以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本実施例における撮像システムの構成について説明する。図1は、撮像システム10の概略構成を示すブロック図である。本実施例において、撮像システム10は、焦点調節装置を備え、レンズ交換可能な一眼レフタイプのデジタルカメラシステムである。撮像システム10は、カメラ本体120(撮像装置)と、カメラ本体120に着脱可能なレンズユニット100(レンズ装置)とを備えて構成される。レンズユニット100は、図1の中央の点線で示されるマウントMを介して、カメラ本体120と接続される。なお本実施例は、これに限定されるものではなく、カメラ本体120とレンズユニット100とが一体的に構成された撮像装置にも適用可能である。
レンズユニット100(撮影光学系)は、第1レンズ群101、絞り兼用シャッタ102、第2レンズ群103、フォーカスレンズ104(フォーカスレンズ群)、および、駆動/制御系を有する。このようにレンズユニット100は、フォーカスレンズ104を含むとともに、被写体像(光学像)を形成する撮影レンズを有する。
第1レンズ群101は、レンズユニット100の先端に配置され、光軸方向OAに進退可能に保持される。絞り兼用シャッタ102は、その開口径を調節することにより撮影時の光量調節を行う。また絞り兼用シャッタ102は、静止画撮影時に露光秒時調節用シャッタとして機能する。絞り兼用シャッタ102および第2レンズ群103は、一体的に光軸方向OAに進退し、第1レンズ群101の進退動作との連動によりズーム機能を実現する。フォーカスレンズ104は、光軸方向OAの進退により焦点調節を行う。
駆動/制御系は、ズームアクチュエータ111、絞りシャッタアクチュエータ112、フォーカスアクチュエータ113、ズーム駆動回路114、絞りシャッタ駆動回路115、フォーカス駆動回路116、レンズMPU117、およびレンズメモリ118を有する。
ズームアクチュエータ111は、第1レンズ群101および第2レンズ群103を光軸方向OAに進退駆動してズーム操作を行う。絞りシャッタアクチュエータ112は、絞り兼用シャッタ102の開口径を制御して撮影光量を調節するとともに、静止画撮影時の露光時間制御を行う。フォーカスアクチュエータ113は、フォーカスレンズ104を光軸方向OAに進退駆動して焦点調節を行うとともに、フォーカスレンズ104の現在位置を検出する位置検出部として機能する。
ズーム駆動回路114は、撮影者のズーム操作に応じてズームアクチュエータ111を駆動する。絞りシャッタ駆動回路115は、絞りシャッタアクチュエータ112を駆動制御して絞り兼用シャッタ102の開口を制御する。フォーカス駆動回路116は、焦点検出結果に基づいてフォーカスアクチュエータ113を駆動制御し、フォーカスレンズ104を光軸方向OAに進退駆動して焦点調節を行う。
レンズMPU117は、レンズユニット100に関する全ての演算および制御を行い、ズーム駆動回路114、絞りシャッタ駆動回路115、フォーカス駆動回路116、および、レンズメモリ118を制御する。またレンズMPU117は、現在のレンズ位置を検出し、カメラMPU125(制御手段)からの要求に対してレンズ位置情報を通知する。レンズメモリ118は、自動焦点調節(AF制御)に必要な光学情報やレンズ駆動可能範囲などの情報を記憶する。またレンズMPU117(駆動可能範囲出力手段)は、カメラMPU125からの要求に応じて、レンズ駆動可能範囲などの情報を通知する。
カメラ本体120は、光学的ローパスフィルタ121、撮像素子122、および、駆動/制御系を有する。光学的ローパスフィルタ121および撮像素子122は、レンズユニット100からの光束により被写体像(光学像)を形成する撮像系である。本実施例において、第1レンズ群101、絞り兼用シャッタ102、第2レンズ群103、フォーカスレンズ104、光学的ローパスフィルタ121、および、撮像素子122により、撮影光学系が構成される。また、焦点調節のために撮影光学系(レンズユニット100)の一部を駆動する必要があるが、本実施例ではフォーカスアクチュエータ113(レンズ駆動手段)がフォーカスレンズ104を駆動する。ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、撮像素子駆動回路123が撮像素子122を駆動することにより焦点調節を行ってもよい。
光学的ローパスフィルタ121は、撮影画像の偽色やモアレを軽減する。撮像素子122は、横方向m画素、縦方向n画素からなるCMOSセンサなどの光電変換素子およびその周辺回路で構成され、各画素からの信号を独立して出力可能に構成されている。また、本実施例の撮像素子122は、被写体像を形成するための複数の撮影画素、および、複数の焦点検出画素を含む。撮像素子122は複数の焦点検出画素を含むことにより、撮像面で位相差検出方式による焦点検出(撮像面位相差AF)が可能となる。このように撮像素子122は、フォーカスレンズ104を含む撮影光学系の互いに異なる瞳領域を通過した光束に基づいて、一対の信号を出力する複数の焦点検出画素を含む。なお、撮像素子122の構成については、詳細に後述する。
カメラ本体120の駆動/制御系は、撮像素子駆動回路123、画像処理回路124、カメラMPU125、表示器126、操作スイッチ群127(操作SW)、メモリ128、撮像面位相差焦点検出部129、および、TVAF焦点検出部130を含む。
撮像素子駆動回路123は、撮像素子122の動作を制御するとともに、撮像素子122から得られた画像信号をA/D変換してカメラMPU125に送信する。また撮像素子駆動回路123は、カメラMPU125の要求に応じて、撮像素子122の駆動フレームレートを切り替える。撮像素子駆動回路123およびカメラMPU125は、駆動フレームレート切り替える出力間隔制御手段、すなわち撮像素子122が一対の信号を出力する間隔を設定する設定手段として機能する。画像処理回路124は、撮像素子122により得られた画像のγ変換、カラー補間、JPEG圧縮などの画像処理を行う。
カメラMPU125は、カメラ本体120に関する全ての演算および制御を行い、撮像素子駆動回路123、画像処理回路124、表示器126、操作スイッチ群127、メモリ128、撮像面位相差焦点検出部129、およびTVAF焦点検出部130を制御する。カメラMPU125は、マウントMの信号線を介してレンズMPU117と接続され、レンズMPU117に対してレンズ位置の取得や所定の駆動量でのレンズ駆動要求を発行する。またカメラMPU125は、レンズMPU117から、レンズユニット100に固有の光学情報を取得する。
