JP6206023B2 - セキュリティカード用転写原版 - Google Patents
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Description
また、上述のようにレンチキュラーレンズ形成部の形状が管理されるため、本発明のカード用原版を用いて転写形成されるレンチキュラーレンズの形状も高精度なものとなることから、観察角度に応じて上記レンチキュラーレンズを介して異なる画像を明瞭に出現させることができ、視認性の高いセキュリティカードを簡単且つ安価で製造することが可能となる。
また、複数のセキュリティカードを一括で製造可能なカード用原版とする場合には、一のセキュリティカードの表面に転写される領域と、該領域に隣接して配置された他のセキュリティカードの表面に転写される領域との間に上記凹曲面部を配置することにより、一つの凹曲面部によって、カード表面に転写される領域の複数に対して、上記半円柱形レンズ転写部もしくは隔壁部の形状を管理することが可能となるからである。
図1および図2で示すように、セキュリティカード用転写原版(カード用原版)10は、平板状の金属基板1の一方の表面上に、凹曲面部2、レンチキュラーレンズ形成部3および平面部6を少なくとも有する。レンチキュラーレンズ形成部3は、ストライプ状に配置された半円柱形レンズ転写部4と、隣り合う半円柱形レンズ転写部4の間に位置する隔壁部5とを有する。
また、カード用原版10は、凹曲面部2の長手方向と直交する方向において凹曲面部2を構成する凹曲面部形成壁部7aおよび7bを有し、その頂面が隔壁部5の幅(図2中のX4)よりも大きい幅の平坦面を有するものである。なお、図1および図2に示すカード用原版10の実施態様においては、凹曲面部形成壁部7aおよび7bは平面部6の一部に含まれる。
例えば、図1および図2で示すカード用原版において凹曲面部形成壁部とは、凹曲面部2の長手方向の側面のうち一方と、レンチキュラーレンズ形成部3の側面のうち凹曲面部2側に位置する側面とで挟まれた部分(図1および図2中の7a)、および凹曲面部2の長手方向の側面のうち他方と、それに平行する金属基板1の側面とで挟まれた部分(図1および図2中の7b)をいう。
また、例えば、後述する図6(d)で示すカード用原版における凹曲面部形成壁部とは、凹曲面部2aの長手方向の側面のうち一方と、隣接するレンチキュラーレンズ形成部3aの側面のうち凹曲面部2a側に位置する側面とで挟まれた部分(図6(d)中の7a)、および、凹曲面部2aの長手方向の側面のうち他方と、隣接するレンチキュラーレンズ形成部3bの側面のうち上記凹曲面部2a側に位置する側面とで挟まれた部分(図6(d)中の7b)をいう。凹曲面部2bに対応する凹曲面部形成壁部についても同様である。
なお、図6は、本実施形態のカード用原版の多面付け態様の一例を示す概略平面図を示すものであり、その詳細については後述するためここでの説明は省略する。
また、上述のようにレンチキュラーレンズ形成部の形状が管理されるため、上記カード用原版を用いて転写形成されるレンチキュラーレンズの形状も高精度なものとなることから、観察角度に応じて上記レンチキュラーレンズを介して異なる画像を明瞭に出現させることができ、視認性の高いセキュリティカードを簡単且つ安価で製造することが可能となる。
本実施形態における金属基板は、一方の表面上に、凹曲面部、レンチキュラーレンズ形成部および平面部を少なくとも有するものである。
金属基板に用いられる金属の種類としては、特に限定されるものではないが、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系等のステンレス鋼、鉄、銅、アルミニウム、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、コバルト合金、クロム合金、モリブデン合金、タングステン合金等の金属が好ましく、中でもステンレス鋼が好ましい。金属の中で耐久性に優れており、エッチング等の加工がしやすく、安価だからである。
