JP6194057B2 - 鋼材の表面処理剤および鋼材の表面処理方法 - Google Patents

鋼材の表面処理剤および鋼材の表面処理方法 Download PDF

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本発明は、鋼材の表面処理剤および表面処理方法に関する。
熱処理は、機械の製造過程において極めて重要な一部であり、熱処理する際に、鋼材を高温に加熱する必要があるため、適切な保護策で対応しなければ、酸化、脱炭などの現象を引き起こし、ひいてはその使用寿命を減少させることになる。酸化、脱炭の発生を回避するために、鋼材の熱処理を工業的に実施する場合、よく用いられる加熱方法として、「1.真空中の加熱」、「2.塩浴中の加熱」、「3.制御雰囲気中の加熱」といった三つの方法がある。どの方法を採用しても、設備コストや環境汚染を増加させる。
浸炭処理は、工業的によく用いられる表面処理方法であり、これにより、鋼材の表面硬度を向上させ、耐摩耗性を増加させ、精密さを確保し、使用寿命を延長させることができる。浸炭処理を実施するとき、通常は、鋼材を浸炭剤に置いて、高温に加熱し、浸炭剤における炭素を鋼材の表層に浸入させることにより、鋼材の表層における炭素含有量を高めて、焼き入れた後に、表面硬化の効果が達成される。一般的な浸炭方法は、固体浸炭法、液体浸炭法、ガス浸炭法などがある。
固体浸炭法は、鋼材を浸炭容器内に置いて、固体浸炭剤を充填し、密封した後に加熱炉に入れて加熱し、固体浸炭剤を利用して、容器内の反応により生じた一酸化炭素(CO)に対して浸炭を行う。浸炭する際、一酸化炭素が鋼材の表面に分解され、発生期の炭素(nascent carbon)が得られ、得られた発生期の炭素が鋼材の表面から浸入して内部に拡散する。また、液体浸炭法は、溶融した液態の浸炭剤に鋼材を浸漬して加熱し、液態の浸炭剤の分解により生じた一酸化炭素を利用して、浸炭を行う。上記固体浸炭法および液体浸炭法は、設備費用が低いものの、大量生産に適せず、浸炭の品質を制御しにくい。さらに、ガス浸炭法は、ガス式浸炭および滴注式浸炭を含む。ガス式は、炭化水素系(例えば、CH4、C38、C410)ガスを主とする原料ガスと所定量の空気とを混合して、ガス発生器(gas generator)において高温のニッケル触媒の作用下で反応させ、一酸化炭素を含有するガスを生じ、生じた一酸化炭素を利用して浸炭を行う。滴注式は、熱分解しやすい有機液(例えば、メタノール)を炉に滴下して、高温分解により一酸化炭素を生じ、浸炭を行う。ガス浸炭法は、必要とする設備費用が高いものの、大量生産に適し、浸炭濃度を調整できるため、現在最も用いられている浸炭処理方法である。
しかしながら、上記の浸炭処理方法は、鋼材に全体的な浸炭処理を行って、すなわち、鋼材の表面の全てに浸炭を行う。このため、鋼材に選択的な表面処理(例えば、一部浸炭)を行おうとする場合、表面処理を行おうとしない部位に浸透防止処理(例えば、塗上浸炭防止剤或鍍銅、鍍ニッケル等)をあらかじめ行う必要があり、その工程が非常に煩雑である。したがって、表面を選択的に処理できる鋼材の表面処理剤および方法を開発する必要がある。
従来技術の様々な問題を踏まえて、本発明は、鋼材(例えば、鋼鉄材料または機械部品)の表面に直接スプレー塗装することができる表面処理剤であって、ケイ酸ナトリウム溶液と、金属酸化物および炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属化合物とを含む表面処理剤を提供する。
さらに、本発明は、鋼材の表面に上記の表面処理剤をスプレー塗装することを含み、前記鋼材を熱処理するときに、前記鋼材の酸化を回避できるか、あるいは硬化層を形成できる、上記の表面処理剤を使用する鋼材の表面処理方法を提供する。
本発明の表面処理剤において、前記ケイ酸ナトリウム溶液の使用量は、前記金属化合物を均一に混合しやすくすること、および鋼材の表面に便利にスプレー塗装することを原則とする。熱処理の期間において鋼材の酸化の発生を回避し、鋼材を熱処理の所定の目標に達成させるために、使用上の必要に応じて、前記の表面処理剤における金属化合物の成分、組成、重量比率を変更してもよく、あるいは、さらに炭素粉末を添加してもよい。
鋼材の一部領域に浸炭を行う必要がある場合、従来技術では、鋼材の表面処理を行おうとしない部位に浸透防止処理工程を行うことを必須とする。本発明の表面処理剤は、浸炭を行おうとする部位の鋼材の表面に直接塗装することができるため、加熱反応を経た後、選択的な浸炭という目的を達成することができ、別途の浸透防止処理を行う必要がなく、浸炭コストを大幅に削減し、浸炭の効率を向上させることができる。
