JP6202916B2 - 高炉スラグ含有セメントスラリー組成物及びこれを用いたソイルセメントスラリーの調製方法 - Google Patents

高炉スラグ含有セメントスラリー組成物及びこれを用いたソイルセメントスラリーの調製方法 Download PDF

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Description

本発明は、高炉スラグ微粉末を含有する結合材、混和剤及び水を含有してなる高炉スラグ含有セメントスラリー組成物及びこれを用いたソイルセメントスラリーの調製方法に関する。
ソイルセメントスラリーで杭等の硬化体を構築する場合、地盤中にセメントスラリー組成物を注入し、削孔混練機械を用いて原位置で土壌と撹拌混合するのが一般的である。またその際に用いるセメントスラリー組成物の水/結合材の質量比は、該セメントスラリー組成物を圧送するグラウトポンプ等への負荷も考慮し、60%よりも高くすることが一般的である(例えば非特許文献1参照)。しかし、セメントスラリー組成物の水/セメントの質量比を高くすると、得られる硬化体が所望の強度のものとなるようにその注入率を上げざるを得ず、結果として、建設汚泥であるセメントスラリー組成物と土壌との混合物である排出物が増加し、かかる排出物の処理費用やかかる排出物による環境への負荷が増大する。更にセメントスラリー組成物の材料分離抵抗性が低下し、それ自体の品質の安定性に問題を生じる。セメントスラリー組成物の材料分離抵抗性を向上させるため、ベントナイトやセルロース系等の増粘剤を用いて、セメントスラリー組成物の粘性を向上させることも行われているが(例えば特許文献1及び2参照)、これらの従来法では充分な効果が得られない。
セメントスラリー組成物の水/結合材の質量比を低くする一方でその粘性を低減する混和剤として、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物やメラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物と、ポリアクリル酸ナトリウム等とを併用した分散剤が知られている(例えば特許文献3及び4参照)。しかし、これらの分散剤はセメントに対する分散性が低く、水/結合材の質量比を充分に低くすることができないという問題がある。
セメントに対する分散性が高い分散剤としては、メタクリル酸やそのポリエーテルエステル化物を主成分として重合した重合物も知られている(例えば特許文献5参照)。しかし、この分散剤は水/結合材の質量比の低い領域、特に結合材として高炉スラグ微粉末を用いたセメントスラリー組成物において、粘調な沈殿物が発生し易く、これにより配管の閉塞を招いたり、セメントスラリーの均一性が失われ、品質の低下を引き起こしたりするという問題がある。
特開平6−256056号公報 特開平8−12971号公報 特開平4−367548号公報 特開平4−338144号公報 特開平6−154838号公報
「セメント系固化材による地盤改良マニュアル(第3版)」、社団法人セメント協会、2003年、113頁
本発明が解決しようとする課題は、地盤改良工事において、土壌単位体積当たりの注入量を抑制するため、水/結合材の質量比を低くした高炉スラグ含有セメントスラリー組成物を用いても、調製したソイルセメントスラリーが良好な施工性を有すると共に得られる硬化体が充分な強度を有するものとなる高炉スラグ含有セメントスラリー組成物及びこれを用いたソイルセメントスラリーの調製方法を提供する処にある。
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、結合材として特定の成分を特定割合で含有するものを用い、また水/結合材の質量比を特定範囲に調製し、更に結合材に対し特定の混和剤を特定割合で含有する高炉スラグ含有セメントスラリー組成物を用いることが正しく好適であることを見出した。
すなわち本発明は、下記の結合材、下記の混和剤及び水を含有してなる高炉スラグ含有セメントスラリー組成物であって、水/結合材の質量比が30〜60%であり、且つ結合材100質量部に対し混和剤を0.01〜3質量部の割合で含有してなることを特徴とする高炉スラグ含有セメントスラリー組成物に係る。また本発明はかかる高炉スラグ含有セメントスラリー組成物を土壌と混合することを特徴とするソイルセメントスラリーの調製方法に係る。
結合材:粉末度が2000〜11000cm/gの高炉スラグ微粉末を32〜67質量%、ポルトランドセメントを30〜65質量%及び石膏を3〜15質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るもの。
混和剤:下記のA成分及び下記のB成分からなるもの。
A成分:下記の水溶性ビニル共重合体(1)及び/又は下記の水溶性ビニル共重合体(2)。
水溶性ビニル共重合体(1):分子中に下記の化1から形成された構成単位Lを30〜60モル%及び下記の化2から形成された構成単位Mを70〜40モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜80000の水溶性ビニル共重合体。
