以下、図面を参照して実施形態について説明する。同一又は対応の要素には全図を通じて同一符号を付して重複する詳細説明を省略する。
(第1実施形態)
[構成]
図1は第1実施形態に係るパンタグラフ機構の模式図である。図1に示すように、パンタグラフ機構は、第1アーム1、第2アーム2、第1リンク3及び第2リンク4を含む。
第1アーム1の基端部は枢着部5aで基台に枢支される。第2アーム2の基端部は枢着部5bで第1アーム1の先端部に枢支される。第1アーム1は、枢着部5aの軸線回りに回転することでその姿勢を変えることができ、第2アーム2は、枢着部5bの軸線回りに回転することでその姿勢を変えることができる。
リンク3,4は、アーム1,2と共にパンタグラフ機構を構成する。第1リンク3は第1アーム1と平行であり、第2リンク4は第2アーム2と平行である。第1リンク3の一端部は枢着部5cで第2アーム2に回動自在に連結される。第2リンク4の一端部は枢着部5eで第1アーム1に回動自在に連結される。第1リンク3の他端部と第2リンク4の他端部とは枢着部5dで互いに回動自在に連結される。第1リンク3は、第2リンク4よりも長い長尺リンクであり、第2リンク4は、第1リンク3よりも短い短尺リンクである。
枢着部5a〜eの軸線は互いに平行である。各枢着部5a〜eは支軸及び軸受を有している。支軸は連結対象の2部材のうち一方に固定され、軸受は他方に設けられて支軸を回転可能に支持する。4部材1〜4を辺とし4枢着部5b〜eを頂点とする四角形は、アーム1,2の姿勢の変化に応じて変形するものの平行四辺形を維持し、アーム1,2の姿勢に関わらず第1リンク3は第1アーム1と平行に保たれ且つ第2リンク4は第2アーム2と平行に保たれる。
パンタグラフ機構は支点6a、入力点6b及び出力点6cを有する。3点6a〜cは、枢着部5a〜eの軸線と直交する平面内で延在する1本の仮想直線7上に位置する。第1アーム1の基端部における第1点(例えば、枢着部5aの軸線)が、支点6aとして基台に枢支される。第1リンク3と第2リンク4との連結点(例えば、枢着部5dの軸線)が入力点6bを構成する。第2アーム2の先端部における第2点が出力点6cを構成する。入力点6bは、仮想直線7上で支点6aと出力点6cとの間に位置する。
入力点6bは枢着部5a〜eの軸線と直交する平面内で移動可能であり、その移動に応じてアーム1,2の姿勢が変わる。アーム1,2の姿勢が変われば、入力点6bがこれに追従して上記平面内で移動する。入力点6bが移動すれば出力点6cも移動する。出力点6cの移動軌跡は入力点6bの移動軌跡と相似である(図1中の点線三角形を参照)。支点6aから入力点6bまでの距離L1は、支点6aから出力点6cまでの距離L2よりも短い。このため、出力点6cの移動軌跡は、2距離L1,L2の比L2/L1(以下「リンク比」)だけ、入力点6bの移動軌跡を拡大したものに相当する。入力点6b及び出力点6cは支点6aから見て同方向に移動する。
ここで、枢着部5a〜eの軸線を水平とする。重量物が出力点6cに吊るされるなどして出力点6cが下向きの重量負荷Wを受けると、回転モーメントが当該重量負荷Wに基づき生じる。入力点6bは、重量負荷Wを上記リンク比だけ倍加した下向きの鉛直負荷を受けることとなり、出力点6cと共に下へ移動しようとする。このとき、出力点6cに作用する重量負荷Wとバランスする上向きの推力が入力点6bに付与され、入力点6bに作用する鉛直負荷が当該推力でもって支えられれば、入力点6b及び出力点6cの移動を阻止して4部材1〜4の姿勢を保つことができる。
図2は第1実施形態に係るクレーン装置10を示す側面図である。図2に示すように、クレーン装置10は、基台11、基台11に設けられたブーム12、及びブーム12の先端に設けられたハンド13を備える。基台11は、荷役作業場に設置され、例えば柱状である。ハンド13は、荷物を把持し、また、把持している荷物を放すことができる。ハンド13は、ハンド本体13aと、ハンド本体13aに荷物の把持及び解放の動作を行わせるためのハンドアクチュエータ13bとを備える。把持の手法は特に限定されない。例えば、ハンド本体13aが離接可能な複数の指体を有してその指体で荷物を抱え込んでもよく、その場合、ハンドアクチュエータ13bは指体の離接に必要な動力を発生するよう構成される。ハンド本体13aは荷物を吸着してもよく、その場合、ハンドアクチュエータ13bは吸着に必要な負圧を発生するよう構成される。
