JP2016148063A - 高強度鋼板の製造方法および処理施設 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱間圧延から、酸洗工程、冷間圧延を経て高強度鋼板を製造する高強度鋼板の製造方法において、冷間圧延に先立って熱延鋼帯を軟質化するための熱処理を施す際に、適正な熱処理時間を確保することによって均一かつ十分な軟質化を可能とし、しかも熱処理能率の向上も可能とする高強度鋼板の製造方法および処理施設を提供する。【解決手段】酸洗工程で鋼板表面の酸化皮膜を除去した後に、鋼板を連続的に搬送しながら加熱する加熱工程と、加熱工程で加熱した鋼板をコイルとして巻き取る巻取工程と、巻き取ったコイルの温度を、10分以上10時間以下の間、500℃〜700℃に保持する保熱工程とを有する、ことにより上記課題を解決する。【選択図】図1

Description

本発明は、熱間圧延から、酸洗工程、冷間圧延を経て高強度鋼板を製造する過程で、冷間圧延に先立って熱延鋼帯を軟質化するための熱処理を施す高強度鋼板の製造方法および処理設備に関するものであり、熱処理に要する時間を適正に確保し、しかも能率良く熱延鋼帯を軟質化することが可能な高強度鋼板の製造方法および処理設備に関する。
近年、自動車用鋼板等の様々な分野で、高強度の鋼板(いわゆるハイテン材)が広く用いられるようになり、用途に応じた種々のハイテン材が開発されている。このようなハイテン材は、強度を高めるための合金成分を多く含有しているので、熱間圧延の後の冷却過程で硬質な低温変態相(たとえばベイナイトやマルテンサイト等)が生成される。そのため、冷却後のハイテン材に加工を加える際の変形抵抗が大きくなる。
ハイテン材の中でも特に、高強度の冷延鋼板(以下、高強度鋼板という)を製造する際には、素材となる熱延鋼帯の変形抵抗が大きく、しかも板厚を従来よりも薄くまで圧下するので、冷間圧延の負荷が増大する。そのため、冷間タンデム圧延機を複数回通板させて、冷間圧延のパス数を増やす必要が生じるばかりでなく、圧延中に破断等のトラブルが発生し易くなり、冷間タンデム圧延機の稼動率が低下し、ひいては高強度鋼板の生産性が低下するという問題が生じる。また、熱延鋼帯の変形抵抗が大きいので、冷間圧延によって得られる高強度鋼板の形状が劣化し、歩留りの低下を招くという問題もある。
このような問題を解決するために、冷間圧延を施す前の熱延鋼帯に熱処理を施して軟質化することによって、その熱延鋼帯の変形抵抗を低減する技術が検討されている。
例えば、特許文献1には、冷間圧延に先立って、BAF(box annealing furnace)焼鈍炉あるいは連続焼鈍炉を用いて焼戻し処理を施して、熱延鋼帯を均一に軟質化する技術が開示されている。
特許文献1では、この焼戻し処理における焼戻し温度と焼戻し時間は、熱間圧延の終了した熱延鋼帯をコイル(以下、熱延コイルという)に巻取る際の温度に応じて調整されることが記載されている。
特開2010−144243号公報
しかしながら、高強度鋼板の製造において、冷間圧延の前に焼戻し処理を行う場合に、BAF焼鈍炉や連続焼鈍炉を使用すると、以下のような種々の問題が発生する。
BAF焼鈍炉による焼戻し処理は、熱延コイルを個別に収納してバッチ処理で焼戻しを行なうものである。この場合、鋼板はコイル状に巻き回されているため、コイルの内部まで所定の焼戻し温度に昇温するのに時間がかかり、同様に、徐冷する際にも時間がかかる。そのため、熱延コイル全体を加熱−均熱−徐冷する一連の工程に多大な時間を要するので、焼戻しの能率向上は期待できない。多数のBAF焼鈍炉を設置して、同時に複数の熱延コイルに焼戻しを施すことによって、能率を高めることは可能であるが、大幅な能率向上は困難であり、しかも、立地条件の制約を受ける工場では、BAF焼鈍炉の増設は極めて難しい。
また、図6に示すような大型の容器(以下、ベルという)に複数の熱延コイルを収納してBAF焼鈍炉に装入すれば、焼戻しの能率を高めることは可能である。しかしながら、熱延コイルに巻取られた熱延鋼帯の成分が異なる場合に、それぞれの成分に応じて焼戻し温度や焼戻し時間を調整する必要があるので、同じベルに収納して焼戻しを行うことはできない。そのため、ベルの収納量を常に満たして操業できるとは限らない。つまりベルを使用しても、大幅な能率向上は困難である。
さらに、BAF焼鈍炉によるバッチ処理では焼戻しに長時間を要するので、成分によっては熱延鋼帯が脆化するおそれがある。その結果、冷間圧延において破断が発生し、冷間圧延設備の稼動率の低下および高強度鋼板の歩留りの低下を招くという問題も生じる。
