本実施形態の説明に先立ち、本願発明者が行った検討事項について説明する。
FeRAMは、その構造によりプレーナ型とスタック型とに分けられる。
図1は、スタック型のFeRAMが備える強誘電体キャパシタの製造途中の断面図である。
図1の例では、酸化シリコン膜等の絶縁膜1の上に下部電極3、強誘電体膜4、及び上部電極5が形成され、これらによって強誘電体キャパシタQが形成される。
強誘電体キャパシタQの材料は特に限定されず、下部電極3と上部電極5としてはプラチナ膜やイリジウム膜等の貴金属膜を形成し得る。また、強誘電体膜4の材料としては、ABO3型ペロブスカイト構造のPZT(Lead Zirconate Titanate: PbZrTiO3)等を採用し得る。
なお、強誘電体キャパシタQの直下の絶縁膜1にはホール1aが形成され、そのホール1a内には下部電極3を不図示のトランジスタに接続するための導体プラグ2が設けられる。
ここで、この強誘電体キャパシタQは、一つのハードマスク7を用いて下部電極3、強誘電体膜4、及び上部電極5を一括してドライエッチングすることにより形成される。このような一括エッチングを採用することで、下部電極3や強誘電体膜4ごとにエッチングを行う場合と比較してキャパシタQの微細化が容易となり、複数のキャパシタQを高密度に形成することができる。
但し、上記のように下部電極3や上部電極5をドライエッチングすると、エッチングにより生じた反応生成物Fが強誘電体膜4の側面4aに付着することがある。その反応生成物は、下部電極3等に使用される貴金属を含んでいるため導電性を有しており、この反応生成物によって下部電極3と上部電極5とが電気的に接続されるおそれがある。
特に、強誘電体キャパシタQを微細化するために、エッチング条件としてキャパシタQの側面と絶縁膜1との間の角度θが90°に近づく条件を採用すると、上記のような導電性を有する反応生成物が顕著に発生するようになる。
このような問題を解消し得るFeRAMの製造方法について以下に説明する。
図2〜図16は、本願発明者が検討したFeRAMの製造途中の断面図であり、図17〜図19はその平面図である。
まず、図2に示すように、半導体基板10としてシリコン基板を用意し、その半導体基板10に素子分離用の溝を形成してその溝に素子分離絶縁膜11としてCVD法で酸化シリコン膜を埋め込む。このような素子分離構造はSTI(Shallow Trench Isolation)と呼ばれる。
なお、STIに代えてLOCOS(Local Oxidation of Silicon)により素子分離を行ってもよい。
また、半導体基板10は、後で強誘電体キャパシタが形成されるセル領域Iと、セル領域Iの外側の周辺領域IIとを有する。
次に、セル領域Iにおける半導体基板10にp型不純物をイオン注入してpウェル12を形成する。その後に、半導体基板10の表面を熱酸化してゲート絶縁膜13となる熱酸化膜を形成する。
続いて、半導体基板10の上側全面に非晶質又は多結晶シリコン膜を形成し、これらの膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングしてpウェル12の上に二つのゲート電極14を形成する。
二つのゲート電極14は間隔をおいて平行に配置され、それらのゲート電極14はワード線の一部を形成する。
次いで、ゲート電極14をマスクに使用して、ゲート電極14の両側のpウェル12にn型不純物をイオン注入することによりn型のエクステンション領域15を形成する。
その後に、半導体基板10とゲート電極14の各々の上に絶縁膜を形成し、その絶縁膜をエッチバックすることによりゲート電極14の側面に絶縁性サイドウォール16として残す。その絶縁膜として、例えばCVD法により酸化シリコン膜を形成する。
続いて、絶縁性サイドウォール16とゲート電極14とをマスクにして、pウェル12にn型不純物をイオン注入する。これにより、二つのゲート電極14の両側において、エクステンション領域15に重なるn型高濃度不純物領域の第1〜第3のソースドレイン領域17a〜17cを形成する。
ここまでの工程により、第1〜第3のソースドレイン領域17a〜17cやゲート電極14を備えたトランジスタTRの基本構造が得られる。
その後に、半導体基板10の上側全面にスパッタ法でコバルト膜等の金属膜を形成し、その金属膜を加熱してシリコンと反応させることにより、第1〜第3のソースドレイン領域17a〜17cの表層にシリサイド層18を形成する。なお、そのシリサイド層18は、ゲート電極14の表層にも形成される。
その後に、素子分離絶縁膜11等の上で未反応となっている金属膜をウエットエッチングして除去する。
