JP6183439B2 - レーザ励起蛍光顕微鏡 - Google Patents

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Description

本発明は、複数種類の励起光と複数種類の蛍光とを分離する高機能ダイクロイックミラーを備えたレーザ励起蛍光顕微鏡に関する。
複数種類の蛍光色素で多重染色された標本を共焦点レーザ走査型蛍光顕微鏡で観察する場合、波長の異なる複数種類のレーザ光が励起光として使用されると共に、それらの励起光と、それら励起光に応じて生じる複数種類の蛍光とを分離するダイクロイックミラーが使用される。このダイクロイックミラーの波長特性には、分離波長(反射帯域から透過帯域への立ち上がり箇所)が複数化されているという特徴がある。本明細書では、このように分離波長の複数化されたダイクロイックミラーを「高機能ダイクロイックミラー」という。
図20において実線で示すのは、非特許文献1で紹介された高機能ダイクロイックミラーの透過率の波長特性カーブである。この高機能ダイクロイックミラーには、通常、ガラス基板上に誘電体多層膜を形成したものが使用される。その誘電体多層膜で複数種類の励起光と複数種類の蛍光とを高効率に分離するには、誘電体多層膜の膜設計時に、反射帯域の反射率が高まり、透過帯域の透過率が高まり、波長特性カーブのリップルが抑えられるよう工夫すればよい。
オリンパスカタログ、共焦点レーザ走査型顕微鏡FV1000 FLUOVIEW UIS2
しかしながら、誘電体多層膜の特性を強く制御しようとすると、誘電体多層膜の総膜厚は増大する傾向にある。総膜厚が大きいと、多層膜の応力に起因してガラス基板が歪み易くなるので、レーザスポットの形状が悪化し、蛍光画像の空間分解能が低下する虞がある。
そこで本発明は、高効率であり、しかも空間分解能の高いレーザ励起蛍光顕微鏡を提供することを目的とする。
本発明の一例であるレーザ励起蛍光顕微鏡は、波長の異なる少なくとも2種類の励起光を出射するレーザ光源部と、前記レーザ光源部が出射した前記2種類の励起光を標本へ集光する集光部の間に配置されたダイクロイックミラーであって、前記レーザ光源部が出射した前記2種類の励起光を反射して前記集光部へ入射させると共に、それら2種類の励起光に応じて前記標本で発生した2種類の蛍光を透過させる高機能ダイクロイックミラーと、前記ダイクロイックミラーを透過した前記2種類の蛍光を個別に検出する複数の検出器を含む検出部と、を備えたレーザ励起蛍光顕微鏡において、前記ダイクロイックミラーに対する前記励起光及び前記蛍光の入射角度θは、25°より小さく、前記ダイクロイックミラーに対する前記2種類の蛍光の各々の透過率は、95%以上であることを特徴とする。
本発明によれば、高効率であり、しかも空間分解能の高いレーザ励起蛍光顕微鏡が実現する。
図1は、顕微鏡システムの構成図である。 図2は、スペクトル検出ユニット600の構成図である。 図3は、高機能ダイクロイックミラー22の透過率の波長特性カーブを説明する図である。 図4は、入射角度θ=12°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラーの構成を示す図である。 図5は、図4の続きである。 図6は、入射角度θ=12°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラーの波長特性カーブである(s偏光成分、p偏光成分)。 図7は、入射角度θ=12°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラーの波長特性カーブである(s偏光成分とp偏光成分との平均)。 図8は、入射角度θ=15°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラーの構成を示す図である。 図9は、図8の続きである。 図10は、入射角度θ=15°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラー22の波長特性カーブである(s偏光成分、p偏光成分)。 図11は、入射角度θ=15°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラー22の波長特性カーブである(s偏光成分とp偏光成分との平均)。 図12は、入射角度θ=25°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラー22の構成を示す図である。 