一方、連続焼鈍炉を用いると、過時効帯の領域で焼戻しを行なうことが可能であり、能率向上を図ることができる。しかし焼戻し時間は、連続焼鈍炉の大きさや過時効帯の長さ、熱延鋼帯の通板速度等の関係で決定される値であり、通常の通板速度では最大3分程度となる。つまり連続焼鈍炉では、3分程度の短い焼戻し時間しか得られないので、十分な軟質化が図れない。また、Mn含有量の大きい熱延鋼帯では、Mnがオーステナイト中に濃化するのに要する時間を確保できないので、高強度鋼板の機械的特性が劣化するという問題もある。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、熱間圧延から、酸洗工程、冷間圧延を経て高強度鋼板を製造する高強度鋼板の製造方法において、冷間圧延に先立って熱延鋼帯を軟質化するための熱処理を施す際に、適正な熱処理時間を確保することによって均一かつ十分な軟質化を可能とし、しかも熱処理能率の向上も可能とする高強度鋼板の製造方法および処理施設を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、酸洗工程で鋼板表面の酸化皮膜を除去した後に、鋼板を連続的に搬送しながら加熱する加熱工程と、加熱工程で加熱した鋼板をコイルとして巻き取る巻取工程と、巻き取ったコイルの温度を、10分以上10時間以下の間、500℃〜700℃に保持する保熱工程とを有することにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、以下の構成により上記目的を達成することができることを見出した。
(1) 熱間圧延工程、酸洗工程および冷間圧延工程をこの順に有する高強度鋼板の製造方法であって、さらに、酸洗工程と冷間圧延工程との間に、
酸洗工程で鋼板表面の酸化皮膜を除去した後に、鋼板を連続的に搬送しながら加熱する加熱工程と、
加熱工程で加熱した鋼板をコイルとして巻き取る巻取工程と、
巻き取ったコイルの温度を、10分以上10時間以下の間、500℃〜700℃に保持する保熱工程とを有する高強度鋼板の製造方法。
(2) 加熱工程において、鋼板を500℃〜750℃の温度に加熱する(1)に記載の高強度鋼板の製造方法。
(3) 加熱工程における加熱方法が、誘電加熱方式によるものである(1)または(2)に記載の高強度鋼板の製造方法。
(4) 保熱工程における保熱方法が、コイル全体を覆う保熱カバーによりコイルの温度低下を軽減するものである(1)〜(3)のいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。
(5) 保熱工程の後、冷間圧延工程の前に、コイルを、冷間圧延工程を行う装置に装入して、コイルから払い出された鋼板を搬送しつつ200℃以下に冷却する冷却工程を有する(1)〜(4)のいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法における酸洗工程、加熱工程、および、巻取工程を行う高強度鋼板の処理設備であって、
鋼板表面の酸化皮膜を除去する酸洗工程を行う酸洗槽と、
鋼板の搬送方向における酸洗槽の下流側に配置される、鋼板を加熱する加熱装置と、
加熱装置の下流側に配置される、加熱された鋼板をコイルとして連続的に巻き取る巻取装置とを有する高強度鋼板の処理設備。
本発明によれば、冷間圧延に先立って熱延鋼帯を軟質化するための熱処理を施す際に、適正な熱処理時間を確保することができるので、均一かつ十分な軟質化が可能であり、しかも、熱処理にかかる時間を削減して熱処理能率を向上できる。
本発明の高強度鋼板の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。 本発明の製造方法の酸洗工程から巻取工程までを実施する処理設備の一例を概念的に示す図である。 本発明の製造方法の保熱工程を実施する保熱装置の一例を概念的に示す図である。 本発明の製造方法の保熱工程を実施する保熱装置の他の一例を概念的に示す図である。 本発明の製造方法の冷却工程から冷間圧延工程までを実施する冷間圧延設備の一例を概念的に示す図である。 従来のバッチ焼鈍炉の一例を概念的に示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明の高強度鋼板の製造方法は、熱間圧延工程、酸洗工程および冷間圧延工程をこの順に有する高強度鋼板の製造方法であって、酸洗工程と冷間圧延工程との間に、酸洗工程で鋼板表面の酸化皮膜を除去した後に、鋼板を連続的に搬送しながら加熱する加熱工程と、加熱工程で加熱した鋼板をコイルとして巻き取る巻取工程と、巻き取ったコイルの温度を、10分以上10時間以下の間、500℃〜700℃に保持する保熱工程とを有する高強度鋼板の製造方法である。
このような本発明の高強度鋼板の製造方法は、高強度鋼板の素材となる熱延鋼帯を、冷間圧延の前に軟質化する工程を有するものであり、とりわけ、熱間圧延の出側で熱延鋼帯を巻取った熱延コイルの冷却過程で200℃以下まで温度が低下して、硬質な低温変態相(例えば、ベイナイトやマルテンサイト等)が生成されて、酸洗を施した後の冷間圧延における変形抵抗が著しく大きくなり、所定の板厚に圧下するのが困難になる熱延鋼帯を、軟質化して高強度鋼板を製造する際に有効である。
なお、本発明において、「高強度鋼板」とは、JIS Z 2241の規定に準拠した引張強さが780MPa以上の鋼板をいう。
[高強度鋼板の製造方法]
本発明の高強度鋼板の製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)について、図1に示すフローチャートを参照して説明する。
