JP6205854B2 - 真空浸炭処理方法 - Google Patents

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Description

この発明は真空浸炭処理方法に関し、詳しくは処理中における結晶粒粗大化を抑制するための技術手段に特徴を有する真空浸炭処理方法に関する。
例えば歯車や軸受部品,シャフトその他の高い表面硬度が求められる機械部品では、一般にSCR420等のJIS鋼種を部品形状に加工した後、浸炭焼入れを施し、表面硬化処理して使用している。
従来にあってはこの浸炭処理のために長時間を要しており、その間に消費するエネルギーも多大であり、生産性向上とエネルギー節減とによるコスト低減とが求められていた。
処理炉内を真空引きし、減圧状態の下で浸炭を行う真空浸炭では、処理炉の耐久性の向上により高温浸炭を行うことが可能であり、真空浸炭にて高温度で浸炭処理を行うことで、浸炭処理に要する時間を短縮化することができる。
これにより生産性を高め得るとともにエネルギーを節減して生産コストを低減することができる。
しかしながら高温浸炭処理を行うと結晶粒の粗大化を生じ易い。結晶粒が粗大化すると疲労強度等の特性を劣化させたり、焼入れ歪みを増大させてしまう等の問題を生ずる。
従って高温浸炭処理に際しては結晶粒の粗大化を抑制することが必要である。
結晶粒の粗大化を抑制する技術として、浸炭処理前の製造工程でAlNやNb(C,N)といった窒化物粒子をピン止め粒子として析出分散させ、粒界をピン止めする技術が知られている。
例えば下記特許文献1,特許文献2等にこの種の技術が開示されている。
この場合、AlNやNb(C,N)等の窒化物粒子(ピン止め粒子)を十分に析出させるためには、NとAlやNbを鋼に多く添加する必要がある。
しかし予め溶解段階でN濃度を高くすることは困難である。
鋼中に析出するAlNやNb(C,N)等の窒化物粒子の析出量は、窒化物粒子の構成元素の溶解度積によって定まるから、N濃度を高くすることが困難な状況でも、AlやNb等を多く添加することで窒化物粒子を多く析出させることは可能である。
但し浸炭前製造工程でAlNやNb(C,N)といった窒化物粒子を多く析出させて結晶粒粗大化を抑制する技術にあっては、鋼の硬さの増大をもたらして加工性を悪化させてしまう。
またたとえ浸炭前製造工程で鋼にAlN等を十分量析出させたとしても、真空下での高温浸炭処理では処理中に脱窒を起す問題があり、而して脱窒を起すと窒化物粒子の固溶が進んで減少するために、その部分から結晶粒の粗大化が生じてしまう。
一方、浸炭処理中における脱窒及び脱窒による結晶粒粗大化を防ぐ目的で、また窒素供給により窒化物粒子を形成して微細粒安定性を保証する目的で、真空浸炭処理中(加熱による昇温期を含む)に処理炉内にNH等の窒化性ガスを導入する技術も知られている。
下記特許文献3にこの種の技術が開示されている。
しかしながらこの特許文献3に記載のものは、単に窒化性ガスを導入することを開示するのみで、結晶粒粗大化因子との関係で、どのタイミングでどの程度の窒化性ガスを導入すれば良いか等の点については何等開示していない。
窒化性ガスの導入量が不十分であれば、真空浸炭処理中における脱窒や脱窒に起因した結晶粒粗大化を十分に抑制することができず、逆に窒化性ガスの導入量が過剰であれば、次の問題が生ずる。
窒化性ガスとして主として用いられるアンモニアガスを過剰に流すと処理炉に悪影響を及ぼす。詳しくは電極等に使うカーボンの減量を生じたり、またCuの合金を用いていればCuが腐食されてしまう。
またアンモニアガスは値段の高いガスであるとともに臭気も強く、危険物を扱う作業者も必要となる。
従ってこのようなアンモニアガスを過剰に用いることは望ましくない。
特開2001−303174号公報 特開平8−199303号公報 独国特許出願公開第10322255号明細書
