JP6210667B2 - 花粉症症状軽減作用を有するキクイモ抽出物 - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、キクイモを水で抽出して得た抽出液の他に、キクイモを70%水性エタノールで4日間放置して得た抽出液をろ過し、冷却下、光および空気から保護して貯蔵した抽出液が記載されている。この抽出液は、抽出溶媒の点で、本発明の抽出物と重複している。しかしながら、本発明のキクイモ抽出物は、イヌリン溶解度が約2%以下の抽出溶媒、例えば約60〜90%含水アルコールで、抽出した抽出液をろ過、精製し、これを濃縮、乾固して得られるものであり、当該キクイモ抽出液とは、物の組成においても形状においても全く異なる物である。
さらに、本発明の抽出物は、IgE抗体およびヒスタミンの産生抑制作用を示すものであり、従来の抽出物とは、作用効果においても全く異なっている。
これまで、IgE抗体およびヒスタミンの産生抑制作用を有し、花粉症の症状緩和効果を示すキクイモ抽出物については全く報告されておらず、示唆もされていない。
しかしながら、本発明で目的とする、IgE抗体およびヒスタミンの産生抑制作用を示す成分については、全く報告も示唆もされていない。本発明者らは、キクイモの主成分のイヌリン以外の成分に注目し、主成分のイヌリンをほとんど含まないか、あるいは極めて僅かしか含まない抽出物について研究を行った。
[1] キクイモ( Helianthus tuberosus)の抽出物であって、主成分のイヌリンをほとんど含まないか、あるいは極めて僅かしか含まない抽出物、
[2] IgE抗体およびヒスタミンの産生抑制作用を示し、花粉症の症状軽減効果を有することを特徴とする、[1]に記載の抽出物、
[3] キクイモ( Helianthus tuberosus)の塊茎またはその乾燥粉末を、イヌリン溶解度が約2%以下の抽出溶媒を用いて抽出して得られることを特徴とする、[1]に記載の抽出物、
[4] 抽出溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールの中から選ばれる1種の低級アルコールと水との混合物である、 [3]に記載の抽出物、
[5] 抽出溶媒が、約60〜90%含水メタノールまたは約60〜90%含水エタノールである、[4]に記載の抽出物、または、
[6] キクイモ( Helianthus tuberosus)の塊茎またはその乾燥粉末を、1倍〜100倍の、約60〜90%含水メタノールまたは約60〜90%含水エタノールで、4〜60度(摂氏) の温度条件で、0.5〜48時間、静置または攪拌して得られる抽出液をろ過、精製し、これを濃縮、乾固して得られる、 [5]に記載の抽出物、に関する。
また、本発明は、
[7] キクイモ( Helianthus tuberosus)の塊茎またはその乾燥粉末を、イヌリン溶解度が約2%以下の抽出溶媒を用いて抽出することを特徴とする、キクイモ抽出物の製造方法、
[8] 抽出溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールの中から選ばれる1種の低級アルコールと水との混合物である、[7]に記載のキクイモ抽出物の製造方法、[9] 抽出溶媒が、約60〜90%含水メタノールまたは約60〜90%含水エタノールである、[8]に記載のキクイモ抽出物の製造方法、および、
[10] キクイモ( Helianthus tuberosus)の塊茎またはその乾燥粉末を、1倍〜100倍の、約60〜90%含水メタノールまたは約60〜90%含水エタノールで、4〜60度(摂氏) の温度条件で、0.5〜48時間、静置または攪拌して得られる抽出液をろ過、精製し、これを濃縮、乾固することを特徴とする、[9]に記載のキクイモ抽出物の製造方法、に関する。
さらに、本発明は、
[11] [1]に記載のキクイモ抽出物を活性成分として含有する、食品組成物または医薬品組成物、
