以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る虚像表示システム1の構成例として、車両のダッシュボード内に設置して使用されるヘッドアップディスプレイ10を第1の虚像生成装置とし、車両のダッシュボード内に備えられる電子インスツルメントパネル70を第2の虚像生成装置とする虚像表示システム1を例に挙げて説明する。図1は、第1の実施の形態に係る虚像表示システム1の設置態様および第2の虚像生成装置である電子インスツルメントパネル70の構成を模式的に示す図である。虚像表示システム1は、ヘッドアップディスプレイ10および電子インスツルメントパネル70により構成される。ヘッドアップディスプレイ10は、図2に示すように、光学ユニット100と制御装置50とを含む。図1は、車両の進行方向(図1における左方向)を基準として左側のダッシュボード内にヘッドアップディスプレイ10および電子インスツルメントパネル70が配置されて使用する場合を示す図である。以下図2を参照して、ヘッドアップディスプレイ10の概要を説明する。
制御装置50は図示しないCPU(Central Processing Unit)を備え、光学ユニット100に表示させるための画像信号を生成する。制御装置50はまた、図示しない外部入力インタフェースを備えており、ナビゲーション装置やメディア再生装置などの外部装置から出力された画像信号が入力され、その入力された信号に対して所定の処理を行った後、光学ユニット100に出力することもできる。また、制御装置50は、ナビゲーション装置が備えるCPU等の処理装置や可搬型の装置が備えるCPU等の処理装置で実現されてもよい。
光学ユニット100は、制御装置50が生成した画像信号をもとに、ウィンドシールド610に第1の虚像450として表示させる第1の画像表示光445を生成する。このため光学ユニット100は、筐体110の内部に画像投射部210、中間鏡350、中間像形成部360、および投射鏡400を備える。
画像投射部210には、光源、画像表示素子、及び各種光学レンズなどが収納される。画像投射部210は制御装置50が出力した画像信号をもとに第1の画像表示光445を生成して投射する。なお、本実施の形態では画像表示素子として反射型液晶表示パネルであるLCOS(Liquid crystal on silicon)を用いる場合を例示する。
画像投射部210が投射した第1の画像表示光445は中間鏡350で反射される。中間鏡350で反射された第1の画像表示光445は、中間像形成部360に結像される。中間像形成部360で結像した実像に係る第1の画像表示光445は、中間像形成部360を透過し、投射鏡400に投射される。
投射鏡400は凹面鏡であり、中間像形成部360を透過した第1の画像表示光445は投射鏡400によって適切な拡大率としてウィンドシールド610に投射される。ウィンドシールド610に投射された第1の画像表示光445は、ウィンドシールド610によってユーザに向かう光路へ変更される。運転者であるユーザEは、ウィンドシールド610で反射した第1の画像表示光445を外景を背景とした第1の虚像450として、ウィンドシールド610よりも視線方向の前方に認識する。
図3は、本発明の実施の形態に係る光学ユニット100の内部構成を示す図である。以下、図3を参照して、光学ユニット100の内部構成を説明する。
上述したように、光学ユニット100は、筐体110の内側に画像投射部210、中間鏡350、中間像形成部360、および投射鏡400を備える。詳細は後述するが、画像投射部210は、赤色、緑色、または青色の光をそれぞれ発生する3種類の異なる光源を備える。光源はLED(Light Emitting Diode)や半導体レーザー光源を用いて実現できるが、本実施の形態では、光源としてLEDを用いる場合について説明する。
光源は使用時に熱を発生する。このため、光学ユニット100は、光源を冷却するためのヒートシンクを備える。光源は3種類あるため、それらの光源を冷やすために、光学ユニット100の筐体110の外側に、赤色の光源と接続するヒートシンク120a、緑色の光源と接続するヒートシンク120b(図示せず)、および青色の光源と接続するヒートシンク120cを備える。
筐体110はアルミ製のダイキャストである。ここで、青色の光源および緑色の光源をそれぞれ冷却するためのヒートシンク120bおよびヒートシンク120cはともに、筐体110と一体に構成されている。これに対し、赤色の光源を冷やすためのヒートシンク120aは、ヒートシンク120bおよびヒートシンク120cから空間的に離れた場所に設置されるとともに、筐体110とは分離して外付けされている。このため、赤色の光源が発生する熱は、ヒートパイプ25を介してヒートシンク120aまで運ばれる。
次に、図4および図5を参照してヘッドアップディスプレイ10の光学系について説明する。図4は、画像投射部210の内部構成を第1の画像表示光445の光路とともに模式的に示す図である。図5は、中間鏡350、中間像形成部360および投射鏡400を介してウィンドシールド610に投射される第1の画像表示光445の光路を示す図である。
まず、図4を参照して画像投射部210の内部構成を説明する。画像投射部210は、照明部230a、230b、230c(以下総称して照明部230ともいう)、ダイクロイッククロスプリズム244、反射鏡236、フィールドレンズ237、偏光ビームスプリッタ238、位相差板239、検光子241、及び投射レンズ群242を備える。なお、図4では第1照明部230a、第3照明部230cの内部構成の記載を省略し、第2照明部230bの内部構成のみを示すが、それぞれの照明部230は、同様の構成を有する。
照明部230は、光源231、コリメートレンズ232、UV−IR(UltraViolet-Infrared Ray)カットフィルタ233、偏光子234、フライアイレンズ235を備える。光源231は赤色、緑色、青色のいずれかの色の光を発する発光ダイオードからなる。第1照明部230aは、光源として赤色の光を発する発光ダイオードを有する。第2照明部230bは、光源231として緑色の光を発する発光ダイオードを有する。第3照明部230cは、光源として青色の光を発する発光ダイオードを有する。
光源231は、光源取付部243に取り付けられる。光源取付部243は、図示しないヒートシンクと熱的に結合され、光源231の発光に伴い発生する熱を放熱する。光源231が発光した光は、コリメートレンズ232によって平行光に変えられる。UV−IRカットフィルタ233は、コリメートレンズ232を通過した平行光から紫外光及び赤外光を吸収し除去する。偏光子234は、UV−IRカットフィルタ233を通過した光を乱れのないP偏光へと変える。そしてフライアイレンズ235が、偏光子234を通過した光の明るさを均一に整える。
それぞれの照明部230のフライアイレンズ235を透過した光は、ダイクロイッククロスプリズム244に異なる向きから入射される。ダイクロイッククロスプリズム244に入射した赤色、緑色、青色の光は、三色が合成された白色光となって反射鏡236へ向かう。反射鏡236は、ダイクロイッククロスプリズム244により合成された白色光の光路を90度変更する。反射鏡236で反射された光は、フィールドレンズ237によって集光される。フィールドレンズ237が集光した光は、P偏光を透過する偏光ビームスプリッタ238及び位相差板239を介して、画像表示素子240に照射される。
