一般に果実類の中でも鮮度の低下が早い、桃、ぶどう、柿、等は表面が柔らかく、圧迫や擦り傷で損傷し易いことから、製品果実を保護する目的で、また、メロンやマンゴー等、更には野菜類に分類されるトマトやアボガド等の高級品も、表面の保護と共に贈答用に高級感を演出する目的で、最近は個単位でチューブ状になったポリオレフィン系樹脂の発泡キャップネットが用いられて来ている。
また、汎用品としてのリンゴ、梨、等の他、苺やサクランボ等は、数十個単位で深絞りの透明OPS容器に入れられた後、搬送時、損傷を受けない様に、箱詰め梱包時、発泡下敷シート、発泡中敷ネット、発泡中敷シート、更に上蓋として、製品果実を保護する目的で、箱の平面形状に合わせたポリオレフィン系樹脂の発泡シートや発泡中敷ネットが用いられて来ている。
特に、最近は国産の果実類に限らず、東南アジア、南米等の熱帯産の果実も多量に輸入され、また高級果実に限らず汎用な果実も消費者へ渡る前での損傷による廃棄を低減するために、個単位で発泡キャップネットで包装したり、発泡シートの下敷、中敷や発泡下敷ネットを施した箱に梱包して搬送されることが多くなり、物理的損傷による廃棄率は著しく減った。
しかし、果実類は採取された後、店頭、消費者に渡る段階でも生きていて呼吸をしていることで鮮度を維持おり、経時と共にその呼吸も少なくなり鮮度を失い、脱水、褐変、腐敗を生ずる。特に果実の皮が薄く、柔らかい桃やぶどう等は、鮮度の低下が早く、桃では、圧迫や擦り傷で、褐変、腐敗が進み、ぶどうでは、脱水、萎縮、脱粒が生じ、場合により黴が生じたりで、商品価値がなくなり店頭での廃棄率が高い。特に鮮度低下が早く、傷みの早い、桃、苺、脱渋後の柿等は、生産者、販売業者に限らず消費者にとっても購入後の賞味期限が短いことが問題となる。
この為、これら果実類の鮮度を少しでも維持する方法として、呼吸をコントロールする方法、所謂MA包装(Modified Atomsphere)、抗菌剤で雑菌の繁殖を抑える方法、或いは、遠赤外線やマイナスイオンの影響で、果実を活性化する方法等が提案されている。
例えば、特許文献1では、包装体となるフィルムに孔を断面積0.07cm2以下で設けている。また特許文献2では、フィルム自体に貫通孔は設けないが孔径に近い加工を施している。また特許文献3では、酸素透過度の高いフィルムと多層化して1000〜500000cc/m2・day・atmの酸素透過度を持つフィルムでの密封包装を提案している。
しかし、これら青果物の呼吸をコントロールする方法には、密封包装による問題点も有る。即ち、呼吸によって生ずる水分や青果物自体への付着水が結露して、個包装の内部に残り、水分に接した部分の青果物が褐変したり、雑菌繁殖の温床になり易いので好ましくない。この為、呼吸をコントロールしながら結露を解消する方法が検討されている。例えば特許文献4では、呼吸をコントロールするフィルムへの孔開けの孔径を大きくし、数を増し水分溜まりを防止する方法が提案されている。しかし、これでは青果物の呼吸のコントロール効果も半減し、結露防止も完全には行えず中途半端な機能となり、更なる改良が求められる。しかし、これら果実類の呼吸をコントロールするには、密封包装する必要が有り、生産者、販売業者には、大変な負担となる。そこで、特許文献4で見られる様なチャック付き袋や、特許文献5の袋が提案されている。何れも、呼吸をコントロールすることから密封を必要とする。この為、呼吸によって生ずる水分が結露して、所謂、汗かく状態となり、水分に接した部分の果実が褐変したり、雑菌繁殖の温床になり易く、好ましくない。
そこで、呼吸をコントロールしながら結露を解消する方法が検討され、特許文献6では、呼吸をコントロールするフィルムへの孔開けの孔径を大きくし、数を増し水分溜まりを防止する方法も提案されている。しかし、これでは青果物の呼吸のコントロール効果も半減し、結露防止も完全とは行えず、中途半端な機能となり、更なる改良が求められている。
一方、雑菌の繁殖を防ぐ方法として、例えば、特許文献7では、イソオシアン酸化合物(ワサビ香気成分)、ヒノキ抽出液等、植物由来の抗菌剤を用いフィルム、トレーに塗工したり、練り込んだり、特許文献8では、同様にイソオシアン酸化合物(ワサビ香気成分)と界面活性剤を用いゲル化して抗菌性能を持続させたり、或いは特許文献9の様に、カテキン、タンニン、或いはポリフェノールを無機多孔質に担持させて、樹脂に練り込み、シートやトレー、容器にする方法が提案されている。
