JP6196964B2 - ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンの製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、特許文献3及び4では、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを用いて二次加工された材料が、例えば、医療用材料や塗料等に有用であることが報告されている。
本発明1は、ヒドロキシ基を有する環状分子、環状分子に串刺し状に包接される直鎖状分子、及び直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両分子末端に配置されるブロック基を有するポリロタキサンと、一般式(1):
R1とR2、又はR3とR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、3〜12員の炭素環(例えば、オキサスピロアルキレン類等)を形成していてもよく、
R1又はR2とR3又はR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、3〜12員の炭素環(例えば、オキサビシクロアルカン類等)を形成していてもよく、
Lは、単結合、あるいは非置換又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基若しくはヒドロキシ基で置換されている、炭素原子数1〜12のアルキレン基であるが、
ただし、一般式(1)の炭素原子数は、50を越えないこととする)で示される環状エーテルとを、水及び有機塩基の存在下にて反応させることを含む、ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンの製造方法に関する。
本発明2は、有機塩基が、脂肪族第三級アミン類、芳香族第三級アミン類、脂環式第三級アミン類及び複素脂環式第三級アミン類、ピリジン類、イミダゾール類並びにトリアゾール類からなる群より選択される1種以上である、本発明1の製造方法に関する。
本発明3は、有機塩基が、トリアルキルアミン及びピリジン類からなる群より選択される1種以上である、本発明2の製造方法に関する。
本発明4は、有機塩基の使用量が、製造原料であるポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して0.10モル以上1モル未満である、本発明1〜3のいずれかの製造方法に関する。
本発明5は、一般式(1)で示される環状エーテルが、オキシラン、炭素原子数3〜24の一置換オキシラン類及び炭素原子数4〜24の二置換オキシラン類からなる群より選択される1種以上である、本発明1〜4のいずれかの製造方法に関する。
本発明6は、一般式(1)で示される環状エーテルが、オキシラン、メチルオキシラン、エチルオキシラン、プロピルオキシラン、ブチルオキシラン、フェニルオキシラン及びグリシドールからなる群より選択される1種以上である、本発明5の製造方法に関する。
本発明7は、ヒドロキシ基を有する環状分子が、α−シクロデキストリンである、本発明1〜6のいずれかの製造方法に関する。
本発明8は、ポリロタキサンと一般式(1)で示される環状エーテルとの反応後に、デカンテーションにより、有機塩基の少なくとも一部を除去することを含む、本発明1〜7のいずれかの製造方法に関する。
本発明におけるポリロタキサンは、ヒドロキシ基を有する環状分子、環状分子に串刺し状に包接される直鎖状分子、及び直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両分子末端に配置されるブロック基を有する。このようなポリロタキサンは、例えば、前記特許文献1、2又は4等に記載の方法にて製造することができる。
本発明における直鎖状分子は、環状分子に包接され、非共有結合的に一体化することができる分子又は物質であって、直鎖状のものであれば、特に限定されず、例えば、以下が挙げられる。
ポリブチロラクトン、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル類(例えば、繰り返し単位中のアルキレン部分の炭素原子数が1〜14の脂肪族ポリエステル類);
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン類(例えば、オレフィン単位の炭素原子数が2〜12のポリオレフィン類);
ポリジメチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサン類(例えば、ケイ素原子に結合しているアルキル部分の炭素原子数が1〜4のポリジアルキルシロキサン類;
ポリブタジエン、ポリイソプレン等のポリジエン類(例えば、ジエン単位の炭素原子数が4〜12のポリジエン類);
ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリテトラメチレンカーボネート、ポリペンタメチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリフェニレンカーボネート等のポリカーボネート類(例えば、繰り返し単位中の炭化水素部分の炭素原子数が2〜12のポリカーボネート類);
カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類;
ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等)、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリロニトリル、並びに(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロニトリルから選ばれる複数種類のモノマーを共重合させて得られるコポリマー等の(メタ)アクリル系ポリマー類;