カード用原版の製造方法として、例えば、金属基板にフォトリソグラフィによるパターニングを行い、その後エッチングを行う方法を用いる場合、その過程において金属基板にマスクを介して紫外線等の露光を行うことによりパターンが複製される。このとき、金属基板とマスクとを真空密着させることによって、安定したパターンを得ることが必要である。そこで、金属基板の厚さを上記範囲内とすることにより、真空密着を安定的に行うことが可能となる。一方、金属基板の厚さが上記範囲より薄いと、カードの製造の際にカード用原版が変形しやすく、耐久性が不足する場合がある。
なお、金属基板の大きさ(面積)としては、所望のセキュリティカードの大きさに応じて適宜設定することができる。
本実施形態における凹曲面部は、金属基板の一方の表面上に配置されるものである。すなわち、上記凹曲面部は、金属基板の表面が直接成形されてなるものであり、少なくとも底部が凹曲面を有するものである。
もう1つの機能としては、凹曲面部が図3(a)で示すように有効領域P内にある場合、カード表面にレンチキュラーレンズとは別に、上記凹曲面部の形状が転写されて模様や文字等の立体的なデザインを形成することができる。これにより意匠性の高いセキュリティカードの製造が可能となる。以下の説明において、凹曲面部により転写形成される立体的なデザインのことを「意匠凸部」と称する場合がある。
なお、図3は、本実施形態のカード用原版において、セキュリティカードの表面に転写される領域を説明するための概略平面図であり、1面付け態様の場合を例示したものである。図3中の符号は、上述した図1等において説明した符号と同様であり、半円柱形レンズ転写部、隔壁部、平面部および凹曲面部形成壁部については符号の表記を省略する。
なお、特段の記載が無い限り、本実施形態のカード用原版における他の部位の測定方法についても同様とする。
なお、凹曲面部の深さとは、金属基板表面から凹曲面部の最底部までの長さをいい、図2においてH1で示す部分をいう。
凹曲面部が複数配置される場合の凹曲面部間の配置間隔としては、0.05mm以上が好ましく、中でも0.1mm以上が好ましい。なお、上記配置間隔は上限として、カード原版の大きさを越えないものとする。
本実施形態におけるレンチキュラーレンズ形成部は、金属基板の一方の表面上に配置され、ストライプ状に配置された複数本の半円柱形レンズ転写部と、隣り合う上記半円柱形レンズ転写部の間に位置する隔壁部とを有するものである。
なお、上記レンチキュラーレンズ形成部は、上述した金属基板の表面が直接、半円柱形レンズ転写部および隔壁部の形状に成形されてなるものである。
半円柱形レンズ転写部は、セキュリティカードを製造する際に半円柱形レンズを転写形成する部位である。なお、セキュリティカードにおいて、複数本の半円柱形レンズがストライプ状に配置されることにより、1つのレンチキュラーレンズとなる。
半円柱形レンズ転写部の幅が上記範囲よりも大きいと、フォトリソグラフィによりカード用原版を製造する場合に、半円柱形レンズ転写部の高さも相対的に大きくなり、転写形成される半円柱形レンズおよびレンチキュラーレンズの高さも大きくなるため、国際規格等で決められたカードの厚さを超えてしまう場合がある。一方、上記範囲よりも小さいと、フォトリソグラフィによりカード用原版を製造する場合に、パターニングに際して解像度の安定性が確保できず、半円柱形レンズ転写部の形状のばらつきが大きくなる可能性がある。そのため、転写形成される半円柱形レンズの形状にもばらつきが生じ、レンチキュラーレンズを介して画像を視認する際に、画像の均一性が確保できない場合がある。
なお、本実施形態において、半円柱形レンズ転写部の幅とは、半円柱形レンズ転写部の側面間の長さ、すなわち短手方向の長さを指し、図2においてX2で示す部分をいう。
半円柱形レンズ転写部の深さが上記範囲よりも大きいと、カード用原版により転写形成される半円柱形レンズのレンズ厚が大きくなる。すなわち、レンチキュラーレンズのレンズ厚も大きくなるため、国際規格等で決められたカード全体の厚みを超えてしまう可能性がある。一方、上記範囲よりも小さいと、転写形成される半円柱形レンズが所望のレンズ厚とならず、画像情報の表示を切り替えるレンズとしての機能を十分発揮できない場合がある。さらに、半円柱形レンズ転写部の深さが上記範囲内に無い場合、セキュリティカードの製造においてレーザー光の照射によりカード基材へ画像の印字を行う際に、半円柱形レンズを透過したレーザー光がカード基材において焦点を結べず、所望の位置に印字が行えない可能性がある。