次に、図3に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、半導体基板10の上側全面にプラズマCVD法で窒化シリコン膜を約70nm程度の厚さに形成し、その窒化シリコン膜をカバー絶縁膜21とする。
更に、TEOS(テトラエトキシシラン)ガスを使用するプラズマCVD法により、カバー絶縁膜21の上に第1の絶縁膜22として酸化シリコン膜を約1.1μm程度の厚さに形成する。
その後、第1の絶縁膜22の上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨して平坦化する。これにより、第1の絶縁膜22の厚さは、半導体基板10の平坦面の上で約600nm程度となる。
次に、フォトリソグラフィによりカバー絶縁膜21と第1の絶縁膜22とをパターニングすることにより、第1〜第3のソースドレイン領域17a〜17cの上に第1のホール22aを形成する。
そして、第1のホール22a内と第1の絶縁膜22の上にタングステン膜を形成した後、CMP法でそのタングステン膜を第1の絶縁膜22の上から除去し、第1のホール22a内にのみタングステン膜を第1の導体プラグ25として残す。なお、タングステン膜の形成前に、グル―膜としてスパッタ法でチタン膜と窒化チタン膜をこの順に形成してもよい。
続いて、図4に示すように、第1の絶縁膜22と第1の導体プラグ25の上にエッチングストッパ膜26としてプラズマCVD法で窒化シリコン膜を約30nm程度の厚さに形成する。
更に、そのエッチングストッパ膜26の上に第2の絶縁膜27として酸化シリコン膜を約350nm程度の厚さに形成する。その酸化シリコン膜は、例えば、TEOSガスを使用するプラズマCVD法により形成し得る。
そして、フォトリソグラフィによりエッチングストッパ膜26と第2の絶縁膜27の各々をパターニングし、第2のソースドレイン領域17bの上方に溝27aを形成する。
次いで、溝27a内と第2の絶縁膜27の上にタングステン膜を形成した後、CMP法でそのタングステン膜を第2の絶縁膜27の上から除去し、溝27a内にのみタングステン膜を配線28として残す。
なお、タングステン膜の形成前に、グル―膜としてスパッタ法で窒化チタン膜を形成してもよい。
また、配線28は、ビット線の一部として機能し、その下の第1の導体プラグ25を介して第2のソースドレイン領域17bと電気的に接続される。
続いて、図5に示すように、第2の絶縁膜27と配線28の各々の上に酸化防止絶縁膜31としてプラズマCVD法で窒化シリコン膜を約30nm程度の厚さに形成する。
配線28の材料であるタングステンは酸化し易い材料であるが、このように酸化防止絶縁膜31で配線28を覆うことにより、配線28が酸化してコンタクト不良を起こすのを防止できる。
更に、TEOSガスを使用するプラズマCVD法により酸化防止絶縁膜31の上に酸化シリコン膜を約200nmの厚さに形成し、その酸化シリコン膜を第3の絶縁膜32とする。
そして、その第3の絶縁膜32の上にバリア絶縁膜33としてアルミナ膜をスパッタ法で10nm〜100nmの厚さに形成する。
その後、エッチストッパ膜26、第2の絶縁膜27、酸化防止絶縁膜31、第3の絶縁膜32、及びバリア絶縁膜33をパターニングし、第1の導体プラグ25の上に第2のホール27bを形成する。
次に、第2のホール27b内とバリア絶縁膜33の上にグル―膜として窒化チタン膜を形成した後、更にその上にCVD法でタングステン膜を形成してそのタングステン膜で第2のホール27bを完全に埋める。その後に、これらのタングステン膜とグル―膜とをCMP法で研磨することによりバリア絶縁膜33の上から除去し、これらの膜を第2のホール27b内のみに第2の導体プラグ34として残す。
その第2の導体プラグ34は、第1の導体プラグ25と接続されており、更にその第1の導体プラグ25を介して第1のソースドレイン領域17aや第3のソースドレイン領域17cと電気的に接続される。
続いて、図6に示すように、バリア絶縁膜33と第2の導体プラグ34の上に第1の導電膜36としてイリジウム膜又はプラチナ膜を含む金属膜の単層膜又は積層膜を形成する。
更に、第1の導電膜36の上に後で形成される強誘電体膜の結晶性を制御するために、第1の導電膜36の上に酸化イリジウム膜やプラチナ膜を形成してもよい。
次いで、第1の導電膜36の上にハードマスク37として窒化チタン膜をスパッタ法で10nm〜200nm程度の厚さに形成する。
なお、ハードマスク37は窒化チタン膜に限定されず、チタン膜、アルミニウム膜、及びシリコン膜のいずれかの単層膜、積層膜、合金膜、窒化膜、又は酸化膜をハードマスク37として形成し得る。
