以下、本発明の一実施形態にかかる温水洗浄装置1について、図面を参照しながら説明する。
温水洗浄装置1は、例えば図1に示すような温水洗浄便座10に備えられ、温水を人体局部洗浄用に供給する装置である。温水洗浄便座10は、便座5の後方にノズル2を有し、ノズル2から加熱された洗浄用水を噴出することで、人体局部を洗浄する。ノズル2に供給される洗浄用水は、公共水道等の給水源4から取得され、(温水)タンク6において貯留、加温されたものである。タンク6内の洗浄用水の加熱や、ノズル2からの洗浄用水の供給は、制御部3によって制御される。本実施形態にかかる温水洗浄装置1は、制御部3の構成要素、タンク6内に設置された部材、そして便座5およびその付属部材を主としてなる。
次に、図2に基づき、温水洗浄装置1の構成について説明する。温水洗浄装置1は、モード選択手段11と、水温制御手段12と、水温検出手段13と、温水生成手段14と、水温指定手段15と、人体検出手段16と、加熱オンオフ手段17と被加熱部18と、加熱手段19と、被加熱部測温手段20を有する。
モード選択手段11は、使用者が便座5に着座した状態で、ノズル2から加熱した洗浄用水を噴出する使用モードと、使用者が便座5に着座しておらず、洗浄用水をノズル2から供給しない状態にある待機モードの2つの運転モードのいずれかを選択し、相互に切り替えるものである。水温制御手段12は、温水生成手段14の出力を制御して、所定の温度に洗浄用水を加熱させるものである。モード選択手段11、水温制御手段12、そして後述する加熱オンオフ手段17は、制御部3に含まれる。制御部3は、マイクロコンピュータ(マイコン)等によって具現され、モード選択手段11、水温制御手段12、加熱オンオフ手段17としての機能以外に、ノズル2からの洗浄用水の噴出の制御等、温水洗浄装置1および周辺機器の種々の制御機能を兼ね備えることができる。
水温検出手段13は、洗浄用水の温度を検出するものであり、サーミスタ、熱電対等によって具現される。温水生成手段14は、洗浄用水を加熱する温水ヒータである。水温検出手段13および温水生成手段14は、洗浄用水が満たされるタンク6の内部に設けられている。
水温指定手段15は、使用モードにおいてノズル2から供給する洗浄用水の温度を指定する。例えば使用者がボタンやダイヤル等を使用して、予め与えられた複数の設定温度から1つの設定温度を選択することができるというものである。
人体検出手段16は、洗浄用水を局部洗浄に使用する使用者が存在することを検出する。人体検出手段16は、どのような原理を利用するものであってもよいが、便座5への着座を検出する光学式、静電容量式等の着座センサを例示することができる。
被加熱部18は、加熱手段19によって加熱される部材である。本実施形態においては、被加熱部18は、便座5によって具現されている。加熱手段19は、被加熱部18を加熱する部材であり、本実施形態においては、便座5に内蔵された便座ヒータである。加熱手段19は、加熱オンオフ手段17によって、オンオフ制御され、被加熱部18を所定温度に加熱する。被加熱部測温手段20は、被加熱部18の温度を検出する部材であり、本実施形態においては、便座5に内蔵され、便座5の温度を計測するサーミスタ、熱電対等の測温手段である。
人体検出手段16は、使用者が存在するか存在しないかを示す信号をモード選択手段11に出力する。人体検出手段16が使用者の存在を検出していない間、つまり使用者が存在しない間は、モード選択手段11は待機モードを選択し、人体検出手段16が使用者の存在を検出している間、つまり使用者が存在する間は、モード選択手段11は使用モードを選択する。
モード選択手段11によって選択されたモードは、水温制御手段12に伝達される。水温制御手段12は、このモード選択手段11からの信号に加え、水温指定手段15、水温検出手段13、加熱オンオフ手段17からの信号を入力される。温水生成手段14は、モード選択手段11によって選択されているモードと、水温指定手段15によって指定されている設定温度と、加熱オンオフ手段17から入力される加熱手段19のオンオフ制御に関する情報とに応じて、タンク6内の洗浄用水の目標温度を定め、その目標温度と水温検出手段13によって検出される実際の洗浄用水の温度とに基づいて、その目標温度に洗浄用水を加熱または保持できるように、温水生成手段14の出力を調整する。
