JP2015024581A - セキュリティカード用マスター転写原版の製造方法、セキュリティカード用転写原版の製造方法、セキュリティカードの製造方法、およびセキュリティカード用マスター転写原版 - Google Patents

セキュリティカード用マスター転写原版の製造方法、セキュリティカード用転写原版の製造方法、セキュリティカードの製造方法、およびセキュリティカード用マスター転写原版 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に製造することが可能なセキュリティカード用マスター転写原版の製造方法等の提供を主目的とする。
【解決手段】金属基板の一側に基板平面部および転写形状部を有し、上記転写形状部が、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う上記曲面凸部の間に設けられた凹部と、を有するセキュリティカード用マスター転写原版の製造方法であって、金属基板材料の一側をエッチングして、上記転写形状部においてストライプ状に設けられた複数の凸部および上記凸部の間の凹部、並びに上記基板平面部を形成するエッチング工程と、上記凸部の頂部を研磨して、頂部に曲面を有する上記曲面凸部を形成する研磨工程と、を有することを特徴とするセキュリティカード用マスター転写原版の製造方法を提供することにより、上記目的を達成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に製造することが可能なセキュリティカード用マスター転写原版の製造方法等に関する。
身分証明証や各種会員証、クレジットカード等のセキュリティカード(以下、「カード」と略する場合がある。)において、カードの所有者とカード使用者との同一性を確認する、いわゆる個人識別機能として、カード表面に所有者の個人情報や写真等の画像が表示されたものが一般的に用いられている。また、近年では、これらの画像が改ざんおよび偽造されることを防止するために、画像表面に偽造防止機能を付与したセキュリティカードが用いられている。
偽造防止機能を付与する方法としては、例えば、セキュリティカードのカード基材上にレンチキュラーレンズを設ける方法がある。レンチキュラーレンズとは、断面が凸レンズ状であり側面が略半円柱の直線形状のレンズ(以下、「半円柱形レンズ」と称する。)の複数本が、平行で等間隔に配置された形状を有するものであり、凸レンズ状の断面を有する方向にのみにレンズの集光機能を有するものである。セキュリティカードにおいては、表示される個人情報等の画像上にレンチキュラーレンズを設けることにより、特定の観察角度からレンチキュラーレンズを介してカードを観察する際に、カード基材に有する画像部から観察角度に応じて表示される画像を選択して目視させることができるため、視認性の高いカードとすることができる(特許文献1〜3)。
上述のようなセキュリティカードの製造においては、多品種小ロットに対応可能な安価で簡単且つ精度の良い転写原版の使用が求められている。
従来、レンチキュラーレンズの転写原版の製造方法としては、MEMSやエレクトロフォーミング(EF)、金属切削等による方法が用いられている。しかし、これらの製造方法は高精度のレンチキュラーレンズの大判転写原版の製造には好適であるが、安価かつ簡単な方法ではないため、多品種小ロット用の小判転写原版の製造には適していないとされる。
一方、多品種小ロット用途でのレンチキュラーレンズの転写原版の製造方法としては、レーザー光照射より基板に直接描画する方法(以下、「レーザー法」と称する場合がある。)がある。しかし、この方法では、レーザー光の照射部分において溶融された基板材料等が飛散して転写原版の表面の平滑性が損なわれる場合があり、また、レーザー光の照射熱により転写原版の全域が加熱されるため、欠損や変形等が生じる場合がある。そのため、レーザー法により製造された転写原版を用いてカードを製造する場合、得られるカード表面にはレンズ形状やレンズ厚の異なるレンチキュラーレンズが形成され、上記レンチキュラーレンズを介してカード上の画像を視認すると、形状が損なわれた不鮮明な画像が出現するため、視認性の低いものとなる場合があった。
このように、安価で簡単且つ精度良くレンチキュラーレンズ付きのセキュリティカードを製造することが可能な転写原版の製造方法については知られていなかった。
特開平9−311204号公報 特開2000−298319号公報 特開2008−77711号公報
これに対し、本発明者は、セキュリティカード用転写原版(以下、カード用原版と略する場合がある。)の製造方法として、ストライプ状に配置された複数の開口部を有するレジスト層を金属基板上に設け、上記レジスト層を介してエッチングを行うことにより、上記金属基板の表面に直接レンチキュラーレンズの反転形状を形成する方法を見出している。
この方法は、エッチングにより上記開口部の配置に合わせて、半円柱形レンズの反転形状となる半円柱形レンズ形成部、および、隣り合う上記半円柱形レンズの間の溝部(以下、「レンズ間溝部」と称する場合がある。)の反転形状となるレンズ間溝部形成部を形成するものであり、従来よりも安価で簡単にカード用原版を製造することができる。また、溶融物の飛散による表面平滑性の低下、転写面の変形および欠損等の不具合が生じにくく、精度の良いカード用原版を製造することができるため、レンチキュラーレンズ付きのセキュリティカードを安価で簡単に精度良く製造することが可能となる。
しかし、上述の製造方法の場合、レジスト層の開口部から露出する金属基板をエッチング液に浸漬させてエッチングする際に、エッチング液が上記金属基板の面方向に拡散するが、ある一定の領域まで達すると面方向への拡散が止まり、金属基板の厚さ方向へエッチングが進むといった現象が生じる。
このような現象により、形成される半円柱形レンズ形成部は、その形状に制約を有するものとなる。すなわち、半円柱形レンズ形成部の底部の曲率(以下、「半円柱形レンズ形成部の曲率」と略する場合がある。)を小さいものとするためにエッチングの程度を小さくすると、当該半円柱形レンズ形成部の深さは所望の深さよりも小さくなる場合がある。一方、上記半円柱形レンズ形成部の曲率を大きいものとするためにエッチングの程度を大きくすると、当該半円柱形レンズ形成部の深さは所望の深さよりも大きくなる場合がある。
上述の製造方法により得たカード用原版を用いてセキュリティカードを製造すると、転写形成された半円柱形レンズ、および当該半円柱形レンズにより構成されるレンチキュラーレンズは、所望の曲率およびレンズ厚を持たないものとなる場合がある。このため、レンチキュラーレンズを介してレーザー光照射を行いカード上に画像を印字する際に、レーザー光が所望の位置に照射されず、明瞭に印字されない等の不具合が生じる場合や、得られるセキュリティカードの視認性が低下する場合がある。
したがって、上述のカード用原版の製造方法では、エッチングにより形成可能な半円柱形レンズ形成部の曲率および深さがある程度の範囲内に限定されるため、結果としてカード上に形成されるレンチキュラーレンズの曲率およびレンズ厚についても、設計の自由度が低下するという問題がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に製造することが可能なセキュリティカード用マスター転写原版(以下、マスター原版と略する場合がある。)の製造方法、カード用原版の製造方法、セキュリティカードの製造方法、およびマスター原版を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、金属基板の一側に基板平面部および転写形状部を有し、上記転写形状部が、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う上記曲面凸部の間に設けられた凹部と、を有するセキュリティカード用マスター転写原版の製造方法であって、金属基板材料の一側をエッチングして、上記転写形状部においてストライプ状に設けられた複数の凸部および上記凸部の間の凹部、並びに上記基板平面部を形成するエッチング工程と、上記凸部の頂部を研磨して、頂部に曲面を有する上記曲面凸部を形成する研磨工程と、を有することを特徴とするセキュリティカード用マスター転写原版の製造方法を提供する。
本発明によれば、エッチング工程により凸部が所望の高さとなるように金属基板材料上に凸部および凹部を形成し、研磨工程により上記凸部の頂部を曲面にした曲面凸部を形成することにより、上記曲面凸部の頂部の曲率および高さが自由に設計されたマスター原版を製造することができる。
これにより、上記マスター原版を用いて、従来の製造方法では製法上設計が困難な寸法形状を有する半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部を備えたカード用原版を製造することができる。また、上記マスター原版により得られるカード用原版を基にセキュリティカードを製造する場合、曲面凸部および凹部の形状により最終的に形成されるレンチキュラーレンズの形状が決まるため、上記レンチキュラーレンズの曲率およびレンズ厚についても設計の自由度を向上させることができる。
上記発明においては、上記エッチング工程において、上記凹部が底部に曲面を有するように形成されることが好ましい。マスター原版における凹部は、上記マスター原版を基にセキュリティカードを製造した際に、レンチキュラーレンズにおけるレンズ間溝部の形状となる部位である。つまり、上記凹部の底部が曲面を有することにより、上記レンズ間溝部の底部も曲面を有する形状となる。そのため、所定の角度からレンチキュラーレンズを介してカード上の画像部を視認する際に、上記レンズ間溝部の底部で反射強調されることにより白く曇る現象、および表示すべき画像以外の不要な画像が線状に出現する現象等(以下、これらの現象を総じて「線状ノイズ」と称する場合がある。)の発生を防止し、視認画像が損なわれないようにすることができるからである。
上記発明においては、上記エッチング工程において、上記凸部の頂部から上記凹部の底部までの高さが、上記凸部の頂部から上記基板平面部までの高さ以下であることが好ましい。上記マスター原版により得られるカード用原版を基にセキュリティカードを製造する際に、加圧によりカード表面が上記カード用原版の転写面、特に半円柱形レンズ形成部の形状に追従しやすくなり、高精細なレンチキュラーレンズを転写形成することができるからである。また、このときに得られるセキュリティカードは、レンチキュラーレンズのレンズ厚が画像表示に適した大きさを有しつつ、他の部位の厚さは薄いものとなるため、高い視認性を有することができるからである。
上記発明においては、上記エッチング工程において、上記基板平面部に文字図柄刻印部が形成されることが好ましい。文字図柄刻印部もエッチングにより形成することにより、レーザー法等を用いる場合と比較して、文字、記号、図柄等の画像情報を精細に刻印することが可能となるからである。また、本発明により得られるマスター原版を基にセキュリティカードを製造する際に、上記文字図柄刻印部の形状が損なわれずにカード表面に転写されるため、文字図柄刻印部の画像情報が視認しやすくなるからである。
また、本発明は、基板の一側に平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を有し、上記レンチキュラーレンズ形成部が、ストライプ状に設けられて底部に曲面を有する複数の半円柱形レンズ形成部と、隣り合う上記半円柱形レンズ形成部の間に設けられたレンズ間溝部形成部と、を有するセキュリティカード用転写原版の製造方法であって、金属基板の一側に基板平面部および転写形状部を有し、上記転写形状部が、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う上記曲面凸部の間に設けられた凹部と、を有するセキュリティカード用マスター転写原版を使用し、上記セキュリティカード用マスター転写原版の上記転写形状部を有する面に、下地層および無電解めっき層がこの順に積層されためっき層を形成するめっき工程と、上記セキュリティカード用マスター転写原版から上記めっき層を剥離して、上記曲面凸部および上記凹部を含む上記転写形成部、並びに上記基板平面部の反転形状である、上記半円柱形レンズ形成部および上記レンズ間溝部形成部を含む上記レンチキュラーレンズ形成部、並びに上記平面部が形成された上記セキュリティカード用転写原版を得る剥離工程と、を有することを特徴とするセキュリティカード用転写原版の製造方法を提供する。
本発明によれば、曲率および高さが調整された曲面凸部と凹部とが形成された転写形状部を有するマスター原版において、上記転写形状部を有する表面にめっき層を形成することにより、上記めっき層を、上記転写形状部の反転形状であるレンチキュラーレンズ形成部が転写形成されたカード用原版とすることができる。これにより、上記レンチキュラーレンズ形成部についても、半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部の形状設計の自由度を向上させることができる。また、本発明により、同一形状の新しいカード用原版を安価で簡易的に繰り返し複製することが可能となる。
上記発明においては、上記剥離工程後に、上記下地層を除去する下地層除去工程と、上記下地層除去工程後に、上記無電解めっき層を硬化させる加熱工程と、を有することが好ましい。下地層除去工程により下地層を除去し、無電解めっき層を最外層として露出させることで、加熱工程において上記無電解めっき層を加熱硬化させて硬度の高い耐久性に優れたカード用原版を形成することができるからである。
また、本発明は、画像部を有するカード基材と、上記カード基材の一側に配置されるレンチキュラーレンズシートとを有し、上記レンチキュラーレンズシートが、シート平坦部およびレンチキュラーレンズを有し、上記レンチキュラーレンズが、ストライプ状に設けられた複数の半円柱形レンズ、および隣り合う上記半円柱形レンズの間に形成されたレンズ間溝部を少なくとも有するものであり、上記レンチキュラーレンズと上記画像部とが平面視上に重なって配置されるセキュリティカードの製造方法であって、上記カード基材の一側にシート基材を積層する準備工程と、上記シート基材の上記カード基材との接触面と反対側の面に上述のセキュリティカード用転写原版の製造方法により得られたセキュリティカード用転写原版を転写して、上記セキュリティカード用転写原版の半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部を含むレンチキュラーレンズ形成部、並びに平面部の反転形状である、上記半円柱形レンズおよび上記レンズ間溝部を含む上記レンチキュラーレンズ、ならびに上記シート平坦部と、を有する上記レンチキュラーレンズシートを形成する転写工程と、を有することを特徴とするセキュリティカードの製造方法を提供する。