画像表示素子240は、画素毎に赤色、緑色、及び青色のカラーフィルタを備えている。画像表示素子240に照射された光は、各画素に対応する色となり、画像表示素子240の備える液晶組成物によって変調が施され、S偏光の第1の画像表示光445となって偏光ビームスプリッタ238に向けて出射される。出射されたS偏光の光は偏光ビームスプリッタ238で反射され、光路を変えて検光子241を通過した後に投射レンズ群242へ入射される。投射レンズ群242を透過した第1の画像表示光445は、画像投射部210を出て中間鏡350に入射する。
次に、図5を参照して中間鏡350から中間像形成部360および投射鏡400を介してウィンドシールド610に投射される第1の画像表示光445の光路について説明する。画像投射部210の投射レンズ群242から出射された第1の画像表示光445の光路は、中間鏡350によって投射鏡400に向かう光路へ変更される。その途中で、中間鏡350で反射された第1の画像表示光445に基づく実像が中間像形成部360で結像する。
中間像形成部360は、拡散スクリーン362と、凹レンズ364を有する。拡散スクリーン362は、中間像形成部360を透過する第1の画像表示光445に基づく実像を結像させるとともに、投射鏡400へと向かう第1の画像表示光445の配光角ψを制御する。凹レンズ364は、投射鏡400へと向かう第1の画像表示光445の主光線の方向を制御し、中間像形成部360を透過する前後の第1の画像表示光445がなす角度θを調整する。
中間像形成部360を透過した第1の画像表示光445は、投射鏡400により反射されウィンドシールド610に投射される。ウィンドシールド610に投射された第1の画像表示光445は、ウィンドシールド610によってユーザに向かう光路へ変更される。これにより、ユーザは上述したように、ウィンドシールド610を介して第1の画像表示光445に基づく第1の虚像450を前方に視認することができる。したがって、ウィンドシールド610は、第1の虚像提示面としての機能を有することとなる。ウィンドシールド610は、運転者であるユーザから見て、第1の虚像450の背景となる外景を安全に視認可能なように、外光がほぼ透過するように構成されている。投射鏡400により反射された第1の画像表示光445は、ウィンドシールド610に代えて、半透過板である図示しないコンバイナに投射されてもよい。この場合、図示しないコンバイナを、ウィンドシールド610と同様、第1の虚像450を提示する第1の虚像提示面としてもよい。
以上の構成とすることで、ユーザは、制御装置50から出力された画像信号に基づく虚像を、ウィンドシールド610等を介して現実の風景である外景に重畳して視認することができる。
つづいて、図6および図7を参照しながら、本実施の形態に係る中間像形成部360の機能について詳述する。図6は、異なる高さの視点E1、E2に対して第1の虚像450を提示する場合の第1の画像表示光445の光路を示す図である。図7は、中間像形成部360により配光される第1の画像表示光445を示す図であり、図6の中間像形成部360と投射鏡400の間の光路を拡大して示したものである。
図6に示すように、運転者であるユーザの視点E1、E2は、運転者の身長や、着座位置により上下方向に変わる。ユーザの視点が変わるような場合においても、第1の虚像450の上端部451から下端部452までの全体を視認できることが好ましい。また、車両前方を見る視線方向C1、C2の真正面に第1の虚像450を提示するのではなく、上下方向に少しずらした位置に第1の虚像450を提示すると、必要なときに視線方向を少しずらして第1の虚像450を参照することができるのでユーザにとって使いやすい。
そこで、本実施の形態では、中間像形成部360として拡散スクリーン362と凹レンズ364を組み合わせることにより、中間像形成部360を透過した第1の画像表示光445の主光線の向きと配光角を制御し、第1の虚像450の視認性を高める。特に、凹レンズ364を上下方向に偏心して設けることにより、第1の虚像450の提示位置を上下方向にずらして、見やすい位置に第1の虚像450を提示することができる。なお、本実施の形態では、第1の虚像450を視線方向C1、C2に対して下方に提示する場合の構成を示すが、凹レンズ364の偏心の態様を変えることにより、第1の虚像450を異なる位置に提示することとしてもよい。
まず、図6を参照して視点E1、E2の違いによる第1の画像表示光445の経路の相違について詳述する。第1視点E1は、第1の虚像450の全体を視認することのできる上限位置であり、第2視点E2は第1の虚像450の全体を視認できる下限位置である。よって、第1視点E1から第2視点E2の間の範囲であれば、ユーザは第1の虚像450の全体を視認することができる。
図6において、実線で示す光A1、A2は、第1の虚像450の上端部451をユーザに提示するための光線を示しており、中間像形成部360に結像される実像370の上端部371から出射される光が投射鏡400およびウィンドシールド610に反射してユーザの視点E1、E2に到達する。第1視点E1に向かう光A1は、投射鏡400の第1反射位置401で反射され、第2視点E2に向かうA2は、投射鏡400の第2反射位置402で反射される。なお、本実施の形態で示す光学系においては、投射鏡400とウィンドシールド610とで第1の画像表示光445を反射する構成としているため、中間像形成部360には上下反転した実像が結像される。
一方、破線で示す光B1、B2は、第1の虚像450の下端部452をユーザに提示するための光線を示しており、中間像形成部360に結像される実像370の下端部372から出射される光が投射鏡400およびウィンドシールド610に反射して視点E1、E2に達する。第1視点E1に向かう光B1は、投射鏡400の第3反射位置403で反射され、第2視点E2に向かう光B2は、投射鏡400の第4反射位置404で反射される。
つづいて図7を参照して、中間像形成部360により上下方向に配光される第1の画像表示光445について詳述する。図7は、図6の中間像形成部360と投射鏡400の間の光路を拡大して示したものである。実像370の上端部371として結像する光Aは、拡散スクリーン362に直交する方向(z方向)を基準に、凹レンズ364に入射して角度θ1だけ上方向(y方向)に方向を変えて透過する。その後、拡散スクリーン362に実像として結像するとともに拡散されて、配光角ψ1を有する第1の画像表示光445として投射鏡400に向かう。その結果、中間像形成部360に入射する光Aは、主光線A0を中心にして、第1反射位置401に向かう光A1と、第2反射位置402に向かう光A2の間で配光する第1の画像表示光445となる。
同様に、実像370の下端部372として結像する光Bは、凹レンズ364に入射して角度θ2だけ上方向(y方向)に方向を変えて透過する。その後、拡散スクリーン362に実像として結像するとともに拡散されて、配光角ψ2を有する第1の画像表示光445として投射鏡400に向かう。その結果、中間像形成部360に入射する光Bは、主光線B0を中心にして、第3反射位置403に向かう光B1と、第4反射位置404に向かう光B2の間で配光する第1の画像表示光445となる。