加熱オンオフ手段17は、加熱手段19をオンオフ制御することで、つまり、加熱手段19の出力の実行または停止を選択する制御を行うことで、被加熱部18を、一定の目標温度に維持する。この際、被加熱部測温手段20によって検出された被加熱部18の温度が加熱オンオフ手段17に伝達され、加熱オンオフ手段17は、被加熱部18の実際の温度と目標温度の差に基づいて、加熱手段19をオンにすべきかオフにすべきかを選択する。なお、被加熱部18の目標温度は、モード選択手段11に選択されている運転モードに応じて変化されてもよい。つまり、加熱オンオフ手段17は、モード選択手段11から信号入力を受け、待機モードにある時と使用モードにある時とで異なる一定温度に被加熱部18を維持するものであってもよく、さらにそれらの温度は、洗浄用水の温度と同様に、ボタン、ダイヤル等を使用して使用者が選択可能なものであってもよい。具体的には、使用モードにおいては、複数の便座温度が設定可能であることが好適である。また、待機モードにおいては、それらの便座温度の少なくとも一部より低温であることが好適である。加熱オンオフ手段17は、加熱手段19のオンオフ状態の切り替えを行うと、その情報を水温制御手段12に出力する。
本実施形態にかかる温水洗浄装置1は、モード選択手段11に選択されている運転モードと水温指定手段15に指定されている設定温度、加熱オンオフ手段17による加熱手段19のオンオフ制御の状態とに基づいて、水温制御手段12が目標温度を定める方法に特徴を有する。以下に、目標温度の設定方法を説明する。
使用モードにおいては、水温制御手段12は、水温指定手段15によって指定された設定温度を目標として、温水生成手段14の制御を行う。待機モードにおいては、水温指定手段15に指定される設定温度と、加熱オンオフ手段17による加熱手段19のオンオフ制御の状態に基づいて推定される環境温度と、あらかじめ定められた標準待機温度の三者の関係に基づいて、水温制御手段12が以下に示すように待機温度を定め、その待機温度を目標温度として、温水生成手段14の制御を行う。
環境温度、つまり温水洗浄便座10が設置されているトイレ室の気温が低いほど、被加熱手部18である便座5からの放熱が起こりやすい。つまり、所定温度に被加熱部18を維持するためには、加熱オンオフ手段17によって加熱手段19のオン状態とオフ状態の間の切り替えが行われる頻度(単位時間当たりに切り替えが行われる回数)は、環境温度が低いほど高くなる。また、単位時間の間に加熱手段19がオフ状態とされる総時間の長さは、環境温度が低いほど短くなる。よって、加熱手段19のオンオフ状態の切り替え頻度が低いほど、加熱時間がオフ状態とされる時間(以下、「オフ状態の時間」と称する場合がある)が短いほど、環境温度が低いと推測することができる。水温制御手段12は、このようにして、加熱オンオフ手段17から入力される加熱手段19のオンオフ状態の切り替え頻度および/またはオフ状態にある時間の長さの情報に基づいて、環境温度を推定する。環境温度は、これらの情報に基づいて具体的な数値として推定されてもよいし、基準となる加熱手段19のオンオフ状態の切り替え頻度と実際の切り替え頻度との大小関係および/または基準となる加熱手段19のオフ状態の長さと実際のオフ状態の長さとの大小関係に基づいて、所定の基準環境温度と実際の環境温度との高低関係が推定されるのみであってもよい。推定の簡便性の観点からは、後者の基準値との比較による構成の方が好適である。
標準待機温度は、水温指定手段15によって指定可能な設定温度のうちの最低の設定温度と最高の設定温度との間、つまり最低の設定温度よりも高くかつ最高の設定温度よりも低い温度に定められている。設定温度が3つ以上存在する場合には、最低の設定温度および最高の設定温度以外の設定温度と、標準待機温度が一致していてもよい。
推定によって得られる環境温度が、所定の基準環境温度未満である場合には、寒冷期制御が行われる。寒冷期制御においては、水温制御手段12は、水温指定手段15に指定されている設定温度を待機温度とする。つまり、待機モードにおいても使用モードにおいても、タンク6内の洗浄用水は、水温指定手段15に指定されている設定温度を目標として加熱される。
