図1から図10を参照して、本開示における半導体発光素子用基板、半導体発光素子、半導体発光素子用基板の製造方法、および、半導体発光素子の製造方法の一実施の形態を説明する。
[素子用基板11B]
図1に示されるように、半導体発光素子用基板(以下、素子用基板11Bと示す)は、1つの側面である発光構造体形成面11Sを有している。半導体発光素子の製造工程にて、発光構造体形成面11Sには、発光構造体が形成される。
素子用基板11Bを形成する材料は、半導体発光素子の製造工程にて、熱的、機械的、化学的、および、光学的な耐性を有している。素子用基板11Bを形成する材料は、例えば、Al2O3(サファイア)、SiC、Si、Ge、MgAl2O4、LiTaO3、LiNbO3、ZrB2、GaP、GaN、GaAs、InP、InSn、AlN、CrB2からなる群から選択される1種類である。なかでも、素子用基板11Bを形成する材料は、機械的、熱的、化学的、および、光学的な耐性が相対的に高い点から、また、光透過性を有している点や、価格的なメリット、および、高い供給量を有している点から、実用的にはサファイアであることが好ましい。発光構造体形成面11Sは、発光構造体に結晶性を与えることに適した結晶性を自身に有している。
発光構造体形成面11Sは、多数の微細な凹凸から構成される凹凸構造を有している。多数の微細な凹凸は、発光構造体形成面11Sの広がる二次元方向に沿って繰り返されている。発光構造体形成面11Sが有している凹凸構造は、多数の大突部12、多数の小突部13、および、多数の平坦部14から構成されている。なお、発光構造体形成面11Sが有している凹凸構造にて、微細な凹凸は、発光構造体形成面11Sに沿った一次元方向に沿って繰り返されてもよい。
多数の平坦部14の各々は、1つの結晶面に沿って広がる平面であり、1つの平面上に配置されている。素子用基板11Bの結晶系が六方晶系であるとき、平坦部14は、例えば、c面、m面、a面、r面からなる群から選択される1つが連続する平面である。素子用基板11Bの結晶系が立方晶系であるとき、平坦部14は、例えば、(001)面、(111)面、(110)面からなる群から選択される1つが連なる平面である。なお、平坦部14が有する結晶面は、上記指数面よりも高指数面であってもよく、発光構造体に結晶性を与え、かつ、最も所望の素子特性が得られることに適した1つの結晶面であればよい。複数の平坦部14の各々が有している結晶面は、発光構造体形成面11Sの上で、半導体層が結晶性を有することを促す。
[大突部12]
図2に示されるように、多数の大突部12の各々は、その大突部12に接続する平坦部14から突き出て、かつ、平坦部14に接続する基端から先端に向かって細くなる形状を有している。複数の大突部12の各々は、略円錐形状を有している。
なお、大突部12の有している形状は、円錐形状に限らず、角錐形状であってもよいし、半球形状であってもよい。大突部12の有している形状は、基端から先端に向かって細くなる多段形状であってもよし、さらには、これらの形状における頂上部に平坦部が設けられた形状であってもよい。発光構造体形成面11Sの面内において多数の大突部12の各々の有している形状は互いに異なっていてもよい。
互いに隣り合う大突部12の間の間隔は、大突部12のピッチPLである。ピッチPLの最頻値は、1μm以上5μm以下であることが好ましく、2μm以上4μm以下であることがより好ましい。ピッチPLが1μm以上5μm以下であれば、発光構造体形成面11Sでの光の全反射、特に可視光の全反射が抑えられる程度に、発光構造体形成面11Sには、十分な数の大突部12が形成される。また、ピッチPLの最頻値が2μm以上であれば、大突部12の斜面である突出面12Sの加工が容易である程度に、突出面12Sの大きさが確保される。
こうしたピッチPLの最頻値は、例えば、以下に示されるように、原子間力顕微鏡イメージに基づく画像処理によって求められる。まず、発光構造体形成面11Sにて任意に選択される矩形領域に対して、原子間力顕微鏡イメージが得られる。この際に、原子間力顕微鏡イメージの得られる矩形領域にて、矩形領域の一辺の長さは、ピッチPLの最頻値の30倍〜40倍である。次に、フーリエ変換を用いた原子間力顕微鏡イメージの波形分離によって、原子間力顕微鏡イメージに基づく高速フーリエ変換像が得られる。次いで、高速フーリエ変換像における0次ピークと1次ピークとの間の距離が求められ、その距離の逆数が、1つの矩形領域におけるピッチPLとして取り扱われる。そして、互いに異なる25カ所以上の矩形領域についてピッチPLが計測され、こうして得られた計測値の平均値が、ピッチPLの最頻値である。なお、矩形領域同士は、少なくとも1mm離れていることが好ましく、5mm〜1cm離れていることが、より好ましい。
多数の大突部12の各々における平坦部14からの高さHLは、0.3μm以上4μm以下であることが好ましく、0.4μm以上3.5μm以下であることがより好ましい。大突部12の高さHLが0.3μm以上4μm以下であれば、発光構造体形成面11Sでの光の全反射、特に可視光の全反射が抑えられやすい。大突部12の高さHLが0.3μm以上であれば、大突部12と平坦部14との段差が明確になる。大突部12の高さHLが4μm以下であれば、発光構造体形成面11Sに形成される半導体発光層では、大突部12の形成に起因する成膜欠陥の発生が抑えられる。
大突部12の高さHLに対するピッチPLの比は、大突部12のアスペクト比である。大突部12のアスペクト比は、0.350以上0.714以下であることが好ましく、0.420以上0.596以下であることがより好ましく、0.5であることが特に好ましい。大突部12のアスペクト比が、0.350以上0.714以下であることによって、大突部12の頂角は、全反射を抑えることに好ましい90°に設定されやすくなる。また、大突部12のアスペクト比が、0.714以下であることによって、大突部12の斜面である突出面12Sに加工が施されやすくなる。
こうした大突部12の高さHLの最頻値は、例えば、以下に示されるように、原子間力顕微鏡イメージに基づく画像処理によって求められる。まず、発光構造体形成面11Sにて任意に選択される矩形領域に対して、原子間力顕微鏡イメージが得られ、その原子間力顕微鏡イメージから、凹凸構造の断面形状が得られる。次に、断面形状にて連続する5個以上の大突部12に対して、大突部12における頂点の高さと、その大突部12に接続する平坦部14の高さとの差が計測される。次いで、互いに異なる5カ所以上の矩形領域についても同様に高さHLが計測され、合計で25以上の高さHLが計測される。なお、矩形領域同士は、少なくとも1mm離れていることが好ましく、5mm〜1cm離れていることが、より好ましい。そして、二次元のフーリエ変換像を用いた赤道方向プロファイルが作成され、その一次ピークの逆数から、大突部12における高さHLの最頻値は求められる。
複数の大突部12は、発光構造体形成面11Sに沿って、複数の六方充填構造を有していることが好ましい。なお、複数の六方充填構造の各々は、7つの大突部12から構成されている。六方充填構造では、6つの大突部12が、六角形の有する6つの頂点に配置され、かつ、6つの大突部12によって囲まれる部分に、1つの大突部12が配置されている。すなわち、複数の六方充填構造の各々では、中心となる1つの大突部12の周囲に、6つの大突部12が等配されている。
[小突部13]
大突部12における突出面12Sは、突出面12Sから突き出る多数の小突部13を有している。多数の小突部13の各々は、大突部12における周方向に沿って略等配され、かつ、大突部12における高さ方向にも略等間隔に配置されている。
多数の小突部13の各々は、その小突部13に接続する突出面12Sから突き出て、かつ、突出面12Sに接続する基端から先端に向かって細くなる形状を有している。複数の小突部13の各々は、略円錐形状を有している。
なお、小突部13の有している形状は、円錐形状に限らず、角錐形状、あるいは、半球形状であってもよい。小突部13の有している形状は、基端から先端に向かって細くなる多段形状であってもよいし、さらには、これらの形状における頂上部に平坦部が設けられた形状であることが最も好ましい。また、多数の小突部13の各々の有している形状は、互いに異なっていてもよい。
突出面12Sに沿って互いに隣り合う小突部13間の間隔は、小突部13のピッチPSである。小突部13のピッチPSにおける最頻値は、100nm以上1μm以下であることが好ましく、150nm以上500nm以下であることがより好ましい。ピッチPSが100nm以上1μm以下であれば、突出面12Sでの光の全反射、特に可視光の全反射が抑えられる程度に、突出面12Sには、十分な数の小突部13が形成される。