ここで、本実施の形態の凹レンズ364は、z方向を基準として上下方向(図5における上下方向)に偏心して設けられる。より詳細には、凹レンズ364の光軸の位置は、拡散スクリーン362の中心位置よりも下方に位置される。そのため、凹レンズ364の光軸に近い上端部371から出射される主光線A0の角度θ1よりも、凹レンズ364の光軸から遠い下端部372から出射される主光線B0の角度θ2の方が大きくなる。また、本実施の形態の凹レンズ364は、凹レンズ364の光軸が凹曲面に含まれないように構成されるため、主光線A0およびB0は、いずれも上方向(y方向)に傾いて出射される。
つづいて図8から図11を参照しながら、本実施の形態における拡散スクリーン362について詳述する。図8は、拡散スクリーン362の構成を模式的に示す側面図であり、図9は、拡散スクリーン362の構成を示す上面図である。透過型スクリーンである拡散スクリーン362は、二枚の光拡散板380a、380bを備える。光拡散板380a、380bは、片面に複数のマイクロレンズが配列されたマイクロレンズアレイである。本実施の形態では、レンズアレイを構成するマイクロレンズの形状がそれぞれ異なる二枚の光拡散板380a、380bを組み合わせて用いる。特性の異なるマイクロレンズアレイを組み合わせることにより、拡散スクリーン362を透過した光の配光特性を向上させて視認性の高い第1の画像表示光445を提供する。
第1光拡散板380aは、第1平坦面381aと、第1平坦面381aに背向し、第1のマイクロレンズ383aが複数配列される第1レンズアレイ面382aを有する。同様に、第2光拡散板380bは、第2平坦面381bと、第2平坦面381bに背向し、第2のマイクロレンズ383bが複数配列される第2レンズアレイ面382bを有する。第1光拡散板380aおよび第2光拡散板380bは、複屈折性を有しないか、複屈折性の少ない材料で構成されることが望ましく、例えば、ポリカーボネート(PC)などの樹脂材料で構成される。
第1光拡散板380aは、第1レンズアレイ面382aが凹レンズ364と対向するように配置され、第2光拡散板380bは、第2レンズアレイ面382bが第1平坦面381aと対向するように配置される。これにより、拡散スクリーン362に入射する光Aは、第1レンズアレイ面382a、第1平坦面381a、第2レンズアレイ面382b、第2平坦面381bの順に透過する。
第1光拡散板380aおよび第2光拡散板380bは、第1レンズアレイ面382aと第2レンズアレイ面382bとの距離Wが所定の値となるように配置される。その距離Wは、200μm〜400μm程度とすればよく、好ましくは、250μm〜300μm程度の範囲とすればよい。第1レンズアレイ面382aと第2レンズアレイ面382bの距離Wをこの範囲に設定することにより、マイクロレンズの周期的な配列によるモアレの発生を防ぎ、かつ、二枚の光拡散板を用いることにより像が二重になってしまう影響を抑えることができる。ここで、モアレとは、干渉縞のことをいい、規則正しく繰り返される模様を複数重ね合わせたときに、それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様のことをいう。
なお、図8および図9では、説明の便宜上、第1光拡散板380aと第2光拡散板380bの間に隙間を空けているが、本実施の形態では、第1平坦面381aと第2レンズアレイ面382bとが接するように、第1光拡散板380aと第2光拡散板380bとが積層される。このとき、第1光拡散板380aの厚さを調整することで、第1レンズアレイ面382aと第1レンズアレイ面382aの間の距離Wが調整される。したがって、所定の距離Wが保たれるようにするには、第1光拡散板380aの厚さを200μm〜400μm程度にすればよい。
第1光拡散板380aおよび第2光拡散板380bは、結像される第1の画像表示光445の画像サイズに合わせて、図8に示す上下方向(y軸方向)の幅Lyと、図9に示す左右方向(x軸方向)の幅Lxとが異なるように構成される。具体的には、上下方向の幅Lyよりも左右方向の幅Lxの方を長くして、左右方向に長い画像が提示できるようにする。人間の視野角の特性上、左右方向に長い画像の方が見やすいためである。
また、第1光拡散板380aおよび第2光拡散板380bは、図8に示す上下方向の配光特性(配光角ψy)と図9に示す左右方向(水平方向)の配光特性(配光角ψx)とが異なるように構成される。具体的には、上下方向の配光角ψyよりも水平方向の配光角ψxを大きくして、第1の画像表示光445により提示される画像全体が視認できる視線位置の範囲を、水平方向に大きくする。運転者であるユーザの視点位置は、着座した状態において上下方向よりも水平方向に大きく動くため、水平方向の視認範囲を広くとることで視認性が高まるためである。
本実施の形態では、水平方向の配光角ψxが大きくなるように、レンズアレイ面382a、382bを構成するマイクロレンズ383a、383bの特性を選択している。本実施の形態では、第1のマイクロレンズ383aの形状を円形にする一方で、第2のマイクロレンズ383bの形状を楕円形にすることにより、水平方向の配光角ψxを大きくする。以下、図10および図11を参照しながら、このような特性を実現する第1のマイクロレンズ383aおよび第2のマイクロレンズ383bの形状について説明する。
図10(a)は、第1レンズアレイ面382aの構造を示す上面図である。図10(b)は、第1レンズアレイ面382aの構造を示す断面図であり、図10(a)のX−X線断面を示す。第1レンズアレイ面382aは、輪郭384aの形状が正六角形である第1のマイクロレンズ383aを六方格子状に配列することにより構成される。また、第1レンズアレイ面382aは、第1のマイクロレンズ383aがx軸方向に並ぶように構成される。第1のマイクロレンズ383aのx方向の幅Wxaは、10μm〜30μm程度とすればよく、例えば、20μm程度とすればよい。一方、第1のマイクロレンズ383aのy方向の幅Wyaは、x方向の幅Wxaに対応して輪郭384aが正六角形の形状となる幅とすればよく、例えば、23μm程度とすればよい。
第1のマイクロレンズ383aは、球面からなる曲面によりレンズを構成する。その結果、第1のマイクロレンズ383aの頂点386aの付近における等高線387aの形状は円形または略円形となる。ここで、第1のマイクロレンズ383aの等高線387aの形状とは、z方向に垂直なxy平面で第1のマイクロレンズ383aを切断した場合の断面形状に対応する。等高線387aのx方向の径Rxaとy方向の径Ryaは、円形であることから同じ長さであり、これらの比により得られる第1の楕円率ea=Rya/Rxaは、1または1に近い値である。
なお、第1のマイクロレンズ383aの等高線387aの形状は、必ずしも真円である必要はなく、第1レンズアレイ面382aを形成する製造工程の加工精度などにより、真円から少しずれた円に近い形状であってもよい。ここでいう円形とは、x方向の径Rxaとy方向の径Ryaとがほぼ等しいことを言い、x方向の径Rxaとy方向の径Ryaとが異なることにより明らかに楕円と言える形状ではないことを意図する。
図11(a)は、第2レンズアレイ面382bの構造を示す上面図である。図11(b)は、第2レンズアレイ面382bの構造を示す断面図であり、図11(a)のX−X線断面を示す。第2レンズアレイ面382bは、第1レンズアレイ面382aと同様、第2のマイクロレンズ383bが六方格子状に配列され、x軸方向に第2のマイクロレンズ383bが並ぶように構成される。
