JP6189696B2 - ワイヤ送給装置 - Google Patents

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Description

本発明は、溶接ワイヤを送給するワイヤ送給装置に関する。
従来、溶接中に送給ローラを回転させ、溶接ワイヤと送給ローラとの間に生じる摩擦力によって溶接ワイヤを送給することが行われていた。そのような溶接ワイヤの送給において、溶接ワイヤから送給ローラに伝達される力が過大となり、溶接ワイヤと送給ローラとの間で滑りが発生し、溶接ワイヤを適切に送給できなくなることがあった。例えば、特許文献1には、溶接ワイヤの送給に応じて回転するローラを用いて溶接ワイヤの送給速度を検出し、その送給速度を用いて滑りを検知した場合に溶接ワイヤの送給を停止する制御が記載されている。
また、特許文献2に記載されているように、スパッタの少ない溶接のため、溶接ワイヤを母材に対して前進(インチング)、後退(リトラクト)させることを高速に繰り返す場合には、そのような滑りが発生しやすくなる。
なお、関連する技術として、例えば、特許文献3には、溶接ワイヤの表面粗さや表面構造を検出することによって溶接ワイヤの速度を計測する方法が記載されている。また、特許文献4には、溶接ワイヤの張力を算出する方法が記載されている。
特開昭57−184581号公報 特表2008−542027号公報 特開2010−82699号公報 特表2004−512180号公報
従来のワイヤ送給装置では、特許文献1に記載されているように、溶接ワイヤの滑りが検知されると、溶接ワイヤの送給を停止していた。しかしながら、そのようにすると、溶接が再開されるまでの時間が長くなり、溶接の作業性が低下することになる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、溶接ワイヤの滑りが検知された場合に、溶接ワイヤの送給状態に早期に復帰させることができるワイヤ送給装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明によるワイヤ送給装置は、溶接ワイヤを送給するためのモータと、モータの実速度を取得する速度取得部と、溶接ワイヤの送給に関する速度指令値を生成する速度指令生成器と、実速度と速度指令値とに応じて、モータの電流指令値を生成する電流指令生成器と、溶接ワイヤの滑りを検知する検知部と、検知部が溶接ワイヤの滑りを検知した場合に、モータの実速度が下がるように電流指令値を制御する制御器と、を備え、モータは、電流指令値に応じて駆動される、ものである。
このような構成により、モータの実速度と溶接ワイヤの速度とが早期に整合するようにでき、モータによる溶接ワイヤの送給を早期に再開することができるようになる。
また、本発明によるワイヤ送給装置では、制御器は、検知部が溶接ワイヤの滑りを検知した場合に、モータの実速度が振動成分を有するように電流指令値を制御してもよい。
このような構成により、モータの実速度と溶接ワイヤの速度とが整合する機会を増やすことができ、より早期に送給状態に復帰できるようになる。
また、本発明によるワイヤ送給装置では、検知部は、溶接ワイヤが滑っている状態である滑り状態から、モータによって送給される状態である送給状態への復帰をも検知し、制御器は、検知部によって溶接ワイヤの滑りが検知されてから復帰が検知されるまで制御を行ってもよい。
このような構成により、溶接ワイヤが送給状態に復帰した後には、溶接ワイヤの送給が適切に行われるようにすることができる。
また、本発明によるワイヤ送給装置では、実速度とモータに関する電流値とを用いてモータの外乱トルクを算出する外乱オブザーバをさらに備え、検知部は、外乱トルクの絶対値が、溶接ワイヤが滑り状態であるときよりもあらかじめ決められた以上大きくなった場合に、溶接ワイヤの送給状態への復帰を検知してもよい。
このような構成により、送給状態に復帰すると、滑り状態のときよりも外乱トルクの絶対値が大きくなることを利用して、溶接ワイヤの送給状態への復帰を検知することができる。
また、本発明によるワイヤ送給装置では、実速度とモータに関する電流値とを用いてモータの外乱トルクを算出する外乱オブザーバをさらに備え、検知部は、外乱トルクの変化が、実速度の時間微分の変化に対して小さくなくなった場合に、溶接ワイヤの送給状態への復帰を検知してもよい。
このような構成により、送給状態に復帰すると、滑り状態のときよりも外乱トルクの変化が、実速度の時間微分の変化に対して小さくなくなることを利用して、溶接ワイヤの送給状態への復帰を検知することができる。
本発明によるワイヤ送給装置によれば、溶接ワイヤの送給状態への復帰を早期に実現することができるようになる。
本発明の実施の形態によるワイヤ送給装置の構成を示すブロック図 同実施の形態における溶接ワイヤの送給機構を示す図 同実施の形態における溶接ワイヤの滑り検知について説明するための図 同実施の形態における実速度に応じたトルクと外乱トルクの一例を示す図 同実施の形態における実速度に応じたトルクと外乱トルクの一例、及びワイヤ速度とローラ表面速度の一例を示す図 同実施の形態によるワイヤ送給装置の動作の一例を示すフローチャート
以下、本発明の実施の形態によるワイヤ送給装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態によるワイヤ送給装置は、外乱トルクと、実速度に応じたトルクとの不整合に応じて溶接ワイヤの滑りを検知するものである。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
