JP2024004423A - 血圧推定装置、コンピュータプログラム及び記録媒体 - Google Patents

血圧推定装置、コンピュータプログラム及び記録媒体 Download PDF

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悦則 藤田
Yoshinori Fujita
由美 小倉
Yumi Ogura
慎一郎 前田
Shinichiro Maeda
良香 延廣
Yoshika Nobuhiro
亮 小野田
Akira Onoda
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Abstract

【課題】 複数種類の生体指標から血圧を推定可能とし、汎用性を高める。【解決手段】本発明の血圧推定装置100は、心血管系の応答に関連する複数種類の生体指標、好ましくは、心拍数の変動(HRV)、体表を介して得られる音響脈波の振幅変動(AFV)、脈波伝播遅延時間の変動(PPDTV)の3つの指標から求められる種類別相関データを統合した統合相関データを用い、その回帰式に、各生理指標から求めた勾配値(GT値又はGI値)を当てはめ、あるいは、各生理指標の勾配値の平均値を当てはめて血圧を推定する。【選択図】 図3

Description

本発明は、上腕にカフ巻き付けることなく、上腕血圧値を推定する血圧推定装置、コンピュータプログラム及び記録媒体に関する。
本出願人は、特許文献1として、三次元立体編物を用いた生体信号検出センサから得られる生体信号データを解析し、心室充満期から等容性収縮期の血流変動によって生じる生体内の振動情報を捉え、そのゆらぎを示す指標を、ローレンツプロット法を適用して求め、その指標から血圧値を推定する血圧推定装置を開示している(特許文献1)。
具体的には、生体信号検出センサから背部の体表面の生体信号を捉え、その時間波形を所定の周波数帯域でフィルタリングし、心周期を顕在化させたフィルタ処理波形を得て、同時に測定した心電計から得られる心電図波形データにこのフィルタ処理波形を照合し、心室充満期から等容性収縮期における波形成分を特定し、その後、ローレンツプロット法を適用し、所定の測定時間でプロットされる多数の点群の傾きを基準とし、それよりも短い測定時間の点群の傾きとの角度差についての時間波形を新たに構築し、その時間波形を周波数解析し、周波数解析結果を両対数軸表示させてその解析波形におけるVLFからLFの範囲について回帰直線を求め、その回帰直線の傾きをフラクタルスロープと定義し、フラクタルスロープから血圧を推定する技術である。
特開2019-122502号公報
特許文献1によれば、人の背部から採取する生体信号により、非拘束で血圧を推定できる。よって、上腕にカフを巻き付けたりする必要もなく、容易に測定できると共に、非拘束であるため血圧を連続的に測定できるという利点を有する。
しかしながら、特許文献1の技術の場合、静かな環境下では所定の精度が得られるものの、走行中の車両内で測定する場合など、振動などのノイズを受ける環境下では精度の点で懸念があった。
この点に鑑み、本発明者らは、まず心拍数(HR)及び脈波伝播遅延時間(Pulse Propagation Delay Time:PPDT)の各平均値と上腕血圧値(収縮期血圧:SBP)との相関、並びに、心尖拍動波のA波とE波の振幅比の各平均値と上腕血圧値(収縮期血圧:SBP)との相関を検証した。これら個々の生理指標との関係では、相関性の低い場合があり、血圧推定の精度の安定性に欠けることが改めてわかった。
そこで、心房収縮と心室収縮の時相にある体表を介して得られる音響脈波(APW)を解析対象とし、APWに対して10~30Hzでフィルタリング処理を施し、0.03~0.1秒の時間間隔で極値を捉えることができる時間波形を創成した。0.5Hzから境界周波数までの周波数帯域にある心尖拍動波の振幅比に代わるものとして、心房収縮と心室収縮の時相を捉えた振幅変動(APW to be Filtered-variability:AFV)で、収縮期血圧との相関をとることとした。
具体的には、心房収縮と心室収縮の時相にある体表を介して得られる音響脈波の振幅変動(AFV)をローレンツプロット処理し、360秒間で微分係数(標準傾き)を算出した。次に30秒間で標準傾きに対する微分係数を算出し、反応がゆっくりおきる交感神経系の頻脈と速やかにおきる副交感神経系の徐脈を捉えるために、3秒間の周期を時間単位とする微分係数の周期関数(θi関数)を創成した。このθi関数の周波数解析結果を4次関数で表すと、変曲点の接線の傾き(Gradient of Tangent of inflection point:GT)と、変曲点間の傾き(Gradient between Inflections:GI)が得られた。この体表を介して得られる音響脈波の振幅変動から得られるGT値、GI値を説明変数とする上腕血圧値との相関を示す動脈圧回帰直線(SBP-Regression line:SR)を算出し、それを利用して血圧推定を行ったところ、心尖拍動波のA波とE波の振幅比の平均値による動脈圧回帰直線を利用する場合よりも決定係数が高くなった。そこで、本発明者らは、この知見に基づいた血圧推定に関する発明を特願2022-72790として提案した。
しかしながら、その後の研究において、体表を介して得られる音響脈波の振幅変動のGT値、GI値を用いた血圧推定法は、静的環境下での推定精度は向上したものの、乗車中のような動的環境下における推定精度の点では依然として十分とは言えない場合があることがわかった。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、静的環境下だけでなく、動的環境下においても十分な推定精度を得ることができる血圧推定装置、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは次の点に着目した。
交感神経系は心筋の収縮力、すなわち一回拍出量の調節を行う。したがって、心拍出量の規定因子である心拍数と一回拍出量の調節は中枢神経系の支配下にある。心拍数は洞結節や房室結節に分布する交感神経と副交感神経の調節を受けている。安静時は副交感神経の抑制作用の方が優位となる。生理的には交感神経系と副交感神経系のバランスによって心拍数が調節されている。心拍数変動は交感神経系よりも副交感神経系の刺激にすばやく反応する。そして体温の変動も心拍数に影響を及ぼし、例えば発熱により体温が1℃上昇すると心拍数も約10/min増加する。逆に体温が下がると心拍数は減少する。交感神経刺激は心拍数、収縮力および弛緩速度を上昇させ、血液充満が行われる拡張期を短縮させる。
一回拍出量は、反対の効果をもつ二つの要因の影響を受ける。一つは心室の収縮のためのエネルギーで、もう一つは血液拍出のための動脈圧である。収縮力は拡張末期圧を上昇させて弛緩期の心筋を伸展させることによって収縮力が増強される。「Starling’s Law of the heart」と呼ばれる心臓の法則と交感神経の緊張亢進や血液中のアドレナリン濃度の上昇によって、筋長は一定のまま収縮力が増大する収縮性(Contractility)の上昇がある。動脈圧が上昇すると心室内圧が動脈圧を凌駕するまで拍出が始まらないため、一回拍出量は減少する。動脈圧が高ければ、等容性収縮期に心室内圧を上昇させるために多くのエネルギーが消費され、拍出のためのエネルギーが減少することになる。
脈圧は一回拍出量を動脈コンプライアンスで除したものに比例する。そして脈波の伝播速度は動脈壁の硬さに依存する。動脈圧の上昇や加齢によって動脈壁は硬くなるため、大きい。したがって、脈波伝播遅延時間から、ヒトの動脈壁の伸展性を評価できる。脈波伝播速度が速くなると、反射波が後期収縮期に戻ってくるため、収縮後期の血圧がさらに上昇する。
心拍数、動脈圧、脈波遅延時間は、それぞれ共に二つの要因の影響を受けており、心血管系は個々の器官が互いに作用しあって、心血管系全体として協調して働き、応答して機能を果たしている。個々の器官の応答が統合されることで、体全体の応答が形成される統合による適応原理が適用される。
換言すると、心臓と血管の収縮状態は、神経系と内分泌系によって反射的に行われ、脳によって両者の調和が図られている。心血管系に見られる重要な反射の一つに脳への血流供給を安定させるために血圧を調節する圧受容器反射(arterial baroreceptor reflex:abf) が挙げられる。圧受容器反射の情報に基づいて、心臓や血管を支配する自律神経の活動レベルが反射的に調節され、これによって心拍出量に関係する心拍数の変動(HRV)、静脈容量に関係する体表を介して得られる音響脈波(APW)、この音響脈波の振幅変動(AFV)や血管の末梢抵抗に関係する脈波伝播遅延時間の変動(PPDTV)の態様が変化し、血圧が調節される。
従って、これら3つの生理指標(HRV,AFV,PPDTV)を同一の図に描記し、統合相関データを作成し、その統合相関データにおける回帰式(統合動脈圧回帰直線(Integration-SBP-Regression lin:ISR)を算出し、心拍数変動のGT値及びGI値、体表を介して得られる音響脈波の振幅変動のGT値及びGI値、及び脈波伝播遅延時間のGT値及びGI値をそれぞれ単独で、あるいはこの3つの指標の平均値を説明変数とすることで、血圧推定に関する精度の向上が期待できると考えられる。
すなわち、本発明の血圧推定装置は、
心血管系の応答に関連する複数種類の生体指標の時間波形データを解析し、各解析波形を両対数軸表示で求め、その解析波形に対して4次関数を規定し、その極値数に応じて、2つの変曲点間の勾配値、又は、変曲点における接線の勾配値を求め、そのいずれかを解析結果として出力する勾配値演算部と、
前記解析結果である前記勾配値を、前記生体指標の種類別に、実測した上腕血圧値に相関させた種類別相関データを求める種類別相関データ演算部と、
複数の被験者から得られた前記時間波形データを用い、前記生体指標の種類別に複数求められた前記種類別相関データを同一座標上に展開し、統合相関データを求める統合相関データ演算部と、
血圧推定対象者について、前記勾配値演算部により、前記複数種類の生体指標中、少なくとも一つの生体指標の時間波形データを解析し、前記解析結果である勾配値を求め、この勾配値を前記統合相関データの回帰式に代入して前記上腕血圧値に相当する推定血圧値を求める推定血圧演算部と
を有する。
前記推定血圧演算部は、