図1は、本発明の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図1に示す製造方法は、熱間圧延工程(S100)と、酸洗工程(S102)と、加熱工程(S104)と、巻取工程(S106)と、保熱工程(S108)と、冷却工程(S110)と、冷間圧延工程(S112)とをこの順に有する高強度鋼板の製造方法である。
本発明の製造方法においてはこのように、熱間圧延工程後の酸洗工程の後、冷間圧延工程の前に、鋼板を連続的に搬送しながら加熱して、加熱した鋼板を冷却することなくコイルに巻取り、巻き取ったコイルの温度を所定の時間、500℃〜700℃に保持することで、冷間圧延に先立って、熱処理を行う際に、熱処理温度に昇温する時間を短縮して、熱処理能率を向上でき、かつ、適正な熱処理時間を確保できるので均一にかつ十分に熱延鋼帯を軟質化することができる。
この点については後に詳述する。
以下、各工程について詳細に説明する。
〔熱間圧延工程〕
熱間圧延工程は、鋼スラブを加熱し、圧延機にて熱延鋼帯を形成する工程である。熱間圧延工程における熱延鋼帯の形成方法および熱間圧延設備は、従来の高強度鋼板の製造方法で利用される熱延鋼帯の形成方法および熱間圧延設備が各種利用可能である。
熱間圧延工程において、形成された熱延鋼帯は、熱延コイルに巻取られる。
熱延コイルは、所定の温度以下、例えば、200℃以下に冷却された後、酸洗工程に供される。
〔酸洗工程〕
酸洗工程は、熱間圧延工程で形成された熱延コイルから熱延鋼帯を払出して搬送しつつ、熱延鋼帯(鋼板)表面の酸化皮膜を除去する工程である。
ここで、熱間圧延工程後に熱延コイルが供される酸洗工程、加熱工程および巻取工程を実施する処理装置を図2に示し、酸洗工程、加熱工程および巻取工程については、図2を参照して説明する。
図2に示す処理設備10は、熱延コイルから熱延鋼帯を払出し、熱延鋼帯を長手方向に搬送しつつ、酸洗工程、加熱工程、および、巻取工程を行う設備である。
処理設備10は、払出し機12と、溶接機14と、酸洗槽16と、加熱装置18と、切断機20と、巻取り機22と、ガイドローラ24aおよび24bとを有する。
払出し機12は、熱延コイル26aを装填されて、熱延鋼帯Zを払出すものである。図示例においては、払出し機12を複数備えて、異なる熱延コイル26aおよび26bを連続的に通板させる。溶接機14は、熱延コイル26aから払出された熱延鋼帯の終端部と、熱延コイル26bから払出された熱延鋼帯の先端部とを接合するものである。
また、ガイドローラ24aおよび24bは、払出された熱延鋼帯Zを所定の搬送経路に案内する通常のガイドローラである。
払出された熱延鋼帯Zは、所定の経路で酸洗槽16に搬送される。
酸洗槽16は、熱間圧延工程により熱延鋼帯Zの表面に生じる酸化皮膜(スケール)を除去する酸洗工程を実施するものである。
酸洗工程における酸洗の方法は、従来の高強度鋼板の製造方法で利用される酸洗方法が各種利用可能である。例えば、塩酸や硫酸などにより表面の酸化皮膜を除去する方法が利用可能である。
ここで、本発明においては、酸洗工程後の熱延鋼帯Zは、巻き取られることなく連続的に搬送されて加熱工程に供された後に巻き取られる。従って、図2に示すように、処理設備10は、酸洗槽16の下流側に加熱装置18および巻取り機22を有する。
〔加熱工程〕
加熱装置18により実施される加熱工程は、酸洗工程で酸化皮膜を除去された熱延鋼帯Zを所定の温度に加熱する工程である。
加熱工程における熱延鋼帯Zの加熱方法には特に限定はなく、燃料の燃焼熱で加熱する加熱方法(例えば、直火型無酸化方式や輻射管加熱方式等)や、電気加熱方式(すなわち、通電加熱方式または誘導加熱方式)等の、従来の高強度鋼板の製造方法で利用される加熱方法が各種利用可能である。また、加熱装置18としては、上記の加熱方式を実施可能な従来公知の連続焼鈍炉等の加熱装置が各種利用可能である。
なかでも、加熱装置18を小型化し、処理設備の関連機器の配置を簡素化する観点から、電気加熱方式の加熱方法を採用することが好ましい。また、電気加熱方式を採用すれば、熱延鋼帯Z表面の酸化を抑制する効果も得られる点でも好ましい。
電気加熱方式のなかでも、通電加熱方式は、熱延鋼帯Zに電流を直接流すので、加熱装置の小型化のみならず加熱時間の短縮に有利である。しかしながら、熱延鋼帯Zの温度にばらつきが生じるおそれがある。一方、誘導加熱方式は、熱延鋼帯Zを短時間で加熱でき、しかも温度を容易に制御することが可能であり、また、均一に加熱することができる。したがって、熱延鋼帯Zを短時間で均一に加熱できる点で、誘導加熱方式を用いることがより好ましい。また、誘導加熱方式を採用することで、形状不良(たとえば波うち等)が生じた熱延鋼帯Zを加熱する際にも、安定して操業できるという効果も得られる。