水溶性ビニル共重合体(2):分子中に下記の化3から形成された構成単位Pを10〜65モル%及び下記の化4から形成された構成単位Qを35〜90モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜80000の水溶性ビニル共重合体。
B成分:グルコン酸、グルコン酸塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物及びメラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物の塩から選ばれる一つ又は二つ以上。
Figure 0006202916
Figure 0006202916
Figure 0006202916
Figure 0006202916
化1,化2,化3及び化4において、
,R,R,R:水素原子又はメチル基
,R:水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基
:下記の化5又は化6で示される有機基
:水素原子、メチル基又は下記の化7で示される有機基
m:1又は2の整数
AO:オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基
n:5〜100の整数
u:5〜200の整数
,X,Y:水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム又は有機アミン基
Figure 0006202916
Figure 0006202916
化6において、
t:1又は2の整数
Figure 0006202916
化7において、
Z:水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム又は有機アミン基
まず本発明に係る高炉スラグ含有セメントスラリー組成物(以下、本発明のスラリー組成物という)について説明する。本発明のスラリー組成物は、結合材、混和剤及び水を含有して成るものである。
本発明のスラリー組成物に供する混和剤は、A成分及びB成分からなるものである。A成分は前記の水溶性ビニル共重合体(1)及び/又は前記の水溶性ビニル共重合体(2)である。
水溶性ビニル共重合体(1)の構成単位Lを形成することとなる化1で示される化合物において、化1中のRは水素原子又はメチル基である。また化1中のRは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。かかる炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。更に化1中のAOはオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基である。そして化1中のmは1又は2の整数であり、nは5〜100の整数である。
かかる化1で示される化合物の具体例としては、α−アリル−ω−メトキシ−ポリエチレングリコール、α−アリル−ω−メトキシ−ポリエチレンポリプロピレングリコール、α−アリル−ω−ブトキシ−ポリエチレングリコール、α−アリル−ω−ブトキシ−ポリエチレンポリプロピレングリコール、α−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリエチレングリコール、α−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリエチレンポリプロピレングリコール、2−メチル−2−プロペン−1−オール・ポリエチレングリコール付加物、2−メチル−2−プロペン−1−オール・ポリプロピレングリコール付加物、2−メチル−2−プロペン−1−オール・ポリエチレンポリプロピレングリコール付加物、3−メチル−3−ブテン−1−オール・ポリエチレングリコール付加物、3−メチル−3−ブテン−1−オール・ポリプロピレングリコール付加物、3−メチル−3−ブテン−1−オール・ポリエチレンポリプロピレングリコール付加物等が挙げられる。尚、これらの化合物において、分子中のオキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック結合でも又はランダム結合でもよい。
水溶性ビニル共重合体(1)の構成単位Mを形成することとなる化2で示される化合物において、化2中のRは水素原子又はメチル基である。また化2中のX及びXは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム又は有機アミン基である。
かかる化2で示される化合物の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸及びそれらの塩等が挙げられる。
水溶性ビニル共重合体(1)は、化1で示される化合物から形成された構成単位Lを30〜60モル%及び化2で示される化合物から形成された構成単位Mを70〜40モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜80000の水溶性ビニル共重合体である。かかる水溶性ビニル共重合体(1)は、結合材に優れた分散性を付与し、高炉スラグ含有セメントスラリー組成物の粘性を著しく減少させる。水溶性ビニル共重合体(1)は公知の方法で合成できる。これには例えば、特開2012−51737号公報に記載された合成方法が挙げられる。
