1.第1参考形態の全体構成
図1は、本発明の燃料電池システムの第1参考形態を示す概略構成図である。
なお、図示しないが、燃料電池システム1は、例えば、燃料電池およびバッテリを選択的に動力源とする電動車両などに搭載される。
図1において、燃料電池システム1は、燃料電池3と、燃料給排部4と、空気給排部5と、制御部6と、水分離部21と、動力部7とを備えている。
(1)燃料電池
燃料電池3は、液体燃料が直接供給および排出され、液体燃料および酸素を消費して発電する、例えば、アニオン交換型燃料電池またはカチオン交換型燃料電池である。
燃料電池3に供給され、また、燃料電池3から排出される液体燃料としては、例えば、メタノール、ジメチルエーテル、ヒドラジン(例えば、無水ヒドラジンや、ヒドラジン1水和物などの水加ヒドラジンなどを含む)などが挙げられる。
なお、以下において、燃料電池3に供給される液体燃料を供給液、燃料電池3から排出される液体燃料(未反応の液体燃料、反応生成物(窒素ガスなど)および反応生成水を含む)を排出液として、それぞれ区別する。
燃料電池3は、電解質層8と、電解質層8の一方側に配置されたアノード9と、電解質層8の他方側に配置されたカソード10とを有する単位セル28(燃料電池セル)が、セパレータ(図示せず)を介して複数積層されたスタック構造に形成されている。つまり、電解質層8を介してアノード9およびカソード10が対向配置されてなる単位セル28が複数積層されている。なお、図1では、積層される複数の単位セル28のうち、1つだけを示し、その他の単位セル28については省略している。
電解質層8は、例えば、アニオン成分またはカチオン成分が移動可能な層であり、アニオン交換膜またはカチオン交換膜を用いて形成されている。
アノード9は、燃料側電極としてのアノード電極11と、アノード電極11に液体燃料(供給液)を供給するための燃料供給部材12とを有している。
アノード電極11は、電解質層8の一方面に形成されている。アノード電極11の電極材料としては、例えば、触媒が担持された多孔質担体(触媒担持多孔質担体)などが挙げられる。
燃料供給部材12は、セパレータとしても兼用され、ガス不透過性の導電性部材からなる。燃料供給部材12には、その表面から凹む葛折状の溝が形成されている。そして、燃料供給部材12は、溝の形成された表面がアノード電極11に対向接触されている。これにより、アノード電極11の一方面と燃料供給部材12の他方面(溝の形成された表面)との間には、アノード電極11全体に液体燃料(供給液)を接触させるための燃料供給路13が形成される。
燃料供給路13には、液体燃料(供給液)をアノード9内に流入させるための燃料供給口15が一端側(紙面下側)に形成され、液体燃料(排出液)をアノード9から排出するための燃料排出口14が他端側(紙面上側)に形成されている。
カソード10は、酸素側電極としてのカソード電極16と、カソード電極16に空気(酸素)を供給するための空気供給部材17とを有している。
カソード電極16は、電解質層8の他方面に形成されている。
カソード電極16の電極材料としては、例えば、アノード電極11の電極材料として例示した、触媒担持多孔質担体などが挙げられる。
空気供給部材17は、セパレータとしても兼用され、ガス不透過性の導電性部材からなる。空気供給部材17には、その表面から凹む葛折状の溝が形成されている。そして、空気供給部材17は、溝の形成された表面がカソード電極16に対向接触されている。これにより、カソード電極16の他方面と空気供給部材17の一方面(溝の形成された表面)との間には、カソード電極16全体に空気を接触させるための空気流路としての空気供給路18が形成される。
空気供給路18には、空気をカソード10内に流入させるための空気供給口19が他端側(紙面上側)に形成され、空気をカソード10から排出するための空気排出口20が一端側(紙面下側)に形成されている。
また、このような燃料電池3において、複数の単位セル28をそれぞれ区分する1つのセパレータは、上記燃料供給部材12および上記空気供給部材17を兼ね備える。換言すると、セパレータは、その一方側面において、燃料供給部材12として作用するとともに、他方側面において、空気供給部材17として作用する。
(2)燃料給排部
燃料給排部4は、液体燃料を貯蔵するための燃料タンク22と、燃料タンク22から燃料電池3(具体的には、アノード9の燃料供給路13)に対して供給液を供給する燃料供給路としての燃料供給ライン30と、燃料電池3(具体的には、アノード9の燃料供給路13)から排出液を排出する燃料排出路としての燃料排出ライン31と、燃料排出ライン31から燃料供給ライン30へ排出液を輸送し、排出液を燃料電池3に還流させるための還流路としての還流ライン32とを備えている。
なお、燃料供給ライン30と燃料排出ライン31との間には、燃料電池3が介在されており、また、燃料排出ライン31と還流ライン32との間には、気液分離器23(後述)が介在されている。