図13は、図12の続きである。 図14は、入射角度θ=25°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラー22の波長特性カーブである(s偏光成分、p偏光成分)。 図15は、入射角度θ=25°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラー22の波長特性カーブである(s偏光成分とp偏光成分との平均)。 図16は、入射角度θ=45°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラー22の構成を示す図(比較例)である。 図17は、図16の続きである。 図18は、入射角度θ=45°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラーの波長特性カーブ(比較例)である(s偏光成分、p偏光成分)。 図19は、入射角度θ=45°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラーの波長特性カーブ(比較例)である(s偏光成分とp偏光成分との平均)。 図20は、非特許文献1で紹介された高機能ダイクロイックミラーの透過率の波長特性カーブである。
以下、本発明の実施形態を説明する。本実施形態は、共焦点レーザ走査型蛍光顕微鏡システムの実施形態である。
先ず、顕微鏡システムの構成を説明する。図1は、顕微鏡システムの構成図である。図1に示すとおり顕微鏡システムには、レーザユニット10と、共焦点ユニット100と、顕微鏡本体110と、検出ユニット50と、不図示の制御ユニットとが備えられる。このうちレーザユニット10と共焦点ユニット100との間は光ファイバ18によって光学的に結合され、共焦点ユニット100と検出ユニット50との間は光ファイバ38によって光学的に結合される。
顕微鏡本体110には、複数種類の蛍光色素によって多重染色された標本Sがセットされている。ここでは簡単のため、染色に使用された蛍光色素の種類数を2とし、励起波長が405nmである第1蛍光色素と、励起波長が488nmである第2蛍光色素とを想定する。因みに、第1蛍光色素の蛍光波長は、その励起波長の長波長側(おおよそ430nm〜470nmの範囲)であり、第2蛍光色素の蛍光波長は、その励起波長の長波長側(おおよそ510nm〜610nmの範囲)である。
レーザユニット10には、第1蛍光色素の励起波長(405nm)と同じ波長のレーザ光を発光するレーザ光源11と、第2蛍光色素の励起波長(488nm)と同じ波長のレーザ光を発光するレーザ光源12と、全反射ミラー15と、コンバイナミラー(ダイクロイックミラー)16と、AOTF(音響光学フィルタ)14と、ファイバカプラ17とが備えられる。因みに、レーザ光源11から射出するレーザ光の波長は、個体差があるために、波長400nm〜415nmのばらつきの幅を持ち、レーザ光源12から射出するレーザ光の波長も同様に、波長486nm〜490nmのばらつきの幅を持つ。
共焦点ユニット100には、コリメートレンズ21と、全反射ミラー22Aと、高機能ダイクロイックミラー22と、光スキャナ(ガルバノスキャナなど)23と、瞳投影レンズ24と、集光レンズ27と、ピンホール部材28と、リレーレンズ34とが備えられる。このうち高機能ダイクロイックミラー22は、ガラス基板上に分離膜として誘電体多層膜を形成したものである。
顕微鏡本体110には、集光レンズ25と、対物レンズ26と、標本Sを支持する不図示のステージとが備えられる。対物レンズ26の焦点が標本Sに合った状態では、標本Sと、光ファイバ18の出射端と、ピンホール部材28と、光ファイバ38の入射端とは光学的に共役となる。
検出ユニット50には、コリメートレンズ51と、ダイクロイックミラー52と、エミッションフィルタ53、56と、集光レンズ54、55と、光電子増倍管(PMT)57、58とが備えられる。
以上の顕微鏡システムにおいて、レーザユニット10、共焦点ユニット100、顕微鏡本体110、検出ユニット50は、不図示の制御ユニットに接続される。その制御ユニットには、各部を制御する制御回路や、画像処理を実行する演算回路などが搭載される。また、その制御ユニットは、コンピュータを介して入力器や表示器に接続される。
次に、顕微鏡システムの動作を説明する。