クレーン装置10はパンタグラフ型であり、前述のパンタグラフ機構がブーム12に採用されている。ブーム12は、前述のアーム1,2及びリンク3,4を含む。枢着部5a〜5eの軸線は水平である。第1アーム1の基端部は基台11に枢支され、枢着部5a及び支点6aが基台11上に設けられる。本実施形態では、支点6aが基台11に対して移動不能である。本実施形態では、ハンド13が枢着部5fにて第2アーム2の先端部に枢支され、枢着部5fの軸線が、出力点6cを構成する第2点を成している。
ブーム12は、第1サイドリンク14、中間板15及び第2サイドリンク16を含む。枢着部5bは中間板15に設けられ、第1アーム1の先端及び第2アーム2の基端が中間板15に枢支される。第1サイドリンク14は、第1アーム1、基台11及び中間板15と共に平行リンク機構を構成する。第2サイドリンク16は、第2アーム2、中間板15及びハンド13と共に平行リンク機構を構成する。これら平行リンク機構をブーム12に採用することで、アーム1,2の姿勢に関わらず、ハンド13の基台11に対する姿勢が保たれる。
第1アーム1は、支点6aを形成する枢着部5aから見て枢着点5bと反対側に延在する延長部1aを有する。この延長部1aには、第1アーム1に下向きの負荷を付与するブーム自重負荷支持装置17が設けられ、これによりブーム12の自重負荷が支えらえる。本実施形態に係るブーム自重負荷支持装置17は、カウンタウェイトである。
ハンド13が荷物を把持し、その荷物が地面から持ち上げられると、出力点6cはその荷物の重量に基づく重量負荷を受け、入力点6bはその重量負荷に基づく鉛直負荷を受ける。クレーン装置10は、このように入力点6bに作用する鉛直負荷を支える鉛直負荷支持装置30を備える。鉛直負荷支持装置30は基台11に固定されている。鉛直負荷支持装置30は、入力点6bの鉛直方向の移動を許容しつつ、入力点6bに鉛直方向の推力を付与する。鉛直負荷はこの推力でもって支えられ、推力は出力点6cに作用する重量負荷とバランスする。
パンタグラフ型のクレーン装置10では、スカラ型とは違い、ある荷物を持ち上げてから当該荷物が地面に付いて垂直抗力が作用し始める又は当該荷物が空中で放されるまでの期間(以下、「荷物把持期間」)において、出力点6cに作用する重量負荷は、アーム1,2の姿勢に関わらず一定である。そこで、鉛直負荷支持装置30は、荷物把持期間と、ある荷物を放してから次の荷物を持ち上げるまでの期間(以下、「空把持期間」)において、入力点6bに一定の推力を付与するように構成される。
例えば、鉛直負荷支持装置30は、流体シリンダ機構で構成される。流体シリンダ機構は、鉛直方向に伸縮自在のロッド32を有するシリンダ31を備える。シリンダ31はエアシリンダでも油圧シリンダ(油圧循環式シリンダを含む)でもよい。入力点6bはロッド32に取り付けられる。ロッド32が伸縮することで、入力点6bは鉛直移動を許容され且つ案内される。鉛直負荷支持装置30は、入力点6bの水平移動を許容し且つ案内する案内部材33を有する。案内部材33はロッド32に設けられ、入力点6bは案内部材33を介してロッド32に水平移動自在に取り付けられる。
本実施形態では、入力点6bに作用する鉛直負荷が下向きであるので、鉛直負荷支持装置30は上向きの推力を入力点6bに付与する。鉛直負荷支持装置30は、入力点6bの下に配置されている。推力の向きはロッド32の伸長方向と同じである。
クレーン装置10はハイブリッド型であり、ブーム12を駆動する第1及び第2モータ41,51を備える。モータ41,51は例えばサーボモータである。第1モータ41は、第1アーム1又は第1リンク3に固定された第1支軸42を回転駆動し、それにより第1アーム1及び第1リンク3の回転角を変化させる。第2モータ51は、第2アーム2又は第2リンク4に固定された第2支軸52を回転駆動し、それにより第2アーム2及び第2リンク4の回転角を変化させる。
一例として、第1支軸42は、枢着部5aを構成する支軸であり、第1アーム1に固定され、同じく枢着部5aを構成する基台11に設けられた第1軸受43(図3及び図4参照)に回転可能に支持される。第1支軸42が回転すると、第1アーム1の姿勢が変わると共に、第1リンク3の姿勢が第1アーム1と平行を保つようにして変わる。第2支軸52は、例えば枢着部5eを構成する支軸であり、第2リンク4に固定され、同じく枢着部5eを構成する第1アーム1に設けられた第2軸受53(図4参照)に回転可能に支持される。第2支軸52が回転すると、第2リンク4の姿勢が変わると共に、第2アーム2の姿勢が第2リンク4と平行を保つようにして変わる。