一方、推定によって得られる環境温度が、基準環境温度以上である場合には、温暖期制御が行われる。温暖期制御においては、水温指定手段15によって指定されている設定温度が、規定された標準待機温度よりも高い場合には、水温制御手段12は、その標準待機温度を待機温度とする。そして待機モードにおいて、標準待機温度を目標温度として温水生成手段14の制御を行い、タンク6内の洗浄用水を標準待機温度に加熱する。
温暖期制御において、水温指定手段15によって指定されている設定温度が、標準待機温度以下である場合には、温水生成手段14は、その指定されている設定温度を待機温度とする。つまり、上記の寒冷期制御を行う場合と同様に、待機モードにおいても使用モードにおいても、指定されている設定温度を目標温度として、水温制御手段12が温水生成手段14の制御を行い、タンク6内の洗浄用水をその設定温度に加熱する。
具体例として、水温指定手段15によって指定可能な設定温度が、「低」(31.5℃)、「低中」(33.5℃)、「中」(35.5℃)、「中高」(37.5℃)、「高」(39.5℃)の5通りである場合を考える。標準待機温度は、上記「中」と「中高」の間に位置する36.0℃であり、基準環境温度は10℃である。ここで、環境温度と加熱手段19のオンオフ状態の切り替え頻度との間に成立する既知の関係に基づいて、人体検出手段16が人体を検出しない状態が2時間継続された後、1時間あたりの加熱手段19のオンオフ状態の切り替え頻度(オフ→オンの切り替え回数とオン→オフの切り替え回数の合計)が20回以下である場合に、環境温度が基準環境温度以上であると判断され、21回以上である場合に、環境温度が基準環境温度未満であると判断されるものとする。
各設定温度が指定されている場合について、環境温度に応じた使用モードおよび標準待機温度における目標温度を表1に示す。表中には、温水洗浄装置1に電源を供給する電源プラグと電源スイッチ(ともに不図示)のオン状態/オフ状態の区別も併せて示してある。
表1に示すように、電源プラグ、電源スイッチともにオン状態であり、加熱手段19のオンオフ切替え回数が20回以下の場合には、環境温度が10℃以上であると判断され、温暖期制御が選択される。一方、加熱手段19のオンオフ切替え回数が21回以上の場合には、環境温度が10℃未満であると判断され、寒冷期制御が選択される。
加熱手段19のオンオフ切替え回数が20回以下であることにより温暖期制御が選択されると、「切」以外の設定温度が選択されている場合に、使用モードにおいては、選択された各設定温度が目標温度とされる。設定温度が標準待機温度以下の温度である「低」、「低中」、「中」のいずれかである場合には、選択された各設定温度が待機温度とされ、待機モードにおいても、使用モードにおける場合と同様に、各設定温度が目標温度となる。一方、設定温度が標準待機温度よりも高い「中高」または「高」である場合には、設定温度にかかわらず、標準待機温度である36.0℃が待機温度、つまり待機モードにおける目標温度とされる。
加熱手段19のオンオフ切替え回数が21回以上であることにより寒冷期制御が選択されると、「切」以外の設定温度が選択されている場合に、使用モードにおいては、温暖期制御の使用モードにおけるのと同様に、選択された各設定温度が目標温度とされる。そして、待機温度、つまり待機モードにおける目標温度も、選択された各設定温度とされる。
なお、電源プラグがオフ状態の時、電源プラグがオン状態であって電源スイッチがオフ状態である時、そして電源プラグおよび電源スイッチがオン状態であって設定温度が「切」に設定されている時には、温水生成手段14はオフ状態に維持され、水温制御が行われない。
次に、温水洗浄装置1における洗浄用水の温度制御の詳細な手順を、図3に基づいて説明する。最初に、電源プラグがオン状態とされ、電源スイッチがオン状態とされることにより、ステップS1において、温水洗浄装置1の電源がオン状態とされる。
すると、ステップS2において、人体検出手段16が人体の存在を検出していないかどうかが確認される。人体の検出が検出されている場合(ステップS2でNoの場合)、モード選択手段11は、温水洗浄便座10を使用している使用者が存在すると判断し、使用モードを選択する。そして、ステップS7において、水温指定手段15によって選択されている設定温度Tsに洗浄用水の温度を維持する保温制御が行われる。この保温制御は、待機モードを有さずに常に設定温度に洗浄用水を加熱し続ける形式や、特許文献2のような単一の待機温度のみを有する形式の従来一般の温水洗浄装置において用いられているのと同様のものである。ステップS7においては、適宜ステップS2に回帰し、人体の存在/不存在の状態が変化していないかどうかを判定する。この点は、後述するように他のステップを経由してステップS7が実行される場合も同様である。