加熱工程における熱延鋼帯Zの加熱温度は、後述する巻取工程を経て保熱工程に至った際に、加熱後の熱延鋼帯Z(以下、熱処理鋼帯という)、つまり、熱処理鋼帯Zを巻き取った熱処理コイル28の温度が所定の温度範囲となる温度であれば良い。すなわち、加熱終了から巻取りまでの時間、あるいはさらに、保熱工程開始までにかかる時間や、熱延鋼帯Zの材質、厚さ等に応じて、保熱工程開始時に、熱処理コイルの温度が所定の温度範囲となるように、加熱温度を決定すればよい。
具体的には、加熱工程では、500℃〜750℃の範囲の温度に加熱するのが好ましく、550℃〜650℃に加熱するのがより好ましい。
保熱工程において、熱処理コイル28の温度を500℃以上に保持する必要があるため、加熱工程では500℃以上に加熱するのが好ましい。
一方、熱延鋼帯Zの温度を750℃以上に加熱すると、エネルギー消費量の増加(すなわち操業コストの増加)を招くばかりでなく、熱延鋼帯Zの幅方向のネッキングが発生して安定した搬送が困難になり、その結果、形状不良の発生や寸法精度の劣化の原因になるおそれがある。また、加熱温度が高すぎる場合には、保熱工程の後の冷却過程で、マルテンサイトやベイナイト等の硬質な低温変態相が多く生成し、熱延鋼帯Zの軟質化が困難になるおそれがある。したがって、加熱工程における熱延鋼帯Zの加熱温度は500℃〜750℃の範囲が好ましい。
また、加熱装置18の前後には、ブライドルロール等を配置して所定の張力を付与しながら、加熱装置18を通過させる方式としても良い。
また、加熱温度の調整等が容易になる点で、加熱装置を複数有してもよい。
また、加熱装置18の内部を不活性ガス雰囲気とすることも好ましい。これにより、熱延鋼帯の酸化を抑制することができる。熱延鋼帯表面の酸化を抑制することによって、後述する冷間圧延工程で得られる高強度鋼板に化成処理や溶融亜鉛めっき処理を施す際に、良好な化成皮膜やメッキ皮膜を形成することができる。
加熱工程(加熱装置18)で加熱された熱処理鋼帯Zは、連続的に搬送されて巻取工程(巻取り機22)に供される。
〔巻取工程〕
巻取り機22により実施される巻取工程は、加熱工程で加熱された熱処理鋼帯Zをコイルとして巻き取る工程である。
図2に示す例では、巻取り機22の上流側に、鋼帯を切断するための切断機20を備え、また、巻取り機22を複数備えて、所定の長さを熱処理コイル28bに巻き取ると、切断されて、さらに搬送される鋼帯を次の熱処理コイル28aに巻き取って、連続的にコイルを巻き取る構成を有する。
巻取工程における熱処理鋼帯Zの巻取り方法および巻取り機22は、高温に加熱された熱延鋼帯を巻き取ることができれば、従来の高強度鋼板の製造方法で利用される巻取り方法および巻取り機が各種利用可能である。なお、巻取り機22としては、コイル内周部に、加熱スリーブや断熱スリーブを装着することが可能なものが好ましい。
巻取工程で巻き取られた熱処理コイル28は、保熱工程に供され、所定の時間、500℃〜700℃の範囲に保持される。
前述のとおり、高強度鋼板を製造する際の冷間圧延の負荷を軽減するために、熱延鋼帯を軟質化するための熱処理を施す技術について検討されている。
しかしながら、冷間圧延の前に焼戻し処理を行う際に、BAF焼鈍炉等を用いて熱延コイルを個別に収納してバッチ処理で焼戻しを行なう場合には、コイル状に巻き回されているため、コイルの内部まで所定の焼戻し温度に昇温するのに時間がかかり、熱延コイル全体を加熱−均熱−徐冷する一連の工程に多大な時間を要するため、焼戻しの能率が悪いという問題があった。
一方、熱延鋼帯を酸洗工程の出側において、連続的に搬送しつつ熱処理を施すことで、加熱の時間を短縮することが考えられるが、軟質化に十分な時間を確保することは難しいという問題があった。特に、高強度鋼板の製造においては、材質を向上するために、組織中の元素を拡散させる時間が必要であるため、連続搬送中の熱処理のみでは、十分に元素を拡散することができず、材質を向上できないという問題があった。
これに対して、本発明においては、酸洗工程の後、冷間圧延工程の前に、鋼板を連続的に搬送しながら加熱して、加熱した鋼板を冷却することなくコイルに巻取り、巻き取ったコイルの温度を所定の時間、保熱する。
このように、高強度鋼板の製造方法において、冷間圧延に先立って、熱処理を行う際に、酸洗工程後の熱延鋼帯をコイルとして巻き取る前に、加熱を行い、その後、コイルとして巻き取ることで、コイルの状態で加熱することなく、コイルの温度を熱処理温度に昇温することができるので、昇温時間を短縮することができる。従って、熱処理能率を向上できる。
また、後述のとおり、巻き取ったコイルを所定の時間保熱するので、軟質化に十分な時間を確保することができ、熱延鋼帯の全長および全幅にわたって均一にかつ十分に熱延鋼帯を軟質化することができる。
すなわち、本発明により、熱処理時間の短縮と均一な軟質化とを両立できる。従って、軟質化した熱延鋼帯を冷間圧延することによって、良好な形状の高強度鋼板の形状を得ることができ、ひいては歩留り向上を図ることが可能となる。
しかも、熱延鋼帯の成分に応じて熱処理条件(すなわち、加熱工程における加熱温度、保熱工程の保熱温度と保熱時間等)を変更して操業する場合にも、容易に対応することが可能である。