第2支軸52の候補は他にもあるが、ここでは支点6aに近いものを第2支軸52として選択している。これにより第2モータ51が第2支軸52を回転駆動するためにブーム12(例えば、第1アーム1)に取り付けられても、ブーム12の重心位置が支点6aから離れるのを抑えることができる。よって、ブーム自重負荷支持装置17が支えるべき自重負荷を小さくすることができ、ブーム自重負荷支持装置17(本実施形態ではカウンタウェイト)の小型化及び/又は延長部1aの短縮化が図られ、クレーン装置10全体が小型化される。第1支軸42は、支点6aを形成する枢着部5aを構成しており、第1モータ41がブーム12の重量に加味されるのを避けることができる。
図3は図2に示す第1モータ41及びその周辺構成を示す断面図である。図3に示すように、クレーン装置10は、第1モータ41により発生された駆動力を第1支軸42に伝達する第1駆動力伝達部44を有する。第1駆動力伝達部44は、第1減速機45及び第1クラッチ46を有する。第1減速機45は、第1モータ41と第1クラッチ46との間に介在する。第1クラッチ46は電磁式であり、繋合状態及び解放状態の間での切換えは電子的に制御される。第1クラッチ46の出力要素は変速機を介さず第1支軸41と接続される。ただし、第1駆動力伝達部44は、第1クラッチ46と第1支軸42との間に介在する継手を有してもよい。
第1減速機45の入力軸及び出力軸は互いに同軸状に配置される。第1減速機45は、例えば遊星歯車又は波動歯車で構成される。第1支軸42は、第1クラッチ46、第1減速機45及び第1モータ41と同軸状に配置される。
クレーン装置10は、第1支軸41と平行の第1検出軸47、第1支軸41の回転を第1検出軸47に伝達する第1伝達機構48、及び第1検出軸47の回転角を検出する第1エンコーダ49を備える。第1伝達機構48は、第1支軸41(又はこれと一体になって回転する継手部)に固定された駆動要素48aと、第1検出軸47に固定された従動要素48bとを有する。第1伝達機構48は、第1駆動力伝達部44に規定される伝達経路において第1クラッチ46よりも下流で動力を取り出す。第1伝達機構48は、ベルト伝動機構又はチェーン伝動機構で構成される場合に、駆動要素48aの回転を従動要素48bに伝達する伝達要素48cを更に含む。第1伝達機構48は平行軸式歯車列で構成されてもよい。第1エンコーダ49は第1モータ41及び第1駆動力伝達部44から半径方向に離れて配置される。よって、第1モータ41及び第1支軸42の周辺に部品が密集するのを避けることができる。
第1伝達機構48は、第1支軸41の回転を増速して第1検出軸47に伝達する。一例として、第1伝達機構48の変速比は第1減速機62の変速比の逆数であり、第1クラッチ46が繋合状態にあれば、第1検出軸47は第1モータ41と同速で回転する。
第1モータ41及び第1減速機46はモータホルダ18に保持される。モータホルダ18は突出部18aを有し、第1エンコーダ49は突出部18aに取り付けられている。第1モータ41、第1駆動力伝達部44、第1検出軸47、第1伝動機構48及び第1エンコーダ49はモータホルダ18を仲介してユニット化される。
図4は図2に示すクレーン装置10の構成を示すブロック図である。図4に示すように、第2モータ51及びその周辺構成は、第1モータ41と同様である。第2駆動力伝達部54、第2減速機55、第2クラッチ56、第2検出軸57、第2伝達機構58及び第2エンコーダ59は、前述の要素44〜49と同様にして構成され、これら要素44〜49は第2モータ51と共にモータホルダ(図示せず)を介してユニット化される。
クレーン装置10は、鉛直負荷支持装置30が発生する推力を調整する推力調整装置35を備える。推力調整装置35は、前述した荷物把持期間及び空把持期間において、入力点6bの鉛直方向の移動を許容しつつ入力点6bに付与する推力を一定に維持する。
鉛直負荷支持装置30がシリンダ31である場合、推力調整装置35は、シリンダ31の作動流体を圧送するポンプ36と、シリンダ31に供給される作動流体の圧力及びシリンダ31に対する作動流体の給排を制御するサーボ弁37とを含む。サーボ弁37は電磁式である。鉛直負荷支持装置30が発生する推力は、推力センサ39によって検出される。例えば、推力センサ39は、推力と比例するシリンダ31の内圧を検出する圧力センサで構成される。
クレーン装置10は、制御装置60を備える。制御装置60は、前述の第1エンコーダ49、第2エンコーダ59及び推力センサ39と接続され、第1検出軸47の回転角、第2検出軸57の回転角及びシリンダ31の内圧の検出値を入力する。制御装置60は、前述の第1モータ41及び第2モータ51と接続されており、モータ41,51に駆動指令を与えてモータ41,51の動作を制御する。それにより、アーム1,2の回転角並びに入力点6b及び出力点6c(すなわち、ハンド13及びこれに把持された荷物)の位置が制御される。
