(1)第1の発明に係る便座装置は、便座部と、便座部を加熱する発熱体と、使用者の存在を検知する人体検知部と、発熱体の駆動を制御する制御部とを備え、制御部は、人体検知部により使用者の存在が検知された場合に、便座部の温度が予め定められた第1の温度まで上昇するように第1の電力で発熱体を駆動する第1の時間と、第1の時間の経過後、便座部の温度が第1の温度よりも高い第2の温度まで上昇するように第1の電力よりも小さい第2の電力で発熱体を駆動する第2の時間とを決定し、第1の電力で発熱体を決定された第1の時間駆動した後、第2の電力で発熱体を決定された第2の時間駆動し、第2の温度は、使用者により設定された便座部の温度に基づいて決定される温度であるものである。
この便座装置においては、人体検知部により使用者の存在が検知された場合に、便座部の温度が予め定められた第1の温度まで上昇するように第1の電力で発熱体を駆動する第1の時間と、第1の時間の経過後、便座部の温度が第1の温度よりも高い第2の温度まで上昇するように第1の電力よりも小さい第2の電力で発熱体を駆動する第2の時間とが決定される。そして、便座部の温度が第1の温度まで上昇するように第1の電力で発熱体が制御部により第1の時間駆動される。これにより、便座部の温度が第1の温度勾配で上昇する。
第1の電力による発熱体の駆動の後、便座部の温度が第1の温度よりも高い温度まで上昇するように第1の電力よりも小さい第2の電力で発熱体が制御部により第2の時間駆動される。これにより、便座部の温度が第1の温度勾配よりも緩やかな第2の温度勾配で上昇する。
ここで、便座部の温度を測定しつつ、その測定温度に基づいて発熱体を駆動する場合には、発熱体の熱が便座部に伝達されるまでに遅延が生じるので、便座部の温度を正確かつ迅速に制御することが困難である。これに対して、本発明に係る便座装置では、第1および第2の電力による発熱体の駆動時間が、それぞれ第1および第2の時間として予め設定されているので、便座部の温度を正確かつ迅速に制御することができる。
また、人体検知部により使用者の存在が検知された場合に発熱体が第1および第2の電力で駆動されるので、使用者の存在が検知されないときに発熱体を便座部の昇温に必要な第1および第2の電力で駆動する必要がない。これにより、消費電力が十分に低減され、省エネルギー化が実現される。
さらに、便座部は、第1の温度勾配で第1の温度まで昇温された後、第1の温度勾配よりも緩やかな第2の温度勾配で第1の温度よりも高い所定の温度まで昇温される。これにより、第1の温度よりも高い所定の温度において便座部の温度変化に生じるオーバーシュートが低減される。それにより、便座部の温度が第2の温度で容易に安定化される。
また、第2の温度を使用者が快適に感じる温度に設定することにより、使用者は便座部に快適に着座することができる。
(2)第2の発明に係る便座装置は、第1の発明に係る便座装置の構成において、第1の温度は、27度よりも高い温度であるものである。この場合、便座部の温度が27度よりも高い温度まで上昇するように第1の電力で発熱体が第1の時間駆動される。
(3)第3の発明に係る便座装置は、第1または第2の発明に係る便座装置の構成において、便座部の温度を測定する便座温度測定装置と、便座温度測定装置により測定される温度と第1および第2の時間との対応関係を記憶する記憶部とをさらに備え、制御部は、人体検知部により使用者の存在が検知された場合に、便座温度測定装置により測定された温度に基づいて対応する第1および第2の時間を記憶部から読み出し、読み出された第1および第2の時間に基づいて発熱体を駆動するものである。
この場合、人体検知部により使用者の存在が検知された場合に、便座温度測定装置により測定された温度に基づいて対応する第1および第2の時間が記憶部から読み出される。そして、読み出された第1および第2の時間に基づいて、発熱体が制御部により駆動される。
これにより、便座装置の周辺の温度に対応する第1および第2の時間に基づいて、発熱体を駆動することが可能となる。したがって、気温が変動した場合でも、便座部を正確に第1および第2の温度に昇温することができる。
また、人体検知部により使用者の存在が検知される際には、発熱体が第1および第2の電力で駆動されていない。したがって、人体検知部により使用者の存在が検知された場合に、便座温度測定装置により測定される温度は変化せずに安定しているので、第1および第2の時間に基づいて発熱体が駆動されることにより、便座部を正確に第1および第1の温度よりも高い所定の温度に昇温することができる。
(4)第4の発明に係る便座装置は、第3の発明に係る便座装置の構成において、制御部は、第1の時間の経過前に、便座温度測定装置により測定された温度に基づいて便座部の温度が第1の温度に達したと判定した場合に第2の電力で発熱体を駆動するものである。
この場合、第1の時間の経過前に、便座温度測定装置により測定された温度に基づいて便座部の温度が第1の温度に達したと判定された場合、制御部により第2の電力で発熱体が駆動される。
これにより、第1の時間に基づいて発熱体が駆動される場合に、便座部の温度が第1の温度を超えて過剰に上昇することが防止される。
(5)第5の発明に係る便座装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る便座装置の構成において、制御部は、全周期の期間に渡って交流電流を供給することにより第1の電力により発熱体を駆動し、所定数の半周期の期間に渡って交流電流を供給することにより第2の電力により発熱体を駆動するものである。
この場合、発熱体の第1および第2の電力による駆動時に、全周期の期間または所定数の半周期の期間に渡る交流電流が発熱体に供給されるので、発熱体に供給される電流がサインカーブを描くように変化する。これにより、発熱体に供給される電流は高調波成分を含まない。したがって、ノイズの発生が十分に低減される。
(6)第6の発明に係る便座装置は、第3または第4の発明に係る便座装置の構成において、制御部は、第2の時間が経過した後、便座部の温度が第2の温度で一定となるように第1および第2の電力よりも小さい第3の電力で発熱体を駆動するものである。
この場合、第2の時間が経過した後、便座部の温度が第2の温度で一定となるように第1および第2の電力よりも小さい第3の電力で発熱体が制御部により駆動される。
このように、便座部の温度が第2の温度で一定とされることにより、使用者は適切な温度に保たれた便座部に快適に着座することができる。
また、発熱体が第1および第2の電力よりも小さい第3の電力で駆動されるので、消費電力を低減しつつ、便座部の温度が第2の温度で維持される。
(7)第7の発明に係る便座装置は、第6の発明に係る便座装置の構成において、制御部は、第2の時間の経過前に、便座温度測定装置により測定された温度に基づいて便座部の温度が第2の温度に達したと判定した場合に第3の電力で発熱体を駆動するものである。
この場合、第2の時間の経過前に、便座温度測定装置により測定された温度に基づいて便座部の温度が第2の温度に達したと判定された場合、制御部により第3の電力で発熱体が駆動される。
これにより、第2の時間に基づいて発熱体が駆動される場合に、便座部の温度が第2の温度を超えて過剰に上昇することが防止される。
(8)第8の発明に係る便座装置は、第6または第7の発明に係る便座装置の構成において、制御部は、所定数の4分の1よりも小さい周期の期間に渡って交流電流を供給することにより第3の電力により発熱体を駆動するものである。
この場合、発熱体の第3の電力による駆動時には、発熱体に供給される電流が小さいので、交流電流の通電制御により発生する高調波成分の影響が小さい。したがって、通電制御によるノイズの発生が低減される。
(9)第9の発明に係る便座装置は、第1〜第8のいずれかの発明に係る便座装置の構成において、制御部は、第1の電力による発熱体の駆動の直前に、第1の電力よりも小さい電力で発熱体を駆動するものである。
この場合、第1の電力による発熱体の駆動の直前に、第1の電力よりも小さい電力で発熱体が制御部により駆動されるので、大きな突入電流の発生を十分に防止することができる。
(10)第10の発明に係る便座装置は、第1〜第9のいずれかの発明に係る便座装置の構成において、便座部への使用者の着座状態を検知する着座検知部をさらに備え、制御部は、着座検知部により使用者が便座部に着座したことを検知した場合に、便座部の温度が低下するように発熱体を駆動するものである。
この場合、着座検知部により使用者が便座部に着座したことが検知された場合に、便座部の温度が低下するように発熱体が制御部により駆動される。この場合、使用者が長時間便座部に着座する場合でも、使用者が低温やけどすることが防止される。
(11)第11の発明に係る便座装置は、第1〜第10のいずれかの発明に係る便座装置の構成において、第2の温度は、使用者により設定された便座部の温度よりも所定値高い温度である。
この場合、使用者が便座の温度を自らが快適な温度に予め設定することができる。ここで、発熱体の駆動は、便座部の温度が使用者により設定された便座部の温度よりも所定値高い第2の温度になるように行われる。
(12)第12の発明に係る便座装置は、第1〜第11のいずれかの発明に係る便座装置の構成において、便座部は、アルミニウムにより形成されたものである。
この場合、便座部が、樹脂よりも熱伝導率の高いアルミニウムにより形成されているので、発熱体を駆動することにより便座部に与えられる熱が効率よくその便座部の全体に伝達される。
(13)第13の発明に係る便座装置は、第1〜第12のいずれかの発明に係る便座装置の構成において、発熱体は輻射発熱体である。この場合、輻射発熱体は、輻射エネルギーにより便座部を迅速に昇温することができる。
(14)第14の発明に係る便座装置は、第13の発明に係る便座装置の構成において、輻射発熱体はランプヒータである。この場合、ランプヒータは、輻射エネルギーにより便座部を迅速に昇温することができる。
(15)第15の発明に係る便座装置は、第1〜第12のいずれかの発明に係る便座装置の構成において、発熱体は線状ヒータである。この場合、線状ヒータを便座部に貼り付けることにより、便座部を迅速に昇温することができる。
(16)第16の発明に係るトイレ装置は、便器と、第1〜第15のいずれかの発明に係る便座装置とを備えるものである。
このトイレ装置においては、便器に便座装置が取り付けられる。この便座装置においては、人体検知部により使用者の存在が検知された場合に、便座部の温度が予め定められた第1の温度まで上昇するように第1の電力で発熱体を駆動する第1の時間と、第1の時間の経過後、便座部の温度が第1の温度よりも高い第2の温度まで上昇するように第1の電力よりも小さい第2の電力で発熱体を駆動する第2の時間とが決定される。そして、便座部の温度が第1の温度まで上昇するように第1の電力で発熱体が制御部により第1の時間駆動される。これにより、便座部の温度が第1の温度勾配で上昇する。
第1の電力による発熱体の駆動の後、便座部の温度が第1の温度よりも高い第2の温度まで上昇するように第1の電力よりも小さい第2の電力で発熱体が制御部により第2の時間駆動される。これにより、便座部の温度が第1の温度勾配よりも緩やかな第2の温度勾配で上昇する。