これらの植物由来の抗菌剤は、食の安全に関しては問題ないものの、一般的には水溶性で有る。この為、個包装された果実類とこれらを塗工、或いは包含した包装材が接触したりすると、水分を介してその成分が移り、果実類の味が変わり好ましくなく、また、結露水に抗菌剤が溶け込み、鮮度保持効果が低下したり、直接果実類に触れても味が変化することから、好ましくない。
この為、これらの方法とは別に青果物や動物性食材を対象に、無機セラミック材料や、ミネラル成分を用い、遠赤外線の発生やマイナスイオンの影響で、果実類の鮮度を維持する方法も提案されている。
例えば、特許文献10では、炭酸リチウム、苦灰石、角閃石を微粉砕して樹脂に練り込みシート、ネット、等を作り、鮮度保持効果を謳った製品が提案され、特許文献11では、抗菌性ゼオライト、ミネラル分を練り込んだシート、不織布を鮮度保持包装材として用いる方法が提案されている。これらの方法では、果実類の鮮度保持の機構が明確ではないものの、其れなりに効果が期待出来るが、問題はその包装材の現実的な作り方にある。即ち、これら無機セラミック類や、ミネラル分を微粉砕し、可塑化させた樹脂中に練り込む場合、金属から出来ている押出機、ダイス等の生産機械は、研磨剤を入れて生産するのと同じで、高温押出しにより磨耗が激しく、更にミネラル分が金属腐食を促進し、トレー、容器、フィルムの量産化ではメンテナンス頻度が高くなりコストが上がり、現実的には難しい。
以上説明した通り、果実類の損傷を保護し、鮮度を保持する効果が有り、賞味期限を延ばし、廃棄率の低減が可能な包装資材が、生産者、販売業者に限らず、消費者からも求められていた。
一般に果実類の梱包、包装資材としては、製品果実の表面の皮に損傷を与えず、また、多種形状、寸法、重量に対応出来る発泡ネット及び発泡シートが用いられて来ている。一般に果実包装の材質としては、日々使い捨てられることから汎用樹脂が用いられ、一部ラップでPVCが用いられていることを除けば、ポリスチレン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)に代表されるポリオレフィン系樹脂、或いは再生ペット樹脂等が用いられて来ている。ここで、ポリスチレンや再生ペットは、ガラス転移温度(Tg)が常温より高く、発泡させても比較的に剛性が高く柔軟性に欠け、また発泡体表面のササクレが果実の表皮を傷付け易く好ましくない。
そして、本発明の食品鮮度保持用発泡ネット及び発泡シートは、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び塩化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機塩と、グリセリンの脂肪酸エステルを含む、或いはナトリウムイオンとマグネシウムイオンを分散させたポリオレフィン系樹脂からなるものである。
そのポリオレフィン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(h−PP)、ブロックポリプロピレン(b−PP)、ランダムポリプロピレン(r−PP)に代表されるポリプロピレン系樹脂、及び、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)に代表されるポリエチレン系樹脂が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、一種を単独で、或いは二種以上の混合物として使用できる。
また、これらポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂を主体とし、さらに他のポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系エラストマー、ゴム成分等を配合して所望の物性を得ることも可能である。また、必要に応じて着色剤、可塑剤、帯電防止剤等の各種添加剤を配合しても良い。