前記血圧推定対象者について、前記勾配値演算部により、前記複数種類の生体指標中、2以上の生体指標の時間波形データを解析し、各生体指標に関して前記解析結果である前記勾配値を求め、この生体指標毎に得られる勾配値の平均値を前記統合相関データの回帰式に代入して前記上腕血圧値に相当する推定血圧値を求めることが好ましい。
前記推定血圧演算部は、
前記血圧推定対象者について、前記勾配値演算部により、前記複数種類の生体指標中、2以上の生体指標の時間波形データを解析し、各生体指標に関して前記解析結果である前記勾配値を求め、この生体指標毎に得られる勾配値を、対応する前記種類別相関データの回帰式に代入して種類別推定血圧値を求め、得られた複数の種類別推定血圧値の平均値を、前記上腕血圧値に相当する推定血圧値として出力する構成とすることも好ましい。
前記複数種類の生体信号が、心拍数の変動、脈波伝播遅延時間の変動及び体表を介して得られる音響脈波の振幅変動から選ばれることが好ましい。
前記勾配値演算部は、
前記4次関数の極値が3箇所存在し、2つの変曲点を挟んで凹凸関数になっている場合に2つの変曲点間の勾配値を解析結果として採用し、前記極値が2箇所以下の場合にいずれかの変曲点における接線の勾配値を解析結果として採用することが好ましい。
前記勾配値演算部は、
前記複数種類の生体指標のぞれぞれについて、ローレンツプロット法を適用し、基準時間範囲におけるローレンツプロットから標準傾きを求め、前記基準時間範囲より短い所定時間毎に作成される各ローレンツプロットの傾きと前記標準傾きの差分である相対傾きを所定のオーバーラップ率、所定の時間窓で逐次求め、得られた相対傾きの時間波形を所定の周波数でフィルタリングし、そのフィルタリングした時間波形に対して周波数解析を施し、その周波数解析結果を前記両対数軸表示で示される解析波形に変換し、前記解析波形中に傾き1/fの回帰直線を適用し、その回帰直線に対する前記解析波形を構成する各点の距離の標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて抽出した所定の周波数帯域の範囲の解析波形の点群に対して前記4次関数を求めることが好ましい。
前記勾配値演算部は、
前記生体指標として前記「体表を介して得られる音響脈波の振幅変動」を用いる場合には、心房収縮及び心室収縮の時相に含まれる極値から2つの極値間振幅を求め、ローレンツプロット法を適用し、基準時間範囲におけるローレンツプロットから標準傾きを求め、前記基準時間範囲より短い所定時間毎に作成される各ローレンツプロットの傾きと前記標準傾きの差分である相対傾きを所定のオーバーラップ率、所定の時間窓で逐次求め、得られた相対傾きの時間波形を所定の周波数でフィルタリングし、そのフィルタリングした時間波形に対して周波数解析を施し、その周波数解析結果を前記両対数軸表示で示される解析波形に変換し、前記解析波形中に傾き1/fの回帰直線を適用し、その回帰直線に対する前記解析波形を構成する各点の距離の標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて抽出した所定の周波数帯域の範囲の解析波形の点群に対して前記4次関数を求めることが好ましい。
また、本発明は、心血管系の応答に関連する複数種類の生体指標の時間波形データを解析し、各解析波形を両対数軸表示で求め、その解析波形に対して4次関数を規定し、その極値数に応じて、2つの変曲点間の勾配値、又は、変曲点における接線の勾配値を求め、そのいずれかを解析結果として出力する手順と、
前記解析結果である前記勾配値を、前記生体指標の種類別に、実測した上腕血圧値に相関させた種類別相関データを求める手順と、
複数の被験者から得られた前記時間波形データを用い、前記生体指標の種類別に複数求められた前記種類別相関データを同一座標上に展開し、統合相関データを求める手順と、
血圧推定対象者について、前記複数種類の生体指標中、少なくとも一つの生体指標の時間波形データを解析し、前記解析結果である勾配値を求め、この勾配値を前記統合相関データの回帰式に代入して前記上腕血圧値に相当する推定血圧値を求める手順と
を実行させ、コンピュータを血圧推定装置として機能させるコンピュータプログラム
を提供する。
前記推定血圧値を求める手順では、
前記血圧推定対象者について、前記複数種類の生体指標中、2以上の生体指標の時間波形データを解析し、各生体指標に関して前記解析結果である前記勾配値を求め、この生体指標毎に得られる勾配値の平均値を前記統合相関データの回帰式に代入して前記上腕血圧値に相当する推定血圧値を求めることが好ましい。
前記推定血圧値を求める手順では、
前記血圧推定対象者について、前記複数種類の生体指標中、2以上の生体指標の時間波形データを解析し、各生体指標に関して前記解析結果である前記勾配値を求め、この生体指標毎に得られる勾配値を、対応する前記種類別相関データの回帰式に代入して種類別推定血圧値を求め、得られた複数の種類別推定血圧値の平均値を、前記上腕血圧値に相当する推定血圧値として出力することも好ましい。
前記複数種類の生体信号が、心拍数の変動、脈波伝播遅延時間の変動及び体表を介して得られる音響脈波の振幅変動から選ばれることが好ましい。
前記勾配値を求める手順で、
前記4次関数の極値が3箇所存在し、2つの変曲点を挟んで凹凸関数になっている場合に2つの変曲点間の勾配値を解析結果として採用し、前記極値が2箇所以下の場合にいずれかの変曲点における接線の勾配値を解析結果として採用することが好ましい。
前記勾配値を求める手順では、
前記複数種類の生体指標のぞれぞれについて、ローレンツプロット法を適用し、基準時間範囲におけるローレンツプロットから標準傾きを求め、前記基準時間範囲より短い所定時間毎に作成される各ローレンツプロットの傾きと前記標準傾きの差分である相対傾きを所定のオーバーラップ率、所定の時間窓で逐次求め、得られた相対傾きの時間波形を所定の周波数でフィルタリングし、そのフィルタリングした時間波形に対して周波数解析を施し、その周波数解析結果を前記両対数軸表示で示される解析波形に変換し、前記解析波形中に傾き1/fの回帰直線を適用し、その回帰直線に対する前記解析波形を構成する各点の距離の標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて抽出した所定の周波数帯域の範囲の解析波形の点群に対して前記4次関数を求めることが好ましい。
前記勾配値を求める手順では、
前記生体指標として前記「体表を介して得られる音響脈波の振幅変動」を用いる場合には、心房収縮及び心室収縮の時相に含まれる極値から2つの極値間振幅を求め、ローレンツプロット法を適用し、基準時間範囲におけるローレンツプロットから標準傾きを求め、前記基準時間範囲より短い所定時間毎に作成される各ローレンツプロットの傾きと前記標準傾きの差分である相対傾きを所定のオーバーラップ率、所定の時間窓で逐次求め、得られた相対傾きの時間波形を所定の周波数でフィルタリングし、そのフィルタリングした時間波形に対して周波数解析を施し、その周波数解析結果を前記両対数軸表示で示される解析波形に変換し、前記解析波形中に傾き1/fの回帰直線を適用し、その回帰直線に対する前記解析波形を構成する各点の距離の標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて抽出した所定の周波数帯域の範囲の解析波形の点群に対して前記4次関数を求めることが好ましい。
また、本発明では、前記のコンピュータブログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
本発明によれば、心血管系の応答に関連する複数種類の生体指標、好ましくは、心拍数の変動(HRV)、体表を介して得られる音響脈波の振幅変動(AFV)、脈波伝播遅延時間の変動(PPDTV)の3つの指標から求められる種類別相関データを統合した統合相関データを用い、その回帰式に、各生理指標から求めた勾配値(GT値又はGI値)を当てはめ、あるいは、各生理指標の勾配値の平均値を当てはめて血圧を推定する。これらの生理指標は、上記のように、心血管系全体として協調して働き、応答して機能を果たしており、それらが相俟って血圧が調節される。よって、統合相関データを用いることは血圧指定の精度の向上につながる。
また、統合相関データは、各生理指標の勾配値を個別に当てはめることも、平均値を当てはめることも可能であり、例えば、乗車中のような動的環境下では、動的環境下でも比較的安定したデータを検出できる心拍数を利用し、心拍数の変動から求められる勾配値を説明変数とすることで、動的環境下における血圧推定も精度が向上する。
図1(a)は、本発明の一の実施形態で用いた生体信号検出センサ(4SR)を示した外観斜視図であり、図1(b)は、エアパックとゲルパックとを分離して示した外観斜視図であり、図1(c)は、断面図である。 図2は、胸部背面からの音響脈波(R-APW)を採取する際の生体信号検出センサの取り付け位置を模式的に示した図である。 図3は、本発明の一の実施形態に係る血圧推定装置の概略構成を示すブロック図である。 図4は、第1勾配値演算部の概略構成を示すブロック図である。 図5は、第1勾配値演算部における解析工程を説明するためのフローチャートである。 図6は、図5の各ステップで出力されるデータを、図5のフローチャートに沿って示した図である。 図7は、第2勾配値演算部における解析工程を説明するためのフローチャートである。 図8は、図7の各ステップで出力されるデータを、図7のフローチャートに沿って示した図である。 図9は、第3勾配値演算部における解析工程を説明するためのフローチャートである。 図10は、図9の各ステップで出力されるデータを、図9のフローチャートに沿って示した図である。 図11は、血圧推定対象者の推定血圧値を求める工程を示したフローチャートである。 図12(a),(b)は、4次関数で示される近似曲線の求め方を説明するための図である。 図13は、実験例1の76名の被験者についての心拍数と血圧計(上腕式)により測定した収縮期血圧の実測値(上腕血圧値)との相関を示した図である。 図14は、図13のデータを用い、各被験者について、第2勾配値演算部により求めた標準傾きと収縮血圧値との相関を示した図である。 図15は、心拍数変動の勾配値(GT値,GI値)と上腕血圧値との相関を示した図である。 図16は、実験例1の76名の被験者についての脈波伝播遅延時間と上腕血圧値との相関を示した図である。 