ここで、便座部の温度を測定しつつ、その測定温度に基づいて発熱体を駆動する場合には、発熱体の熱が便座部に伝達されるまでに遅延が生じるので、便座部の温度を正確かつ迅速に制御することが困難である。これに対して、本発明に係る便座装置では、第1および第2の電力による発熱体の駆動時間が、それぞれ第1および第2の時間として予め設定されているので、便座部の温度を正確かつ迅速に制御することができる。
また、人体検知部により使用者の存在が検知された場合に発熱体が第1および第2の電力で駆動されるので、使用者の存在が検知されないときに発熱体を便座部の昇温に必要な第1および第2の電力で駆動する必要がない。これにより、消費電力が十分に低減され、省エネルギー化が実現される。
さらに、便座部は、第1の温度勾配で第1の温度まで昇温された後、第1の温度勾配よりも緩やかな第2の温度勾配で第2の温度まで昇温される。これにより、第2の温度において便座部の温度変化に生じるオーバーシュートが低減される。それにより、便座部の温度が第2の温度で容易に安定化される。
また、第2の温度を使用者が快適に感じる温度に設定することにより、使用者は便座部に快適に着座することができる。
以下、本発明の一実施の形態に係る便座装置およびそれを備えるトイレ装置について図面とともに説明する。
[実施の形態]
(1) 便座装置およびそれを備えるトイレ装置の外観
図1は本発明の一実施の形態に係る便座装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図である。図1に示すように、トイレ装置1000は、便座装置100および便器700を備え、トイレットルーム内に設置される。
トイレ装置1000において、便器700上には便座装置100が装着される。便座装置100は、暖房機能を有し、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400、蓋部500および入室検知センサ600により構成される。
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉自在に取り付けられる。さらに、本体部200には、洗浄水供給機構および着座センサ290が設けられるとともに、後述する制御部が内蔵されている。
本実施の形態において、便座部400にはランプヒータが内蔵されている。詳細は後述する。
本体部200の図示しない洗浄水供給機構は、水道配管に接続されており、便器700内に洗浄水を供給する。着座センサ290は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ290は、人体から反射された赤外線を検出した場合に便座部400上に使用者が存在することを検知する。
また、本体部200の上面側にお知らせLED280が設けられている。お知らせLED280は、便座部400の温度が後述の便座設定温度に達したときに点灯する。このお知らせLED280は、ランプヒータの暖めの動作に連動しており、便座の暖まり状態を視覚的に表示するものである。
より詳細には、お知らせLED280は、ランプヒータが暖めの動作を行うときに(便座部400を昇温する間)点滅し、ランプヒータが暖めの動作を完了しているとき(便座部400の温度を維持する間)に点灯する。また、お知らせLED280は、ランプヒータが暖めの動作を行わないときに消灯する。これにより、使用者は便座の温度の状態を知ることができる。
なお、お知らせLED280は、必ずしもランプヒータの暖めの動作に連動する必要はなく、後述するサーミスタにより検知される便座部400の表面温度に連動してもよいし、ランプヒータの発熱状態または駆動状態に基づいて便座部400の表面温度を推定しその推定値に連動してもよい。
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。この遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
入室検知センサ600は、例えばトイレットルームの入り口等に取り付けられる。入室検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ600は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
本体部200の制御部は、着座センサ290、遠隔操作装置300および入室検知センサ600から送信される信号に基づいて、便座部400に内蔵された後述のランプヒータの駆動を制御する。
本体部200の制御部は、例えば着座センサ290が便座部400上に使用者が存在することを検知する場合にのみ、図示しない洗浄水供給機構を動作させる。また、本体部200の制御部は、例えば入室検知センサ600が使用者の入室を検知することにより蓋部500を開く。
さらに、本体部200の制御部は、洗浄水供給機構(図示せず)、本体部200に設けられた脱臭装置(図示せず)および温風供給装置(図示せず)等の制御も行う。
(2) 遠隔操作装置の構成
図2は、図1の遠隔操作装置300の一例を示す模式図である。
図2に示すように、遠隔操作装置300は、暖房スイッチ301、複数の温度調節スイッチ302,303,304および複数のLED(発光ダイオード)305を備える。
使用者により暖房スイッチ301および複数の温度調節スイッチ302,303,304が押下操作される。
それにより、遠隔操作装置300は、後述する便座装置100の本体部200に設けられた制御部に所定の信号を無線送信する。本体部200の制御部は、遠隔操作装置300より無線送信される所定の信号を受信し、後述のランプヒータの駆動等を制御する。
冬季のように、使用者が暖房機能を使用する場合には、予め暖房スイッチ301が押下操作されることにより便座装置100の暖房機能がオンする。この状態で、温度調節スイッチ302が押下操作された場合には便座部400の温度が低く(例えば、34℃)設定され、温度調節スイッチ303が押下操作された場合には便座部400の温度が中程度(例えば、36℃)に設定され、温度調節スイッチ304が押下操作された場合には便座部400の温度が高く(例えば、38℃)設定される。
なお、夏季のように使用者が暖房機能を使用しない場合には、暖房スイッチ301が押下操作されることにより便座装置100の暖房機能がオフする。
以下、温度調節スイッチ302〜304により設定される便座部400の温度を便座設定温度と称する。
複数のLED305の各々は、暖房スイッチ301および複数の温度調節スイッチ302,303,304と対応するように設けられている。複数のLED305は、暖房スイッチ301および複数の温度調節スイッチ302,303,304の押下操作に伴い点灯する。
(3) 便座装置の構成
図3は本発明の一実施の形態に係る便座装置100の構成を示す模式図である。上述のように、便座装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および入室検知センサ600を備える。
図3に示すように、本体部200は、制御部210、温度測定部220、ヒータ駆動部230、お知らせLED280および着座センサ290を含む。
また、便座部400はランプヒータ480およびサーミスタ411を備える。なお、ランプヒータ480は後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482を含む。
制御部210は、例えばマイクロコンピュータからなり、使用者の入室および便座部400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部、種々の情報を記憶する記憶部、ならびに、ヒータ駆動部230の動作を制御するための通電率切替回路等を含む。
本体部200の温度測定部220は、便座部400のサーミスタ411に接続されている。これにより、温度測定部220は、サーミスタ411から出力される信号に基づいて便座部400の温度を測定する。以下、サーミスタ411を通じて温度測定部220により測定される便座部400の温度を測定温度値と称する。
また、本体部200のヒータ駆動部230は、便座部400のランプヒータ480に接続されている。これにより、ヒータ駆動部230はランプヒータ480を駆動する。
本実施の形態において、便座装置100は次のように動作する。
初めに、初期設定時の動作について説明する。使用者が遠隔操作装置300の暖房スイッチ301(図2)を押下操作することにより、暖房機能をオンする旨の信号が本体部200の制御部210に送信される。これにより、制御部210がヒータ駆動部230を制御することにより、ランプヒータ480が駆動される。それにより、便座部400が、例えば約18℃となるように温度調節される。このときの温度を待機温度と称する。
ここで、使用者が遠隔操作装置300の温度調節スイッチ302,303,304(図2)のいずれかを押下操作することにより、便座設定温度が制御部210に送信される。制御部210は、遠隔操作装置300から受信した便座設定温度を記憶部に記憶する。
例えば、温度調節スイッチ302が押下操作された際には、便座設定温度が34℃として記憶部に記憶される。また、温度調節スイッチ303が押下操作された際には、便座設定温度が36℃として記憶部に記憶される。さらに、温度調節スイッチ304が押下操作された際には、便座設定温度が38℃として記憶部に記憶される。
使用者がトイレットルームに入室すると、入室検知センサ600は使用者の入室を検知する。それにより、使用者の入室を示す信号が制御部210に送信される。
次に、通常の使用時の動作について説明する。制御部210の判定部は、入室検知センサ600からの信号により使用者のトイレットルームへの入室を検知する。そこで、判定部は、便座部400の測定温度値、および記憶部に記憶された後述のヒータ制御テーブルに基づいてランプヒータ480の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
通電率切替回路は、選択されたヒータ制御パターンおよび計時部により得られる時間情報に基づいてヒータ駆動部230の動作を制御する。
それにより、ヒータ駆動部230によりランプヒータ480が駆動され、便座部400の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇される。
制御部210の動作、ランプヒータ480の駆動に関するヒータ制御パターン、およびヒータ制御テーブルの詳細は後述する。
(4) 便座部の構造の詳細
(4−a) 便座部の構造
図4〜図7は、図1の便座部400の構造の詳細を説明するための図である。図4に便座部400の分解斜視図が示されている。図5に上部便座ケーシング410を下側から見た図が示されている。図6に図4のU−U線における上部便座ケーシング410の拡大断面図が示されている。
図4に示すように、便座部400は、略円環形状を有し、アルミニウムにより形成された上部便座ケーシング410と、合成樹脂により形成された下部便座ケーシング420とを備える。
一点鎖線で示すように、上部便座ケーシング410の上面の一部が使用者の着座部410Tとなる。
図4および図5に示すように、上部便座ケーシング410の下面側には、着座部410Tの領域に2つのサーミスタ411が取り付けられる。また、その他の領域に2つのサーミスタ412が取り付けられる。
なお、着座部410Tの領域に設けられるサーミスタ411は1つであってもよい。また、その他の領域に設けられるサーミスタ412も1つであってもよい。