その一方で、第2のマイクロレンズ383bの輪郭384bは、正六角形ではなく、正六角形をx方向に圧縮したような六角形状を有する。その結果、第2のマイクロレンズ383bは、楕円面からなる曲面によりレンズを構成し、頂点386bの付近における等高線387bの形状は楕円形となる。また、x方向に圧縮された楕円形であることから、等高線387bのx方向の径Rxbとy方向の径Rybは異なる長さとなり、x方向が短軸、y方向が長軸となる。また、長軸と短軸の比により得られる第2の楕円率eb=Ryb/Rxbは、1よりも大きな値となる。つまり、第2の楕円率ebは、第1のマイクロレンズ383aにおける第1の楕円率eaと異なる値をとる。
第2のマイクロレンズ383bのx方向の幅Wxbは、第1のマイクロレンズ383aのx方向の幅Wxaと同様、10μm〜30μm程度とすればよいが、第1のマイクロレンズ383aのx方向の幅Wxaとは異なる値とすることが望ましい。例えば、第1のマイクロレンズ383aのx方向の幅Wxaを20μmとした場合、第2のマイクロレンズ383bのx方向の幅Wxbは、15〜19μm程度とすればよい。一方、第2のマイクロレンズ383bのy方向の幅Wybは、等高線387bの楕円形状が第2の楕円率ebをとるようにx方向の幅Wxbに対応した幅とすればよい。例えば、第2のマイクロレンズ383bのy方向の幅Wybは、21μm〜30μm程度とすればよい。
第2のマイクロレンズ383bは、x方向に短軸を有し、y軸方向に長軸を有する楕円形状のレンズであるため、x方向の曲率がy方向の曲率よりも大きくなる。その結果、第2のマイクロレンズ383bに入射する光は、曲率の低いy方向と比べて、曲率の高いx方向に大きく拡散することとなり、x方向の配光角が大きくなることとなる。これにより、上下方向の配光角ψyよりも水平方向の配光角ψxを大きくすることができる。
つづいて、図12から図14を参照しながら、本実施の形態に係る拡散スクリーン362の配光特性について示す。図12(a)は、比較例に係る拡散スクリーン392を模式的に示す図であり、図12(b)は、実施の形態にかかる拡散スクリーン362を模式的に示す図である。比較例に係る拡散スクリーン392は、本実施の形態に係る第1光拡散板380aのみにより構成される透過型スクリーンである。まず、比較例に係る拡散スクリーン392の配光特性を図12を用いて示し、拡散スクリーン392における課題について説明する。つづいて、本実施の形態に係る拡散スクリーン362の配光特性を図13を用いて示す。
図13は、比較例に係る拡散スクリーン392を透過した光の配光分布を示すグラフである。本グラフは、図12(a)に示す入射角θinを、−20度、0度、20度とした場合における透過光の配光特性を示す。図示されるように、いずれの入射角θinにおいても、ピーク付近の形状がギザギザとした配光分布が見られる。これは、複数のマイクロレンズが周期的に配列されるため、マイクロレンズにより回折された透過光が干渉して、特定の方向における強度が高まるためと考えられる。このような回折ピークが見られると、第1の画像表示光445により提示される画像の輝度にムラができ、視認性の低下につながる。
また、入射角θinが−20度または20度の場合には、左右非対称な配光分布が見られる。中心(0度)に近い角度では、ピーク位置に向けて強度が緩やかに高まるのに対し、中心より離れた角度(−60度、60度)からピーク位置に向けて強度が急峻に高まる。このように非対称な配光分布を有することとなると、視線位置を動かした場合に、第1の虚像450の一部範囲の輝度が急激に変化するように見えてしまい視認性の低下につながる。第1の虚像450の視認範囲を広げるためには、第1の画像表示光445を透過型スクリーンに斜めに入射させる必要があるため、斜入射させた場合であっても透過光の配光分布が左右対称であることが望ましい。
図14は、実施の形態に係る拡散スクリーンを透過した光の配光分布を示すグラフである。本グラフは、図12(b)に示す入射角θinを、−20度、0度、20度とした場合における透過光の配光特性を示す。比較例の場合とは異なり、いずれの入射角θinにおいても、ピーク付近にギザギザの形状が見られず、ガウス分布に近いなだらかな形状の配光分布となっている。これは、マイクロレンズの形状が異なる二枚のマイクロレンズアレイを組み合わせているため、マイクロレンズアレイを一枚だけ用いる場合と比べて回折による干渉効果を緩和できたためと考えられる。これにより第1の虚像450の輝度のムラを抑えて視認性を高めることができる。
また、入射角θinが−20度または20度の場合においても、配光分布が左右対称に近い形状となることがわかる。これにより、視線位置を動した場合であっても、第1の虚像450の輝度を均一にすることができる。これにより、視線位置が動く前と動いた後に見える画像の間での輝度の変化量を少なくして、視認性を高めることができる。
また、二枚のマイクロレンズアレイを組み合わせることにより、マイクロレンズアレイを一枚だけ用いる場合と比べて、透過光の配光角ψの幅を広げることができる。ここでの配光角ψの幅とは、例えば、グラフに示す配光分布の半値全幅に相当する角度の値である。透過光の配光角ψを広げることで、第1の虚像450の全体を視認できる視線位置の範囲を広くすることができる。これにより、視線位置が移動する場合であっても、画像全体を提示することができるため、視認性を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る拡散スクリーン362において、第1レンズアレイ面382aと第2レンズアレイ面382bの間の距離を、200μm〜400μm程度としている。一般に、周期的な配列構造を有するマイクロレンズアレイを二枚組み合わせると、モアレが発生しやすい。また、周期性のない拡散スクリーンを二枚組み合わせた場合であっても、それぞれのスクリーンに結像する像が重なり合って二重像を形成し、第1の虚像450の解像度が低下する要因となりうる。本実施の形態では、レンズアレイ面の間の距離を約400μm以下としているため、二重像の発生による解像度の低下を抑えることができる。
一方で、第1レンズアレイ面382aと第2レンズアレイ面382bの間の距離を小さくしすぎると、第1レンズアレイ面382aにより回折される光の干渉効果を、第2レンズアレイ面382bによって十分に緩和できなくなるおそれがある。本実施の形態では、レンズアレイ面の間の距離を約200μm以上とすることで、マイクロレンズアレイを一枚だけ用いる場合に発生する回折ピークの発生を抑制することができる。また、周期的な配列のマイクロレンズアレイを組み合わせることによるモアレの発生も抑制することができる。つまり、二つのレンズアレイ面の距離を200μm〜400μm程度とすることで、解像度の低下を抑えつつ、輝度ムラやモアレの発生を抑えて、視認性の高い画像を提示することができる。
以下、本実施の形態における中間像形成部360により奏する効果について述べる。