ポリアミド類(例えば、ナイロン6、ナイロン66等)、ポリイミド類、ポリスルホン酸類、ポリイミン類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリフェニレン類(例えば、ポリフェニレンエーテル類等)、ポリテトラヒドロフラン類(例えば、クラブレスコール等)等。
前記直鎖状分子の重量平均分子量が200以上であると、得られるポリロタキサンを用いて、例えば、架橋ポリロタキサンを構成した場合に、特性がより良好になる傾向がある。一方、前記直鎖状分子の重量平均分子量が200,000以下であると、ポリロタキサンを調製することがより容易になる傾向がある。
本発明におけるブロック基は、環状分子を直鎖状分子から脱離させないように直鎖状分子の両分子末端に設けられるものであり、このような作用を生じ得るものであれば、特に限定されない。
ここで、本発明においてブロック基を直鎖状分子の両分子末端に配置させるブロック化剤としては、上記ブロック基を含むアミン類を使用することができる。なお、上記ブロック基を含むアミン類は、例えば、水和物、無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩等)、又は有機酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等)であってもよい。
本発明における反応方法によれば、このアミン類を、両分子末端をカルボキシ基化した直鎖状分子の末端と反応させ、ブロック基を導入することができる。ここで、具体的なブロック化剤として、アダマンチルアミン、又はその塩酸塩を使用することが好ましい。
本発明における環状分子は、一般式(1)で示される環状エーテルと反応し得るヒドロキシ基(OH基)を有するものであって、かつ環状の分子構造を有し、直鎖状分子を包接して滑車効果を奏するものであれば、特に限定されない。環状の分子構造は、必ずしも閉環した分子形状である必要はなく、例えば、「C」字状のように、一部が開環している実質的に環状である構造も含む。環状分子は、ヒドロキシ基を1個以上有していればよく、その他に、例えばニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等のヒドロキシアルキル化反応に、悪影響を及ぼさない置換基を有していてもよい。
本発明におけるポリロタキサンの数平均分子量は、好ましくは10,000〜500,000、さらに好ましくは30,000〜400,000、より好ましくは50,000〜300,000、特に好ましくは90,000〜200,000、最も好ましくは100,000〜160,000である。なお、ポリロタキサンの数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography、標準物質:ポリスチレン、プルラン又はポリエチレンオキシド)によって測定される値である。
本発明におけるポリロタキサンについて、直鎖状分子を包接する環状分子の導入割合(包接率)は、特に限定されず、所望の溶媒への分散性、修飾基の種類等によって適宜選択することができる。ここで、直鎖状分子を包接する環状分子の導入割合である包接率は、直鎖状分子に環状分子が最密に包接された場合(充填率:100%)を1.0として、通常、0.05〜0.80である。例えば、直線状分子がポリエチレングリコールで、環状分子がシクロデキストリンの場合の包接率は、好ましくは0.05〜0.65であり、より好ましくは0.10〜0.60であり、さらにより好ましくは0.15〜0.55であり、特に好ましくは0.20〜0.40である。包接率がこの範囲であると、本発明の製造方法で得られるヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを使用して、前記特許文献2に記載されたような架橋ポリロタキサンを製造した場合、環状分子由来の滑車効果が十分に発現し、また、環状分子の可動性も良好である。
本発明における環状エーテルは、下記一般式(1)で示される、炭素原子数が50を越えない化合物である。
R1とR2、又はR3とR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、3〜12員の炭素環(例えば、オキサスピロアルキレン類等)を形成していてもよく、
R1又はR2とR3又はR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、3〜12員の炭素環(例えば、オキサビシクロアルカン類等)を形成していてもよく、
Lは、単結合、あるいは非置換又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基若しくはヒドロキシ基で置換されている、炭素原子数1〜12のアルキレン基である。
ただし、一般式(1)の炭素原子数は、50を越えないこととする。)
R5及びR6は、水素原子であるか、あるいは非置換又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基若しくはヒドロキシ基で置換されている、炭素原子数1〜4のアルキル基であるが、
ただし、一般式(2)又は一般式(3)の炭素原子数は50を越えないこととする。)
アルキル基としては、炭素原子数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、好ましくは、炭素原子数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等である。なお、これらのアルキル基のうち分岐鎖状アルキル基は、位置異性体や光学異性体を含む。ただし、一般式(3)中、R5及びR6のアルキル基は、炭素原子数1〜4であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基である。
