がi+1回目に算出されるhnに相当する。このようにして、i回目に求めたhnに対し、i+1回目のhnを求める。ここで、Tnとτnとの関係は式(20)により与えられる。
(S115)冷却寄与度算出部120は、減算した授受熱量h0分を各送風機の空気に全て分配したか否かを判定する。全て分配した場合、処理をステップS118に進める。全て分配していない場合、処理をステップS116に進める。例えば、ステップS114を繰り返し実行し、分配量の積算がh0に等しければ、全て分配したと判定する。分配量の積算がh0よりも小さければ、全て分配していないと判定する。
(S116)冷却寄与度算出部120は、送風機ごとの空気の温度Tnが均一であるか否かを判定する。均一である場合、処理をステップS117に進める。均一でない場合、処理をステップS114に進める。
(S117)冷却寄与度算出部120は、送風機ごとの空気の温度の均一を維持して、未分配分の授受熱量を各送風機の空気に分配する。ステップS114〜S117の処理は、式(20)および以下に示す式(21)、(22)、(23)で示される条件の下に、i+1回目のhnを求める処理であるといえる。
(S118)冷却寄与度算出部120は、ステップS111で選択されたセルにおける送風機単位の授受熱量をステップS114〜S117の処理により最終的に得られたi+1回目のhnの値に更新する。
(S119)冷却寄与度算出部120は、筐体200内の空間の全てのセルを処理済であるか否かを判定する。全てのセルを処理済である場合、処理を終了する。全てのセルを処理済でない、すなわち、未処理のセルがある場合、処理をステップS111に進める。
このようにして、冷却寄与度算出部120は、送風機単位の授受熱量分布hnを更新する。
図42は、セルの授受熱および流入熱を示す図である。図42(A)は1つのセルにおいて保有される熱の種類を例示している。図42(B)は授受熱HR1を例示している。図42(C)は流入熱HT1,HT2,HT3,HT4を例示している。
1つのセルに着目すると、当該セルにおける各送風機からの空気により保有される熱は、当該空気が当該セル位置で奪う熱(授受熱HR1)と隣接セルから流入する熱(流入熱HT1,HT2,HT3,HT4)との和であると考えることができる。したがって、保有熱量Wnから授受熱HR1分の授受熱量hnを減算すれば、流入熱HT1,HT2,HT3,HT4分の流入熱量を得られる。すると、当該流入熱量から流入する空気の温度を評価できる。各送風機からの空気について、この温度が均一になるように各送風機の空気の授受熱量hnを調整する。各送風機の空気が当該セルに流入する際に異なる温度であったとしても、各送風機の空気はセル内で混合される。このため、当該セルから空気が流出する際には、各送風機の空気は同一の温度になって流出すると考えられるからである。
図43は、セルの保有熱量および授受熱量の例を示す図である。図43(A)はセルCxにおける空気の保有熱量Wn(i回目)を例示している。例えば、各送風機の空気の保有熱量をシリンダ311,312,313で表す。各シリンダの断面積はCρ(qn)(比熱、密度および流量の積)に相当する。シリンダ311は、送風機F1の保有熱量Wn(n=fan1)を示す。シリンダ312は、送風機F2の保有熱量Wn(n=fan2)を示す。シリンダ313は、送風機F3の保有熱量Wn(n=fan3)を示す。ΣWn(Σはnについて和をとることを示す)がセルCxの全保有熱量である。
図43(B)はセルCxにおける空気の授受熱量hn(i回目)を例示している。各送風機の空気の授受熱量をシリンダ321,322,323で表す。各シリンダの断面積は図43(A)と同様にCρ(qn)を示す。シリンダ321は、送風機F1の授受熱量hn(n=fan1)を示す。シリンダ322は、送風機F2の授受熱量hn(n=fan2)を示す。シリンダ323は、送風機F3の授受熱量hn(n=fan3)を示す。
図44は、セルの流入熱量および更新後の保有熱量の例を示す図である。シリンダ311a,312a,313aは、図43で示した保有熱量Wnおよび授受熱量hnに対する流入熱量(i回目)を例示している。シリンダ311aは、送風機F1に関する流入熱量(Wn−hn)(n=fan1)である。シリンダ312aは、送風機F2に関する流入熱量(Wn−hn)(n=fan2)である。シリンダ313aは、送風機F3に関する流入熱量(Wn−hn)(n=fan3)である。なお、シリンダ320は、授受熱量hnの合計Σhn=h0(Σはnについて和をとることを示す)を示している。