図1は、本実施の形態によるワイヤ送給装置1の構成を示すブロック図である。図2Aは、ワイヤ送給装置1における溶接ワイヤ5の送給機構について説明するための図であり、図2Bは、溶接ワイヤの滑りの検知について説明するための図である。本実施の形態によるワイヤ送給装置1は、モータ11と、電流値取得部12と、速度取得部13と、速度指令生成器14と、電流指令生成器15と、外乱オブザーバ16と、検知部17と、制御器18とを備える。このワイヤ送給装置1による溶接ワイヤ5の送給は、例えば、溶接ロボットにおける溶接ワイヤ5の送給であってもよく、その他の装置における溶接ワイヤ5の送給であってもよい。
図2Aで示されるように、ワイヤリール2に巻かれた溶接ワイヤ5は、送給ローラ6aによって溶接トーチ3に対して送給される。送給ローラ6aは、プッシュ側(供給側)の送給ローラであってもよく、プル側(溶接側)の送給ローラであってもよい。溶接ワイヤ5は、送給ローラ6aよりも前段側及び/または後段側において、コンジットケーブル(図示せず)を通過していてもよい。ここで、前段側とは、溶接ワイヤ5の送給における上流側の意味であり、ワイヤリール2に近い側のことである。また、後段側とは、溶接ワイヤ5の送給における下流側の意味であり、溶接トーチ3に近い側のことである。そのようなコンジットケーブルを通過することによって、溶接ワイヤ5に摩擦力が発生し、その摩擦力が溶接ワイヤ5の張力となる。送給ローラ6aは、溶接ワイヤ5を送給ローラ6a側に付勢する加圧ローラ6bと対向している。そして、送給ローラ6aは、加圧ローラ6bと協働することによって、溶接ワイヤ5を送給する。すなわち、モータ11によって、インチング、リトラクト等に応じた溶接ワイヤ5の送給が行われる。なお、ワイヤ送給装置1は、溶接ワイヤ5の送給に必要な送給ローラ6a等の構成を備えていると考えてもよい。
モータ11は、溶接ワイヤ5を送給するためのモータである。そのモータ11は、送給ローラ6aを駆動する。モータ11は、溶接ワイヤ5を前進させる方向、及び後退させる方向に送給ローラ6aを駆動してもよい。ここで、溶接ワイヤ5が前進する方向とは、溶接ワイヤ5が溶接トーチ3の方に進む方向であり、溶接ワイヤ5が後退する方向とは、溶接ワイヤ5がワイヤリール2の方に進む方向である。また、モータ11から送給ローラ6aに対して回転力が伝達される方法は問わない。例えば、両者の間に減速機等が存在してもよい。
電流値取得部12は、モータ11の実電流値を取得する。電流値取得部12は、例えば、モータ11に流れる電流を検出する電流検出器であってもよい。また、電流値取得部12は、例えば、モータ11の実電流値を取得する図示しない電流検出器からモータ11の実電流値を受け取ってもよい。取得された実電流値は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。また、電流値取得部12は、取得した実電流値を外乱オブザーバ16に渡す。
速度取得部13は、モータ11の実速度を取得する。その実速度は通常、角速度である。速度取得部13がモータ11の実速度を取得する方法は問わない。速度取得部13は、例えば、モータ11の角度を測定するエンコーダを有しており、そのエンコーダの角度を時間微分することによってモータ11の実速度を測定してもよい。また、速度取得部13は、例えば、モータ11のエンコーダからモータ11の角度を取得し、その角度を時間微分することによってモータ11の実速度を測定してもよい。また、速度取得部13は、例えば、モータ11の角速度を取得する図示しない速度測定部からモータ11の実速度を受け取ってもよい。取得された実速度は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。また、速度取得部13は、取得した実速度を電流指令生成器15と外乱オブザーバ16と検知部17とに渡す。
速度指令生成器14は、溶接ワイヤ5の送給に関する速度指令値を生成する。その速度指令値は、溶接ワイヤ5の速度指令値であってもよく、モータ11の速度指令値であってもよい。なお、送給ローラ6aの半径や、モータ11と送給ローラ6aとの間に存在する減速機の減速比等を考慮して、溶接ワイヤ5の速度指令値を換算することによって、モータ11の速度指令値を得ることができる。通常、溶接ワイヤ5の速度指令値を定数倍した結果がモータ11の速度指令値となる。本実施の形態では、速度指令生成器14が溶接ワイヤ5の速度指令値を生成する場合について主に説明する。速度指令生成器14は、例えば、溶接ロボットの教示情報に含まれている溶接条件に含まれる溶接ワイヤ5の送給速度に応じた速度指令値を生成してもよい。また、速度指令生成器14は、例えば、溶接ワイヤ5の実際の送給のフィードバック制御に応じて速度指令値を生成してもよい。また、例えば、速度指令生成器14は、溶接ワイヤ5の周期的な前進及び後退の繰り返しに応じた速度指令値を生成してもよい。その速度指令値は、溶接トーチ3から母材に向かう溶接ワイヤ5の速度が正の値となる期間と、その速度が負の値となる期間とを有する単位期間が繰り返される速度指令値であってもよい。その周期は通常、一定である。速度指令値は、電流指令生成器15に渡される。