図6に示すように、上部便座ケーシング410は熱伝導性に優れたアルミニウム層410bの上面および下面に種々の層を形成することにより作製される。なお、アルミニウムの熱伝導率は約237W/m・Kである。
アルミニウム層410bの下面に、炭素等を含む黒色の塗料が塗布される。これにより、アルミニウム層410bの下面には輻射エネルギーを効率よく吸収できる黒色の輻射吸収層410aが形成される。
アルミニウム層410bの上面には、アルマイト層410cおよび表面化粧層410dが順に形成される。アルマイト層410cが形成されることにより、アルミニウム層410bの上面の耐蝕性が向上される。表面化粧層410dは所定の塗料等により形成される。
アルミニウム層410bの下面には、輻射吸収層410aを介してサーミスタ411が取り付けられている。サーミスタ411は、輻射吸収層410aを介してアルミニウム層410bの温度を検出する。
図7に下部便座ケーシング420を上側から見た図が示されている。図4および図7に示すように、下部便座ケーシング420の上面側には、下部便座ケーシング420の形状に沿うように形成された輻射反射板430が取り付けられる。輻射反射板430はアルミニウムからなる板材の表面を鏡面仕上げすることにより作製される。
また、輻射反射板430の上面には、ランプヒータ480が設けられる。ランプヒータ480は、U字形に形成された後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482を直列に接続することにより作製される。
さらに、輻射反射板430の上面には、前方ランプヒータ482の所定の箇所(2箇所)に近接するように2つのサーモスタット441が取り付けられ、後方ランプヒータ481の所定の箇所(2箇所)に近接するように2つのサーモスタット442が取り付けられる。これら複数のサーモスタット441,442は、ともにランプヒータ480に直列に接続される。
図5の上部便座ケーシング410と図7の下部便座ケーシング420とを図示しないシール材を介して接合することにより図1の便座部400が完成する。これにより、上部便座ケーシング410および下部便座ケーシング420内の空間が密閉される。シール材により、上部便座ケーシング410および下部便座ケーシング420内への水の浸入が防止される。この状態で、上部便座ケーシング410に取り付けられたサーミスタ411は、前方ランプヒータ482に対向する。
後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482は、ガラス管、フィラメント、アルゴンガスおよびハロゲンガスからなるハロゲンランプヒータである。
これら後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482においては、ガラス管の内部にフィラメントが設けられるとともに、アルゴンガスおよびハロゲンガスが封入されている。
(4−a−1) ランプヒータの構成
本実施の形態の後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482の定格電力は、それぞれ500Wおよび700Wに設定される。この場合、ランプヒータ480の定格電力は1200Wである。
ここで、後方ランプヒータ481の長さを460mmとし、前方ランプヒータ482の長さを600mmとする。この場合、後方ランプヒータ481の単位長さ当りの定格電力が約1087W/mとなり、前方ランプヒータ482の単位長さ当りの定格電力が約1167W/mとなる。
このように、前方ランプヒータ482の単位長さ当りの定格電力は、後方ランプヒータ481の単位長さ当りの定格電力よりも大きくなるように設定する。これにより、前方ランプヒータ482から発生される輻射エネルギーの単位長さ当りの大きさを、後方ランプヒータ481から発生される輻射エネルギーの単位長さ当りの大きさよりも大きくすることができる。
したがって、本例のランプヒータ480の駆動時には、上部便座ケーシング410の前方に位置する着座部410Tが、上部便座ケーシング410の後方の部分よりも大きい輻射エネルギーを受けて加熱され、着座部410Tの温度を他の部分に比べて急速に上昇させることができる。その結果、着座部410Tが優先的に加熱されるので、使用者が着座部410Tに着座する際に冷たいと感じることが防止される。
上記では、ランプヒータ480に定格電力の異なる後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482を用いる旨を説明したが、ランプヒータ480は定格電力が互いに異なる3個以上のランプヒータにより構成されてもよい。
この場合、上部便座ケーシング410に対する複数のランプヒータの配置を調整することにより、上部便座ケーシング410の各部に与える輻射エネルギーの大きさをより細かく調整することができる。それにより、使用者が着座部410Tに着座する際に冷たいと感じることが十分に防止される。
(4−a−2) 上部便座ケーシングの形状
図5に示すように、本例の上部便座ケーシング410は、前方部分FAと後方部分BAとで大きさ(面積)が異なる。本例では、前方部分FAの上部便座ケーシング410の幅FWが約50mmであるのに対して、後方部分の幅BWは約100mmである。
この場合、ランプヒータ480により発生される輻射エネルギーの全てが上部便座ケーシング410に与えられるとすると、上部便座ケーシング410の単位長さ当り(円環形状に沿う長さ)に与えられる輻射エネルギーの大きさは上部便座ケーシング410の部分ごとに異なる。
本例では、上部便座ケーシング410の前方部分FAで単位長さ当りに与えられる輻射エネルギーの単位時間当りの大きさは、後方部分BAで単位長さ当りに与えられる輻射エネルギーの単位時間当りの大きさの約2倍となる。
それにより、ランプヒータ480の駆動開始とともに、上部便座ケーシング410の温度を他の部分に比べて急速に上昇させることができる。その結果、着座部410Tが優先的に加熱されるので、使用者が着座部410Tに着座する際に冷たいと感じることを防止できる。
このように、上部便座ケーシング410の形状を調整することにより、ランプヒータ480の駆動時における温度上昇の度合い(昇温速度)を上部便座ケーシング410の部分ごとに調整することができる。
(4−a−3) ランプヒータと上部便座ケーシングとの関係
これらより、ランプヒータ480の構成および上部便座ケーシング410の形状を組み合わせて調整することにより、ランプヒータ480の駆動時における上部便座ケーシング410の昇温速度を上部便座ケーシング410の部分ごとに詳細に調整することができる。
本例のように、上部便座ケーシング410の前方に単位長さ当りに発生される輻射エネルギーが大きい前方ランプヒータ482を配置するとともに、上部便座ケーシング410の前方部分FAの大きさを小さく設計することにより、着座部410Tの昇温速度を十分に向上させることができる。
なお、上部便座ケーシング410の内部におけるランプヒータ480の配置位置を調整しても、昇温時における上部便座ケーシング410に所望の温度分布を形成させることができる。
例えば、上部便座ケーシング410の前方部分FAでは、ランプヒータ480を上部便座ケーシング410の内表面に近接させ、後方部分BAではランプヒータ480を上部便座ケーシング410の内表面から所定の間隔で離間させる。この場合でも、上部便座ケーシング410の前方部分FAの昇温速度を後方部分BAの昇温速度よりも大きくすることができる。
さらには、上部便座ケーシング410の各部分で、材料の厚みを変化させてもよい。例えば、上部便座ケーシング410の前方部分FAの厚みを薄く設定し、後方部分BAの厚みを厚く設定する。この場合でも、上記と同様の効果を得ることができる。
また、上部便座ケーシング410の各部分で、材質を変化させてもよい。例えば、上部便座ケーシング410の前方部分FAに熱伝導率の高い材料を用い、後方部分BAに熱伝導率の低い材料を用いる。この場合でも、上記と同様の効果を得ることができる。
(4−a−4) ランプヒータの変形例
ランプヒータ480は、1本のランプヒータにより構成されてもよい。この場合、ランプヒータのフィラメントの巻き数を部分的に変化させることにより、ランプヒータの部分ごとで発生される単位長さ当りの輻射エネルギーの大きさを調整することができる。
例えば、上部便座ケーシング410の前方部分FAに配置されるランプヒータ480の部分のフィラメントの巻き数を大きくし、上部便座ケーシング410の後方部分BAに配置されるランプヒータ480の部分のフィラメントの巻き数を小さくする。
これにより、後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482を含むランプヒータ480と同様に、上部便座ケーシング410の前方部分FAで大きい輻射エネルギーを得ることができ、上部便座ケーシング410の後方部分BAで前方部分FAよりも小さい輻射エネルギーが得られる。
なお、ランプヒータ480の定格電力が上部便座ケーシング410全体の温度を急速に上昇させるのに十分なワット数である場合、上部便座ケーシング410の構成は、上部便座ケーシング410の各部の昇温速度がほぼ均一となるように調整されることが好ましい。この場合、使用者は、ランプヒータ480を定格電力で駆動することにより着座部410T以外の部分に着座しても冷たいと感じることがなくなる。
上部便座ケーシング410において、昇温時における所望の温度分布を得るために、新たなランプヒータを設けてもよい。
上述のように、上部便座ケーシング410は、後方の幅が前方の幅よりも大きい。これにより、例えば昇温時における上部便座ケーシング410全体の昇温速度を均一にしたい場合には、1本のランプヒータを上部便座ケーシング410の形状に沿って配置しても、後方の部分での温度分布と、前方の部分での温度分布との間で差が生じる。
そこで、上部便座ケーシング410の全体で温度分布が均一となるように、後方の部分に新たなランプヒータを設ける。このように、上部便座ケーシング410の形状および昇温時における所望の温度分布に応じて新たなランプヒータを設けることにより、上部便座ケーシング410における所望の温度分布を得ることができる。
(4−b) ランプヒータの駆動
上述のように後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482は、図3のヒータ駆動部230に接続されている。ヒータ駆動部230により後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482に電流が流されると、各ランプヒータから周囲へ赤外線が輻射される。
そして、後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482から輻射された赤外線、すなわち輻射エネルギーが直接的にまたは輻射反射板430を介して間接的に上部便座ケーシング410の下面側に入射する。
上述のように黒色の輻射吸収層410a(図6)は輻射エネルギーを効率よく吸収することができるので、後方ランプヒータ481および前方ランプヒータ482からの輻射エネルギーが効率よくアルミニウム層410b(図6)に伝達される。それにより、アルミニウム層410bが発熱する。
