JP6206902B2 - 植物成型体及びその成型方法 - Google Patents
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Description
なお、一般に「板」とは、広辞苑によれば「材木を薄く平たくひきわったもの」、「金属や石などを薄く平たくしたもの」等として説明されるが、ここでは、オイルパームが木材の性状を有するものではなく、竹材に近い性状もつものであるが、オイルパームの材料を仔細に区分けして呼称する用語がないので、木材と同様に扱うこととする。
即ち、オイルパームは、果肉と種子から油脂が取れ、単位面積当たり得られる油脂の量は、他の植物の群を抜いていることから、商業作物としてマレーシア等の東南アジア諸国を中心に大規模なプランテーション農業が行われているので、油脂の方を「オイルパーム」と呼ぶ方が著名になりつつあるかもしれない。
しかし、本発明においては、果肉と種子から取れる油脂のオイルパームを意味するものではなく、油椰子の幹自体または植物の個体全体をオイルパームと呼ぶこととする。
したがって、オイルパームの空果房を解繊して得た油ヤシ繊維は、例えば、ココヤシ繊維等の他のヤシ繊維に比して、繊維表面にパームオイルが付着しているために繊維の撥水性が優れていると共に、繊維中に含まれるセルロース及びリグニンの量が相対的に多いので、耐水性に優れる。加えて、油ヤシ繊維は、ココヤシ繊維等の他のヤシ繊維に比して、繊維強度が大であると共に、繊維径が大きく、かつ、繊維長が長いので、寸法安定性が優れている。また、油ヤシ繊維は、その表面の凹凸が大きいと共に屈曲の強度が大きくて繊維同士のからみあいが大きいから、このことによっても寸法安定性が高められる。そのため、この板状体または成型体は、吸水、吸湿時における寸法安定性が優れている。
そして、油ヤシ繊維表面の凹凸が大きいので、ゴム状弾性を示す樹脂が油ヤシ繊維の表面の空隙に侵入して固化又は硬化し、これが釘または楔のように作用して、所謂、アンカー効果を発揮するから、油ヤシ繊維はゴム状弾性を示す樹脂により強く結合する。このことも吸水、吸湿時における寸法安定性の向上に寄与していると考えられる。
この板状体または成型体では、油ヤシ繊維を使用するから、他の種類のヤシ繊維に比して解繊等に要する労力が少なく、そのため、製造コスト及びエネルギーが節減でき、製品が安価となる。例えば、ココヤシ繊維では、ヤシ殻を軟化させるために長期間水中に浸漬し、その後に機械的に繊維状に解繊するために長期間多大のエネルギーを必要とする。これに対してオイルパームは、もともと繊維状のままで集合体となっている空果房を解繊するから、水中浸漬の必要はなく、解繊のために要するエネルギーも非常に少なくて済む。また、油ヤシ繊維はココヤシ繊維に比して発塵性が少なく、その取り扱いにおいて作業環境の悪化が避けられる。
更に、油ヤシ繊維の繊維間に大きな隙間が形成されるので、噴霧または浸漬によりゴム状弾性を示す樹脂を供給したときには、樹脂が上記隙間を介して全繊維に均等に付着し、強度分布が均一になるという板状態が得られる。
特許文献3に係るパーム合板は、樹脂接着剤で貼り合わされた複数の単板を備え、複数の単板のうちの最も外側の少なくとも1枚の単板は、パーム単板であり、パーム単板の表面に露出しているパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させたものである。これにより、品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用せずに、安価な廃棄材のヤシの幹から製造可能なパーム単板を使用して表面を樹脂接着剤で処理することで、低コストで合板を製造する。
また、特許文献3のパーム合板は、複数の単板を全てパーム単板とし、安価な廃棄材のヤシの幹から製造可能なパーム単板のみを使用し、互いを樹脂接着剤で接着してもよい。このときのパーム繊維に浸透させてある樹脂接着剤は、複数の単板を貼り合わせる樹脂接着剤と同系のものである。樹脂接着剤が同系であるため、安価に合板を製造することができる。なお、ここで、同系とは、同一の樹脂接着剤、配合(例えば、配合比率)を変えたものを含む。
このように、特許文献3によれば、品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用せずに、低いコストで製造が可能な合板及びパーム合板、合板製造方法が開示されている。