カメラMPU125には、カメラ動作(撮像システム10またはカメラ本体120の動作)を制御するプログラムを格納するROM125a、変数を記憶するRAM125b、各種のパラメータを記憶するEEPROM125cが内蔵されている。カメラMPU125は、ROM125aに格納されたプログラムにより、後述する焦点検出を含むAF制御を行う。またカメラMPU125は、撮像面位相差AFにおいて、焦点検出位置の像高が大きい場合にケラレの影響が大きくなって焦点検出の信頼度が低下するのを回避するため、ケラレの影響を低減するための補正を行ってもよい。
表示器126は、LCDなどから構成され、カメラ本体120の撮影モードに関する情報、撮影前のプレビュー画像と撮影後の確認用画像、焦点調節時の合焦状態表示画像などを表示する。操作スイッチ群127は、電源スイッチ、レリーズ(撮影トリガ)スイッチ、ズーム操作スイッチ、撮影モード選択スイッチなどで構成される。メモリ128は、着脱可能なフラッシュメモリであり、撮影済み画像を記録する。なお、メモリ128はフラッシュメモリに限定されるものではなく、着脱可能な汎用のメモリを用いることができる。
撮像面位相差焦点検出部129(焦点検出手段)は、撮像素子122の焦点検出画素からの画素信号に基づいて、位相差検出方式による焦点検出を行う。より具体的には、撮像面位相差焦点検出部129は、撮影光学系(レンズユニット100)の互いに異なる瞳領域(一対の瞳領域)を通過する光束により焦点検出画素で形成される像ずれ量に基づいて撮像面位相差AFを行う。すなわち撮像面位相差焦点検出部129は、一対の信号の位相差(像ずれ量)に基づいてデフォーカス量を検出する。なお、撮像面位相差AFの詳細については後述する。
TVAF焦点検出部130は、コントラスト方式による焦点検出(TVAF)を行う。より具体的には、TVAF焦点検出部130は、画像処理回路124により得られた画像情報の高周波成分に基づいてコントラスト評価値を算出する。コントラスト方式による焦点検出は、フォーカスレンズ104を移動して得られたコントラスト評価値がピークとなるフォーカスレンズ位置を検出することに行われる。このように本実施例の撮像システム10において、撮像面位相差焦点検出部129およびTVAF焦点検出部130は、撮像面位相差AFとTVAFとを組み合わせて焦点検出を行う。カメラMPU125は、その焦点検出結果に基づいてフォーカスレンズ104を駆動制御する(合焦制御を行う)。本実施例の撮像システム10は、状況に応じて、撮像面位相差AFまたはTVAFを選択的に、または、これらを組み合わせて実行することができる。
次に、撮像面位相差AFについて詳述する。図2は、撮像素子122の画素部の平面図であり、被写体像が形成される受光画素(画素部)をレンズユニット100側から見た図を示している。400は、撮像素子122において、横方向にm画素、縦方向にn画素で構成される画素部全体の撮影範囲である。401は画素である。画素401上には、オンチップでベイヤー配列の原色カラーフィルタがそれぞれ形成されており、2行×2列の4画素周期で配列されている。図2においては、煩雑さをなくすため、画素部のうち左上側の10画素×10画素のみを表示し、その他の画素については省略している。
前述のように、撮像素子122は、複数の撮影画素および複数の焦点検出画素を含む。各撮影画素は、被写体像を形成する撮影光学系の射出瞳の全領域を通過する光束を受光し、その光束の受光量に応じた画素信号(被写体像を生成するための画素信号)を出力する。また、各焦点検出画素は、撮影光学系の射出瞳の一部の領域を通過する光束を受光し、その光束の受光量に応じた焦点検出信号(位相差検出方式に用いられる焦点検出信号)を出力する。各画素がベイヤー配列のカラーフィルタにより覆われている場合、撮像素子122は、2行×2列の画素のうち、対角に配置される一対のG画素を撮影画素として残し、R画素およびB画素を一対の焦点検出画素に置き換えて構成されている。このように、撮像素子122は、撮影光学系の射出瞳の互いに異なる領域を通過した光束により形成される少なくとも一対の光学像を光電変換して、少なくとも一対の焦点検出信号を出力することができる。
図3および図4は、図2における画素401(撮影画素および焦点検出画素)の構造をそれぞれ説明する図である。本実施例において、2行×2列の4画素のうち、対角2画素にG(緑色)の分光感度を有する画素を配置し、他の2画素にR(赤色)とB(青色)の分光感度を有する画素を各1個配置したベイヤー配列が採用されている。そして、このベイヤー配列の画素間に、後述する構造の焦点検出画素が配置される。
図3(a)および図4(a)は、2行×2列の画素を示す平面図である。図3(b)および図4(b)は、図1におけるレンズユニット100および撮像素子122を図1中の上側から見た場合の光学断面図である。ここでは、レンズユニット100は、仮想的な1枚のレンズとして図示している。なお、説明に不要な部材については省略している。
図3は、撮影画素の配置および構造を示している。図3(a)は2行×2列の撮影画素の平面図であり、このベイヤー配列による2行×2列の構造が繰り返し配置される。図3(a)のA−A断面図である図3(b)において、MLは各画素の最前面に配置されたオンチップマイクロレンズ、CFRはR(赤色)のカラーフィルタ、CFGはG(緑色)のカラーフィルタである。PD(Photo Diode)は、撮像素子122の光電変換素子である。CL(Contact Layer)は、撮像素子122内の各種信号を伝達する信号線を形成するための配線層である。311はレンズユニット(図1のレンズユニット100に対応)、411はレンズユニット100の射出瞳、Lはレンズユニット311の光軸である。なお図3は、撮像素子122の画素部における中心付近の画素、すなわちレンズユニット311の光軸L上付近の画素構造図である。
ここで、撮影画素のオンチップマイクロレンズMLと光電変換素子PDは、レンズユニット311を通過した光束を可能な限り有効に取り込むように構成されている。換言すると、レンズユニット100の射出瞳411と光電変換素子PDは、マイクロレンズMLにより共役関係にあり、かつ光電変換素子PDの有効面積は大きい面積に設計される。図3(b)における光束410はその様子を示しており、射出瞳411の全領域が光電変換素子PDに取り込まれている。なお、図3(b)ではR画素の入射光束について説明したが、G画素及びB(青色)画素も同様の構造を有する。また、マイクロレンズMLの周辺部材(カラーフィルタCFR、CFG、光電変換素子PD、配線層CL)は、説明を理解し易くするために拡大して表示されているが、実際にはミクロンオーダーの形状である。