上記のようにアルミニウムは高い熱伝導率を有するので、輻射エネルギーにより発生された熱は、上部便座ケーシング410の全体に短時間で伝達される。
これにより、ランプヒータ480の駆動により上部便座ケーシング410の温度が上昇する際に、上部便座ケーシング410に温度むらが生じる場合でも、短時間で上部便座ケーシング410の温度が均一化される。
(4−c) 上部便座ケーシング
便座部400の着座部410Tは、使用者が着座する際に約29℃以上の温度に調整されることが好ましい。29℃は、使用者が冷たいと感じない着座部410Tの最低温度である。詳細は後述する。
そこで、本発明者は、使用者がトイレットルームに入室してから便座部400上に着座するまでの時間(以下、入室着座時間と呼ぶ。)を調査した。この調査は、所定人数の使用者についてトイレットルームを使用させ、各使用者の入室着座時間を測定し、入室着座時間ごとの累積百分率を算出することにより行った。
図8は、入室着座時間の調査結果を示す図である。図8において、横軸は入室着座時間を示し、縦軸は使用者の累積百分率を示す。
図8に示すように、本調査によれば、使用者の多く(9割以上の使用者)は、トイレットルームに入室した後約6秒間経過してから便座部400に着座することが明らかとなった。
冬季のようにトイレットルームの室温が低い場合、例えば便座部400の温度は約5℃程度に低下する場合がある。したがって、上部便座ケーシング410は、使用者がトイレットルームに入室してから6秒間で便座部400が5℃から29℃まで昇温するように作製する。
具体的には、上部便座ケーシング410は、露出する表面積が約1200cm2 でかつ板厚が1mmとなるようにアルミニウムを用いて作製する。
ここで、アルミニウムの比重は2.71であり、比熱は0.215cal/g・Kである。これにより、上記のように上部便座ケーシング410を作製すると、その熱容量は約293J/Kとなる。
この場合、1200Wでランプヒータ480を駆動することにより、ランプヒータ480から発生される輻射エネルギーの全てが、上部便座ケーシング410に与えられるとすると、上部便座ケーシング410は約4K/sの昇温速度で加熱される。なお、1200Wとは、一般家庭のコンセントから得ることができるほぼ最大の電力量である。
これにより、上記の上部便座ケーシング410の温度は、ランプヒータ480を駆動することにより6秒間で約24℃上昇する。したがって、便座部400が5℃に低下しているような場合でも、ランプヒータ480を駆動することにより、使用者がトイレットルームに入室してから6秒後には上部便座ケーシング410を約29℃まで昇温することが可能となる。
上記のように、上部便座ケーシング410は、熱容量を低く抑えた構成とすることが好ましい。すなわち、上部便座ケーシング410は、熱容量が約300J/K以下となるように作製する。
これにより、使用者がトイレットルームに存在しない間、上部便座ケーシング410を保温する必要がなくなり、省エネルギー化が実現される。
なお、実際には、1200Wでランプヒータ480を駆動しても、1200Wの電力量の全てが輻射エネルギーに変換されるわけではなく、ランプヒータ480から発生される輻射エネルギーの全てが上部便座ケーシング410に伝達されるわけではない。したがって、上部便座ケーシング410の作製時には、伝達される輻射エネルギーの損失を考慮する必要がある。
この場合、例えば、後述するように使用者が入室するまでの間、約18℃程度の低い温度で上部便座ケーシング410を維持する必要がある。
本例では、上部便座ケーシング410をアルミニウムを用いて作製する旨を説明したが、上部便座ケーシング410の板厚を約1mm以上とすることにより、上部便座ケーシング410に使用者が十分に着座可能な強度を得ることができる。
なお、上部便座ケーシング410を高張力型のアルミニウムを用いて作製すること、または上部便座ケーシング410の下面側を支持するように下部便座ケーシングに支柱を設けることにより、使用者の着座時における着座部410Tの撓みを防止することができる。この場合、上部便座ケーシング410の板厚を約0.8mmとすることも可能である。
上部便座ケーシング410の材料として、アルミニウムに代えて、例えばステンレス鋼を用いることもできる。この場合、上部便座ケーシング410の板厚を約0.5mm以上とすることにより、上部便座ケーシング410に使用者が十分に着座可能な強度を得ることができる。
(4−d) 複数のサーミスタの働き
上部便座ケーシング410において、着座部410Tの領域に取り付けられるサーミスタ411の働き、および着座部410T以外の領域に取り付けられるサーミスタ412の働きについて説明する。
上部便座ケーシング410の内部において、例えばランプヒータ480は、その他の部分に比べて着座部410Tに近接するように配置される。これにより、上部便座ケーシング410の着座部410Tはランプヒータ480の駆動時に比較的高い応答性で熱が伝達される。
また、着座部410Tは、上部便座ケーシング410の中でも人体に接触する部分であるため、十分な温度管理が必要である。
それにより、着座部410Tのサーミスタ411は、ランプヒータ480の駆動時における温度調節のために用いられる。
一方、着座部410T以外の領域に取り付けられるサーミスタ412は、サーミスタ411が故障等した場合に上部便座ケーシング410の温度が過剰に上昇しないようにするために用いられる。
(4−e) 複数のサーモスタットの働き
下部便座ケーシング420において、前方ランプヒータ482に近接するように取り付けられる2つのサーモスタット441の働き、および後方ランプヒータ481に近接するように取り付けられる2つのサーモスタット442の働きについて説明する。
前方ランプヒータ482側の2つのサーモスタット441は、前方ランプヒータ482の温度を監視するために用いられる。これら2つのサーモスタット441は、例えば78℃でランプヒータ480への通電を遮断するように設定される。したがって、2つのサーモスタット441は78℃で通電を遮断する温度ヒューズの役割を果たす。
一方、後方ランプヒータ481側の2つのサーモスタット442は、後方ランプヒータ481周辺の雰囲気の温度を監視するために用いられる。これら2つのサーモスタット442は、例えば53℃でランプヒータ480への通電を遮断するように設定される。したがって、2つのサーモスタット442は53℃で通電を遮断する温度ヒューズの役割を果たす。
(5) ヒータ制御テーブルおよびヒータ制御パターン
本実施の形態に係る便座装置100の制御部210には、3種類の便座設定温度(34℃、36℃および38℃)に対応する3つのヒータ制御テーブルが予め記憶されている。
図9〜図11は、所定の便座設定温度(34℃、36℃および38℃)に対応するヒータ制御テーブルの一例を示す図である。図9〜図11に示すヒータ制御テーブルの各々は、使用者の入室時のサーミスタ411(図3)の測定温度値に対応する複数のヒータ制御パターンを有する。
複数のヒータ制御パターンの各々には、ランプヒータ480の駆動に関するタイムスケジュールが設定されている。また、それぞれのヒータ制御パターンにおいては、ランプヒータ480を駆動する電力を切替えるときのサーミスタ411の測定温度値が設定されている。詳細は後述する。
上述のように、便座設定温度が決定されると、制御部210は、決定された便座設定温度に対応する1つのヒータ制御テーブルを選択する。
また、制御部210は、図3の入室検知センサ600により使用者の入室が検知されると、サーミスタ411の測定温度値に基づいてヒータ制御テーブルの中から1つのヒータ制御パターンを選択する。それにより、選択されたヒータ制御パターンに従ってランプヒータ480の駆動が制御される。
例えば、便座設定温度が低く(34℃)設定され、かつ使用者の入室時の測定温度値が16℃〜18℃である場合、図3の制御部210は、図9のヒータ制御テーブルの16℃〜18℃に相当するヒータ制御パターンに基づいて、突入電流を低減するための後述の600W駆動を0.2秒間行う。
その後、制御部210は後述の1200W駆動を6秒間行い、続いて後述の600W駆動を2.1秒間行う。
なお、上述のように、本実施の形態に係る便座装置100においては、暖房機能がオンしている場合に、便座部400が例えば約18℃となるように温度調節される。
ここで、図9〜図11のヒータ制御テーブルは、暖房機能がオフ状態からオン状態に切替わる場合も想定している。それにより、図9〜図11のヒータ制御テーブルには、0℃〜16℃に相当するヒータ制御パターンも設定されている。
すなわち、室温が0℃のときに使用者が暖房機能をオンすると、制御部210は、例えば図9のヒータ制御テーブルの0℃〜2℃に相当するヒータ制御パターンに基づいて、600W駆動を16秒間行う。
(6) ランプヒータの駆動
本実施の形態において、ランプヒータ480の駆動の制御は、ランプヒータ480を駆動する電力を大きく3つに変化させることにより行う。
例えば、便座部400を第1の温度勾配で昇温させる場合、図3のヒータ駆動部230は約1200Wの電力でランプヒータ480を駆動する(1200W駆動)。また、便座部400を第1の温度勾配よりもやや緩やかな第2の温度勾配で昇温させる場合、ヒータ駆動部230は約600Wの電力でランプヒータ480を駆動する(600W駆動)。さらに、便座部400の温度を一定に保つ場合、ヒータ駆動部230は約50Wの電力でランプヒータ480を駆動する(低電力駆動)。なお、低電力駆動とは、1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力(例えば、0W〜50Wの範囲内の電力)によりランプヒータ480を駆動することをいう。
1200W駆動、600W駆動および低電力駆動の切替えは、制御部210の通電率切替回路が、ヒータ駆動部230からランプヒータ480への通電を制御することにより行われる。
ヒータ駆動部230には図示しない電源回路から交流電流が供給されている。そこで、ヒータ駆動部230は、通電率切替回路から与えられる通電制御信号に基づいて供給された交流電流をランプヒータ480に流す。
1200W駆動時、600W駆動時および低電力駆動時におけるランプヒータ480への通電状態を通電率切替回路の通電制御信号とともに説明する。
図12(a)は1200W駆動時にランプヒータ480を流れる電流の波形図、図12(b)は1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部230に与えられる通電制御信号の波形図である。
図12(b)に示すように、1200W駆動時における通電制御信号は常に論理「1」となる。ヒータ駆動部230は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流をランプヒータ480に流す(図12(a)太線部)。それにより、全周期の期間に渡って交流電流がランプヒータ480に流れる。その結果、ランプヒータ480が約1200Wの電力で駆動される。
図13(a)は600W駆動時にランプヒータ480を流れる電流の波形図、図13(b)は600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部230に与えられる通電制御信号の波形図である。