本発明によれば、上述の製造方法により得られたカード用原版を用いることにより、転写工程において、シート基材の所望の位置にレンチキュラーレンズを精度良く簡単に形成すると同時に、高い平滑性を有するシート平坦部を形成することができる。これにより所望の形状を有するレンチキュラーレンズシートを一括形成することが可能となる。
また、レンチキュラーレンズシートの厚さを精度の高いものとすることができるため、カード全体の厚さの均一化を図ることができ、寸法精度の高いセキュリティカードを生産性良く製造することができる。
さらに、転写工程において、寸法精度および配置精度が高いレンチキュラーレンズが形成されるため、レンチキュラーレンズを介して画像部を観察する際に、観察角度に応じて画像部の異なる情報を明瞭に表示することができる。
つまり、寸法精度が高く、視認性に優れたセキュリティカードを容易かつ安価に製造することが可能となる。
上記発明においては、上記転写工程により、上記レンズ間溝部の底部が曲面を有する形状となることが好ましい。レンズ間溝部の底部が曲面を有することにより、レンチキュラーレンズを介して視認される画像上に線状ノイズ等が出現することを防止し、視認性に優れたセキュリティカードを製造することができるからである。
上記発明においては、上記転写工程により形成された上記レンチキュラーレンズを介して、上記カード基材に異なる少なくとも2方向からレーザー光を照射して、上記カード基材の上記レンチキュラーレンズと平面視上に重なる位置に上記画像部を形成する印字工程を有することが好ましい。転写工程において寸法精度および配置精度が高いレンチキュラーレンズが形成されるため、レンチキュラーレンズと平面視上に重なる位置に正確に画像部を印字することができるからである。
また、本発明は、金属基板の一側に基板平面部および転写形状部を有し、上記転写形状部が、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う上記曲面凸部の間に設けられた凹部と、を有することを特徴とする、セキュリティカード用マスター転写原版を提供する。
本発明によれば、曲面凸部および凹部が転写形状部として金属基板上に直接形成されるものであり、上記曲面凸部の頂部の曲率や高さが自由に設計された、安価で簡単且つ精度の良いマスター原版とすることができる。また、本発明のマスター原版の転写形状部および基板平面部の形状を転写することにより、カード用原版の半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部の形状も、簡単に精度良く形成することができる。このため、繰り返しの使用によりカード用原版の形状が劣化した場合であっても、同一形状のカード用原版を安価で簡易的に製造することが可能となる。さらに、上記マスター原版を基に製造されるセキュリティカードにおいても、上記曲面凸部の形状によりレンチキュラーレンズの形状が決まるため、上記レンチキュラーレンズの頂部の曲率およびレンズ厚についても設計の自由度を向上させることができる。
上記発明においては、上記凹部の底部が曲面を有することが好ましい。本発明のマスター原版を基に製造されるセキュリティカードにおいて、視認される画像上に出現する線状ノイズ等をより目立たなくすることができ、視認性に優れたセキュリティカードとなるからである。
上記発明においては、上記基板平面部が文字図柄刻印部を有することが好ましい。上記マスター原版を基に製造されるセキュリティカードにおいて、転写によりレンチキュラーレンズの形状を形成するのと同時に、文字図柄刻印部の画像情報を転写することができるからである。
本発明によれば、エッチング工程により金属基板上に所望の幅および高さとなるように凸部を形成し、研磨工程により上記凸部の頂部が所望の曲率を有する曲面となるように研磨することで、目的とするセキュリティカードおよびレンチキュラーレンズの形状に応じて、曲面凸部の曲率および高さが自由に設計可能なマスター原版を製造することができる。
また、上記マスター原版の転写形状部を有する表面にめっき層を形成および剥離することにより、表面に当該転写形状部の反転形状が転写されたカード用原版を簡単に精度良く形成することができる。
さらに、上述の製造方法により得られたカード用原版を用いることにより、レンチキュラーレンズシート表面の各部位を所望の形状に形成することができるため、視認性に優れたセキュリティカードを、安価で精度良く簡単に製造することができる。
本発明のセキュリティカード用マスター転写原版の製造方法の一例を示す工程図である。 レンチキュラーレンズを介したレーザー光照射による印字について説明するための説明図である。 本発明のセキュリティカード用転写原版の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明のセキュリティカード用転写原版の製造方法における、めっき層の態様の他の例を示す概略断面図である。 本発明のセキュリティカードの製造方法の一例を示す工程図である。 セキュリティカードにおける、観察角度と視認される画像部との関係を表わす説明図である。 本発明のセキュリティカード用マスター転写原版の一例を示す概略斜視図である。 図7のX−X線断面図である。
以下、本発明のマスター原版の製造方法、カード用原版の製造方法、セキュリティカードの製造方法、およびマスター原版について、順に説明する。
A.セキュリティカード用マスター転写原版(マスター原版)の製造方法
まず、本発明のマスター原版の製造方法について説明する。本発明のマスター原版の製造方法は、金属基板の一側に基板平面部および転写形状部を有し、上記転写形状部が、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う上記曲面凸部の間に設けられた凹部と、を有するマスター原版の製造方法であって、金属基板材料の一側をエッチングして、上記転写形状部においてストライプ状に設けられた複数の凸部および上記凸部の間の凹部、並びに上記基板平面部を形成するエッチング工程と、上記凸部の頂部を研磨して、頂部に曲面を有する上記曲面凸部を形成する研磨工程と、を有することを特徴とするものである。
本発明のマスター原版の製造方法について、図を参照して説明する。図1は、本発明のマスター原版の製造方法の一例を示す工程図である。
まず、板状の金属基板材料1aを準備し(図1(a))、上記金属基板材料1aの一側にレジスト膜6aを成膜し、(図1(b))、マスク8を介してレジスト膜6aを露光Lし、さらに現像することにより、(図1(c))、ストライプ状に配置された複数の開口部4aを有するレジスト層6を形成する(図1(d))。
次に、レジスト層6をマスクとして金属基板材料1aにエッチング液を用いてエッチングを行い、レジスト層6を剥離することにより、金属基板1の一側の表面上に基板平面部5、ストライプ状の複数の凸部3a、および上記凸部3aの間の凹部4を形成する(図1(e)、(f))。
その後、凸部3aの頂部を研磨することにより、頂部に曲面を有する曲面凸部3が形成される。これにより、金属基板1上に上記曲面凸部3および上記凹部4を有する転写形状部2および基板平面部5が形成されたマスター原版10を製造することができる(図1(g))。
なお、図1(e)および(f)がエッチング工程、図1(g)が研磨工程である。また、図1(g)において、x方向がマスター原版の短手方向、y方向が厚さ方向である。
偽造防止機能を有し視認性の高いセキュリティカードとして、表面にレンチキュラーレンズを有するセキュリティカードの開発が進められているが、安価で簡単に精度良く当該カードを製造することが可能な転写原版の製造方法については知られていなかった。
これに対し、本発明者は、エッチングにより上記金属基板の表面に直接レンチキュラーレンズの反転形状を形成し、カード用原版を製造する方法を見出している。上記製造方法により、安価で簡単にカード用原版を製造することができ、また、レーザー法等の従来の製造方法と比較して、溶融物の飛散により表面の平滑性が損なわれることや変形や欠損等が生じることが少ないため、高精度のものとすることを可能とした。
また、上述の製造方法により得られるカード用原版は、半円柱形レンズ形成部と、隣り合う上記半円柱形レンズ形成部の間に形成されるレンズ間溝部形成部とを含むレンチキュラーレンズ形成部を有するものとなる。上記カード用原版を用いることにより、上記カード用原版の半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部が転写されて、半円柱形レンズおよびレンズ間溝部を有するレンチキュラーレンズをカード表面上に形成することができるため、安価で簡単に精度の高いセキュリティカードが得られる。
しかし、本発明者は、上述のカード用原版の製造方法においては、エッチングにより形成される半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部の形状に制約があるという問題を見出した。上記問題について、セキュリティカードの製造における問題点と併せて以下に説明する。
まず、セキュリティカードの製造方法の一つとして、カード基材に含まれる発色材料に対し、カード基材表面に付したレンチキュラーレンズを介してレーザー光を多方向から照射することで、上記発色材料を炭化してカード基材に情報等の画像部を印字する方法が用いられる。上記方法により形成されたカードにおいて、上記レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズの頂部の曲率(以下、「半円柱形レンズの曲率」と称する場合がある。)およびレンズ厚によっては、視認する画像部の画像に対して、明瞭に切り替えることができない場合や、視認性等が低下する場合等がある。
図2は、セキュリティカードを製造する際の、半円柱形レンズを介したレーザー光照射による印字方法に関する説明図である。図2(a)で示されるように、例えば、半円柱形レンズ23の曲率が大きい、すなわち曲率半径が小さいと、半円柱形レンズ23を透過したレーザー光Z1およびZ2の焦点Fはカード基材22まで到達せず、半円柱形レンズ23が形成されたシート(以下、レンチキュラーレンズシート21と称する場合がある。)内に焦点Fを有する。このため、カード基材22において印字が行えない場合がある。
このとき、レーザー光の焦点がカード基材に位置するためには、レンチキュラーレンズシートの厚さを薄くする必要があり、レンチキュラーレンズシートの強度が低下する可能性がある。
一方、図2(b)で示されるように、半円柱形レンズ23の曲率が小さい、すなわち曲率半径が大きいと、半円柱形レンズ23を透過したレーザー光Z1およびZ2は、カード基材22を越えた位置で焦点Fを有する。このため、上記カード基材22において印字が行えない場合がある。
このとき、レーザー光の焦点がカード基材に位置するように、レンチキュラーレンズシートの厚さを厚くする方法も考えられるが、レーザー光が届く実際の距離範囲は決まっており、上記焦点Fまで十分にレーザー光が届かない恐れがある。また、焦点距離が大きくなると焦点Fにおけるレーザー光の強度が低下すると推量されるため、カード基材に明瞭な印字を行うことが困難となる場合がある。
このようなカード基材への印字の際に生じる問題は、半円柱形レンズの曲率の大きさに起因するだけでなく、所望の曲率とした際のレンズ厚の大きさにも起因するものである。
半円柱形レンズのレンズ厚が大きいと、半円柱形レンズの頂部からカード基材までの距離が大きくなる。この場合、例えば曲率の大きい半円柱形レンズを用いると、上記半円柱形レンズを透過したレーザー光はさらにカード基材まで到達しにくくなるため、上記カード基材上に焦点を有することが困難となり、印字が行えない可能性がある。
一方、半円柱形レンズのレンズ厚が小さいと、半円柱形レンズの頂部から、カード基材までの距離が小さくなる。この場合、例えば曲率の小さい半円柱形レンズを用いると、半円柱形レンズを透過したレーザー光はさらにカード基材を越えた位置に焦点を有することとなり、カード基材に印字が行えない可能性がある。
上述の理由から、セキュリティカードの製造の際に所定の箇所に画像を明瞭に印字するためには、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズの曲率およびレンズ厚を所望の範囲内となるように設計する必要がある。すなわち、転写に使用するカード用原版の半円柱形レンズ形成部の頂部の曲率およびレンズ厚を規定する必要がある。
しかし、上述したエッチング法によるカード用原版の製造方法においては、レジスト層の開口部から露出する金属基板をエッチング液に浸漬させてエッチングする際に、エッチング液は上記金属基板の面方向に拡散するが、ある一定の領域まで達すると面方向への拡散が止まり、金属基板の厚さ方向にエッチングが進むこととなる。
このため、半円柱形レンズ形成部の頂部を曲率の小さいものとするためにエッチングの程度を少なくすると、所望の深さよりも小さくなる場合があり、一方、曲率の大きいものとするためにエッチングの程度を大きくすると、所望の深さより大きくなる場合がある。
上述の方法により得たカード用原版を用いてセキュリティカードを製造すると、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズが所望の曲率およびレンズ厚を持たないものとなり、レンチキュラーレンズを介してレーザー光による画像の印字を行う際に、上述の理由からレーザー光が所望の位置に焦点を有さず、明瞭に印字することができない場合や、得られるカードの視認性が低下する場合がある。
したがって、上述の方法では、エッチングにより形成できる半円柱形レンズ形成部の頂部の曲率および深さがある程度の範囲内に限定されてしまうため、結果として形成可能なレンチキュラーレンズの曲率およびレンズ厚についても、設計の自由度が低くなるという問題がある。