なお、半円柱形レンズ転写部の深さとは、半円柱形レンズ転写部の最下点から隔壁部の頂部までの長さをいい、図2においてH2で示す部分をいう。
半円柱形レンズ転写部のピッチ幅が上記範囲よりも大きいと、隣り合う半円柱形レンズ転写部の配置間隔、および転写形成される半円柱形レンズの配置間隔も大きくなるため、得られるカードにおいて個々の半円柱形レンズが視覚的に目立つようになり外観上好ましくない場合がある。一方、上記範囲よりも小さいと、上記半円柱形レンズ転写部の幅も小さくなってしまい、半円柱形レンズを転写形成する際にレンズ形状が欠損してしまう場合がある。
なお、半円柱形レンズ転写部のピッチ幅とは、隣り合う半円柱形レンズ転写部の中心間の距離をいい、図2においてX3で示す部分をいう。
半円柱形レンズ転写部の曲率半径が上記範囲よりも小さい場合、転写形成される半円柱形レンズからなるレンチキュラーレンズを介してレーザー光照射によりカード基材上に画像を印字する際に、レーザー光の焦点がカード基材まで到達せず、印字が行えない場合がある。一方、半円柱形レンズ転写部の曲率半径が上記範囲よりも大きい場合、転写形成される半円柱形レンズからなるレンチキュラーレンズの曲率半径も大きいものとなる。そのため、上記レンチキュラーレンズを介してレーザー光照射によりカード基材上に画像を印字する際に、レーザー光がカード基材を超えた位置に焦点を結んでしまいカード基材に印字が行えず、焦点をカード基材上に結ばせるためには、カードの厚さを国際規格以上の大きさとしなければならない場合がある。
なお、半円柱形レンズ転写部の曲率半径とは、図2においてR2で示す部分をいう。
隔壁部は、隣り合う半円柱形レンズ転写部の間に位置するものである。なお、上記隔壁部も上記金属基板の表面上にストライプ状に配置され、その数は上記半円柱形レンズ転写部の数に応じて決まる。
隔壁部の幅を上記範囲内とすることが好ましい理由について、以下にセキュリティカードの視認性の原理と合わせて説明する。
例えば、図5(a)において、レンチキュラーレンズ25を介して画像部27を視認する場合、一方の観察角度E1においては画像部27aの情報(図5(b))のみを、別の観察角度E2においては画像部27bの情報(図5(c))のみを画像として視認することができる。
しかし、上述の態様を有するセキュリティカードにおいて、所定の角度から観察した際に、レンチキュラーレンズを介して表示される画像上に線状ノイズ等が出現して視認の阻害が生じる場合がある。具体的には、レンチキュラーレンズを介してカード基材上の画像部を確認する際に、レンチキュラーレンズの長手方向に従って線状に画像の薄い部分が生じる現象や、所定の角度において表示すべき画像部の他に、上記画像部の情報以外の画像が複数本の線状ノイズ等として同時に表示される現象(図5(d))が起こる場合がある。
この様な現象が生じることにより、画像部の形状が欠損した不鮮明な像として観察されるため、セキュリティカードの視認性の低下を招く事となる。
さらに、後述するように隔壁部の頂部が曲率を有するものであり、半円柱形レンズ転写部と隔壁部の頂部の曲面とが連続した形状で、隔壁部の頂部の曲面の区分される位置が明確でない場合は、非接触法の測定により作成されたグラフにおいて半円柱形レンズ転写部と隔壁部の頂部の曲面とが形成する曲面の変曲点を特定する。すなわち、対象曲面において半円柱形レンズ転写部および隔壁部の短手方向の断面が形成する曲線の曲率の符号が変化する点の位置を、半円柱形レンズ転写部と隔壁部の頂部とが区分される位置とし、上記変曲点における短手方向の長さを隔壁部の幅とする。ここで、短手方向の断面が形成する曲線から曲率を算出する一つの方法としては、上記曲線を微小区間に分け、曲率を算出する微小区間における上記曲線を構成する測定データに対し最小二乗法を用いて円弧を当てはめ、得られた円弧の半径から曲率を得る方法が例示できる。なお、上記変曲点に直線部が接している場合は直線部も半円柱形レンズ転写部の一部とする。