図13(b)に示すように、600W駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部230に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%に設定される。
ヒータ駆動部230は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流をランプヒータ480に流す(図13(a)太線部)。それにより、半周期の期間交流電流がランプヒータ480に流れる。その結果、ランプヒータ480が約600Wの電力で駆動される。
図14(a)は低電力駆動時にランプヒータ480を流れる電流の波形図、図14(b)は低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部230に与えられる通電制御信号の波形図である。
図14(b)に示すように、低電力駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部230に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%よりも小さく(例えば数%程度)に設定される。
ヒータ駆動部230は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流をランプヒータ480に流す(図14(a)太線部)。各周期においては、パルス幅に相当する期間交流電流がランプヒータ480に流れる。その結果、ランプヒータ480が例えば約50Wの電力で駆動する。
上記の他、便座部400の温度を低くする場合、または便座装置100の暖房機能をオフしている場合等には、通電率切替回路はヒータ駆動部230に通電制御信号を与えない(通電制御信号を論理「0」に設定する)。これにより、ヒータ駆動部230はランプヒータ480を駆動しない。
ここで、一般に、電子機器に供給される電流が高調波成分を有する場合、ノイズが発生する。本実施の形態では、上述のようにランプヒータ480の1200W駆動または600W駆動を行う場合には、ランプヒータ480に供給される電流がサインカーブを描くように変化するので、電流の大きさが大きくなってもノイズの発生が十分に低減される。
また、ランプヒータ480の低電力駆動を行う場合、ランプヒータ480に供給される電流は高調波成分を有するが、電流の大きさが1200W駆動時および600W駆動時に比べて非常に小さいので、ノイズの発生が十分に低減される。
上記のように、本実施の形態では、ランプヒータ480を1200W、600Wおよび約50Wの電力で駆動するとしているが、他の大きさの電力でランプヒータ480を駆動してもよい。
例えば、ランプヒータ480に半周期の期間交流電流を流す場合には、交流電流を流すタイミングを2周期または3周期等所定の周期の間隔で設定する。それにより、1200W、600Wおよび約50Wとは異なる大きさの電力で、ノイズの発生を十分に防止しつつランプヒータ480を駆動することができる。
以下の説明において、通電率とは交流電流の1周期に対してランプヒータ480に交流電流を流す時間(通電制御信号における論理「1」の期間)の割合をいう。
なお、本実施の形態では、制御部210は通電制御信号が論理「1」のときにランプヒータ480に電流を供給し、通電制御信号が論理「0」のときにランプヒータ480への電流の供給を停止しているが、通電制御信号が論理「1」のときにランプヒータ480への電流の供給を停止し、通電制御信号が論理「0」のときにランプヒータ480に電流を供給してもよい。
(7) ヒータ制御テーブルの作成方法
(7−a) 突入電流
本実施の形態に係る便座装置100において、便座部400を瞬時に昇温させる際には、ランプヒータ480に大きな電流を流す。この場合、ランプヒータ480に比較的大きな突入電流が発生する。
このような大きな突入電流が発生すると、過電流によりブレーカが遮断され、便座装置100が接続される電力配線の電圧降下が発生する。
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、突入電流を十分低減できるように複数のヒータ制御パターンを設定することが好ましい。
図9〜図11のヒータ制御テーブルの例では、ランプヒータ480の1200W駆動を行う場合、その直前に600W駆動を行うようにヒータ制御パターンが設定されている。図9〜図11では、1200W駆動を行う前の600W駆動を突入電流低減用600W駆動として示している。
(7−b) オーバーシュート
上記のように、ランプヒータ480により便座部400の温度を瞬時に上昇させるために、ランプヒータ480に大きな電流を流す。それにより、便座部400の温度変化にオーバーシュートが生じる。そのため、便座部400の温度を短時間で便座設定温度に安定させることが困難である。
そこで、本実施の形態では、ヒータ制御テーブルの作成時においては、便座部400の温度変化のオーバーシュートを十分低減できるように複数のヒータ制御パターンを設定する。
図9〜図11のヒータ制御テーブルの例では、便座部400の温度変化のオーバーシュートを防止するために、便座部400の昇温時にランプヒータ480の駆動を2段階で制御するように設定されている。
(7−c) 限界温度
暖房機能を有する便座装置100においては、使用者が着座部410Tを冷たいと感じないようにする必要がある。以下、使用者が冷たいと感じない着座部410Tの最低温度を限界温度と称する。
したがって、使用者がトイレットルームに入室し、着座部410Tに着座する際には、少なくとも着座部410Tの温度が限界温度以上に高くなっていなければならない。
そこで、ヒータ制御テーブルの作成時においては、使用者の入室から着座部410Tの表面温度を限界温度まで上昇させる間の時間を十分に短くできるように複数のヒータ制御パターンを設定する。
図9〜図11のヒータ制御テーブルの例では、便座部400の温度を迅速に限界温度まで上昇させるため、使用者入室時の測定温度値が限界温度よりも小さい場合に、ランプヒータ480の1200W駆動を行うように設定されている。
限界温度について詳細を説明する。本発明者は、限界温度について以下の調査を行った。この調査は、本発明者が、5種類の温度調整(25℃、27℃、29℃、31℃および33℃)がなされた便座部400上に所定人数の使用者を着座させ、そのときの使用者の感想についてアンケートをとることにより行った。
なお、アンケートは、便座部400上に着座したときの感想として、「快適である」、「やや快適である」、「どちらでもない」、「やや不快である」、および「不快である」のいずれかの回答を使用者に選択させることにより行った。
その後、本発明者は、所定人数の使用者の回答を集計し、便座部400の調整された温度ごとに、回答の平均を算出することにより以下の調査結果を得た。
図15は、限界温度の調査結果を示す図である。図15において、縦軸は使用者の官能評価結果を示し、横軸は便座部400の温度を示す。
図15に示すように、使用者は、便座部400の温度が27℃以下である場合にやや不快感を覚え、29℃以上の場合に概ね不快感を感じなかった。このようにして、本発明者は、限界温度が約29℃であるという結果を得た。
(7−d) 着座部と体感温度
使用者が着座部410Tに着座することにより感じる温度(体感温度)と、着座部410Tの実際の表面温度とは異なる。
一般に、人体が特定の対象物に接触する際の体感温度は、対象物の熱伝導率および人体と対象物との熱容量の差等により変化する。
これにより、着座部410Tの実際の表面温度と、その着座部410Tに着座する使用者の体感温度との間には差が生じる場合がある。
本実施の形態において、着座部410Tは熱伝導性に優れたアルミニウムにより形成されている。
これにより、例えば、着座部410Tの温度が使用者の体温よりも低い場合には、使用者の体温が着座部410Tに短時間で伝達されるので、使用者の体感温度は実際の着座部410Tの温度よりも低くなる。
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、使用者の着座時における体感温度をできるだけ便座設定温度に近づけられるように複数のヒータ制御パターンを設定する。
(7−e) ランプヒータの温度と着座部の表面温度との関係
便座部400の昇温時において、ランプヒータ480の表面温度(ガラス管の温度)と着座部410Tの実際の表面温度との間では大きな温度差が生じる。
したがって、着座部410Tの表面温度を便座設定温度まで上昇させ、その温度を安定して保つためには、ランプヒータ480の駆動開始時から所定の時間が必要となる。
本発明者は、ランプヒータ480の駆動開始時から着座部410Tの表面温度が便座設定温度で安定するまでの時間について、次の試験(便座昇温試験)を行った。
トイレットルームの室温が25℃である場合に、便座設定温度を約40℃に設定する。この状態で、ランプヒータ480を駆動する。そして、着座部410Tの表面温度が約40℃で安定するまでの時間を測定した。これにより、図16に示す関係を得た。
図16は、便座昇温試験時のランプヒータ480の表面温度と着座部410Tの表面温度との関係を示す図である。図16においては、縦軸が温度を示し、横軸が時間を示す。また、太い実線がランプヒータ480の表面温度を示し、太い点線が着座部410Tの表面温度を示す。
図16に示すように、ランプヒータ480が駆動されることにより、ランプヒータ480の表面温度は約10秒間で100℃に達する。その後、ランプヒータ480の表面温度は約100℃で一定に保たれる。
一方、ランプヒータ480の表面温度が変化することにより、着座部410Tの表面温度は、緩やかに上昇し約10秒間で約40℃に達する。その後、着座部410Tの表面温度は約45℃で一定に保たれる。
このように、例えば着座部410Tの表面温度と便座設定温度との差は時間とともに増大し、約10秒後にほぼ一定となる。
すなわち、10秒よりも短い時間内で温度制御する場合には、ランプヒータ480の表面温度と着座部410Tの表面温度との差を考慮してランプヒータ480へ流す電流を制御することが困難である。
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、ランプヒータ480の駆動に用いる電力、およびその電力により着座部410Tを便座設定温度で安定化させるために必要な時間を考慮して複数のヒータ制御パターンを設定する。
(7−f) サーミスタによる測定温度値と着座部の表面温度との関係
便座部400の昇温時において、図3のサーミスタ411による測定温度値と着座部410Tの実際の表面温度との間では温度差が生じる。
本発明者は、便座部400の昇温時のサーミスタ411による測定温度値と、着座部410Tの実際の表面温度との関係について、次の試験(測定温度値確認試験)を行った。
トイレットルームの室温が21℃である場合に、便座設定温度を約38℃に設定する。この状態で、ランプヒータ480を所定時間駆動する。そして、測定温度値と着座部410Tの表面温度とが約38℃で安定するまでの時間を測定した。これにより、図17に示す関係を得た。
図17は、測定温度値確認試験時のサーミスタ411による測定温度値と着座部410Tの表面温度との関係を示す図である。図17においては、縦軸が温度を示し、横軸が時間を示す。また、太い実線がサーミスタ411による測定温度値を示し、太い点線が着座部410Tの表面温度を示す。
