JP6179672B2 - 燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法 - Google Patents
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Description
この発明は、燃料電池とバッテリとの間に接続される変換器を介して燃料電池の負荷に電力を供給する燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法に関する。
JP2010−287534Aには、燃料電池から変換器を介して燃料電池の補機に電力を供給する燃料電池システムが開示されている。この燃料電池システムは、変換器の温度上昇に伴い変換器の通過可能電力が補機消費電力よりも低くなると、燃料電池に要求される電力を制限する。
上述のような燃料電池システムでは、燃料電池の運転状態によって、コンプレッサから吐出されるカソードガスの流量が、燃料電池に要求される電力を発電するのに必要となる流量よりも高く設定されることがある。例えば、燃料電池システムの排出ガス中の水素濃度が安全基準よりも低くなるように、カソードガスの流量が発電要求に基づく流量よりも高く設定される場合がある。
このような状態で、燃料電池に要求される電力を制限したとしても、カソードガスの流量は制限されないので、補機の消費電力が変換器の通過可能電力よりも低く抑えられずに、バッテリから補機に過大な電力が放電され、バッテリの劣化を招く恐れがある。
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、変換器の通過電力の低下に伴い、発電要求とは異なる要求によってバッテリから補機に過大な電力が放電されるのを回避する燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法を提供することを目的とする。
本発明のある態様によれば、燃料電池システムは、アノードガス及びカソードガスの供給を受けて負荷に応じて発電する燃料電池と、前記燃料電池からの電力の充電、又は、前記負荷への電力の放電を行うバッテリとを含む。また燃料電池システムは、前記燃料電池と前記バッテリとの間に接続され、前記燃料電池及び前記バッテリの少なくとも一方の電圧を変換して前記燃料電池から前記バッテリへ電力を供給する変圧器と、前記バッテリと前記変換器との間に接続され、前記燃料電池の動作を補助する補機類とを含む。さらに燃料電池システムは、前記負荷に基づいて、前記補機類の操作量を制御する発電制御部と、前記燃料電池システムの運転状態に応じて、前記補機類のうちの少なくとも一部の操作量を制御するシステム制御部とを含む。そして燃料電池システムは、前記変換器の温度に基づいて、前記システム制御部によって制御される補機類の操作量を制限する制限部を含む。
以下に、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における燃料電池システム100の構成を示す図である。
図1は、本発明の第1実施形態における燃料電池システム100の構成を示す図である。
燃料電池システム100は、燃料電池スタック1に対して外部からカソードガス及びアノードガスを供給すると共に、電気負荷に応じて燃料電池スタック1を発電させる電源システムである。本実施形態では、燃料電池システム100は、駆動モータ53や、燃料電池スタック1の補機類57などの電気負荷に対して、燃料電池スタック1で発電した発電電力を供給する。
燃料電池システム100は、燃料電池スタック1と、カソードガス給排装置2と、アノードガス給排装置3と、スタック冷却装置4と、電力系5と、コントローラ6とを備える。
燃料電池スタック1は、数百枚の燃料電池を積層した積層電池である。燃料電池スタック1は、アノードガス及びカソードガスの供給を受けて発電する。燃料電池スタック1には、電力を取り出すための出力端子として、アノード電極側出力端子11と、カソード電極側出力端子12とが設けられている。
燃料電池は、アノード電極(燃料極)と、カソード電極(酸化剤極)と、アノード電極及びカソード電力で挟まれる電解質膜とにより構成される。燃料電池では、アノード電極に水素を含有するアノードガス(燃料ガス)と、カソード電極に酸素を含有するカソードガス(酸化剤ガス)とが電解質膜で電気化学反応を起こす。アノード電極及びカソード電極では、以下の電気化学反応が進行する。
アノード電極 : 2H2 → 4H+ + 4e- ・・・(1)
カソード電極 : 4H+ +4e- + O2 → 2H2O・・・(2)
カソード電極 : 4H+ +4e- + O2 → 2H2O・・・(2)
上記(1)及び(2)の電気化学反応によって、起電力が生じるとともに水が生成される。燃料電池スタック1では積層された各燃料電池が互いに直列に接続されているため、各燃料電池に生じるセル電圧の総和が、燃料電池スタック1の出力電圧(例えば数百ボルト)となる。
燃料電池スタック1には、カソードガス給排装置2によってカソードガスが供給され、またアノードガス給排装置3によってアノードガスが供給される。
カソードガス給排装置2は、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するとともに、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスを外気に排出する装置である。
カソードガス供給通路21は、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するための通路である。カソードガス供給通路21には、カソードガスとして酸素を含む空気が外気から取り込まれる。カソードガス供給通路21の一端はフィルタ22に接続され、他端は燃料電池スタック1のカソードガス入口孔に接続される。
フィルタ22は、カソードガス供給通路21に取り込まれる空気中の異物を取り除く。フィルタ22から取り込まれた空気はカソードガス供給通路21に供給される。
カソード流量センサ23は、コンプレッサ24よりも上流のカソードガス供給通路21に設けられる。カソード流量センサ23は、コンプレッサ24に吸引されるカソードガスの流量を検出する。カソード流量センサ23は、検出した流量を示す検出信号をコントローラ6に出力する。
コンプレッサ24は、カソードガス供給通路21に設けられる。コンプレッサ24は、フィルタ22を介して空気をカソードガス供給通路21に取り込み、その空気を燃料電池スタック1に供給する。
圧力センサ25は、コンプレッサ24よりも下流のカソードガス供給通路21に設けられる。圧力センサ25は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの圧力を検出する。圧力センサ25は、検出した圧力を示す検出信号をコントローラ6に出力する。
カソードガス排出通路26は、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスを外気に排出するための通路である。カソードガス排出通路26の一端は燃料電池スタック1のカソードガス出口孔に接続され、他端は開口端となっている。
カソード調圧弁27は、カソードガス排出通路26に設けられる。カソード調圧弁27は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの圧力を調整する。カソード調圧弁27は、コントローラ6によって制御される。
バイパス通路28は、コンプレッサ24から吐出されるカソードガスの一部を、燃料電池スタック1をバイパスしてカソードガス排出通路26に排出するための通路である。バイパス通路28は、コンプレッサ24よりも下流のカソードガス供給通路21から分岐して、カソード調圧弁27よりも下流のカソードガス排出通路26に合流する。