電流指令生成器15は、速度取得部13によって取得された実速度と、速度指令生成器14によって生成された速度指令値とに応じて、モータ11の電流指令値を生成する。なお、その速度指令値が溶接ワイヤ5の速度指令値である場合には、電流指令生成器15は、その速度指令値をモータ11の速度指令値に換算してから用いてもよい。また、この電流指令値は、実速度が速度指令値に近づくように生成される。この速度のフィードバック制御は、モータ制御における通常の速度ループであり、その詳細な説明を省略する。また、電流指令値に応じて、モータ11が駆動されることになる。すなわち、電流指令値の示す電流がモータ11に流れるように制御されることになる。そのため、電流指令生成器15の出力である第1の電流指令値は、図示しないトルク指令生成器に入力され、そのトルク指令生成器は、モータ11の実電流値が電流指令値に近づくように、モータ11のトルクを制御してもよい。その実電流値は、電流値取得部12が取得したものであってもよい。このような電流指令値に応じたモータのトルク制御(電流のフィードバックループ)についてはすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。また、電流指令生成器15は、外乱オブザーバ16によって算出される外乱トルクに応じた電流値を用いることによって、外乱トルクを考慮した電流指令値の生成を行ってもよい。そのような電流指令値の生成については後述する。
外乱オブザーバ16は、実速度とモータ11に関する電流値とを用いてモータ11の外乱トルクを算出する。なお、モータ11に関する電流値は、例えば、電流値取得部12によって取得された実電流値であってもよく、電流指令生成器15が生成した電流指令値であってもよい。前者の方が精度の高い外乱トルクを算出することができるため好適である。なお、本実施の形態では、外乱オブザーバ16が、電流値取得部12によって取得された実電流値を用いて外乱トルクを算出する場合について主に説明する。また、外乱オブザーバ16は、モータ11の外乱トルクに応じた値を算出するのであれば、外乱トルクそのものを算出しなくてもよい。例えば、外乱オブザーバ16は、外乱トルクに応じた溶接ワイヤ5の張力を算出してもよい。この外乱トルクの算出方法はすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。例えば、特開2001−293574号公報には、溶接ワイヤ5の送給中に溶接ワイヤ5にかかる摩擦力に応じた張力を算出する方法について記載されている。なお、外乱トルクを算出する一例については後述する。外乱トルクは、検知部17に渡される。また、外乱トルクに応じた電流値に外乱ゲインを掛けた値が電流指令生成器15に渡されてもよい。そして、電流指令生成器15において、外乱トルクに応じた電流値に外乱ゲインを掛けた値が電流指令値に加算されることによって、電流指令値における外乱トルクに応じた補償を行ってもよい。なお、外乱トルクに応じた電流値とは、外乱トルクをモータ11のトルク定数で割った値であってもよい。また、外乱ゲインは、1未満の正の実数であってもよい。
検知部17は、外乱オブザーバ16によって算出された外乱トルクと、速度取得部13によって取得された実速度に応じたトルク(以下、このトルクを「回転トルク」と呼ぶこともある)とが整合しなくなった場合に溶接ワイヤ5の滑りを検知する。実速度に応じたトルクとは、実速度を用いて取得されるトルクである。トルクは、イナーシャ(慣性モーメント)と角加速度との積であるため、実速度の時間微分にイナーシャを掛けることによって、モータ11のトルクを算出することができる。なお、後述するように、この滑りの検知では、外乱トルクと、実速度に応じたトルクとの傾向の違いを見るため、実速度に応じたトルクに代えて、実速度の時間微分を用いてもよい。両者は定数倍の差であるため、実質的に同じであると考えることができるからである。また、実速度の時間微分として、実速度の差分(ある時点の実速度と、その直前の時点の実速度との差分)を用いてもよい。両者は定数倍の差であるため、実質的に同じであると考えることができるからである。ここで、図2Bを参照して、滑りを検知する方法について簡単に説明する。図2Bの左側は、溶接ワイヤ5の滑りが発生していない状態である。なお、溶接ワイヤ5は、左から右に進行しているものとする。また、溶接ワイヤ5の張力の反作用としての外乱トルクが送給ローラ6aに作用している。なお、張力は、回転トルクにも依存するため(例えば、回転トルクが大きくなると、張力も大きくなる)、外乱トルクも回転トルクに依存することになる。溶接ワイヤ5の滑りが発生すると、図2Bの右側で示されるようになり、送給ローラ6aの外乱トルクは、溶接ワイヤ5と送給ローラ6aとの動摩擦力に応じたものとなり、滑りの発生していない場合よりも小さくなる。また、動摩擦力は張力ほど回転トルクに依存しないため、滑りが発生すると、外乱トルクが回転トルクに依存しなくなる。したがって、滑りが発生すると、外乱トルクと、実速度に応じたトルクとが整合しなくなるため、検知部17は、そのことを利用して溶接ワイヤ5の滑りを検知することができる。また、検知部17は、溶接ワイヤ5が滑っている状態である滑り状態から送給状態への復帰をも検知してもよい。送給状態とは、モータ11によって溶接ワイヤ5が送給される状態であり、溶接ワイヤ5が滑っていない状態のことである。なお、この滑りの検知方法や、復帰の検知方法の詳細については後述する。