第一及び第三の本発明でポリオレフィン系樹脂に添加される無機塩は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び塩化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機塩である。ここで用いられる無機塩としては、上記塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウムを夫々単独で含んでもよいが、二種、あるいは三種、あるいは四種全てを含んでいてもよい。
また、同様に第一及び第三の本発明でポリオレフィン系樹脂に添加されるグリセリンの脂肪酸エステルは、通常、グリセリンと炭素数が8以上で18程度以下、具体的には、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、などの高級脂肪酸とのモノエステル(モノグセライド)、ジエステル(ジグリセライド)、若しくはジグリセリンなどのポリグリセリンと高級脂肪酸のエステル、或いはそれらの混合物が挙げられる。
発泡方法は特に限定されない。例えば、ADCA(アゾ・ジカルボ・アミド)、重曹(NaHCO3)・クエン酸系或いはポリカルボン酸塩系に代表される化学発泡剤を、原粉のまま又はマスターバッチとして樹脂に配合する方法、或いは、CO2ガス、N2ガス、又は、ブタンやペンタン等の石油炭化水素系ガスを可塑化させた樹脂中へ混練する方法がある。特に、重曹クエン酸塩やタルク等の各種の発泡核剤を樹脂中に微量配合することで、均一な微細発泡を促すことが出来る。
本発明の第一の発明は、発泡キャップネットと発泡中敷ネットを対象とした発泡ネットで、その発泡ストランド径は1.5〜20.0mm、発泡倍率は30〜70倍と規定している。ストランド径が1.5mm未満の場合は、発泡倍率にもよるが、低倍率になる程伸縮性がなくなり、果実に被せる際の延伸で細くなり切断することが多くなる。一方、ストランド径が20.0mmを超える場合は、ネットが嵩張り、製品果実の梱包スペースを狭めると共に、搬送や保管コストの点で好ましくない。従って、発泡ネットの発泡ストランド径は1.5〜20.0mmであり、発泡キャップネットとしては特に2.0〜2.5mm径の円又は楕円のストランドが好ましく、発泡中敷ネットとしては厚さ2.0〜5.0mm、幅10.0〜15.0mmの扁平ストランドが好ましい。また、発泡倍率が30倍未満の場合は、果実類の大きさに対応して覆うことは可能だが、クッション性がなく、特に表皮が柔らかい果実には不適である。一方、発泡倍率が70倍を超える場合は、果実類を覆う包装は可能だが、強度的に弱くなり、ネットが嵩張り、製品果実の梱包スペースを狭めるので好ましくない。従って、発泡ネットの発泡倍率は30〜70倍であり、特に50〜65倍が好ましい。
又、本発明の第二の発明は、発泡キャップネットを対象とした発泡ネットで、その発泡ストランド径は1.5〜3.0mm、発泡倍率は20〜60倍を規定している。ストランド径が1.5mm未満の場合は、発泡倍率にもよるが、低倍率になる程伸縮性がなくなり、果実に被せる際の延伸で細くなり切断することが多くなる。一方、ストランド径が3.0mmを超える場合は、ネットが嵩張り、製品果実の梱包スペースを狭めると共に、搬送や保管コストの点で好ましくない。従って、発泡ネットの発泡ストランド径は1.5〜3.0mmであり、発泡キャップネットとしては特に2.0〜2.5mm径の円又は楕円のストランドが好ましい。また、発泡倍率が20倍未満の場合は、果実類の大きさに対応して覆うことは可能だが、クッション性がなく、特に表皮が柔らかい果実には不適である。一方、発泡倍率が60倍を超える場合は、果実類を覆う包装は可能だが、ネットが嵩張り、製品果実の梱包スペースを狭めるので好ましくない。従って、発泡キャップネットの発泡倍率は20〜60倍であり、特に45〜55倍が好ましい。
