以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る車両の一部の側面図である。
図1において、車両100は、サイドドア101と、車両100に形成され、車両100内に対して人が乗降する際に通過する開口部101aとを備えている。サイドドア101は、開口部101aに嵌め込まれており、開口部101aの車両前方側の縁部110において、1対のヒンジ103を介して開口部101aに連結されている。よって、サイドドア101は、ヒンジ103周りに回動可能である。すなわち、サイドドア101は、スイング式のドアである。
サイドドア101の車両外側には、アウトサイドハンドル104が設けられている。アウトサイドハンドル104には、全閉状態のサイドドア104を全開状態にはならない所定量だけ自動で開けさせるための指令をユーザが入力するためのスイッチ106が設けられている。本明細書では、全閉状態にあるサイドドア101を全開状態では無い所定量だけ自動で開くことを、「ポップアップ開動作」と呼び、「全閉状態のサイドドア101を自動で全開では無い所定量だけ開かせるためのユーザからの指令」を「ポップアップ指令」と呼ぶことにする。
車両100の外側にいるユーザは、アウトサイドハンドル104またはスイッチ106を操作することによって、サイドドア101を開けること(サイドドア101の開操作)ができる。すなわち、ユーザがアウトサイドハンドル104を操作することにより、サイドドア101は手動で開けられる。一方、ユーザがスイッチ106を押下することにより、サイドドア101はポップアップ開動作により全開では無い所定量だけ自動で開き、該所定量だけ開いた位置で停止する。ユーザは、この位置で停止したサイドドア101に対してサイドドア101が外側に回動するような力(操作力)を加えることによって、上記停止位置に停止したサイドドア101を手動で開けることができる。このように、スイッチ106は、ユーザが車両の外側からポップアップ指令を入力する入力部として機能する。また、スイッチ106がユーザにより押下されるということは、サイドドア101の操作をしようとしているユーザが車両100の外側にいることを示している。すなわち、スイッチ106によるポップアップ指令の入力は、ユーザが車両100の外側にいるというユーザの状況を入力しているとも言える。よって、スイッチ106は、ユーザが車両100の外側からポップアップ指令を入力している、というユーザの状況に関する情報を入力する入力部としても機能していると言える。
本明細書では、ポップアップ開動作が完了した位置(上記停止位置、すなわち、ポップアップ開動作に係る所定量だけサイドドア101の全閉状態から開いた位置)を「ポップアップドア位置」と呼ぶことにする。
サイドドア101の車両内側には、インサイドハンドル105が設けられている。インサイドハンドル105には、ポップアップ指令をユーザが入力するためのスイッチ107が設けられている。
車両100の内側にいるユーザは、インサイドハンドル105またはスイッチ107を操作することによって、サイドドア101の開操作を行うことができる。すなわち、ユーザがインサイドハンドル105を操作することにより、サイドドア101は手動で開けられる。一方、ユーザがスイッチ107を押下することにより、サイドドア101はポップアップドア位置まで自動で開き、該位置で停止する。ユーザは、この位置で停止したサイドドア101に対してサイドドア101が外側に回動するような力(操作力)を加えることによって、上記停止位置に停止したサイドドア101を手動で開けることができる。このように、スイッチ107は、ユーザが車両の内側からポップアップ指令を入力する入力部として機能する。また、スイッチ107がユーザにより押下されるということは、サイドドア101の操作をしようとしているユーザが車両100の内側にいることを示している。すなわち、スイッチ107によるポップアップ指令の入力は、ユーザが車両100の内側にいるというユーザの状況を入力しているとも言える。よって、スイッチ107は、ユーザが車両100の内側からポップアップ指令を入力している、というユーザの状況に関する情報を入力する入力部としても機能していると言える。
なお、車両101の外側からの操作および内側からの操作に関わらず、ポップアップ開動作中において、サイドドア101が外側に回動するような操作力をユーザがサイドドア101に印加する場合、サイドドア101は上記操作力により手動で開けられることは言うまでも無い。
サイドドア101は、サイドドア101を所定の位置(本実施形態では、ポップアップドア位置)にて保持するためのドア保持装置108と、開口部101aの車両後方側の縁部111に設けられたストライカ(不図示)と係合することで、サイドドア101を車両101に対して閉状態(全閉状態または半ドア状態)で保持するためのラッチ装置109とをさらに備えている。ラッチ装置109は、ラッチ(不図示)とポール(不図示)とを有しており、サイドドア101を閉める際には、ラッチが回転してストライカと係合し、同時にポールがラッチの回転を止めることによって、サイドドア101を閉状態で保持する。また、ポールを動かしてラッチの回転止めを解除すると、ラッチとストライカとの係合状態を解除して、サイドドア101の回動を可能な状態にする。
図2は、サイドドア101が全閉状態の時の、ドア保持装置108の斜視図である。ドア保持装置108は、任意の位置でサイドドア101を保持可能であり、所謂、フリーストップ機能を有する。ドア保持装置108は、サイドドア101の内部にて固定されたレール201と、該レール201と係合し、上記レール201上を摺動するラック202と、該ラック202と噛み合い、ラックとの相対移動により回転するピニオン203と、ピニオン203に接続された電磁ブレーキ204と、ラック202に接続されたレバー205とを備えている。該レバー205の一方端は、ピン206周りに回動するようにラック202に接続されている。上記ピニオン203は、電磁ブレーキ204の回転軸であるシャフトに接続されている。また、レバー205の他方端は、サイドドア101の車両前方に設けられた開口部を通り、ブラケット(不図示)を介して開口部101aの車両前方側の縁部110に連結されている。上記ラック202が、手動または電動によりレール201を摺動することにより、レバー205はピン206を中心に回動し、該回動に伴ってサイドドア101は開閉される。
図3は、本実施形態に係る車両ドア駆動装置300における制御系の概略構成を示すブロック図である。
車両ドア駆動装置300は、ユーザがポップアップ指令を入力するためのスイッチ106、107と、ドア保持装置108と、ドア保持装置108が有する電磁ブレーキ204を駆動させるための駆動回路307と、ドア保持装置108が有するラック202を変位させるためのモータ309と、該モータ309を駆動させるための駆動回路308と、無線送信機(不図示)と無線信号の送受信を行なう無線信号送受信部310と、サイドドア101の開度を検出するためのパルスセンサ311と、制御装置301とを備えている。
図3において、制御装置301は車両ドア駆動装置300の全体を制御する制御手段としての制御部である。また、ラッチ装置109等、車両ドア駆動装置300とは別の構成を制御するように制御装置301を構成しても良い。この制御装置301は、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するCPU302と、このCPU302によって実行される、図6にて後述される処理などの制御プログラムなどを格納するROM303とを有する。また、制御装置301は、CPU302の処理動作中のデータや入力データなどを一時的に格納するRAM304、およびフラッシュメモリやSRAM等の不揮発性メモリ305などを有する。また、制御装置301には、スイッチ106、107が接続されている。よって、ユーザによりスイッチ106、107が押下されると、スイッチ106、107は、ポップアップ指令に関するポップアップ指令情報を制御装置301に送信する。さらに、制御装置301には、ラッチ装置109、電磁ブレーキ204、モータ309等がそれぞれ、駆動回路306〜308を介して接続されている。
無線信号送受信部310は、車両100の外に向けて、ID情報要求信号を所定時間間隔(送信時間間隔)で送信する。また、無線信号送受信部310は、所定の無線送信機から送信されたID情報信号を受信する。上記無線送信機は、無線通信等の通信機能を有する、携帯キー、スマートフォン、タブレット等、車両100とは別個の、無線通信機能を有する携帯型装置である。該無線送信機は、所定の車両のIDを示すID情報をメモリ部に保持している。該無線送信機は、ID情報要求信号を受信すると、自身のメモリ部に格納されている、所定の車両を特定するID情報を含むID情報信号を送信する。無線信号送受信部310は、該ID情報信号を受信することになる。
なお、本実施形態では、無線送信機からポップアップ指令を入力しても良い。この場合は、例えば、無線送信機にユーザにポップアップ指令を入力させるためのスイッチを設ければ良い。ユーザにより該スイッチが押下される場合、上記無線送信機は、車両100に対してポップアップ指令情報を送信し、無線信号送受信部310が、無線送信機から送信されたポップアップ指令情報を受信する。よって、この場合は、無線信号送受信部310が、ポップアップ指令を入力する入力部として機能することになる。また、本実施形態では、ユーザがアウトサイドハンドル104やインサイドハンドル105を操作して全閉状態のサイドドア101を開けたことをトリガとして、ポップアップ開動作を行っても良い。この場合は、全閉状態のアウトサイドハンドル104やインサイドハンドル105の操作に連動してオンされるようなスイッチを設け、該スイッチのオンにより該スイッチがポップアップ指令情報を制御装置301に送信するように、ポップアップ指令の入力部を構成すれば良い。