また、巻取工程において、加熱した熱延鋼帯をコイルに巻き取ることで、熱延鋼帯が冷却されるのを抑制することができるので、加熱工程における加熱温度と保熱工程における保温温度との差を小さくすることができる。すなわち、加熱工程における加熱温度をより低くすることができる。従って、エネルギー消費量を低減でき、また、加熱温度が高すぎることに起因する不具合(ネッキングや、十分に軟質化できないこと等)を好適に抑制することができる。
また、上記観点から、加熱工程における加熱温度と、巻取工程における巻取りの際の温度(以下、巻取温度ともいう)との差は100℃以内が好ましく、50℃以内がより好ましい。加熱温度と巻取温度とを100℃以内にすることで、加熱温度と保熱温度との差をより小さくすることができる。
また、加熱温度と巻取温度との差を小さくするために、加熱工程から巻取工程までの搬送過程において、また、巻取工程において、熱延鋼帯の保温を行ってもよい。保温方法としては、搬送経路の一部または全部を断熱性を有するカバー(以下、緩冷却カバーという)で覆う、巻取り機の周囲を緩冷却カバーで覆う等の方法が利用可能である。
また、巻取工程において、熱延鋼帯の加熱を行ってもよい。巻取工程における加熱方法としては、上記の加熱工程における加熱方法と同様の方法が利用可能である。
このような構成は、熱延鋼帯Zの搬送速度が小さい場合、あるいは加熱装置18と巻取り機22との距離が遠い場合等に好適である。
また、巻取り機22への搬送経路や巻取り機22の周囲を不活性ガス雰囲気とすることも好ましい。これにより、熱延鋼帯の酸化を抑制することができる。
〔保熱工程〕
保熱工程は、加熱されて巻き取られた熱処理コイル28の温度を、10分以上10時間以下の間、500℃〜700℃の範囲に保持する工程である。
上述のとおり、熱処理コイル28の温度を所定の時間、500℃〜700℃の範囲に保持することで、熱延鋼帯を均一にかつ十分に軟質化することができる。
保熱工程における熱処理コイル28の保熱温度は、熱延鋼帯の成分や温度履歴、高強度鋼板の用途等に応じて適宜設定すればよいが、熱延鋼帯を軟質化する効果が得られる点で、500℃以上とする。また、保熱工程の後の冷却過程で、マルテンサイトやベイナイト等の硬質な低温変態相が多く生成され、熱延鋼帯の軟質化が困難になることを抑制する点で700℃以下とする。
上記観点から、保熱温度は、500℃〜700℃が好ましく、550℃〜650℃がより好ましい。
なお、保熱工程における熱処理コイル28の温度とは、熱処理コイル28の外周面の温度、あるいは、保熱カバー内の雰囲気温度である。
また、保熱工程における熱処理コイル28の温度を保持する時間(保熱時間)も、熱延鋼帯の成分や温度履歴、高強度鋼板の用途等に応じて適宜設定すればよいが、熱延鋼帯を軟質化する効果が得られる点で、10分以上10時間以下とする。
また、保熱時間が10分未満の短時間で軟質化できる熱延鋼帯を製造する場合には、従来の熱処理炉(たとえば連続焼鈍炉等)を用いても、熱延鋼帯を十分に軟質化できる場合もあるが、10分以上の保熱時間が必要な熱延鋼帯の場合には、十分に軟質化できない。
一方で、保熱時間が10時間を超える長時間を要する熱延鋼帯を製造する場合には、熱処理にかかる時間全体に対する加熱に要する時間の比率が小さくなる。そのため、従来のバッチ式の熱処理炉(例えば、BAF焼鈍炉等)を用いた場合の熱処理全体の時間と、本発明を適用した場合の熱処理全体の時間との差が小さくなる。
このような点からも、本発明の製造方法は、保熱時間が10分〜10時間の範囲内で軟質化を図る熱延鋼帯に適用するのが好ましい。
また、Mn含有量の大きい熱延鋼帯では、Mnがオーステナイト中に濃化するのに要する時間を確保する観点から、保熱時間は、1時間〜3時間が好ましい。
保熱工程における温度保持の方法には特に限定はなく、例えば、耐熱性および断熱性を有する容器内に収容する、耐熱性および断熱性を有するカバーで覆う等の方法が利用可能である。
例えば、図3に示す保熱装置30は、熱処理コイル28を内部に収納可能な一面が開放された鐘状のカバー32を有する。カバー32は、耐熱性および断熱性を有する材料、例えば、鋼製のカバー内部を、アルミナやシリカ等を含有する繊維状の断熱素材で覆ったものが利用可能である。すなわち、カバー32は、本発明における保熱カバーである。
保熱装置30は、カバー32内に熱処理コイル28を収容して、熱処理コイル28からの熱エネルギーの放散を抑制して、熱処理コイル28の温度低下を抑制しながら、保熱する。
図3に示す例においては、保熱装置30は、補助加熱手段36を有する。補助加熱手段36は、公知の加熱手段であり、保熱装置30内を加熱するものである。
補助加熱手段36を有することで、熱処理コイル28を500℃以上に長時間、保熱することができる。なお、保熱装置30は、熱処理コイル28を所定の時間、所定の温度範囲に保熱できれば、補助加熱手段36は有さない構成であってもよい。
また、保熱装置30は、好ましい態様として、雰囲気制御装置38を備える。