図17は、図16のデータを用い、各被験者について、第3勾配値演算部により求めた標準傾きと収縮血圧値との相関を示した図である。 図18は、脈波伝播遅延時間の変動の勾配値(GT値,GI値)と上腕血圧値との相関を示した図である。 図19は、実験例1の76名の被験者についての音響脈波の振幅変動の勾配値と上腕血圧値との相関を示した図である。 図20は、図15、図18及び図19に示された3つの種類別相関データを構成している全データを、同一座標上にプロットした統合相関データを示した図である。 図21は、実験例2の26名の被験者についての心拍数と血圧計(上腕式)により測定した収縮期血圧の実測値(上腕血圧値)との相関を示した図である。 図22は、図21のデータを用い、各被験者について、第2勾配値演算部により求めた標準傾きと収縮血圧値との相関を示した図である。 図23は、心拍数変動の勾配値(GT値,GI値)と上腕血圧値との相関を示した図である。 図24は、実験例2の76名の被験者についての脈波伝播遅延時間と上腕血圧値との相関を示した図である。 図25は、図24のデータを用い、各被験者について、第3勾配値演算部により求めた標準傾きと収縮血圧値との相関を示した図である。 図26は、脈波伝播遅延時間の変動の勾配値(GT値,GI値)と上腕血圧値との相関を示した図である。 図27は、実験例2の26名の被験者についての音響脈波の振幅変動の勾配値と上腕血圧値との相関を示した図である。 図28は、図23、図26及び図27に示された3つの種類別相関データを構成している全データを、同一座標上にプロットした統合相関データを示した図である。 図29は、実験例1の図15及び実験例2の図23に示した心拍数変動に基づいた被験者102名分の種類別相関データを合体させた種類別相関データを示した図である。 図30は、実験例1の図18及び実験例2の図26に示した脈波伝播遅延時間に基づいた種類別相関データを合体させた被験者102名分の種類別相関データを示した図である。 図31は、実験例1の図19及び実験例2の図27に示した音響脈波の振幅変動に基づいた被験者102名分の種類別相関データを合体させた種類別相関データを示した図である。 図32は、図29~図31の種類別相関データを統合した統合相関データを示した図である。 図33(a)~(f)は、高血圧被験者の睡眠実験における各生体信号データの時間波形を示した図である。 図34(a)~(c)は高血圧被験者の睡眠実験における心拍数の変動に関するローレンツプロット図であり、(a)は睡眠実験の全時間(40分間)のデータを用いてプロットした図であり、(b)は睡眠実験中の1500~1860秒の6分間のデータを用いてプロットした図であり、(c)は覚醒後、座位姿勢で測定されたデータを用いてプロットした図である。図34(d)~(f)は音響脈波の振幅変動に関するローレンツプロット図であり、(dは睡眠実験の全時間(40分間)のデータを用いてプロットした図であり、(e)は睡眠実験中の1500~1860秒の6分間のデータを用いてプロットした図であり、(f)は覚醒後、座位姿勢で測定されたデータを用いてプロットした図である。 図35(a)~(d)は、図34(a)~(f)に示したローレンツプロットの回帰直線を用いて得られた両対数軸表示された解析結果と、それに4次関数を適用して求めた勾配値(GT値、GI値)を示した図である。図35(e)は、図32に統合相関データと、図35(a)~(d)の勾配値を代入して推定された推定血圧値を示した図である。 図36は、健康な21~65歳(平均年齢:43歳)の被験者21名(内女性2名)の音響脈波の振幅変動(AF)の勾配値(GT値、GI値)と収縮期血圧値(実測値)との相関を示した種類別相関データを示した図である。 図37は、図19、図27及び図36のデータを全て一つの座標にまとめた種類別相関データを示した図である。
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。本実施形態では、心血管系の応答に関連する複数種類の生体指標として、心拍数の変動、脈波伝播遅延時間の変動及び体表を介して得られる音響脈波(APW)の振幅変動の3つを用いている。上記のように、圧受容器反射の情報に基づいて、心臓や血管を支配する自律神経の活動レベルが反射的に調節され、これによって心拍出量に関係する心拍数の変動(HRV)、静脈容量に関係するAPWの振幅変動(AFV)、このAPWの振幅変動(AFV)や血管の末梢抵抗に関係する脈波伝播遅延時間の変動(PPDTV)の態様が変化し、血圧が調節されることからこれら3つを用いることが好ましい。
心拍数、体表を介して得られる音響脈波(APW)については、後述する三次元立体編物とマイクロフォンを用いた音響脈波検出センサ1により測定することができる。また、心拍数については、心電計を用いて測定できる。携帯型の心電計、あるいは、腕時計タイプなどウエアラブルな心拍計も存在するため、乗車中の測定など、動的環境下での測定では、そのような携帯型、ウエアラブルタイプなどを用いることが好ましい。脈波伝播遅延時間については、心電計と指尖容積脈波計を用いて測定することができる。また、音響脈波検出センサ1を、胸部背面と末梢付近など、所定の間隔で2箇所に配置して測定することも可能である。
次に、図1(a)~(c)に基づき、音響脈波(APW))を測定するための音響脈波検出センサ1の構成を説明する。本実施形態の音響脈波検出センサ1は、エアパック1Aとゲルパック1Bとの積層構造からなる。エアパック1Aは、三次元立体編物(3Dネット)10及び該三次元立体編物(3Dネット)10を密閉的に収容する収容フィルム20とを有して構成される。ゲルパック1Bは、ケース40内にマイクロフォン30が固定配置され、マイクロフォン30の周囲にゲル50が充填されている。
三次元立体編物10は、互いに離間して配置された一対のグランド編地同士を連結糸で結合することにより形成されている。各グランド編地は、例えば、繊維を撚った糸から、ウェール方向及びコース方向のいずれの方向にも連続したフラットな編地組織(細目)に形成したり、ハニカム状(六角形)のメッシュを有する編地組織に形成したりすることができる。連結糸は、一方のグランド編地と他方のグランド編地とが所定の間隔を保持するように、三次元立体編物に所定の剛性を付与している。従って、面方向に張力が付与されることにより、三次元立体編物を構成する対向するグランド編地の糸、あるいは、対向するグランド編地間を連結する連結糸を弦振動させることが可能となる。それにより、生体信号である心臓・血管系の音・振動によって弦振動が生じ、三次元立体編物の面方向に伝播される。
三次元立体編物のグランド編地を形成する糸又は連結糸の素材としては、種々のものを用いることができるが、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、レーヨン等の合成繊維や再生繊維、ウール、絹、綿等の天然繊維が挙げられる。上記素材は単独で用いてもよいし、これらを任意に併用することもできる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などに代表されるポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などに代表されるポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン系繊維、あるいはこれらの繊維を2種類以上組み合わせたものである。また、グランド糸又は連結糸の糸形状も限定されるものではなく、丸断面糸、異形断面糸、中空糸等のいずれでもよい。さらに、カーボン糸、金属糸等を使用することもできる。
使用可能な三次元立体編物としては、例えば、以下のようなものを用いることができる。
(a) 製品番号:49013D(住江織物(株)製)、厚さ10mm
材質:
表側のグランド編地・・・450デシテックス/108fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸の2本の撚り糸
裏側のグランド編地・・・450デシテックス/108fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸の2本の撚り糸
連結糸・・・・・・・・・350デシテックス/1fのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
(b)製品番号:AKE70042(旭化成(株)製)、厚さ7mm
(c)製品番号:T28019C8G(旭化成(株)製)、厚さ7mm
三次元立体編物10は、収容フィルム20により被覆されている。収容フィルム20は、本実施形態では、合成樹脂製の2枚のフィルム21,22を用いてなり、これを三次元立体編物10の表面及び裏面を被覆するように配置し、両者の周縁部を溶着等により固着している。これにより、三次元立体編物10は、収容フィルム20内に密閉的に収容される。なお、フィルム21,22の周縁部を固着する際には、フィルム21,22によって三次元立体編物10を厚み方向に若干押圧されるように固着することが好ましい。三次元立体編物10の張力が高まり、該三次元立体編物10を構成する糸の弦振動がより生じやすくなる。
収容フィルム20の外側には、ケース40が取り付けられ、そのケース40内にマイクロフォン30が配設されている。ケース40内であって、マイクロフォン30の周囲は、外乱混入抑制部材としてのゲル50が充填されている。ケース40は、合成樹脂製で、マイクロフォン30に伝播される音響振動の外部への拡散を防ぐ機能を有し、ゲル50により、マイクロフォン30が外部振動を捕捉してしまうことを抑制する。なお、マイクロフォン30には検出した音響振動データを電気信号として搬送するコード30aが接続されている。
音響脈波検出センサ1は、三次元立体編物等を有する構成であるため、確率共鳴現象により増幅された音響脈波(APW)を計測することができる。音響脈波検出センサ1は、計測対象である各種部位、例えば、背部、胸部、腰部などに当接して使用される。体表面の振動が収容フィルム20及び三次元立体編物10に伝播されてマイクロフォン30によって捕捉されるものであるが、皮膚表面に直接貼着する場合に限らず、衣服の表面あるいはいすの背もたれ等に取り付けて用いることができる。なお、図2は、人の胸部背面から伝播される音響脈波(R-APW)を採取する場合の取り付け例を示したものであり、衣服や背もたれ等において、例えば、人の胸部背面中、脊柱の左側10cm付近にマイクロフォン30が位置するように配置される。