パルスセンサ311は、ラック202(レバー205)を駆動するためのモータ309に設けられており、モータ309の回転数に応じたパルス信号を制御装置301に送信する。制御装置301は、パルスセンサ311から受信したパルス信号により、モータ309の回転数を認識することができる。従って、制御装置301は、上記モータ309の回転数により、ラック202の移動量を算出することができ、該移動量からサイドドア101がどれだけ開いたか(開度)を知ることができる。例えば、ラック202、レバー205、サイドドア101等、サイドドア101の開動作に関わる部材の寸法は不変であるので、テーブル化や関数化などにより上記移動量と開度とを関連付けておく。制御装置301は、該関連付けられた関係を用いて、ラック202の移動量に対応する開度を取得することができる。
なお、本実施形態では、上記パルスセンサに限らず、サイドドア101の位置を検出するポジションセンサ等、サイドドア101の開度を取得可能な構成であればいずれを用いても良い。
ユーザがアウトサイドハンドル104またはインサイドハンドル105を操作して、全閉状態のサイドドア101を開操作する場合、ユーザがサイドドア101を開けるに従ってラック202がレール201を摺動し、該摺動に連動してレバー205が回動してサイドドア101は開けられる。
一方、ユーザがスイッチ106またはスイッチ107を操作して、全閉状態のサイドドア101を開操作する場合、駆動回路308によりモータ309が駆動されて、ラック202が図2の矢印方向Pに沿って移動し、該ラック202の移動に伴ってレバー205が回動する。すなわち、図4(a)に示す全閉状態にあるサイドドア101が自動で開き出し、ポップアップ開動作が行われる。ポップアップ開動作中は、モータ309によりラック202がレール201上を摺動し、それに伴いサイドドア101が自動で開く。パルスセンサ311の検出結果により、サイドドア101の開度が、サイドドア101が図4(b)に示すようなポップアップ位置にある時の開度θ(ポップアップ開度θ)であることを検知すると、駆動回路308を制御してモータ309の駆動を停止して移動しているラック202を停止させる。これと同時に、駆動回路307により、所定の保持トルク(保持力)が発生するように電磁ブレーキ204が通電される。これにより、図5に示すように、ピニオン203は、ラック202上において、ポップアップ位置に対応する位置において上記保持力により保持される。なお、この保持トルク(保持力)としては、ポップアップ位置においてサイドドア101を保持でき、かつこの状態のサイドドア101をユーザが容易に開くことができる程度の力であることが好ましい。このように設定することで、ポップアップ位置までは自動でサイドドア101を開け、ポップアップ位置以降についてはユーザにより手動でサイドドアを開けることができる。
なお、本実施形態では、電磁ブレーキ204により保持トルクを発生させ、該保持トルク(保持力)により、ラック202を保持、すなわち、サイドドア101を保持している。サイドドア101を保持するための構成としては、電磁ブレーキに限らず、例えば電磁クラッチ等、ラック202の保持、非保持を切り替えることができればいずれの構成を用いても良い。
本明細書において、サイドドア101の「開度(ポップアップ量)」とは、サイドドア101が全閉状態からどれだけ開いているかを示す指標である。本実施形態では、全閉状態における、サイドドア101のヒンジ103の回転軸方向と鉛直方向においてサイドドア101に沿った方向401と、サイドドア101が開いた状態における、サイドドア101のヒンジ103の回転軸方向と鉛直方向においてサイドドア101に沿った方向402とのなす角度を、上記開度としている。なお、上述のように、開度は、角度に関する指標であるので、何を基準に開度を決めるか、については、問題では無い。
本実施形態では、ユーザがスイッチ106またはスイッチ107を押下することにより、サイドドア101をポップアップ開動作させることができる。このポップアップ開動作により、サイドドア101は、ポップアップ開度θ(例えば、約10°)まで自動で開く。よって、全閉状態のサイドドア101の開操作において重たさを感じるサイドドア101の開け始めを自動で行なうことができる。そして、ポップアップ開度θだけ開いた状態でユーザが手動によるサイドドア101の開操作を行うことになるので、全閉状態のサイドドア101を開ける動作における該サイドドア101の操作力を低減することができる。
上述のように、ポップアップ開動作は、全閉状態のサイドドア101を開ける際に大きな効果を発揮し、非常に有効な方式である。このようなポップアップ開動作を行う方式において、操作しようとしているユーザの状況、車両の状況に応じてポップアップ量を変えることにより、さらに操作性を向上させることができる。
例えば、ユーザの状況としてポップアップ指令を入力するユーザの位置に応じてポップアップ量(開度)を変更することが好ましい。通常、インサイドハンドルはサイドドアの前方(ヒンジ側)に配置されていることが多い。この場合、インサイドハンドルの位置がドア回転軸(ヒンジ軸)から近いため、全閉状態のサイドドアを開ける際のユーザへの操作力負荷が高くなってしまう。そこで、本実施形態では、スイッチ107によりポップアップ指令が入力されたことを検知する場合(車両100の内側からポップアップ指令が入力されると)、サイドドア101の開度が大きくなるようにポップアップ開動作を行う。これにより、車両100の内側から全閉状態のサイドドア101を開ける際の操作力を低減することができる。
しかしながら、車両100の外側からポップアップ指令を入力する場合、上述のようにポップアップ量を大きく設定すると、ユーザの手(例えば、甲)等に、ポップアップ開動作中のサイドドア101が当たる可能性がある。そこで、本実施形態では、スイッチ106によりポップアップ指令が入力されたことを検知する場合(車両100の外側からポップアップ指令が入力されると)、サイドドア101の開度が小さくなるようにポップアップ開動作を行う。これにより、ポップアップ指令を入力した後に、ユーザの手等にポップアップ開動作中のサイドドア101が当たることを防止、ないしは低減することができ、ユーザの操作フィーリングを損なうことを防止、ないしは低減することができる。
図6は、本実施形態に係る、ポップアップ指令を入力する位置が車両の内側と外側とでポップアップ量(開度)を変える場合のポップアップ開動作の処理手順を示すフローチャートである。該処理手順は、制御装置301が有するCPU302によって実行される処理である。従って、処理の制御は、CPU302が、ROM303に格納された図6に示す処理を行うプログラムを読み出し、該プログラムを実行することによって行われる。
なお、本実施形態では、スイッチ106、107はそれぞれ、自身を特定するための情報をポップアップ指令情報に付与するように構成されている。なお、本実施形態では、CPU302がポップアップ指令情報の出所を識別できれば良く、スイッチ106から送信されたポップアップ指令情報であることと、スイッチ107から送信されたポップアップ指令情報であることとを区別できればいずれの構成を採っても良い。
ステップS61では、制御装置301は、ユーザによりポップアップ指令が入力されたか否かを判断する。ユーザによりスイッチ106またはスイッチ107が押下されると、押下されたスイッチは、ポップアップ指令情報を制御装置301に送信する。スイッチ106またはスイッチ107からポップアップ指令情報を受信すると、制御装置301は、ユーザによりポップアップ指令が入力されたと判断し、ステップS62に進む。一方、ポップアップ指令情報を受信しない場合は、制御装置301は、ポップアップ指令情報を受信するまでステップS61を繰り返す。
ステップS62では、制御装置301は、ステップS61にて受信したポップアップ指令情報に基づいて、ポップアップ指令が車両100の内側から入力されたか、外側から入力されたかを判断する。すなわち、制御装置301は、受信したポップアップ指令情報がスイッチ106から送信されたものである場合は、ポップアップ指令が車両100の外側から入力されたと判断する。一方、制御装置301は、受信したポップアップ指令情報がスイッチ107から送信されたものである場合は、ポップアップ指令が車両100の内側から入力されたと判断する。
ステップS63では、制御装置301は、ポップアップ開度θを決定する。すなわち、制御装置301は、ポップアップ開度θとして、車両100の外側(スイッチ106)からポップアップ指令が入力された場合の開度(外側入力開度)を設定する。本実施形態では、外側入力開度を小さく設定している。
本実施形態では、モータ309の駆動によりラック202、レバー205を動かしてサイドドア101を開いている。従って、モータ309の駆動により、サイドドア101の開度を制御していると言え、モータ309の回転数とサイドドア101の開度とは関連付けられている。本実施形態では、この関連付けをテーブル化している。よって、制御装置301は、該テーブルを参照して、所定の開度に対応するモータ309の回転数を取得することができる。なお、上記関連付けを関数化し、該関数を用いて所定の開度に対応する回転数を算出しても良い。
