JP6209395B2 - 生体状態推定装置及びコンピュータプログラム - Google Patents

生体状態推定装置及びコンピュータプログラム Download PDF

Info

Publication number
JP6209395B2
JP6209395B2 JP2013175073A JP2013175073A JP6209395B2 JP 6209395 B2 JP6209395 B2 JP 6209395B2 JP 2013175073 A JP2013175073 A JP 2013175073A JP 2013175073 A JP2013175073 A JP 2013175073A JP 6209395 B2 JP6209395 B2 JP 6209395B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pulse wave
peripheral
value
state
index value
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013175073A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014193263A (ja
Inventor
藤田 悦則
悦則 藤田
小島 重行
重行 小島
小倉 由美
由美 小倉
宇大 小田
宇大 小田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Delta Tooling Co Ltd
Original Assignee
Delta Tooling Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Delta Tooling Co Ltd filed Critical Delta Tooling Co Ltd
Priority to JP2013175073A priority Critical patent/JP6209395B2/ja
Priority to PCT/JP2014/051727 priority patent/WO2014132722A1/ja
Publication of JP2014193263A publication Critical patent/JP2014193263A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6209395B2 publication Critical patent/JP6209395B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/40Detecting, measuring or recording for evaluating the nervous system
    • A61B5/4076Diagnosing or monitoring particular conditions of the nervous system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/02Detecting, measuring or recording pulse, heart rate, blood pressure or blood flow; Combined pulse/heart-rate/blood pressure determination; Evaluating a cardiovascular condition not otherwise provided for, e.g. using combinations of techniques provided for in this group with electrocardiography or electroauscultation; Heart catheters for measuring blood pressure
    • A61B5/024Detecting, measuring or recording pulse rate or heart rate
    • A61B5/0245Detecting, measuring or recording pulse rate or heart rate by using sensing means generating electric signals, i.e. ECG signals
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/16Devices for psychotechnics; Testing reaction times ; Devices for evaluating the psychological state
    • A61B5/18Devices for psychotechnics; Testing reaction times ; Devices for evaluating the psychological state for vehicle drivers or machine operators
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/48Other medical applications
    • A61B5/4806Sleep evaluation
    • A61B5/4809Sleep detection, i.e. determining whether a subject is asleep or not
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/72Signal processing specially adapted for physiological signals or for diagnostic purposes
    • A61B5/7235Details of waveform analysis
    • A61B5/7239Details of waveform analysis using differentiation including higher order derivatives