そして、シリンダ311a,312a,313aそれぞれに対して、シリンダ320の授受熱量合計h0を再分配する。このとき、各送風機の空気の温度Tn(すなわち、シリンダの高さに相当)がほぼ均一になるようにする。シリンダ311b,312b,313bは、このようにしてシリンダ320の授受熱量h0を再分配した後を例示している。シリンダ311bは、シリンダ311aに対して授受熱量を再分配した後を示す。シリンダ312bは、シリンダ312aに対して授受熱量を再分配した後を示す。シリンダ313bは、シリンダ313aに対して授受熱量を再分配した後を示す。
図45は、セルの授受熱量の更新例を示す図である。シリンダ321a,322a,323aは、シリンダ321,322,323の更新後(i+1回目)を示している。すなわち、シリンダ321aは、送風機F1からの空気のセルCxにおける更新後の授受熱量hn(n=fan1)である。シリンダ322aは、送風機F2からの空気のセルCxにおける更新後の授受熱量hn(n=fan2)である。シリンダ323aは、送風機F3からの空気のセルCxにおける更新後の授受熱量hn(n=fan3)である。
冷却寄与度算出部120は、セルCxに対する処理と同様の処理を全てのセルに対して行い、送風機ごとの授受熱量分布hnを更新する。そして、式(17)、(18)、(19)、(20)、(21)、(22)、(23)を用いて、授受熱量分布hnの更新を繰り返し行う。
冷却寄与度算出部120は、この調整を反復法により、例えば、保有熱量分布Wnの各セルの値に対する残差が式(24)で表すようにε(εは正の実数)に収束するまで行う。値εは、冷却寄与度算出部120に予め与えられる。
このようにして、最終的な授受熱量hnを決定する。なお、冷却寄与度算出部120は、エネルギー密度分布ψnまたは温度分布Tnの残差が収束したところで授受熱量hnの調整を終了してもよい。
図46は、送風機単位の授受熱量分布(収束後)の例(その1)を示す図である。図46では送風機F1に対して最終的に求められた授受熱量分布hn(n=fan1)を例示している。図35と比較すると、セル範囲Raに含まれる各セルの授受熱量が他のセル範囲のセルよりも大幅に調整されている。セル範囲RaはX=7〜11かつY=15〜19のセル範囲である。これは、発熱体H2の周囲の領域であり、送風機F1,F2からの空気が送風機F3からの空気のあおりの影響が他の領域よりも大きい領域であると考えられる。
図47は、送風機単位の授受熱量分布(収束後)の例(その2)を示す図である。図47では送風機F2に対して最終的に求められた授受熱量分布hn(n=fan2)を例示している。図36と比較すると、図46と同様にセル範囲Rbに含まれる各セルの授受熱量が他の領域のセルよりも大幅に調整されている。ここで、セル範囲Rbはセル範囲Raと同じ(X,Y)座標範囲で示されるセル範囲である。
図48は、送風機単位の授受熱量分布(収束後)の例(その3)を示す図である。図48では送風機F3に対して最終的に求められた授受熱量分布hn(n=fan3)を例示している。図37と比較すると、図46と同様にセル範囲Rcに含まれる各セルの授受熱量が他の領域のセルよりも大幅に調整されている。ここで、セル範囲Rcはセル範囲Raと同じ(X,Y)座標範囲で示されるセル範囲である。
このように、図41の手順を用いることで、あおりの影響が比較的大きなセル範囲Ra,Rb,Rcについて、他の領域よりも特に大きく授受熱量分布hnが調整される。すなわち、あおりの影響があった場合でも、その影響を授受熱量分布hnに適切に反映させることができる。
冷却寄与度算出部120は、図46〜48で示した授受熱量分布hn(n=fan1,fan2,fan3)の何れかのユーザによる選択を許容する。冷却寄与度算出部120は、選択された授受熱量分布hnを示す画像(図46〜48で示されるような図)をディスプレイ11に表示させる。また、冷却寄与度算出部120は、授受熱量分布hnに対する保有熱量分布Wn(n=fan1,fan2,fan3)についても、ユーザによる選択を許容する。冷却寄与度算出部120は、選択された保有熱量分布Wnを示す画像をディスプレイ11に表示させる。
例えば、冷却寄与度算出部120は、ディスプレイ11を用いて、ユーザにより選択された分布で示される各セルにおける値に応じた画像(例えば、数値、色、色の濃淡など)を、筐体200内部の空間を示す画像の各セルに対応する部分に表示する。ユーザは授受熱量分布hnや保有熱量分布Wnを示す画像を閲覧することで、各送風機による各発熱体に対する冷却効果を容易に把握することができる。