特に、マレーシア等の東南アジア等では、パームオイルの生産のためにオイルパームが栽培されているが、パームオイル採取後の空果房には繊維等が多く含まれていることから、その空果房は繊維ボード等種々の用途に活用されている。しかし、毎年伐採されているヤシの幹は有効に活用されておらず、廃棄処分されているのが現状である。
また、特許文献3には、最も外側の少なくとも1枚の単板がパーム単板を複数樹脂接着剤で貼り合わせる工程と、パーム単板の表面であり、露出しているパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させる面を研磨する工程と、研磨した面に樹脂接着剤を塗布してパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させる工程と、樹脂接着剤を乾燥させる工程とを備えた合板製造方法を開示している。しかし、オイルパームの単板に如何に樹脂接着剤を塗布するか、露出しているパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させるかについては説明されておらず不明であり、具体的な合板の製造方法が不明である。少なくとも、オイルパームの単板を複数枚樹脂接着剤で貼り合わせるという樹脂接着剤の使用を前提としている。
ところが、オイルパームの樹幹を切り出すと、表面から乾燥が行われ、柔細胞等がボロボロと剥がれ落ち、オイルパームの樹幹を直接使用することができない。勿論、粘性に富んだ合成樹脂を塗布し、剥がれ落ちを防止することができるが、廃棄する際には、合成樹脂との分離が不可能であるから、環境負荷が増大するという問題があった。
ここで、上記所定のオイルパーム材を高温度及び高湿度中で圧縮力を加えての圧縮変形とは、加える温度は加熱水蒸気であっても、ヒータ加熱であってもよいが、その加熱された温度環境は高湿度であることを必要とするものである。
また、上記オイルパーム材の圧縮変形を固定化してなるオイルパーム成型体とは、オイルパーム材の圧縮変形させる圧力を解いてもその圧縮変形が維持されていることを意味する。但し、圧縮変形に形状の変化が全く生じないものではなく、多少の弾性変形が生じる。
そして、上記オイルパーム材の圧縮方向の両面側の密度を、前記オイルパーム材の圧縮方向の中心部の密度よりも高くしたとは、オイルパーム材に圧縮力を加える両面側の密度を、その両面間の中心位置の密度よりも高くしたことを意味する。当然、単位体積当たりの比重によってそれを判断できる。
また、オイルパーム材として得た材の乾燥は、その乾燥方法が特に問われるものではなく、天然乾燥させてもよいし、人工的に乾燥させてもよいが、当然ながら人工乾燥の方が高コストである。
ここで、建築材料等に一般的に使用されているラワン等の木材が、水や養分の移動が停止した細胞(死細胞)組織から成る二次木部を形成しているのに対し、オイルパームの樹幹は維管束及び柔細胞の一次組織のみで構成され、柔細胞を中心とする殆どの細胞が水や養分の移動が盛んに行われている生活細胞であるため、含水率が極めて高い。その上、オイルパーム幹には、糖類(例えば、フラクト−ス、グルコ−ス、フラクトオリゴ糖、イノシト−ル等)が多く含まれているから、オイルパーム幹からオイルパーム材の厚みが厚い場合、天然乾燥ではカビ等の細菌が繁殖して腐食しやすく生産性や商品価値が損なわれる。そこで、本発明者らの実験研究によれば、マイクロ波による誘電加熱により乾燥すると、カビ等の細菌による商品価値や生産性の低下を招くことなく、低コストに乾燥できることが確認された。
なお、圧密加工により全体の圧密加工した気乾比重は、本発明者らが、実験を重ねた結果、オイルパーム材の表層が高圧縮して気乾比重0.8以上とすることによって、オイルパームの性質が変化し、硬度が顕著に硬くなると共に、強度、硬度、寸法変化率等の物性値や特性値のばらつきが少なく物理的安定性が増すことを見出した。即ち、圧縮により、強度や硬度等を増大させ、かつ、物理的性質のバラつきを少なくした特性領域であり、圧密加工された木材としての特性であることを示すものである。圧密加工により気乾比重をオイルパーム材の表層が0.8以上にしなくとも、例えば、気乾比重が0.6以上になっておれば、硬度が顕著に高くなり、硬度及び寸法変化率等の物性値や特性値のばらつきが少なくなって物理的安定性が増すことになる。当然、柔細胞の剥がれ落ちはなくなり、通常の成型体として使用できる。特に、パーティション等の芯材とする場合には、断熱、防音、防振等の目的が前提であるから、オイルパーム材の表層の気乾比重が0.6以上であればよい。
