JP2014210393A - セキュリティカード表面にレンチキュラーレンズを転写するセキュリティカード用転写原版とその製造方法、およびセキュリティカードの製造方法 - Google Patents

セキュリティカード表面にレンチキュラーレンズを転写するセキュリティカード用転写原版とその製造方法、およびセキュリティカードの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に製造することができるセキュリティカード用転写原版とその製造方法、およびセキュリティカード用転写原版を用いたセキュリティカードの製造方法の提供を主目的とする。【解決手段】本発明は、金属基板の一方の表面上に、平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを有し、上記レンチキュラーレンズ形成部が、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う上記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有し、上記隔壁部が、基板凸部と、上記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有することを特徴とするセキュリティカード用転写原版を提供することにより、上記目的を達成する。【選択図】図1

Description

本発明は、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に製造することができるセキュリティカード用転写原版とその製造方法、およびセキュリティカード用転写原版を用いたセキュリティカードの製造方法に関する。
身分証明証や各種会員証、クレジットカード等のセキュリティカード(以下、「セキュリティカード」を「カード」と略する場合がある。)において、カードの所有者とカード使用者との同一性を確認する、いわゆる個人識別機能として、カード表面に所有者の個人情報や写真等の画像が表示されたものが一般的に用いられている。また、近年では、これらの画像が改ざんおよび偽造されることを防止するために、画像表面に偽造防止機能を付与したセキュリティカードが用いられている。
偽造防止機能を付与する方法としては、例えば、セキュリティカードのカード基材上にレンチキュラーレンズを設ける方法がある。レンチキュラーレンズとは、断面が凸レンズ状であり側面が略半円柱の直線形状のレンズ(以下、「半円柱形レンズ」と称する。)の複数本が、平行で等間隔に配置された形状を有するものであり、凸レンズ状の断面を有する方向にのみレンズの集光機能を有するものである。セキュリティカードにおいては、表示される個人情報等の画像上にレンチキュラーレンズを設けることにより、特定の観察角度からレンチキュラーレンズを介してセキュリティカードを観察する際に、カード基材の有する画像部から観察角度に応じて表示される画像を選択して目視させることができるため、視認性の高いセキュリティカードとすることができる(特許文献1〜3参照)。
上述のようなセキュリティカードを多品種かつ小ロットで製造する場合においては、例えば、レンチキュラーレンズのみを金型ロールで別途形成した後に貼り付けることにより、カード表面上にレンチキュラーレンズを設ける等の方法が用いられている。しかし、安価で容易に精度良くレンチキュラーレンズ付きのセキュリティカードを製造することができる転写原版については知られていなかった。
特開平9−311204号公報 特開2000−298319号公報 特開2008−77711号公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に製造することができるセキュリティカード用転写原版とその製造方法、およびセキュリティカード用転写原版を用いたセキュリティカードの製造方法を提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、金属基板の一方の表面上に、平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを有し、上記レンチキュラーレンズ形成部が、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う上記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有し、上記隔壁部が、基板凸部と、上記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有することを特徴とするセキュリティカード用転写原版を提供する。
本発明によれば、金属基板の一方の表面上に平面部とレンチキュラーレンズ形成部とが直接形成されており、上記レンチキュラーレンズ形成部における隔壁部は、基板凸部の頂部に薄板部が形成されることにより高さの調節がなされている。このため、上記レンチキュラーレンズ形成部における直線状凹曲面部は、底部に所望の曲率を有しつつ、上記隔壁部の高さに応じた深さを有するものとなることから、安価で精度のよいセキュリティカード用転写原版とすることができる。
また、本発明のセキュリティカード用転写原版を用いることにより、当該レンチキュラーレンズ形成部の形状が転写されて、印字に適した曲率を有し、レンズ厚のばらつきが少ないレンチキュラーレンズを一括形成することができる。このため、当該レンチキュラーレンズにより観察角度に応じて異なる画像を明瞭に表示することができ、視認性の高いセキュリティカードを簡単且つ安価で製造することが可能となる。
上記発明においては、上記薄板部が、上記基板凸部と同一の金属により形成されることが好ましい。薄板部と基板凸部とを同一金属とすることにより、本発明のセキュリティカード用転写原版を用いてセキュリティカードを製造する際に、薄板部と基板凸部とにおいて、カードからの剥離性の違いによる剥離不良が生じることを抑制できるからである。
また、同一金属とすることにより、薄板部および基板凸部の熱膨張係数が同じものとなるため、転写時の加熱等による転写形状のずれの発生を防ぐことができるからである。
上記発明においては、上記隔壁部の頂部が曲率を有することが好ましい。上記隔壁部は、セキュリティカードを製造する際に、隣り合う半円柱形レンズ間の溝部(以下、「レンズ間溝部」と称する場合がある。)を転写形成する部分であり、上記レンズ間溝部の形状等によってはカードの視認性が低下する場合がある。すなわち、上記レンズ間溝部に起因して、レンチキュラーレンズを介して視認される画像上に、表示すべき画像以外の不要な画像が線状に出現し、不明瞭な画像として視認される場合がある。なお、表示すべき画像上に線状に出現する不要な画像のことを、「線状ノイズ」と称する場合がある。
上記発明においては、隔壁部の頂部が曲率を有することにより、得られるセキュリティカードの表示画像上に出現する上述の線状ノイズ等を目立たなくすることができるからである。
また、本発明は、金属基板の一方の表面上に、平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを有し、上記レンチキュラーレンズ形成部が、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う上記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有し、上記隔壁部が、基板凸部と、上記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有するセキュリティカード用転写原版の製造方法であって、上記金属基板上に直線状の開口部を有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、上記レジスト層を介して上記金属基板をエッチングし、上記レジスト層を剥離することより、上記金属基板上に上記直線状凹曲面部および上記基板凸部を形成するエッチング工程と、少なくとも上記基板凸部の頂部に上記薄板部を接合し、上記隔壁部を形成する薄板部形成工程と、を有することを特徴とするセキュリティカード用転写原版の製造方法を提供する。
本発明によれば、エッチング工程により直線状凹曲面部および基板凸部を金属基板上に直接形成することで、基板凸部の頂部の幅を所望の大きさに調整し、直線状凹曲面部の底部を所望の曲率を有する形状とすることができる。また、薄板部形成工程において、上記基板凸部の頂部に薄板部を設けて隔壁部の高さを適宜調節することができるため、エッチング工程においては、金属基板の厚さ方向へ過剰にエッチングする必要がない。このため、長時間のエッチング処理による隔壁部の決壊、直線状凹曲面部の曲率の変化、深さ等にばらつき等が生じるのを防ぐことができる。
つまり、エッチング工程と薄板部形成工程とを有することにより、直線状凹曲面部の底部の曲率および深さ、ならびに隔壁部の形状を独立に制御して自由に設計することが可能となり、形状のばらつきが少なく、高精度のセキュリティカード用転写原版を製造することができる。
上記発明においては、上記薄板部形成工程では、上記薄板部の材料が、上記基板凸部と同一の金属であることが好ましい。薄板部と基板凸部とが同一金属であることにより、接合の際に熱膨張係数の違いによる位置ずれを生じにくくすることができるからである。また、同一金属とすることにより、転写体に対する薄板部および基板凸部の剥離性が同等となるため、本発明により得られるセキュリティカード用転写原版を用いてカードを転写形成する際に、剥離不良による転写形状の欠損等の発生を防ぐことができるからである。
また、本発明は、カード基材と、上記カード基材の一方の表面にシート基材を積層し、上記シート基材の表面にセキュリティカード用転写原版を転写して、複数本が並列に配置された半円柱形レンズと、隣り合う上記半円柱形レンズの間に形成されたレンズ間溝部とを有するレンチキュラーレンズ、および、シート平坦部を含むレンチキュラーレンズシートを形成する転写工程と、上記レンチキュラーレンズにおける上記半円柱形レンズを介して、上記カード基材に異なる少なくとも2方向からレーザー光を照射して、上記半円柱形レンズと平面視上に重なるように上記カード基材に画像部を形成する印字工程と、を有するセキュリティカードの製造方法であって、上記転写工程において使用される上記セキュリティカード用転写原版が、金属基板の一方の表面上に、平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを有し、上記レンチキュラーレンズ形成部が、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う上記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有し、上記隔壁部が、基板凸部と、上記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有するものであることを特徴とするセキュリティカードの製造方法を提供する。
本発明によれば、転写工程において上述の構造を有するセキュリティカード用転写原版を用いることにより、カード表面の所望の位置に、レーザー光による印字に適した形状を有するレンチキュラーレンズと、高い平滑性を有するシート平坦部とを、同時に精度良く形成することができる。
つまり、所望の形状を有するレンチキュラーレンズシートをカード基材上に簡単に一括形成することが可能となり、カードの厚さの均一化も図ることができるため、寸法精度の高いセキュリティカードを生産性良く製造することが可能となる。
また、上記半円柱形レンズおよびレンズ間溝部は、その寸法精度および配置精度が高いものであることから、印字工程において、カード基材の上記半円柱形レンズと平面視上に重なる位置に正確に画像部を形成することができる。このため、得られるセキュリティカードは、当該レンチキュラーレンズにより観察角度に応じて異なる画像を明瞭に表示することができる。
このように、上述の製造方法により、視認性に優れたセキュリティカードを、安価で精度よく簡単に製造することができる。
本発明においては、上記転写工程により、上記レンズ間溝部の底部が曲率を有する形状となることが好ましい。レンズ間溝部の底部が曲率を有することにより、レンチキュラーレンズを介して画像部を視認する際に、表示される画像上に出現する線状ノイズ等を目立たなくすることができ、視認性に優れたセキュリティカードを製造することができるからである。
本発明のセキュリティカード用転写原版においては、レンチキュラーレンズ形成部が、基板凸部の頂部に薄板部が形成されることにより高さの調節がなされた隔壁部と、底部に所望の曲率を有しつつ、上記隔壁部の高さに応じた深さを有する上記直線状凹曲面部とを有することから、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に製造することができるという効果を奏する。
また、本発明のセキュリティカード用転写原版の製造方法においては、エッチング工程により、直線状凹曲面部の底部を所望の曲率となるようにエッチングし、その後の薄板部形成工程により、上記エッチング工程の際に形成された基板凸部の頂部に薄板部を接合させて、隔壁部の高さを調節することができる。このため、直線状凹曲面部の曲率および深さについて設計の自由度が向上し、所望の形状を有するレンチキュラーレンズ形成部を精度よく形成できるという効果を奏する。