本ステップでは、上記外側入力開度の決定後、制御装置301は、上記テーブルを参照して、外側入力開度に対応するモータ309の回転数(外側入力回転数)を取得する。
ステップS64では、制御装置301は、ポップアップ開度θを決定する。すなわち、制御装置301は、ポップアップ開度θとして、車両100の内側(スイッチ107)からポップアップ指令が入力された場合の開度(内側入力開度)を設定する。内側入力開度は、サイドドア101の全開状態よりも小さな開度であって、外側入力開度よりも大きな開度である。上記内側入力開度の決定後、制御装置301は、上記テーブルを参照して、内側入力開度に対応するモータ309の回転数(内側入力回転数)を取得する。
なお、本実施形態では、外側入力開度および内側入力開度は予め設定されているが、これらの値をユーザが変更できるようにしても良いことは言うまでも無い。
ステップS65では、制御装置301は、ステップS63またはステップS64にて決定されたポップアップ開度θにてポップアップ開動作を開始する。すなわち、制御装置301は、駆動回路308を制御してモータ309を駆動させ、図2に示すような全閉状態にあるラック202を矢印方向Pにおいてレール201上で摺動させる。該摺動によりレバー205が回動し、サイドドア101は自動で開く。このとき、制御装置301は、パルスセンサ311からパルス信号を随時取得することで、ラックの移動距離、すなわち、サイドドア101の開度(モータ309の回転数)をモニタしている。
ステップS66では、制御装置301は、ポップアップ開動作中のサイドドア101の開度が設定されたポップアップ開度θとなったら自動で開いているサイドドア101を停止させ、該停止位置(ポップアップドア位置)にてサイドドア101を保持させる。すなわち、制御装置301は、パルスセンサ311からのパルス信号に基づいて、現在のモータ309の回転数が決定されたポップアップ開度に対応する回転数と一致したら、駆動回路308を制御してモータ309への通電を停止して該モータ309の駆動を停止させる。これにより、ラック202は停止し、サイドドア101の自動開動作も停止する。例えば、スイッチ106によりポップアップ指令が入力された場合は、パルスセンサ311の検知結果に従ってモータ309の回転数が外側入力回転数となると、モータ309の駆動を停止する。一方、スイッチ107によりポップアップ指令が入力された場合は、パルスセンサ311の検知結果に従ってモータ309の回転数が内側入力回転数となると、モータ309の駆動を停止する。この制御により、ポップアップ指令の入力位置が車両100の内側と外側とでポップアップ量が変わることになる。制御装置301は、モータ309の停止と共に、駆動回路307を制御して、電磁ブレーキ204に通電し、保持トルク(保持力)を発生させる。この制御により、上記サイドドア101の停止した位置にて該サイドドア101は電磁ブレーキ204の作用により保持される。このようにして、本ステップにおいてポップアップ開動作を終了する。
本実施形態では、ポップアップ量(開度)の制御を、モータ309の回転数によって行なっているが、これに限定されない。例えば、制御回路308からモータ309への通電時間により、ポップアップ量を制御しても良い。モータ309への通電時間が長い程、サイドドア101の開度は大きくなるので、相対的に開度が大きい内側入力開度に対しては、外側入力開度に比べてモータ309への通電時間を長くすれば良い。
また、例えば、サイドドア101の開度が外側入力開度となったら所定の部材により押下されるように構成された第1のスイッチ、およびサイドドア101の開度が内側入力開度となったら所定の部材により押下されるように構成された第2のスイッチをレバー205に設けても良い。この場合は、車両100の外側からポップアップ指令が入力された場合に第1のスイッチが押下されると、制御装置301は、モータ309の駆動を停止させる。一方、車両100の内側からポップアップ指令が入力された場合に第2のスイッチが押下されると、制御装置301は、モータ309の駆動を停止させる。この構成により、モータ309が停止した時には、サイドドア101の開度は、所望のポップアップ開度(外側入力開度または内側入力開度)となる。
本実施形態では、サイドドア101の外側と内側とでは、操作のフィーリングが異なるので、サイドドア101の操作位置(ユーザの状況)に応じてポップアップ量を変える。すなわち、車両100が、スイッチ106、107より入力された指令に基づいて、ユーザのサイドドア101の操作位置(ユーザの状況)を判断し、該操作位置に最適なポップアップ開度を決定し、該ポップアップ開度にてポップアップ開動作を行う。具体的には、乗車時(車両の外側からポップアップ指令を入力する場合)はポップアップ開度θを小さく設定している。よって、ポップアップ開動作中において、サイドドア101がユーザに当たることを防止、ないしは低減することができる。また、降車時(車両の内側からポップアップ指令を入力する場合)はポップアップ開度θを大きく設定している。よって、ポップアップ開動作終了後、ポップアップドア位置に位置するサイドドア101を手動で開ける際に必要な操作力を低減することができる。このように、本実施形態によれば、乗車時や降車時の操作部位やユーザの姿勢の違いに関わらず、サイドドア101の開閉フィーリングを改善することができる。
なお、無線送信機によってポップアップ指令を入力する場合は、ユーザが荷物を両手に持って車両に乗り込む状況を想定し、ポップアップ開度θを大きくしても良い。このような設定により、ユーザが荷物を両手に持っている場合であっても、サイドドア101が自動で大きな開度まで開くので、ポップアップドア位置以降へのサイドドア101の手動による開操作を、例えば肘などにより行なうことができる。
また、ユーザの状況に応じてポップアップ量を自動的に変更する例として、車両100の内側からの操作に特化したものではあるが、ユーザの体格に応じてポップアップ開度を変更することが挙げられる。このような例として、ユーザの体格を検知する体格検知センサとしての、荷重値や荷重分布を検出可能な着座センサを車両100内のシートに設け、該着座センサを制御装置301に接続すれば良い。あるいは、体格検知センサとして、シートの前後位置、上下位置、およびシートの角度の少なくとも1つを検知可能なシートポジションセンサをシートに設け、該シートポジションセンサを制御装置301に接続しても良い。この場合は、シートはパワーシートでも良いし、マニュアルシートでも良い。上記体格検知センサは、ユーザの状況としてのユーザの体格に関する情報を入力する入力部として機能する。
この形態では、着座センサやシートポジションセンサといった体格検知センサにより検知されたシートに座っている人物の体重や体格を検知し、体格検知センサが検知した人物の体重や体格に関する情報を制御装置301に送信する。制御装置301は、体格検知センサから受信した人物の体重や体格に関する情報に応じて、ポップアップ開度θを決定する。例えば、体格検知センサによる検知結果により、シートに座っている人物が女性や子供と判断される場合は、ポップアップ開度θを大きく設定したり、体格が大きくなる程段階的にポップアップ開度θを大きく設定するようにしても良い。このように設定することで、ユーザの体格に応じて、サイドドア101を車両100の内側から開ける操作をアシストすることができる。また、体格検知センサにより、シートにある物体が人物ではなく、チャイルドシートであると判断される場合は、ポップアップ開度θを0°と設定しても良い。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ユーザの状況に応じてポップアップ量を変更する形態を説明したが、本実施形態では、車両100の状況(置かれている環境等)に応じてポップアップ量を変更する形態について説明する。
本実施形態では、車両100の状況として車両100の姿勢(特に左右傾斜)に応じてポップアップ量を変更する。すなわち、図7(a)、(b)に示すように、車両100のサイドドア101のドア勝手方向(ドアが開く方向)に車両100が傾く場合に、スロープの傾斜角αに応じてポップアップ量を変更する。
図8は、本実施形態に係る車両ドア駆動装置800における制御系の概略構成を示すブロック図である。
車両ドア駆動装置800は、スイッチ106、107と、ドア保持装置108と、駆動回路307と、モータ309と、駆動回路308と、無線信号送受信部310と、車両100の傾斜角を検出する傾斜センサ801と、制御装置301を備えている。なお、本実施形態では、ROM303には、図9に示す制御プログラムが格納されている。
傾斜センサ801は、車両100に設けられており、車両100の傾きを検知可能な3軸加速度センサである。よって、傾斜センサ801は、車両100のドア勝手方向における傾きに対応する図7(a)、(b)における傾斜角αを検出することができ、傾斜角αに関する傾斜角情報を制御装置301に送信する。このように、傾斜センサ801は、車両100の傾きに関する情報を入力しているので、車両100の状況に関する情報を入力する入力部として機能する。
図9は、本実施形態に係る、車両の傾斜に応じてポップアップ量(開度)を変える場合のポップアップ開動作の処理手順を示すフローチャートである。該処理手順は、制御装置301が有するCPU302によって実行される処理である。従って、処理の制御は、CPU302が、ROM303に格納された図9に示す処理を行うプログラムを読み出し、該プログラムを実行することによって行われる。
