JP2016122591A - 燃料電池システムおよびその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】反応生成物を効率よく分離することができる燃料電池システムおよびその制御方法を提供すること。
【解決手段】燃料電池システム2に、液体燃料が供給および排出される燃料電池3と、燃料電池3に対して液体燃料を供給する燃料供給ライン30と、液体燃料の反応生成物を含む排出液を、燃料電池3から排出する燃料排出ライン31と、燃料排出ライン31に接続される気液分離器23と、燃料電池3から出力される電力により気液分離器23を温めるための加熱装置45とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池システムおよびその制御方法に関し、詳しくは、液体燃料により発電する燃料電池を備える燃料電池システム、および、その制御方法に関する。
従来、直接メタノール形燃料電池、直接ジメチルエーテル形燃料電池、ヒドラジン形燃料電池などの、液体燃料形燃料電池が知られている。
液体燃料形燃料電池は、水素ガスを生成するための改質器を必要としないので、システムとしての構造の簡略化が期待されている。
液体燃料形燃料電池が備えられる燃料電池システムは、通常、電解質膜、燃料側電極および酸素側電極が圧着されて得られる膜・電極接合体(MEA)を有する単位セルが複数積層されることによって形成されている燃料電池と、燃料電池に液体燃料を供給するための燃料供給手段と、燃料電池に空気を供給するための空気供給手段とを備えている。
このようなシステムでは、燃料電池のアノードに液体燃料が供給されるとともに、燃料電池のカソードに空気が供給されることによって、電気化学反応が生じ、起電力が発生する。
燃料電池システムとして、より具体的には、例えば、電解質層、電解質層の一方側に配置され、液体燃料としてヒドラジンなどが供給されるアノード、および、電解質層の他方側に配置され、空気が供給されるカソードを備える燃料電池と、アノードにヒドラジン類を供給する燃料給排部と、カソードに空気を供給する空気給排部とを備える燃料電池システムが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
上記の燃料電池システムでは、電気化学反応によって、ヒドラジン(N)が消費され、起電力が発生するとともに、N(反応生成物)とHO(反応生成水)とが生じる。
一方、燃料であるヒドラジン(N)が副反応を惹起し、反応生成物としてアンモニア(NH)などが生じ、排出液中に混入される場合がある。このような反応生成物は、燃料電池からの排出液に含有された状態で排出され、気液分離器などによってガスとして分離される。
しかし、反応生成物(例えば、アンモニアなど)がガスとして外部へ排出されると、環境負荷を生じる場合がある。そこで、例えば、気液分離器の気体出口側に吸着材などを設け、反応生成物のガス(例えば、アンモニアなど)を分離および除去することも提案されている。
特開2013−134981号公報
一方、引用文献1に記載の燃料電池システムでは、気液分離器の温度が、燃料電池(本体)および排出液の温度に比べ、低くなる場合がある。
より具体的には、例えば、燃料電池が起動(稼働開始)すると、燃料電池の温度が上昇し、また、その燃料電池から排出される排出液の温度も上昇する。
そのため、排出液が流入される気液分離器の温度も上昇するが、気液分離器は、燃料電池から離隔されているため、気液分離器の温度の上昇速度は、燃料電池の温度の上昇速度よりも遅い。
その結果、燃料電池が起動した後、所定時間が経過するまでは、燃料電池の温度に比べ、気液分離器の温度が低くなる。
このような場合において、比較的高温の燃料電池から、排出液が排出され、比較的低温の気液分離器において、液体と気体とに分離されると、分離された気体が、気液分離器の内部で冷却される。その結果、気体の出口側において、飽和蒸気量が低下し、凝縮により水などの液滴が生じる場合がある。
そして、生じた液滴が、気液分離器の内部の吸着材などに付着すると、吸着材が劣化し、反応生成物の吸着・分離効率が低下する場合がある。
本発明の目的は、反応生成物を効率よく分離することができる燃料電池システムおよびその制御方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池システムは、液体燃料が供給および排出される燃料電池と、前記燃料電池に対して液体燃料を供給する燃料供給経路と、前記液体燃料の反応生成物を含む排出液を、前記燃料電池から排出する燃料排出経路と、前記燃料排出経路に接続される気液分離器と、前記燃料電池から出力される電力によって前記気液分離器を温めるための加熱装置とを備えることを特徴としている。