ステップS2で人体の存在が検出されていない場合(ステップS2でYesの場合)、ステップS3において、人体の存在が検出されない状態が2時間継続しているかどうかを判定する。人体の存在が検出されない状態が2時間に達していない場合(ステップS3でNoの場合)には、モード選択手段11が使用モードを選択し、ステップS7に遷移し、水温指定手段15によって選択されている設定温度Tsに洗浄用水の温度を維持する保温制御が行われる。
ステップS3で、人体の存在が検出されない状態で2時間が経過したと判定された場合(ステップS3でYesの場合)には、モード選択手段11が待機モードを選択したうえで、ステップS4で、加熱手段19のオンオフ切替え回数がそれまでの1時間で20回以下であったかどうかを、水温制御手段12が判定する。
加熱手段19のオンオフ切替え回数が20回以下であった場合(ステップS4でYesの場合)には、ステップS5で、環境温度が10℃以上であると推定され、温暖期制御が実行される。温暖期制御の詳細については、図4を参照しながら後述する。温暖期制御においても、適宜ステップS2に回帰し、人体の存在/不存在の状態が変化していないかどうかを判定する。
一方、加熱手段19のオンオフ切替え回数が21回以上であった場合(ステップS4でNoの場合)には、環境温度が10℃未満であると推定され、寒冷期制御が実行される。つまり、水温指定手段15によって選択されている設定温度Tsが待機温度とされ、ステップS7において、その設定温度Tsに洗浄用水の温度を維持する保温制御が行われる。
なお、ステップS2で人体の存在が検出されていなくても(ステップS2でYes)、ステップS3においてその人体の存在が検出されない状態が2時間継続しているかどうかが判定され、継続されていない場合には(ステップS3でNo)、使用モードが選択され、ステップS7で洗浄用水が設定温度Tsに保温されている。これは、頻繁に温水洗浄装置1が使用される場合に、次の使用者に適温に加熱された温水を着座直後から提供し、快適に使用させるためである。しかし、高い節電効率を求める場合には、ステップS3を省略し、ステップS2で人体の存在が検出されなければ、即座にステップS4を実行し、温暖期制御または寒冷期制御を選択したうえで、待機モードに移行する構成としてもよい。
次に、ステップS5で実行される、温暖期制御の詳細を、図4に基づいて説明する。まず、ステップSS1で、温暖期制御が選択され、開始される。これは、図3のステップS4で加熱手段19のオンオフ切替え回数が20回以下であると判定されることを契機としてなされる。
すると、ステップSS2において、その時に水温指定手段15によって指定されている設定温度Tsが、水温制御手段12に伝達される。水温制御手段12は、設定温度Tsと、標準待機温度Tiの大小関係を判定する。
設定温度Tsが標準待機温度Tiよりも高い(Ts>Ti)場合、つまり表1に示した例では設定温度が「中高」または「高」の場合は、ステップSS3において、水温検出手段13がタンク6内の洗浄用水の水温を検出する。
ステップSS4では、ステップSS3で検出された水温と標準待機温度Tiの関係を水温制御手段12が判定する。ステップSS3で検出された水温が標準待機温度Ti以上である場合(ステップSS4でYesの場合)には、再びステップSS2に戻る。
一方、ステップSS3で検出された水温が標準待機温度Ti以上ではない場合(ステップSS4でNoの場合)には、ステップSS5で、水温制御手段12が温水生成手段14の出力を上昇させることにより、標準待機温度Tiを待機温度として、洗浄用水の水温が上昇される。
ステップSS6で人体検出手段16が人体の存在を検出すると(ステップSS6でYesの場合)、ステップSS7で、水温制御手段12が目標温度を標準待機温度Tiからそれよりも高温の設定温度Tsに変更する。これにより、タンク6内の洗浄用水が設定温度Tsに加熱される。洗浄用水の温度が設定温度Tsに達すると、洗浄用水を設定温度Tsに維持する保温制御が行われる。この保温制御は、図3のステップS7で実行されるのと同様のものである。ステップSS7においては、適宜、人体検出手段16によって、人体の存在/不存在の状態が変化していないかどうかを判定する(図4では不図示、図3のステップS7→ステップS2の経路に相当)。