本発明の第三及び第四の発明である発泡シートは、厚さが2.0〜12.0mm、発泡倍率が20〜60倍である。発泡シートの厚さが2.0mm未満の場合は、発泡倍率にもよるが梱包箱の下敷及び中敷として用いてその上に果実類を並べると、果実の形状、重さ、表皮の状態によってはクッション性がなくなる。一方、厚さが12.0mmを超える場合は、嵩張って梱包中の果実類スペースを狭めることになる。従って、本発明の発泡シートの厚さは2.0〜12.0mmであり、更に好ましくは5.0〜8.0mmである。発泡シートの形状について、一般的には平板状のシートが用いられるが、場合によっては波板状、凹凸状に加工したものも使用可能である。
また、発泡シートの発泡倍率が20倍未満の場合は、果実類の大きさや重さによってはクッション性がなく、果実の保護には不適となる。一方、発泡倍率が60倍を超える場合は、シート自体が嵩張り、製品果実のスペースを狭めるので好ましくない。従って、本発明に用いる発泡シートの発泡倍率は20〜60倍であり、更に好ましくは40〜50倍である。
本発明の発泡ネット及び発泡シートの作製方法は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び塩化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機塩10〜1000ppmと、グリセリンの脂肪酸エステル1000〜20000ppmを含み分散させたり、或いはナトリウムイオンとマグネシウムイオンを50〜1000ppm分散させることにより作製する。具体的には、まず、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機塩と、グリセリンの脂肪酸エステルを高濃度で、ポリオレフィン系樹脂中に添加して押出し、MB(マスターバッチ)ペレットとして製作したり、或いは、MgCl2及びNaClを含む高濃度水溶液を調製し、これをポリオレフィン系樹脂に添加して押出し、MBペレットを作製する。ここで、高濃度水溶液中のMgCl2/NaCl(質量比)は1.5〜2.8が好ましい。
そして、ポリオレフィン系樹脂に上記MBペレットを所定量配合し、均一に混合した樹脂混合物として押出機へ供給する。発泡ネットの場合は、例えば、多数のストランド孔が円周方向に設置された回転丸ダイスが取り付けられた単軸押出機或いはタンデム押出機を用い、上記の樹脂混合物を溶融混練し、可塑化させた段階で先に述べた所望の発泡方法に従って製造できる。また発泡シートの場合は、Tダイス或いは通常の丸ダイスが取り付けられた押出機で容易に作製できる。
第一及び第三の本発明では、ポリオレフィン系樹脂に含まれる無機塩の量を10〜1000ppmに、グリセリンの脂肪酸エステルの量を1000〜20000ppmに規定している。
この無機塩は、同時に添加されるグリセリンの脂肪酸エステルとの組み合わせで、抗菌効果と共に鮮度保持効果の一つの指標であるQRS値を向上させる。即ち、発泡ネットや発泡シートへの成形時、ポリオレフィン系樹脂中に含まれるグリセリンの脂肪酸エステルの一部が、無機塩からの微量のナトリウムイオン、マグネシウムイオン、等を伴ってブリードアウトして表面へ移動し、抗菌効果と共に鮮度保持効果を発揮する。又、ポリオレフィン系樹脂を用いていることから、Tgが常時常温以下に有り、継続してこれら添加成分が表面へ移動、供給され、抗菌効果と共に鮮度保持効果が安定して持続される。
ここで無機塩の添加量が10ppm未満では抗菌性能が少なく鮮度保持効果の指標であるQRS値も低く効果がなく、また1000ppmを超えるとイオンの形より塩としての形態が強くなり抗菌性能は一定となり、QRS値に示される鮮度保持効果の大幅な性能向上は期待出来ない。この為、無機塩の量は、10〜1000ppmが好ましく、より望ましくは200〜500ppmの範囲が推奨される。
一方、グリセリンの脂肪酸エステルの添加量が、1000〜20000ppmの範囲にあると、抗菌効果と共に鮮度保持効果の一つの指標であるQRS値が向上する。グリセリンの脂肪酸エステルを含む防曇剤の量が1000ppm未満ではポリオレフィン系樹脂中から発泡ネット、発泡シート表面へのブリートアウト量が不足し、継続した鮮度保持性能維持が難しく、一方、20000ppmを超えると、表面に移行するブリードアウト量が多くなり過ぎ、発泡ネット、発泡シート表面がベタ付き好ましくない。又、製造時、気化し排気ラインを汚染し好ましくない。従って、グリセリンの脂肪酸エステルを含む防曇剤の量は、1000〜20000ppmが好ましく、望ましくは5000〜10000ppmが推奨される。