燃料タンク22は、特に制限されず、公知の容器が用いられる。燃料タンク22には、上記した液体燃料(例えば、メタノール、ジメチルエーテル、ヒドラジンなど)が貯蔵されている。
燃料供給ライン30は、その上流側端部が、シール材(ガスケットなど)を介して、燃料タンク22に接続されるとともに、下流側端部が、シール材(ガスケットなど)を介して燃料電池3(具体的には、アノード9の燃料供給路13)に接続されている。
また、燃料供給ライン30の流れ方向途中には、燃料供給ポンプ33および燃料供給弁34が設けられている。
燃料供給ポンプ33としては、例えば、ロータリーポンプ、ギヤポンプなどの回転式ポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプなどの往復式ポンプなど、公知の送液ポンプが用いられる。燃料供給ポンプ33は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、燃料供給ポンプ33に入力され、コントロールユニット29(後述)が、燃料供給ポンプ33の駆動および停止を制御する。
また、燃料供給弁34は、燃料供給ライン30を開閉するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、燃料供給弁34は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、燃料供給弁34に入力され、コントロールユニット29(後述)が、燃料供給弁34の開閉を制御する。
このような燃料供給ライン30により、燃料タンク22から、液体燃料(供給液)が燃料電池3へ供給される。
燃料排出ライン31は、その上流側端部が、シール材(ガスケットなど)を介して、燃料電池3(具体的には、アノード9の燃料供給路13)に接続されるとともに、下流側端部が、シール材(ガスケットなど)を介して、気液分離器23に接続されている。
このような燃料排出ライン31により、排出液が燃料電池3から排出され、気液分離器23に輸送される。
また、燃料排出ライン31において、排出液の流れ方向途中には、後述する水分離装置45が介在されている。
気液分離器23は、例えば、中空の容器からなり、その下部には、気液分離器23の内外を流通させる底部流通口24が2つ形成されている。
また、気液分離器23の上部には、気液分離器23の内外を流通させる上部流通口25が1つ形成されている。
気液分離器23は、2つの底部流通口24が、それぞれ、シール材(ガスケットなど)を介して、燃料排出ライン31および還流ライン32(後述)に接続されている。
上部流通口25には、気液分離器23で分離されたガス(気体)を排出するためのガス排出管26が接続されている。ガス排出管26は、シール材(ガスケット)を介して上部流通口25に接続されている。また、ガス排出管26の途中には、ガス排出弁27が設けられている。
ガス排出弁27は、ガス排出管26を開放して気液分離器23内の圧力を開放するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。ガス排出弁27は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット29(後述)からの制御信号がガス排出弁27に入力され、コントロールユニット29(後述)が、ガス排出弁27の開閉を制御する。
還流ライン32は、燃料電池3から排出される排出液を、燃料電池3に還流させるために、気液分離器23を介して、燃料供給ライン30と燃料排出ライン31とに接続されている。
より具体的には、還流ライン32は、その上流側端部は、シール材(ガスケットなど)を介して、気液分離器23に接続されている。換言すれば、還流ライン32の上流側端部は、気液分離器23を介して、燃料供給ライン30に接続されている。また、還流ライン32の下流側端部は、シール材(ガスケットなど)を介して、燃料供給ライン30の流れ方向途中、詳しくは、燃料供給ポンプ33および燃料供給弁34よりも下流側に接続されている。
また、還流ライン32の流れ方向途中には、燃料還流ポンプ35が介在されている。
燃料還流ポンプ35としては、例えば、ロータリーポンプ、ギヤポンプなどの回転式ポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプなどの往復式ポンプなど、公知の送液ポンプが用いられる。燃料還流ポンプ35は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、燃料還流ポンプ35に入力され、コントロールユニット29(後述)が、燃料還流ポンプ35の駆動および停止を制御する。