ここで、平面部、凹部、凸部のいずれか1つ以上を金型で形成するとは、上記オイルパーム材の圧縮方向の両面側の密度を、その圧縮力を加える両面間の中心位置の密度よりも高く形成し、かつ、平面部、凹部、凸部のいずれか1つ以上を形成したものである。なお、密度よりも高く形成とは、比重を大きくすることを意味する。
ここで、前記オイルパーム材に形成した凹部または凸部を他の平面部と同一の厚みとすることは、上記オイルパーム材の圧縮方向の両面側の密度を、その圧縮力を加える両面間の中心位置の密度よりも高く形成し、かつ、凹部または凸部を他の平面部と同一の厚みとなるように湾曲させたものである。
ここで、オイルパーム成型体の前記オイルパーム材に形成した表面及び/または裏面の凹部とは、部分的にオイルパーム材の表面または裏面の近傍まで圧縮し、その部分のみを圧縮率を上げて、他のオイルパーム材との接合を行うものである。この接合は、前記オイルパーム材を2枚重ねて、その中間位置で接合してもよい。
ここで、上記材料形成工程は、所定長のオイルパーム幹を所定厚のオイルパーム材に形成する工程である。上記乾燥工程は、前記材料形成工程で形成した前記オイルパーム材を乾燥する工程である。
また、上記配置工程は、前記乾燥工程で乾燥させた前記オイルパーム材を所定の成型しようとする金型に配置する工程である。
そして、上記加湿工程は、配置工程で所定の位置に配置された前記オイルパーム材に対して圧縮力を加える方向の両面を加湿する工程であり、水に浸漬してもよいし、噴霧してもよい。
更にまた、上記固定化工程は、前記加熱圧縮工程で所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材の温度を降下させて冷却し、固定化させるものである。
このとき、上記固定化は、所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材は外力の解除で若干弾性変形して、押圧状態よりも復元するが、その量が問題となるものではない。その外力を解除した状態が概略保持されればよい。
ここで、上記材料形成工程は、所定長のオイルパーム幹を所定厚のオイルパーム材に形成する工程である。
また、上記乾燥工程は、前記材料形成工程で形成した前記オイルパーム材を乾燥する工程である。この乾燥工程は、オイルパーム材の含水率を5%〜30%の範囲内に乾燥させるものであるから、クラック、変形、膨らみ、破裂等が防止される。よって、より安定した寸法形状性が確保され、歩留りも高いものとなる。
そして、上記配置工程は、前記乾燥工程で乾燥させた前記オイルパーム材を所定の成型しようとする金型に配置する工程である。
更にまた、上記加熱圧縮工程は、前記オイルパーム材の圧縮力を加える方向に対して垂直方向に伸びるのを規制しながら、上金型と下金型とで前記オイルパーム材の面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間加熱圧縮する工程である。前記オイルパーム材の圧縮力を加える方向に対して直角方向に伸びるのを規制するのは、複数のオイルパーム材を並列配置する場合には、各オイルパーム材の規制を行うものではなく、シルエットラインを形成する最外周の対応とすることができる。勿論、複数のオイルパーム材の一部の位置の規制を行うこともできる。上記加熱圧縮工程における加熱温度は、110℃〜170℃の範囲内としたものであるから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、また、表面炭化、材質強度の低化等の材質劣化を防止することができる。そして、圧加熱縮工程による所定の圧縮圧力は、1〜100kg/cm2の範囲内としたものであるから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、また表面クラックの発生を防止することができる。この加熱圧縮工程に要する時間は、10分間〜120分間の範囲内であることから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、表面の炭化を防止できる。
加えて、上記固定化工程は、前記加熱圧縮工程で所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材の温度を降下させて冷却し、固定化させるものである。このとき、上記固定化は、所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材は外力の解除で若干復元しようとして、押圧状態よりも復元するが、その量は問題とするものではない。その外力を解除した状態が保持されればよい。