ステップS91では、制御装置301は、ユーザによりポップアップ指令が入力されたか否かを判断する。ユーザによりスイッチ106またはスイッチ107が押下されると、押下されたスイッチは、ポップアップ指令情報を制御装置301に送信する。スイッチ106またはスイッチ107からポップアップ指令情報を受信すると、制御装置301は、ユーザによりポップアップ指令が入力されたと判断し、ステップS92に進む。一方、ポップアップ指令情報を受信しない場合は、制御装置301は、ポップアップ指令情報を受信するまでステップS91を繰り返す。
ステップS92では、制御装置301は、傾斜センサ801から傾斜角情報を取得し、車両100のサイドドア101のドア勝手方向の傾斜角αを取得する。
ステップS93では、制御装置301は、ステップS92にて取得された傾斜角αに応じてポップアップ開度θを決定する。すなわち、制御装置301は、ポップアップ開度θとして、車両100の傾斜角αに応じた開度を設定する。本実施形態では、サイドドア101がドア自重で勝手に閉まろうとする場合(図7(a))、ポップアップ開度θを大きく設定する。このような場合が想定されるのは、0<傾斜角α<90°の場合である。ただし、傾斜角がきついスロープは現実的では無いであろう。一方、サイドドア101がドア自重で勝手に開こうとする場合(図7(b))、ポップアップ開度θを小さく、または0°に設定する。このような場合が想定されるのは、90°<傾斜角α<180°の場合である。よって、制御装置301は、ステップS92にて取得した傾斜角αが0<傾斜角α<90°の範囲内である場合は、サイドドア101がドア自重で勝手に閉まろうとする場合であると判断し、ポップアップ開度θとして、大きな値である第1の開度に設定する。また、制御装置301は、ステップS92にて取得した傾斜角αが90°<傾斜角α<180°の範囲内である場合は、サイドドア101がドア自重で勝手に開こうとする場合であると判断し、ポップアップ開度θとして、小さな値である第2の開度に設定する。
なお、傾斜角αが0°または180°である場合は、ステップS62〜S64と同様にしてポップアップ開度θを決定すれば良い。また、傾斜角α=90°のときは現実的では無いので、本実施形態では考慮していない。
ステップS94では、制御装置301は、ステップS65と同様にして、ステップS93にて決定されたポップアップ開度θにてポップアップ開動作を開始する。ステップS95では、制御装置301は、ステップS66と同様にして、ポップアップ開動作中のサイドドア101の開度が設定されたポップアップ開度θとなったら自動で開いているサイドドア101を停止させ、該停止位置(ポップアップドア位置)にてサイドドア101を保持させる。すなわち、本ステップにおいてポップアップ開動作を終了する。
上述のように、本実施形態では、図7(a)のように、サイドドア101がドア自重で勝手に閉まろうとするように傾斜している場合は、ポップアップ開度θを大きくしている。よって、全閉状態からのサイドドア101の開き始めの操作に必要な力を低減することができる。一方、図7(b)にように、サイドドア101がドア自重で勝手に開こうとするように傾斜している場合は、ポップアップ開度θを小さくしている。よって、全閉状態からのサイドドア101を開く際にサイドドア101が勝手に開いてしまうことを助長しないようにすることができる。
上記説明では、車両100の状況として車両100の姿勢(傾斜)を採り上げたが、車両100が雨に曝されている場合においても、本実施形態を適用することができる。この場合は、図8において、傾斜センサ801を雨滴センサに変更すれば良い。すなわち、降雨状態を雨滴センサで検出し、車両100が置かれている雨の状況に応じてポップアップ量(ポップアップ開度θ)を設定すれば良い。例えば、雨滴センサにより降雨量が多いと判断する場合は、制御装置301は、ポップアップ開度θを小さく設定する。一方、雨滴センサにより降雨量が少ないと判断する場合は、制御装置301は、ポップアップ開度θを大きく設定する。このように、雨滴センサは、車両100の周囲の雨の量に関する情報を入力しているので、車両100の状況に関する情報を入力する入力部として機能する。
また、車両100の状況として、車外温度に着目しても良い。この場合は、図8において、傾斜センサ801を車両100の外の温度を計測する温度センサに変更すれば良い。すなわち、車両100の車外温度を温度センサで検出し、該車外温度に応じてポップアップ量(ポップアップ開度θ)を設定すれば良い。例えば、温度センサにより車外温度が低温であると判断する場合は、制御装置301は、ポップアップ開度θを常温や高温時よりも大きく設定する。この制御により、ウェザストリップ反力の低下を低減することができ、凍結によるサイドドア101に対するウェザストリップの貼り付きによるサイドドア101の操作力の増加を改善することができる。このように、温度センサは、車両100の周囲の温度に関する情報を入力しているので、車両100の状況に関する情報を入力する入力部として機能する。
さらには、測距センサ等の車両外側障害物センサ、または車外カメラ(例えば、アラウンドビューモニタ)の検出状況に応じてポップアップ開度θを設定しても良い。例えば、車両外障害物センサを用いる場合は、図8において、傾斜センサ801を車両外側障害物センサに変更すれば良い。車両外側障害物センサは、サイドドア101に設けられ、所定の範囲内に存在する障害物を検出し、該検出情報を制御装置301に送信する。例えば、車両外側障害物センサにより障害物が検出されたと判断する場合は、制御装置301は、ポップアップ開度θを0°に設定する。あるいは、車両外側障害物センサが、障害物までの距離を取得できる場合は、制御装置301は、検出情報に基づいてサイドドア101から障害物までの距離を算出し、サイドドア101が障害物に当たらない開度をポップアップ開度θとして設定するようにしても良い。車外カメラを用いる場合は、撮影された画像データから画像処理等によって、想定されるサイドドア101の軌道上に障害物があるか否かを判定すれば良い。このように、車両外側障害物センサ、または車外カメラは、車両100の周囲に障害物があるか否かに関する情報を入力しているので、車両100の状況に関する情報を入力する入力部として機能する。
(第3の実施形態)
第1、第2の実施形態では、ユーザの状況(ユーザが何処からポップアップ指令を入力したか、ユーザの体格、チャイルドシートが置かれているか等)、または車両の状況(車両の傾斜、どれだけの雨に曝されているか、車外温度、車両近傍に障害物があるか等)を車両が自ら判断し、その判断結果に応じてポップアップ量を変更している。本実施形態は、ユーザが任意にポップアップ量を変更する形態である。すなわち、本実施形態は、ユーザにより入力されたポップアップ量を決めるための動作量(所定の動作に関わる量)に応じて、ポップアップ量を決定する。
例えば、図3に示す車両ドア駆動装置300において、ポップアップ量を決めるための動作量として、ユーザがスイッチ106、107を押下している時間に応じてポップアップ量を変更しても良い。図10は、本実施形態に係る、スイッチの押下時間に応じてポップアップ量(開度)を変える場合のポップアップ開動作の処理手順を示すフローチャートである。該処理手順は、制御装置301が有するCPU302によって実行される処理である。従って、処理の制御は、CPU302が、ROM303に格納された図10に示す処理を行うプログラムを読み出し、該プログラムを実行することによって行われる。
なお、本実施形態では、車両ドア駆動装置300は、経過時間を計測できるタイマ(不図示)をさらに備えている。
ステップS101では、制御装置301は、ユーザによりポップアップ指令が入力されたか否かを判断する。ユーザによりスイッチ106またはスイッチ107が押下されると、押下されたスイッチは、ポップアップ指令情報を制御装置301に送信する。スイッチ106またはスイッチ107からポップアップ指令情報を受信すると、制御装置301は、ユーザによりポップアップ指令が入力されたと判断し、ステップS102に進む。このとき、制御装置301は、タイマの経時を開始させる。一方、ポップアップ指令情報を受信しない場合は、制御装置301は、ポップアップ指令情報を受信するまでステップS91を繰り返す。なお、本実施形態では、スイッチ106、107は、ユーザにより押下されている間はポップアップ指令情報を制御装置301に送信するように構成されている。よって、ユーザによりX秒押下された場合は、スイッチ106、107は、X秒間だけポップアップ指令情報を制御装置301に送信する。
ステップS102では、制御装置301は、スイッチ106またはスイッチ107から送信されているポップアップ指令情報に基づいて、ユーザがスイッチ106またはスイッチ107を押下した時間を取得する。制御装置301は、ステップS101にてポップアップ指令情報を受信したと判断された際に開始されたタイマをモニタし、ユーザによるスイッチ押下時間を取得する。すなわち、制御装置301は、押下されているスイッチからのポップアップ指令情報の受信が終了すると、その終了時間をタイマを参照して取得し、該終了時間をスイッチ押下時間とする。
