JP5130481B2 - 透明材料付半導体発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体発光素子表面の微細構造体(輝度向上構造)の製造に好適に使用される単粒子膜エッチングマスクとその製造方法、該単粒子膜エッチングマスクを用いた微細構造体の製造方法および該製造方法で得られた微細構造体を光取り出し面に有する半導体発光素子に関する。更には発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や半導体レーザー(LD: Laser Diode)において、本発明の技術は好適に使用しうる。
発光ダイオードの一般的な構造は、半導体基板上にダブルへテロ構造などからなる発光部を形成し、その上に電流拡散層が形成される。さらに、素子および配線の保護のために、この半導体素子を樹脂にて封止して発光ダイオードのパッケージとする。
ところが、発光ダイオードの電流拡散層の屈折率は3.1〜3.8程度と高いので、封止樹脂の屈折率約1.5との差が大きい。このため、電流拡散層で発生して封止樹脂層に入る光の臨界角が22.6〜27.8°となるので、これより入射角が大きい光が全反射して発光素子から取り出せる光量は低下する。また、臨界角より小さな光に関しても、電流拡散層と封止樹脂の界面反射によって外部に出て来られない光があるため、取り出せる光量は低下する。最後に、封止樹脂(屈折率1.5)と空気(屈折率1.0)との界面においても、反射が起きて取り出せる光量がさらに低下する。具体的には、これらの効果によって光の取り出し効率(発光素子外部に放出した光量/発光素子が発生した光量)はおおよそ20%以下になってしまう。
このため、従来技術として発光素子の表面を粗面化して発光素子の輝度向上を得るという方法が提案されている。例えば、酸による処理で発光素子表面を粗面化し、輝度向上を行うという方法(特許文献1、特許文献2)、或いは発光素子の表面にブロックコポリマーを塗布してアニール処理で層分離し、その後これをマスクとしてエッチングを行うことで微細な凹凸を作成し、光の取り出し効率を向上することが提案されている(特許文献3)。
特開2000−299494 特開平4−354382 特開2003−218383
しかしながら、上記特許文献1〜2に提案されている技術で作製される発光ダイオード表面の光取り出し効果は、その製法からそれほど高くないと考えられる。なぜなら、酸などによるランダムな表面粗化によって最表層を低屈折率化して輝度向上(光取り出し効果向上)する手法では、表面微細構造が光学的に設計されたものではないため、理想的な屈折率傾斜構造を得ることは出来ず、輝度向上の効果は限定されるためであると推定される。
上記特許文献3の場合は、表面粗化にドライエッチングを用いている点で優れる。後述するとおり、実際に輝度向上を行うのに効果的な屈折率傾斜構造のアスペクト比は高いほど良く、少なくとも1.0以上、好ましくは2.0以上である。したがって、酸などによる等方的なエッチングではアスペクト比1.0が得られる点、異方性エッチングを行わない限り高アスペクト比構造の作製は困難である点から、ドライエッチングの利点は明らかである。(酸などの等方性エッチングでは、アスペクト比1.0が得られたとしても、屈折率の傾斜加減を意図的に調整することは出来ないので、いずれにせよ輝度向上効果は限定される。)
しかし、特許文献3の手法では、ブロックコポリマーの層分離によってドットパターンを作成するため、ドットの配列まで制御することは出来ない。この場合、次のドライエッチング工程で作成される突起構造は様々な大きさ(ピッチ、高さとも)となるため、後述する光学理論で設計された構造をねらって作成することは困難である。例えば、ドットパターンの間隔が局所的に広い場合は、大きなピッチと高い突起が作成され、狭い場合は小さなピッチで低い突起が作製される。上記特許文献3では、突起形状の素子内ばらつきは、突起物の幅の分布±50%、突起物の高さの分布±50%であると記載されており、光取り出し効率向上が十分認められたとされているが、本特許で目標とする輝度向上はより高度なものを目標とする。半導体や化合物半導体を使用する発光ダイオードや半導体レーザーの場合、発光素子の屈折率が3.1〜3.5程度であるので、このような表面に施工する屈折率傾斜による輝度向上構造はよほど高度なものでない限り十分な効果を発揮するのは困難である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、単粒子膜を構成する各粒子が2次元に最密充填し、高精度に配列した単粒子膜エッチングマスクとその製造方法、該単粒子膜エッチングマスクを用いた微細構造体の製造方法および該製造方法で得られた高効率・高精度な半導体発光素子表面の輝度向上構造体の提供を課題とする。
本発明者は鋭意検討した結果、溶剤中に粒子が分散した分散液を水槽内の液面に滴下し、その後溶剤を揮発させることにより、粒子が精度よく2次元に最密充填した単粒子層を形成でき、ついで、この単粒子層を半導体発光素子の光取り出し面に移し取ることにより、高精度に配列した単粒子膜エッチングマスクを形成できることを見出し、しかる後にこの表面をドライエッチングすることによって、光学理論に基づく高度に制御された輝度向上サブ波長微細構造体を半導体発光素子の光取り出し面に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の単粒子膜エッチングマスクの製造方法は、溶剤中に粒子が分散した分散液を水槽内の液面に滴下する滴下工程と、前記溶剤を揮発させることにより前記粒子からなる単粒子膜を形成する単粒子膜形成工程と、前記単粒子膜を半導体発光素子の光取り出し面上に移し取る移行工程とを有することを特徴とする。
本発明の輝度向上サブ波長微細構造体の製造方法は、半導体発光素子の光取り出し面上にコーティングされた上記単粒子膜エッチングマスクを用いたドライエッチングによって作成することを特徴とする。ドライエッチングは異方性エッチングであればどのような方式でもよい。
本発明の微細構造体が輝度向上である場合、前記製造方法により製造され、前記半導体発光素子の光取り出し面上に、高さが少なくとも50nm以上、好ましくは500nm以上で、アスペクト比が少なくとも0.4以上、好ましくは1以上、より好ましくは2以上の円錐状微細突起を形成することを特徴とし、発光効率を向上させる手段として好適である。
本発明の単粒子膜エッチングマスクは、半導体発光素子の光取り出し面上にコーティングされる粒子が2次元に最密充填した単粒子膜からなるエッチングマスクであって、下記式(1)で定義される粒子の配列のずれD(%)が10%以下であることを特徴とする。
D[%]=|B−A|×100/A・・・(1)
(式(1)中、Aは前記粒子の平均粒径、Bは前記単粒子膜における粒子間の平均ピッチを示す。
本発明の微細構造体は、前記単粒子膜エッチングマスクを用い、ドライエッチングで作成することを特徴とする微細構造体であって、下記式(2)で定義される構造の配列のずれD’(%)が10%以下であることを特徴とする。
D’(%)=|C−A|×100/A・・・(2)
(式(2)中、Aは前記粒子の平均粒径、Cは前記微細構造体における前記構造配列の平均ピッチを示す。)
本発明によれば、単粒子膜を構成する各粒子が2次元に最密充填し、高精度に配列した単粒子膜エッチングマスクを半導体発光素子の光取り出し面上に形成でき、該単粒子膜エッチングマスクを用いたドライエッチングによって得る微細構造体の製造方法および該製造方法で得られた高効率・高精度なサブ波長輝度向上微細構造体を提供できる。
以下、本発明の詳細について一例を説明する。
[単粒子膜エッチングマスク]