上述したレンチキュラーレンズ形成部の占める面積の割合は、カード用原版の一方の表面の面積を100%としたときに1%〜30%程度の割合を占めることが好ましい。
また、レンチキュラーレンズ形成部における半円柱形レンズ転写部および隔壁部の長手方向は、本実施形態のカード用原版を用いて製造されるセキュリティカードの長手方向、すなわち、上記カードの磁気情報を読み取る方向と同じであることが好ましい。上記カードをカードリーダー等に通す際にレンチキュラーレンズが障害となる場合があるからである。
本実施形態における平面部とは、金属基板の一方の表面上において、上述した凹曲面部およびレンチキュラーレンズ形成部を有さない部分をいう。また、カード用原版の有効領域内に位置するものであり、通常、平面部の外周が有効領域の外枠に相当する。
なお、上記平面部は、セキュリティカードの表面におけるカード平面部を転写形成する部分である。
また、文字図柄転写部により転写形成される文字絵柄部は、上述した凹曲面部により転写形成される立体意匠としての意匠凸部とは異なる意匠として機能することから、目的とするセキュリティカードの表面上にさらに多様なデザインを付与することができる。
本実施形態における凹曲面部形成壁部とは、凹曲面部の長手方向と直交する方向において上記凹曲面部と隣接するものであり、上記凹曲面部と接する端部を起点として、隔壁部の幅よりも大きい幅の平坦面を有するものである。
なお、凹曲面部形成壁部が凹曲面部と隣接するとは、凹曲面部形成壁部の一方の側面が凹曲面部の長手方向の一方の側面を成していることをいう。
具体的には、凹曲面部とレンチキュラーレンズ形成部の側面のうち当該凹曲面部側に位置する側面とに挟まれて成る上記凹曲面部形成壁部(例えば、図1および図2中の7aで示す部分。)の幅が100μm〜1000μm程度であることが好ましい。また、凹曲面部とレンチキュラーレンズ形成部以外の部位の側面とに挟まれて成る上記凹曲面部形成壁部の幅(例えば、図1および図2中の7bで示す部分。)については、その上限が金属基板を超えない大きさであればよい。
凹曲面部形成壁部の幅が上記隔壁部の幅よりも小さいと、測定する基準面が得られず、凹曲面部の形状寸法の測定ができなくなり、これに伴い、実測が困難な半円柱形レンズ転写部もしくは隔壁部の形状寸法についての寸法管理ができない場合がある。
本実施形態のカード用原版において、凹曲面部の長手方向は半円柱形レンズ転写部の長手方向と平行であってもよく、垂直であってもよく、凹曲面部の長手方向に対して斜めであってもよい。中でも、上記凹曲面部の長手方向が上記半円柱形レンズ転写部の長手方向と平行となるように配置されていることが好ましい。上記凹曲面部の形状と上記半円柱形レンズ転写部あるいは隔壁部の形状との相関を把握し易くなり、上記半円柱形レンズ転写部あるいは隔壁部の形状をより高精度で管理することができるからである。
上記凹曲面部の配置位置について、上記カード用原版が1面付け態様の場合と多面付け態様の場合とに分けて説明する。
本実施形態のカード用原版が1面付け態様の場合については、上述した「2.凹曲面部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
図6は本実施形態のカード用原版の多面付け態様の例を示す概略平面図である。上記カード用原版が多面付け態様であるとは、一枚の金属基板の表面上に複数のレンチキュラーレンズ形成部3a〜3cを有する場合をいう。また、図3と同様に、図6において一点破線で囲まれる領域は有効領域Pを示すものである。なお、図6において、半円柱形レンズ転写部、隔壁部、平面部および凹曲面部形成壁部の一部については、表示を省略する。
上記カード用原版が多面付け態様である場合、上記凹曲面部(2a〜2cおよび2)は図6(a)で示すように有効領域P内に配置されてもよく、図6(b)で示すように有効領域Pの外に配置されてもよい。凹曲面部が有効領域P内に配置される場合、転写時にカード表面上に上記凹曲面部の反転形状である意匠凸部を形成することができる。