そこで、本発明者は、上述の構造を有するカード用原版を製造するためのマスター原版の製造方法を見出すことにより、上記問題を解決するに至った。すなわち、本発明では、エッチング工程により金属基板材料上に所望の高さを有する凸部と上記凸部間の凹部を形成し、研磨工程により上記凸部の頂部を研磨して所望の曲率を有する曲面とすることで、上記曲面凸部の曲率および高さが自由に設計されたマスター原版とすることができる。
また、本発明により得られるマスター原版を用いてカード用原版を製造することで、上記マスター原版の曲面凸部および凹部の反転形状が転写されて、半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部を有するレンチキュラーレンズ形状部が形成される。このため、カード用原版の半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部を、従来の製造方法では製法上設計が困難な寸法形状に形成することができる。
さらに、上記マスター原版から製造したカード用原版を用いることで、所望の頂部の曲率およびレンズ厚を有する半円柱形レンズから構成されるレンチキュラーレンズを表面に付したセキュリティカードを製造することができる。つまり、本発明により、上記レンチキュラーレンズの頂部の曲率およびレンズ厚についても自由に設計することが可能となる。
さらにまた、本発明により得られるマスター原版があれば、上記カード用原版を使用する過程において変形等の劣化が生じた場合であっても、同一形状の新しいレプリカを安価で簡易的に複製することが可能となる。そのため、精度の良いセキュリティカードを繰り返し製造することができる。
本発明のマスター原版の製造方法は、エッチング工程および研磨工程を少なくとも有するものである。
以下、本発明のマスター原版の製造方法について、工程ごとに説明する。
1.エッチング工程
本発明におけるエッチング工程について説明する。本発明におけるエッチング工程は、金属基板材料の一側をエッチングして、上記転写形状部においてストライプ状に設けられた複数の凸部および上記凸部の間の凹部、並びに上記基板平面部を形成する工程である。
なお、金属基板材料とは、エッチングにより転写形状部等が形成される前の金属基板のことをいう。
本工程は、エッチングにより、金属基板材料の一側に転写形状部においてストライプ状に設けられた複数の凸部および凹部、並びに基板平面部を形成できる方法であればよく、例えば、金属基板材料の一側に、開口部を有するレジスト層を設け、上記レジスト層をマスクとしてエッチングを行う方法が用いられる。
(1)金属基板材料
本工程で用いられる金属基板材料としては、金属を板状にしたものであれば特に限定されるものではないが、オーステナイトステンレス、フェライトステンレス、マルテンサイトステンレス等のステンレス、鉄、銅、アルミニウム、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、コバルト合金、クロム合金、モリブデン合金、タングステン合金等が好ましく、中でも鉄元素を含むオーステナイトステンレスが好ましい。
オーステナイトステンレスは表面に酸化被膜を形成するため、本発明により得られるマスター原版を後述する「B.セキュリティカード用転写原版の製造方法」において使用する際に、上記酸化皮膜により金属基板の表面に成膜されためっき層を剥離しやすくなるからである。
上記金属基板材料の厚さとしては、所望の転写形状部を形成するのに十分な厚さを有することが好ましく、50μm〜5000μmの範囲内であることが好ましく、中でも100μm〜2500μmの範囲内であることが好ましく、特に150μm〜1250μmの範囲内であることが好ましい。当該厚さが上記範囲よりも大きいと、強度が保持されて扱いやすい反面、フォトリソグラフィによるパターニングを行い、その後エッチングを行う方法を用いる際に、金属基板材料とマスクとを十分に密着できず、安定したレジストパターンを得られない場合がある。一方、上記範囲よりも小さいと、強度が保持されにくいため、本発明により得られるマスター原版を用いて所望のカード用原版を製造する際に、転写により変形等が生じる場合がある。
(2)レジスト層
本工程で用いられるレジスト層の材料としては、感光性を有するものであれば良く、ポジ型でもネガ型でも良い。中でも、液状レジスト、ドライフィルムレジストを用いることが好ましく、特に、ネガ型の液体レジストを用いることが好ましい。本工程において形成される転写形状部が所望の凸部および凹部を有するように、レジスト層の厚さを調整してパターン解像度を向上させることができるからである。
液状レジストおよびドライフィルムレジストとしては、一般的にフォトリソグラフィで用いられるものが挙げられる。なお、レジスト層の材料が液状である場合、金属基板材料上に塗布しレジスト膜を成膜する方法として、スピンコート法、ブレードコート法等の一般的な方法を用いることができる。
上記レジスト層の厚さについては、転写形状部の形状に応じて適宜設定することができる。
また、上記レジスト層は、転写形状部の凹部の位置に応じて開口部を有するものである。上記開口部の大きさ、並列間隔、本数等については、転写形状部の形状に応じて適宜設定することができる。
上記レジスト層の形成方法としては、所望のパターンが形成できる方法であれば特に限定されず、例えば、フォトリソグラフィ法や印刷法を用いることができる。中でも、フォトリソグラフィ法を用いることが好ましい。高いパターン精度でレジスト層を形成することができるからである。なお、レジスト層を成膜する際の露光条件および現像条件については、一般的なフォトリソグラフィにおける条件を用いることができる。
(3)エッチング工程
本工程におけるエッチング方法としては、ウェットエッチングであっても良く、ドライエッチングであっても良いが、中でもウェットエッチングを用いることが好ましい。ウェットエッチングはドライエッチングよりも加工効率が高く、設計形状に対して柔軟に対応することができるからである。
ウェットエッチングの方法としては、レジスト層を成膜した金属基板材料上にエッチング液を塗布する方法でも良く、エッチング液にレジスト層を成膜した金属基板材料を浸漬させる方法でも良い。
上記エッチング液としては、金属基板材料をエッチングできるものであれば良く、金属基板材料の金属に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、金属基板材料がステンレス鋼である場合は、塩化第二銅液、塩化第二鉄液、塩酸−硝酸−リン酸混合液等を用いることが好ましい。なお、エッチングを行う時間は、凸部および凹部を所望の形状とすることが可能な時間であれば良く、形状に応じて適宜調整することができる。
本工程において、レジスト層の剥離方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、剥離液を用いる方法等が挙げられる。具体的には、剥離液に金属基板を浸漬させる方法、剥離液を金属基板に塗布する方法等を用いることができる。
上記剥離液としては、金属基板を溶解せずに、レジスト層のみを溶解することができるものであれば特に限定されるものはなく、レジスト層の材料に応じて適宜選択することができ、その種類としては一般的にレジスト層の剥離に使用されるアルカリ系剥離液を用いる事ができる。
(4)凸部および凹部
本工程において形成される凸部は、後述する研磨工程おいて曲面凸部となる部位であり、後述する「4.セキュリティカード用マスター転写原版」の項において説明する曲面凸部の形状等を形成できる形状であればよい。
また、凹部の形状等に関しては、後述する「4.セキュリティカード用マスター転写原版」の項において詳細に説明するため、ここでの説明は省略する。
本工程においては、上記凹部が底部に曲面を有する様に形成されることが好ましい。上記凹部の底部の曲率半径(以下、凹部の曲率半径とする。)としては、2.5μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、中でも2.5μm〜7.5μmの範囲内であることが好ましく、特に2.5μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
凹部の曲率半径を上記範囲内とすることにより、本発明により得られるマスター原版を基にセキュリティカードを製造した際に、レンチキュラーレンズにおけるレンズ間溝部の底部も同様の曲面を有することができる。このため、所定の角度からレンチキュラーレンズを介してカード上の画像部を観察する際に、表示画像上に線状ノイズ等が発生することを防ぎ、カードの視認性を高めることができるからである。凹部の曲率半径とは、図1(g)において、R1の部分をいう。
なお、レンズ間溝部の形状と表示画像上に出現する線状ノイズとの関係については、後述する「C.セキュリティカードの製造方法」の項で詳細に説明するため、ここでの説明は省略する。
さらに、本工程において、上記凸部の頂部から上記凹部の底部までの高さが、上記凸部の頂部から上記基板平面部までの高さ以下であることが好ましい。すなわち、本発明により得られるマスター原版は、転写形状部等を有する面と対向する面に対して、凹部の底部の位置が基板平面部の位置よりも高いことが好ましい。
当該マスター原版により形成されるカード用原版において、レンズ間溝部形成部が、レンチキュラーレンズ形状部以外の平面領域よりも低いものとなるため、上記カード用原版を用いてセキュリティカードを製造する際に、加熱により軟化されたカード表面が加圧により半円柱形レンズ形成部に追従しやすくなる。このため、高精細なレンチキュラーレンズを転写形成することができる。また、このときに得られるセキュリティカードは、レンチキュラーレンズのレンズ厚が画像表示に適した大きさを有しつつ、他の部位の厚さは薄いものとなるため、高い視認性を有することができる。
(5)基板平面部
上記基板平面部は、金属基板材料の一方の面のうち、凸部および凹部以外の平坦な面である。
本工程においては、基板平面部に文字、記号、図柄等を有する文字図柄刻印部が形成されてもよい。文字図柄刻印部もエッチングにより基板平面部上に形成することにより、レーザー法等を用いる場合に見られる溶融物の飛散、照射熱による上記文字図柄刻印部の変形等を防ぎ、文字、記号、図柄等の画像情報を精細に刻印することが可能となる。また、エッチングにより文字図柄刻印部を形成することにより、後述するカード用原版およびセキュリティカードの製造の際に、上記文字図柄刻印部の形状を損なわずに転写することができ、文字図柄刻印部の画像情報が視認しやすくなる。
なお、上記文字図柄刻印部における画像情報の線幅は、80μm〜500μm程度の大きさであることが好ましい。また、上記文字図柄刻印部の形成位置およびその大きさは、金属基板上の基板平面部の領域内であれば特に限定されるものではなく、その数は一つであっても良く、複数であっても良い。
2.研磨工程
本発明における研磨工程は、凸部の頂部を研磨して、頂部に曲面を有する曲面凸部を形成する工程である。
具体的には、エッチング工程で形成された凸部の頂部を、酸系処理液等を用いて研磨することにより、上記凸部の頂部の角が削られ表面に所望の曲率を有する曲面凸部を形成するものである。
本工程における研磨方法としては、電解研磨法、化学研磨法、電解および化学研磨を同時に行う複合研磨法、バフ研磨法等を用いることができ、中でも電解研磨法または化学研磨法を用いることが好ましく、特に電解研磨法を用いることが好ましい。電解研磨法は他の研磨方法よりも凸部の頂部を選択的に研磨することができ、研磨量を大きくすることができるからである。
電解研磨法に用いられる電解研磨液としては、各種導電塩、pH調整剤を含み、電流密度が任意に設定できるものであれば特に限定されるものではない。導電塩としては、通常使用されている無機化合物もしくは有機化合物が使用できる。また、pH調整剤としては一般的なpH緩衝剤が使用できる。さらに、上記電解研磨液は各種キレート剤を添加しても良い。
本工程における電解研磨の条件としては、金属基板の種類やエッチング工程により形成された凸部の形状に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、硫酸10%水溶液を用い、電流密度を3A/dmとして60秒間導通させることにより、後述する研磨率で凸部を研磨することができる。
本工程において、凸部が研磨される割合(研磨率)としては、上記凸部の頂部の幅の大きさに対して、5%〜50%の範囲内であることが好ましく、中でも5%〜25%の範囲内であることが好ましく、特に5%〜10%の範囲内であることが好ましい。
凸部の頂部の幅に対する研磨率が上記範囲よりも大きいと、凸部の高さが低くなる可能性があり、高さのばらつきを引き起こす場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと、凸部の直角形状が維持されるため、本発明により得られるマスター原版を用いてカード用原版を製造する際に剥離不良が生じる場合がある。
また、本工程において、少なくとも凸部の頂部を研磨できれば良く、凸部を含む金属基板の表面全体を研磨しても良い。凸部を含む金属基板の表面を研磨することにより、表面の平滑性を高めることができるからである。
本工程においては、中でも凸部を含む金属基板の表面全体を研磨し、表面を高平滑面且つ光沢面とすることが好ましい。これによって、カード用原版を本発明により得られるマスター原版を用いて製造する際、剥離がしやすくなるからである。
本工程後のマスター原版の最大表面粗さ(Rz)は、Rz=0.05μm〜1.5μmの範囲内であることが好ましく、中でもRz=0.1μm〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。なお、上記表面粗度は光干渉式の非接触表面粗さ計(バートスキャンR3300H Lite、菱化システム(株)製)を使い、プロファイル範囲を+/−5ミクロンの測定条件とした。
さらに、光沢面の程度としては、#400以上の砥粒で研磨した時の光沢を有することが好ましい。
本工程で形成される曲面凸部については、後述する「4.セキュリティカード用マスター転写原版」の項で説明するため、ここでの説明は省略する。
3.その他の工程