水溶性ビニル共重合体(2)の構成単位Pを形成することとなる化3で示される化合物において、化3中のRは水素原子又はメチル基である。また化3中のRは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。これらは、化1中のRについて前記したことと同じである。更に化3中のAOはオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基である。更にまた化3中のuは5〜200の整数である。そして化3中のRは前記の化5又は化6で示される有機基であり、化6中のtは1又は2の整数である。
かかる化3で示される化合物の具体例としては、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メチル−2−プロペン−1−オール・ポリエチレングリコール付加物、2−メチル−2−プロペン−1−オール・ポリプロピレングリコール付加物、2−メチル−2−プロペン−1−オール・ポリエチレンポリプロピレングリコール付加物、3−メチル−3−ブテン−1−オール・ポリエチレングリコール付加物、3−メチル−3−ブテン−1−オール・ポリプロピレングリコール付加物、3−メチル−3−ブテン−1−オール・ポリエチレンポリプロピレングリコール付加物などが挙げられる。尚、これらの化合物において、分子中のオキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック結合でも又はランダム結合でもよい。
水溶性ビニル共重合体(2)の構成単位Qを形成することとなる化4で示される化合物において、化4中のRは水素原子又はメチル基である。また化4中のYは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム又は有機アミン基である。更に化4中のRは水素原子、メチル基又は前記の化7で示される有機基であり、化7中のZは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム又は有機アミン基である。
かかる化4で示される化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸及びそれらの塩等が挙げられる。
水溶性ビニル共重合体(2)は、化3で示される化合物から形成された構成単位Pを10〜65モル%及び化4で示される化合物から形成された構成単位Qを35〜90モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜80000の水溶性ビニル共重合体である。かかる水溶性ビニル共重合体(2)は、結合材に優れた分散性を付与し、高炉スラグ含有セメントスラリー組成物の粘性を著しく減少させる。水溶性ビニル共重合体(2)は公知の方法で合成できる。これには例えば、特開2005−15338号公報に記載された合成方法が挙げられる。
本発明のスラリー組成物に供する混和剤は以上説明したようなA成分とB成分とからなるものである。B成分は、グルコン酸、グルコン酸塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物及びメラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物の塩から選ばれる一つ又は二つ以上である。なかでも、B成分としては、質量平均分子量2000〜100000のメラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物及び/又はその塩が好ましい。かかるメラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物及び/又はその塩は公知の方法で合成することができる。これには例えば、メラミンにホルムアルデヒドを縮合させ、重亜硫酸塩を添加してスルホメチル化した後、縮重合させる方法が挙げられる。
本発明のスラリー組成物に供する混和剤は、結合材100質量部に対し0.01〜3質量部の割合となるよう含有させるが、B成分を該結合材100質量部に対して1質量部以下となるよう含有させることが好ましい。混和剤の使用量がかかる割合を外れると、所望する粘性低減効果や沈殿の抑制効果が不足したり、調製したソイルセメントスラリーから得られる硬化体の強度発現性が低下したりする。
本発明のスラリー組成物に供する結合材は、高炉スラグ微粉末を32〜67質量%、ポルトランドセメントを30〜65質量%及び石膏を3〜15質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものである。
本発明のスラリー組成物において、結合材に用いる高炉スラグ微粉末は、粉末度が2000〜11000cm/gのものであるが、好ましくは粉末度が3000〜7000cm/gのものである。尚、本発明において粉末度は、JIS−R5201で規定される比表面積試験に準拠して測定した比表面積で表したものである。