雰囲気制御装置38は、カバー32内に不活性ガスを供給し、また、ガス濃度等を制御するものである。カバー32内を不活性ガス雰囲気とすることで、熱処理コイル28(熱延鋼帯)の表面の酸化を抑制することができる。
このように、保熱工程を、加熱工程および巻取工程を行う処理設備10とは、別の装置(保熱装置30)で行うことで、生産性の低下を抑制することができる。
なお、巻取工程を行う処理設備10から、保熱工程を行う保熱装置30への熱処理コイル28の搬送方法には特に限定はない。例えば、通常の熱処理設備で使用するコイル搬送台車を使用すれば良い。その際、搬送中の熱処理コイル28の温度低下を抑制する観点から、熱処理コイル28を断熱材等で覆いながら搬送するのが好ましい。
また、巻取り機22から保熱装置30までの距離が近い場合(すなわち搬送時間が短い場合)は、搬送手段として、コイル搬送台車に替えて、クレーンやフォークリフト等の重量物の搬送が可能な運搬用機材を使用しても良い。それらの運搬用機材を用いて搬送する場合は断熱性を高めることが困難であるが、短時間の搬送であれば、熱処理コイル28の温度低下を抑えることができる。
また、図3に示す保熱装置30は、熱処理コイル28を1つ収容する構成としたが、これに限定はされず、複数の熱処理コイル28を収容する構成としてもよい。
例えば、図4に示す保熱装置40のように、一面が開放された箱型のピット42と、ピットの開口部を覆うカバー44からなり、複数個の熱処理コイル28をピット42に収納し、開口部をカバー44で覆うような構成であってもよい。
保熱工程を経た熱処理コイル28(以下、保熱コイル29という)は、冷却工程に供される。
〔冷却工程〕
冷却工程は、所定の時間、保熱された保熱コイル29を、冷間圧延工程の前に、冷却する工程である。
冷却工程における保熱コイル29の冷却方法には特に限定はなく、保熱装置にて所定の時間にわたって保熱した後、カバーを撤去して空冷を促進して、冷却しても良く、あるいは、一旦、コイルヤードに保管して冷却しても良い。
あるいは、積極的に冷却媒体(たとえば液体、気体等)を保熱コイルまたは保熱コイルから払出した鋼帯に吹付けて強制冷却を行なってもよい。
なかでも、保熱コイルから払出した鋼帯を搬送しつつ、冷却するのが好ましく、冷却工程と後述の冷間圧延工程とを連続的に行うことが好ましい。
コイルのままでは、内部まで冷却するのに時間がかかるが、保熱コイルから鋼帯を払出して冷却することで、冷却時間を短縮することができ、高強度鋼板の生産性をより向上できる。
図5に、冷却工程と冷間圧延工程とを連続的に行う冷間圧延設備の一例を示す。
冷間圧延設備50は、払出し機52と、溶接機54と、冷却装置56と、ルーパー58と、冷間圧延機60と、切断機62と、巻取り機64と、ガイドローラ66a〜66dとを有する。
冷間圧延設備50は、払出し機52により保熱コイル29aから鋼帯Zを払い出し、冷却装置56と冷間圧延機60とを通過させ、冷間圧延された鋼帯Zを巻取り機64でコイルに巻き取るものである。
払出し機52は、保熱コイル29aを装填されて、鋼帯Zを払出すものである。図示例においては、払出し機52を複数備えて、異なる保熱コイル29aおよび29bを連続的に通板させる。溶接機54は、保熱コイル29aから払出された鋼帯の終端部と、保熱コイル29bから払出された鋼帯の先端部とを接合するものである。
また、巻取り機64の上流側に、鋼帯を切断するための切断機62を備え、また、巻取り機64は巻取り軸68を複数備えて、所定の長さを冷間圧延コイル70に巻き取ると、切断されて、さらに搬送される鋼帯を次の冷間圧延コイルに巻き取って、連続的にコイルに巻き取る構成を有する。
また、ガイドローラ66a〜66dは、払出された鋼帯Zを所定の搬送経路に案内する通常のガイドローラである。
払出し機52により払出された鋼帯Zは、所定の経路で冷却装置56に搬送される。
冷却装置56は、搬送される鋼帯Zを冷却するものである。冷却装置56としては、水スプレー方式の冷却装置や、気体を噴射する方式の冷却装置等の、従来の高強度鋼板の製造で用いられる公知の冷却装置が各種利用可能である。
なお、払出し機52に装入する際の保熱コイル29の温度については特に限定はない。より高温で装入する方が、コイルの温度低下までの待機時間が短縮できるため生産能率の上で有利ではある。しかしながら、装入する際の温度に対応した熱負荷が設備にかかるため、払出し機52の耐熱仕様もそれに応じたものとする必要があり、高温のコイルを装入する設備ほど設備コストが増大する。従って、生産性や経済性等を考慮して決定すればよい。
また、冷却工程における保熱コイル(鋼帯)の冷却温度には特に限定はないが、冷間圧延工程(冷間圧延機60)に到達する時点で、200℃以下となるように冷却するのが好ましい。
冷間圧延工程においては、鋼板温度が高いほど冷間圧延時の変形抵抗が低下して、圧延負荷の軽減を図ることが可能であるが、200℃を超える鋼板を連続的に圧延していくと、圧延ロールのサーマルクラウンが発達して、鋼板の形状が乱れ、場合によっては鋼板の破断が生じるなど、操業トラブルが発生しやすくなる。
上記観点から、冷却工程における冷却温度は、200℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましい。