上記仮接続工程における加熱温度は、110℃〜170℃の範囲内としたものである。ここで、本発明者らは実験を重ねた結果、加熱温度が低過ぎると十分な圧密加工がなされず、固定化不良や層間の接合不良が生じることがあり、一方、加熱温度が高過ぎると表面が炭化して黒色に変化し、色調や植物本来の特有の香りが損なわれたり、材質が劣化して強度が低化し脆くなったりすることがあるので、加熱温度が110℃〜170℃の範囲内で圧密加工する必要がある。
なお、オイルパーム成型体の形態または使用対象によっては、仮接続工程としては1回以上繰り返し実行することができる。
このように、所定のオイルパーム材を高温度及び高湿度中で圧縮力を加えて圧縮変形させるとき、圧縮力を加える両面に対して予め水分を含ませることによって、圧密化する圧縮力により変位し易くして圧密化したものであるから、オイルパーム材自体が所望の形状に成型でき、表面及び裏面の構造を緻密化でき、オイルパーム材を直接切り出して使用しても、オイルパーム材の表面の合成樹脂によるコーティング処理を行うことなく、柔細胞の剥がれ落ちを防止できる。また、表面及び裏面の構造を緻密化できるが、その間のオイルパーム材は圧縮率を低減して低くできるから、用途によって合成樹脂の発泡体の有する断熱効果、遮音効果、防振効果を得ることができる。また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用しないから、オイルパームが本来的に有している成分を利用した環境にやさしいオイルパーム成型体が得られる。
したがって、オイルパーム材に圧力を加えて形成したオイルパーム成型体が所望の形状に成型でき、また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用せず、オイルパームが本来的に有している成分を利用した環境にやさしいオイルパーム成型体が得られる。
よって、前記オイルパーム材が含有する樹脂成分及び糖成分の使用割合を多くし、自然物で接合したオイルパーム成型体が得られ、使用する材料のロスが少なくコストを抑え、また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用せず、オイルパームが本来的に有している成分を利用したオイルパーム成型体が得られる。
よって、前記オイルパーム材が含有する樹脂成分及び糖成分を使用し、自然物で接合したオイルパーム成型体が得られ、使用する材料のロスが少なくコストを抑え、また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用することなく、オイルパーム材が本来的に有している成分を利用したオイルパーム成型体が得られる。
本発明の実施の形態1の植物成型体としてのオイルパーム成型体の製造方法について、図1を用いて説明する。
まず、この発明の実施の形態で使用するオイルパーム幹WDは、木材の板目と柾目を製材するように寸法取りを行うと、何れも柾目状に繊維(維管束)が並ぶ面になる。即ち、国産材の桧や杉のように年輪がなく、畳表の藺草のように0.4〜1.2mmの維管束繊維が主にオイルパーム幹WDの長さ方向に延びている。
オイルパーム幹WDの成分は産地によって若干違いがあるが、その差は僅かであり、一般にセルロース30.6重量%、ヘミセルロース33.2重量%、リグニン(総リグニン28.5重量%=クラーソンリグニン24.7重量%+酸可溶性リグニン3.8重量%)、抽出成分3.6重量%、灰分4.1重量%といわれており、Characterization in Chemical Composition of the Oil Palm (Elaeis guineensis) (Journal of the Japan Institute of Energy,87,383-388(2008))にも記載がある。
視認できる0.4〜1.2mmの繊維、即ち、維管束と維管束の間は、リグニン等の樹脂成分及びセルロース、ヘミセルロース等の糖類、柔細胞、少ない空孔が一体になっている。
オイルパーム材Wは、20年以上成長した単一の幹を所定長のオイルパーム幹WDとして切断し、それを特定の厚さの板材または柱材として製材する。オイルパーム成型体の厚み、幅、長さは、目的によって異なってくるが、ここでは、その厚みが厚くても、薄くても断面正方形のもの及び断面長方形のものを含み「板材(柱材を含む)」ということにする。したがって、説明では、50cm幅の50cm厚の板材は存在することになる。
なお、オイルパーム幹WDを所定の厚みの板材を製材する工程は、所定長のオイルパーム幹WDを所定厚のオイルパーム材Wに形成する図1のステップS1の材料形成工程となる。
