JP6205646B2 - ダイ接着用複合シート - Google Patents

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Description

本発明は、エポキシ樹脂を含有するフィルム状接着剤から隣接する粘着剤層へのエポキシ樹脂の移行が抑制されたダイ接着用複合シートに関する。
半導体装置の製造時には、片面にダイ接着用複合シートが固定された状態の大径の半導体ウエハを小片の半導体チップに切断分離する、所謂ダイシングが行われる。ダイ接着用複合シートは、通常、基材フィルム、粘着剤層及びフィルム状接着剤をこの順に備えて構成され、フィルム状接着剤が半導体ウエハに貼付される。そして、ダイシング後の各半導体チップは、硬化によって粘着力が低下した粘着剤層から、フィルム状接着剤と共に剥離させてピックアップし、フィルム状接着剤を介して基板、リードフレーム、他の半導体チップ等に接着する、所謂ダイボンディングが行われる。
このようなダイ接着用複合シートでは、フィルム状接着剤に硬化性成分の一種としてエポキシ樹脂が含有される(例えば、特許文献1参照)。
特開2010−254763号公報
一方で、このようなダイ接着用複合シートでは、フィルム状接着剤のエポキシ樹脂等の硬化性成分の含有量が多い場合に、フィルム状接着剤から隣接する粘着剤層にエポキシ樹脂が移行してしまうという問題点があった。このようにエポキシ樹脂が移行してしまうと、半導体ウエハや半導体チップに貼付されたダイ接着用複合シートの、温度変化の履歴を経た場合の信頼性が低下してしまうことがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルム状接着剤から隣接する粘着剤層へのエポキシ樹脂の移行が抑制され、温度変化の履歴を経た場合の信頼性が高く、半導体ウエハへの貼付性に優れるダイ接着用複合シートを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、基材フィルム、粘着剤層及びフィルム状接着剤をこの順に備えてなり、前記フィルム状接着剤は、エポキシ樹脂、軟化点が115℃以上のフェノール樹脂、及びガラス転移温度が0℃未満のアクリル系共重合体を含有することを特徴とするダイ接着用複合シートを提供する。
本発明のダイ接着用複合シートは、前記フィルム状接着剤において、[前記アクリル系共重合体の含有量(質量)]:[前記エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の総含有量(質量)])が、5:95〜15:85であることが好ましい。
本発明によれば、フィルム状接着剤から隣接する粘着剤層へのエポキシ樹脂の移行が抑制され、温度変化の履歴を経た場合の信頼性が高く、半導体ウエハへの貼付性に優れるダイ接着用複合シートが提供される。
本発明に係るダイ接着用複合シートを模式的に例示する断面図である。
<ダイ接着用複合シート>
本発明に係るダイ接着用複合シートは、基材フィルム、粘着剤層及びフィルム状接着剤をこの順に備えてなり、前記フィルム状接着剤は、エポキシ樹脂、軟化点が115℃以上のフェノール樹脂、及びガラス転移温度が0℃未満のアクリル系共重合体を含有することを特徴とする。
かかるダイ接着用複合シートは、上記のように、軟化点が特定範囲のフェノール樹脂、及びガラス転移温度(Tg)が特定範囲のアクリル系共重合体を用いたフィルム状接着剤を備えることにより、フィルム状接着剤のエポキシ樹脂等の硬化性成分の含有量が多い場合でも、フィルム状接着剤から粘着剤層へのエポキシ樹脂の移行が抑制され、温度変化の履歴を経た場合の信頼性が高く、半導体ウエハへの貼付性に優れたものとなる。
図1は、本発明に係るダイ接着用複合シートを模式的に例示する断面図である。
ここに示すダイ接着用複合シート1は、基材フィルム11上に粘着剤層12及びフィルム状接着剤13がこの順に積層されてなるものである。
粘着剤層12は、基材フィルム11の表面11aに積層されている。
フィルム状接着剤13は、粘着剤層12の表面12aの一部に積層されており、フィルム状接着剤13の表面13aが半導体ウエハ及び半導体チップへの接着面となる。
ただし、本発明に係るダイ接着用複合シートは、ここに示すものに限定されない。
[フィルム状接着剤]
フィルム状接着剤は、感圧接着性及び加熱硬化性を有し、未硬化状態では被着体に軽く押圧するか、または加熱してフィルム状接着剤を軟化させることで貼付できる。フィルム状接着剤は、熱硬化を経て最終的には耐衝撃性が高い硬化物となり、かかる硬化物はせん断強度にも優れ、厳しい高温・高湿度条件下においても十分な接着特性を保持し得る。
フィルム状接着剤は、エポキシ樹脂(以下、「エポキシ樹脂(b)」と記載することがある)、軟化点が115℃以上のフェノール樹脂(以下、「フェノール樹脂(c)」と略記することがある)、及びガラス転移温度が0℃未満のアクリル系共重合体(以下、「アクリル系共重合体(a)」と略記することがある)を含有する。
フィルム状接着剤は、その構成成分が配合されてなる接着剤組成物を塗布し、乾燥させることで形成できる。接着剤組成物の非揮発性成分同士の含有量の比率は、フィルム状接着剤においても同じである。
フィルム状接着剤の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、1〜100μmであることが好ましく、5〜75μmであることがより好ましく、5〜50μmであることが特に好ましい。
(アクリル系共重合体(a))
アクリル系共重合体(a)は、バインダー樹脂として機能し、例えば、フィルム状接着剤に造膜性及び可撓性を付与するために用いられるものである。
アクリル系共重合体(a)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリル系共重合体(a)としては、公知のものを用いるこができる。
アクリル系共重合体(a)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。アクリル系共重合体(a)の重量平均分子量が小さ過ぎると、フィルム状接着剤と前記粘着剤層との接着力が高くなって、半導体チップのピックアップ不良が生じることがある。また、アクリル系共重合体(a)の重量平均分子量が大き過ぎると、被着体の凹凸面へフィルム状接着剤が追従できないことがあり、ボイド等の発生要因になることがある。
なお、本明細書において、重量平均分子量とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
アクリル系共重合体(a)のガラス転移温度(Tg)は、0℃未満であり、−10℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがより好ましい。前記ガラス転移温度がこのような範囲であることで、フィルム状接着剤は、適度な柔軟性を有するものとなり、半導体ウエハへの貼付性に優れたものとなる。そして、このようなフィルム状接着剤は、半導体ウエハや半導体チップへ貼付された状態を安定して維持でき、温度変化の履歴を経た場合の信頼性(パッケージ信頼性)が高いものとなる。
アクリル系共重合体(a)のガラス転移温度の下限値は、特に限定されないが、−60℃であることが好ましい。前記ガラス転移温度が前記下限値以上であることで、ダイ接着用複合シートは温度変化の履歴を経た場合の高い信頼性を有する。