また、本発明の燃料電池システムは、上記の燃料電池システムを制御するための制御方法であって、前記燃料電池と前記気液分離器との温度差を検知する温度差検知工程、前記温度差が所定値以上である場合に、前記加熱装置を稼働させる稼働工程、および、前記温度差が所定値未満である場合に、前記加熱装置を停止させる停止工程を備え、前記稼働工程は、前記燃料電池が暖機運転モードであるか通常運転モードであるかを判定する判定工程、前記判定工程において暖機運転モードであると判定された場合に、前記加熱装置の出力を最大とする最大出力稼働工程、および、前記判定工程において通常運転モードであると判定された場合に、前記加熱装置の出力を変動させる変動出力稼働工程を備えることを特徴としている。
本発明の燃料電池システムは、燃料電池から出力される電力によって気液分離器を温めるための加熱装置を備えている。そのため、本発明の燃料電池システムによれば、燃料電池から出力される電力によって気液分離器を温めることができ、気液分離器において飽和蒸気圧が低下することを抑制することができる。その結果、液滴の発生を抑制することができるため、反応生成物の分離効率の低下を抑制することができる。
また、本発明の燃料電池システムの制御方法によれば、燃料電池と気液分離器との温度差が所定値以上である場合に、燃料電池の運転モードに応じて、加熱装置を作動させ、気液分離器を温めることができる。そのため、気液分離器において飽和蒸気圧が低下することを抑制することができる。その結果、液滴の発生を抑制することができるため、反応生成物の分離効率の低下を抑制することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを搭載した電動車両の概略構成図である。 図2は、図1に示される燃料電池システム1の制御方法を示すフロー図である。
1.燃料電池システムの全体構成
図1において、電動車両1は、燃料電池およびバッテリを選択的に動力源とするハイブリッド車両であって、燃料電池システム2を搭載している。
燃料電池システム2は、燃料電池3と、燃料給排部4と、空気給排部5と、加熱部21と、制御部6と、動力部7とを備えている。
(1)燃料電池
燃料電池3は、液体燃料が直接供給および排出される、例えば、アニオン交換型燃料電池またはカチオン交換型燃料電池であって、電動車両1の中央下側に配置されている。
燃料電池3に供給され、また、燃料電池3から排出される液体燃料としては、例えば、メタノール、ヒドラジン(例えば、無水ヒドラジンや、ヒドラジン1水和物などの水加ヒドラジンなどを含む)などが挙げられ、好ましくは、ヒドラジンが挙げられる。
なお、以下において、燃料電池3に供給される液体燃料を供給液、一方、燃料電池3から排出される液体燃料を排出液として、それぞれ区別する。
なお、排出液は、未反応の液体燃料の他、燃料電池3における液体燃料の反応生成物および反応生成水を含んでいる。反応生成物は、用いられる液体燃料の種類により異なる。例えば、液体燃料としてヒドラジンが用いられる場合には、窒素(N)やアンモニア(NH)などが反応生成物として排出液に含有される。
燃料電池3は、電解質層8と、電解質層8の一方側に配置されたアノード9と、電解質層8の他方側に配置されたカソード10とを有する単位セル28(燃料電池セル)が、セパレータ(図示せず)を介して複数積層されたスタック構造に形成されている。つまり、電解質層8を介してアノード9およびカソード10が対向配置されてなる単位セル28が複数積層されている。なお、図1では、積層される複数の単位セル28のうち、電動車両1の前後方向途中に配置される単位セル28だけを拡大して表わし、その他の単位セル28については簡略化して記載している。
電解質層8は、例えば、アニオン成分またはカチオン成分が移動可能な層であり、アニオン交換膜またはカチオン交換膜を用いて形成されている。
アノード9は、燃料側電極としてのアノード電極11と、アノード電極11に液体燃料(供給液)を供給するための燃料供給部材12とを有している。
アノード電極11は、電解質層8の一方面に形成されている。アノード電極11の電極材料としては、例えば、触媒が担持された多孔質担体(触媒担持多孔質担体)などが挙げられる。
燃料供給部材12は、セパレータとしても兼用され、ガス不透過性の導電性部材からなる。燃料供給部材12には、その表面から凹む葛折状の溝が形成されている。そして、燃料供給部材12は、溝の形成された表面がアノード電極11に対向接触されている。これにより、アノード電極11の一方面と燃料供給部材12の他方面(溝の形成された表面)との間には、アノード電極11全体に液体燃料(供給液)を接触させるための燃料供給路13が形成される。
燃料供給路13には、液体燃料(供給液)をアノード9内に流入させるための燃料供給口15が一端側(下側)に形成され、液体燃料(排出液)をアノード9から排出するための燃料排出口14が他端側(上側)に形成されている。