Description

本発明は、生体信号を用いて人の状態を推定する生体状態推定装置及びコンピュータプログラムに関する。
本出願人は、特許文献1において、人の上体から採取した主に心循環系の波動である生体信号の時系列波形から周波数の時系列波形を求め、さらに、周波数傾きの時系列波形、周波数変動の時系列波形を求めてこれらを周波数解析する手順を有する装置を開示している。周波数解析の際には、予め定めた機能調整信号、疲労受容信号及び活動調整信号に相当する各周波数のパワースペクトルを求める。そして、各パワースペクトルの時系列変化から人の状態を判定する。
また、本出願人は、特許文献2において、人の上体から採取した生体信号の時系列波形を用い、周波数解析して得られた対数パワースペクトル密度と対数周波数の関係において回帰直線を求め、この回帰直線の形等から人の状態をより正確に判定する技術を開示している。
特開2011−167362号公報 特開2012−179202号公報
上記した技術は、いずれも、人の上体の中で背部の体表面に生じる振動をエアクッションを介して検出して解析するものである。この背部の体表面に生じる振動である脈波(背部体表脈波(Aortic Pulse Wave(APW)))は、心臓と大動脈の運動から生じる圧力振動であり、心室の収縮期及び拡張期の情報と、循環の補助ポンプとなる血管壁の弾力情報を含んでいる。そして、心拍変動に伴う信号波形は交感神経系及び副交感神経系の神経活動情報(交感神経の代償作用を含んだ副交感神経系の活動情報)を含み、大動脈の揺動に伴う信号波形には交感神経活動の情報を含んでいる。
一方、例えば上記特許文献2に示されているように、背部体表脈波を解析するだけでなく、指尖容積脈波を周波数解析し、背部体表脈波及び指尖容積脈波の各解析結果を比較して人の状態を判定する手法も知られている。心臓の動きの特徴を捉える中枢系の生体信号情報である背部体表脈波と、末梢系の生体信号情報を捉える指尖容積脈波とは、所定の時間遅れをもって対応するのが通常であるが、心疾患患者等の場合には、背部体表脈波のみで心疾患特有の特徴が捉えられる場合があることから、解析結果における両者の乖離の程度を比較したものである。
しかし、背部体表脈波及び指尖容積脈波のそれぞれの解析結果同士を比較したものであり、両者の解析結果は、被験者が健康状態では近似しており、心臓付近に何らかの疾患のある被験者において乖離が生じることを開示している。つまり、人の基本的な健康状態の如何に拘わらず、覚醒度や注意力が低下した状態(覚低状態)にあるか否か、入眠予兆現象を生じたか否かといった日常活動の中での状態変化の推定を行う場合、従来の手法はいずれも、背部体表脈波のみか、あるいは、指尖容積脈波のみで行っており、両者を併せて推定することは行われていない。
本発明は、上記した点に鑑みなされたものであり、中枢系生体信号情報と末梢系生体信号情報を併せて考察することにより、覚低状態や入眠予兆現象を従来よりも正確に推定することが可能な生体状態推定装置及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の生体状態推定装置は、中枢系生体信号情報から所定の中枢系指標値を求める中枢系生体信号処理手段と、末梢系生体信号情報から所定の末梢系指標値を求める末梢系生体信号処理手段と、前記中枢系指標値及び前記末梢系指標値から得られる指標値を少なくとも一方の座標軸に用いた座標系上にプロットされた複数の座標点の位置関係から生体状態を推定する状態推定手段とを有することを特徴とする。
前記状態推定手段は、前記複数の座標点の位置関係として、各座標点が、所定の分散状態にあるか否か、略一直線上に配向しているか否か、又は特異点を有するか否かを考慮して前記生体状態を推定する構成であることが好ましい。前記状態推定手段は、前記中枢系指標値及び末梢系指標値として、前記中枢系生体信号情報及び前記末梢系生体信号情報の原波形における同時刻の各周波数を用い、前記中枢系指標値及び前記末梢系指標値を各座標軸にとった座標系上に、対応する前記各指標値同士の座標点を座標系上にプロットし、プロットされた複数の座標点の位置関係から生体状態を推定する構成であることが好ましい。
前記状態推定手段は、前記中枢系指標値及び末梢系指標値として、前記中枢系生体信号情報及び前記末梢系生体信号情報の原波形を所定条件下でスライド計算して求めた傾き時系列波形における同時刻の各振幅値を用い、前記中枢系指標値及び前記末梢系指標値を各座標軸にとった座標系上に、対応する前記各指標値同士の座標点を座標系上にプロットし、プロットされた複数の座標点の位置関係から生体状態を推定する構成であることが好ましい。前記状態推定手段は、前記中枢系指標値及び末梢系指標値として、前記中枢系生体信号情報及び前記末梢系生体信号情報の原波形を所定条件下でスライド計算して求めた傾き時系列波形における同時刻の各振幅値の比を一方の軸にとり、他方の軸に時間軸を用いた座標系上に、対応する指標値をプロットし、プロットされた複数の座標点の位置関係から生体状態を推定する構成であることが好ましい。前記中枢系生体信号情報が、背部から採取される背部体表脈波であることが好ましく、前記末梢系生体信号情報が、指尖容積脈波であることが好ましい。
本発明のコンピュータプログラムは、生体状態を推定する生体状態推定装置としてのコンピュータに、中枢系生体信号情報から所定の中枢系指標値を求める中枢系生体信号処理手順と、末梢系生体信号情報から所定の末梢系指標値を求める末梢系生体信号処理手順と、前記中枢系指標値及び前記末梢系指標値から得られる指標値を少なくとも一方の座標軸に用いた座標系上にプロットされた複数の座標点の位置関係から生体状態を推定する状態推定手順とを実行させることを特徴とする。
前記状態推定手順は、前記複数の座標点の位置関係として、各座標点が、所定の分散状態にあるか否か、略一直線上に配向しているか否か、又は特異点を有するか否か、を考慮して前記生体状態を推定することが好ましい。前記中枢系指標値及び末梢系指標値として、前記中枢系生体信号情報及び前記末梢系生体信号情報の原波形における同時刻の各周波数を用いることが好ましい。前記中枢系指標値及び末梢系指標値として、前記中枢系生体信号情報及び前記末梢系生体信号情報の原波形を所定条件下でスライド計算して求めた傾き時系列波形における同時刻の各振幅値を用いることが好ましい。前記中枢系指標値及び末梢系指標値として、前記中枢系生体信号情報及び前記末梢系生体信号情報の原波形を所定条件下でスライド計算して求めた傾き時系列波形における同時刻の各振幅値の比を用いることが好ましい。
本発明は、中枢系生体信号情報から求められる所定の中枢系指標値と、末梢系生体信号情報から求められる所定の末梢系指標値を用い、これらを座標軸にとった座標系上の座標点の位置関係から生体状態を推定する。人の睡眠中枢と覚醒中枢との相互間の負のフィードバックは自律神経系、内分泌系の働きにより制御されている。これらの制御の様子を捉える指標として、上記したように、従来、指尖容積脈波が知られている一方、拘束力なく検出できる指標として、本出願人が提唱した背部体表脈波(APW)が知られている。しかし、背部体表脈波に代表される中枢系生体信号情報と、指尖容積脈波に代表される末梢系生体信号情報とは感度差がある。すなわち、背部体表脈波と比較した場合に、指尖容積脈波は脈波伝播速度に相当する時間遅れを伴っており、また、指尖に至るまでに生じる血流中の反射波の影響が大きい。それにより、背部体表脈波(APW)では、原波形の周波数解析において、指尖容積脈波では見られない0.5次成分の特徴的な周波数成分が存在する。つまり、中枢系生体信号情報と末梢系生体信号情報の検出された波形を比較した場合、原波形及びそれを処理した傾き時系列波形等が正確に一致するのではなく、両者にずれがあり、人の状態変化に対するそれらの変動の応答性が異なる。従って、人の状態推定を行う場合、いずれか一方を用いるよりも、本発明のように、両方の指標を用い、それを一つの座標系上で判定する構成とすることにより、人の状態変化に対するそれぞれの変動が強調され、人の状態をより正確に推定することができる。
図1は、本発明の一の実施形態において用いた背部体表脈波を測定する生体信号測定装置の一例を示した斜視図である。 図2は、図1に示した生体信号測定装置の分解斜視図である。 図3は、図1に示した生体信号測定装置の要部断面図である。 図4は、本発明の一の実施形態に係る生体状態推定装置の構成を模式的に示した図である。 図5は、図1に示した生体信号測定装置の荷重−たわみ特性を示した図である。 図6は、図5のグラフの縦軸をばね定数に変換した図である。 図7は、実験例1において得られた心電図、心音図、APW(原波形)、APWの二階微分波形、指尖容積脈波(原波形)、指尖容積脈波の二階微分波形の各関連事象の時相を比較した図である。 図8(a)は、実験例1において得られた被験者Aのデータの中で、覚醒状態(安定状態(1))における関連事象を比較した図であり、図8(b)は、実験例において得られた被験者Aのデータの中で、睡眠状態(安定状態(2))における関連事象を比較した図である。 図9(a)は、実験例1において得られた被験者Aのデータの中で、入眠予兆現象発現状態(遷移状態(1))における関連事象を比較した図であり、図9(b)は、実験例において得られた被験者Aのデータの中で、覚低状態(遷移状態(2))における関連事象を比較した図である。 図10(a)は、実験例1において得られた被験者Aのデータの中で、交感神経の亢進状態における関連事象を比較した図であり、図10(b)は、実験例において得られた被験者Aのデータの中で、副交感神経の亢進状態における関連事象を比較した図である。 図11(a)〜(f)は、APWから求めた中枢系指標値と指尖容積脈波から求めた末梢系指標値として周波数の変動の値を採用して求めた被験者Hの6つの状態別の解析結果を示した図である。 図12(a)〜(f)は、APWから求めた中枢系指標値と指尖容積脈波から求めた末梢系指標値として周波数の傾き時系列波形の振幅値を採用して求めた被験者Hの6つの状態別の解析結果を示した図である。 図13(a)〜(f)は、図12の各振幅値の比を用いて求めた被験者Hの6つの状態別の解析結果を示した図である。 図14(a)〜(d)は、図11及び図12を用いた判定と、医学的指標による入眠予兆現象、覚低状態、リラックス覚醒状態の判定とを統計処理して示した図である。 図15(a)は、睡眠実験で睡眠欲求を受け入れて睡眠に至った被験者Hの解析結果を示した図であり、図15(b)は、被験者Bの覚低状態の解析結果を示した図であり、図15(c)は、被験者Cの睡眠に抵抗した事例の解析結果を示した図である。 図16(a)は、実験例1の被験者11名の指尖容積脈波、APWの各原波形の周波数解析結果を示した図であり、図16(b),(c)は被験者Hの眠気の有無別の指尖容積脈波とAPWの原波形の周波数解析結果を示した図である。 