レーザユニット10において、レーザ光源12から射出したレーザ光は、コンバイナミラー16を透過し、AOTF14、ファイバカプラ17を介して光ファイバ18へ入射し、共焦点ユニット100へ向かう。また、レーザ光源11から射出したレーザ光は、全反射ミラー15で反射した後、コンバイナミラー16で反射し、レーザ光源12から射出したレーザ光と共通の光路へ導かれる。なお、このレーザユニット10から共焦点ユニット100に向かうレーザ光の波長選択や光量調整は、AOTF14によって行われる。
共焦点ユニット100において、光ファイバ18の出射端から射出したレーザ光は、コリメートレンズ21により平行光束に変換され、全反射ミラー22Aへ入射する。全反射ミラー22Aへ入射したレーザ光は、全反射ミラー22Aで反射し、高機能ダイクロイックミラー22へ入射する。
高機能ダイクロイックミラー22の分離波長は、第1蛍光色素の励起波長(405nm)の長波長側と、第2蛍光色素の励起波長(488nm)の長波長側とに設定されている(詳細は後述)。よって、レーザ光源11から射出したレーザ光に含まれる励起光(波長405nm)と、レーザ光源12から射出したレーザ光に含まれる励起光(波長488nm)とは、高機能ダイクロイックミラー22で反射する。
高機能ダイクロイックミラー22で反射した励起光は、光スキャナ23へ入射する。光スキャナ23へ入射した励起光は、光スキャナ23の2つの可動ミラーで順に反射してから光スキャナ23を射出する。光スキャナ23を射出した励起光は、瞳投影レンズ24を介して顕微鏡本体110へ向かう。
顕微鏡本体110へ入射した励起光は、集光レンズ25を介して対物レンズ26へ入射する。対物レンズ26へ入射した励起光は、その対物レンズ26によって集光され、標本S上にレーザスポットを形成する。この状態で光スキャナ23が駆動されると、レーザスポットが標本S上を二次元走査する。
標本Sのレーザスポット上では、蛍光が発生する。その蛍光は、レーザスポットを形成した励起光の光路を逆方向に進行しながら対物レンズ26、集光レンズ25、瞳投影レンズ24、光スキャナ23を介して高機能ダイクロイックミラー22へ入射する。その蛍光の高機能ダイクロイックミラー22に対する入射角度は、全反射ミラー22Aで反射したレーザ光の高機能ダイクロイックミラー22に対する入射角度と同じである。
高機能ダイクロイックミラー22の分離波長は、前述したとおり、第1蛍光色素の励起波長(405nm)の長波長側と、第2蛍光色素の励起波長(488nm)の長波長側とに設定されている(詳細は後述)。よって、高機能ダイクロイックミラー22へ入射した蛍光の多くは、高機能ダイクロイックミラー22を透過し、集光レンズ27へ向かう。
集光レンズ27へ入射した蛍光は、ピンホール部材28のピンホールに向けて集光する。ピンホールに向かって集光した蛍光のうち、ピンホールから外れた領域に入射した余分な光線は、ピンホール部材28においてカットされ、ピンホールに入射した必要な光線は、ピンホール部材28を通過してリレーレンズ34へ向かう。リレーレンズ34へ入射した蛍光は、光ファイバ38へ入射し、検出ユニット50へ向かう。
検出ユニット50において、光ファイバ38の出射端から射出した蛍光は、コリメートレンズ51により平行光束に変換され、ダイクロイックミラー52へ入射する。そのダイクロイックミラー52の分離波長は、第1蛍光色素の蛍光波長(430nm〜470nm)と第2蛍光色素の蛍光波長(510nm〜610nm)との間の波長に設定されている。よって、検出ユニット50に入射した蛍光のうち、第1蛍光色素で発生した蛍光(第1蛍光)はダイクロイックミラー52で反射し、第2蛍光色素で発生した蛍光(第2蛍光)はダイクロイックミラー52を透過する。
ダイクロイックミラー52で反射した第1蛍光は、エミッションフィルタ53、集光レンズ54を介して光電子増倍管57へ入射し、ダイクロイックミラー52を透過した第2蛍光は、エミッションフィルタ56、集光レンズ55を介して光電子増倍管58へ入射する。ここでエミッションフィルタ53、56の各々は、誘電体多層膜からなる干渉フィルタであり、蛍光波長のみを選択的に透過して他の波長を遮光するフィルタである。そのために、エミッションフィルタ53の透過波長帯域は430nm〜470nmに、エミッションフィルタ56の透過波長帯域は510nm〜610nmに設定されている。これらのフィルタは、第1蛍光色素の励起波長(405nm)と第2蛍光色素の励起波長(488nm)とを遮光する。したがって、標本Sのレーザスポット上で反射したレーザ光が、蛍光に混入して同じ経路を通ったとしても、光電子増倍管57、58に不要なレーザ光として入射するのを防止する。光電子増倍管57、58の各々は、不図示の制御ユニットによって光スキャナ23と共に制御され、入射光量を示す電気信号を生成する。よって、前述した二次元走査の期間中に光電子増倍管57が繰り返し生成する電気信号は、標本Sで生じた第1蛍光による蛍光画像を示し、前述した二次元走査の期間中に光電子増倍管58が繰り返し生成する電気信号は、標本Sで生じた第2蛍光による蛍光画像を示す。これらの蛍光画像は、制御ユニットを介してコンピュータへ取り込まれ、表示器へ表示されたり、コンピュータの記憶部(ハードディスクドライブなど)に保存されたりする。