さらに、本発明のセキュリティカードの製造方法においては、上述のセキュリティカード用転写原版を用いることにより、レーザー光による印字に適した曲率を有し、レンズ厚のばらつきが少ないレンチキュラーレンズが形成されるため、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に製造することができるという効果を奏する。
本発明のセキュリティカード用転写原版の一例を示す概略斜視図である。 図1のA−A線縦断面図である。 本発明のセキュリティカード用転写原版の他の例を示す概略斜視図である。 図3のB−B線縦断面図である。 本発明のセキュリティカード用転写原版の他の例を示す概略斜視図である。 図5のC−C線縦断面図である。 本発明のセキュリティカード用転写原版における、隔壁部の態様の例を説明するための説明図である。 セキュリティカードにおけるレーザー光照射による印字方法に関する説明図である。 本発明のセキュリティカード用転写原版の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明のセキュリティカード用転写原版の製造方法の他の例を示す工程図である。 本発明のセキュリティカード用転写原版の製造方法の他の例を示す工程図である。 本発明のセキュリティカードの製造方法の一例を示す工程図である。 本発明のセキュリティカードの製造方法により得られるセキュリティカードの概略平面図である。 セキュリティカードにおける、観察角度と視認される画像部との関係を表わす説明図である。
以下、本発明のセキュリティカード用転写原版、セキュリティカード用転写原版の製造方法、およびセキュリティカードの製造方法について、順に説明する。
なお、以下の説明において、本発明のセキュリティカード用転写原版および得られるセキュリティカードのことを、「カード用原版」および「カード」と略する場合がある。
A.セキュリティカード用転写原版
まず、本発明のセキュリティカード用転写原版について説明する。本発明のセキュリティカード用転写原版は、金属基板の一方の表面上に、平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを有し、上記レンチキュラーレンズ形成部が、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う上記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有し、上記隔壁部が、基板凸部と、上記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有することを特徴とするものである。
本発明のカード用原版について、図を例示して説明する。図1は本発明のカード用原版の一例を示す概略斜視図であり、図2は図1のA−A線縦断面図である。また、図3は本発明のカード用原版の他の例を示す概略斜視図であり、図4は図3のB−B線縦断面図である。なお、図1および図3において、X方向を短尺方向とし、Y方向を長尺方向とする。
図1〜図4に例示されるように、本発明のセキュリティカード用転写原版(カード用原版)10は、金属基板1の一方の表面上に、平面部2とレンチキュラーレンズ形成部3とが形成されており、上記レンチキュラーレンズ形成部3には、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部4と、隣り合う直線状凹曲面部4の間に形成される隔壁部5とを有するものである。
また、上記隔壁部5は、金属基板1が成形されて成る基板凸部6と、上記基板凸部6の頂部に形成された薄板部7とを有するものである。
図1〜図4に例示されるカード用原版では、薄板部7として、例えば、複数本の薄板部7を基板凸部6の配置に合わせて外周枠9内に並列させた格子形状のものを用いる。このときのカード原版10の態様としては、外周枠9が平面部2上に配置された外付け態様(図1および図2)と、レンチキュラーレンズ形成部3の外周縁を基板凸部6の頂部と同じ高さとなる位置まで彫り込み、彫り込み部分に外周枠9が配置された嵌めこみ態様(図3および図4)とがある。
中でも、カード用原版は嵌めこみ態様であることが好ましい。薄板部により隔壁部の高さを調節する際に、平面部とレンチキュラーレンズ形成部の外周縁とにおいて段差が生じることがないため、カード用原版の表面をより平坦化させることができるからである。なお、以下の説明において、外周枠は薄板部に含まないものとする。
本発明のカード用原版は、上述した図1〜図4で例示されるように、少なくとも隔壁部における基板凸部の頂部上に薄板部を有するものであるが、図5および図6に例示されるように、基板凸部6の頂部上および平面部2の全体に薄板部7を有する態様とすることも可能である。上述の態様とすることで、カード用原版の転写面の高さを均一化することができる。なお、図5は本発明のカード用原版の他の例を示す概略斜視図であり、図6は図5のC−C線縦断面図である。また、図5において、X方向を短尺方向、Y方向を長尺方向とする。なお、図5および図6において説明していない符号については、図1等で説明した符号と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本発明における直線状凹曲面部について、「複数本が並列に配置され」るとは、複数本の直線状凹曲面部が、平行で等間隔に配置されることをいう。
本発明によれば、金属基板の一方の表面上に平面部とレンチキュラーレンズ形成部とが直接形成されており、上記レンチキュラーレンズ形成部における隔壁部は、基板凸部の頂部に薄板部が形成されることにより高さの調節がなされている。このため、上記レンチキュラーレンズ形成部における直線状凹曲面部は、底部に所望の曲率を有しつつ、上記隔壁部の高さに応じた深さを有するものとなることから、安価で精度のよいセキュリティカード用転写原版とすることができる。
また、本発明のカード用原版を用いることにより、所望の位置に形成されたレンチキュラーレンズおよび平坦な領域(以下、「シート平坦部」と称する場合がある。)を有するセキュリティカードを製造することができる。
通常、ICカードや各種証明カード等のセキュリティカードにおいては、その大きさが国際規格(例えばISO7816)等で規定されており、カードの大きさ、形状、厚さ等について高い精度が求められている。
本発明のカード用原版においては、レンチキュラーレンズ形成部の形状が高精度なものであることから、転写により精度の高いレンチキュラーレンズを形成することができる。
また、平面部についても表面平滑性が有するため、転写により平坦性の高いシート平坦部を形成することができる。
さらに、本発明のカード用原版をカードに押し当てた状態で加熱加圧されることにより、カード表面に上述したレンチキュラーレンズ等の形状が一括形成されるため、厚さが均一なカードを複製することが可能である。
さらにまた、本発明のカード用原版における直線状凹曲面部が転写されることにより、レーザー光等による印字に適した曲率を有し、レンズ厚のばらつきが少ない半円柱形レンズを所望の位置に精度良く形成することができる。そのため、半円柱形レンズを介してカード基材に文字、記号、図柄等の画像情報を印字する際に、正確な位置に印字することができ、観察角度に応じて上記レンチキュラーレンズを介して異なる画像を明瞭に出現させることができる。
このように、本発明のカード用転写原版により、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に製造することが可能となる。
本発明のカード用原版は、金属基板上に平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を少なくとも有するものである。
以下、本発明のカード用原版の各部位について説明する。
1.金属基板
本発明における金属基板は、一方の表面上に平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを有するものである。
上記金属基板は、単一の金属から形成される単層構造であることが好ましい。金属基板の表面上にめっき等が施された多層構造である場合、転写する際に直線状凹曲面部に応力が集中してかかりやすく、レンチキュラーレンズ形成部のめっき等が剥離する場合があるからである。
上記金属基板に用いられる金属の種類としては、特に限定されるものではないが、ステンレス鋼、鉄、銅、アルミニウム、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、コバルト合金、クロム合金、モリブデン合金、タングステン合金等の金属が好ましく、中でもステンレス鋼が好ましい。金属の中でも耐久性に優れており、エッチング等の加工がしやすく安価だからである。
上記金属基板の厚さとしては、後述する本発明のカード用原版の厚さが所望の範囲内となる厚さであればよく、例えば、0.05mm〜10mmの範囲内であることが好ましい。
金属基板の厚さを上記範囲内とすることが好ましい理由については、以下の通りである。
本発明のカード用原版の製造方法として、例えば、当該金属基板にフォトリソグラフィによるパターニングを行い、その後エッチングを行う方法を用いる場合、その過程において金属基板にマスクを介して紫外線等の露光を行うことによりパターンが複製される。このとき、金属基板とマスクとを真空密着させることにより、安定したパターンを得ることが必要である。そこで、金属基板の厚さを上記範囲内とすることにより、上記真空密着を安定的に行うことが可能となる。
一方、金属基板の厚さが上記範囲より薄いと、カードの製造の際に本発明のカード用原版が変形しやすく、耐久性が不足する場合がある。
なお、金属基板の大きさ(面積)としては、所望のカードの大きさ、面付け等に応じて適宜設定することができる。
2.レンチキュラーレンズ形成部
本発明におけるレンチキュラーレンズ形成部は、金属基板の一方の表面上に形成され、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う上記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有するものである。また、上記隔壁部は基板凸部と、上記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有するものである。
(1)隔壁部
本発明における隔壁部とは、基板凸部と上記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有するものである。
また、上記隔壁部は、本発明のカード用原版を用いてセキュリティカードを製造する際に、その形状が転写されてレンズ間溝部を形成する部位である。
なお、上記基板凸部と上記薄板部とは接合界面を有するものであり、隔壁部の数は、後述する直線状凹曲面部の数に応じて決まるものである。
(a)基板凸部
本発明における基板凸部の形状は、所望の幅や高さ等を有するものであれば特に限定されるものではない。図7は、本発明のカード用原版における隔壁部の態様の一例を説明するための説明図である。隔壁部を構成する基板凸部の縦断面形状としては、図7(a)で例示されるように、通常、金属基板1の底面に対して上記基板凸部6の側面が直角を成す形状であるが、図7(b)で例示されるように、鈍角を成す形状(テーパー形状)であってもよい。上記基板凸部の両側面がなす角度(図7(b)中のθ)の大きさとしては、5°〜120°の範囲内が好ましく、中でも10°〜90°の範囲内が好ましく、特に15°〜45°の範囲内が好ましい。基板凸部の両側面が上記範囲内の角度を成すことにより、転写の際にカード用原版がカードから剥離しやすくなるからである。
基板凸部の両側面がなす角度は、光干渉式表面形状測定装置(例えば、菱化システム社製 VertScan2.0、Veeco社製 Wyko NT9000シリーズ等)を用いて、非接触法により測定することができる。具体的には、光干渉式表面形状測定装置の測定ステージ上に上記隔壁部を測定ヘッドに向けて載置し、上記隔壁部の表面形状データを3次元座標データの集合の形式で非接触に取得し、上記表面形状データを元に算出することができる。
なお、特段の記載が無い限り、本発明のカード用原版の各部位の測定方法、および当該カード用原版により製造されるセキュリティカードの各部位の測定方法は、対象部位を測定ヘッドに向けて載置し、上述の方法を用いて測定されたものとする。
また、基板凸部の頂部の幅(以下、「基板凸部の幅」と略する場合がある。)は、当該頂部に後述する薄板部を形成するのに十分な大きさであり、且つ、基板凸部および薄板部から成る隔壁部の頂部の幅(以下、「隔壁部の幅」と略する場合がある。)を小さくすることが可能な大きさであることが好ましい。このような基板凸部の幅として、例えば、5μm〜40μmの範囲内であることが好ましく、中でも5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、特に10μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。
基板凸部の幅を上記範囲内とすることが好ましい理由については、後述する「(c)隔壁部」の項において併せて説明する。
なお、基板凸部の幅とは、基板凸部の頂部に有する面のうち短尺方向の長さをいい、図2においてX1で示される部分をいう。
また、基板凸部の長尺方向の長さ(以下、「基板凸部の長さ」と略する場合がある。)については、後述する直線状凹曲面部の長尺方向の長さ(以下、「直線状凹曲面部の長さ」と略する場合がある。)に応じて適宜設定されるものである。