制御装置60は、ハンドアクチュエータ13bと接続されており、ハンド13の動作を制御する。制御装置60は、前述の第1及び第2クラッチ46,56と接続されており、クラッチ46,56の動作又は状態を制御する。制御装置60は、サーボ弁37と接続されており、サーボ弁37の動作を制御することにより鉛直負荷支持装置30から入力点6bに付与される推力を制御する。
制御装置60は、操作装置70と接続されており、作業者によって操作装置70に入力された指令を入力する。操作装置70は、一例として、切換スイッチ71、操縦レバー72、荷物解放ボタン73、重量計測ボタン74及び連続搬送ボタン75を含む。これら操作用の部材71〜75は、単一部材に纏まって取り付けられていてもよいし、複数の部材(例えば、基台11、ハンド13、専用の操作体など)に分散して配置されていてもよい。
切換スイッチ71は、クレーン装置10の動作モードを切り換えて指定する操作を行うための部材であり、作業者は切換スイッチ71を操作することで所望の動作モードを選択することができる。切換スイッチ71は例えばハンド本体13aに設置される(図2参照)。制御装置60は、切換スイッチ71で指定された動作モードに応じて、第1モータ41、第2モータ51、第1クラッチ46及び第2クラッチ56等の動作を制御する。
動作モードには、例えば、作業者がブーム12を手動で動かすことでハンド13に把持された荷物を手動で移動させるハンドクレーンモード、作業者がブーム12を遠隔操作してハンド13に把持された荷物を自力によらず移動させる操縦モードが含まれる。動作モードには、予め教示されたプログラムに従ってブーム12及びハンド13を動作させることで荷役作業を自動的に行う自動モードや、そのプログラムの作成のためブーム12及びハンド13を動作させる教示モードが含まれてもよい。
操縦レバー72は、操縦モードや教示モードにおいて、作業者がブーム12の動作指令を与えるための部材である。動作指令は、アーム1,2に対する回転指令でもよいし、出力点6c(すなわちハンド13及びこれに把持された荷物)に対する鉛直移動指令及び水平移動指令でもよい。制御装置60は、作業者からの動作指令に応じて、モータ41,51の動作目標値を求め、モータ41,51を協調制御する。その他の操作部材73〜75については後述する。
制御装置60は、人感センサ65及び警報装置66と接続されている。人感センサ65は、赤外線及び/又は超音波を用いて当該センサの付近に人間が存在するか否かを検知する。例えば、人感センサ65はハンド本体13aに設置される(図2参照)。人感センサ65は、ハンド本体13a又は第2アーム2の先端部が人間に近づくと、その旨示す検出信号を制御装置60に出力する。制御装置60は、操縦モード、自動モード及び教示モードの実行中に人感センサ65からの検出信号を入力すると、警報装置66を作動させる。
警報装置66には、回転灯66aやスピーカ66bが含まれる。回転等66aは例えば基台11に設置され、スピーカ66bは例えばハンド本体13aに設置される(図2参照)。これにより、自動的に移動するブーム12、ハンド13又は荷物から作業者を保護することができる。なお、警報装置66の作動と併せて、ブーム12の動作速度が通常よりも遅くなるようにモータ41,51の動作目標値を補正し、又はブーム12を停止させるようにモータ41,51を制御してもよい。
[作用]
以下、上記のように構成されるクレーン装置10の動作及び作用について説明する。クレーン装置10を用いると、ブーム12の可動域内において複数の荷物を一つずつ搬送するという荷役作業を行うことができる。
先ず、クレーン装置10の自動機能について説明する。切換スイッチ71での操作により操縦モードが選択されると、クラッチ46,56が繋合状態になり且つ操縦レバー72からの動作指令が有効となり、作業者はブーム12の遠隔操作を許容される。操縦レバー72が操作されると、モータ41,51が協調制御されて動作する。モータ41,51により発生された駆動力は、繋合状態にあるクラッチ46,56を介して支軸42,52に伝達される。これによりアーム1,2の姿勢及びハンド13の位置が、作業者からの動作指令に応じて制御される。出力点6cの移動方向が水平成分を含む場合、入力点6bは案内部材33によって水平移動を案内され、円滑に水平方向に移動する。