ステップS103では、制御装置301は、ステップS102にて取得されたスイッチ押下時間に応じて、ポップアップ開度θを決定する。本実施形態では、スイッチ押下時間とポップアップ開度θとをテーブル化している。例えば、スイッチ押下時間が1秒まではポップアップ開度θを5°とし、スイッチ押下時間が1〜3秒ではポップアップ開度θを10°とし、スイッチ押下時間が3秒以上ではポップアップ開度θを15°とするようにスイッチ押下時間とポップアップ開度θとを関連付けたテーブルを用意すれば良い。このようなテーブルを用いる場合は、ステップS102にて取得されたスイッチ押下時間が2.5秒である場合、制御装置301は、上記テーブルを参照して、ポップアップ開度θを10°と決定する。このように、スイッチ押下時間に応じてポップアップ開度θが変更される。よって、スイッチを押下する、というユーザの動作に関わる動作量である、スイッチ押下時間に応じて、ポップアップ開度θが決定される。
ステップS104では、制御装置301は、ステップS65と同様にして、ステップS103にて決定されたポップアップ開度θにてポップアップ開動作を開始する。ステップS105では、制御装置301は、ステップS66と同様にして、ポップアップ開動作中のサイドドア101の開度が設定されたポップアップ開度θとなったら自動で開いているサイドドア101を停止させ、該停止位置(ポップアップドア位置)にてサイドドア101を保持させる。すなわち、本ステップにおいてポップアップ開動作を終了する。
なお、本実施形態では、ユーザによるスイッチ106、107の押下と、ポップアップ開動作とを連動させても良い。この場合は、ユーザによるスイッチ106、107の押下開始をモータ309の駆動開始のトリガとし、ユーザによるスイッチ106、107への押下終了をモータ309の駆動終了のトリガとする。すなわち、制御装置301は、スイッチ106、107がユーザにより押下され始めたことを検知してモータ309を駆動させる。これにより、サイドドア101は、ポップアップ開動作を開始する。次いで、制御装置301は、ユーザがスイッチ106、107の押下を終了することを検知すると、モータ309の駆動を停止させ、同時に、電磁ブレーキ204を駆動させて停止位置にて所定の保持力にてサイドドア101を保持させる。このような制御により、ユーザがスイッチを押した分だけ、ポップアップ開動作を行うことができる。
このように、本実施形態によれば、ユーザによるポップアップ開動作の開始トリガ(ポップアップ指令の入力)の操作に応じてポップアップ量を変更している。従って、ユーザの所望に応じてポップアップドア位置を設定することができる。よって、車両100への乗降時のサイドドア101の周辺状況に応じて、適切なポップアップ開動作を行うことができる。
なお、本実施形態では、ポップアップ量を決めるための動作量として、ユーザによるスイッチの押下時間を用いることにより、予め設定された複数のポップアップ開度θから対応する開度を選択している。しかしながら、ポップアップ量を決めるためのユーザの動作量はこれに限らない。例えば、上記動作量としてスイッチ106、107の押下回数に応じて、上記選択を行なっても良い。この場合は、スイッチの押下回数が1回であるときはポップアップ開度θを5°とし、スイッチの押下回数が2回であるときはポップアップ開度θを10°とし、スイッチの押下回数が3回以上であるときはポップアップ開度θを15°とするようにスイッチ押下回数とポップアップ開度θとを関連付けたテーブルを用意すれば良い。
あるいは、例えばスマートフォン等の、ユーザインタフェースとしてタッチパネルを有する無線送信機により、ユーザがスワイプまたはフリックによりポップアップ指令を入力する場合、上記動作量としてスワイプ量またはフリック量に応じて、上記選択を行なっても良い。この場合は、スワイプ量またはフリック量が1cmまではポップアップ開度θを5°とし、スワイプ量またはフリック量が1〜3cmであるときはポップアップ開度θを10°とし、スワイプ量またはフリック量が3cm以上であるときはポップアップ開度θを15°とするようにスワイプ量またはフリック量とポップアップ開度θとを関連付けたテーブルを用意すれば良い。
本実施形態では、ポップアップ開動作の開始トリガの操作方法(スイッチの押下時間の違い、操作回数、スワイプ量、フリック量)に応じて予め設定された複数のポップアップ量から1つのポップアップ量を選択する形態に限らない。本実施形態の本質は、ユーザの意思によりポップアップ量を可変とすることである。よって、この本質を実現できるのであれば、いずれの形態を用いても良い。例えば、上記操作方法とポップアップ量との間に一定の関係を設定し、該関係に基づいて入力された操作方法に対応するポップアップ量を用いるようにしても良い。スイッチ押下時間を例に採って説明すれば、例えば、スイッチ押下時間が長くなる程、ポップアップ開度θが大きくなるような関数を用意すれば良い。このときは、制御装置301は、上記関数を用いて、ステップS102にて取得されたスイッチ押下時間に対応するポップアップ開度θを算出し、該算出されたポップアップ開度θにてステップS104、S105を行う。
(第4の実施形態)
第1〜第3の実施形態にて説明したドア保持装置108は、電磁ブレーキ204により、サイドドア101の移動に連動しているラック202の保持を制御している。すなわち、電磁ブレーキ204への通電により、サイドドア101の保持力を制御している。よって、電磁ブレーキ204の通電制御により、保持トルクを発生させれば、ラック202とピニオン203との相対位置に関係なく、ラック202を所定の保持力で保持することができる。すなわち、該保持力によりサイドドア101を任意の開度で保持することができる。よって、例えば、ユーザが手動でサイドドア101の開閉を行なっている際に、全閉状態と全開状態との間の任意の位置で手動により止めると、サイドドア101の開閉が止まったことを検知することをトリガとしてその位置で所定の保持力を発生させて、サイドドア101を保持することができる。
一方で、上述のように、ポップアップ開動作においては、設定されたポップアップドア位置まではサイドドア101を自動で開けることが求められている。よって、ポップアップ動作中に、電磁ブレーキ204により所定の保持トルクが発生してサイドドア101を保持する保持力が発生すると、自動でサイドドア101を開けようとする作用と、サイドドア101をその場に保持しようとする作用とが混在してしまい、ポップアップ開動作が上手く機能しない恐れがある。そこで、本実施形態では、ポップアップ開動作中は、電磁ブレーキ204による保持力発生を起こさせない(サイドドア101を保持する状態を強制的にオフにする)。サイドドア101がポップアップドア位置に到達した後は、サイドドア101の状態(動こうとしているか否か)に応じて、サイドドア101を保持する状態か保持しない状態かを選択する。
なお、明細書において、電磁ブレーキ等によりサイドドアを保持する保持力がゼロの状態(電磁ブレーキ等の保持トルクがゼロの状態)を「フリー状態」と呼ぶことにする。また、電磁ブレーキ等によりサイドドアを保持する保持力(保持トルク)が発生している状態(サイドドアを保持することを意図した電磁ブレーキ等の保持トルクが発生している状態)を「保持状態」と呼ぶことにする。さらに、ポップアップドア開動作が終了した直後の、コンピュータ等の制御装置301がサイドドア101の状況に応じて、フリー状態か保持状態かを調整する状態を「電圧制御状態」と呼ぶことにする。本実施形態では、ポップアップ開動作が終了したと同時に電圧制御状態に移行する。よって、ポップアップ開動作が終了した時にサイドドア101が手動により動いていない場合は、保持状態となる。一方、ポップアップ開動作が終了した時にサイドドア101が手動により動いている場合は、フリー状態となる。このように、ポップアップ開動作終了後において、サイドドア101の動きに応じてフリー状態とするのか、保持状態とするのかが選択される状態を電圧制御状態と呼ぶのである。
図11は、本実施形態に係る車両ドア駆動装置1100における制御系の概略構成を示すブロック図である。
車両ドア駆動装置1100は、スイッチ106、107と、ドア保持装置108と、駆動回路307と、モータ309と、駆動回路308と、無線信号送受信部310と、サイドドア101の動きを検出するためのドアセンサ1101と、ハーフラッチスイッチ1102と、フルラッチスイッチ1103と、ポールスイッチ1104と、タイマ1105と、制御装置301を備えている。なお、本実施形態では、ROM303には、図13に示す制御プログラムが格納されている。
ハーフラッチスイッチ1102、フルラッチスイッチ1103、およびポールスイッチ1104はそれぞれ、ラッチ装置109に設けられている。ハーフラッチスイッチ1102は、ラッチ装置109が備えるラッチがハーフラッチ位置よりも開側にある場合はオンされ、上記ラッチがハーフラッチ位置よりも閉側にある場合はオフされる。フルラッチスイッチ1103は、上記ラッチがフルラッチ位置よりも開側にある場合はオンされ、上記ラッチがフルラッチ位置よりも閉側にある場合はオフされる。ポールスイッチ1104は、上記ラッチとラッチ装置109が備えるポールとが噛み合っていない場合にオンされ、上記ラッチと上記ポールとが噛み合っている場合にオフされる。