本実施の形態における中間像形成部360は、主光線A0、B0に対して所定の配光角ψ1、ψ2を有した第1の画像表示光445となるよう主光線の配光角を制御する拡散スクリーン362を有する。このため、視点位置が移動する場合であっても所定範囲内であれば一定の明るさの虚像を提示することができる。また、拡散スクリーン362として、配光角ψ1、ψ2が投射鏡400の第1反射位置401から第2反射位置402の範囲内、または第3反射位置403から第4反射位置404の範囲内となる特性のものを選択することにより、第1の画像表示光445を高効率に利用することができる。この反射位置の範囲よりも配光角が狭くなってしまうと、明るい第1の虚像450を提示できる視点の範囲が狭くなってしまう一方で、この反射位置の範囲よりも配光角が広くなってしまうと、投射鏡400で反射されない第1の画像表示光445の割合が増えて、ユーザに提示される第1の虚像450が暗くなってしまうためである。このように、配光角ψ1、ψ2を適切に制御することにより、明るい第1の虚像450を高効率でユーザに提示することができ、第1の虚像450の視認性を高めることができる。
また、中間像形成部360は、中間像形成部360を透過した主光線A0、B0の方向を制御する凹レンズ364を有する。中間像形成部360として凹レンズ364を設けることにより、中間像形成部360と投射鏡400の間の距離Dを短くしなければならない場合であっても、ユーザに提示する第1の虚像450をより大きくすることができる。したがって、凹レンズ364を設けることにより、光学ユニット100の大きさを小型化しつつ、より大きな第1の虚像450を提示することができ、第1の虚像450の視認性を高めることができる。
また、中間像形成部360は、凹レンズ364が上下方向に偏心して設けられる。これにより、第1の虚像450をユーザの視線方向に対して真正面ではなく、上下方向に少しずらした位置に提示することができる。第1の虚像450の上端部451を提示するための光と、第1の虚像450の下端部452を提示するための光との間に角度差をつけることができるためである。第1の虚像450を上下方向にずらすことによって、ユーザにとって見やすい位置に第1の虚像450を提示することができ、第1の虚像450の視認性を高めることができる。また、上下方向に偏心させた凹レンズを用いることにより、光学ユニット100をより小型化することができる。
また、中間像形成部360は、拡散スクリーン362として、マイクロレンズアレイである二枚の光拡散板380a、380bを組み合わせて用いる。これにより、ユーザに角度差をつけた第1の画像表示光445を提示するために拡散スクリーン362に斜めに光を入射させる場合であっても、拡散スクリーン362を透過した後の光の配光分布を整えることができる。また、第1の虚像450として提示される画像の輝度ムラを抑えつつ、透過光の配光角を大きくして第1の虚像450の全体を視認できる視線位置の範囲を広げることができる。その結果、第1の虚像450の視認性を高めることができる。
また、拡散スクリーン362は、円形状を有する第1のマイクロレンズ383aで構成される第1レンズアレイ面382aと、楕円形状を有する第2のマイクロレンズ383bで構成される第2レンズアレイ面382bの組み合わせにより構成される。マイクロレンズの形状が異なる二枚の光拡散板380a、380bを組み合わせることで、回折光の干渉の影響による輝度ムラを抑えることできる。また、第2のマイクロレンズ383bを、x方向に短軸を有しy方向に長軸を有する楕円形状とすることで、x方向の配光角をy方向よりも大きくすることができる。これにより、視認可能な範囲をx方向(左右方向)に広げることができ、第1の虚像450の視認性を高めることができる。
また、拡散スクリーン362は、第1レンズアレイ面382aと第2レンズアレイ面382bの距離Wが所定の値となるように構成される。この距離Wを一定の範囲にすることにより、二重像やモアレの発生による解像度の低下を抑えつつ、輝度ムラの少ない第1の虚像450を提示することができる。これにより、第1の虚像450の視認性を高めることができる。
つづいて、図15を参照しながら変形例に係る拡散スクリーン362について示す。図15(a)〜(c)は、変形例に係る拡散スクリーン362の構成を模式的に示す側面図である。
図15(a)は、変形例1に係る拡散スクリーン362である。変形例1では、第1レンズアレイ面382aと第2平坦面381bとが対向するように二枚の光拡散板380a、380bを積層させている。その結果、拡散スクリーン362に入射する光は、第1平坦面381a、第1レンズアレイ面382a、第2平坦面381b、第2レンズアレイ面382bの順に透過する。このような構成であっても、第1レンズアレイ面382aと第2レンズアレイ面382bの間の距離Wを一定の範囲にすることで、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
図15(b)は、変形例2に係る拡散スクリーン362である。変形例2では、第1平坦面381aと第2平坦面381bとが接するように二枚の光拡散板380a、380bが積層される。その結果、拡散スクリーン362に入射する光は、第1レンズアレイ面382a、第1平坦面381a、第2平坦面381b、第2レンズアレイ面382bの順に透過する。このとき、第1レンズアレイ面382aと第2レンズアレイ面382bの間の距離Wを一定の範囲となるように、第1光拡散板380aの厚さと第2光拡散板380bの厚さの合計値が距離Wと等しくなるように厚さが調整される。変形例2においても、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、変形例2において、二枚の光拡散板380a、380bは別体である必要はなく、代わりに、両面にレンズアレイ面を形成した一枚の光拡散板を用いてもよい。この場合、一方の面には第1レンズアレイ面382aが形成され、他方の面には第2レンズアレイ面382bが形成される。また、この光拡散板の厚さは、距離Wと等しくなるように調整される。このような構成としても、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
図15(c)は、変形例3に係る拡散スクリーン362である。変形例3では、第1レンズアレイ面382aと第2レンズアレイ面382bとが対向するように配置されるとともに、その間に透光板380cが設けられる。透光板380cは、両面に平坦面が設けられ、ポリカーボネートなどの透明な樹脂材料で構成される。透光板380cは、第1レンズアレイ面382aと第2レンズアレイ面382bの距離Wを一定の範囲に保つ役割を有し、その厚さが距離Wと同じに等しくなるように調整される。このような構成としても、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
図1に戻り、虚像表示システム1を構成する電子インスツルメントパネル70の構成について説明する。本実施の形態においては、ヘッドアップディスプレイ10が提示する第1の虚像450に加えて、電子インスツルメントパネル70によって第2の虚像750が提示される。第1の虚像450および第2の虚像750は、虚像提示面であるウィンドシールド610または凹面鏡740よりも遠方に画像があるように見える。