[12] 花粉症症状軽減効果を有する、[11]に記載の食品組成物または医薬品組成物、および、
[13] [1]に記載のキクイモ抽出物を活性成分として含有する、花粉症症状緩和剤、に関するものである。
本発明は、キクイモの抽出物であって、主成分のイヌリンをほとんど含まないか、あるいは極めて僅かしか含まない抽出物に関する。
キクイモとは、キク科ヒマワリ属の多年草で、塊茎をつくることを特徴とする植物であり、その主成分は多糖類のイヌリンを含む食物繊維で、通常のイモ類と異なり、デンプンをほとんど含まず、また、イヌリンが血糖低下作用を示す事などから、機能性食品の原料として健康維持など幅広い分野で注目されているものである。
キクイモの主成分のイヌリンは水溶性が極めて高く、一方、含水アルコールでは、アルコール濃度に比例して溶解性が低下する。
測定方法
キクイモ粉砕物に、10倍量の含水メタノールまたは含水エタノール(濃度:0−100%)を加え、室温で、2時間、攪拌して抽出液を得た。
抽出液を遠心分離(12,000rpm,15分,10℃)して上清を得た。
遠心分離前の抽出液と各上清に含まれるイヌリン量を、フェノール硫酸法によるフルクトース相当量で換算し、下式により溶解度を算出した。
溶解度={(上清のイヌリン量)/(遠心分離前の溶液のイヌリン量)}×100
結果
測定結果は表1に示すとおりである。
本発明は、この知見を基に成したものであり、キクイモの塊茎またはその乾燥粉末を、イヌリン溶解度が約2%以下の抽出溶媒、例えば約60〜90%含水アルコールを用いて抽出したことを特徴とするものである。
すなわち、キクイモの塊茎またはその乾燥粉末に、1倍〜100倍のイヌリン溶解度が約2%以下の抽出溶媒を加え、4〜60度(摂氏) の温度で、0.5〜48時間、静置または攪拌して粗抽出液を得る。その粗抽出液をろ過または遠心分離等の工程を経て得た精製抽出液を、エバポレーター等による減圧濃縮あるいはスプレードライ等の操作を加えることにより、本発明のキクイモ抽出物を製造する。
また、含水アルコールの濃度は、イヌリンの溶解度が約2%以下になる濃度であればどのような濃度でもよく、例えば、含水メタノールまたは含水エタノールの場合、約60%〜90%の範囲の中で適宜選択することができるが、約70〜80%が好ましい。
を、4.0〜9.0に調整することが好ましい。
本実験結果は、本発明のキクイモ抽出物が、顕著なIgE抗体およびヒスタミンの産生抑制作用を有し、優れた花粉症症状軽減効果を発揮することを示すものである。
また、医薬品とする場合は、適当な医薬品添加剤と組み合わせて、通常の調剤の手法に従って各種の剤形として用いることができる。このような剤形としては、例えば散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤等の固形製剤、水剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等の経口投与剤が挙げられる。
長野県、阿智村で栽培されたキクイモの塊茎を採取した。これを水洗後、乾燥機により乾燥し、粉砕機により粉砕して、キクイモ粉砕物を得た。
キクイモ粉砕物50gに70%メタノール300mLを加えたのち、4℃下で一晩撹拌抽出した。これを遠心分離(7500×g、10分間)して得た上清をエバポレーターに供して溶媒を除去し、キクイモ抽出物16.1gを得た。
実施例1の方法に準じて、抽出溶媒として70%エタノールを用いて、以下のように、キクイモ抽出物を得た。
キクイモ粉砕物5gに70%エタノール30mLを加えたのち、4℃下で一晩撹拌抽出した。これを遠心分離(7500×g、10分間)して得た上清をエバポレーターに供して溶媒を除去し、キクイモ抽出物2.89gを得た。
j 1感作誘導血中抗体価およびヒスタミン濃度測定試験
実施例1で得たキクイモ抽出物について、スギ花粉アレルゲンCry j 1感作によって誘導される血中抗体価およびヒスタミン濃度に対する、キクイモ抽出物の経口摂取の影響を測定した。