図1のステップS2の乾燥工程では、オイルパーム材Wが製材されてからの乾燥であると、端部の製材時の切り屑が出にくくなるので、望ましい乾燥状態となる。これらのオイルパーム材Wを乾燥する工程は、前述の材料形成工程で形成したオイルパーム材Wを乾燥する乾燥工程となる。
ステップS2の乾燥工程では、オイルパーム材Wの含水率を5%〜30%の範囲内に乾燥させるものであり、乾燥状態とすることにより、所定の乾燥室で保存可能となる。得られたオイルパーム材Wは、本実施の形態のオイルパーム成型体の製造方法の原理を示す図4(a)に示したオイルパーム材Wとなる。
ステップS3の配置工程は、成型しようとするオイルパーム成型体の形状によって異なるが、図5(b)に示すように湾曲したオイルパーム成型体を得る場合または図6のように波形のオイルパーム成型体を得る場合、その他等があるが、金型にオイルパーム材Wを配置する工程を意味する。したがって、オイルパーム成型体によってその形状が決定される。特に、オイルパーム成型体のシルエットラインは、下金型10Bの側壁10B1と略同一となる。この略同一とは、必ずしも同一ではなく、オイルパーム材Wの膨張によって埋設される部分の存在を意味するものである。
他の図1(b)の動作は、図1(a)と同じであるからその説明を省略する。
即ち、加湿工程は、ステップS2の乾燥工程の後、配置工程または加湿工程の何れかを先行して行えばよい。なお、上金型10Aと下金型10Bに配設されている配管11及び配管12は、高温の水蒸気を通過させる管路である。しかし、上金型10Aと下金型10Bに加える温度は加熱水蒸気であっても、ヒータ加熱でもよい。勿論、金型内は高い水蒸気圧とする必要がある。
特に、表層Na及び裏層Nbの密度は、加湿Gによるオイルパーム材Wの部分的な柔軟性の変化に繋がるスプレーによる水滴の噴霧量及び噴霧時間、浸漬する水の深さ及び時間によって密度(比重)が変化する。また、圧縮力Pの速度を速くすると表層Na及び裏層Nbの密度を上げることができる。
更に、図5乃至図7について詳述する。
図5において、下金型10Bの両側の側壁10B1は、成型しようとするオイルパーム成型体のシルエットラインに沿って形成されており、各オイルパーム材W2とオイルパーム材W3の間、各オイルパーム材W3とオイルパーム材W4との間は、接合を目的とする端部であるから、ここには、下金型10Bの両側の側壁10B1を形成していない。
なお、図5(a)では、下金型10Bのみ側壁10B1を形成しているが、上金型10Aのみに形成してもよいし、上金型10A及び下金型10Bに形成してもよい。このとき、下金型10Bの両側の側壁10B1に対向する上金型10Aは平板であってもよいし、嵌合する凸状であってもよい。
図7(b)に示すものでは、オイルパーム材W2とオイルパーム材W3の圧縮圧力面に対して傾斜接合Y2とするものである。この場合には、オイルパーム成型体Hとして垂直接合Y2の部位に折れ曲がる外力が加わるものに対しても使用が好適である。特に、傾斜接合Y2の幅以内の湾曲に対応させるのに好適である。
そして、図7(d)に示すものでは、オイルパーム材W2とオイルパーム材W3、オイルパーム材W3とオイルパーム材W4との圧縮圧力面に対して階段傾斜状接合Y4とするものである。階段傾斜状接合Y4は圧縮力Pに対して平行な垂直端面y4及び垂直端面y6と、圧縮力Pに対して直角に近い傾斜端面y5からなっている。この実施の形態では、オイルパーム成型体として垂直接合Y3の部位に折れ曲がる外力が加わるものに対して、階段状接合Y4が完全に一体化されていなくても使用が好適である。特に、傾斜接合Y4の幅以内の湾曲に対応させるのに好適である。
オイルパーム材W2とオイルパーム材W3を垂直接合Y1の状態で所定時間加熱圧縮すると、上金型10A及び下金型10Bの曲率より接合力が弱い場合が生ずる。勿論、圧縮率が大きいときには、問題のない接合ができることは言うまでもない。
例えば、オイルパーム成型体の表層Na及び裏層Nbが、その表層Naと裏層Nbを含む全体の比重と比較して、表層Naと裏層Nbの単純平均(Na+Nb)/2による平均比重との差が大きくできない場合で、圧縮率が小さい場合には、垂直接合Y1の接合が弱い可能性がある。
そのような事例の場合には、図6に示された本実施の形態のオイルパーム成型体の使用が可能である。