これにより、燃料排出ライン31内を輸送される排出液が、気液分離器23および還流ライン32を介して、燃料供給ライン30に輸送される。そして、燃料タンク22から輸送された液体燃料(1次供給液)と混合された後、供給液(2次供給液)として、燃料電池3に戻ることにより、アノード9を循環するクローズドライン(閉流路)が形成される。
(3)空気給排部
空気給排部5は、燃料電池3に対して空気を供給するための空気供給手段としてのエアコンプレッサ43と、エアコンプレッサ43から燃料電池3(カソード10)に対して空気を供給する空気供給路としての空気供給ライン41と、カソード10から排出される空気を外部に排出するための空気排出ライン42とを備えている。
エアコンプレッサ43は、所定量の空気を吐出し、燃料電池3に空気を供給するためのポンプである。エアコンプレッサ43は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されており、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、エアコンプレッサ43に入力され、コントロールユニット29(後述)が、エアコンプレッサ43の駆動および停止を制御する。
空気供給ライン41は、その一端側(上流側)がエアコンプレッサ43に接続されており、他端側(下流側)が燃料電池3の空気供給口19に接続されている。空気供給ライン41の流れ方向途中には、空気供給弁44が設けられている。
空気供給弁44は、空気供給ライン41を開閉するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。
また、空気供給弁44は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されており、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、空気供給弁44に入力され、コントロールユニット29(後述)が、空気供給弁44の開閉を制御する。
また、空気供給ライン41において、空気の流れ方向途中、具体的には、空気供給弁44の下流側には、後述する水分離装置45が介在されている。
空気排出ライン42は、その一端側(上流側)が空気排出口20に接続され、他端側(下流側)がドレインとされる。
(4)水分離部
水分離部21は、燃料電池3において液体燃料の電気化学反応(後述)によって生じる水を、排出液から分離するために備えられている。
具体的には、水分離部21は、水分離手段としての水分離装置45を備えている。
水分離装置45は、空気供給ライン41から供給される空気を利用して、排出液に含まれる水分を排出液から分離するための装置であって、燃料排出ライン31および空気排出ライン42に介在されている。
このような水分離装置45は、図2に示されるように、燃料排出ライン31に介在される膜ユニット53と、膜ユニット53を収容し、空気供給ライン41に介在される収容部51とを備えている。
膜ユニット53は、図3に示されるように、ハニカムセラミック担体60と、ハニカムセラミック担体60に担持される水分離膜47とを備えている。
ハニカムセラミック担体60は、例えば、アルミナなどのセラミックからなる略円筒部材であって、その径方向内側には、略六角形の貫通孔(パス)54が、複数形成されている。
各貫通孔(パス)54は、ハニカムセラミック担体60の軸線方向を貫通する流体通路として形成されており、その周壁面は、水分離膜47により被覆されている。
水分離膜47は、排出液中に含まれる液体燃料の反応生成物や、未反応の液体燃料などを遮断する一方、反応生成水(水分)を透過させる膜であって、特に制限されないが、例えば、孔径が1nm以下の炭素膜などが挙げられる。水分離膜47の孔径は、例えば、1nm以下、好ましくは、0.5nm以下であり、通常、0.3nm以上である。
そして、図2に示されるように、膜ユニット53は、その長手方向が排出液の流れ方向に沿うように燃料排出ライン31に介在されている。これにより、膜ユニット53の貫通孔54(水分離膜47により被覆された貫通孔54)内に、排出液が通過可能とされ、水分離膜47の厚み方向一方側(貫通孔54の内側)に、排出液が接触可能とされている。また、水分離膜47の厚み方向他方側(貫通孔54の外側)には、ハニカムセラミック担体60が接触される。
収容部51は、例えば、膜ユニット53よりも大きい円筒形状に形成されており、図2に示されるように、膜ユニット53を収容するように、燃料排出ライン31に組み付けられ、また、空気供給ライン41に介在されるように配置されている。
そして、詳しくは後述するが、このような収容部51に空気供給ライン41から空気が供給されることによって、空気が膜ユニット53透過し、また、この空気の水蒸気圧と排出液の水蒸気圧との差によって、排出液に含有される水分が分離される。
また、分離された水分は、空気とともに空気供給ライン41を介して燃料電池3に供給される。