本発明は以上のような事情を背景とし、浸炭処理中において、結晶粒粗大化に影響を与える因子(結晶粒粗大化因子)の変動に応じて必要且つ適正量での処理炉への窒化性ガスの導入を可能とする真空浸炭処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1は真空浸炭処理方法に関するもので、質量%でC:0.10〜0.40%,Si:0.05〜2.00%,Mn:0.30〜2.00%,Cr:0.30〜3.00%,N:0.005〜0.035%、窒化によりピン止め粒子を形成するピン止め粒子形成元素として、Al:0.020〜0.100%,Nb:0.01〜0.20%,Ti:0.005〜0.20%のうちの1種若しくは2種以上、を含有し、残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する鋼を、処理炉内でA3点以上の温度に加熱して保持し、減圧状態の下で浸炭性ガスにて浸炭処理する真空浸炭処理方法であって、前記鋼の表層の、Alの窒化物AlN,Nbの窒化物NbN,Tiの窒化物TiNの1種若しくは2種以上から成る窒化物粒子の総量V(質量%)が、浸炭処理中に以下の式(1)の値以上を維持するように浸炭処理中に前記処理炉内に窒化性ガスを導入し窒化雰囲気制御することを特徴とする。
(3.33×10-5×C+7.33×10-5)×T−(3.58×10-2×C+7.37×10-2)・・・式(1)
(但し式(1)中、Cは前記鋼の表層のC濃度(質量%)を表し、Tは処理温度(K)を表す)
尚本発明では、好ましくは上記窒化物粒子の総量Vが式(1)の値以上を維持するように窒化性ガスを導入することで、浸炭処理中の表層の結晶粒を結晶粒度番号4番超に維持するようにする。
請求項2のものは、請求項1において、前記鋼が質量%でMo:0.80%以下を更に含有する組成であることを特徴とする。
発明の作用・効果
本発明において、式(1)は結晶粒粗大化を抑制するのに必要な最小限の窒化物粒子(ピン止め粒子)の総量を表している。
結晶粒の粒成長は窒化物粒子即ちピン止め粒子によって抑制される。
その結晶粒の粒成長は、鋼の温度が高くなると生じ易くなる。従ってピン止めの粒子としての窒化物粒子の総量は、温度が高くなるのに連れて多くが必要である。
即ち結晶粒の粒成長抑制のために必要な窒化物粒子の総量は温度の関数となる。
これに加えて、本発明者等は真空浸炭処理のプロセスにおいて、結晶粒が粒成長する温度即ち結晶粒粗大化温度と鋼中のC濃度との間に密接な関係があり、C濃度が高いほど結晶粒粗大化温度が低下すること、即ち結晶粒が粒成長し易くなることを突き止めた。
従って結晶粒の粒成長抑制のために必要な窒化物粒子の総量は、鋼中のC濃度が高いほど多くが必要である。
つまり結晶粒の粒成長抑制に必要な窒化物粒子の総量は、温度TとC濃度との関数であることを知得した。
後に明らかにされるように、結晶粒成長の抑制に必要な最小限の窒化物粒子の量は種々の試験、研究の結果上記式(1)で表されることを見出した。
従って、式(1)で表される量を上回る量で鋼中(鋼の表面から深さ0.05mmまでの表層)に窒化物粒子を析出させておけば、結晶粒成長を抑制することができる。
本発明において、鋼の表層のAlの窒化物AlN,Nbの窒化物NbN,Tiの窒化物TiNの1種若しくは2種以上から成る析出窒化物粒子の総量Vが式(1)以上となるようにする、とはこのことを意味している。
ここでVは実際に鋼中に析出している窒化物粒子の総量で、このVの値は、浸炭処理時において鋼中(鋼の表層)に含まれるNの量とAl,Nb,Tiの量(但し介在物,晶出物となっているものを除く)、及びAlとN,NbとN,TiとNのそれぞれの溶解度積に基づいて求めることができる。
本発明ではAlとNとの溶解度積を表す式として
log([Al]×[N])=1.03−6770/T・・・式(2)
