JP6192405B2 - ロキソプロフェン含有経口剤組成物 - Google Patents

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本発明は、ロキソプロフェンの胃粘膜障害を軽減した解熱鎮痛薬組成物に関する。より詳しくは、ロキソプロフェン又はその塩とカフェインを含有する組成物に、カルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク又はポリビニルアルコールを添加させることを特徴とする、胃粘膜障害を軽減した解熱鎮痛用経口剤組成物に関する。
プロピオン酸系非ステロイド性解熱鎮痛消炎剤(以下、NSAIDsと称することがある)であるロキソプロフェンは、他のNSAIDsと同様に、プロスタグランジン生合成の抑制作用に基づく解熱・鎮痛・抗炎症作用を有する。なお、ロキソプロフェンは経口投与後に胃粘膜刺激作用の弱い未変化体のまま消化管から吸収され、体内で活性体となるプロドラッグであるため、活性体よりも胃粘膜障害は少ないという特徴を有することでも知られている(例えば、非特許文献1参照)。
また、中枢神経興奮薬であるカフェインをロキソプロフェンと併用すると、鎮痛作用及び抗炎症作用が増強することが開示されている(特許文献1参照)。
医薬品添加物のカルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク、ポリビニルアルコール、及び、比較対照として用いたヒドロキシプロピルセルロースは、いずれもコーティング剤等に添加される成分である(例えば、非特許文献2参照)。
一方、ロキソプロフェンの胃粘膜障害抑制組成物として、ロキソプロフェンに特定の糖類(乳糖、蔗糖、マルチトール、果糖、キシリトール又はラクチトール)を含有した組成物(例えば、特許文献2参照)、酸化マグネシウム等の制酸剤含有組成物(例えば、特許文献3参照)、グルコサミン又はコンドロイチン含有組成物(例えば、特許文献4参照)、抗コリン薬のヨウ化イソプロパミド含有組成物(例えば、特許文献5参照)、抗ヒスタミン薬のクレマスチンフマル酸塩含有組成物(例えば、特許文献6参照)、抗プラスミン薬のトラネキサム酸含有組成物(例えば、特許文献7参照)等が開示されている。
しかし、これまでに、ロキソプロフェンとカフェインに、カルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク又はポリビニルアルコールを含有した製剤は知られておらず、さらに、ロキソプロフェンによる胃粘膜障害が、一般的には固形製剤を被覆するコーティング剤の添加成分として用いられる、カルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク又はポリビニルアルコールの添加によって抑制されたという報告も見当たらない。
なお、後述の比較対照として用いた、ロキソプロフェン、カフェイン及びヒドロキシプロピルセルロースの組合せはよく知られている(特許文献3、8〜14参照)。
特開平11−139971号公報 特開2005−139165号公報 特開2006−052210号公報 特開2008−195705号公報 特開2010−150250号公報 特開2011−173861号公報 特開2010−083882号公報 国際公開第2004/050110号パンフレット 特開2007−314517号公報 特開2010−270019号公報 特開2011−116750号公報 特開2011−116751号公報 特開2011−132214号公報 特開2011−173861号公報
薬理と治療,Vol.16(No.2),1988,p.611-619 医薬品添加物辞典2005 薬事日報社 2005
ロキソプロフェンの薬効を増強するためにカフェインを配合する技術は公知であるが、本発明者は、ロキソプロフェンにカフェインを併用しても、ロキソプロフェンによる胃粘膜障害が改善されない、という解決すべき課題を見出した。
すなわち、本発明の課題はロキソプロフェン又はその塩とカフェインを含有し、胃粘膜障害を軽減した解熱鎮痛組成物を提供することである。
本発明者は、ロキソプロフェン又はその塩にカフェインを併用した場合には、いかなる含有比においても、ロキソプロフェンの胃粘膜障害は改善されないという課題を見出した。本発明者は、かかる課題の解決方法を鋭意探索し、コーティング剤等に使用されている医薬添加剤の中で、カルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク、又は、ポリビニルアルコールを添加した場合に限って、胃粘膜障害が軽減され得るという驚くべき結果を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)に関するものである。
(1)(a)ロキソプロフェン又はその塩、(b)カフェイン、及び、(c)カルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク及びポリビニルアルコールからなる群より選ばれる1種以上、を含有する、解熱鎮痛薬組成物。
(2)ロキソプロフェン又はその塩が、ロキソプロフェンナトリウム水和物である、(1)に記載の解熱鎮痛薬組成物。