こうしたピッチPSの最頻値は、例えば、以下に示されるように、原子間力顕微鏡イメージに基づく画像処理によって求められる。まず、突出面12Sにて任意に選択される矩形領域に対して、原子間力顕微鏡イメージが得られる。この際に、原子間力顕微鏡イメージの得られる矩形領域にて、矩形領域の一辺の長さは、ピッチPSの最頻値の30倍〜40倍である。次に、フーリエ変換を用いた原子間力顕微鏡イメージの波形分離によって、原子間力顕微鏡イメージに基づく高速フーリエ変換像が得られる。次いで、高速フーリエ変換像における0次ピークと1次ピークとの間の距離が求められ、その距離の逆数が、1つの矩形領域におけるピッチPSとして取り扱われる。そして、互いに異なる25カ所以上の矩形領域についてピッチPSが計測され、こうして得られた計測値の平均値が、ピッチPSの最頻値である。なお、矩形領域同士は、少なくとも1mm離れていることが好ましく、5mm〜1cm離れていることが、より好ましい。
多数の小突部13の各々における突出面12Sからの高さが、小突部13の高さHSであり、小突部13の高さHSに対するピッチPSの比は、小突部13のアスペクト比である。小突部13のアスペクト比は、0.5以上であり、大突部12のアスペクト比よりも大きい1.0以上が好ましく、2.0以上であることがより好ましい。小突部13のアスペクト比が大きいほど、突出面12Sに比べて、光の反射、特に可視光の全反射が抑えられる。なお、小突部13のアスペクト比が大きすぎるとき、互いに隣り合う小突部13の間の隙間には、発光構造体が形成されなくなってしまう。そのため、小突部13のアスペクト比は、10以下であることが好ましい。
こうした小突部13の高さHSの最頻値は、例えば、以下に示されるように、原子間力顕微鏡イメージに基づく画像処理によって求められる。まず、突出面12Sにて任意に選択される矩形領域に対して、原子間力顕微鏡イメージが得られ、その原子間力顕微鏡イメージから、凹凸構造の断面形状が得られる。次に、断面形状にて連続する5個以上の小突部13に対して、小突部13における頂点の高さと、その小突部13に接続する突出面12Sとの高さとの差が計測される。次いで、互いに異なる5カ所以上の矩形領域について高さHSが計測され、合計で25以上の高さHSが計測される。なお、矩形領域同士は、少なくとも1mm離れていることが好ましく、5mm〜1cm離れていることが、より好ましい。そして、二次元のフーリエ変換像を用いた赤道方向プロファイルを作成し、その一次ピークの逆数から、大突部12における高さHLの最頻値は求められる。
図3に示されるように、発光構造体形成面11Sの平面視にて、1つの大突部12の有する突出面12Sは、複数の小突部13から構成される複数の六方充填構造TGを有している。複数の六方充填構造TGの各々は、7つの小突部13から構成されている。六方充填構造TGでは、6つの小突部13が、六角形の有する6つの頂点に配置され、かつ、6つの小突部13によって囲まれる部分に、1つの小突部13が配置されている。すなわち、複数の六方充填構造TGの各々では、中心となる1つの小突部13の周囲に、6つの小突部13が等配されている。
1つの突出面12Sが、複数の六方充填構造TGを有する構成であれば、小突部13による全反射の抑制効果が高められる。また、発光構造体形成面11Sに形成される発光構造体の膜ストレスが、1つの小突部13に集中することも抑えられる。そして、小突部13に必要とされる機械的な強度も抑えられる。また、大突部12の表面積が大きくなることに伴い、大突部12のうえに形成される結晶に対し、その成長を開始させる箇所が増える。それゆえに、欠陥の少ない高品質な発光構造体が、容易に得られやすくなる。
複数の小突部13は、複数の小突部団TLを有している。複数の小突部団TLの各々は、2以上の六方充填構造TGから構成されている。複数の小突部団TLの各々では、互いに異なる2つの六方充填構造TGが、2つ以上の小突部13を互いに共有している。複数の小突部団TLの各々では、六方充填構造TGの並ぶ方向、1つの小突部団TLの占める面積、1つの小突部団TLの形状のいずれかが互いに異なっている。すなわち、突出面12Sでは、複数の小突部団TLの各々が、その大きさ、および、形状を含めてランダムに配置されている。
1つの突出面12Sが、複数の小突部団TLを有する構成であれば、1つの突出面12Sに入る光の屈折が、1つの突出面12S内にて平均化される程度に、微細な凹凸構造は、適度なランダム性を有している。
なお、突出面12Sは、複数の小突部団TLの他に、孤立した六方充填構造TGを有してもよいし、孤立した小突部13を有してもよい。また、複数の小突部団TLの各々は、互いに同じ大きさを有していてもよいし、互いに同じ形状を有していてもよい。また、複数の小突部団TLの各々は、六方充填構造TGの並ぶ方向を互いに等しくしてもよく、互いに離れている構成であればよい。
[素子用基板11Bの製造方法]
半導体発光素子用基板の製造方法は、大突部形成工程と小突部形成工程とを含む。大突部形成工程では、発光構造体形成面11Sに対するエッチングによって、大突部12と平坦部14とが形成される。小突部形成工程では、大突部12の突出面12Sに対するエッチングによって、小突部13が形成される。以下、半導体発光素子用基板の製造方法に含まれる各工程を、処理の順に説明する。
[大突部12の形成工程]
図4に示されるように、大突部形成工程では、大突部12と平坦部14とが、発光構造体形成面11Sに形成される。この際に、発光構造体形成面11Sには、まず、大突部12が形成される部分を覆うレジストマスクが、フォトリソグラフィー法によって形成される。次いで、発光構造体形成面11Sが、反応性イオンエッチング法などによってエッチングされる。これによって、発光構造体形成面11Sのうち、レジストマスク以外の部分では、略同じ速度でエッチングが進み、1つの結晶面に沿って広がる平坦部14が形成される。また、発光構造体形成面11Sのうち、レジストマスクで覆われた部分では、レジストマスクの端からエッチングが進み、円錐形状を有する大突部12が、平坦部14と同時に形成される。
なお、発光構造体形成面11Sに形成されるマスクは、有機無機ハイブリッド材料からなるレジストマスクの他、フォトリソグラフィー法とエッチング法(反応性イオンエッチング法あるいはウエットエッチング法)とによって形成される無機化合物からなるハードマスクであってもよい。発光構造体形成面11Sに形成されるマスクは、発光構造体形成面11Sに対し、エッチングの選択比を得る構成であればよく、例えば、プラズマCVD法、高密度プラズマCVD法、あるいは、LP−CVD法などで形成されるシリコン窒化膜(SiNx、Si3N4)やシリコン酸化膜(SiO2,SiOx(xは2以外の正の数))などであってもよい。また、加工時の耐熱性を得るため金属膜(例えば、Cr,Ti,Ni,Ta,W,Ru)、あるいは金属化合物(TiN、TaN、WN、NiCr)を形成しても構わない。
[小突部13の形成工程]
小突部形成工程は、マスク形成工程と、単粒子膜形成工程と、単粒子膜エッチング工程と、突出面エッチング工程とを含む。マスク形成工程では、発光構造体形成面11Sのうち少なくとも平坦部14にはマスクが形成される。単粒子膜形成工程では、発光構造体形成面11Sに移し取られる単粒子膜が形成される。単粒子膜エッチング工程では、発光構造体形成面11Sが実質的にエッチングされないエッチング条件によって、単粒子膜のみがエッチングされる。突出面エッチング工程では、単粒子膜をマスクとして突出面12Sがエッチングされる。以下、小突部形成工程に含まれる各工程を、処理の順に説明する。
[マスクM1の形成工程]
図5に示されるように、発光構造体形成面11Sのうち、少なくとも平坦部14を覆うマスクM1が形成される。この際に、まず、大突部12と平坦部14とを含む発光構造体形成面11Sの全体に、ポジ型のレジストRが塗布される。次いで、発光構造体形成面11Sに塗布されたレジストRの全体がベイクされた後に、そのレジストRの溶解性を高めるため露光光にレジストRの全体が曝される。
ここで、大突部12を覆うレジストRの厚さは、平坦部14を覆うレジストRよりも薄い。そのため、レジストRの全体が露光される方法であれば、大突部12を覆うレジストRの露光量は、平坦部14を覆うレジストRの露光量よりも必然的に大きくなる。また、この露光量は、レジストRのうち入射光側から素子用基板11Bに向けて漸近的に減少する。それゆえに、平坦部14を覆うレジストRの底部には、露光されない部分が形成される。なお、露光されない部分の厚みは、レジストRの全体に対して、露光量が大きいほど薄く、反対に、露光量が小さいほど厚い。結果として、露光されたレジストRが、ひき続いて行われる現像工程において除去される際には、平坦部14を覆うレジストRの一部が、発光構造体形成面11Sに残されて、少なくとも平坦部14を覆うマスクM1が形成される。
こうした全面露光によるマスクM1の形成によれば、マスクM1を形成するためのフォトマスクが必要とされない。そのため、フォトマスクと発光構造体形成面11Sとの位置を合わせる作業が不要であるから、マスクM1の形成が容易である。また、突出面12SとマスクM1とが自ずと連続するため、これらの表面には、単粒子膜が移されることに適した平滑な連続面が形成される。