本実施形態において、ラッチ装置109のポールとラッチ装置109のラッチとがフルラッチ位置にて噛み合っている場合、サイドドア101は全閉状態にある。このときは、ハーフラッチスイッチ1102、フルラッチスイッチ1103、およびポールスイッチ1104はそれぞれオフである。また、上記ポールと上記ラッチとがハーフラッチ位置で噛み合っている場合、サイドドア101は半ドア状態にある。このときは、ハーフラッチスイッチ1102がオフであり、フルラッチスイッチ1103およびポールスイッチ1104がオンである。さらには、上記ポールと上記ラッチとが噛み合っていない場合、ポップアップ開動作を含め、サイドドア101は開操作されている状態である。このときは、ハーフラッチスイッチ1102、フルラッチスイッチ1103、およびポールスイッチ1104はそれぞれオンである。従って、ハーフラッチスイッチ1102、フルラッチスイッチ1103、およびポールスイッチ1104のオン/オフの信号の組み合わせにより、制御装置301は、サイドドア101が全閉状態なのか半ドア状態なのか、開状態なのかを検知することができる。
ドアセンサ1101は、サイドドア101に設けられたポジションセンサであって、サイドドア101の動きに応じてパルス信号を制御装置301に送信する。ドアセンサ1101は、ホール素子やフォトセンサ等である。ドアセンサ1101から送信されたパルス信号に基づいて、制御装置301は、サイドドア101の開度を算出することができる。
タイマ105は、時間経過を計測できる時間計測装置であって、現在の時刻に関する時刻情報を制御装置301に送信する。
本実施形態では、全閉状態(ハーフラッチスイッチ1102、フルラッチスイッチ1103、およびポールスイッチ1104が共にオフ)の時には、電磁ブレーキ204に最大保持トルク(最大保持力)を発生させている。すなわち、全閉状態では、最大保持力にてサイドドア101が保持されている。なお、全閉状態においては、電磁ブレーキ204から最大保持トルクよりも小さい保持トルクを発生させるようにしても良い。
図12は、本実施形態に係る全閉状態のサイドドア101を開ける際の車両ドア駆動装置1100の作動チャートである。また、図13は、本実施形態に係るポップアップ開動作の処理手順を示すフローチャートである。該処理手順は、制御装置301が有するCPU302によって実行される処理である。従って、処理の制御は、CPU302が、ROM303に格納された図13に示す処理を行うプログラムを読み出し、該プログラムを実行することによって行われる。図12において、領域Aは、サイドドア101が全閉状態であることを示し、領域Bは、サイドドア101が半ドア状態であることを示し、領域Cは、サイドドア101がポップアップ開動作状態であることを示す。また、領域Dは、サイドドア101が手動で開閉可能な状態(通常状態)であることを示し、領域Eは、サイドドア101が全開状態であることを示す。
なお、本実施形態では、入力場所、入力方法に限らず、ポップアップ指令が入力されると、一定のポップアップ開度でポップアップ開動作を行うものとする。
ステップS131では、制御装置301は、ポップアップ指令の入力として十分な時間(ON確定時間)だけユーザによりスイッチ106またはスイッチ107が押下されたか否かを判断する。すなわち、制御装置301は、スイッチ106またはスイッチ107から入力されたポップアップ指令情報に基づいて、ユーザがスイッチをON確定時間以上押下しているか否かを判断し、ON確定時間以上押下していると判断すると、ステップS132に進む。一方、ユーザのスイッチ106、107への押下時間が上記ON確定時間未満である場合は、ユーザがスイッチ106、107をON確定時間以上押下すると判断するまで、制御装置301は、ステップS131を繰り返す。
ステップS132では、制御装置301は、保持状態にあるドア保持装置108をフリー状態に切り替えると共に、駆動回路308を制御して、ポップアップ開動作用のモータ309の駆動を開始させる。すなわち、制御装置301は、駆動回路307を制御して最大保持トルクが発生するように通電されている電磁ブレーキ204への通電を停止させて、電磁ブレーキ204をフリー状態とする。これと共に、制御装置301は、設定されたポップアップ開度θまでポップアップ開動作をさせるべく、モータ309を駆動させる。このとき、モータ309は駆動しているが、ラッチ装置109の作用によりサイドドア101はまだ自動で動いていない。また、制御装置301は、駆動回路306を制御してラッチ109を駆動させ、フルラッチ位置に位置するラッチを回転させる。
図12に示すように、ドア保持状態108がフリー状態になり、モータ309がオンされると、ラッチの駆動に伴ってポールスイッチ1104がオンされ、ドアセンサ1101もオンされる。このポールスイッチ1104のオンを以って、全閉状態Aから半ドア状態Bに移行する。なお、上記ドアセンサ1101は、サイドドア101の動きに応じてパルス信号を制御装置301に送信する。制御装置301は、ドアセンサ1101から受信したパルス信号に従ってパルス数をRAM304に累積させる。よって、RAM304は、サイドドア101の角度を算出する際に用いられるパルス数のカウンタとして機能する。制御装置301は、カウンタに累積されたパルス数に基づいてサイドドア101の角度を算出することができる。
なお、本実施形態では、電磁ブレーキ204をフリー状態に制御することと、モータ309の駆動開始とを同時に行なっているが、これに限らない。本実施形態で重要なことは、ポップアップ開動作によりサイドドア101が実際に自動で動き始める前に電磁ブレーキ204をフリー状態することである。よって、図12において、ポップアップ開動作領域Cに移行する前に、電磁ブレーキ204をフリー状態とすれば良い。これが実現されるのであれば、電磁ブレーキ204(ドア保持装置108)のフリー状態への移行と、モータ309のオンとは違うタイミングであっても良い。
ステップS133では、制御装置301は、図12に示すように、半ドア状態になった後にラッチの回転によりフルラッチスイッチ1103がオンされると、カウンタとタイマ1105とをリセットする。逆に言うと、制御装置301は、この時点から、タイマ1105による経時を開始し、サイドドア101の角度の検出も開始する。
図12に示すように、半ドア状態Bにおいて、ラッチの回転によりハーフスイッチ1102がオンされると、ラッチ装置109のかんぬきが外れた状態において、ラッチがハーフラッチ位置よりも開側に位置することになるので、半ドア状態Bからポップアップ開動作状態Cに移行する。ラック202(サイドドア101)を移動させるためのモータ309はすでに駆動しているので、サイドドア101は自動で開き出す。このとき、電磁ブレーキ204はフリー状態であるので、サイドドア101の保持機構は解除状態にある。よって、サイドドア101を保持する保持力が発生していない状態で、ポップアップ開動作を行うことができる。サイドドア101のポップアップ開動作に応じて、ドアセンサ1101はパルス信号を制御装置301に送信する。制御装置301は、ドアセンサ1101からパルス信号を受信すると、RAM304にて構成されているカウンタのパルス数のカウント数を増加させる。また、タイマ1105は、ポップアップ開動作中の経過時間を計測している。
S134では、制御装置301は、現在のサイドドア101の開度が、ポップアップ開度θになったか否かを判断する。すなわち、制御装置301は、カウンタに累積されたドアセンサ1101から送信された総パルス数に基づいて、現在のサイドドア101の開度を算出し、設定されたポップアップ開度θと比較する。算出された現在の開度が設定されたポップアップ開度θよりも小さい場合は、制御装置301は、サイドドア101はまだポップアップドア位置に位置していないと判断し、ステップS135を繰り返す。一方、算出された現在の開度が設定されたポップアップ開度θと一致する場合は、制御装置301は、サイドドア101がポップアップドア位置に到達した判断し、ステップS136に進む。
S135では、制御装置301は、タイマ1105を参照し、経過時間が所定時間をオーバーしているか否かを判断する。経過時間が所定時間をオーバーしていない場合は、制御装置301は、ステップS134に戻る。一方、経過時間が所定時間をオーバーしている場合は、制御装置301は、ステップS136に進む。
ステップS135では、制御装置301は、駆動回路308を制御してモータ309の駆動を停止してポップアップ開動作を停止させると共に、電磁ブレーキ204をフリー状態から電圧制御状態に切り替える。具体的には、モータ309が停止した際、制御装置301は、ドアセンサ1101からのパルス信号によりサイドドア101が現在動いているか否かを判断する。ドアセンサ1101の検知結果、サイドドア101が停止していると判断する場合は、制御装置301は、駆動回路307を制御して、電磁ブレーキ204を駆動させ、所定の保持力を発生させる。これにより、電磁ブレーキ204は保持状態になり、ポップアップドア位置にてサイドドア101は上記保持力により保持される。
一方、ドアセンサ1101の検知結果、ポップアップ開動作終了後にも関わらずサイドドア101が動いていると判断する場合は、制御装置301は、電磁ブレーキ204による保持力を発生させず、フリー状態を維持する。これにより、ポップアップ開動作の終了直後においても、サイドドア101はポップアップドア位置にて保持されず、そのまま動くことができる。このように、ポップアップ開動作終了直後にフリー状態が継続される場合の例としては、ポップアップ開動作中に、モータ309の駆動によるサイドドア101の開動作の他にユーザが手動でサイドドア101を開ける場合が挙げられる。この場合では、サイドドア101はモータ309の駆動により自動で開いているが、手動によるサイドドア101の開操作に関する操作力も印加されている。よって、ポップアップ開動作が終了しても、上記手動による操作力によりサイドドア101は動いていることになる。