(5)制御部
図1において、制御部6は、コントロールユニット29を備えている。
コントロールユニット29は、燃料電池システム1における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータから構成されている。
制御部6では、詳しくは後述するが、例えば、燃料供給ポンプ33、燃料還流ポンプ35などの駆動および停止や、燃料供給弁34、ガス排出弁27、空気供給弁44などの開閉などを、適宜制御する。
(6)動力部
動力部7は、燃料電池3から出力される電気エネルギーを、例えば、燃料電池システム1が搭載される電動車両(図示せず)の駆動力として機械エネルギーに変換するためのモータ37と、モータ37に電気的に接続されるインバータ38と、モータ37による回生エネルギーを蓄電するための動力用バッテリ40と、DC/DCコンバータ36とを備えている。
モータ37としては、例えば、三相誘導電動機、三相同期電動機など、公知の三相電動機が挙げられる。
インバータ38は、モータ37と燃料電池3との間に配置されている。インバータ38は、燃料電池3で発電された直流電力を交流電力に変換する装置であって、例えば、公知のインバータ回路が組み込まれた電力変換装置が挙げられる。また、インバータ38は、配線により、燃料電池3およびモータ37にそれぞれ電気的に接続されている。
動力用バッテリ40としては、例えば、定格電圧が100V程度のニッケル水素電池や、リチウムイオン電池など、公知の二次電池が挙げられる。また、動力用バッテリ40は、インバータ38と燃料電池3との間の配線に接続され、これにより、燃料電池3からの電力を蓄電可能、かつ、モータ37に電力を供給可能とされている。
DC/DCコンバータ36は、動力用バッテリ40と燃料電池3との間に配置されている。DC/DCコンバータ36は、燃料電池3の出力電圧を昇降圧する機能を有し、燃料電池3の電力および動力用バッテリ40の入出力電力を調整する機能を有している。
そして、DC/DCコンバータ36は、コントロールユニット29と電気的に接続されており(図1の破線参照)、これにより、コントロールユニット29から出力される出力制御信号の入力に応じて、燃料電池3の出力(出力電圧)を制御する。
また、DC/DCコンバータ36は、配線により、燃料電池3および動力用バッテリ40にそれぞれ電気的に接続されているとともに、配線の分岐により、インバータ38に電気的に接続されている。
これにより、DC/DCコンバータ36からモータ37への電力は、インバータ38において直流電力から三相交流電力に変換され、三相交流電力としてモータ37に供給される。
2.燃料電池システムによる発電
上記した燃料電池システム1では、コントロールユニット29の制御により、燃料供給弁34が開かれ、燃料供給ポンプ33および燃料還流ポンプ35が駆動されることにより、液体燃料が、燃料供給ライン30を介してアノード9に供給される。一方、空気供給弁44が開かれ、エアコンプレッサ43が駆動されることにより、空気が空気供給ライン41を介してカソード10に供給される。なお、燃料供給弁34は、液体燃料が所定量供給された後に閉じられる。
アノード9では、液体燃料が、アノード電極11と接触しながら燃料供給路13を通過する。一方、カソード10では、空気が、カソード電極16と接触しながら空気供給路18を通過する。
そして、各電極(アノード電極11およびカソード電極16)において電気化学反応が生じ、起電力が発生する。例えば、液体燃料がメタノールである場合には、下記式(1)〜(3)の通りとなる。
(1) CH3OH+6OH−→CO2+5H2O+6e−(アノード電極11での反応)
(2) O2+2H2O+4e−→4OH− (カソード電極16での反応)
(3) CH3OH+3/2O2→CO2+2H2O (燃料電池3全体での反応)
すなわち、メタノールが供給されたアノード電極11では、メタノール(CH3OH)とカソード電極16での反応で生成した水酸化物イオン(OH−)とが反応して、二酸化炭素(CO2)および水(H2O)が生成するとともに、電子(e−)が発生する(上記式(1)参照)。
アノード電極11で発生した電子(e−)は、図示しない外部回路を経由してカソード電極16に到達する。つまり、この外部回路を通過する電子(e−)が、電流となる。
一方、カソード電極16では、電子(e−)と、外部からの供給もしくは燃料電池3での反応で生成した水(H2O)と、空気供給路18を流れる空気中の酸素(O2)とが反応して、水酸化物イオン(OH−)が生成する(上記式(2)参照)。
そして、生成した水酸化物イオン(OH−)が、電解質層8を通過してアノード電極11に到達し、上記と同様の反応(上記式(1)参照)が生じる。
また、例えば、液体燃料がヒドラジンである場合には、下記式(4)〜(6)の通りとなる。