次に、図28のステップS109の熱授受に関わるセル範囲の特定処理の手順を説明する。
図49は、熱授受に関わるセル範囲の特定処理の例を示すフローチャートである。以下、図49に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
(S121)冷却寄与度算出部120は、解析対象モデルに含まれる発熱体を1つ選択する。選択された発熱体を発熱体mとする。
(S122)冷却寄与度算出部120は、発熱体mに隣接するセル範囲Rを取得する。例えば、発熱体H1であれば、隣接するセル範囲Rは、(X,Y)={(8,5)、(9,5)、(10,5)、(7,6)、(11,6)、(7,7)、(11,7)、(7,8)、(11,8)、(8,9)、(9,9)、(10,9)}である。
(S123)冷却寄与度算出部120は、セル範囲Rの中から1つのセルC1を選択する。
(S124)冷却寄与度算出部120は、セルC1にマークを付与する。例えば、セルC1に対して、発熱体mの熱授受に関わるセル範囲Rmに含まれるセルであることを示すマーク(例えば、セルC1を示す座標に対する“true”などのフラグ)を付与する。
(S125)冷却寄与度算出部120は、セルC1に隣接する隣接セルC2を取得する。隣接するセルが複数ある場合、複数の隣接セルC2が得られることになる。冷却寄与度算出部120は、隣接セルC2の授受熱量が、“0<隣接セルC2の授受熱量≦セルC1の授受熱量”の関係を満たすか否かを判定する。満たす場合、処理をステップS126に進める。満たさない場合、処理をステップS127に進める。なお、複数の隣接セルC2が得られている場合は、少なくとも1つの隣接セルC2が当該関係を満たしていれば、ステップS126に進める。
(S126)冷却寄与度算出部120は、セル範囲RにセルC2を追加する。ステップS125の関係を満たすセルC2が複数存在する場合、複数のセルC2をセル範囲Rに追加する。ただし、セル範囲Rに既に存在するセルを、重複して追加しなくてよい。そして、処理をステップS123に進める。
(S127)冷却寄与度算出部120は、セル範囲R内の全セルを処理済であるか否かを判定する。セル範囲R内の全セルを処理済である場合、処理をステップS128に進める。セル範囲R内の全セルを処理済でない場合、処理をステップS123に進める。
(S128)冷却寄与度算出部120は、マーク付与されたセルの集合を発熱体mの熱授受に関わるセル範囲Rmとする。
(S129)冷却寄与度算出部120は、解析対象モデルに含まれる全ての発熱体について処理済であるか否か(すなわち、全ての発熱体についてセル範囲Rmを取得したか否か)を判定する。全ての発熱体について処理済である場合、処理を終了する。全ての発熱体について処理済でない場合、処理をステップS121に進める。
図50は、熱授受に関わるセル範囲の例を示す図である。例えば、冷却寄与度算出部120は、図49の手順により、発熱体H1に対してセル範囲R10を取得する。また、冷却寄与度算出部120は、図49の手順により、発熱体H2に対してセル範囲R20を取得する。次に、図28のステップS110の送風機単位の冷却能力の評価の手順を説明する。
図51は、送風機単位の冷却能力の評価処理の例を示すフローチャートである。以下、図51に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
(S131)冷却寄与度算出部120は、送風機単位の授受熱量分布hnを1つ選択する。
(S132)冷却寄与度算出部120は、式(25)を用いて熱授受に関わるセル範囲の総授受熱量Zm,nを発熱体mごとに算出する。
Zm,nは、発熱体mの発熱量に対して送風機nからの空気が奪う熱量(単位時間当たりに奪う熱量といってもよい)に相当する。
(S133)冷却寄与度算出部120は、ステップS131で選択された送風機からの空気の冷却寄与度を発熱体mごとに算出する。例えば、冷却寄与度=Zm,n/(発熱体mの発熱量)とする。冷却寄与度算出部120は、1つの発熱体に対する各送風機の冷却寄与度の和が1になるように、その発熱体に対する各送風機の冷却寄与度を正規化する。冷却寄与度算出部120は、各発熱体に対する各送風機の冷却寄与度を冷却寄与度テーブル112に登録する。