を用いる。この式(2)はW.C.Leslieの式として知られた式(W.C.Leslie,R.L.Rickett,C.L.Dotson and W.C.Walton:Trans.ASM,46(1954),1470.)である。AlとNとの溶解度積を表す式としては、このW.C.Leslieの式が広く用いられている。
またNbとNとの溶解度積を表す式として
log([Nb]×[N])=2.89−8500/T・・・式(3)
を用いる(成田貴一,小山伸二:鉄と鋼,52(1966),788)。
更にTiとNとの溶解度積を表す式として
log([Ti]×[N])=5.03−17800/T・・・式(4)
を用いる(有川正康,成田貴一:鉄と鋼,38(1952),739)。
以下にこれら溶解度積の式を用いた、Vの具体的な求め方を説明する。
[Al],[Nb],[Ti],[N]:各元素の全量(介在物,晶出物は除く)
[Al],[Nb],[Ti],[N]:各元素の固溶量
[Al],[Nb],[Ti],:各元素の析出量
Figure 0006205854
:窒化物AlN,NbN,TiNそれぞれにおけるN析出量
[AlN],[NbN],[TiN]:各窒化物析出量
Al,MNb,MTi,M:各元素の原子量
logKAlN=log([Al]×[N]),logKNbN=log([Nb]×[N]),logKTiN=log([Ti]×[N])=b−a/T
としたとき、
各窒化物中の元素量の関係から
Figure 0006205854
各元素の収支から
(エ) [Al]+[Al]=[Al]
(オ) [Nb]+[Nb]=[Nb]
(カ) [Ti]+[Ti]=[Ti]
Figure 0006205854
各析出物中の原子量比の関係より
Figure 0006205854
溶解度積の関係より
(サ) [Al]×[N]=KAlN
(シ) [Nb]×[N]=KNbN
(ス) [Ti]×[N]=KTiN
(エ),(ク),(サ)より
Figure 0006205854
(オ),(ケ),(シ)より
Figure 0006205854
(カ),(コ),(ス)より
Figure 0006205854
(キ)に(セ),(ソ),(タ)を代入すると、
[N]+M/MAl×{[Al]−KAlN/[N]}+M/MNb×{[Nb]−KNbN/[N]}+M/MTi×{[Ti]−KTiN/[N]}=[N]
[N] +(M/MAl×[Al]+M/MNb×[Nb]+M/MTi×[Ti]−[N])×[N]−(M/MAl×KAlN+M/MNb×KNbN+M/MTi×KTiN)=0
ここで
X=(M/MAl×[Al]+M/MNb×[Nb]+M/MTi×[Ti]−[N]
Y=−(M/MAl×KAlN+M/MNb×KNbN+M/MTi×KTiN
と置くと、
[N] +X・[N]+Y=0
Figure 0006205854
Figure 0006205854
(ア)に(ク)を代入し、さらにこれに(サ)′を代入すると、図13(A)に示すように式(5)が得られる。
また同様にして図13(B),(C)に示す式(6),式(7)が得られる。
そして下記式(8)で示すようにAlN,NbN,TiNの総量Vが鋼中(鋼の表層)の窒化物粒子の総量として求まる。
V=[AlN]+[NbN]+[TiN]・・・式(8)
以上のように本発明によれば、真空浸炭の処理中において、鋼中のC濃度(鋼の表層のC濃度)と処理温度とで定まる式(1)の値、即ち結晶粒成長を抑制するのに必要な最小量の窒化物粒子の量を表す式(1)の値を上回るように、鋼中に窒化物粒子を析出させておくことで、結晶粒が粗大化してしまうのを抑制することができる。
換言すれば、窒化物粒子を上記の量で析出させるのに必要な量で窒化性ガスを熱処理炉に導入することで結晶粒粗大化を抑制することが可能となる。