その後、ハードマスク37の上に第1のレジスト膜40を形成し、その第1のレジスト膜40をマスクにするフォトリソグラフィによりハードマスク37を島状にパターニングする。
この後に、第1のレジスト膜40は除去される。
続いて、図7に示すように、ハードマスク37をマスクにして第1の導電膜36をドライエッチングすることにより、セル領域Iに複数の下部電極36aを、間隔をおいて形成すると共に、周辺領域IIから第1の導電膜36を除去する。
なお、そのドライエッチングはRIE(Reactive Ion Etching)により行われ、エッチングガスとしては例えばアルゴンガスとCl2ガスとの混合ガスが使用される。なお、本工程においてハードマスク37がエッチングされるのを抑制するために、上記のエッチングガスにO2ガスを添加してもよい。
このようにハードマスク37を用いることで下部電極36aの上面がエッチング雰囲気から保護され、エッチングが原因で下部電極36aの上面の結晶構造が乱れるのを防止できる。
その後、図8に示すように、ウエットエッチングによりハードマスク37を除去する。このとき使用し得るエッチング液としては、例えば、過酸化水素水と、アンモニアと、水との混合溶液がある。ドライエッチングと比較してウエットエッチングは下部電極36aに与えるダメージが少ないので、ハードマスク37を除去した後でも下部電極36aの上面の結晶構造を良好な状態に維持できる。
図17は、本工程を終了した後のセル領域Iの平面図である。
図17に示すように、セル領域Iには複数の島状の下部電極36aが行列状に配置される。
次に、図9に示すように、スパッタ法により下部電極36aとバリア絶縁膜33の各々の上に強誘電体膜38としてPZT膜を30nm〜200nm程度の厚さに形成する。なお、強誘電体膜38の成膜方法としては、スパッタ法の他に、MOCVD(Metal Organic CVD)法やゾル・ゲル法もある。また、これらの成膜方法を組み合わせることにより、強誘電体膜38として複数層のPZT膜を形成してもよい。
更に、強誘電体膜38の材料は上記のPZTに限定されず、SrBi2Ta2O9、SrBi2(Ta,Nb)2O9等のBi層状構造化合物や、PZTにランタンをドープしたPLZT、その他の金属酸化物強誘電体を強誘電体膜38の材料として採用し得る。
図18は、本工程を終了した後のセル領域Iの平面図である。
図18に示すように、セル領域Iの複数の下部電極36aは強誘電体膜38により覆われる。
次いで、図10に示すように、酸素含有雰囲気中において強誘電体膜38をアニールすることにより、強誘電体膜38のPZTを結晶化させる。このようなアニールは結晶化アニールとも呼ばれ、この例では基板温度を600℃、処理時間を90秒とする条件でこの結晶化アニールを行う。
ここで、バリア絶縁膜33がない場合には、この結晶化アニールによって強誘電体膜38に含まれる鉛が第3の絶縁膜32に拡散して鉛ガラスが形成され、その鉛ガラスが原因で強誘電体膜38の強誘電体特性が劣化することがある。
この例では、強誘電体膜38から第3の絶縁膜32への鉛の拡散がバリア絶縁膜33により阻止されるので、結晶化アニールが原因で強誘電体膜38が劣化するのを防止できる。
バリア絶縁膜33は、このように強誘電体膜38の鉛等の構成元素が第3の絶縁膜32に拡散するのを防止する役割を担うものであり、鉛等をバリアする能力に優れた絶縁性酸化膜又は絶縁性窒化膜をバリア絶縁膜33として形成するのが好ましい。
これらのうち、絶縁性酸化膜としては、上記のアルミナ膜の他に酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化チタン膜、酸化ハフニウム膜がある。
また、絶縁性窒化膜としては、例えば、窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸窒化シリコン膜がある。
更に、前述のように図8の工程においてウエットエッチングを採用したため下部電極36aの上面の結晶構造が良好な状態に維持されており、その下部電極36aの結晶構造を引き継いで強誘電体膜38の結晶構造も良好となる。
次に、図11に示すように、強誘電体膜38の上に第2の導電膜39として酸化イリジウム膜をスパッタ法で50nm〜300nmの厚さに形成する。なお、この酸化イリジウム膜の上に更にイリジウム膜を20nm〜100nm程度の厚さに形成してもよい。