図4は、レンズユニット311の水平方向(横方向)に瞳分割を行うための焦点検出画素の平面図および断面図を示す。ここで水平方向とは、図2中において撮像素子122の長手方向である。図4(a)は、焦点検出画素を含む2行×2列の画素の平面図である。画像の記録または観賞のための画像信号(画素信号)を得る場合、G画素で輝度情報の主成分を取得する。これは、人間の画像認識特性は輝度情報に敏感であるためであり、G画素が欠損すると画質劣化が認知されやすい。一方、R画素またはB画素は、色情報(色差情報)を取得する画素であるが、人間の視覚特性は色情報には鈍感である。このため、色情報を取得する画素は多少の欠損が生じても画質劣化は認識され難い。そこで本実施例においては、2行×2列の画素のうち、G画素は撮影画素として残し、R画素とB画素を焦点検出画素に置き換える。この焦点検出画素を、図4(a)においてSHAおよびSHBと示す。
図4(b)は、図4(a)におけるA−A断面図である。マイクロレンズMLおよび光電変換素子PDは、図3(b)に示される撮影画素と同一構造である。なお図4も、撮像素子122のうち中心付近の画素、すなわちレンズユニット311の光軸L上付近の画素の構造を示している。本実施例では、焦点検出画素からの画素信号は画像生成には用いられない。このため、色分離用カラーフィルタの代わりに、透明膜CFW(白色)が配置される。また、撮像素子122において射出瞳411を分割するため、配線層CLの開口部はマイクロレンズMLの中心線に対して所定の方向(一方向)に偏心している。
具体的には、画素SHAの開口部OPHAは、マイクロレンズMLの中心線に対して右側に距離421HAだけ偏心しているため、レンズユニット311の光軸Lを挟んで左側の射出瞳領域422HAを通過した光束420HAを受光する。同様に、画素SHBの開口部OPHBは、マイクロレンズMLの中心線に対して左側に距離421HBだけ偏心しているため、レンズユニット311の光軸Lを挟んで右側の射出瞳領域422HBを通過した光束420HBを受光する。そして、図4(b)から明らかなように、偏心量421HAは偏心量421HBに等しい。このように、マイクロレンズMLと開口部OPの偏心により、レンズユニット311(撮影レンズ)の互いに異なる瞳領域(射出瞳領域422HA、422HB)を通過する光束420HA、420HBを取り出すことが可能である。
以上のような構成を有する複数の画素SHAを水平方向に配列し、これらの画素群から取得した被写体像(画素信号)をA像(A像信号)とする。また、複数の画素SHBも水平方向に配列し、これらの画素群から取得した被写体像(画素信号)をB像(B像信号)とする。そして、取得したA像とB像の相対位置を検出することにより、水平方向に輝度分布を有する被写体像の焦点ずれ量(デフォーカス量)を検出することができる。
なお、図4は撮像素子122の中央付近の焦点検出画素について示している。一方、中央付近以外の焦点検出画素に関しては、マイクロレンズMLと配線層CLの開口部OPHA、OPHBを図4(b)とは異なる状態で偏心させることにより、射出瞳411を分割することができる。具体的には、開口部OPHAを例として説明すると、開口部OPHAの中心と射出瞳領域422HAの中心とを結ぶ線上に略球状のマイクロレンズMLの球芯を合わせるように偏心させる。これにより、撮像素子122の周辺部においても、図4に示される中央付近の焦点検出画素と略同等の瞳分割を行うことができる。なお、取得した像信号に対して、特許文献1に記載の補正処理を行ってもよい。
ところで、画素SHA、SHBにおいては、撮影画面の水平方向に輝度分布を有する被写体、例えば縦線に対しては焦点検出可能である。しかし、垂直方向に輝度分布を有する、例えば横線などの被写体については焦点検出を行うことができない。撮影画面の垂直方向に輝度分布を有する被写体の焦点検出を行うには、撮影光学系の垂直方向にも瞳分割を行う画素を備えるように構成すればよい。本実施例では、後述するように、縦横両方向に焦点検出画素を備える。また、焦点検出画素は、本来の色情報を有さないため、撮影画像の形成の際には、周辺部の画素信号から補間演算することによって信号(撮影信号)を生成する。従って、撮像素子122において、焦点検出画素を連続的に配列するのではなく、離散的に並べる。これにより、撮影画像の画質の低減を抑制することができる。
なお本実施例では、撮像素子122上に撮影画素とは別に焦点検出画素の複数の対を配置し、射出瞳の一部の領域を通過する光束を受光する焦点検出画素の出力信号を用いて焦点検出を実現する。しかしながら、撮像素子122から焦点検出用の出力信号を用いる方法は、これに限定されるものではない。例えば、撮像素子122の1画素が、複数の光電変換部を持つように構成してもよい。このような構成の撮像素子を持つ撮像装置は、特開2007−4471号公報などにも開示されている。
図5は、本実施例における一対の焦点検出信号430a、430bの例を示す図である。一対の焦点検出信号430a、430bは、撮像素子122の焦点検出画素SHA、SHBのそれぞれから得られた画素信号に対して、画像処理回路124による各種の画像処理(補正)が行われた信号である。一対の焦点検出信号430a、430bは、画像処理後、撮像面位相差焦点検出部129へ送られる。
図5において、横軸は連結された信号の画素配列方向、縦軸は信号の強度をそれぞれ示す。ここでは、レンズユニット100が撮像素子122に対してデフォーカスした状態(非合焦状態)である。このため、焦点検出信号430aは左側にずれ、焦点検出信号430bは右側にずれている。撮像面位相差焦点検出部129は、焦点検出信号430a、430bのずれ量(相対ずれ量)を、周知の相関演算などを用いて算出する。これにより、レンズユニット100のデフォーカス量を求めることができる。
カメラMPU125は、レンズMPU117から送信されたフォーカスレンズ104の位置情報および撮像面位相差焦点検出部129から得られるデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ104の駆動量を算出する。その後、カメラMPU125は、フォーカスレンズ104の位置情報に基づいて、レンズMPU117に対して、フォーカスレンズ104を駆動するべき位置情報を送信する。これにより、フォーカスアクチュエータ113などを用いた焦点調節を行うことが可能となる。