運転者であるユーザは、視線方向を移動させることにより、ウィンドシールド610を介して提示される第1の虚像450とスモーク板710を介して提示される第2の虚像750の双方を見ることなる。本実施の形態では、ユーザの視点Eから見て第1の虚像450までの距離を第1距離D1とし、第2の虚像750までの距離を第2距離D2とした場合に、第1距離D1と第2距離D2とが同一またはほぼ同一の距離となるように第1の虚像450および第2の虚像750を表示する。言い換えれば、ユーザの視点Eから見た第1の虚像450および第2の虚像750の焦点位置がほぼ同じとなるようにする。これにより、運転中などに視線方向を移動させての第1の虚像450および第2の虚像750双方を見る場合におけるユーザの目の焦点移動を少なくし、視線移動に伴うユーザの負担を軽減させる。
電子インスツルメントパネル70の構成は、ヘッドアップディスプレイ10と同様であり、ウィンドシールド610により第1の画像表示光445を反射して第1の虚像450を提示する代わりに、スモーク板710を透過した第2の画像表示光745により第2の虚像750を提示する点で相違する。
電子インスツルメントパネル70は、画像投射部720、中間鏡735、中間像形成部736、凹面鏡740およびスモーク板710を備える。電子インスツルメントパネル70の画像投射部720、中間鏡735、中間像形成部736、凹面鏡740は、それぞれ上述したヘッドアップディスプレイ10の画像投射部210、中間鏡350、中間像形成部360、投射鏡400と同様のものである。
電子インスツルメントパネル70は、画像投射部720が生成する第2の画像表示光745を中間像形成部736に実像として結像させ、中間像形成部736に結像した実像に係る第2の画像表示光745を凹面鏡740により適切な拡大率として反射し、スモーク板710に投射する。これによりユーザは、スモーク板710を介して凹面鏡740により反射された画像を視認する。特に、中間像形成部736に結像された実像を10倍以上の大きさに拡大可能な形状を有する凹面鏡740を用いることで、電子インスツルメントパネル70を小型化することができる。
ユーザは、スモーク板710を介して第2の虚像提示面として機能する凹面鏡740が反射する第2の画像表示光745を直接視認するが、実際には、ユーザの視点Eから約1m〜2m先に約10インチ〜12インチの第2の虚像750が見えることとなる。また、ユーザは、ウィンドシールド610を介してヘッドアップディスプレイ10が提示する第1の画像表示光445を視認することができ、ユーザの視点Eから約2m前方に約12インチの第1の虚像450が見える。
また、通常のインスツルメントパネルは、凹面鏡740が該当する位置に各種メータ等が存在するため、ユーザの違和感を無くすために、第2距離D2を、ユーザの視点Eから凹面鏡740までの距離より大きく、第1距離D1より小さい距離となるように設定してもよい。ユーザの視点Eから第1の虚像450までの第1距離D1は、中間像形成部360、投射鏡400または画像投射部210の光軸方向の位置などにより設定可能である。同様に、ユーザの視点Eから第2の虚像750までの第2距離D2は、凹面鏡740、中間像形成部736の位置または画像投射部720の光軸方向の位置により設定可能である。
スモーク板710は、光の透過率が低い平板状の部材である。スモーク板710は、例えば、スモーク樹脂板に対してスモークフィルムをラミネートして形成される。このような構成とすることで、スモーク板710の透過率を低くするとともに、スモーク板710の界面における反射率を低くすることができる。また、スモーク樹脂板をフィルムにより保護することができる。なお、スモーク板710は、平板形状ではなく、曲面を構成するような板状部材であってもよい。
電子インスツルメントパネル70は、その筐体により内部への外光の入射が遮断される構造であるとともに、スモーク板710の透過率は、外光の入射を制限するためにスモーク板710の界面における反射率より小さい値とすることが望ましく、8%以下とすることが好ましい。透過率を8%以下とすることで、ユーザの後方や上方向からの太陽光などがスモーク板710を介して凹面鏡740に入射し、ユーザや他の構成部材に光が反射することを防止することができる。また、スモーク板710の透過率を低くすることで、電子インスツルメントパネル70の内部が見えにくい構成とすることができる。これにより、第2の虚像750の視認性を高めるとともに、電子インスツルメントパネル70のデザイン性を高めることができる。
なお、スモーク板710は、その表面にタッチパネル用のセンサを備えてもよい。スモーク板710をタッチパネルとして機能させることにより、スモーク板710は、電子インスツルメントパネル70に対する設定を行うユーザインターフェースを兼ねることができる。これにより、電子インスツルメントパネル70に対する入力ボタンなどをダッシュボード上の他の位置に設ける必要が無くなり、ダッシュボード上をすっきりとさせることができる。
電子インスツルメントパネル70は、ヘッドアップディスプレイ10と同様に、制御装置780を含む。電子インスツルメントパネル70の制御装置780は、ヘッドアップディスプレイ10の制御装置50と共通であってもよいし、ヘッドアップディスプレイ10とは別に制御装置を備えることとしてもよい。
電子インスツルメントパネル70は、制御装置780からの画像信号により、スピードメータ、タコメータ、燃料計、シフトポジション等、一般的な車両のインスツルメントパネルに備えられる計器が示す内容を表示する。また、電子インスツルメントパネル70は、車両の後方を撮影するカメラにより撮像される車両後方の画像を表示してもよい。
電子インスツルメントパネル70に表示される内容は、運転状況やユーザからの入力情報などの様々な条件によって、それぞれの表示内容に割り当てられる画像のサイズや表示形態を変化させることとしてもよい。例えば、ユーザの好みに応じた表示形態としたり、車両の走行速度に応じて、スピードメータのサイズを大きくしたり、バック走行時にはスピードメータ等の表示を無くして車両後方の画像を大きく表示したりしてもよい。
図16は、ヘッドアップディスプレイ10及び電子インスツルメントパネル70の設置態様を模式的に示す斜視図であり、図17は、ヘッドアップディスプレイ10及び電子インスツルメントパネル70の設置態様を模式的に示す正面図である。図示されるように、スモーク板710は、電子インスツルメントパネル70の前面に設置され、一般的な車両においてインスツルメントパネルが設けられる位置に設けられる。その結果、スモーク板710は、運転席に着座したユーザの正面に位置するように配置され、運転者であるユーザは、ステアリングホイール越しにスモーク板710を視認することとなる。
また、ヘッドアップディスプレイ10が提示する第1の虚像450は、ユーザの視点Eから見て電子インスツルメントパネル70の奥に位置する箇所に表示される。その結果、図17に示すように、ヘッドアップディスプレイ10が提示する第1の虚像450と、電子インスツルメントパネル70が提示する第2の虚像750は、ユーザの視点Eとほぼ同軸上つまり、車両の上下方向に延びる直線上に並ぶように配置されることとなる。このような配置とすることによって、ユーザの目の焦点移動の低減に加えて視点移動をさらに少なくすることができ、車外の景色と、ヘッドアップディスプレイ10が提示する第1の虚像450および電子インスツルメントパネル70が提示する第2の虚像750を同時に目視することも可能となる。