5週令の雌性BALB/cマウス(Charles River社)を3群に分け、その内の1群をノーマル群(無処置群)とし、残る2つの群に、スギ花粉アレルゲンCry j1感作処置をして、コントロール群およびキクイモ抽出物群とした。
コントロール群およびキクイモ抽出物群のマウスに、Cry j 1溶液(15μg/150μl)を0日後と7日後と14日後の3回、腹腔内注射して感作した。さらに28日後から14日間連日、1日1回、Cry j 1溶液(7μg/70μl)をマウスの鼻腔内に注入して経鼻感作を行った。
ノーマル群、コントロール群には基本飼料(MF飼料、オリエンタル酵母社)を、キクイモ抽出物群には、実施例1で得たキクイモ抽出物添加飼料(基本飼料の内、キクイモ抽出物を0.05%添加したもの)を給餌し、40日目まで継続した。なお、飼料摂取期間中は感作を維持させるため、1週間に1回、Cry j 1溶液(1.5μg/15μl)をマウスの鼻腔内に注入した。
試験期間中、5日間隔で15分あたりのひっかき回数を測定した。40日目において、30分あたりのくしゃみ回数を測定した。
試験終了後、腹部大静脈より採血し、血清中の総IgE抗体価、Cry j 1特異的IgE抗体価、およびヒスタミン濃度をELISA法で測定した。総IgEについては、アンチマウスIgE抗体でコーティングされたELISAマイクロプレートに上記血清を添加し、血清中のIgEを結合させ、ホースラディッシュのペルオキシダーゼ(HRP)を標識したアンチラビットIgG抗体で反応させ、基質о−フェニレンジアミン(OPD)による発色をマイクロプレートリーダーにて測定した。抗体価は490nmの吸光度(二次抗体の標識である、HRPの発色基質OPDの検出波長)によって評価した。Cry j 1特異的IgEについては、上記プロトコルにおいてビオチン化されたアンチマウスIgEモノクローナル抗体とホースラディッシュのペルオキシダーゼを標識したストレプトアビジンを使用した。ヒスタミンについては、ELISAキット(Abnоva社)によって濃度を測定した。ヒスタミン濃度は、濃度既知のヒスタミンの吸光度を縦軸に、濃度を横軸にとり、作成した検量線から算出した。
図1に示すように、25日目以降において、キクイモ抽出物群のひっかき回数がコントロール群と比較して顕著に低下した。
また、図2に示すように、40日目において、キクイモ抽出物群のくしゃみ回数がコントロール群と比較して顕著に低下した。
なお、図3に示すように、キクイモ抽出物群の血清中の総IgE抗体価およびCry j 1特異的IgE抗体価は、コントロール群と比較して有意に低い値を示した。(p<0.05)
また、図4に示すように、キクイモ抽出物群の血清中のヒスタミン濃度は、コントロール群と比較して有意に低い値を示した(p<0.05)。
Claims (4)
- キクイモ(Helianthus tuberosus)の塊茎を60〜90%含水メタノールまたは60〜90%含水エタノールを用いて抽出し、これを乾燥したキクイモ抽出物を活性成分として含有する、IgE抗体およびヒスタミンの産生抑制用ならびに花粉症症状軽減用の食品組成物または医薬品組成物。
- キクイモ(Helianthus tuberosus)の塊茎を60〜90%含水メタノールまたは60〜90%含水エタノールを用いて抽出し、これを乾燥したキクイモ抽出物。
- キクイモ(Helianthus tuberosus)の塊茎を60〜90%含水メタノールまたは60〜90%含水エタノールを用いて抽出し、これを乾燥する、IgE抗体およびヒスタミンの産生抑制用ならびに花粉症症状軽減用の食品組成物または医薬品組成物の活性成分として用いるための、キクイモ抽出物の製造方法。
- 請求項2に記載のキクイモ抽出物または請求項3に記載の製造方法により製造されたキクイモ抽出物を用いる、IgE抗体およびヒスタミンの産生抑制用ならびに花粉症症状軽減用の食品組成物または医薬品組成物の製造方法。
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