アクリル系共重合体(a)を構成するモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート;
シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の環状骨格を有する(メタ)アクリレート;
ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが例示できる。
また、アクリル系共重合体(a)は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、N−メチロールアクリルアミド等のモノマーが共重合されたものでもよい。
アクリル系共重合体(a)を構成する2種以上のモノマーの組み合わせは、特に限定されない。
アクリル系共重合体(a)は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系共重合体(a)がこれら官能基により結合することで、ダイ接着用複合シートを用いた半導体装置のパッケージ信頼性が向上する傾向がある。
接着剤組成物の、固形分の総含有量に対するアクリル系共重合体(a)の含有量の割合は、3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
(エポキシ樹脂(b))
エポキシ樹脂(b)としては、公知のものが挙げられ、具体的には、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が例示できる。
また、エポキシ樹脂(b)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ樹脂の一部が不飽和炭化水素基を含む基に変換されてなる化合物が例示できる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へアクリル酸を付加反応させることにより製造できる。また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を含む基が直接結合した化合物等が例示できる。不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、具体的には、エテニル基(ビニル基)、2−プロペニル基(アリル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基等が例示でき、アクリロイル基が好ましい。
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系共重合体(a)との相溶性が高い。このため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を含む接着剤組成物を用いることで、半導体装置のパッケージ信頼性が向上する。
エポキシ樹脂(b)は、フィルム状接着剤から粘着剤層への移行抑制効果がさらに高くなることから、芳香環を有するものが好ましい。
エポキシ樹脂(b)の数平均分子量は、特に限定されないが、フィルム状接着剤の硬化性や硬化後の強度及び耐熱性の観点から、300〜30000であることが好ましく、400〜10000であることがより好ましく、500〜3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(b)のエポキシ当量は、100〜1000g/eqであることが好ましく、300〜800g/eqであることがより好ましい。
エポキシ樹脂(b)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(フェノール樹脂(c))
フェノール樹脂(c)は、軟化点が115℃以上のものであり、エポキシ樹脂(b)に対する硬化剤として機能する。
フェノール樹脂(c)としては、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基として水酸基を2個以上有するものが例示できる。
このようなフェノール樹脂(c)としては、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂等が例示できる。
フェノール樹脂(c)は、不飽和炭化水素基を有するものでもよい。
不飽和炭化水素基を有するフェノール樹脂(c)としては、フェノール樹脂の水酸基の一部を、不飽和炭化水素基を含む基で置換してなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を含む基が直接結合した化合物等が例示できる。フェノール樹脂(c)における不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
フェノール樹脂(c)は、軟化点が115℃以上であり、120℃以上であることが好ましい。フェノール樹脂(c)の軟化点が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤から粘着剤層へのエポキシ樹脂の移行が抑制される。またその結果、フィルム状接着剤は、半導体ウエハや半導体チップへ貼付された状態を安定して維持でき、温度変化の履歴を経た場合の信頼性(パッケージ信頼性)が高いものとなる。
また、フェノール樹脂(c)の軟化点の上限値は特に限定されないが、160℃であることが好ましい。フェノール樹脂(c)の軟化点が前記上限値以下のものは、入手が容易である。
フェノール樹脂(c)の数平均分子量は、300〜30000であることが好ましく、400〜10000であることがより好ましく、500〜3000であることが特に好ましい。
フェノール樹脂(c)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
接着剤組成物のフェノール樹脂(c)の含有量は、エポキシ樹脂(b)100質量部に対して、0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましい。フェノール樹脂(c)の含有量が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の接着力がより向上する。また、フェノール樹脂(c)の含有量が前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤の吸湿率が低減されて、パッケージ信頼性がより向上する。
フィルム状接着剤(接着剤組成物)において、アクリル系共重合体(a)の含有量と、エポキシ樹脂(b)及びフェノール樹脂(c)の総含有量との質量比([アクリル系共重合体(a)の含有量(質量)]:[エポキシ樹脂(b)及びフェノール樹脂(c)の総含有量(質量)])は、5:95〜15:85であることが好ましい。
フィルム状接着剤において、エポキシ樹脂(b)及びフェノール樹脂(c)の総含有量の比率がこのように高いことで、フィルム状接着剤の硬化後の弾性率が高くなり、フィルム状接着剤の硬化後にワイヤボンディングを行う場合に、半導体チップの振動、変位が抑制され、ワイヤボンディングを安定して行えるようになる。また、フィルム状接着剤の硬化後の硬化度(重合度)が高くなり、パッケージ信頼性がさらに向上する。また、通常は、フィルム状接着剤において、エポキシ樹脂(b)及びフェノール樹脂(c)の総含有量、すなわち硬化性成分の含有量の比率がこのように高い場合には、フィルム状接着剤から粘着剤層へのエポキシ樹脂の移行が生じ易いが、本発明においてはこのようなエポキシ樹脂の移行が従来よりも顕著に抑制される。