(3)カフェインが、カフェイン水和物、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン及びクエン酸カフェインからなる群より選ばれる1種以上である、(1)又は(2)に記載の解熱鎮痛薬組成物。
(4)(c)カルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク及びポリビニルアルコールからなる群より選ばれる1種以上を含有することにより、胃粘膜障害が軽減されたことを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1に記載の解熱鎮痛薬組成物。
本発明の、ロキソプロフェン又はその塩とカフェインに、カルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク、及び、ポリビニルアルコールからなる群より選ばれる特定の医薬添加物を1種以上添加した解熱鎮痛薬組成物は、ロキソプロフェン又はその塩とカフェインを含有する製剤の胃粘膜障害を顕著に抑制するために極めて有用である。
本発明のロキソプロフェン又はその塩は、ロキソプロフェンのみならず、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩、さらには水やアルコール等との溶媒和物が含まれる。本発明におけるロキソプロフェン又はその塩としてはロキソプロフェンナトリウム・2水和物が好ましい。これらは公知の化合物であり、ロキソプロフェンナトリウム水和物は、第16改正日本薬局方に掲載されている。
本発明のカフェインとしては、カフェイン水和物、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン及びクエン酸カフェインが好ましく、無水カフェイン及びカフェイン水和物がより好ましく、無水カフェインが特に好ましい。無水カフェイン及びカフェイン水和物は第16改正日本薬局方に収載されている。
本発明のセラック(第16改正日本薬局方では、精製セラック又は白色セラック)、酸化チタン及びタルクは第16改正日本薬局方に掲載されている。また、セラック、酸化チタン、タルク、カルナウバロウ、ポリビニルアルコールのいずれも医薬品添加物事典2005(編集:日本医薬品添加剤協会)に掲載されており、これら5種の医薬品添加剤が、いずれもコーティング剤に添加して用いられる医薬添加物であることが記載されている。なお、本発明のポリビニルアルコールとしては、部分けん化物及び完全けん化物のいずれも包含するが、ポリビニルアルコールの部分けん化物が好ましい。
本発明の組成物の1回投与量における、ロキソプロフェン又はその塩の含有量は、ロキソプロフェン又はその塩の無水物換算で、20〜120mgであり、これを1日1〜3回投与が可能であり;1回投与量として40〜80mg、これを1日1〜3回投与するのが好ましい。
本発明の組成物の1回投与量における、カフェインの含有量は特に制限はないが、無水カフェイン換算で、5〜500mgであり、好ましくは10〜200mgである。
本発明の組成物の1回投与量における、カルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク、及び、ポリビニルアルコールの各添加量には特に制限はないが、好ましくは各々1〜200mgである。なお、通常の製剤では主薬の量と同程度又はそれ以下の量が添加され、より好ましくは各々2〜80mgである。
例えば、本発明の組成物が1日1回50mLを服用する液剤であれば、その液剤におけるロキソプロフェン又はその塩の含有量は、ロキソプロフェン又はその塩の無水物換算で、好ましくは20〜120mg/50mLである。また、カフェインの含有量は、無水カフェイン換算で、好ましくは5〜500mg/50mL、より好ましくは10〜200mg/50mLである。カルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク、及び、ポリビニルアルコールの添加量は、好ましくは1〜200mg/50mL、より好ましくは2〜80mg/50mLである。
本発明の組成物は、常法に従って製剤されるが、投与方法に合わせて、各薬剤を別々に製剤してもよい。
本発明の組成物等は、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤若しくはシロップ剤等の経口投与用組成物であり、これらの組成物には、更に、必要に応じてその他の有効成分乃至医薬添加剤を、本発明を損なわない範囲内で適宜配合してもよい。
以下に、試験例及び製剤例をあげて本発明を更に具体的に説明する。
(製剤例1)ハードカプセル剤
上記処方a〜cとして記載の成分及び分量をとり、日局製剤総則「カプセル剤」の項に準じてカプセルを製造する。
(製剤例2)錠剤
上記処方d〜fとして記載の成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造する。なお、所望により剤皮を塗布する。
(試験例)抗潰瘍効果試験
(1)被検物質
ロキソプロフェンナトリウム・2水和物(投与量は無水物換算)、無水カフェイン、酸化チタン、タルク及びポリビニルアルコール(部分けん化物)は和光純薬工業製のものを使用した。また、カルナウバロウは日本ワックス製、セラックは岐阜セラック製造所製のものを使用した。