なお、以上の顕微鏡システムでは、検出ユニット50の代わりに、図2に示すスペクトル検出ユニット600を使用することもできる。図2に示すとおり、スペクトル検出ユニット600には、コリメートレンズ61と、反射型の回折格子62と、集光ミラー63と、マルチチャンネル式の光電子増倍管64とが備えられる。光電子増倍管64の受光チャンネルの数は、例えば32である。
このスペクトル検出ユニット600において、光ファイバ38の出射端から射出した蛍光は、コリメートレンズ61により平行光束に変換され、回折格子62へ入射する。回折格子62に入射した蛍光は、波長毎に少しずつずれた方向へ反射する。それらの各波長の蛍光は、集光ミラー63へ入射し、集光ミラー63で反射する。集光ミラー63で反射した各波長の蛍光は、光電子増倍管64の互いに異なる受光チャンネルに集光し、それぞれ電気信号に変換される。なお、標本Sのレーザスポット上で反射したレーザ光も、蛍光に混入して同じ経路を通るが、蛍光と波長が異なるので、その大部分は光電子増倍管64の受光チャンネルの外側に集光するので、電気信号に変換されることはない。前述した二次元走査の期間中に光電子増倍管64が繰り返し生成する各チャンネルの電気信号は、標本Sの蛍光スペクトル画像を示す。この蛍光スペクトル画像は、制御ユニットを介してコンピュータへ取り込まれ、表示器へ表示されたり、コンピュータの記憶部(ハードディスクドライブなど)に保存されたりする。
なお、蛍光スペクトル画像を取り込んだコンピュータは、試薬メーカーが公開している第1蛍光色素の発光スペクトルデータと、試薬メーカーが公開している第2蛍光色素の発光スペクトルデータとに基づき、蛍光スペクトル画像から、第1蛍光による蛍光画像と第2蛍光による蛍光画像とを分離(アンミックス)することもできる。
次に、高機能ダイクロイックミラー22を説明する。
図1に示すとおり、高機能ダイクロイックミラー22の姿勢は、高機能ダイクロイックミラー22に対するレーザ光及び蛍光の入射角度θが45°より小さくなるよう設定される。高機能ダイクロイックミラー22の前段に配置された全反射ミラー22Aは、高機能ダイクロイックミラー22の入射光路を折り畳むために配置された光路折り曲げミラーである。
このように入射角度θを45°より小さくすると、高機能ダイクロイックミラー22の反射/透過率の波長特性が、入射光の偏光方位に依存しにくくなる。その結果、所望の波長特性を得るのに必要な誘電体多層膜の総膜厚を抑え易くなる。実際、入射角度θを45°より小さくすると、高機能ダイクロイックミラー22の誘電体多層膜の総膜厚は、19.3193μm未満に抑えられる。
そして、誘電体多層膜が薄化することにより、膜応力が弱くなり、高機能ダイクロイックミラー22の平面度が維持されるので、レーザスポットの形状も良好に保たれ、その結果、蛍光画像の空間分解能は高く維持される。また、誘電体多層膜が薄化し層数が減るため、高機能ダイクロイックミラー22の製造コストも抑えられる。
因みに、入射角度θが小さいほど、誘電体多層膜は薄化し易くなる。例えば、入射角度θを25°より小さくすれば、総膜厚は13.43647μm未満に抑えられ、入射角度θを15°より小さくすれば、総膜厚は10.27728μm未満に抑えられる。また、入射角度θを12°に設定すれば、総膜厚を9.42428μmにまで抑えることができる。
但し、入射角度θは、小さ過ぎないことが望ましく、最小でも10°は確保されることが望ましい。なぜなら、入射角度θが10°以下であると、必要な光線が蹴られないよう高機能ダイクロイックミラー22からその周辺の光学素子(全反射ミラー22A又は光スキャナ23)までの距離を大きく確保しなければならなくなり、共焦点ユニット100が大型化するからである。
よって、本実施形態では、入射角度θは0°<θ<45°の範囲内、望ましくは10°<θ<25°の範囲内、さらに望ましくは10°<θ<15°の範囲内(例えば12°程度)に設定されるものとする。
また、本実施形態では、高機能ダイクロイックミラー22の波長特性を制御し易くなったことを利用し、波長特性を以下のとおり制御する。