バイパス弁29は、バイパス通路28に設けられる。バイパス弁29としては、例えば弁の開度を段階的に変更可能な電磁弁が用いられる。バイパス弁29は、コントローラ6によって開閉制御される。この開閉制御によって、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量が所望の流量に調節される。
アノードガス給排装置3は、燃料電池スタック1にアノードガスを供給すると共に、燃料電池スタック1からアノードオフガスを排出する装置である。
アノードガス給排装置3は、高圧タンク31と、アノードガス供給通路32と、アノード調圧弁33と、アノード圧力センサ34と、アノードガス排出通路35と、パージ弁36とを備える。
高圧タンク31は、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスを高圧状態に保って貯蔵する。
アノードガス供給通路32は、高圧タンク31からアノードガスを燃料電池スタック1に供給するための通路である。アノードガス供給通路32の一端は高圧タンク31に接続され、他端は燃料電池スタック1のアノードガス入口孔に接続される。
アノード調圧弁33は、アノードガス供給通路32に設けられる。アノード調圧弁33としては、例えば弁の開度を段階的に変更可能な電磁弁が用いられる。アノード調圧弁33は、コントローラ6によって開閉制御される。この開閉制御によって、高圧タンク31から供給されるアノードガスの圧力が所望の圧力に調節される。
アノード圧力センサ34は、アノード調圧弁33よりも下流のアノードガス供給通路32に設けられる。アノード圧力センサ34は、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力を検出する。アノード圧力センサ34は、検出した圧力を示す検出信号をコントローラ6に出力する。
アノードガス排出通路35は、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスを排出するための通路である。アノードガス排出通路35の一端は燃料電池スタック1のアノードガス出口孔に接続され、他端はカソードガス排出通路26に接続される。
パージ弁36は、アノードガス排出通路35に設けられる。パージ弁36は、コントローラ6によって開閉制御される。この開閉制御によって、アノードガス排出通路35からカソードガス排出通路26に排出されるアノードオフガスの流量が調節される。
スタック冷却装置4は、冷媒である冷却水によって燃料電池スタック1を冷却し、燃料電池スタック1を発電に適した温度に調整する装置である。
スタック冷却装置4は、冷却水循環通路41と、ラジエータ42と、バイパス通路43と、三方弁44と、冷却水ポンプ45と、冷却水ヒータ46と、スタック出口水温センサ47と、スタック入口水温センサ48とを含む。
冷却水循環通路41は、燃料電池スタック1を冷却するための冷却水が循環する通路である。
ラジエータ42は、冷却水循環通路41に設けられる。ラジエータ42は、燃料電池スタック1から排出された冷却水を冷却する。
バイパス通路43は、冷却水循環通路41から分岐して、ラジエータ42をバイパスして三方弁44に接続される。バイパス通路43によって、ラジエータ42に冷却水を供給せずに、昇温された冷却水を燃料電池スタック1へ循環させることが可能となる。
三方弁44は、ラジエータ42よりも下流側の冷却水循環通路41に設けられる。三方弁44は、燃料電池スタック1に供給される冷却水のうち、ラジエータ42で冷却された冷却水とバイパス通路43から燃料電池スタック1で昇温された冷却水との割合を調整する。三方弁44は、コントローラ6によって制御される。
例えば、燃料電池スタック1の温度を上昇させる場合には、三方弁44は、バイパス通路43から燃料電池スタック1に供給される冷却水の流量を増やす。一方、燃料電池スタック1の温度を低下させる場合には、三方弁44は、バイパス通路43から燃料電池スタック1に供給される冷却水の流量を増やす。
冷却水ポンプ45は、三方弁44と燃料電池スタック1との間の冷却水循環通路41に設けられる。冷却水ポンプ45は、燃料電池スタック1に冷却水を供給する。冷却水ポンプ45は、コントローラ6によって制御される。
冷却水ヒータ46は、バイパス通路43に設けられる。冷却水ヒータ46は、燃料電池スタック1に供給される冷却水を加熱する。例えば、冷却水ヒータ46は、燃料電池スタック1を暖機するときに、燃料電池スタック1からの発電電力を受けて発熱する。
スタック出口水温センサ47は、燃料電池スタック1の冷却水出口孔の近傍の冷却水循環通路41に設けられる。スタック出口水温センサ47は、燃料電池スタック1から排出された冷却水の温度(以下、「スタック出口水温」という。)を検出する。スタック出口水温センサ47は、検出した温度を示す検出信号をコントローラ6に出力する。
スタック入口水温センサ48は、冷却水ポンプ45と燃料電池スタック1との間の冷却水循環通路41に設けられる。スタック入口水温センサ48は、燃料電池スタック1に供給される冷却水の温度(以下、「スタック入口水温」という。)を検出する。スタック入口水温センサ48は、検出した温度を示す検出信号をコントローラ6に出力する。
電力系5は、スタック電流センサ51と、スタック電圧センサ52と、駆動モータ53と、インバータ54と、バッテリ55と、DC/DCコンバータ56と、補機類57と、バッテリ電流センサ58と、バッテリ電圧センサ59とを含む。
スタック電流センサ51は、アノード電極側出力端子11に接続され、燃料電池スタック1から取り出される電流を検出する。スタック電流センサ51は、検出した電流を示す検出信号をコントローラ6に出力する。
スタック電圧センサ52は、アノード電極側出力端子11とカソード電極側出力端子12の間に生じる電圧を検出する。
駆動モータ53は、燃料電池スタック1及びバッテリ55から供給される電力によって回転駆動する電動機である。駆動モータ53は車両を駆動する動力源である。
インバータ54は、燃料電池スタック1及びバッテリ55の少なくとも一方から出力される直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を駆動モータ53に供給する。本実施形態では、インバータ54には、燃料電池スタック1から電力が供給され、必要に応じてDC/DCコンバータ56によってバッテリ55からも電力が供給される。
バッテリ55は、燃料電池スタック1の発電を補助する二次電池である。バッテリ55は、本実施形態ではリチウムイオンバッテリにより実現される。例えば、バッテリ55は、必要に応じて燃料電池スタック1で発電した電力を充電する。
また、バッテリ55は、燃料電池スタック1の湿潤状態や、駆動モータ53の過渡的な変化などに応じて、補機類57に電力を放電する。あるいは、バッテリ55は、DC/DCコンバータ56を介して駆動モータ53に電力を放電することもある。
DC/DCコンバータ56は、燃料電池スタック1とバッテリ55との間に接続される。DC/DCコンバータ56は、燃料電池スタック1の電圧とバッテリ55の電圧とを互いに変換する双方向性の電圧変換器である。DC/DCコンバータ56は、コントローラ6によって制御される。
例えば、DC/DCコンバータ56は、燃料電池スタック1の電圧をバッテリ55の電圧よりも上昇させることにより、燃料電池スタック1からバッテリ55又は補機類57に電力を供給する。あるいは、DC/DCコンバータ56は、バッテリの電圧を燃料電池スタック1の電圧よりも下降させることにより、燃料電池スタック1からバッテリ55又は補機類57に電力を供給する。すなわち、DC/DCコンバータ56は、燃料電池スタック1及びバッテリ55のうち少なくとも一方の電圧を変換して燃料電池スタック1からバッテリ55に電力を供給する。
DC/DCコンバータ56は、複数のスイッチング素子と、リアクトルと、IPM(Intelligent Power Module)とにより構成される。DC/DCコンバータ56は、各スイッチング素子のオンオフ動作によって、主に、燃料電池スタック1から供給される電圧を、補機類57が作動する電圧に昇降圧する。