図6(a)は、撮影範囲内における焦点検出領域を示す図である。図6(a)に示される焦点検出領域218、219内で撮像素子122から得られた画素信号に基づいて、撮像面位相差AFおよびTVAFが行われる。図6(a)の焦点検出領域は、図4(b)に示される撮影レンズの水平方向(横方向)に瞳分割を行う画素を含む焦点検出領域に加え、撮影レンズの垂直方向(縦方向)に瞳分割を行う画素を含む焦点検出領域を含む。また、図6(a)中の点線で示される長方形は、撮像素子122の画素が形成された撮影範囲217である。撮影範囲217内には、撮像面位相差AFを行うため、縦横それぞれ3方向の焦点検出領域218ah、218bh、218ch、218av、218bv、218cvが設けられている。そして、縦横の焦点検出領域は、互いに交わるように配置され、所謂クロス型の焦点検出領域を構成している。
本実施例では、図6(a)に示されるように、撮影範囲217の中央部と左右2箇所の計3つの領域にてクロス型の焦点検出領域を設けるように構成されている。また、3つの撮像面位相差AFを行う焦点検出領域のそれぞれを包含するように、TVAFを行う焦点検出領域219a、219b、219cが設けられている。TVAF焦点検出部130は、焦点検出領域219a、219b、219cにおいて、図6(a)の水平方向の高周波成分を用いてコントラスト方式の焦点検出(コントラスト検出)を行う。なお、図6(a)では、撮影範囲217の中央部と左右2か所の3つの領域に焦点検出領域を配置した例を示しているが、本実施例はこれに限定されるものではない。任意の位置に複数の焦点検出領域を配置することができる。
次に、本実施例におけるカメラ本体120(撮像装置)の焦点調節および撮影工程(撮像装置の制御方法)について説明する。図7は、撮像装置の制御方法を示すフローチャートであり、撮像装置のライブビュー状態で撮影を行う際のメインフローを示している。図7の各ステップは、主に、カメラMPU125の指令に基づいて実行される。
図7においてライブビュー撮影が開始されると、まずステップS1において、カメラMPU125は、撮像素子駆動回路123を制御することにより撮像素子122の撮像動作を開始して、撮像データ(画素信号)を取得する。続いてステップS2において、カメラMPU125は、ステップS1にて得られた撮像データから、画像データ(撮影信号、すなわち撮影画像)および焦点検出データ(焦点検出信号)を取得する。前述のように、本実施例の撮像素子122は、画像データ(撮影画像)を取得する際に用いられる撮影画素に加えて、焦点検出データ(焦点検出信号)を取得する際に用いられる焦点検出画素を備えており、一度に両方のデータを取得可能である。
続いてステップS3において、カメラMPU125は、ステップS2にて得られた画像データに基づいて、プレビュー画像を表示器126に表示する、所謂ライブビュー表示を行う。撮影者は、このプレビュー画像を目視して撮影時の構図決定を行う。ここで行うライブビュー表示は、撮影者が撮影範囲や撮影条件の確認を行うために行われ、第1の時間間隔(第1の間隔)で更新される。第1の時間間隔は、例えば、33.3ms(30fps)や16.6ms(60fps)に設定される。
続いてステップS4において、カメラMPU125(撮像面位相差焦点検出部129)は、図6に示される3つの焦点検出領域における焦点検出データを用いて焦点検出処理を行う。すなわち撮像面位相差焦点検出部129は、図5に示されるような焦点検出信号のずれ量(第1の間隔で得られた一対の信号の位相差)に基づいて、デフォーカス量を算出するまでの処理を焦点検出処理として行う。
続いてステップS5において、カメラMPU125は、撮影準備開始を示すスイッチSw1のオン/オフを検出する。操作スイッチ群127の一つであるレリーズ(撮影トリガ)スイッチは、そのスイッチの押し込み量に応じて、2段階のオン/オフを検出することが可能である。スイッチSw1は、レリーズ(撮影トリガ)スイッチの1段階目のオン/オフで検出可能に構成されている。ステップS5にてスイッチSw1のオンが検出されない場合、ステップS10に進む。ステップS10において、カメラMPU125は、メインスイッチがオフされたか否かを判定する。メインスイッチがオフされていない場合、ステップS2に戻る。一方、メインスイッチがオフされた場合、本フローを終了する。
一方、ステップS5にてスイッチSw1のオンが検出されると、ステップS6に進む。ステップS6において、カメラMPU125は、焦点検出領域を設定する。焦点検出領域は、撮影者が指示する焦点検出領域に設定することができる。または、ステップS4にて得られた3つの焦点検出領域のデフォーカス量の情報や焦点検出領域の撮影範囲中心からの距離の情報を用いて、カメラMPU125が焦点検出領域を設定するように構成してもよい。一般に、撮影者が意図する被写体は、より撮影距離の短い位置に存在する確率が高く、撮影範囲内の中央に存在する確率が高い。このため、カメラMPU125が焦点検出領域を設定する場合、そのような焦点検出領域が優先的に選択されることが好ましい。
次にステップS7において、カメラMPU125は合焦判定を行う。すなわちカメラMPU125は、選択された焦点検出領域で検出されたデフォーカス量(デフォーカス量の絶対値)が所定量以下(許容値以下)であるか否か、すなわち合焦状態であるか否かを判定する。デフォーカス量が許容値以下である(合焦状態である)と判定された場合、ステップS8に進む。ステップS8において、カメラMPU125は、表示器126に合焦表示(合焦状態であることを示す表示)を行い、ステップS9に進む。
一方、ステップS7において、選択された焦点検出領域で検出されたデフォーカス量が許容値よりも大きい(合焦状態ではない)と判定された場合、ステップS200に進む。ステップS200において、カメラMPU125(撮像面位相差焦点検出部129)は、焦点調節処理を行う。ステップS200の焦点調節処理の詳細については後述する。ステップS200の焦点調節処理が終了すると、ステップS9に進む。