オキシラン(エチレンオキシド);
一置換オキシラン類、好ましくは炭素原子数3〜26、より好ましくは炭素原子数3〜24の一置換オキシラン類であり、その具体例としては、メチルオキシラン(プロピレンオキシド)、エチルオキシラン(1,2−ブチレンオキシド)、プロピルオキシラン(1,2−ペンチレンオキシド)、ブチルオキシラン(1,2−ヘキシレンオキシド)、フェニルオキシラン、メトキシメチルオキシラン等の(炭素原子数1〜8のアルコキシメチル)オキシラン、グリシドール(2,3−エポキシメタノール)等;
二置換オキシラン類、好ましくは炭素原子数4〜26、より好ましくは炭素原子数4〜24の二置換オキシラン類であり、その具体例としては、2,3−ジメチルオキシラン、2,2−ジメチルオキシラン、2,3−ジエチルオキシラン、2,2−ジエチルオキシラン、2,3−ジプロピルオキシラン、2,2−ジプロピルオキシラン、2,3−ジブチルオキシラン、2,2−ジブチルオキシラン、2,3−ジフェニルオキシラン、2,2−ジフェニルオキシラン、2,3−ビス(炭素原子数1〜8アルコキシメチル)オキシラン、2,2−ビス(メトキシメチル)オキシラン等の2,2−ビス(炭素原子数1〜8のアルコキシメチル)オキシラン等;
三置換オキシラン類、好ましくは炭素原子数5〜26の三置換のオキシラン類であり、その具体例としては、2,2,3−トリメチルオキシラン、2,2,3−トリエチルオキシラン、2,2,3−トリプロピルオキシラン、2,2,3−トリブチルオキシラン、2,2,3−トリフェニルオキシラン、2,2,3−トリス(メトキシメチル)オキシラン等の2,2,3−トリス(炭素原子数1〜8のアルコキシメチル)オキシラン等;
四置換オキシラン類、好ましくは炭素原子数6〜26の四置換オキシラン類、例えば、2,2,3,3−テトラメチルオキシラン、2,2,3,3−テトラエチルオキシラン、2,2,3,3−テトラプロピルオキシラン、2,2,3,3−テトラブチルオキシラン、2,2,3,3−テトラフェニルオキシラン、2,2,3,3−テトラキス(炭素原子数1〜8のアルコキシメチル)オキシラン等が挙げられる。
オキセタン、3−メチルオキセタン、3−エチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシエチルオキセタン等が挙げられる。
本発明における一般式(1)で示される環状エーテルの使用量は、ヒドロキシアルキル化の程度によって増減させることができ、特に限定されない。例えば、本発明における一般式(1)で示される環状エーテルの使用量は、製造原料であるポリロタキサン1gに対して、通常、0.01g〜100gとすることができ、好ましくは0.10g〜50gであり、さらに好ましくは0.50g〜25gであり、より好ましくは1g〜15gであり、特に好ましくは1g〜10gであり、最も好ましくは1g〜5gである。
(ヒドロキシ基数[mmol/g]=(1/平均分子量)×(35000/88×0.25×18)、平均分子量:35000+(35000/88×0.25×972))。
上記の使用量範囲であれば、後述する本発明のヒドロキシアルキル化ポリロタキサンの修飾率(%)を、0.01〜100%に制御することができ、修飾率が、好ましくは1〜80%、より好ましくは10〜80%、特に好ましくは25〜55%のヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを取得することができる。
本発明においては、有機塩基の存在下で、ヒドロキシアルキル化反応を行う。有機塩基は、反応後の分離精製の点から、沸点が200℃以下である有機塩基が好ましい。
アルキル基としては、炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等である。
シクロアルキル基としては、炭素原子数3〜18シクロアルキル基が挙げられ、好ましくは、シクロペンチル基、シクロへキシル基等である。
アリール基としては、炭素原子数6〜18アリール基が挙げられ、好ましくは、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等である。
アラルキル基としては、炭素原子数7〜18アラルキル基が挙げられ、好ましくは、ベンジル基、フェネチル基等である。
トリアルキルシリル基としては、アルキル基が、それぞれ独立して、炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基であるものが好ましく、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
前記アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アラルキル基及びトリアルキルシリル基は、非置換であっても、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、及びアルコキシ基からなる群より選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよい。置換基として、好ましくはフッ素原子、ニトロ基、又はアルコキシ基である。
N−置換モルホリン類としては、炭素原子数5〜24のN−アルキル置換モルホリン類が好ましく、N−メチルモルホリンが挙げられる。
N,N’−ジ置換ピペラジン類としては、炭素原子数6〜24のN,N’−ジアルキル置換ピペラジン類が好ましく、N,N’−ジメチルピペラジンが挙げられる。
イミダゾール類(イミダゾール及びイミダゾール誘導体)としては、イミダゾール、炭素原子数4〜24のN−置換イミダゾール類が挙げられる。N−置換イミダゾール類は、N−アルキル置換イミダゾール、N−アリール置換イミダゾール、N−トリアルキルシリル置換イミダゾールであることができ、例えば、N−フェニルイミダゾール、N−トリメチルシリルイミダゾール、N−トリエチルシリルイミダゾール、N−tert−ブチルジメチルシリルイミダゾールが挙げられる。