なお、マスクM1を形成する材料は、上記フォトレジストにかぎらず、感光性が付与された樹脂である、アクリル樹脂、Si原子を含むSOG、ポリイミドなどを選択することも可能である。また、露光の形態は、全面露光に限らず、大突部12を覆うレジストRのみが、選択的に露光される形態であってもよい。また、ネガ型のレジストRが塗布される方法であれば、平坦部14を覆うレジストRのみが、選択的に露光される機能を持ったマスクを用いる形態であってもよい。なお、ネガ型のレジストRが用いられる場合においても、マスクM1を形成する材料は、フォトレジストに限定されないことは言うまでもない。
マスクM1は、単粒子膜エッチング工程と突出面エッチング工程とにおいて、平坦部14をエッチャントから保護する。それゆえに、マスクM1は、単粒子膜エッチング工程の後に行われる突出面エッチング工程にて、突出面12Sや単粒子膜よりもエッチング速度が遅いことが好ましい。また、単粒子膜エッチング工程においても、単粒子膜よりもエッチング速度が遅いことが好ましい。こうしたマスクM1であれば、マスクM1によって平坦部14が保護されやすく、あるいは、マスクM1の厚さが厚くなることが抑えられる。なお、マスクM1のエッチング速度が、突出面12Sのエッチング速度や、単粒子膜のエッチング速度よりも速い場合であっても、マスクM1の厚さが十分に厚ければ、マスクM1による平坦部14の保護は可能である。
[単粒子膜PFの形成工程]
単粒子膜を構成する粒子Pは、有機粒子、有機無機複合粒子、無機粒子からなる群から選択される1種類以上の粒子である。有機粒子を形成する材料は、例えば、ダイヤモンド、グラファイト、フラーレン類からなる群から選択される1種類である。有機無機複合粒子を形成する材料は、例えば、SiC、炭化硼素からなる群から選択される1種類である。
粒子Pは、無機粒子であることが好ましい。粒子Pが無機粒子であれば、粒子Pからなる単粒子膜が選択的にエッチングされる工程にて、単粒子膜と発光構造体形成面11Sとの間におけるエッチングの選択比が得られやすい。無機粒子を形成する材料は、例えば、無機酸化物、無機窒化物、無機硼化物、無機硫化物、無機セレン化物、金属化合物、金属からなる群から選択される1種類である。
無機酸化物は、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、酸化亜鉛、酸化スズ、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)からなる群から選択される1種類である。無機窒化物は、例えば、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素からなる群から選択される1種類である。無機硼化物は、例えば、ZrB2、CrB2からなる群から選択される1種類である。無機硫化物は、例えば、硫化亜鉛、硫化カルシウム、硫化カドミウム、硫化ストロンチウムからなる群から選択される1種類である。無機セレン化物は、例えば、セレン化亜鉛、セレン化カドミウムからなる群から選択される1種類である。金属粒子は、Si、Ni、W、Ta、Cr、Ti、Mg、Ca、Al、Au、Ag、および、Znからなる群から選択される1種類の粒子である。
なお、粒子Pを形成する材料は、構成元素の一部が、それとは異なる他元素によって置換されてもよい。例えば、粒子Pを形成する材料は、シリコンとアルミニウムと酸素と窒素からなるサイアロンであってもよい。また、粒子Pは、互いに異なる材料からなる2種類以上の粒子の混合物であってもよい。また、粒子Pは、互いに異なる材料からなる積層体であってもよく、例えば、無機窒化物からなる無機粒子が、無機酸化物によって被覆された粒子であってもよい。また、粒子Pは、無機粒子の中にセリウムやユーロピウムなどの付活剤が導入された蛍光体粒子であってもよい。なお、上述した材料のなかでも、粒子Pの形状、および、寸法が安定している点で、粒子Pを形成する材料は、無機酸化物であることが好ましく、そのなかでもシリカがより好ましい。
単粒子膜形成工程には、下記3つの方法のいずれか1つが用いられる。
・ラングミュア−ブロジェット法(LB法)
・粒子吸着法
・バインダー層固定法
LB法では、水よりも比重が低い溶剤のなかに粒子が分散した分散液が用いられ、まず、水の液面に分散液が滴下される。次いで、分散液から溶剤が揮発することによって、粒子からなる単粒子膜が水面に形成される。そして、水面に形成された単粒子膜が発光構造体形成面11Sに移し取られることによって、発光構造体形成面11Sに単粒子膜が形成される。
粒子吸着法では、まず、コロイド粒子の懸濁液のなかに素子用基板11Bが浸漬される。次いで、発光構造体形成面11Sと静電気的に結合した第1層目の粒子層のみが残されるように、第2層目以上の粒子が除去される。これによって、発光構造体形成面11Sに単粒子膜が形成される。
バインダー層固定法では、まず、発光構造体形成面11Sにバインダー層が形成されて、バインダー層上に粒子の分散液が塗布される。次いで、バインダー層が加熱によって軟化して、第1層目の粒子層のみが、バインダー層のなかに埋め込まれ、2層目以上の粒子が洗い落とされる。これによって、発光構造体形成面11Sに単粒子膜が形成される。
単粒子膜形成工程に用いられる成膜方法は、下記式(1)に示される充填度合いD(%)を15%以下とする方法がよい。なかでも、単層化の精度、膜形成に要する操作の簡便性、単粒子膜の面積の拡張性、単粒子膜が有する特性の再現性などの点から、LB法が好ましい。
充填度合いD[%]=|B−A|×100/A・・・(1)
式(1)において、Aは粒子の平均粒径であり、Bは互いに隣り合う粒子間のピッチにおける最頻値であり、|B−A|はAとBとの差の絶対値である。
充填度合いDは、単粒子膜において、粒子が最密充填されている度合いを示す指標である。充填度合いDが小さいほど、粒子が最密充填されている度合いは高く、粒子の間隔が調整された状態であって、単粒子膜における粒子の配列の精度が高い。単粒子膜における粒子の密度を高める点から、充填度合いDは、10%以下であることが好ましく、1.0%以上3.0%以下であることがより好ましい。
粒子の平均粒径Aは、単粒子膜を構成する粒子の平均一次粒径である。粒子の平均一次粒径は、粒度分布のピークから求められる。粒度分布は、粒子動的光散乱法によって求められる粒度分布の近似から得られる。なお、充填度合いDを15%以下とするために、粒子における粒径の変動係数(標準偏差を平均値で除した値)は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
粒子間のピッチにおける最頻値は、互いに隣り合う2つの粒子同士の頂点と頂点との間の距離の最頻値である。なお、粒子が球形であって、粒子間が隙間なく互いに接しているとき、互いに隣り合う粒子同士の頂点と頂点との間の距離は、互いに隣り合う粒子同士の中心と中心との間の距離である。なお、粒子間のピッチにおける最頻値は、大突部12のピッチPLと同様に、単粒子膜の原子間力顕微鏡イメージに基づいて得られる。
次に、単粒子膜を形成する方法の一例としてLB法を用いる方法について説明する。
まず、水が溜められた水槽と分散液とが準備される。分散液には、水よりも比重の低い溶剤のなかに粒子Pが分散されている。
粒子Pの表面は、疎水性を有することが好ましく、分散媒における溶剤も、疎水性を有することが好ましい。粒子P、および、溶剤が疎水性を有する構成であれば、粒子Pの自己組織化が水面で進行して、2次元的に最密充填した単粒子膜が形成されやすくなる。分散媒における溶剤は、高い揮発性を有することが好ましい。揮発性が高く、かつ、疎水性である溶剤には、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、エチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルからなる群から選択される1種以上の揮発性有機溶剤が用いられる。
粒子Pが無機粒子であるとき、粒子Pの表面は、通常、親水性である。そのため、粒子Pが無機粒子であるとき、粒子Pの表面は、疎水化剤によって疎水化されることが好ましい。粒子Pの疎水化に用いられる疎水化剤としては、例えば、界面活性剤や金属アルコキシシランなどが用いられる。
分散液は、メンブランフィルターなどによって精密ろ過されて、分散液のなかに含まれる凝集粒子、すなわち、複数の1次粒子の集合である2次粒子が除去されていることが好ましい。精密ろ過されている分散液であれば、粒子が2層以上重なる箇所や、粒子が存在しない箇所が、単粒子膜にて生成されがたくなり、精度の高い単粒子膜が得られやすくなる。
