JP6200755B2 - 電池の劣化分析方法および炭素材料 - Google Patents
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Description
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、電池の劣化が電極活物質由来か否かを定量的に判断する電池の劣化分析方法を提供することを目的とする。
(1) 満充電の電極の示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより、電極活物質の活性化エネルギーを測定し、電池の劣化原因が電極活物質に由来するか否かを判断する電池の劣化分析方法。
(2) 昇温速度を変えて示差走査熱量測定(DSC)を行い、昇温速度a(℃/min)としたときの吸発熱ピーク温度Tm(K)を測定し、縦軸にln(a/Tm 2)、横軸に1/Tmをプロットした時に得られる傾きを活性化エネルギーとする(1)に記載の電池の劣化分析方法。
(3) 電池劣化試験開始時の満充電時の電極活物質の活性化エネルギーE0と電池劣化試験後の満充電時の電極活物質の活性化エネルギーEaを用いて電極活物質劣化度をEa/E0で定義する(1)または(2)に記載の電池の劣化分析方法。
(4) Ea/E0が1.10以上なら、電池の劣化原因が電極活物質に由来すると判断する(3)に記載の電池の劣化分析方法。
(5) エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が2:3の体積比で混合された溶媒と、1mol/LのLiPF6を電解質として含む電解液と、満充電状態の炭素材料とを、質量比で0.6:1〜1:1になるように調整し、全質量が7mg〜14mgの状態で27μLのクロムスチールニッケルの密閉容器に密封して、昇温速度1℃/min.,2℃/min.,5℃/min.の3水準でDSC測定を行った時に、250℃〜300℃の間に観測される吸熱ピークの活性化エネルギーが130kJ/mol以上である炭素材料。
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が2:3の体積比で混合された溶媒と、1mol/LのLiPF6を電解質として含む電解液と、満充電状態の炭素材料とを、質量比で0.6:1〜1:1になるように調整し、全質量が7mg〜14mgの状態で27μLのクロムスチールニッケルの密閉容器に密封して昇温速度1℃/min.,2℃/min.,5℃/min.の3水準で、50−400℃の温度範囲でDSC測定を行う。
250℃〜300℃の間に観測される吸熱ピークの活性化エネルギーが130kJ/mol以上である黒鉛材料が好ましく、より好ましくは132kJ/mol以上、さらに好ましくは135kJ/mol以上であり140kJ/mol以下である。活性化エネルギーが130kJ/mol以上である炭素材料は、黒鉛層間の剥離が起こりづらく、電池として活性が失われづらい
Liを含み、充電することによりそのLiを放出することができる物質を電極活物質として使用することが可能である。例えば、リン酸金属リチウム、リチウム含有金属酸化物を用いることができる。
充電することによりLiを蓄えることができる物質を電極活物質として使用することが可能である。人造黒鉛、天然黒鉛などの炭素材料を単独で用いても良いし、Si、Sn、Ge、Al、Inなどの単体または該元素のうちの少なくとも1つを含む化合物、混合体、共融体または固溶体を含む粒子と炭素材料とを複合したものであってもよい。
非プロトン性溶媒にリチウム塩が溶解されてなる非水電解質を例示できる。
また、リチウム塩には、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSO3CF3、CH3SO3Li、CF3SO3Li等が挙げられる。
電池の形態はコイン型、円筒型、ラミネート型など任意の形態を用いることができる。
電池を充電する際、電解液の分解電位以内において充電を行い、電流値が0.01Cに到達した時を満充電とする。例えば、充電はレストポテンシャルから0.2Cの電流でCC(コンスタントカレント:定電流)充電を行い、次いで2mVでCV(コンスタントボルト:定電圧)充電に切り替え、電流値が0.01Cに低下した時点で充電を停止させる。
ショートさせないよう解体するとともに、O2,H2Oに非曝露の状態で行うことが望ましい。具体的には、O2は500ppm以下、H2Oは露点が−50℃以下で行うことが望ましい。