一方、ステップSS6で人体検出手段16が人体の存在を検出しないと(ステップSS6でNoの場合)、ステップSS8で水温検出手段13が水温を検出する。
そして、検出された水温と標準待機温度Tiの関係をステップSS9で判定する。ステップSS8で検出された水温が標準待機温度Ti以下である場合(ステップSS9でYesの場合)には、ステップSS10で、洗浄用水を標準待機温度Tiに加熱し、さらに標準待機温度Tiに維持する待機保温制御が行われる。この待機保温制御は、ステップSS7における保温制御と同様のものであり、設定温度Tsではなく標準待機温度Tiに保温するという点においてのみ異なる。ステップSS10においても、適宜人体検出手段16によって、人体の存在/不存在の状態が変化していないかどうかを判定する(図4では不図示、図3のステップS7→ステップS2の経路に相当)。
ステップSS8で検出された水温が標準待機温度Ti以下でない場合(ステップSS9でNoの場合)は、ステップSS2に回帰する。
ステップSS2において設定温度Tsが標準待機温度Ti以下である(Ts≦Ti)と判定された場合、つまり表1に示した例では設定温度Tsが「低」「中低」「中」のいずれかである場合には、ステップSS11において、水温検出手段13が洗浄用水の水温を検出する。
ステップSS12において、ステップSS11で検出された水温と設定温度Tsの関係を水温制御手段12が判定する。ステップSS11で検出された水温が設定温度Ts以上である場合(ステップSS12でYesの場合)には、再びステップSS2に戻る。
一方、ステップSS11で検出された水温が設定温度Ts以上ではない場合(ステップSS12でNoの場合)には、ステップSS13で、水温制御手段12が目標温度を設定温度Tsとし、ステップSS7におけるのと同様に、設定温度Tsでの保温制御を行う。つまり、ステップSS2でTs≦Tiであると判断された場合には、人体検出の有無にかかわらず、水温がTsを下回らないように維持される。なお、ステップSS13においても、適宜人体検出手段16によって、人体の存在/不存在の状態が変化していないかどうかを判定する(図4では不図示、図3のステップS7→ステップS2の経路に相当)。
以上のように、環境温度を推定し、基準環境温度との関係性におけるその環境温度と、最低の設定温度と最高の設定温度との間の温度に定められた標準待機温度と、指定されている設定温度の三者の関係性に基づいて、待機モードにおける洗浄用水の加熱温度を決定する制御を行うことで、待機モードにおける節電効果を得ながら、使用者が快適に洗浄用水を局部洗浄に使用することができる。使用者は通常、設定温度まで加熱された洗浄用水が供給されることを想定して温水洗浄装置1を使用するので、着座直後に局部洗浄を行う場合であっても、設定温度よりも極端に温度が低い洗浄用水が体に接触すると、不快感を覚えることになる。また、環境温度が比較的高い場合には、比較的低温の水が人体に接触しても、不快感を覚えにくいが、環境温度が比較的低い場合には、低温の水が人体に接触した場合に、使用者に感じられる不快感が大きくなる。また、環境温度が低い時には、給水源4から取得される水の温度が低く、また加熱された洗浄用水からの放熱も起こりやすいので、洗浄用水の温度が変動しやすく、洗浄用水を一定温度に保持しにくい。このことも、使用者に水温に関して不快感を与える要因となる。
上記温水洗浄装置1においては、環境温度が比較的高く、基準環境温度以上となっている時には、温暖期制御を実行し、設定温度に応じて、標準待機温度または設定温度が待機温度とされ、待機モードにおいて洗浄用水がその待機温度に加熱される。設定温度が標準待機温度よりも高い場合には、使用者が便座5に着座して待機モードから使用モードに移行した直後に局部洗浄を行った場合にも、当初から少なくとも標準待機温度に加熱された洗浄用水が供給されるので、設定温度よりも著しく低温の冷水が体に接触することで使用者に不快感を与えることがない。一方、設定温度が標準待機温度よりも低い場合には、その設定温度に加熱された温水が当初から供給されるので、使用者の体に想定どおりの温度の洗浄用水が接触し、使用者に水温に関して不快感を与えることがない。上記温水洗浄装置1の温暖期制御においては、設定温度が標準待機温度より高い場合にも設定温度以下である場合にも、着座直後に使用した際に使用者が想定しているよりも著しく低温の洗浄用水が体に接触して不快感を与えることがなく、快適な使用が可能となる。なお、多くの使用者は、便座5に着座して用便後に温水洗浄装置1を使用して局部洗浄を行うが、便意の促進等を目的として、着座直後に温水洗浄装置1を使用することに対するニーズも存在し、着座直後にも不快感を与えない水温に加熱された洗浄用水を供給する上記温水洗浄装置1は、特にこのような使用において高い快適性を与えるものである。