図6に示されるように、水面Lに分散液が滴下されて、分散液のなかの溶剤が揮発すると、粒子Pが水面Lに沿って単層で展開する。この際に、水面に分散した粒子Pが集結するとき、互いに隣り合う粒子Pの間には、その間に介在する溶剤に起因して、表面張力が作用する。その結果、互いに隣り合う粒子P同士は、ランダムに存在するのではなく、2次元的な自己組織化によって最密充填構造を形成する。これによって、2次元的に最密充填した単粒子膜PFが形成される。
なお、分散液における粒子Pの濃度は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、分散液の滴下される速度は、0.001ml/秒以上0.01ml/秒以下であることが好ましい。分散液における粒子Pの濃度が1質量%以上10質量%以下であり、分散液の滴下される速度が0.001ml/秒以上0.01ml/秒以下であれば、粒子Pがクラスター状に凝集して2層以上に重なることが抑えられる。また、粒子Pが存在しない欠陥箇所が生じることが抑えられ、2次元に最密充填した単粒子膜が得られやすい。
また、単粒子膜形成工程は、水面Lに超音波が照射される条件で実施されることが好ましい。水面Lに超音波が照射されながら分散液の溶剤が揮発すると、粒子Pの最密充填が進む。また、水面Lに超音波が照射されながら分散液の溶剤が揮発すると、粒子Pの軟凝集体が破壊されて、一度生成された点欠陥、線欠陥、または、結晶転移などが修復されもする。
図7に示されるように、水面Lに形成された単粒子膜PFは、単層状態を保ちながら素子用基板11Bに移し取られる。単粒子膜PFを素子用基板11Bに移し取る方法は、例えば、疎水性を有する発光構造体形成面11Sと単粒子膜PFの主面とが略平行に保たれ、単粒子膜PFの上方から、発光構造体形成面11Sが単粒子膜PFと接触する。そして、疎水性を有する単粒子膜PFと、同じく疎水性を有する発光構造体形成面11Sとの親和力によって、単粒子膜PFが素子用基板11Bに移し取られる。あるいは、単粒子膜PFが形成される前に、あらかじめ水中に配置された発光構造体形成面11Sと、水面Lとが略平行に配置され、単粒子膜PFが水面Lに形成された後に、水面Lが徐々に下げられて、発光構造体形成面11Sに単粒子膜PFが移し取られる。これらの方法であれば、特別な装置が使用されずに、単粒子膜PFが発光構造体形成面11Sに移し取られる。一方で、大面積の単粒子膜PFがその最密充填状態を保ちながら発光構造体形成面11Sに移し取られる点では、以下に示されるLBトラフ法が好ましい。
図7に示されるように、LBトラフ法では、まず、素子用基板11Bが立てられた状態で、あらかじめ水面Lの下に素子用基板11Bが浸漬されて、水面Lに単粒子膜PFが形成される。そして、素子用基板11Bが立てられた状態で、素子用基板11Bが徐々に上方に引き上げることによって、単粒子膜PFが素子用基板11Bに移し取られる。この際に、発光構造体形成面11Sに移し取られた単粒子膜PFは、その全体で完全な最密充填構造を有することは少ない。そのため、発光構造体形成面11Sに移し取られた単粒子膜PFは、互いに区画された複数の膜要素から構成されて、複数の膜要素の各々で、粒子Pの六方充填構造が連続することになる。
なお、図7では、素子用基板11Bの両面に単粒子膜PFが移し取られる状態が示されているが、少なくとも発光構造体形成面11Sに単粒子膜PFは移し取られればよい。また、単粒子膜PFは、水面Lにて単層に形成されているため、素子用基板11Bの引き上げ速度などが多少変動しても、単粒子膜PFが崩壊して多層化するおそれはない。
発光構造体形成面11Sに移し取られた単粒子膜PFに対しては、単粒子膜PFを発光構造体形成面11Sに固定する固定処理が行われてもよい。単粒子膜PFを発光構造体形成面11Sに固定する方法には、バインダーによって粒子Pと発光構造体形成面11Sとが接合される方法や、粒子Pが発光構造体形成面11Sを融着する焼結法が用いられる。
バインダーを用いる固定方法では、単粒子膜PFが移し取られた発光構造体形成面11Sにバインダー溶液が供給されて、単粒子膜PFを構成する粒子Pと発光構造体形成面11Sとの間にバインダー溶液が浸透する。この際に、バインダーの使用量は、単粒子膜PFの質量に対して0.001倍以上0.02倍以下であることが好ましい。このような使用量の範囲であれば、バインダーが多すぎて、互いに隣り合う粒子Pの間にバインダーが詰まってしまうことが抑えられ、かつ、粒子Pを発光構造体形成面11Sに固定することができる。バインダーには、金属アルコキシシランや一般の有機バインダー、無機バインダーなどが用いられる。
焼結法では、単粒子膜PFを移し取った素子用基板11Bが加熱されて、単粒子膜PFを構成する粒子Pが、発光構造体形成面11Sに融着する。この際に、素子用基板11Bの加熱温度は、粒子Pを形成する材料と、素子用基板11Bを形成する材料とに応じて、適宜決定される。なお、素子用基板11Bが空気中で加熱されるとき、素子用基板11Bや粒子Pが酸化する可能性がある。そのため、焼結法が用いられるときには、不活性ガスの雰囲気で素子用基板11Bを加熱することが好ましい。
[単粒子膜PFのエッチング工程]
図8に示されるように、単粒子膜エッチング工程では、単粒子膜PFを未処理単粒子膜とし、素子用基板11Bが実質的にエッチングされないエッチング条件で、単粒子膜PFを構成する粒子Pをエッチングして処理済単粒子膜を形成する。この際に、単粒子膜PFを構成する粒子Pの粒径は、選択的なエッチングによって小さくなり、互いに隣り合う粒子Pの間には、新たな間隙が形成される。一方で、大突部12の突出面12Sは、実質的にエッチングされず、粒子Pの縮径前と同じ状態を保つ。また、複数の平坦部14の各々は、マスクM1に覆われて保護され続ける。
発光構造体形成面11Sが実質的にエッチングされないエッチング条件では、粒子Pのエッチング速度に対する突出面12Sのエッチング速度の割合が、25%以下であることが好ましい。また、粒子Pのエッチング速度に対する突出面12Sのエッチング速度の割合は、15%以下であることがより好ましく、特に10%以下であることが好ましい。なお、このようなエッチング条件は、反応性エッチングに用いられるエッチングガスを適切に選択すればよい。例えば、素子用基板11Bがサファイアであり、粒子Pがシリカである場合には、CF4、SF6、CHF3、C2F6、C3F8、CH2F2、NF3からなる群から選択される1種類以上のガスをエッチングガスとして用いればよい。また、素子用基板11Bをエッチングすることの必要に応じて、Arなどの希ガスやO2などの添加ガスをエッチングガスに加えることが好ましい。なお、エッチングガスは、これらに限定されること無く、単粒子マスクを構成する粒子の材質に応じて適宜選択されるものである。
[突出面12Sのエッチング工程]
図9に示されるように、突出面エッチング工程では、縮径された粒子Pをマスクとして大突部12の突出面12Sがエッチングされる。この際に、発光構造体形成面11Sは、互いに隣り合う粒子Pの間の空隙を通じてエッチャントであるエッチングガスに曝され、単粒子膜を構成する粒子Pもまた、エッチャントであるエッチングガスに曝される。
ここで、突出面12Sでは、粒子Pの中心と対向する部位よりも、粒子Pの周辺と対向する部位にて、先にエッチングが進行する。そして、粒子Pの消滅に伴って、粒子Pの中心と対向する部位で、エッチングがさらに進行する。結果として、突出面12Sでは、粒子Pの下側を頂点とした円錐形状を有する小突部13が形成される。小突部13のピッチPSは、互いに隣り合う粒子Pの間の間隔と同等であり、小突部13の配置もまた、粒子Pの配置と同様である。そして、突出面12Sのうち、単粒子膜の膜要素が積み重ねられた部分には、小突部団TLが形成され、粒子Pの六方充填構造が積み重ねられた部分には、六方充填構造TGが形成される。なお、小突部13が有する上述した各種の形状は、ドライエッチングの条件が各別に最適化されることによって得られる。
一方で、小突部13が形成されているとき、平坦部14は、マスクM1に覆われてエッチャントから保護され続ける。結果として、発光構造体の形成に必要とされる結晶面は、平坦部14の保護によって、その状態を保ち続ける。
突出面エッチング工程では、突出面12Sのエッチング速度が、粒子Pのエッチング速度よりも高いことが好ましい。粒子Pのエッチング速度に対する突出面12Sのエッチング速度の割合は、200%以上であることが好ましく、300%以下であることがより好ましい。なお、このようなエッチング条件は、反応性エッチングに用いられるエッチングガスを適切に選択すればよい。例えば、素子用基板11Bがサファイアであり、粒子Pがシリカである場合、Cl2、BCl3、SiCl4、HBr、HI、HClからなる群から選択される1種類以上のガスをエッチングガスとして用いればよい。なお、突出面12Sのエッチングに用いられるエッチングガスは、これらに限定されること無く、素子用基板11Bを形成する材料に応じて適宜選択されるものである。