本発明のスラリー組成物において、結合材に用いるポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等が挙げられる。
本発明のスラリー組成物において、結合材に用いる石膏としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏等が挙げられるが、なかでも無水石膏が好ましい。無水石膏としては、天然無水石膏や副産無水石膏等が挙げられるが、いずれにおいても90質量%以上の純度のものが好ましい。無水石膏の粉末度は、2500〜8000cm/gのものが好ましく、3000〜6500cm/gのものがより好ましい。
本発明のスラリー組成物において、水/結合材の質量比は30〜60%であるが、好ましくは35〜50%である。水/結合材の質量比が30〜60%を外れると、そのようなセメントスラリー組成物はグラウトポンプでの圧送が難しくなり、結果として得られる硬化体に所望の強度を発現させるために注入率を上げざるを得なくなって、建設汚泥である土壌とセメントスラリー組成物の混合物である排出物の排出量が増加し、それらの処理費用やそれらによる環境への負荷が増大するばかりでなく、処理に関する工数が増加して施工性が低下する。
本発明のスラリー組成物は、公知の方法で調製することができる。例えば、結合材と混和剤及び水の各所定量をミキサーに投入して練り混ぜる方法で調製することができる。混和剤は、A成分とB成分を別々に添加しても又は同時に添加してもよいが、先にB成分を投入して混合し、結合材に吸着させた後に、A成分を投入する方法が好ましい。
本発明のスラリー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じてベントナイト、石灰石微粉末、フライアッシュ、ドロマイト微粉末、消泡剤、凝結遅延剤、硬化促進剤、繊維等を併用することもできる。
本発明に係るソイルセメントスラリーの調製方法は、本発明のスラリー組成物を、原位置土壌と混合する方法である。本発明のスラリー組成物の組成や原位置土壌1m当たりたりの本発明のスラリー組成物の注入量は、ソイルセメントスラリーに要求される流動性、得られる硬化体に要求される強度、混合される原位置土壌の性状に応じて、適宜選択することができる。また本発明のスラリー組成物と原位置土壌との混合方法は特に限定されるものではないが、混合方法としては、本発明のスラリー組成物を直接地盤に注入しながら混合するCDM(Cement Deep Mixing)工法、高圧噴射撹拌工法などが挙げられる。
本発明によると、地盤改良工事において、土壌単位体積当たりの注入量を抑制するために、水/結合材の質量比を低くした高炉スラグ含有セメントスラリー組成物を用いても、調製したソイルセメントスラリーが良好な施工性を有すると共に得られる硬化体が充分な強度を有するものになるという効果がある。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
試験区分1(混和剤の調製)
・A成分の水溶性ビニル共重合体(1)に相当する水溶性ビニル共重合体(da−1)及び(da−2)の合成
α−アリル−ω−メトキシ−ポリ(33モル)エチレングリコール1512g(1.0モル)及び無水マレイン酸147g(1.5モル)を反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、徐々に加温して撹拌しながら均一に溶解した。反応系の温度を温水浴にて80℃に保ち、アゾビスイソブチロニトリル10gを投入してラジカル重合反応を開始した。2時間経過後、更にアゾビスイソブチロニトリル5gを投入し、ラジカル重合反応を6時間継続して行なった。得られた共重合体に水を加えて、その後、30%水酸化ナトリウム水溶液200gを投入して中和し、水溶性ビニル共重合体(da−1)の40%水溶液を得た。この水溶性ビニル共重合体(da−1)を分析したところ、質量平均分子量71000(GPC法、プルラン換算、以下同じ)の水溶性ビニル共重合体であった。同様にして、水溶性ビニル共重合体(da−2)を合成した。
・A成分の水溶性ビニル共重合体(1)に相当する水溶性ビニル共重合体(da−3)の合成
水2520g、2−メチル−2−プロペン−1−オールのエチレンオキシド45モル及びプロピレンオキシド8モル付加体2516g(1.0モル)及びフマル酸116g(1.0モル)を反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、徐々に加温して撹拌しながら均一に溶解した。反応系の温度を温水浴にて80℃に保ち、過硫酸ナトリウムの20%水溶液130gを投入してラジカル重合反応を開始した。2時間経過後、更に過硫酸ナトリウム20%水溶液65gを投入し、ラジカル重合反応を6時間継続して行なった。得られた共重合体に水を加え、その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を200g(1.5モル)投入して中和し、水溶性ビニル共重合体(da−3)の40%水溶液を得た。この水溶性ビニル共重合体(da−3)を分析したところ、質量平均分子量21000の水溶性ビニル共重合体であった。