(4) N2H4+4OH−→N2+4H2O+4e− (アノード電極11での反応)
(5) O2+2H2O+4e−→4OH− (カソード電極16での反応)
(6) N2H4+O2→N2+2H2O (燃料電池3全体での反応)
このようなアノード電極11およびカソード電極16での電気化学的反応が連続的に生じることによって、燃料電池3全体として、上記式(3)または上記式(6)で表わされる反応が生じて、燃料電池3に起電力が発生する。
そして、発生した起電力が、配線を介して、DC/DCコンバータ36に送電され、動力部7では、インバータ38およびモータ37、および/または、動力用バッテリ40に送電される。そして、モータ37では、インバータ38により三相交流電力に変換された電気エネルギーが、例えば、電動車両(図示せず)の車輪を駆動させる機械エネルギーに変換される。一方、動力用バッテリ40では、その電力が充電される。
また、燃料給排部4では、燃料還流ポンプ35および燃料供給ポンプ33の駆動力により、アノード9から排出される使用後および未反応の液体燃料(排出液)が、燃料排出ライン31を通過して上流側の底部流通口24から気液分離器23に流入する。気液分離器23では、水位が上部流通口25よりも下方位置に保持される液体燃料の液溜まりが、気液分離器23の中空部分に生じるとともに、液溜まりに含まれるガス(気体)が液溜まりの上方空間へ分離される。その一方で、液溜まりの一部が、下流側の底部流通口24から還流ライン32に流出する。
還流ライン32に流出する液体燃料は、燃料供給ライン30の流れ方向途中部分において、燃料タンク22から供給される液体燃料と混合された後、再び燃料供給口15から燃料供給路13に流入する。
このようにして、液体燃料が、クローズドライン(還流ライン32、燃料供給ライン30、燃料排出ライン31、気液分離器23および燃料供給路13)を循環する。なお、気液分離器23で分離された気体は、ガス排出弁27が開かれることにより、ガス排出管26を介して外部へ排出される。
3. 水の分離
上記したように、燃料電池システム1では、燃料電池3のアノード9から排出される使用後および未反応の液体燃料(排出液)が、還流ライン32および燃料供給ライン30を介して、燃料電池3に還流され、再利用される。
しかし、式(1)〜(6)として示したように、燃料電池3による発電では、その発電反応において水が生じるため、排出液には、水が含有される。すなわち、排出液においては、液体燃料の濃度が低下している。そのため、排出液をそのまま燃料電池3に還流して用いると、発電効率の低下を惹起する場合がある。
これに対して、上記の燃料電池システム1では、燃料電池3から排出される排出液に含有される水を分離し、還流される液体燃料の濃度を調整(増加)することができる。
より具体的には、この燃料電池システム1では、図1に示されるように、燃料電池3から燃料排出ライン31に排出された排出液は、気液分離器23に供給される前に、水分離装置45に供給される。
そして、水分離装置45では、図2に示されるように、排出液が、膜ユニット53の貫通孔54に供給される。また、これとともに、空気が、空気供給ライン41を介して膜ユニット53の外側(収容部51内)に供給される。
このとき、空気は、膜ユニット53の径方向一方側(図2の紙面上側)から収容部51に供給され、ハニカムセラミック担体60を透過し、径方向他方側(図2の紙面下側)に向かって排出される。
そして、膜ユニット53を透過する空気の水蒸気圧と、貫通孔54内を通過する排出液の水蒸気圧との差によって、排出液に含有される水分が水蒸気として、水分離膜47の一方側(貫通孔54の内側)から水分離膜の他方側(ハニカムセラミック担体60)に向かって、通過する。その結果、水分が、膜ユニット53の外側に排出される。
このようにして水分が分離され、濃度が調整(増加)された排出液(すなわち、高濃度の液体燃料)は、図1に示すように、燃料排出ライン31を介して気液分離器23に供給され、上記したように、還流ライン32および燃料供給ライン30を介して、再び燃料電池3に供給される。
一方、排出液から分離された水は、空気とともに空気供給ライン41内を通過して、燃料電池3に供給される。
4.作用効果
このような燃料電池システム1では、燃料排出ライン31に介在される水分離装置45によって、排出液から水分が分離され、排出液の濃度が調整される。そして、濃度調整された排出液が、還流ライン32によって燃料電池3に還流される。そのため、上記の燃料電池システム1によれば、燃料タンク22からの液体燃料の供給量や供給頻度を低減することができ、液体燃料をより効率よく利用することができ、低コスト化を図ることができる。