図17は、実験例2における被験者Fの指尖容積脈波のパワー値傾き時系列波形を示した図である。 図18は、実験例2における被験者FのAPWのゼロクロス検出法による周波数傾き時系列波形を示した図である。 図19(a)は、被験者Fの各状態別の指尖容積脈波の傾き時系列波形を示した図であり、図19(b)は、被験者Fの各状態別のAPWの傾き時系列波形を示した図である。 図20は、被験者Fの指尖容積脈波及びAPWの周波数の解析結果を示した図である。 図21(a)〜(f)は、被験者Fについて、APWから求めた中枢系指標値と指尖容積脈波から求めた末梢系指標値とを用いた解析結果を示した図である。 図22(a)〜(f)は、実験開始直後から疲労感が高く、実験中盤に一瞬寝かけて、その後眠気が生じ再覚醒状態に移行した被験者の解析結果を示した図である。 図23(a)〜(d)は、図22の指尖容積脈波及びAPWの各傾き時系列波形の変化の仕方と、覚醒時、入眠予兆現象の出現時及び覚低状態の各状態との相関性を示した図である。 図24(a)は、ノイズが乗っていない時間帯の被験者DのAPWの原波形の例を示し、図24(b)は、ノイズが重畳された時間帯の被験者AのAPWの原波形の例を示した図である。 図25は、被験者Aの関連事象を示した図である。 図26は、被験者Bの関連事象を示した図である。 図27(a)〜(c)は、被験者Aの覚醒状態、入眠予兆現象、覚低状態の状態別に、指尖容積脈波とAPWの原波形の周波数変動の様子を比較した図であり、図27(d)〜(f)は、被験者Bの覚醒状態、入眠予兆現象、覚低状態の状態別に、指尖容積脈波とAPWの原波形の周波数変動の様子を比較した図である。 図28(a)〜(c)は、被験者Aの覚醒状態、入眠予兆現象、覚低状態におけるデータを示した図であり、図28(d)〜(f)は、被験者Bの覚醒状態、入眠予兆現象、覚低状態におけるデータを示した図である。 図29(a),(b)は、有効データ割合別の正答率を算出した2×2クロステーブルを示した図である。 図30は、実験例4の結果を示した図である。
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。本発明において採取する生体信号情報は、中枢系生体信号情報と末梢系生体信号情報の2種類である。末梢系生体信号情報は、典型的には指尖容積脈波であり、市販の指尖容積脈波計により採取される。中枢系生体信号情報は、典型的には、背部体表脈波(APW)であり、これは、本出願人が上記特許文献2等において提案している生体信号測定装置(以下、「背部体表脈波測定装置」)1により測定される。背部体表脈波(APW)は、人の上体背部から検出される心臓と大動脈の運動から生じる圧力振動であり、心室の収縮期及び拡張期の情報と、循環の補助ポンプとなる血管壁の弾性情報及び血圧による弾性情報を含んでいる。そして、心拍変動に伴う信号波形は交感神経系及び副交感神経系の神経活動情報(交感神経の代償作用を含んだ副交感神経系の活動情報)を含み、大動脈の揺動に伴う信号波形には交感神経活動の情報を含んでいる。
ここで、背部体表脈波測定装置1の概略構成を、図2及び図3に基づいて説明する。背部体表脈波測定装置1は、これらの図に示したように、コアパッド11、スペーサパッド12、センサ13、フロントフィルム14、リアフィルム15を有して構成される。
コアパッド11は、例えば板状に成形され、脊柱に対応する部位を挟んで対称位置に、縦長の貫通孔11a,11aが2つ形成されている。コアパッド11は、板状に形成されたポリプロピレンのビーズ発泡体から構成することが好ましい。コアパッド11をビーズ発泡体から構成する場合、発泡倍率は25〜50倍の範囲で、厚さがビーズの平均直径以下に形成されていることが好ましい。例えば、30倍発泡のビーズの平均直径が4〜6mm程度の場合では、コアパッド11の厚さは3〜5mm程度にスライスカットする。
スペーサパッド12は、コアパッド11の貫通孔11a,11a内に装填される。スペーサパッド12は、三次元立体編物から形成することが好ましい。三次元立体編物は、例えば、特開2002−331603号公報、特開2003−182427号公報等に開示されているように、互いに離間して配置された一対のグランド編地と、該一対のグランド編地間を往復して両者を結合する多数の連結糸とを有する立体的な三次元構造となった編地である。三次元立体編物が人の背によって押圧されることにより、三次元立体編物の連結糸が圧縮され、連結糸に張力が生じ、生体信号に伴う人の筋肉を介した体表面の振動が伝播される。また、コアパッド11よりも、三次元立体編物からなるスペーサパッド12の方が厚いものを用いることが好ましい。これにより、フロントフィルム14及びリアフィルム15の周縁部を貫通孔11a,11aの周縁部に貼着すると、三次元立体編物からなるスペーサパッド12が厚み方向に押圧されるため、フロントフィルム14及びリアフィルム15の反力による張力が発生し、該フロントフィルム14及びリアフィルム15に固体振動(膜振動)が生じやすくなる。一方、三次元立体編物からなるスペーサパッド12にも予備圧縮が生じ、三次元立体編物の厚み方向の形態を保持する連結糸にも反力による張力が生じて弦振動が生じやすくなる。
センサ13は、上記したフロントフィルム14及びリアフィルム15を積層する前に、いずれか一方のスペーサパッド12に固着して配設される。スペーサパッド12を構成する三次元立体編物は上記したように一対のグランド編地と連結糸とから構成されるが、各連結糸の弦振動がグランド編地との節点を介してフロントフィルム14及びリアフィルム15に伝達されるため、センサ13はスペーサパッド12の表面(グランド編地の表面)に固着することが好ましい。センサ13としては、マイクロフォンセンサ、中でも、コンデンサ型マイクロフォンセンサを用いることが好ましい。
次に、本実施形態の生体状態推定装置60の構成について図4に基づいて説明する。生体状態推定装置60は、中枢系生体信号処理手段61、末梢系生体信号処理手段62、状態推定手段63を有して構成される。生体状態推定装置60はコンピュータから構成され、このコンピュータに、中枢系生体信号処理手段61として機能する中枢系生体信号処理手順を実行させ、末梢系生体信号処理手段62として機能する末梢系生体信号処理手順を実行させ、状態推定手段63として機能する状態推定手順を実行させるコンピュータプログラムが設定されている。なお、コンピュータプログラムは、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体へ記憶させて提供することもできるし、通信回線を通じて伝送することも可能である。
中枢系生体信号処理手段61は、背部体表脈波測定装置1により背部から採取される背部体表脈波(APW)の時系列波形、すなわち、センサ13から得られる時系列の出力信号(好ましくは、フィルタリング処理(例えば、体動などにより生じた周波数成分を除去するフィルタリング処理)された時系列の出力信号(原波形))を受信する手段を有し、さらにその原波形を処理する手段を有し、中枢系指標値を求める。
ここでいう処理手段には、APWの傾き時系列波形を求める手段を含む。この手段は、まず、APWの原波形において、正から負に切り替わる地点(以下、「ゼロクロス地点」という)を用いて周波数の時系列波形を求める(以下、「ゼロクロス検出法」という)。すなわち、ゼロクロス地点を求めたならば、それを例えば5秒毎に切り分け、その5秒間に含まれる時系列波形のゼロクロス地点間の時間間隔の逆数を個別周波数fとして求め、その5秒間における個別周波数fの平均値を当該5秒間の周波数Fの値として採用する。そして、この5秒毎に得られる周波数Fを時系列にプロットすることにより、周波数の変動の時系列波形を求める。次に、周波数の変動の時系列波形から、所定のオーバーラップ時間で所定の時間幅の時間窓を設定し、時間窓毎に最小二乗法により周波数の傾きを求め、その傾き時を時系列の波形を出力する。この計算(移動計算)を順次繰り返し、APWの周波数の傾きの時系列変化を周波数の傾き時系列波形として出力する。
なお、周波数の変動の時系列波形は、背部体表脈波測定装置1のセンサ13から得られる背部体表脈波(APW)の時系列波形を平滑化微分して極大値(ピーク)を用いて求める方法(以下、「ピーク検出法」という)を採用することもできる。例えば、SavitzkyとGolayによる平滑化微分法により極大値を求める。次に、例えば5秒ごとに極大値を切り分け、その5秒間に含まれる時系列波形の極大値(波形の山側頂部)間の時間間隔の逆数を個別周波数fとして求め、その5秒間における個別周波数fの平均値を当該5秒間の周波数Fの値として採用する。そして、この5秒毎に得られる周波数Fを時系列にプロットすることにより、周波数の時系列波形を求め、それを用いて上記と同様にして周波数の傾き時系列波形を求める。
背部体表脈波(APW)は、中枢系である心臓の制御の様子を主として含む生体信号、すなわち、動脈の交感神経支配の様子、並びに、自律神経系の交感神経系と副交感神経系の出現情報を含む生体信号であり、この生体信号のゼロクロス検出法による傾き時系列波形を絶対値処理した波形は、心臓の制御の状態により関連しており、交感神経の出現状態を反映している。ピーク検出法によるものは、心拍変動により関連しており、交感神経による代償作用が加味された副交感神経系の動態を捉えている。なお、ピーク検出法による傾き時系列波形を絶対値処理したものは、指尖容積脈波のウェーブレット解析による副交感神経の動態(この副交感神経の動態は交感代償作用が加味されたものである)に比較的近似している。そのため、ゼロクロス検出法は、自律神経系の制御で対処されるストレスへの適応の結果となる体調を表す指標に用いることができると考えられる。ゼロクロス検出法は、心臓の制御の状態への関連が高いため、心拍変動の切痕の情報も含んでおり、指尖容積脈波では得られない、心拍成分の0.5次成分である0.5Hz近傍の周波数成分も情報として得られる。従って、APWを用いて生体状態を判定するに当たって、ゼロクロス検出法により得られたデータを主として用いることが好ましい。
末梢系生体信号処理手段62は、指尖容積脈波計から得られる指尖容積脈波の時系列波形(原波形)を受信する手段を含むと共に、その原波形を処理する手段を含み、末梢系指標値を求める。その処理手段は、上記のAPWの傾き時系列波形を求める手段と同様に、指尖容積脈波のパワー値の傾き時系列波形を求める手段を含む。パワー値の傾き時系列波形を求める手段は、具体的には、指尖容積脈波の時系列波形(原波形)を、それぞれ、SavitzkyとGolayによる平滑化微分法により、極大値と極小値を求める。そして、5秒ごとに極大値と極小値を切り分け、それぞれの平均値を求める。求めた極大値と極小値のそれぞれの平均値の差の二乗をパワー値とし、このパワー値を5秒ごとにプロットし、パワー値の時系列波形を作る。この時系列波形から、ある時間窓Tw(180秒)について最小二乗法でパワー値の傾きを求める。次に、オーバーラップ時間Tl(162秒)で次の時間窓Twを同様に計算して結果をプロットする。この計算(移動計算)を順次繰り返してパワー値の傾きの時系列波形を得る。
