JP6205960B2 - 軸受用鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば転がり軸受などといった軸受の素材である、軸受用鋼に関するものである。
一般に、軸受は、素材である軸受用鋼に熱間加工や冷間加工を施して部品形状とし、焼入れ、焼戻しなどといった熱処理を施して製造される。例えば、転がり軸受は、長寿命化を達成するために、高クロム軸受鋼SUJ2や合金鋼SCM420に、焼入れ処理や浸炭処理を施し、特に表層を高炭素のマルテンサイト組織とした後、焼戻し処理を施して製造される。
高炭素鋼に焼入れ処理を施す際に、マルテンサイト変態が完了せず、一部に未変態の残留オーステナイトが残存することがある。残留オーステナイトは熱的に不安定な相であり、焼戻し処理中に一部はフェライトとセメンタイトに変態し、また、歪みや応力によってマルテンサイトに変態する。残留オーステナイトは、応力誘起マルテンサイト変態によって加工硬化したり、応力を緩和したりするため、従来、残留オーステナイトを利用して、転動疲労寿命を向上させた転がり軸受が提案されている(例えば、特許文献1、参照)。
また、転がり軸受に存在する残留オーステナイトは、使用中に徐々に減少することが知られている。これは、使用中に負荷される荷重によって残留オーステナイトが応力誘起マルテンサイト変態することと、残留オーステナイト自体が不安定な組織であるために自然に変態が進んで減少することの、二つの理由が考えられている(例えば、非特許文献1、参照)。
転がり軸受の表層の残留オーステナイトが減少すると、転動疲労寿命の改善効果は徐々に低減すると考えられるため、予め、残留オーステナイトを増加させた転がり軸受が提案されている(例えば、特許文献2、3、参照)。特許文献2の転がり軸受は、MnやNiを増加させて、焼入れ後の残留オーステナイト量を増加させたものである。また、特許文献3の転がり軸受は、高炭素クロム鋼に浸炭処理や浸炭窒化処理を施し、残留オーステナイトを増加させたものである。
特開2004−124215号公報 特開2002−115031号公報 特開平9−72342号公報
R.C.Dommarco et.al,Wear 257(2004),1081−1088
しかし、焼入れ後の残留オーステナイトを増加させるだけでは、軸受を長寿命化することができない場合があることを本発明者らは見出した。本発明者らは、更に検討を行い、その結果、残留オーステナイトが不安定であると、焼戻し処理や転動疲労によって残留オーステナイト量が著しく減少し、軸受の長寿命化に寄与しないことがわかった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、焼入れ、焼戻し後、軸受の表層に生成する残留オーステナイトを安定化し、転動疲労に対して長寿命化することができる、軸受用鋼を提供するものである。
本発明者らは、軸受用鋼に焼戻し処理を施した際の残留オーステナイト量の減少と、転動疲労試験中の残留オーステナイト量の減少に及ぼす、化学成分の影響について検討を行った。その結果、焼戻しによる残留オーステナイト量の減少を抑制するには、適切な量のSi添加が有効であるという知見を得た。また、転動疲労による残留オーステナイト量の減少を抑制するには、微細な残留オーステナイトを均一に分散させることが有効であることがわかった。
更に、適切な量のSiを添加すると、通常の焼入れ処理及び焼戻し処理によって、残留オーステナイトが安定化し、微細な残留オーステナイトが均一に分散することもわかった。ただし、Siは焼入れ後の残留オーステナイトの増加には有効でないため、CやMnなど、焼入れ後の残留オーステナイトを増加させる合金元素との複合添加により、マルテンサイト変態が開始する温度Msを適正に制御することが重要である。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1] 質量%で、
C:0.4〜1.0%、
Si:0.75〜3.0%、
Mn:0.55〜3.0%、