第一及び第三の本発明では、発泡ネット又は発泡シート中のナトリウムイオン及びマグネシウムイオンの濃度は、50〜1000ppmである。このような濃度になるように、ポリオレフィン樹脂に対する上記MBペレットの配合量を決定する必要がある。
以上説明した鮮度保持機能を発現する発泡ネット及び発泡シートにおけるMgCl2/NaCl(質量比)の好適範囲と、ナトリウムイオン及びマグネシウムイオンの濃度の範囲は、鮮度保持効果の一つの判断基準であるQRS値を向上させる点で非常に有効である。例えば、ナトリウムイオンとマグネシウムイオンの濃度が50ppm未満の場合は、QRS値が40000以下となり、鮮度保持効果が発現しない。実際、桃、ぶどう、柿の評価において、従来の発泡ネット、発泡シート、ダンボールと比較して鮮度保持の差が認められなかった。一方、その濃度が1000ppmを超える場合は、QRS値は48000を示してそれ以上は上がらず、鮮度保持効果は変わらない。実際、桃、ぶどう、柿の評価でにおいて、従来の発泡ネット、発泡シート、ダンボールと比較して、桃、ぶどうは2週間程度、柿は3週間程度、鮮度保持の効果が認められた。従って、発泡ネット及び発泡シートのナトリウムイオンとマグネシウムイオンの濃度は50〜1000ppmであり、更に好ましくは400〜1000ppmである。一般的なフィルムでのナトリウムイオンとマグネシウムイオンの好ましい分散濃度は50〜500ppmだが、本発明の発泡体では材料中でのイオンの分散が希薄となり、発泡ネットでは更に拡張して用いることから、400〜1000ppmが好ましい範囲である。
ここで、鮮度保持効果を示す指標であるQRS[Quantum Resonance Spectrometer(量子共鳴分析器)]値は、生体の持つ微弱な電磁エネルギー情報(細胞レベル)の測定、分析を被検体と測定者の間で起こる生体共鳴を利用し、生体共鳴による測定者の生体電磁反応の変化を生体インピーダンス(抵抗)の変化として捕らえたものである。一般に、被対象物に対して40,000の以上のQRS値を示せば、鮮度保持機能を発現すると判断出来る。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。以下の記載において「部」は「質量部」を意味する。
(1)第一の発明に係る比較例、実施例
本発明で、第一の発明に付いて以下の通り作成、評価し、その結果を比較例1〜8を表1に、実施例1〜4を表2に示す。
基材樹脂として低密度ポリエチレン(JA414A:日本ポリエチレン(株)製)90部、ホモポリプロピレン(F704N:プライムポリマー(株)製)10部、発泡核剤(EE275:永和化成(株)製)1.4部を配合した。
ここに無機塩して、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム(和光純薬工業(株)製)の何れか、或いは組み合わせ5〜2000ppmとなる様配合し、塩化マグネシウムと塩化ナトリウムの混合物では(MgCl2/NaCl)質量比=2となる様に、又、塩化カルシウムと塩化ナトリウムの混合物では(CaCl2/NaCl)質量比=2で、塩化ナトリウムと塩化カリウムの混合物では(NaCl/KCl)重量比=1で配合し、更にグリセリンの脂肪酸エステルとして、グリセリンモノミリスチレート或いはグリセリンモノパルミチレート(理研ビタミン(株)製)を500〜25000ppmとなる様配合した。
この混合物を、45Φの外周に多数のストランド孔が二重の円周に設置され交互に反対側に回転する丸ダイスが取り付けられた50Φ単軸押出機(中谷機械(株)製)を用いて、180〜200℃で可塑化させ、その可塑化段階で押出機途中にブタンガス5〜10部を圧入して、丸ダイスから押し出し、発泡倍率が表1、表2の各値となる様に発泡キャップネットを試作した。また、ストランド径については、引き巻き取り速度を変化させて表1、表2の各値となる様にした。