カソード10は、酸素側電極としてのカソード電極16と、カソード電極16に空気(酸素)を供給するための空気供給部材17とを有している。
カソード電極16は、電解質層8の他方面に形成されている。
カソード電極16の電極材料としては、例えば、アノード電極11の電極材料として例示した、触媒担持多孔質担体などが挙げられる。
空気供給部材17は、セパレータとしても兼用され、ガス不透過性の導電性部材からなる。空気供給部材17には、その表面から凹む葛折状の溝が形成されている。そして、空気供給部材17は、溝の形成された表面がカソード電極16に対向接触されている。これにより、カソード電極16の他方面と空気供給部材17の一方面(溝の形成された表面)との間には、カソード電極16全体に空気を接触させるための空気流路としての空気供給路18が形成される。
空気供給路18には、空気をカソード10内に流入させるための空気供給口19が他端側(上側)に形成され、空気をカソード10から排出するための空気排出口20が一端側(下側)に形成されている。
また、このような燃料電池3において、複数の単位セル28をそれぞれ区分する1つのセパレータは、上記燃料供給部材12および上記空気供給部材17を兼ね備える。換言すると、セパレータは、その一方側面において、燃料供給部材12として作用するとともに、他方側面において、空気供給部材17として作用する。
また、燃料電池3は、燃料電池3の温度を検知するための第1温度センサ51を備えている。
第1温度センサ51は、燃料電池3の温度を検知するためのセンサであって、燃料電池3に接続されている。
第1温度センサ51としては、特に制限されず、公知の温度センサが用いられる。
第1温度センサ51は、図示しないが、後述するコントロールユニット29に電気的に接続されており、燃料電池3の温度状態が、電気信号としてコントロールユニット29に入力可能とされている。
(2)燃料給排部
燃料給排部4は、液体燃料を貯蔵するための燃料タンク22と、燃料タンク22から燃料電池3(具体的には、アノード9の燃料供給路13)に対して供給液を供給する燃料供給経路としての燃料供給ライン30と、燃料電池3(具体的には、アノード9の燃料供給路13)から排出液を排出する燃料排出経路としての燃料排出ライン31と、燃料排出ライン31から燃料供給ライン30へ排出液を輸送する還流ライン32とを備えている。
なお、燃料供給ライン30と燃料排出ライン31との間には、燃料電池3が介在されており、また、燃料排出ライン31と還流ライン32との間には、気液分離器23(後述)が介在されている。
燃料タンク22は、燃料電池3よりも後方、電動車両1の後側に配置されている。燃料タンク22には、液体燃料として、例えば、上記したヒドラジンが貯蔵されている。
燃料供給ライン30は、その上流側端部が、燃料タンク22に接続されるとともに、下流側端部が、燃料電池3(具体的には、アノード9の燃料供給口15)に接続されている。
また、燃料供給ライン30の流れ方向途中には、燃料供給ポンプ33および燃料供給弁34が設けられている。
燃料供給ポンプ33としては、例えば、ロータリーポンプ、ギヤポンプなどの回転式ポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプなどの往復式ポンプなど、公知の送液ポンプが用いられる。燃料供給ポンプ33は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、燃料供給ポンプ33に入力され、コントロールユニット29(後述)が、燃料供給ポンプ33の駆動および停止を制御する。
また、燃料供給弁34は、燃料供給ライン30を開閉するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、燃料供給弁34は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、燃料供給弁34に入力され、コントロールユニット29(後述)が、燃料供給弁34の開閉を制御する。
このような燃料供給ライン30により、燃料タンク22から、液体燃料(供給液)が燃料電池3へ供給される。
燃料排出ライン31は、その上流側端部が、燃料電池3(具体的には、アノード9の燃料排出口14)に接続されるとともに、下流側端部が、気液分離器23に接続されている。
このような燃料排出ライン31により、排出液が燃料電池3から排出され、気液分離器23に輸送される。
気液分離器23は、例えば、中空の容器からなり、その下部には、気液分離器23の内外を流通させる底部流通口24が2つ形成されている。
また、気液分離器23の上部には、気液分離器23の内外を流通させる上部流通口25が1つ形成されている。