なお、音響脈波検出センサ1としては、ゲルを備えず、マイクロフォンを三次元立体編物と共にフィルム内に配置したもので、本出願人が従来提案しているタイプ(3SR)を用いることも可能である。但し、測定精度の点では、上記の音響脈波検出センサ1(4SR)が好ましい。
・血圧推定装置
次に、音響脈波検出センサ1、心電計、心拍計、指尖容積脈波計(なお、以下においては、これらを総称して「生体指標センサ1000」という)から得られるデータを処理するコンピュータプログラムが設定された血圧推定装置100について図3及び図4に基づき説明する。
血圧推定装置100は、生体指標センサ1000によって取得される生体指標の時間波形データを処理して解析し、血圧を推定する。血圧推定装置100は、コンピュータ(パーソナルコンピュータ、機器に組み込まれるマイクロコンピュータ等も含む)から構成され、生体指標センサから送信される生体信号データを受信する。そして、受信した時間波形データを用いて所定の処理を実行する。
より詳細には、血圧推定装置100は、勾配値演算部200、種類別相関データ演算部300、統合相関データ演算部400、推定血圧演算部500として機能する手順を実行させるコンピュータプログラムが記憶部(当該コンピュータ(血圧推定装置100)としての内蔵のハードディスク等の記録媒体のほか、リムーバブルの各種記録媒体、通信手段で接続された他のコンピュータの記録媒体等も含む)に記憶されている。また、勾配値演算部200、種類別相関データ演算部300、統合相関データ演算部400の解析結果が蓄積され、推定血圧演算部500の実行時に参照されるデータベース600を有している。データベース600も、血圧推定装置100を構成するコンピュータに内蔵のハードディスク等の記録媒体のほか、リムーバブルの各種記録媒体、通信手段で接続された他のコンピュータの記録媒体等に記憶されている。なお、血圧推定装置100は、勾配値演算部200、種類別相関データ演算部300、統合相関データ演算部400、推定血圧演算部500として機能するコンピュータプログラムが組み込まれた1以上の記憶回路を有する電子回路を用いて実現することもできる。
また、コンピュータプログラムは、記録媒体に記憶させて提供することができる。コンピュータプログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体は特に限定されないが、例えば フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD-ROM、メモリカードなどの記録媒体が挙げられる。また、通信回線を通じてコンピュータプログラムをコンピュータに伝送してインストールすることも可能である。
勾配値演算部200は、図3に示したように、生体指標の種類別に勾配値を算出する。本実施形態では、音響脈波の振幅変動、心拍数の変動、脈波伝播遅延時間の変動の3つの生体指標を用いるため、第1勾配値演算部210、第2勾配値演算部220、第3勾配値演算部230を設定している。
第1勾配値演算部210は、音響脈波の振幅変動から勾配値を求めるもので、図4に示したように、フィルタリング処理部2110、相対傾き波形演算部2120を有している。フィルタリング処理部2110及び相対傾き波形演算部2120は、より詳細には、図5のS501~S515、並びに、図6のS601~S611のステップで示されるプログラムとして構築されている。
フィルタリング処理部2110は、音響脈波検出センサ1から得られる時間波形データ(確率共鳴現象により増幅された好ましくは胸部背面から採取される音響脈波(R-APW))を、例えば、中心周波数20Hz近傍のバンドパスフィルタ、好ましくは、10~30Hzの周波数帯域のバンドパスフィルタによりフィルタリングする手段である。これにより、10~30Hzのフィルタ処理波形、すなわち、20Hzを中心周波数とする確率分布をもつ振幅変動(APW to be Filtered- variability:AFV)が得られる。心拍数は約1~1.5Hz前後が標準的な範囲であるが、AFVは、図6のステップS601で示したように、約1秒周期で相対的に大きな全振幅の波形成分が捉えられることから、心周期が顕在化される。
相対傾き波形演算部2120は、図4に示したように、さらに第1演算部2121、第2演算部2122、第3演算部2123、第4演算部2124、第5演算部2125及び第6演算部2126を有する。第1演算部2121は、音響脈波の振幅変動の時間波形データ中、心房収縮から心室収縮の時相で極値3点を選択し、これらの極値間振幅2点を求める(図5のS501、図6のS601)。極値3点は、心電図のR波の時相の直前の極値を中心とし、この中心となる極値とその前後の極値を合わせた3点であり、それらから隣接する極値間振幅2点を求める。心電図のR波の時相は、上記実施形態の音響脈波検出センサ1と同時に心電図波形データを測定することで得ることができるが、その場合には、心電計の装着も必要となる。そこで、音響脈波検出センサ1から得られる時間波形データを用いて心電図のR波の時相に相当する房室弁の閉じる音すなわち心音I音の時相を捉えることで心電計を用いることなくR波の時相を特定することもできる。
心音I音の時相を捉える手段としては、例えば、本出願人が特願2020-180964号、特願2020-180963号として提案している手段を用いることができる。この手段は、生体信号データ(生体指標の時間波形データ)の周波数解析結果から、心尖拍動に起因する振動と心音に起因する振動との境界周波数(Boundary Frequency:BF)を求めることに着眼した手段であり、その境界周波数を用いることで生体指標の時間波形データから心音に起因する振動を抽出することができ、それにより心音I音に相当する時相を特定することができる。
第2演算部2122は、ローレンツプロット法を用いる手段であり、図5のS501~S506並びに図6のS601~S606のステップを実行する。心房収縮から心室収縮の時相で、音響脈波の時間波形の振幅変動をローレンツプロット処理する。具体的には、第1演算部2121により特定された振幅2点の各全振幅を縦軸、横軸にとってプロットしていく(図5のS501、図6のS601)。このとき、所定の計測時間(例えば、全計測時間)に亘ってプロットした点群の傾きを標準傾きとして求める(図5のS502、図6のS602)。また、所定の計測時間(例えば、全計測時間)よりも短い時間(例えば、全計測時間が360秒間の場合、それよりも短い計測時間(例えば30秒間)について、ローレンツプロット法を適用して同様にプロットする。次に、この短い時間窓計測時間でプロットされた点群の傾き(短時間点群傾き)を求めると共に、この短時間点群傾きと標準傾きとの差分を相対傾き(θi)として求める(図5のS503、図6のS603)。短時間点群傾きは、所定のオーバーラップ率で上記の短い計測時間に相当する時間窓毎に逐次求めていく。例えば、時間窓が30秒で、90%のオーバーラップ率の場合、3秒ずつずらして時間窓を設定して各時間窓について短時間点群傾き及び相対傾き(θi)を求めていく。そして、相対傾き(θi)の時間波形を求め(図5のS504、図6のS604)、さらに、相対傾きの平均値を基準値とした時間波形を再計算する(図5のS505、図6のS605)。
なお、相対傾きの時間波形に0.08Hzのローパスフィルタをかけることが好ましい。これは、時間窓30秒で90%のオーバーラップ率では、3秒間で1点プロットされていくため、高い側の周波数は1/3Hzとなり、ナイキスト周波数は1/6Hz(0.17Hz)となる。低い側の周波数は、全計測時間6分間、30秒窓、3秒ずつスライドであるため、110点の点群がプロットされることから、周波数分解能(Δf)は(1/3)/110=0.003Hzとなる。但し、周波数軸において3点(0Hz、0.003Hz、0.006Hz)の加算平均を適用していることから、0.006Hzが最小値となる。波形が5点で同定されると定義すると、波形に必要な時間は12秒間となる。従って、1/12秒 =0.08Hzがカットオフ周波数となり、0.08Hz以上の周波数帯域による波形については、信頼性が乏しいと言える。そこで、上記のように、相対傾きの時間波形に0.08Hzのローパスフィルタを適用している(図5のS506、図6のS606)。
第3演算部2123は、周波数解析を行う。具体的には、第2演算部2122により得られたθi関数(0.08Hzのローパスフィルタを適用したもの(図6のS606で示した時間波形))を周波数解析し(図5のS507)、両対数軸表示させる手段である。両対数軸表示された周波数解析結果である解析波形は、任意の点の前後各1点の計3点の移動平均を施してスムージングして表示される(図5のS508、図6のS607)。
第4演算部2124は、第3演算部2123により得られたスムージングされた解析波形(θ1-Spectrum)に対し、0.006~0.08Hz間で回帰直線を引く。この回帰直線は、具体的には、まず、図12(a)に示したように、1/fの傾きで自動的に引かれる。次に、図12(b)に示したように、1/fの回帰直線に対する解析波形の各点との距離の標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて抽出した所定の周波数帯域の範囲の解析波形の点群に対して4次関数を求める。本実施形態では、低周波側の0.006Hz寄りにおいて最も回帰直線に近い点(偏差値の低い点)と0.08Hz寄りにおいて最も回帰直線に近い点(偏差値の低い点)を抽出し、その2点間を4次関数の近似曲線を求める周波数帯域として抽出する(図5のS509、図6のS608)。なお、抽出する点は、偏差値の低い点に限定されるものではなく、例えば、特に低周波側では、偏差値の高い点を抽出した方が適切な場合もあり、第4演算部2124は、偏差値の分散の仕方等に応じて、適切な周波数帯域を抽出するように設定される。
第5演算部2125は、図5のS510及び図6のS609のステップに相当し、第3演算部2123により得られたスムージングされた解析波形について、第4演算部2124によって抽出された周波数帯域における4次関数の近似曲線を算出する。第5演算部2125はまた、算出された4次関数から2つの変曲点を求める。