図17に示すように、ランプヒータ480が駆動され、便座部400が昇温される際には、測定温度値と着座部410Tの表面温度との間で温度差が生じる。
図17の例では、ランプヒータ480の駆動開始から約4秒後で、測定温度値と着座部410Tの表面温度との間に約2.5℃の温度差が生じている。
また、図示しないが、他の条件により上記の測定温度値確認試験を行った場合には、測定温度値と着座部410Tの表面温度との間に最大約6℃の温度差が生じた。
すなわち、便座部400の昇温時においては、ランプヒータ480の駆動をサーミスタ411による測定温度値に基づいて正確に制御することが困難である。
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、ランプヒータ480の駆動に用いる電力、およびその電力により着座部410Tを便座設定温度で安定化させるために必要な時間を考慮して複数のヒータ制御パターンを設定する。
加えて、ヒータ制御パターンは、ランプヒータ480を駆動する電力を切替えるときの測定温度値を有してもよい。この場合、予め実験またはシュミレーションを行うことにより、着座部410Tの表面温度と測定温度値との関係について調査する。そして、電力切替え時の測定温度値を設定する。
このように、ヒータ制御パターンがランプヒータ480を駆動する時間に関する情報と測定温度値に関する情報とを有する場合には、それぞれの情報に基づいてより正確なランプヒータ480の駆動の制御を行うことができる。
図9〜図11のヒータ制御テーブルの例では、ランプヒータ480の駆動に関するタイムスケジュールに加えて、1200W駆動から600W駆動への切替え時の測定温度値(切替温度)が設定されている。この切替温度は、着座部410Tの表面における限界温度に対応する。
この場合、制御部210は、使用者の入室時の測定温度値が16℃〜28℃である場合に、タイムスケジュールに沿ってランプヒータ480の1200W駆動を行うとともに、測定温度値が切替温度に達したか否かを判別する。
そこで、測定温度値が切替温度に達した場合には、タイムスケジュールにかかわらず1200W駆動から600W駆動への切替えを行う。
また、図9〜図11のヒータ制御テーブルの例では、さらに600W駆動から低電力駆動への切替え時の測定温度値(目標温度)が設定されている。この目標温度は、昇温を停止して使用者の着座を待機する際の着座部410Tの表面温度に対応する。
この場合、制御部210は、タイムスケジュールに沿ってランプヒータ480の600W駆動を行うとともに、測定温度値が目標温度に達したか否かを判別する。
そこで、測定温度値が目標温度に達した場合には、タイムスケジュールにかかわらず600W駆動から低電力駆動への切替えを行い、着座部410Tの表面温度を一定に保つ。
(7−g) 着座時における低温やけどの防止
体温よりもやや高い温度の熱源に人体が長時間接触すると、その人体の接触部に低温やけどが発生する場合がある。本実施の形態においても、便座設定温度が使用者の体温よりも高い場合、使用者の着座状態が長時間に渡ると、その使用者は低温やけどする場合がある。
したがって、ヒータ制御テーブルの作成時においては、使用者が着座した後、時間が経過するにつれて徐々に着座部410Tの温度が下降するように複数のヒータ制御パターンを設定することが好ましい。
図9〜図11のヒータ制御テーブルのヒータ制御パターンでは、使用者の着座後のタイムスケジュールを省略している。しかしながら、実際には、使用者の着座後、着座部410Tの表面温度が徐々に低下するようにランプヒータ480を駆動する電力のタイムスケジュールを設定することが好ましい。
(8) ヒータ制御テーブルに基づくランプヒータの駆動例
図18は、図11のヒータ制御テーブルに基づくランプヒータ480の駆動例および着座部410T(図4)の表面温度の変化を示す図である。
図18においては、着座部410Tの表面温度と時間との関係を示すグラフと、ランプヒータ480を駆動する際の通電率と時間との関係を示すグラフとが示されている。これら2つのグラフの横軸は共通の時間軸である。
本例では、使用者が予め暖房機能をオンし、便座設定温度を高く(38℃)設定した場合を想定する。
上述のように、冬季等室温が待機温度である18℃よりも低い場合、制御部210(図3)は、便座部400の温度を18℃となるように温度調節する。このように、制御部210は、入室検知センサ600により使用者の入室が検知されるまでの待機期間D1の間、着座部410Tの表面温度が18℃で一定となるように、ランプヒータ480の低電力駆動を行う。
制御部210は、時刻t1で入室検知センサ600により使用者の入室が検知された場合、突入電流低減期間D2の間、図11のヒータ制御テーブルに従ってランプヒータ480の600W駆動を行う。なお、この600W駆動は、突入電流を十分に低減するために行う。この場合、着座部410Tの表面温度はやや緩やかな第2の温度勾配で上昇される。
その後、制御部210は、突入電流低減期間D2の経過後の時刻t2で、ランプヒータ480の1200W駆動を開始し、第1の昇温期間D3の間ランプヒータ480の1200W駆動を継続する。この場合、着座部410Tの表面温度は上述の第1の温度勾配で上昇される。
ここで、着座部410Tの表面温度は急激に上昇される。ランプヒータ480の1200W駆動は、着座部410Tの表面温度が限界温度に達するまで行われる。図18の着座部410Tの表面温度を示すグラフでは、限界温度が29℃として一点鎖線で示されている。ランプヒータ480の1200W駆動時に、着座部410Tの表面温度が限界温度になるときに想定される測定温度値が図11の切替温度となる。
着座部410Tの表面温度が限界温度に達する時刻t3は、ヒータ制御テーブルにより定められた1200W駆動の時間、および測定温度値がヒータ制御テーブルにより定められた切替温度に達するまでの時間のうち短い時間である。
このように、第1の昇温期間D3においては、着座部410Tの表面温度が、1200W駆動により迅速に限界温度まで上昇される。それにより、使用者は、上述のお知らせLED280(図1)が点灯していない状態でも、着座部410Tを冷たいと感じることなく便座部400に着座することができる。
また、上述のように、着座部410Tの表面温度を急激に上昇させると、その温度変化にオーバーシュートが生じる。しかしながら、本実施の形態では、着座部410Tの表面温度が限界温度に達したときにランプヒータ480の1200W駆動を600W駆動に切替える。したがって、着座部410Tの表面温度の変化がオーバーシュートした場合でも、その表面温度は便座設定温度を超えない。その結果、使用者が着座時に着座部410Tを熱いと感じることが防止される。
続いて、制御部210は、第1の昇温期間D3の経過後の時刻t3で、ランプヒータ480の600W駆動を開始し、第2の昇温期間D4の間ランプヒータ480の600W駆動を継続する。この場合、着座部410Tの表面温度は上述の第2の温度勾配で上昇される。
ランプヒータ480の600W駆動は、着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度(40℃)に達するまで行われる。ここで、ランプヒータ480の600W駆動時に、着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度になるときに想定される測定温度値が図11の目標温度となる。
着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度に達する時刻t4は、ヒータ制御テーブルにより定められた600W駆動の時間、および測定温度値がヒータ制御テーブルにより定められた目標温度に達するまでの時間のうち短い時間である。
第2の温度勾配は第1の温度勾配よりも緩やかである。これにより、着座部410Tの表面温度の変化に大きなオーバーシュートが生じることが防止される。
制御部210は、第2の昇温期間D4の経過後の時刻t4で、ランプヒータ480の低電力駆動を開始し、第1の維持期間D5の間ランプヒータ480の低電力駆動を継続する。それにより、着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度で一定となる。
本例では、使用者により設定された便座設定温度よりもやや高い温度まで着座部410Tの表面温度が上昇され、その温度は使用者の着座時まで維持される。したがって、使用者は、着座時に自己の設定した便座設定温度とほぼ同じ体感温度を得ることができる。
制御部210は、時刻t5で着座センサ290により使用者の便座部400への着座が検知された場合、低電力駆動の通電率を低下させ、第1の着座期間D6の間着座部410Tの表面温度が便座設定温度に低下するようにランプヒータ480の低電力駆動を継続する。本例では、第1の着座期間D6は約2分に設定される。
また、制御部210は、第1の着座期間D6の経過後の時刻t6で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の着座期間D7の間着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)に低下するようにランプヒータ480の低電力駆動を継続する。本例では、第2の着座期間D7は約2分に設定される。
制御部210は、第2の着座期間D7の経過後の時刻t7で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の維持期間D8の間着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)で一定となるようにランプヒータ480の低電力駆動を継続する。以下の説明では、第2の維持期間D8において一定に維持される期間着座部410Tの表面温度、すなわち便座設定温度よりもやや低い温度を維持温度と称する。
このように、本例では、使用者が便座部400に着座した後、制御部210が徐々に着座部410Tの表面温度を低下させる。それにより、使用者が低温やけどすることが防止される。
制御部210は、時刻t8で着座センサ290により使用者が便座部400から離れたことを検知すると、停止期間D9の間ランプヒータ480の駆動を停止する。それにより、着座部410Tの表面温度が低下する。
制御部210は、着座部410Tの表面温度が18℃に達した時刻t9で、再びランプヒータ480の低電力駆動を開始し、着座部410Tの表面温度が18℃で一定となるように待機期間D10の間ランプヒータ480の低電力駆動を維持する。
上記の第2の昇温期間D4において、制御部210はランプヒータ480の600W駆動を行っているが、制御部210はランプヒータ480を駆動する電力を放物線を描くように徐々に低下させてもよい(通電率のグラフ中の太い点線部参照)。
この場合、着座部410Tの表面温度を示すグラフ中の太い点線部に示すように、着座部410Tの表面温度が便座設定温度よりもやや高い温度に近づくにつれて、その温度勾配が徐々に緩やかになる。
このように温度勾配が徐々に緩やかになる場合、着座部410Tの温度変化により生じるオーバーシュートを十分に小さくすることができる。