電極の洗浄は、揮発性が高く、電解質および電解液を除去可能な洗浄液を用いる。例えば、電解液がエチレンカーボネートを含んでいる場合、エチルメチルカーボネートが望ましい。
O2,H2Oに非暴露の状態で、電極を容器に入れ電極が浸る状態まで洗浄液を入れる。少なくとも10秒以上浸漬することが望ましい。その後、電解液を取り出し、新たな洗浄液で同様な操作を行う。洗浄は3回〜5回が望ましい。
真空条件下で5分以上行うことが望ましい。
O2,H2Oに非暴露の状態で、電極を洗浄・乾燥した後、活物質だけを削りだして質量を測定し、耐圧、耐食性を有する密閉容器に活物質を詰めて蓋をする。容器の素材としてはSUSを用いることができる。また、この時電解液を入れることもできる。
温度範囲は任意の範囲で行うことができる。好ましくは50〜400℃である。同様の条件で準備された密閉容器を複数用意し、各密閉容器について、各々別の昇温速度でDSC測定を行う。各昇温速度は2倍以上離れていることが望ましい。また、昇温速度の種類は3水準以上であることが望ましい。
昇温速度を変えた時に得られるそれぞれの吸発熱ピーク温度Tm(K)とその時の昇温速度a(℃/min)について、縦軸にln(a/Tm2)、横軸に1/Tmをプロットした時に得られる傾きを活性化エネルギー(kJ/mol)とする。
DSCから求められる試験開始時の満充電時の活物質の活性化エネルギーE0、電池試験後の活物質の活性化エネルギーEaを用いて、電極活物質劣化度をEa/E0と定義する。ただし、活物質の熱的構造変化に基づく吸発熱ピークを使用して、電極活物質劣化度を算出する。Ea/E0が1.10以上なら、電池の劣化原因が電極活物質に由来すると判断することが可能である。
1.ラミネート型電池の構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる電池の劣化分析方法が適用されるための正極極板1および負極極板2を含んだラミネート型リチウムイオン二次電池の概略構成を示す図である。正極極板1および負極極板2はセパレータ3を介して積層体を形成し、リチウム塩を含んだ非水溶媒電解液とともにラミネートフィルム4からなる外装材に収納されている。正極端子5は正極集電体7と、また負極端子6は負極集電体9とそれぞれラミネートフィルム4の内部で電気的に接続されている。
・電池容量(未使用時):30mAh
・正極活物質:リン酸鉄リチウム(90質量%)
・正極導電助剤:カーボンブラック(3質量%)、気相成長炭素繊維(2質量%)
・正極バインダ:ポリフッ化ビニリデン(5質量%)
・負極活物質:黒鉛A(中国製天然黒鉛)(97質量%)
・負極バインダ:スチレンブタジエンゴム(1.5質量%)、カルボキシメチルセルロース(1.5質量%)
・セパレータ:ポリプロピレン製
・電解質:六フッ化リン酸リチウム(1mol/L)
・電解液:エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートの混合液
未使用の電池を充放電機ACD−01(アスカ電子製)を用いてSOC(State of Charge)100%にした。この時の終始電位は3.7V、電流値は0.03mAとした。
満充電状態の電池を、O2が0.3ppm、露点が−70℃での条件下で解体し、取り出した負極を、エチルメチルカーボネート(EMC)に10秒浸漬した後にとりだし、新たなEMCで同様に浸すことを3度繰り返したのち、真空下で5分間乾燥させて測定用電極を得た。
洗浄乾燥させた測定用電極から、スパチュラを使用して活物質だけを削り取り、削り取った活物質5.0mgを27μLのクロムスチールニッケルの密閉容器(ネッチ製)に入れた。その後、6.0mgの電解液(1M LiPF6, EC/EMC=2/3(v/v))を加え、素早く蓋をした。同様にしてDSC測定用のサンプルを合計3つ用意した。
DSC3200SA(ネッチ製)を用いて行った。参照側には、空の密閉容器を用いた。昇温速度は1℃/min.,2℃/min.,5℃/min.の3水準でおこなった。測定は50℃〜400℃の温度範囲で行った。昇温速度5℃/min.で測定した結果を図2に示す。
DSC測定において大きなピークが2つの間に1つの吸熱ピークが観測された。この吸熱ピークは黒鉛層間の剥離エネルギーに由来するといわれているため、活性化エネルギーE1を算出した。劣化により構造の乱れがある場合、活性化エネルギーは大きくなると考えられる。
500サイクルの充放電を行った後の電池の電極を用いたこと以外は実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、容量維持率C2およびE2を得た。