第6演算部2126は、図5のS511以降のステップに相当し、第5演算部2125により得られた4次関数の極値数を求めると共に、第1勾配値演算部210の最終的な解析結果を出力する。具体的には、第6演算部2126において、4次関数の増減表と凹凸表を作成し、変曲点が対象体域内に2つあるか否かを判定する(図5のS511)。図5のS511の判定が「Yes」の場合、さらに、極値が対象体域内内に3箇所あるか否かを判定する(図5のS512)。3箇所と判定された場合(図5のS12において「Yes」の場合)には、4次関数の2つの変曲点間の勾配(Gradient of inflection:GI)の値を求め、これを解析結果として出力する(図5のS513、図6のS610)。4次関数の極値が対象帯域内に3箇所存在しないと判定された場合(図5のS512において「No」の場合)には、さらに、4次関数の極値が対象帯域内に1箇所若しくは2箇所存在するか否かが判定される(図5のS514)。図5のS514の判定において「Yes」の場合には、変曲点の接線の勾配(Gradient of tangent:GT)の値を求め(図5のS515、図6のS611)、これを解析結果として出力する。
4次関数の極値が2箇所以下の場合はさらに次のように接線の勾配を求める。すなわち、極値が2箇所の場合、低周波帯域の変曲点が極大値より高いか低いか、接線の勾配が正負の両方存在するか否かを考慮していずれの変曲点の接線を採用するかを決定する。極値が1箇所でかつ変曲点を挟んで凹凸関数が存在する場合、極値でない方の変曲点の接線を採用する。
なお、対象帯域内に4次関数の2つの変曲点が存在しない場合(図5のS511の判定において「No」の場合)、並びに、4次関数の極値が対象帯域内に存在しない場合(図5のS514の判定において「No」の場合には、いずれもS509のステップに戻り、対象帯域を再設定し、再び4次関数を算出して上記を繰り返す。
次に、生体指標センサ1000としての心電計から得られる心拍数の時間波形データを用いる場合について説明する。この場合は、第2勾配値演算部220により演算処理される。まず、心電図のRRIから心拍数(HR)を得る(図7のS701、図8のS801)。次に、ローレンツプロット法を適用し、横軸にi+1番目、縦軸にi番目の心拍数を順次プロットし、所定の計測時間(例えば、全計測時間に相当する360秒間)のローレンツプロット図を作成し、プロットした点群の標準傾きを求める(図7のS702、図8のS802)。また、所定の計測時間(例えば、全計測時間)よりも短い時間(例えば、全計測時間が360秒間の場合、それよりも短い計測時間(例えば30秒間))について、ローレンツプロット法を適用して同様にプロットし、この短い時間窓計測時間でプロットされた点群の傾き(短時間点群傾き)を求めると共に、この短時間点群傾きと標準傾きとの差分を相対傾き(θi)として求める(図7のS703、図8のS803)。短時間点群傾きは、第1勾配値演算部210における解析と同様に、所定のオーバーラップ率で短い計測時間に相当する時間窓毎に逐次求められる(例えば、時間窓が30秒間、90%のオーバーラップ率の場合、3秒毎)。そして、各時間窓について短時間点群傾き及び相対傾き(θi)を求め、相対傾き(θi)の時間波形を作成する(図7のS704、図8のS804)。
その後は、第1勾配値演算部210の第3演算部2123~第6演算部2126と同様に、相対傾き(θi)の時間波形について周波数解析を行い、両対数軸表示で示される解析波形について4次関数を規定し、変曲点の位置と極値数によって、心拍数変動に関する勾配値としてのGT値又はGI値を求める。
次に、生体指標センサ1000としての心電計及び指尖容積脈波計から得られる脈波伝播遅延時間の時間波形データを用いる場合について説明する。この場合は、第3勾配値演算部230により演算処理される。まず、心電図と指尖容積脈波の各時間波形データを比較し、心電図のR波と末梢の脈波出現までの時間である脈波伝播遅延時間を得る(図9のS901、図10のS1001)。脈波伝播遅延時間は、通常、血圧が上昇して血管壁が硬くなると短くなり、血圧が低下して血管壁が柔らかくなると長くなることから血圧変化に関連する。
次に、ローレンツプロット法を適用し、横軸にi+1番目、縦軸にi番目の脈波伝播遅延時間を順次プロットし、所定の計測時間(例えば、全計測時間に相当する360秒間)のローレンツプロット図を作成し、プロットした点群の標準傾きを求める(図9のS902、図10のS1002)。また、所定の計測時間(例えば、全計測時間)よりも短い時間(例えば、全計測時間が360秒間の場合、それよりも短い計測時間(例えば30秒間))について、ローレンツプロット法を適用して同様にプロットし、この短い時間窓計測時間でプロットされた点群の傾き(短時間点群傾き)を求めると共に、この短時間点群傾きと標準傾きとの差分を相対傾き(θi)として求める(図9のS903、図10のS1003)。短時間点群傾きは、第1勾配値演算部210における解析と同様に、所定のオーバーラップ率で短い計測時間に相当する時間窓毎に逐次求められる(例えば、時間窓が30秒間、90%のオーバーラップ率の場合、3秒毎)。そして、各時間窓について短時間点群傾き及び相対傾き(θi)を求め、相対傾き(θi)の時間波形を作成する(図9のS904、図10のS1004)。
その後は、第1勾配値演算部210の第3演算部2123~第6演算部2126と同様に、相対傾き(θi)の時間波形について周波数解析を行い、両対数軸表示で示される解析波形について4次関数を規定し、変曲点の位置と極値数によって、脈波伝播遅延時間の変動に関する勾配値としてのGT値又はGI値を求める。
種類別相関データ演算部300は、上記により得られた生体指標別の勾配値(GT値,GI値)を、それらを算出した被験者の血圧計(上腕式)から得た上腕血圧値と相関させ、種類別相関データとしての相関図を求め、データベース600の第1記録部610に記録する(図4参照)。複数の被験者の相関を記録することで、血圧計による上腕血圧値と勾配値(GT値,GI値)との種類別相関データが構築される。
種類別相関データは、本実施形態では、音響脈波の振幅変動に関するもの、心拍数の変動に関するもの、脈波伝播遅延時間の変動に関するものの3種類が得られる。
統合相関データ演算部400は、種類別相関データ演算部300により得られた複数種類の種類別相関データ、本実施形態では、音響脈波の振幅変動、心拍数の変動、脈波伝播遅延時間の変動に関する各種類別相関データを、同一座標上に展開して相関図を求め、これが統合相関データとなる。そして、統合相関データ演算部400は、この統合相関データである相関図にプロットされた点群について回帰直線(回帰式)を求める。統合相関データ演算部400は、このようにして得られた統合相関データとしての相関図及び回帰直線(回帰式)のデータを、データベース600の第2記録部620に記録する(図4参照)。
推定血圧演算部500は、血圧推定対象者の血圧を推定する。具体的には、血圧推定対象者について、上記の音響脈波検出センサ1、心電計、市販の心拍数計、指尖容積脈波計などを用いて測定された、音響脈波、心拍数、脈波伝播遅延時間などのうちの少なくとも一つの生体指標に関する時間波形データを勾配値演算部200に送り、勾配値演算部200にてその情報を受信する(図11のS1101)。勾配値演算部200は、これらの時間波形データを用いて、血圧推定対象者の音響脈波、心拍数、脈波伝播遅延時間の各生体指標のそれぞれについて、勾配値(GT値,GI値)を算出する(図11のS1102)。なお、血圧推定対象者の勾配値を求める勾配値演算部200の解析工程は、音響脈波について示した図4~図6の工程、心拍数について示した図7及び図8の工程、脈波伝播遅延時間について示した図9及び図10の工程と同じ工程が実行される。
推定血圧演算部500は、勾配値演算部200から勾配値(GT値,GI値)の情報を受け取る(図11のS1103)。推定血圧演算部500は、データベース600の第2記録部620にアクセスして統合相関データを取得する(図11のS1104)。統合相関データに、血圧推定対象者のGT値、GI値を当てはめ(回帰式にGT値、GI値を代入し)(図11のS1105)、推定血圧値を得る(図11のS1106)。
ここで、本実施形態では、血圧推定対象者の勾配値(GT値,GI値)は、心拍数、音響脈波、脈波伝播遅延時間などの生体指標のうち、いずれか一つを用いて算出されたものでよい。上記のように統合相関データは、複数種類の種類別相関データを統合したものである。そのため、後述の実験結果のように、統合相関データの回帰直線(回帰式)の決定係数は、各種類別相関データから得られる回帰直線(回帰式)の決定係数と比較して、高いケースが多い。逆に決定係数が低くなっている場合でも、その差は小さい。そのため、勾配値(GT値,GI値)が、いずれの生体指標を基にしたものであっても、統合相関データに適用することにより、概ね高い推定精度で血圧を推定できる。よって、本実施形態で用いる統合相関データは、一つの相関図でありながら、複数種類の生体指標に対応でき、汎用性が高いという特徴を有する。
生体指標の中で、例えば音響脈波は、座席に配置した音響脈波検出センサ1からデータを得るため、静的環境下であれば問題ないものの、自動車用シートに配置されている場合、走行中は常に振動が入力されるため、この外部振動を除去する処理が必要となる。外部振動を除去することで精度の高い音響脈波データを取り出すことももちろん可能であるが、計算負荷が大きいことから、例えば、このような走行中の生体指標としては、胸部や腕に装着されるウエアラブルな心拍計から心拍数情報を得ることが望ましい。このような心拍計により、走行中の車内でも比較的高い精度で測定できる。
従って、外部ノイズの入力が問題となるような動的環境下では、例えば、心拍数のデータから得た勾配値(GT値,GI値)を用いることで、高い精度の血圧推定を行うことができる。よって、統合相関データの回帰式で用いる勾配値(GT値,GI値)は、測定環境に適した生体指標から求めたものを選択することで推定精度を高めることができる。
また、複数の生体指標、本実施形態では、心拍数、音響脈波、脈波伝播遅延時間のうちの2以上の生体指標の各勾配値の平均値を統合相関データの回帰式に代入して推定血圧値を求めると、推定精度が高くなるため好ましい。
なお、上記した説明では、推定血圧演算部500が統合相関データを用いて血圧を推定している。しかしながら、複数種類の生体指標が得られる場合、それぞれの種類別相関データの回帰式に、各生体指標から得られる勾配値を代入し、種類別推定血圧値を求め、得られた複数の種類別推定血圧値の平均値を、最終的に出力する推定血圧値とすることもできる。