第2の導電膜39の材料は上記に限定されない。第2の導電膜39としては、プラチナ膜、イリジウム膜、チタン膜、アルミニウム膜、ルテニウム膜、及びストロンチウム膜のいずれかの単層膜、積層膜、合金膜、窒化膜、又は酸化膜を形成し得る。これについては後述の各実施形態でも同様である。
ここまでの工程において、強誘電体膜38には第2の導電膜39を形成するときの熱や回復アニール(図10)の熱が加わる。これらの熱によって強誘電体膜38の内部にストレスが発生し、そのストレスが原因で点線円Aのように強誘電体膜38に膜剥がれが生じることがある。
その膜剥がれは、強誘電体膜38との密着性がよい下部電極36aが存在するセル領域Iでは生じ難い。
しかし、バリア絶縁膜33として形成した絶縁性酸化膜や絶縁性窒化膜は強誘電体膜38との密着性が悪く、そのバリア絶縁膜33が広範に広がる周辺領域IIにおいては強誘電体膜38の膜剥がれが発生する可能性が高い。
図19は、本工程を終了した後のセル領域Iの平面図である。
図19に示すように、セル領域Iの複数の下部電極36aは第2の導電膜39により覆われる。
次いで、図12に示すように、セル領域Iにおける第2の導電膜39の上に平面視で島状の第2のレジストパターン41を形成する。
その後、図13に示すように、第2のレジストパターン41をマスクとして使用するRIEにより第2の導電膜39をエッチングし、セル領域Iに複数の上部電極39aを形成する。そのRIEで使用するエッチングガスとしては、例えば、アルゴンガスとCl2ガスとの混合ガスがある。
ここで、この例では各下部電極36aが強誘電体膜38で覆われているので、このエッチングで発生する第2の導電膜39の材料を含む導電性の反応生成物で下部電極36aと上部電極39aとが電気的に接続されるのを防止できる。
このエッチングを終了後、第2のレジストパターン41は除去される。
次に、図14に示すように、セル領域Iにおける強誘電体膜38と上部電極39aの上に第3のレジスト膜43を形成する。なお、セル領域IIにおける強誘電体膜38は、その第3のレジスト膜43で覆われずに露出する。
そして、図15に示すように、第3のレジスト膜43をマスクにしながら、アルゴンガスとCl2ガスとの混合ガスをエッチングガスとして使用するRIEにより強誘電体膜38をエッチングする。
これにより、周辺領域IIから強誘電体膜38が除去され、セル領域Iにのみ強誘電体膜38が残される。
この後に、図16に示すように、第3のレジスト膜43を除去する。
ここまでの工程により、セル領域Iには、下部電極36a、強誘電体膜38、及び上部電極39を積層してなる強誘電体キャパシタQが複数形成される。
以上説明したFeRAMの製造方法では、図1の例とは異なり、キャパシタQを一括エッチングで形成せずに、下部電極36aの側面を強誘電体膜38で覆った状態とする。
よって、第2の導電膜39をエッチングする工程(図13参照)で発生した導電性の反応生成物によって下部電極36aと上部電極39aとが電気的に接続されるのを防止できる。
しかしながら、この製造方法では、図11に示したような膜剥がれが強誘電体膜38に発生してしまう。
その膜剥がれは周辺領域IIにおいて発生し、周辺領域IIの強誘電体膜38は図15の工程で除去されるが、強誘電体膜38を除去した後でも膜剥がれが発生していた部分の第3の絶縁膜32に汚れが残ることがある。
更に、強誘電体膜38の膜剥がれがセル領域Iにまで広がることがあり、これによりFeRAMの歩留まりが低下するおそれもある。
以下に、このような強誘電体膜の剥がれを防止してFeRAMの信頼性を向上させることが可能な各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図20〜図33は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図であり、図34〜図37はその平面図である。
なお、図20〜図37において、図2〜図19で説明したのと同じ要素にはこれらの図におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
本実施形態では、以下のようにして半導体装置としてFeRAMを製造する。
まず、上記した図2〜図6の工程を行うことにより、図20に示すように、バリア絶縁膜33の上に第1の導電膜36、ハードマスク37、及び第1のレジスト膜38が順に積層された構造を得る。
但し、図6の例と異なり、本実施形態では周辺領域IIにもハードマスク37と第1のレジスト膜38を形成する。
また、前述のように、第1のレジスト膜38はフォトリソグラフィによってハードマスク37をパターニングするためのマスクとして機能し、そのパターニングが終了した後に除去される。