Al:0.005〜0.50%、
V:0.001〜0.1%、
を含有し、
P:0.015%以下、
S:0.015%以下、
に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記(式1)で求められるマルテンサイト変態開始温度Msが100〜220℃であり、ビッカース硬さが700Hvになるように焼入れ処理及び焼戻し処理を行った後の金属組織において、円換算粒径が0.2〜2.0μmの残留オーステナイトの密度が、10個/100μm 以上であることを特徴とする軸受用鋼。
Ms=539−423[C%]−30[Mn%]−11[Si%] ・・・(式1)
ここで、[X%]は、元素Xの含有量である。
[2] 更に、残部のFeの一部に換えて、質量%で、
Cr:0.01〜3.0%、
Mo:0.001〜2.0%、
Ni:0.001〜3.0%、
Cu:0.001〜3.0%
Ti:0.001〜0.1%
1種又は2種以上を含有し、
前記(式1)に代えて、下記(式2)で求められるマルテンサイト変態開始温度Msが、100〜220℃であることを特徴とする上記[1]に記載の軸受用鋼。
Ms=539−423[C%]−30[Mn%]−11[Si%]−12[Cr%]
−7[Mo%]−18[Ni%]−18[Cu%] ・・・(式2)
ここで、上記(式2)において、[X%]は元素Xの含有量であり、含有しない元素が存在する場合は、該当する元素の含有量を0としてMsを求める。
[3] ビッカース硬さが700Hvになるように焼入れ処理、焼戻し処理を行った後の金属組織において、体積分率最大の相が焼戻しマルテンサイトであり、残留オーステナイトの体積分率が5〜40%であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の軸受用鋼。
本発明の軸受用鋼は、軸受の素材として用いられ、焼入れ処理、焼戻し処理によって軸受の表層に生成する残留オーステナイトが安定化し、また、微細に分散する。したがって、本発明の軸受用鋼によれば、例えば、転がり軸受を製造し、使用する際に、転動疲労による残留オーステナイトの減少が抑制されるなど、軸受の長寿命化が可能になり、産業上の貢献が極めて顕著である。
本発明の実施形態に係る軸受用鋼の化学成分について説明する。
本実施形態に係る軸受用鋼は、質量%で、C:0.4〜1.0%、Si:0.75〜3.0%、Mn:0.55〜3.0%、Al:0.005〜0.50%を含有し、P:0.015%以下、S:0.015%以下、に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなる。
[C:0.4〜1.0%]
Cは、焼入れ処理、焼戻し処理によって、軸受の硬さを上昇させるために必要な元素であり、焼入れ処理後の残留オーステナイトの生成にも寄与する。軸受の硬さを確保するためには、C量を0.4%以上にする必要がある。好ましくは、C量を0.5%以上とし、より好ましくは0.6%以上とする。一方、C量が過剰であると、残留オーステナイト量が過剰になり、硬さや寸法安定性が低下するため、C量の上限を1.0%とする。好ましくはC量を0.9%以下とする。
[Si:0.75〜3.0%]
Siは、焼入れ処理によって生成する残留オーステナイトを安定化させる、非常に重要な元素である。焼戻し処理による残留オーステナイトの減少を抑制し、微細な残留オーステナイトを均一に分散させるために、本発明ではSi量を0.75%以上とする。好ましくはSi量を1.0%以上とし、より好ましくは1.2%以上とする。一方、Si量が過剰であると、鋼材の脆化が顕著になるため、Si量の上限を3.0%とする。好ましくは、Si量を2.5%以下とし、より好ましくは、2.3%以下とする。
[Mn:0.55〜3.0%]