本発明のマスター原版の製造方法は、上述した、エッチング工程および研磨工程を少なくとも有するものであるが、必要に応じて他の工程を有するものであっても良い。他の工程としては、例えば金属基板材料の表面を整面するための酸系水溶液での処理工程、あるいはアルカリ系水溶液での処理工程等を挙げることができる。
4.セキュリティカード用マスター転写原版(マスター原版)
本発明により得られるマスター原版は、金属基板の一側に基板平面部および転写形状部を有し、上記転写形状部が、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う上記曲面凸部の間に設けられた凹部と、を有するものである。なお、上記基板平面部および転写形状部は、上記金属基板の表面が上記基板平面部および転写形状部の形状に成形されてなるものである。
以下、マスター原版の各部位について説明する。
(1)転写形状部
本発明において形成される転写形状部は、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う上記曲面凸部の間に設けられた凹部とを有するものである。
(a)曲面凸部
上記曲面凸部は、頂部に曲面を有するものであり、その曲率半径としては、10μm〜120μmの範囲内であることが好ましく、中でも30μm〜110μmの範囲内であることが好ましい。特に50μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
曲面凸部の曲率半径が上記範囲よりも大きいと、本発明により得られるマスター原版を基にセキュリティカードを製造した際に、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズの曲率半径も大きくなるため、レンチキュラーレンズを介してレーザー印字を行う際に、レーザー光が所望の位置よりも越えて焦点を結び、印字できない場合がある、
一方、曲面凸部の曲率半径が上記範囲よりも小さいと、本発明により得られるマスター原版を基にセキュリティカードを製造した際に、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズの曲率半径が小さくなるため、レンチキュラーレンズを介してレーザー印字を行う際に、レーザー光が所望の位置よりも手前で焦点を結び、印字できない場合がある、
なお、曲面凸部の頂部の曲率半径とは、図1(g)において、R2の部分をいう。
上記曲面凸部の縦断面形状としては、所望の幅や高さ等を有するものであれば特に限定されるものではなく、曲面凸部の頂面に対し、曲面凸部の側面が通常直角を成す形状であるが、曲面凸部の側面が鈍角をなす形状であっても良い。上記曲面凸部の側面が頂面に対し鈍角を成す形状である場合、鈍角の大きさとしては、90度〜135度の範囲が好ましく、中でも95度〜130度の範囲内が好ましく、特に100度〜125度の範囲内が好ましい。曲面凸部の側面が頂面に対して上記範囲内の鈍角を有することにより、本発明により得られるマスター原版を用いてカード用原版を製造する際に、剥離しやすくなるからであり、また、上記カード用原版を用いてセキュリティカードを製造する際においても、同様の効果を奏するからである。
上記曲面凸部の高さとしては、5μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、中でも、7μm〜60μmの範囲内であることが好ましく、特に10μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
曲面凸部の高さが上記範囲よりも大きいと、本発明で得られるマスター原版を基にセキュリティカードを製造した際に、半円柱形レンズにより構成されるレンチキュラーレンズのレンズ厚も大きくなるため、上記レンチキュラーレンズを介してレーザー印字を行う際に、レーザー光が印字位置まで届かない場合がある。
一方、上記範囲よりも小さいと、本発明で得られるマスター原版を基にセキュリティカードを製造した際に、半円柱形レンズにより構成されるレンチキュラーレンズのレンズ厚も小さくなるため、上記レンチキュラーレンズを介してレーザー印字をする際に、レーザー光が印字位置まで届かない場合がある。
なお、当該曲面凸部の高さとは、曲面凸部の頂部から、凹部の底部の最下点までの距離であり、図1(g)において、Y1で示される部分をいう。
上記曲面凸部の高さは、光干渉式表面形状測定装置(例えば、菱化システム社製 VertScan2.0、Veeco社製 Wyko NT9000シリーズ等)を用いて、非接触法により測定することができる。具体的には、光干渉式表面形状測定装置の測定ステージ上に曲面凸部を測定ヘッドに向けて載置し、上記曲面凸部の表面形状データを3次元座標データの集合の形式で非接触に取得し、上記表面形状データを基に算出することができる。
なお、特段の説明が無い限り、各部位の測定方法については、対象部位を測定ヘッドに向けて載置し、非接触法により測定したものとする。
また、上記曲面凸部の幅としては、20μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、中でも40μm〜120μmの範囲内であることが好ましく、特に50μm〜70μmの範囲内であることが好ましい。
曲面凸部の幅が上記範囲よりも大きいと、本発明で得られるマスター原版を基にセキュリティカードを製造する場合に、半円柱形レンズにより構成されるレンチキュラーレンズの高さが大きくなり、国際規格等で決められたカードの厚さを超えてしまう場合がある。
一方、上記範囲よりも小さいと、本発明で得られるマスター原版を基にセキュリティカードを製造する場合に、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズの形状にばらつきが生じ、レンチキュラーレンズを介して視認される画像の均一性が確保できない場合がある。
なお、曲面凸部の幅とは、曲面凸部の短手方向の側面間の長さを指し、図1(g)においてX1で示される部分をいう。また、凹部と曲面凸部の頂部とが連続した形状で曲面凸部の頂部の区分される位置が明確でない場合は、非接触法の測定により作成されたグラフにおいて凹部と曲面凸部とが形成する曲面の変曲点を特定する。すなわち、対象曲面において凹部と曲面凸部との短手方向の断面が形成する曲線の曲率の符号が変化する点の位置を、凹部と曲面凸部とが区分される位置とし、上記変曲点における短手方向の長さを曲面凸部の幅とする。ここで、短手方向の断面が形成する曲線から曲率を算出する一つの方法としては、上記曲線を微小区間に分け、曲率を算出する微小区間における上記曲線を構成する測定データに対し最小二乗法を用いて円弧を当てはめ、得られた円弧の半径から曲率を得る方法等が用いられる。
また、上記曲面凸部のピッチ幅は小さいことが好ましい。本発明で得られるマスター原版を基にセキュリティカードを製造する場合に、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズの本数が多くなり、画素数を大きくすることができるため、カード上の画像情報の視認性の向上につながるからである。
上記曲面凸部のピッチ幅の値としては、40μm〜500μmの範囲内であることが好ましく、中でも、60μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、特に、70μm〜150μmの範囲内であることが好ましい。
曲面凸部のピッチ幅が上記範囲よりも大きいと、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズの本数が少なくなり、得られるカードは画素ピッチが粗い画像情報となるために、十分な視認性が得られない場合がある。
一方、上記範囲よりも小さいと、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズの本数が多いため、得られるカードは画素ピッチが細かくなることが想定される。しかし、マスター原版における凹部の形状に制約が生じるため、レンチキュラーレンズのレンズ厚が小さくなるという連鎖した制約が発生し、得られるカードは画像情報を明瞭に切り替えられなくなるという問題が発生する場合がある。
なお、曲面凸部のピッチ幅とは、隣接する曲面凸部の中心間の長さを指し、図1(g)においてX2で示される部分をいう。
(b)凹部
上記凹部の底幅は小さいことが好ましい。その理由について、以下に述べる。
上記凹部は、本発明により得られるマスター原版を用いてカード用原版を製造する際に、レンズ間溝部形成部を転写形成する部位である。さらに、上記レンズ間溝部形成部は、上記カード用原版を用いてセキュリティカードを製造する際に、レンチキュラーレンズにおけるレンズ間溝部を転写形成する部位である。
すなわち、凹部の形状は、セキュリティカードにおけるレンズ間溝部の形状に相当するものである。
セキュリティカードにおいて、上記レンズ間溝部の底幅の大きさによっては、レンチキュラーレンズを介して所定の角度から画像を観察した際に線状ノイズ等が出現し、視認画像が損なわれるといった不具合が生じる。なお、このような不具合については、後述する「C.セキュリティカードの製造方法」の項で詳細に説明するため、ここでの記載は省略する。
上記不具合の発生を防止するために、本工程において形成される凹部の底幅を小さくすることが好ましい。これにより、本発明により得られるマスター原版を基に製造されるセキュリティカードにおいても、上記レンズ間溝部の底幅を小さいものとすることができ、上記レンズ間溝部の底幅に起因して、レンチキュラーレンズを介して視認される画像上に線状ノイズ等が出現することによる視認性の低下を抑制することができるからである。
上記凹部の底幅としては、5μm〜60μmの範囲内であることが好ましく、中でも10μm〜55μmの範囲内であることが好ましく、特に15μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
凹部の底幅が上記範囲よりも小さいと、本発明により得られるマスター原版から製造されるカード用原版において、レンズ間溝部形成部の決壊が生じ、半円柱形レンズ形成部の深さにばらつきが生じる場合がある。そのため、上記カード用原版を用いて製造されるセキュリティカードにおいて、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズのレンズ厚にバラつきが生じ、レンズとしての機能を有さない場合がある。
一方、上記範囲よりも大きいと、上記マスター原版を基に得られるセキュリティカードにおいて、レンズ間溝部の幅が大きくなり、所定の角度からセキュリティカードを観察した際に、レンチキュラーレンズを介して表示される画像上に線状ノイズ等が出現し、視認画像の形状が損なわれる場合がある。
なお、凹部の底幅とは、凹部の底部のうち短手方向の長さをいい、図1(g)においてX3で示される部分をいう。上記凹部の底部が曲面を有する場合は、凹部の底部の曲面を金属基板の表面と平行になるように切断した時に形成される面の幅をいう。
なお、上記凹部の底部が曲面を有する場合の曲率半径については、上述した「1.転写工程」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
金属基板の転写形状部を有さない面から上記凹部の底部までの高さは、上述した曲面凸部の高さと同様である。
(c)転写形状部
上記転写形状部が金属基板に占める割合としては、特に限定されるものではなく目的とするセキュリティカードの仕様等に応じて適宜設定することができるが、例えば、金属基板の全体面積を100%としたときに1%〜30%程度の割合を占めることが好ましい。
(2)基板平面部
上記基板平面部については、上述した「1.エッチング工程」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(3)セキュリティカード用マスター転写原版(マスター原版)
上記マスター原版の厚さとしては、上述した金属基板材料の厚さと同様である。なお、上記マスター原版の厚さとは、金属基板の転写形状部を有さない面から上記曲面凸部の最頂点までの距離をいう。
また、上記マスター原版における転写形状部の数が1つの場合は、1面付け態様のマスター原版とすることができる。すなわち、上記態様のマスター原版1枚に付き、1面付けのカード用原版を製造することができ、当該カード用原版を用いて1回の製造につき1枚のカードを製造することができる。
また、上記マスター原版における転写形状部の数が複数の場合は、多面付け態様のマスター原版とすることができる。すなわち、上記態様のマスター原版1枚に付き、多面付けのカード用原版を製造することができ、例えば、当該カード用原版を用いて1回の製造につき複数枚のカードを一括で製造することができる。
B.セキュリティカード用転写原版(カード用原版)の製造方法
次に、本発明のカード用原版の製造方法について説明する。本発明のカード用原版の製造方法は、基板の一側に平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を有し、上記レンチキュラーレンズ形成部が、ストライプ状に設けられて底部に曲面を有する複数の半円柱形レンズ形成部と、隣り合う上記半円柱形レンズ形成部の間に設けられたレンズ間溝部形成部と、を有するカード用原版の製造方法であって、金属基板の一側に基板平面部および転写形状部を有し、上記転写形状部が、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う上記曲面凸部の間に設けられた凹部と、を有するマスター原版を使用し、上記マスター原版の上記転写形状部を有する面に、下地層および無電解めっき層がこの順に積層されためっき層を形成するめっき工程と、上記マスター原版から上記めっき層を剥離して、上記曲面凸部および上記凹部を含む上記転写形成部、並びに上記基板平面部の反転形状である、上記半円柱形レンズ形成部および上記レンズ間溝部形成部を含む上記レンチキュラーレンズ形成部、並びに上記平面部が形成された上記カード用原版を得る剥離工程と、を有することを特徴とするものである。
本発明のカード用原版の製造方法について、図を参照して説明する。図3は、本発明のカード用原版の製造方法の一例を示す工程図である。