また、図6(a)および(b)で示すように、レンチキュラーレンズ形成部3a〜3cに対して対応する凹曲面部2a〜2cが配置されてもよく、図6(c)で示すように、1枚の金属基板に1つの凹曲面部2が配置されてもよい。
さらに、図6(d)で示すように、凹曲面部2aおよび2bが、それぞれ有効領域P外であり且つ隣り合う有効領域Pの間に配置されてもよい。この場合、一つの凹曲面部によって、カード表面に転写される有効領域Pの複数に対して、上記半円柱形レンズ転写部や隔壁部の形状を管理することが可能となる。
本実施形態のカード用原版の製造方法としては、金属基板の一方の表面上に凹曲面部、平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を直接形成し、上記凹曲面部を所望の位置とすることができる方法であれば特に限定されない。例えば、金属基板の一方の表面に、半円柱形レンズ転写部用開口部および凹曲面部用開口部のパターンを有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、上記レジスト層を介して上記金属基板をエッチングし、上記レンチキュラーレンズ形成部および上記凹曲面部を形成するエッチング工程とを有することにより、所望のカード用原版を製造することができる。また、凹曲面部の形状寸法と半円柱形レンズ転写部もしくは隔壁部の形状寸法との相関を予め把握する相関確認工程を有することにより、レンチキュラーレンズの形状を管理することが出来る。さらに、上述の工程の他に、レンチキュラーレンズ形成部および凹曲面部を有する金属基板の表面を研磨する研磨工程等の任意の工程を有していてもよい。
本工程で用いられるレジストの材料としては、感光性を有するものであれば良く、ポジ型でもネガ型でもよい。中でも、液状レジストやドライフィルムレジストを用いることが好ましく、特に、ドライフィルムレジストを用いることが好ましい。これは、膜厚が一定に保たれたフィルム状のレジストであり、解像度が安定することが期待でき、半円柱形レンズ転写部を安定した形状で形成することができるからである。
液状レジストおよびドライフィルムレジストの材料としては、一般的にフォトリソグラフィで用いられるものが挙げられる。なお、レジスト材料が液状である場合、金属基板上にレジスト材料を塗布しレジスト膜を成膜する方法として、スピンコート法、ブレードコート法、デイッピング法等の一般的な方法を用いることができる。
なお、レジストパターンを形成する前のレジスト膜の厚さについても、上記レジスト層の厚さと同様である。
本工程で用いられるエッチング方法としては、ウェットエッチングであることが好ましい。ドライエッチングと比較して加工効率が高く、様々なデザインに対し柔軟に形成することができるからである。ウェットエッチングの中でも、等方性のウェットエッチングであることが好ましい。凹曲面部および半円柱形レンズ転写部の底部を曲面とすることができるからである。ウェットエッチングの方法としては、レジスト層を有する金属基板上にエッチング液を塗布する方法(シャワーエッチング)でも良く、エッチング液にレジスト層を有する金属基板を浸漬させる方法(ディッピングエッチング)でも良い。
本実施形態のカード用原版の製造においては、凹曲面部の形状寸法と半円柱形レンズ転写部もしくは隔壁部の形状寸法との相関を予め把握する相関確認工程を有することが好ましい。なお、凹曲面部の形状寸法と半円柱形レンズ転写部もしくは隔壁部の形状寸法との相関の取り方については、レンチキュラーレンズの形状管理が可能な方法であれば特に限定されない。また、本工程を実施するタイミングについても、製造方法に応じて適宜設定することが出来る。
本実施形態のカード用原版の製造においては、上述のエッチング工程の後に、レンチキュラーレンズ形成部および凹曲面部を有する金属基板の表面を研磨する研磨工程を行ってもよい。カード用原版の表面を光沢面とすることができ、セキュリティカードを製造する際にカード表面に光沢性を付与することができる。また、隔壁部の幅を更に小さく減肉させることができ、曲率を持たせることができる。