これにより、燃料電池スタック1の出力電流、すなわち発電電力(出力電流×出力電圧)が調節される。なお、DC/DCコンバータ56は、燃料電池スタック1の電圧とバッテリ55の電圧とのうち少なくとも一方の電圧を変換するものであってもよい。
補機類57は、燃料電池スタック1の動作を補助するものであり、燃料電池スタック1を発電させるために燃料電池システム100に設けられた制御部品の集合である。補機類57としては、コンプレッサ24や、冷却水ポンプ45、冷却水ヒータ46などが含まれる。
補機類57は、バッテリ55とDC/DCコンバータ56との間に並列に接続される。補機類57は、DC/DCコンバータ56によって燃料電池スタック1からの発電電力を受けて作動する。燃料電池スタック1からの発電電力が不足したときには、補機類57は、バッテリ55から電力を受けて作動する。
バッテリ電流センサ58は、バッテリ55の正極端子に接続され、バッテリ55から放電される電流を検出する。
バッテリ電圧センサ59は、バッテリ55の正極端子と負極端子との間に生じる端子間電圧を検出する。
コントローラ6は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。
コントローラ6は、駆動モータ53及び補機類57などの電気負荷から要求される要求電力に基づいて、コンプレッサ24、カソード調圧弁27、アノード調圧弁33、及びパージ弁36を制御する。
コントローラ6には、上述したスタック出口水温センサ47、スタック入口水温センサ48、スタック電流センサ51、スタック電圧センサ52、バッテリ電流センサ58、及びバッテリ電圧センサ59からの各検出信号が入力される。これらのセンサの他にも、コントローラ6には、燃料電池システム100を制御するために必要な各種センサからの検出信号が入力される。
他のセンサとしては、バッテリ55の充電率(SOC:State of Charge)を検出するSOCセンサ61や、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルストロークセンサ62などがある。
コントローラ6は、各種センサからの検出信号と、燃料電池システム100の各制御部品に対する指令信号とを用いて、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力や、カソードガスの流量及び圧力などを調整する。
また、コントローラ6は、DC/DCコンバータ56を制御して燃料電池スタック1の電圧を低下又は上昇させることにより、燃料電池スタック1から出力される発電電力を増減させる。例えば、駆動モータ53からの要求電力が上昇したときには、コントローラ6は、燃料電池スタック1に関する電流電圧(IV)特性を参照し、燃料電池スタック1の電圧を低下させる。
このような燃料電池システムにおいては、通常、燃料電池スタック1から駆動モータ53へ発電電力を供給しながら、DC/DCコンバータ56を介して補機類57に対しても燃料電池スタック1から発電電力を供給する。
DC/DCコンバータ56に関しては、DC/DCコンバータ56にリアクトルの温度やIPMの温度を検出する温度センサがそれぞれ設けられており、リアクトルの温度やIPMの温度などが所定値を超えると、DC/DCコンバータ56を通過することができる電力が制限される。すなわち、DC/DCコンバータ56の温度上昇に伴いDC/DCコンバータ56の通過可能電力が減少又は零になる特性を有する。
DC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下したときには、燃料電池スタック1から補機類57へ供給される電力が足りなくなる場合があり、このような場合にはバッテリ55から、不足分の電力が補機類57へ放電されることになる。
このとき、バッテリ55から放電できる電力よりも大きな電力が、補機類57によって取り出されてしまい、バッテリ55が劣化してバッテリ55の寿命が著しく低下する恐れがある。
この対策として、バッテリ55から過大な電力が補機類57へ出力されないように、電気負荷からの要求電力を制限して補機類57の消費電力を低減することも考えられる。
しかしながら、燃料電池システム100の運転状態によっては、コンプレッサ24の回転速度が、電気負荷からの要求電力に基づくコンプレッサ24の回転速度よりも高く設定されていることがある。
例えば、カソードガス排出通路26から外気へ排出されるガス中の水素濃度が、安全基準等で規定された値よりも低くなるように、コンプレッサ24の回転速度が高く設定される場合がある。
このような状況で、電気負荷からの要求電力によって求められた補機類57の操作量を制限しただけでは、補機類57の消費電力が確実に制限されず、バッテリ55から過大な電力が補機類57へ出力されてしまう。
そこで本実施形態では、コントローラ6は、電気負荷からの要求電力によって設定される補機類57の操作量の他に、上述のような燃料電池システム100の運転状態によって設定される補機類57の操作量についても制限する。
図2は、本実施形態におけるコントローラ6の機能構成を示す機能ブロック図である。
補機類制御部200は、燃料電池システム100を制御するものである。補機類制御部200は、発電要求補機操作量演算部210と、システム要求補機操作量演算部220と、目標操作量設定部230と、補機類指令部240と、補機消費電力制限部300とを含む。
発電要求補機操作量演算部210は、燃料電池スタック1の発電要求に基づいて、電気負荷から要求される要求電力が燃料電池スタック1で発電されるように、補機類57の各操作量(以下、「発電要求操作量」という。)を演算する。
また、発電要求補機操作量演算部210は、DC/DCコンバータ56の温度に応じて、補機類57の発電要求操作量を制限する。以下では、DC/DCコンバータ56の温度のことを「コンバータ温度」という。コンバータ温度を示す情報は、例えば、DC/DCコンバータ56からコントローラ6に送信される。
発電要求補機操作量演算部210は、例えば、予め記憶されたマップを参照し、コンバータ温度に基づいて、DC/DCコンバータ56を通過可能な電力の上限値を求める。その上限値が、補機類57が消費する電力よりも小さくなる場合には、発電要求補機操作量演算部210は、補機類57の発電要求操作量を制限する。
なお、以下では、DC/DCコンバータ56を通過可能な電力の上限値のことを単に「通過可能電力」といい、補機類57が消費する電力のことを「補機類57の消費電力」又は「補機消費電力」という。
発電要求補機操作量演算部210は、その発電要求操作量を目標操作量設定部230に出力する。なお、発電要求補機操作量演算部210は、発電要求に基づいて補機類57を制御する発電要求制御部を構成する。
システム要求補機操作量演算部220は、燃料電池システム100に要求される運転条件(制約)の範囲内で燃料電池スタック1が運転されるように、システム状態情報に基づいて、補機類57のうち少なくとも一部の操作量(以下、「システム要求操作量」という。)を演算する。
燃料電池システム100の運転条件は、電気負荷からの発電要求とは異なる要求により定められた条件である。例えば、燃料電池システム100の運転条件としては、燃料電池システム100の排出ガス中の水素濃度に対する規定値や、燃料電池スタック1の湿潤状態に関する基準値、燃料電池スタック1内の極間差圧に関する制限値などが挙げられる。
システム状態情報は、燃料電池システム100の状態を示す情報である。システム状態情報としては、例えば、パージ弁36から排出されるアノードオフガスの流量(排水素流量)や、燃料電池スタック1の内部抵抗(HFR:High Frequency Resistance)などが含まれている。燃料電池スタック1のHFRは、燃料電池スタック1の湿潤状態と相関のあるパラメータであり、電解質膜が乾燥してくるとHFRは大きくなり、電解質膜が湿ってくるとHFRは小さくなる。