・A成分の水溶性ビニル共重合体(2)に相当する水溶性ビニル共重合体(da−4)及び(da−5)の合成
水2520g、メトキシポリ(45モル)エチレングリコールモノメタクリレート2080g(1.0モル)、メタクリル酸387g(4.5モル)、30%水酸化ナトリウム水溶液400g及び3−メルカプトプロピオン酸35gを反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、撹拌しながら徐々に加温した。反応系の温度を温水浴にて60℃に保ち、過硫酸ナトリウムの20%水溶液200gを投入してラジカル重合反応を開始した。2時間経過後、更に過硫酸ナトリウムの20%水溶液50gを投入し、ラジカル重合反応を6時間継続して行なった。得られた共重合物に水を加え、水溶性ビニル共重合体(da−4)の40%水溶液を得た。この水溶性ビニル共重合体(da−4)を分析したところ、質量平均分子量28000の水溶性ビニル共重合体であった。同様にして、水溶性ビニル共重合体(da−5)を合成した。
・A成分の水溶性ビニル共重合体(2)に相当する水溶性ビニル共重合体(da−6)の合成
水990g及び3−メチル−3−ブテン−1オールのエチレンオキシド80モル付加体3606g(1.0モル)を反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、撹拌しながら徐々に加温した。反応系の温度を温水浴にて70℃に保ち、温度を安定させた。その後、アクリル酸144g(2.0モル)を3時間かけて滴下すると共に、同時にチオグリコール酸12g及びL−アスコルビン酸8gを水500gに溶解した水溶液及び5%過酸化水素水170gをそれぞれ3時間かけて滴下し、ラジカル重合反応を開始した。滴下終了後1時間経過後、得られた共重合物に水を加え、その後、30%水酸化ナトリウム水溶液200gを投入して中和し、水溶性ビニル共重合体(da−6)の40%水溶液を得た。この水溶性ビニル共重合体(da−6)を分析したところ、質量平均分子量32000の水溶性ビニル共重合体であった。以上で合成した水溶性ビニル共重合体の内容を表1にまとめて示した。
Figure 0006202916
表1において、
質量平均分子量:GPC法、プルラン換算
L―1:α−アリル−ω−メトキシ−ポリ(33モル)エチレングリコールから形成された構成単位
L―2:α−アリル−ω−ブトキシ−ポリ(80モル)エチレンポリ(9モル)プロピレングリコールから形成された構成単位
L―3:2−メチル−2−プロペン−1−オール・ポリ(45モル)エチレンポリ(8モル)プロピレングリコール付加物から形成された構成単位
M―1:マレイン酸から形成された構成単位
M―2:シトラコン酸から形成された構成単位
M―3:フマル酸から形成された構成単位
P―1:メトキシポリ(45モル)エチレングリコールモノメタクリレートから形成された構成単位
P―2:ブトキシポリ(22モル)エチレングリコールモノメタクリレートから形成された構成単位
P―3:3−メチル−3−ブテン−1−オール・ポリ(80モル)エチレングリコール付加物から形成された構成単位
Q−1:メタクリル酸から形成された構成単位
Q−2:クロトン酸から形成された構成単位
Q−3:アクリル酸から形成された構成単位
・メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物の塩(db−1)の合成
水65g、メラミン126g(1.0モル)、37%ホルマリン325g(4モル)及び30%水酸化ナトリウム水溶液5.0gを反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、撹拌しながら徐々に加温した。反応系の温度を温水浴にて75℃に保ち、無水亜硫酸ナトリウム50gを加え、スルホン酸化を行い、3時間熟成した。その後、水650g及び硫酸8gを加えて酸性にした後、70℃で重縮合反応を3時間継続して行なった。得られた縮合物に水を加え、その後、30%水酸化ナトリウム水溶液17gを投入して中和し、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物の塩(db−1)の20%水溶液を得た。このメラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物の塩を分析したところ、質量平均分子量27000の縮合物であった。
試験区分2(結合材の調製)
表2に記載の調合条件で、高炉スラグ微粉末、ポルトランドセメント及び石膏を混合して、結合材(S―1〜S―16)を調製した。
Figure 0006202916
表2において、
sg−1:粉末度が4100cm/gの高炉スラグ微粉末
sg−2:粉末度が5900cm/gの高炉スラグ微粉末
sg−3:粉末度が2500cm/gの高炉スラグ微粉末
sg−4:粉末度が8000cm/gの高炉スラグ微粉末
sg−5:粉末度が10300cm/gの高炉スラグ微粉末
N:普通ポルトランドセメント
H:早強ポルトランドセメント
gp−1:粉末度が3890cm/gの無水石膏
gp−2:粉末度が4020cm/gの半水石膏
gp−3:粉末度が3510cm/gの二水石膏