そして、温暖期制御においては、待機モードにおける洗浄用水の温度が選択されている設定温度との関係によって決定されることで、上記のような温度に関して快適な使用を可能としつつも、快適性のために必要十分な温度に待機モードの洗浄用水を加熱して、効率的に節電を図ることができる。もし、待機モードにおいて、設定温度によらず一定の標準待機温度に洗浄用水を加熱するならば、このように快適な使用と節電効率とを両立することは困難である。一定値である標準待機温度が複数の設定温度の一部または全部よりも高い場合には、待機モードにおいて、設定温度よりも高い標準待機温度で洗浄用水を加熱しておくことになり、電力消費量が大きくなってしまう。また、一定値である標準待機温度が全部の設定温度よりも低い温度である場合には、節電効率は高くなるものの、比較的設定温度が高い場合に、使用モードに移行した直後に供給される洗浄用水と設定温度との乖離が大きくなってしまい、設定温度と大きくは異ならない温度の洗浄用水が供給されることを想定している使用者に与える不快感が大きくなってしまう。
一方、上記温水洗浄装置1においては、環境温度が比較的低く、基準環境温度未満となっている時には、寒冷期制御によって、設定温度が待機温度とされ、待機モードにおいても使用モードにおいても、洗浄用水が設定温度に加熱された状態に維持される。これにより、使用者が便座5に着座して待機モードから使用モードに移行した直後に局部洗浄を行った場合にも、当初から使用者が想定するとおりの温度の洗浄用水が人体に接触し、水温に関して使用者に不快感を与えることが防止される。また、上記のように、環境温度が低い場合には、環境温度が高い場合に比べ、洗浄用水の温度を一定に維持しにくくなるが、設定温度にまで加熱された洗浄用水の温度が若干変動しても、その温度変動が着座直後に局部洗浄を行う使用者に与える不快感は、待機モードにおいて設定温度よりも低温で洗浄用水が維持される場合に比べて小さい。
寒冷期制御においても、温暖期制御と同様に、標準待機温度を基準として設定温度に応じた待機温度を選択すれば、高い節電効率を達成することができる。しかし、上記のように、環境温度が低い時には、低温の水が人体に接触した場合に、その冷たさによって使用者に与える不快感が大きい。一方、着座当初から想定している設定温度どおりに加熱された温水が供給されれば、使用者は温かさを感じることができ、快適感を覚えることができる。そこで、寒冷期制御においては、使用の快適性を重視し、待機モードでも設定温度に洗浄用水を加熱しておく構成としている。
このように、温暖期制御においては、とりわけ高い節電効率を達成することができ、寒冷期制御においては、とりわけ高い使用の快適性を提供することができる。環境温度は季節によって周期的に変化するので、一年を通して上記温水洗浄装置1を使用することで、待機温度を通年で同一とする場合などに比べ、総計として高い節電効率を得つつ、環境温度に応じた使用の快適性を確保することができる。
本温水洗浄装置1においては、このように、環境温度に応じて待機温度を定めることで、使用の快適性と節電性を両立しているが、この環境温度は、環境温度、つまり温水洗浄便座10が設置された空間の大気の温度を測定するためのサーミスタ等の温度センサが設けられて測定されているものではなく、便座5の暖房のために備えられる便座ヒータのオンオフ制御に関する情報をもとに、環境温度を推定している。つまり、環境温度の測定に特化したセンサを設けるためのコストを必要とせずに、上記のように、環境温度に応じた使用の快適性と節電性を備えた温水洗浄装置1を提供することができる。