ここで燃料電池スタック1のHFRの測定手法について簡単に説明する。まずコントローラ6がDC/DCコンバータ56を制御して、燃料電池スタック1に所定周波数の交流電流を供給し、燃料電池スタック1の出力電圧及び出力電流をそれぞれ検出する。そしてコントローラ6は、燃料電池スタック1の出力電圧V及び出力電流Iの各交流成分の振幅を演算し、出力電圧Vの振幅を出力電流Iの振幅により除算することにより、燃料電池スタック1のHFRを算出する。算出されたHFRの測定値は、以下「測定HFR」という。
なお、DC/DCコンバータ56に交流電流を重畳して燃料電池スタック1のHFRを測定する代わりに、別途、燃料電池スタック1のHFRを測定する装置を燃料電池システム100に設けてもよい。
システム要求補機操作量演算部220は、そのシステム要求操作量を目標操作量設定部230に出力する。なお、システム要求補機操作量演算部220は、燃料電池システム100の運転状態に応じて、補機類57のうちの少なくとも一部を制御するシステム要求制御部を構成する。
補機消費電力制限部300は、コンバータ温度に基づいて、補機類57のシステム要求操作量を制限する制限部を構成する。例えば、補機消費電力制限部300は、DC/DCコンバータ56の通過可能電力を制限値として設定し、補機類57の消費電力が制限値を超えた場合には、コンプレッサ24の操作量や、冷却水ポンプ45の操作量などを制限する。
補機消費電力制限部300は、バッテリ55から補機類57へ放電できる放電可能電力がゼロよりも大きい場合には、バッテリ55の放電可能電力に応じて補機類57の消費電力を制限する制限値を大きくする。
バッテリ55の放電可能電力は、SOCセンサ61で検出されたバッテリ55の充電率に基づいて算出される。例えば、SOCセンサ61で検出された充電率が小さくなるほど、バッテリ放電可能電力は小さな値に設定される。
補機消費電力制限部300は、例えば、DC/DCコンバータ56の通過可能電力に対してバッテリ55の放電可能電力を加算し、その加算した値を補機消費電力の制限値として設定する。これにより、補機類57の消費電力の制限値が高くなるので、DC/DCコンバータ56の通過可能電力の低下に伴う補機類57の消費電力の制限を緩和することができる。
補機消費電力制限部300は、制限した後のシステム要求操作量を目標操作量設定部230に出力する。
目標操作量設定部230は、補機消費電力制限部300から出力されるシステム要求操作量と発電要求操作量とに基づいて、補機類57の各目標操作量を設定する。例えば、目標操作量設定部230は、補機類57に含まれる制御部品ごとに、制限後のシステム要求操作量と制限後の発電要求操作量とのうち大きい方の操作量を目標操作量に設定し、各目標操作量を補機類指令部240に出力する。
補機類57の各目標操作量としては、例えば、コンプレッサ24から吐出されるカソードガスの目標流量及び目標圧力や、パージ弁36の目標開度、三方弁44の目標開度、冷却水ヒータ46の目標出力などが含まれる。
補機類指令部240は、補機類57の各目標操作量に基づいて、コンプレッサ24、カソード調圧弁27、バイパス弁29、アノード調圧弁33、パージ弁36、三方弁44、冷却水ポンプ45、冷却水ヒータ46などを制御する。
このように本実施形態の補機類制御部200は、コンバータ温度の上昇に伴いDC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下したときには、燃料電池システム100の運転条件に基づく補機類57のシステム要求操作量を制限する。
このため、水素濃度の規定値に基づくコンプレッサ24の操作量が、発電要求に基づく操作量よりも大きい場合において、DC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下したときには、規定値に基づくコンプレッサ24の操作量についても制限される。
したがって、燃料電池システム100の運転条件に基づく補機類57のシステム要求操作量を制限することにより、バッテリ55から補機類57へ放電される電力を確実に低減することができる。
補機消費電力制限部300で操作量が制限された後、補機類57の消費電力が、未だにDC/DCコンバータ56の通過可能電力よりも大きい場合には、補機類制御部200は、要求電力に基づく補機類57の発電要求操作量を制限する。
これにより、バッテリ55から過大な放電電力が出力されるのを防ぐことができる。さらに補機類57の発電要求操作量よりも先にシステム要求操作量を制限することにより、燃料電池スタック1の発電電力の制限を緩和することが可能となる。
本発明の第1実施形態によれば、燃料電池スタック1及びバッテリ55を備える燃料電池システム100は、燃料電池スタック1とバッテリ55との間に接続されるDC/DCコンバータ56と、DC/DCコンバータ56とバッテリ55との間に接続される補機類57とを含む。
燃料電池システム100では、発電要求補機操作量演算部210が、電気負荷に基づいて補機類57の操作量を制御し、システム要求補機操作量演算部220が、燃料電池システム100の制約条件に応じて補機類57のうちの少なくとも一部の操作量を制御する。
そして補機消費電力制限部300は、コンバータ温度に基づいて、システム要求補機操作量演算部220によって制御される補機類57の操作量を制限する。
このように、DC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下したときには、発電要求に基づく補機類57の操作量の他に燃料電池システム100の運転条件に基づく補機類57の操作量が制限されるので、バッテリ55から過大な電力が補機類57へ放電されるのを回避することが可能となる。したがって、電圧変換器の通過電力の低下に伴い、発電要求とは異なる要求によってバッテリから補機に過大な電力が放電されるのを回避することができる。
また、補機消費電力制限部300は、DC/DCコンバータ56の通過可能電力が、補機類57の消費電力よりも低下した場合には、バッテリ55の放電可能電力に応じて補機類57の消費電力の制限を緩和する。
これにより、補機類57の消費電力を過剰に制限することを回避できるので、燃料電池スタック1の発電電力の無用な低下を抑制することができる。
なお、本実施形態ではDC/DCコンバータ56からコンバータ温度を示す情報が入力される例ついて説明したが、DC/DCコンバータ56で通過可能電力を求め、DC/DCコンバータ56から通過可能電力を示す情報が入力されてもよい。また、DC/DCコンバータ56の筐体に温度センサを設け、この温度センサから出力される信号を用いてもよい。
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態における補機消費電力制限部300の構成例を示すブロック図である。
図3は、本発明の第2実施形態における補機消費電力制限部300の構成例を示すブロック図である。
以下では、本実施形態の燃料電池システムの構成は、図1に示した燃料電池システム100と基本的に同じ構成であるため、同一の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
補機消費電力制限部300は、DC/DCコンバータ56の通過可能電力に基づいて、補機類57の消費電力を制限するか否かを判定する補機制限判定部310を備える。
補機制限判定部310は、制限閾値算出部311と、補機消費電力算出部312と、補機制限フラグ設定部313とを含む。
制限閾値算出部311は、DC/DCコンバータ56の通過可能電力に基づいて、補機類57の消費可能電力を算出する。
本実施形態では、制限閾値算出部311は、DC/DCコンバータ56の通過可能電力にバッテリ55の放電電力を加算し、その加算した値から車両補機の消費電力を減算することにより、補機類57の消費可能電力を算出する。制限閾値算出部311は、補機類57の消費可能電力を、制限閾値として補機制限フラグ設定部313に出力する。