本発明の単粒子膜エッチングマスクは、半導体発光素子の光取り出し面上にコーティングされる、図1に示す多数の粒子Pが2次元に最密充填した単粒子膜からなるエッチングマスクであって、下記式(1)で定義される粒子の配列のずれD(%)が10%以下のものである。
D[%]=|B−A|×100/A・・・(1)
ここで式(1)中、Aは単粒子膜を構成している粒子Pの平均粒径、Bは単粒子膜における粒子間の平均ピッチである。また、|B−A|はAとBとの差の絶対値を示す。
ここで粒子の平均粒径Aとは、単粒子膜を構成している粒子の平均一次粒径のことであって、粒子動的光散乱法により求めた粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから常法により求めることができる。
一方、粒子間のピッチとは、隣り合う2つの粒子の頂点と頂点の距離であり、平均ピッチBとはこれらを平均したものである。なお、粒子が球形であれば、隣り合う粒子の頂点と頂点との距離は、隣り合う粒子の中心と中心の距離と等しい。
単粒子膜エッチングマスクにおける粒子間の平均ピッチBは、具体的には次のようにして求められる。
まず、単粒子膜エッチングマスクにおける無作為に選択された領域で、一辺が微細構造の繰り返し単位30〜40波長分の正方形の領域について、原子間力顕微鏡イメージまたは走査型電子顕微鏡イメージを得る。例えば粒径300nmの粒子を用いた単粒子膜の場合、9μm×9μm〜12μm×12μmの領域のイメージを得る。そして、このイメージをフーリエ変換により波形分離し、FFT像(高速フーリエ変換像)を得る。ついで、FFT像のプロファイルにおける0次ピークから1次ピークまでの距離を求める。こうして求められた距離の逆数がこの領域における平均ピッチBである。このような処理を無作為に選択された合計25カ所以上の同面積の領域について同様に行い、各領域における平均ピッチB〜B25を求める。こうして得られた25カ所以上の領域における平均ピッチB〜B25の平均値が式(1)における平均ピッチBである。なお、この際、各領域同士は、少なくとも1mm離れて選択されることが好ましく、より好ましくは5mm〜1cm離れて選択される。
また、この際、FFT像のプロファイルにおける1次ピークの面積から、各イメージについて、その中の粒子間のピッチのばらつきを評価することもできる。
粒子の配列のずれDが10%以下である単粒子膜エッチングマスクは、各粒子が2次元に最密充填し、粒子の間隔が制御されていて、その配列の精度が高い。よって、このような単粒子膜エッチングマスクを使用して、基板上の各粒子に対応する位置に円錐状微細突起を形成することにより、高精度な微細凹凸パターンとすることができる。このような2次元最密充填は、後にも述べる自己組織化を原理とするため、多少の格子欠陥を含む。しかしながら、2次元最密充填におけるこのような格子欠陥は、充填方位の多様性をつくるため、特に半導体発光素子の輝度向上用途の場合には、回折格子のような反射特性を減少させて一様な輝度向上効果を与えるのに役立つ。
表面に円錐状微細突起からなる微細凹凸パターンが形成された微細構造体は、構造のピッチ、高さ、(アスペクト比)、形状等が後述する条件(光学的理由による)を満たす場合、非常に高性能な輝度向上表面構造として好適に使用される。
半導体発光素子の光取り出し面上に微細凹凸パターンを形成して高輝度発光ダイオードまたは高輝度半導体レーザーを製造する場合、単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子として、粒子動的光散乱法により求めた平均粒径Aが3〜550nm程度のものを使用する。適正な粒径は、半導体発光素子の発生する光の波長による。粒子の平均粒径Aと形成される円錐状微細突起の各円形底面の直径とはほぼ同じ値となるため、平均粒径Aが半導体発光素子の活性層で発生する光の波長より小さな粒径を有する粒子を使用することによって、形成される円錐状微細突起の円形底面の直径も活性層で発生する光の波長以下となり、発光光の光学散乱を抑制でき、輝度向上用途に好適な微細凹凸パターンを形成することができる。また、平均粒径(A)が3nm以上のものを使用することによって、発光光が通過する屈折率の傾斜した空間の距離を十分に確保することができ、本発明の効果を得ることが出来る。
また、単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子は、粒径の変動係数(標準偏差を平均値で除した値)が20%以下であるものが好ましく、10%以下であるものがより好ましく、5%以下のものがさらに好ましい。このように粒径の変動係数、すなわち、粒径のばらつきが小さい粒子を使用すると、後述する単粒子膜エッチングマスクの製造工程おいて、粒子が存在しない欠陥箇所が生じにくくなり、配列のずれDが10%以下である単粒子膜エッチングマスクが得られやすい。欠陥箇所のない単粒子膜エッチングマスクからは、発光光に対して均一な屈折率傾斜効果を与える輝度向上微細構造が得られる。
粒子の材質としては、Al、Au、Ti、Pt、Ag、Cu、Cr、Fe、Ni、Siなどの金属、SiO、Al、TiO、MgO、CaOなどの金属酸化物、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどの有機高分子などの他、半導体材料、無機高分子などのうち1種以上を採用できる。
[単粒子膜エッチングマスクの製造方法]
このような単粒子膜エッチングマスクは、エッチング対象物である半導体発光素子の光取り出し面上に配置されるものであって、いわゆるLB法(ラングミュア−ブロジェット法)の考え方を利用した方法により形成される。具体的には、溶剤中に粒子が分散した分散液を水槽内の液面に滴下する滴下工程と、溶剤を揮発させることにより粒子からなる単粒子膜を形成する単粒子膜形成工程と、単粒子膜を半導体発光素子の光取り出し面上に移し取る移行工程とを有する方法により製造できる。
単粒子膜エッチングマスクを製造する好ましい方法について、一例を挙げて以下に具体的に説明する。
(滴下工程および単粒子膜形成工程)
まず、クロロホルム、メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの揮発性の高い溶剤のうちの1種以上からなる疎水性の有機溶剤中に、表面が疎水性の粒子を加えて分散液を調製する。一方、水槽(トラフ)を用意し、これに、その液面上で粒子を展開させるための液体(以下、下層水という場合もある。)として水を入れる。
そして、分散液を下層水の液面に滴下する(滴下工程)。すると、分散媒である溶剤が揮発するとともに、粒子が下層水の液面上に単層で展開し、2次元的に最密充填した単粒子膜を形成することができる(単粒子膜形成工程)。
このように、粒子として疎水性のものを選択した場合には、溶剤としても疎水性のものを選択する必要がある。一方、その場合、下層水は親水性である必要があり、通常、上述したように水を使用する。このように組み合わせることによって、後述するように、粒子の自己組織化が進行し、2次元的に最密充填した単粒子膜が形成される。ただし、粒子および溶剤として親水性のものを選択してもよく、その場合には、下層水として、疎水性の液体を選択する。
下層水に滴下する分散液の粒子濃度は1〜10質量%とすることが好ましい。また、滴下速度を0.001〜0.01ml/秒とすることが好ましい。分散液中の粒子の濃度や滴下量がこのような範囲であると、粒子が部分的にクラスター状に凝集して2層以上となる、粒子が存在しない欠陥箇所が生じる、粒子間のピッチが広がるなどの傾向が抑制され、各粒子が高精度で2次元に最密充填した単粒子膜がより得られやすい。
表面が疎水性の粒子としては、先に例示した粒子のうち、ポリスチレンなどの有機高分子からなり表面が元々疎水性を示すものを使用してもよいが、表面が親水性の粒子を疎水化剤で疎水性にして使用してもよい。疎水化剤としては、例えば界面活性剤、金属アルコキシシランなどが使用できる。