基板凸部の高さは、特に限定されるものではないが、例えば、5μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、中でも6μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、特に、8μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。基板凸部の高さを上記範囲とすることにより、基板凸部を金属基板のエッチングにより形成する場合に、深さ方向へ過度にエッチングする必要がなく、個々の基板凸部の高さにバラつきが生じるのを抑制することができる。
なお、上記基板凸部の高さとは、直線状凹曲面部の最下点から基板凸部の頂部までの大きさをいい、図2においてY1で示されるものである。
(b)薄板部
本発明における薄板部は、上述した基板凸部の頂部に形成されるものである。上記薄板部の材料としては、上述した基板凸部の頂部と接合することができる材料であればよく、中でも上記基板凸部と同一の金属であること、すなわち上述した金属基板と同一の金属を用いることが好ましく、特に基板凸部と同一のステンレスを用いることが好ましい。
基板凸部と同一の金属を用いることにより、薄板部を基板凸部の頂部に接合する際に、材料の違いによる熱膨張係数の差に起因して、位置ずれ等の発生を防ぐことができるからである。
また、薄板部と基板凸部との材料が異なる場合、本発明のカード用原版を用いてセキュリティカードを製造する際に、カードからの剥離性が各部位で異なるため、剥離不良に起因してカードの形状に欠損等を生じる可能性がある。
さらに、薄板部および基板凸部の材料の熱膨張係数が異なると、転写時の加熱等により金属の熱膨張に起因して転写形状にずれが生じる可能性がある。
そのため、薄板部と基板凸部とを同一の材料とすることにより、本発明のカード用原版の各部位によって剥離性に差が生じないものとし、熱膨張率の違いによる転写精度の低下を防ぐことができるからである。
薄板部の縦断面形状は、所望の幅や高さ等を有するものであれば特に限定されるものではなく、図7(a)および(d)で例示されるように、上記基板凸部6の頂部の平面に対して薄板部7の側面が直角を成す形状であってもよく、図7(b)および(c)で例示されるように上記基板凸部6の頂部の平面に対して薄板部7の側面が鋭角を成す形状(テーパー形状)であってもよい。中でも、本発明においては、カード製造時における剥離性の観点から、薄板部の形状がテーパー形状であることが好ましい。
基板凸部の頂部の平面に対して薄板部の側面が成す角度(図7(c)中のθ)としては、10°〜90°の範囲内が好ましく、中でも25°〜80°の範囲内が好ましく、特に35°〜75°の範囲内が好ましい。転写の際にカード用原版がカードから剥離しやすくなるからである。
さらに、図7(d)で例示されるように、薄板部の頂部が曲面であること、すなわち、曲率を有することが好ましい。上記薄板部の頂部の曲率半径としては、2.5μm〜10.0μmの範囲内であることが好ましく、中でも2.5μm〜7.5μmの範囲内であることが好ましい。特に2.5μm〜5.0μmの範囲内であることが好ましい。その理由については、後述する「(c)隔壁部」の項で説明するため、ここでの説明は省略する。
なお、薄板部の頂部の曲率半径とは、隔壁部の頂部の曲率半径と同じであり、図7においてR1で示される部分をいう。
薄板部の底幅は、少なくとも基板凸部の頂部の幅以下の大きさであることが好ましい。具体的には、5μm〜38μmの範囲内であることが好ましく、中でも5μm〜28μmの範囲内であることが好ましく、特に10μm〜23μmの範囲内であることが好ましい。
また、薄板部の頂部の幅は、少なくとも薄板部の底幅以下の大きさであることが好ましい。具体的には、5μm〜35μmの範囲内であることが好ましく、中でも5μm〜25μmの範囲内であることが好ましく、特に10μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。
薄板部の底幅が基板凸部の頂部よりも広幅の場合や、薄板部の頂部の幅が底幅よりも広幅の場合、本発明のカード用原版を用いてセキュリティカードを製造する際に、カードから剥離できず、レンチキュラーレンズの形状に欠損等を生じて精度よく形成できない場合がある。
薄板部の幅とは、基板凸部の頂部と同様に短尺方向の長さをいう。薄板部が頂部に曲率を有するテーパー形状であり、頂部の曲面の区分される位置が明確でない場合は、非接触法の測定により作成されたグラフにおいて薄板部の頂部の曲面と側面とが形成する曲面の変曲点を特定し、上記変曲点における短尺方向の長さを薄板部の頂部の幅とする。
なお、以下の説明において、各部位の測定の際に曲面の区分される位置が明確でない場合においては、上記方法と同様にして測定箇所を特定するものとする。
また、薄板部の長尺方向の長さ(以下、「薄板部の長さ」と略する場合がある。)は、基板凸部と同様に、後述する直線状凹曲面部の長さに応じて適宜設定されるものであり、中でも、薄板部の長さは基板凸部の長さと同一であることが好ましい。
上記基板凸部の長さは後述する直線状凹曲面部の長さと同じであるため、例えば、薄板部の長さが上記基板凸部の長さよりも短い場合、隔壁部の高さが均一とならず、直線状凹曲面部の深さにばらつきが生じる。そのため、転写により得られるレンチキュラーレンズがレンズとしての機能を有さない場合がある。
薄板部の高さは、上述した基板凸部の高さと合わせた時に、隔壁部を所望の高さとすることができるものであればよく、例えば15μm〜80μmの範囲内であることが好ましく、中でも18μm〜60μmの範囲内であることが好ましく、特に20μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
(c)隔壁部
隔壁部の断面形状は、所望の幅や高さ等を有するものであり、転写する際にカードからの剥離を阻害しない形状であれば特に限定されるものではなく、上述した基板凸部および薄板部の形状によるものである。例えば、隔壁部の頂部の面に対し、側面が直角を成す形状であってもよく、鈍角を成す形状であってもよい。また、基板凸部の部分は直角を成し、薄板部の部分は鈍角を成す形状であってもよく、基板凸部の側面と薄板部の側面とがそれぞれ異なる鈍角を成す形状であってもよい。
また、隔壁部においては、上述したように、上記薄板部の底幅が上記基板凸部の頂部の幅以下であることが好ましく、且つ、上記薄板部の頂部の幅は当該底幅以下の大きさであることが好ましい。その理由は「(b)薄板部」の項で述べた通りである。上記基板凸部の頂部の幅と薄板部の最長幅との差は、0μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、中でも5μm〜15μmの範囲内であることが好ましく、特に5μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
隔壁部の幅は小さいことが好ましいが、決壊が起こらない大きさであることが好ましい。隔壁部は、転写によりレンズ間溝部を形成する部位であるが、隔壁部の幅が大きいと、上記レンズ間溝部の幅も大きくなる。レンズ間溝部の幅が大きい場合、レンチキュラーレンズを介して所定の角度から画像部を観察した際に、表示される画像上に線状ノイズ等が出現する現象が生じる。このため、表示すべき画像が不明瞭な像として視認され、セキュリティカードの視認性の低下を招く場合があるからである。
なお、「レンチキュラーレンズを介して表示される画像上に線状ノイズ等が出現」する現象、および当該現象が生じる要因については、後述する「C.セキュリティカードの製造方法」の項で詳細に説明するため、ここでの説明は省略する。
一方、隔壁部の幅が小さすぎると、転写時の加圧により隔壁部の決壊が生じやすくなり直線状凹曲面部の深さにばらつきが生じる。このため、直線状凹曲面部の転写により形成される半円柱形レンズおよびその集合体であるレンチキュラーレンズが、レンズとしての機能を有すことができない場合がある。
上記理由から、隔壁部の幅を決壊が起こらない程度に小さくすることにより、形状のばらつきが少ない半円柱形レンズを形成することができ、且つ、上記隔壁部により転写形成されるレンズ間溝部の幅も小さいものとすることができる。これにより、表示される画像上に線状ノイズ等が出現することを抑制できる。
具体的な隔壁部の頂部の幅については、「(b)薄板部」の項で説明した薄板部の頂部の幅と同様である。
隔壁部の高さとしては、目的とするレンチキュラーレンズの形状に応じて適宜設定することができる。隔壁部の高さとは、上述した基板凸部および薄板部の高さの和により規定されるものであり、後述する直線状凹曲面部の深さと同様である。具体的には、20μm〜180μmの範囲内であることが好ましく、中でも22μm〜110μmの範囲内であることが好ましく、特に25μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。
隔壁部の高さが上記範囲よりも大きいと、直線状凹曲面部の深さも大きくなるため、転写により形成される半円柱形レンズおよびレンチキュラーレンズのレンズ厚が大きくなる。このため、カード全体の厚みが国際規格等を超えてしまう可能性がある。一方、上記範囲よりも小さいと、転写により形成される半円柱形レンズおよびレンチキュラーレンズが所望のレンズ厚とならず、画像情報の表示を切り替えるレンズとしての機能を十分発揮できない場合がある。
また、直線状凹曲面部の深さが上記範囲外となると、セキュリティカードの製造においてレーザー光の照射によりカード基材へ画像の印字を行う場合、半円柱形レンズを透過したレーザー光がカード基材において焦点を結べず、所望の位置に印字が行えない可能性がある。
なお、隔壁部の高さとは、隔壁部の頂部から直線状凹曲面部の最下点までの長さをいい、図2においてY2で示される部分をいう。
また、隔壁部の頂部は曲率を有することが好ましい。上記隔壁部の頂部が曲率を有することにより、本発明のカード用原版を用いて製造されるセキュリティカードにおいて、レンズ間溝部の底部も曲面とすることができる。これにより、レンチキュラーレンズを介して視認される画像上に出現する線状ノイズ等をより目立たなくすることができる。また、突起形状を具備しない隔壁部とすることによって、カード用原版の繰り返しの使用において、薄板部の離脱を起こりにくくすることができる。
隔壁部の頂部の曲率半径については、「(b)薄板部」の項で説明した薄板部の頂部の曲率半径と同様である。
(2)直線状凹曲面部
本発明における直線状凹曲面部は、金属基板の表面上に、複数本が並列に配置されるものである。また、上記直線状凹曲面部は、本発明のカード用原版を用いてセキュリティカードを製造する際に、その形状が転写されて半円柱形レンズを形成する部分である。さらに、複数本の直線状凹曲面部が転写されることにより、1つのレンチキュラーレンズを形成するものである。
なお、上記直線状凹曲面部は、上述した金属基板の表面に直接成形されてなるものである。
本発明における直線状凹曲面部の深さは、上述した「(1)隔壁部」の項で説明した隔壁部の高さと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明における直線状凹曲面部の幅は、20μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、中でも40μm〜120μmの範囲内であることが好ましく、特に、50μm〜70μmの範囲内であることが好ましい。
直線状凹曲面部の幅が上記範囲よりも大きいと、例えば本発明のカード用原版をフォトリソグラフィにより製造する場合に、直線状凹曲面部の高さも相対的に大きくなる。そのため、上記カード用原版により形成される半円柱形レンズおよびレンチキュラーレンズの高さも大きくなり、国際規格等で決められたカードの厚さを超えてしまう場合がある。
一方、上記範囲よりも小さいと、パターニングに際して解像度の安定性が確保できず、直線状凹曲面部の形状のばらつきが大きくなる可能性がある。そのため、転写により形成される半円柱形レンズの形状もばらつきが生じ、レンチキュラーレンズとして所望の光学性能が得られない場合がある。
なお、本発明において、直線状凹曲面部の幅とは、直線状凹曲面部の短尺方向の長さを指し、図2においてX2で示される部分をいう。
また、直線状凹曲面部のピッチ幅は小さいことが好ましいが、上述した直線状凹曲面部の幅より大きいことが好ましい。上記ピッチ幅の具体的な大きさとしては、30μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、中でも50μm〜130μmの範囲内であることが好ましく、特に60μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
直線状凹曲面部のピッチ幅が上記範囲よりも大きいと、直線状凹曲面部の配置間隔が大きくなり、最終的にセキュリティカード上に形成される半円柱形レンズの配置間隔も大きくなる。そのため、個々の半円柱形レンズが視覚的に目立つようになり、外観上好ましくない場合がある。一方、上記範囲よりも小さいと、上記直線状凹曲面部の幅も小さくなり、転写により半円柱形レンズを形成する際にレンズ形状が欠損してしまう場合がある。
なお、直線状凹曲面部のピッチ幅とは、隣り合う直線状凹曲面部の中心間の距離をいい、図2においてX3で示される部分をいう。
上記直線状凹曲面部は、その底部に曲率を有するものであるが、上記直線状凹曲面部の底部の曲率(以下、「直線状凹曲面部の曲率」と略する場合がある。)の大きさによっては、国際規格等で定められる寸法形状を有するカードを製造できない場合や、カードの視認性が低下する場合等がある。そのため、上記直線状凹曲面部は所望の曲率を有する必要がある。以下、その理由について、セキュリティカードへの印字方法を併せて説明する。