なお、DC/DCコンバータ56の通過可能電力は、DC/DCコンバータ56の温度に基づいて算出される。DC/DCコンバータ56の温度と通過可能電力との関係については、図7を参照して後述する。
バッテリ55の放電電力は、バッテリ55の放電可能電力を上限値として補機類57の消費電力に基づいて算出される。
車両補機は、車両用のエアコンディショナや、ヘッドライトなどである。車両補機は、燃料電池スタック1の補機類57と同様、DC/DCコンバータ56とバッテリ55との間に接続される。
補機消費電力算出部312は、コンプレッサ24の消費電力と、冷却水ポンプ45の消費電力と、冷却水ヒータ46の消費電力と、DC/DCコンバータ56の損失電力とを積算することにより、補機類57の消費電力を算出する。
コンプレッサ24の消費電力は、コンプレッサ24の回転速度の検出値とトルクの推定値とに基づいて算出される。なお、コンプレッサ24の消費電力は、コンプレッサ24の目標回転速度及び目標トルクに基づいて算出されてもよい。
冷却水ポンプ45の消費電力は、冷却水ポンプ45で消費される電力の実際の値である。例えば、冷却水ポンプ45に供給される電流値を検出する電流センサと、冷却水ポンプ45の電圧を検出する電圧センサとが冷却水ポンプ45に設けられ、これら電流センサ及び電圧センサの各検出値が乗算されて冷却水ポンプ45の消費電力が算出される。
冷却水ヒータ46の消費電力は、例えば、冷却水ヒータ46の目標出力に基づいて算出される。
DC/DCコンバータ56の電力損失は、DC/DCコンバータ56内で生じる電力損失の実際の値である。例えば、DC/DCコンバータ56内の燃料電池スタック1側に設けられた電流センサ及び電圧センサの各検出値を乗算した値と、DC/DCコンバータ56内のバッテリ55側に設けられた電流センサ及び電圧センサの各検出値を乗算した値と、に基づいて算出される。
補機消費電力算出部312は、算出した補機類57の消費電力を補機制限フラグ設定部313に出力する。
補機制限フラグ設定部313は、補機類57の消費電力が制限閾値よりも大きいか否か、すなわちDC/DCコンバータ56の通過可能電力に基づいて、補機類57の消費電力が、補機類57の消費可能電力を超えたか否かを判断する。
そして、補機制限フラグ設定部313は、補機類57の消費電力が制限閾値よりも大きい場合には、補機制限フラグを「1」すなわちONに設定し、補機類57の消費電力が制限閾値以下である場合には、補機制限フラグを「0」すなわちOFFに設定する。
図4は、バッテリ55の放電電力を演算する演算手法の一例を示す図である。
補機消費電力制限部300は、バッテリ放電電力演算部320を備える。バッテリ放電電力演算部320は、補機要求電力設定部321と、遅延器322と、バッテリ放電電力設定部323とを含む。
補機要求電力設定部321は、補機類57の消費電力と遅延器322の出力とのうち大きい方の値を、補機要求電力としてバッテリ放電電力設定部323に出力する。なお、補機類57の消費電力は、図3に示した補機消費電力算出部312から算出された値である。
遅延器322は、補機要求電力設定部321から出力される補機要求電力を保持し、その値を前回の補機要求電力として補機要求電力設定部321に出力する。
バッテリ放電電力設定部323は、バッテリ放電可能電力と補機要求電力とのうち小さい方の値を、バッテリ放電電力として設定する。そしてバッテリ放電電力設定部323は、そのバッテリ放電電力を図3に示した補機制限判定部310に出力する。
このように、バッテリ放電電力演算部320は、バッテリ放電可能電力を上限として、補機類57の消費電力をバッテリ放電電力として設定する。これにより、バッテリ55から過大な放電電力が出力されるのを回避することができ、かつ、補機類57の消費電力をバッテリ55によって賄うことで補機類57の操作量を制限するのを回避することが可能となる。
したがって、バッテリ55の劣化を防止しつつ、燃料電池スタック1の発電電力を過剰に制限するのを回避することができる。
なお、バッテリ放電電力演算部320は、予め定められた固定値、例えば数kW(キロワット)をバッテリ放電電力として設定するものであってもよい。あるいは、バッテリ放電電力演算部320は、バッテリ55の放電可能電力から所定値を減算した値や、補機類の消費電力に所定値を加算又は減算した値などをバッテリ放電電力として設定するものであってもよい。
次に、本発明の第2実施形態における補機類制御部200の機能構成について図5から図19までの各図面を参照して説明する。
本実施形態では、補機類制御部200は、コンプレッサ流量制御部201と、排水素流量制御部202と、コンプレッサ下流圧力制御部203と、スタック温度制御部204と、ヒータ出力制御部205とを備えている。
図5は、コンプレッサ流量制御部201の詳細構成を示すブロック図である。
コンプレッサ流量制御部201は、コンプレッサ24から吐出されるカソードガスの流量(以下、「コンプレッサ流量」という。)を制御する。
コンプレッサ流量制御部201は、発電要求流量演算部211と、排水素希釈要求流量演算部221と、膜湿潤要求流量演算部222と、コンプレッサ目標流量設定部231とを含む。さらにコンプレッサ流量制御部201は、コンバータ通過可能電流演算部331と、電流制限部332と、希釈要求制限流量演算部333と、切替器334と、湿潤要求制限流量演算部335と、切替器336とを含む。
コンバータ通過可能電流演算部331は、コンバータ温度に基づいて、DC/DCコンバータ56の通過可能電流を演算する。
本実施形態では、コンバータ温度と通過可能電流の上限値との関係を示す通過可能電力マップが、コンバータ通過可能電流演算部331に予め記憶されている。そしてコンバータ通過可能電流演算部331は、コンバータ温度を取得すると、通過可能電力マップを参照し、そのコンバータ温度に対応付けられた通過可能電流を算出する。なお、通過可能電力マップの詳細については図6を参照して後述する。
電流制限部332は、燃料電池スタック1の目標電流とDC/DCコンバータ56の通過可能電力とのうち小さい方の値を、新たな目標電流として発電要求流量演算部211に出力する。
燃料電池スタック1の目標電流は、電気負荷からの発電要求に基づいて演算されるものであり、具体的には補機類57から要求される電力に基づいて算出される。
なお、コンバータ通過可能電流演算部331及び電流制限部332は、図2に示した補機消費電力制限部300に相当する。
発電要求流量演算部211は、電流制限部332から出力される目標電流に基づいて、燃料電池スタック1の発電に必要となるコンプレッサ流量(以下、「発電要求流量」という。)を演算する。
本実施形態では、燃料電池スタック1の目標電流と発電要求流量との関係を示す発電要求流量マップが、発電要求流量演算部211に予め記憶されている。そして発電要求流量演算部211は、燃料電池スタック1の目標電流を取得すると、発電要求流量マップを参照し、その目標電流に対応付けられた発電要求流量を算出する。
なお、発電要求流量マップの詳細については図7を参照して後述する。また、発電要求流量演算部211は、図2に示した発電要求補機操作量演算部210に相当する。
排水素希釈要求流量演算部221は、カソードガス排出通路26から排出されるガス中の水素濃度が規定値以下となるように、排水素流量に基づいて水素の希釈に必要となるコンプレッサ流量(以下、「排水素希釈要求流量」という。)を演算する。排水素流量は、パージ弁36の開度率に基づいて算出される。
本実施形態では、排水素希釈要求流量演算部221は、予め定められた希釈要求マップを参照し、排水素流量に対応付けられた排水素希釈要求流量を算出する。排水素希釈要求流量演算部221は、排水素流量が増加するほど、排水素希釈要求流量を大きくする。なお、希釈要求マップの詳細については図9を参照して後述する。