かかる本発明では、鋼の溶解段階で予め多量のNを鋼に含有させておかなくても、真空浸炭の際に窒化性ガス導入により窒化物粒子をピン止め粒子として形成させることが可能であるため、必ずしも浸炭前の鋼の製造工程において多くの窒化物粒子を分散析出させておかなくても良く、そうすることで鋼の加工性の悪化を防ぎないし抑制することが可能となる。
また真空浸炭処理中に脱窒を起すことで、そこから粒成長を起してしまう問題も解決することが可能である。
更に浸炭処理中において、必要な適正量でアンモニア等の窒化性ガスを供給することが可能であり、窒化性ガスの導入量が不十分であることによって、脱窒や粒成長を起してしまうのを抑制することが可能であるとともに、逆に窒化性ガスの供給量が過剰であることによって、処理炉の炉材に大きなダメージを与えてしまったり、腐食を助長してしまったりする問題を解決することが可能である。
更に高価なアンモニアガス等の使用量を少なくでき、窒化性ガスに要するコストを低減することが可能である。
尚本発明においては、窒化性ガスの導入量を変化させることで鋼中のN濃度がどの様に変動するか、その関係を予め知っておくことで、窒化性ガスの導入量を適正に制御することができる。
次に本発明における鋼の化学成分の限定理由を以下に説明する。
C:0.10〜0.40%
Cは部品の芯部強度を確保するために、0.10%以上必要であるが、多すぎると芯部の靭性を劣化させるので、0.40%を上限とする。
Si:0.05〜2.00%
Siは脱酸のために0.05%以上を必要とするが、2.00%を超えると鍛造時に割れ等が発生して冷間加工性、温間加工性を非常に劣化するので、上限を2.00%とする。
Mn:0.30〜2.00%
MnはMnS等の介在物形態制御を図ると共に焼入性を確保するために必要な元素であり、そのためには0.30%以上必要である。しかし、多すぎると冷間加工性や温間加工性、更に機械加工性、特に被削性の劣化をもたらすので、2.00%を上限とする。
Cr:0.30〜3.00%
Crは強度或いは靭性を向上させる元素であり、0.30%以上含有させる。但し過剰に添加すると加工性の劣化を招くとともにコスト高をもたらすため、上限を3.00%とする。
N:0.005〜0.035%
NはAlやNb或いはTiと結合してピン止め粒子としての窒化物粒子を形成し、真空浸炭処理時に結晶粒成長を抑制するために有用な元素で、予め鋼中に0.005〜0.035%の範囲内で含有させておくことができる。
但し本発明は、鋼に予め添加されているNが少ない中で効果を発揮するものであり、この意味においてNの添加量は0.020%以下であることが好ましい。
Al:0.020〜0.100%,Nb:0.01〜0.20%,Ti:0.005〜0.20%
Al,Nb,Tiは浸炭処理時に結晶が粒成長するのを抑制するのに有効な元素であり、そのためにAl:0.020〜0.100%,Nb:0.01〜0.20%,Ti:0.005〜0.20%のうちの1種又は2種以上を添加する。
但し多すぎると加工性を劣化させたり、粗大な窒化物生成をするため、上記の範囲内で各元素を添加する。
Mo:0.80%以下
Moは強度を向上させる元素であり、必要に応じてこれを添加する。但し0.80%を超えて過剰に添加すると加工性の劣化を招くとともにコスト高をもたらすので、上限を0.80%以下とする。
Moの好ましい添加量は0.01〜0.30%である。
尚、鋼の溶解に際してP:<0.030%,S:<0.030%が不可避的不純物として含まれてしまうことがあるのに加えて、特に電気炉を用いた溶解では、Cu,NiがそれぞれCu:<0.30%,Ni:<0.25%のレベルで鋼中に含まれてしまうことがある。本発明においてこのようなレベルで含まれて来るCu,Niもまた不可避的な不純物成分である。