(S134)冷却寄与度算出部120は、ステップS131で選択された送風機からの空気が発熱体から奪う熱量を、発熱体mごとに温度に換算する。例えば、当該温度=Zm,n/(発熱体mの質量×発熱体mの比熱)とする。
(S135)冷却寄与度算出部120は、全ての送風機についてステップS131〜S134の処理を行ったか否かを判定する。全ての送風機について処理済の場合、処理をステップS136に進める。全ての送風機について処理済でない場合、処理をステップS131に進める。
(S136)冷却寄与度算出部120は、各送風機の冷却能力の評価結果をディスプレイ11に出力し、当該評価結果を示す画像を表示させる。
このように、冷却寄与度算出部120は、冷却寄与度を算出する。また、冷却寄与度算出部120は、熱量、冷却寄与度および温度などを指標として、各送風機の冷却能力を評価することもできる。
図52は、送風機単位の冷却能力の評価例(その1)を示す図である。図52では送風機F1の最終的な授受熱量分布hn(n=fan1)に基づく冷却能力の評価方法を例示している。セル範囲R11はセル範囲R10に対応するセル範囲であり、セル範囲R10,R11に含まれるセルは同じである。冷却寄与度算出部120は、セル範囲R11内の各セルについて授受熱量分布hn(n=fan1)の和をとることで、送風機F1からの空気が発熱体H1から奪う熱量を算出する。
セル範囲R21はセル範囲R20に対応するセル範囲であり、セル範囲R20,R21に含まれるセルは同じである。冷却寄与度算出部120は、セル範囲R21内の各セルについて授受熱量分布hn(n=fan1)の和をとることで、送風機F1からの空気が発熱体H2から奪う熱量を算出する。
図53は、送風機単位の冷却能力の評価例(その2)を示す図である。図53では送風機F2の最終的な授受熱量分布hn(n=fan2)に基づく冷却能力の評価方法を例示している。セル範囲R12はセル範囲R10に対応するセル範囲であり、セル範囲R10,R12に含まれるセルは同じである。冷却寄与度算出部120は、セル範囲R12内の各セルについて授受熱量分布hn(n=fan2)の和をとることで、送風機F2からの空気が発熱体H1から奪う熱量を算出する。
セル範囲R22はセル範囲R20に対応するセル範囲であり、セル範囲R20,R22に含まれるセルは同じである。冷却寄与度算出部120は、セル範囲R22内の各セルについて授受熱量分布hn(n=fan2)の和をとることで、送風機F2からの空気が発熱体H2から奪う熱量を算出する。
図54は、送風機単位の冷却能力の評価例(その3)を示す図である。図54では送風機F3の最終的な授受熱量分布hn(n=fan3)に基づく冷却能力の評価方法を例示している。セル範囲R13はセル範囲R10に対応するセル範囲であり、セル範囲R10,R13に含まれるセルは同じである。冷却寄与度算出部120は、セル範囲R13内の各セルについて授受熱量分布hn(n=fan3)の和をとることで、送風機F3からの空気が発熱体H1から奪う熱量を算出する。
セル範囲R23はセル範囲R20に対応するセル範囲であり、セル範囲R20,R23に含まれるセルは同じである。冷却寄与度算出部120は、セル範囲R23内の各セルについて授受熱量分布hn(n=fan3)の和をとることで、送風機F3からの空気が発熱体H2から奪う熱量を算出する。
冷却寄与度算出部120は、このように算出した各送風機が各発熱体から奪う熱量を用いて、各発熱体に対する各送風機の冷却寄与度を算出する(図51のステップS133)。冷却寄与度算出部120は、算出した冷却寄与度を冷却寄与度テーブル112に登録する。そして、第2〜第5の実施の形態で例示したように、風量算出部130は、冷却寄与度テーブル112に登録された冷却寄与度に基づいて、各送風機の風量や回転数を決定することができる。
なお、前述のように、第1の実施の形態の情報処理は、演算部1bにプログラムを実行させることで実現できる。また、第2〜6の実施の形態の情報処理は、プロセッサ101にプログラムを実行させることで実現できる。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、光ディスク13、外部記憶装置14およびメモリカード16など)に記録できる。
プログラムを流通させる場合、例えば、当該プログラムを記録した可搬記録媒体が提供される。また、プログラムを他のコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワーク経由でプログラムを配布することもできる。コンピュータは、例えば、可搬記録媒体に記録されたプログラムまたは他のコンピュータから受信したプログラムを、記憶装置に格納し、当該記憶装置からプログラムを読み込んで実行する。ただし、可搬記録媒体から読み込んだプログラムを直接実行してもよく、他のコンピュータからネットワークを介して受信したプログラムを直接実行してもよい。