出力点6cの移動方向が鉛直成分を含む場合、モータ41,51により発生される駆動力に基づく鉛直方向の負荷が、入力点6bを介してロッド32に作用し、シリンダ31の内圧が変動しようとする。制御装置60は、このような負荷の作用に関わらず、シリンダ31の推力(内圧)が一定の値に維持されるように推力調整装置35のサーボ弁37を制御する。より具体的には、制御装置60は、推力センサ39の検出値を監視し、シリンダ31の内圧が当該推力に対応した値に維持されるようにサーボ弁37を制御する。これにより、シリンダ31が必要な推力を入力点6bに付与し続ける一方、ロッド32はシリンダ31の抵抗を受けずに円滑に伸縮可能となる。よって、入力点6bは円滑に鉛直方向に移動する。
ハンド13が荷物を把持していないときには、制御装置60は、予め記憶された最低推力値(又はこれに対応する最低内圧値)を読み出し、シリンダ31の推力がこの最低推力値に維持されるようにサーボ弁37を制御する。最低推力値は、ハンド13及びこれに設置される各種部品(例えば、人感センサ65及びスピーカ66b)の重量のみに基づいて出力点6cに作用する重量負荷を支えるために必要な推力値であり、ハンド13の設計段階で把握可能である。
ハンド13が次に搬送対象とされる荷物に十分に近付いた後、重量計測ボタン73が操作される。重量計測ボタン73が操作されると、制御装置60は、推力センサ39により検出される推力とエンコーダ49,59により検出される回転角とから、当該荷物の重量を検出する検出動作を行う。重量計測ボタン73は当該検出動作を開始させるよう指令を与えるための部材である。
検出動作の一例として、制御装置60は、ハンドアクチュエータ13bを駆動してハンド本体13aに当該荷物を把持させる。次に、サーボ弁37を駆動してシリンダ31の推力を増大させるべくシリンダ31の内圧を変化させていくと共に、エンコーダ49,59からの入力を監視する。エンコーダ49,59の検出値が変化すると、制御装置60は、その時点での推力センサ39の検出値を記憶する。入力点6b及び出力点6cが上に移動し荷物が持ち上がると、第1支軸42及び第2支軸52が回転し、エンコーダ49,59の検出値が変化する。よって、その時点における推力センサ39の検出値は、当該荷物を把持したハンド13の総重量に基づいて出力点6cに作用する重量負荷とバランスする推力値に相当する。このように、検出動作では、当該荷物の重量そのものではなく、当該重量に応じて必要とされる推力値又はこれに対応する内圧値を検出してもよい。
検出動作を行うときに、制御装置60はクラッチ46,56を解放状態にしてもよい。これにより、シリンダ31は駆動力伝達部44,54の摩擦やモータ41,51の制動力を補償しなくて済むので、重量検出精度が向上する。また、伝達機構48,58はクラッチ46,56と支軸42,52との間から動力を取り出して検出軸47,57を回転駆動するので、エンコーダ49,59はクラッチ46,56が解放状態となっていても支軸42,52が回転したときにこれを検出することができる。
検出動作が終了すると、操縦レバー72を用いてブーム12を遠隔操作することで、荷物を人力によらずに搬送することができる。荷物を把持しているとき、制御装置60は、シリンダ31の推力が、検出動作において記憶された推力値に維持されるようにサーボ弁37を制御する。
荷物を所望位置まで搬送した後、荷物解放ボタン74が操作される。荷物解放ボタン74は、作業者が荷物を放す指令を与えるための部材である。荷物解放ボタン74が操作されると、制御装置60は、ハンド13に把持されている荷物が放されるように、ハンドアクチュエータ13bを制御する。制御装置60は、エンコーダ49,59からの入力を監視する。エンコーダ49,59の検出値が変化すると、制御装置60は、シリンダ31の推力の目標値を最低推力値に切り換え、シリンダ31の推力が最低推力値で維持されるようにサーボ弁37を制御する。シリンダ31の推力が検出値に維持されている状態で荷物13がハンド13から離れると、シリンダ31の推力が出力点6cに作用する重量負荷に対して過剰になり、入力点6bが上に移動して支軸42,52が回転する。よって、この時点にて推力の目標値を最低推力値に切り換えることで、出力点6cの重量負荷が急激に小さくなってもブーム12の不要な挙動を抑えることができる。
次の荷物を搬送するにあたっては、上記同様の操作を繰り返せばよい。荷物の重量にバラつきがある場合、検出動作を都度行う。検出動作を行うたび、制御装置60は検出された荷物の重量、当該重量に応じて必要とされる推力値又はこれに対応する内圧値を更新して記憶する。検出動作を行うことで、様々な重量の荷物を搬送することができ、クレーン装置10の利便性が高くなる。検出動作では、モータを動作させてブーム12を駆動するときに必要なセンサを流用している。このため、クレーン装置10の制御系の構成を簡略に保つことができる。