なお、本工程は、レンチキュラーレンズ形成部および凹曲面部を含む金属基板の表面全体に対して行ってもよく、少なくともレンチキュラーレンズ形成部に対して行ってもよく、隔壁部の表面のみに対して行ってもよい。
本実施形態のカード用原版の製造方法において、上述した工程の他に、例えば、酸系水溶液あるいはアルカリ系水溶液を用いて金属基板の表面を整面する整面処理工程、エッチング工程後にレジスト層を剥離するレジスト層剥離工程等を有していても良い。
本実施形態のカード用原版の用途としては、通常、セキュリティカードの製造に使用されるものであるが、実際のカード製造時には使用せずに、管理用のテスト原版として用いることもできる。
(セキュリティカード用転写原版の製造)
<レジスト層形成工程>
カード用原版に使用する金属基板として、板厚0.5mm、300mm角サイズの圧延材料であるSUS304材を準備した。上記金属基板の一方の表面を、アルカリ脱脂(NaOH水溶液5%、60℃)、硫酸電解(硫酸水溶液5%、常温、電流密度dk=3)、塩酸ディップ(塩酸水溶液10%、常温)により整面処理を行った。
次に、整面処理を行った金属基板の表面に、カゼイン含有ネガレジストを使用し、スピンコーターにてコーティングを行い、10μm〜15μm程度の厚さを有するフォトレジスト層を形成した。
次に、平行光露光機を使い、マスクを介して紫外線照射によるパターン露光を行った後、40℃の温水で現像しフォトレジスト層をパターン形成し、半円柱形レンズ転写部用開口部および凹曲面部用開口部を形成した。
上記マスクについては、上述した金属基板のサイズ内でレンチキュラーレンズを形成するために、カード1枚当たりに、85mm×50mm程度の有効領域を具備し、且つ、そのカード内に縦および横のサイズが各々20mm程度となる矩形のレンチキュラーレンズ形成部を、得られるセキュリティカードにおいてレンチキュラーレンズを左下部に配置できるように具備した。
なお、半円柱形レンズ転写部用開口部は、最終的にエッチング形成される半円柱形レンズ転写部の寸法が、長さ20000μm、幅50μmとなる大きさに設定し、ピッチ90μmで配置した。また、凹曲面部用開口部は、半円柱形レンズ転写部用開口部と同様の長さおよび幅とし、上記有効領域内の、半円柱形レンズ転写部用開口部から間隔1000μm程度、金属基板の端部から50000μm程度離した位置に1つ形成した。
当該パターニングされたフォトレジスト層を介して、エッチングを行った。
本工程において、エッチング段階ごとに凹曲面部、半円柱形レンズ転写部、および隔壁部のそれぞれの幅を測定した。
凹曲面部の幅が40μmであるエッチング段階における、半円柱形レンズ転写部の幅、隔壁部の幅は、それぞれ40μm、50μmであった。また、凹曲面部の幅が60μmであるエッチング段階における半円柱形レンズ転写部の幅、隔壁部の幅は、それぞれ60μm、30μmであった。これにより、凹曲面部の幅と半円柱形レンズ転写部の幅との間に相関関係があることを確認した。一方、凹曲面部の幅が80μmであるエッチング段階においては、隔壁部の幅が狭く測定する基準面が明確でないため、半円柱形レンズ転写部の幅の実測ができなかった。しかし、上述の相関関係があることから、半円柱形レンズ転写部の幅は80μmで形成されていることが推測できた。
上記の結果から、凹曲面部形成壁部が隔壁部の幅よりも大きい幅の平坦面を有することにより、凹曲面部形成壁部においては、測定する基準面が明確であるため形状の測定が可能であった。一方、半円柱形レンズ転写部、隔壁部の実測が不可能な形状寸法については、測定する基準面が無い場合であっても、凹曲面部形成壁部の形状寸法との相関関係から算出、寸法管理が可能であった。
上記マスクによるレンチキュラーレンズ形成部の設計については、上述のようにコーティングされたレジスト層の解像度およびエッチング条件等に依存するため、マスクのパターンのみではレンズ形状は決まらない。このため、最終的に得られたエッチング後の形状で、マスクのパターン形状およびエッチング条件の検証を行った。
