JP6201498B2 - 太陽電池モジュール用の裏面保護シート - Google Patents
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Description
先ず、本発明の裏面保護シートが使用される太陽電池モジュールの基本構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態である太陽電池モジュール1について、その層構成の一例を示す断面模式図である。太陽電池モジュール1は、図1に示すように受光面側から、透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、裏面保護シート6が順に積層された構成である。太陽電池モジュール用の裏面保護シートは、このように太陽電池モジュールにおいて最外層に配置されて使用されるものであるため、高い耐候性を備えることが必須となっている。本発明の裏面保護シート6は、このような耐候性を備えつつ、更に、外観のマット感に基づく優れた意匠性と、を兼ね備えるものである。太陽電池モジュール1の外観を構成する最外層に、本発明の裏面保護シート6を配置することによって、太陽電池モジュール1の意匠性を著しく向上させることができる。
本発明の実施形態である裏面保護シート6を、図2を用いて説明する。裏面保護シート6は、基材層60と、コーティング層61とを備える積層体である。コーティング層61は、基材層60の両面のうち、太陽電池モジュール1として一体化された際に、最外層となる側の面に形成される。
基材層60は、ポリエチレンテフタレート(PET)や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート等、耐熱性、寸法安定性、耐衝撃性、透明性、耐候性を、備える種々の樹脂シートを用いることができる。それらの中でも、加工性に優れ比較的安価で入手するPETを、好ましく用いることができる。この基材層60の一方の表面にコーティング層61が積層されて裏面保護シート6となる。基材層60の厚さは特に限定されない。但し、基材層60の厚さが15μm以上であれば機械強度の面で好ましく、300μm以下であれば加工適性の面で好ましい。
コーティング層61は、コーティング層61を形成するためのコーティング液を、基材層60の一方の表面に塗布し、塗布されたコーティング液から皮膜を形成させたものである。コーティング液としては、相分離可能な第1主剤樹脂と第2主剤樹脂との混合樹脂を主剤樹脂とし、これに無機フィラーを添加した混合物を用いる。又、コーティング層61は、上記の主剤樹脂が、ポリイソシアネート化合物等の硬化剤によって架橋した架橋樹脂として形成されているものであることが好ましい。尚、本明細書の以下の説明では、硬化剤によって架橋されて硬化する前の樹脂化合物のことを「架橋性主剤樹脂(又は単に「主剤樹脂」)」と呼び、コーティング層に含まれる樹脂、即ち硬化してコーティング層を形成している架橋樹脂と区別する。
コーティング層61を形成するためのコーティング液の主剤樹脂は、互いに相分離可能な第1主剤樹脂と第2主剤樹脂を用いる。
コーティング層61中に粗大粒子部7を形成させるために、第1主剤樹脂及び第2主剤樹脂を主たる成分とするコーティング液に無機フィラーを添加する。無機フィラーとしては、以下の無機系の顔料を好ましく用いることができる。例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック、チタンブラックやCu−Mn系複合酸化物、Cu−Cr−Mn系複合酸化物、或いは、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ケイ素、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、チタンイエロー、クロムグリーン、群青、アルミニウム粉、雲母、炭酸バリウム、タルク等を用いることができる。これらの中でも、耐候性に優れ、塗料化が容易であること及び価格を含め入手が安易であることから、白色顔料としては、酸化チタンを、黒色顔料としては、カーボンブラックを好ましく用いることができる。尚、これらの無機フィラーは、通常、紫外線遮断材としての効果も奏するものでもあるため、特断の意匠性向上の要請がない場合でも添加される場合が多いが、単に一般的なコーティング液へ添加することのみによっては、本願と同等の十分なマット感を安定的に発現させることはない。これらの無機フィラーは、本願独自のコーティング液の主剤樹脂の構成との組合せによってのみ、本願と同等の意匠性の向上にも寄与しうるものとなる。
第1主剤樹脂及び第2主剤樹脂の架橋反応を進行させる硬化剤としては、硬化剤として、ポリイソシアネート化合物を用いることができる。ポリイソシアネート化合物とは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。
コーティング液に使用される溶剤は、基材層60に対する塗布性をコーティング液に付与するために添加される。コーティング液が基材層60に塗布された後、塗布されたコーティング液に含まれる溶剤が揮発し、次いで生じる硬化反応により、基材層60の表面にコーティング層61が形成される。よって、溶剤は、コーティング層61を構成する第1及び第2の主剤樹脂、硬化剤等の成分を溶解又は分散させることができるものであること、及びコーティング液に含まれる硬化剤と反応しないものであればよい。