荷物の重量が均一であれば、検出動作は最初の荷物を搬送する前に行えば足りる。2つ目以降の荷物の搬送を開始する際には、重量検出ボタン73に替えて、連続搬送ボタン75が操作される。連続搬送ボタン75が操作されると、制御装置60は、ハンドアクチュエータ13bを駆動してハンド本体13aに当該荷物を把持させる。次に、シリンダ31の推力の目標値を記憶している検出値に切り換え、シリンダ31の推力が検出値で維持されるようにサーボ弁37を制御する。これにより、荷物がパレット等から垂直抗力を受けなくなるまで上昇する。
教示モードでは、教示点を適宜設定しつつ、操縦モードと同様にしてブーム12及びハンド13を操作すればよい。切換スイッチ71で自動モードが選択されると、制御装置60は、教示モードで作成されたプログラムに従ってブーム12及びハンド13を制御し、それにより荷役作業が自動的に行われる。
本実施形態によれば、入力点6bに作用する鉛直負荷が鉛直負荷支持装置30によって支えられる。そのため、第1及び第2モータ41,51は、出力点6cに作用する重量負荷を補償する必要がない。なお、ブーム12の自重負荷はブーム自重負荷支持装置17で支えられるので、第1及び第2モータ41,51は、ブーム12の自重負荷を補償する必要もない。第1及び第2モータ41,51は、第1及び第2アーム1,2を加速又は減速させるため、駆動力伝達部44,54及び枢着部で生じる摩擦力(例えば、軸受の転がり摩擦など)を補償するために必要なトルクを負担する。可搬重量を大きくしたい場合には、鉛直負荷支持装置30がその分大きな推力を発生可能に構成すればよく、第1及び第2モータ41,51の容量を大きくしなくてもよい。したがって、第1及び第2モータ41,51の容量を小さくすることと、可搬重量を大きくすることとを両立することができる。
ブーム12にパンタグラフ機構を採用しているので、鉛直負荷支持装置30の推力が一定であっても、第1及び第2モータ41,51は入力点6bに作用する鉛直負荷を負担しなくて済む。このため、鉛直負荷支持装置30の推力を第1及び第2アーム1,2の姿勢に応じて変えるような複雑な制御を行わなくても、第1及び第2モータ1,2を小型化することができる。したがって、推力制御を簡略化することと、第1及び第2モータ1,2を小さくすることとを両立することができる。
第1及び第2モータ41,51は第1及び第2支軸42,52を回転駆動するので、駆動力伝達部44,54に、ラック及びピニオンのような運動変換機構は不要である。したがって、ハイブリッド型のクレーン装置を提供するに際し、駆動力伝達部44,54の構造を簡素化することができる。
次に、クレーン装置10のハンドクレーン機能について説明する。切換スイッチ71での操作によりハンドクレーンモードが選択されると、第1及び第2クラッチ46,56が解放状態になり且つ操縦レバー72からの動作指令が無効となる。このように、切換スイッチ71は、第1クラッチ46及び第2クラッチ56を解放する指令を与える解除スイッチとして機能する。
クラッチ46,56が解放されることで、第1及び第2支軸42,52はモータ41,51からの制動力を受けなくなる。このため、作業者は、アーム1,2を自力で揺動させることができ、それによりハンド13及びこれに把持された荷物を移動させることができるようになる。クラッチ46,56の出力要素は変速機を介さず支軸42,52と接続されている。このため、作業者は、駆動力伝達部44,54の摩擦抵抗を補償しなくてよく、ブーム12を軽快に手動操作することができる。
ハンド13に荷物を把持させる際には、上記同様に重量検出ボタン73又は連続搬送ボタン75が操作される。ハンド13から荷物を放す際には、上記同様に荷物解放ボタン74が操作される。作業者が鉛直成分を含む方向に出力点6cを移動させようとすると、制御装置60は、上記同様に、シリンダ31の推力が一定の値(空把持期間においては最小推力値、荷物把持期間においては記憶されている検出値)に維持されるように推力調整装置35のサーボ弁37を制御する。これにより、ハンドクレーンモードにおいても、鉛直負荷支持装置30が出力点6cに作用する重量負荷とバランスする推力を発生し、それにより入力点6bの鉛直負荷が支えられる。
[第2実施形態]
図5は第2実施形態に係るクレーン装置110の側面図である。第1実施形態と同様の構成については詳細説明を省略し、第1実施形態との相違を中心に説明する。