結晶粒粗大化の有無を調査するための浸炭処理条件を示した図である。 0.2%Cにおける窒化物粒子量と処理温度との関係を表した図である。 0.6%Cにおける窒化物粒子量と処理温度との関係を表した図である。 0.8%Cにおける窒化物粒子量と処理温度との関係を表した図である。 式(1)の傾きa及び切片bについてC濃度依存性を示した図である。 析出N量及び析出X量と溶解度積の関係を示した図である。 本発明の効果を確認するために実施した真空浸炭処理の処理条件を示した図である。 図7の処理条件で浸炭処理を行ったときの表層C濃度の変化を示した図である。 処理温度1050℃での表層窒化物粒子量の変化を示したグラフである。 処理温度1025℃での表層窒化物粒子量の変化を示したグラフである。 処理温度1000℃での表層窒化物粒子量の変化を示したグラフである。 図8とは異なる材料を用いた場合の処理温度1050℃での表層窒化物粒子量の変化を示したグラフである。 AlN,NbN,TiNの各析出量を表した式である。
次に本発明の実施形態を以下に説明する。
[I](式(1)の導出試験)
表1に示すように種々のAl,Ti,Nb,N量を有するJIS SCR420鋼において、形状がφ25×100mmの試験片を用い、図1に示すように種々の温度で1hrのガス浸炭を行って表層C濃度を0.2〜0.8%Cまで変化させ、結晶粒粗大化の有無を調査した。
尚、用いた浸炭ガスその他の浸炭処理条件は以下とした。
滴注式ガス浸炭炉を用い、滴注液CHOH:600ml/h,調整ガス:C,N、処理時間120minとした。
またC濃度の測定は、試験片表面から0.05mmの旋削屑を採取し、JIS G 1211-3に準拠して燃焼分析にてC定量を行った。
また結晶粒粗大化の有無は、JIS G 0551の結晶粒度試験方法に準拠して判定した。
ここで表1に示す鋼は、鋼に含有されているN量の変化によって表層N濃度が0.008〜0.025%まで変化している。
尚表1の鋼において、P:≦0.030%,S:≦0.030%,Cu:≦0.30%,Ni:≦0.25%で含まれている場合は、これを不純物として表示を省いている。
Figure 0006205854
また介在物Alとして析出しているOは表示を省略し、更にAlについては残りのAl(s-Al)についてのみピン止め粒子としての窒化物粒子形成用に有効な量としてこれを表示している。
更にTi添加鋼であるk,lについては、モル比でN量以下のTiはTiNとして晶出し、ピン止め粒子形成に寄与しないことから、残りのTiのみを表1中余剰Tiとして表示している。
因みにTiNとして晶出する分を含めて、実際に当初の鋼中に含まれているTiはkがTi:0.049%であり、lがTi:0.051%である。
またNについてはkがN:0.010%でlがN:0.009%である。
また介在物Alとして析出する分を含めて、当初鋼中の全Alの量は鋼aが0.050%で、bが0.026%,cが0.031%,dが0.035%,eが0.039%,fが0.050%,gが0.018%,hが0.021%,iが0.026%,jが0.033%,kが0.004%,lが0.004%,mが0.004%,nが0.004%。
図2は0.2%(質量%。以下同じ)Cにおいて、図3は0.6%Cにおいて、更に図4は0.8%Cにおいて、それぞれ横軸に窒化物粒子量(質量%)を、縦軸に処理温度(K)をとって、結晶粒が粗大化するのを抑制する最小の窒化物粒子量と処理温度との関係を求めたものである。
これらの図において、図中右上りの直線は結晶粒が粗大化する領域と粗大化抑制される領域との境界を表している。
図2,図3及び図4の結果から、鋼中C濃度が高くなるほど結晶粒粗大化温度が低下していることが見て取れる。
従ってC濃度が高くなるほど、結晶粒粗大化抑制のためにより多くの窒化物粒子(ピン止め粒子)を生成し析出させておくことが必要である。
図2,図3,図4中、右上りの斜めの直線は窒化物粒子量をVとして、V=a×T+bで表される。
ここでaは直線の傾き、bは切片である。