セキュリティカードにおける印字方法としては、レンチキュラーレンズシート上の半円柱形レンズを介して、発色材料を含有するカード基材に異なる2方向からレーザー光等の照射を行い、2方向のレーザー光の焦点部分の発色材料を発色させることにより印字する方法がある。
上述したように、直線状凹曲面部は転写されて半円柱形レンズを形成する部位である。すなわち、上記直線状凹曲面部の曲率により、半円柱形レンズの曲率も定まるものである。
ここで、例えば、上記直線状凹曲面部の曲率が大きいと、形成される半円柱形レンズの曲率も大きいものとなる。すなわち、上記半円柱形レンズは曲率半径が小さい形状となる。
この場合、図8(a)で例示されるように、半円柱形レンズ13を透過したレーザー光Z1およびZ2は、レンチキュラーレンズシート12内に焦点Fを有してしまい、カード基材11まで到達することができず、カード基材11において印字が行えない可能性がある。
このとき、レーザー光の焦点をカード基材に有するためには、レンチキュラーレンズシートの厚さを薄くする必要があり、当該シートの強度が低下する可能性がある。
一方、例えば、上記直線状凹曲面部の曲率が小さいと、形成される半円柱形レンズの曲率も小さいものとなる。すなわち、上記半円柱形レンズは曲率半径の大きい形状となる。
この場合、図8(b)で例示されるように、半円柱形レンズ13を透過したレーザー光Z1およびZ2は、カード基材11を越えた位置に焦点Fを有するため、上記カード基材11において印字が行えない可能性がある。
このとき、カード基材に焦点が位置するようにレンチキュラーレンズシートの厚さを大きくする方法も考えられる。しかし、実際にレーザー光の届く範囲は決まっていることから、上記焦点Fまで十分にレーザー光が届かず、焦点Fにおけるレーザー光の強度が低下すると推量される。そのため、カード基材に明瞭に印字することが困難となる場合がある。
また、レンチキュラーレンズシートの厚さを大きくすると、セキュリティカード全体の厚さも大きくなるため、国際規格等で規定される寸法形状のカードを製造することができない場合がある。
上述の理由から、カード基材の所定の箇所に明瞭な画像部を有し、視認性の高いセキュリティカードとするためには、半円柱形レンズの曲率が所望の範囲内となるように、カード用原版の直線状凹曲面部の曲率を規定する必要がある。具体的には、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、中でも30μm〜90μmの範囲内であることが好ましく、特に50μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。
なお、直線状凹曲面部の底部の曲率半径とは、図2においてR2で示される部分をいう。
上記直線状凹曲面部は、金属基板の表面上に複数本が並列に形成されるものであり、上記直線状凹曲面部の本数は適宜選択することができる。また、直線状凹曲面部の長さについても特に限定されるものではなく、金属基板の大きさおよび所望のレンチキュラーレンズの大きさに応じて適宜選択されるものである。
3.平面部
本発明における平面部とは、金属基板の一方の表面上に有するものである。上記平面部は、上述したレンチキュラーレンズ形成部を有さない領域をいい、上述した金属基板の表面が直接、平面部の形状に形成されて成るものである。
なお、カード用原版の底面から平面部までの高さは、通常、金属基板の厚さと同様である。
平面部は、図5および図6で例示されるように、表面全体に薄板部を有していてもよい。平面部上にも薄板部を有することで、隔壁部の高さに併せて平面部も同様の高さに調整することができるからである。
平面部上に形成される薄板部の高さとしては、通常、上述した隔壁部における薄板部の高さと同様である。また、平面部上に形成される薄板部の形状等については、平面部の形状等に応じて適宜設計されるものである。
平面部上の薄板部と基板凸部上の薄板部とは個々に形成されていてもよいが、図5で例示されるように一枚板で形成されていることが好ましい。
また、図1および図3で例示されるように、平面部2の一部には文字図柄転写部8が形成されていることが好ましい。上記文字図柄転写部は凹凸で表現された文字、記号、図柄等の画像情報を有するものである。そのため、本発明のカード用原版を用いてセキュリティカードを製造する際に、カード表面にレンチキュラーレンズを形成するのと同時に、上記文字図柄転写部の画像情報を転写することができるからである。
なお、平面部上に薄板部を有する場合は、図5で例示されるように、平面部2上の薄板部7に文字図柄転写部8が形成されていることが好ましい。
上記文字図柄転写部における文字や図柄等の線幅は、80μm〜500μm程度の大きさであることが好ましい。また、上記文字図柄転写部の大きさとしては、特に限定されるものではなく、目的とするセキュリティカードの大きさ等に応じて適宜設定することができる。なお、平面部上の文字図柄転写部の個数は、1つであっても良く複数あっても良い。
4.セキュリティカード用転写原版(カード用原版)
本発明のカード用原版の厚さは0.05mm〜10mmの範囲内が好ましく、中でも0.2mm〜5mmの範囲内が好ましい。
なお、本発明におけるカード用原版の厚さとは、カード用原版の底面から平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を有する表面のうち最も高い部分までをいう。
また、本発明のカード用原版において、レンチキュラーレンズ形成部の占める面積の割合は、上記カード用原版の一方の表面の面積を100%とした時に1%〜30%程度の割合を占めることが好ましい。
また、本発明のカード用原版は、その表面が平滑性を有するものであることが好ましく、中でも光沢面であることが好ましい。表面を光沢面とすることにより、表面に光沢を有するセキュリティカードを製造することができるからである。
上記カード用原版の十点平均表面粗度(Rz)については、Rz=0.05μm〜1.5μmの範囲内であることが好ましく、中でもRz=0.1μm〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。
上記十点平均表面粗度は、光干渉式の非接触表面粗さ計を用いて測定した値である。具体的には、菱化システム(株)製のバートスキャンR3300H Liteを使い、プロファイル範囲を+/−5ミクロンとして測定することにより得られる。
また、光沢面の程度としては、#400以上の砥粒で研磨した時の光沢を有することが好ましい。
本発明のカード用原版においては、レンチキュラーレンズ形成部の外周縁が曲率を有することが好ましい。本発明のカード用原版を用いてセキュリティカードを製造する際に、カードを剥離しやすくすることができるからである。「レンチキュラーレンズ形成部の外周縁が曲率を有する」とは、カード用原版が図1〜図4で示される態様の場合は、外周枠9の周縁が曲率を有することをいい(例えば、図4中のDで示される部分)、図5〜6で示される態様の場合では、平面部上に形成される薄板部7のうち、レンチキュラーレンズ形成部の外周縁上に位置する部分(例えば、図6中のDで示される部分)が曲率を有することをいう。なお、具体的な曲率半径については、上述した隔壁部の頂部の曲率半径と同様である。
本発明のカード用原版において、レンチキュラーレンズ形成部は金属基板の表面上の一部に形成されるものであり、その数は1つでも良く、複数あっても良い。金属基板上のレンチキュラーレンズ形成部の数が1つの場合は、1面付け態様のカード用原版とすることができる。すなわち、1回の製造の際に上記態様のカード用原版1枚に付き、1枚のセキュリティカードを製造することができる。
また、金属基板上のレンチキュラーレンズ形成部の数が複数の場合、多面付け態様のカード原版とすることができる。すなわち、1回の製造の際に上記態様のカード用原版1枚に付き、複数枚のセキュリティカードを製造することができる。
また、上記レンチキュラーレンズ形成部を複数有する場合、一方のレンチキュラーレンズ形成部における直線状凹曲面部の長尺方向と、他方のレンチキュラーレンズ形成部における直線状凹曲面部の長尺方向とが同じ方向であっても良く、異なる方向であっても良いが、同じ方向であることが好ましい。
さらに、上記直線状凹曲面部の長尺方向は、本発明のカード用原版を用いて形成されるセキュリティカードの読み取り方向と同じ方向であることが好ましい。上記カードをカードリーダーに通す際に、上記レンチキュラーレンズが障害となる場合があるからである。
5.製造方法
本発明のカード用原版の製造方法としては、金属基板の一方の表面上に平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを形成することができる方法であれば特に限定されないが、中でも、後述する「B.セキュリティカード用転写原版の製造方法」の項において説明される製造方法を用いることが好ましい。
B.セキュリティカード用転写原版の製造方法
次に、本発明のセキュリティカード用転写原版の製造方法について説明する。本発明のセキュリティカード用転写原版の製造方法は、金属基板の一方の表面上に、平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを有し、上記レンチキュラーレンズ形成部が、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う上記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有し、上記隔壁部が、基板凸部と、上記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有するセキュリティカード用転写原版の製造方法であって、上記金属基板上に直線状の開口部を有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、上記レジスト層を介して上記金属基板をエッチングし、上記レジスト層を剥離することより、上記金属基板上に上記直線状凹曲面部および上記基板凸部を形成するエッチング工程と、少なくとも上記基板凸部の頂部に上記薄板部を接合し、上記隔壁部を形成する薄板部形成工程と、を有することを特徴とするものである。
このようなカード用原版の製造方法について、図を例示して説明する。図9は本発明のカード用原版の製造方法の一例を示す工程図である。
図9に例示されるように、レジスト層形成工程として、平板状の金属基板1aを準備し、金属基板1aの一方の表面上にレジスト膜11aを成膜し(図9(a))、マスク12を介してレジスト膜11aを露光Eし、さらに現像することにより(図9(b))、パターン状のレジスト層11を形成する(図9(c))。このとき、レジスト層11において、複数本の開口部21が、目的とする直線状凹曲面部の配列に相当するパターンで形成されている。
次に、エッチング工程として、レジスト層11をマスクとして上記金属基板1aをエッチングし(図9(d))、上記レジスト層11を剥離して、金属基板1の表面上に直線状凹曲面部4および基板凸部6を形成する(図9(e))。なお、上記直線状凹曲面部4は複数本が並列に配置されており、上記基板凸部6は隣り合う上記直線状凹曲面部4の間に形成されるものである。
続いて、薄板部形成工程として、別途用意した薄板部7を基板凸部6の頂部に接合させる(図9(f))。これにより、上記基板凸部6上に上記薄板部7が積層された隔壁部5と、直線状凹曲面部4とを有するレンチキュラーレンズ形成部3が形成され、金属基板1上の、レンチキュラーレンズ形成部3が形成されていない領域が、平面部2となる(図9(g))。
上述の方法により得られるカード用原版10は、図1および図2で例示される態様のものとなる。
図10は、本発明のカード用原版の製造方法の別の例を示す工程図である。なお、図10において説明しない符号については、図9で説明した符号と同様とする。
図10で例示されるように、レジスト層形成工程として、レンチキュラーレンズ形成部を形成する領域部分が予め掘り込まれた凹平面領域Pを有する金属基板1bを準備する(図10(a))。金属基板1bの凹平面領域Pを有する表面上にレジスト膜11aを成膜し(図10(b))、マスク12を介してレジスト膜11aを露光Eし、さらに現像することにより(図10(c))、凹平面領域P上に開口部21を有するレジスト層11をパターン形成する(図10(d))。
次に、エッチング工程を行い(図10(e)、(f))、続いて、薄板部形成工程として、薄板部7を上記凹平面領域Pに嵌めこみ、基板凸部6の頂部に薄板部7を接合させる(図10(g))。
これにより、隔壁部5が基板凸部6および薄板部7から成り、隔壁部5の頂部と平面部2とが同一平面上となるカード用原版10を得ることができる(図10(h))。
上述の方法により得られるカード用原版10は、図3および図4で例示される態様のものとなる。
なお、図9および図10における薄板部7は、外周枠9内に複数の薄板部7が並列した格子形状のものを使用するものである。
また、本発明のカード用原版の製造方法は、薄板部形成工程において、少なくとも基板凸部の頂部に薄板部を接合し、隔壁部を形成するものであるが、同時に平面部の表面全体にも薄板部が接合されて形成されるものであってもよい。
図11は本発明のカード用原版の製造方法の別の例を示す工程図である。なお、レジスト層形成工程(図11(a)〜(c))およびエッチング工程(図11(d)〜(e))については、上述の図9で例示並びに説明したものと同様であるため省略する。