状態推定手段63は、中枢系生体信号処理手段61により求めた中枢系指標値と、末梢系生体信号処理手段62により求めた末梢系指標値とを各座標軸にとった座標系上に、対応する各指標値同士の座標点を座標系上にプロットし、プロットされた複数の座標点の位置関係から生体状態を推定する。座標系としては、例えば、直交座標系が用いられ、中枢系指標値を縦軸及び横軸の一方に、末梢系指標値を他方にとって形成される。
状態推定手段63において用いられる中枢系指標値及び末梢系指標値としては、中枢系生体信号情報(APW)及び末梢系生体信号情報(指尖容積脈波)に関して求められたものであれば種々のものを使用可能であるが、生体状態によって顕著な違いが生じる指標として、後述の実験例のような指標値を用いることが好ましい。
すなわち、(1)中枢系生体信号情報(APW)及び末梢系生体信号情報(指尖容積脈波)の原波形における同時刻の各周波数を指標値とする手段、(2)APWの原波形からゼロクロス検出法を用いてスライド計算して求めた周波数の傾き時系列波形と、指尖容積脈波のパワー値の時系列波形をスライド計算して求めたパワー値の傾き時系列波形とにおける、同時刻の各振幅値を指標値とする手段、(3)APWの周波数の傾き時系列波形と、指尖容積脈波のパワー値の傾き時系列波形とにおける、同時刻の各振幅値の比を用いる手段の少なくとも一つを採用することが好ましい。
また、状態推定手段63は、プロットされた複数の座標点の位置関係として、各座標点が、所定の分散状態にあるか否か、略一直線上に配向しているか否か、又は特異点を有するか否か、を考慮して判定する。詳細は後述の実験例で説明するが、例えば、上記(1)の指尖容積脈波とAPWの各原波形の周波数で比較した場合、覚醒状態では、ほぼ同一直線上にプロットされ、入眠予兆現象を発現している場合には、座標点が所定の範囲に分散するといった特徴的な傾向を示す。また、例えば、(3)の指尖容積脈波とAPWの各傾き時系列波形における同時刻の各振幅値を用いた場合には、入眠予兆現象を発現している場合に、相関性のない特異点がプロットされるといった特徴的な傾向を示す。
(実験例1)
上記実施形態に係る背部体表脈波測定装置1により背部体表脈波(APW)を測定すると共に、指尖容積脈波計により指尖容積脈波を測定し、中枢系指標値と末梢系指標値を用いた座標系による状態判定を行った。
実験で用いた背部体表脈波測定装置1は、図1〜図3に示した構成を有しているもので、被験者の背部に当接して計測した。また、この背部体表脈波測定装置1の物理的特性は次のとおりであった。すなわち、島津製作所製オートグラフに直径98mmの木製円盤を装着して、50mm/minの移動速度で200Nまでの荷重を図3のZ方向に印加したときに図5に示した荷重−たわみ特性が得られるものである。図6は、図5の縦軸をばね定数に変換した図であり、背部体表脈波測定装置1は、圧縮代1〜4.5mmの間では、ばね定数が一定の値を示し、その値はk=19400N/mであった。
指尖容積脈波は、被験者の左手人差し指に光学式指尖容積脈波センサ((株)アムコ製フィンガークリッププローブSR−5C)を用いて測定した。また、被験者の状態を、心音、心電図、脳波を同時に測定して検証した。心音は、心音センサ・心音脈波アンプとして日本光電工業(株)製TA701T,AS101Dを用いて測定し、心電図は、心電計として日本光電工業(株)製BSM−2301を用いて測定した。なお、心音と指尖容積脈波は、アナログ信号をAPWと同期させた上で、(株)コンテック製USB2.0対応アナログ入力ターミナルAI−1608AY−USBにより、A/D変換したデータを用いた。脳波計測は日本光電工業(株)製の脳波計EEG−9100を使用し、国際脳波学会連合標準電極配置法(ten-twenty electrocode system)に基づいて電極を装着し、単極誘導にて測定した。睡眠段階の判定は、Rechtschanffen & Kalesによって標準化された睡眠段階判定法により判定した。
被験者は、20歳代の健常男性11名(平均年齢26.78歳)で、安静・仰臥位姿勢で1時間計測を行った。被験者には前半の30分間は極力起きている状態を維持し、後半30分間はリラックス状態で寝ても良いと指示した。
図7は、本実験によって得られた心電図、心音図、APW(原波形)、APWの二階微分波形、指尖容積脈波(原波形)、指尖容積脈波の二階微分波形の各関連事象の時相を比較したもので、心周期の1波形分を示している。心周期は、大きく三つの相、すなわち心房収縮期、心室収縮期、心室拡張期で捉え、関連事象の時相を比較した。その結果、心室収縮期の開始時にあたる心電図のR波と心音図のI音及びAPWのボトム(α点)の一致が認められ、脈波伝播速度に関係して約0.2秒の遅れで指尖容積脈波のボトムが相対することが認められた。次に心室拡張初期にある心電図T波、心音図II音、APWのトップ(β点)、指尖容積脈波の切痕の一致が認められた。
すなわち、心周期におけるAPWと指尖容積脈波の原波形、二階微分波形及び時相は酷似しており、両者は同一の血行動態の中で生まれた現象と考えられる。また、血管の弾性に変化が生じると弾性抵抗及び反射波の影響から波形に乱れが生じる。従って、APWは、同じ血管の中を流れている血行動態を示し、さらに大動脈と末梢循環系の動態を示し、指尖容積脈波と同質の振動も拾っているものと言える。
図8〜図10は、本実験において得られたデータの中で、安定状態2種(図8(a),(b))、遷移状態2種(図9(a),(b))、自律神経系機能亢進状態2種(図10(a),(b))の6つの状態別に各種関連事象を比較したものである。関連事象とは、指尖容積脈波の原波形と二階微分波形、APWの原波形と二階微分波形のα点・β点、心音図のI音・II音、指尖容積脈波をウェーブレット解析して求めた交感・副交感の出現度合いであり、これらの各種関連事象間の時相差も求めた。交感神経ないし副交感神経が亢進すると、図9(a),(b)及び図10(a)に示したように、指尖容積脈波、APW、心音図の各関連事象間の時相差に乱れが生じることが認められた。
なお、安定状態2種とは、図8(a)の交感・副交感神経がバランスよく出現している覚醒状態(安定状態(1))と、図8(b)の副交感神経優位な睡眠状態(安定状態(2))のことである。遷移状態2種とは、図9(a)の交感神経の一時的かつ急激な亢進を表すバースト波が出現している状態:入眠予兆現象(遷移状態(1))と、図9(b)の交感・副交感神経の一時的で急激な亢進が認められる覚醒度や注意力の低下した覚低状態(遷移状態(2))の状態である。自律神経系機能亢進状態2種とは、図10(a)の交感神経の亢進している状態と、図10(b)の副交感神経の亢進している状態である。これらの状態を捉えることにより、生体の状態変化、特に、運転においては覚低走行状態や居眠り運転を捉えることができるため、これらの状態に注目した。
図8〜図10から次のことが言える。まず、遷移状態の交感神経の亢進、いわゆるバースト波的な亢進が示される場合には、指尖容積脈波とAPWの際の差、及び、APWと心音図の差が、図9(a),(b)及び図10(a)の最下図のそれぞれの時相差をプロットした図に示されているように、回帰直線で示される線形相関の傾向を示す。心室収縮期にあたるa−α,α−Iの各軸と心室拡張期にあたるe−β,β−IIの各軸が共にずれる傾向となることを示す。原波形からは、指尖容積脈波は基線動揺を示しながら周波数に変動が生じていることがわかる。これは指尖容積脈波から得られる最大リアプノフ指数に変化が生じながらもパワー値に変動が生じることを示している。一方、APWでは、図9(a),(b)及び図10(a)中の囲みで表す波形となり、α点とβ点の平均値となるゼロクロス点に周波数変動が生じている。従って、遷移状態の交感神経亢進時には、指尖容積脈波の周波数とAPWのゼロクロス点の周波数の変動の相関性が認められる。
次に、遷移状態の副交感神経の亢進は、指尖容積脈波の周波数変動はなく、基線動揺が生じている。従って、主に最大リアプノフ指数に変化が生じたことになる。一方、APWでは、振幅変動が生じ、低周波の周波数成分と高周波の周波数成分が重畳されたものになった。これは、APWに副交感神経亢進による血管弾性の変化あるいは反射波の影響が示唆される。そして、指尖容積脈波とAPWの時相は心室収縮期にあたるa−α,α−Iの各軸、心室拡張期にあたるe−β,β−IIの各軸が共にずれる傾向を示し、前述の遷移状態での交感神経亢進時と同じ変動の仕方となる。
次に交感神経の亢進は、指尖容積脈波では周波数変動が生じてない基線動揺と基線動揺の少ない周波数変動の組み合わせとなって現れた。一方、APWでは、図9(a),(b)及び図10(a)中の囲みで表す分数調波共振波形となった。この事例では、指尖容積脈波、APW、心音図の各関連事象間の差分値が2つの回帰曲線を持つ収束方向になった。心室収縮期にあたるa−α,α−Iの各軸に変動が生じ、APWのゼロクロス点が動くことを示し、指尖容積脈波の周波数の変動とAPWのゼロクロス点の周波数の変動の相関性が示唆される。また、安定状態(覚醒・睡眠両状態)及び副交感神経の亢進では、ゆらぎが少ない状態となっている。周波数の変動が生じるが調和の取れた波形の連続になり、指尖容積脈波、APWの周波数の変動に変化は、ほぼ1対1の関係となっている。
次に、上記のことを前提として、生体状態推定装置60の中枢系生体信号処理手段61、末梢系生体信号処理手段62、状態推定手段63による解析結果を説明する。
図11は、中枢系生体信号処理手段61により得られる中枢系指標値としてAPWの原波形の周波数を採用し、末梢系生体信号処理手段62により得られる末梢系指標値として指尖容積脈波の原波形の周波数を採用し、状態推定手段63が、APWの原波形の周波数を縦軸に、指尖容積脈波の原波形の周波数を横軸にとり、同時刻の各周波数から求められる座標点をプロットしたものであり、被験者Hの解析結果を示したものである。