以上の構成により、本実施の形態では、ヘッドアップディスプレイ10が提示する第1の虚像450と、電子インスツルメントパネル70が提示する第2の虚像750とが、ユーザの視点Eからほぼ同軸上となる上下方向に並んで配置されるとともに、ユーザの視点Eから同一またはほぼ同一の距離に見えることとなる。そのため、ヘッドアップディスプレイ10が提示する第1の虚像450とともに車外の風景を目視している状態から、電子インスツルメントパネル70が提示する第2の虚像750を目視する状態へと視線を移動させる場合において、ユーザの視点移動角と焦点移動量の双方を小さくすることができる。これにより、ユーザにより多くの情報を提示しつつ、視線移動に伴うユーザの負担を減らすことができる。特に、ユーザが運転中に車外の前方を目視している場合であっても、主に車両の移動に関連する情報が提示される第1の虚像450と、主に車両の制御に関連する情報が提示される第2の虚像750との双方を、負担無く目視することができる。
なお、変形例に係る電子インスツルメントパネル70においては、ユーザの視点Eから第2の虚像750までの第2距離D2や、視認される第2の虚像750のサイズを、運転状況やユーザからの入力情報などの様々な条件によって変更することとしてもよい。
図18は、変形例における電子インスツルメントパネル70の制御装置780のブロック図である。制御装置780は、プログラム等の動作によって実現する機能として、表示制御部781、速度検出部782および可変制御部783を備える。表示制御部781は、入力された画像信号に基づき、画像投射部720が投射する画像の輝度や色調を制御する。なお、表示制御部781と同等の機能は、ヘッドアップディスプレイ10が備える制御装置50にも備えられていてもよい。また、制御装置50および制御装置780は共通の制御装置であってもよく、例えば、制御装置50が制御装置780の機能を兼ね備える場合には、制御装置50がヘッドアップディスプレイ10および電子インスツルメントパネル70の投射画像を制御してもよい。
速度検出部782は、車両若しくは図示しないナビゲーション装置より、車両の走行速度の情報を取得することにより速度を検出する。可変制御部783は、速度検出部782が検出した車両の速度等に基づいて、第2の虚像750までの第2距離D2を変化させる制御を行う。具体的には、凹面鏡740、中間像形成部736または画像投射部720のいずれかの光軸方向の位置を機構的に可変可能な駆動部が備えられ、可変制御部783の制御により駆動部が駆動される。駆動部の具体例としては、パルスモータ等である。
例えば、速度検出部782が車速情報を取得し、車両の走行速度が60km/h以上などの所定の閾値となる速度以上である場合には、可変制御部783は、電子インスツルメントパネル70が生成する第2の虚像750までの第2距離D2を、ヘッドアップディスプレイ10が生成する第1の虚像450までの第1距離D1と同一またはほぼ同一の距離とする。一般に、車両の走行速度が高い場合、比較的遠方の位置に焦点を合わせて運転をすることから、電子インスツルメントパネル70が提示する第2の虚像750の焦点位置を遠くすることによって、視線移動に伴う負担を減らすことができる。
一方、車両の走行速度が所定の閾値となる速度未満である場合は、電子インスツルメントパネル70が生成する第2の虚像750までの第2距離D2を、ヘッドアップディスプレイ10が生成する第1の虚像450までの第1距離D1よりも数十cm〜1m程度手前に設定する。一般に、車両の走行速度が低いときには比較的近い位置に焦点を合わせて運転することが多いことから、電子インスツルメントパネル70が提示する第2の虚像750の焦点位置を短くすることによって、視線移動に伴う負担を減らすことができる。その他、後方走行時にも、電子インスツルメントパネル70が生成する第2の虚像750までの第2距離D2を手前に設定することとしてもよい。このような制御を行うことで、視線移動に伴うユーザの負担を減らしつつ、より多くの情報をユーザに提示することができる。視線移動の負担が減ることにより、ユーザはより短い時間でより多くの情報を確認することができる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態においては、虚像表示システム2の構成例として、ヘッドアップディスプレイ10を第1の虚像を生成する第1の虚像生成装置、虚像電子ミラー80を第2の虚像を生成する第2の虚像生成装置として説明する。図19は、第2の実施の形態に係る虚像表示システム2の設置態様および第2の虚像生成装置である虚像電子ミラー80の構成を模式的に示す図である。以下、第1の実施の形態との差を明確にするため、虚像電子ミラー80が投射する画像表示光を第3の画像表示光845、虚像電子ミラー80が提示する虚像を第3の虚像850として説明する。
虚像電子ミラー80とは、車両の後方を撮影するカメラからの画像を、電子インスツルメントパネル70と同様の構成により、リアルタイムでユーザに提示するものである。虚像電子ミラー80は、一般的なサイドミラーやバックミラーを補助する装置または置き換えされる装置として利用可能である。例えば、サイドミラーに置き換えて虚像電子ミラー80を用いる場合、一般的な計器類で構成されるインスツルメントパネルや、上述した第2の虚像750を提示可能な電子インスツルメントパネル70の左右の位置に虚像電子ミラー80を設けて、車両後方の画像を提示する。
虚像電子ミラー80の構成は、電子インスツルメントパネル70の構成と同様であり、ステアリングホイール910を挟んで設けられる左右のスモーク板810を透過した第3の画像表示光845により第3の虚像850を提示する点で相違する。図19に示すように、虚像電子ミラー80は、画像投射部820、中間鏡835、中間像形成部836、凹面鏡840およびスモーク板810を備える。虚像電子ミラー80の画像投射部820、中間鏡835、中間像形成部836、凹面鏡840は、それぞれ上述した電子インスツルメントパネル70の画像投射部720、中間鏡735、中間像形成部736、凹面鏡740と同様のものである。虚像電子ミラー80の構成は、第3の虚像850を左右に提示する必要があり、上述した構成を左右各々に備える。
図20は、虚像表示システム2を構成する虚像電子ミラー80L、80R(以下、虚像電子ミラー80ともいう)の構成例を示した図である。本実施の形態においては、ヘッドアップディスプレイ10が提示する第1の虚像450に加えて、虚像電子ミラー80によって第3の虚像850が提示される。第1の虚像450および第3の虚像850は、第1の虚像提示面として機能するウィンドシールド610または第3の虚像提示面として機能する凹面鏡840よりも遠方に画像があるように見える。なお、虚像表示システム2は、図20に示すように、第2の虚像750を生成する電子インスツルメントパネル70をさらに備えてもよい。
虚像電子ミラー80は、車両の左後方および右後方各々に対応することが好ましく、ステアリングホイール910を挟んで左側に虚像電子ミラー80L、右側に虚像電子ミラー80Rが備えられる。虚像電子ミラー80は、ダッシュボード900に備えられてもよく、ダッシュボード900よりユーザ側に備えられていてもよい。
虚像電子ミラー80が表示する画像は、車両の後方を撮影した画像である。虚像電子ミラー80は、図21に示すように、車両の外部または内部に備えられた撮像部890(890L)が撮影した画像をリアルタイムで表示する。図21は、車両の側面に設けられる撮像部890の設置態様を模式的に示す。図21は、車両の左側面において車両の左後方を撮影する撮像部890Lのみを示しているが、車両の右側面においても撮像部890Rが同様に備えられている。また、撮像部890の設置位置は、車両のフェンダー上などであってもよく、特に限定されるものではない。