次いで、図21に示すように、ハードマスク37をマスクにして第1の導電膜36をドライエッチングする。これにより、セル領域Iの内側に複数の下部電極36aが間隔をおいて形成されるのと同時に、周辺領域IIに下部電極36aと同じ材料のダミーパターン36bが形成される。
このドライエッチングは、例えば、アルゴンガスとCl2ガスとの混合ガスをエッチングガスとするRIEにより行われる。
その後、図22に示すようにハードマスク37をウエットエッチングにより除去する。なお、そのウエットエッチングでは、過酸化水素水と、アンモニアと、水との混合溶液をエッチング液として使用し得る。
図34は、本工程を終了した後のセル領域Iの平面図である。
図34に示すように、セル領域Iには複数の島状の下部電極36aが行列状に配置される。そして、これらの下部電極36aを囲うようにダミーパターン36bが形成される。
次に、図23に示すように、図9と同様の条件を採用して、下部電極36a、ダミーパターン36b、及びバリア絶縁膜33の各々の上に強誘電体膜38としてPZT膜を30nm〜200nmの厚さに形成する。図9を参照して説明したように、強誘電体膜38の成膜方法としてはスパッタ法、MOCVD法、及びゾル・ゲル法がある。更に、PZTに代えて、SrBi2Ta2O9、SrBi2(Ta,Nb)2O9等のBi層状構造化合物や、PZTにランタンをドープしたPLZT、その他の金属酸化物強誘電体を強誘電体膜38の材料として用いてもよい。
ここで、前述のようにバリア絶縁膜33として形成した絶縁性酸化膜や絶縁性窒化膜は強誘電体膜38との密着性が悪いため、バリア絶縁膜33と強誘電体膜38とが広範囲にわたって接触していると強誘電体膜38が剥がれるおそれがある。
このような膜剥がれを防止するために、隣接する下部電極36a同士の間隔L1や、下部電極36aとダミーパターン36bとの間隔L2をなるべく短くし、バリア絶縁膜33と強誘電体膜38との接触面積をなるべく低減するのが好ましい。
本願発明者の調査によれば、上記の間隔L1、L2を2μm以下とすることで、強誘電体膜38の膜剥がれが発生し難くなることが明らかとなった。
図35は、本工程を終了した後のセル領域Iの平面図である。
図35に示すように、セル領域Iの複数の下部電極36aは強誘電体膜38により覆われる。
次いで、図24に示すように、強誘電体膜38に対して結晶化アニールを行うことにより、強誘電体膜38のPZTを結晶化する。なお、その結晶化アニールの条件は図10で説明したのと同じなのでここでは省略する。
次に、図25に示すように、強誘電体膜38の上に第2の導電膜39として酸化イリジウム膜をスパッタ法で50nm〜300nmの厚さに形成する。
ここで、図11を参照して説明したように、強誘電体膜38には第2の導電膜39を形成するときの熱や回復アニール(図24参照)の熱が加わり、これらの熱によって強誘電体膜38の内部にストレスが発生する。
このようにストレスが発生しても、本実施形態では周辺領域IIに強誘電体膜38との密着性が良好なダミーパターン36bを形成しているので、上記のストレスが原因で周辺領域IIの強誘電体膜38に膜剥がれが発生するのを抑制できる。
特に、ダミーパターン36bの材料であるイリジウム等の金属材料は、バリア絶縁膜33の材料である絶縁性の酸化物や窒化物と比較して強誘電体膜38との密着力が強く、強誘電体膜38の膜剥がれを有効に阻止することができる。
次に、図26に示すように、セル領域Iの第2の導電膜39の上に第2のレジストパターン41を形成する。
第2のレジストパターン41は、島状であって、その下方の下部電極36aと位置合わせされる。
その後、図27に示すように、第2のレジストパターン41をマスクにしながら、アルゴンガスとCl2ガスとの混合ガスをエッチングガスにするRIEで第2の導電膜39をエッチングする。これにより、セル領域Iにおいては下部電極36aの上方に複数の上部電極39aが形成されると共に、周辺領域IIから第2の導電膜39が除去される。
このエッチングにおいては、第2の導電膜39の材料を含む導電性の反応生成物が発生するが、下部電極36aは強誘電体膜38で覆われているので、この反応生成物で下部電極36aと上部電極39aとが電気的に接続されるのを防止できる。
このエッチングを終了後、第2のレジストパターン41は除去される。
図36は、本工程を終了した後のセル領域Iの平面図である。
図36に示すように、複数の上部電極39aの各々は平面視で島状であり、セル領域Iの内側において上部電極39aは行列状に配置される。
続いて、図28に示すように、セル領域Iにおける強誘電体膜38を覆う第3のレジスト膜43を形成する。