まず、マスター原版10を準備し(図3(a))、上記マスター原版10の、曲面凸部3および凹部4から成る転写形状部2および基板平面部5が形成された面側に、下地層17および無電解めっき層18をこの順に積層しためっき層11を形成する(図3(b))。次に、めっき層11をマスター原版10から剥離することにより、めっき層11からなる基板12の一方の表面上に、曲面凸部3の反転形状である半円柱形レンズ形成部14と、凹部4の反転形状であるレンズ間溝部形成部15とを有するレンチキュラーレンズ形成部13、および基板平面部5の反転形状である平面部16が形成され、カード用原版20とすることができる(図3(c))。なお、図3(c)において、下地層17の図示は省略するものとする。
本発明において使用するマスター原版は、所望のレンチキュラーレンズ形状と同形状となるように設計された曲面凸部および凹部が形成された転写面を有している。
本発明によれば、当該マスター原版の転写面をめっきすることにより、めっき層の表面上に上記曲面凸部および凹部の反転形状である半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部が形成されたカード用原版を得ることができる。このとき、マスター原版の曲面凸部の頂部の曲率および高さに応じて、転写形成される半円柱形レンズ形成部は所望の曲率および深さを有することができる。このため、金属基板に直接エッチングを施してカード用原版を製造する方法よりも、レンチキュラーレンズ形成部の設計の自由度を向上させることができる。
また、本発明によれば、マスター原版を用いて同一形状のカード用原版を繰り返し製造することができる。そのため、従来の製造方法よりも、安価で簡単に精度の良いカード用原版を製造することが可能となる。
本発明のカード用原版の製造方法は、めっき工程および剥離工程を少なくとも有するものである。
以下、本発明のカード用原版の製造方法について、工程ごとに説明する。
1.めっき工程
本発明におけるめっき工程について説明する。本発明のめっき工程とは、金属基板の一側に基板平面部および転写形状部を有し、上記転写形状部が、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う上記曲面凸部の間に設けられた凹部と、を有するマスター原版を使用し、上記マスター原版の上記転写形状部を有する面に、下地層および無電解めっき層がこの順に積層されためっき層を形成する工程である。
(1)マスター原版
本工程において使用されるマスター原版としては、上述した「A.マスター原版の製造方法」により製造されたマスター原版を用いる。上記マスター原版については、同項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)めっき工程
本工程においては、マスター原版の転写形状部を有する面に下地層を形成する「(a)下地層形成処理」と、上記下地層上に無電解めっき層を形成する「(b)無電解めっき層形成処理」とを有するものである。
以下、それぞれの処理について説明する。
(a)下地層形成処理
本工程における下地層形成処理とは、マスター原版の転写形状部を有する面に、下地層を形成するものである。
なお、上記下地層は、通常、電解めっき法により形成されるものである。
マスター原版の表面に直接、無電解めっき層を形成する場合、マスター原版の表面清浄度に依存して無電解めっき層が形成されることになる。すなわち、マスター原版において、表面の卑になる元素が露出している箇所に集中的にめっきがされるため、無電解めっき層を均一な厚さで形成することができない。
そこで、本処理を行うことにより、下地層とマスター原版の表面の酸化皮膜との酸化還元作用を利用して、無電解めっき層を下地層を介してマスター原版の表面上に均一に形成することができる。
下地層の材料としては、上述のマスター原版の表面をめっきすることが可能な金属であれば特に限定されるものではなく、例えば、クロム、ニッケル、銅、白金、コバルト、亜鉛、アルミニウム、はんだ等が挙げられる。中でも、高い硬度を有し、腐食しにくく、汎用性があるという観点から、ニッケルが好ましい。
下地層の厚さとしては、0.05μm〜5μmの範囲内であることが好ましく、中でも0.1μm〜2.5μmの範囲内であることが好ましく、特に0.15μm〜1μmの範囲内であることが好ましい。下地層の厚さが上記範囲より小さいと、マスター原版の表面の酸化皮膜の一部を還元できず、めっき層を均一に形成することができない場合がある。一方、上記範囲よりも大きいと、めっき層全体の厚さに対する下地層の割合が多くなるため、マスター原版の形状を転写できない場合や、高い硬度のカード用原版が得られない場合がある。
本処理に用いられる電解めっき法としては、マスター原版の表面に下地層を均一に形成出来る方法であれば特に限定されるものではなく、一般的に公知の方法を用いることができる。
(b)無電解めっき層形成処理
本工程における無電解めっき層形成処理とは、上記下地層上に無電解めっき層を形成するものである。
本処理を行うことにより、めっき層および本発明により得られるカード用原版の硬度を高いものとすることができる
無電解めっき層の材料としては、下地層上にめっきすることが可能な金属であれば特に限定されるものではなく、上述した「(a)下地層形成処理」の項で説明した金属を用いることができる。中でも、下地層と同じ金属であることが好ましい。
無電解めっき層の厚さとしては、少なくともマスター原版における凹部が充填される厚さであることが好ましい。上記凹部はカード用原版におけるレンズ間溝部形成部を形成する部位である。そのため、上記レンズ間溝部形成部を無電解めっき層により形成することにより、硬度を高める事ができ、上記レンズ間溝部形成部の欠損等の変形を抑制することができるからである。
本処理に用いられる無電解めっき法としては、下地層上に均一な厚さで形成出来る方法であれば特に限定されるものではなく、一般的に公知の方法を用いることができる。
(c)めっき工程
本工程は、上述した下地層形成処理および無電解めっき層形成処理を少なくとも有するものであるが、他の処理を有していてもよい。以下、本工程において想定される他の処理について説明する。
(i)電解めっき層形成処理
本発明は、無電解めっき層形成処理の後に、無電解めっき層上に電解めっき層を形成する電解めっき層形成処理を有するものであっても良い。本処理により、図4で例示されるように、めっき層11は、下地層17、無電解めっき層18、および電解めっき層19の3層構造を有するものとなる。
本処理は、通常、電解めっき法により行われるものであるが、電解めっき法は、無電解めっき法と比較して、短時間で所望の厚さにめっきすることが可能である。そのため、下地層形成処理後に無電解めっき層形成処理のみを行い、めっき層を所望の厚さとなるように形成するよりも、ある程度の厚さの無電解めっき層を形成した後に、本処理により電解めっき層を形成することにより、短時間でめっき層を所望の厚さとすることができ、製造時間を短縮させる事が可能となる。
電解めっき層の材料としては、無電解めっき層上にめっきすることが可能な金属であれば特に限定されるものではなく、上述した「(a)下地層形成処理」の項で説明した金属を用いることができる。中でも、無電解めっき層と同じ金属であることが好ましい。また、異なる金属を用いて電解めっき層の形成を複数回行うことにより、電解めっき層を多層構造としてもよい。
電解めっき層の厚さとしては、めっき層を所望の厚さを有するものとすることが可能な大きさであれば良く、上述した「(b)無電解めっき層形成処理」において形成される無電解めっき層の厚さに応じて適宜設定することができる。電解めっき層の厚さとしては、例えば5μm〜50μmの範囲内とすることができる。
本処理に用いられる電解めっき法としては、特に限定されるものではなく、一般的に公知の方法を用いることができる。
(ii)めっき工程
本工程においては、無電解めっき処理が少なくとも1回行われるものであるが、電解めっき処理を有する場合は、無電解めっき処理と電解めっき処理とを交互に複数回行うものであってもよい。すなわち、下地層上に、無電解めっき層および電解めっき層が交互に積層された多層構造を有するめっき層とすることが可能である。
(3)めっき層
本工程において形成されるめっき層は、マスター原版の曲面凸部、凹部および基板平面部の形状が転写されて、上記めっき層の表面に半円柱形レンズ形成部、レンズ間溝部形成部、および平面部が形成されるものとなる。
半円柱形レンズ形成部、レンズ間溝部形成部および平面部については、後述する「4.セキュリティカード用転写原版」の項で説明するため、ここでの説明は省略する。
また、マスター原版の基板平面部上に文字図柄刻印部が形成されている場合は、上記文字図柄刻印部が転写されて文字図柄転写部を形成することができる。
本工程で形成されるめっき層の厚さとしては、目的とするカード用原版の厚さと同様であり、例えば、80μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、中でも100μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。特に150μm〜250μmの範囲内であることが好ましい。
めっき層の厚さを上記範囲内とすることにより、マスター原版からの剥離が容易になり、また、得られるカード用原版の強度を保持することができるからである。
2.剥離工程
本発明における剥離工程は、マスター原版からめっき層を剥離して、曲面凸部および凹部を含む転写形成部、並びに基板平面部の反転形状である、半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部を含むレンチキュラーレンズ形成部、並びに平面部が形成されたカード用原版を得る工程である。
本工程における剥離方法としては、マスター原版からめっき層を剥離できる方法であれば特に限定されないが、例えば、100℃程度の温風を当てて乾燥させ、めっき層の熱膨張率の変化による伸縮を利用して剥離することができる。
3.その他の工程
本発明のカード用原版の製造方法は、上述しためっき工程および剥離工程を少なくとも有するものであるが、必要に応じて以下の工程を有するものであっても良い。
(1)下地層除去工程
本発明は、剥離工程後に、下地層を除去する下地層除去工程を有していても良い。剥離後のカード用原版から下地層を除去することにより、無電解めっき層をカード用原版の最表層として露出させることができる。このため、後述する加熱工程により無電解めっき層を硬化させることにより、カード用原版全体の硬度を向上させることができるからである。
下地層の除去方法としては、例えば、溶剤を用いて下地層を溶解することが好ましい。この様な溶剤としては、特に限定されるものではないが、通常、アルカリ性溶液が用いられる。例えば、下地層がニッケルの場合は、フェリシアン化カリウム溶液を用いることが好ましい。このとき、下地層が全て溶解されることが好ましい。加熱により無電解めっき層を均一に硬化させることができるからである。
(2)加熱工程
さらに本発明は、上述した下地層除去工程の後に、上記無電解めっき層を硬化させる加熱工程を有することが好ましい。加熱することにより、無電解めっき層が硬化し、本発明により得られるカード用原版全体の硬度を向上させることができるからである。
本工程における加熱条件としては、無電解めっき層の材料に応じて適宜設定することができるが、例えば、300℃〜1000℃の範囲内で、5分間〜240分間の範囲内で加熱をすることが好ましく、中でも350℃〜900℃の範囲内で、10分間〜200分間の範囲内で加熱をすることが好ましく、特に400℃〜850℃の範囲内で、10分間〜150分間の範囲内で加熱をすることが好ましい。
上記温度範囲および時間で加熱を行うことにより、無電解めっき層が十分に硬化され、所望の硬度を有するカード用原版とすることができるからである。
(3)曲面形成工程
本発明は、レンズ間溝部形成部の頂部を曲面とする曲面形成工程を有していてもよい。レンズ間溝部形成部の頂部を曲面とすることにより、本発明により得られるカード用原版を用いて製造されるセキュリティカードにおいて、レンチキュラーレンズを介して視認される画像上に出現する線状ノイズ等をより目立たなくすることができるからである。なお、本工程は、剥離工程後に行っても良く、上述した加熱工程後に行っても良い。
曲面とする方法としては、上記レンズ間溝部形成部の頂部が所望の曲率半径を有することが可能な方法であれば、特に限定されない。例えば、電解研磨や化学研磨等を用いることができ、中でもフェリシアン化カリウム溶液を用いた電解研磨が好ましい。
なお、本発明において使用されるマスター原版は、凹部の底部が曲率を有するものであるため、上述しためっき工程において当該凹部の形状が転写されることで、レンズ間溝部形成部の頂部に曲率を有することは可能であるが、さらに本工程を行うことにより、上記レンズ間溝部形成部の頂部を所望の曲率に調整することができる。
上記レンズ間溝部形成部の頂部の曲率半径としては、上述した「A.マスター原版の製造方法 1.エッチング工程」の項で説明した凹部の曲率半径の値と同様とする。なお、上記レンズ間溝部形成部の頂部の曲率半径とは、図3(c)においてR3で示される部分である。
4.セキュリティカード用転写原版(カード用原版)
本発明により得られるカード用原版は、基板の一側に平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を有し、上記レンチキュラーレンズ形成部が、ストライプ状に設けられて底部に曲面を有する複数の半円柱形レンズ形成部と、隣り合う上記半円柱形レンズ形成部の間に設けられたレンズ間溝部形成部と、を有するものである。
(1)基板
本発明における基板は、上述しためっき層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)レンチキュラーレンズ形成部
本発明におけるレンチキュラーレンズ形成部は、基板の一側に形成されるものであり、半円柱形レンズ形成部と、隣り合う上記半円柱形レンズ形成部の間に形成されるレンズ間溝部形成部とを有するものである。
(a)半円柱形レンズ形成部
半円柱形レンズ形成部の形状は、使用するマスター原版の曲面凸部の反転形状であり、また、目的とするセキュリティカードにおける半円柱形レンズの反転形状である。