撮像部890Lが撮影した画像は、虚像電子ミラー80Lによって虚像850Lとしてユーザに提示される。同様に、撮像部890Rが撮影した画像は、虚像電子ミラー80Rによって虚像850Rとしてユーザに提示される。
図22は、スモーク板810Rを例としてスモーク板810の構成を示した図である。スモーク板810は、図22に示すように、透過率が低い透過部分811および光が透過しない非透過部分812より構成される。透過部分811の形状は、ユーザ視点Eから見て第3の虚像850が提示される範囲を含む形状であり、一般的に車両の左右側面に備えられているバックミラーと同様の形状である。非透過部分812は、スモーク板810に対して透過部分811の形状を除く非透過性のフィルムの貼り付けや、樹脂素材によるカバーなどである。
運転者であるユーザは、視線方向を移動させることにより、ウィンドシールド610を介して提示される第1の虚像450とスモーク板810を介して提示される第3の虚像850の双方を見ることなる。本実施の形態では、ユーザの視点Eから見て第1の虚像450までの距離を第1距離D1とし、第3の虚像850までの距離を第2距離D2とした場合に、第1距離D1と第2距離D2とが同一またはほぼ同一の距離となるように第1の虚像450および第3の虚像850を表示する。言い換えれば、ユーザの視点Eから見た第1の虚像450および第3の虚像850の焦点位置がほぼ同じとなるようにする。これにより、運転中などに視線方向を移動させての第1の虚像450および第3の虚像850双方を見る場合におけるユーザの目の焦点移動を少なくし、視線移動に伴うユーザの負担を軽減させる。特に、ユーザが運転中に車外の前方を目視している場合であっても、主に車両の移動に関連する情報が提示される第1の虚像450と、主に車両の後方画像が提示される第3の虚像850との双方を、負担無く目視することができる。
さらに、虚像表示システム2が上述の第1の実施の形態で示したような電子インスツルメントパネル70を備える場合、第1の虚像450、第3の虚像850に加えて第2の虚像750もほぼ同一の距離となるため、同様の効果が得られる。また、第3の虚像850は、虚像として提示される範囲が透過部分811の形状であるバックミラーの形状であるため、ユーザが第3の虚像850を目視して後方を確認する場合の違和感を低減することができる。
さらに、第3の虚像850は、運転中に前方を注視しているユーザの視野内に位置するように配置されていることが好ましい。ここでいう視野とは、誘導視野さらには有効視野であることが好ましく、図20において視野Sとして示す。このような構成により、車両を運行させるために必要となる安全確認や情報確認の時間および視点移動の負担を低減させることができ、ユーザにとって使いやすいシステムとすることができる。
また、虚像電子ミラー80が備える制御装置880においても、図18に示す電子インスツルメントパネル70の制御装置780と同様に、速度検出部および可変制御部を備え、電子インスツルメントパネル70と同様に車両の走行速度に応じて第3の虚像850までの第2距離D2を変化させてもよい。なお、虚像電子ミラー80が生成する第3の虚像850までの距離は、電子インスツルメントパネル70が生成する第2の虚像750までの距離と同一となるように、その距離を変化させてもよいし、それぞれの距離を独立して変化させてもよい。また、制御装置880は、電子インスツルメントパネル70の制御装置780やヘッドアップディスプレイ10の制御装置50と共通であってもよい。
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、下記変形例は、ヘッドアップディスプレイ10の構成例として説明しているが、電子インスツルメントパネル70の構成および虚像電子ミラー80の構成としても適用可能である。
上述の実施の形態においては、中間像形成部360として凹レンズ364を拡散スクリーン362の手前に配置する場合、つまり、凹レンズ364を透過した第1の画像表示光445が拡散スクリーン362に入射する構成となる場合を示した。さらなる変形例として、拡散スクリーン362と凹レンズ364を逆に配置することとしてもよい。この場合、中間鏡350から投射鏡400の間は、中間鏡350、拡散スクリーン362、凹レンズ364、投射鏡400の順に光学素子が配列されることとなる。中間像形成部360の向きを逆にしたとしても、拡散スクリーン362により第1の画像表示光445の配光角を制御するとともに、凹レンズ364により主光線の向きを制御して、視認性の高い第1の虚像450を提示することができる。
上述の実施の形態においては、中間像形成部360として凹レンズ364を用いることにより第1の画像表示光445の主光線の方向を制御することとした。変形例においては、凹レンズ364を設けず、中間像形成部360が拡散スクリーン362のみを備える構成としてもよい。この変形例においては、画像投射部210が備える投射レンズ群242により、第1の画像表示光445の主光線の方向が調整される。
上述の実施の形態においては、第2レンズアレイ面382bを、x方向に短軸を有しy方向に長軸を有する楕円形状の第2のマイクロレンズ383bで構成する場合を示した。変形例においては、第2のマイクロレンズ383bの長軸と短軸の方向が異なる向きとなるようにして第2レンズアレイ面382bを構成することとしてもよい。例えば、上下方向(y方向)の配光角を大きくしたい場合には、短軸がy方向となるように構成すればよい。この場合においても、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
上述の実施の形態においては、拡散スクリーン362に入射する光が、円形状の第1のマイクロレンズ383aにより構成される第1レンズアレイ面382a、楕円形状の第2のマイクロレンズ383bにより構成される第2レンズアレイ面382bの順に透過する場合について示した。変形例においては、第1レンズアレイ面382aと第2レンズアレイ面382bの配置を逆にして、第2レンズアレイ面382b、第1レンズアレイ面382aの順に入射光が透過する構成としてもよい。
上述の実施の形態においては、第1レンズアレイ面382aを、円形状を有する第1のマイクロレンズ383aで構成する場合を示した。変形例においては、楕円形状を有する第1のマイクロレンズ383aを用いてもよい。この場合、第1のマイクロレンズ383aと第2のマイクロレンズ383bの形状は異なることが望ましく、第1の楕円率eaと第2の楕円率ebの値が異なるようにすることが望ましい。二枚の光拡散板において、それぞれのマイクロレンズの楕円率ea、ebを異なる値とすることで、回折光の干渉による回折ピークの発生を抑えることができる。
上述の実施の形態では、第1のマイクロレンズ383aおよび第2のマイクロレンズ383bの輪郭384a、384bの形状が六角形となる場合について示した。変形例においては、マイクロレンズの輪郭の形状を四角形とし、複数のマイクロレンズを格子状または六方格子状に配置することとしてもよい。また、マイクロレンズの輪郭の形状を円形または楕円形とし、平坦面の上に円形または楕円形のマイクロレンズを配列させることとしてもよい。