本発明における有機塩基の使用量は、製造原料であるポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して、0.01モル〜500モルとすることができ、好ましくは0.05モル〜50モルであり、さらに好ましくは0.10モル〜10モルであり、より好ましくは0.10モル〜5モルであり、特に好ましくは0.10モル以上1モル未満である。
本発明においては、水の存在下で、ヒドロキシアルキル化反応を行う。
本発明の製造方法は、水及び有機塩基の存在下にて、ポリロタキサン中の環状分子のヒドロキシ基と一般式(1)で示される環状エーテルとを反応させる工程を含む。反応は、水及び有機塩基の存在下、ポリロタキサンと一般式(1)で示される環状エーテルとを混合し、攪拌、振とう等をすることにより行なうことができる。具体的には、水及び有機塩基にポリロタキサンを加え、次いで一般式(1)で示される環状エーテルを添加しながら攪拌を行って反応させることが好ましい。
本発明の製造方法において、反応温度は、使用する一般式(1)で示される環状エーテルの物性等によって適宜決めることができる。すなわち、本発明の製造方法における反応温度は、使用するポリロタキサンのガラス転移温度以上であって、一般式(1)で示される環状エーテルの沸点以下であれば、特に限定されないが、−20〜100℃とすることができる。この温度範囲であれば、一般式(1)で示される環状エーテルも反応系中に留まりやすく、かつポリロタキサンの環状分子のヒドロキシ基との反応性も良好であることから、高い反応収率が期待できる。反応温度は、好ましくは−10〜80℃であり、より好ましくは10〜60℃であり、特に好ましくは25〜60℃である。反応時間は、適宜、変更することができ、例えば、1〜48時間が挙げられ、好ましくは3〜30時間である。
本発明の製造方法において、反応圧力は、使用する一般式(1)で示される環状エーテルの種類、反応温度等によって適宜決めることができ、特に限定されないが、大気圧下で行われることが好ましい。例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス流通下、又は雰囲気下として、反応を行うこともでき、あるいは開放系(大気圧下)として、反応を行なうこともできる。
本発明の製造方法において、反応は、水及び有機塩基の存在下にて行なわれるため、別途反応溶媒を使用する必要はない。しかしながら、本発明で使用するポリロタキサンの水及び/又は有機塩基への溶解度が低い等場合、適宜、反応溶媒を使用することができる。反応溶媒は、ヒドロキシアルキル化反応に悪影響を与えないものであれば、特にその溶媒種及び使用量は限定されない。
本発明のポリロタキサンと一般式(1)で示される環状エーテルとの反応終了後、液体状態の反応混合物が得られる。得られた反応混合物は、例えば、再沈殿操作後、デカンテーション又はろ過等の分離・精製操作により、目的とするヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを固形物として取得することができる。すなわち、本発明の製造方法では、使用した有機塩基を、中和処理することなく、上記の方法で容易に除去することができるため、非常に便利であり、工業的製造方法に好適である。
ポリロタキサンと一般式(1)で示される環状エーテルの反応終了後、得られた反応混合物から目的物であるヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを固形物として、かつ純度及び収率よく取得するために、再沈殿操作を行なってもよい。ここで再沈殿操作は、反応混合物からヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを固形物として相分離することに加えて、ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを含む液状物を反応混合物から相分離することを含む。
なお、再沈殿溶媒として、好ましくは、水;アセトニトリル;アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル類、及びこれらの混合溶媒が使用され、より好ましくは、水;アセトニトリル;アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、及びこれらの混合溶媒が使用され、特に好ましくは、水;アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類及びこれらの混合溶媒が使用される。
本発明の製造方法に適用できるデカンテーションは、固形物と液体とに、又は2層に分離される2種の液体に分離されたヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを含有する反応混合物から、ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを含まない液体(例えば、上澄み溶液)を除く操作により、固形物として、ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを分離・精製して取得する操作である。ここで、固形物と液体とに、又は2層に分離される2種の液体に分離する操作は、特に限定されず、例えば、反応混合物、又は前記添加溶媒(例えば、再沈殿溶媒)を加えて再沈殿操作を行なった反応混合物を、そのまま放置(静置)するか、又は遠心分離機等を使用して行なう。なお、デカンテーションに使用する装置は、特に限定されず、例えば、固形物と液体との分離状態又は2種の液体の分離状態等によって適宜決めることができる。