また、上記の燃料電池システム1では、エアコンプレッサ43から供給される空気によって、排出液から水分が分離されるため、水分離装置45を通過した空気は、より多くの水分を含んだ状態で燃料電池3に供給される。その結果、燃料電池3における電解質層8を湿潤させることができ、その導電性の向上を図ることができるため、発電効率の向上を図ることができる。
さらに、上記の燃料電池システム1によれば、加湿器を用いることなく空気に水分を含有させることができるため、加湿器を用いる場合に比べ、燃料電池システム1の体積を減少させ、省スペース化を図ることができる。
なお、上記した参考形態では、水分離膜47を略六角形状の貫通孔54を有するハニカムセラミック担体60に担持させることにより膜ユニット53を形成したが、貫通孔54の形状は、上記に限定されず、例えば、三角形、四角形、八角形などの多角形状であってもよく、また、円形状、楕円形状であってもよい。
また、ハニカムセラミック担体60を用いることなく、水分離膜47からなる中空糸を複数束ねることにより、膜ユニット53を形成することもでき、さらには、水分離膜47からなるチューブを膜ユニット53としてそのまま用いてもよい。
5.第2実施形態の全体構成
図4は、本発明の燃料電池システムの第2実施形態を示す概略構成図である。なお、図4において、上記した各部に対応する部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
上記した燃料電池システム1では、排出液に含有される水を分離し、還流される液体燃料の濃度を増加させたが、液体燃料の濃度が過度に高くなると、かえって発電効率の低下を惹起する場合や、多量の燃料が消費されることにより、高コスト化する場合がある。
これに対して、燃料電池システム1の第2実施形態では、1つの燃料電池3に対して複数の水分離装置45を備え、さらに、空気の供給量を調整することにより、液体燃料の濃度を、さらに調整することができる。
具体的には、この燃料電池システム1では、燃料排出ライン31は、複数(3つ)の燃料排出側分岐路としての燃料排出側分岐ライン61(以下、燃料排出側分岐ライン61を区別する場合には、燃料排出側分岐ライン61a、燃料排出側分岐ライン61bおよび燃料排出側分岐ライン61c)を備えている。
燃料排出側分岐ライン61は、燃料排出ライン31における排出液の流れ方向の途中において、互いに並列接続されるように分岐する燃料流路として設けられている。
複数の燃料排出側分岐ライン61には、それぞれ、上記と同様に水分離装置45が介在されており、また、水分離装置45の下流側、かつ、気液分離器23の上流側において1つに合流されている。
また、空気供給ライン41は、複数(3つ)の空気供給側分岐路としての空気供給側分岐ライン62(以下、空気供給側分岐ライン62を区別する場合には、空気供給側分岐ライン62a、空気供給側分岐ライン62bおよび空気供給側分岐ライン62c)と、ドレイン路としてのドレインライン63とを備えている。
空気供給側分岐ライン62は、空気供給ライン41における空気の流れ方向途中において、互いに並列接続されるように分岐する空気流路として設けられている。
複数の空気供給側分岐ライン62には、それぞれ、上記と同様に水分離装置45が介在されており、また、水分離装置45の下流側、かつ、燃料電池3の上流側において、1つに合流されている。
ドレインライン63は、空気供給ライン41に供給される空気の少なくとも一部を、燃料電池3に供給することなく、外部に排出させるために備えられている。具体的には、ドレインライン63は、燃料電池3よりも空気の流れ方向上流側において、空気供給ライン41から分岐されるように設けられており、その下流側端部が、空気排出ライン42の途中部分に接続されている。
また、この燃料電池システム1では、複数(3つ)水分離装置45が、複数(3つ)の燃料排出側分岐ライン61、および、複数(3つ)の空気供給側分岐ライン62に対応するように、それぞれ1つずつ介在されている。
具体的には、燃料排出側分岐ライン61aおよび空気供給側分岐ライン62aに、水分離装置45aが介在され、また、燃料排出側分岐ライン61bおよび空気供給側分岐ライン62bに、水分離装置45bが介在され、さらに、燃料排出側分岐ライン61cおよび空気供給側分岐ライン62cに、水分離装置45cが介在されている。なお、各燃料排出側分岐ライン61および各空気供給側分岐ライン62と、各水分離装置45との接続態様は、図2に示す通りである。
また、この燃料電池システム1は、複数の空気供給側分岐ライン62に対応するように複数設けられ、水分離装置45よりも空気の流れ方向上流側において、空気供給側分岐ライン62を開放または閉塞するための第1開閉手段としての第1開閉弁64(以下、第1開閉弁64を区別する場合には、第1開閉弁64a、第1開閉弁64bおよび第1開閉弁64c)を備えている。
第1開閉弁64は、各空気供給側分岐ライン62を個別に開閉するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。