図11で例示されるように、薄板部形成工程として、金属基板1の基板凸部6および平面部上に別途準備した薄板部7を接合させる(図11(f))。このとき使用する薄板部7は、直線状凹曲面部に位置する部分に貫通孔を有する基板状のものである。
これにより、基板凸部6の頂部および平面部2上に薄板部7が一括形成されたカード用原版10を得ることができる(図11(g))。上述の方法により得られるカード用原版10は、図5および図6で例示される態様のものとなる。
従来、レンチキュラーレンズの転写原版の製造方法としては、MEMSやエレクトロフォーミング(EF)、金属切削等が用いられている。これらの方法は、高精度のレンチキュラーレンズの大判転写原版を製造ることができるが、製造が容易でかつ安価ではなく、セキュリティカードのような多品種小ロット用の転写原版の製造方法には適していない。
また、上述した方法とは異なる方法としてレーザー光により直接描画する方法(以下、レーザー法と称する場合がある。)が用いられる。レーザー法を用いて転写原版を製造する場合、上述の方法よりも多品種小ロット用の転写原版の製造には適しているが、レーザー光の照射部分において溶融された基板材料等の飛散が生じるため、転写原版の表面の平滑性が損なわれる場合がある。また、レーザー光の照射熱により転写原版の全域が加熱されるため、隔壁部の欠損や変形等が生じる場合があった。
これに対し、本発明者はカード用原版の製造方法として、直線状凹曲面部の配列パターンに対応した開口部を有するレジスト層を金属基板上に成膜し、上記レジスト層を介してエッチングを行うことにより、上記金属基板の表面に直線状凹曲面部および隔壁部を一括形成する方法を見出している。上記製造方法により、安価で簡単に製造することができ、また、レーザー法等の従来の製造方法と比較して、溶融物の飛散により表面の平滑性が損なわれることや隔壁部等の変形や欠損等が生じることがないため、精度のよいカード用原版を製造することが可能である。
しかし、上述の製造方法においては、エッチングにより形成される直線状凹曲面部の形状に制約があり、直線状凹曲面部の曲率および深さを自由に設計することが難しい場合がある。
例えば、曲率の小さい直線状凹曲面部を形成するためにエッチング時間を短くすると、金属基板の厚さ方向へエッチングされにくく、直線状凹曲面部の深さが必然的に得られない可能性がある。一方、深さの大きい直線状凹曲面部を形成するためにエッチング時間を長くすると、幅方向へのオーバーエッチングにより隔壁部が過剰に減肉され決壊が生じる、直線状凹曲面部が所望の曲率よりも大きく変形する、厚さ方向へのエッチング速度の違いから均一な深さとならない等の不具合が生じる可能性がある。
また、上述の製造方法により得られるカード用原版を用いてセキュリティカードを製造すると、上記直線状凹曲面部が転写されて半円柱形レンズが形成されることから、半円柱形レンズについても同様に形状の制約を受ける可能性がある。そのため、半円柱形レンズの曲率およびレンズ厚の大きさによっては、レーザー光による印字の際に、レーザー光の焦点をカード基材の所望の位置に合わせることができず、精度よく印字されない場合がある。
さらに、上記半円柱形レンズの集合により構成されるレンチキュラーレンズについても同様に形状の制約を受けることになるため、上記レンチキュラーレンズを介して異なる2方向の観察角度からセキュリティカード上の画像を視認する際に、画像の切り替わりに不具合が生じ、セキュリティカードの視認性に影響を及ぼす可能性がある。
これに対し、本発明ではカード用原版の製造方法として、エッチング工程と薄板部形成工程とを有することにより、上記課題を解決するに至った。
まず、エッチング工程により、金属基板上に直線状凹曲面部および基板凸部をエッチングにより直接形成することで、基板凸部の頂部の幅を所望の大きさに調整し、底部に所望の曲率を有する直線状凹曲面部を形成することができる。本発明では、エッチング工程の後に薄板部形成工程を有しており、薄板部形成工程において上記基板凸部上に薄板部を設けて隔壁部の高さを適宜調節することができるため、エッチング工程の段階では金属基板の厚さ方向へのエッチングを考慮する必要がない。
そのため、エッチングにより直線状凹曲面部および隔壁部を一括形成する先の方法とは異なり、所望の深さを得るために長時間エッチングを行う必要が無く、過剰なエッチングにより直線状凹曲面部の形状、深さ等のばらつきが生じることを防ぐことができる。つまり、直線状凹曲面部の曲率を適正範囲内の大きさとすることができる。
また、薄板部形成工程において基板凸部の頂部に薄板部を設けることで、別途、隔壁部の高さを自由に調整することができる。このため、エッチング工程において形成された曲面形状を保持しながら、均一な深さを有する直線状凹曲面部とすることができる。つまり、従来の方法より、直線状凹曲面部の曲率および深さを精度よく、自由に設計できることができる。
本発明は、エッチング工程と薄板部形成工程とを有することにより、直線状凹曲面部の曲率と深さとを独立して制御することができる。このため、エッチング工程のみで直線状凹曲面部の曲率および深さを調節しながら形成する方法よりも、レンチキュラーレンズ形成部の設計の自由度を向上させることができ、また、形状等のばらつきが少ない高精度のカード用原版を得ることができる。
本発明のカード用原版の製造方法は、レジスト層形成工程、エッチング工程、および薄板部形成工程を少なくとも有するものである。
以下、本発明のカード用原版の製造方法について、各工程の順に説明する。
1.レジスト層形成工程
本発明におけるレジスト層形成工程について説明する。本発明におけるレジスト層形成工程とは、金属基板上に直線状の開口部を有するレジスト層を形成する工程である。
具体的には、金属基板上にレジスト材料を塗布してレジスト膜を成膜し、所望の位置に直線状の開口部を有するようにパターン形成を行い、レジスト層を形成する工程である。
本工程で用いられる金属基板の材料およびその厚さは、上述した「A.セキュリティカード用転写原版」の項で説明したものと同様であるため、ここでの記載は省略する。
なお、図10で例示した凹平面領域を有する金属基板を用いる場合、上記凹平面領域の深さについては、目的とする直線状凹曲面部の深さおよびエッチング量に応じて適宜設定されるものである。また、凹平面領域の大きさ(面積)についても、目的とするレンチキュラーレンズ形成部の大きさに応じて適宜設定されるものである。
凹平面領域を有する金属基板は、平板状の金属基板に対し、レンチキュラーレンズ形成部を形成する領域部分を切削もしくはエッチング等により掘り込むことにより形成することができる。
本工程で用いられるレジストの材料としては、感光性を有するものであれば良く、ポジ型でもネガ型でもよい。中でも、液状レジストやドライフィルムレジストを用いることが好ましく、特に、ドライフィルムレジストを用いることが好ましい。ドライフィルムレジストは、膜厚が一定に保たれたフィルム状のレジストであり、解像度が安定することが期待でき、直線状凹曲面部を安定した形状で形成することができるからである。
液状レジストおよびドライフィルムレジストの材料としては、一般的にフォトリソグラフィで用いられるものが挙げられる。なお、レジスト材料が液状である場合、金属基板上にレジスト材料を塗布してレジスト膜を成膜する方法として、スピンコート法、ブレードコート法、ディッピング法等の一般的な方法を用いることができる。
本工程において形成されるレジスト層の厚さとしては、レンチキュラーレンズ形成部の形状に応じて適宜設定することができる。
また、上記レジスト層は、後述するエッチング工程において直線状凹曲面部および基板凸部を形成する際に、上記隔壁部の本数および配列に合わせて、直線状の開口部を有するようにパターン形成されるものである。上記開口部の幅については、直線状凹曲面部の形状に応じて適宜設定することができる。また、上記開口部の並列間隔、本数等については、目的とする直線状凹曲面部のピッチ幅、本数等に応じて適宜選択することができる。
本工程におけるレジスト層のパターン形成方法としては、所望のパターンが形成できる方法であれば特に限定はなく、例えば、フォトリソグラフィ法や印刷法を用いることができる。中でもフォトリソグラフィ法を用いることが好ましい。高精度でパターンを形成することができるからである。
なお、本工程における露光条件および現像条件については、一般的なフォトリソグラフィにおける条件を用いることができる。
2.エッチング工程
次に、本発明におけるエッチング工程について説明する。本発明におけるエッチング工程は、上記レジスト層を介して上記金属基板をエッチングし、上記レジスト層を剥離することより、上記金属基板上に上記直線状凹曲面部および上記基板凸部を形成するものである。
本工程では、レジスト層の開口部から露出する金属基板の表面がエッチングされることにより、レジスト層により表面が覆われた領域が基板凸部となり、上記開口部から露出した領域が直線状凹曲面部となる。
以下、本工程について、レジスト層を介して上記金属基板をエッチングする「エッチング処理」と、レジスト層を剥離する「レジスト層剥離処理」に分けて、順に説明する。
(1)エッチング処理
本工程に用いられるエッチング方法としては、金属基板の一方の表面に平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を精度良く形成できるものであれば特に限定されるものではないが、中でもウェットエッチングであることが好ましい。ウェットエッチングはドライエッチングと比較して加工効率が高く、直線状凹曲面部および基板凸部の様々な形状デザインに対し、柔軟に対応することができるからである。
上記ウェットエッチングの方法としては、レジスト層を有する金属基板上にエッチング液を塗布する方法でも良く、エッチング液にレジスト層を有する金属基板を浸漬させる方法でも良い。
本工程において用いられるエッチング液としては、金属基板をエッチングできるものであれば良く、用いられる金属材料に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、金属基板にステンレス鋼を用いる場合は、塩化第二銅液、塩化第二鉄液、塩酸−硝酸−リン酸混合液等を用いることが好ましい。なお、エッチング時間は、直線状凹曲面部を所望の形状とすることができる時間であれば良く、適宜調整することができる。
(2)レジスト層剥離処理
本工程におけるレジスト層の剥離の方法としては、レジスト層を剥離することができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、剥離液を用いる方法等を挙げることができる。また、剥離液を用いる方法としては、剥離液にエッチング処理後の金属基板を浸漬させる方法、エッチング処理後の金属基板に対して剥離液を塗布する方法等を用いることができる。
上記レジスト層の剥離液としては、金属基板を溶解せずに、レジスト層のみを溶解することができるものであれば特に限定されるものはなく、レジスト層の材料に応じて適宜選択することができ、その種類としては一般的にレジスト層の剥離に使用される剥離液を用いる事ができる。
(3)エッチング工程
本工程により、直線状凹曲面部の底部を所望の曲率を有する形状とすることができる。上記直線状凹曲面部の曲率等については、上述した「A.セキュリティカード用転写原版 2.レンチキュラーレンズ形成部 (2)直線状凹曲面部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの記載は省略する。
また、本工程により形成される基板凸部については、上述した「A.セキュリティカード用転写原版 2.レンチキュラーレンズ形成部 (1)隔壁部 (a)基板凸部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの記載は省略する。
3.薄板部形成工程
本発明における薄板部形成工程とは、少なくとも上記基板凸部の頂部に上記薄板部を接合し、上記隔壁部を形成するものである。
本工程では、予め形状、高さ等を調節した薄板部を準備し、少なくとも上述したエッチング工程により形成された基板凸部の頂部と接合させることにより、所望の高さを有する隔壁部を形成することができる。
また、本工程により、隔壁部の高さが調整されることにより、上述したエッチング工程により形成された直線状凹曲面部は、底部に所望の曲率半径を有しつつ、適切な深さとすることができる。
(1)薄板部
本工程において用いられる薄板部の材料としては、上述した「A.セキュリティカード用転写原版 2.レンチキュラーレンズ形成部 (1)隔壁部 (b)薄板部」の項で説明したものと同様である。中でも、上記薄板部の材料が、上記基板凸部と同一の金属、すなわち金属基板と同一の金属であることが好ましい。
本工程において用いられる薄板部は、所望の形状に予め作製されていることが好ましい。また、上記薄板部は、その頂面が予め曲率を有するものであってもよい。予め薄板部の頂面に曲率が付与されることにより、本工程後に研磨等の処理を行わなくても、頂部に曲率を有する隔壁部とすることができるからである。
本工程において用いられる薄板部については、上述した「A.セキュリティカード用転写原版 2.レンチキュラーレンズ形成部 (1)隔壁部 (b)薄板部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本工程において用いられる薄板部の作製方法としては、所望の形状とすることが可能な方法であれば特に限定されない。