また、デカンテーションによって液状物が得られる場合は、液状物に含まれる溶媒を除去することで、固形物としてヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを得ることができる。
本発明の製造方法に適用できるろ過は、ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを含有する反応混合物から、ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンが固形物としてろ別されるような方法であれば、特に限定されない。ろ過は、例えば、ろ紙、ろ布、ガラスフィルター又はメンブレンフィルター等のフィルターを用いて行なうことができる。またフィルターの種類は、使用した有機塩基、溶媒の種類等によって適宜決めることができる。なお、フィルターは、1種のみを使用しても、複数種類を組み合わせて使用してもよい。ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを含有する反応混合物のろ過は、常圧下、減圧下、又は加圧下のいずれの条件下で行ってもよく、また、常温下、冷却下、又は加熱下のいずれの条件下でろ過を行ってもよい。また、ろ過装置は、特に限定されず、条件や操作内容によって適宜決めることができる。
(分子量)
本発明の製造方法によって得られるヒドロキシアルキル化ポリロタキサンの数平均分子量は、30,000〜500,000であることができる。しかしながら、ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンの使用用途を考慮した場合、その数平均分子量は、好ましくは60,000〜400,000、より好ましくは80,000〜300,000、特に好ましくは100,000〜200,000、最も好ましくは130,000〜160,000となるように製造する。なお、ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンの数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography、標準物質:ポリスチレン、プルラン又はポリエチレンオキシド)によって測定される値である。
本発明の製造方法では、製造原料として使用したポリロタキサン中のシクロデキストリンの包接率に影響を与えることが抑制されているため、本発明の製造方法で得られるヒドロキシアルキル化ポリロタキサンは、製造原料のポリロタキサンと、実質的に同じ包接率を維持することができる。
本発明の製造方法により得られるヒドロキシアルキル化ポリロタキサンについて、環状分子のヒドロキシ基に対するヒドロキシアルキル化による修飾率(ヒドロキシアルキル化修飾率)は、特に限定されず、例えば、所望の溶媒への分散性等のヒドロキシアルキル化ポリロタキサンの使用目的に応じて、上述した一般式(1)で示される環状エーテルの種類とその使用量、反応溶媒の量、有機塩基の量、反応温度、及び/又は反応時間を適宜調節して制御される。なお、本明細書において、ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンのヒドロキシアルキル化修飾率とは、製造原料のポリロタキサンの環状分子のヒドロキシ基の総個数に占める、ヒドロキシアルキル化された環状分子のヒドロキシ基の個数の割合である。本発明の製造方法によれば、ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンの修飾率(%)を、0.01〜100%とすることができる。この範囲であれば、ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを用いて塗膜を形成した時に不溶物(異物付着等に由来する突出物)が混入することを抑制することができる。本発明の製造方法によれば、修飾率(%)が、好ましくは20〜100%、より好ましくは40〜100%、特に好ましくは60〜100%のヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを取得することができる。
直鎖状分子:ポリエチレングリコール(数平均分子量(GPC*1:Mn):35,000)
環状分子:α−シクロデキストリン
ブロック基:アダマンチル基(両分子末端はアミド結合)
包接率:0.25
理論ヒドロキシ基量:13.6mmol/g
ポリロタキサンの数平均分子量(GPC*1:Mn):130,000*1
*1:GPC分析におけるピークトップの数平均分子量値を使用した。
窒素雰囲気下、撹拌装置、加熱装置、滴下装置、及び温度計を備えた内容積200mlのガラス製フラスコに、ポリロタキサン20.0g(ポリロタキサン中のヒドロキシ基量:0.272モル)、トリエチルアミン5.7g(0.056モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して0.21モル使用)、及び水100.0gを加え、撹拌しながら液温を40℃にした。次いで、この混合物にプロピレンオキシド43.4g(0.75モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して2.75モル使用)を40分かけて滴下した。滴下後、さらに6時間撹拌したところ、反応混合物中のプロピレンオキシドの残存率が、10%を下回ったので反応を終了した。このとき、得られた反応混合物を確認したところ、澄明で、不溶物の生成は認めらなかった。
なお、得られたヒドロキシプロピル化ポリロタキサン中のトリエチルアミン残存率は0.47%であった。
プロピレンオキシドの使用量を40.0g(0.69モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して2.53モル使用)とした以外は、実施例1と同様の方法で反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物を確認したところ、澄明で、不溶物の生成は認めらなかった。