満充電状態で、60℃、4週間放置した電池の電極を用いたこと以外は実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、容量維持率C3およびE3を得た。
負極に黒鉛B(日本製人造黒鉛)を用いたこと以外は実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、E4を得た。
500サイクルの充放電を行った後の電池の電極を用いたこと以外は実施例4と同じ条件でDSC測定を行い、容量維持率C5およびE5を得た。
満充電状態で60℃、4週間放置した電池の電極を用いたこと以外は実施例4と同じ条件でDSC測定を行い、容量維持率C6およびE6を得た。
以下の手順で作製した黒鉛を用いたこと以外は実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、劣化度の算出および2つの大きな発熱ピークの間の吸熱ピークの活性化エネルギーE7を求めた。また、作製した電池を2000サイクルの充放電を行った際の容量維持率C7を求めた。その後、実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、劣化度の算出を行った。
100g中のコークスにおいて200℃〜800℃で加熱した際に出てくる揮発分を液体窒素でトラップし、その揮発成分をGS−MSで測定した時に、ベンゼン環が4個結合した構造を持つ芳香族炭化水素(ピレン、テトラセン、トリフェニレン、クリセン、テトラフェンを骨格とする)の割合が、ベンゼン環が1〜5個が結合した構造を持つ芳香族炭化水素の割合を1としたときに、0.4以上〜0.5未満になるコークスを原料に用いた。これをホソカワミクロン製バンタムミルで粉砕する。次に、日清エンジニアリング製ターボクラシファイアーTC−15Nで気流分級し、粒径が0.5μm以下の粒子を実質的に含まないD50=13.5μmの炭素材料を得る。この粉砕された炭素材料と10質量%のMn(高純度化学研究所製:約10μm)を不活性雰囲気(N2)で混合し、黒鉛ルツボに充填し、黒鉛化炉(SCC−U−30/300 倉田技研製)にて3100℃で加熱処理して、黒鉛材料を得た。
黒鉛化時のMnの添加量を5質量%にしたこと以外は実施例7と同じ条件で黒鉛の作製を行った。作製した黒鉛を用い実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、2つの大きな発熱ピークの間の吸熱ピークの活性化エネルギーE8を求めた。また、2000サイクルの充放電を行った際の容量維持率C8を求めた。さらに劣化度の算出を行った。
黒鉛化時のMnの添加量を15質量%にしたこと以外は実施例7と同じ条件で黒鉛の作製を行った。作製した黒鉛を用い実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、2つの大きな発熱ピークの間の吸熱ピークの活性化エネルギーE9を求めた。また、2000サイクルの充放電を行った際の容量維持率C9を求めた。さらに劣化度の算出を行った。
炭素材料とMnの混合を空気中で行ったこと以外は実施例7と同じ条件で黒鉛の作製を行った。作製した黒鉛を用い実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、2つの大きな発熱ピークの間の吸熱ピークの活性化エネルギーE10を求めた。また、2000サイクルの充放電を行った際の容量維持率C10を求めた。さらに劣化度の算出を行った。
Mnを黒鉛化時に用いていないこと以外は、実施例7と同じ原料を用いて黒鉛の作製を行った。作製した黒鉛を用い実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、2つの大きな発熱ピークの間の吸熱ピークの活性化エネルギーE11を求めた。また、2000サイクルの充放電を行った際の容量維持率C11を求めた。さらに劣化度の算出を行った。
100g中のコークスにおいて200℃〜800℃で加熱した際に出てくる揮発分を液体窒素でトラップし、その揮発成分をGS−MSで測定した時に、ベンゼン環が4個結合した構造を持つ芳香族炭化水素(ピレン、テトラセン、トリフェニレン、クリセン、テトラフェンを骨格とする)の割合が、ベンゼン環が1〜5個が結合した構造を持つ芳香族炭化水素の割合を1としたときに、0.2以上〜0.3未満になるコークスを原料に用いたこと以外は、実施例7と同じ条件で黒鉛の作製を行った。作製した黒鉛を用い実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、2つの大きな発熱ピークの間の吸熱ピークの活性化エネルギーE12を求めた。また、2000サイクルの充放電を行った際の容量維持率C12を求めた。さらに劣化度の算出を行った。