気液分離器23は、燃料電池3よりも電動車両1の前後方向後方、かつ、電動車両1の上下方向上方において、2つの底部流通口24が、それぞれ、燃料排出ライン31および還流ライン32(後述)に接続されている。
上部流通口25には、気液分離器23で分離されたガス(気体)を排出するためのガス排出管26が接続されている。ガス排出管26は、上部流通口25に接続されている。また、ガス排出管26の途中には、ガス排出弁27が設けられており、下流側端部が大気中に開放されている。
また、気液分離器23の内部の上側には、液体成分の液面(最高液面)よりも鉛直方向上側となるように、分離装置52が設けられている。
分離装置52は、気液分離器23において分離される気体成分に、液体燃料の反応生成物(アンモニアなど)が含有される場合に、その反応生成物(アンモニアなど)を捕集および分離するために、設けられている。
分離装置52は、反応生成物の種類および量に応じて、適宜選択される。例えば、液体燃料としてヒドラジン類が用いられ、反応生成物としてアンモニアが生じる場合などには、分離装置52として、吸着材(例えば、活性炭、ゼオライトなど)などが用いられる。
また、分離装置52と、気液分離器23の液面(最高液面)との間、すなわち、分離装置52よりも鉛直方向下側、かつ、液体成分の液面(最高液面)よりも鉛直方向上側には、金属フィルター53が設けられている。
金属フィルター53は、例えば、液体成分の飛沫やミストなどが、分離装置52に付着することを抑制するために、設けられている。
なお、金属フィルター53の孔径および厚みは、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
さらに、気液分離器23は、第2温度センサ54を備えている。
第2温度センサ54は、気液分離器23の内部の温度、とりわけ、気体成分側の出口付近の温度を検知するためのセンサである。第2温度センサ54は、気液分離器23における金属フィルター53よりも鉛直方向上側、好ましくは、上部流通口25の近傍に配置されている。
第2温度センサ54としては、特に制限されず、公知の温度センサが用いられる。
第2温度センサ54は、図示しないが、後述するコントロールユニット29に電気的に接続されており、気液分離器23の温度状態が、電気信号としてコントロールユニット29に入力可能とされている。
ガス排出弁27は、ガス排出管26を開放して気液分離器23内の圧力を開放するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。ガス排出弁27は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット29(後述)からの制御信号がガス排出弁27に入力され、コントロールユニット29(後述)が、ガス排出弁27の開閉を制御する。
還流ライン32は、その上流側端部が、気液分離器23に接続されるとともに、下流側端部が、燃料供給ライン30の流れ方向途中、詳しくは、燃料供給ポンプ33および燃料供給弁34よりも下流側に接続されている。
また、還流ライン32の流れ方向途中には、燃料還流ポンプ35が介在されている。
燃料還流ポンプ35としては、例えば、ロータリーポンプ、ギヤポンプなどの回転式ポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプなどの往復式ポンプなど、公知の送液ポンプが用いられる。燃料還流ポンプ35は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、燃料還流ポンプ35に入力され、コントロールユニット29(後述)が、燃料還流ポンプ35の駆動および停止を制御する。
これにより、燃料排出ライン31内を輸送される排出液が、気液分離器23および還流ライン32を介して、燃料供給ライン30に輸送される。そして、燃料タンク22から輸送された液体燃料(1次供給液)と混合され、濃度調整された後、供給液(2次供給液)として、燃料電池3に戻ることにより、アノード9を循環するクローズドライン(閉流路)が形成される。
(3)空気給排部
空気給排部5は、燃料電池3(カソード10)に対して空気を供給する空気供給経路としての空気供給ライン41と、カソード10から排出される空気を外部に排出するための空気排出ライン42とを備えている。
空気供給ライン41は、その一端側(上流側)が大気中に開放され、他端側(下流側)が空気供給口19に接続されている。空気供給ライン41の途中には、空気供給ポンプ43が介在されており、また、その下流側には、空気供給弁44が設けられている。