本実施形態では、ポップアップ開動作終了後にサイドドア101が動いているか否かを判定するために、ドアセンサ1101を用いている。サイドドア101が開いている場合は、ドアセンサ1101はパルスを制御装置301に送信している。一方で、サイドドア101が停止している場合は、ドアセンサ1101は、制御装置301に対してパルスを送信しない。すなわち、ドアセンサ1101から制御装置301に送信されるパルスに着目すると、パルスが出力されていればサイドドア101が動いていることを示し、パルスが出力されていなければサイドドア101は停止していることを示す。よって、本実施形態では、制御装置301が、ポップアップ開動作終了後の電圧制御状態において、ドアセンサ1101からパルスが受信されているか、または受信されていないかを判別することにより、サイドドア101が動いているか否かを判別する。すなわち、制御装置301は、電圧制御状態において、ドアセンサ1101からパルスが出されていればサイドドア101が動いていると判断し、フリー状態となるようにドア保持装置108を制御する。また制御装置301は、電圧制御状態において、ドアセンサ1101からパルスが出されていなければサイドドア101が止まっている判断し、保持状態となるようにドア保持装置108を制御する。このように、ドアセンサ1101は、サイドドア101の開度を検出する機能と、サイドドア101が動いているか否かを検出する機能とを有する。
このようにして、本実施形態に係るポップアップ開動作は終了する。図12に示すように、ポップアップ開動作終了後は、通常状態Dに移行するが、該通常状態Dにおいては、ドア保持装置08は、電圧制御状態にある。よって、通常状態Dにおいて、ドアセンサ1101によりサイドドア101が動いていると判断する場合は、制御装置301は、フリー状態となるようにドア保持装置108(電磁ブレーキ204)を制御する。また、通常状態Dにおいて、ドアセンサ1101によりサイドドア101が止まっている判断する場合は、制御装置301は、保持状態となるようにドア保持装置108(電磁ブレーキ204)を制御する。よって、例えば、ポップアップ開動作終了時にサイドドア101がポップアップドア位置にて停止している場合に、ユーザがサイドドア101を手動により開操作する場合、ユーザによりサイドドア101が動いたことをドアセンサ1101にて検知すると、ドア保持装置108による保持力が解除され、フリー状態に移行される。また、状態Dにおいて、手動によりサイドドア101が開操作されて動いている場合に、ユーザの意思でサイドドアが止められた場合、ドアセンサ1101にて該停止を検知すると、フリー状態から保持状態に移行してドア保持装置108は、その位置にてサイドドア101を保持する。
本実施形態によれば、ポップアップ指令がユーザから入力された際に、サイドドア101が移動可能になる前に、ドア保持装置108を保持状態から強制的にフリー状態に変更する。従って、実際にポップアップ開動作によりサイドドア101が自動で開いている際に、該サイドドア101を保持させる保持力(保持トルク)を発生させないようにすることができる。よって、スムーズにポップアップ開動作を行うことができる。
また、ポップアップ開動作の終了時において、ドア保持装置108を電圧制御状態にするので、上記ポップアップ開動作終了時のサイドドア101の動きに応じて、サイドドア101の保持力の発生の有無を適切に選択することができる。また、ポップアップ開動作終了後についても、ドア保持装置108を電圧制御状態にするので、手動によりサイドドア101が開かれている場合にユーザがサイドドア101の動きを止めた場合、その位置にてサイドドア101をドア保持装置108の保持トルクにて保持することができる。また、ポップアップドア位置と全開状態との間の所定の位置で停止し、その位置で上記保持力により保持されているサイドドア101をユーザにより動かした場合、自動的に該保持力を解消することができる。よって、ユーザは、保持力によるストレスを感じることなく、サイドドア101を手動により操作することができる。このように、基本的には手動でありながら、全閉状態からのサイドドア101の開操作を飛躍的に向上することができる。
さて、サイドドア101が全閉状態にあり、ポップアップ開動作を行っていなくても、車両100の揺れ等によりドアセンサ1101から意図しないパルスが制御装置301に対して出力されることがある。このような意図しないパルスがあると、サイドドア101が実際にはポップアップ開動作をしていなくても、カウンタは開度算出のためのカウントを累積してしまい、算出された開度が実際の開度からずれてしまう。しかしながら、本実施形態では、ステップS133にて、ポップアップ開動作において、サイドドア101が全閉状態から開き始める前に、ドアセンサ1101からのパルス数を累積しているカウンタをリセットしている。従って、サイドドア101が全閉状態にある時に、車両100の揺れなどによるドアセンサ1101の意図しない出力があっても、上記不意に生じたパルスを除去することができ、ポップアップ開動作に関わるサイドドア101の移動に関するパルス数を抽出することができる。よって、ドアセンサ1101の検知結果に基づいて算出される開度の正確性を向上させることができる。すなわち、ポップアップ開動作終了時の開度を設定したポップアップ開度θとすることができる。
また、本実施形態では、タイマ1105によりポップアップ開動作の経過時間を計測し、該経過時間が所定時間をオーバーしている場合は、強制的にステップS136に進んでポップアップ動作を終了し、電圧制御状態に移行する。よって、実際はポップアップ開動作では無い状態にも関わらず、制御装置301が、ポップアップ開動作中であると認識してしまっている場合であっても、ドア保持装置108をフリー状態から保持状態に変更することができる。例えば、車両環境が低温時において、ウェザストリップが凍結によりサイドドア101に貼り付いている場合、モータ309は駆動しているが、上記凍結によりサイドドア101は動かない場合がある。この場合、制御装置301は、ポップアップ指令の入力によりポップアップ開動作を行うアルゴリズムを実行しているため、ドアセンサ1101の検知結果によりサイドドア101の開度が設定されたポップアップ開度θになるまで、ドア保持装置108をフリー状態に制御している。このときは、サイドドア101はドア保持装置108による保持力により保持されていない状態である。この状態で、凍結が解消されて上記ウェザストリップの貼り付きが無くなる場合、サイドドア101は保持力により保持されておらずフリー状態であるので、ユーザが意図しない時にサイドドア101が開いてしまう可能性がある。
これに対して、本実施形態では、一定時間経過してもサイドドア101が設定されたポップアップ開度θに達していない場合は、ドア保持装置108を強制的に電圧制御状態に移行させる。上記凍結によりサイドドア101が動いていなければ、上記電圧制御状態に移行時にはサイドドア101は停止された状態であるので、制御装置301は、ドア保持装置108を保持状態に制御する。よって、サイドドア101はドア保持装置108による保持力により保持されることになるので、上記凍結が解消され、ウェザストリップの貼り付きも解消されたとしても、サイドドア101が自由に動くことは無く、その位置にて保持される。よって、不意にサイドドア101が動いてしまうことを防止することができる。
(第5の実施形態)
本実施形態では、車両100の傾斜に応じてドア保持装置108による保持力を可変としている。図14(a)に示すように、傾斜角αのスロープ1401において、ドア勝手方向がスロープ1401の下側を向くように傾いた車両100において、ユーザがサイドドア101を手動にて操作して方向1402に開ける場合、サイドドア101は自重により開こうとする。すなわち、図14(a)にように車両100が傾く場合、サイドドア101のドア勝手方向が重力方向側に向くので、サイドドア101の自重により勝手に開こうとする。よって、この自重によるドア挙動を抑えるため、ユーザへの操作力負担が生じる。
そこで、本実施形態では、サイドドア101のドア勝手方向側に該サイドドア101が自重により開こうとするように車両100が傾いている場合、ドア保持装置108により保持力を発生させ、サイドドア101が該保持力を引きずって動くようにしている。よって、上記傾斜により生じるサイドドア101の重量の影響を上記保持力により相殺、ないしは軽減することができ、上記傾いている車両100の内側からサイドドア101を開ける際の操作力を低減することができる。
図15は、本実施形態に係る車両ドア駆動装置1500における制御系の概略構成を示すブロック図である。
車両ドア駆動装置1500は、インサイドハンドル105に連動して作動するスイッチ1501と、ドア保持装置108と、駆動回路307と、モータ309と、駆動回路308と、無線信号送受信部310と、車両100の傾斜角αを検出する傾斜センサ801と、サイドドア101の開度を計測するドアセンサ1101と、制御装置301を備えている。なお、本実施形態では、ROM303には、図16に示す制御プログラムが格納されている。
スイッチ1501は、インサイドハンドル105に設けられ、ユーザが該インサイドハンドル105を手動により開操作することを検知し、ユーザによりインサイドハンドル105が引かれて手動で開操作されたことを示す開操作指令情報を制御装置301に送信する。例えば、スイッチ1501は、インサイドハンドル105が所定量だけ引かれたら作動するように構成されている。