図1は、表面に表面処理剤1がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、950℃で1時間加熱して、炉冷した後の表層の微細構造を示す図である。 図2は、表面に表面処理剤2がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、950℃で1時間加熱して、炉冷した後の表層の微細構造を示す図である。 図3は、表面に表面処理剤3がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、950℃で1時間加熱して、炉冷した後の表層の微細構造を示す図である。 図4は、表面に表面処理剤4がスプレー塗装されたSKD61合金工具鋼を、1030℃で2時間加熱して、強制空冷した後の表層の硬度分布を示す図である。 図5は、表面に表面処理剤5がスプレー塗装されたSKD61合金工具鋼を、1030℃で2時間加熱して、強制空冷した後の表層の硬度分布を示す図である。 図6は、表面に表面処理剤6がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、930℃で2時間加熱して、水冷した後の表層の硬度分布を示す図である。 図7は、表面に表面処理剤7がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、930℃で2時間加熱して、水冷した後の表層の硬度分布を示す図である。 図8は、表面に表面処理剤8がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、1030℃で1時間加熱して、水冷した後の表層の硬度分布を示す図である。 図9は、表面に表面処理剤9がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、930℃で2時間加熱して、水冷した後の表層の硬度分布を示す図である。 図10は、表面に表面処理剤10がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、1030℃で1時間加熱して、水冷した後の表層の硬度分布を示す図である。
以下、特定の具体的な実施例により、本発明を実施するための形態を説明する。本技術分野に習熟した者は、本明細書に記載された内容によって簡単に本発明の利点や効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施形態によって施行または応用することもでき、本明細書における各項の詳しい内容も、異なる観点と応用に基づいて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、異なる修正と変更を施すことができる。
明細書および特許請求の範囲において、特に説明しない限り、用いられる単数形式である「その」および「前記の」は複数の個体の場合を含み、用語である「や」は「および/または」の定義を含む。
本発明は、適切な比率で、ケイ酸ナトリウム溶液(または水ガラスと称す)と、金属酸化物および炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属化合物とを混合して、鋼材の表面処理剤を製造する。本発明の表面処理剤は、処理しようとする鋼材の表面に直接塗布することができ、鋼材の熱処理の過程において、ケイ酸ナトリウム溶液が、鋼材の表面にガスバリア膜を形成して、鋼材の酸化または脱炭を防止することができ、炭酸塩および金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属化合物が、さらに鋼材において保護層または硬化層を形成することができる。
本発明において、鋼材を熱処理する過程は、鋼材を加熱して1〜2時間保温した後に鋼材を冷却することを含んでおり、そのうち、鋼材の加熱温度の範囲が600〜1300℃であり、鋼材の冷却方式が炉冷、空冷および水冷を含む。