また、空気供給ポンプ43は、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されており、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、空気供給ポンプ43に入力され、コントロールユニット29(後述)が、空気供給ポンプ43の駆動および停止を制御する。
空気供給弁44は、空気供給ライン41を開閉するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。
また、空気供給弁44は、それぞれ、コントロールユニット29(後述)に電気的に接続されており、コントロールユニット29(後述)からの制御信号が、空気供給弁44に入力され、コントロールユニット29(後述)が、空気供給弁44の開閉を制御する。
空気排出ライン42は、その一端側(上流側)が空気排出口20に接続され、他端側(下流側)がドレンとされる。
(4)加熱部
加熱部21は、燃料電池3から出力される電力により気液分離器23を温めるために、設備されている。
具体的には、加熱部21は、加熱装置45を備えている。
加熱装置45は、燃料電池3から出力される電力によって、気液分離器23を温めるための装置であって、DC/DCコンバータ36(後述)とインバータ38(後述)とを接続する電気配線に対して、電気的に接続されており、燃料電池3により生じる電力を、DC/DCコンバータ36(後述)を介して、入力可能とするように設備されている。
このような加熱装置45は、気液分離器23の近傍に配置され、例えば、気液分離器23の内部の金属フィルター53に接続されている。これにより、加熱装置45は、燃料電池3から出力される電力を用いて、金属フィルター53を加熱可能としており、その結果、気液分離器23の内部を加熱可能としている。
また、加熱装置45は、コントロールユニット29に電気的に接続されており(破線参照)、コントロールユニット29により、稼働および停止が制御可能とされている。
なお、加熱装置45としては、気液分離器23を加熱することができれば、上記に限定されず、公知のヒータなどを用いることもできる。
(5)制御部
制御部6は、コントロールユニット29を備えている。
コントロールユニット29は、電動車両1における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータから構成されている。
制御部6では、詳しくは後述するが、例えば、燃料供給ポンプ33および燃料還流ポンプ35などの駆動および停止や、燃料供給弁34やガス排出弁27、空気供給弁44などの開閉などを、適宜制御し、また、第1温度センサ51の検知および第2温度センサ54の検知に基づいて、加熱装置45の稼働および停止を適宜制御する。
(6)動力部
動力部7は、燃料電池3から出力される電気エネルギーを電動車両1の駆動力として機械エネルギーに変換するためのモータ37と、モータ37に電気的に接続されるインバータ38と、モータ37による回生エネルギーを蓄電するための動力用バッテリ40と、DC/DCコンバータ36とを備えている。
モータ37は、燃料電池3よりも前方、電動車両1の前側に配置されている。モータ37としては、例えば、三相誘導電動機、三相同期電動機など、公知の三相電動機が挙げられる。
インバータ38は、モータ37と燃料電池3との間に配置されている。インバータ38は、燃料電池3で発電された直流電力を交流電力に変換する装置であって、例えば、公知のインバータ回路が組み込まれた電力変換装置が挙げられる。また、インバータ38は、配線により、燃料電池3およびモータ37にそれぞれ電気的に接続されている。
動力用バッテリ40としては、例えば、ニッケル水素電池や、リチウムイオン電池など、公知の二次電池が挙げられる。また、動力用バッテリ40は、インバータ38と燃料電池3との間の配線に接続され、これにより、燃料電池3からの電力を蓄電可能、かつ、モータ37に電力を供給可能とされている。
DC/DCコンバータ36は、動力用バッテリ40と燃料電池3との間に配置されている。DC/DCコンバータ36は、燃料電池3の出力電圧を昇降圧する機能を有し、燃料電池3の電力および動力用バッテリ40の入出力電力を調整する機能を有している。
そして、DC/DCコンバータ36は、コントロールユニット29と電気的に接続されており(図1の破線参照)、これにより、コントロールユニット29から出力される出力制御信号の入力に応じて、燃料電池3の出力(出力電圧)を制御する。
また、DC/DCコンバータ36は、配線により、燃料電池3および動力用バッテリ40にそれぞれ電気的に接続されているとともに、配線の分岐により、インバータ38に電気的に接続されている。
これにより、DC/DCコンバータ36からモータ37への電力は、インバータ38において直流電力から三相交流電力に変換され、三相交流電力としてモータ37に供給される。
2.燃料電池システムによる発電