Mnを黒鉛化時に用いていないこと以外は、比較例3と同じ原料を用いて黒鉛の作製を行った。作製した黒鉛を用い実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、2つの大きな発熱ピークの間の吸熱ピークの活性化エネルギーE13を求めた。また、2000サイクルの充放電を行った際の容量維持率C13を求めた。さらに劣化度の算出を行った。
100g中のコークスにおいて200℃〜800℃で加熱した際に出てくる揮発分を液体窒素でトラップし、その揮発成分をGS−MSで測定した時に、ベンゼン環が4個結合した構造を持つ芳香族炭化水素(ピレン、テトラセン、トリフェニレン、クリセン、テトラフェンを骨格とする)の割合が、ベンゼン環が1〜5個が結合した構造を持つ芳香族炭化水素の割合を1としたときに、0.1以上〜0.2未満になるコークスを原料に用いたこと以外は、実施例7と同じ条件で黒鉛の作製を行った。作製した黒鉛を用い実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、2つの大きな発熱ピークの間の吸熱ピークの活性化エネルギーE14を求めた。また、2000サイクルの充放電を行った際の容量維持率C14を求めた。さらに劣化度の算出を行った。
Mnを黒鉛化時に用いないこと以外は、比較例5と同じ原料を用いて黒鉛の作製を行った。作製した黒鉛を用い実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、2つの大きな発熱ピークの間の吸熱ピークの活性化エネルギーE15を求めた。また、2000サイクルの充放電を行った際の容量維持率C15を求めた。さらに劣化度の算出を行った。
100g中のコークスにおいて200℃〜800℃で加熱した際に出てくる揮発分を液体窒素でトラップし、その揮発成分をGS−MSで測定した時に、ベンゼン環が4個結合した構造を持つ芳香族炭化水素(ピレン、テトラセン、トリフェニレン、クリセン、テトラフェンを骨格とする)の割合が、ベンゼン環が1〜5個が結合した構造を持つ芳香族炭化水素の割合を1としたときに、0.5以上〜0.6未満になるコークスを原料に用いたこと以外は、実施例7と同じ条件で黒鉛の作製を行った。作製した黒鉛を用い実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、2つの大きな発熱ピークの間の吸熱ピークの活性化エネルギーE16を求めた。また、2000サイクルの充放電を行った際の容量維持率C16を求めた。さらに劣化度の算出を行った。
Mnを黒鉛化時に用いていないこと以外は、比較例7と同じ原料を用いて黒鉛の作製を行った。作製した黒鉛を用い実施例1と同じ条件でDSC測定を行い、2つの大きな発熱ピークの間の吸熱ピークの活性化エネルギーE17を求めた。また、2000サイクルの充放電を行った際の容量維持率C17を求めた。さらに劣化度の算出を行った。
Claims (3)
- リチウムイオン電池の劣化試験開始時における満充電時の電極活物質の活性化エネルギーE 0 を示差走査熱量測定によって求める工程と、
電池劣化試験後における満充電時の電極活物質の活性化エネルギーE a を示差走査熱量測定によって求める工程とを含み、
前記E 0 に対する前記E a の比E a /E 0 が1.10以上である場合に、前記リチウムイオン電池の劣化原因が電極活物質に由来すると判断するリチウムイオン電池の劣化分析方法。 - 前記示差走査熱量測定は、異なる昇温速度で複数回行われ、昇温速度と、観測されるピークのうち電極活物質の熱構造的変化に基づく吸発熱ピーク温度との関係から前記活性化エネルギーE 0 、E a を求める請求項1に記載のリチウムイオン電池の劣化分析方法。
- 前記昇温速度をa(℃/min)とし、前記吸発熱ピーク温度をT m (K)として、縦軸にln(a/T m 2 )、横軸に1/T m をプロットして得られる直線の傾きが前記活性化エネルギーE 0 、E a である請求項2に記載のリチウムイオン電池の劣化分析方法。
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