また、各第1開閉弁64は、それぞれ、コントロールユニット29に電気的に接続されており、コントロールユニット29からの制御信号が、第1開閉弁64に入力され、コントロールユニット29が、第1開閉弁64の開閉を制御する。
また、この燃料電池システム1は、水分離装置45よりも空気の流れ方向下流側、具体的には、ドレインライン63において、そのドレインライン63を開放または閉塞するための第2開閉手段としての第2開閉弁65を備えている。
第2開閉弁65は、ドレインライン63に開閉するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。
また、第2開閉弁65は、コントロールユニット29に電気的に接続されており、コントロールユニット29からの制御信号が、第2開閉弁65に入力され、コントロールユニット29が、第2開閉弁65の開閉や、その開度を制御する。
つまり、この燃料電池システム1では、コントロールユニット29が、第1開閉弁64および第2開閉弁65の開閉を制御するための制御手段として用いられている。コントロールユニット29は、燃料電池3の運転状況を判断し、その運転状態に応じて、第1開閉弁64および第2開閉弁65の開閉を制御する。
以下において、コントロールユニット29による制御について、図5を参照して説明する。
この制御処理では、燃料電池3の運転中に、スタートおよびリターンが繰り返される。
処理がスタートされると、まず、コントロールユニット29によってエアコンプレッサ43が駆動され、燃料電池3において必要とされる量の空気が、エアコンプレッサ43から供給される。また、これとともに、上記と同様に燃料供給ポンプ33が駆動され、液体燃料が燃料電池3に供給される。これにより、式(1)〜(6)として示したように、燃料電池3において発電される(S1)。
次いで、この処理では、燃料電池3から排出される排出液に含まれる水(反応生成水)の量が検知される。そして、その排出液からどの程度の水を分離すれば、燃料電池3に還流される排出液の燃料濃度が、燃料電池3の運転に適した濃度となるか、すなわち、水の分離量が判断される(S2)。
具体的には、まず、排出液中の燃料濃度が検知される。なお、検知方法としては、特に制限されず、燃料電池3の運転状況から、所定のプログラムに従って予測してもよく、また、図示しない濃度センサによって直接検知してもよい。
そして、検知された排出液の燃料濃度と、燃料電池3において要求される燃料濃度とが比較され、要求される水の分離量が判断される。
次いで、この処理では、要求される水の分離量から、水の分離において要求される空気量Aが判断される(S3)。
すなわち、上記した燃料電池システム1では、分離される水の量は、使用される水分離装置45の数および各水分離装置45に送られる空気量に依存する。そのため、使用される水分離装置45の数および各水分離装置45に送られる空気量を調整することによって、水の分離量を調整することができ、還流される排出液の燃料濃度を調整することができる。
そして、上記した水分離装置45は、使用時において空気の供給を必要とする。そのため、使用される水分離装置45の数および各水分離装置45において必要とされる空気量が多い場合には、空気の必要量が多くなり、また、使用される水分離装置45の数および各水分離装置45において必要とされる空気量が少ない場合には、空気の必要量が少なくなる。つまり、要求される水の分離量に応じて、水の分離において要求される空気量Aが異なる。
つまり、要求される水の分離量から、使用される水分離装置45の数および各水分離装置45に送る空気量を判断することができ、その水分離装置45の数および各水分離装置45に送る空気量に基づいて、水の分離に要求される空気量Aを判断することができる。
一方、この処理では、燃料電池3の運転において要求される空気量Bが判断される(S4)。
すなわち、燃料電池3は、その運転状況(要求される出力量など)に応じて、液体燃料および酸素(空気)の消費量が異なる。そこで、この処理では、燃料電池3の運転状況が判断され、燃料電池3の運転において要求される空気量Bが判断される。
次いで、この処理では、水の分離において要求される空気量Aと、燃料電池3の運転において要求される空気量Bとが比較され、水の分離において要求される空気量Aが、燃料電池3の運転において要求される空気量Bを超過するかが判断される(S5)。
以下において、水の分離において要求される空気量Aが、燃料電池3の運転において要求される空気量Bを超過する場合(S5:YES)について説明する。
具体的には、例えば、排出液から多量の水を分離する必要があり、すべての水分離装置45を使用する必要があると判断された場合には、水の分離において要求される空気量Aが多く、燃料電池3の運転において要求される空気量Bを超過する場合がある。