具体的な標準待機温度は、使用の快適性と節電効率を勘案して適宜定めればよいが、標準待機温度に加熱された洗浄用水が急に人体に接触しても不快感を与えないことを考慮すると、人間の体温を基準に、例えば、34〜38℃程度とするとよい。より好ましくは、36℃とするとよい。36℃としておけば、この標準待機温度に加熱された洗浄用水が人体に接触した場合に、冷たくて不快であるとは感じられない。
標準待機温度は、固定値であっても、変化可能な値であっても構わない。変化可能とする場合、使用者が標準待機温度を手動で設定する形式としても、自動的に標準待機温度が設定される形式としてもよい。使用者が標準待機温度を設定可能である場合には、各使用者の水温の好みや節電志向の程度に応じて標準待機温度を選択できるので、快適な使用性および/または節電効率を各使用者に適した形態で達成することができる。また、例えば温水洗浄装置1が気温センサ等を備え、気温に応じて自動的に標準待機温度を設定する形態とし、気温が低いほど標準待機温度を高くすれば、温暖期の中でも比較的気温が低い時にも、冷たい洗浄用水が体に接触することを回避し、快適に温水洗浄装置1を使用することができる。一方、温暖期の中でも時に気温が高い時には、ある程度温度の低い洗浄用水が人体に接触しても不快に感じにくいので、標準待機温度を高くすることで、高い節電効率を達成することができる。
具体的な基準環境温度は、温水洗浄便座10が使用される地域の気候等を勘案して適宜定めればよい。例えば、冬季にはトイレ室の気温が基準環境温度を下回り、春季から秋季にかけてはトイレ室の気温が基準環境温度以上となるように、基準環境温度を定めればよい。日本においては、このような基準環境温度として、10℃を例示することが好適できる。この場合には、典型的な日本の家屋において、冬季には室温が基準環境温度を下回って寒冷期制御が実行され、春季から秋季には室温が基準環境温度以上となって温暖期制御が実行される。このように、四季の中で冬季のみ寒冷期制御を使用し、それ以外の時期には節電効率の高い温暖期制御を使用することで、一年を通して見た際の節電効率を高くすることができる。加熱手段19のオンオフ切り替え頻度やオフ状態にある時間の長さに基づいて、基準環境温度と実際の環境温度の高低関係を判断するに際し、閾値となる切り替え頻度(表1の例では1時間に20回の切り替え)やオフ状態の長さは、事前に試験等を行うことにより、所望の基準環境温度より実際の環境温度が高いか低いかを的確に判別できるように、適宜定めればよい。なお、閾値となる切り替え頻度やオフ状態の長さは、便座5の加熱設定温度にも依存するので、この閾値は、便座5の加熱設定温度ごとに定めておくことが好ましい。
本実施形態にかかる温水洗浄装置1においては、温暖期制御における待機モードから使用モードへの移行直後(図4のステップSS7の初期)に、標準待機温度からそれよりも高温の設定温度に洗浄用水を加熱する際には、短時間に洗浄用水の温度を上昇させなければならないので、温水生成手段14の出力を大きくすることが必要であるが、それ以外の時間、つまり寒冷期制御が行われている間や、温暖期制御の待機モードおよび使用モードにおいて洗浄用水を一定温度に保持している間には、水温を一定に保持することに温水生成手段14が使用されるだけであるので、比較的小さな出力しか温水生成手段14に要求されない。温水生成手段14としては、商用電源等の交流を直流に変換した電源を使用するものが一般に用いられるが、交流から直流への変換に際し、半波制御(半波整流)と全波制御(全波整流)を併用することが好ましい。つまり、寒冷期制御を行っている間や、温暖期制御の待機モードおよび使用モードにおいて洗浄用水を一定温度に保っている間は半波制御を行い、温暖期制御において、待機モードから使用モードへの移行直後に標準待機温度からそれよりも高い設定温度に昇温を行う間のみ全波制御を行えばよい。全波制御を用いることで、迅速に洗浄用水の加熱を行うことができるので、早期に洗浄用水を設定温度に加熱することができ、温水洗浄装置1の使用の快適性が一層向上する。一方、温水生成手段14の出力が小さくてすむ時に半波制御を使用することで、少なくとも整流後の電流に関するエネルギーの損失を抑制することができ、節電効率を高めることができる。
以上で説明した実施形態においては、暖房可能な便座5を被加熱部とし、便座5を暖房する便座ヒータを加熱手段19として、便座ヒータのオンオフ制御に関する情報に基づいて、環境温度の推定が行われた。別の実施形態として、タンク6内に貯留された洗浄用水そのものを被加熱部18とし、タンク6内に設置された温水生成手段(温水ヒータ)14を加熱手段19として、環境温度の推定を行う構成を示すことができる。この場合、被加熱部測温手段20の役割を水温検出手段13が兼ね、加熱オンオフ手段17の役割を水温制御手段12が兼ねることになる。