例えば、図9および図10で例示したように、基板凸部上にのみ薄板部を形成する場合、上記薄板部の作製方法としては、上述の薄板部の材料からなる金属板に対し、基板凸部の配列に合わせてフォトリソグラフィによるパターニングを経てエッチングすることにより、外周枠内に複数の薄板部が並列した格子形状を形成する方法等を用いることができる。上記外周枠の幅等については特に限定されるものではないが小さいことが好ましい。
また、図11で例示したように、平面部上にも薄板部を設ける場合は、金属板上に直線状凹曲面部の配列に合わせて貫通孔を開けて基板状に形成する方法等が用いられる。
薄板部の頂面に曲率を付与する方法としては、電解研磨、化学研磨等の研磨方法を用いることができる。研磨方法については、後述する「4.その他の工程」において説明する方法と同様である。
(2)薄板部形成工程
本工程において用いられる接合方法としては、少なくとも薄板部と基材凸部とを強固に接合できる方法であればよく、例えば、固相拡散接合、液相拡散接合等の拡散接合、めっき接合、樹脂等の接着剤による接合、ろう付、溶接、超音波溶着等を用いることができる。
本工程において、薄板部と基材凸部とを拡散接合により接合する場合、拡散接合のための加熱には、真空焼鈍炉、水素炉、電気炉等の熱炉を用いることができる。
また、熱圧着時の条件としては、一般的に金属同士を拡散接合させる際の条件と同様であり、適宜設定することが出来る。
本工程において、薄板部と基材凸部とをめっき接合により接合する場合、薄板部と基材凸部との接触面にめっき層を形成し、上記めっき層が接着層として機能することで薄板部と基材凸部とを接合することができる。平面部上に薄板部を設ける場合においても同様である。
めっき層が形成される位置としては、金属基板表面のうち、基板凸部の頂面を含む少なくとも薄板部と接触する面上であってもよく、薄板部の金属基板と接触する面上であってもよい。薄板部が格子形状である場合は、接合する外周枠の表面および金属基板の表面のうち、少なくとも一方の表面にもめっき層が形成されることが好ましい。
めっき層として用いる材料としては、金、銀、ニッケル等の金属を用いることができる。めっき層の形成の際に、上記金属を水溶液の状態でめっきすることができるからである。
また、めっき層の形成方法としては、例えば上述しためっき材料の金属を含む水溶液を、ディッピング法等を用いてめっきする方法等がある。
なお、上述した拡散接合およびめっき接合以外の接合方法については、一般的に金属同士を接合させる際の条件等を用いることができるため、ここでの記載は省略する。
4.その他の工程
本発明のカード用原版の製造方法は、少なくともレジスト層形成工程、エッチング工程および薄板部形成工程を有するものであるが、その他の工程を有していてもよい。以下、想定されるその他の工程について説明する。
(1)研磨工程
本発明は、上述した薄板部形成工程の後に、研磨液を用いて研磨を行う研磨工程を有していても良い。
本工程を行うことにより、少なくとも隔壁部の頂部を曲面とすることができ、所望の曲率を持たせることができる。また、上述した薄板部形成工程において、基板凸部と薄板部とを接合させる際に生じる位置ずれ部分を平滑にすることや、接合の際に使用した接着剤等のはみ出し部分を除去する等を行うことができる。さらに、本工程を行うことにより、カード用原版の表面を光沢面とすることができ、上記カード用原版を用いて製造されるカードの表面に光沢性を付与することができる。
本工程は、少なくとも隔壁部の頂部および側面に対して行ってもよく、カード用原版の表面全体に対して行ってもよい。また、上述した「3.薄板部形成工程」において平面部上に薄板部が形成される場合、平面部上の薄板部に対しても研磨を行うことが好ましい。
なお、上述した「3.薄板部形成工程」において、予め頂面に曲率を有する薄板部を用いる場合は、隔壁部の頂部が既に曲面を有するものとなっているため、隔壁部の頂部を除いた面に対して本工程を行ってもよい。
本工程で用いられる研磨方法としては、例えば、電解研磨法、化学研磨法、電解と化学研磨を同時に行う複合研磨法、バフ研磨等を用いることができ、中でも電解研磨法を用いることが好ましい。金属基板において研磨を行いたい突起部分を選択的に研磨することができ、表面を平滑化および光沢化させることができるからである。
上記研磨方法を用いて研磨する際に用いられる研磨液は、酸系研磨液が好ましく、例えば、硫酸と過酸化水素を含む水溶液、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩を含む水溶液等が挙げられる。
上述した「3.薄板部形成工程」において、頂面に曲率を有さない薄板部を用いる場合は、隔壁部の頂部が研磨されることが好ましい。隔壁部が研磨される割合としては、当該隔壁部の幅の大きさに対して5%〜50%の範囲内であることが好ましく、中でも5%〜25%の範囲内であることが好ましく、特に5%〜10%の範囲内であることが好ましい。
また、このときの隔壁部の頂部の曲率半径としては、上述した「A.セキュリティカード用転写原版」の項で説明した内容と同様である。
また、本工程においては、レンチキュラーレンズ形成部の外周縁が曲率を有するように研磨されることが好ましい。転写によりカードを製造する際に、カード用原版からカードを剥離し易くなるからである。具体的な曲率半径については、カードからの剥離不良を起こさない程度の大きさであれば特に限定されないが、上述した隔壁部の頂部の曲率半径と同様の大きさとすることが好ましい。
本工程において、カード用原版の表面を研磨することにより、表面の平滑性を高めることが好ましく、中でも光沢面とすることが好ましい。その詳細については、上述した「A.セキュリティカード用転写原版」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)文字図柄転写部形成工程
本発明は、平面部または平面部上に形成される薄板部に文字図柄転写部を形成する文字図柄転写部形成工程を有していても良い。なお、本工程で形成される文字図柄転写部については、上述した「A.セキュリティカード用転写原版 3.平面部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記文字図柄転写部の形成方法としては、平面部の所望の位置に形成できる方法であればよく、例えば、レーザー法、エッチング法等の一般的な方法を用いることができる。中でも本発明においては、エッチング法を用いることが好ましい。その理由は、以下の通りである。
従来、上記文字図柄転写部を転写原版上に形成する場合、基板へ直接レーザー光の照射を行い、文字図柄転写部を形成する方法が用いられている。しかし、上記方法の場合、レーザー光が照射された箇所の照射跡の残存や溶融物の飛散が生じることや、レーザー光の照射により未照射領域も加熱されることで、文字図柄転写部の形状が変形してしまう。
これに対し、本工程においてエッチング法を用いることにより、上記の問題を生じることなく、より精細な文字図柄転写部を形成することが可能となる。また、カードを製造する際に上記文字図柄転写部の形状を損なうことなく転写することができ、転写された文字等が明瞭になる。
本工程は、平面部上の薄板部の有無に応じて、実施のタイミングを適宜選択することができる。すなわち、薄板部形成工程において平面部上にも薄板部が形成される場合は、本工程は、薄板部形成工程後に行うことが好ましい。また、薄板部形成工程において平面部に薄板部が形成されない場合は、本工程はエッチング工程と同時に行ってもよく、薄板部形成工程後に行ってもよい。
(3)その他の工程
本発明におけるその他の工程としては、例えば、金属基板の表面を整面するための酸系水溶液あるいはアルカリ系水溶液による処理工程等を挙げることができる。
5.セキュリティカード用転写原版
本発明により得られるカード用原版については、上述した「A.セキュリティカード用転写原版」の項で説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
C.セキュリティカードの製造方法
次に、本発明のセキュリティカードの製造方法について説明する。本発明のレンチキュラーレンズシートの製造方法は、カード基材と、上記カード基材の一方の表面にシート基材を積層し、上記シート基材の表面にセキュリティカード用転写原版を転写して、複数本が並列に配置された半円柱形レンズと、隣り合う上記半円柱形レンズの間に形成されたレンズ間溝部とを有するレンチキュラーレンズ、および、シート平坦部を含むレンチキュラーレンズシートを形成する転写工程と、上記レンチキュラーレンズにおける上記半円柱形レンズを介して、上記カード基材に異なる少なくとも2方向からレーザー光を照射して、上記半円柱形レンズと平面視上に重なるように上記カード基材に画像部を形成する印字工程と、を有するセキュリティカードの製造方法であって、上記転写工程において使用される上記セキュリティカード用転写原版が、金属基板の一方の表面上に、平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを有し、上記レンチキュラーレンズ形成部が、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う上記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有し、
上記隔壁部が、基板凸部と、上記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有するものであることを特徴とするものである。
本発明のセキュリティカードの製造方法について、図を例示して説明する。図12は本発明のセキュリティカードの製造方法の一例を示す工程図である。また、図13は本発明により得られるセキュリティカードの一例を示す概略平面図である。図13のX−X断面図が、図12(e)に相当する。なお、図13においてX方向を短尺方向、Y方向を長尺方向およびカードの読み取り方向とする。
本発明における転写工程として、まず、上述した「A.セキュリティカード用転写原版」の項で説明したカード用原版10を準備する。なお、図12で例示されるカード用原版10は、薄板部が平面部2上にも設けられた態様のものであるが、使用するカード用原版は当該態様に限定されるものではない。
次に、カード基材11とシート基材12aとをこの順で積層させ(図12(a))、加熱加圧Fをしながら上記シート基材12aに上記カード用原版10を押し当て、レンチキュラーレンズ形成部3および平面部2の形状を上記シート基材12aに転写する(図12(b))。
これにより、レンチキュラーレンズ15およびシート平坦部16を有するレンチキュラーレンズシート12が形成される(図12(c))。上記レンチキュラーレンズ15は、複数本が並列に配置された半円柱形レンズ13、および隣り合う上記半円柱形レンズ13の間に形成されたレンズ間溝部14を有するものである。
次に、印字工程として、カード基材11に対して半円柱形レンズ13を介してレーザー光Z1およびZ2を照射することにより(図12(d))、カード基材11に含有される発色材料を炭化させる。これにより、文字や数字等の異なる画像部17(画像部17aおよび画像部17bを構成要素として含む。)が上記半円柱形レンズ13と平面視上に重なるようにカード基材11に形成され、目的とするセキュリティカード20を製造することができる(図12(e))。
なお、本発明により得られるセキュリティカード20は、観察角度によって視認される画像部が異なるものである。すなわち、観察角度によって画像部17aの画像情報と画像部17bの画像情報とが別々に表示されるものである。
本発明によれば、転写工程において上述の構造を有するカード用原版を用いることにより、当該カード用原版のレンチキュラーレンズ形成部が転写されて、カード表面の所望の位置にレンチキュラーレンズを精度良く形成できるのと同時に、当該カード用原版の平面部が転写されて、高い平滑性を有するシート平坦部を形成することができる。つまり、所望の形状を有するレンチキュラーレンズシートを簡単に一括形成することが可能となる。
また、ICカードや各種証明カード等のセキュリティカードにおいては、通常、その形状、大きさ等が国際規格(例えばISO7816)等で規定されており、高い精度が求められる。これに対し、本発明により一括形成された当該レンチキュラーレンズシートは、厚さの精度が高く、カード全体の厚さの均一化を図ることができる。これにより、上記国際規格等に対応可能な高い寸法精度を有するセキュリティカードを生産性良く製造することができる。
さらに、転写工程において形成される半円柱形レンズは、レーザー光による印字に適した形状を有しており、印字工程においてカード基材に画像部を印字する際に、上記半円柱形レンズと平面視上に重なる位置に正確に画像部を形成することができる。当該半円柱形レンズおよびレンズ間溝部はその寸法精度および配置精度が高いものであることから、得られるセキュリティカードは、観察角度に応じてレンチキュラーレンズを介して異なる画像を明瞭に表示することができる。
このように、本発明により、視認性に優れた高精度のセキュリティカードを、生産性良く製造することが可能となる。
本発明において「観察角度によって視認される画像が異なる」とは、図14に例示されるように、一方の観察角度E1においてはレンチキュラーレンズ15を介してカード基材11に印字された画像部17aの情報(図14(b))のみが画像として視認され、別の観察角度E2においてはレンチキュラーレンズ15を介してカード基材11に印字された画像部17bの情報(図14(c))のみが画像として視認されることをいう。