図6は同一厚さによる波状のように凹凸面がある場合、例えば、図6(c)に示すように、上に凸の位置でオイルパーム材W2とオイルパーム材W3との接続部分があり、それを図6(c)のように上金型10Aと下金型10Bで処理するとき、オイルパーム材W2とオイルパーム材W3の接続部の上面側が開く方向の力が働き、成型後のオイルパーム成型体のオイルパーム材W2とオイルパーム材W3の接続部にクラックが入ったり、接合が甘かったりする。そこで、本実施の形態では、まず、仮接続工程を設けている。
即ち、この仮接続工程は、配置工程で所定の位置に配置されたオイルパーム材Wに対して部分的に加熱圧縮して部分接続するものである。
したがって、オイルパーム材W2、W3、W4の上に凸の頂及び下に凸の頂に各補助材W01及び補助材W02を接合するという仮接続工程を設けることにより、複雑なオイルパーム成型体を金型で成型することができる。
ステップS11の材料形成工程で、オイルパーム幹WDを所定の厚みの板材を製材する。ステップS12の乾燥工程では、ステップS11の材料形成工程で形成したオイルパーム材Wを乾燥する。この乾燥工程では、オイルパーム材Wの含水率を5%〜30%の範囲内に乾燥するものであり、乾燥状態とすることにより、所定の乾燥室で保存可能となる。次いで、所定の面積、所定の厚みのオイルパーム材Wを下金型10Bに配置するステップS13の配置工程を行う。
なお、この仮接続工程はステップS16の加熱圧縮工程の特定湿度条件下での加熱及び加圧条件と同一または略同一であり、相違するのは、部分的に圧縮力Pを加えて接合する点にある。したがって、部分的に圧縮力Pを加えて接合する部位以外は、圧縮力Pを加えていない。
特に、表層Na及び裏層Nbの密度は、加湿Gによるオイルパーム材Wの部分的な柔軟性の変化に繋がるスプレーによる水滴の噴霧量及び噴霧時間、浸漬する水の深さ及び時間によって密度(比重)が調整できる。また、圧縮圧力Pの速度を変化させても、表層Na及び裏層Nbの密度を調整できる。
即ち、下に凸の凸部ER相互を圧力及び加熱によって接合すると、図8のオイルパーム成型体Hで形成した平面部EPから下に凸の凸部ERまでの厚みの2倍の厚みのオイルパーム成型体Hが得られる。この一対のオイルパーム成型体Hでは、空間EQを平面部EPから下に凸の凸部ERの対向面によって形成できるから、断熱効果を得る場合の材料に好適となる。
図11も厚みを異ならせたオイルパーム成型体Hの事例で、オイルパーム材Wの表裏を加湿Gし、その状態で上に凹の凹部EQ、上面を平面とした平面部EP、下に凹の凹部EQで構成したものである。このオイルパーム成型体Hにおいても、表層Naと裏層Nbは、表層Naと裏層Nbの比重、即ち、密度を中間位置Ncよりも高くすることができる。上の面の平面部EPから下の面の平面部EPまでの厚みが、オイルパーム成型体Hの厚みとなる。
図11のオイルパーム成型体Hと図10のオイルパーム成型体Hの厚みが同一であれば、凹部EQの深さを1/2にすることができ、無理のない成型ができる。
なお、表層Naと裏層Nbの比重は、中間位置Ncよりも高くすることができればよく、その厚みを問題とするものではない。少なくとも、表面の比重が中間位置Ncよりも高くするものであればよい。また、表層Naと裏層Nbの2面を加湿Gすることを前提として説明したが、本発明を実施する場合には、何れか1面のみとすることもできる。
また、オイルパーム材Wに形成した平面部EP、凹部EQまたは凸部ERは、他の平面部と同一の厚みに形成したものであるから、積層されたオイルパーム材Wの厚みが均一であり、機械的強度も強くなる。また、成型体全体に無理がかからない。
そして、オイルパーム材Wに形成した表面及び/または裏面の、凹部EQは、その位置が大きな圧縮力で圧縮され、オイルパーム材Wと異なるオイルパーム材Wで接合し一体化したものであるから、オイルパーム材Wに形成した表面及び裏面の、凹部EQは、そこで、前記複数枚積層したオイルパーム材Wを一体に固定するものであるから、平面部EP、の圧縮に左右されない接合が可能になり、そこだけで一体化できるから、緩衝剤、断熱材等としての使用が可能となる。
したがって、オイルパーム材Wに圧力を加えて形成したオイルパーム成型体Hが所望の形状に成型でき、また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用せず、オイルパームが本来的に有している成分を利用した環境にやさしいオイルパーム成型体Hが得られる。
よって、オイルパーム材Wが含有する樹脂成分及び糖成分の使用割合を多くし、自然物で接合したオイルパーム成型体Hが得られ、使用する材料のロスが少なくコストを抑え、また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用せず、オイルパームが本来的に有している成分を利用したオイルパーム成型体Hが得られる。