ステップS9において、カメラMPU125は、撮影開始指示を示すスイッチSw2のオン/オフを検出する。操作スイッチ群127の一つであるレリーズ(撮影トリガ)スイッチは、そのスイッチの押し込み量に応じて、2段階のオン/オフを検出することが可能である。スイッチSw2は、レリーズ(撮影トリガ)スイッチの2段階目のオン/オフで検出可能に構成されている。ステップS9にてスイッチSw2のオンが検出されない場合、スイッチSw2のオンが検出されるまでステップS9にて撮影待機状態を維持する。一方、ステップS9にてスイッチSw2のオンが検出されると、ステップS300に進む。ステップS300において、カメラMPU125は、撮影サブルーチンを実行する。ステップS300の撮影サブルーチンの詳細については後述する。
ステップS300にて撮影サブルーチンが終了すると、ステップS10に進む。ステップS10において、カメラMPU125は、メインスイッチがオフされたか否かを判定する。メインスイッチがオフされていない場合、ステップS2に戻る。一方、メインスイッチがオフされた場合、本フローの一連の動作を終了する。
次に、図8を参照して、図7のステップS200の焦点調節処理について説明する。図8は、焦点調節処理を示すフローチャートである。図8の各ステップは、主に、カメラMPU125の指令に基づいて実行される。
焦点調節処理が開始されると、2つの処理が並列して行われる。第1の処理は、ステップS201のフレームレート切替処理である。ステップS201において、カメラMPU125は、合焦判定において合焦状態ではないと判定された場合、第1の時間間隔から、第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔に変更する。すなわちカメラMPU125は、焦点調節処理を高速に行うため、図7のステップS3にて適用される第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で焦点検出データ(焦点検出信号)を取得できるように、撮像素子122の駆動を切り替える。第2の時間間隔は、例えば、8.3ms(120ps)や4.2ms(240fps)に設定される。これに応じて、表示器126におけるライブビュー表示も短い時間間隔(第2の時間間隔)で得られた画像データを用いて行われる。ライブビュー表示の更新間隔は、第2の時間間隔で行ってもよいし、画像データを間引きまたは加算するなどにより第1の時間間隔のまま行ってもよい。
並列して行われる第2の処理は、ステップS202〜S205の処理である。まずステップS202において、カメラMPU125は、事前に得られた焦点検出結果(焦点検出データ)が信頼性の高い結果(データ)であるか否かを判定する。本実施例では、カメラMPU125は、図7のステップS4にて得られた焦点検出結果(デフォーカス量:Def量)に対して判定を行う。焦点検出結果の信頼性とは、2像(A像信号、B像信号)の一致度であり、2像の一致度が良好である場合、一般的に焦点検出結果の信頼性が高い。そこで、複数の焦点検出領域が選択されている場合、信頼性の高い情報(信頼性の高いデータ)を優先的に採用する。ただし、焦点調節結果の信頼性を判定するための指標は、2像の一致度に限定されるものではない。例えば、特開2007−52072号公報に記載されているSレベルなどを指標として用いてもよい。Sレベルは、算出の際に、2像の一致度だけでなく、相関変化量やシャープネスなどを用いている。ステップS202において、カメラMPU125(信頼性判定手段)は、このような信頼性の指標に対して所定の閾値を設けることにより、焦点検出結果(デフォーカス量)の信頼性を判定する。
ステップS202にて焦点検出結果に信頼性があると判定された場合、ステップS203に進む。ステップS203において、カメラMPU125は、検出されたデフォーカス量(検出Def量)に基づいてレンズ駆動(フォーカスレンズ104の駆動)を行う。その後、カメラMPU125はフレームレート切替処理の終了を確認して、ステップS206に進む。
一方、ステップS202にて焦点検出結果に信頼性がないと判定された場合、ステップS204に進む。ステップS204において、カメラMPU125は、検出可能デフォーカス範囲(検出可能Def範囲)を取得する。前述のように、デフォーカス量が大きい場合には焦点調節結果の信頼性が低下する。このため、焦点調節装置として高い検出精度を保てるデフォーカス範囲が制限される。本実施例の撮像システム10は、得られた焦点検出結果の信頼性が高いか否かを、ステップS202にて判定するための閾値に加えて、焦点検出結果の信頼性が、この閾値と同等となる際のデフォーカス範囲の概算値を、検出可能デフォーカス範囲として記憶している。検出可能デフォーカス範囲(検出可能Def範囲)は、EEPROM125c(記憶手段)に記憶されており、カメラMPU125の指示に応じて、EEPROM125cに記憶されている値が出力される。このようにEEPROM125cは、検出可能デフォーカス範囲に関する情報を記憶している。そしてカメラMPU125は、EEPROM125cから得られた検出可能デフォーカス範囲に関する情報に基づいてフォーカスレンズ104を駆動制御する。
図9は、本実施例における検出可能デフォーカス範囲の例を示す図である。検出可能デフォーカス範囲は、フォーカスレンズ104の位置ごと、第1レンズ群101および第2レンズ群103の位置ごと(ズーム状態ごと)に記憶されている。また検出可能デフォーカス範囲は、撮影光学系のF値ごと、焦点検出領域の位置ごとにも記憶されている。このような撮影光学系の特性情報ごとに、検出可能デフォーカス範囲を記憶することにより、高精度な検出可能デフォーカス範囲情報を得ることができる。本実施例において、焦点検出領域は、図6に示されるように、中央部と左右2箇所の計3箇所を備える構成としており、左右の2箇所は、光軸に対して対称である。このため、記憶すべき検出可能デフォーカス範囲は、左右の焦点検出領域については共用することができる。このため、記憶容量を低減させることが可能である。また、図9に示されるように、離散的な情報として検出可能デフォーカス範囲を記憶しているため、実際に使用する際には補間演算などをしてもよい。その場合、より少ない記憶容量を維持しながら、高精度な検出可能デフォーカス範囲の情報を取得することができる。