界面活性剤を疎水化剤として使用する方法は、幅広い材料の疎水化に有効であり、粒子が金属、金属酸化物などからなる場合に好適である。
界面活性剤としては、臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭素化デシルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム、4−オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が好適に使用できる。また、アルカンチオール、ジスルフィド化合物、テトラデカン酸、オクタデカン酸なども使用できる。
このような界面活性剤を用いた疎水化処理は、有機溶剤や水などの液体に粒子を分散させて液中で行ってもよいし、乾燥状態にある粒子に対して行ってもよい。
液中で行う場合には、例えば、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、エチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの1種以上からなる揮発性有機溶剤中に、疎水化対象の粒子を加えて分散させ、その後、界面活性剤を混合してさらに分散を続ければよい。このようにあらかじめ粒子を分散させておき、それから界面活性剤を加えると、表面をより均一に疎水化することができる。このような疎水化処理後の分散液は、そのまま、滴下工程において下層水の液面に滴下するための分散液として使用できる。
疎水化対象の粒子が水分散体の状態である場合には、この水分散体に界面活性剤を加えて水相で粒子表面の疎水化処理を行った後、有機溶剤を加えて疎水化処理済みの粒子を油相抽出する方法も有効である。こうして得られた分散液(有機溶剤中に粒子が分散した分散液)は、そのまま、滴下工程において下層水の液面に滴下するための分散液として使用できる。なお、この分散液の粒子分散性を高めるためには、有機溶剤の種類と界面活性剤の種類とを適切に選択し、組み合わせることが好ましい。粒子分散性の高い分散液を使用することによって、粒子がクラスター状に凝集することを抑制でき、各粒子が高精度で2次元に最密充填した単粒子膜がより得られやすくなる。例えば、有機溶剤としてクロロホルムを選択する場合には、界面活性剤として臭素化デシルトリメチルアンモニウムを使用することが好ましい。その他にも、エタノールとドデシル硫酸ナトリウムとの組み合わせ、メタノールと4−オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムとの組み合わせ、メチルエチルケトンとオクダデカン酸との組み合わせなどを好ましく例示できる。
疎水化対象の粒子と界面活性剤の比率は、疎水化対象の粒子の質量に対して、界面活性剤の質量が1/3〜1/15倍の範囲が好ましい。
また、こうした疎水化処理の際には、処理中の分散液を撹拌したり、分散液に超音波照射したりすることも粒子分散性向上の点で効果的である。
金属アルコキシシランを疎水化剤として使用する方法は、Si、Fe、Alなどの粒子や、AlO、SiO、TiOなどの酸化物粒子を疎水化する際に有効であるが、これら粒子に限らず、基本的には表面に水酸基を有する粒子に対して適用することができる。
金属アルコキシシランとしては、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
疎水化剤として金属アルコキシシランを用いる場合には、金属アルコキシシラン中のアルコキシシリル基がシラノール基に加水分解し、このシラノール基が粒子表面の水酸基に脱水縮合することで疎水化が行われる。よって、金属アルコキシシランを用いた疎水化は、水中で実施することが好ましい。このように水中で疎水化を行う場合には、例えば界面活性剤などの分散剤を併用して、疎水化前の粒子の分散状態を安定化するのが好ましいが、分散剤の種類によっては金属アルコキシシランの疎水化効果が低減することもあるため、分散剤と金属アルコキシシランとの組み合わせは適切に選択する。
金属アルコキシシランにより疎水化する具体的方法としては、まず、水中に粒子を分散させておき、これと金属アルコキシシラン含有水溶液(金属アルコキシシランの加水分解物を含む水溶液)とを混合し、室温から40℃の範囲で適宜攪拌しながら所定時間、好ましくは6〜12時間反応させる。このような条件で反応させることによって、反応が適度に進行し、十分に疎水化された粒子の分散液を得ることができる。反応が過度に進行すると、シラノール基同士が反応して粒子同士が結合してしまい、分散液の粒子分散性が低下し、得られる単粒子膜は、粒子が部分的にクラスター状に凝集した2層以上のものになりやすい。一方、反応が不十分であると、粒子表面の疎水化も不十分となり、得られる単粒子膜は粒子間のピッチが広がったものになりやすい。
また、アミン系以外の金属アルコキシシランは、酸性またはアルカリ性の条件下で加水分解するため、反応時には分散液のpHを酸性またはアルカリ性に調整する必要がある。pHの調整法には制限はないが、0.1〜2.0質量%濃度の酢酸水溶液を添加する方法によれば、加水分解促進の他に、シラノール基安定化の効果も得られるため好ましい。
疎水化対象の粒子と金属アルコキシシランの比率は、疎水化対象の粒子の質量に対して、金属アルコキシシランの質量が1/10〜1/100倍の範囲が好ましい。
所定時間反応後、この分散液に対して、前述の揮発性有機溶剤のうちの1種以上を加え、水中で疎水化された粒子を油相抽出する。この際、添加する有機溶剤の体積は、有機溶剤添加前の分散液に対して0.3〜3倍の範囲が好ましい。こうして得られた分散液(有機溶剤中に粒子が分散した分散液)は、そのまま、滴下工程において下層水の液面に滴下するための分散液として使用できる。なお、こうした疎水化処理においては、処理中の分散液の粒子分散性を高めるために、撹拌、超音波照射など実施することが好ましい。分散液の粒子分散性を高めることによって、粒子がクラスター状に凝集することを抑制でき、各粒子が高精度で2次元に最密充填した単粒子膜がより得られやすくなる。
また、形成する単粒子膜の精度をより高めるためには、液面に滴下する前の分散液をメンブランフィルターなどで精密ろ過して、分散液中に存在する凝集粒子(複数の1次粒子からなる2次粒子)を除去することが好ましい。このようにあらかじめ精密ろ過を行っておくと部分的に2層以上となった箇所や、粒子が存在しない欠陥箇所が生じにくく、精度の高い単粒子膜が得られやすい。仮に、形成された単粒子膜に、数〜数十μm程度の大きさの欠陥箇所が存在したとすると、詳しくは後述する移行工程において、単粒子膜の表面圧を計測する表面圧力センサーと、単粒子膜を液面方向に圧縮する可動バリアとを備えたLBトラフ装置を使用したとしても、このような欠陥箇所は表面圧の差として検知されず、高精度な単粒子膜エッチングマスクを得ることは難しくなる。
さらに、このような単粒子膜形成工程は、超音波照射条件下で実施することが好ましい。下層水から水面に向けて超音波を照射しながら単粒子膜形成工程を行うと、粒子の最密充填が促進され、各粒子がより高精度で2次元に最密充填した単粒子膜が得られる。この際、超音波の出力は1〜1200Wが好ましく、50〜600Wがより好ましい。また、超音波の周波数には特に制限はないが、例えば28kHz〜5MHzが好ましく、より好ましくは700kHz〜2MHzである。一般的に振動数が高すぎると、水分子のエネルギー吸収が始まり、水面から水蒸気または水滴が立ち上る現象が起きるため、本発明のLB法にとって好ましくない。また、一般的に振動数が低すぎると、下層水中のキャビテーション半径が大きくなり、水中に泡が発生して水面に向かって浮上してくる。このような泡が単粒子膜の下に集積すると、水面の平坦性が失われるため本発明の実施に不都合となる。また、超音波照射によって水面に定常波が発生する。いずれの周波数でも出力が高すぎたり、超音波振動子と発信機のチューニング条件によって水面の波高が高くなりすぎたりすると、単粒子膜が水面波で破壊されるため気をつける必要がある。