上記半円柱形レンズ形成部の形状等については、上述した「A.マスター原版の製造方法」の項で説明した曲面凸部と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、上記半円柱形レンズ形成部の深さおよび底部の曲率半径とは、上記曲面凸部の高さおよび頂部の曲率半径に相当するものである。
上記半円柱形レンズ形成部の幅、深さ、ピッチ幅および底部の曲率半径とは、図3(c)において、それぞれX4、Y2、X5およびR4で示される部分である。
(b)レンズ間溝部形成部
レンズ間溝部形成部の形状は、使用するマスター原版の凹部の反転形状であり、また、目的とするセキュリティカードにおけるレンズ間溝部の反転形状である。
上記レンズ間溝部形成部の形状等については、上述した「A.マスター原版の製造方法」の項で説明した凹部と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、レンズ間溝部形成部の高さおよび頂部の幅とは、上記凹部の深さおよび底幅に相当するものであり、図3(c)において、それぞれY2およびX6で示される部分である。
また、上記レンズ間溝部形成部の頂部は、後述する平面部の高さ以下であることが好ましい。すなわち、上記カード用原版の底面から上記レンズ間溝部形成部の頂部までの高さが、上述した基板の厚さ以下であることが好ましい。その理由については、上述した「A.マスター原版の製造方法」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
さらに、上記レンズ間溝部形成部の頂部は曲面を有することが好ましい。その理由および上記レンズ間溝部形成部の頂部の曲率半径については、上述した「3.その他の工程 (3)曲面形成工程」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(3)平面部
本発明における平面部上には、文字図柄転写部を有することが好ましい。本発明におけるカード用原版を用いてセキュリティカードを製造する際に、レンチキュラーレンズの形状を転写すると同時に、上記文字図柄転写部の情報も転写され、画像部の情報とは異なる情報を付することができるからである。
なお、マスター原版の基板平面部上に文字図柄刻印部を有する場合は、上記平面部に上記文字図柄刻印部が転写されて文字図柄転写部となることが好ましい。また、別途エッチング等により上記平面部に文字図柄転写部を形成してもよい。
(4)カード用原版
本発明により得られるカード用原版の硬度としては、ビッカース硬度(Hv)が400〜1000の範囲内であることが好ましく、中でも、500〜900の範囲内であることが好ましく、特に、600〜800の範囲内であることが好ましい。当該硬度を上記範囲内とすることにより、セキュリティカードの製造においてカード用原版を剥離する際に、当該カード用原版を繰り返し使用しても、レンズ間溝部形成部が曲がる等の形状の欠損、破壊等の劣化が生じにくく、耐久性に優れた物とすることができる。なお、ビッカース硬さの測定方法としては、JIS Z 2244に示す方法を用いることができる。
カード用原版の表面は所望の表面粗さを有することが好ましく、中でも光沢面であることが好ましい。当該カード用原版を使用してセキュリティカードを製造する際に、剥離しやすくなり、カード表面を光沢面とすることができるからである。
カード用原版の最大表面粗さ(Rz)および光沢面の程度については、上述した「A.マスター原版の製造方法」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記カード用原版の厚さについては、上述しためっき層の厚さと同様である。
また、上記カード用原版におけるレンチキュラーレンズ形成部の数、配置等の態様については、使用するマスター原版の態様により適宜設定されるものであり、「A.マスター原版の製造方法」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
C.セキュリティカードの製造方法
次に、本発明のセキュリティカードの製造方法について説明する。本発明のセキュリティカードの製造方法は、画像部を有するカード基材と、上記カード基材の一側に配置されるレンチキュラーレンズシートとを有し、上記レンチキュラーレンズシートが、シート平坦部およびレンチキュラーレンズを有し、上記レンチキュラーレンズが、ストライプ状に設けられた複数の半円柱形レンズ、および隣り合う上記半円柱形レンズの間に形成されたレンズ間溝部を少なくとも有するものであり、上記レンチキュラーレンズと上記画像部とが平面視上に重なって配置されるセキュリティカードの製造方法であって、上記カード基材の一側にシート基材を積層する準備工程と、上記シート基材の上記カード基材との接触面と反対側の面に、「B.カード用原版の製造方法」に記載された方法により得られたカード用原版を転写して、上記カード用原版の半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部を含むレンチキュラーレンズ形成部、並びに平面部の反転形状である、上記半円柱形レンズおよび上記レンズ間溝部を含む上記レンチキュラーレンズ、ならびに上記シート平坦部と、を有する上記レンチキュラーレンズシートを形成する転写工程と、を有することを特徴とするものである。
本発明のセキュリティカードの製造方法について、図を参照して説明する。図5は本発明のセキュリティカードの製造方法の一例を示す工程図である。
まず、カード基材22とシート基材21aとをこの順で積層させる(図5(a))。また、上述した「B.カード用原版の製造方法」の項で説明した製造方法により得られたカード用原版20を準備する。
次に、カード用原版20を、加熱Hをしながら上記シート基材21aに押し当てることにより(図5(b))、上記カード用原版20のレンチキュラーレンズ形成部13および平面部16が転写されて、レンチキュラーレンズ25およびシート平坦部26が形成されたレンチキュラーレンズシート21となる(図5(c))。レンチキュラーレンズ25は、上記カード用原版20の半円柱形レンズ形成部14が転写されてなる半円柱形レンズ23と、レンズ間溝部形成部15が転写されてなるレンズ間溝部24を有するものである。
次に、上記カード基材22に対して上記半円柱形レンズ23を介してレーザー光Z1およびZ2を照射することにより(図5(d))、カード基材22に含有される発色材料が炭化される。これにより、文字や数字等の異なる画像部27(画像部27aおよび画像部27bを構成要素として含む。)が、上記レンチキュラーレンズ25の半円柱形レンズ23と平面視上に重なるようにカード基材22に形成され(図5(e))、セキュリティカード30を得ることができる。
なお、図5(a)が準備工程であり、図5(b)〜(c)が転写工程である。また、図5においてx方向が短手方向、y方向が厚さ方向である。
本発明によれば、転写工程において上述の構造を有するカード用原版を用いて転写することにより、カード表面の所望の位置に、所望の形状のレンチキュラーレンズを精度よく形成すると同時に、高い平滑性を有するシート平坦部を形成することができる。これにより所望の形状を有するレンチキュラーレンズシートを一括形成することが可能となる。また、一括形成されたレンチキュラーレンズシートの厚さは、その精度を高いものとすることができるため、カード全体の厚さの均一化を図ることができる。これにより、寸法精度の高いセキュリティカードを生産性良く製造することができる。
また、転写工程において、寸法精度および配置精度が高いレンチキュラーレンズが形成されるため、レンチキュラーレンズを介してカード基材上の画像部を観察する際に、観察角度に応じて画像部の異なる情報を明瞭に表示することができる。
本発明のセキュリティカードの製造方法は、準備工程と転写工程とを少なくとも有するものである。
以下、本発明のセキュリティカードの製造方法について、工程ごとに説明する。
1.準備工程
本発明における準備工程は、カード基材の一側にシート基材を積層する工程である。
(1)シート基材
上記シート基材とは、後述する転写工程において、カード用原版のレンチキュラーレンズ形成部を有する面の形状が転写されて、レンチキュラーレンズシートとなるものである。
上記シート基材の材料としては、カード用原版のレンチキュラーレンズ形成部の形状に追従可能な柔軟性を有するものが好ましく、加熱により軟化する材料、すなわち熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、透明性を有することが好ましい。
このような材料としては、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースエステル、フッ化ポリマー、ポリアセタール、ポリオレフィン、アラミド、フッ素樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PLA(ポリ乳酸)等を用いることができ、中でもポリカーボネートを用いることが好ましい。
上記シート基材の厚さとしては、10μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、中でも30μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、特に50μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。シート基材の厚さが上記範囲よりも大きいと、セキュリティカードのカード基材に印字する場合に、レーザー光がカード基材の所望の位置まで届かず、画像部を形成することができない場合がある。一方、上記範囲よりも小さいと、シート基材上にカード用原版のレンチキュラーレンズ形成部の形状を転写する際に所望の形状が得られない場合や、得られるレンチキュラーレンズシートの強度が弱く、カードとしての耐久性が劣る場合がある。
また、上記シート基材の大きさとしては、所望のセキュリティカードの大きさに応じて適宜選択することができ、例えば、20cm×20cm〜60cm×60cmの範囲内の大きさであることが好ましい。
(2)カード基材
上記カード基材の材料としては、一般的なセキュリティカード用のカード基材として用いられる樹脂材料を挙げることができる。なお、上記カード基材に用いられる材料は透明性を有するものであっても良く、有しないものであっても良い。
このような材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アラミド、ポリイミド、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PLA(ポリ乳酸)等を用いることができる。中でも、ポリカーボネートが好ましい。
また、上記カード基材は発色材料を含むことが好ましい。発色材料を含むことにより、レーザー光を照射して上記カード基材に画像部を形成することができるからである。
上記発色材料としては、レーザー光を吸収する材料であれば良く、カーボンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄、雲母等を挙げることができ、中でも、カーボンブラックが好ましい。
上記カード基材の厚さは、50μm〜800μmの範囲内であることが好ましく、中でも300μm〜700μmの範囲内であることが好ましい。カード基材の厚さが上記範囲よりも大きいと、得られるセキュリティカードが国際規格等の規定寸法を超えてしまう場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと、カードの強度が得られない場合がある。
上記カード基材の大きさとしては、所望のセキュリティカードの大きさに応じて適宜選択することができ、少なくともシート基材以上の大きさであることが好ましく、中でもシート基材と同じ大きさであることが好ましい。
上記カード基材は、予め画像部を有するものであってもよい。カード基材に画像部を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えばオフセット平版印刷や、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の各種印刷法等を用いることができる。
また、カード基材が予め画像部を有さない場合は、後述する「3.その他の工程」で説明する印字工程を行うことが好ましい。レンチキュラーレンズと平面視上に重なる位置に画像部を形成することができるからである。
上記カード基材が予め画像部を有する場合、当該画像部の大きさとしては、後述する転写工程によりシート基材上にレンチキュラーレンズが形成される際に、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズの大きさを超えないことが好ましい。
2.転写工程
本発明における転写工程は、上記シート基材の上記カード基材との接触面と反対側の面に、「B.カード用原版の製造方法」に記載された方法により得られたカード用原版を転写して、上記カード用原版の半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部を含むレンチキュラーレンズ形成部、並びに平面部の反転形状である、上記半円柱形レンズおよび上記レンズ間溝部を含む上記レンチキュラーレンズ、ならびに上記シート平坦部と、を有する上記レンチキュラーレンズシートを形成する工程である。
(1)カード用原版
本工程において用いられるカード用原版としては、上述した「B.カード用原版の製造方法」により製造されたカード用原版を用いるものである。上記カード用原版については、同項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)転写工程
本工程においては、加熱したシート基材の一方の表面にカード用原版を押し当てることにより、シート基材の材料が軟化して上記カード用原版の形状に追従させることができる。
本工程における加熱条件および加熱時間については、使用するシート基材等の材料やカード用原版の材質等に応じて適宜設定することが出来る。