図5に示す冷間圧延設備50は、好ましい態様としてルーパー58を有する。
ルーパー58は、搬送される鋼帯Zにかかる張力を調整するためのものであり、従来の高強度鋼板の製造で用いられる公知のルーパーが各種利用可能である。
なお、溶接機54、冷却装置56およびルーパー58の配置は、各装置が所定の機能を発現できれば、図5に示した順に限定はされない。例えば、冷却装置56、溶接機54およびルーパー58の順であってもよい。
冷却工程で冷却された鋼帯(保熱コイル)は、冷間圧延工程(冷間圧延機60)に供される。
〔冷間圧延工程〕
冷間圧延工程は、冷却工程で所定の温度以下に冷却された鋼帯に冷間圧延を施し、高強度鋼板を形成する工程である。
冷間圧延工程における冷間圧延の方法および冷間圧延機60は、従来の高強度鋼板の製造方法で利用される冷間圧延の方法および冷間圧延機が各種利用可能である。
ここで、本発明においては、前述のとおり、熱間圧延後、10分以上10時間以下の間、500℃〜700℃の温度に保熱されるので、熱延鋼帯を軟質化することができ、冷間圧延の際の変形抵抗を低減することができる。
以上、本発明の高強度鋼板の製造方法および処理設備について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1〜4]
実施例1〜4としてそれぞれ、表1に示す成分を有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を溶製し、連続鋳造で得られた鋼スラブを用いて高強度鋼板を作製した。
なお、表1には、各成分組成からなる熱延鋼帯を軟質化するために必要な熱処理条件も示す。
〔熱間圧延工程〕
鋼スラブを熱間圧延工程に送給して、加熱炉にて1250℃に加熱し、引き続き、仕上げ圧延機(仕上げ圧延温度870℃)にて熱延鋼帯(板厚2.0mm)として、熱延コイルに巻取った。そして、熱延コイルをコイルヤードにて100℃以下まで空冷した。
〔酸洗工程・加熱工程・巻取工程〕
次いで、熱延コイルを、図2に示す処理設備10に装入した。酸洗槽は通常の塩酸を主体とする酸洗液を使用して、熱延コイル26の熱延鋼帯Zを払出して連続的に搬送しながら、脱スケールを行った。
酸洗された熱延鋼帯Zは、その下流側に配置される加熱装置18によって加熱した。加熱装置としては誘導加熱装置を用いた。なお、加熱温度は、保熱工程における保熱温度+40℃とした。
その後、加熱した熱延鋼帯Zを巻取り機22で熱処理コイル28に巻取った。
〔保熱工程〕
次に、巻き取った熱処理コイル28を、図3に示す保熱装置30内に収納して保熱した。保熱装置30の材質は、厚さ100mmのイソウール(イソライト工業株式会社)とした。
なお、保熱装置30としては、補助加熱手段36および雰囲気制御装置38を有さないものを使用した。
保熱工程における、保熱温度(カバー32内の温度)は、表1に示す温度から表1の温度+40℃までの範囲に保持した。
〔冷却工程・冷間圧延工程〕
保熱工程終了後、保熱コイル29を図5に示す冷間圧延設備50に装入した。
保熱コイル29の鋼帯Zを払出して連続的に搬送しながら、冷却装置56において、水スプレーを用いて鋼帯Zを100℃以下に冷却し、続いて、冷間圧延機60で冷間圧延を行い、高強度鋼板を作製した。
冷間圧延機は入側に溶接機を備えた完全連続式圧延機であり、4重式5スタンドミルである。このような冷間圧延機にてトータル圧下率50%の圧延により板厚1.0mmまで冷間圧延を行った。
[比較例1]
比較例1として、酸洗槽の下流側に加熱装置を有さない処理設備を用いて酸洗工程および巻取工程を行った後に、図6に示すようなバッチ式の焼鈍設備200を用いて加熱工程、保熱工程および冷却工程を行い、冷間圧延機の上流側に冷却装置を有さない冷間圧延設備を用いて冷間圧延工程を行う以外は、実施例1と同様にして高強度鋼板を作製した。
図6に示すバッチ式焼鈍設備200は、スペーサ204を挟んで4段積みした熱延コイル206をベル202内に収納して熱処理を行うものである。
[比較例2]
比較例2として、処理設備10において加熱装置18が酸洗槽16の上流側に設置され、加熱工程の後に酸洗工程を行い、保熱工程を行わない構成とした以外は、実施例1と同様にして高強度鋼板を作製した。
<評価>
〔処理時間〕
表2に、各実施例、比較例において、加熱工程にかかった時間、加熱工程終了後、保熱装置に収納するまでにかかった時間(巻取工程を含む)(「搬送工程1」)、保熱工程にかかった時間、保熱工程終了後、冷却工程開始までにかかった時間(「搬送工程2」)、および、冷却工程にかかった時間を示す。
〔破断〕
冷間圧延工程において、鋼板が破断することなく冷間圧延が可能であったかどうかを評価した。高強度鋼板として合金成分が多く含まれる鋼板は、熱延鋼板を熱処理することで脆化する場合があり、そのような場合には冷間圧延工程のルーパーや形状矯正のためのレベラー等での曲げ変形により破断して、圧延機まで到達しなかった。
破断が生じなかった場合を「A」、破断が生じた場合を「B」と評価した。