次に、高機能ダイクロイックミラー22の波長特性が満たす条件を説明する。図3は、高機能ダイクロイックミラー22の透過率の波長特性カーブを説明する図である。
図3に示すとおり、高機能ダイクロイックミラー22の波長特性カーブには、短波長側から順に、第1の反射帯域301、第1の透過帯域401、第2の反射帯域302、第2の透過帯域402が並んでいる。
このうち第1の反射帯域301は、2種類の蛍光色素のうち、一方の蛍光色素の励起波長をカバーし、第2の反射帯域302は、他方の励起波長をカバーしている。
また、第1の透過帯域401は、2種類の蛍光色素のうち、一方の蛍光色素の蛍光波長をカバーし、第2の透過帯域402は、他方の蛍光色素の蛍光波長をカバーしている。
よって、第1の反射帯域301と第1の透過帯域401との境界波長が高機能ダイクロイックミラー22の一方の分離波長に相当し、第2の反射帯域302と第2の透過帯域402との境界波長が高機能ダイクロイックミラー22の他方の分離波長に相当する。
ここで、第1の反射帯域301の反射率、第2の反射帯域302の反射率、第1の透過帯域401の透過率、第2の透過帯域402の透過率は、それぞれ95%以上であり、第1の透過帯域401の波長幅T、第2の透過帯域402の波長幅Tは、それぞれ25nm以上である。
したがって、この高機能ダイクロイックミラー22によると、2種類の蛍光色素の各々の励起光を顕微鏡本体110へ効率よく導入することができ、かつ、標本Sで発生した2種類の蛍光の各々を検出ユニット50(又はスペクトル検出ユニット600)へ効率よく導入することができる。したがって、本実施形態の顕微鏡システムは、2種類の蛍光画像の各々を高感度に検出することができる。
なお、検出感度を更に高めるためには、第1の反射帯域301の反射率は、その波長幅Rの90%以上に亘り98%以上の値を示し、第2の反射帯域302の反射率は、その波長幅Rの90%以上に亘り98%以上の値を示し、第1の透過帯域401の透過率は、その波長幅Tの90%以上に亘り98%以上の値を示し、第2の透過帯域402の透過率は、その波長幅Tの90%以上に亘り98%以上の値を示すことが望ましい。
また、第1の反射帯域301から第1の透過帯域401までの立ち上がり幅Aは6nm以下、第2の反射帯域302から第2の透過帯域402までの立ち上がり幅Aは6nm以下である。つまり、第1反射帯域301から第1の透過帯域401までの立ち上がり、第2反射帯域302から第2の透過帯域402までの立ち上がりは、それぞれ急峻である。
したがって、仮に、2種類の蛍光色素の一方又は双方のストークスシフトが短かったとしても、2種類の蛍光画像の検出感度が低下することは無い。
また、第1の透過帯域401と第2の透過帯域402との間隙Bは、20nm以下に抑えられる。また、前述したとおり第1の透過帯域401、第2の透過帯域402の各々の透過率は95%以上と高いので、第1の透過帯域401、第2の透過帯域402の各々にリップルは生じていないとみなせる。
したがって、スペクトル検出ユニット600(図2)が検出する蛍光スペクトル画像には、標本Sで生じた蛍光のスペクトルが殆ど欠け無く反映される。その結果、前述したアンミックスは高精度に行われる。
また、第1の反射帯域301、第2の反射帯域302の各々の反射率は95%以上と高いので、検出ユニット50(又はスペクトル検出ユニット600)へ不要なレーザ光が入射する可能性は低い。
したがって、検出ユニット50(又はスペクトル検出ユニット600)は、高いSN比で蛍光画像(又は蛍光スペクトル画像)を検出することができる。特に、スペクトル検出ユニット600の内部では、マルチチャンネル式の光電子増倍管64に不要なレーザ光が入射するのを防止する措置として、最も効果的な措置である、誘電体多層膜からなる干渉フィルタを使用することが出来ず、高いSN比で蛍光スペクトル画像を検出することが困難なので、効果が高い。
次に、高機能ダイクロイックミラー22の実施例を説明する。
図4、図5は、入射角度θ=12°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラー22の構成を示す図である。その構成は、石英ガラス基板上にNbの誘電体膜とSiOの誘電体膜とが交互に形成されたものである。なお、図5は、図4の続きである。これらの図4、図5に示すとおり、入射角度θ=12°の条件下では、誘電体多層膜の総膜厚は、9.42428μmに抑えられる。