以上のことに留意して超音波の周波数を適切に設定すると、形成されつつある単粒子膜を破壊することなく、効果的に粒子の最密充填を促進することができる。効果的な超音波照射を行うためには、粒子の粒径から計算される固有振動数を目安にするのが良い。しかし、粒径が例えば100nm以下など小さな粒子になると固有振動数は非常に高くなってしまうため、計算結果のとおりの超音波振動を与えるのは困難になる。このような場合は、粒子2量体、3量体、・・・20量体程度までの質量に対応する固有振動を与えると仮定して計算を行うと、必要な振動数を現実的な範囲まで低減させることが出来る。粒子の会合体の固有振動数に対応する超音波振動を与えた場合でも、粒子の充填率向上効果は発現する。超音波の照射時間は、粒子の再配列が完了するのに十分であればよく、粒径、超音波の周波数、水温などによって所要時間が変化する。しかし通常の作成条件では10秒間〜60分間で行うのが好ましく、より好ましくは3分間〜30分間である。
超音波照射によって得られる利点は粒子の最密充填化(ランダム配列を6方最密化する)の他に、ナノ粒子分散液調製時に発生しやすい粒子の軟凝集体を破壊する効果、一度発生した点欠陥、線欠陥、または結晶転移などもある程度修復する効果がある。
以上説明した単粒子膜の形成は、粒子の自己組織化によるものである。その原理は、粒子が集結すると、その粒子間に存在する分散媒に起因して表面張力が作用し、その結果、粒子同士はランダムに存在するのではなく、2次元的最密充填構造を自動的に形成するというものである。このような表面張力による最密充填は、別の表現をすると横方向の毛細管力による配列化ともいえる。
特に、例えばコロイダルシリカのように、球形であって粒径の均一性も高い粒子が、水面上に浮いた状態で3つ集まり接触すると、粒子群の喫水線の合計長を最小にするように表面張力が作用し、図1に示すように、3つの粒子Pは図中Tで示す正三角形を基本とする配置で安定化する。仮に、喫水線が粒子群の頂点にくる場合、すなわち、粒子Pが液面下に潜ってしまう場合には、このような自己組織化は起こらず、単粒子膜は形成されない。よって、粒子と下層水は、一方が疎水性である場合には他方を親水性にして、粒子群が液面下に潜ってしまわないようにすることが重要である。
下層水としては、以上の説明のように水を使用することが好ましく、水を使用すると、比較的大きな表面自由エネルギーが作用して、一旦生成した粒子の最密充填配置が液面上に安定的に持続しやすくなる。
(移行工程)
単粒子膜形成工程により液面上に形成された単粒子膜を、ついで、単層状態のままエッチング対象物である半導体発光素子の光取り出し面上に移し取る(移行工程)。本発明の単粒子膜は、対象物が平面でなくても2次元的な最密充填状態を維持しつつ凹凸のある表面形状に追従し、その面形状を変形させ、完全に被覆することが可能である。凹凸形状に追従する際、単粒子膜内では粒子結晶面での滑り現象が起き、その形状を2次元から3次元へ自在に変形させるものと考えられる。このような特徴から、輝度向上微細構造を作成する半導体発光素子の光取り出し面は必ずしも平面である必要はない。
単粒子膜を基板上に移し取る具体的な方法には特に制限はなく、例えば、疎水性の半導体発光素子の光取り出し面を単粒子膜に対して略平行な状態に保ちつつ、上方から降下させて単粒子膜に接触させ、ともに疎水性である単粒子膜と基板との親和力により、単粒子膜を半導体発光素子の光取り出し面に移行させ、移し取る方法;単粒子膜を形成する前にあらかじめ水槽の下層水内に半導体発光素子の光取り出し面を略水平方向に配置しておき、単粒子膜を液面上に形成した後に液面を徐々に降下させることにより、基板上に単粒子膜を移し取る方法などがある。これらの方法によれば、特別な装置を使用せずに単粒子膜を半導体発光素子の光取り出し面上に移し取ることができるが、より大面積の単粒子膜であっても、その2次的な最密充填状態を維持したまま半導体発光素子の光取り出し面上に移し取りやすい点で、いわゆるLBトラフ法を採用することが好ましい(Journal of Materials and Chemistry, Vol.11, 3333 (2001)、Journal of Materials and Chemistry, Vol.12, 3268 (2002)など参照。)
図2は、LBトラフ法の概略を模式的に示すものである。この方法では、水槽内の下層水12に半導体発光素子11をあらかじめ光取り出し面が略鉛直方向になるように浸漬しておき、その状態で上述の滴下工程と単粒子膜形成工程とを行い、単粒子膜Fを形成する(図2(a))。そして、単粒子膜形成工程後に、半導体発光素子11を上方に引き上げることによって、単粒子膜Fを半導体発光素子の光取り出し面11上に移し取ることができる(図2(b))。ここで単粒子膜Fは、単粒子膜形成工程により液面上ですでに単層の状態に形成されているため、移行工程の温度条件(下層水の温度)や半導体発光素子11の引き上げ速度などが多少変動しても、移行工程において単粒子膜Fが崩壊して多層化するなどのおそれはない。なお、下層水の温度は、通常、季節や天気により変動する環境温度に依存し、ほぼ10〜30℃程度である。
また、この際、水槽として、単粒子膜Fの表面圧を計測する図示略のウィルヘルミープレート等を原理とする表面圧力センサーと、単粒子膜Fを液面に沿う方向に圧縮する図示略の可動バリアとを具備するLBトラフ装置を使用すると、より大面積の単粒子膜Fをより安定に半導体発光素子の光取り出し面11上に移し取ることができる。このような装置によれば、単粒子膜Fの表面圧を計測しながら、単粒子膜Fを好ましい拡散圧(密度)に圧縮でき、また、半導体発光素子11の方に向けて一定の速度で移動させることができる。そのため、単粒子膜Fの液面から非平面基板11上への移行が円滑に進行し、小面積の単粒子膜Fしか半導体発光素子の光取り出し面上に移行できないなどのトラブルが生じにくい。好ましい拡散圧は、5〜80mNm−1であり、より好ましくは10〜40mNm−1である。このような拡散圧であると、各粒子がより高精度で2次元に最密充填した単粒子膜Fが得られやすい。また、半導体発光素子11を引き上げる速度は、0.5〜20mm/分が好ましい。なお、LBトラフ装置は、市販品として入手することができるが、大面積の半導体発光素子を一括施工したい場合は自作または特注で対応する必要がある。
一般的な半導体発光素子の製造工程の例として、例えばダブルへテロ構造の発光ダイオードの場合、発光素子に用いる半導体化合物は、主として周期律表のIII属とV属の元素の化合したものであり、GaAs,GaP,GaAsP,AlGaAs,AlGaInP,InGaN,サファイア,SiCなどの単結晶半導体ウェハ基板(n型)上に、n型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型電流拡散層をエピタキシャル結晶成長によって作成する。Siも半導体であるので、特殊な状況では発光させることができるが、Gaを用いた化合物半導体が発光効率などにおいて優れる。基板のドープはp型を使ってもよいが、実際はn型が多い。活性層は電子と正孔が結合して光を出す層で、p,nどちらでも良いが、通常は不純物を入れない真性半導体を用いる。クラッド層は活性層の上下の層で、基板がn型の場合、下側のクラッド層はn型、上側のクラッド層はp型になる。このような構造を持つpn接合に順方向に電流を流すと、n側から電子、p側から正孔が流れ込み、接合部分で両者が出会い、電子が正孔に向かって落ち込むときに発光する。ここで、順方向とはp側がプラス、n側がマイナスとなる繋ぎ方である。エピタキシャル結晶成長は気相法、液相法、或いはその組み合わせによる。次にラップポリッシュを行って基板厚さを薄くし、基板に下部電極、電流拡散層に上部電極を真空蒸着法またはスパッタリング法で作成する。その後基板を粘着シート上に貼り付け、ダイシングを行って基板を細かなチップに切り分ける。最後に粘着シートを拡大して各チップを取り出し、パッケージ・プロセス(配線・封止工程)に移る。