洗浄用水は、タンク6内で加熱され、目標温度が変更されている間を除いて、一定温度に維持される。洗浄用水は、タンク6外壁やタンク6が収納されたケーシングを介して温水洗浄便座10が設置された環境中の大気と接しており、環境温度が低いほど、洗浄用水からの放熱の程度が大きくなるので、環境温度が低いほど、温水生成手段14のオンオフ切り替え頻度が高くなり、オフ状態にある時間が短くなる。また、環境温度が低いと、給水源4からタンク6に供給される水の温度が低くなるので、このことも、環境温度が低いほど、温水生成手段14のオンオフ切り替え頻度が高くなり、オフ状態にある時間が短くなる要因となる。これらの現象を利用し、温水生成手段14のオンオフ切り替え頻度やオフ状態にある時間の長さに基づいて、環境温度を推定し、寒冷期制御と温暖期制御の選択に利用することができる。具体的には、水温制御手段12は、洗浄用水を一定温度に保持する制御を行っている間に、自らが温水生成手段14をオンオフした頻度またはオフ状態とした時間の長さに基づいて環境温度を推定し、寒冷期制御および温暖期制御の一方を選択した上で、選択した制御法に基づいて、引き続く水温制御手段12の出力制御を行う。
便座5は直接温水洗浄便座10の設置された環境中に露出されているものであり、タンク6の外壁やケーシングを介してしか外部環境と接していない洗浄用水よりも、環境温度の変化を敏感に反映するので、精度よく環境温度の推定とそれに基づく制御法の選択を行えるという点においては、暖房可能な便座5を被加熱部18とし、便座ヒータを加熱手段19とする第一の実施形態の方が、タンク6内の洗浄用水を被加熱部18とし、温水生成手段14を加熱手段19とする第二の実施形態よりも優れている。一方、便座5が暖房機能を備えていない場合や、備えていても、使用者の選択等により便座暖房機能がオフ状態とされている場合には、第一の実施形態を利用することができない。第二の実施形態は、このような場合にも利用することができる点で優れている。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。上記実施形態においては、環境温度に応じて、寒冷期制御または温暖期制御が択一的に採択され、それぞれの制御法において待機温度が異なる方法で定められたが、そのかわりに、常に環境温度が低くなるほど高くなる待機温度を採用する構成とすることができる。このように、推定された環境温度を待機温度に反映させる具体的な方法には、様々なものがありうるが、環境温度が低くなったときに、環境温度が高い時よりも待機モードにおける洗浄用水の温度が低くならなければ、洗浄用水の水温に関して使用者に与える不快感を低減することができる。また、環境温度に応じて使用者に不快感を与えない水準を超えて過度に待機モードにおける洗浄用水の加熱を行わなければ、節電効率の向上に資することができる。
また、上記実施形態においては、温度指定手段が「切」の設定を選択している時や、電源スイッチがオフ状態とされている時には、温水生成手段14の出力がオフ状態とされ、洗浄用水の温度制御が全く行われていないが、これらの状態において、洗浄用水の凍結の防止を図るために、例えば洗浄用水を10℃に加熱しておいてもよい。
なお、上記実施形態は、環境温度の推定値に基づいて局部洗浄用の洗浄用水の待機温度を決定するものであったが、同様の思想は、便座暖房の待機温度の決定にも適用することができる。つまり、便座ヒータ自体や温水生成手段(温水ヒータ)14のオンオフ切り替え頻度やオフ状態の時間の長さに基づいて環境温度を推定し、待機モードにおける便座5の待機温度を決定すればよい。
また、上記実施形態においては、オンオフ制御される加熱手段のオンオフ状態の切り替え頻度またはオフ状態とされる時間の長さに基づいて、環境温度を推定したが、オンオフ制御ではなく、段階的に通電量を制御して出力を調整する形式の加熱手段を使用する場合にも、環境温度が低いほど被加熱部からの放熱が促進されるという現象に基づいて環境温度を推定するという思想を、適用することができる。つまり、単位時間当たりの通電量が大きいほど、環境温度が低いと推定すればよい。