本工程においては、加熱したシート基材にカード用原版を押し当てた後に冷却させることが好ましい。上記シート基材の表面に上記カード用原版の形状が転写された状態で硬化し、シート平坦部およびレンチキュラーレンズを有するレンチキュラーレンズシートを形成することができるからである。
冷却方法としては、例えば、加熱炉内において放冷する等の方法により、徐々に冷却する事が好ましい。冷却時間を短くして急冷すると、カード用原版の材料との熱収縮率が異なるため、レンチキュラーレンズシートが所望の形状とならない場合がある。
冷却時間については、使用するシート基材等の材料、カード用原版の材質等に応じて適宜設定することが出来る。
本工程においては、レンズ間溝部の底部が曲面を有する形状となることが好ましい。レンズ間溝部の底部が曲面を有することにより、レンチキュラーレンズを介して視認される画像上に線状ノイズ等が出現することを防止し、視認性に優れたセキュリティカードを製造することができるからである。
なお、「レンズ間溝部の底部が曲面を有する」こと、および、本工程において形成される各部位の大きさ等については、後述する「4.セキュリティカード」の項で説明する内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、使用するカード用原版の平面部に文字図柄転写部を有する場合、本工程において上記文字図柄転写部の情報がシート平坦部に転写され、文字図柄部が形成されてもよい。
3.その他の工程
本発明は、上記転写工程により形成された上記レンチキュラーレンズを介して、上記カード基材に異なる少なくとも2方向からレーザー光を照射して、上記カード基材の上記レンチキュラーレンズと平面視上に重なる位置に画像部を形成する印字工程を有することが好ましい。上述した転写工程において寸法精度および配置精度が高いレンチキュラーレンズが形成されるため、本工程においてレンチキュラーレンズと平面視上に重なる位置に正確に印字することができるからである。
なお、当該印字工程とは、図5において(d)および(e)で例示されるものである。
本工程において使用されるレーザー光の種類としては、アルゴンレーザー、He−Neレーザー、ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発色レーザー等の波長700nm〜1300nmの赤外線を発する光源を挙げることができる。
また、レーザー光の照射角度や照射時間等の条件については、所望の画像部を形成することができればよく、レンチキュラーレンズの形状や大きさ等に応じて適宜設定する事ができる。
本工程において、上記画像部が形成される位置としては、上述したレンチキュラーレンズと平面視上に重なる場所、すなわち、画像部が半円柱レンズと平面視上に重なる場所であれば特に限定されるものではない。このような位置としては、通常、シート基材と接するカード基材面上であるが、上記シート基材と接する面と対向する側の表面上であっても良く、上記カード基材の内部に形成されても良い。また、上記画像部の大きさとしては、半円柱レンズに覆われた領域を超えない大きさであることが好ましい。さらに、当該レンチキュラーレンズの下側に位置する画像部は、通常2種類の異なる画像情報で構成されるが、2種類以上有していても良い。
4.セキュリティカード
本発明により得られるセキュリティカードは、画像部を有するカード基材と、上記カード基材の一側に配置されるレンチキュラーレンズシートとを有し、上記レンチキュラーレンズシートが、シート平坦部およびレンチキュラーレンズを有し、上記レンチキュラーレンズが、ストライプ状に設けられた複数の半円柱形レンズ、および隣り合う上記半円柱形レンズの間に形成されたレンズ間溝部を少なくとも有するものであり、上記レンチキュラーレンズと上記画像部とが平面視上に重なって配置されるものである。
上記セキュリティカードは、シート基材に印字された画像部上にレンチキュラーレンズが配置されることにより、レンチキュラーレンズを介して画像部の画像を観察する際に、観察角度によって視認される画像部を異なるものとすることができ、視認性に優れたカードとすることができる。
ここで、「観察角度によって視認される画像部が異なる」とは、図6に示すように、一方の観察角度E1においてはレンチキュラーレンズ25を介してカード基材22上の画像部27aの情報(図6(b))のみを画像として視認することができ、別の観察角度E2においては複数本のレンチキュラーレンズ25を介してカード基材22上の画像部27bの情報(図6(c))のみを画像として視認することができることをいう。なお、図6において説明しなかった符号については、図5で説明したものと同様であるためここでの説明は省略する。
以下、本発明により得られるセキュリティカードの各構成について説明する。
(1)レンチキュラーレンズシート
上記レンチキュラーレンズシートとは、カード基材の一側に配置されるものである。また、上記レンチキュラーレンズシートは、シート平坦部およびレンチキュラーレンズが形成されるものである。
(a)レンチキュラーレンズ
上記レンチキュラーレンズは、ストライプ状に設けられた複数の半円柱形レンズ、および隣り合う上記半円柱形レンズの間に形成されたレンズ間溝部を有するものである。
なお、上記レンチキュラーシート1枚あたりのレンチキュラーレンズの数は特に限定されるものではない。
(i)半円柱形レンズ
上記半円柱形レンズは、その頂部が所望の曲率半径を有することが好ましい。曲率半径を所望の大きさとすることにより、印字工程を有する場合においてレーザー光が上記半円柱形レンズを透過しやすくなり、カード基材上に明瞭に画像部を形成することができる。
なお、上記半円柱形レンズの曲率半径として好ましい値は、「B.カード用原版」の項で説明した半円柱形レンズ形成部の底部の曲率半径と同様である。また、上記半円柱形レンズの曲率半径とは、図5(e)においてR5で示される部分である。
また、上記半円柱形レンズの幅、レンズ厚については、上述した「B.カード用原版の製造方法」の項で説明した半円柱形レンズ形成部の幅、深さと同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、上記半円柱形レンズの幅、レンズ厚とは、図5(e)においてそれぞれX7、Y3で示される部分である。
(ii)レンズ間溝部
上記レンズ間溝部は、底幅が所望の大きさを有することが好ましい。レンチキュラーレンズを介して画像部を視認する際に、視認画像上に線状ノイズ等が出現することを防止できるからである。
上記レンズ間溝部の底幅は、使用するカード用原版のレンズ間溝部形成部の頂部の幅と同様の大きさを有するものであり、具体的な底幅については、「B.カード用原版の製造方法」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
なお、上記レンズ間溝部の底幅とは、図5(e)においてX8で示される部分である。
ここで、「画像部上に線状ノイズ等が出現」するとは、図6で示されるように、一方の観察角度E1においてレンチキュラーレンズ25を介してカード基材22上の画像部27aを視認する際に(図6(a))、視認すべき画像が白く曇って表示されることや、表示すべき画像以外の不要な画像が白線Lとして、半円柱形レンズの長手方向と平行に表示されて見えることをいう(図6(d))。上記現象が生じることにより、画像形状が欠損した不鮮明な像として観察されるため、セキュリティカードの視認性が低下する。
視認される画像上に線状ノイズ等が出現する要因としては、レンズ間溝部の底幅の大きさによるものと考えられる。所定の角度からセキュリティカードを視認する際、カード基材における画像部はレンチキュラーレンズを介して視認される。しかし、レンズ間溝部の底幅が大きい場合、レンズ間溝部の表面の屈折率と上記レンズ間溝部の底幅との関係から、レンズ間溝部を介して上記画像部が形成されていない領域や、レンチキュラーレンズを介して視認させようとしている画像部以外の領域(これらを非画像部領域とする場合がある。)も視認することとなる。このため、観察者は、レンチキュラーレンズを介して視認されるべき画像部の像と、レンズ間溝部を介して視認される非画像部領域とを同時に視認することになる。
このとき、上記非画像部領域は、上述のように視認される画像上に線状ノイズ等として出現するため、視認される画像が損なわれ、画像全体として不鮮明なものとして認識される。
上記レンズ間溝部は、「2.転写工程」の項で説明した理由から、底部が曲面を有する形状である事が好ましい。上記レンズ間溝部の底部の曲率半径は、カード用原版のレンズ間溝部形成部の頂部の曲率半径と同様であり、具体的な曲率半径については、上述した「B.カード用原版の製造方法」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、上記レンズ間溝部の底部の曲率半径とは、図5(e)においてR6で示される部分である。
上記レンズ間溝部の深さについては、上述した「B.カード用原版の製造方法」の項で説明したレンズ間溝部形成部の高さと同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、上記レンズ間溝部の深さとは、図5(e)においてY3で示される部分であり、上述した半円柱形レンズのレンズ厚と同様である。
(iii)レンチキュラーレンズ
上記レンチキュラーレンズにおいて配置される半円柱形レンズのピッチ幅としては、通常、使用するカード用原版における半円柱形レンズ形成部のピッチ幅と同様である。半円柱形レンズの具体的なピッチ幅、および上記ピッチ幅が好ましい理由については、上述した、「A.マスター原版の製造方法」および「B.カード用原版の製造方法」の項で説明した理由と同様である。なお、上記半円柱形レンズのピッチ幅とは、隣接する半円柱形レンズの中心間の長さをいい、図5(e)においてX9で示される部分である。
上記レンチキュラーレンズの高さおよび頂部の曲率半径は、上述した半円柱形レンズのレンズ厚および頂部の曲率半径に相当するため、ここでの説明は省略する。
上記レンチキュラーレンズ1つあたりの半円柱形レンズの本数は、使用するカード用原版における半円柱形レンズ形成部の本数により決まるものである。
また、上記レンチキュラーレンズの大きさとしては、半円柱形レンズの大きさおよび本数等に応じて適宜設定されるものであり、使用するカード用原版のレンチキュラーレンズ形成部と同様の大きさとなるものである。
(b)シート平坦部
上記シート平坦部は、レンズキュラーレンズシート上の、レンチキュラーレンズが形成されていない領域である。
上記シート平坦部は、文字図柄部を有することが好ましい。文字図柄部を有することにより、所望の観察角度においてレンチキュラーレンズを介して視認される画像部の情報とは異なる情報をセキュリティカードに付与することができ、カードのセキュリティ性や意匠性を向上させることが可能となるからである。
なお、上記文字図柄部については、上述した「A.マスター原版の製造方法」の項で説明した文字図柄刻印部、および「B.カード用原版版の製造方法」の項で説明した文字図柄転写部と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(c)レンチキュラーレンズシート
上記レンチキュラーレンズシートの材料および厚さとしては、上述した「1.準備工程」で説明したシート基材と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、レンチキュラーレンズシートの厚さとは、カード基材と接する面から、レンチキュラーレンズの最頂部までの長さをいう。
(2)カード基材
上記カード基材は、画像部を有するものである。上記画像部は、上述したレンチキュラーレンズと平面視上に重なるように配置されており、その大きさとしては、レンチキュラーレンズに覆われた領域を超えない大きさであることが好ましい。
また、1つのレンチキュラーレンズの下側に位置する画像部は、通常2種類の異なるものであるが、2種類以上有していても良い。
(3)セキュリティカード
本発明により得られるセキュリティカードにおいて、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズの長手方向は、カードをカードリーダーに通して磁気情報を読み取る方向と同じ方向であることが好ましい。カードをカードリーダーに通す際に、上記レンチキュラーレンズの部分が障害となりカードリーダーに通すことができず、磁気情報が読み取れない場合があるからである。
また、本発明により得られるセキュリティカードは、レンチキュラーレンズシート上のレンチキュラーレンズが、カード基材の画像部上に形成されていれば良く、カード基材の表面の一部に形成されるものであっても良く、上記表面の全面に形成されるものであっても良い。
上記セキュリティカードにおいて、レンチキュラーレンズが形成されている領域の占める割合としては、カードの大きさや、カード基材上の画像部の大きさ等によって適宜選択されるものであるが、例えば、カードの全体面積を100%としたときに、レンチキュラーレンズが占める総面積が1%〜30%程度であることが好ましい。
また、本発明により得られるセキュリティカードは、上述したカード基材およびレンチキュラーレンズシートを少なくとも有するものであるが、必要に応じてその他の部材を有していても良い。その他の部材としては、例えば、磁気シート、染料インク印刷層、顔料インク印刷層、ICチップ、透明カバー層を有していても良い。
なお、本発明により得られるセキュリティカードの大きさとしては、用途に応じて適宜設定できるものである。
本発明により得られるセキュリティカードの用途としては、視認性および偽造防止性が求められる分野に用いることが可能であり、例えば、クレジットカード等の個人情報管理カード、政府文書等の機密性を要する情報媒体に用いることが可能である。
D.セキュリティカード用マスター転写原版(マスター原版)
次に、本発明のマスター原版について説明する。本発明のマスター原版は、金属基板の一側に基板平面部および転写形状部を有し、上記転写形状部が、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う上記曲面凸部の間に設けられた凹部と、を有することを特徴とするものである。
本発明のマスター原版について、図を参照して説明する。図7は、本発明のマスター原版の一例を示す概略斜視図であり、図8は、図7のX−X線断面図である。なお、図7におけるx方向が短手方向、y方向が厚さ方向とする。