図11から、安定状態である覚醒状態(a)と睡眠状態(b)、並びに覚低状態(d)は指尖容積脈波とAPWの周波数の変動は1対1の関係を示し、状態変化に対応して周波数が変動することがわかる。一方、睡眠中枢に対して負のフィードバックが働いていると考えられる入眠予兆現象発現時(c)、交感神経が亢進しているとき(e)、副交感神経が亢進しているとき(f)には指尖容積脈波とAPWの周波数成分の相関性が低くなり、周波数の変動の仕方がランダムになって分散していることがわかる。これらの結果から自律神経系に負のフィードバックが作用している場合は、交感・副交感神経の一時的かつ急激な亢進により、指尖容積脈波、APWの周波数に乱れが生じると言える。これらの周波数の変動と分散によるゆらぎの発現は、APWと指尖容積脈波の両周波数は大きな変動が生じていることを示す。従って、両神経系の亢進はAPWのβ−α点間が小さくなりダウンクロス点に変化が生じるということになり、交感神経の亢進はゼロクロス検出法による周期特性に影響を与えると考えることになる。なお、交感神経の亢進が少なく、機能が抑制される傾向にある覚低状態は原波形の周波数変動は大きいが、指尖容積脈波とAPWの周波数変動に対する相関性が高いため、乱れが少なく、安定状態と区別しにくくなっている。
これらのことから、APW及び指尖容積脈波の原波形の周波数を中枢系指標値、末梢系指標値として用い、これを座標系上にプロットし、得られた座標点が1対1で対応しているか(略一直線上に配向しているか)否か、所定の分散状態にあるか否かを、任意の閾値を設定して判定することにより、交感・副交感神経の亢進状態にあるか否かの状態判定を明確に行うことができる。なお、閾値の設定は、複数のデータを処理することにより統計的に処理して設定することができる。
図12は、状態推定手段63が、中枢系指標値として、APWのゼロクロス検出法を用いて算出した傾き時系列波形を絶対値処理したものを用い、末梢系指標値として指尖容積脈波のパワー値の傾き時系列波形を絶対値処理したものを用いて、同時刻の各振幅値を座標系上にプロットしたものである。
図12に示される入眠予兆現象や覚低状態及び交感神経の亢進による現象、つまり入眠する前の眠気やその眠気に抵抗する状態は、指尖容積脈波のパワー値及びAPWのゼロクロス検出法による各傾き時系列波形の振幅変動が大きくなることがわかる。また、高周波成分の乗った分数調波共振のような波形は、二拍で一拍の様相を示し、振幅が増大して長周期になる。また原波形で急変部位となる点は、傾き時系列波形では,分数調波共振の波形と心拍変動のゆらぎが原波形の変動する時間幅で、長周期の波形となって反映される。つまり、覚低状態の捕捉は捉え難い各原波形の心拍変動ではなく、傾き時系列波形の振幅の増減で捉えると、捕捉の精度の向上が期待できる。
より具体的に述べると、図12(a),(b)の2種の安定状態は、これらの図のL線の範囲内に座標点がプロットされている。従って、状態判定手段63は、このL線で囲まれた範囲を基準として各座標点の分散の程度を判定するように設定する。L線は、覚醒時のような安定状態と、入眠予兆現象や覚低状態のような遷移状態における自律神経系機能亢進状態との境界を示す。なお、L値は、安定状態の傾き値の最大値群の平均値から求めたもので、時間経過に伴う状態変化を、基準値に対する相対変化としてとられるものである。なお、このL値は、被験者毎に固有の値となる。
すなわち、図12(a)をもとにしてL値を設定する。図12(b)を見ると、各座標点はL値の範囲内でより収束傾向を示し、副交感神経優位な状態では2つの時系列波形の振幅が小さくなることを意味する。また、図12(c),(e),(f)の交感・副交感神経が亢進した状態は、いずれも指尖容積脈波から得られる末梢系指標値の軸に沿った方向に分散する傾向があるのに対し、図12(d)の覚低状態では、APWから得られる中枢系指標値の軸に沿った方向に分散する傾向がある。このことから、状態判定手段63において、その分散方向に閾値を設定することで、覚低状態を、交感神経の亢進状態及び副交感神経の亢進状態と区別できることがわかる。つまり、図12の傾き時系列波形を用いた場合には、2種の安定状態と2種の交感・副交感神経の亢進状態の区別に加え、覚低状態をも区別した状態判定ができる。
図13は、状態推定手段63が、中枢系指標値としてAPWのゼロクロス検出法による傾き時系列波形の振幅値と、末梢系指標値として指尖容積脈波のパワー値の傾き時系列波形の振幅値との比を縦軸として、時間を横軸として採用してプロットした座標を示した図である。本図の縦軸が1の時は、指尖容積脈波の傾き時系列波形とAPWの傾き時系列波形が1対1の関係になっていることを示す。従って、入眠予兆現象など交感神経が亢進する時間帯以外、すなわちバースト波が出現しない指尖容積脈波とAPWの両傾き時系列波形の相関性は高くなる。なお、図13の振幅比は、具体的には次のように求める。すなわち、APWのゼロクロス検出法を用いて算出した傾き時系列波形と指尖容積脈波のパワー値の傾き時系列波形を、それぞれ微分処理、絶対値処理を行う。次に、図12に示したように、安定状態を示す時系列波形を微分処理したものからL値を設定し、絶対値処理した各時系列波形の各点をL値で除し、APWから求めた値を分母にとし、指尖容積脈波から求めた値を分子にした値を横軸の時間に対してプロットする。
図13(c)では、座標点が分散し、その中に他の座標点から大きく外れた特異点が存在することがわかる。これは、APWと指尖容積脈波の相関性の低いポイントであり、これがいわゆる交感神経のバースト波に相当する。従って、図13(c)から、このような特異点が存在する場合に、交感神経のバースト波が出現する入眠予兆現象を生じている状態と判定することができる。
以上のことから、状態推定手段63によって、図11〜図13の座標点の傾向を捉えることで人の状態推定を行うことができることがわかる。また、より適確な状態推定を行うためには、図11、図12、図13の各推定手段を併用することが好ましい。
図14(a)〜(d)は、図11及び図12を用いた判定と、医学的指標による入眠予兆現象、覚低状態、リラックス覚醒状態の判定とを統計処理したものである。カイ二乗検定によるp値が0.05以下となり、有意な差を示すことが示された。ここに、指尖容積脈波とAPWの同質性、並びに、各傾き時系列波形による解析によって検出感度が向上することがわかる。
図15(a)は、睡眠実験で睡眠欲求を受け入れて睡眠に至った事例を示す。図15(a)は、上から順に、脳波による睡眠段階の判定と脳波の分布率、指尖容積脈波のパワー値の傾き時系列波形、APW原波形のゼロクロス検出法を用いて算出した傾き時系列波形、図13の計算要領で算出した振幅比を時間軸に対してプロットした座標点(座標点の中で特異点としてかけ離れて出現したものが交感神経のバースト波に相当する)、指尖容積脈波のウェーブレット解析を用いた自律神経系機能の交感・副交感神経出現の分布図を示す。また、図15(b)は、被験者Bの覚低状態の事例であり、図15(c)は、被験者Cの睡眠に抵抗した事例を示す。ここに指尖容積脈波をウェーブレット解析した交感神経の出現度合いは、APWのゼロクロス検出法、指尖容積脈波のパワー値の傾きから得られた振幅値を図13の計算要領を用いて算出した交感神経の模擬バースト波と近似していることがわかる。
図16(a)は、本実験の被験者11名(合計11時間分)の指尖容積脈波、APWの各原波形の周波数解析結果を示す。指尖容積脈波とAPWは、0.5Hz、1.0Hz、1.3Hz、2.1Hz、2.6Hzで差が認められた。図16(b),(c)は被験者Hの眠気の有無別の約10分間の指尖容積脈波とAPWの原波形の周波数解析結果を示す。眠気の有無により、指尖容積脈波では、心拍成分と2.5Hzに差が認められ、APWでは0.5Hzの成分に有意な差となって現れた。従って、指尖容積脈波の眠気の有無で生じる心拍成分の変動はAPWでは0.5Hzの成分となって現れた。ここに本実験の被験者11名分の周波数解析結果では、指尖容積脈波とAPWは、心拍変動成分である1Hzと1.3Hzにピークがあり、さらにAPWでは0.5Hzにおいて、指尖容積脈波よりもパワースペクトルが大きくなっていたため、多くの被験者が遷移状態にあったことが示唆された。
(実験例2)
実験例1の仰臥位姿勢と比較して交感神経が亢進しやすい自動車の座席に着座した座位姿勢で、覚低状態、入眠予兆現象を捉える実験を行った。
被験者は、運転席に着座した状態で、エンジンはアイドリング状態か、あるいは、アイドリングストップ状態で睡眠移行実験を行った。APWは実験例1で用いた背部体表脈波測定装置1を運転席のシートバックにセットして行った。指尖容積脈波の測定には、実験例1と同じ光学式指尖容積脈波センサを用いた。なお、被験者の状態はカメラで視察し、心理指標としてVAS(Visual Analog Scale)を用いて5分ごとに眠気を判定した。実験時間は60分で、実験終了までできる限り覚醒状態を維持することを被験者に伝えて行った。被験者は20〜30歳代の健常な男性10名、女性2名である。
図17は、指尖容積脈波のパワー値傾き時系列波形を示し、図18はAPWのゼロクロス検出法による周波数傾き時系列波形を示す。官能評価で最も眠気が増大した時間帯は図18中にハッチングで示される2400〜2700秒間の300秒間である。また、眠気が増大した時間帯の前には、図17、図18では振幅が増大(aからbへと増大)し、周期が長くなる(fが長周期化する)ことから、破線で取り囲まれたタイミングが入眠予兆現象であることが示唆される。眠気が増大した時間帯は、振幅が増減していく途中にあり、覚低状態は振幅の増減が混在することが示唆された。図17、図18共にこれらの現象の出現時間のタイミングが一致した。
より詳細には、まず、図18に示した心理指標から、被験者Fは、実験開始から900秒間は比較的覚醒度が高く、900〜2100秒の間は、一度覚醒度が低下傾向になりながらも、一定の覚醒水準を示し、2100〜2700秒の間で覚醒度がさらに低下し、3000秒以降は実験開始時まで戻していることがわかる。
これを図17及び図18に示した時系列波形で考察する。指尖容積脈波及びAPW共に、各傾き時系列波形は、入眠予兆現象発現時の900〜2100秒間は振幅が増大傾向となり、長周期になっている。覚醒水準が低下して上昇する2100〜3000秒間は、ほぼ長周期のままで振幅が増減し、覚醒水準が元に戻る際は一部長周期の波形を残しながら相対的に短周期小振幅の傾向となった。
図19は、多少眠気はあるが、リラックスして覚醒している状態(0〜900秒間)、交感神経のバースト波が発生して入眠予兆現象が発現している状態(900〜2100秒間)、覚醒水準の低下、眠気の発生、覚醒水準の上昇(2100〜2700秒間)、リラックスして再覚醒した状態(2700〜3600秒間)の各状態別の傾き時系列波形の周波数解析結果を示す。
図19の各傾き時系列波形の周波数解析結果から見ると、指尖容積脈波の傾き時系列波形は、覚醒時はパワースペクトルのピークが、0.003Hz、0.007Hz、0.011Hzに観察され、再覚醒時には0.002Hz、0.005Hz、0.007Hz、0.011Hzに観察された。入眠予兆現象発現時には0.003Hz以下に高いピークが出現した。覚醒水準が低下した場合は、パワースペクトルのPSDが著しく低下し、ピーク周波数は0.005Hzとなった。これらの結果から指尖容積脈波は、入眠予兆現象発現時に傾き時系列波形が大振幅・長周期化し、覚低状態発現時には、小振幅・高周期化の傾向になることが示唆される。