試験区分3(高炉スラグ含有セメントスラリー組成物の調製及び評価)
・高炉スラグ含有セメントスラリー組成物の調製(実施例1〜31及び比較例1〜13)
表3及び表4に記載の配合条件で、ホバートミキサーに、表2に記載の結合材(S―1〜S−16)、練り混ぜ水及び表1に記載の混和剤等を所定量投入して練り混ぜ、表3に記載した実施例1〜31の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物(SL―1〜SL―31)及び表4に記載した比較例1〜13の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物(SLR―1〜SLR―13)を調製した。
































Figure 0006202916













Figure 0006202916
表4において、
dar−1:リグニンスルホン酸ナトリウム(日本製紙社製の商品名サンエキス252)
dar−2:ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物ナトリウム塩(花王社製の商品名マイティ150)
dar−3:メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物ナトリウム塩(試験区分2で合成したdb−1)
dar−4:グルコン酸ナトリウム(試薬)
db−2:db−1/グルコン酸ナトリウム(試薬)=1/1(質量比)の混合物
db−3:グルコン酸ナトリウム(試薬)
以上はいずれも20%水溶液として使用した。
・高炉スラグ含有セメントスラリー組成物の評価
高炉スラグ含有セメントスラリー組成物の調製直後、30分静置後及び60分静置後のものについて、下記に示す方法でPロートの流下時間を測定し、粘性を評価した。また同様に下記に示す方法で高炉スラグ含有セメントスラリー組成物の沈殿率を求め、沈殿防止性を評価した。結果を表5及び表6にまとめて示した。
・Pロートによる粘性評価
土木学会コンクリート標準示方書「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(P漏斗による方法)」(JSCE−F−521−1999)に準じて、Pロートの流下時間(秒)を測定し、粘性を評価した。
・沈殿率の評価
土木学会コンクリート標準示方書JSCE−F−532−1994に使用されるポリエチレン袋を用いて、これに充填した高炉スラグ含有セメントスラリー組成物の底部に観測される粘調な沈殿物の容積率を測定し、沈殿率(容積%)を求め、沈殿防止性を評価した。
Figure 0006202916














Figure 0006202916
表5及び表6において、
・粘性の評価:60分静置後のものについてのPロートの流下時間(秒)から下記の基準で評価した。
◎:〜14.9秒
○:15.0〜19.9秒
△:20.0〜24.9秒
×:25.0秒〜
・沈殿防止評価:60分静置後のものについての沈殿率(容積%)から下記の基準で評価した。
◎:0.0〜 3.0%
○:3.0〜 5.9%
△:6.0〜11.9%
×:12.0%〜
*1:沈殿は少量であるが、上層にブリーディング水が多い。
*2:粘性が高すぎて測定できなかった。
試験区分4(ソイルセメントスラリーの調製及び評価)
・ソイルセメントスラリーの調製(実施例32〜62及び比較例18〜30)
表5及び表6に記載のセメントスラリー組成物(SL―1〜SL―31及びSLR―1〜SLR―13)を用い、ソイルセメントスラリーの単位容積当たりの結合材量が同等となるようセメントスラリー組成物の注入量を設定し、ソイルセメントスラリー組成物を調製した。調製は、ホバートミキサーに所定量のセメントスラリーを投入した後、表7に記載の物性値を有する混合土を加えて撹拌混合し、ソイルセメントスラリー(実施例32〜62及び比較例18〜30)とした。各例で調製したソイルセメントスラリーの内容を表8及び表9にまとめて示した。



Figure 0006202916
・ソイルセメントスラリーの物性評価
調製した各例のソイルセメントスラリーについて、下記に示す方法で練混ぜ直後のフロー及び得られた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。結果を表8及び表9にまとめて示した。
・フローによる流動性評価
JIS−R5201に準拠し、調製直後にフロー試験を行い、15回落下後のフロー(mm)を測定した。
・強度発現性評価
JIS−A1216に準拠して、直径50mm×高さ100mmの供試体を作製し、材齢7日と材齢28日の一軸圧縮強度(N/mm)を測定した。




























Figure 0006202916













Figure 0006202916
表8及び表9において、
セメントスラリー組成物の注入量:混合土1m当たり注入したセメントスラリー組成物の容積(m