例えば、「特開2010−254763号公報」(上述の特許文献1)には、メタクリル酸メチル及び又はメタクリル酸エチルを20〜50重量%を含む、ガラス転移温度が0℃以上、重量平均分子量が10万以上のアクリル系ランダム共重合体を必須成分とする接着剤組成物が開示されている。そして、この文献の実施例4には、ガラス転移温度が5℃以上のアクリル系ランダム共重合体と、軟化点が130℃のフェノール樹脂とを含有するフィルム状接着剤が開示されているが、このフィルム状接着剤は、半導体ウエハや半導体チップに対して十分な接着性が得られない可能性がある。また、このフィルム状接着剤は、[アクリル系ランダム共重合体の含有量(質量)]:[エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の総含有量(質量)])が17:83であり、エポキシ樹脂(b)及びフェノール樹脂(c)の総含有量の比率が比較的低いため、フィルム状接着剤の硬化後の硬化度(重合度)が十分に高くならないことで、パッケージ信頼性が不十分となる可能性がある。そして、この文献には、上述のエポキシ樹脂(b)及びフェノール樹脂(c)の総含有量の比率等、本発明の構成を示唆する記載はない。
本発明においては、フェノール樹脂(c)の軟化点が115℃以上と高い値であることにより、フェノール樹脂(c)自体がフィルム状接着剤中で移動し難いのに加え、このようなフェノール樹脂(c)がエポキシ樹脂(b)との間で分子間の相互作用を発現することにより、エポキシ樹脂(b)もフィルム状接着剤中で移動し難くなっており、その結果、エポキシ樹脂のフィルム状接着剤から粘着剤層への移行が抑制されていると推測される。そして、エポキシ樹脂(b)が芳香環を有するものである場合に、フェノール樹脂(c)とエポキシ樹脂(b)との間の分子間の相互作用は、これら分子間での芳香環同士の相互作用に起因することによって、エポキシ樹脂のフィルム状接着剤から粘着剤層への移行抑制効果がさらに高くなると推測される。
フィルム状接着剤は、その各種物性を改良するために、アクリル系共重合体(a)、エポキシ樹脂(b)及びフェノール樹脂(c)以外に、さらに必要に応じて、これらに該当しない他の成分を含有する接着剤組成物を用いて形成されたものでもよい。
接着剤組成物が含有する他の成分で好ましいものとしては、硬化促進剤(d)、カップリング剤(e)、アクリル系共重合体(a)以外の熱可塑性樹脂(以下、「熱可塑性樹脂(f)」と略記することがある)、無機充填材(g)、汎用添加剤(h)等が例示できる。
(硬化促進剤(d))
硬化促進剤(d)は、接着剤組成物の硬化速度を調整するために用いられる。
好ましい硬化促進剤(d)としては、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が例示できる。
硬化促進剤(d)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化促進剤(d)を用いる場合、接着剤組成物における硬化促進剤(d)の含有量は、エポキシ樹脂(b)及びフェノール樹脂(c)の総含有量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜1質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(d)の含有量がこのような範囲であることで、フィルム状接着剤の高温・高湿度条件下での接着特性がより向上する。硬化促進剤(d)の含有量が前記下限値以上であると、硬化促進剤(d)を用いたことによる効果が十分に得られる。また、硬化促進剤(d)の含有量が前記上限値以下であると、高極性の硬化促進剤(d)は、高温・高湿度条件下でのフィルム状接着剤中において、被着体との接着界面側への移動による偏析が抑制されて、パッケージの信頼性がより向上する。
(カップリング剤(e))
カップリング剤(e)として、無機化合物と反応する官能基及び有機官能基と反応する官能基を有するものを用いることにより、フィルム状接着剤の被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(e)を用いることで、フィルム状接着剤を硬化して得られる硬化物について、その耐熱性を損なうことなく、耐水性を向上させることができる。
カップリング剤(e)は、アクリル系共重合体(a)、エポキシ樹脂(b)、フェノール樹脂(c)等が有する官能基と反応する官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることが望ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等のシラン化合物や、これらシラン化合物の加水分解縮合物等が例示できる。
カップリング剤(e)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
カップリング剤(e)を用いる場合、接着剤組成物のカップリング剤(e)の含有量は、アクリル系共重合体(a)、エポキシ樹脂(b)及びフェノール樹脂(c)の総含有量100質量部に対して、0.03〜20質量部であることが好ましく、0.05〜10質量部であることがより好ましく、0.1〜5質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(e)の含有量が少な過ぎると、カップリング剤(e)を用いたことによる上述の効果が得られないことがあり、カップリング剤(e)の含有量が多過ぎると、アウトガスが発生する可能性がある。
(熱可塑性樹脂(f))
熱可塑性樹脂(f)は、前記粘着剤層のフィルム状接着剤からの剥離性を向上させて、易ピックアップ性を向上させたり、被着体の凹凸面へのフィルム状接着剤の追従によってボイド等の発生を抑制するものである。
熱可塑性樹脂(f)は、重量平均分子量が1000〜10万のものが好ましく、3000〜8万のものがより好ましい。
熱可塑性樹脂(f)のガラス転移温度(Tg)は、−30〜150℃であることが好ましく、−20〜120℃であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂(f)としては、ポリエステル、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が例示できる。
熱可塑性樹脂(f)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
接着剤組成物の熱可塑性樹脂(f)の含有量は、固形分の総含有量に対する割合として、5〜30質量%であることが好ましく、8〜25質量%であることよりが好ましい。熱可塑性樹脂(f)の含有量がこのような範囲であることで、上述した効果を得ることが容易となる。
熱可塑性樹脂(f)の使用により、上述のような効果が得られる一方、硬化前のフィルム状接着剤が高温に晒された際の硬さが低下し、未硬化又は半硬化の状態におけるフィルム状接着剤のワイヤボンディング適性が低下する懸念がある。そこで、接着剤組成物のアクリル系共重合体(a)の含有量は、このような影響を考慮した上で設定することが好ましい。