一方、APWでは、指尖容積脈波と同様に眠気を伴った覚醒時は0.003Hz、0.0065Hzにピークが観察され、再覚醒時は0.0045Hzにピークが観察され、最初の覚醒と最後の再覚醒でパワースペクトルのピークが高周波側にシフトした。入眠予兆現象発現時は0.003Hzと0.005Hzにピークが存在し、覚低状態では0.003Hzにピークが観察された。そして、比較的覚醒度は高いが眠気を有する覚醒時より、入眠予兆現象発現時の方がパワースペクトルが大きくなる傾向を示した。これらのことから、覚醒状態と入眠予兆現象の境界、覚醒状態と覚低状態の境界を表す周波数が、いずれも0.003Hz近傍に存在すると言える。
図20は、図18中の官能評価(sensitive response)で眠気の発生が認められる1040〜1060秒間の指尖容積脈波とAPWの原波形の周波数解析結果を示す。図13から、アイドリング状態での座位であっても、図16の仰臥位状態で実験した被験者Hと同様の結果を示していることがわかる。
一方、図21は、本発明の分析手法である図11、図12、図13に示した手法を用いて、入眠予兆現象(1400〜2100秒間)と覚低状態(2100〜2800秒間)となった時間帯を図示したものである。具体的には、図21(a)〜(f)は、順に、図11(c)、図12(c)、図13(c)、図11(d)、図12(d)及び図13(d)に対応する。図21(a)〜(f)と対応するこれらの図11〜図13の各図を比較すると、特に、図21(d)に示した覚低状態における原波形の周波数変動の座標点が、図11(d)のように1対1で対応しておらず、分散している点で顕著に異なる。図11(d)の仰臥位状態の覚低状態では、上記したように、交感神経の亢進が少なく、機能が抑制される傾向にある。しかし、アイドリング状態での座位の場合には、覚低状態が交感神経優位の中で生じている。これは、運転席に着座するだけで交感神経機能が高まることを意味するものであり、本発明の判定を運転時に適用する場合には、覚低状態の判定では、仰臥位状態よりも座標点の分散の程度が高くなることを考慮して閾値を設定する必要があることがわかる。
図22は、実験開始直後から疲労感が高く、実験中盤に一瞬眠りかけて、その後眠気が生じ再覚醒状態に移行した被験者の解析結果を示したものである。このうち、図22(a)〜(c)は、覚醒状態、入眠予兆現象、覚低状態の際のAPW及び指尖容積脈波の各原波形の周波数変動を指標値としてプロットした図11と同様の座標系を示したものである。図22(d)〜(f)は、覚醒状態、入眠予兆現象、覚低状態の際のAPW及び指尖容積脈波の各傾き時系列波形の振幅値を指標値としてプロットした図12と同様の座標系を示したものである。
これらの図から、原波形では座標点の分散の程度の区別が困難であり、状態判定を行いにくい。これは、仰臥位状態よりも交感神経機能が優位であることによるものである。これに対し、傾き時系列波形を用いた図22(d)〜(f)は、APWの周波数0.003Hz付近を境界として覚醒時(安定状態での覚醒時)(図22(d))に対し、入眠予兆現象の出現時及び覚低状態はその分散の程度が明らかに異なる。従って、APWの傾き時系列波形で求められる周波数0.003Hzで閾値を設定することで、覚醒状態か否かを状態推定手段63により判定することができる。
また、図22(f)の覚低状態は、図22(e)の入眠予兆現象の出現時よりも座標点の分散が縦軸に沿っている。これは、仰臥位状態における図12(d)の覚低状態と図12(c)の入眠予兆現象出現時とを比較しても同様であるが、図22(f)の座位での覚低状態は、図12(d)の仰臥位での覚低状態よりも横軸方向への広がりが大きい。上記したように、これは、運転席に着座することで交感神経機能が高まっていることによるものであり、覚低状態を入眠予兆現象と区別して判定する場合には、この点に留意して閾値を設定する。
図23は、図22の指尖容積脈波及びAPWの各傾き時系列波形の変化の仕方と、覚醒時、入眠予兆現象の出現時及び覚低状態の各状態との相関性をカイ二乗検定により求めた結果である。覚醒時と入眠予兆現象の比較では、「振幅一定」の時間帯の回数、「振幅の増大」を生じた回数を比較し、覚醒時と覚低状態では、「振幅一定」の時間帯の回数と、図18に示したような「振幅の増減」の生じた回数を比較した。その結果、pp値は0.005以下であり、統計的に有意であることがわかった。
(実験例3)
実験例2のうち、男性被験者6名分のデータを用いて、ノイズの影響のある環境下での傾き時系列波形を用いた状態推定の有効性について検討した。いずれの被験者もアイドリング状態及びアイドリングストップ状態の両方で測定を行い、アイドリングストップ状態の測定結果の中で、体動などの影響を除いたAPWの原波形の最大振幅値を基準値として設定し、アイドリング状態の測定結果及びアイドリングストップ状態の測定結果の両方において、この基準値を超えるデータをノイズと定義した。
図24(a)は、ノイズが乗っていない時間帯の被験者DのAPWの原波形の例を示し、図24(b)は、ノイズが重畳されたと時間帯の被験者AのAPWの原波形の例を示す。図24(a)のAPW原波形は、振幅±0.1(V)以下の領域の波形となっており、図24(b)では、APWの原波形の中に反射波の影響か、外部振動の影響か判別できないものが混在している。なお、以下の解析ではこの状態の波形を用いて入眠予兆現象等の状態推定を行う。
まず、全時間の波形データの中からノイズの影響を受けていない有効なデータの割合を求めた。各被験者の有効なデータの割合は、アイドリング状態の波形データにおいて、被験者Aは41.3%、被験者Bは70.5%、被験者Cは67.0%、被験者Dは71.5%、被験者Eは68.4%、被験者Fは62.2%であった。
図25は、有効なデータの割合が41.3%の被験者Aの関連事象を示し、図26は、有効なデータの割合が70.5%の被験者Bの関連事象を示す。なお、ここでの関連事象は、上から順に、VASによる眠気の判定と、指尖容積脈波のウェーブレット解析を用いた自律神経系機能の交感・副交感神経出現の分布図、指尖容積脈波のパワー値と最大リアプノフ指数の傾き時系列波形、APW原波形のゼロクロス検出法を用いて算出した傾き時系列波形である。
図27(a)〜(c)は、被験者Aの覚醒状態、入眠予兆現象、覚低状態の状態別に、指尖容積脈波とAPWの原波形の周波数変動の様子を比較したものであり、図27(d)〜(f)は、被験者Bの覚醒状態、入眠予兆現象、覚低状態の状態別に、指尖容積脈波とAPWの原波形の周波数変動の様子を比較したものである。
図28は、指尖容積脈波のパワー値の傾き時系列波形とAPWのゼロクロス検出法を用いた傾き時系列波形をそれぞれ絶対値処理して、同時刻のそれぞれの傾きの相関を取ったものである。そして、図28(a)〜(c)は、被験者Aの覚醒状態、入眠予兆現象、覚低状態におけるデータであり、図28(d)〜(f)は、被験者Bの覚醒状態、入眠予兆現象、覚低状態におけるデータである。図中のL線、L値の意味は上記の実験例と同様である。
図29(a),(b)は、有効データ割合別の正答率を算出した2×2クロステーブルである。図29(a)は、被験者B〜Fの5名のデータから求めたもので、図29(b)は、被験者A〜Fの6名のデータから求めたものである。図29(a),(b)を比較すると、有効なデータの割合が41.3%の被験者Aを含めると、正答率が78.0%から73.5%に低下していることがわかる。従って、本実験によれば、被験者Aを除いた中で有効なデータの割合が最も低かった被験者Dの62.2%以上であれば、ノイズのある環境下でも精度の高い状態推定が可能であると言える。
また、図27に示したように、外部振動ノイズのあるアイドリング状態の条件下では、指尖容積脈波及びAPWの原波形を用いたのでは、状態推定が困難であるのに対し、図28のように、指尖容積脈波及びAPWの傾き時系列波形の解析結果を用いると、被験者A,B共に、覚醒状態ではL値以下に収まり、入眠予兆現象、覚低状態ではL値を超える値が多く検出されており、ノイズの影響が小さくなっていることがわかる。
これらのことから、傾き時系列波形を用いた判定は原波形を用いた判定よりもロバスト性が高く、ノイズのある環境下でも精度良く判定できることがわかる。
また、図25及び図26に示す各関連事象を比較すると、被験者A,B共に比較的早い段階から入眠予兆現象と覚低状態が交互に出現し、覚醒状態を維持しようとしていることがわかる。VASとと指尖容積脈波による被験者の状態の判定結果と、APWの傾き時系列解析による判定結果を比較すると、比較的近い傾向にある。しかし、ノイズが多く、有効なデータの割合が41.3%の被験者Aの場合、2100〜3000秒間の入眠予兆現象と覚低状態の判定が、指尖容積脈波の傾き時系列波形を用いたものとAPWの傾き時系列波形を用いたものとで少し違う傾向であることがわかる。これは、有効なデータの割合が低いため、判定精度に差が生じたものと考えられる。
(実験例4)
背部体表脈波測定装置1をトラックの運転席に装着し、通常運行中の運転手の体表脈波を計測して評価した。被験者は運送業に従事する20歳代から50歳代までの職業運転手(男性9名)で、全被験者の総運行回数は91回であった。
図30は、職業運転手(男性9名)91例分の実運行履歴のAPWのゼロクロス検出法を用いた傾き時系列波形から得た入眠予兆現象や覚低状態のような遷移状態における自律神経系機能亢進状態の発生回数を横軸の運行時間に対して縦軸にプロットしたものである。
このグラフから10時間超の業務では、運行時間2時間超から10時間までの間が警告の多発する時間帯であり、かつまた業務差や個人差によるばらつきが生じる時間帯であることがわかる。ところが業務開始後10時間超の仕事終わりの時間帯には、極端に警告が少なくなっている。これは、仕事を始めて2時間を越えるところから8時間前後の間に良い意味での緊張が続いているが、この緊張感のリバウンドが仕事終わりの弛緩状態を生み出している可能性がある。すなわち、業務開始後2時間超から交感神経代償作用が生じ、業務開始後10時間を超えるところで一旦機能しなくなる時間帯がある。この弛緩状態が疲労の進行度合との複合作用でヒューマンエラーの発生しやすい環境を作り出す可能性がある。本実験で協力頂いた被験者を管理する運行事業管理者によれば、経験則から、運行開始から30分間と、運行終了前の30分間が最も事故が起きやすいとのことであったが、本実験では、上記のようにこの経験則に沿った結果が得られた。
1 背部体表脈波測定装置
11 コアパッド
12 スペーサパッド
13 センサ
14 フロントフィルム
15 リアフィルム
60 生体状態推定装置
61 中枢系生体信号処理手段
62 末梢系生体信号処理手段
63 状態推定手段