ステップS204において、カメラMPU125は、現時点のズーム状態、フォーカスレンズ位置、F値、選択されている焦点検出領域に応じて、検出可能デフォーカス範囲を取得する。続いてステップS205において、カメラMPU125は、取得した検出可能デフォーカス範囲の情報に基づいてレンズ駆動を行う。すなわちカメラMPU125は、設定手段によるフレームレート(間隔)の変更処理中に、撮像面位相差焦点検出部129(焦点検出手段)の検出可能デフォーカス範囲に関する情報に基づいてフォーカスレンズ104を駆動制御する。より好ましくは、カメラMPU125は、設定手段による間隔の変更処理中に、信頼性が所定値よりも低いと判定された場合、焦点検出手段の検出可能デフォーカス範囲に関する情報に基づいてフォーカスレンズ104を駆動制御する。このレンズ駆動の詳細については後述する。レンズ駆動が終了すると、カメラMPU125はフレームレート切替処理(ステップS201)の終了を確認して、ステップS206に進む。
ステップS206において、カメラMPU125(撮像面位相差焦点検出部129)は、図7のステップS4と同様に、焦点検出処理を行い、デフォーカス量を算出する。そしてステップS207において、カメラMPU125は、図1のステップS7と同様に、合焦判定を行う。検出されたデフォーカス量が許容値より大きい(合焦状態でない)と判定された場合、ステップS209に進む。ステップS209において、カメラMPU125は、フォーカスレンズ104の位置が駆動可能範囲の端であるか否かを判定する。
ステップS209にてフォーカスレンズ104がまだ駆動可能である場合(すなわち、ステップS209でNoの場合)、ステップS211に進む。ステップS211において、カメラMPU125は、検出したデフォーカス量に基づいてレンズ駆動(フォーカスレンズ104の駆動)を行う。一方、ステップS209にてフォーカスレンズ104の位置が駆動可能範囲の端である場合(ステップS209でYesの場合)、ステップS210に進む。ステップS210において、カメラMPU125は、表示器126に非合焦表示(非合焦状態であることを示す表示)を行う。非合焦表示としては、例えば、焦点検出領域を示す矩形枠を、橙色などの第1の色を用いて表示する。
一方、ステップS207にて、検出されたデフォーカス量が許容値以下(合焦状態である)と判定された場合、ステップS208に進む。ステップS208において、カメラMPU125は、表示器126に合焦表示を行う。合焦表示としては、例えば、焦点検出領域を示す矩形枠を、緑色などの第2の色を用いて表示する。
ステップS208またはステップS209における表示(合焦表示または非合焦表示)を終了すると、ステップS212に進む。ステップS212において、カメラMPU125は、フレームレート切替処理を行い、フレームレートを第2の時間間隔よりも長い第1の時間間隔に変更する。ここでのフレームレート切替処理は、合焦後まで更新間隔の短い状態で撮像素子122を駆動させると電力消費が大きいため、電力消費を低減したほうが好ましいからである。ステップS212のフレームレート切替処理が完了すると、本フロー(焦点調節処理のサブルーチン)は終了する。
本サブルーチンのステップS203またはステップS205にて実行されるレンズ駆動は、ステップS201のフレームレート切替処理中に行われる。このため、焦点検出結果は更新されず、焦点検出を行った時刻とステップS203にてレンズ駆動を行う時刻との間にタイムラグがある場合がある。このタイムラグにより、得られた焦点検出結果や検出可能デフォーカス範囲の情報は、信頼性が低い可能性がある。このため、算出されるレンズ駆動量に対して少なめにレンズ駆動を行ってもよい。これにより、検出された合焦位置の手前までレンズ駆動を行うことができるため、焦点調節処理の高速化を図ることが可能となる。また、合焦位置を行き過ぎる、いわゆるハンチング動作が発生しにくいため、ライブビュー表示において高品位の焦点調節処理を行うことができる。
本実施例は、ステップS201のフレームレート切替処理と、焦点検出結果や検出可能デフォーカス範囲に基づくレンズ駆動を並列に行うように構成されている。ただし、フレームレート切替処理が先に終了した場合、並列して行われているレンズ駆動の終了を待たずに、ステップS206の焦点検出処理を行ってもよい。レンズ駆動中に得られた焦点検出結果に基づきステップS211にてンズ駆動量を更新し、レンズ駆動を継続することにより、より高速な焦点調節処理を行うことができる。
次に、図10を参照して、検出可能デフォーカス範囲に基づくレンズ駆動について説明する。図10は、フォーカスレンズ104の位置(レンズ位置)と検出可能デフォーカス範囲との関係を示す図である。P1、P2はフォーカスレンズ104の位置である。フォーカスレンズ104の位置P1、P2において、検出可能デフォーカス範囲をフォーカスレンズ駆動量に換算して、F1、F2として示している。図10では、至近側から無限遠側までの被写体に焦点調節を行うフォーカスレンズ104の駆動可能範囲として、至近側と無限遠側の駆動範囲端も示している。このようなレンズ駆動可能範囲に関する情報は、カメラMPU125の指示によりレンズユニット100から供給される。
図10(a)において、焦点調節処理開始時のフォーカスレンズ104のレンズ位置はP1であり、検出可能デフォーカス範囲はF1である。図10(a)の状況では、図6(b)に示される中央の焦点検出領域が撮影者によって選択されていると想定する。中央の焦点検出領域では、人物220に対して焦点検出を行うことになる。しかし、F1は人物220に合焦するレンズ位置を含まないため、中央の焦点検出領域で信頼性のあるデフォーカス量を算出できない。このため、図8のステップS202において、信頼性の高い焦点検出結果が得られないと判定され、ステップS204に進む。ステップS204において、カメラMPU125は、検出可能デフォーカス範囲として、F1を取得する。続いてステップS205において、取得した検出可能デフォーカス範囲の情報に基づき、図10(a)のL1までレンズ駆動を行う。その後、フレームレート切替処理の完了を確認し、ステップS206以降の処理を行う。ステップS206以降の処理を行う前に、L1までレンズ駆動を行っているため、人物220に合焦するレンズ位置までのレンズ駆動量が減り、高速に焦点調節を行うことができる。
図10(a)の状況では、検出可能デフォーカス範囲F1の端の位置であるL1までのレンズ駆動をフレームレート切替処理中に行っているが、F1の他方の端の位置までのレンズ駆動も考えられる。本実施例では、焦点調節の対象となる被写体は、至近側に存在する確率が高いということに基づき、至近側の駆動範囲端に向かう方向にレンズ駆動を行った。ただし、フレームレート切替処理中のレンズ駆動方向は、これに限定されるものではない。例えば、撮影シーンの解析などにより、風景など無限遠に合焦位置のある被写体が存在する確率が高いことが検出されている場合、フレームレート切替処理中のレンズ駆動方向を無限遠側の駆動範囲端に向かう方向に設定すればよい。