次に、本実施形態の血圧推定装置100を用いて行った実験について説明する。
[実験例1:入院又は通院被験者のデータを用いた相関データの構築]
何らかの疾患により入院又は通院している40~95歳の76名の被験者の生体情報を用いて相関データを構築した。
(心拍数の変動を用いた種類別相関データの演算)
図13は、上記76名の各被験者に関し、心拍数と、血圧計(上腕式)により測定した収縮期血圧値との相関を示した図である。この相関図の回帰直線(動脈圧回帰直線(SBP-Regression line:SR))の回帰式は、y=-0.1208x+128.74となった。決定係数:R=0.0115であり、相関性が極めて低かった。
図14は、図13のデータを用い、上記76名の各被験者について、第2勾配値演算部220によりローレンツプロットの標準傾きを求め(図7のS702、図8のS802)、収縮血圧値との相関を示した図である。この相関図の動脈圧回帰直線(SR)の回帰式は、y=1.8558x+119.7となった。決定係数:R=0.0021であり、相関性が極めて低かった。
図15は、上記76名の各被験者について、第2勾配値演算部220において、ローレンツプロットを適用し、心拍数変動の勾配値(GT値,GI値)を求め、種類別相関データ演算部300により、勾配値と上腕血圧値と相関させて得た心拍数変動に関する種類別相関データである。この相関図の動脈圧回帰直線(SR)は、y=15.192x+126.31となった。決定係数:R=0.7001であり、高い相関性が認められた。心拍変動情報に関しては、図13や図14では収縮期血圧との相関性が低かったが、図15に示したように、勾配値(GT値,GI値)を用いることで、収縮期血圧との相関性が高まることがわかる。
(脈波伝播遅延時間の変動を用いた種類別相関データの演算)
図16は、上記76名の各被験者に関し、脈波伝播遅延時間と、血圧計(上腕式)により測定した収縮期血圧値との相関を示した図である。この相関図の動脈圧回帰直線(SR)の回帰式は、y=-282.2x+176.45となった。決定係数:R=0.162であり、相関性が低かった。
図17は、図16のデータを用い、上記76名の各被験者について、第3勾配値演算部230によりローレンツプロットの標準傾きを求め(図9のS902、図10のS1002)、収縮血圧値との相関を示した図である。この相関図の動脈圧回帰直線(SR)の回帰式は、y=17.707x+112.16となった。決定係数:R=0.1075であり、相関性はあまり高くなかった。
図18は、上記76名の各被験者について、第3勾配値演算部230において、ローレンツプロットを適用し、脈波伝播遅延時間の変動の勾配値(GT値,GI値)を求め、種類別相関データ演算部300により、勾配値と上腕血圧値と相関させて得た脈波伝播遅延時間の変動に関する種類別相関データである。この相関図の動脈圧回帰直線(SR)の回帰式は、y=14.884x+126.8となった。決定係数:R=0.5547であり、相関性は比較的高かった。脈波伝播遅延時間の変動情報に関しても、図16や図17では収縮期血圧との相関性が低かったが、図18に示したように、勾配値(GT値,GI値)を用いることで、収縮期血圧との相関性が高まることがわかる。
(音響脈波の振幅変動を用いた種類別相関データの演算)
図19は、上記76名の被験者に関し、第1勾配値演算部210において、音響脈波検出センサ1から得られた時間波形データについてローレンツプロットを適用し、音響脈波の振幅変動の勾配値(GT値,GI値)を求め、種類別相関データ演算部300により、勾配値と上腕血圧値と相関させて得た音響脈波の振幅変動に関する種類別相関データである。この相関図の動脈圧回帰直線(SR)の回帰式は、y=21.558x+138.58となった。R=0.7606であり、決定係数が高く、高い相関性が認められた。
(統合相関データの演算)
統合相関データ演算部400により、図15、図18及び図19に示された3つの種類別相関データを構成している全データを、同一座標上にプロットした。図20に示した相関図がプロットした座標(統合相関データ)である。この統合相関データの回帰直線(統合動脈圧回帰直線(Integration-SBP-Regression lin:ISR))は、y=15.486x+129.01の回帰式で示され、決定係数:R=0.6121であった。
(推定血圧演算部500による血圧の推定)
血圧計(上腕式)による上腕血圧値の実測値が正常域血圧の119mmHgである被験者について、血圧の推定を行った。
この被験者の心拍数の変動から得られた勾配値は-0.62であり、脈波伝播遅延時間の変動から求めた勾配値は-0.93であり、音響脈波の振幅変動から求めた勾配値は、-0.55であった。
まず、心拍数の変動から得られた勾配値-0.62を、図15の心拍数の変動から求めた種類別相関データの回帰式のxに代入して求めた推定血圧値は117mmHgであった。脈波伝播遅延時間の変動から求めた勾配値-0.93を、図18の脈波伝播遅延時間の変動から求めた種類別相関データの回帰式のxに代入して求めた推定血圧値は113mmHgであった。音響脈波の振幅変動から求めた勾配値-0.55を、図19の音響脈波の振幅変動から求めた種類別相関データの回帰式のxに代入して求めた推定血圧値は127mmHgであった。
一方、統合相関データである図20の統合動脈圧回帰直線(ISR)を示す回帰式のxに代入すると、推定血圧値は、心拍数の変動から得られた勾配値-0.62を代入した場合は119mmHg、脈波伝播遅延時間の変動から求めた勾配値-0.93を代入した場合は115mmHg、音響脈波の振幅変動から求めた勾配値-0.55を代入した場合は121mmHgとなった。推定血圧値の差は最大で6mmHgであった。図15、図18及び図19の各種類別相関データに各勾配値を代入した場合の推定血圧値は、最大14mmHg(127mmHg-113mmHg)であったが、統合相関データを用いた場合には、心拍数、脈波伝播遅延時間、音響脈波と異なる計測装置から得られたデータであっても、高い推定精度が得られ、複数種類の生体指標に対応でき汎用性が高いことがわかる。
そのため、例えば、音響脈波検出センサ1によるデータの取得は、静かな環境下で行うことにより高い精度が得られ、動的環境下では、高い精度を得るためにはノイズ除去処理などの工程が必要となるが、心拍数情報は、動的環境下でも比較的高い精度で取得できる。よって、そのような環境下では、心拍数情報を、統合相関データである図20の統合動脈圧回帰直線(ISR)に当てはめて演算することで、高い精度で血圧推定を行うことができる。すなわち、本実施形態の統合相関データは、測定環境下に対応した取得しやすい生体指標を用いて血圧推定を行うことができる。
また、3つの勾配値(-0.62、-0.93、-0.55)の平均値を求めると-0.7となる。この平均値を図20の統合動脈圧回帰直線(ISR)を示す回帰式xに代入した場合、推定血圧値は118mmHgとなる。よって、複数の生体指標から得られる勾配値の平均値を用いて推定することにより、実測値により近く、推定精度を向上させることができる。
また、心拍数の変動から得られた勾配値-0.62を、図15の心拍数の変動から求めた種類別相関データの回帰式のxに代入して求めた推定血圧値(種類別推定血圧値):117mmHg、脈波伝播遅延時間の変動から求めた勾配値-0.93を、図18の脈波伝播遅延時間の変動から求めた種類別相関データの回帰式のxに代入して求めた推定血圧値(種類別推定血圧値):113mmHg、音響脈波の振幅変動から求めた勾配値-0.55を、図19の音響脈波の振幅変動から求めた種類別相関データの回帰式のxに代入して求めた推定血圧値(種類別推定血圧値):127mmHgの平均すると、119mmHgとなる。このように、種類別推定血圧値を求めた後に平均すると、種類別相関データのうち、回帰式の係数や定数項の値に差が相対的に大きいデータの影響をより反映させることができる。
[実験例2:健康被験者の生体情報を用いた相関データの構築]
20歳代の26名の健康な被験者のデータを用いて相関データを構築した。
(心拍数の変動を用いた種類別相関データの演算)
上記26名の各被験者に関し、図21は、心拍数と血圧計(上腕式)により測定した収縮期血圧値との相関を示した図であり、図22は、第2勾配値演算部220により求めたローレンツプロットの標準傾きと収縮期血圧値との相関を示した図である。決定係数は、図21ではR=0.0386、図22ではR=0.0095であり、いずれも相関性が低かった。
これに対し、第2勾配値演算部220において、ローレンツプロットを適用し、心拍数変動の勾配値(GT値,GI値)を求め、種類別相関データ演算部300により、勾配値と上腕血圧値と相関させて得た心拍数変動に関する種類別相関データである図23の相関図では、動脈圧回帰直線(SR)の回帰式は、y=6.7468x+118.72となり、決定係数はR=0.4045となって、ある程度の相関性が得られた。
(脈波伝播遅延時間の変動を用いた種類別相関データの演算)
上記26名の各被験者に関し、図24は、脈波伝播遅延時間と血圧計(上腕式)により測定した収縮期血圧値との相関を示した図であり、図25は、第2勾配値演算部220により求めたローレンツプロットの標準傾きと収縮期血圧値との相関を示した図である。決定係数は、図24ではR=0.1677、図25ではR=0.0013であり、いずれも相関性が低かった。
これに対し、第2勾配値演算部220において、ローレンツプロットを適用し、心拍数変動の勾配値(GT値,GI値)を求め、種類別相関データ演算部300により、勾配値と上腕血圧値と相関させて得た脈波伝播遅延時間に関する種類別相関データである図26の相関図では、動脈圧回帰直線(SR)の回帰式は、y=7.0151x+120.15となり、決定係数はR=0.438となって、ある程度の相関性が得られた。
(音響脈波の振幅変動を用いた種類別相関データの演算)
図27は、上記26名の被験者に関し、第1勾配値演算部210において、音響脈波検出センサ1から得られた時間波形データについてローレンツプロットを適用し、音響脈波の振幅変動の勾配値(GT値,GI値)を求め、種類別相関データ演算部300により、勾配値と上腕血圧値と相関させて得た音響脈波の振幅変動に関する種類別相関データである。この相関図の動脈圧回帰直線(SR)の回帰式は、y=14.782x+125.29となった。R=0.6184であり、決定係数が高く、高い相関性が認められた。