したがって、上記工程の場合、光取り出し面に輝度向上微細構造を施工するのに最もよいのは、電極形成直前の段階である。なぜなら、この段階で本発明の微細構造を施工すれば、ウェハサイズのまま単粒子膜を電流拡散層にコーティングすることが可能で、続いてウェハサイズのままドライエッチングが可能となるからである。すなわちウェハサイズで施工することで、多数の半導体発光素子の光取り出し面に一括して輝度向上微細構造を作成することができる。その後の上部電極作成は微細構造上に真空蒸着またはスパッタリングを行うことになるが、電極となる金属薄膜は微細構造に十分追従して形成されるので、全く問題ない。
上述のようにして、半導体発光素子の光取り出し面上に単粒子膜エッチングマスクを形成することができるが、移行工程の後には、形成された単粒子膜エッチングマスクを半導体発光素子上に固定するための固定工程を行ってもよい。単粒子膜を半導体発光素子上に固定することによって、後述のエッチング工程中に粒子が半導体発光素子上を移動してしまう可能性が抑えられ、より安定かつ高精度にエッチングすることができる。特に、各粒子の直径が徐々に小さくなるエッチング工程の最終段階になると、このような可能性が大きくなる。
固定工程の方法としては、バインダーを使用する方法や焼結法がある。
バインダーを使用する方法では、単粒子膜エッチングマスクが形成された半導体発光素子の光取り出し面の該単粒子膜側にバインダー溶液を供給して単粒子膜エッチングマスクと半導体発光素子との間にこれを浸透させる。
バインダーの使用量は、単粒子膜エッチングマスクの質量の0.001〜0.02倍が好ましい。このような範囲であれば、バインダーが多すぎて粒子間にバインダーが詰まってしまい、単粒子膜エッチングマスクの精度に悪影響を与えるという問題を生じることなく、十分に粒子を固定することができる。バインダー溶液が浸透した後に、スピンコーター等によってバインダー溶液の余剰分を除去する。
バインダーとしては、先に疎水化剤として例示した金属アルコキシシランや一般の有機バインダー、無機バインダーなどを使用でき、バインダー溶液が浸透した後には、バインダーの種類に応じて、適宜加熱処理を行えばよい。金属アルコキシシランをバインダーとして使用する場合には、40〜80℃で3〜60分間の条件で加熱処理することが好ましい。
焼結法を採用する場合には、単粒子膜エッチングマスクが形成された半導体発光素子を加熱して、単粒子膜エッチングマスクを構成している各粒子を半導体発光素子に融着させればよい。加熱温度は粒子の材質と半導体発光素子の材質に応じて決定すればよいが、粒径が1μmφ以下の粒子はその物質本来の融点よりも低い温度で界面反応を開始するため、比較的低温側で焼結は完了する。加熱温度が高すぎると、粒子の融着面積が大きくなり、その結果、単粒子膜エッチングマスクとしての形状が変化するなど、精度に影響を与える可能性がある。また、加熱を空気中で行うと基板や各粒子が酸化する可能性があるため、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。酸素を含む雰囲気下で焼結を行う場合は、後述のエッチング工程で酸化層を考慮した条件を設定することが必要となる。
このように、単粒子膜エッチングマスクを製造する方法は、溶剤中に粒子が分散した分散液を水槽内の液面に滴下する滴下工程と、溶剤を揮発させることにより粒子からなる単粒子膜を形成する単粒子膜形成工程と、形成された単粒子膜を半導体発光素子の光取り出し面上に移し取る移行工程とを有するものであるので、単層化の精度、操作の簡便性、大面積化への対応、再現性などを兼ね備え、例えばNature, Vol.361, 7 January, 26(1993)などに記載されている液体薄膜法や特開昭58−120255などに記載されているいわゆる粒子吸着法に比べて非常に優れ、工業生産レベルにも対応できる。
[微細構造体とその製造方法]
このように単粒子膜エッチングマスクが片面に設けられた半導体発光素子の光取り出し面を気相エッチングして表面加工する(エッチング工程)ことにより、光取り出し面(基板)に円錐状微細突起を多数形成することができる。具体的には、気相エッチングを開始すると、まず図3(a)に示すように、単粒子膜Fを構成している各粒子Pの隙間をエッチングガスが通り抜けて基板11の表面に到達し、その部分に溝が形成され、各粒子Pに対応する位置にそれぞれ円柱11'が現れる。引き続き気相エッチングを続けると、各円柱11'上の粒子Pも徐々にエッチングされて小さくなり、同時に、基板11の溝もさらに深くなっていく(図3(b))。そして、最終的には各粒子Pはエッチングにより消失し、それとともに基板11の片面に多数の円錐状微細突起が形成される(図3(c))。
先に述べたように、光学設計の考え方は、以下の光学理論による。すなわち、断面に傾斜構造を持つ微細な凹凸を表面に多数形成した場合、そのピッチが可視光の波長以下(約380nm以下)、深さを50nm以上にすると、深さ方向に屈折率が連続的に変化する無数の層が存在することと等価となり、半導体発光素子で発生した光が空気との界面で界面反射を起こしにくくなる。光の反射は主としてその入射面の屈折率の急激な変化により生じる。従って半導体発光素子と空気の境界において屈折率が連続して滑らかに変化するような構造があれば、発光光は空気−素子の界面反射で内側に戻ることなく素子外部に効率よく取り出せる。凹凸構造を発光光の波長以下のサイズにすることで、光学散乱による影響はほぼなくなる。
Optica Acta, Vol.29, No.7, 993 (1982), Applied Optics Vol.26, No.6, 1142 (1987)、Journal of Optical Society of America A, Vol.12, No.2, 333 (1995)、Applied Optics, Vol.36, 1556 (1997) などにはサブ波長格子の原理が以下のように紹介されている。
Figure 0005130481
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ここで、Tj は透過光の転移行列、λは透過光の波長、nj は屈折率、djは層の厚さ、δjは光が媒質中を進むときの位相の変化を表現する位相膜厚、φjは入射角、Rは強度反射率である。N層の多層光学体を考えるとき、相当する転移行列は(式4)で求められ、(式5)により強度反射率Rが求められる。
先端に向かって徐々に細くなる形状の突起物を用いると、見掛けの屈折率は突起物の下部から先端に向かって、基材の屈折率から空気の屈折率に連続的に変化する構造体が得られる。このように屈折率が連続的に変化する空間を光が伝播すると、入射媒体(この場合は半導体発光素子の光取り出し面)から外部の空気に到達する間に屈折率の急激な変化がないため、フレネル反射をほぼゼロにすることができる。表面にこのような突起物構造を形成する際、構造体の断面が錐型である場合、正弦波である場合などが考えられるが、理想的には微細突起構造の斜面(母線)を直線状にするのがよい。いずれの場合でも屈折率傾斜構造を水平方向に細かく分割して計算することで、(式1)から(式5)を計算することが可能となる。細かく分割した構造体の一層あたりの屈折率は以下のように求めることができる。