制御器18は、検知部17が溶接ワイヤの滑りを検知した場合に、モータ11の実速度が下がるように電流指令値を制御する。モータ11の実速度が下がるように電流指令値を制御するとは、結果としてモータ11の実速度が下がるようにするため、モータ11のトルクが下がるように電流指令値を制御することであってもよい。なお、モータ11の実速度が下がるとは、通常はモータ11が停止することではなく、モータ11の実速度が遅くなることである。また、電流指令値を制御するとは、電流指令生成器15による電流指令値の生成を制御することであってもよい。その制御は、例えば、速度ループの比例ゲインを送給状態のときよりも小さくすることであってもよく、外乱トルクに応じた電流値をフィードバックしている場合に、その電流値に掛ける外乱ゲインを送給状態のときよりも小さくすることであってもよく、電流指令生成器15が出力する電流指令値に制限値(上限値)が設けられている場合には、その制限値を送給状態のときよりも小さくすることであってもよく、それらの任意の2以上の組み合わせであってもよく、モータ11のトルクを下げるためのその他の制御であってもよい。ここで、モータ11の実速度を下げる制御を行う理由について簡単に説明する。滑り状態から送給状態に復帰するためには、溶接ワイヤ5と送給ローラ6aとが同じ速度となり、動摩擦領域から静止摩擦領域に移行する必要がある。また、滑り状態は、送給ローラ6aが空回りをしている状態であり、通常、送給ローラ6aの表面速度の方が溶接ワイヤ5の速度よりも大きい。したがって、モータ11の実速度を下げることによって、溶接ワイヤ5と送給ローラ6aの表面速度とを同じにすることができ、滑り状態から送給状態に復帰させることができる。なお、早期の復帰を実現するため、制御器18は、検知部17が溶接ワイヤ5の滑りを検知した場合に、モータ11の実速度が振動成分を有するように電流指令値を制御してもよい。その振動成分は、例えば、正弦波の成分であってもよい。そのような振動成分を実速度に加えることによって、溶接ワイヤ5と送給ローラ6aの表面速度とが同じになる機会を増やすことができ、早期に送給状態に復帰させることができると考えられる。なお、実速度にそのような振動成分を加えるため、制御器18は、実速度が下がるように制御された電流指令値にあらかじめ決められた振動成分を付加してもよい。その振動成分は、例えば、あらかじめ決められた振幅や周期を有する正弦波であってもよい。また、その振動成分の周期は、溶接ワイヤ5のインチング、リトラクトの周期よりも短くてもよく、長くてもよく、同じでもよい。
また、制御器18は、検知部17によって送給状態への復帰が検知されるまで、上述の制御を行ってもよい。すなわち、制御器18は、検知部17によって溶接ワイヤの滑りが検知されてから復帰が検知されるまで、上述の制御を行ってもよい。送給状態に復帰した後には、通常の電流指令値が生成され、溶接ワイヤ5の適切な送給が実現されるようにするためである。なお、制御器18が、滑りが検知されてから復帰が検知されるまで制御を行うとは、その期間のすべてにわたって、制御を継続して行うことであってもよく、または、その期間の始期及び終期に電流指令生成器15等に対して制御を行うことであってもよい。後者の場合には、例えば、制御器18は、滑りが検知された時点に電流指令生成器15のゲイン等の調整を行い、復帰が検知された時点にそのゲイン等の調整を元に戻してもよい。また、制御器18は、検知部17によって送給状態への復帰が検知されるまでの間において、モータ11のトルクの下がる程度が徐々に大きくなるように制御してもよい。例えば、制御の開始から所定の期間が経過しても復帰が検知されない場合には、制御器18は、トルクの下がる程度を一段階上げてもよい。また、制御器18は、そのような処理を復帰が検知されるまで繰り返してもよい。
[外乱トルクの算出方法]
外乱オブザーバ16による外乱トルクの算出方法について説明する。まず、現在の外乱トルクをτk+1、前回の外乱トルクをτ、現在の角速度をωk+1、前回の角速度をω、更新間隔(時刻k+1と時刻kとの時間間隔)をdt、速度取得部13によって取得された時刻kの実速度をω、オブザーバゲインをoτ、oω、全トルク(外乱トルクと回転トルクとの和)をτ(=iK)、モータ11のモータ軸換算イナーシャをJとすると、オブザーバの式である次式のように現在の外乱トルクと現在の角速度とを算出することができる。ただし、iは時刻kの実電流値であり、Kはモータ11のトルク定数である。また、kは任意の整数である。
Figure 0006189696
したがって、外乱オブザーバ16は、速度取得部13が取得した実速度ωと、電流値取得部12が取得した実電流値iに応じたトルクτ(=iK)とを用いることにより、現在の外乱トルクτk+1及び現在の角速度ωk+1を順次、更新することによって、外乱トルクを算出することができる。
なお、この外乱オブザーバ16による外乱トルクの算出方法は一例であり、例えば、他の方法によって外乱トルクを算出してもよいことは言うまでもない。例えば、外乱オブザーバ16は、モータ11に関する電流値iに応じたトルクiKから、モータ11の実速度に応じた回転トルクを減算することによって、外乱トルクを算出してもよい。なお、その回転トルクは、例えば、モータ11の実速度の時間微分と、モータ軸換算イナーシャJとの積である。
[滑り検知方法、復帰検知方法]
検知部17による滑り検知方法と復帰検知方法について説明する。ここでは、(1)外乱トルクと実速度に応じたトルクとの変化の方向に応じた検知と、(2)外乱トルクと実速度に応じたトルクとの変化の大きさに応じた検知とについて説明する。
(1)外乱トルクと実速度に応じたトルクとの変化の方向に応じた検知
(1−1)滑り検知
まず、滑り検知方法、すなわち時刻kの時点では滑り状態g=FALSEである場合に、時刻k+1の滑り状態gk+1を判断する方法について説明する。なお、滑り状態g=FALSEである場合には、時刻iにおいて溶接ワイヤ5が送給状態であり、滑り状態g=TRUEである場合には、時刻iにおいて溶接ワイヤ5が滑り状態であるとする。検知部17は、g=FALSEからgk+1=TRUEとなった場合に溶接ワイヤ5の滑りを検知する。