上記した燃料電池システム2では、コントロールユニット29の制御により、燃料供給弁34が開かれ、燃料供給ポンプ33および燃料還流ポンプ35が駆動されることにより、液体燃料が、燃料供給ライン31を介してアノード9に供給される。一方、空気供給弁44が開かれ、空気供給ポンプ43が駆動されることにより、空気が空気供給ライン41を介してカソード10に供給される。なお、燃料供給弁34は、液体燃料が所定量供給された後に閉じられる。
アノード9では、液体燃料が、アノード電極11と接触しながら燃料供給路13を通過する。一方、カソード10では、空気が、カソード電極16と接触しながら空気供給路18を通過する。
そして、各電極(アノード電極11およびカソード電極16)において電気化学反応が生じ、起電力が発生する。例えば、電解質層8がアニオン交換膜であり、液体燃料がヒドラジンである場合には、下記式(1)〜(3)の通りとなる。
(1) N+4OH→N+4HO+4e (アノード電極11での反応)
(2) O+2HO+4e→4OH (カソード電極16での反応)
(3) N+O→N+2HO (燃料電池3全体での反応)
このようなアノード電極11およびカソード電極16での電気化学的反応が連続的に生じることによって、燃料電池3全体として、上記式(3)で表わされる反応が生じて、燃料電池3に起電力が発生する。
そして、発生した起電力が、配線を介して、DC/DCコンバータ36に送電され、動力部7では、インバータ38およびモータ37、および/または、動力用バッテリ40に送電される。そして、モータ37では、インバータ38により三相交流電力に変換された電気エネルギーが電動車両1の車輪を駆動させる機械エネルギーに変換される。一方、動力用バッテリ40では、その電力が充電される。
また、燃料給排部4では、燃料還流ポンプ35および燃料供給ポンプ33の駆動力により、アノード9から排出される使用後および未反応の液体燃料(排出液)が、燃料排出ライン31を通過して上流側の底部流通口24から気液分離器23に流入する。気液分離器23では、水位が金属フィルター53よりも下方位置に保持される液体燃料の液溜まり39が、気液分離器23の中空部分に生じるとともに、液溜まり39に含まれるガス(気体)が液溜まり39の上方空間へ分離される。その一方で、液溜まり39の一部が、下流側の底部流通口24から還流ライン32に流出する。
還流ライン32に流出する液体燃料は、燃料供給ライン30の流れ方向途中部分において、燃料タンク22から供給される液体燃料と混合された後、再び燃料供給口15から燃料供給路13に流入する。
このようにして、液体燃料が、クローズドライン(還流ライン32、燃料供給ライン30、燃料排出ライン30、気液分離器23および燃料供給路13)を循環する。なお、気液分離器23で分離された気体は、ガス排出弁27が開かれることにより、ガス排出管26を介して外部へ排出される。
上記の燃料電池システム2では、燃料電池3の出力向上の観点から、稼働中(発電中)の燃料電池3の温度は、好ましくは、50℃以上、65℃以下である。
燃料電池3の温度が上記の範囲である場合には、コントロールユニット29の制御により、燃料供給弁34および空気供給弁44の開度や、燃料供給ポンプ33、燃料還流ポンプ35および空気供給ポンプ43の駆動率などが制御され、通常運転(定常運転)される(通常運転モード)。
そして、燃料電池3から出力された電力が、電力を消費する機器(例えば、モータ37など)に送電され、適宜、用いられる。
一方、例えば、燃料電池が休止状態(低温状態)から稼働を開始した場合など、燃料電池3の温度が上記下限(好ましくは、50℃)を下回る場合には、燃料電池3は、要求される出力に依存することなく、最大出力(一定出力)で発電される(暖機運転モード)。
暖機運転モードにおける運転方法としては、例えば、空気供給ポンプ43を最大出力で駆動させ、空気の供給量を最大にする方法や、例えば、燃料還流ポンプ35および燃料供給ポンプ33を最大出力で駆動させ、液体燃料の供給量を最大にする方法などが挙げられる。
上記の燃料電池システム2において、燃料電池3の温度が上記下限を下回る場合には、燃料電池3の温度が上記下限を上回る場合に比べ、燃料電池3の出力特性に劣る場合がある。しかし、出力特性が低い温度領域において、燃料電池3が最大出力で発電することにより、燃料電池3の温度上昇が促進され、その結果、比較的短時間で、燃料電池3の出力特性の向上を図ることができる。
なお、暖機運転モードにおける最大出力で得られる発電量は、通常運転モードにおいて通常運転(定常運転)で得られる発電量より、少ない場合がある。
一方、燃料電池3の温度が上記上限(好ましくは、65℃)を上回る場合には、例えば、燃料電池3が損傷する場合があるため、冷却水を循環させるなど、適宜の方法で、燃料電池3が冷却される。
3. 反応生成物の除去