エッチング後の形状としては、隔壁部の幅、半円柱形レンズ転写部の幅、深さ、ピッチ幅および底部の曲率半径の大きさが、加工形状として主に制御できるものと想定して加工した。 検証の結果、上記隔壁部の幅5μm〜20μmの範囲に対して、5μmごとに段階的に変えた形状が得られた。また、その他の半円柱形レンズ転写の形状については、浸漬時間やスプレー噴射圧力などのエッチング条件によって、5μmごとに段階的に変えた形状が得られた。
上述の工程を経た複数枚の金属基板について、隔壁部の頂部に曲率を形成するため当該金属基板を処理時間等の条件を変えて硝酸5%水溶液に浸漬して酸洗した後、バフ研磨の#400で光沢面に処理した。これにより、隔壁部の頂部の曲率2.5μm〜10μmに対して、1μm〜2μmごとに段階的に変えることができた。上述の一連の工程を経て複数枚のカード用原版を得た。
(セキュリティカードの製造)
<転写工程>
カーボンブラックを含有したカード基材(厚さ50μm〜100μm)と、レンチキュラーレンズシートとしてポリカーボネートを主成分としたシート基材(厚さ50μm〜100μm)との積層体を予め準備した。次に、実施例により得られたカード用原版を平面プレス機に装着し、当該積層体に対して200℃で20分、1kg/cm2でプレスを行った後、30分程度冷却を行い、シート基材が硬化する温度まで低下させた。冷却後、平面プレス機を開放し、上記シート基材からカード用原版を剥離させた。
この実施により、上述のシート基材上に上記カード用原版表面の凹凸形状が転写され、凹曲面部の反転形状である意匠凸部、平面部の反転形状であるシート平坦部、および複数本がストライプ状に配置された半円柱形レンズとレンズ間溝部とを有するレンチキュラーレンズが形成されたレンチキュラーレンズシートを得た。
続いて、レンチキュラーレンズシート上において、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズに対してYAGレーザー照射を行い、画像部の印字を行った。この実施により、カード基材上に画像部を形成することができ、観察角度に応じて上記画像部の視認画像が異なる目的のセキュリティカードを得ることが出来た。
2 … 凹曲面部
3 … レンチキュラーレンズ形成部
4 … 半円柱形レンズ転写部
5 … 隔壁部
6 … 平面部
7a、7b …凹曲面部形成壁部
10 … セキュリティカード用転写原版(カード用原版)
P … セキュリティカードの表面に転写される領域(有効領域)
Claims (5)
- 金属基板の一方の表面上に、凹曲面部、レンチキュラーレンズ形成部、および平面部を有するセキュリティカード用転写原版であって、
前記レンチキュラーレンズ形成部が、ストライプ状に配置された複数の半円柱形レンズ転写部と、隣り合う前記半円柱形レンズ転写部の間に位置する隔壁部とを有するものであり、
前記凹曲面部の長手方向と直交する方向において前記凹曲面部と隣接する凹曲面部形成壁部が、前記凹曲面部と接する端部を起点として、前記隔壁部の幅よりも大きい幅の平坦面を有し、
前記半円柱形レンズ転写部および前記凹曲面部は、前記金属基板の同一表面に対して凹状に形成された部分であることを特徴とするセキュリティカード用転写原版。 - 前記隔壁部の頂部が曲率を有することを特徴とする請求項1に記載のセキュリティカード用転写原版。
- 前記凹曲面部は、セキュリティカードの表面に転写される領域内に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセキュリティカード用転写原版。
- 前記凹曲面部は、セキュリティカードの表面に転写される領域の外側に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセキュリティカード用転写原版。
- 前記凹曲面部は、前記凹曲面部の長手方向が、前記半円柱形レンズ転写部の長手方向と平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のセキュリティカード用転写原版。
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