コーティング層61中には、その他、例えば、シートの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離型性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を必要に応じて添加することができる。その他の添加剤としては、分散剤、消泡剤、光安定化剤、熱安定剤、酸化防止剤等が例示される。これらは、公知のものを特に制限なく使用することができ、コーティング液やコーティング層61に求められる性能に応じて、適宜選択される。
本発明の裏面保護シート6には、本発明の効果を害さない範囲で、その他の層を設けてもよい。例えば、基材層60のコーティング層61の表面に、例えば、フッ素樹脂、EB硬化型樹脂等からなる意匠性に悪影響を及ぼさない透明な耐候層を設けてもよい。これにより、更に裏面保護シート6の耐候性を向上させることができる。又、コーティング層61が形成されていない側の面には、必要に応じて、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる接着強化層や、或いは、シランカップリング剤等の接着性向上剤を含有する樹脂混合物からなるプライマー層を設けてもよい。或いは、基材層60と接着強化層等との間に、例えば裏面保護シート6の強度を増すための他の補強層を設けてもよい。
裏面保護シート6は、基材層60の一表面上に、上記において説明したコーティング液を用いて、コーティング層61を皮膜形成するコーティング工程を経ることによって製造することができる。
コーティング液の製造方法は、特に限定されないが、以下に説明する製造方法を好適に用いることができる。
太陽電池モジュール1は、例えば、上記の透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、及び裏面保護シート6からなる部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。例えば真空熱ラミネート加工による場合、ラミネート温度は、130℃〜190℃の範囲内とすることが好ましい。又、ラミネート時間は、5〜60分の範囲内が好ましく、特に8〜40分の範囲内が好ましい。このようにして、上記の各層を一体成形体として加熱圧着成形して、太陽電池モジュール1を製造することができる。
先ず、本発明の裏面保護シートに使用するコーティング液を製造した。コーティング液については、以下に説明する主剤樹脂と硬化剤を所定量配合して製造した。具体的製造方法を以下に説明する。
実施例のコーティング液を下記の通り作成した。
(第1主剤樹脂)
ポリカ系ウレタンとアクリルの共重合樹脂。水酸基価0。
(第2主剤樹脂)
水酸基価81、Tg91℃のアクリル樹脂Aと水酸基価283、Tg25℃からなるアクリル樹脂Bを50/50で混合したアクリル樹脂。以下の[]内の成分からなる。
[メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ビニル(微量検出)、(メタクリル酸)、(エチレングリコールジメタクリリレート)、アゾビスイソブチロニトリル]
上記第1主剤樹脂と第2主剤樹脂とを1:1の割合で混合したものを実施例の主剤樹脂とした。
(無機フィラー)
酸化チタン(「Ti−Pure(登録商標)R−105」(DuPont社製))。主剤樹脂100質量部に対して100質量部の割合でコーティング液中に添加した。
(硬化剤)
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系のポリイソシアネート化合物を用いた。各ポリイソシアネート化合物中のNCO基の割合(質量%)は、23.0%とした。主剤樹脂100質量部に対して6.8質量部の割合でコーティング液中に添加した。
溶剤:MEK、MIBK、IPAを混合(混合比は5:3:2)したものを使用した。尚、コーティング液の樹脂濃度は重量基準で、13.7%(固形分濃度は31.5%)となるようにそれぞれ調整した。
比較例のコーティング液を下記の通り作成した。比較例1については、上記実施例に用いた第2主剤樹脂(アクリル樹脂)を主剤樹脂とした。その他の無機フィラー、硬化剤、溶剤の配合比と調整方法は、実施例と同じくして、比較例1のコーティング液を調整した。
比較例2については、アクリルポリオール樹脂に紫外線吸収剤(UVA)とヒンダードアミン系光安定剤(HALS)とを共重合させた樹脂(日本触媒社製「ハルスハイブリッドポリマー」)を主剤樹脂(主剤樹脂3)とした。その他の無機フィラー、硬化剤、溶剤の配合比と調整方法は、実施例と同じくして、比較例1のコーティング液を調整した。
比較例3については、比較例2に用いた主剤樹脂3を主剤樹脂とし、無機フィラーの添加量を、+20%程度増量したもの。
上記の通り製造した実施例及び比較例1〜3のコーティング液を、下記に示す裏面保護シート用基材の一方の面に塗布し、続いて塗布されたコーティング液から溶剤成分を蒸発させることによって、コーティング層を形成し、実施例及び比較例1〜3の裏面保護シートを製造した。コーティング液の塗布量は、いずれも9g/m2とし、塗布はミヤバー法により行い、2分間、100℃のオーブンによる乾燥で溶剤を蒸発させ、更に、40℃で7日間放置して養生した。
裏面保護シート用基材
:ポリエチレンテレフタレート(PET)基材:厚さ188μm(商品名「ルミラーS10」、東レ社製)
[接着性試験]
上記の通り作成した実施例及び比較例1〜3の裏面保護シートについて、ASTM D3359、JIS 5400に準じた接着性試験を行い、各層間の接着性を以下の基準で評価した。評価結果については、「接着性」として、下記表1に示す。