=FALSEである状況において、検知部17は、次の二式が満たされる場合には、gk+1=TRUEとし、そうでない場合には、gk+1=FALSEとする。なお、速度取得部13によって取得された時刻kの実速度をω(k)、外乱オブザーバ16によって算出された時刻kの外乱トルクをτ(k)としている。すなわち、上述のτ=τ(k)としている。したがって、次の二式が満たされる場合とは、実速度の時間微分が増加し、かつ、外乱トルクが減少した場合である。なお、pは、比較対象となる2個の実速度の時間微分や、2個の外乱トルクの時間間隔を決めるものであり、1以上の整数である。pが小さいとノイズの影響を受けやすくなり、pが大きいと滑りの検出が遅くなる。したがって、pは、適切な値に設定されることが好適である。
Figure 0006189696
ここで、αは、1より小さい正の実数であり、また次式のようにしている。そのαは、適切な滑り検知を行うことができる値に設定されることが好適である。
Figure 0006189696
例えば、図3(a)で示されるように、時刻t1付近で滑りが発生した場合には、時刻t1から時刻t2において、破線で示される実速度の時間微分(∝回転トルク)は増加するが、実線で示される外乱トルクは減少する。したがって、例えば、時刻k=t2において上述の式を用いることによって、滑りを検知することができる。なお、滑りの発生したとき以外は、実速度の時間微分と外乱トルクとは、同じような傾向を示す(例えば、図3(a)の時刻t1以前を参照)。したがって、上述の二式は満たされないことになる。
(1−2)復帰検知
次に、復帰検知方法について説明する。すなわち、滑り状態g=TRUEである場合に、滑り状態gk+1を判断する方法について説明する。検知部17は、g=TRUEからgk+1=FALSEとなった場合に溶接ワイヤ5の送給状態への復帰を検知する。
=TRUEである状況において、検知部17は、次式が満たされる場合には、gk+1=FALSEとし、そうでない場合には、gk+1=TRUEとする。なお、次式が満たされる場合とは、外乱トルクの絶対値が、溶接ワイヤ5が滑り状態であるときよりもあらかじめ決められた以上大きくなった場合である。なお、βは、1より小さい正の実数である。そのβは、適切な復帰検知を行うことができる値に設定されることが好適である。
Figure 0006189696
なお、上記の式は、滑り状態の外乱トルクの絶対値をτとすると、外乱トルクの絶対値がτ/βより大きくなった場合に復帰が検知されることを意味している。この判断方法は一例であり、例えば、外乱トルクの絶対値がτ+γより大きくなった場合に復帰が検知されてもよい。ここで、γは、正の実数である。そのγは、適切な復帰検知を行うことができる値に設定されることが好適である。
例えば、図4(a)で示されるように、時刻t6の直前に送給状態に復帰した場合には、その時刻t6の外乱トルクの絶対値は、滑り状態の外乱トルクの絶対値τに1より大きい実数(1/β)を掛けたものよりも大きくなる。したがって、上述のような式を用いることによって、復帰を検知することができる。一方、滑りから復帰していないときは、外乱トルクにほとんど変化はないため、上述の式は満たされないことになる。
(2)外乱トルクと実速度に応じたトルクとの変化の大きさに応じた検知
(2−1)滑り検知
まず、滑り検知方法について説明する。g=FALSEである状況において、検知部17は、次式が満たされる場合には、gk+1=TRUEとし、そうでない場合には、gk+1=FALSEとする。なお、次式が満たされる場合とは、外乱トルクの変化が、実速度の時間微分の変化に対して小さい場合である。外乱トルクの変化が、実速度の時間微分の変化に対して小さい場合とは、それ以外の場合と比較して、外乱トルクの変化が、実速度の時間微分の変化に対して小さくなった場合であると考えてもよい。そのため、検知部17は、実速度の時間微分の変化に対する外乱トルクの変化の割合が、それ以外の場合よりも小さくなった場合(すなわち、次式の左辺が閾値ηよりも大きくなった場合)に、滑り状態になったと判断してもよい。ここで、ηは、r以上の正の実数である。そのηは、適切な滑り検知を行うことができる値に設定されることが好適である。なお、rは、実速度の時間微分の変化に対する外乱トルクの変化の割合を計算するために用いられるサンプル数を決めるものであり、1以上の整数である。rが小さいとノイズの影響を受けやすくなり、rが大きいと滑りの検出が遅くなる。したがって、rは、適切な値に設定されることが好適である。
Figure 0006189696
例えば、図3(b)で示されるように、滑り状態である場合には、実線で示される外乱トルクは、楕円で囲まれた領域(時刻t3〜t4の領域)のようにほとんど変化しない。一方、破線で示される実速度の時間微分は速度指令値に応じて変化するため、楕円で囲まれた領域(時刻t3〜t4の領域)のように変化する。その結果、上記式の左辺は大きな値となる。なお、滑りの発生したとき以外は、実速度の時間微分と外乱トルクとは、同じような傾向を示す。したがって、上式は満たされないことになる。
(2−2)復帰検知