よって、オイルパーム材Wが含有する樹脂成分及び糖成分を使用し、自然物で接合したオイルパーム成型体Hが得られ、使用する材料のロスが少なくコストを抑え、また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用することなく、オイルパーム材Wが本来的に有している成分を利用したオイルパーム成型体Hが得られる。
また、上記実施の形態では、加湿Gの層を水に浸漬させることにより、水を含浸させたり、スプレーで噴射したりして形成するが、本発明を実施する場合には、何れの方法によって加湿Gの層を形成してもよい。例えば、オイルパーム材Wを脱気した状態で水を含浸させてもよいし、所定の時間だけスチームをオイルパーム材Wに噴射させてもよい。何れにせよ、オイルパーム材Wの1面のみまたは2面が加湿Gされればよい。
特に、本実施の形態のオイルパーム成型体Hは、内部に空気層を含むものであるから、中実のものよりも軽量化できるから、住宅の壁材として使用すると省エネ設計ができる。また、船舶等の内装材料として使用すると、その浮力によって室内装飾品が容易に沈み込むことがない。
W、W1,・・・,W5 オイルパーム材
H オイルパーム成型体
EQ 凹部
EP 平面部
ER 凸部
EO 空間
10A 上金型
10B 下金型
10B1 側壁
20A 上仮金型
20B 下仮金型
20B1 側壁
A01 補助金型
B01 補助金型
W01 補助材
W02 補助材
P 圧縮力
Na 表層
Nb 裏層
Nc 中間位置
G 加湿
Claims (3)
- オイルパーム材を加熱圧縮及びその圧縮状態を維持しながら温度を降下させてなる固定化により圧縮変形が維持される圧密化した植物成型体において、
前記オイルパーム材の圧縮方向の両面側の密度が前記オイルパーム材の圧縮方向の中心部の密度よりも高く、
前記オイルパーム材に形成した表面及び/または裏面の凹部は、その位置で前記オイルパーム材と異なるオイルパーム材と接合され一体化され、前記異なるオイルパーム材と接合されない平面部と比べて大きく圧縮され前記異なるオイルパーム材と接合していることを特徴とする植物成型体。 - 所定長のオイルパーム幹を所定厚のオイルパーム材に形成する材料形成工程と、
前記材料形成工程で形成した前記オイルパーム材を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程で乾燥させた前記オイルパーム材を所定の配置状態に配置する配置工程と、
前記乾燥工程で乾燥させた前記オイルパーム材に対して圧縮力を加える方向の両面を加湿する加湿工程と、
前記加湿工程で加湿させた前記オイルパーム材の圧縮力を加える方向に対して垂直方向に伸びるのを規制しながら、上金型と下金型とで前記オイルパーム材の面に対して直角方向の圧縮力を1〜100kg/cm2の範囲内で加えて110℃〜170℃の範囲内の加熱温度で10分間〜120分間加熱圧縮して圧密化する加熱圧縮工程と、
前記加熱圧縮工程で所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材の温度を降下させて冷却し、固定化させる固定化工程と
を具備することを特徴とする植物成型体の成型方法。 - 所定長のオイルパーム幹を所定厚のオイルパーム材に形成する材料形成工程と、
前記材料形成工程で形成した前記オイルパーム材を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程で乾燥させた前記オイルパーム材を所定の配置状態に配置する配置工程と、
前記配置工程で所定の位置に配置された前記オイルパーム材に対して部分的に加熱圧縮して部分接続する仮接続工程と、
前記仮接続された前記オイルパーム材に対して圧縮力を加える方向の両面を加湿する加湿工程と、
前記加湿工程で加湿させた前記オイルパーム材の圧縮力を加える方向に対して垂直方向に伸びるのを規制しながら、上金型と下金型とで前記オイルパーム材の面に対して直角方向の圧縮力を1〜100kg/cm2の範囲内で加えて110℃〜170℃の範囲内の加熱温度で10分間〜120分間加熱圧縮して圧密化する加熱圧縮工程と、
前記加熱圧縮工程で所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材の温度を降下させて冷却し、固定化させる固定化工程と
を具備することを特徴とする植物成型体の成型方法。
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