プロピレンオキシドの使用量を32.2g(0.55モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して2.04モル使用)とした以外は、実施例1と同様の方法で反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物を確認したところ、澄明で、不溶物の生成は認めらなかった。
トリエチルアミンの使用量を6.4g(0.063モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して0.23モル使用)とし、プロピレンオキシドの使用量を37.0g(0.64モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して2.34モル使用)とした以外は、実施例1と同様の方法で反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物を確認したところ、澄明で、不溶物の生成は認めらなかった。
トリエチルアミンの使用量を7.0g(0.068モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して0.25モル使用)とし、プロピレンオキシドの使用量を37.0g(0.63モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して、2.34モル使用)とした以外は、実施例1と同様の方法で反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物を確認したところ、澄明で、不溶物の生成は認めらなかった。
トリエチルアミンの使用量を8.4g(0.083モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して0.31モル使用)とし、プロピレンオキシドの使用量を40.0g(0.69モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して、2.53モル使用)とした以外は、実施例1と同様の方法で反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物を確認したところ、澄明で、不溶物の生成は認めらなかった。
反応温度を40℃から30℃とし、反応時間を24時間とした以外は、実施例1と同様の方法で反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物を確認したところ、澄明で、不溶物の生成は認めらなかった。
トリエチルアミンの使用量を8.4g(0.083モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して、0.31モル使用)とし、プロピレンオキシドに代えてブチレンオキシド40.0g(0.55モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して2.04モル使用)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物を確認したところ、澄明で、不溶物の生成は認めらなかった。
有機塩基をトリエチルアミンからピリジン4.4g(0.056モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して0.20モル使用)とした以外は、実施例1と同様の方法で反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物を確認したところ、澄明で、不溶物の生成は認めらなかった
窒素雰囲気下、撹拌装置、加熱装置、及び温度計を備えた内容積200mlのガラス製フラスコに、ポリロタキサン20.0g(ポリロタキサン中のヒドロキシ基量:0.272モル)及び水酸化ナトリウム6.2g(0.155モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して0.56モル使用)、水100.0gを加え、撹拌しながら40℃に昇温した。次いで、この混合物にプロピレンオキシド40.0g(0.69モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して2.53モル使用)を40分かけて滴下した。滴下後、さらに6時間撹拌したところ、反応混合物中のプロピレンオキシドの残存率が、10%を下回ったので反応を終了した。このとき、得られた反応混合物を確認したところ、白色の不溶物の生成が認められた。
反応終了後、得られた反応混合物に20%塩酸26.7gを加えて中和を行い、次いでアセトン710.0gを加えて、しばらく攪拌を行なった。その後、攪拌を止めてこの溶液を静置したところ2層に分離したので、上澄み液として上層を除去した。次に、得られた下層に、水140.0g、アセトン710.0gを加え、上澄み液を除去する操作を2度行なった。最後に、得られた下層を、エバポレーターを用いて濃縮乾燥し、白色固形物として目的物であるヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを20.7g取得した。
なお、得られたヒドロキシプロピル化ポリロタキサン中の塩化ナトリウム残存率は0.04%であった。
水酸化ナトリウム使用量を3.3g(0.083モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して0.30モル使用)とし、プロピレンオキシドの使用量を29.0g(0.50モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して、1.84モル使用)とした以外は、比較例1と同様の方法で反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物を確認したところ、白色の不溶物の生成が認められた。