(統合相関データの演算)
統合相関データ演算部400により、図23、図26及び図27に示された3つの種類別相関データを構成している全データを、同一座標上にプロットした。図28に示した相関図がプロットした座標(統合相関データ)である。この統合相関データの回帰直線(統合動脈圧回帰直線(ISR)は、y=7.5967x+119.7の回帰式で示され、決定係数:R=0.4159であった。
(推定血圧演算部500による血圧の推定)
血圧計(上腕式)による上腕血圧値の実測値が正常域血圧の112mmHgである被験者について、血圧の推定を行った。
この被験者の心拍数の変動から得られた勾配値は-0.8であり、脈波伝播遅延時間の変動から求めた勾配値は-0.7であり、音響脈波の振幅変動から求めた勾配値は、-0.92であった。
まず、心拍数の変動から得られた勾配値-0.8を、図23の心拍数の変動から求めた種類別相関データの回帰式のxに代入して求めた推定血圧値は113mmHgであった。脈波伝播遅延時間の変動から求めた勾配値-0.7を、図26脈波伝播遅延時間の変動から求めた種類別相関データの回帰式のxに代入して求めた推定血圧値は115mmHgであった。音響脈波の振幅変動から求めた勾配値-0.92を、図27の音響脈波の振幅変動から求めた種類別相関データの回帰式のxに代入して求めた推定血圧値は112mmHgであった。
一方、統合相関データである図28の統合動脈圧回帰直線(ISR)を示す回帰式のxに代入すると、推定血圧値は、心拍数の変動から得られた勾配値-0.8を代入した場合は114mmHg、脈波伝播遅延時間の変動から求めた勾配値-0.7を代入した場合は114mmHg、音響脈波の振幅変動から求めた勾配値-0.92を代入した場合は113mmHgとなった。推定血圧値の差は最大で1.68mmHgであった。図23、図26及び図27の各種類別相関データに各勾配値を代入した場合の推定血圧値は、最大3mmHg(115mmHg-112mmHg)であったが、本実験例においても、統合相関データを用いた場合には、心拍数、脈波伝播遅延時間、音響脈波と異なる計測装置から得られたデータであっても、高い推定精度が得られ、複数種類の生体指標に対応でき汎用性が高いことがわかる。
また、3つの勾配値(-0.8、-0.7、-0.92)の平均値を求めると-0.8となる。この平均値を図28の統合動脈圧回帰直線(ISR)を示す回帰式xに代入した場合、推定血圧値は114mmHgとなる。本実験例では、3つの勾配値を個別に用いた場合と平均値を用いた場合とで実質的に差はなかったが、実験例1の結果を考慮すると、平均値を用いることで、実測値により近くなる傾向があると言える。
一方、種類別推定血圧値は、それぞれ113mmHg、115mmHg、112mmHgであり、この平均値から求められる推定血圧値は113mmHgとなり、実測血圧値により近くなった。
[種類別相関データの検討]
図29は、実験例1の図15及び実験例2の図23に示した心拍数変動に基づいた被験者102名分の種類別相関データを合体させた種類別相関データあり、図30は、実験例1の図18及び実験例2の図26に示した脈波伝播遅延時間に基づいた種類別相関データを合体させた被験者102名分の種類別相関データあり、図31は、実験例1の図19及び実験例2の図27に示した音響脈波の振幅変動に基づいた被験者102名分の種類別相関データを合体させた種類別相関データある。
図32は、図29~図31の種類別相関データを統合した統合相関データを示し、図29~図31の各回帰直線y1,y2,y3を合わせて示した。
図32に示した3つの回帰直線を比較すると、心拍数変動の回帰直線y1と脈波伝播遅延時間の回帰直線y2の傾きとy切片の値はいずれも近似しているのに対し、音響脈波の振幅変動に基づく回帰直線y3の傾きとy切片の値は相対的に差が大きい。これは心拍数変動と脈波伝播遅延時間が周期成分をパラメータとしているのに対し、音響脈波の振幅変動が振幅成分をパラメータとしていることに基づく差である。しかしながら、このように、異なる計測器を用いて測定され、異なるパラメータを用いて算出された回帰直線であるにも関わらず、いずれも、勾配値-1.3のとき、対応する収縮期血圧値が110mmHgとなってる。これは、勾配値(GT値、GI値)と収縮期血圧との関連性が高いことを示すものであり、勾配値を用いた収縮期血圧推定手法の正しさを示す一つの証左と言える。
また、音響脈波の振幅変動に基づく回帰直線y3の傾きとy切片136.58は、収縮期血圧の正常値と高血圧値の境界である140mmHgとほぼ一致しており、音響脈波の振幅変動の捉えている心室内圧の変動がほぼ140mmHgを境としていることも示唆された。
[高血圧被験者の血圧推定]
高血圧症及び痛風と診断され、心筋梗塞・脳梗塞・大動脈狭窄の疑いもある被験者について睡眠実験を行い、その解析データを用いて血圧推定を行った。実験中、被験者の心電図を測定し、心電図のRRIから心拍数を測定し(図33(a))、RRIをウェーブレット解析して自律神経活動を捉えた(図33(b))。また、音響脈波検出センサ1を胸部背面の左側(左側センサ)及び頭部(頭部センサ)に当接し、それぞれから得られたデータについて、本出願人による特開2016-112144号公報に記載されているように、ゼロクロス点を用いて周波数の時系列波形を求め、この周波数の時系列波形をスライド計算して周波数の傾き時系列波形を求め(図33(c),(e))、さらに、周波数傾き時系列波形から、心循環系のゆらぎを示す周波数成分として、心循環系のゆらぎの特性が切り替わる周波数よりも低い周波数の機能調整信号(0.0017Hz)、機能調整信号よりも高い周波数の疲労受容信号(0.0035Hz)、及び、疲労受容信号よりもさらに高い周波数の活動調整信号(0.0053Hz)の各周波数成分を抜き出し、これらの周波数成分のそれぞれの分布率を時系列に求めた(図33(d),(f))。
睡眠実験は仰臥位で行った。被験者は疲労状態であったため速やかに入眠した。図33(a)より、心拍変動は約24分(約1440秒)経過まで60~65/minと変動が小さく、その後の約12分間は、約55~70/minと比較的大きな変動で経過した。実験開始後約36分(約2160秒)で覚醒し、座位で6分間、心電計及び音響脈波検出センサ1によるデータの計測を継続した。座位では、心拍数約55~60/minと比較的落ち着いた状態であった。
この心拍変動の様子は、交感神経刺激としてもとられることができ、1440秒過ぎに交感神経がやや優位となり、また、約2100~2200秒(約35~37分)でLF/HFの指標が突出し、交感神経活動が活発化し、覚醒したことがわかる。
図33(c)~(f)の周波数傾き、周波数傾き分布率の各波形でも、上記に対応する時間帯において同様の特徴を示す変化があらわれている。
図34(a)~(c)は心拍数の変動に関するローレンツプロット図であり、図34(d)~(f)は音響脈波の振幅変動に関するローレンツプロット図である。図34(d),(e)に示したように、この被験者の場合、横軸の0.01(V)付近を中心として集中するプロットの大きな塊のほかに、それよりも面積の小さいプロットの塊が横軸の値0(v)付近に存在している。これは心循環器系疾患を有することに基づいて現れている現象と考えられ、小さな塊を除外するとその現象が考慮されないことから、回帰直線は2つの塊を考慮して算出することが適切であると考えられる。
図35(a)~(d)は、図34(a)~(f)に示したローレンツプロットの回帰直線を用いて得られた勾配値(GT値、GI値)である。図35(a),(b)は、1500~1860秒の睡眠時におけるデータを用いた算出した勾配値であり、図35(c),(d)は、覚醒後、座位姿勢で得られた6分間のデータを用いて算出した勾配値である。
図35(e)は、図32に統合相関データの回帰直線の回帰式:y=14.6+128.19、R=0.6076に、図35(a)~(d)の各勾配値を代入して推定した収縮期血圧を示している。なお、上腕血圧計を用いて測定されたこの被験者の収縮期血圧の実測値は、1500~1860秒の睡眠時において142mmHgであり、座位姿勢では150mmHgであった。
図35(a)の音響脈波の振幅変動(AF)の勾配値:0.3554から求めた睡眠時(仰臥位)の推定血圧値は133mmHgであり、図35(b)の心拍数の変動の勾配値:0.4347から求めた睡眠時(仰臥位)の推定血圧値は135mmHgであった。
図35(c)の音響脈波の振幅変動(AF)の勾配値:1.0575から求めた覚醒時(座位)の推定血圧値は144mmHgであり、図35(d)の心拍数の変動の勾配値:1.069から求めた覚醒時(座位)の推定血圧値は144mmHgであった。
よって、勾配値(GT値、GI値)と図32に示した統合相関データを用いた収縮期血圧の推定は、睡眠時において高血圧被験者の血圧を精度よく捉えていると共に、覚醒後、交感神経活動レベルが上がって血圧が高くなった事象も正確に捉えている。また、図32に示した統合相関データに勾配値を適用することにより、心拍数の変動、音響脈波の振幅変動のいずれから求めたものであっても、推定血圧値がほぼ一致することがわかる。
ここで、図36は、健康な21~65歳(平均年齢:43歳)の被験者21名(内女性2名)の音響脈波の振幅変動(AF)の勾配値(GT値、GI値)と収縮期血圧値(実測値)との相関を示した種類別相関データである(解析事例数:398件)。この回帰直線の回帰式はy=18.031x+136.14で、決定係数:R=0.8167であった。
一方、実験例1の「何らかの疾患により入院又は通院している40~95歳の76名の被験者」の音響脈波の振幅変動の勾配値(GT値,GI値)と収縮期血圧値との種類別相関データは、図19に示したとおりであり、その回帰式は、y=21.558x+138.58であった。
また、実験例2の「健康な20歳代の26名の被験者」の音響脈波の振幅変動の勾配値(GT値,GI値)と収縮期血圧値との種類別相関データは、図27に示したとおりであり、その回帰式は、y=14.782x+125.29であった。