次に、復帰検知方法について説明する。g=TRUEである状況において、検知部17は、上式が満たされなくなった場合には、gk+1=FALSEとし、上式が満たされている場合には、gk+1=TRUEとする。なお、上式が満たされなくなった場合とは、外乱トルクの変化が、実速度の時間微分の変化に対して小さくなくなった場合である。なお、外乱トルクの変化が、実速度の時間微分の変化に対して小さくなくなった場合とは、滑り状態の場合と比較して、外乱トルクの変化が、実速度の時間微分の変化に対して小さくなくなった場合であると考えてもよい。したがって、検知部17は、実速度の時間微分の変化に対する外乱トルクの変化の割合が、滑り状態の場合よりも大きくなった場合(すなわち、上式の左辺が閾値η以下になった場合)に、送給状態になったと判断してもよい。
例えば、図4(a)で示されるように、時刻t6の直前に送給状態に復帰した場合には、その送給状態に復帰した以降においては、実速度の時間微分の変化に対する外乱トルクの変化の割合は、滑り状態のときよりも大きくなる。したがって、上述のような式を用いることによって、復帰を検知することができる。
なお、(2)の検知方法において、検知部17は、上式以外を用いて、外乱トルクの変化が、実速度の時間微分の変化に対して小さいかどうかを判断してもよい。例えば、時刻k−rから時刻kまでの期間において、実速度の時間微分をさらに時間微分したものの平均を、外乱トルクの時間微分の平均で割った値が、あらかじめ決められた閾値よりも大きい場合に、検知部17は、外乱トルクの変化が、実速度の時間微分の変化に対して小さく、滑り状態であると判断し、そうでない場合に、検知部17は、外乱トルクの変化が、実速度の時間微分の変化に対して小さくなく、送給状態であると判断してもよい。
また、上述の検知方法において、実速度として、外乱トルクの算出方法で説明したωを用いてもよい。ωが適切に収束している場合には、実質的にωとω(k)とは同じだからである。したがって、ωを用いたとしても、実質的に実速度ω(k)を用いていると考えることができる。
また、滑りの検知方法と復帰の検知方法との組み合わせは問わない。検知部17は、例えば、滑りの検知を(1−1)の方法で行い、復帰の検知を(2−2)の方法で行ってもよく、滑りの検知を(2−1)の方法で行い、復帰の検知を(1−2)の方法で行ってもよい。
また、上記説明のように、現在の滑り状態gk+1の判断を行うため、過去の滑り状態gを用いてもよい。例えば、(1)の検知方法では、滑り状態gk+1の判断を行うために用いられる式が滑り状態gに応じて異なるため、現在の滑り状態gk+1の判断のため、過去の滑り状態gが用いられていることになる。そのため、その滑り状態は、順次、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
また、滑りが検知された場合に、上述した以外の制御が行われてもよい。例えば、ワイヤ送給装置1が溶接ロボットで用いられている場合には、滑りが検知されてから復帰が検知されるまでの期間は、その溶接ロボットによる溶接の処理を停止する制御を行ってもよい。
次に、ワイヤ送給装置1の動作について図5のフローチャートを用いて説明する。なお、このフローチャートにおいて、電流値取得部12による実電流値の取得と、速度取得部13による実速度の取得とは、特に明記されていないが、それぞれ行われているものとする。
(ステップS101)速度指令生成器14は、速度指令値を生成するかどうか判断する。そして、速度指令値を生成する場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、ステップS106に進む。なお、速度指令生成器14は、例えば、速度指令値を生成すると定期的に判断してもよい。
(ステップS102)速度指令生成器14は、速度指令値を生成する。生成された速度指令値は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS103)電流指令生成器15は、その時点において復帰制御が行われているかどうか判断する。そして、復帰制御が行われている場合には、ステップS105に進み、そうでない場合には、ステップS104に進む。
(ステップS104)電流指令生成器15は、速度指令値に応じてモータ11の速度指令値を算出し、そのモータ11の速度指令値と、実速度とを用いて、電流指令値を生成する。この電流指令値の生成は、通常の速度ループでの電流指令値の生成である。そして、ステップS101に戻る。なお、この電流指令値に応じて、モータ11は送給ローラ6aを駆動する。
(ステップS105)電流指令生成器15は、復帰制御時の電流指令値の生成を行う。前述のように、電流指令生成器15は、トルクを下げるための電流指令値の生成や、実速度が振動成分を有するための電流指令値の生成等を行ってもよい。そして、ステップS101に戻る。なお、この電流指令値に応じて、モータ11は送給ローラ6aを駆動する。
(ステップS106)外乱オブザーバ16は、外乱トルクを算出するかどうか判断する。そして、外乱トルクを算出する場合には、ステップS107に進み、そうでない場合には、ステップS109に進む。なお、外乱オブザーバ16は、例えば、外乱トルクを算出すると定期的に判断してもよい。
(ステップS107)外乱オブザーバ16は、その時点の実速度と実電流値に応じたトルクとを用いて、外乱トルクを算出する。
(ステップS108)検知部17は、算出された外乱トルクと、その時点の実速度とを図示しない記録媒体に蓄積する。そして、ステップS101に戻る。
(ステップS109)検知部17は、滑りの判断を行うかどうか判断する。そして、滑りの判断を行う場合には、ステップS110に進み、そうでない場合には、ステップS112に進む。検知部17は、例えば、送給状態である場合に、滑りの判断を行うと定期的に判断してもよい。