第2実施形態に係るクレーン装置110は、二つ溝式のパンタグラフ型である。基台111は、鉛直ガイド溝111a及び水平ガイド溝111bの2つのガイド溝を有する。第1アーム1の基端は基台111に直接枢支されていない。替わりに、第1アーム1の基端は枢着部105aで下リンク119の一端と枢支され、下リンク119の他端は枢着部105gで第1サイドリンク14の下端と枢支される。枢着部105a,105gは鉛直ガイド溝111aに受容され、そのため下リンク119は鉛直に延在した状態で保持される。下リンク119は、第1アーム1、第1サイドリンク14及び中間板15と平行リンク機構を構成する。枢着部5eは、水平ガイド溝111bに受容されている。
本実施形態に係るブーム自重負荷支持装置117は、シリンダ117aである。シリンダ117aは、第1アーム1の枢着部105aからの延長部1aに下向きの推力を付与し、その推力でブーム112の自重負荷とバランスをとる。自重負荷は一定であるので、シリンダ117aは、第1アーム1の姿勢に応じてロッド117bを伸縮させつつ、自重負荷とバランスするために必要な一定の推力を発生する。このように、カウンタウェイトでなくともブーム12の自重負荷を支えることは可能である。
枢着部105aは鉛直ガイド溝111aにより鉛直方向の移動を許容且つ案内される。枢着部5dは水平ガイド溝111bにより水平移動を許容且つ案内される。出力点6cに鉛直下向きの重量負荷が作用すると、枢着部105a並びにこれに連結された下リンク119及び枢着部105gが上向きに移動しようとする。鉛直負荷支持装置130は枢着部105aに下向きの推力を付与し、その推力で出力点6cに作用する重量負荷とバランスをとる。本実施形態でも鉛直負荷支持装置130はシリンダ131で構成され、シリンダ131は枢着部105aの上に配置されており、推力の向きはシリンダ131のロッド132の伸長方向と同じである。本実施形態でも、ブーム112を駆動するモータ141,151が出力点6cに作用する重量負荷を負担しなくてもよいので、モータ141,151を小型化することとクレーン装置110の可搬重量を大きくすることとを両立することができる。
第1支軸142は枢着部105aを構成し、第1アーム1に固定され、同じく枢着部105aを構成する下リンクに設けられた第1軸受143(図6参照)に回転可能に支持される。第1モータ141が動作すると第1支軸142が回転駆動され、それにより第1アーム1及び第1リンク3の姿勢が変わる。第2支軸152は枢着部5dを構成し、第2リンク4に固定され、同じく枢着部5dを構成する第1リンク3の基端に設けられた第2軸受153(図6参照)に回転可能に支持される。第2モータ151が動作すると第2支軸152が回転し、それにより第2リンク4及び第2アーム2の姿勢が変わる。
基台111は、荷役作業場に設置される土台部121と、土台部121に対して鉛直の軸線周りに回転可能な旋回部122とを有する。前述のガイド溝111a,111b、ブーム自重負荷支持装置118及び鉛直負荷支持装置130は旋回部122に設けられる。
ブーム112は、第2アーム2の先端に設けられてブーム112の先端部を形成する手首部180を有し、ハンド13は手首部180に設けられる。第2アーム2の先端は枢着部105fで第1手首部材181に枢支される。この枢着部105fの軸線が、パンタグラフ機構の出力点6cを構成する第2点を成している。第2サイドリンク16の下端は第1手首部材181に枢支されており、第1手首部材181は、第2アーム2、第2サイドリンク16及びクランク板15と共に平行リンク機構を構成する。第2手首部材182は第1手首関節184を介して第1手首部材181に対して第1手首軸線S周りに回転可能に連結される。第3手首部材183は第2手首関節185を介して第2手首部材182に対して第2手首軸線B周りに回転可能に連結される。ハンド13は、第3手首関節186を介して第3手首部材182に対して第3手首軸線T周りに回転可能に連結される。第1手首軸線Sは平行リンク機構の作用によりアーム1,2の姿勢に関わらず鉛直に保たれる。第2手首軸線Bは、第1手首軸線Sと直交しておりアーム1,2の姿勢に関わらず水平に保たれる。第3手首軸線Tは第2手首軸線Bと直交する。
クレーン装置110は、ブーム旋回モータ191と、手首関節184〜186それぞれに対応する手首モータ192〜194とを備える。ブーム旋回モータ191は、旋回部122を土台部121に対して回転駆動する。手首旋回モータ192は、第2手首部材182を第1手首部材181に対して第1手首軸線S周りに旋回駆動する。手首屈曲モータ193は、第3手首部材183を第2手首部材182に対して第2手首軸線B周りに屈曲駆動する。手首捻転モータ194は、ハンド13を第3手首部材183に対して第3手首軸線T周りに捻転駆動する。本実施形態では、手首部180が3つの手首関節184〜186を有するが、手首関節の個数は特に限定されない。