本例では、使用者の便座部400への着座後、ランプヒータ480の駆動に用いる電力を調整することにより着座部410Tの表面温度を徐々に低下させているが、ランプヒータ480の駆動は使用者の便座部400への着座時に停止してもよい。この場合においても、使用者が低温やけどすることが防止される。
また、本例では、着座部410Tの表面温度を便座設定温度よりもやや高い温度まで上昇させているが、着座部410Tの表面温度の上昇は便座設定温度までとなるように行ってもよい。
(9) 制御部の動作
図19〜図24は、図3の制御部210の動作を示すフローチャートである。以下、図面に基づき制御部210の動作を説明する。
初めに、制御部210は、着座部410Tの表面温度が18℃となるようにランプヒータ480の低電力駆動を行う(ステップS101)。そこで、制御部210は入室検知センサ600により使用者のトイレットルームへの入室の有無を判別する(ステップS102)。
制御部210は、使用者が入室していない場合、測定温度値を取得し(ステップS201)、温度測定値が待機温度以上であるか否かを判別する(ステップS202)。
制御部210は、温度測定値が待機温度以上である場合、ランプヒータ480の低電力駆動を停止し(ステップS203)、ステップS201〜S203の動作を繰り返す。また、制御部210は、温度測定値が待機温度以上でない場合、ステップS101に戻る。
これらステップS101,S102,S201〜S203の動作(図19)が、上述の待機期間D1,D10の制御部210の動作に相当する。
ステップS102において、制御部210は、使用者が入室した場合、測定温度値を取得し(ステップS103)、その測定温度値に基づいて記憶部に記憶されたヒータ制御テーブルから1つのヒータ制御パターンを選択する(ステップS104)。
そこで、制御部210は、選択されたヒータ制御パターンにランプヒータ480の1200W駆動があるか否かを判別する(ステップS105)。さらに、制御部210は、ランプヒータ480の1200W駆動がない場合、ランプヒータ480の600W駆動があるか否かを判別する(ステップS211)。
ステップS105において、制御部210は、ランプヒータ480の1200W駆動がある場合、自己の有する計時部のタイマをオンし(ステップS111)、突入電流を低減するためにランプヒータ480の600W駆動を行う(ステップS112)。ここで、制御部210は選択されたヒータ制御テーブルに設定された時間が経過したか否かを判別する(ステップS113)。
これらステップS111〜S113の動作(図20)が、上述の突入電流低減期間D2の制御部210の動作に相当する。
なお、制御部210は、ステップS211においてランプヒータ480の600W駆動がある場合に後述のステップS121の動作を行い、ランプヒータ480の600W駆動がない場合に後述のステップS131の動作を行う。
ステップS113において、制御部210は、設定された時間が経過すると、タイマをリセットするとともに再度タイマをオンし(ステップS114)、ランプヒータ480の1200W駆動を行う(ステップS115)。ここで、制御部210は選択されたヒータ制御テーブルに設定された時間が経過したか否かを判別する(ステップS116)。
制御部210は、設定された時間が経過しない場合、測定温度値を取得し(ステップS221)、その測定温度値が切替温度以上であるか否かを判別する(ステップS222)。
制御部210は、測定温度値が切替温度以上でない場合、ステップS116の動作を繰り返す。
これらステップS114〜S116,S221,S222の動作(図20)が、上述の第1の昇温期間D3の制御部210の動作に相当する。
制御部210は、ステップS116において設定された時間が経過した場合、またはステップS222において測定温度値が切替温度以上である場合、タイマをリセットするとともに再度タイマをオンし(ステップS121)、ランプヒータ480の600W駆動を行う(ステップS122)。ここで、制御部210は選択されたヒータ制御テーブルに設定された時間が経過したか否かを判別する(ステップS123)。
制御部210は、設定された時間が経過しない場合、測定温度値を取得し(ステップS231)、その測定温度値が目標温度以上であるか否かを判別する(ステップS232)。
制御部210は、測定温度値が目標温度以上でない場合、ステップS123の動作を繰り返す。
これらステップS121〜S123,S231,S232の動作(図21)が、上述の第2の昇温期間D4の制御部210の動作に相当する。
制御部210は、ステップS123において設定された時間が経過した場合、またはステップS232において測定温度値が目標温度以上である場合、タイマをリセットするとともに着座センサ290により使用者の便座部400への着座を判別する(ステップS131)。
制御部210は、使用者が着座していない場合、ランプヒータ480の低電力駆動を行う(ステップS241)。そこで、制御部210は測定温度値を取得し(ステップS242)、温度測定値が目標温度以上であるか否かを判別する(ステップS243)。
制御部210は、温度測定値が目標温度以上である場合、ランプヒータ480の低電力駆動を停止し(ステップS244)、ステップS243の動作を繰り返す。また、制御部210は、温度測定値が目標温度以上でない場合、ステップS131の動作を繰り返す。
これらステップS131,S241〜S244の動作(図22)が、上述の第1の維持期間D5の制御部210の動作に相当する。
制御部210は、ステップS131において使用者が着座した場合、着座センサ290により使用者が便座部400から離れたか否かを判別する(ステップS141)。
そこで、制御部210は、使用者が便座部400から離れた場合にタイマをオンし(ステップS250a)、着座センサ290により再び使用者の便座部400への着座を判別する(ステップS250b)。
制御部210は、使用者が着座しない場合にタイマにより30秒が経過したか否かを判別する(ステップS250c)。制御部210は、30秒が経過しない場合、ステップS250bの動作を繰り返す。一方、制御部210は、30秒が経過した場合、ランプヒータ480の駆動を停止し(ステップS251)、ステップS101の動作を行う。
なお、制御部210は、ステップS250bにおいて使用者が便座部400に着座した場合に上記ステップS241の動作を行う。
このように、制御部210が上記ステップS250a〜S250cの動作を行うことにより、使用者は、瞬間的に便座部400から立ち上がった場合でも違和感を感じることなく再度便座部400に着座することができる。
また、1の使用者が便座部400から離れた後、他の使用者が即座に着座した場合でも、他の使用者は昇温された便座部400に着座することができる。
一方、制御部210は、ステップS141において使用者が便座部400から離れない場合に再度タイマをオンし(ステップS142)、ランプヒータ480の低電力駆動を行う(ステップS143)。ここで、制御部210はタイマにより2分間が経過したか否かを判別する(ステップS144)。
制御部210は、2分間が経過しない場合、測定温度値を取得し(ステップS261)、その測定温度値が便座設定温度以上であるか否かを判別する(ステップS262)。
制御部210は、測定温度値が便座設定温度以上である場合、ランプヒータ480の低電力駆動を停止し(ステップS263)、ステップS262の動作を繰り返す。また、制御部210は、温度測定値が便座設定温度以上でない場合、ステップS144の動作を繰り返す。
これらステップS141〜S144,S261〜S263の動作(図23)が、上述の第1の着座期間D6の制御部210の動作に相当する。
制御部210は、ステップS144において2分間が経過した場合、着座センサ290により使用者が便座部400から離れたか否かを判別する(ステップS151)。
そこで、制御部210は、使用者が便座部400から離れた場合にランプヒータ480の駆動を停止し(ステップS271)、ステップS101の動作を行う。
そこで、制御部210は、使用者が便座部400から離れた場合にタイマをオンし(ステップS270a)、着座センサ290により再び使用者の便座部400への着座を判別する(ステップS270b)。
制御部210は、使用者が着座しない場合にタイマにより30秒が経過したか否かを判別する(ステップS270c)。制御部210は、30秒が経過しない場合、ステップS270bの動作を繰り返す。一方、制御部210は、30秒が経過した場合、ランプヒータ480の駆動を停止し(ステップS251)、ステップS101の動作を行う。
なお、制御部210は、ステップS270bにおいて使用者が便座部400に着座した場合に上記ステップS241の動作を行う。
このように、制御部210が上記ステップS270a〜S270cの動作を行うことにより、使用者は、瞬間的に便座部400から立ち上がった場合でも違和感を感じることなく再度便座部400に着座することができる。
また、1の使用者が便座部400から離れた後、他の使用者が即座に着座した場合でも、他の使用者は昇温された便座部400に着座することができる。
一方、制御部210は、ステップS151において使用者が便座部400から離れない場合に、ランプヒータ480の低電力駆動を行う(ステップS152)。そして、制御部210は、測定温度値を取得し(ステップS153)、その測定温度値が維持温度以上であるか否かを判別する(ステップS154)。
制御部210は、測定温度値が維持温度以上である場合、ランプヒータ480の低電力駆動を停止し(ステップS155)、ステップS154の動作を繰り返す。また、制御部210は、温度測定値が維持温度以上でない場合、ステップS151の動作を繰り返す。
これらステップS151〜S155の動作(図24)が、上述の第2の着座期間D7および第2の維持期間D8の制御部210の動作に相当する。
なお、ステップS151とステップS152との間には、ステップS142〜S144およびS261〜S263と同様の動作が挿入されてもよい。
上記中ステップS101,S102,S201〜S203,S251,S271の動作(図19、図23および図24)が、上述の停止期間D9の制御部210の動作に相当する。
(10) 効果
以上のように、本実施の形態に係る便座装置100においては、便座部400の温度を常に便座設定温度に維持する必要がない。したがって、使用者がトイレットルームに入室しない待機期間D1,D10(図18)においては、ランプヒータ480を駆動するための電流を十分に小さくすることができる。
これにより、便座装置100の暖房機能をオンしている場合でも、消費電力が十分に低減される。その結果、省エネルギー化が実現される。
本発明者は、着座部410Tの表面温度を常に便座設定温度に維持する便座装置の消費電力(ランプヒータ480の駆動に用いる電力)について実験を行ったところ、その消費電力は約125W/hであった。これに対し、本実施の形態に係る便座装置100の消費電力(ランプヒータ480の駆動に用いる電力)は、約42W/hに低減された。
また、便座装置100の制御部210は、ランプヒータ480の1200W駆動を行うことにより着座部410Tの表面温度を限界温度まで短時間で上昇させる。その後、制御部210はランプヒータ480の600W駆動を行い、1200W駆動時よりも緩やかな温度勾配で着座部410Tの表面温度を上昇させる。