表5、表6、表8及び表9の結果からも明らかなように、本発明のスラリー組成物を用いることにより、セメントスラリー粘性を増加させることなく水/結合材の質量比を低減し、且つ沈殿物の発生を抑制できる。また本発明のスラリー組成物を使用したソイルセメントスラリーでは、地盤改良において原位置地盤に注入するソイルセメントスラリーの量を低減しつつ、施工に充分耐え得る流動性及び強度を発現させ得ることができる。

Claims (7)

  1. 下記の結合材、下記の混和剤及び水を含有してなる高炉スラグ含有セメントスラリー組成物であって、水/結合材の質量比が30〜60%であり、且つ結合材100質量部に対し混和剤を0.01〜3質量部の割合で含有してなることを特徴とする高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
    結合材:粉末度が2000〜11000cm/gの高炉スラグ微粉末を32〜67質量%、ポルトランドセメントを30〜65質量%及び石膏を3〜15質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るもの。
    混和剤:下記のA成分及び下記のB成分からなるもの。
    A成分:下記の水溶性ビニル共重合体(1)及び/又は下記の水溶性ビニル共重合体(2)。
    水溶性ビニル共重合体(1):分子中に下記の化1で示される化合物から形成された構成単位Lを30〜60モル%及び下記の化2で示される化合物から形成された構成単位Mを70〜40モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜80000の水溶性ビニル共重合体。
    水溶性ビニル共重合体(2):分子中に下記の化3で示される化合物から形成された構成単位Pを10〜65モル%及び下記の化4で示される化合物から形成された構成単位Qを35〜90モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜80000の水溶性ビニル共重合体。
    B成分:グルコン酸、グルコン酸塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物及びメラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物の塩から選ばれる一つ又は二つ以上。
    Figure 0006202916
    Figure 0006202916
    Figure 0006202916
    Figure 0006202916
    {化1,化2,化3及び化4において、
    ,R,R,R:水素原子又はメチル基
    ,R:水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基
    :下記の化5又は化6で示される有機基
    :水素原子、メチル基又は下記の化7で示される有機基
    m:1又は2の整数
    AO:オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基
    n:5〜100の整数
    u:5〜200の整数
    ,X,Y:水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム又は有機アミン基
    Figure 0006202916
    Figure 0006202916
    (化6において、
    t:1又は2の整数)
    Figure 0006202916
    (化7において、
    Z:水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム又は有機アミン基)}
  2. B成分が、質量平均分子量2000〜100000のメラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物及び/又はその塩)である請求項1記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
  3. B成分の含有割合が、結合剤100質量部に対して1質量部以下である請求項1又は2記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
  4. 高炉スラグ微粉末が、粉末度が3000〜7000cm/gのものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
  5. 石膏が、無水石膏である請求項1〜のいずれか一つの項記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
  6. 水/結合材の質量比が、35〜50%である請求項1〜のいずれか一つの項記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか一つの項記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物を土壌と混合することを特徴とするソイルセメントスラリーの調製方法。
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