被験物質はトガラント(SIGMA製)を注射用水(大塚製薬製)に溶解した0.5%トガラント溶液中に懸濁させて調製した。
(2)使用動物
Slc:Wistar/ST雄性ラット7週齢(日本エスエルシー)を、5日間の検疫及び2日間馴化した。動物は温度20−26℃、湿度40−70%、照明時間6−18時に制御されたラット飼育室内で個別飼育した。固形試料(オリエンタル酵母工業ラット用固形飼料、CRF−1)及び水道水を自由に摂取させ、1週間予備飼育した後、毛並、体重増加等の一般症状の良好な動物を選別して試験に使用した。
(3)試験方法
18時間以上絶食したラットに、ディスポーザブルラット用経口ゾンデ(フチガミ器械製)を取り付けたポリプロピレン製ディスポーザブル注射筒(テルモ製)を用いて、被験物質を経口投与した。なお、被験物質はマグネチックスターラーを用いて攪拌して使用した。
被験物質投与5時間後に、20%イソフルラン軽麻酔下での頚椎脱臼により動物を安楽死させ、速やかに胃を摘出し、内部に生理食塩液を10mL充填後、1%ホルマリンに浸して翌日まで固定した。
固定した胃を大湾に沿って切開し、デジタルノギスを用いて胃粘膜傷害の長さを測定した。個体の胃粘膜傷害の長さは、個々の傷害の長径を計測し、それらの総和を算出して傷害総長とした。胃粘膜障害抑制率(%)は、ロキソプロフェンナトリウムと無水カフェインを併用した場合を基準に、次式により求めた。
A:表3の被験薬を投与したときの障害総長
B:ロキソプロフェンナトリウム(L)と無水カフェイン(C)併用時の障害総長
(4)試験結果
表3は、ロキソプロフェンナトリウム(L)及び無水カフェイン(C)に、カルナウバロウ(CW)、セラック(Sh)、 酸化チタン(Ti)、タルク(Ta)、又は、ポリビニルアルコール(PVA)を添加した場合の胃粘膜障害抑制率を示したものである。なお、比較対照として、公知配合であるロキソプロフェンナトリウムと無水カフェインにヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を添加した場合の結果も、併せて表3に示した。
表3より、ロキソプロフェンナトリウム(L)と無水カフェイン(C)を併用した場合を基準として、これにコーティング剤として汎用されるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を添加した場合には胃粘膜傷害は増悪した。一方、ロキソプロフェンナトリウム(L)と無水カフェイン(C)に、カルナウバロウ(CW)、セラック(Sh)、酸化チタン(Ti)、タルク(Ta)又はポリビニルアルコール(PVA)を添加した場合には、顕著な胃粘膜障害の抑制作用が発現することが判った。
すなわち、コーティング剤等に使用されている医薬添加剤の中で、カルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク、又は、ポリビニルアルコールを添加した場合に限って、ロキソプロフェンの胃粘膜障害が軽減された。
本発明の医薬組成物は、胃粘膜障害作用の副作用の軽減された、解熱鎮痛薬として利用できる。

Claims (4)

  1. (a)ロキソプロフェン又はその塩、(b)カフェイン、及び、(c)カルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク及びポリビニルアルコールからなる群より選ばれる1種以上、を含有する、解熱鎮痛薬組成物。ただし、
    (イ)ロキソプロフェン、カフェイン、ブロムワレリル尿素、ビタミンB1、およびタルクを含有する錠剤、
    (ロ)ロキソプロフェン、カフェイン、酸化マグネシウム、ポリビニルアルコールを含有するシロップ剤、
    (ハ)ロキソプロフェン、カフェイン、クレマスチンフマル酸塩、ベラドンナ総アルカロイド、ブ口ムヘキシン塩酸塩、トラネキサム酸、メチルエフェドリン塩酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩、ベンフォチアミン、ポリビニルアルコールを含有する錠剤、
    (ニ)ロキソプロフェン、カフェイン、ブチルスコポラミン臭化物、酸化チタン、タルクおよびカルナウバ口ウを含有する錠剤、
    を除く。
  2. ロキソプロフェン又はその塩が、ロキソプロフェンナトリウム水和物である、請求項1に記載の解熱鎮痛薬組成物。
  3. カフェインが、カフェイン水和物、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン及びクエン酸カフェインからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の解熱鎮痛薬組成物。
  4. (c)カルナウバロウ、セラック、酸化チタン、タルク及びポリビニルアルコールからなる群より選ばれる1種以上を、胃粘膜障害軽減剤として含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の解熱鎮痛薬組成物。
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