Claims (6)

  1. 中枢系生体信号情報として背部から採取される背部体表脈波を用いて中枢系指標値を求める中枢系生体信号処理手段と、
    末梢系生体信号情報として指尖容積脈波を用いて末梢系指標値を求める末梢系生体信号処理手段と、
    前記中枢系指標値として、前記背部体表脈波の原波形から求めた周波数の時系列波形を所定条件下でスライド計算して求めた傾き時系列波形の振幅値を用いると共に、前記末梢系指標値として、前記指尖容積脈波の原波形から求めたパワー値の時系列波形を所定条件下でスライド計算して求めた傾き時系列波形の振幅値を用い、前記中枢系指標値を一方の座標軸に、前記末梢系指標値を他方の座標軸にとった座標系上に、同時刻の対応する各振幅値によって定まる座標点をプロットし、プロットされた複数の座標点の分散状態が所定の閾値内にあるか否かに基づいて生体状態を推定する状態推定手段と
    を有することを特徴とする生体状態推定装置。
  2. 中枢系生体信号情報として背部から採取される背部体表脈波を用いて中枢系指標値を求める中枢系生体信号処理手段と、
    末梢系生体信号情報として指尖容積脈波を用いて末梢系指標値を求める末梢系生体信号処理手段と、
    前記中枢系指標値として、前記背部体表脈波の原波形から求めた周波数の時系列波形を所定条件下でスライド計算して求めた傾き時系列波形の振幅値を用いると共に、前記末梢系指標値として、前記指尖容積脈波の原波形から求めたパワー値の時系列波形を所定条件下でスライド計算して求めた傾き時系列波形の振幅値を用い、同時刻の対応する各振幅値の比を求め、前記各振幅値の比を一方の座標軸とし、他方の座標軸を時間軸とした座標系上に、前記各振幅値の比を時間に対応させてプロットし、プロットされた複数の座標点の中に、他の座標点から大きく外れた特異点が存在するか否かにより生体状態を推定する状態推定手段と
    を有することを特徴とする生体状態推定装置。
  3. 中枢系生体信号情報として背部から採取される背部体表脈波を用いて中枢系指標値を求める中枢系生体信号処理手段と、
    末梢系生体信号情報として指尖容積脈波を用いて末梢系指標値を求める末梢系生体信号処理手段と、
    前記中枢系指標値及び前記末梢系指標値として、安静・仰臥位姿勢で測定した前記背部体表脈波及び前記指尖容積脈波の原波形における同時刻の各周波数を用い、前記中枢系指標値及び前記末梢系指標値を各座標軸にとった座標系上に、対応する前記各周波数によって定まる座標点を座標系上にプロットし、プロットされた複数の座標点が略一直線上に配向しているか否かにより生体状態を推定する状態推定手段と
    を有することを特徴とする生体状態推定装置。
  4. 生体状態を推定する生体状態推定装置としてのコンピュータに、
    中枢系生体信号情報として背部から採取される背部体表脈波を用いて中枢系指標値を求める中枢系生体信号処理手順と、
    末梢系生体信号情報として指尖容積脈波を用いて末梢系指標値を求める末梢系生体信号処理手順と、
    前記中枢系指標値として、前記背部体表脈波の原波形から求めた周波数の時系列波形を所定条件下でスライド計算して求めた傾き時系列波形の振幅値を用いると共に、前記末梢系指標値として、前記指尖容積脈波の原波形から求めたパワー値の時系列波形を所定条件下でスライド計算して求めた傾き時系列波形の振幅値を用い、前記中枢系指標値を一方の座標軸に、前記末梢系指標値を他方の座標軸にとった座標系上に、同時刻の対応する各振幅値によって定まる座標点をプロットし、プロットされた複数の座標点の分散状態が所定の閾値内にあるか否かに基づいて生体状態を推定する状態推定手順と
    を実行させるコンピュータプログラム。
  5. 生体状態を推定する生体状態推定装置としてのコンピュータに、
    中枢系生体信号情報として背部から採取される背部体表脈波を用いて中枢系指標値を求める中枢系生体信号処理手順と、
    末梢系生体信号情報として指尖容積脈波を用いて末梢系指標値を求める末梢系生体信号処理手順と、
    前記中枢系指標値として、前記背部体表脈波の原波形から求めた周波数の時系列波形を所定条件下でスライド計算して求めた傾き時系列波形の振幅値を用いると共に、前記末梢系指標値として、前記指尖容積脈波の原波形から求めたパワー値の時系列波形を所定条件下でスライド計算して求めた傾き時系列波形の振幅値を用い、同時刻の対応する各振幅値の比を求め、前記各振幅値の比を一方の座標軸とし、他方の座標軸を時間軸とした座標系上に、前記各振幅値の比を時間に対応させてプロットし、プロットされた複数の座標点の中に、他の座標点から大きく外れた特異点が存在するか否かにより生体状態を推定する状態推定手順と
    を実行させるコンピュータプログラム
  6. 生体状態を推定する生体状態推定装置としてのコンピュータに、
    中枢系生体信号情報として背部から採取される背部体表脈波を用いて中枢系指標値を求める中枢系生体信号処理手順と、
    末梢系生体信号情報として指尖容積脈波を用いて末梢系指標値を求める末梢系生体信号処理手順と、
    前記中枢系指標値及び前記末梢系指標値として、安静・仰臥位姿勢で測定した前記背部体表脈波及び前記指尖容積脈波の原波形における同時刻の各周波数を用い、前記中枢系指標値及び前記末梢系指標値を各座標軸にとった座標系上に、対応する前記各周波数によって定まる座標点を座標系上にプロットし、プロットされた複数の座標点が略一直線上に配向しているか否かにより生体状態を推定する状態推定手順と
    を実行させるコンピュータプログラム
JP2013175073A 2013-02-27 2013-08-26 生体状態推定装置及びコンピュータプログラム Active JP6209395B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013175073A JP6209395B2 (ja) 2013-02-27 2013-08-26 生体状態推定装置及びコンピュータプログラム
PCT/JP2014/051727 WO2014132722A1 (ja) 2013-02-27 2014-01-27 生体状態推定装置、コンピュータプログラム及び記録媒体