つまり各C濃度において、結晶粒粗大化の有無は下記式
V=a×T+b
で整理でき、0.2%C,0.6%C,0.8%Cではそれぞれ以下の式となる。
V=8.00×10−5×T−8.08×10−2(0.2%C)
V=9.31×10−5×T−9.53×10−2(0.6%C)
V=1.00×10−4×T−1.02×10−1(0.8%C)
0.2%C,0.6%C,0.8%Cそれぞれの直線の傾きa,切片bからa,bのC濃度依存性を求めると、図5にも示しているように
a=3.33×10−5×C+7.33×10−5
b=−3.58×10−2×C−7.37×10−2
となる。
即ち結晶粒粗大化防止のために必要な最小の窒化物粒子量は
(3.33×10−5×C+7.33×10−5)×T−(3.58×10−2×C+7.37×10−2)・・・式(1)
にて表すことができる。
従って実際の鋼中(鋼の表層)の窒化物粒子の析出量Vが以下の式
V≧(式(1)の値)
を満たすことで、即ちそのようなVを浸炭処理中維持することで、結晶粒粗大化を防ぐことができる。
尚Al,Nb,TiのそれぞれとNとの結合により析出する窒化物粒子の量と、各元素とNとの溶解度積との関係は図6に示すようになる。
図中Aは溶解度積を表す曲線で、BはAl等XとNとの窒化物におけるX量(質量%)とN量(質量%)との関係(比率)を表している。
例えばAlとNとの窒化物を例にとった場合、曲線Aと直線Bとの交点PとP(Pは鋼中に含有されるAl量を横軸(x軸)の値xとし、N量を縦軸(y軸)の値yとして(x,y)で特定される座標値)とを結ぶ線分のx軸成分が析出Al量となり、y軸成分が析出N量となる。
尚、曲線Aよりも下の領域がAl,Nの固溶領域となる。
[II](効果確認試験)
表2に示す組成の各種鋼を真空溶製して950〜1250℃にてφ30mmまで熱間鍛造し、910℃×1hrの焼準を施した後、φ25×100mmの試験片を作製し、真空浸炭処理を行った。
尚[I]の試験片についても同様にして作製している。
尚表1について述べたのと同様に、表2において、P:≦0.030%,S:≦0.030%,Cu:≦0.30%,Ni:≦0.25%で含まれている場合は、これを不純物として表示を省いている。
また介在物Alとして析出しているOは表示を省略し、更にAlについては残りのAl(s-Al)についてのみピン止め粒子としての窒化物粒子形成用に有効な量としてこれを表示している。
更にTi添加鋼であるqについては、モル比でN量以下のTiはTiNとして晶出し、ピン止め粒子形成に寄与しないことから、残りのTiのみを表2中余剰Tiとして表示している。
因みにqにおいてTiNとして晶出する分を含めて、実際に当初の鋼中に含まれているTiはTi:0.049%である。またNについては0.010%である。
また介在物Alとして析出する分を含めて、当初鋼中の全Alの量は鋼oが0.031%で、pが0.031%,qが0.032%,rが0.031%である。
Figure 0006205854
ここでの真空浸炭処理は次のような条件の下で行った。
即ち炉容積400Lの処理炉を用い、炉内を真空引きして1500Paの減圧状態とし、1273〜1323Kの範囲内で処理温度を種々変化させて真空浸炭処理を行った。
ここで処理J,K,Lと、処理G,H,Iと、処理A,B,C,D,E,F,M,N,Oとでは浸炭条件を図7に示すように異ならせてある。
またその際の窒化性ガスの導入による窒化の有無に関しては処理A,G,Jと、処理B,E,F,H,I,K,L,M,N,Oと、処理Cと、処理Dとで図7に示すように処理の内容を異ならせてある。
これらの浸炭処理中、処理の進行途中の種々のタイミングで試験片を処理炉から取り出して急冷し、試験片表面から0.05mmまでの深さの旋削屑を採取し、燃焼分析にてCの定量とNの定量とを行った。
ここでCの定量はJIS G 1211-3に準拠して行い、Nの定量についてはJIS G 1228-5に準拠して行った。