排水素希釈要求流量演算部221は、演算された排水素希釈要求流量を切替器334に出力する。なお、排水素希釈要求流量演算部221は、図2に示したシステム要求補機操作量演算部220に相当する。
希釈要求制限流量演算部333は、DC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下したときに排水素希釈要求流量を制限するためのコンプレッサ流量(以下、「希釈要求制限流量」という。)を演算する。
希釈要求制限流量は、排水素希釈要求流量よりも小さな値、又は発電要求流量よりも小さな値に設定される。希釈要求制限流量は、実験データ等により予め定められた固定値であってもよく、あるいは、排水素流量や、燃料電池スタック1内の不純物濃度などに応じて変更される値であってもよい。
希釈要求制限流量演算部333は、演算された希釈要求制限流量を切替器334に出力する。なお、希釈要求制限流量演算部333は、図2に示した補機消費電力制限部300に相当する。
切替器334は、補機制限フラグの設定状態に応じて、コンプレッサ目標流量設定部231に出力される値を、排水素希釈要求流量、又は希釈要求制限流量に切り替える。
切替器334は、補機制限フラグがOFFに設定された場合には、排水素希釈要求流量をコンプレッサ目標流量設定部231に出力する。一方、切替器334は、補機制限フラグがONに設定された場合、すなわちコンバータ温度の上昇に伴いDC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下した場合には、希釈要求制限流量をコンプレッサ目標流量設定部231に出力する。
膜湿潤要求流量演算部222は、燃料電池の電解質膜が目標とする湿潤状態となるように、測定HFRに基づいて、コンプレッサ流量(以下、「湿潤要求流量」という。)を演算する。
膜湿潤要求流量演算部222は、測定HFRが予め定められた基準値よりも大きくなるほど、すなわち電解質膜が乾燥しているほど、カソードガスによって燃料電池スタック1から持ち出される水蒸気の排出量を抑えるために、湿潤要求流量を小さくする。
一方、膜湿潤要求流量演算部222は、測定HFRが基準値よりも小さくなるほど、すなわち電解質膜が湿っているほど、カソードガスによって燃料電池スタック1から持ち出される水蒸気の排出量を増やすために、湿潤要求流量を大きくする。
膜湿潤要求流量演算部222は、湿潤要求流量を切替器336に出力する。なお、膜湿潤要求流量演算部222は、図2に示したシステム要求補機操作量演算部220に相当する。
湿潤要求制限流量演算部335は、DC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下したときに膜湿潤要求流量を制限するためのコンプレッサ流量(以下、「湿潤要求制限流量」という。)を演算する。
湿潤要求制限流量は、膜湿潤要求流量よりも小さな値、又は発電要求流量よりも小さな値に設定される。湿潤要求制限流量は、実験データ等により予め定められた固定値であってもよく、あるいは、測定HFRに応じて変更される値であってもよい。
湿潤要求制限流量演算部335は、演算された湿潤要求制限流量を切替器336に出力する。なお、湿潤要求制限流量演算部335は、図2に示した補機消費電力制限部300に相当する。
切替器336は、乾燥制限フラグの設定状態に応じて、コンプレッサ目標流量設定部231に出力される値を、膜湿潤要求流量、又は湿潤要求制限量に切り替える。
補機制限フラグがONに設定された場合において燃料電池の電解質膜を乾燥させる乾燥制御が実行されるときに、乾燥制限フラグはONに設定される。乾燥制限フラグの設定手法については、図10を参照して後述する。
切替器336は、乾燥制限フラグがOFFに設定された場合には、膜湿潤要求流量をコンプレッサ目標流量設定部231に出力する。一方、切替器336は、乾燥制限フラグがONに設定された場合、すなわちDC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下した状態で乾燥制御が実行されるときには、湿潤要求制限流量をコンプレッサ目標流量設定部231に出力する。
コンプレッサ目標流量設定部231は、発電要求流量と、切替器334からの排水素希釈要求流量又は希釈要求制限流量と、切替器336からの膜湿潤要求流量又は湿潤要求制限流量とのうち最も大きい値を、コンプレッサ目標流量として出力する。
例えば、補機制限フラグがONに設定された場合において、乾燥制限フラグがONに設定されたときには、コンプレッサ目標流量設定部231は、制限後の発電要求流量と希釈要求制限流量と湿潤要求制限流量とのうち最も大きい値を出力する。
このように、コンプレッサ流量制御部201は、DC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下した場合には、排水素希釈要求流量を制限する。これにより、コンプレッサ24の消費電力を低減することが可能となる。
さらに、コンプレッサ流量制御部201は、補機制限フラグがONに設定された場合において、乾燥制限フラグがONに設定されたときに膜湿潤要求流量を低く制限する。
このように、DC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下した場合において、電解質膜の湿潤制御によってコンプレッサ24の消費電力が大きくなるときに限り、膜湿潤要求流量が制限されるので、的確にコンプレッサ24の消費電力を制限することができる。
ここで、電解質膜の湿潤制御が実行されるときの補機類57の消費電力の増加量について図6を参照して説明する。
図6は、電解質膜の湿潤制御と補機類57の消費電力の増加量との関係を示す図である。
図6に示すように、乾燥制御においては、コンプレッサ下流圧力を低下させる制御と、燃料電池スタック1の温度を上昇させる制御と、コンプレッサ流量を増加させる制御が実行される。これらの中で、補機類57の消費電力が最も増加する制御は、コンプレッサ流量を増加させる制御である。
したがって、補機制限フラグがONに設定された場合に、電解質膜の乾燥制御のうちコンプレッサ流量だけを制限することにより、効果的に補機類57の消費電力を低減することができる。
また、コンプレッサ流量制御部201は、排水素希釈要求流量、及び膜湿潤要求流量を共に制限した後であっても、補機類57の消費電力がDC/DCコンバータ56の通過可能電力により制限されるときには、発電要求流量を制限する。
このように、排水素希釈要求流量、及び膜湿潤要求流量を制限した後に、発電要求流量を制限することにより、燃料電池スタック1の発電電力の低下を抑制しつつ、コンプレッサ24の消費電力を確実に低減することができる。
図7は、コンバータ通過可能電流演算部331に記憶される通過可能電力マップを示す図である。ここでは、横軸がコンバータ温度を示し、縦軸がDC/DCコンバータ56の通過可能電流の上限値を示す。
通過可能電力マップでは、コンバータ温度が低いときには、DC/DCコンバータ56の通過可能電流は、コンバータ温度にかかわらず一定である。コンバータ温度が所定の温度T1を超えると、コンバータ温度が上昇するにつれてDC/DCコンバータ56の通過可能電流は大きく低下する。
このように、コンバータ温度の上昇に応じてDC/DCコンバータ56の通過可能電力は低下するので、燃料電池スタック1から補機類57へ供給される電流は制限される。
図8は、発電要求流量演算部211に記憶される発電要求流量マップの一例を示す図である。ここでは、横軸が燃料電池スタック1から補機類57への目標電流を示し、縦軸が発電要求流量を示す。
発電要求流量マップでは、目標電流が大きくなるほど、コンプレッサ流量を大きくする。また目標電流が大きくなるほど、コンプレッサ流量の増加幅は小さくなる。
図9は、排水素希釈要求流量演算部221に記憶される希釈要求流量マップの一例を示す図である。ここでは、横軸がパージ弁36からパージされるアノードオフガスの流量である排水素流量を示し、縦軸が排水素希釈要求流量を示す。