以上の第1〜第6の実施の形態を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)発熱する複数の物体を冷却する複数の送風機の風量を計算する風量計算プログラムであって、コンピュータに、
前記複数の送風機を送風機毎の第1の風量で動作させたときの各物体の所定温度からの温度上昇量と、前記複数の物体それぞれの前記所定温度からの温度上昇の許容量とを用いて、温度上昇の許容量に対する温度上昇量の割合を物体毎に算出し、
物体毎に算出した割合と各物体に対する各送風機による冷却の寄与度とに基づいて、送風機毎の第2の風量を計算する、
処理を実行させる風量計算プログラム。
(付記2)前記計算では、送風機毎の第1の風量に対する第2の風量の比を送風機毎の未知数とし、1の物体に対する各送風機による冷却の寄与度で送風機毎の未知数を重み付けた値の総和と、当該物体に対して算出された割合との関係式を物体毎に決定し、各関係式を全て満たす送風機毎の未知数を求めて、送風機毎の第2の風量を計算する、付記1記載の風量計算プログラム。
(付記3)前記計算では、前記複数の物体の数が前記複数の送風機の数よりも多い場合、前記複数の物体の一部をグループ化することで、グループ化されていない物体の数とグループの数との和を前記複数の送風機の数に一致させ、1つのグループを1つの物体とみなすことで物体毎の関係式を連立方程式とする、付記2記載の風量計算プログラム。
(付記4)前記計算では、複数の物体に対する何れかの送風機の冷却寄与度に基づいて、前記グループ化を行う、付記3記載の風量計算プログラム。
(付記5)前記計算では、物体間の距離に基づいて前記グループ化を行う、付記3記載の風量計算プログラム。
(付記6)前記計算では、前記複数の送風機の数が前記複数の物体の数よりも多い場合、前記複数の送風機の一部をグループ化することで、グループ化されていない送風機の数とグループの数との和を前記複数の物体の数に一致させ、1つのグループを1つの送風機とみなすことで物体毎の関係式を連立方程式とする、付記2記載の風量計算プログラム。
(付記7)前記計算では、何れかの物体に対する各送風機の冷却寄与度に基づいて、前記グループ化を行う、付記6記載の風量計算プログラム。
(付記8)前記計算では、送風機間の距離に基づいて前記グループ化を行う、付記6記載の風量計算プログラム。
(付記9)前記計算では、第1および第2の送風機それぞれについて計算した第2の風量に対して前記第1および前記第2の送風機それぞれの回転数を決定し、前記第1および前記第2の送風機の回転数差に応じて、当該回転数差が大きくなるよう前記第1または前記第2の送風機の回転数を変更する、付記1乃至8の何れか1つに記載の風量計算プログラム。
(付記10)前記計算では、第1および第2の送風機それぞれについて計算した第2の風量に対して前記第1および前記第2の送風機それぞれの回転数を決定し、前記第1および前記第2の送風機それぞれの回転数に応じた騒音差に応じて、当該騒音差が小さくなるよう前記第1または前記第2の送風機の回転数を変更する、付記1乃至8の何れか1つに記載の風量計算プログラム。
(付記11)発熱する複数の物体を冷却する複数の送風機の風量を計算する情報処理装置であって、
各物体に対する各送風機による冷却の寄与度の情報を記憶する記憶部と、
送風機毎の第1の風量で各送風機を動作させたときの各物体の所定温度からの温度上昇量と、各物体の前記所定温度からの温度上昇の許容量とを用いて、温度上昇の許容量に対する温度上昇量の割合を物体毎に算出し、物体毎に算出した割合と前記情報とに基づいて、送風機毎の第2の風量を計算する演算部と、
を有する情報処理装置。
(付記12)発熱する複数の物体を冷却する複数の送風機の風量を計算する風量計算方法であって、コンピュータが、
前記複数の送風機を送風機毎の第1の風量で動作させたときの各物体の所定温度からの温度上昇量と、前記複数の物体それぞれの前記所定温度からの温度上昇の許容量とを用いて、温度上昇の許容量に対する温度上昇量の割合を物体毎に算出し、
物体毎に算出した割合と各物体に対する各送風機による冷却の寄与度とに基づいて、送風機毎の第2の風量を計算する、
風量計算方法。