また、本発明は、炭素粉末と炭酸塩とケイ酸ナトリウム溶液とを含有する表面処理剤をさらに提供し、当該表面処理剤が、鋼材において浸炭層または硬化層を形成し、鋼材の酸化を防止することができる。前記炭素粉末は、木炭粉末、竹炭粉末、コークス粉末およびグラファイト粉末から選ばれるものである。前記炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムおよび炭酸バリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つである。炭酸バリウムを配合した炭素粉末を例として挙げると、炭酸バリウムと炭素粉末とを含有する表面処理剤で処理された鋼材において、前記鋼材の表層が浸炭層を形成する。
以下、金属化合物と炭素粉末とを含有する表面処理剤の具体的な実施例により、鋼材に表面浸炭処理を行うことについて説明する。
本発明の表面処理剤は、鋼材の表面浸炭に応用されており、その浸炭の原理は、下記の反応式のように、高温環境下で炭酸塩の分解により二酸化炭素ガス(CO2)を生じさせ、当該二酸化炭素ガスが炭素粉末における炭素(C)と反応して一酸化炭素ガス(CO)を生成させ、さらに一酸化炭素ガスを鋼材と接触させ浸炭作用を引き起こし、炭素を鋼材に浸入させる。
式(1)において、MCO3が炭酸塩を示し、Mが金属、例えば、ナトリウム(Na2)、カルシウム(Ca)およびバリウム(Ba)を示す。
上記の式(3)は、一酸化炭素ガスが高温の鋼材(γFe)に浸炭作用を起こし、浸炭された鋼材の表面が、炭素を含むオーステナイト(austenite、γFe[C])となり、オーステナイトが、焼き入れた後に形態変化して高硬度のマルテンサイト(martensite)となることを表す。式(3)のオーステナイトの炭素含有量は、一酸化炭素ガスおよび二酸化炭素ガスの濃度と関連しており、一酸化炭素ガスの濃度が高まって二酸化炭素ガスの濃度が低下すると、反応が、炭素を含むオーステナイトγFe[C]を生成する(すなわち、鋼材の炭素含有量を高める)向きに進む。逆に、一酸化炭素ガスの濃度が低下して二酸化炭素ガスの濃度が高まると、反応が、鋼材から炭素が脱離する(すなわち、鋼材の炭素含有量を低下させる)向きに進む。上記の式(1)〜(3)から、一酸化炭素ガスおよび二酸化炭素ガスの濃度が、炭素粉末、炭酸塩の比率および使用量によって決められることがわかり、言い換えれば、炭素粉末、炭酸塩などの成分比率、使用量、加熱温度などの条件を制御すれば、鋼材の浸炭量を制御することができる。金属酸化物を添加することにより、保護層を形成できることに加えて、炭素粉末および炭酸塩を希釈する機能を有し、表面の浸炭処理が完成した後に、鋼材の表面から表面処理剤を除去しやすくさせる。
実施例1〜5
表1に示されるように、酸化アルミニウム粉末、酸化チタン粉末、グラファイト粉末、炭酸ナトリウムを所定の比率で均一に混合した後、1kgの粉末と1500mLのケイ酸ナトリウム溶液とを混合する比率で表面処理剤1〜5を調製した。そのうち、表面処理剤1〜3は、それぞれS50C中炭素鋼の表面(塗布層の厚さが約1.5mm)に塗布され、950℃に加熱して1時間保温した後、炉において冷却され、表層の微細構造から、鋼材が浸炭または脱炭したか否かを判断した。表面処理剤4、5は、それぞれSKD61合金鋼の表面(塗布層の厚さが約1.5mm)に塗布され、焼き入れ処理を行って、すなわち、その焼き入れ温度1030℃に加熱して2時間保温した後、1秒あたり7℃の冷却速度で強制空冷を実施し、表層の硬度分布から、鋼材が表面硬化したか否かを判断した。
本発明の表面処理剤は、異なる成分および重量割合の組成により、表面処理剤のカーボンポテンシャル(carbon potential)を変化させ、加熱した後の鋼材を、浸炭、脱炭、あるいは浸炭しない・脱炭しない・酸化もしないといった予期目標を達成させることができることを特徴の一つとしている。
図1は、表面に表面処理剤1がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、950℃で1時間加熱して、炉冷した後の表層の微細構造を示す図であった。図において、白色の部分がフェライト(ferrite)であり、黒色の部分がパーライト(pearlite)であった。図面から、表面近傍のフェライトが、中心部より多いことがわかった。これは、表面処理剤1は、S50C中炭素鋼に対して酸化を防止できるが、脱炭効果が生じることを示した。
図2は、表面に表面処理剤2がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、950℃で1時間加熱して、炉冷した後の表層の微細構造を示す図であった。実験結果から、表層の微細構造が中心部の微細構造と類似し、表面近傍のパーライトの含有量が中心部とほぼ同じであることを発見した。これは、表面処理剤2はカーボンポテンシャルがS50C中炭素鋼元々の炭素含有量とほぼ同じく、S50C中炭素鋼に対して浸炭も脱炭もせず、かつ、その表面が酸化しない輝く状態を保つことを示した。