これらの結果が表3及び表4に示してある。
また表3及び表4の結果に基づいて、表層C濃度の変化が図8に、1323K(1050℃)の処理温度の下での表層窒化物粒子量の変化が図9に、1298K(1025℃)の処理温度の下での表層窒化物粒子量の変化が図10に、1273K(1000℃)の処理温度の下での表層窒化物粒子量の変化が図11に示してある。
また窒化物粒子形成元素としてのNb,Tiを添加した場合の1323K(1050℃)の処理温度の下での表層窒化物粒子量の変化が図12に示してある。
Figure 0006205854
Figure 0006205854
Figure 0006205854
Figure 0006205854
図8に示しているように、鋼の表層のC濃度は、浸炭期に浸炭ガスとしてCを作用させることで急激に高くなっており、また処理温度が高いほどC濃度は高くなっている。
尚、ここでは処理温度が低くなるのに伴って浸炭期の長さを段階的に長くしてある。
このように鋼の表層のC濃度は、浸炭処理の進行に伴って変化する。従って結晶粒成長抑制のための窒化物粒子の必要量もこれに応じて浸炭処理中に変動する。
図9〜図12中の曲線S1〜S4は、浸炭処理の進行に伴う式(1)の値の変化を表している。即ち曲線S1〜S4は結晶粒粗大化が生じるか粗大化抑制されるかの境界、即ちしきい値を示す曲線である。
これらの図に示しているように、浸炭処理の全期間を通じて窒化物粒子の量が式(1)で表される曲線S1〜S4を上回っている処理例においては、何れも浸炭処理後における結晶粒が結晶粒度番号4超、即ち5以上を維持できている。
尚、結晶粒は浸炭処理の途中の過程で一旦粗大化してしまうとその後微細化することはなく、浸炭処理後の最終の結晶粒は粗大化したままとなる。
従って表3及び表4の各処理において、処理後の結晶粒の結晶粒度番号の値は、浸炭処理の全期間を通じて鋼の表層の結晶粒の結晶粒度番号が、その値以上を維持していることを併せて示している。
以上本発明の実施形態を詳述したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。

Claims (2)

  1. 質量%で
    C:0.10〜0.40%
    Si:0.05〜2.00%
    Mn:0.30〜2.00%
    Cr:0.30〜3.00%
    N:0.005〜0.035%
    窒化によりピン止め粒子を形成するピン止め粒子形成元素として、
    Al:0.020〜0.100%
    Nb:0.01〜0.20%
    Ti:0.005〜0.20%
    のうちの1種若しくは2種以上
    を含有し、残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する鋼を、処理炉内でA3点以上の温度に加熱して保持し、減圧状態の下で浸炭性ガスにて浸炭処理する真空浸炭処理方法であって、
    前記鋼の表層の、Alの窒化物AlN,Nbの窒化物NbN,Tiの窒化物TiNの1種若しくは2種以上から成る窒化物粒子の総量V(質量%)が、浸炭処理中に以下の式(1)の値以上を維持するように浸炭処理中に前記処理炉内に窒化性ガスを導入し窒化雰囲気制御することを特徴とする真空浸炭処理方法。
    (3.33×10-5×C+7.33×10-5)×T−(3.58×10-2×C+7.37×10-2)・・・式(1)
    (但し式(1)中、Cは前記鋼の表層のC濃度(質量%)を表し、Tは処理温度(K)を表す)
  2. 請求項1において、前記鋼が質量%で
    Mo:0.80%以下
    を更に含有する組成であることを特徴とする真空浸炭処理方法。
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