本発明のマスター原版10は、平板状の金属基板1の一方の表面上に、基板平面部5と転写形状部2とが形成されており、上記転写形状部2には、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する曲面凸部3と、隣り合う曲面凸部3の間に形成される凹部4とを有するものである。
本発明では、曲面凸部および凹部が金属基板上に直接形成されており、上記曲面凸部の頂部の曲率や高さが自由に設計されたものであるため、安価で精度の良いマスター原版とすることができる。
また、実際のセキュリティカードの製造に使用するカード用原版は、上記マスター原版の転写形状部および基板平面部の形状を転写することにより製造することが出来る。そのため、上記カード用原版の半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部の形状も、簡単に精度良く形成することができ、繰り返しの使用により形状が劣化した場合であっても、同一形状のカード用原版を安価で簡易的に製造することが可能となる。
さらに、本発明のマスター原版を基に製造されるセキュリティカードにおいても、上記曲面凸部および凹部の形状によりレンチキュラーレンズの半円柱形レンズおよびレンズ間溝部の形状が決まることから、上記レンチキュラーレンズの頂部の曲率およびレンズ厚についても設計の自由度を向上させることができる。
本発明によれば、凹部の底部が曲面を有することが好ましい。本発明のマスター原版を元に製造されるセキュリティカードにおいて、視認される画像上に出現する線状ノイズ等をより目立たなくすることができ、視認性に優れたカードとなるからである。
また、本発明によれば、上記基板平面部が文字図柄刻印部を有することが好ましい。本発明のマスター原版を元に製造されるセキュリティカードにおいて、転写によりレンチキュラーレンズの形状を形成するのと同時に、文字図柄刻印部の画像情報を転写することができるからである。
本発明のマスター原版が「凹部の底部が曲面を有すること」および「基板平面部が文字図柄刻印部を有すること」、ならびに、本発明のマスター原版のその他の詳細については、上述した「A.マスター原版の製造方法」で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
なお、上記マスター原版は通常平板状であるが、ロール等のその他の形状であってもよい。
本発明のマスター原版の用途としては、セキュリティカードの製造時に使用されるカード用原版を製造する際に、好適に用いることができる。また、上記マスター原版は、セキュリティカード以外で上記レンチキュラーレンズシートを付する用途においても、マスター原版として使用することができる。
本発明のマスター原版は、上述した「A.マスター原版の製造方法」の項で説明した方法を用いて製造することが好ましい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例]
(マスター原版の製造)
金属基板として、SUS304材(板厚0.5mm、300mm角サイズの圧延材料)を準備し、片面にフォトリソグラフィによるパターニングを行った。
フォトリソグラフィに際しては、レジストコーティング前に整面処理を行った。当該整面処理は、アルカリ脱脂(NaOH水溶液5%、60℃)、硫酸電解(硫酸水溶液5%、常温、電流密度dk=3)、塩酸ディップ(塩酸水溶液10%、常温)を行った。
当該整面処理後、カゼイン含有ネガレジストを使用してスピンコーターにてコーティングを行った。結果として、当該パターニングにより、レジスト厚さを7μm〜10μm程度とした。
その後、平行光露光機を用いて紫外線照射を行い、マスクを介して露光を行った。当該マスクについては、上記材料サイズ内でレンチキュラーレンズを形成するために、カード外形85mm×50mm程度の目安となるデザインを具備し、かつその外郭内に、サイズ20mm程度となる、レンチキュラーレンズを、セキュリティカード左下に配置できるよう、具備した。
当該パターニング面に対して温水40℃で現像した後、エッチングにて所望の形状を得ることができた。
<検証>
マスク上の転写形状部の設計については、上記のようにコーティングされたレジストの解像度に依存するため、マスクの描画値に依存されない。このため、最終的に得られたエッチング後の形状で検証を行った。
エッチング後の形状としては、凹部の底幅、曲面凸部の幅、高さ、ピッチ幅および頂部の曲率半径の大きさが、加工形状として主に制御できるものと考えて加工した。
凹部の底幅を、5μm〜25μmに対して、5μmごとに段階的に変えられた形状を得た。また、その他の曲面凸部の形状については、エッチング条件である浸漬時間やスプレー噴射圧力などの条件によって、10μmごとに段階的に変えられた形状を得た。
上述の過程を経た複数のSUS304材(板厚0.5mm、300mm角サイズの圧延材料)を用意し、上述の加工を行った後、硝酸5%水溶液に浸漬しながらバフ研磨を#400で処理した。これにより、凹部の曲率を2.5μm〜10μmに対して、1μm〜2μmごとに段階的に変えられたマスター原版を得た。
(カード用原版の製造)
<めっき工程>
(1)下地層形成処理
上述により得られたマスター原版の転写形状部を有する面に対し、スルファミン酸ニッケル(400g/L)とほう酸(30g/L)で調整した光沢スルファミン酸ニッケルめっき液を用いて、40℃〜50℃の設定温度で電解めっきを行い、下地層(ニッケルめっき)を形成した。電解めっきの際の電流密度は、3A/dm、pHは4.5とした。下地層の厚さは0.1μmであった。
(2)無電解めっき層形成処理
次に、奥野製薬工業株式会社製のトップニコロンMP−GEにおいて、MP−AGEを150ml/L、MP−BGEを50ml/Lを建浴条件とし、温度85℃、pH4.5として無電解めっき法により下地層上に無電解めっき層(無電解ニッケルめっき)を形成し、めっき層とした。なお、無電解めっき層の厚さは50μmであった。
<剥離工程>
マスター原版の表面にめっき層を付した状態で100℃程度の熱風で乾燥し、当該マスター原版からめっき層を剥離して、厚さ100μmのカード用原版を得た。剥離しためっき層においては、無電解めっき層と、下地層である電解めっき層が存在するが、その下地層だけを剥離するため、佐々木化学薬品製のエスバックH−150Nを使い、温度30度で設定した。その後、クリーンオーブン内において400℃で2時間熱処理を行い、JIS Z 2244に従ったビッカース硬度(Hv)で900〜950程度の高い硬度を得たことで、強度のある表面を有するカード用原版を得た。
(セキュリティカードの製造)
ポリカーボネートを主成分としたシート基材(50μm〜100μm厚)とカーボンブラックを含有したポリカーボネートを主成分としたカード基材(50μm〜100μm厚)との積層体を予め準備し、上述の方法により得たカード用原版を平面プレス機に装着し、当該積層体のシート基材に対して、200℃、20分、1kg/cmでプレスを行った。
その後、30分程度冷却を行い、シート基材が硬化する温度にまで低下させたのち、平面プレス機を開放し、当該積層体からカード用原版を離脱させることにより、シート基材がレンチキュラーレンズに成形されたレンチキュラーレンズシートを得た。
その後、上記レンチキュラーレンズを介して2方向からYAGレーザー照射を行い、カード基材に2種類の画像部の印字を行った。
この実施により、当該カード基材上にレンチキュラーレンズを有するレンチキュラーレンズシートが積層されたセキュリティカードを得ることができた。当該セキュリティカードは、観察角度に応じてレンチキュラーレンズを介して視認される画像部の情報が変化するものであった。
1 … 金属基板
1a … 金属基板材料
2 … 転写形状部
3 … 曲面凸部
4 … 凹部
5 … 基板平面部
10 … セキュリティカード用マスター転写原版(マスター原版)
11 … めっき層
12 … 基板
13 … レンチキュラーレンズ形成部
14 … 半円柱形レンズ形成部
15 … レンズ間溝部形成部
16 … 平面部
17 … 下地層
18 … 無電解めっき層
20 … セキュリティカード用転写原版(カード用原版)
21 … レンチキュラーレンズシート
22 … カード基材
23 … 半円柱形レンズ
24 … レンズ間溝部
25 … レンチキュラーレンズ
26 … シート平坦部
27、27a、27b … 画像部
30 … セキュリティカード

Claims (12)

  1. 金属基板の一側に基板平面部および転写形状部を有し、
    前記転写形状部が、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う前記曲面凸部の間に設けられた凹部と、
    を有するセキュリティカード用マスター転写原版の製造方法であって、
    金属基板材料の一側をエッチングして、前記転写形状部においてストライプ状に設けられた複数の凸部および前記凸部の間の凹部、並びに前記基板平面部を形成するエッチング工程と、
    前記凸部の頂部を研磨して、頂部に曲面を有する前記曲面凸部を形成する研磨工程と、
    を有することを特徴とするセキュリティカード用マスター転写原版の製造方法。
  2. 前記エッチング工程において、前記凹部が底部に曲面を有するように形成されることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティカード用マスター転写原版の製造方法。
  3. 前記エッチング工程において、前記凸部の頂部から前記凹部の底部までの高さが、前記凸部の頂部から前記基板平面部までの高さ以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセキュリティカード用マスター転写原版の製造方法。
  4. 前記エッチング工程において、前記基板平面部に文字図柄刻印部が形成されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかの請求項に記載のセキュリティカード用マスター転写原版の製造方法。
  5. 基板の一側に平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を有し、
    前記レンチキュラーレンズ形成部が、ストライプ状に設けられて底部に曲面を有する複数の半円柱形レンズ形成部と、隣り合う前記半円柱形レンズ形成部の間に設けられたレンズ間溝部形成部と、
    を有するセキュリティカード用転写原版の製造方法であって、
    金属基板の一側に基板平面部および転写形状部を有し、
    前記転写形状部が、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う前記曲面凸部の間に設けられた凹部と、
    を有するセキュリティカード用マスター転写原版を使用し、
    前記セキュリティカード用マスター転写原版の前記転写形状部を有する面に、下地層および無電解めっき層がこの順に積層されためっき層を形成するめっき工程と、
    前記セキュリティカード用マスター転写原版から前記めっき層を剥離して、前記曲面凸部および前記凹部を含む前記転写形成部、並びに前記基板平面部の反転形状である、前記半円柱形レンズ形成部および前記レンズ間溝部形成部を含む前記レンチキュラーレンズ形成部、並びに前記平面部が形成された前記セキュリティカード用転写原版を得る剥離工程と、
    を有することを特徴とするセキュリティカード用転写原版の製造方法。
  6. 前記剥離工程後に、前記下地層を除去する下地層除去工程と、
    前記下地層除去工程後に、前記無電解めっき層を硬化させる加熱工程と、
    を有することを特徴とする請求項5に記載のセキュリティカード用転写原版の製造方法。
  7. 画像部を有するカード基材と、前記カード基材の一側に配置されるレンチキュラーレンズシートとを有し、
    前記レンチキュラーレンズシートが、シート平坦部およびレンチキュラーレンズを有し、
    前記レンチキュラーレンズが、ストライプ状に設けられた複数の半円柱形レンズ、および隣り合う前記半円柱形レンズの間に形成されたレンズ間溝部を少なくとも有するものであり、
    前記レンチキュラーレンズと前記画像部とが平面視上に重なって配置されるセキュリティカードの製造方法であって、
    前記カード基材の一側にシート基材を積層する準備工程と、
    前記シート基材の前記カード基材との接触面と反対側の面に、請求項5または請求項6に記載のセキュリティカード用転写原版の製造方法により得られたセキュリティカード用転写原版を転写して、前記セキュリティカード用転写原版の半円柱形レンズ形成部およびレンズ間溝部形成部を含むレンチキュラーレンズ形成部、並びに平面部の反転形状である、前記半円柱形レンズおよび前記レンズ間溝部を含む前記レンチキュラーレンズ、ならびに前記シート平坦部と、を有する前記レンチキュラーレンズシートを形成する転写工程と、
    を有することを特徴とするセキュリティカードの製造方法。
  8. 前記転写工程により、前記レンズ間溝部の底部が曲面を有する形状となることを特徴とする請求項7に記載のセキュリティカードの製造方法。
  9. 前記転写工程により形成された前記レンチキュラーレンズを介して、前記カード基材に異なる少なくとも2方向からレーザー光を照射して、前記カード基材の前記レンチキュラーレンズと平面視上に重なる位置に前記画像部を形成する印字工程を有することを特徴とする、請求項7または請求項8に記載のセキュリティカードの製造方法。
  10. 金属基板の一側に基板平面部および転写形状部を有し、
    前記転写形状部が、ストライプ状に設けられ且つ頂部に曲面を有する複数の曲面凸部と、隣り合う前記曲面凸部の間に設けられた凹部と、
    を有することを特徴とする、セキュリティカード用マスター転写原版。
  11. 前記凹部の底部が曲面を有することを特徴とする請求項10に記載のセキュリティカード用マスター転写原版。
  12. 前記基板平面部が文字図柄刻印部を有することを特徴とする請求項10または請求項11に記載のセキュリティカード用マスター転写原版。
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