[半導体発光素子]
図10に示されるように、半導体発光素子は、素子用基板11Bを基材として有している。半導体発光素子は、素子用基板11Bの発光構造体形成面11Sに、発光構造体形成面11Sの凹凸構造を覆う発光構造体21を有している。発光構造体21は、複数の半導体層から構成される積層体を有し、電流の供給によってキャリアを再結合させて発光する。複数の半導体層の各々は、上述した発光構造体形成面11Sから順に積み重ねられる。
複数の半導体層の各々を形成する材料は、GaN、InGaN、AlGaN、InAlGaN、GaAs、AlGaAs、InGaAsP、InAlGaAsP、InP、InGaAs、InAlAs、ZnO、ZnSe、ZnS等の化合物半導体であることが好ましい。なかでも、複数の半導体層の各々を形成する材料は、V族元素が窒素であるIII-V族半導体であることが好ましい。
複数の半導体層の有する機能は、n型の導電性と、p型の導電性と、キャリアを再結合させる活性とを含むことが好ましい。複数の半導体層における積層構造は、n型半導体層とp型半導体層との間に活性層が挟まれたダブルヘテロ構造であってもよいし、複数の量子井戸構造が重ねられた多重量子井戸構造であってもよい。要するに、発光構造体21が有する層構造は、半導体発光素子に必要とされる光の波長によって適宜選択される。
複数の半導体層は、発光層が形成される際の温度よりも低温で成長するバッファ層を含んでもよい。バッファ層は、発光構造体形成面11Sに積層されて、発光構造体形成面11Sの結晶性をバッファ層以外の半導体層に反映させることによって高品質な結晶性薄膜を成長させる役割を果たす。そのため、材料間の格子不整合が著しく異なる場合においては一般的に用いられる手法である。その具体的な例として、文献(H.Amano, N.Sawaki, I.Akasaki, and T.Toyoda, Appl.Phys.Lett.48,353(1986) )に詳しく記載されている。この後にさらに格子不整合を解消するために、再び電気的な極性を有さない3〜10μmの厚さを有する半導体層(アンドープ層)を成長させる。
半導体発光素子は、波長変換層を含んでもよい。波長変換層は、発光素子の側面のうち光の取り出される側面に積層されて、活性層にて生成された光の波長を調整する。例えば、活性層にて生成された光が、紫外線領域の光を多く含むとき、波長変換層は、紫外線領域の光を、照明用に適した白色の光に変換する。こうした波長変換層は、ピーク波長410〜483nmの蛍光を発する青色蛍光体、ピーク波長490〜556nmの蛍光を発する緑色蛍光体、および、ピーク波長585〜770nmの蛍光を発する赤色蛍光体を含む。また、活性層にて生成された光が、青色領域の光を多く含むとき、波長変換層は、紫外線領域の光を、照明用に適した白色の光に変換する。こうした波長変換層は、ピーク波長570〜578nmの蛍光を発する黄色蛍光体を含む。
[半導体発光素子の製造方法]
半導体発光素子の製造方法は、上述の半導体発光素子用基板の製造方法によって素子用基板11Bを製造する工程と、素子用基板11Bの発光構造体形成面11Sに発光構造体21を形成する工程とを含んでいる。
発光構造体21における化合物半導体層を形成する方法は、エピタキシャル成長法が一般的に用いられており、分子線エピタキシャル法、気相エピタキシャル法などがあるが、生産性と構造制御の観点からMOVPE法(MOCVD法)が用いられることが多い。n型半導体層を形成する方法は、n型不純物の添加されるエピタキシャル成長法であればよい。p型半導体層を形成する方法は、p型不純物の添加されるエピタキシャル成長法であればよい。
分子線エピタキシャル成長法では、化合物半導体層の構成元素からなる分子または原子のビームが、発光構造体形成面11S上を照射して、化合物半導体層の形成材料を発光構造体形成面11S上に結晶として成長させる。なかでも、V族原料としてAsH3やPH3のような水素化物を用い、成長する化合物半導体層の厚さが大きい点にて好ましい。
またMOCVD法では、III族原料として、TMGa、TEGa、TMIn、TMAIを、V族原料として高純度NH3を用い、n型ドーパントとしてはSiH4が、p型ドーパントには、Cp2Mgなどが使用できる。
上記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)突出面12Sに複数の小突部13が形成されるため、突出面12Sでの全反射は、小突部13での光の屈折によって抑えられる。それゆえに、発光構造体が生成する光の取り出される効率が高められる。
(2)大突部12のアスペクト比と小突部13のアスペクト比とが互いに異なるため、大突部12によって抑えられない全反射が、小突部13によって抑えられやすくなる。
(3)複数の小突部13が六方充填構造TGを有しているため、上記(1)に準じた効果がさらに高められる。
(4)小突部13の配置がランダム性を有するため、上記(1)に準じた効果の均一性が高められる。
(5)小突部13が形成される際に、マスクM1が平坦部14を保護するため、平坦部14の有する結晶性が低下することが抑えられる。
(6)小突部13を形成するためのマスクである単粒子膜は、マスクM1の上にも積み重なる。それゆえに、マスクM1による平坦部14の保護機能は、さらに高められる。
(7)小突部13を形成するためのマスクである単粒子膜は、処理済単粒子膜であるため、未処理単粒子膜に対する処理の変更によって、小突部13のピッチや高さが調整できることになる。
(8)平坦部14では、半導体層の主成長面が形成されやすいため、平坦部14から半導体層の結晶の成長が促進される。この際に、複数の小突部13が大突部12に形成されているため、複数の小突部13の各々においても、半導体層の成長核が形成され、半導体層の形成時の初期には、成長核が高密度に生成される。結果として、成長核から島状の結晶粒へと成長する過程において、小突部13から横方向に沿って成長する結晶と、平坦部14から縦方向に沿って成長する結晶との融合が、速やかに進行する。そして、半導体層の2次元的な成長が支配的に進行する。
(9)平坦部14から成長する半導体層の成長速度が、小突部13から成長する半導体層の成長速度よりも早いため、結局は、発光構造体形成面11Sに沿った形状を有する半導体層が形成される。この際に、上述した2次元的な成長が支配的に進行するため、アンドープ層などを薄くすることが可能であるから、低欠陥で発光特性に優れた発光構造体21を薄いアンドープ層などによって得ることができる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・図11に示されるように、マスクM1と平坦部14との間には、マスクM1とは異なる選択比を有する他の下地マスクMBが形成されてもよい。こうした構成であれば、マスクM1と下地マスクMBとに、単粒子膜PFのエッチングに対する耐性と、突出面12Sのエッチングに対する耐性とを各別に与えることが可能である。それゆえに、平坦部14に対する保護性が高められる。
・単粒子膜PFのエッチング工程が割愛されて、発光構造体形成面11Sに移し取られた単粒子膜PFそのものが、突出面12Sのエッチングにおけるマスクとして用いられてもよい。
・マスクM1が形成される前に、発光構造体形成面11Sに単粒子膜が移し取られ、発光構造体形成面11Sに単粒子膜PFが固定される。その後、単粒子膜PFのうち、平坦部14を覆う部分に、マスクM1が形成されてもよい。こうした構成であっても、小突部13が形成される際に、平坦部14はマスクM1によって保護される。
・マスクM1を形成する方法は、大突部12の形成された発光構造体形成面11Sの全体をレジストRで覆った後に、平坦部14のうえに所望の膜厚のレジストRを残して、他のレジストRをドライエッチングによって取り除く方法であってもよい。
・大突部12のアスペクト比は、小突部13のアスペクト比と同じであってもよく、あるいは、大突部12のアスペクト比は、小突部13のアスペクト比よりも大きくてもよい。こうした構成であっても、上記(1)に準じた効果は得られる。
・大突部12を形成する方法は、以下のような方法が好ましい。すなわち、小突部形成工程で用いられる粒子Pよりも十分に大きい大粒子が用いられ、小突部形成工程に含まれる単粒子膜形成工程と、単粒子膜エッチング工程とが、発光構造体形成面11Sに対して施される。そして、大粒子から形成された単粒子膜をマスクとし、突出面12Sに代わり、発光構造体形成面11Sをエッチングの対象とするエッチングによって大突部12を形成する。こうした方法であれば、六方充填構造を有する大突部12を発光構造体形成面11Sに形成することが容易である。