また、同様に混合物を、125Φの外周に複数のストランド孔が二重の円周に設置され交互に反対側に回転する丸ダイスが取り付けられた90Φ単軸タンデム型押出機(三菱重工(株)製)を用いて、180〜200℃で可塑化させ、一段目押出機途中にブタンガスとペンタンガス混合ガスを8〜15部を圧入して、引き巻き取り速度を変化させて、厚さ1.5〜5.0mm前後、幅10.0〜20.0mm前後の扁平ストランドを表1の比較例3、4、表2の実施例5、6の各値となる様に押し出し、発泡中敷ネットを試作した。
このようにして得た発泡キャップネット及び発泡中敷ネットのサンプルについて、鮮度保持効果の指標の一つとしてJISZ2801(JIS番号を確認しました)に準じた抗菌試験を大腸菌(Escherichia coli)を用いて行った。試作した発泡キャップネット及び発泡中敷ネットの一部を、熱板プレスで120℃、50Kg/cm2、2秒でフィルム化してサンプルとし、この際、サンプルフィルム表面の状態を保つためにアルコールによる拭き取りは行わなかった。
1/500普通ブイヨン培地に大腸菌(Escherichia coli)を規定数量入れて4cm角のサンプルフィルム表面に滴下してPEフィルムと挟み込み、35℃、24時間経過した後にサンプルフィルム表面を洗浄し、普通ブイヨン培地を回収し、普通寒天培地を用いて菌数を測定した。またPEフィルム同士に挟み込んだサンプルをControlとして、24時間後の実験結果と比較した。ここでは、顕微鏡下で菌を1つ1つ数えるのは困難なため、コロニーを測定しそれを生菌数CFU(colony forming unit)とし、結果はn=3の平均値として、表1、表2に示した。
また、このようにして得た発泡キャップネット及び発泡中敷ネットのサンプルについて、鮮度保持効果を示す指標であるQRS値を量子共鳴分析器を用いて測定し、その結果を表1、表2に示した。
またストランド強度・クッション性と共にネットのベタ付き性を評価する為に、これら発泡キャップネット及び発泡中敷ネットサンプル及び従来の発泡ネットを直径100mm径の球に手で被せ、破損状態を目視判断した。結果を表1、表2に示す。表中、「○」は問題なく使用可能であったことを示し、「△」は一部不適合であったことを示し、「×」は不適合であったことを示す。
更に実用上の鮮度保持効果を評価する為に、これら発泡キャップネットサンプル及び従来の発泡ネットを桃の箱詰め梱包時に個包装として覆い、12日間鮮度維持状態を観察した。
一方、試作した発泡中敷ネットサンプルに付いては、桃への下敷きと上載せで、同様に12日間鮮度維持状態を観察した。
表中、「○」は桃の表面に褐変が見られず、果肉が一定の硬度を持ち、賞味可能であったことを示し、「△」は一部不適合であったことを示し、「×」は不適合であったことを示す。
また同様に実用上の鮮度保持効果を評価する為に、これら発泡キャップネットサンプル及び従来の発泡ネットをスチューベン品種のぶどうに被せ、21日間鮮度維持状態を観察した。一方、試作した発泡中敷ネットサンプルに付いては、ぶどうの下敷きと上載せで、同様に21日間鮮度維持状態を観察した。
表中、「○」はぶどうに脱粒が認められず、果肉が一定の弾力を持ち、賞味可能であったことを示し、「△」は一部不適合であったことを示し、「×」は不適合であったことを示す。
表1から明らかように発泡キャップネット及び発泡中敷ネットで、発泡倍率及びストランド径が、規定する範囲以外では、ストランド強度、クッション性に問題が有り、無機塩とグリセリンの脂肪酸エステルの配合量が適正範囲外では、十分な抗菌性能を示すことが出来ず、鮮度保持効果を示すことが出来なかった。また無機塩或いはグリセリンの脂肪酸エステルの配合量が適正範囲以上では、発泡キャップネットのベタ付きが見られ好ましくなかった。表1中ストランド径でa*bとあるのは、厚さamm幅がbmmであることを示す。
表2から明らかように発泡キャップネットに無機塩とグリセリンの脂肪酸エステルを含む実施例1〜4及び発泡中敷ネットの実施例5〜6は、発泡ネットとして求められる物性は問題なく、十分な抗菌性能と共に鮮度保持効果を示した。
(2)第二の発明に係る比較例、実施例
本発明で、第二の発明に付いて以下の通り作成、評価し、その結果を比較例9〜12、実施例7〜9として表3に示す。