次いで、図29に示すように、第3のレジスト膜43をマスクにするRIEにより、周辺領域IIにおけるダミーパターン36bと強誘電体膜38とをパターニングする。そのRIEでは、例えば、アルゴンガスとCl2ガスとの混合ガスをエッチングガスとして使用し得る。
このパターニングでは、セル領域Iから第1の距離W以内にある部分のダミーパターン36bが残され、当該距離Wよりも離れた部分のダミーパターン36bは除去される。
強誘電体膜38との密着性が良好なダミーパターン36bをこのように残すことで、セル領域Iの周縁部において強誘電体膜38に膜剥がれが生じるのを防止できる。
ダミーパターン36bは、トランジスタTR等の回路素子と電気的に接続されておらず、電気的には浮遊電位となる。このように回路を形成しないダミーパターン36bが広範囲に残っていると半導体装置のサイズが大きくなるので、上記の第1の距離Wはなるべく短い方がよい。本実施形態では、第1の距離Wを0.2μm〜2μm程度に短くすることで、半導体装置のサイズの大型化を防止する。
なお、本実施形態ではこのように強誘電体膜38とダミーパターン36bとを同時にパターニングするので、強誘電体膜38とダミーパターン36bの各々の側面38x、36xは同一面内に位置するようになる。
また、セル領域Iの周縁部で強誘電体膜38が剥がれるおそれがない場合には、本工程においてダミーパターン36bを除去してもよい。
更に、本工程のエッチングではダミーパターン38bの残渣を発生させないためにオーバーエッチングが行われる。これによりダミーパターン38bの下のバリア絶縁膜33も除去されるが、エッチングは第3の絶縁膜32において停止し、その下の酸化防止絶縁膜31までエッチングは及ばない。
図37は、本工程を終了した後のセル領域Iの平面図である。
図37に示すように、本工程のエッチングにより、ダミーパターン36bは平面視でセル領域Iを囲う枠状に整形される。
また、複数の上部電極39aの各々は平面視で島状であり、セル領域Iの内側において上部電極39aは行列状に配置される。
次いで、図30に示すように第3のレジスト膜43を除去する。
ここまでの工程により、セル領域Iには、下部電極36a、強誘電体膜38、及び上部電極39aを積層してなる強誘電体キャパシタQが複数形成される。
続いて、図31に示すように、ここまでの工程で強誘電体膜38が受けたダメージを回復させるため、酸素含有雰囲気中で強誘電体膜38に対してアニールを行う。このアニールは回復アニールとも呼ばれ、本実施形態では基板温度を550℃〜700℃、処理時間を60分とする条件でこの回復アニールを行う。
次に、図32に示すように、セル領域Iと周辺領域IIの各々に保護絶縁膜42としてアルミナ膜を10nm〜150nmの厚さに形成する。アルミナ膜は水素ブロック性に優れているため、大気中の水素等の還元性物質がキャパシタQに侵入するのを保護絶縁膜42で阻止でき、還元性物質によって強誘電体膜38が還元されてその強誘電体特性が劣化するのを抑制できる。
なお、保護絶縁膜42の材料はアルミナに限定されず、窒化アルミニウム、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化チタン、酸化ハフニウムのいずれかの材料を保護絶縁膜42の材料として使用し得る。
また、保護絶縁膜42はダミーパターン36bの側面36x上に直接形成され、これにより当該側面36xから強誘電体膜38に水素等の還元性物質が侵入するのを防止することができる。
次に、図33に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、保護絶縁膜42の上にCVD法で酸化シリコン膜を500nm〜2000nmの厚さに形成し、その酸化シリコン膜を第4の絶縁膜44とする。
そして、第4の絶縁膜44の上面をCMP法で研磨した後、保護絶縁膜43と第4の絶縁膜44とをパターニングすることにより、各キャパシタQの上部電極39aに至る深さの第3のホール44aを形成する。
次いで、第3のホール44a内と第4の絶縁膜44の上にタングステン膜を形成した後、CMP法でそのタングステン膜を第4の絶縁膜44の上から除去し、第3のホール44a内にのみタングステン膜を第3の導体プラグ45として残す。なお、タングステン膜の形成前に、グル―膜としてスパッタ法で窒化チタン膜をこの順に形成してもよい。
その後、第4の絶縁膜44と第3の導体プラグ45の各々の上にアルミニウム膜を含む金属積層膜をスパッタ法で形成し、更にフォトリソグラフィによりその金属積層膜をパターニングして金属配線46を形成する。