・図12に示されるように、大突部12における突出面12Sにおいて、平坦部14と接続する基端から一定の高さ以下の部位には小突部13が存在しなくてもよい。この際に、突出面12Sの高さHLのなかで、小突部13の形成されていない部分の高さHaと、小突部13の形成されている部分の高さHbとの比は、発光構造体21の形成された半導体発光素子において発光の効率が最大となるように、適宜選択されるものである。例えば、高さHaが大きいほど、発光構造体21における結晶性は高まる一方で、高さHaが小さいほど光の取り出される効率が大きい。それゆえに、これら発光構造体21の結晶性と、光の取り出される効率との両方が所望の範囲に含まれるように、高さHaと高さHbとの比が選択される。
なお、発光構造体21の結晶性が高まる観点において、小突部13の有する形状は、錐台形状であってもよいし、錐体形状であってもよい。相互に隣り合う小突部13の間の部分は、平坦部14と同じ結晶面方位を有した結晶面を有することが好ましい。こうした構成であれば、相互に隣り合う小突部13の間の部分は、発光構造体21の成長核の形成点として機能し、発光構造体21の結晶性を高めることが可能である。
このように突出面12Sの基端から高さHaよりも高い位置にのみ小突部13を備える半導体発光素子用基板は、例えば、下記第1の製造方法、あるいは、第2の製造方法によって製造される。
[第1の製造方法]
図13が示すように、まず、上述した大突部形成工程を経て、大突部12と平坦部14とが、発光構造体形成面11Sに形成される。次いで、上述したマスク形成工程において、大突部12と平坦部14とが形成された発光構造体形成面11SにマスクM1が形成される。この際のマスクM1は、大突部12と平坦部14とを覆う一方で、平坦部14を覆う部分において最も厚く、かつ、大突部12の先端に近い部分ほど薄い形状を有している。
マスクM1を形成する材料は、発光構造体形成面11Sのエッチングに際してマスクとして機能するものであればよい。こうしたマスクM1を形成する材料は、感光性を有する樹脂であってもよいし、感光性を有しない樹脂であってもよいし、樹脂以外の無機材料であってもよく、例えば、アクリル樹脂、Si原子を含むSOG、ポリイミド、シリコン窒化物、金属、金属化合物を選択することも可能である。
例えば、マスクM1を形成する材料として感光性を有するレジスト材料を用い、レジスト膜の露光および現像処理後の膜厚を、大突部12の高さHLよりも薄く、好ましくは大突部12の高さHLの0%を超え40%以下の厚さで形成することによって、大突部12の基端から頂部に向かって、突出面12Sからレジスト表面までの厚みが漸減的に薄くなるマスクM1が形成される。なお、レジスト膜に対する露光量が変わることによって、レジスト膜の露光および現像処理後の膜厚が変わる。すなわち、こうしたレジスト膜に対する露光量が調整されることによって、上述した高さHaが調整される。
また例えば、マスクM1を形成する材料として樹脂やSOGなどの塗布材料を用い、大突部12の高さHLよりも薄く、好ましくは大突部12の高さHLの0%を超え40%以下の厚さで発光構造体形成面11Sに塗布材料を塗布する。これによって、大突部12の基端から頂部に向かって、突出面12Sからレジスト表面までの厚みが漸減的に薄くなるマスクM1が形成される。なお、樹脂またはSOGの塗布量が変わることによって、塗布膜の膜厚とその分布が変わる。すなわち、こうした塗布材料の塗布量が調整されることによって、上述した高さHaが調整される。樹脂またはSOGを塗布する方法としては、各種公知の塗布方法が適用できるが、塗布量の制御に優れるスピンコーティングが好ましい。
図14が示すように、マスクM1によって覆われた発光構造体形成面11Sには、上述した単粒子膜形成工程と同じく、単粒子膜が移し取られる。単粒子膜を構成する粒子Pは、上述したように、有機粒子、有機無機複合粒子、無機粒子からなる群から選択される1種類以上の粒子である。
図15が示すように、発光構造体形成面11Sを覆うマスクM1、および、マスクM1を覆う単粒子膜には、単粒子膜エッチング工程、および、突出面エッチング工程が施される。この際に、単粒子膜をマスクとしてマスクM1がエッチングされ、単粒子膜、および、マスクM1をマスクとして突出面12Sの一部がエッチングされる。そして、突出面12Sにおいて高さHbに相当する部分においてエッチングが進み、かつ、高さHaに相当する部分においてエッチングが進む前に、エッチングが止められる。これによって、突出面12Sにおいて高さHaよりも高い部分に、粒子Pをマスクにした小突部13が形成される。一方で、突出面12Sにおいて高さHa以下の部分、および、平坦部14は、エッチャントから保護され続ける。
図16が示すように、単粒子膜エッチング工程、および、突出面エッチング工程が施されると、単粒子膜、および、マスクM1が発光構造体形成面11Sから取り除かれて、これによって、上述した大突部12、小突部13、および、平坦部14が形成される。
[第2の製造方法]
図17が示すように、まず、上述した大突部形成工程を経て、大突部12と平坦部14とが、発光構造体形成面11Sに形成される。次いで、上述したマスク形成工程において、大突部12と平坦部14とが形成された発光構造体形成面11Sに、突出面12S、および、平坦部14を覆い、かつ、突出面12S、および、平坦部14の外形に倣うハードマスクHMが形成される。
ハードマスクHMを形成する材料は、発光構造体形成面11Sのエッチングに際して、発光構造体形成面11Sに対し高い選択比を有し、こうした材料として、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、金属、金属化合物があげられる。ハードマスクHMは、例えば、加工時の耐熱性を増加させるために、プラズマCVD法、高密度プラズマCVD法、あるいは、LP−CVD法などで形成されるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、また、スパッタリング法や蒸着法を用いて形成される金属膜、金属酸化物膜などである。ハードマスクHMの厚さは、100nm以上1μm以下が好ましく、150nm以上500nm以下であることがより好ましい。
図18が示すように、発光構造体形成面11Sを覆うハードマスクHMには、大突部12と平坦部14とによって形成される段差が埋まるように、レジストマスクRMが形成される。レジストマスクRMは、ポジ型のレジストがハードマスクHMの全体に塗布されることによって形成されて、大突部12と平坦部14とによって形成される段差を埋める膜厚を有している。
図19が示すように、ハードマスクHMの全体を覆うレジストマスクRMは、レジストの溶解性を高めるため露光光にそれの全体が曝されて現像される。この際に、レジストマスクRMに加えられる露光量は、レジストマスクRMの厚み方向における一部であって、レジストマスクRMの表面付近において溶解性が高まる程度に設定される。
レジストマスクRMに対する露光量がこのように調整されることによって、平坦部14を覆うレジストマスクRMの底部には、露光されない部分が形成される。また、突出面12Sにおいてほぼ高さHa以下の部分を覆うレジストマスクRMの底部にも、同様に露光されない部分が形成される。そして、突出面12Sを覆うハードマスクHMにおいては、高さHa以下の部分がレジストマスクRMに覆われる一方で、高さHaよりも高い部分が露出する。
図20が示すように、レジストマスクRMの露光と現像とが終了すると、ハードマスクHMの一部を除くエッチングがハードマスクHMに対して施される。この際に、突出面12Sを覆うハードマスクHMにおいて高さHa以下の部分は、レジストマスクRMに保護される。一方で、突出面12Sを覆うハードマスクHMにおいて高さHaよりも高い部分は、突出面12Sから取り除かれる。なお、この際に施されるエッチングは、ドライエッチング法に限定されず、ハードマスクHMの除去に適した薬液によるウエットエッチング法を用いてもよい。
図21が示すように、ハードマスクHMの一部がエッチングによって除去されると、エッチング後のハードマスクHMを覆うレジストマスクRMが取り除かれる。こうしたレジストマスクRMの除去によって、突出面12Sにおいて高さHa以下の部分、および、平坦部14を覆うハードマスクHMが形成される。こうしたハードマスクHMは、上述したように、加工時の耐熱性や耐エッチング性をレジストに比べて高められる。それゆえに、突出面12Sのエッチングに際しては、突出面12Sとマスクとの間の選択比を高めることも、突出面12Sのエッチング速度を高めることも可能である。
突出面12Sにおいて高さHa以下の部分を覆うハードマスクHMが形成された後は、第1の製造方法と同様に、単粒子膜形成工程、単粒子膜エッチング工程、および、突出面エッチング工程が施され、その後に、単粒子膜、および、ハードマスクHMが取り除かれる。
(実施例1)
大突部12の形状が錐体であって、小突部13が突出面12Sの全体に位置する半導体発光素子用基板の製造方法、および、半導体発光素子の製造方法の一実施例である実施例1を以下に示す。