これらの結果から、20歳代の健康被験者の集団では、回帰式のxの係数が14.782(図27)、平均年齢43歳の健康被験者の集団では、回帰式のxの係数が18.031(図36)、40~95歳までの高齢で疾患を有する被験者の集団では、回帰式のxの係数が21.558(図19)となっており、若年層集団ほど傾きが小さく、高齢者や疾患を有する者の場合には傾きが大きくなる傾向が確認された。これは加齢にともなって、血管の弾力性が失われ、また、ホルモンの調整が入って血管が収縮等しやすなり、心臓の収縮力に対して敏感になる傾向があることに関連するものと考えられる。よって、本実施形態の勾配値(GT値、GI値)との関係で求められる種類別相関データの回帰式は、加齢や健康状態を推定する指標としても用いることも可能である。
また、図37は、図19、図27及び図36のデータを全て一つの座標にまとめた種類別相関データである。事例数がより多くなるこで、血圧推定を行う場合の信頼性が高まる。
1 音響脈波検出センサ
100 血圧推定装置
200 勾配値演算部
210 第1勾配値演算部
220 第2勾配値演算部
230 第3勾配値演算部
300 種類別相関データ演算部
400 統合相関データ演算部
500 推定血圧演算部
600 データベース
610 第1記録部
620 第2記録部
1000 生体指標センサ

Claims (15)

  1. 心血管系の応答に関連する複数種類の生体指標の時間波形データを解析し、各解析波形を両対数軸表示で求め、その解析波形に対して4次関数を規定し、その極値数に応じて、2つの変曲点間の勾配値、又は、変曲点における接線の勾配値を求め、そのいずれかを解析結果として出力する勾配値演算部と、
    前記解析結果である前記勾配値を、前記生体指標の種類別に、実測した上腕血圧値に相関させた種類別相関データを求める種類別相関データ演算部と、
    複数の被験者から得られた前記時間波形データを用い、前記生体指標の種類別に複数求められた前記種類別相関データを同一座標上に展開し、統合相関データを求める統合相関データ演算部と、
    血圧推定対象者について、前記勾配値演算部により、前記複数種類の生体指標中、少なくとも一つの生体指標の時間波形データを解析し、前記解析結果である勾配値を求め、この勾配値を前記統合相関データの回帰式に代入して前記上腕血圧値に相当する推定血圧値を求める推定血圧演算部と
    を有する血圧推定装置。
  2. 前記推定血圧演算部は、
    前記血圧推定対象者について、前記勾配値演算部により、前記複数種類の生体指標中、2以上の生体指標の時間波形データを解析し、各生体指標に関して前記解析結果である前記勾配値を求め、この生体指標毎に得られる勾配値の平均値を前記統合相関データの回帰式に代入して前記上腕血圧値に相当する推定血圧値を求める請求項1記載の血圧推定装置。
  3. 前記推定血圧演算部は、
    前記血圧推定対象者について、前記勾配値演算部により、前記複数種類の生体指標中、2以上の生体指標の時間波形データを解析し、各生体指標に関して前記解析結果である前記勾配値を求め、この生体指標毎に得られる勾配値を、対応する前記種類別相関データの回帰式に代入して種類別推定血圧値を求め、得られた複数の種類別推定血圧値の平均値を、前記上腕血圧値に相当する推定血圧値として出力する請求項1記載の血圧推定装置。
  4. 前記複数種類の生体信号が、心拍数の変動、脈波伝播遅延時間の変動及び体表を介して得られる音響脈波の振幅変動から選ばれる請求項1記載の血圧推定装置。
  5. 前記勾配値演算部は、
    前記4次関数の極値が3箇所存在し、2つの変曲点を挟んで凹凸関数になっている場合に2つの変曲点間の勾配値を解析結果として採用し、前記極値が2箇所以下の場合にいずれかの変曲点における接線の勾配値を解析結果として採用する請求項1記載の血圧推定装置。
  6. 前記勾配値演算部は、
    前記複数種類の生体指標のぞれぞれについて、ローレンツプロット法を適用し、基準時間範囲におけるローレンツプロットから標準傾きを求め、前記基準時間範囲より短い所定時間毎に作成される各ローレンツプロットの傾きと前記標準傾きの差分である相対傾きを所定のオーバーラップ率、所定の時間窓で逐次求め、得られた相対傾きの時間波形を所定の周波数でフィルタリングし、そのフィルタリングした時間波形に対して周波数解析を施し、その周波数解析結果を前記両対数軸表示で示される解析波形に変換し、前記解析波形中に傾き1/fの回帰直線を適用し、その回帰直線に対する前記解析波形を構成する各点の距離の標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて抽出した所定の周波数帯域の範囲の解析波形の点群に対して前記4次関数を求める
    請求項1記載の血圧推定装置。
  7. 前記勾配値演算部は、
    前記生体指標として前記「体表を介して得られる音響脈波の振幅変動」を用いる場合には、心房収縮及び心室収縮の時相に含まれる極値から2つの極値間振幅を求め、ローレンツプロット法を適用し、基準時間範囲におけるローレンツプロットから標準傾きを求め、前記基準時間範囲より短い所定時間毎に作成される各ローレンツプロットの傾きと前記標準傾きの差分である相対傾きを所定のオーバーラップ率、所定の時間窓で逐次求め、得られた相対傾きの時間波形を所定の周波数でフィルタリングし、そのフィルタリングした時間波形に対して周波数解析を施し、その周波数解析結果を前記両対数軸表示で示される解析波形に変換し、前記解析波形中に傾き1/fの回帰直線を適用し、その回帰直線に対する前記解析波形を構成する各点の距離の標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて抽出した所定の周波数帯域の範囲の解析波形の点群に対して前記4次関数を求める
    請求項4記載の血圧推定装置。
  8. 心血管系の応答に関連する複数種類の生体指標の時間波形データを解析し、各解析波形を両対数軸表示で求め、その解析波形に対して4次関数を規定し、その極値数に応じて、2つの変曲点間の勾配値、又は、変曲点における接線の勾配値を求め、そのいずれかを解析結果として出力する手順と、
    前記解析結果である前記勾配値を、前記生体指標の種類別に、実測した上腕血圧値に相関させた種類別相関データを求める手順と、
    複数の被験者から得られた前記時間波形データを用い、前記生体指標の種類別に複数求められた前記種類別相関データを同一座標上に展開し、統合相関データを求める手順と、
    血圧推定対象者について、前記複数種類の生体指標中、少なくとも一つの生体指標の時間波形データを解析し、前記解析結果である勾配値を求め、この勾配値を前記統合相関データの回帰式に代入して前記上腕血圧値に相当する推定血圧値を求める手順と
    を実行させ、コンピュータを血圧推定装置として機能させるコンピュータプログラム。
  9. 前記推定血圧値を求める手順では、
    前記血圧推定対象者について、前記複数種類の生体指標中、2以上の生体指標の時間波形データを解析し、各生体指標に関して前記解析結果である前記勾配値を求め、この生体指標毎に得られる勾配値の平均値を前記統合相関データの回帰式に代入して前記上腕血圧値に相当する推定血圧値を求める請求項8記載のコンピュータプログラム。
  10. 前記推定血圧値を求める手順では、
    前記血圧推定対象者について、前記複数種類の生体指標中、2以上の生体指標の時間波形データを解析し、各生体指標に関して前記解析結果である前記勾配値を求め、この生体指標毎に得られる勾配値を、対応する前記種類別相関データの回帰式に代入して種類別推定血圧値を求め、得られた複数の種類別推定血圧値の平均値を、前記上腕血圧値に相当する推定血圧値として出力する請求項8記載のコンピュータプログラム。
  11. 前記複数種類の生体信号が、心拍数の変動、脈波伝播遅延時間の変動及び体表を介して得られる音響脈波の振幅変動から選ばれる請求項8記載のコンピュータプログラム。
  12. 前記勾配値を求める手順で、
    前記4次関数の極値が3箇所存在し、2つの変曲点を挟んで凹凸関数になっている場合に2つの変曲点間の勾配値を解析結果として採用し、前記極値が2箇所以下の場合にいずれかの変曲点における接線の勾配値を解析結果として採用する請求項8記載のコンピュータプログラム。
  13. 前記勾配値を求める手順では、
    前記複数種類の生体指標のぞれぞれについて、ローレンツプロット法を適用し、基準時間範囲におけるローレンツプロットから標準傾きを求め、前記基準時間範囲より短い所定時間毎に作成される各ローレンツプロットの傾きと前記標準傾きの差分である相対傾きを所定のオーバーラップ率、所定の時間窓で逐次求め、得られた相対傾きの時間波形を所定の周波数でフィルタリングし、そのフィルタリングした時間波形に対して周波数解析を施し、その周波数解析結果を前記両対数軸表示で示される解析波形に変換し、前記解析波形中に傾き1/fの回帰直線を適用し、その回帰直線に対する前記解析波形を構成する各点の距離の標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて抽出した所定の周波数帯域の範囲の解析波形の点群に対して前記4次関数を求める
    請求項8記載のコンピュータプログラム。
  14. 前記勾配値を求める手順では、
    前記生体指標として前記「体表を介して得られる音響脈波の振幅変動」を用いる場合には、心房収縮及び心室収縮の時相に含まれる極値から2つの極値間振幅を求め、ローレンツプロット法を適用し、基準時間範囲におけるローレンツプロットから標準傾きを求め、前記基準時間範囲より短い所定時間毎に作成される各ローレンツプロットの傾きと前記標準傾きの差分である相対傾きを所定のオーバーラップ率、所定の時間窓で逐次求め、得られた相対傾きの時間波形を所定の周波数でフィルタリングし、そのフィルタリングした時間波形に対して周波数解析を施し、その周波数解析結果を前記両対数軸表示で示される解析波形に変換し、前記解析波形中に傾き1/fの回帰直線を適用し、その回帰直線に対する前記解析波形を構成する各点の距離の標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて抽出した所定の周波数帯域の範囲の解析波形の点群に対して前記4次関数を求める
    請求項11記載のコンピュータプログラム。
  15. 請求項8~14のいずれか1に記載のコンピュータブログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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