基材樹脂として低密度ポリエチレン(JA414A:日本ポリエチレン(株)製)90部、ホモポリプロピレン(F704N:プライムポリマー(株)(株)製)10部、発泡核剤(EE275:永和化成(株)製)1.4部を配合し、ここにナトリウムイオンとマグネシウムイオンを分散させたポリエチレン系MB(登録商標“スパッシュ”MB:(株)ミカサ製)を1〜25部添加し、ナトリウムイオンとマグネシウムイオンの含有率が表3の各値になる様にして、均一に混合した(MgCl2/NaCl(質量比)=2.2)。
この混合物を、45Φの外周に多数のストランド孔が二重の円周に設置され交互に反対側に回転する丸ダイスが取り付けられた50Φ単軸押出機(中谷機械(株)製)を用いて、180〜200℃で可塑化させ、その可塑化段階で押出機途中にブタンガス5〜10部を圧入して、丸ダイスから押し出し、発泡倍率が表3の各値となる様に発泡させた。また、ストランド径については、引き巻き取り速度を変化させて表3の各値となる様にした。
このようにして得た発泡ネットのサンプルについて、鮮度保持効果を示す指標であるQRS値を量子共鳴分析器を用いて測定し、その結果を表3に示す。
またストランド強度・クッション性を評価する為に、これらサンプル及び従来の発泡ネットを直径100mm径の球に手で被せ、破損状態を目視判断した。結果を表3に示す。表中、「○」は問題なく使用可能であったことを示し、「△」は一部不適合であったことを示し、「×」は不適合であったことを示す。
また鮮度保持効果を評価する為に、これらサンプル及び従来の発泡ネットを桃の箱詰め梱包時に個包装として覆い、12日間鮮度維持状態を観察した。表中、「○」は桃の表面に褐変が見られず、果肉が一定の硬度を持ち、賞味可能であったことを示し、「△」は一部不適合であったことを示し、「×」は不適合であったことを示す。
また鮮度保持効果を評価する為に、これらサンプル及び従来の発泡ネットをスチューベン品種のぶどうに被せ、21日間鮮度維持状態を観察した。表中、「○」はぶどうに脱粒が認められず、果肉が一定の弾力を持ち、賞味可能であったことを示し、「△」は一部不適合であったことを示し、「×」は不適合であったことを示す。
表3に示す様に、従来の発泡ネットや、ナトリウムイオンとマグネシウムイオンの含有量が40ppmの場合は、鮮度保持効果が不適合であった。また、発泡倍率が19倍、61倍の場合や、発泡ストランド径が1.2mm、1.4mm、3.1mmの場合は、ストランド強度、クッション性が不適合であった。
(3)第三の発明に係る比較例、実施例
本発明で、第三の発明に付いて以下の通り作成、評価し、その結果を比較例13〜20を表4に、実施例10〜13を表5に示す。
基材樹脂として低密度ポリエチレン(JA414A:日本ポリエチレン(株)製)85部、高密度ポリエチレン(2100J:プライムポリマー(株)製)15部、発泡核剤(ハイドロセロール325:ベーリンガー(株)製)1.0部を配合した。
ここに無機塩して、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム(和光純薬工業(株)製)の何れか、或いは組み合わせ5〜2000ppmとなる様配合し、塩化マグネシウムと塩化ナトリウムの混合物では(MgCl2/NaCl)質量比=2となる様に、又、塩化カルシウムと塩化ナトリウムの混合物では(CaCl2/NaCl)質量比=2で、塩化ナトリウムと塩化カリウムの混合物では(NaCl/KCl)重量比=1で配合し、更にグリセリンの脂肪酸エステルとして、グリセリンモノミリスチレート或いはグリセリンモノパルミチレート(理研ビタミン(株)製)を500〜25000ppmとなる様配合した。
この混合物を120Φの丸ダイスが取り付けられた90Φ単軸押出機(池貝鉄工(株)製)を用いて、180〜200℃で可塑化させ、可塑化段階で押出機途中にブタン/ペンタン=50/50(体積比)ガス5〜10部を圧入して、丸ダイスから押し出し、発泡倍率が表4、表5の各値となる様に発泡させた。また、発泡シート厚さについては、引き巻き取り速度を変化させて表4、表5の各値となる様にした。
このようにして得た発泡シートのサンプルについて、鮮度保持効果の指標の一つとしてJISZ2801(JIS番号を確認しました)に準じた抗菌試験を大腸菌(Escherichia coli)を用いて行った。試作した発泡シートの一部を、熱板プレスで120℃、50Kg/cm2、2秒でフィルム化してサンプルとし、この際、サンプルフィルム表面の状態を保つためにアルコールによる拭き取りは行わなかった。