[大突部形成工程]
直径2インチ、厚さ0.42mmのサファイア基板上に、φ3.0μmのSiO2コロイダルシリカ粒子を国際公開第2008/001670号に開示される単層コーティング法によって単層コートした。
具体的には、平均粒径が3.05μmのSiO2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=2.69%)の球形コロイダルシリカの3.0質量%水分散体(分散液)を用意した。次いで、この分散液に濃度50質量%の臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(界面活性剤)を2.5mmol/Lとなるように加え、30分攪拌することによって、コロイダルシリカ粒子の表面に臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを吸着させた。この際に、臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの質量がコロイダルシリカ粒子の質量の0.04倍となるように分散液と臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとを混合した。さらに、この分散液に、この分散液の体積と同体積のクロロホルムを加えて十分に攪拌して、疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出した。
こうして得られた濃度1.5質量%の疎水化コロイダルシリカ分散液を、単粒子膜の表面圧を計測する表面圧力センサーと、単粒子膜を液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを備えた水槽(LBトラフ装置)中の液面(下層水として水を使用、水温25℃)に滴下速度0.01ml/秒で滴下した。なお、水槽の下層水には、あらかじめ上記サファイア基板を浸漬しておいた。疎水化コロイダルシリカ分散液の滴下において、超音波(出力120W、周波数1.5MHz)を下層水中から水面に向けて照射しながら、分散液の溶剤であるクロロホルムを揮発させ、単粒子膜を形成させた。こうした超音波の印加によって、粒子の2次元的最密充填が促進された。そして、この単粒子膜を可動バリアにより拡散圧が18mNm−1になるまで圧縮し、サファイア基板を5mm/分の速度で引き上げ、単粒子膜を基板の片面上に移し取り、単粒子膜エッチングマスク付きサファイア基板を得た。
こうして得られた単粒子膜エッチングマスク付きサファイア基板をドライエッチングして大突部の形成されたサファイア基板を得た。
具体的には、ICPプラズマソース源を備えたドライエッチング装置を用い、アンテナパワーを1500W、バイアスを300W、圧力を1Pa、エッチングガスをCl2ガスに設定して、単粒子膜エッチングマスク付きサファイア基板をエッチングした。これによって、錐体形状を有する複数の大突部を備えたサファイア基板を得た。なお、大突部の最頻ピッチは3.0μmであり、大突部の高さHLの平均値は1.2μmであり、相互に隣り合う大突部間の距離である平坦部での最短距離の平均値は0.66μmであった。
上記エッチングが施された後に、大突部の形成されたサファイア基板をSPM溶液(硫酸:過酸化水素水の体積比が略7:3の混合溶液)のなかに超音波振動を加えられた状態で浸漬して取り出した。続いて、SPM溶液に浸漬されたサファイア基板を純水によって充分な時間にわたってリンスした後に、そのサファイア基板をスピンドライによって乾燥させた。こうして得られたサファイア基板における大突部の高さHLの平均値は1.2μmであり、最頻ピッチは3.0μmであり、相互に隣り合う大突部間の距離である平坦部での最短距離の平均値は0.66μmであった。
[小突部形成工程]
まず、大突部の形成されたサファイア基板に対して、膜厚が1.5μmのフォトレジスト膜をスピンコーティング法によって形成した。
この際に、レジスト材料には、TFR−860(ポジ型:東京応化工業社製)を用いた。そして、フィルターの装着されたシリンジを用い、サファイア基板の略中央部に1cc以上2cc以下のレジスト材料を滴下した。次いで、回転速度を1000rpmに設定して60秒間にわたりサファイア基板を回転させ、フォトレジスト膜の膜厚を均一化させた。続いて、130℃に設定されたホットプレート上において90秒間にわたりサファイア基板を静置して、レジスト材料から溶媒を除去した。これによって、未硬化のレジスト膜付きサファイア基板を得た。
次いで、プロキシミティ式露光装置(キヤノン社製PLA−501)を用い、未硬化のレジスト膜付きサファイア基板に露光処理を施した。そして、シャーレに用意した現像液(2.38%:TMAH溶液)中にサファイア基板を90秒だけ瑶動浸漬し、フォトレジスト膜の感光部を除去した。その後に、感光部の除去したサファイア基板を純水によって充分な時間にわたってリンスした後に、そのサファイア基板をスピンドライによって乾燥させた。これによって、硬化済のレジスト膜付きサファイア基板を得た。こうした得られたフォトレジスト膜の膜厚は、大突部間の平坦部において0.4μmであり、大突部の底部周辺にはフォトレジスト膜が認められなかった。
硬化済のレジスト膜付きサファイア基板上に、平均粒径が305nmのSiO2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=3.4%)を用いた以外は、上記大径粒子工程と同じ方法で粒子マスク法による微細加工を行い、大突部上に複数の小突部が形成されたサファイア基板を得た。小突部の高さの平均値は120nmであり、最頻ピッチは300nmであり、相互に隣り合う大突部間の距離である平坦部での最短距離の平均値は60nmであった。
[半導体発光素子の形成工程]
発光構造体形成面に、n型半導体層、活性層、および、p型半導体層を順に積層した後に、p電極、および、n電極を形成して、実施例1の半導体発光素子を得た。
各半導体層、および、活性層は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition )法によって形成した。MOCVD法においては、サファイア基板を700℃以上1000℃以下に加熱し、III族元素のトリメチルガリウム、トリメチルアンモニウム、トリメチルインジウムなどのアルキル化合物ガスと、アンモニアガスとをサファイア基板上に供給して、これらの熱分解反応によって半導体層を形成した。
上記n型半導体層として、低温成長バッファ層である15nmのAl0.9Ga0.1N、4.5μmのアンドープGaN、nクラッド層である3μmのSiドープGaN、および、250nmのアンドープGaNを順に積層した。
上記活性層として、多重量子井戸構造を用いた。多重量子井戸構造として、4nmのアンドープIn0.15Ga0.85N(量子井戸層)と、10nmのSiドープGaN(バリア層)とが交互に積層されて、9層のアンドープIn0.15Ga0.85Nと、10層のSiドープGaNとから構成される多層構造を用いた。
上記p型半導体層として、15nmのMgドープAlGaNと、200nmのアンドープGaNと、15nmのMgドープGaNとを順に積層した。
n電極が形成される領域において、最表層であるp型半導体層のMgドープGaNからn型半導体層のアンドープGaNまでをドライエッチングにより除去し、SiドープのGaN層を露出させた。この露出面にAlとWとからなるn電極を真空蒸着法により形成し、n電極上にPtとAuからなるnパッド電極を形成した。
n電極が形成される領域において、p型半導体層の表面全面にNiとAuからなるp電極を形成し、p電極上にAuからなるpパッド電極を形成した。これによって、一つの素子のサイズが300μm×350μmである半導体素子を形成した。
(実施例2)
大突部12の形状が錐体であって、突出面12Sにおいて高さHa以上にのみ小突部13が位置する半導体発光素子用基板の製造方法、および、半導体発光素子の製造方法の一実施例を以下に示す。
実施例2においては、上述した第1の製造方法を用い、実施例1の小突部形成工程を変更してサファイア基板を得た。実施例2の小突部形成工程では、実施例1のフォトレジスト膜の形成工程をSOG膜の形成工程に変更した。また、実施例1と同じ条件で単粒子膜をマスクとするエッチングを施した後に、引き続いて、このエッチングと同じチャンバー内でCF4とO2ガスによるエッチング工程を行ない、サファイア基板上に残留するSOG膜を除去した。このCF4とO2ガスによるエッチングではサファイア基板の浸食は進行しなかった。