旋回部122が回転すると、ブーム122全体及びハンド13が水平旋回する。よって、ハンド13の可動域が大きく拡がり、荷役作業の利便性が向上する。また、ハンド13が3つの手首関節184〜186を有する手首部180に設けられるので、ハンド13の位置及び姿勢を微細に調整することができ、荷役作業の利便性が向上する。
クレーン装置110は、手首部180の自重負荷を支えるための手首負荷支持装置187を備える。手首負荷支持装置187は、手首部180のうちモータ141,151,191〜194の動作に関わらず水平姿勢に保たれる水平部188に設けられる。ここで「水平姿勢に保たれる」は、水平面を成す直交2軸周りの姿勢が一定であることをいう。本実施形態では、第1及び第2手首部材181,182が水平部188を構成する。
本実施形態に係る手首負荷支持装置187は、シリンダ187aである。シリンダ187aは、水平部188に下向きの推力を付与し、その推力で手首部180の自重負荷とバランスをとる。自重負荷は一定であり水平部188は水平姿勢に保たれるので、シリンダ187aは自重負荷とバランスするために必要な一定の推力を発生する。手首負荷支持装置187を設けることで、手首部180を駆動するモータ192〜194が手首部180の自重負荷を負担しなくてもよくなり、これらモータ192〜194を小さくすることができる。
図6は図5に示すクレーン装置110の構成を示すブロック図である。図6に示すように、制御装置160はモータ191〜194の動作を制御する。操縦レバー172は、これらモータ191〜194の動作指令を与えることができるように構成される。推力調整装置135は、鉛直負荷支持装置130のシリンダ131、ブーム自重負荷支持装置117のシリンダ117a及び手首負荷支持装置187のシリンダ187aの推力を調整するように構成され、制御装置160はこれら支持部117,130,187の推力が一定に維持されるように推力調整装置135を制御する。なお、図6には図示省略するが、各シリンダ117a,131,187aに対応して推力センサが設けられている。
第1駆動力伝達部144は第1クラッチ46(図1参照)を有しない。第1駆動力伝達部144は第1減速機145を備え、第1減速機145の出力はクラッチを介さず第1支軸142に入力される。第1減速機145は第1実施形態と同様に第1支軸142と同軸状に配置されている。第1減速機145は出力回転可能である。なお、第1伝達機構48は、第1減速機145よりも下流で動力を取り出す。第2駆動力伝達部154及び第2減速機155も第1駆動力伝達部144及び第1減速機145と同様である。ブーム旋回モータ191の動力を伝達する駆動力伝達部についても同様に構成される。
切換スイッチ71が操作されてハンドクレーンモードが選択されると、制御装置160は、第1モータ141、第2モータ151及びブーム旋回モータ191のサーボを停止する。このように切換スイッチ71は、モータ141,151,191のサーボを停止する指令を与える解除スイッチとして機能する。このサーボの停止により、作業者は軽快にブーム112を操作することができる。
[変形例]
上記実施形態は一例であり、上記構成は本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、第1及び第2実施形態では、入力点6bが支点6bと出力点6cの間に位置するパンタグラフ機構をブームに採用したが、支点6bが入力点6bと出力点6cとの間に位置して入力点6bの移動方向と出力点6cの移動方向とが基台2から見て反対方向となる、所謂逆パンタグラフ機構をブームに採用してもよい。詳細図示を省略するが、この場合、第1リンクと第2リンクとの連結点が支点として基台に枢軸され、第1アームの基端部における第1点が入力点を構成し、第2アームの先端部における第2点が出力点を構成する。
第2アーム2は、枢着部5c,5f間に関節を有していてもよい。このとき、関節の軸線が枢着部5c,5fを結ぶ直線上に位置させれば、パンタグラフ機構は崩されない。
鉛直負荷支持装置30,130が流体シリンダ機構で構成されるとしたが、ボールねじを回転駆動する負荷支持モータで構成されてもよい。この場合、ボールねじに螺合するナット又はこれを入力点6bに連結する連結部材に鉛直方向の負荷を検出するロードセルを設け、このロードセルの入力を利用することで、上記実施形態と同様にして検出動作及び推力調整の制御を実行することができる。