希釈要求流量マップでは、燃料電池システム100から排出されるガス中の水素濃度が規定値以下となるように、排水素流量が大きくなるほど、コンプレッサ流量が大きくなる。本実施形態では、排水素流量が大きくなるほど、コンプレッサ流量が単調増加する。
図10は、補機消費電力制限部300における乾燥制限フラグの設定手法を示す図である。
乾燥制限判定部350は、補機制限フラグがONに設定されているときに電解質膜の乾燥制御が実行されるか否かを判定する。乾燥制限判定部350は、湿潤判定部351と乾燥制限フラグ設定部352とを含む。
湿潤判定部351は、測定HFRが目標値(以下、「目標HFR」という。)よりも小さい場合には、電解質膜が湿りすぎているため、制御判定フラグを「1」に、すなわち乾燥制御に設定する。目標HFRは、例えば、測定HFRを基準値(固定値)から減算した値に基づいて算出される。
一方、湿潤判定部351は、測定HFRが目標HFR以上である場合には、電解質膜が乾きすぎているため、制御判定フラグを「0」に、すなわち加湿制御に設定する。
乾燥制限フラグ設定部352は、制御判定フラグの設定状態と補機制限フラグの設定状態とに基づいて、図5に示した乾燥制限フラグを設定する。
乾燥制限フラグ設定部352は、本実施形態ではAND回路により構成され、制御判定フラグ及び補機制限フラグの少なくとも一方が「0」である場合には、乾燥制限フラグは「0」、すなわちOFFに設定される。この場合には、電解質膜の乾燥制御は制限されない。
乾燥制限フラグ設定部352は、制御判定フラグが「1」であり、かつ、補機制限フラグが「1」であるときに、乾燥制限フラグを「1」に設定する。すなわち、乾燥制限フラグ設定部352は、補機制限フラグがONに設定された場合において、電解質膜の乾燥制御が実行されるときに限り、乾燥制限フラグをONに設定する。
これにより、図5に示したコンプレッサ流量制御部201において、切替器336によってコンプレッサ流量が湿潤要求流量から湿潤要求制限流量に切り替えられので、コンプレッサ24の消費電力を低減することができる。
図11は、排水素流量制御部202の詳細構成を示すブロック図である。
排水素流量制御部202は、パージ弁36から排出されるアノードオフガスの流量(以下、「排水素流量」という。)を制御する。
排水素流量制御部202は、パージ弁目標開度率演算部212と、補機制限開度率保持部337と、排水素流量制限部338と、切替器339とを含む。
パージ弁目標開度率演算部212は、燃料電池スタック1に蓄積される不純物の増加を抑制するために、燃料電池スタック1内の水素濃度に基づいて、パージ弁36の目標開度率を演算する。
燃料電池スタック1内の水素濃度は、例えば、燃料電池スタック1の発電状態に基づいて算出される。なお、燃料電池スタック1内に水素濃度センサを設けそのセンサの検出値を用いてもよい。
また、パージ弁目標開度率演算部212は、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力に応じて、パージ弁36の目標開度率を補正する。例えば、パージ弁目標開度率演算部212は、予め定められたパージ弁制御マップを参照し、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力が低くなるほど、排水素流量が少なくなるため、パージ弁36の目標開度率を高くする。
なお、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力は、本実施形態では、アノード圧力センサ34により検出される検出値が用いられる。パージ弁制御マップの詳細については図12で後述する。
補機制限開度率保持部337は、排水素希釈要求流量が希釈要求制限流量に制限されたときに、排出ガス中の水素濃度が規定値よりも低くなるように定められた開度率(以下「補機制限開度率」という。)を保持する。
排水素流量制限部338は、パージ弁36の目標開度率と補機制限開度率とのうち小さい方の値を出力する。
切替器339は、補機制限フラグがOFFに設定された場合には、パージ弁目標開度率演算部212からの目標開度率を補機類指令部240に出力する。一方、補機制限フラグがONに設定された場合、すなわちDC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下した場合に、切替器341は、補機制限開度率保持部337に保持された値を補機類指令部240にする。
このように、排水素流量制御部202は、補機制限フラグがONに設定されてコンプレッサ流量が希釈要求制限流量に制限されたときに、パージ弁36の目標開度率を補機制限開度率以下に設定する。これにより、燃料電池システム100から排出されるガス中の水素濃度を確実に規定値以下に維持することができる。
したがって、DC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下したときに、コンプレッサ流量だけでなく排水素流量についても制限されるので、排出ガス中の水素濃度を規定値以下に抑えつつ、コンプレッサ24の消費電力を低減することができる。
なお、本実施形態ではアノードガス排出通路35に1個のパージ弁36が設けられる燃料電池システムについて説明したが、アノードガス排出通路35に2個のパージ弁が設けられるものであってもよい。
アノードガス排出通路35に2個のパージ弁が設けられた燃料電池システムでは、コントローラ6は、2つの期間に区切られた所定の周期において、例えば第1期間で第1のパージ弁を開閉制御し、第2期間で第2のパージ弁を開閉制御する。このような燃料電池システムにおいては、補機制限開度率の代わりに、例えば、第1及び第2のパージ弁のうち一方のパージ弁の動作数を制限する動作数制限が排水素流量制限部338に入力される。
図12は、パージ弁目標開度率演算部212に記憶されるパージ弁制御マップの一例を示す図である。ここでは、横軸が燃料電池スタック1内の水素濃度を示し、縦軸がパージ弁36の目標開度率を示す。
パージ弁制御マップでは、燃料電池スタック1内の水素濃度が高いほど、燃料電池スタック1内の不純物は少ないため、パージ弁36の目標開度率が小さくなる。一方、燃料電池スタック1内の水素濃度が低くなると、燃料電池スタック1内の不純物が多くなるので、パージ弁36の目標開度率は一定の値まで大きくなる。また、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力が低くなるほど、排水素流量が少なくなるため、パージ弁36の目標開度率は大きくなる。
図13は、コンプレッサ下流圧力制御部203の詳細構成を示すブロック図である。
コンプレッサ下流圧力制御部203は、コンプレッサ24よりも下流のカソードガスの圧力(以下、「コンプレッサ下流圧力」という。)を制御する。
コンプレッサ下流圧力制御部203は、発電要求圧力演算部213と、膜湿潤要求圧力演算部223と、コンプレッサ目標圧力設定部232とを含む。さらにコンプレッサ下流圧力制御部203は、コンバータ通過可能電流演算部331と、電流制限部332と、湿潤要求制限圧力演算部340と、切替器341とを含む。
なお、コンバータ通過可能電流演算部331及び電流制限部332は、図5に示した構成と同じものであるため、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
発電要求圧力演算部213は、電流制限部332から出力される目標電流に基づいて、燃料電池スタック1の発電に必要となるコンプレッサ下流圧力(以下、「発電要求圧力」という。)を演算する。
本実施形態では、燃料電池スタック1の目標電流と発電要求圧力との関係を示す発電要求圧力マップが発電要求圧力演算部213に予め記憶されている。そして発電要求圧力演算部213は、燃料電池スタック1の目標電流を取得すると、発電要求圧力マップを参照し、その目標電流に対応付けられた発電要求圧力を算出する。