Figure 0005130481
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nparallel は構造体に平行、nperpendicularは構造体に垂直の入射光の有効屈折率、qは構造体の幅と周期の比、n1は入射媒体の屈折率、n2は基材の屈折率である。
以上の光学理論に基づいて計算すると、突起物の底部直径が300nmで断面が二等辺三角形であると仮定したとき、図4および図5に示すようなアスペクト比と反射率の関係が得られる。すなはち、アスペクト比が高くなるほど界面反射率の低減効果が高くなる傾向があり、この例ではアスペクト比1以上の構造を作成すると、可視光の全波長域に関して反射率の理論値は0.2%以下となる。特にアスペクト比2以上の構造を作成すると、反射率は理論上0.1%以下となる。したがって、半導体発光素子の光取り出し面上にアスペクト比1以上、好ましくは2以上の微細突起構造を作成することによって、光取り出し効率を飛躍的に高めることが可能となり、輝度向上に役立つ。
以上の光学設計をまとめると、半導体発光素子の光取り出し面上における微細突起に求められる形状的特徴は以下のようになる。すなわち、(1)微細突起構造のピッチが発光光の波長以下であること、(2)屈折率が連続的に変化する表面を作成するため微細突起構造の斜面(母線)は直線状にすること、(3)輝度向上効果を少しでも出すためならアスペクト比は0.4以上でよいが、高度な輝度向上を求めるなら1以上好ましくは2以上にすること、が必要となってくる。
本発明の第一の特徴としては、従来の技術で半導体発光素子に施される表面粗化等の方法と異なり、光学理論に基づく屈折率傾斜構造を気相エッチング工程の条件操作で意図的に作製するという点である。光取り出し効率を高めるためには、アスペクト比が高い構造を作成する必要があるが、表面粗化のような方法では高アスペクト比を意図的に作製することは困難である。また、先ほど述べた特開2003−218383にあるようなランダムなドット形状をマスクにする場合は、気相エッチング微細突起物の凹凸の形状(突起物の高さや幅)を精密にコントロールできないので、本発明の単層粒子マスクのほうが突起物の高さや幅を精密にコントロールできるという点において、光学素材を作製する観点から優れる。言い換えれば、特許文献3のマスクをエッチングすると、マスクの間隔が広いところでは突起構造の高さや幅が大きくなり、マスクの間隔が狭いところでは突起構造の高さや幅が小さくなるため、完成する突起構造は一定の光学設計に基づいたものとは言いがたい。一方、本発明の単粒子マスクを用いると、突起物の高さ、幅(アスペクト比・ピッチも)、非常に精密にコントロールできるので、光学理論に基づく微細構造を意図的に狙って作製することが可能である。
以下、エッチングによる構造作製について述べる。光学的な散乱を抑制し、反射防止効果を十分に発揮する観点から、各円錐状微細突起の円形底面の直径(突起物のピッチ)を少なくとも発光した光の波長以下のサイズに形成する必要があり、そのためには、先に述べたとおり、単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子として、平均粒径Aが発光光の波長以下のサイズのものを使用する。この場合、発光光の波長とは媒質内波長のことで、(媒質内波長)=(自由空間波長)/(媒質の屈折率)で求められる。したがって、ここでいう媒質内波長とは、発光光の波長を半導体発光素子の光取り出し面を構成する物質の屈折率で除した値となる。本発明の要件を満たすには、微細突起のピッチが媒質内波長以下である必要があるが、より好ましい条件はピッチが媒質内波長の1/2以下となる場合である。これは、突起物のピッチが光の波長以下の微小サイズになると、波動光学的な回折現象が起き、発光光と回折光の混成が出射してくるためである。回折光の影響をなくすためには、ピッチを媒質内波長の1/2以下に設定することで、光取り出し面法線とのなす角が90°以上となる方向に回折光の進む方向を調節する。このような条件にすれば、回折光は光取り出し面より外側(空気側)に出てくることができないので、回折光の影響を実質ゼロにすることが可能となる。本発明の目的は、半導体発光素子の光取り出し効率の向上であるから、微細構造体のピッチは必ずしも媒質内波長の1/2としなくてもよいが、半導体発光素子から取り出す光に回折光を混成しないほうがよい用途の場合には、この原理を用いて回折光の影響を除外できるので好ましい。
微細突起物のアスペクト比(高さ/円形底面の直径)は、対象とする波長の少なくとも0.4以上、好ましくは1以上、さらに好ましくは2以上に設定すると優れた屈折率傾斜効果が得られる。各円錐状微細突起の高さは一般的に少なくとも50nm以上、好ましくは500nm以上必要であるが、各発光した光の波長(媒質内波長)に対応してアスペクト比を設定することにより決定される。このような高さ、アスペクト比であれば、円錐状微細突起が形成された部分において屈折率傾斜効果が得られ、円錐状微細突起側から出射しようとする発光した光の界面反射を効果的に抑制できる。半導体発光素子の光取り出し面上に微細構造体を直接作りこみ、そのまま輝度向上用途で使用するので、好ましいアスペクト比の上限は特にないが、取り扱い上あまり大きなアスペクト比は望ましくない。したがって、おおよそアスペクト比10を上限とすればよい。
気相エッチングに使用するエッチングガスとしては、例えば、Ar、SF、F、CF、C、C、C、C、C、CHF、CH、CHF、C、Cl、CCl、SiCl、BCl、BCl、BC、Br、Br、HBr、CBrF、HCl、CH、NH、O、H、N、CO、CO、SiClなどが挙げられるが、本発明の趣旨を実行するためであればこれらに限定されることは無い。単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子や基板の材質などに応じて、これらのうちの1種以上を使用できる。
気相エッチングは、基板の水平方向よりも垂直方向のエッチング速度が大きくなる異方性エッチングで行う。使用可能なエッチング装置としては、反応性イオンエッチング装置、イオンビームエッチング装置などの異方性エッチングが可能なものであって、最小で20W程度のバイアス電場を発生できるものであれば、プラズマ発生の方式、電極の構造、チャンバーの構造、高周波電源の周波数等の仕様には特に制限ない。
異方性エッチングをするためには、単粒子膜エッチングマスクと基板のエッチング速度が異なる必要があり、エッチング選択比(基板のエッチング速度/単粒子膜エッチングのエッチング速度)が好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上となるようにエッチングの各条件(単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子の材質、基板の材質、エッチングガスの種類、バイアスパワー、アンテナパワー、ガスの流量と圧力、エッチング時間など)を設定することが好適である。
例えば、単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子としてコロイダルシリカ粒子を選択し、基板としてAlGaInP基板を選択してこれらを組み合わせた場合、エッチングガスにBCl,Ar,Clなどのガスを用いることで、基板を比較的選択的にエッチングすることができる。
また、電場のバイアスを数十から数百Wに設定すると、プラズマ状態にあるエッチングガス中の正電荷粒子は、加速されて高速でほぼ垂直に基板に入射する。よって、基板に対して反応性を有する気体を用いた場合は、垂直方向の物理化学エッチングの反応速度を高めることができる。