図6、図7は、入射角度θ=12°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラー22の波長特性カーブである。図6では、s偏光成分に対する特性とp偏光成分に対する特性とを別々に描いており、図7では、s偏光成分に対する特性とp偏光成分に対する特性との平均を描いてある。図6に示すとおり、θ=12°の条件下では、p偏光成分に対する特性とs偏光成分に対する特性とのばらつきが小さいので、図7に示すとおり、波長特性カーブの形状は良好になる。なお、ここで言う「良好な形状」とは、反射帯域の反射率が高く、透過帯域の透過率が高く、反射帯域から透過帯域への立ち上がりが急峻であり、透過帯域同士の間隙が狭く、リップルの少ない形状のことを指す。
図8、図9は、入射角度θ=15°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラー22の構成を示す図である。その構成は、石英ガラス基板上にNbの誘電体膜とSiOの誘電体膜とが交互に形成されたものである。なお、図9は、図8の続きである。これらの図8、図9に示すとおり、入射角度θ=15°の条件下では、誘電体多層膜の総膜厚は、10.27728μmに抑えられる。
図10、図11は、入射角度θ=15°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラー22の波長特性カーブである。図10では、s偏光成分に対する特性とp偏光成分に対する特性とを別々に描いており、図11では、s偏光成分に対する特性とp偏光成分に対する特性との平均を描いてある。図10に示すとおり、θ=15°の条件下では、p偏光成分に対する特性とs偏光成分に対する特性とのばらつきが小さいので、θ=12°のときほどではないものの、図11に示すとおり波長特性カーブの形状は良好となる。
図12、図13は、入射角度θ=25°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラー22の構成を示す図である。その構成は、石英ガラス基板上にNbの誘電体膜とSiOの誘電体膜とが交互に形成されたものである。なお、図13は、図12の続きである。これらの図12、図13に示すとおり、入射角度θ=25°の条件下では、誘電体多層膜の総膜厚は、13.43647μmに抑えられる。
図14、図15は、入射角度θ=25°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラー22の波長特性カーブである。図14では、s偏光成分に対する特性とp偏光成分に対する特性とを別々に描いており、図15では、s偏光成分に対する特性とp偏光成分に対する特性との平均を描いてある。図14に示すとおり、θ=25°の条件下では、p偏光成分に対する特性とs偏光成分に対する特性とのばらつきが小さいので、θ=15°のときほどではないものの、図15に示すとおり波長特性カーブの形状は良好となる。
図16、図17は、入射角度θ=45°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラーの構成を示す図(比較例)である。その構成は、石英ガラス基板上にNbの誘電体膜とSiOの誘電体膜とが交互に形成されたものである。なお、図17は、図16の続きである。これらの図16、図17に示すとおり、入射角度θ=45°の条件下では、誘電体多層膜の総膜厚は大きく、19.3193μmである。
図18、図19は、入射角度θ=45°の条件下で設計された高機能ダイクロイックミラーの波長特性カーブ(比較例)である。図18では、s偏光成分に対する特性とp偏光成分に対する特性とを別々に描いており、図19では、s偏光成分に対する特性とp偏光成分に対する特性との平均を描いてある。図18に示すとおり、θ=45°の条件下では、p偏光成分に対する特性とs偏光成分に対する特性とのばらつきが大きいので、図19に示すとおり、波長特性カーブの形状は不良となる。
以上の図4〜図19によると、入射角度θが小さいほど誘電体多層膜が薄化され、しかも波長特性カーブの形状が良好になることが判明した。したがって、高機能ダイクロイックミラー22に対する入射角度θを45°より小さくするだけで、高機能ダイクロイックミラー22の歪み防止と、高機能ダイクロイックミラー22の高性能化との双方が同時に達成されることは、明らかである。
(その他)