これにより、着座部410Tの温度変化に生じるオーバーシュートが十分に低減される。その結果、着座部410Tの表面温度が短時間で正確に上昇されるとともに、便座設定温度で安定化される。
(11) 他の構成例
(11−a)
本実施の形態において、ランプヒータ480の駆動は、約1200Wおよび約600Wの電力ならびに1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力を用いて行っているが、ランプヒータ480の駆動に用いる電力はこれらに限られない。ランプヒータ480の駆動に用いる電力はその定格電力に応じて設定してもよい。
(11−b)
本実施の形態では、着座部410Tの表面温度を上昇させるためにランプヒータ480を用いているが、着座部410Tの表面温度を瞬時に上昇させることができるのであれば、ランプヒータ480に代えて、電熱線を備えるヒータを用いてもよいし、帯状の抵抗体を備えるヒータを用いてもよいし、面状のヒータを用いてもよい。
以下、着座部410Tの表面温度を上昇させるために、ランプヒータ480に代えて、電熱線を備えるヒータを用いる場合の構成を説明する。
本例では、上部便座ケーシング410の内面に、電熱線を備えるシート状の加熱ユニットが貼り付けられる。
図25は、電熱線を用いた着座部410Tの加熱ユニットの一例を示す図である。図25(a)に加熱ユニット480Uの上面図が示され、図25(b)に図25(a)におけるQ1−Q1線断面図が示されている。
図25(a)および図25(b)に示すように、加熱ユニット480Uは、線状ヒータ483および2枚のアルミニウム薄膜484a,484bからなる。
具体的には、線状ヒータ483を均等な間隔で上部便座ケーシング410の下面全体にわたって蛇行するように配置し、配置した線状ヒータ483を上部便座ケーシング410とほぼ同じ形状を有する2枚のアルミニウム薄膜484a,484bで挟み込み、それらを高い耐熱性を有する接着剤(高温接着剤)で貼り合わせることにより、加熱ユニット480Uが作製される。
線状ヒータ483は、芯線483a、発熱線483bおよび被覆チューブ483cを含む。線状ヒータ483においては、芯線483aに発熱線483bが巻回されている。さらに、発熱線483bが巻回された芯線483aが、被覆チューブ483cにより被覆されている。
ここで、被覆チューブ483cは、耐熱性の高いフッ素樹脂等により形成される。これにより、発熱線483bおよび芯線483aとアルミニウム薄膜484a,484bとの間の電気的絶縁が確保される。
被覆チューブ483cは、フッ素樹脂に代えて、シリコンゴムにより形成されてもよい。この場合においても、発熱線483bおよび芯線483aが耐熱性の高いシリコンゴムにより被覆されることにより、発熱線483bおよび芯線483aとアルミニウム薄膜484a,484bとの間の電気的絶縁が確保される。
被覆チューブ483cは、発熱線483bおよび芯線483aとアルミニウム薄膜484aとの間の電気的絶縁を確保することができるとともに、高い耐熱性を有するのであれば、フッ素樹脂およびシリコンゴム以外の材料により形成してもよい。
ただし、被覆チューブ483cを構成する材料には、例えば加熱ユニット480Uを1000W〜1200Wで急激に駆動する際に、発熱体483bから発生される熱の衝撃に十分に耐えることができる耐熱性が求められる。
図26は、図25の加熱ユニット480Uを便座部400Aに取り付けた様子を示す概略図である。図26に示すように、上部便座ケーシング410の内面(下面)に加熱ユニット480Uが貼り付けられる。
この状態で、加熱ユニット480Uから引き出された線状ヒータ483はヒータ駆動部230に接続される。ヒータ駆動部230が線状ヒータ483に電圧を印加することにより線状ヒータ483の発熱線483bに電流が流れる。それにより、発熱線483bが熱を発生する。発熱線483bから発生された熱は被覆チューブ483cを介して外部へ放出される。放出された熱は、熱伝導性に優れたアルミニウム薄膜484a,484bの全体に迅速に伝達される。それにより、上部便座ケーシング410の全体が加熱される。
ここで、本例では、線状ヒータ483が2枚のアルミニウム薄膜484a,484bにより挟み込まれているが、線状ヒータ483を挟み込む薄膜としては、アルミニウム薄膜484a,484bに代えて、銅薄膜等の熱伝導性に優れた金属薄膜を用いてもよい。この場合にも、線状ヒータ483から放出される熱が金属薄膜の全体に迅速に伝達される。
本例の便座部400Aにおいても、上部便座ケーシング410の下面にサーミスタ411が設けられている。サーミスタ411は、図3の例と同様に、加熱ユニット480U(線状ヒータ483)の駆動時における温度調節のために用いられる。
図27(a)に図26の便座部400AのQ2−Q2線断面図が示され、図27(b)に図27(a)の一部拡大断面図が示されている。
図27(a)に示すように、本例の便座部400Aにおいては、上部便座ケーシング410の下面に、図示しない高い耐熱性を有する接着剤(高温接着剤)により加熱ユニット480Uが貼り付けられる。
なお、この接着時には、上部便座ケーシング410と加熱ユニット480Uとの間に空間ができないように留意する。これにより、上部便座ケーシング410と加熱ユニット480Uとの間の熱伝達効率の低下が防止される。
また、上部便座ケーシング410と加熱ユニット480Uとの貼り付けに用いる接着剤に代えて、高い耐熱性を有する粘着性のシートを用いてもよい。ただし、このような接着剤または粘着性のシートの厚みは、できる限り薄くすることが好ましい。これにより、上部便座ケーシング410と加熱ユニット480Uとの間の熱伝達効率の低下が十分に防止される。
図27(b)に示すように、本例の上部便座ケーシング410も、図6の上部便座ケーシング410と同様に、アルミニウム層410bの上面および下面に種々の層を形成することにより作製される。
アルミニウム層410bの上面には、アルマイト層410cおよび表面化粧層410dが順に形成される。アルマイト層410cが形成されることにより、アルミニウム層410bの上面の耐蝕性が向上される。表面化粧層410dは所定の塗料等により形成される。
本例では、アルミニウム層410bの下面にも、アルマイト層410cが形成される。これにより、加熱ユニット480Uの発熱線483bおよび芯線483aとアルミニウム層410bとの間の電気的導通が、上述の被覆チューブ483cおよびアルマイト層410cにより確実に遮断され、高い絶縁性を得ることができる。
なお、アルミニウム層410bの下面には、アルマイト層410cを設ける代わりに、ポリイミドまたはPET(ポリエチレンテレフタレート)からなるフィルムを貼り付けてもよい。この場合にも、加熱ユニット480Uの発熱線483bおよび芯線483aとアルミニウム層410bとの間の電気的導通が確実に遮断され、高い絶縁性を得ることができる。
ここで、本発明者は、上記の加熱ユニット480Uを表面積が約1200cm2 で板厚が1mmのアルミニウム製の上部便座ケーシング410に取り付け、加熱ユニット480Uを1200Wで駆動した。この場合、便座部400Aの昇温速度は2.5K/sであった。
冬季のようにトイレットルームの室温が低い場合、例えば便座部400Aの温度は約5℃程度に低下する場合がある。そこで、使用者がトイレットルームに入室してから加熱ユニット480Uを1200Wで駆動すると、便座部400Aは使用者がトイレットルームに入室してから10秒間で5℃から30℃まで昇温される。
これにより、本例の便座部400Aによれば、使用者はトイレットルームに入室してから10秒を経過した後に便座部400Aに着座することにより、着座時に冷たいと感じることが防止される。なお、図8の入室着座時間の調査結果に示されるように、使用者の約半数はトイレットルームに入室した後約10秒間経過してから便座部400に着座する。
したがって、本例の加熱ユニット480Uを用いる場合でも、使用者がトイレットルームに存在しない間、上部便座ケーシング410を保温する必要がなくなり、省エネルギー化が実現される。
なお、図8を用いて説明したように、使用者の多く(9割以上の使用者)は、トイレットルームに入室した後約6秒間経過してから便座部400に着座する。
本例の便座部400Aを備える便座装置100においても、制御部210に、図9〜図11に示すようなヒータ制御テーブルを予め記憶させる。
ヒータ制御テーブルの作成時には、上述のように、突入電流、限界温度、使用者の着座時における体感温度、加熱ユニット480Uの駆動に用いる電力およびその電力により着座部を便座設定温度で安定化させるために必要な時間、サーミスタ411による測定温度値と着座部の実際の表面温度との関係、ならびに低温やけど等を考慮して、加熱ユニット480Uを駆動する電力のタイムスケジュールを設定する。
それにより、本例の便座部400Aを備える便座装置100においても、図1〜図24で説明した便座部400を備える便座装置100と同様の効果を得ることができる。
なお、本例では芯線483aに発熱線483bを巻回したものを用いたが、線状ヒータ483(ヒータ線)そのものの熱容量を下げるとともに、線状ヒータ483の表面を平滑にして貼り付け密着度をよくするために、芯線自体を発熱線とする構成にしてもよい。
(11−c)
本実施の形態において、上部便座ケーシング410は、アルミニウムに代えて、例えばステンレス鋼により作製されてもよい。
ステンレス鋼は、アルミニウムよりも高い強度を有する。したがって、上部便座ケーシング410の厚みを、アルミニウムにより作製される上部便座ケーシング410の厚み(例えば、1mm)に比べて薄い厚み(例えば、0.5mm)にしても、使用者が十分に着座可能な強度を得ることができる。
また、上部便座ケーシング410の厚みを薄くすることにより、上部便座ケーシング410の熱容量を小さくすることができる。これにより、便座部400の昇温速度を向上させることができる。
それにより、待機温度をさらに低く設定することができる。または、使用者がトイレットルームに入室するまでの待機期間にランプヒータ480の駆動を停止することができる。その結果、消費電力がさらに低減され、十分な省エネルギー化が実現される。
(12) 請求項の各構成要素と実施の形態との対応関係
以上、本実施の形態に係る便座装置100およびトイレ装置1000においては、便座部400,400Uが便座部に相当し、ランプヒータ480および加熱ユニット480Uが発熱体に相当し、入室検知センサ600が人体検知部に相当し、制御部210およびヒータ駆動部230が制御部に相当し、着座部410Tの表面温度が便座部の温度に相当し、限界温度(29℃)が第1の温度に相当し、1200Wの電力が第1の電力に相当し、ヒータ制御パターンで設定された1200W駆動の継続時間が第1の時間に相当し、便座設定温度(34℃、36℃および38℃)が第2の温度に相当し、600Wの電力が第2の電力に相当し、ヒータ制御パターンで設定された600W駆動の継続時間が第2の時間に相当する。
サーミスタ411および温度測定部220が便座温度測定装置に相当し、ヒータ制御テーブルおよびヒータ制御パターンが便座温度測定装置により測定される温度と第1および第2の時間との対応関係に相当し、制御部210の含む記憶部が記憶部に相当し、0〜50Wの低電力が第3の電力に相当し、着座センサ290が着座検知部に相当する。