上記した燃料電池システム2において、燃料電池3から排出される排出液は、未反応の液体燃料の他、燃料電池3における液体燃料の反応生成物および反応生成水を含んでいる。
反応生成物は、用いられる液体燃料の種類により異なるが、液体燃料としてヒドラジンが用いられる場合には、上記(1)〜(3)で示したように、反応生成物として窒素(N)が生じる。また、液体燃料の種類によっては、上記式(1)〜(3)で示されない副反応(例えば、液体燃料の分解反応など)が生じ、例えば、液体燃料としてヒドラジンが用いられる場合には、ヒドラジンが分解され、反応生成物としてアンモニア(NH)が生じる場合がある。
このような反応生成物は、燃料電池3から排出液に含有された状態で排出され、上記したように気液分離器23において気体成分として分離され、燃料電池システム2から排出される。このような場合、例えば、アンモニアなどが気体成分として排出されると、環境負荷を生じる場合がある。
そこで、この燃料電池システム2では、気液分離器23の内部に配置された分離装置52により、燃料電池3から排出される排出液から、反応生成物(アンモニアなど)を除去する。
より具体的には、この燃料電池システム2では、気液分離器23において、反応生成物(アンモニアなど)が気体成分として分離される。分離された反応生成物(アンモニアなど)は、金属フィルター53を通過し、分離装置52(吸着材など)に到達する。そして、反応生成物(アンモニアなど)は、分離装置52(吸着材など)において、気体成分から分離および除去される。
一方、上記した燃料電池システム1では、気液分離器23の温度が、燃料電池3(本体)および排出液の温度に比べ、低くなる場合がある。
より具体的には、例えば、燃料電池3が起動(稼働開始)すると、燃料電池3の温度が上昇し、また、その燃料電池3から排出される排出液の温度も上昇する。
そのため、排出液が流入される気液分離器23の温度も上昇するが、気液分離器23は、燃料電池3から離隔されているため、気液分離器23の温度の上昇速度は、燃料電池3の温度の上昇速度よりも遅い。
その結果、燃料電池3が起動した後、所定時間が経過するまでは、燃料電池3の温度に比べ、気液分離器23の温度が低くなる。
このような場合において、比較的高温の燃料電池3から、比較的高温の排出液が排出され、排出液が排出され、比較的低温の気液分離器23において、液体と気体とに分離されると、分離された気体が、気液分離器23の内部で冷却される。その結果、気体の出口側において、飽和蒸気量が低下し、凝縮により水などの液滴が生じる場合がある。
そして、生じた液滴が、気液分離器23の内部の分離装置52(吸着材など)に付着すると、分離装置52(吸着材など)が劣化し、反応生成物(アンモニアなど)の分離効率が低下する場合がある。
そこで、この燃料電池システム1では、以下に示す方法により、燃料電池システムを制御し、反応生成物を効率よく分離する。
4. 燃料電池システムの制御方法
図2は、図1の制御ユニット29において実行される制御処理を示すフロー図である。図2に示す制御処理(プログラム)は、例えば、制御ユニット29のROMに記憶されており、その制御処理がCPUにより実行される。
この制御処理は、燃料電池3の起動(運転開始)をトリガーとして、スタートされる。なお、燃料電池3では、第1温度センサ51により検知される燃料電池3の温度に応じて、通常運転モードと、暖機運転モードとが、適宜切り替えられる。
そして、この制御方法では、まず、燃料電池3と気液分離器23との温度差を検知する(温度差検知工程(ステップS1))。
より具体的には、例えば、第1温度センサ51により燃料電電池3の温度Tが検知され、また、第2温度センサ54により気液分離器23の温度Tが検知される。そして、それらの温度が、電気信号としてコントロールユニット23に入力され、その差(T−T)が算出される。
次いで、この方法では、燃料電池3と気液分離器23との温度差(T−T)が、予め設定される所定値ΔTを、超えるか否かが判定される(ステップS2)。
なお、所定値ΔTとして設定される値は、具体的には、例えば、10℃以上、20℃以下である。
そして、燃料電池3と気液分離器23との温度差(T−T)が、予め設定される所定値ΔTを超える場合(ステップS2:YES)には、加熱装置45を稼働させる(稼働工程(ステップS3〜S5))。
稼働工程では、まず、燃料電池3が暖機運転モードであるか否かを判定する(判定工程(ステップS3))。
すなわち、この燃料電池システム2では、上記したように、燃料電池3の通常運転モードと暖機運転モードとが、燃料電池3の温度に応じて、適宜切り替えられている。そこで、燃料電池3が通常運転モードであるか、暖機運転モードであるかが、コントロールユニット29によって判断される。