図3は、表面に表面処理剤3がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、950℃で1時間加熱して、炉冷した後の表層の微細構造を示す図であった。表面近傍のパーライトが明らかに中心部のパーライトより多かった。これは、表面処理剤3は浸炭能力が強く、S50C中炭素鋼に対して顕著な浸炭作用を生じることを示した。
表層浸炭された鋼材は、表層に顕著な硬化を示すために、オーステナイトの状態から急冷して、マルテンサイトに形態変化させることが必要である。炭素鋼は、硬化能が小さいため、マルテンサイトに形態変化させるために、水冷が必要である。合金鋼は、硬化能が大きいため、油冷または強制空冷を採用すれば、マルテンサイトに形態変化させることができる。
図4は、表面に表面処理剤4がスプレー塗装されたSKD61合金工具鋼を、1030℃で2時間加熱した後、1秒あたり7℃の冷却速度で強制空冷を実施して、得られた表層の硬度分布曲線を示す図であった。図面から、鋼材の表層が顕著な硬化を示し、表面近傍の硬度が約800HV程度と極めて高く、また、硬度が外から内へ徐々に減り650HVまで低下するが、それ以下には低下しないことがわかり、これにより、中心部の硬度が約650HV程度であり、全ての硬化層の厚さが約1000μm程度であることがわかった。これは、表面処理剤4は、SKD61合金工具鋼に対して顕著な浸炭作用が生じるため、焼き入れた後の表層の硬度が顕著に高まることを示した。
図5は、表面に表面処理剤5がスプレー塗装されたSKD61合金工具鋼を、1030℃で2時間加熱して、強制空冷した後の表層の硬度分布を示す図であった。表層の硬度は中心部より高く、最も高い硬度が約720HV程度であった。これは、表面処理剤5は、SKD61合金工具鋼に対して浸炭効果を示すが、その浸炭能力が表面処理剤4より低いため、その硬化効果も表面処理剤4より低いことを示した。
実施例6〜10
表2に示されるように、酸化アルミニウム粉末、酸化チタン粉末、木炭粉末、炭酸バリウムを所定の比率で均一に混合した後、1kgの粉末と1500mLのケイ酸ナトリウム溶液とを混合する比率で表面処理剤6〜10を調製した。そのうち、表面処理剤6、7、9は、それぞれS50C中炭素鋼の表面(塗布層の厚さが約1.5mm)に塗布され、930℃に加熱して2時間保温した後、水焼き入れを実施した。表面処理剤8、10は、それぞれS50C中炭素鋼の表面(塗布層の厚さが約1.5mm)に塗布され、1030℃に加熱して1時間保温した後、水焼き入れを実施した。各サンプルを焼き入れた後、その表面の硬化効果を知るために、それぞれマイクロビッカース硬さ試験機でその表層の硬度分布を測定した。
図6は、表面に表面処理剤6がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、930℃で2時間加熱して、水焼き入れを実施した後の表層の硬度分布を示す図であった。中心部の硬度が約700HV程度であり、表層と中心部とを比べると、表層の硬度が顕著に低下し、表面近傍の硬度は300HV程度まで低下した。これは、表面処理剤6は、カーボンポテンシャルが低く、S50C中炭素鋼に対して浸炭を行うことができないだけでなく、脱炭も発生させるため、焼き入れた後の表層の硬度が顕著に低いことを示した。
図7は、表面に表面処理剤7がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、930℃で2時間加熱して、水焼き入れを実施した後の表層の硬度分布を示す図であった。図面から、表層の硬度と中心部の硬度とが近く、表面の硬度が中心部の硬度より僅かに増加するだけであることがわかった。これは、表面処理剤7は、カーボンポテンシャルが高くなく、930℃ではS50C中炭素鋼に対して浸炭を軽く行うことしかできないことを示した。
図8は、表面に表面処理剤8がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、1030℃で1時間加熱して、水焼き入れを実施した後の表層の硬度分布を示す図であった。表層と中心部とがほぼ同じ硬度を維持した。これは、表面処理剤8は、1030℃におけるカーボンポテンシャルが約0.5%C程度であって、S50C中炭素鋼の元々の炭素含有量と同じであり、S50C中炭素鋼に対して浸炭も脱炭もせず、焼き入れた後の表層と中心部とが同じ硬度を保って、かつ、その表面が酸化しない状態を保つことを示した。