〔圧延負荷〕
破断が発生することなく、冷間圧延機による圧延が可能であった鋼板については、熱処理による軟化が十分であったかを圧延負荷で評価した。これは、圧延機の単スタンドあたりの最大荷重の上限を23000kNと設定し、それ以下の圧延荷重で板厚1.0mmまでの圧延が可能であったか否かを評価した。なお、このような最大荷重を設定したのは、これを超える圧延荷重が生じると、圧延機の形状制御能力が不足して、鋼板の形状不良による破断等の操業トラブルが発生するからである。
板厚1.0mmまでの圧延が可能であった場合を「A」、板厚1.0mmまで圧延できなかった場合を「B」と評価した。
測定結果を表2に示す。
表2に示すように、酸洗工程の後、冷間圧延工程の前に、鋼板を連続的に搬送しながら加熱して、加熱した鋼板を冷却することなくコイルに巻取り、巻き取ったコイルの温度を所定の時間、500℃〜700℃に保持する、本発明の高強度鋼板の製造方法である実施例1〜4は、バッチ式の焼鈍設備で熱処理を行う比較例1と比較して、処理時間を大幅に削減でき、熱処理能率を向上できることがわかる。特に、比較例1では、必要な保熱時間の約20倍の処理時間がかかるのに対して、実施例1〜4では、必要な保熱時間の約1.1倍〜1.4倍の処理時間となり、不要な処理時間を削減できることがわかる。
また、比較例1では、加熱工程の時間が長いため、鋼板が脆化して、冷間圧延工程において破断が生じることがわかる。
これに対して、実施例1〜4では、加熱工程の時間が短いので、鋼板が脆化することなく、冷間圧延工程で破断が生じないことがわかる。
また、比較例1で用いたようなバッチ式の焼鈍設備では、実施例1〜4のような成分が異なる鋼帯、すなわち、熱処理条件が異なる鋼帯を一度に収納することはできない。
従って、成分が異なる鋼帯を連続的に熱処理する場合は、順次、熱処理を行うか、複数の焼鈍設備を用意して熱処理を行う必要がある。この点でも、比較例1は、実施例よりも処理能率が大幅に劣っている。
また、保熱工程を行わない比較例2は、十分な軟質化を行うことができず、そのため、冷間圧延工程における圧延負荷が大きくなり、所望の厚さに圧延できないことがわかる。
これに対して、実施例1〜4の高強度鋼板は、冷間圧延工程における圧延負荷が小さく、十分に軟質化されていることがわかる。
以上より本発明の効果は明らかである。
10 処理設備
12、52 払出し機
14、54 溶接機
16 酸洗槽
18 加熱装置
20、62 切断機
22、64 巻取り機
24、66 ガイドローラ
26 熱延コイル
28 熱処理コイル
29 保熱コイル
30、40 保熱装置
32、44 カバー
36 補助加熱装置
38 雰囲気制御装置
42 ピット
50 冷間圧延設備
56 冷却装置
58 ルーパー
60 冷間圧延機
68 巻取り軸
70 冷間圧延コイル
200 パッチ焼鈍設備
202 ベル
204 スペーサ
206 コイル

Claims (6)

  1. 熱間圧延工程、酸洗工程および冷間圧延工程をこの順に有する高強度鋼板の製造方法であって、さらに、前記酸洗工程と前記冷間圧延工程との間に、
    前記酸洗工程で鋼板表面の酸化皮膜を除去した後に、鋼板を連続的に搬送しながら加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程で加熱した前記鋼板をコイルとして巻き取る巻取工程と、
    巻き取った前記コイルの温度を、10分以上10時間以下の間、500℃〜700℃に保持する保熱工程とを有することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
  2. 前記加熱工程において、前記鋼板を500℃〜750℃の温度に加熱する請求項1に記載の高強度鋼板の製造方法。
  3. 前記加熱工程における加熱方法が、誘電加熱方式によるものである請求項1または2に記載の高強度鋼板の製造方法。
  4. 前記保熱工程における保熱方法が、コイル全体を覆う保熱カバーによりコイルの温度低下を軽減するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法。
  5. 前記保熱工程の後、前記冷間圧延工程の前に、前記コイルを、前記冷間圧延工程を行う装置に装入して、前記コイルから払い出された前記鋼板を搬送しつつ200℃以下に冷却する冷却工程を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法における前記酸洗工程、前記加熱工程、および、前記巻取工程を行う高強度鋼板の処理設備であって、
    前記鋼板表面の酸化皮膜を除去する前記酸洗工程を行う酸洗槽と、
    前記鋼板の搬送方向における前記酸洗槽の下流側に配置される、前記鋼板を加熱する加熱装置と、
    前記加熱装置の下流側に配置される、加熱された前記鋼板をコイルとして連続的に巻き取る巻取装置とを有する高強度鋼板の処理設備。
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