A:0%のコーティング剥離
B:5%未満のコーティング剥離
C:5%以上50%未満のコーティング剥離
D:50以上100%以下のコーティング剥離
[耐溶剤性試験]
実施例及び比較例1〜3の裏面保護シートについて、下記の耐溶剤性試験を行い、耐溶剤性を評価した。各裏面保護シートのコーティング層側の表面に、ASTM D5402−06に準じた耐溶剤試験を実施した。溶剤にはアセトンを染み込ませたコットンを用い、1500gの力で約1秒間に1回の速度で25往復擦り、表面を観察、以下の評価基準により評価した。評価結果については、「耐溶剤性」として、下記表1に示す。
A:コーティング層の剥離無し、外観変化無し
B:コーティング層の剥離無し、外観変化有り
C:15往復擦りでコーティング層の剥離
D:5往復擦りでコーティング層の剥離
実施例及び比較例1〜3の裏面保護シートの表面のグロス値(60°)をJISZ8741−1997に準拠して、村上色彩技術研究所製GM−26PROを用いて測定した。結果については、「グロス値」として表1に示す。
実施例及び比較例1〜3の裏面保護シートの表面の凹凸の形状の平均算術粗さ(Ra)を、下記の方法により測定した。
(測定方法)JIS B0601−1994に従い、カットオフ値λc=0.8mm、評価長さ1n=4mmとして測定した。結果については、「Ra」として表1に示す。
実施例及び比較例1〜3の裏面保護シートの表面のマット感の有無を観察、以下の評価基準により評価した。評価結果については、「マット感」として、表1に示す。
A:明瞭なマット感あり
B:不明瞭だがマット感あり
C:マット感なし。
比較例3の裏面保護シートについて、実施例と同条件で断面及び表面のSEM写真(図4、図6)を撮影し、の実施例の同写真(図3、図5)と比較した。図4の断面図より、無機フィラーを含有するが、相分離可能な複数の樹脂は含まない、比較例3の裏面保護シートには、実施例のように、無機フィラーが凝集して粗大粒子部を形成してはいないこと。又、図4の断面図及び図6の正面図より、比較例3の裏面保護シートには、シート表面にマット感を付与する凹凸が形成されていないことが分かる。又、実施例における意匠性において好ましいマット感の発現と、比較例1から3におけるそのようなマット感の未発現は目視によっても確認されている。
2 透明前面基板
3 前面封止材層
4 太陽電池素子
5 背面封止材層
6 裏面保護シート
60 基材層
61 コーティング層
611 第1領域
612 第2領域
7 粗大粒子部
Claims (10)
- 基材層の表面にコーティング層が形成されてなる太陽電池モジュール用の裏面保護シートであって、
前記コーティング層は、相分離可能な複数の樹脂と、無機フィラーと、を含有してなり、
前記相分離可能な複数の樹脂のうち少なくとも一の樹脂のSP値と、他の一の樹脂のSP値との差が1.0以上9.0未満であって、
前記相分離可能な複数の樹脂のうちの少なくとも一の樹脂内に前記無機フィラーが凝集して存在しており、該凝集の有無によって前記コーティング層の表面に凹凸を形成していることを特徴とする裏面保護シート。 - 基材層の表面にコーティング層が形成されてなる太陽電池モジュール用の裏面保護シートであって、
前記コーティング層は、相分離可能な複数の樹脂と、無機フィラーと、を含有してなり、
前記相分離可能な複数の樹脂が、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂であって、
前記相分離可能な複数の樹脂のうちの少なくとも一の樹脂内に前記無機フィラーが凝集して存在しており、該凝集の有無によって前記コーティング層の表面に凹凸を形成していることを特徴とする裏面保護シート。 - 前記コーティング層の表面のJIS Z8741−1997によるグロス値(60°)が5以上10以下である請求項1又は2に記載の裏面保護シート。
- 前記コーティング層には、更に硬化剤が含まれる請求項1から3のいずれかに記載の裏面保護シート。
- 前記硬化剤が、ポリイソシアネート化合物である請求項4に記載の裏面保護シート。
- 前記凹凸の形状の平均算術粗さ(Ra)が0.24μm以上3.0μmである請求項1から5のいずれかに記載の裏面保護シート。
- 前記コーティング層の表面に、透明樹脂からなる耐候層が積層されている請求項1から6のいずれかに記載の裏面保護シート。
- 請求項1から7のいずれかに記載の裏面保護シートの製造方法であって、
前記基材層の表面に、ベース樹脂材料と、無機フィラーと、溶剤とを含有してなるコーティング液を塗布する工程を備え、
前記ベース樹脂材料は、相分離可能な複数の樹脂を含有してなるものであり、
前記ベース樹脂材料の相分離によって、前記相分離可能な複数の樹脂のうちの少なくとも一の樹脂内に前記無機フィラーが凝集することを特徴とする裏面保護シートの製造方法。 - 請求項1から7のいずれかに記載の裏面保護シートと、封止材と、太陽電池素子とが積層されており、
前記裏面保護シートの前記コーティング層又は前記耐候層が、太陽電池モジュールの一方の最外層に配置されている太陽電池モジュール。 - 前記封止材が、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂又はポリエチレン系樹脂である請求項9に記載の太陽電池モジュール。
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