また、「視認される画像上に線状ノイズ等が出現」するとは、図14で例示されるように、観察角度E1においてレンチキュラーレンズ15を介してカード基材11の画像部17aを視認する際に、画像部17aの画像上に、半円柱形レンズ13の長尺方向に従って線状に画像の薄い部分が生じる現象や、所望の観察角度において表示すべき画像の他に、上記画像の情報以外の画像が複数本の線状ノイズ(図14(d)中のL)等として同時に表示される現象をいう。上記現象が生じることにより、画像部は形状が欠損した不明瞭な像として観察されるため、セキュリティカードの視認性が低下してしまう。
視認される画像上に線状ノイズ等が出現する要因としては、レンズ間溝部の底幅の大きさによるものと考えられる。以下、その理由を説明する。
所定の角度からセキュリティカードを視認する際、カード基材における画像部はレンチキュラーレンズを介して視認される。しかし、レンズ間溝部の底幅が大きい場合、レンズ間溝部の表面の屈折率と上記レンズ間溝部の底幅との関係から、レンズ間溝部を介して上記画像部が形成されていない領域や、レンチキュラーレンズを介して視認させようとしている画像部以外の領域(これらを非画像部領域とする場合がある。)も視認することとなる。このため、観察者は、レンチキュラーレンズを介して視認されるべき画像部の像と、レンズ間溝部を介して視認される非画像部領域とを同時に視認することになる。
このとき、上記非画像部領域は上述のように線状ノイズ等として視認される画像上に出現するため、視認されるべき画像はその形状が損なわれて表示され、不明瞭なものとして視認されてしまうのである。
これに対し、本発明の製造方法を用いることにより、上述の不具合の発生を防止し、視認性の高いセキュリティカードを製造することが可能である。
本発明のセキュリティカードの製造方法は、転写工程および印字工程を少なくとも有するものである。
以下、本発明のセキュリティカードの製造方法について、工程ごとに説明する。
1.転写工程
本発明における転写工程とは、カード基材と、上記カード基材の一方の表面にシート基材を積層し、上記シート基材の表面にセキュリティカード用転写原版を転写して、複数本が並列に配置された半円柱形レンズと、隣り合う上記半円柱形レンズの間に形成されたレンズ間溝部とを有するレンチキュラーレンズ、および、シート平坦部を含むレンチキュラーレンズシートを形成する工程である。
また、本工程において使用されるセキュリティカード用転写原版が、金属基板の一方の表面上に、平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを有し、上記レンチキュラーレンズ形成部が、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う上記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有し、上記隔壁部が、基板凸部と、上記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有するものであることを特徴とするものである。
ここで、「セキュリティカード用転写原版を転写」するとは、カード用原版の平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を有する面(以下、「転写面」と称する場合がある。)を転写することである。
つまり、本工程においてシート基材の表面に当該転写面が転写されることにより、カード用原版の直線状凹曲面部および隔壁部の反転形状である半円柱形レンズおよびレンズ間溝部が形成される。また、上記カード用原版の平面部の反転形状であるシート平坦部も同時に形成される。
(1)セキュリティカード用転写原版
本工程において用いられるカード用原版としては、上述した「A.セキュリティカード用転写原版」の項に記載のカード用原版を用いるものであるため、ここでの説明は省略する。
(2)シート基材
本工程において用いられるシート基材の材料としては、カード用原版の転写面に追従できる柔軟性を有するものが好ましく、加熱により軟化する材料、すなわち熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、シート基材の材料は透明性を有していても良く有さなくても良いが、有することが好ましい。
このような材料としては、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースエステル、フッ化ポリマー、ポリアセタール、ポリオレフィン、アラミド、フッ素樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PLA(ポリ乳酸)等を用いることができ、中でもポリカーボネートを用いることが好ましい。
上記シート基材の大きさとしては目的とするレンチキュラーレンズシートの厚さをその範囲内に含む10μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、中でも30μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、特に50μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
シート基材の厚さが上記範囲よりも大きいと、後述する印字工程においてレーザー光がカード基材の所望の位置まで届かず、画像部を形成できない場合がある。また、国際規格等により規定されるカードの厚さを超えてしまう場合がある。一方、上記範囲よりも小さいと、転写の際にシート基材上にレンチキュラーレンズおよびシート平坦部を精度良く形成できない場合や、カードの強度が得られない場合がある。
また、上記シート基材の大きさとしては、所望のセキュリティカードの大きさに応じて適宜選択することができ、例えば、20cm×20cm〜60cm×60cmの範囲内の大きさであることが好ましい。
(3)カード基材
本工程においてカード基材の材料としては、一般的なセキュリティカード用のカード基材として用いられる樹脂材料を挙げることができる。なお、上記カード基材に用いられる材料は透明性を有するものであってもよく、有しないものであってもよい。
このような材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アラミド、ポリイミド、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PLA(ポリ乳酸)等を用いることができる。中でも、ポリカーボネートが好ましい。
また、上記カード基材は発色材料を含むものである。発色材料を含むことにより、後述する印字工程においてレーザー光を照射して上記カード基材に画像部を形成することができるからである。
上記発色材料としては、レーザー光を吸収する材料であればよく、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄、雲母等を用いることができ、中でもカーボンブラックが好ましい。カード基材中の発色材料の含有量は、適宜設定されるものである。
本発明におけるカード基材の厚さは、50μm〜800μmの範囲内であることが好ましく、中でも300μm〜700μmの範囲内であることが好ましい。
カード基材の厚さが上記範囲よりも大きいと、国際規格等により規定されるカードの厚さを超えてしまう場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと、カードの強度が得られない場合がある。
上記カード基材の大きさとしては、所望のセキュリティカードの大きさに応じて適宜選択することができ、少なくとも上述したシート基材以上の大きさであることが好ましく、中でも、上述したシート基材と同じ大きさであることが好ましい。
(4)転写工程
本工程における転写方法としては、シート基材に上述したカード用原版の転写面を転写できる方法であれば良く、例えば、シート基材の表面に上述したカード用原版を押し当てて加熱および加圧し、上記シート基材の材料である熱可塑性樹脂を軟化させて上記転写面の凹凸形状に追従させる方法が挙げられる。
本工程における加熱条件としては、カード用原版の転写面に追従できる程度にシート基材の材料を軟化させることができる温度であれば特に限定されるものではなく、例えば200℃程度が好ましい。また、加熱時間としては、加圧条件および加熱条件によって適宜設定することができる。
本工程における加圧条件としては、カード用原版表面の転写面を十分に転写できる圧力であれば特に限定されるものではなく、シート基材の厚さ等に応じて適宜設定することができる。
本工程では、熱転写後に冷却処理を行うことが好ましい。冷却方法としては、カード用原版を押し当てた状態で全体を冷却する方法が好ましく、例えば、加熱および加圧環境下で放冷する方法や、冷風を当て冷却する方法等を用いることができる。
本工程における冷却時間としては、特に限定されるものではないが、短時間で急冷すると、シート基材とカード用原版との熱収縮率が異なるため、得られるレンチキュラーレンズシートが所望の形状とならない場合や、表面の平滑性が損なわれる場合がある。
なお、上述のカード用原版が平面部に文字図柄転写部を有する場合は、本工程により上記平面部および文字図柄転写部が同時に転写されて、シート平坦部上に文字図柄部が転写形成されることが好ましい。
(5)レンチキュラーレンズシート
本工程により、シート基材上にシート平坦部およびレンチキュラーレンズを有するレンチキュラーレンズシートが形成される。なお、上記レンチキュラーレンズシートの厚さは、通常、上述したシート基材の厚さと同じである。
以下、本工程により形成されるレンチキュラーレンズシートの各部位について説明する。
(a)レンチキュラーレンズ
本工程において形成されるレンチキュラーレンズは、複数本が並列に配置された半円柱形レンズ、および隣り合う上記半円柱形レンズの間に形成されたレンズ間溝部を有するものである。
(i)半円柱形レンズ
本工程において形成される半円柱形レンズは、上述のカード用原版における直線状凹曲面部の反転形状と同様の形状を有すものであり、「A.セキュリティカード用転写原版 2.レンチキュラーレンズ形成部 (2)直線状凹曲面部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの記載は省略する。
なお、半円柱形レンズのレンズ厚は、直線状凹曲面部の深さに相当し、半円柱形レンズの最頂点からレンズ間溝部の最下点までの長さ(図12(c)におけるY3で示される部分)をいう。また、半円柱形レンズの幅は、直線状凹曲面部の幅に相当し、図12(c)においてX4で示される部分をいう。さらに、半円柱形レンズの頂部の曲率半径は、直線状凹曲面部の底部の曲率半径と同様であり、図12(c)においてR3で示される部分である。
(ii)レンズ間溝部
本工程において形成されるレンズ間溝部は、上述のカード用原版における隔壁部の反転形状と同様の形状を有すものであり、「A.セキュリティカード用転写原版 2.レンチキュラーレンズ形成部 (1)隔壁部」の項で説明した内容と同様である。
なお、上記レンズ間溝部の底幅とは、隔壁部の幅に相当し、図12(c)においてX5で示される部分である。なお、レンズ間溝部の底部が曲率を有する場合の当該底幅とは、「A.セキュリティカード用転写原版 2.レンチキュラーレンズ形成部 (1)隔壁部」の項で説明した方法により特定される部分である。
また、上記レンズ間溝部の底部が曲面である場合、上記レンズ間溝部の曲率半径とは、隔壁部の頂部の曲率半径に相当し、図12(c)においてR4で示される部分である。
さらに、上記レンズ間溝部の深さとしては、上述した半円柱形レンズのレンズ厚と同じである。
(iii)レンチキュラーレンズ
上記レンチキュラーレンズにおいて配置される半円柱形レンズのピッチ幅は、上述した「A.セキュリティカード用転写原版」の項で説明した直線状凹曲面部のピッチ幅と同様である。なお、半円柱形レンズのピッチ幅とは、隣接する半円柱形レンズの中心間の長さ(図12(c)においてX6で示される部分)をいう。
また、上記レンチキュラーレンズの高さおよび曲率半径は、上述した半円柱形レンズのレンズ厚および曲率半径に相当するため、ここでの説明は省略する。
上記レンチキュラーレンズの単位あたりの半円柱形レンズの本数は、上述のカード用原版における直線状凹曲面部の本数により決まるものである。また、上記レンチキュラーレンズの大きさは、上述のカード用原版のレンチキュラーレンズ形成部と同様の大きさとなるものである。
(b)シート平坦部
本工程により形成されるシート平坦部は、レンズキュラーレンズシート上の、レンチキュラーレンズが形成されていない領域である。カード基材と接する面からシート平坦部の表面までの高さと、カード基材と接する面からレンズ間溝部の底部の最下点までの高さとが同じであることが好ましい。
上記シート平坦部は文字図柄部を有していても良い。セキュリティカードにおいて、レンチキュラーレンズを介して表示される画像部の情報とは異なる情報を有することができ、カードのセキュリティ性や意匠性を向上させることが可能となるからである。
なお、文字図柄部は、上述した「A.セキュリティカード用転写原版 3.平面部」の項で説明した文字図柄転写部が転写されたものである。
2.印字工程
本発明における印字工程とは、上記レンチキュラーレンズにおける上記半円柱形レンズを介して、上記カード基材に異なる少なくとも2方向からレーザー光を照射して、上記半円柱形レンズと平面視上に重なるように上記カード基材に画像部を形成するものである。