(ステップS110)検知部17は、図示しない記録媒体で記憶されている外乱トルクや実速度を用いて、上述のようにして、滑りの検知を行う。そして、滑りが検知された場合には、ステップS111に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。
(ステップS111)制御器18は、滑り状態から送給状態に復帰させるための制御が開始されるように電流指令生成器15を制御する。そして、ステップS101に戻る。
(ステップS112)検知部17は、復帰の判断を行うかどうか判断する。そして、復帰の判断を行う場合には、ステップS113に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。検知部17は、例えば、滑り状態である場合に、復帰の判断を行うと定期的に判断してもよい。
(ステップS113)検知部17は、図示しない記録媒体で記憶されている外乱トルクや実速度を用いて、上述のようにして、復帰の検知を行う。そして、復帰が検知された場合には、ステップS114に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。
(ステップS114)制御器18は、滑り状態から送給状態に復帰させるための制御が終了されるように電流指令生成器15を制御する。そして、ステップS101に戻る。
なお、図5のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
ここで、滑りが検知されてから送給状態への復帰が検知されるまでの動作の具体例について、図4を参照しながら簡単に説明する。滑りが発生する時刻t5までは、速度指令生成器14による速度指令値の生成や、電流指令生成器15による電流指令値の生成等が順次、繰り返される(ステップS101〜S104)。なお、その場合に、外乱オブザーバ16によって外乱トルクが算出され、それに応じた補償が電流指令生成器15において行われてもよく、外乱トルクや実速度が記憶されてもよい(ステップS106〜S108)。
時刻t5において溶接ワイヤ5の滑りが発生し、検知部17がそのことを検知したとする(ステップS109,S110)。すると、制御器18は、モータ11のトルクを下げると共に振動成分を付加するように電流指令生成器15を制御する(ステップS111)。その制御の結果、図4(a)の時刻t5以降で示されるように、回転トルクが減少すると共に、振動成分が付加される(ステップS101〜S103,S105)。その振動成分が付加されることによって、図4(b)の時刻t5〜t6で示されるように、送給ローラ6aの表面速度(ローラ表面速度)と、溶接ワイヤ5の移動速度(ワイヤ速度)との速度や加速度が一致するようになる。そのように両速度の速度や加速度が一致すると、溶接ワイヤ5が送給ローラ6aに引っ掛かりやすくなり、送給ローラ6aによる溶接ワイヤ5の送給が再開されることになる。そして、時刻t6の直前に送給状態となり、そのことが時刻t6で検知されることに応じて、通常の送給に応じた電流指令値が生成されるようになる(ステップS112〜S114)。その後は、図4(b)の時刻t6以降のように、送給ローラ6aによって溶接ワイヤ5が送給されるため、両者の速度がほぼ同じとなる。
以上のように、本実施の形態によるワイヤ送給装置1によれば、モータ11の実速度と溶接ワイヤ5の速度とが早期に整合するようにすることができる。その結果、溶接ワイヤ5が送給状態に早期に復帰できることになる。したがって、例えば、溶接に生じる欠陥を低減させることができるようになりうる。また、例えば、滑りの検知から復帰の検知まで、溶接ロボットの動作を停止する制御を行う場合には、その停止の時間を短くすることができ、生産性を向上させることができる。また、その復帰の制御において、モータ11の実速度が振動成分を有するように電流指令値を制御することによって、送給ローラ6aが溶接ワイヤ5に引っ掛かる機会を増やすことができ、より早期に送給状態に復帰できる可能性が高くなる。また、復帰が検知されるまで復帰の制御を行うことによって、溶接ワイヤ5が送給状態に復帰した後には、通常の送給のための制御が行われるようにすることができ、復帰後に適切な溶接ワイヤの送給が行われるようにすることができる。また、溶接ワイヤ5の速度を検出する追加的な計測器等を備えることなく、新たな演算を行うだけで溶接ワイヤ5の滑りを検知することができるようになる。したがって、コストを必ずしも増加させることなく溶接ワイヤ5の滑りを検知することができるようになる。また、例えば、特許文献1に記載されている滑り検知方法は、溶接ワイヤ5の速度と閾値とを比較して滑りを検知しているため、溶接ワイヤ5のインチングやリトラクトを行う場合には用いることができない。一方、本実施の形態による検知部17のように、外乱トルクと実速度に応じたトルクとが整合しなくなった場合に溶接ワイヤ5の滑りを検知することによって、溶接ワイヤ5のインチング、リトラクトを行っている場合にも適切に滑りを検知することができるようになる。