上述したSOG膜の形成工程においては、まず、大突部の形成されたサファイア基板に対して、0.1μm以上1.0μmのSOG樹脂を塗布した。SOG材料としてはAZエレクトロニックマテリアルズ社製の非感光性SOG(S05−007)を用い、フィルターの装着されたシリンジを用い、サファイア基板の略中央部にSOG材料を滴下した。次いで、回転速度を500rpm以上2500rpm以下に設定して60秒間にわたりサファイア基板を回転させ、SOG膜の膜厚を均一化させた。続いて、130℃に設定されたホットプレート上において90秒間にわたりサファイア基板を静置して、SOG材料から溶媒を除去した。さらに、230℃に設定されたオーブン中において1時間にわたりサファイア基板を静置してSOG膜を焼成した。これによって、SOG膜付きサファイア基板を得た。
なお、この際の大突部間の平坦部におけるSOG膜の膜厚は、0.15μm以上1.0μm以下であった。また、突出面において高さHa以下の部分も、ほぼこれと同じ膜厚を有するSOG膜によって覆われていた。こうした焼成後におけるSOG膜の膜厚とサファイア基板の回転数との関係を表1に示す。
上記SOG膜をマスクとして得られた小突部の高さの平均値は120nmであり、最頻ピッチは300nmであり、相互に隣り合う大突部間の距離である平坦部での最短距離の平均値は60nmであった。
(実施例3)
大突部12の形状が錐体であって、突出面12Sにおいて高さHa以上にのみ小突部13が位置する半導体発光素子用基板の製造方法、および、半導体発光素子の製造方法の一実施例である実施例3を以下に示す。
実施例3においては、上述した第2の製造方法を用い、実施例1の小突部形成工程を変更してサファイア基板を得た。実施例3の小突部形成工程では、実施例1のフォトレジスト膜の形成工程の前に、ハードマスクHMの形成工程を加えた。
ハードマスクHMの形成工程では、プラズマCVD法を用い、ハードマスクHMである200nmのSiNx膜を精密洗浄後のサファイア基板に形成した。プラズマCVD装置には、住友精密社製MPX−CVD装置を用い、サファイア基板の温度を300℃、ソースパワーを400W、成膜圧力を80Paに設定した。成膜ガスとしては、20sccmのシラン(SiH4)、30sccmのアンモニア(NH3)を用い、キャリアガスとして1500sccmの窒素(N2)を用いた。そして、サファイア基板のほぼ全体にわたり均一な膜厚を有したSiNx膜を、大突部を覆うように形成した。
ハードマスクHMであるSiNx膜のなかでレジストマスクRMから露出する部分は、リン酸(H3PO4)によって除去した。すなわち、シャーレのなかをリン酸溶液で満たし、ホットプレートを用いてリン酸溶液を80℃に加熱した。そして、加熱されたリン酸溶液のなかに3分間にわたりサファイア基板を浸漬させた。その後に、リン酸溶液に浸漬されたサファイア基板を純水によって充分な時間にわたってリンスした。さらに、SPM溶液(硫酸:過酸化水素水の体積比が略7:3の混合溶液)を用いてサファイア基板に精密洗浄を施した後に、そのサファイア基板を純水によって充分な時間にわたってリンスした後に、そのサファイア基板をスピンドライによって乾燥させた。これによって、高耐熱性を有したSiNx膜のみからなるハードマスクHMを、平坦部14と、突出面12Sにおける高さHa以下の部分に形成した。
(実施例4)
大突部12の形状が錐体であって、突出面12Sにおいて高さHa以上にのみ小突部13が位置する半導体発光素子用基板の製造方法、および、半導体発光素子の製造方法の一実施例である実施例4を以下に示す。
実施例4においては、上述した第2の製造方法を用い、実施例1の小突部形成工程を変更してサファイア基板を得た。実施例4の小突部形成工程では、実施例3と同様に、実施例1のフォトレジスト膜の形成工程の前に、ハードマスクHMの形成工程を加えた。実施例4の小突部形成工程は、ハードマスクHMを形成する材料が実施例3とは主に異なる。
ハードマスクHMの形成工程には、マグネトロンスパッタ法を用い、ハードマスクHMである250nmのRu層を精密洗浄後のサファイア基板に形成した。マグネトロンスパッタ装置には、芝浦メカトロニクス社製のCFS−4を用い、圧力を0.5Paに設定し、反応ガスとしてArを用い、プラズマソースパワーとして300Wを印加した。ターゲット材料には、Ruの純度が99.9%である三井金属鉱業社製の焼結体を用いた。そして、サファイア基板のほぼ全体にわたり均一な膜厚を有したRu膜を、大突部を覆うように形成した。
ハードマスクHMであるRu膜のなかでレジストマスクRMから露出する部分は、塩素系エッチング液によって除去した。塩素系エッチング液には、10%以上20%以下の硝酸第二セリウムアンモニウムと、5%以上10%以下の過塩素酸を含む水溶液を用いた。そして、塩素系エッチング液によるエッチングを行なった後に、酸(5%以上20%以下の王水の水溶液)を用いてサファイア基板を洗浄した。これによって、高耐熱性を有したRu膜のみからなるハードマスクHMを、平坦部14と、突出面12Sにおける高さHa以下の部分に形成した。
(実施例5)
大突部12の形状が錐体であって、突出面12Sにおいて高さHa以上にのみ小突部13が位置する半導体発光素子用基板の製造方法、および、半導体発光素子の製造方法の一実施例である実施例5を以下に示す。
実施例5においては、上述した第2の製造方法を用い、実施例1の小突部形成工程を変更してサファイア基板を得た。実施例5の小突部形成工程では、実施例3、4と同様に、実施例1のフォトレジスト膜の形成工程の前に、ハードマスクHMの形成工程を加えた。実施例5の小突部形成工程は、ハードマスクHMを形成する材料が実施例3、4とは主に異なる。
ハードマスクHMの形成工程には、マグネトロンスパッタ法を用い、ハードマスクHMである200nmのTaW層を精密洗浄後のサファイア基板に形成した。ターゲット材料には、TaWの純度が99.9%である同和鉱業社製の焼結体を用いた。そして、サファイア基板のほぼ全体にわたり均一な膜厚を有したTaW膜を、大突部を覆うように形成した。
ハードマスクHMであるTaW膜のなかでレジストマスクRMから露出する部分は、塩素系エッチング液によって除去した。塩素系エッチング液には、10%以上20%以下の硝酸第二セリウムアンモニウムと、5%以上10%以下の過塩素酸とを含む水溶液を用いた。そして、塩素系エッチング液によるエッチングを行なった後に、酸(5%以上20%以下の王水の水溶液)を用いてサファイア基板を洗浄した。これによって、高耐熱性を有したRu膜のみからなるハードマスクHMを、平坦部14と、突出面12Sにおける高さHa以下の部分に形成した。
実施例1から実施例5の各々の半導体発光素子を小型プローバー(ESSテック社製sp−0−2Ls)にマウントし、駆動電流を20mAと40mAとに設定してオープンプローブにて点灯させた。そして、光取り出し効率の評価として、外部量子効率を、labsphere社製スペクトラフレクト積分球とCDS−600型分光器にて測定した。表2が示すように、大突部と小突部とを有する実施例1〜5の半導体発光素子は、大突部と小突部との双方を有さない半導体発光素子、および、小突部を有さない半導体発光素子と比較して、光取り出し効率が向上していることが確認された。
実施例2においてSOG膜の有する膜厚を変更し、各膜厚から得られた大突部12の有する稜辺において高さHaに相当する部分の長さa、大突部12の有する稜辺において高さHbに相当する部分の長さb、および、半導体発光素子の輝度の関係を表3に示す。なお、半導体発光素子の輝度は、大突部のみを有し、かつ、小突部を有しないサファイア基板から得られた半導体発光素子の輝度を1とする相対値を示す。
表3が示すように、SOG膜の有する膜厚が小さいほど、小突部の形成される高さHbは小突部の形成されない高さHaに対して大きいことが認められた。また、稜辺の長さaに対する稜辺の長さbの比が0.5倍から1.5倍までは、この比が大きいほど輝度が大きく、反対に、この比が1.5倍よりも大きい範囲では、この比が大きいほど輝度が小さいことが認められた。そして、上述したように、高さHaと高さHbとの比を所望の範囲に設定することが可能であって、こうした比の設定によって、発光構造体21の結晶性と、光の取り出される効率との両方を所望の範囲内とすることが可能にもなることが認められた。
なお、ポジ型のレジストを用いた実施例1、および、ハードマスクを用いた実施例3〜5のサファイア基板に対して、エッチング条件におけるバイアスパワーを変えて、その際に得られたエッチングレートを断面SEM(走査型電子顕微鏡)像を用いて計測した。各水準におけるエッチングレートを表4に示す。
×: レジストに炭化や消失部認められてエッチングレートの計測が不可であったことを示す。
表4が示すように、各水準においてバイアスパワーを高めることによってエッチングレートを高めることは可能ではあるが、レジストをマスクとする実施例1においては、バイアスパワーの上限値が1000Wに制約される。これに対して、高耐熱性を有するハードマスクを用いた実施例3〜5の各々においては、バイアスパワーを1500Wまで高めることが可能であって、レジストを用いた方法よりもエッチングレートを高めることが可能であることが認められた。