水酸化ナトリウム使用量を3.3g(0.083モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して0.30モル使用)とし、プロピレンオキシドの使用量を25.8g(0.44モル、ポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して1.63モル使用)とした以外は、比較例1と同様の方法で反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物を確認したところ、白色の不溶物の生成が認められた。
本発明の製造方法は、ろ過及び/又はデカンテーションと組み合わせることにより、使用した有機塩基のみならず、その他の不純物(環状エーテル同士の反応物等)のほか、所望とするヒドロキシアルキル化修飾率の範囲外のヒドロキシアルキル化ポリロタキサンをも除去することができ、一定のヒドロキシアルキル化修飾率を有するヒドロキシアルキル化ポリロタキサンを収率よく、また純度よく取得することができ、各種用途に不具合なく、好適に使用することができる。ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンは架橋させ、架橋ポリロタキサンとすることができ、この架橋ポリロタキサンは、トポロジカルゲルとしての特有の性質である優れた柔軟性、耐久性等を示すため、例えば、パッキング材料、クッション材、自動車や種々の装置の緩衝材、装置の摩擦部分のコーティング材、接着剤、粘着剤、シール材料、ソフトコンタクトレンズ用材料、タイヤ用材料、電気泳動用ゲル、生体適合性材料、湿布材料、塗布材料又は創傷被覆材等の体外に用いる医療用材料、ドラッグデリバリーシステム、写真用感光材料、種々の塗料及び上記コーティング材料を含むコーティング材料の構成成分等、分離機能膜、水膨潤ゴム、止水テープ、吸湿ゲル化剤、建築物用耐火被覆材、放熱材料、廃泥ゲル化剤、クロマトグラフィー担体用材料、バイオリアクター担体用材料、燃料電池又は電解質等の種々の電池材料等として有用である。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
Claims (7)
- ヒドロキシ基を有する環状分子、環状分子に串刺し状に包接される直鎖状分子、及び直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両分子末端に配置されるブロック基を有するポリロタキサンと、一般式(1):
(式中、R1〜R4は、それぞれ互いに独立して、水素原子であるか、あるいは非置換又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基若しくはヒドロキシ基で置換されている、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、
R1とR2、又はR3とR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、3〜12員の炭素環を形成していてもよく、
R1又はR2とR3又はR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、3〜12員の炭素環を形成していてもよく、
Lは、単結合、あるいは非置換又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基若しくはヒドロキシ基で置換されている、炭素原子数1〜12のアルキレン基であるが、
ただし、一般式(1)の炭素原子数は、50を越えないこととする)で示される環状エーテルとを、水及び有機塩基の存在下にて反応させることを含み、
前記環状エーテルが、オキシラン、メチルオキシラン、エチルオキシラン、プロピルオキシラン、ブチルオキシラン、フェニルオキシラン及びグリシドールからなる群より選択される1種以上であり、
前記有機塩基が、脂肪族第三級アミン類、芳香族第三級アミン類、脂環式第三級アミン類及び複素脂環式第三級アミン類、ピリジン類、イミダゾール類並びにトリアゾール類からなる群より選択される1種以上である、
ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンの製造方法。 - 前記有機塩基が、トリアルキルアミン及びピリジン類からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記有機塩基の使用量が、製造原料であるポリロタキサン中のヒドロキシ基1モルに対して0.10モル以上1モル未満である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記ヒドロキシ基を有する環状分子が、α−シクロデキストリンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- ポリロタキサンと一般式(1)で示される環状エーテルとの反応後に、デカンテーションにより、有機塩基の少なくとも一部を除去することを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 水の使用量がポリロタキサン1gに対して0.1g〜150gである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 水酸化ナトリウムの不存在下に反応させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
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