なお、本実施の形態では、外乱トルクと、実速度に応じた回転トルクとが整合しなくなった場合に、検知部17が滑りを検知する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、検知部17は、特許文献1や特許文献3の方法等によって取得された溶接ワイヤ5の速度と、速度取得部13が取得した実速度とが整合するかどうか判断することによって、滑りを検知したり、復帰を検知したりしてもよい。両速度が整合しない場合に、滑りが検知され、両速度が整合する場合に復帰が検知されることになる。なお、両速度が整合するかどうかは、溶接ワイヤ5の速度をモータ11の速度(角速度)に変換した後に両者が整合するかどうかを判断してもよく、モータ11の速度を送給ローラ6aの表面速度に変換した後に両者が整合するかどうかを判断してもよい。また、2個の速度が整合しているかどうかは、例えば、両者が所定の誤差の範囲内で一致しているかどうか判断することであってもよい。また、例えば、検知部17は、特許文献4の方法によって取得された溶接ワイヤ5の張力等を用いて滑りを検知したり、復帰を検知したりしてもよい。具体的には、その張力等が溶接ワイヤ5の送給時と異なる値となった場合に滑りが検知され、その張力等が溶接ワイヤ5の送給時と同様の値となった場合に復帰が検知されてもよい。
また、本実施の形態では、外乱オブザーバ16が実電流値を用いて外乱トルクを算出する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。前述のように、外乱オブザーバ16は、電流指令値を用いて外乱トルクを算出してもよい。そのような場合であって、モータ11のフィードバック制御に実電流値を用いない場合には、ワイヤ送給装置1は、電流値取得部12を備えていなくてもよい。
また、検知部17が外乱トルクを用いないで滑りの検知等を行う場合には、ワイヤ送給装置1は、外乱オブザーバ16を備えていなくてもよい。
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、あるいは、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、設定値等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
以上より、本発明によるワイヤ送給装置によれば、溶接ワイヤの送給状態に早期に復帰できるという効果が得られ、例えば、溶接ロボット等において溶接ワイヤを送給する装置として有用である。
1 ワイヤ送給装置
5 溶接ワイヤ
6a 送給ローラ
6b 加圧ローラ
11 モータ
12 電流値取得部
13 速度取得部
14 速度指令生成器
15 電流指令生成器
16 外乱オブザーバ
17 検知部
18 制御器

Claims (4)

  1. 溶接ワイヤを送給するためのモータと、
    前記モータの実速度を取得する速度取得部と、
    前記溶接ワイヤの送給に関する速度指令値を生成する速度指令生成器と、
    前記実速度と前記速度指令値とに応じて、前記モータの電流指令値を生成する電流指令生成器と、
    前記溶接ワイヤの滑りを検知する検知部と、
    前記検知部が前記溶接ワイヤの滑りを検知した場合に、前記モータの実速度が下がり振動成分を有するように前記電流指令値を制御する制御器と、を備え、
    前記モータは、前記電流指令値に応じて駆動される、ワイヤ送給装置。
  2. 前記検知部は、前記溶接ワイヤが滑っている状態である滑り状態から、前記モータによって送給される状態である送給状態への復帰をも検知し、
    前記制御器は、前記検知部によって前記溶接ワイヤの滑りが検知されてから復帰が検知されるまで前記制御を行う、請求項1記載のワイヤ送給装置。
  3. 溶接ワイヤを送給するためのモータと、
    前記モータの実速度を取得する速度取得部と、
    前記溶接ワイヤの送給に関する速度指令値を生成する速度指令生成器と、
    前記実速度と前記速度指令値とに応じて、前記モータの電流指令値を生成する電流指令生成器と、
    前記溶接ワイヤの滑りを検知すると共に、前記溶接ワイヤが滑っている状態である滑り状態から、前記モータによって送給される状態である送給状態への復帰をも検知する検知部と、
    前記検知部によって前記溶接ワイヤの滑りが検知されてから復帰が検知されるまで、前記モータの実速度が下がるように前記電流指令値を制御する制御器と、
    前記実速度と前記モータに関する電流値とを用いて前記モータの外乱トルクを算出する外乱オブザーバと、を備え、
    前記モータは、前記電流指令値に応じて駆動され、
    前記検知部は、前記外乱トルクの絶対値が、前記溶接ワイヤが滑り状態であるときよりもあらかじめ決められた以上大きくなった場合に、前記溶接ワイヤの送給状態への復帰を検知する、ワイヤ送給装置。
  4. 溶接ワイヤを送給するためのモータと、
    前記モータの実速度を取得する速度取得部と、
    前記溶接ワイヤの送給に関する速度指令値を生成する速度指令生成器と、
    前記実速度と前記速度指令値とに応じて、前記モータの電流指令値を生成する電流指令生成器と、
    前記溶接ワイヤの滑りを検知すると共に、前記溶接ワイヤが滑っている状態である滑り状態から、前記モータによって送給される状態である送給状態への復帰をも検知する検知部と、
    前記検知部によって前記溶接ワイヤの滑りが検知されてから復帰が検知されるまで、前記モータの実速度が下がるように前記電流指令値を制御する制御器と、
    前記実速度と前記モータに関する電流値とを用いて前記モータの外乱トルクを算出する外乱オブザーバと、を備え、
    前記モータは、前記電流指令値に応じて駆動され、
    前記検知部は、前記外乱トルクの変化が、前記実速度の時間微分の変化に対して小さくなくなった場合に、前記溶接ワイヤの送給状態への復帰を検知する、ワイヤ送給装置。
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