以上により、本実施形態に係る半導体装置の基本構造が完成する。
なお、その半導体装置が備えるダミーパターン36bは前述のように電気的に浮遊電位である。そして、そのダミーパターン36bは、保護絶縁膜42やバリア絶縁膜33等の絶縁膜で囲まれており、配線や導体プラグ等の導電性の要素とは接続されない。
上記した本実施形態によれば、図23に示したように、強誘電体膜38との密着性が良好なダミーパターン36bを周辺領域IIに形成した。そのため、結晶化アニール(図24参照)等の熱によって強誘電体膜38の内部にストレスが発生しても、そのストレスに起因した膜剥がれが強誘電体膜38に生じるのを抑制でき、ひいては半導体装置の信頼性を向上させることができる。
なお、本実施形態は上記に限定されない。図38は、本実施形態に係る半導体装置の他の例を示す断面図である。
図23の工程では、隣接する下部電極36aの間の空間が完全に埋め込まれる厚さに強誘電体膜38を形成した。これに対し、図38の断面図のように、隣接する下部電極36aの間隔に対して強誘電体膜38の厚さを薄くし、強誘電体膜38の上面に凹部38bが形成されるようにしてもよい。このように凹部38bが形成されていても、強誘電体膜38の膜剥がれをダミーパターン36bで防止することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、図22に示したように、周辺領域IIの全面にダミーパターン36bを形成した。ダミーパターン36bの形状はこれに限定されず、以下のようにダミーパターン36bを島状に形成してもよい。
図39〜図41は本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図であり、図42〜図43はその平面図である。なお、図39〜図43において第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
まず、第1実施形態の図20〜図22の工程を行うことにより、図39に示すように、バリア絶縁膜33の上に上部電極36aとダミーパターン36bとが形成された構造を得る。
但し、本実施形態では周辺領域IIに複数のダミーパターン36bを互いに間隔をおいて島状に形成する。
図42は、本工程を終了した後のセル領域Iの平面図である。
図42に示すように、セル領域Iの外側には、前述のダミーパターン36bが行列状に配置される。
次いで、図40に示すように、第1実施形態の図23の工程と同様にして各領域I、IIに強誘電体膜38を形成する。
第1実施形態で説明したように、結晶化アニール等の熱に起因した強誘電体膜38の膜剥がれは、強誘電体膜38との密着性がよいダミーパターン36bによって阻止される。
但し、ダミーパターン36bと強誘電体膜38との密着力はこれらの材料の組み合わせによって異なり、材料の組み合わせによっては上記の密着力が弱まってしまう場合がある。
このような場合であっても、本実施形態ではダミーパターン36bを島状に形成したため、ダミーパターン36bの上面と強誘電体膜38との接触面積が低減し、両者の間の弱い密着力によって強誘電体膜38が剥がれるのを抑制することができる。
この後は、第1実施形態の図24〜図33の工程を行うことで、図41に示すような本実施形態に係る半導体装置の基本構造を得る。
図43は、この半導体装置のセル領域Iの平面図である。
なお、図43では、図が煩雑になるのを防止するために、保護絶縁膜42、第4の絶縁膜44、第3の導体プラグ45、及び金属配線46を省いている。
図43に示すように、セル領域Iの外周には上記した複数の島状のダミーパターン36bが残される。
上記した本実施形態によれば、図40に示したように、ダミーパターン36bを複数の島状とする。これによりダミーパターン36bの上面と強誘電体膜38との接触面積が低減するため、ダミーパターン36bと強誘電体膜38との密着力が弱い場合であっても、これらの密着力の弱さに起因して強誘電体膜38が剥がれるのを抑制できる。
(第3実施形態)
第1実施形態や第2実施形態では、図33等に示したように、複数の下部電極36aの各々に対応するように上部電極39aを複数形成した。これに対し、本実施形態では、セル領域Iに単一の上部電極39aを形成する。
図44は本実施形態に係る半導体装置の断面図であり、図45はその平面図である。
なお、図44及び図45において、第1〜第2実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