そして、上記の判定工程において、燃料電池3が暖機運転モードであると判定された場合(ステップS3:YES)には、加熱装置45の出力を最大とする(最大出力稼働工程(ステップS4))。
すなわち、燃料電池3が暖機運転モードである場合には、燃料電池3が最大出力(一定出力)で発電される。そこで、燃料電池3により出力された電力を用いて、加熱装置45を、最大出力(一定出力)で稼働させる。
これにより、気液分離器23を効率よく温めることができる。
一方、上記の判定工程において、燃料電池3が通常運転モードであると判定された場合(ステップS3:NO))には、加熱装置45の出力を変動させる(変動出力稼働工程(ステップS5))。
すなわち、燃料電池3が通常運転モードである場合には、通常運転(定常運転)により燃料電池3から出力された電力が、電力を消費する機器(例えば、モータ37など)に送電され、適宜用いられる。
そして、燃料電池3により出力される電力から、電力を消費する機器(例えば、モータ37など)に送電される電力を差し引いた、残余の電力(すなわち、余剰の電力)が、加熱装置45において用いられる。
このような残余の電力(余剰の電力)は、燃料電池3により出力される電力の量が一定になるように、電力を消費する機器(例えば、モータ37など)に送電される電力の量に応じて、適宜変動する。
そのため、加熱装置45において用いられる電力が変動し、加熱装置45の出力が変動する。換言すれば、加熱装置45が、変動する出力で稼働される。
その結果、燃料電池3により出力される電力の量の変動を抑制することができるため、電力を効率よく使用することができ、また、気液分離器23を効率よく温めることができる。
また、上記の温度差検知工程において、燃料電池3の温度と気液分離器23の温度との差(T−T)が、所定値ΔT未満であると検知された場合(ステップS2:NO)には、気液分離器23を加熱する必要がないと判断されるため、コントロールユニット29の制御により、加熱装置45を停止させる(停止工程(ステップS6))。
このような操作が、燃料電池3の運転中に繰り返され(リターン)、また、燃料電池3の運転停止とともに、終了される。
5.作用効果
上記の燃料電池システム2は、燃料電池3から出力される電力によって気液分離器23を温めるための加熱装置45を備えている。そのため、上記の燃料電池システム2によれば、燃料電池3から出力される電力によって気液分離器23を温めることができ、気液分離器23において飽和蒸気圧が低下することを抑制することができる。その結果、液滴の発生を抑制することができるため、反応生成物の分離効率の低下を抑制することができる。
また、上記の燃料電池システム2の制御方法によれば、燃料電池3と気液分離器23との温度差が所定値以上である場合に、燃料電池3の運転モードに応じて、加熱装置45を作動させ、気液分離器23を温めることができる。そのため、気液分離器23において飽和蒸気圧が低下することを抑制することができる。その結果、液滴の発生を抑制することができるため、反応生成物の分離効率の低下を抑制することができる。
なお、上記した実施形態では、燃料還流ポンプ35により燃料を送液しているが、例えば、燃料還流ポンプ35に代えて、公知の電磁弁などを用い、圧力差により燃料を送液してもよい。
2 燃料電池システム
3 燃料電池
23 気液分離器
30 燃料供給ライン
31 燃料排出ライン
45 加熱装置

Claims (2)

  1. 液体燃料が供給および排出される燃料電池と、
    前記燃料電池に対して液体燃料を供給する燃料供給経路と、
    前記液体燃料の反応生成物を含む排出液を、前記燃料電池から排出する燃料排出経路と、
    前記燃料排出経路に接続される気液分離器と、
    前記燃料電池から出力される電力によって、前記気液分離器を温めるための加熱装置と
    を備えることを特徴とする、燃料電池システム。
  2. 請求項1に記載の燃料電池システムを制御するための制御方法であって、
    前記燃料電池と前記気液分離器との温度差を検知する温度差検知工程、
    前記温度差が所定値以上である場合に、前記加熱装置を稼働させる稼働工程、および、
    前記温度差が所定値未満である場合に、前記加熱装置を停止させる停止工程
    を備え、
    前記稼働工程は、
    前記燃料電池が暖機運転モードであるか通常運転モードであるかを判定する判定工程、
    前記判定工程において暖機運転モードであると判定された場合に、前記加熱装置の出力を最大とする最大出力稼働工程、および、
    前記判定工程において通常運転モードであると判定された場合に、前記加熱装置の出力を変動させる変動出力稼働工程
    を備えることを特徴とする、燃料電池システムの制御方法。
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