Mnは、焼入れ性の向上及び残留オーステナイトの増加に有効な元素である。軸受の硬さ及び残留オーステナイトを確保するためには、Mn量を0.55%以上にすることが必要である。Mn量は0.60%以上が好ましく、より好ましくは0.65%以上を添加する。一方、Mn量が過剰であると、残留オーステナイト量が過剰になり、硬さや寸法安定性が低下するため、Mn量の上限を3.0%とする。好ましくは、Mn量の上限を2.5%以下とし、より好ましくは2.0%以下とする。
[Al:0.005〜0.50%]
Alは、脱酸元素であり、軸受用鋼を高清浄度化するため、0.005%以上を添加する。好ましくは、Al量を0.010%以上とする。一方、Al量が0.50%より多いと、破壊起点となる粗大な介在物を生成しやすくなるため、Al量の上限を0.50%とする。好ましくは、Al量を0.10%以下とし、より好ましくは、0.05%以下とする。
[P:0.015%以下]
Pは、不純物であり、鋼材の脆化を抑制するために、P量を0.015%以下とする。
[S:0.015%以下]
Sは、不純物であり、鋼材の脆化を抑制するために、S量を0.015%以下とする。
更に、焼入れ性の向上や、焼入れ処理によって生成する残留オーステナイトを増加させるために、本実施形態に係る軸受用鋼には、必要に応じて、Cr、Mo、Ni、Cu、Ti、Vの1種又は2種以上を添加することができる。
[Cr:0.01〜3.0%]
Crは、焼入れ性の向上及び残留オーステナイトの増加のために、0.01%以上を添加することが好ましい。より好ましくは、Cr量を0.30%以上とする。ただし、過剰に添加すると、残留オーステナイトに起因して、軸受の硬さや寸法安定性が低下することがあるため、Cr量は3.0%以下が好ましい。より好ましくは、Cr量を2.5%以下とし、さらに好ましくは、Cr量を2.0%以下とする。
[Mo:0.001〜2.0%]
Moは、微量の添加で焼入れ性の向上に寄与する元素であり、また、残留オーステナイトを増加させるために、0.001%以上を添加することが好ましい。より好ましくは、Mo量を0.05%以上とし、さらに好ましくは0.15%以上とする。ただし、過剰に添加すると、残留オーステナイトに起因して、軸受の硬さや寸法安定性が低下することがあるため、Mo量を2.0%以下にすることが好ましい。より好ましくは、Mo量を1.0%以下とし、さらに好ましくは、Mo量を0.50%以下とする。
[Ni:0.001〜3.0%]
Niは、オーステナイト生成元素であり、焼入れ性の向上にも寄与する。軸受の硬さの上昇及び残留オーステナイトの増加のために、0.001%以上のNiを添加することが好ましい。より好ましくは、Ni量を0.40%以上とし、さらに好ましくは1.0%以上とする。ただし、過剰に添加すると、残留オーステナイトに起因して、軸受の硬さや寸法安定性が低下することがあるため、Ni量を3.0%以下にすることが好ましい。より好ましくは、Ni量を2.0%以下とする。
[Cu:0.001〜3.0%]
Cuは、Niと同様、オーステナイト生成元素であり、焼入れ性の向上にも寄与することから、軸受の硬さの上昇及び残留オーステナイトの増加のために、0.001%以上を添加することが好ましい。より好ましくは、Cu量を0.20%以上とし、さらに好ましくは0.50%以上とする。ただし、過剰に添加すると、残留オーステナイトに起因して、軸受の硬さや寸法安定性が低下することがあるため、Cu量を3.0%以下にすることが好ましい。より好ましくは、Cu量を2.0%以下とし、さらに好ましくは、Cu量を1.0%以下とする。
[Ti:0.001〜0.1%]
Tiは、熱処理中のオーステナイト結晶粒の粗大化抑制に有効な元素であり、0.001%以上を添加することが好ましい。より好ましくは、Ti量を0.01%以上とする。ただし、過剰に添加すると鋼材を脆化させるため、Ti量を0.1%以下にすることが好ましい。より好ましくは、Ti量を0.05%以下とする。
[V:0.001〜0.1%]
Vは、熱処理中のオーステナイト結晶粒の粗大化抑制に有効な元素であり、0.001%以上を添加することが好ましい。より好ましくは、V量を0.01%以上とする。ただし、過剰に添加すると粗大化抑制効果が失われるため、V量を0.1%以下にすることが好ましい。より好ましくは、V量を0.05%以下とする。