図44及び図45に示すように、本実施形態においては、複数の下部電極36aを覆うように単一の上部電極39aを形成する。この場合、上部電極39aは、複数のキャパシタQに共通のプレート線としての機能を兼ねる。
このように単一の上部電極39を形成しても、第1実施形態と同様に、ダミーパターン36bによって強誘電体膜38の膜剥がれを防止できる。
(その他の実施形態)
第1実施形態では、図29に示したように、第3のレジスト膜43をマスクに用いて、ダミーパターン36bと強誘電体膜38とを同時にエッチングした。これに代えて、以下のようにダミーパターン36bと強誘電体膜38とを別々のレジストを用いてエッチングしてもよい。
図46〜図49は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
まず、第1実施形態の図29の工程を行うことにより、図46に示すように、第3のレジストパターン43をマスクにして強誘電体膜38をエッチングする。
なお、この例ではエッチング量を時間でコントロールすることにより、ダミーパターン36bの上でエッチングを停止させる。
この後に、第3のレジストパターン43は除去される。
次に、図47に示すように、上部電極39a、強誘電体膜38、及びダミーパターン36bの各々の上に第5のレジスト膜51を形成する。
その後、図48に示すように、第5のレジスト膜51をマスクにして、アルゴンガスとCl2ガスとの混合ガスをエッチングガスとするRIEによりダミーパターン36bをエッチングする。
このエッチングを終了後、第5のレジスト膜51は除去される。
この後は、第1実施形態の図31〜図33の工程を行うことで、図49に示す半導体装置の基本構造を完成させる。
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) セル領域を備えた半導体基板の上方に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜の上に第1の導電膜を形成する工程と、
前記第1の導電膜をパターニングすることにより、前記セル領域の内側に強誘電体キャパシタの下部電極を形成し、前記セル領域の外側にダミーパターンを形成する工程と、
前記下部電極、前記ダミーパターン、及び前記絶縁膜の上に強誘電体膜を形成する工程と、
前記強誘電体膜の上に第2の導電膜を形成する工程と、
前記第2の導電膜をパターニングすることにより、前記セル領域の内側に前記強誘電体キャパシタの上部電極を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
(付記2) 前記ダミーパターンをパターニングすることにより、前記セル領域から第1の距離以内にある部分の前記ダミーパターンを残しつつ、前記第1の距離より離れた部分の前記ダミーパターンを除去する工程を更に有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記3) 前記ダミーパターンを形成する工程において、平面視で島状の前記ダミーパターンを複数形成することを特徴とする付記1又は付記2に記載の半導体装置の製造方法。
(付記4) 前記下部電極を形成する工程において、前記下部電極を複数形成し、
前記上部電極を形成する工程において、平面視で複数の前記下部電極の各々を覆うように前記上部電極を形成することを特徴とする付記1乃至付記3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(付記5) 前記絶縁膜は、絶縁性酸化膜又は絶縁性窒化膜であることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(付記6) セル領域を備えた半導体基板と、
前記半導体基板の上方に設けられた絶縁膜と、
前記セル領域の内側の前記絶縁膜の上に設けられた強誘電体キャパシタの下部電極と、
前記セル領域の外側の前記絶縁膜の上に設けられ、前記下部電極と同じ材料を含む浮遊電位のダミーパターンと、
前記セル領域の内側の前記絶縁膜と前記下部電極の各々の上に設けられた強誘電体膜と、
前記強誘電体膜の上に設けられた前記強誘電体キャパシタの上部電極と、
を有する半導体装置。
(付記7) 前記ダミーパターンは平面視で島状であり、前記ダミーパターンが複数設けられたことを特徴とする付記6に記載の半導体装置。
(付記8) 前記下部電極が複数設けられ、
前記上部電極は、平面視で前記複数の下部電極の各々を覆うことを特徴とする付記6又は付記7に記載の半導体装置。
(付記9) 前記絶縁膜は、絶縁性酸化膜又は絶縁性窒化膜であることを特徴とする付記6乃至付記8のいずれかに記載の半導体装置。