なお、本実施形態の顕微鏡システムでは、標本Sを染色する複数種類の蛍光色素(ここでは2種類)の組み合わせが変更される可能性を想定し、図1に示したレーザユニット10、高機能ダイクロイックミラー22、ダイクロイックミラー52の各々は、交換可能であることが望ましい。その場合、例えば、共焦点ユニット100には、分離波長の組み合わせの互いに異なる複数種類の高機能ダイクロイックミラーが装着されたターレット(ホイール状の交換装置)が搭載される。
因みに、交換装置は、ダイクロイックミラーの枚数分だけホイールの径が大きくなり、大型化してしまうのが常であるが、本実施形態の顕微鏡システムのようにダイクロイックミラーに対する入射角度θが45°より小さい場合は、ダイクロイックミラーの面積を小さくすることができるので、その分だけ交換装置も小型化される。
また、本実施形態では、標本Sを染色した蛍光色素の種類数が2である場合を想定したが、3以上に拡張してもよい。その場合、レーザユニット10が出射可能なレーザ光の種類数は3以上に設定され、高機能ダイクロイックミラー22の分離波長の個数も3以上に設定され、検出ユニット50が検出可能な蛍光画像の数(又はコンピュータがアンミックス可能な蛍光画像の数)も3以上に設定される。このように蛍光色素の種類数が3以上であった場合にも、高機能ダイクロイックミラー22に対する入射角度θを45°より小さくするだけで、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
なお、以上の実施形態において説明された発明を整理して、付記として開示する。
(付記1)
2種類の蛍光色素を個別に励起する2種類の励起光を出射するレーザ光源部と、前記2種類の蛍光色素が含まれる標本へ前記2種類の励起光を集光する対物レンズと、前記レーザ光源部と前記対物レンズとの間に配置されたダイクロイックミラーであって、
前記レーザ光源部が出射した前記2種類の励起光を反射して前記対物レンズへ入射させると共に、それら2種類の励起光に応じて前記標本に含まれる前記2種類の蛍光色素から個別に発生した2種類の蛍光を透過させる高機能ダイクロイックミラーと、
前記レーザ光源部が出射した前記2種類の励起光を反射し、前記2種類の励起光を25°よりも小さい入射角度θで前記ダイクロイックミラーに入射させるミラーと、
前記ダイクロイックミラーで反射された前記2種類の励起光を前記対物レンズに導くと共に、前記対物レンズを介した前記2種類の蛍光を25°よりも小さい入射角度θで前記ダイクロイックミラーに入射させる光スキャナと、
前記ダイクロイックミラーを透過した前記2種類の蛍光を分光して検出する検出器を含む検出部と、を備え、
前記ダイクロイックミラーは、複数の反射帯域および複数の透過帯域を有することを特徴とするレーザ励起蛍光顕微鏡。
(付記2)
付記1に記載のレーザ励起蛍光顕微鏡において、
前記検出部が生成した蛍光スペクトルデータを、前記2種類の蛍光色素の一方に対応する蛍光スペクトルデータと、他方に対応する蛍光スペクトルデータとに、アンミックスするアンミックス部をさらに備える
ことを特徴とするレーザ励起蛍光顕微鏡。
(付記3)
付記1または付記2に記載のレーザ励起蛍光顕微鏡において、
前記ダイクロイックミラーの反射/透過率の波長特性カーブは、
前記複数の反射帯域の各々の反射率は95%以上であり、
前記複数の透過帯域の各々の透過率は95%以上であり、
前記複数の透過帯域の波長幅の各々は25nm以上であり、
前記2種類の蛍光色素の一方の励起波長に対応する反射帯域から前記2種類の蛍光色素の一方の蛍光波長に対応する透過帯域までの立ち上がり幅と、前記2種類の蛍光色素の他方の励起波長に対応する反射帯域から前記前記2種類の蛍光色素の他方の蛍光波長に対応する透過帯域までの立ち上がり幅との各々は6nm以下である
ことを特徴とするレーザ励起蛍光顕微鏡。
(付記4)
付記1から付記3の何れか一項に記載のレーザ励起蛍光顕微鏡において、
前記ダイクロイックミラーに対する前記励起光及び前記蛍光の入射角度θは、10°<θ<25°の式を満たす
ことを特徴とするレーザ励起蛍光顕微鏡。
(付記5)
付記4に記載のレーザ励起蛍光顕微鏡において、
前記ダイクロイックミラーに対する前記励起光及び前記蛍光の入射角度θは、10°<θ<15°の式を満たす
ことを特徴とするレーザ励起蛍光顕微鏡。
(付記6)
付記5に記載のレーザ励起蛍光顕微鏡において、
前記ダイクロイックミラーに対する前記励起光及び前記蛍光の入射角度θは、
12°である
ことを特徴とするレーザ励起蛍光顕微鏡。
(付記7)
付記1〜付記6の何れか一項に記載のレーザ励起蛍光顕微鏡において、
前記ダイクロイックミラーの分離膜は、
誘電体多層膜からなる
ことを特徴とするレーザ励起蛍光顕微鏡。
