JP6188608B2 - 圧延コイル材の保温方法 - Google Patents
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Description
圧延材が軟鋼の場合であれば、水冷手段などにより目標の巻き取り温度まで冷却する過程で変態は完了する。ところが、高炭素鋼やハイテン鋼などのようにC、Si、Mnを多く含む材料を圧延材に用いる場合には、コイル材に巻き取った時点でも変態が完了しないか、もしくは変態がほとんど進行していない場合があることが明らかになってきた。
係る状況は、例えば高強度冷延鋼板において、顕著に発生することが知られている。
き台の断熱構造に、煉瓦などの断熱材を採用すると、金属製の部材を採用した場合に比べて製作費が嵩む虞がある。加えて、煉瓦などの断熱材は、圧延コイル材を載置した時の衝撃で断熱材が割れる可能性があり、保全費などのランニングコストも高騰しやすい。
即ち、本発明の圧延コイル材の保温方法は、断熱材で囲まれた保持容器の内部に、熱間圧延された圧延材をコイル状態で収容して、前記圧延材を保温する圧延コイルの保温方法であって、前記保持容器の内部に設けられ、当該保持容器の底部から上方に突出するような形状とされ、前記圧延コイル材を保持する鋼製の保持部材が設けられており、前記保持部材の重量が圧延コイル材の質量の10%以下とされており、前記圧延コイル材を保温するに際しては、前記圧延コイル材の巻取温度を500℃以上とし、巻き取り後20〜45分以内に保温を開始することを特徴とする。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に、本発明の保温装置5が設けられた熱間圧延ライン1の概略を示す。図1に示すように、連続仕上圧延機2や水冷手段3を備えた熱間圧延ライン1で圧延された圧延材Wは、通常400〜600℃程度の温度において巻き取り機で巻き取られて圧延コイル材Sとなり、その後、熱延コイル搬送コンベア(搬送手段)により熱延コイル置場4に搬送されて、そこで室温まで冷却される。なお、圧延コイル材Sは熱延コイル搬送コンベアに載置された状態で搬送される。
や強度が不均一とならない圧延コイル材Sを得る保温装置5及び保温方法を提供するものである。
図2及び図3に示すように、本実施形態の保温装置5は、断熱材で囲まれた保持容器6の内部に、熱間圧延された圧延材Wをコイル状態で収容するものであり、保持容器6の内部で圧延コイル材Sを保温する構成となっている。この保持容器6の内部には、保持容器6の内部に圧延コイル材Sを保持する金属製(鋼製)の保持部材7(置台)が設けられており、本発明の保温装置5は保持部材7の質量が圧延コイル材の質量の10%以下とされていることを特徴としている。次に、本実施形態の保温装置5を構成する保持容器6、保持部材7について説明する。
底部8は、煉瓦などの断熱材を用いて上方から見て正方形乃至は長方形の板状に形成されており、圧延コイル材Sの重量を支持できる程度の強度を有している。この底部8の中央には、圧延コイル材Sを載置可能な保持部材7が設けられている。
保持部材7は、上述した保持容器6の底部8に設けられて圧延コイル材Sを支持可能な部材である。具体的には、保持部材7は、保持容器6の底部8から上方に向かって突出すると共に圧延コイル材Sの軸方向に沿って伸びる爪状またはリブ条の部材であり、圧延コイル材Sの外周面を下方から2カ所で支持できるように2箇所に設けられている。保持部材7は、鋼やステンレスなどの強度に優れる金属を用いて形成されており、重量がある圧延コイル材Sを下方から確実に保持できるようになっている。
まず、上述した熱間圧延ライン1において、連続仕上圧延機2や水冷手段3を通過した後の圧延材Wが、巻き取り機で巻き取られて圧延コイル材Sとなる。このようにして巻き取られた圧延コイル材Sは、次に保持容器6に装入される。具体的には、保温カバー9を取り外された保持容器6の底部8には、上述した鋼製の保持部材7が設けられている。そのため、例えばクレーンなどを用いて圧延コイル材Sを移動させれば、保持部材7の上に圧延コイル材Sを載置することが可能となる。
ところで、上述した保持容器6の内部で圧延コイル材Sを保持しても、圧延コイル材Sの温度が予想外に低下し、圧延コイル材Sにマルテンサイト変態が発生してしまうことがある。これは、保持部材7のように金属で形成された部材に、圧延コイル材Sの熱が奪われてしまうためであると考えられる。
なお、断熱材などで保持部材7を被覆しても、熱の移動速度は小さくなるが、終局的には保持部材7に多くの熱が奪われるので、圧延コイル材Sの温度低下を抑制することはで
きないし、マルテンサイト変態を防止乃至抑制することもできない。
具体的には、熱間圧延上がりの圧延コイル材Sは、上述した断熱材で囲まれた閉空間内の空気や、断熱材表面からの輻射熱を通じて間接的に圧延コイル材S自身が持つ熱によって加熱される。そのため、保持部材7の質量が大きいと断熱材の表面温度や閉空間内の空気温度の上昇も緩やかになり、圧延コイル材Sの温度低下を抑制することが困難になる。
実施例及び比較例は、熱間圧延ライン1で熱間圧延された圧延コイル材Sを、巻き取り質量を6.88〜10.3[ton]の範囲で変化させて巻き取り、これらの圧延コイル材Sを質量が0.25[ton]、0.36[ton]、1.31[ton]とそれぞれ異なる保持部材7を用いて保持しつつ、保温を行ったものである。
また、マルテンサイト変態が抑制されているかどうか(硬質化防止がされているかどうか)の確認、言い換えれば「軟質化の実現(軟質化結果)」の評価については、保温後の圧延コイル材Sに対して、圧延コイル材Sの中央側と両端縁との引張応力の差に基づいて判断した。つまり、引張応力の差が換算値で50MPa以上の場合には、マルテンサイト変態が発生して硬質化が進んでいると判断して、「硬質化防止」を“×”の評価と、また引張応力の差が換算値で50MPa未満の場合には、マルテンサイト変態が発生しておらず硬質化が進んでいないと判断して、「硬質化防止」を“○”の評価とした。
つまり、巻取温度が500℃を下回るような圧延コイル材Sでは、保温開始時に温度がマルテンサイト変態温度近傍まで下がっており、上述した保温装置5や保温方法を用いて保温を行ってもマルテンサイト変態が完全に防止できず、金属組織に硬質化した部分が発生したものと考えられる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
また、本願発明の技術は、単一の保持容器6から構成される保温装置5のみで実現されるのではなく、図4に示すような複数の保持容器6から構成される保温装置5であっても
同様に適用可能である。
2 連続仕上圧延機
3 水冷手段
4 熱延コイル置場
5 保温装置
6 保持容器
7 保持部材
8 保持容器の底部
9 保持容器の保温カバー
S 圧延コイル材
W 圧延材
Claims (1)
- 断熱材で囲まれた保持容器の内部に、熱間圧延された圧延材をコイル状態で収容して、前記圧延材を保温する圧延コイルの保温方法であって、
前記保持容器の内部に設けられ、当該保持容器の底部から上方に突出するような形状とされ、前記圧延コイル材を保持する鋼製の保持部材が設けられており、
前記保持部材の重量が圧延コイル材の質量の10%以下とされており、
前記圧延コイル材を保温するに際しては、前記圧延コイル材の巻取温度を500℃以上とし、巻き取り後20〜45分以内に保温を開始する
ことを特徴とする圧延コイル材の保温方法。
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