基板の材質とエッチングガスの種類の組み合わせによるが、気相エッチングでは、プラズマによって生成したラジカルによる等方性エッチングも並行して起こる。ラジカルによるエッチングは化学エッチングであり、エッチング対象物のどの方向にも等方的にエッチングを行う。ラジカルは電荷を持たないためバイアスパワーの設定でエッチング速度をコントロールすることはできず、エッチングガスのチャンバー内濃度(流量)で操作することができる。荷電粒子による異方性エッチングを行うためにはある程度のガス圧を維持しなければならないので、反応性ガスを用いる限りラジカルの影響はゼロに出来ない。しかし、基材を冷却することでラジカルの反応速度を遅くする手法は広く用いられており、その機構を備えた装置も多いので、利用することが好ましい。
また、形成される突起の形状は円錐状である必要がある。ところが、実際のエッチング工程においては、図3に示したように突起の形状が円柱状から円錐状に変化していく過程で、円錐の側面(側壁)がエッチングされてしまい、その結果、形成される円錐状微細突起は、側壁の傾斜が大きく、かつ、隣り合う円錐間の溝の縦断面形状がV字ではなくU字となってしまうことがある。このような形状になると、局所的に屈折率変化が平坦な構造が出来てしまうので、十分な屈折率傾斜効果を発揮できず、出射光のフレネル反射の抑制が不十分となる可能性がある。よって、本エッチング工程においては、いわゆる堆積ガスを採用するなどして、エッチングによって形成した側壁を保護しながらアスペクト比を向上させ、突起の形状を理想的な円錐状に近づけることが好ましい。
また、条件によっては、形成される円錐状突起の先端部分が丸みを帯びてしまうこともある。この場合でも同様に、局所的に屈折率変化が平坦な構造が出来てしまい十分な屈折率傾斜効果を発揮できないので、出射光のフレネル反射の抑制が不十分となる可能性がある。このようなケースは、堆積ガスの効果が強すぎる場合に見られるので、適宜調整して円錐状突起の頂上は鋭い鋭角になるよう作製する。
さらに堆積ガスについて述べる。すなわち、C、C、C、C、C、CHF、CH、CHF、Cをはじめとするフロン系のエッチングガスは、プラズマ状態で分解された後、分解物同士が結合することで高分子化し、テフロン(登録商標)のような物質からなる堆積膜をエッチング対象物の表面に形成することが知られている。このような堆積膜はエッチング耐性があるため、エッチング保護膜として作用する。また、エッチングガスとしてCHとHの混合ガスを併用することで、炭化水素系のエッチング保護膜が得られる条件も設定できる。
よって、このようにエッチングガスの種類を適宜選択するなどして、エッチング保護膜を形成しながらエッチング工程を行うことが、より理想的な形状の円錐状微細突起を形成できる点で好ましい。
こうして得られた微細構造体について、先に述べた単粒子膜エッチングマスクにおける粒子間の平均ピッチBを求める方法と同様にして、その円錐状微細突起の配列の平均ピッチCを求めると、この平均ピッチCは、使用した単粒子膜エッチングマスクの平均ピッチBとほぼ同じ値となる。また、配列の平均ピッチCは、円錐状微細突起の円形底面の直径dの平均値に相当する。さらに、この微細構造体について、下記式(2)で定義される配列のずれD'(%)を求めると、その値も10%以下となる。
D'[%]=|C−A|×100/A・・・(2)
ただし、式(2)中、Aは使用した単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子の平均粒径である。
本発明の単粒子膜は、被覆表面に凹凸、傾斜、段差等の非平面的要素があったとしても、十分その形状に追従して表面を被覆することが可能である。したがって、必要とあればこのような性質を利用して非平面表面を持つ半導体発光素子上に単粒子膜をコーティングし、続くエッチング工程で屈折率傾斜構造を作製することが可能である。
このようにして、表面に高度な屈折率傾斜構造を付与した後は、通常の作業工程によって半導体発光素子を完成する。代表的な発光素子として、例えばAlGaInP系発光ダイオードの場合図6〜図8のような構造例が挙げられ、例えばInGaN系発光ダイオードの場合図9〜図10のような構造例が挙げられる。図6〜図10に示した構造は、それぞれ活性層の両側に活性層よりもエネルギーギャップが大きいクラッド層を設けることによって、電子と正孔を活性層内に閉じ込めて光出力を高めることを狙った、いわゆるダブルへテロ接合構造と呼ばれるもので、素子表面の発光部位に相当する位置に輝度向上微細構造を施工することによって、光取り出し効率の向上を図ることが可能である。
このほかの構造の場合でも、本発明の概念を実施することは可能である。すなわち、活性層の片側にのみクラッド層を設けたシングルへテロ構造(ホモ接合構造)の場合、あるいは量子井戸接合型と呼ばれる構造の場合でも、光取り出し面に本発明のサブ波長微細突起を施工することによって、素子と空気の界面で反射して取り出すことの出来ない発光光を屈折率傾斜構造によって外部に取り出せるようになり、光取り出し効率が向上する。光取り出し面は、基板と反対側(ジャンクションアップ方式)であってもよく、基板と同じ側(ジャンクションダウン方式)であってもよい。
光取り出し面の最表面に前記半導体発光素子の材料とは異なる透明材料が形成されている場合(図9の透明電極層などが該当する)でも、同様にサブ波長微細構造を光取り出し面である透明材料表面に施工することによって、光取り出し効率を向上させることが可能である。中でも、酸化物膜、窒化物膜、高分子膜、あるいはその他の誘電体膜が好ましい。
本発明による屈折率傾斜構造で光取り出し効率を向上する概念を応用する半導体発光素子は、発光ダイオードに限るものではなく、半導体レーザーに関しても全く同じである。この場合、光取り出し面に屈折率傾斜構造を与える微細突起物を施工できるものであれば、半導体レーザーは端面発光型でも面発光型でもよい。端面発光型半導体レーザーの場合、本発明の微細突起構造を付与する段階はダイシング後になる。一方、面発光型半導体レーザーの場合、本発明の微細突起構造を付与するのは発光ダイオードの場合と同じく、電極形成直前の段階である。
本発明の第二の特徴としては、半導体発光素子の発光効率をサブ波長微細構造によって最大化することである。したがって、以上述べてきたように半導体発光素子そのものを微細加工することが最も効果的な方法となる。なぜなら、入射側の屈折率(空気の屈折率1.0)と半導体発光素子の屈折率(電流拡散層の屈折率3.1〜3.5)の差が非常に大きく、この界面に反射防止加工を施すことが入射光の利用効率向上に最も効果的であるからである。しかし、例えば半導体発光素子を封止する樹脂(屈折率1.45〜1.55程度のエポキシ樹脂等)の表面にも同様のサブ波長微細凹凸反射防止構造を施工しておけば、封止樹脂表面の反射による出射光の損失を低減できて好適である。このように、半導体発光素子中に含まれる半導体発光素子以外の界面にも、本発明の微細構造を施工することで、全体としての発光効率を向上することが可能である。
以上説明したように、上述の単粒子膜エッチングマスクは、単粒子膜を構成する各粒子が2次元に最密充填し、高精度に配列したものであるので、これを使用することによって、高効率・高精度なサブ波長微細突起構造を半導体発光素子の表面に直接作成することができる。本発明によるサブ波長微細突起構造は、一般的ないわゆる表面粗化等による構造とは違い、高度に光学設計された屈折率傾斜空間を光取り出し面に作成することが可能で、はるかに高度な輝度向上効果を発揮することが可能となるのである。
以下に本発明の実施の形態を説明する。なお、ここでは一例としてダブルへテロ接合型発光ダイオードの実施例について説明するが、本発明の概念を用いるものである限り、必ずしも対象とする半導体発光素子の方式を限定するものではない。