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013038051 2013-02-27
JP2013038051 2013-02-27
JP2013175073A JP6209395B2 (ja) 2013-02-27 2013-08-26 生体状態推定装置及びコンピュータプログラム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014193263A JP2014193263A (ja) 2014-10-09
JP6209395B2 true JP6209395B2 (ja) 2017-10-04

Family

ID=51427996

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013175073A Active JP6209395B2 (ja) 2013-02-27 2013-08-26 生体状態推定装置及びコンピュータプログラム

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6209395B2 (ja)
WO (1) WO2014132722A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6394674B2 (ja) * 2016-10-19 2018-09-26 マツダ株式会社 運転支援装置
JP6815344B2 (ja) * 2018-03-12 2021-01-20 京セラ株式会社 電子機器、推定システム、推定方法及び推定プログラム
JP2023068812A (ja) * 2021-11-04 2023-05-18 株式会社デルタツーリング 頭部生体信号検出装置及び生体状態推定装置

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3931895B2 (ja) * 2004-07-29 2007-06-20 株式会社デンソー 生体情報表示装置
JP2007229218A (ja) * 2006-03-01 2007-09-13 Toyota Motor Corp 覚醒度推定装置及びシステム並びに方法
WO2011007886A1 (ja) * 2009-07-16 2011-01-20 株式会社デルタツーリング 生体状態推定装置及びコンピュータプログラム
JP5553303B2 (ja) * 2010-02-18 2014-07-16 株式会社デルタツーリング 生体状態推定装置及びコンピュータプログラム
JP5751475B2 (ja) * 2011-02-28 2015-07-22 株式会社デルタツーリング 生体状態推定装置及びコンピュータプログラム
JP5929020B2 (ja) * 2011-07-04 2016-06-01 株式会社豊田中央研究所 意識状態推定装置及びプログラム
JP6097495B2 (ja) * 2012-06-16 2017-03-15 株式会社デルタツーリング 生体状態分析装置及びコンピュータプログラム

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014193263A (ja) 2014-10-09
WO2014132722A1 (ja) 2014-09-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5553303B2 (ja) 生体状態推定装置及びコンピュータプログラム
JP6097495B2 (ja) 生体状態分析装置及びコンピュータプログラム
JP5733499B2 (ja) 生体状態推定装置及びコンピュータプログラム
JP4611206B2 (ja) 疲労度測定装置、疲労検出装置及びコンピュータプログラム
EP3387988B1 (en) Biological state estimation device, biological state estimation method, computer program, and recording medium
JP2004344612A (ja) 生体評価システム、コンピュータプログラム及び記録媒体
Szypulska et al. Prediction of fatigue and sleep onset using HRV analysis
JP6209395B2 (ja) 生体状態推定装置及びコンピュータプログラム
US10420513B2 (en) Biological state estimation device, biological state estimation method, computer program, and recording medium
US11937931B2 (en) Physical condition determination device, computer program, and recording medium
JP6588035B2 (ja) 生体状態分析装置及びコンピュータプログラム
JP4636860B2 (ja) 人体支持構造の評価装置
WO2015083787A1 (ja) 生体状態判定装置及びコンピュータプログラム
JP2016112144A (ja) 生体状態分析装置及びコンピュータプログラム
KR101771835B1 (ko) 생체신호기반 수면 상호영향 분석방법
WO2023080098A1 (ja) 頭部生体信号検出装置及び生体状態推定装置
JP6836264B2 (ja) 生体状態推定装置、生体状態推定方法、コンピュータプログラム及び記録媒体
JP2024004423A (ja) 血圧推定装置、コンピュータプログラム及び記録媒体
Wakuda et al. Estimation of sleep cycle and quality based on nonlinear analysis of heart rate variability

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160428

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170329

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170529

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170815

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170911

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6209395

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250