(無機充填材(g))
接着剤組成物は、さらに無機充填材(g)を含有することにより、フィルム状接着剤の硬化後の熱膨張係数の調整が容易となる。これにより、半導体チップや金属又は有機基板に対して、硬化後のフィルム状接着剤の熱膨張係数を最適化し、パッケージ信頼性をより向上させることができる。
また、接着剤組成物は、さらに無機充填材(g)を含有することにより、硬化後のフィルム状接着剤の吸湿率を低減することもできる。
好ましい無機充填材(g)としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末;これらシリカ等を球形化したビーズ;これらシリカ等の単結晶繊維;ガラス繊維等が例示できる。
これらの中でも、無機充填材(g)は、シリカフィラー又はアルミナフィラーであることが好ましい。
無機充填材(g)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機充填材(g)を用いる場合、接着剤組成物の、固形分の総含有量に対する無機充填材(g)の含有量の割合は、5〜80質量%であることが好ましく、7〜60質量%であることがより好ましい。このようにすることで、上記の熱膨張係数の調整という効果を得ることがより容易となる。
(汎用添加剤(h))
汎用添加剤(h)としては、公知の可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料、染料、ゲッタリング剤等が例示できる。
(溶媒)
接着剤組成物は、希釈によってその取り扱い性を良好とするために、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
前記溶媒は、特に限定されないが、好ましいものとしては、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2−プロパノール、イソブチルアルコール(2−メチルプロパン−1−オール)、1−ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が例示できる。
接着剤組成物が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
接着剤組成物が含有する溶媒は、接着剤組成物で用いる各成分を均一に混合する点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
接着剤組成物が溶媒を含有する場合の溶媒の含有量は、接着剤組成物の全量に対して5〜90質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。
接着剤組成物は、アクリル系共重合体(a)、エポキシ樹脂(b)、フェノール樹脂(c)、及び必要に応じてこれら以外の他の成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15〜30℃であることが好ましい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
[基材フィルム]
基材フィルムの材質は、各種樹脂であることが好ましく、具体的には、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE等))、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニルフィル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリウレタンアクリレート、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、これらのいずれかの樹脂の水添加物、変性物、架橋物又は共重合物等が例示できる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する概念とする。
基材フィルムは1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよく、複数層からなる場合、各層の材質はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同じであってもよい。
基材フィルムの厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、50〜300μmであることが好ましく、60〜100μmであることがより好ましい。
基材フィルムは、その上に設けられる粘着剤層との接着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されたものでもよい。また、基材フィルムは、表面がプライマー処理を施されたものでもよい。
これらの中でも基材フィルムは、ダイシング時のブレードの摩擦による基材フィルムの断片の発生が抑制される点から、特に表面が電子線照射処理を施されたものが好ましい。
[粘着剤層]
前記粘着剤層は、硬化後にフィルム状接着剤に対する粘着力が低くなることで、半導体チップに対して易ピックアップ性を有するものであり、公知のものでよい。
粘着剤層は、目的とする成分を含有する粘着剤組成物を用いて形成される。好ましい粘着剤層としては、アクリル酸エステル共重合体、イソシアネート系架橋剤及び反応遅延剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成されたものが例示できる。前記粘着剤組成物は、その保存中に目的としない架橋反応の進行が抑制されるために、保存中の粘度等の特性の変化が抑制され、保存性が高い。
粘着剤組成物の非揮発性成分同士の含有量の比率は、粘着剤層においても同じである。
粘着剤層の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、1〜100μmであることが好ましく、1〜60μmであることがより好ましく、1〜30μmであることが特に好ましい。
(アクリル酸エステル共重合体)
前記アクリル酸エステル共重合体は、エネルギー線の照射により重合する、エネルギー線重合性のものであり、水酸基を有し、さらにウレタン結合を介して重合性基を側鎖に有する。
アクリル酸エステル共重合体は、これが有する水酸基が、前記イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基と反応することで、架橋される。また、アクリル酸エステル共重合体は、重合性基を側鎖に有することで、例えば、低分子量のエネルギー線重合性化合物を別途用いて、エネルギー線の照射により重合反応させた場合よりも、重合反応後の粘着剤層の粘着性低下による被着体からの剥離性が向上し、半導体チップに対する易ピックアップ性が向上する。また、低分子量のエネルギー線重合性化合物を別途用いる必要がないので、後述するように、粘着剤層上にフィルム状接着剤を形成した場合に、このような低分子量のエネルギー線重合性化合物の粘着剤層からフィルム状接着剤への移行が抑制され、フィルム状接着剤の特性の変化が抑制される。