10…レーザユニット,100…共焦点ユニット,110…顕微鏡,50…検出ユニット,18…光ファイバ,38…光ファイバ,11…レーザ光源,12…レーザ光源,15…全反射ミラー,16…コンバイナミラー(ダイクロイックミラー),14…AOTF(音響光学フィルタ),17…ファイバカプラ

Claims (6)

  1. 波長の異なる少なくとも2種類の励起光を出射するレーザ光源部と、
    対物レンズと、
    前記レーザ光源部と前記対物レンズとの間に配置されたダイクロイックミラーと、
    光スキャナと、
    ミラーと、を備え、
    前記ダイクロイックミラーは、前記レーザ光源部から出射された第1の励起光を反射して前記対物レンズへ導き、標本から発生する第1の蛍光を透過して検出器に導き、前記レーザ光源部から出射された第2の励起光を反射して前記対物レンズへ導き、前記標本から発生する第2の蛍光を透過して検出器に導
    前記第1の励起光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、45°未満であり、
    前記第1の蛍光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、45°未満であり、
    前記第2の励起光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、45°未満であり、
    前記第2の蛍光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、45°未満であり、
    前記ダイクロイックミラーは、複数の反射帯域および複数の透過帯域を有し、
    前記第1の励起光は、前記ミラーを介して前記ダイクロイックミラーに入射し、
    前記第2の励起光は、前記ミラーを介して前記ダイクロイックミラーに入射するレーザ励起蛍光顕微鏡。
  2. 前記第1の蛍光は、前記光スキャナを介して前記ダイクロイックミラーに入射し、
    前記第2の蛍光は、前記光スキャナを介して前記ダイクロイックミラーに入射する請求項1に記載のレーザ励起蛍光顕微鏡。
  3. 前記ダイクロイックミラーは、誘電体多層膜である請求項1または2に記載のレーザ励起蛍光顕微鏡。
  4. 前記第1の励起光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、25°未満であり、
    前記第1の蛍光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、25°未満であり、
    前記第2の励起光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、25°未満であり、
    前記第2の蛍光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、25°未満である請求項1〜のいずれか1項に記載のレーザ励起蛍光顕微鏡。
  5. 前記第1の励起光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、15°未満であり、
    前記第1の蛍光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、15°未満であり、
    前記第2の励起光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、15°未満であり、
    前記第2の蛍光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、15°未満である請求項1〜のいずれか1項に記載のレーザ励起蛍光顕微鏡。
  6. 前記第1の励起光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、10°より大きく、
    前記第1の蛍光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、10°より大きく、
    前記第2の励起光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、10°より大きく、
    前記第2の蛍光の前記ダイクロイックミラーへの入射角は、10°より大きい請求項1〜のいずれか1項に記載のレーザ励起蛍光顕微鏡。

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