図9は、表面に表面処理剤9がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、930℃で2時間加熱して、水焼き入れを実施した後の表層の硬度分布を示す図であった。表層の硬度が中心部の硬度より高かった。これは、表面処理剤9は、930℃においてS50C中炭素鋼に対して浸炭作用が生じ、表層の炭素含有量を高め、焼き入れた後の表層の硬度を増加させることができることを示した。
図10は、表面に表面処理剤10がスプレー塗装されたS50C中炭素鋼を、1030℃で1時間加熱して、水焼き入れを実施した後の表層の硬度分布を示す図であった。表層の硬度と中心部の硬度とを比べると、表層の硬度が顕著に高くなり、表面近傍の硬度は850HV程度と高かった。これは、表面処理剤10は、カーボンポテンシャルが高く、S50C中炭素鋼に対して顕著な浸炭作用を生じることができ、表層の炭素含有量を著しく高めて、焼き入れた後に顕著な表面硬化効果に達することを示した。図6、7、8、9、10の実験結果を比較すると、炭素粉末の添加量を増加することにより、表面処理剤のカーボンポテンシャルを有効に高めることができることがわかった。
上記の内容から、本発明の表面処理剤は、その成分組成および重量比率を変化させることにより、表面処理剤の浸炭能力またはカーボンポテンシャルを変化させることができ、浸炭された後の鋼材の表層に異なる浸炭量を与え、焼き入れた後に異なる程度の表面硬化効果を達成させ、異なる状況の要求を満足できることがわかった。
本発明の表面処理剤は、鋼材を熱処理する際の酸化の発生を防止する機能を有することに加えて、脱炭をも防止するため、鋼材の浸炭処理にも応用することができる。よって、本発明の表面処理剤は、例えば、構造用炭素鋼、構造用合金鋼、浸炭用鋼、炭素工具鋼、合金工具鋼、金型用鋼、高速度鋼、軸受鋼、ばね鋼などの様々な鋼材に適用される。本発明の表面処利剤の適用温度は、各鋼材の熱処理の温度であり、特に、焼き入れの温度である。
上記の内容をまとめると、従来技術に比べて、本発明の表面処理剤およびその鋼材熱処理での応用は、下記の有利点を有する:
(1)鋼材の表面に直接塗布して表面処理を行うことができ、操作しやすいこと、
(2)従来の浸炭処理の設備を省略できること、
(3)鋼材の一部領域を選択して表面浸炭処理を行って、焼き入れた後の鋼材の表面の一部を硬化する効果を達成できること、
(4)表面処理剤の成分組成および重量割合を変化させることにより、異なるカーボンポテンシャル(carbon potential)を有する表面処理剤を製造して、使用者に選択させることができること、および
(5)同時に異なるカーボンポテンシャルを有する表面処理剤を選んで用いて同じ鋼材の異なる部位にスプレー塗装することにより、異なる程度の表面硬化効果を生じさせ、使用上の要求を満足させることができること。
上記の実施例は、例示的に本発明の鋼材の表面処理剤およびその表面処理剤を用いる鋼材の表面処理方法ならびに効果を述べるものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本技術分野に習熟した者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限り、上記の実施例に各種変更と修正を施すことができる。したがって、本発明の主張する権利範囲は、特許請求の範囲に記載される。

Claims (5)

  1. ケイ酸ナトリウム溶液と、炭酸カルシウムおよび炭酸バリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの炭酸塩と、炭素粉末とを含む、鋼材の表面処理剤。
  2. さらに金属酸化物を含む請求項1に記載の表面処理剤。
  3. 前記金属酸化物が、酸化アルミニウムおよび酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項に記載の表面処理剤。
  4. 前記炭素粉末が、木炭粉末、竹炭粉末、コークス粉末およびグラファイト粉末からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項に記載の表面処理剤。
  5. 請求項1に記載の表面処理剤を鋼材の表面にスプレー塗装することを含む、鋼材の表面処理方法。
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