前記アクリル酸エステル共重合体は、通常、アクリル酸エステル及び水酸基含有モノマーが配合されてなる組成物を用いて、これを重合させて重合体を得、その重合体が有する水酸基に、イソシアネート基及び重合性基を有する化合物のイソシアネート基を反応させることで得られるが、水酸基及びイソシアネート基を反応させる(ウレタン結合を形成する)ためには、有機スズ化合物等の触媒をさらに用いる必要がある。この触媒は、反応終了後に反応系にそのまま残るが、得られたアクリル酸エステル共重合体から完全に除去するのが困難であるか、又は除去が可能であってもそのための工程が追加されることで、操作が煩雑になり、生産性も低下してしまう。そこで通常は、反応終了後に反応系から触媒は除去しないため、得られたアクリル酸エステル共重合体中に触媒が残存する。
アクリル酸エステル共重合体中に残存する前記触媒は、このようなアクリル酸エステル共重合体を用いた保存中の前記粘着剤組成物において、目的としない架橋反応を進行させ得るものである。そして、アクリル酸エステル共重合体中の水酸基1モルに対する、前記イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数が大きい場合には、特にこの傾向が強い。
これに対して、たとえ上述のイソシアネート基のモル数が大きい場合であっても、後述する反応遅延剤を用いることで、このような目的としない架橋反応の進行が抑制される。そして、この抑制効果がより向上する点から、前記アクリル酸エステル共重合体は、前記触媒の残存量(含有量)が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
前記アクリル酸エステル共重合体は、上記の条件を満たすものであれば特に限定されず、好ましいものとしては、水酸基非含有(メタ)アクリル酸エステル及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを必須の単量体として、これら単量体を共重合して得られたものの水酸基に、イソシアネート基及び重合性基を有する化合物のイソシアネート基を反応させて得られたものが例示できる。
前記水酸基非含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の、アルキル基が炭素数1〜18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロアルケニル(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のシクロアルケニルオキシアルキル(メタ)アクリレート;イミド(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレート等が例示できる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が例示できる。
前記イソシアネート基及び重合性基を有する化合物としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が例示できる。
前記アクリル酸エステル共重合体は、上述の必須の単量体以外に、(メタ)アクリル酸;イタコン酸;酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、N−メチロールアクリルアミド等の非(メタ)アクリル系単量体等の、任意の単量体が共重合されたものでもよい。
前記粘着剤組成物が含有するアクリル酸エステル共重合体は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
(イソシアネート系架橋剤)
前記イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基(−N=C=O)を有する架橋剤であれば特に限定されず、好ましいものとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基にトリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネートを付加した化合物、リジンジイソシアネート等が例示できる。
前記粘着剤組成物が含有するイソシアネート系架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
前記粘着剤組成物中のイソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基のモル数は、前記粘着剤組成物中の前記アクリル酸エステル共重合体が有する水酸基のモル数に対して0.2倍以上である。このようにすることで、粘着剤層はUV照射等による硬化後においてフィルム状接着剤に対する粘着性が小さく、半導体チップは易ピックアップ性を有する。
一方、前記粘着剤組成物中のイソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基のモル数は、前記粘着剤組成物中の前記アクリル酸エステル共重合体が有する水酸基のモル数に対して3倍以下であることが好ましい。このようにすることで、イソシアネート系架橋剤同士の副生成物の発生を抑制できる。
前記粘着剤組成物のイソシアネート系架橋剤の含有量は、イソシアネート基のモル数が上述のような範囲となるように適宜調節すればよいが、このような条件を満たしたうえで、前記アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、3〜20質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがより好ましい。
(反応遅延剤)
前記反応遅延剤は、保存中の前記粘着剤組成物において、目的としない架橋反応の進行を抑制するものである。
前記アクリル酸エステル共重合体は、通常、上述のようにその調製に用いた触媒を含有する。反応遅延剤としては、この触媒の粘着剤組成物での作用を阻害するものが例示でき、好ましいものとしては、前記触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが例示できる。例えば、前記触媒が有機スズ化合物である場合には、反応遅延剤としてスズとキレート錯体を形成するものが例示できる。
好ましい反応遅延剤として、より具体的には、分子中にカルボニル基(−C(=O)−)を2個以上有するものが例示でき、分子中にカルボニル基を2個有するものであれば、ジカルボン酸、ケト酸、ジケトン等が例示できる。
なかでも、より好ましい前記反応遅延剤としては、カルボニルメチルカルボニル基(−C(=O)−CH−C(=O)−)を有するものが例示でき、より具体的には、マロン酸、アセト酢酸等のβ−ケト酸;
アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸n−プロピル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸n−ブチル、プロピオニル酢酸tert−ブチル、ブチリル酢酸メチル、ブチリル酢酸エチル、ブチリル酢酸n−プロピル、ブチリル酢酸イソプロピル、ブチリル酢酸n−ブチル、ブチリル酢酸tert−ブチル、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸n−プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸n−ブチル、イソブチリル酢酸tert−ブチル、3−オキソヘプタン酸メチル、3−オキソヘプタン酸エチル、3−オキソヘプタン酸n−プロピル、3−オキソヘプタン酸イソプロピル、3−オキソヘプタン酸n−ブチル、3−オキソヘプタン酸tert−ブチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸メチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸エチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸n−プロピル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸イソプロピル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸n−ブチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸tert−ブチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸メチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸エチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸n−プロピル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸イソプロピル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸n−ブチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸tert−ブチル、ベンゾイル酢酸メチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸メチルエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジtert−ブチル、マロン酸メチルtert−ブチル等のβ−ケト酸エステル;
アセチルアセトン、ジベンゾイルメタン等のβ−ジケトン(1,3−ジケトン)等が例示できる。
前記粘着剤組成物が含有する反応遅延剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
前記粘着剤組成物は、全成分の合計量中、反応遅延剤を0.01〜2質量%含有していることが好ましい。反応遅延剤の前記含有量が前記下限値以上であることで、粘着剤組成物は、その保存中における目的としない架橋反応の進行抑制効果がより高くなる。また、反応遅延剤の前記含有量が前記上限値以下であることで、粘着剤層を塗布及び乾燥により設ける場合に、乾燥によって反応遅延剤を揮発させ、粘着剤層中に反応遅延剤が過剰に残存することを防止できる。
前記粘着剤組成物の反応遅延剤の含有量は、粘着剤組成物の全成分の合計量中の質量割合が上述のような範囲となるように適宜調節すればよいが、このような条件を満たしたうえで、前記アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましい。
(光重合開始剤)
前記粘着剤組成物は、アクリル酸エステル共重合体、イソシアネート系架橋剤及び反応遅延剤以外に、さらに光重合開始剤を含有するものが好ましい。
前記光重合開始剤は、公知のものでよく、具体的には、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が例示できる。
前記粘着剤組成物の光重合開始剤の含有量は、前記アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、0.05〜20質量部であることが好ましい。
(溶媒)
前記粘着剤組成物は、アクリル酸エステル共重合体、イソシアネート系架橋剤及び反応遅延剤以外に、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
前記溶媒は、特に限定されないが、好ましいものとしては、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2−プロパノール、イソブチルアルコール(2−メチルプロパン−1−オール)、1−ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が例示できる。
前記粘着剤組成物が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
前記粘着剤組成物が溶媒を含有する場合の溶媒の含有量は、40〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。
(その他の成分)
前記粘着剤組成物は、アクリル酸エステル共重合体、イソシアネート系架橋剤、反応遅延剤、光重合開始剤及び溶媒以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、これらに該当しないその他の成分を含有していてもよい。
前記その他の成分は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、染料、顔料、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤等の各種添加剤が例示できる。
前記粘着剤組成物は、アクリル酸エステル共重合体、イソシアネート系架橋剤、反応遅延剤、並びに必要に応じてこれら以外の成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15〜30℃であることが好ましい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
ダイ接着用複合シートは、通常、粘着剤層とフィルム状接着剤の露出面の上に、さらに剥離フィルムを備えて構成される。
<ダイ接着用複合シートの製造方法>
本発明に係るダイ接着用複合シートは、基材フィルム上に、粘着剤層及びフィルム状接着剤をこの順に形成することで製造できる。
粘着剤層は、基材フィルムの表面(図1においては基材フィルム11の表面11a)に前記粘着剤組成物を塗布し、乾燥させることで形成できる。このとき必要に応じて、塗布した粘着剤組成物を加熱することで、架橋してもよい。加熱条件は、例えば、100〜130℃で1〜5分間とすることができるが、これに限定されない。また、剥離材の剥離層表面に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させることで形成した粘着剤層を、基材フィルムの表面に貼り合わせ、前記剥離材を取り除くことでも粘着剤層を形成できる。
粘着剤組成物の基材フィルムの表面又は剥離材の剥離層表面への塗布は、公知の方法で行えばよく、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が例示できる。
フィルム状接着剤は、粘着剤層の表面(図1においては粘着剤層12の表面12a)に前記接着剤組成物を塗布し、乾燥させることで形成できる。