図10(b)では、焦点調節処理開始時のフォーカスレンズ104のレンズ位置はP2であり、検出可能デフォーカス範囲はF2である。図10(b)の状況では、図6(b)に示される右側の焦点検出領域を撮影者によって選択されていると想定する。右側の焦点検出領域では、家屋221に対して焦点検出を行うことになる。しかし、F2は、家屋221に合焦するレンズ位置を含まないため、右側の焦点検出領域で信頼性のあるデフォーカス量を算出できない。このため、図8のステップS202において、信頼性の高い焦点検出結果が得られないと判定され、ステップS204に進む。ステップS204において、カメラMPU125は、検出可能デフォーカス範囲として、F2を取得する。続いてステップS205において、取得した検出可能デフォーカス範囲の情報に基づき、図10(b)のL2までレンズ駆動を行う。その後、フレームレート切替処理の完了を確認し、ステップS206以降の処理を行う。ステップS206以降の処理を行う前に、L2までレンズ駆動を行っているため、家屋221に合焦するレンズ位置までのレンズ駆動量が減り、高速に焦点調節を行うことができる。
図10(b)の状況では、検出可能デフォーカス範囲F2の至近側範囲の中に、至近側の駆動範囲端を含んでいる。これは、レンズ位置P2に対応する被写体距離より至近側には、焦点調節可能な被写体が存在しないことを示している。このような場合、他方の駆動方向である無限遠側の駆動範囲端に向かう方向にレンズ駆動を行う。同様に、検出可能デフォーカス範囲内に無限遠側の駆動範囲端を含む場合、至近側の駆動範囲端に向かう方向にレンズ駆動を行う。また、検出デフォーカス範囲が、無限遠側と至近側の両方の駆動範囲端を含む場合、焦点調節を行うことなく、非合焦表示を行ってもよい。
次に、図11を参照して、焦点調節に伴うレンズ駆動制御について説明する。図11は、図10(a)の状況における図1のステップS5からステップS200を経て焦点調節処理を行う際のフォーカスレンズ位置と時間との関係を示す図である。図11において、横軸は時間を示し、縦軸はフォーカスレンズ104の位置を示している。図1のステップS5のスイッチSw1を検出した時間をX軸上の0としている。
図11を参照して、AF開始時レンズ位置からAF終了時レンズ位置への焦点調節処理について説明する。まず、カメラMPU125は、時刻T1でスイッチSw1のオンを検出すると、焦点検出領域を設定し(S6)、合焦状態でないことを判定し(S7)、焦点調節処理(S200)を開始する。またカメラMPU125は、フレームレート切替処理(S201)と並行して、信頼性の高い焦点検出結果が得られていないと判定し(S202)、検出可能デフォーカス範囲としてF1を取得する(S204)。その後、カメラMPU125は、図11の時刻T2でレンズ駆動を開始する(S205)。図11の時刻T3で、図10(a)のL1に到達によりレンズ駆動を完了した後、フレームレート切替処理の完了を待ち、再度、焦点検出処理を行う(S206)。その結果、合焦ではないと判定され(S207でNo)、現在のレンズ位置が、レンズ駆動範囲端ではないと判定される(S209でNo)。その後、図11の時刻T4でレンズ駆動を開始する(S210)。レンズ駆動が開始されると、焦点検出処理(S206)、合焦判定(S207)、レンズ駆動範囲端判定(S209)を繰り返し行い、合焦状態でもレンズ駆動範囲端でもない場合、レンズ駆動量が更新され、レンズ駆動が継続される。レンズ駆動量の更新が遅い間隔で行われる場合、レンズ駆動は間欠的にステップ駆動を行うことになる。一方、レンズ駆動量の更新が速い間隔で行われる場合、レンズ駆動は停止することなく継続的に行われる。その後、図11の時刻T5で合焦状態であると判定され、AF終了時レンズ位置に到達するとレンズ駆動を停止し、合焦表示を行い(S208)、フレームレート切替処理を行う(S212)。
本実施例において、図11の時刻T2から時刻T3までの間に行われるレンズ駆動に対して、時刻T4から時刻T5までの間に行われるレンズ駆動の駆動速度を遅く(小さく)している。これは、以下の理由による。すなわち、時刻T2から時刻T3までの間に行われるレンズ駆動は、フレームレート切替処理中に検出可能デフォーカス範囲を用いて行われるため、レンズ駆動中に新たに焦点検出結果が得られることがない。このため、できる限り早くレンズ駆動を終えることが、フレームレート切替処理の完了後に、速やかに焦点検出結果を用いたレンズ駆動に移行できるようにすることになり、焦点調節処理の高速化を可能とする。すなわち、レンズ駆動速度は速いほど好ましい。
一方、時刻T4から時刻T5までの間、焦点検出処理(S206)、合焦判定(S207)、レンズ駆動範囲端判定(S209)を繰り返し行いながら、レンズ駆動が行われる。この間において、高速にレンズ駆動を行うと、焦点検出結果の更新前にレンズを一度停止する必要がある場合が発生する。レンズの駆動と停止とを繰り返しながら焦点調節を行うと、焦点調節中のライブビュー表示の品位が良好でなく、または、レンズの駆動と停止の繰り返しによる停止位置の精度が劣化するなどの弊害が生じる。このため本実施例では、図11の時刻T2から時刻T3の間に行われるレンズ駆動に対して、時刻T4から時刻T5の間に行われるレンズ駆動の駆動速度を遅く(小さく)し、高速な焦点調節と焦点調節中の表示の品位や高精度な焦点調節の両立を図っている。ただし、前述の理由により、時刻T4から時刻T5までの間のレンズ駆動速度を遅くしているため、焦点検出結果の更新が十分に早い場合、この限りではなく、時刻T2から時刻T3までの間のレンズ駆動と同様に、高速にレンズ駆動を行えばよい。
次に、図12を参照して、図7の撮影サブルーチン(ステップS300)について説明する。図12は、撮影サブルーチン(ステップS300)を示すフローチャートである。図12の各ステップは、主に、カメラMPU125の指令に基づいて実行される。
まずステップS301において、カメラMPU125は、光量調節絞りを駆動し、露光時間を規定するメカニカルシャッタの開口制御(絞り・シャッタ駆動)を行う。続いてステップS302において、カメラMPU125は、高画素静止画撮影のための画像読み出し、すなわち全画素の読み出しを行う。続いてステップS303において、カメラMPU125(画像処理回路124)は、読み出した画像信号の欠損画素補間を行う。すなわち、焦点検出画素の出力は撮像のためのRGBカラー情報を有しておらず、画像を得る上では欠陥画素に相当するため、周囲の撮像用画素の情報から補間により画像信号を生成する。続いてステップS304において、画像信号に対してγ補正、色変換、エッジ強調などの画像処理を行い、撮影画像(画像処理後の画像信号)を得る。そしてステップS305において、カメラMPU125は、メモリ128に撮影画像を記録する。