なお、画像部とは、文字、図形、記号、絵柄等の情報を有するものである。
本工程において使用されるレーザー光の種類としては、カード基材に含有される発色材料により吸収されるものであれば良く、例えばガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等の波長700nm〜1300nmの赤外線を発する光源を挙げることができる。
なお、レーザー光の照射角度や照射時間等の条件については、所望の画像が描画できるように適宜設定することができる。
本工程において、カード基材に画像部が形成される位置は、上述した半円柱形レンズと平面視上に重なる位置であれば特に限定されるものではない。通常、カード基材において、シート基材と接する側の表面上であるが、上記シート基材と接する面の対向面上であっても良く、上記カード基材の内部に形成されても良い。
また、1つの半円柱形レンズの下に位置する画像部は、通常2種類の異なる画像情報で構成されるが、2種類以上有していても良い。画像部の大きさとしては、半円柱形レンズに覆われた領域を超えない大きさであることが好ましい。
3.その他の工程
本発明のセキュリティカードの製造方法は、上述した転写工程および印字工程を少なくとも有するものであるが、必要に応じてその他の工程を有するものであってもよい。
4.セキュリティカード
本発明により得られるセキュリティカードは、図13で例示されるように、カード基材11と、カード基材11の一側に積層されたレンチキュラーレンズシート12とを有するものである。また、レンチキュラーレンズシート12上には、シート平坦部16およびレンチキュラーレンズ15が形成され、レンチキュラーレンズ15が、複数本が並列に配置された半円柱形レンズ13と、隣り合う上記半円柱形レンズ13の間に形成されたレンズ間溝部14とを有するものである。さらに、半円柱形レンズ13と平面視上に重なるように、カード基材11に画像部(図示せず)が形成されており、観察角度に応じて、上記レンチキュラーレンズ15を介して異なる画像が表示されるものである。
本発明により得られるセキュリティカードは、カード基材に印字された画像部上に半円柱形レンズから構成されるレンチキュラーレンズが配置されることにより、レンチキュラーレンズを介してカード基材の有する画像を観察する際に、観察角度によって視認される画像部を異なるものとすることができ、視認性に優れたセキュリティカードとすることができる。
上記セキュリティカードにおけるレンチキュラーレンズシートについては、上述した「1.転写工程」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
なお、当該レンチキュラーレンズシートは、シート平坦部に文字図柄部を有するものであってもよい。
上記セキュリティカードにおけるカード基材等については、上述した「1.転写工程」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、上記カード基材は画像部を有するものである。上記画像部については、上述した「2.印字工程」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明により得られるセキュリティカードにおいて、半円柱形レンズの長尺方向は、当該セキュリティカードをカードリーダーの読み取り方向と同じ方向であることが好ましい。カードをカードリーダーに通す際に、上記レンチキュラーレンズの部分が障害となりカードリーダーに通すことができず、磁気情報が読み取れない場合があるからである。
また、上記セキュリティカードは、レンチキュラーレンズシートがカード基材の表面の一部に形成されるものであってもよく、カード基材の表面全面に形成されるものであってもよい。
上記セキュリティカードにおいて、レンチキュラーレンズが形成されている領域の占める割合としては、カードの大きさ等によって適宜設定されるものであるが、セキュリティカードの全体面積を100%としたときに1〜30%程度の割合を占めることが好ましい。
また、本発明により得られるセキュリティカードは、上述したカード基材およびレンチキュラーレンズシートを少なくとも有するものであるが、必要に応じて、磁気シート、染料インク印刷層、顔料インク印刷層、ICチップ、透明カバー層等を有していても良い。
なお、本発明により得られるセキュリティカードの大きさとしては、用途に応じて適宜設定できる。
本発明により得られるセキュリティカードの用途としては、視認性および偽造防止性が求められる分野に用いることが好ましく、例えば、クレジットカード等の個人情報管理カード、政府文書等の機密性を要する情報媒体に用いることが可能である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(セキュリティカード用転写原版の製造)
<レジスト層形成工程>
カード用原版に使用する金属基板として、板厚0.5mm、300mm角サイズの圧延材料であるSUS304材を準備した。上記金属基板の一方の表面を、アルカリ脱脂(NaOH水溶液5%、60℃)、硫酸電解(硫酸水溶液5%、常温、電流密度dk=3)、塩酸ディップ(塩酸水溶液10%、常温)により整面処理を行った。
次に、整面処理を行った金属基板の表面に、ドライフィルムレジストをロールプレス方式によるラミネートを行い、15μm程度の厚さを有するフォトレジスト層を形成した。
この際、ロール表面は100℃に加温し、ニップ圧は4kg/cmとした。
次に、平行光露光機を使い、マスクを介して紫外線照射によるパターン露光を行った後、40℃の温水で現像を行い、フォトレジスト層をパターン形成した。
上記マスクについては、上述した金属基板のサイズ内でレンチキュラーレンズを形成するために、カード1枚当たりに、85mm×50mm程度の外形を有するデザインを具備し、且つ、そのカード内に縦および横のサイズが各々20mm程度となる矩形のレンチキュラーレンズ形成部を、得られるセキュリティカードにおいてレンチキュラーレンズを左下部に配置できるように具備した。なお、レンチキュラーレンズ形成部以外の領域は平面部とした。
<エッチング工程>
当該パターニング面に対して、フォトレジスト層をパターン形成した後、エッチングを行うことにより、直線状凹曲面部および基板凸部を形成した。
<検証>
上記マスクによる直線状凹曲面部および基板凸部の設計については、上述のようにコーティングされたレジスト層の解像度およびエッチング条件等に依存するため、マスクのパターンのみでは直線状凹曲面部等の形状は決まらない。このため、最終的に得られたエッチング後の形状で、マスクのパターン形状およびエッチング条件の検証を行った。
エッチング後の形状としては、基板凸部の頂部の幅、直線状凹曲面部の幅、深さ、ピッチ幅および底部の曲率半径の大きさが、加工形状として主に制御できるものと想定して加工した。検証の結果、上記基板凸部の頂部の幅5μm〜40μmの範囲に対して、5μmごとに段階的に変えた形状が得られた。
また、直線状凹部曲面部の形状については、浸漬時間やスプレー噴射圧力などのエッチング条件によって、10μmごとに段階的に変えた形状が得られた。
<薄板部形成工程>
金属基板と同材料であるSUS304材に対し、フォトリソグラフィによるパターニングを行い、エッチングすることで、貫通孔を有する基板状の薄板部を形成した。当該貫通孔は、薄板部を金属基板上に配置した際に、直線状凹曲面部上に位置する様に形成し、その長尺方向および短尺方向の長さ、本数については、直線状凹曲面部の形状、本数と同様とした。
次に上記薄板部に対し電解研磨を行い、基板凸部上に位置する部分の頂部を曲面とした。
続いて、拡散接合法により、当該薄板部と基板凸部の頂面および平面部とを接合させた。
上述の一連の工程を経て、本発明のカード用原版を得た。
[実施例2]
(セキュリティカードの製造)
<転写工程>
カーボンブラックを含有したカード基材(厚さ50μm〜100μm)と、ポリカーボネートを主成分としたシート基材(厚さ50μm〜100μm)との積層体を予め準備した。
実施例1により得られたカード用原版を平面プレス機に装着し、当該積層体に対して200℃で20分、1kg/cmでプレスを行った後、30分程度冷却を行い、シート基材が硬化する温度まで低下させた。
冷却後、平面プレス機を開放し、上記シート基材からカード用原版を剥離させた。この実施により、上述のシート基材上に上記カード用原版の転写面が転写され、シート平坦部と、複数本が並列に配置された半円柱形レンズおよびレンズ間溝部から成るレンチキュラーレンズと、を有するレンチキュラーレンズシートを形成することができた。
<印字工程>
続いて、各半円柱形レンズに対してYAGレーザー照射を行い、半円柱形レンズと平面視上に重なるように画像部の印字を行った。この実施により、カード基材上に画像部を形成することができ、観察角度に応じて視認画像の異なる目的のセキュリティカードを得ることができた。
1 … 金属基板
2 … 平面部
3 … レンチキュラーレンズ形成部
4 … 直線状凹曲面部
5 … 隔壁部
6 … 基板凸部
7 … 薄板部
10 … セキュリティカード用転写原版(カード用原版)
11 … カード基材
12 … レンチキュラーレンズシート
13 … 半円柱形レンズ
14 … レンズ間溝部
15 … レンチキュラーレンズ
16 … シート平坦部
20 … セキュリティカード

Claims (7)

  1. 金属基板の一方の表面上に、平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを有し、
    前記レンチキュラーレンズ形成部が、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う前記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有し、
    前記隔壁部が、基板凸部と、前記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有することを特徴とするセキュリティカード用転写原版。
  2. 前記薄板部が、前記基板凸部と同一の金属により形成されることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティカード用転写原版。
  3. 前記隔壁部の頂部が曲率を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセキュリティカード用転写原版。
  4. 金属基板の一方の表面上に、平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを有し、
    前記レンチキュラーレンズ形成部が、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う前記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有し、
    前記隔壁部が、基板凸部と、前記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有するセキュリティカード用転写原版の製造方法であって、
    前記金属基板上に直線状の開口部を有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、
    前記レジスト層を介して前記金属基板をエッチングし、前記レジスト層を剥離することより、前記金属基板上に前記直線状凹曲面部および前記基板凸部を形成するエッチング工程と、
    少なくとも前記基板凸部の頂部に前記薄板部を接合し、前記隔壁部を形成する薄板部形成工程と、
    を有することを特徴とするセキュリティカード用転写原版の製造方法。
  5. 前記薄板部形成工程では、前記薄板部の材料が、前記基板凸部と同一の金属であることを特徴とする請求項4に記載のセキュリティカード用転写原版の製造方法。
  6. カード基材と、前記カード基材の一方の表面にシート基材を積層し、
    前記シート基材の表面にセキュリティカード用転写原版を転写して、複数本が並列に配置された半円柱形レンズと、隣り合う前記半円柱形レンズの間に形成されたレンズ間溝部とを有するレンチキュラーレンズ、および、シート平坦部を含むレンチキュラーレンズシートを形成する転写工程と、
    前記レンチキュラーレンズにおける前記半円柱形レンズを介して、前記カード基材に異なる少なくとも2方向からレーザー光を照射して、前記半円柱形レンズと平面視上に重なるように前記カード基材に画像部を形成する印字工程と、を有するセキュリティカードの製造方法であって、
    前記転写工程において使用される前記セキュリティカード用転写原版が、金属基板の一方の表面上に、平面部とレンチキュラーレンズ形成部とを有し、
    前記レンチキュラーレンズ形成部が、複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う前記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有し、
    前記隔壁部が、基板凸部と、前記基板凸部の頂部に形成された薄板部とを有するものであることを特徴とするセキュリティカードの製造方法。
  7. 前記転写工程により、前記レンズ間溝部の底部が曲率を有する形状となることを特徴とする請求項6に記載のセキュリティカードの製造方法。
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