フィルム状接着剤は、上述のような基材フィルム上に粘着剤層を形成する場合と同様の方法で形成できるが、通常は、粘着剤層上に接着剤組成物を直接塗布することは困難であるため、例えば、剥離材の剥離層表面に接着剤組成物を塗布し、乾燥させることで形成したフィルム状接着剤を、粘着剤層の表面に貼り合わせ、前記剥離材を取り除くなど、フィルム状接着剤を別途形成しておき、これを粘着剤層の表面に貼り合わせることで形成することが好ましい。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
なお、粘着剤組成物の製造に用いた成分を以下に示す。
・エポキシ樹脂
(b−1):エポキシ樹脂(DIC社製「EPICLON EXA−4850−150」)
(b−2):多官能エポキシ樹脂(日本化薬社製「EPPN−502H」)
・フェノール樹脂
(c−1):明和化成社製「MEH−7851−4H」、軟化点125℃
(c’−1):昭和電工社製「BRG556」、軟化点80℃
(c’−2):明和化成社製「MEH−7851−SS」、軟化点67℃
(c’−3):明和化成社製「MEH−7851−H」、軟化点83℃
・硬化促進剤
(d−1):2−フェニルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ−PW」)
・カップリング剤
(e−1):グリシジル基を有するシランカップリング剤(信越シリコーン社製「KBM403」、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
(e−2):グリシジル基を有するシランカップリング剤(信越シリコーン社製「KBE403」、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)
(e−3):グリシジル基を有するシランカップリング剤(信越シリコーン社製「X−41−1056」)、
・熱可塑性樹脂
(f−1):ポリエステル(東洋紡社製「バイロン220」)
・無機充填剤
(g−1):球状シリカ(アドマテックス社製「SC2050」)
[製造例1]
(アクリル酸エステル共重合体の製造)
アクリル酸ラウリル(以下、「LA」と略記する)80質量部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」と略記する)(20質量部)を共重合体の原料として、重合反応を行うことで、アクリル系ポリマー(A’)を得た。各成分の配合比を表1に示す。
このアクリル系ポリマー(A’)に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」と略記する)(22質量部、HEAに対して約80モル%)、ジブチルスズラウリレート(以下、「DBTL」と略記する)(0.13質量部)を加え、空気気流中において23℃で12時間付加反応を行うことで、目的とするアクリル酸エステル共重合体(A−1)を得た。各成分の配合比を表1に示す。
[製造例2]
(アクリル系共重合体(a)の製造)
アクリル酸ブチル(以下、「BA」と略記する)(55質量部)、アクリル酸メチル(以下、「MA」と略記する)(10質量部)、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」と略記する)(20質量部)、HEA(15質量部)を共重合体の原料として、重合反応を行うことで、ガラス転移温度が−27℃、重量平均分子量が80万のアクリル系共重合体(a−1)を得た。各成分の配合比を表2に示す。
[製造例3]
(アクリル系共重合体(a’)の製造)
表2に示すように、用いる単量体をMA(95質量部)、HEA(5質量部)とした点以外は、製造例2と同様の方法で、アクリル系共重合体(a)に該当しない、ガラス転移温度が8℃、重量平均分子量が80万のアクリル系共重合体(a’−1)を得た。
<ダイ接着用複合シートの製造>
[実施例1]
図1に示す構成のダイ接着用複合シートを製造した。より具体的には、以下のとおりである。
(粘着剤組成物の製造)
製造例1で得られたアクリル酸エステル共重合体(A−1)(100質量部)に対し、光重合開始剤(Z−1)(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「イルガキュア651」、ベンジルジメチルケタール)(3質量部)、反応遅延剤としてアセチルアセトン(1質量部)を加えてよく撹拌し、さらにここへイソシアネート系架橋剤(B−1)としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート三量体付加物(日本ポリウレタン社製「コロネートHL」)(7.5質量部、アクリル酸エステル共重合体(A−1)中の残存水酸基1モルに対して、有しているイソシアネート基が1モルとなる量)を加えて23℃で撹拌することで、固形分濃度25質量%の粘着剤組成物を得た。なお、この「粘着剤組成物の製造」における配合部数は、すべて固形分換算値である。各成分の配合比を表1に示す。
(ダイシングシートの製造)
ポリエチレンテレフタレート(PET)剥離ライナーのシリコーン処理を施した剥離面上に、上記で得られた粘着剤組成物を塗布し、120℃で2分間加熱乾燥させ、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層の表面に、厚さ100μmのエチレン−メタクリル酸共重合体フィルムを貼り合せ、23℃で168時間保存することにより、ダイシングシートを得た。
(接着剤組成物の製造)
アクリル系共重合体(a−1)、エポキシ樹脂(b−1)、エポキシ樹脂(b−2)、フェノール樹脂(c−1)、硬化促進剤(d−1)、カップリング剤(e−1)、カップリング剤(e−2)、カップリング剤(e−3)、熱可塑性樹脂(f−1)、及び無機充填剤(g−1)を、固形分の総含有量に対する含有量の割合が表3に示す値となるようにメチルエチルケトンに溶解させて、23℃で撹拌することで、接着剤組成物として固形分濃度が50質量%であるメチルエチルケトン溶液を得た。
(ダイ接着用複合シートの製造)
片面がシリコーンで剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP−PET382150」)の前記剥離処理面に、上記で得られた接着剤組成物を乾燥後の厚さが7μmとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥させることにより、剥離フィルム上にフィルム状接着剤を作製した。このフィルム状接着剤の露出面に、上記の剥離フィルムとは剥離力が異なる剥離フィルム(リンテック社製「SP−PET382060」)を貼り合わせた。そして、後に貼り合わせた剥離フィルムとフィルム状接着剤を切断するように、直径200mmの円形にハーフカットを施した上で、円形の外側の不要部分を除去した。
次いで、このフィルム状接着剤から共にハーフカットした剥離フィルムを除去して、露出したフィルム状接着剤を、上記で得られたダイシングシートの粘着剤層に貼り合わせて、ダイ接着用複合シートを得た。
<ダイ接着用複合シートの評価>
(エポキシ樹脂、フェノール樹脂の移行)