このような場合には、まず、エアコンプレッサ43によって、水の分離において要求される空気量Aの空気が、供給される(S6)。
また、このとき、すべての第1開閉弁64を開放状態とする。これにより、すべての水分離装置45に対して空気が供給され、すべての水分離装置45において、排出液から水が分離される。その結果、多くの水を、排出液から分離することができ、排出液の濃度を調整することができる。
また、水の分離に用いられた空気は、水分離装置45の下流側において合流され、空気供給ライン41を介して、燃料電池3に供給される。
一方、このような場合には、エアコンプレッサ43から供給される空気の全量を、燃料電池3に対して供給すると、過剰であるため、コントロールユニット29の制御により、第2開閉弁65を開放状態とする。第2開閉弁65の開度は、水の分離において要求される空気量Aと、燃料電池3の運転において要求される空気量Bとの比に応じて、適宜設定される。
これにより、エアコンプレッサ43から供給される空気の少なくとも一部を、空気供給ライン41から空気排出ライン42に輸送することができ、燃料電池3に供給される空気量を、調整することができ、効率よく発電することができる。
なお、上記の制御処理は、燃料電池3の運転停止まで繰り返される(リターン)。
また、以下において、水の分離において要求される空気量Aが、燃料電池3の運転において要求される空気量B以下である場合(S5:NO)について説明する。
具体的には、例えば、排出液から分離する水の量が少なく、すべての水分離装置45を使用する必要がないと判断された場合には、水の分離において要求される空気量Aが少なく、燃料電池3の運転において要求される空気量B以下となる場合がある。
このような場合には、まず、 エアコンプレッサ43によって、燃料電池3の運転において要求される空気量Bの空気が、供給される(S7)。
一方、このような場合には、エアコンプレッサ43から供給される空気の量は、水分離装置45に対しては過剰であるため、水分離装置45に供給される空気量を、調整する必要がある。
そこで、この処理では、コントロールユニット29の制御により、複数(3つ)の第1開閉弁64の少なくとも1つ(例えば、第1開閉弁64aおよび第2開閉弁64b)を開放状態とする一方、第1開閉弁64(例えば、第1開閉弁64c)の少なくとも1つを閉塞状態とする。また、このとき、第2開閉弁65を、閉塞状態とする。
なお、開放状態または閉塞状態とする第1開閉弁64の数は、水の分離において要求される空気量Aと、燃料電池3の運転において要求される空気量Bとの比に応じて、適宜設定される。
これにより、所定の水分離装置45(例えば、第1開閉弁64aおよび第2開閉弁64b)に対してのみ空気が供給され、その水分離装置45においてのみ、排出液から水が分離される。その結果、使用された水分離装置45の数に対応した量の水を、排出液から分離することができ、排出液の濃度を調整することができる。
また、水の分離に用いられた空気は、水分離装置45の下流側において合流され、空気供給ライン41を介して、燃料電池3に供給される。なお、第2開閉弁65が閉塞状態とされているため、エアコンプレッサ43から供給される空気の全量を、燃料電池3に供給することができ、効率よく発電することができる。
なお、上記の制御処理は、燃料電池3の運転停止まで繰り返される(リターン)。
このような燃料電池システム1でも、燃料排出ライン31に介在される水分離装置45によって、排出液から水分が分離され、排出液の濃度が調整される。そして、濃度調整された排出液が、還流ライン32によって燃料電池3に還流される。そのため、上記の燃料電池システム1によれば、燃料タンク22からの液体燃料の供給量や供給頻度を低減することができ、液体燃料をより効率よく利用することができ、低コスト化を図ることができる。
また、上記の燃料電池システム1では、エアコンプレッサ43から供給される空気によって、排出液から水分が分離されるため、水分離装置45を通過した空気は、より多くの水分を含んだ状態で燃料電池3に供給される。その結果、燃料電池3における電解質層8を湿潤させることができ、その導電性の向上を図ることができるため、発電効率の向上を図ることができる。
さらに、上記の燃料電池システム1によれば、加湿器を用いることなく空気に水分を含有させることができるため、加湿器を用いる場合に比べ、燃料電池システム1の体積を減少させ、省スペース化を図ることができる。
とりわけ、上記の燃料電池システム1によれば、還流される液体燃料(排出液)の濃度を調整することができるため、効率よく発電することができるとともに、過度な燃料の消費を抑制することができ、低コスト化を図ることができる。
なお、上記した説明では、ドレインライン63の下流側端部を、空気排出ライン42に接続したが、例えば、空気排出ライン42に接続することなく大気開放し、直接空気を排出させることもできる。