図16は、本実施形態に係るサイドドアを車両の内側から開ける際の、車両の傾斜に応じて保持力を変える処理手順を示すフローチャートである。該処理手順は、制御装置301が有するCPU302によって実行される処理である。従って、処理の制御は、CPU302が、ROM303に格納された図16に示す処理を行うプログラムを読み出し、該プログラムを実行することによって行われる。
ステップS1601では、制御装置301は、ユーザによりインサイドハンドル105を介して開操作指令が入力されたかを判断する。ユーザがインサイドハンドル105を手動により操作して開操作が行なわれると、スイッチ1501は、該ユーザによるインサイドハンドル105の開操作を検知し、開操作指令情報を制御装置301に送信する。スイッチ1501から開操作指令情報を受信すると、制御装置301は、ユーザによりインサイドハンドル105による開操作があったと判断し、ステップS1602に進む。一方、開操作指令情報を受信しない場合は、制御装置301は、開操作指令情報を受信するまでステップS1601を繰り返す。
ステップS1602では、制御装置301は、傾斜センサ801から傾斜角情報を取得し、車両100のサイドドア101のドア勝手方向の傾斜角αを取得する。
ステップS1603では、制御装置301は、ステップS1602にて取得された傾斜角αに基づいて、サイドドア101のドア勝手方向が車両100の下側を向くように傾斜しているか否かを判断する。すなわち、サイドドア101がドア勝手方向に自重で開いてしまうように車両100が傾斜しているか否かが判断される。本実施形態では、図14に示すように、サイドドア101がスロープ1401の下り側に向く際の傾斜角が鋭角となるように傾斜角αを定義している。よって、ステップS1602にて取得された傾斜角αが0°<傾斜角α<90°である場合は、制御装置301は、車両100がサイドドア101のドア勝手方向が車両100の下側を向くように傾斜していると判断し、ステップS1604に進む。一方、ステップS1602にて取得された傾斜角αが90°<傾斜角α<180°である場合は、制御装置301は、車両100がサイドドア101のドア勝手方向が車両100の下側を向くように傾斜していないと判断し、ステップS1606に進む。なお、ステップS1602にて取得された傾斜角αが0°または180°である場合も、制御装置301は、車両100がサイドドア101のドア勝手方向が車両100の下側を向くように傾斜していないと判断し、ステップS1606に進む。
このように、傾斜センサ801は、車両100の傾斜角αを検出すると共に、サイドドア101のドア勝手方向が車両100の下側を向くように傾斜しているか否かを検出することができる。
ステップS1604では、制御装置301は、ステップS1602にて取得された傾斜角αに応じてドア保持装置108にて発生させる保持力(保持トルク)を決定する。サイドドア101がドア勝手方向に自重で開いてしまうように車両100が傾斜している場合において、全閉状態のサイドドア101を内側から開ける際に上記保持力にてサイドドア101を保持する。これにより、ユーザは、該保持力を引きずるようにサイドドア101を開けることになる。よって、上記傾斜の場合に、サイドドア101が勝手に走ってしまうことを軽減することができる。
特に、本実施形態では、サイドドア101のドア勝手方向が車両100の下側を向くように車両100が傾斜している場合において、全閉状態のサイドドア105をインサイドハンドル105により手動で開ける際のユーザの操作フィーリングが、車両100が傾いていない場合(平坦時)における上記操作フィーリングと同等となるように保持力を決定している。よって、上記傾斜においても、ユーザは、平坦時と同等の操作力にて全閉状態のサイドドア101を開けることができる。本実施形態では、サイドドア101の自重による車両100の外側に向かう力(重量)を打ち消すようにドア保持装置108(電磁ブレーキ204)による保持力を設定すれば良い。例えば、サイドドア101の重量を考慮して、車両100の傾き(傾斜角α)と、サイドドア101の自重により該サイドドア101を外側に開けようとする力(重量のサイドドア101の面内法線方向の成分)とを関数化すれば良い。ドア保持装置108により発生する保持力にて上記力を相殺すれば、車両100がサイドドア101のドア勝手方向が車両100の下側を向くように傾斜していても、ユーザによる操作力を平坦時と同等とすることができる。よって、制御装置は、上記関数を参照して、ステップ1602にて取得された傾斜角に対応する上記力を算出し、実現するべき保持力を該力の値に設定する。
なお、サイドドア101のドア勝手方向が車両100の下側を向くように傾斜している車両100の内側からサイドドア101を開ける際の、ユーザにかかる負荷(サイドドア101の自重による負荷)を低減することを考慮すれば、所定の保持力によりサイドドア101を保持すれば良い。この場合は、車両100が上述のように傾いている場合には、ドア保持装置108により所定の保持力(一定の力であっても良い)でサイドドア101を保持するようにしても良い。あるいは、傾斜角αが大きくなる程保持力が大きくなるように、傾斜角αとドア保持装置108の保持トルクとをテーブルにより関連付けても良い。このときは、制御装置301は、上記テーブルを参照して、検出された傾斜角αに対応する保持力を抽出すれば良い。
ステップS1605では、制御装置301は、駆動回路307を制御して、電磁ブレーキ204に、ステップS1604にて決定された保持力(保持トルク)を発生させる。すなわち、制御装置301は、ステップS1604にて決定された保持トルクが発生するように電磁ブレーキに通電させる。よって、ドア保持装置108は、適切な保持力にて全閉状態のサイドドア101を保持する。
ステップS1606では、制御装置301は、ドアセンサ1101から受信したパルス信号に基づいて、サイドドア101が全開状態となったか否かを判断する。すなわち、制御装置301は、パルスセンサ1101から送信されたパルス信号に基づいて、サイドドア101の現在の開度を算出し、サイドドア101の全開状態の開度として設定されている全開開度と比較する。該比較により、サイドドア101が全開状態となったと判断する場合は、制御装置301は、駆動回路307を制御して、電磁ブレーキ204への通電を停止し、保持トルクを解除させて処理を終了する。一方、上記比較により、サイドドア101が全開状態となっていないと判断する場合は、制御装置301は、ドア保持装置108によるサイドドア101の保持(上記引きずり感を出すための保持)がまだ必要であると判断し、ステップS1604にて決定された保持力による保持を維持したまま、ステップS1606を繰り返す。
ステップS1607では、制御装置301は、駆動回路307を制御して、保持トルクを発生しないように電磁ブレーキ204を制御する。ステップS1607を実行する際には、車両100は傾いていないか、または、サイドドア101のドア勝手方向が車両100の上側を向くように傾斜しているかのいずれかである。すなわち、サイドドア101がドア勝手方向に自重で開かないと推定される。よって、本実施形態では、この場合、上記引きずり感を出すための保持力を発生させないようにドア保持装置108を制御する。
本実施形態では、サイドドア101が自重によりドア勝手方向に開いてしまうように車両100が傾いている場合に該車両100の内側からサイドドア101をユーザにより手動で開操作する際に、ドア保持装置108にてサイドドア101を保持する保持力を発生させる。従って、このように傾いている車両100のサイドドア101が自身にかかる重量によりスロープ1401の下り方向に勝手に動くことにブレーキをかけることができる。すなわち、上記傾斜している車両100において、サイドドア101がドア勝手方向に自重により勝手に開いてしまうことを防止、ないしは軽減することができる。
また、上記保持力により、自重によりサイドドア101をドア勝手方向に開けようとする力を低減するので、意図しないスピードでサイドドア101が開いてしまうことを防止、ないしは低減することができる。さらに、ドア保持装置108により発生させた保持力によりサイドドア101を保持させているので、ユーザが操作する際に引きずり感を与えることができ、その結果、サイドドア101の開操作のフィーリングを平坦時に近づけることができる。
また、本実施形態では、車両100の傾斜角を検出し、該傾斜角に基づいて上記自重によりサイドドア101をドア勝手方向に開けようとする力を相殺するように、ドア保持装置108に発生させる保持力を決定している。よって、該保持力を、上記傾斜に起因した力を打ち消すように作用させることができ、サイドドア101の開操作のフィーリングを平坦時と同等にすることができる。
なお、本実施形態では、上記傾斜時にサイドドア101が勝手にはしることを防止、ないしは軽減するための保持力を電磁ブレーキ204により実行しているが、これに限らない。例えば、オイルを用いたダンパー機構により、上記保持力を制御しても良い。この場合は、ダンパー機構を該ダンパーの減衰力によりレバー205の回動の抵抗を制御するように設ける。そして、アクチュエータなどでの電圧制御により、ダンパー機構のオリフィス径を変えることで粘性を変えて減衰力を制御する。このように減衰力を変えることにより、レバー205を保持する力(保持力)が制御される。なお、磁性流体を用いて、ダンピングを制御しても良い。