軸受に生成する残留オーステナイトを安定化させて軸受の長寿命化に活用するには、軸受用鋼に焼入れ処理を施した際に、残留オーステナイトを確保することが必要である。残留オーステナイトを生成させるには、焼入れ処理によって生じるマルテンサイト変態を制御することが必要である。そのため、本発明の軸受用鋼では、下記(式1)又は(式2)で定義されるMs(マルテンサイト変態が開始する温度、単位[℃])によって、マルテンサイト変態挙動を制御している。
Ms=539−423[C%]−30[Mn%]−11[Si%] ・・・(式1)

Ms=539−423[C%]−30[Mn%]−11[Si%]−12[Cr%]−7[Mo%]−18[Ni%]−18[Cu%]
・・・(式2)
ここで、上記(式1)及び(式2)において、[X%]は、元素Xの含有量(質量%)である。また、上記(式2)において、含有しない元素が存在する場合は、該当する元素の含有量を0としてMsを求める。
上記(式1)は、上記のような、必要に応じて選択的に添加される、Cr、Mo、Ni、Cuの1種又は2種以上の元素が存在しない場合に用いられる式であり、上記(式2)は、かかる添加元素が存在する場合に用いられる式である。上記(式1)及び(式2)を比較すると明らかなように、上記(式2)において、Cr、Mo、Ni、Cuの含有量をゼロとした場合が(式1)となっている。従って、上記の添加元素が存在しない場合であっても上記(式1)に代えて上記(式2)を用いても良い旨は、言うまでもない。
Msが大きいと、マルテンサイト変態が促進されるため、焼入れ処理後の残留オーステナイトが減少する。Msが220℃より大きいと、焼入れ処理後に十分な量の残留オーステナイト量が得られず、軸受の転動疲労寿命の改善が不十分になるため、上限を220℃とする。好ましくは、Msを200℃以下とし、より好ましくはMsを180℃以下とする。
一方、Msが小さいと、マルテンサイト変態の開始が遅延するため、焼入れ処理後の残留オーステナイトが増加し、粗大になる。Msが100℃未満の場合、残留オーステナイトが過剰になり、焼入れ処理後に十分な硬さが得られず、残留オーステナイトが粗大になり、軸受を使用する際の安定性が低下する。したがって、Msの下限を100℃とする。好ましくは、Msを120℃以上とし、より好ましくはMsを140℃以上とする。
本発明の軸受用鋼の製造方法は特に限定されるものではなく、常法で、鋼を溶製し、連続鋳造し、得られた鋼片を熱間圧延することによって製造される。鋼片には、必要に応じて、均熱拡散処理や分塊圧延を施すことができる。本発明の軸受用鋼は、例えば、棒鋼であり、必要に応じて、熱間鍛伸、焼準や球状化焼鈍処理を施してもよい。
軸受には高い荷重が負荷されるため、高強度であることが求められる。特に、転がり軸受は、軸受用鋼を軌道輪と転動体の形状に加工後、焼入れ焼戻し処理を行ない、主たる組織を高強度のマルテンサイト組織とすることで高強度を達成している。したがって、本発明の軸受用鋼に焼入れ、焼戻しを施した際には、体積分率最大の相が焼戻しマルテンサイトであることが好ましく、焼戻しマルテンサイトの残部が残留オーステナイトであることがより好ましい。なお、焼戻しマルテンサイトの体積分率は、60%以上であることが好ましい。
また、残留オーステナイトは、軸受の長寿命化に有効な組織である。十分な効果を得るためには、焼入れ、焼戻し処理後、軸受用鋼に体積分率5%以上の残留オーステナイトが存在することが好ましい。一方、残留オーステナイトは強度が低く、過剰に存在すると、軸受の硬さが低下し、転動疲労特性が低下する。そのため、焼入れ、焼戻し処理後、軸受用鋼に存在する残留オーステナイトの体積分率を40%以下とすることが好ましい。