続いてステップ306において、カメラMPU125は、ステップS305にて記録した撮影画像に対応させて、カメラ本体120の特性情報をメモリ128およびカメラMPU125内のメモリに記録する。カメラ本体120の特性情報とは、露光時間情報、現像時の画像処理情報、撮像素子122の撮影画素および焦点検出画素の受光感度分布情報、カメラ本体120内での撮影光束のケラレ情報である。また、カメラ本体120の特性情報は、カメラ本体120とレンズユニット100との取り付け面から撮像素子122までの距離情報、製造誤差情報なども含む。撮像素子122の撮影画素および焦点検出画素の受光感度分布情報は、オンチップマイクロレンズMLおよび光電変換素子PDにより決定されるため、これらの情報を記録してもよい。
続いてステップS307において、カメラMPU125は、ステップS305にて記録された撮影画像に対応させて、レンズユニット100の特性情報をメモリ128とカメラMPU125内のメモリに記録する。レンズユニット100の特性情報としては、例えば、射出瞳411の情報、枠情報、撮影時の焦点距離やFナンバー情報、収差情報、製造誤差情報である。続いてステップS308において、カメラMPU125は、撮影画像に関する画像関連情報をメモリ128およびカメラMPU125内のメモリに記録する。画像関連情報とは、撮影前の焦点検出動作に関する情報や、被写体移動情報、焦点検出動作の精度に関わる情報などである。ステップS307が終了すると、ステップS300の撮影サブルーチンを終了し、メインルーチンのステップS10に進む。
好ましくは、設定手段は、撮像素子122が一対の信号を出力する間隔(フレームレート)として、第1の間隔(第1の時間間隔)または第1の間隔よりも短い第2の間隔(第2の時間間隔)に設定可能である。そしてカメラMPU125(信頼性判定手段)は、第1の間隔から第2の間隔への変更処理中に、第1の間隔で得られた一対の信号の位相差に基づいてデフォーカス量の信頼性を判定する。また好ましくは、カメラMPU125(信頼性判定手段)は、一対の信号の一致度に基づいてデフォーカス量の信頼性を判定する。より好ましくは、撮像面位相差焦点検出部129(焦点検出手段)の検出可能デフォーカス範囲は、カメラMPU125(信頼性判定手段)が信頼性を有すると判定するための閾値に基づいて設定されるデフォーカス範囲である。
好ましくは、カメラMPU125(制御手段)は、撮影光学系の特性情報または焦点検出領域の位置に応じて、検出可能デフォーカス範囲に関する情報に基づいて算出されるフォーカスレンズ104の駆動量を変更する。また好ましくは、焦点検出手段は、焦点検出領域の焦点検出画素から得られる一対の信号の位相差に基づいて、焦点検出領域におけるデフォーカス量を検出する。また好ましくは、制御手段は、第1の被写体よりも至近側に位置する第2の被写体に焦点調節を行うようにフォーカスレンズ104を駆動制御する。また好ましくは、制御手段は、フォーカスレンズ104の駆動可能範囲に関する情報に基づいて、駆動可能範囲を超えない方向にフォーカスレンズ104を駆動する。また好ましくは、制御手段は、第1の間隔から第2の間隔への変更処理中におけるフォーカスレンズ104の駆動速度よりも、第1の間隔から第2の間隔への変更完了後のフォーカスレンズの駆動速度を小さくする。
以上のように、AF開始時に得ているデフォーカス情報の信頼性が低い場合、検出可能デフォーカス範囲情報を用いてレンズ駆動を行うことにより、焦点検出時のデフォーカス状態によらず、高速な焦点調節を行うことができる。
本実施例では、焦点検出手段として、撮像素子内の焦点検出画素の出力信号を用いた位相差検出方式の焦点検出を行ったが、焦点検出方法はこれに限定されるものではない。例えば、コントラスト方式の焦点検出方法を用いてもよい。この場合、AF開始時に、コントラスト評価値の大小によりデフォーカス量が大きいか否かを簡易的に判定することができる。デフォーカス量が大きい場合、フレームレート切替中にレンズ駆動を行う点は、前述と同様に処理をすることにより、同様の効果を得ることができる。また、焦点検出方法として、2つの方法(位相差方式およびコントラスト方式)を組み合わせたハイブリッド式を採用してもよい。AF開始時には、位相差検出方式の焦点検出結果からフレームレート切替中のレンズ駆動を行い、その後はコントラスト方式の焦点検出を行ってもよい。
また本実施例において、撮像素子の駆動をより短い第2の時間間隔に変更し、焦点調節処理を終えた後、再び、撮像素子の駆動をより長い第1の時間間隔に変更するように構成している。ただし、撮像素子の駆動を第1の時間間隔に戻すタイミングは、焦点調節処理を終えた後でなくてもよい。例えば、位相差検出方式の焦点検出を行っている際には、合焦状態近傍に近づくと、検出されるデフォーカス量の精度が向上し、合焦状態の手前で、焦点調節を終える目途が立つ場合がある。このような場合、焦点調節終了の目途が立ち次第、撮像素子の駆動を第1の時間間隔に戻す処理を開始してもよい。コントラスト検出方式の焦点検出を行う場合にも同様に、コントラスト評価値の極大値を検出でき次第、撮像素子の駆動を第1の時間間隔に戻す処理を開始してよい。これにより、更に迅速に、撮影処理に移行することができる。
[その他の実施形態]
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。すなわち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウエア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。この場合、撮像装置の制御方法の手順が記述されたコンピュータで実行可能なプログラムおよびそのプログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成する。
各実施例によれば、デフォーカス量が大きい状態から高速な焦点調節が可能な撮像装置、撮像システム、撮像装置の制御方法、プログラム、および、記憶媒体を提供することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。