ダイ接着用複合シートを23℃で1週間保存した後、フィルム状接着剤を剥離させ、露出した粘着剤層の表面について、全反射測定法(ATR法)を適用して赤外分光法(IR)により分析(分析機器:パーキンエルマー社製「spectrum one」)し、芳香環に特有な1510cm−1のピークの強度の増加の有無から、フィルム状接着剤から移行したエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の有無を確認した。そして、1510cm−1のピークが確認されなかった場合を○、確認された場合を×と評価した。結果を表4に示す。
(貼付性)
フルオートマルチウェハマウンター(リンテック社製「RAD−2700」)を用いて、60℃、貼付速度20mm/秒の条件で、半導体ウエハ(8インチサイズ、ドライポリッシュ仕上げ)にダイ接着用複合シートを貼付し、得られた半導体ウエハとフィルム状接着剤の積層体について、直ちにダイ接着用複合シートの半導体ウエハからの浮き・剥がれの有無を目視で確認した。このような試験を9個の試験片(半導体パッケージ)について行い、下記評価基準に従って、ダイ接着用複合シートの貼付性を評価した。結果を表4に示す。
[評価基準]
○:ダイ接着用複合シートの浮き及び剥がれが、9個の試験片すべて見られなかった。
△:ダイ接着用複合シートの浮き及び剥がれが、9個のうち1〜3個の試験片で見られた。
×:ダイ接着用複合シートの浮き及び剥がれが、9個のうち4個以上の試験片で見られた。
(評価用半導体パッケージの作製)
上述の貼付性の評価時と同様に、半導体ウエハ(8インチサイズ、ドライポリッシュ仕上げ、厚さ75μm)にダイ接着用複合シートを貼付し、ダイ接着用複合シートを介して前記半導体ウエハをリングフレームに固定した。
次いで、ダイシング装置(ディスコ社製「DFD651」)を用いて、ダイボンド層形成用シート上の半導体ウエハを、8mm×8mmのチップサイズにダイシングした。
評価用基板として、銅箔張り積層板(三菱ガス化学社製「CCL-HL830」)の銅箔(厚さ18μm)に回路パターンが形成され、前記回路パターン上にソルダーレジスト(太陽インキ社製「PSR-4000 AUS303」)を有している基板(ちの技研社製「LN001E−001 PCB(Au)AUS303」)を用意した。
次いで、ダイシングシートの粘着剤層の粘着性を低減させるために、照度230mW/cm、光量190mJ/cmの条件で紫外線を照射した。紫外線照射装置としては、リンテック社製「RAD−2000」を用いた。
その後、ダイシングシートにエキスパンドを行い、ダイ接着用複合シート上のチップを、ダイ接着用複合シートが備えるフィルム状接着剤とともに、ダイシングシートからピックアップした。得られたフィルム状接着剤が付着したチップを、上記の基板上にそのフィルム状接着剤を介して積層した。具体的には、温度120℃、加圧力250gf(2.45N)、加圧時間0.5秒間の条件で圧着した。
こうして得た各積層構造体を、モールド樹脂(京セラケミカル社製「KE−1100AS3」)により、封止厚が400μmになるように封止し(封止装置:アピックヤマダ社製「MPC−06M TriAl Press」)、7MPa、175℃の条件で2分間保持した後、175℃に5時間保つことにより、封止樹脂を硬化させた。こうして得られた、積層構造体が封止されてなる部材に、ダイシングテープ(リンテック社製Adwill「D−510T」)を貼付し、このダイシングテープをさらにリングフレームに貼付して、ダイシング装置(ディスコ社製「DFD651」)を使用して、15mm×15mmサイズにダイシングして、信頼性評価用の半導体パッケージを得た。
(信頼性)
得られた半導体パッケージを、85℃、相対湿度60%の条件で168時間静置して吸湿させた。次いで、最高温度260℃、加熱温度1分間のIRリフロー(リフロー炉:相模理工社製WL−15−20DNX型)を3回行い、半導体パッケージについて、ダイ接着用複合シートの半導体ウエハからの浮き・剥がれの有無を目視で確認した。また、走査型超音波探傷装置(日立建機ファインテック株式社製「Hye−Focus」)を用いた断面観察により、パッケージでのクラックの有無を確認した。このような試験を9個の試験片(半導体パッケージ)について行い、下記評価基準に従って温度変化の履歴を経た場合の信頼性を評価した。結果を表4に示す。
[評価基準]
○:ダイ接着用複合シートの浮き及び剥がれ、並びにパッケージでのクラックが、9個の試験片すべて見られなかった。
△:ダイ接着用複合シートの浮き及び剥がれ、並びにパッケージでのクラックの一以上が、9個のうち1〜3個の試験片で見られた。
×:ダイ接着用複合シートの浮き及び剥がれ、並びにパッケージでのクラックの一以上が、9個のうち4個以上の試験片で見られた。
<ダイ接着用複合シートの製造及び評価>
[比較例1〜4]
接着剤組成物の含有成分及び含有量を表3に示すとおりとした点以外は、実施例1と同様に、ダイ接着用複合シートを製造及び評価した。結果を表4に示す。
Figure 0006205646
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Figure 0006205646
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上記結果から明らかなように、フェノール樹脂として軟化点が115℃以上のもの(フェノール樹脂(c−1))、及びアクリル系共重合体としてガラス転移温度が0℃未満のもの(アクリル系共重合体(a−1))をそれぞれ用いた実施例1のダイ接着用複合シートは、フィルム状接着剤から粘着剤層へのエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の移行が抑制され、半導体ウエハへの貼付性に優れ、温度変化の履歴を経た場合の信頼性が高かった。
これに対し、フェノール樹脂として軟化点が115℃未満のもの(フェノール樹脂(c’−1)〜(c’−3))を用いた比較例1〜3のダイ接着用複合シートは、いずれもフィルム状接着剤から粘着剤層へのエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の移行が認められた。その結果、温度変化の履歴を経た場合の信頼性もやや低かった。また、アクリル系共重合体としてガラス転移温度が0℃以上のもの(アクリル系共重合体(a’−1))を用いた比較例4のダイ接着用複合シートは、半導体ウエハへの貼付性が劣っており、これに起因して温度変化の履歴を経た場合の信頼性が低かった。
本発明は、半導体チップ等の製造に利用可能である。
1・・・ダイ接着用複合シート、11・・・基材フィルム、11a・・・基材フィルムの表面、12・・・粘着剤層、12a・・・粘着剤層の表面、13・・・フィルム状接着剤、13a・・・フィルム状接着剤の表面

Claims (2)

  1. 基材フィルム、粘着剤層及びフィルム状接着剤をこの順に備えてなり、
    前記フィルム状接着剤は、エポキシ樹脂、軟化点が115℃以上のフェノール樹脂、及びガラス転移温度が0℃未満のアクリル系共重合体を含有することを特徴とするダイ接着用複合シート。
  2. 前記フィルム状接着剤において、[前記アクリル系共重合体の含有量(質量)]:[前記エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の総含有量(質量)])が、5:95〜15:85であることを特徴とする請求項1に記載のダイ接着用複合シート。
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