焼入れ処理及び焼戻し処理後の軸受用鋼の組織の観察及び残留オーステナイトの体積分率の測定は、ビッカース硬さが700Hvになるように調整して行なう。なお、残留オーステナイトの体積分率は、X線回折法によって測定することができる。測定に使用する試料は、本発明の軸受用鋼に、焼入れ処理及び焼戻し処理を施して採取すればよい。軸受用鋼の焼入れ処理は、例えば810〜900℃程度の温度に加熱して、冷却すればよく、焼戻し処理は、150〜450℃程度の温度で行い、ビッカース硬さを700Hvに調整すればよい。このとき、±30Hvの誤差範囲を許容する(670〜730Hv)。軸受の製造と同条件の焼入れ処理及び焼戻し処理を施すことが好ましい。なお、Si添加量が増加するほど、焼入れ処理及び焼戻し処理を高温で行うことが好ましい。
金属組織の観察は、光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で行う。光学顕微鏡による組織観察では、焼戻しマルテンサイトと、フェライトやパーライトなどとの区別が可能であり、焼戻しマルテンサイトの面積分率が最大であるとき、体積分率最大の相が焼戻しマルテンサイトであると評価する。SEMによる観察は、本発明の軸受用鋼に焼入れ処理及び焼戻し処理を施し、試料を採取すれば、行うことができ、これにより、残留オーステナイトの円換算粒径を求める。円換算粒径は、残留オーステナイトの面積を測定し、測定で得られた残留オーステナイトの面積に相当する直径を計算して求める。採取した試料は、電解腐食法ミクロ組織を現出させて観察を行う。
残留オーステナイトは、軸受に作用する応力により、使用中に徐々に応力誘起マルテンサイト変態することで、残留オーステナイトの体積分率は軸受使用中に徐々に減少する。軸受を長寿命化するためには、微細な残留オーステナイトを分散させて、残留オーステナイト量の減少を抑制することが有効である。
円換算粒径で2.0μmを超える残留オーステナイトは、比較的低い応力で応力誘起マルテンサイト変態するため、転動疲労によって早期に消失し、軸受の長寿命化にあまり寄与しない。したがって、軸受用鋼に焼入れ処理、焼戻し処理を施した状態で生成した残留オーステナイトは、円換算粒径で2.0μm以下であることが好ましい。ただし、円換算粒径が2.0μmを超える残留オーステナイトの存在は許容される。
一方、円換算粒径で0.2μm未満の残留オーステナイトは、軸受に負荷される荷重によって、ほとんど応力誘起マルテンサイト変態しない。また、円換算粒径で0.2μm未満の残留オーステナイトが応力誘起マルテンサイト変態しても、発生する残留応力が小さく、応力緩和効果も小さいため、軸受の寿命改善にあまり寄与しない。したがって、軸受用鋼に焼入れ処理、焼戻し処理を施した状態で生成した残留オーステナイトは、円換算粒径で0.2μm以上であることが好ましい。ただし、円換算粒径が0.2μm未満の残留オーステナイトの存在は許容される。
また、残留オーステナイトは、微細であると同時に均一に分散していることが好ましい。均一性の目安として、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)で任意の100μmの領域を10視野観察した場合に、円換算粒径が0.2〜2.0μmの残留オーステナイトが、平均10個/100μm以上存在することが好ましい。体積分率が40%を超えなければ、個数密度は大きいほど好ましいので、上限は規定しない。なお、円換算粒径が0.2μm未満及び2.0μm超の残留オーステナイトが存在する場合、これらを無視して残留オーステナイトの個数密度を測定する。
以下、実施例を示しながら、本発明の実施形態に係る軸受用鋼について具体的に説明する。なお、以下に示した実施例は、本発明の実施形態に係る軸受用鋼の一例であって、本発明に係る軸受用鋼が以下に示した実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学成分を有する鋼を熱間圧延し、棒鋼とした。得られた棒鋼を素材として、熱間加工及び冷間加工を行い、表2に示す条件でHV=700となるように焼入れ処理及び焼戻し処理を施して、直径58mmとなるリング形状のスラスト式転動疲労試験片(転動疲労試験片)を作製した。試験片の表面には、機械加工及び研磨加工を施した。転動疲労試験片を用いて、表3に示す条件で転動寿命疲労試験を実施した。なお、表1に記載したMsは、含有する化学成分に応じて、上記(式1)又は(式2)を用いて算出した。