以下、抗菌試験の方法は、比較例1〜8、実施例1〜4と同様に行い、結果はn=3の平均値として、表4、表5に示した。
又、このようにして得た発泡シートのサンプルについて、鮮度保持効果を示す指標であるQRS値を量子共鳴分析器を用いて同様に測定し、その結果を表4、表5に示す。
また、発泡シートのクッション性を評価する為に、これらサンプル及び従来の発泡シートの上に直径80mm径、重さ300gの円柱錘を載せ、圧縮状態を目視判断した。その結果を表4、表5に示す。表中、「○」は問題なく使用可能であったことを示し、「△」は一部不適合であったことを示し、「×」は不適合であったことを示す。
また鮮度保持効果を評価する為に、これらサンプル及び従来の発泡シートを、脱渋後の柿の箱詰め梱包の下敷シート及び中間の中敷シートとして用い、3週間鮮度維持状態を観察した。その結果を表4、表5に示す。表中、「○」は問題なく使用可能であったことを示し、「△」は一部不適合であったことを示し、「×」は不適合であったことを示す。
表4から明らかように発泡シートで、発泡倍率及びシート厚みが、規定する範囲以外では、クッション性に問題が有り、無機塩とグリセリンの脂肪酸エステルの配合量が適正範囲外では、十分な抗菌性能を示すことが出来ず、鮮度保持効果を示すことが出来なかった。また無機塩或いはグリセリンの脂肪酸エステルの配合量が適正範囲以上では、発泡シートのベタ付きが見られ好ましくなかった。
表5から明らかように発泡シートに無機塩とグリセリンの脂肪酸エステルを含む実施例10〜13は、発泡シートとして求められる物性は問題なく、十分な抗菌性能と共に鮮度保持効果を示した。
(4)第四の発明に係る比較例、実施例
本発明で、第四の発明に付いて以下の通り作成、評価し、その結果を比較例21〜24、実施例14〜17を表6に示す。
基材樹脂として低密度ポリエチレン(JA414A:日本ポリエチレン(株)製)85部、高密度ポリエチレン(2100J:プライムポリマー(株)製)15部、発泡核剤(ハイドロセロール325:ベーリンガー(株)製)1.0部を配合し、ここにナトリウムイオンとマグネシウムイオンを分散させたポリエチレン系MB(登録商標“スパッシュ”MB:(株)ミカサ製)を1〜25部添加し、ナトリウムイオンとマグネシウムイオンの含有率が表6の各値になる様にして均一に混合した(MgCl2/NaCl(質量比)=2.2)。
この混合物を120Φの丸ダイスが取り付けられた90Φ単軸押出機(池貝鉄工(株)製)を用いて、180〜200℃で可塑化させ、可塑化段階で押出機途中にブタン/ペンタン=50/50(体積比)ガス5〜10部を圧入して、丸ダイスから押し出し、発泡倍率が表2の各値となる様に発泡させた。また、発泡シート厚さについては、引き巻き取り速度を変化させて表6の各値となる様にした。
このようにして得た発泡シートのサンプルについて、鮮度保持効果を示す指標であるQRS値を量子共鳴分析器を用いて同様に測定し、その結果を表6に示す。
また、発泡シートのクッション性を評価する為に、これらサンプル及び従来の発泡シートの上に直径80mm径、重さ300gの円柱錘を載せ、圧縮状態を目視判断した。結果を表6に示す。表中、「○」は問題なく使用可能であったことを示し、「△」は一部不適合であったことを示し、「×」は不適合であったことを示す。
また鮮度保持効果を評価する為に、これらサンプル及び従来の発泡シートを、脱渋後の柿の箱詰め梱包の下敷シート及び中間の中敷シートとして用い、3週間鮮度維持状態を観察した。結果を表6に示す。表中、「○」は問題なく使用可能であったことを示し、「△」は一部不適合であったことを示し、「×」は不適合であったことを示す。
表6に示す様に、従来の発泡ネットや、ナトリウムイオンとマグネシウムイオンの含有量が40ppmの場合は、鮮度保持効果が不適合であった。また、発泡倍率が12倍、18倍、61倍、64倍の場合や、発泡シート厚さが1.6mm、1.8mm、13.0mm、13.5mmの場合は、発泡シートのクッション性が不適合であった。