[実施例1]
平均粒径が96.5nmで、粒径の変動係数が7.2%である球形コロイダルシリカの4.2質量%水分散体(分散液)を用意した。なお、平均粒径および粒径の変動係数は、Malvern Instruments Ltd 社製 Zetasizer Nano-ZSによる粒子動的光散乱法で求めた粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから求めた。
ついで、この分散液を孔径1.2μmφのメンブランフィルターでろ過し、メンブランフィルターを通過した分散液に濃度0.8質量%のフェニルトリエトキシシランの加水分解物水溶液を加え、約40℃で4時間30分反応させた。この際、フェニルトリエトキシシランの質量がコロイダルシリカ粒子の質量の0.02倍となるように分散液と加水分解水溶液とを混合した。
ついで、反応終了後の分散液に、この分散液の体積の4倍の体積のメチルエチルケトンを加えて十分に攪拌して、疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出した。
一方、n型GaAs基板上にn型AlInPクラッド層、AlGaInP活性層、p型AlInPクラッド層、p型AlGaInP電流拡散層を順次気相でエピタキシャル結晶成長させて作成した。AlGaInP活性層はドープしない材料を用い、組成は(Al0.05Ga0.950.5In0.5Pとした。積層方式は図6のような通常構造とした。
油層抽出した疎水化コロイダルシリカ分散液を、単粒子膜の表面圧を計測する表面圧力センサーと、単粒子膜を液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを備えた水槽(LBトラフ装置)中の液面(下層水として水を使用、水温25℃)に滴下速度0.01ml/秒で滴下した。なお、水槽の下層水には、あらかじめ作成した化合物半導体ウェハを略鉛直方向に浸漬しておいた。
その後、超音波(出力50W、周波数1500kHz)を下層水中から水面に向けて10分間照射して粒子が2次元的に最密充填するのを促しつつ、分散液の溶剤であるメチルエチルケトンを揮発させ、単粒子膜を形成させた。
ついで、この単粒子膜を可動バリアにより拡散圧が30mNm−1になるまで圧縮し、ウェハを5mm/分の速度で引き上げ、ウェハの電流拡散層面上に単粒子膜を移し取った。
ついで、単粒子膜が形成された化合物半導体ウェハ上にバインダーとして1質量%モノメチルトリメトキシシランの加水分解液を浸透させ、その後、加水分解液の余剰分をスピンコーター(3000rpm)で1分間処理して除去した。その後、これを100℃で10分間加熱してバインダーを反応させ、コロイダルシリカからなる単粒子膜エッチングマスク付きの化合物半導体ウェハを得た。
一方、この単粒子膜エッチングマスクについて、10μm×10μmの領域を無作為に1カ所選択して、その部分の原子間力顕微鏡イメージを得て、ついで、このイメージをフーリエ変換により波形分離し、FFT像を得た。ついで、FFT像のプロファイルにおける0次ピークから1次ピークまでの距離を求め、さらにその逆数を求めた。この逆数がこの領域における粒子間の平均ピッチBである。
このような処理を合計25カ所の10μm×10μmの領域について同様に行い、各領域における平均ピッチB〜B25を求め、これらの平均値を算出し、式(1)における平均ピッチBとした。なお、この際、隣り合う各領域同士が5mm程度離れるように各領域を設定した。
算出された平均ピッチBは97.2nmであった。
そこで、粒子の平均粒径A=96.5nmと、平均ピッチB=97.2nmを式(1)に代入したところ、この例の単粒子膜エッチングマスクにおける粒子の配列のずれDは7.2%であった。
ついで、単粒子膜エッチングマスク付き化合物半導体ウェハに対して、Cl:BCl=25:75〜75:25の混合ガスにより気相エッチングを行った。エッチング条件は、アンテナパワー1500W、バイアスパワー50〜300W(13.56MHz)、ガス流量30〜50sccmとした。原子間力顕微鏡イメージから実測した円錐状微細突起の平均高さhは262.6nmで、単粒子膜エッチングマスクについて実施した方法と同じ方法で求めた円錐状微細突起の配列の平均ピッチC(円形底面の平均直径d)は97.0nmで、これらから算出されるアスペクト比は2.71であった。この微細構造体に対して、式(2)による円錐状微細突起の配列のずれD'を求めたところ、5.2%であった。
以上のようにして電流拡散層表面に屈折率傾斜構造を作成した後、図6のように電流拡散層表面およびGaAs基板に真空蒸着法により電極を作成して、発光ダイオードを完成した。(Al0.05Ga0.950.5In0.5Pの組成の発光ダイオードのピーク発光波長は約647nmである。InGaAlPの屈折率は約3.3であるので、媒質内波長=647/3.3=196nmである。したがって、回折光が発生しなくなる微細構造のピッチ=196/2=98nmであり、得られた微細突起構造はこの条件を満たす。
得られたサブ波長微細構造付き発光ダイオードを、駆動電圧2.1V、駆動電流20mAで発光させて、積分球付き分光光度計で測定したところ、約9500mcdの光度が得られ、その外部発光効率は約12.6%であった。
[比較例1]
電流拡散層表面にサブ波長微細構造を作成しない点を除いて、実施例1と全く同じ操作で作成した赤色発光ダイオードを用意した。したがって、この発光ダイオードの光取り出し面(電流拡散層表面)は平坦である。駆動電圧2.1V、駆動電流20mAで発光させて、積分球付き分光光度計で測定したところ、約6200mcdの光度が得られ、その外部発光効率は約8.2%であった。
単粒子膜エッチングマスクを模式的に示す平面図。 単粒子膜エッチングマスクの製造方法の一例を示す概略図。 エッチングによる微細構造体の製造方法について説明する説明図。 アスペクト比と反射率の関係の理論値について説明する説明図。 アスペクト比の反射率波長依存性を説明する説明図。 AlGaInP系発光ダイオードの通常構造を説明する説明図。 AlGaInP系発光ダイオードの電流阻止型構造を説明する説明図。 AlGaInP系発光ダイオードの電流狭窄型構造を説明する説明図。 InGaN系発光ダイオードのサファイア基板構造を説明する説明図。 InGaN系発光ダイオードのSiC基板構造を説明する説明図。
符号の説明
P 粒子
F 単粒子膜
C 微細構造体
11 基板
12 下層水

Claims (2)

  1. 基板上に発光層を含む半導体多層膜を積層してなる半導体発光素子において、前記発光層で発生した光を外部に取り出す面の少なくとも一部に、微細突起の集合体であり、
    前記微細突起の下部から先端に向かって、屈折率が基材の屈折率から空気の屈折率に連続的に変化している輝度向上に役立つ微細構造体が形成され、
    前記微細突起は、前記突起の高さが50nm以上、かつアスペクト比が0.4以上、かつピッチが発光した光の波長以下の円錐状微細突起であり、前記微細構造体が、下記式(1)で定義される粒子の配列のずれD(%)が10%以下である単粒子膜からなるエッチングマスクを用い、エッチングで作成された微細構造体であり、前記光を外部に取り出す面の最表面に、前記半導体発光素子の材料とは異なる透明材料が形成されたことを特徴とする透明材料付半導体発光素子。
    D(%)=|B−A|×100/A・・・(1)
    (式(1)中、Aは前記粒子の平均粒径、Bは前記単粒子膜における前記粒子間の平均ピッチを示す。)
  2. 前記粒径の変動係数(標準偏差を平均値で除した値)が20%以下である請求項に記載の透明材料付半導体発光素子。
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