Figure 0006205960
Figure 0006205960
Figure 0006205960
また、転動疲労試験片と同条件で焼入れ処理及び焼戻し処理を施して試料を採取し、光学顕微鏡観察によって、焼戻しマルテンサイトの体積分率が60%以上であることを確認し、残留オーステナイト量をX線回折法により測定した。また、試験片の垂直断面から表層ミクロ組織の観察サンプルを作製し、電解研磨後に電解放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)にてミクロ組織を観察した。観察範囲を10μm四方とし、5視野の円換算粒径0.2〜2.0μmの残留オーステナイトの個数を測定した。円換算粒径0.2〜2.0μmの残留オーステナイトの、100μmあたりの平均個数を表4に示す。
Figure 0006205960
表4に示したように、No.1〜16の軸受用鋼を用いた結果、L10寿命が20×10回以上となり、転動疲労寿命が良好であることわかった。一方、Si量が少ないNo.17、Msが高いNo.19及び20は、残留オーステナイト量が少なく、転動疲労寿命が低下している。Msが低い比較例18及び21は、残留オーステナイトが多くなり、転動疲労寿命が低下している。また、不純物元素であるPが過剰な比較例22、Sが過剰な比較例23も、L10寿命は短寿命である。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.4〜1.0%、
    Si:0.75〜3.0%、
    Mn:0.55〜3.0%、
    Al:0.005〜0.50%、
    V:0.001〜0.1%、
    を含有し、
    P:0.015%以下、
    S:0.015%以下、
    に制限し、
    残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    下記(式1)で求められるマルテンサイト変態開始温度Msが、100〜220℃であり、
    ビッカース硬さが700Hvになるように焼入れ処理及び焼戻し処理を行った後の金属組織において、円換算粒径が0.2〜2.0μmの残留オーステナイトの密度が、10個/100μm 以上である
    ことを特徴とする、軸受用鋼。

    Ms=539−423[C%]−30[Mn%]−11[Si%]
    ・・・ (式1)
    ここで、上記(式1)において、[X%]は元素Xの含有量である。
  2. 更に、残部のFeの一部に換えて、質量%で、
    Cr:0.01〜3.0%、
    Mo:0.001〜2.0%、
    Ni:0.001〜3.0%、
    Cu:0.001〜3.0%
    Ti:0.001〜0.1%
    1種又は2種以上を含有し、
    前記(式1)に代えて、下記(式2)で求められるマルテンサイト変態開始温度Msが、100〜220℃であることを特徴とする、請求項1に記載の軸受用鋼。

    Ms=539−423[C%]−30[Mn%]−11[Si%]−12[Cr%]
    −7[Mo%]−18[Ni%]−18[Cu%] ・・・ (式2)

    ここで、上記(式2)において、[X%]は元素Xの含有量であり、含有しない元素が存在する場合は、該当する元素の含有量を0としてMsを求める。
  3. ビッカース硬さが700Hvになるように焼入れ処理及び焼戻し処理を行った後の金属組織において、
    体積分率最大の相が焼戻しマルテンサイトであり、残留オーステナイトの体積分率が5〜40%であ
    とを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受用鋼。
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