なお、発電要求圧力マップの詳細については図15を参照して後述する。また、発電要求圧力演算部213は、図2に示した発電要求補機操作量演算部210に相当する。
膜湿潤要求圧力演算部223は、燃料電池の電解質膜が目標とする湿潤状態となるように、燃料電池スタック1の測定HFRに基づいて、コンプレッサ下流圧力(以下、「湿潤要求圧力」という。)を演算する。
膜湿潤要求圧力演算部223は、測定HFRが基準値よりも大きくなるほど、すなわち電解質膜が乾燥しているほど、カソードガスによって燃料電池スタック1から持ち出される水蒸気の排出量が少なくなるように、湿潤要求圧力を大きくする。
一方、膜湿潤要求圧力演算部223は、測定HFRが基準値よりも小さくなるほど、すなわち電解質膜が湿っているほど、カソードガスによって燃料電池スタック1から持ち出される水蒸気の排出量が多くなるように、湿潤要求圧力を小さくする。
膜湿潤要求圧力演算部223は、演算した膜湿潤要求圧力を切替器341に出力する。なお、膜湿潤要求圧力演算部223は、図2に示したシステム要求補機操作量演算部220に相当する。
湿潤要求制限圧力演算部340は、DC/DCコンバータ56の通過可能電力の低下に伴い膜湿潤要求圧力が制限されるように、コンプレッサ流量(以下、「湿潤要求制限圧力」という。)を演算する。
湿潤要求制限圧力は、膜湿潤要求圧力よりも小さな値、又は発電要求圧力よりも小さな値に設定される。湿潤要求制限圧力は、実験データ等により予め定められた固定値であってもよく、あるいは、測定HFRに応じて変更される値であってもよい。
湿潤要求制限圧力演算部340は、演算された湿潤要求制限圧力を切替器341に出力する。なお、湿潤要求制限圧力演算部340は、図2に示した補機消費電力制限部300に相当する。
切替器341は、加湿制限フラグの設定状態に応じて、コンプレッサ目標圧力設定部232に出力される値を、膜湿潤要求圧力、又は湿潤要求制限圧力に切り替える。
加湿制限フラグは、補機制限フラグがONに設定された場合において、燃料電池の電解質膜を加湿する加湿制御が実行されるときにONに設定される。加湿制限フラグの設定手法については、図14を参照して後述する。
切替器341は、加湿制限フラグがOFFに設定された場合には、膜湿潤要求圧力をコンプレッサ目標圧力設定部232に出力する。一方、切替器341は、加湿制限フラグがONに設定された場合、すなわちDC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下した場合には、湿潤要求制限圧力をコンプレッサ目標圧力設定部232に出力する。
コンプレッサ目標圧力設定部232は、発電要求圧力と、切替器341からの膜湿潤要求圧力又は湿潤要求制限圧力とのうち大きい方の値を、コンプレッサ目標圧力として出力する。
例えば、DC/DCコンバータ56の通過可能電力の低下に伴い補機制限フラグがONに設定された場合には、コンプレッサ目標流量設定部231は、制限後の発電要求流量と湿潤要求制限圧力とのうち大きい方の値を出力する。
このように、コンプレッサ下流圧力制御部203は、加湿制限フラグがONに設定されたときに膜湿潤要求圧力を低く制限する。
このため、DC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下している状態において電解質膜の加湿制御によって膜湿潤要求圧力が高くなるときに限り、膜湿潤要求圧力が制限されるので、的確に、コンプレッサ24の消費電力を低減することができる。
また、図6に示したように、電解質膜の加湿制御としてコンプレッサ下流圧力を上昇させる制御と、スタック温度を低下させる制御と、コンプレッサ流量を減少させる制御とが実行される。これらの中で、補機類57の消費電力が最も増加する制御は、コンプレッサ下流圧力を増加させる制御である。
このため、補機制限フラグがONに設定された場合に、本実施形態では電解質膜の加湿制御のうちコンプレッサ下流圧力だけが制限されるので、効果的に補機類57の消費電力を低減することができる。
図14は、図13に示された加湿制限フラグの設定手法の一例を示す図である。
加湿制限判定部360は、補機制限フラグがONに設定された場合において電解質膜の加湿制御が実行されているか否かを判定する。加湿制限判定部360は、湿潤判定部361と加湿制限フラグ設定部362とを含む。
湿潤判定部361は、燃料電池スタック1の測定HFRが目標HFRよりも大きい場合には、電解質膜が乾きすぎているため、制御判定フラグを「1」に、すなわち加湿制御に設定する。一方、湿潤判定部361は、測定HFRが目標値以下である場合には、電解質膜が湿りすぎているため、制御判定フラグを「0」に、すなわち乾燥制御に設定する。
加湿制限フラグ設定部362は、制御判定フラグの設定状態と補機制限フラグの設定状態とに基づいて、図13に示した加湿制限フラグを設定する。
加湿制限フラグ設定部362は、本実施形態ではAND回路により構成され、制御判定フラグ及び補機制限フラグの少なくとも一方が「0」である場合には、加湿制限フラグは「0」、すなわちOFFに設定される。この場合には、電解質膜の加湿制御は制限されない。
加湿制限フラグ設定部362は、制御判定フラグが「1」であり、かつ、補機制限フラグが「1」であるときに、加湿制限フラグを「1」に設定する。すなわち、加湿制限フラグ設定部362は、補機制限フラグがONに設定された場合において、電解質膜の加湿制御が実行されるときに限り、加湿制限フラグをONに設定する。
これにより、図13に示したコンプレッサ下流圧力制御部203において、切替器341によってコンプレッサ下流圧力が膜湿潤要求圧力から湿潤要求制限圧力に切り替えられので、コンプレッサ24の消費電力を低減することができる。
図15は、発電要求圧力演算部213に記憶される発電要求圧力マップの一例を示す図である。ここでは、横軸が燃料電池スタック1からDC/DCコンバータ56を通過して補機類57に供給される目標電流を示し、縦軸が発電要求圧力を示す。
発電要求圧力マップでは、目標電流が大きくなるほど、コンプレッサ下流圧力を大きくする。また目標電流が大きくなるほど、コンプレッサ下流圧力の増加幅は小さくなる。
上述のように、乾燥制限フラグがONに設定された場合には、コンプレッサ流量が制限されるため、電解質膜が湿りすぎた状態で維持されることになる。一方、加湿制限フラグがONに設定された場合には、コンプレッサ下流圧力が制限されるため、電解質膜が乾きすぎた状態で維持されることになる。これらの対策として、燃料電池スタック1の温度を制御することにより、電解質膜の湿潤状態を目標とする状態に近づけることができる。
図16は、スタック温度制御部204の詳細構成を示すブロック図である。
スタック温度制御部204は、三方弁44の開度を制御して燃料電池スタック1に供給される冷却水の温度を制御する。これにより、燃料電池スタック1の温度を調整することができる。
スタック温度制御部204は、スタック目標温度保持部214と、偏差算出部215と、FB制御部216と、三方弁目標開度演算部217と、膜湿潤要求温度演算部342と、切替器343とを含む。
スタック目標温度保持部214は、燃料電池スタック1の目標温度を保持する。燃料電池スタック1の目標温度は、例えば、燃料電池スタック1が発電に適した温度に設定される。
膜湿潤要求温度演算部342は、乾燥制限フラグ又は加湿制限フラッグがONに設定されたときに、電解質膜の湿潤度が基準値に収束するように、目標HFRに基づいて燃料電池スタック1の温度(以下、「湿潤要求温度」という。)を演算する。
湿潤度の基準値は、予め定められた固定値であり、目標HFRは、測定HFRを基準値から減算した値に基づいて算出される。
膜湿潤要求温度演算部342は、目標HFRがプラス(正)側に大きくなるほど、すなわち電解質膜が湿りすぎるほど、カソードガス中の水蒸気流量が減少するように、燃料電池スタック1の湿潤要求温度を低くする。
一方、膜湿潤要求温度演算部342は、目標HFRがマイナス(負)側に大きくなるほど、すなわち電解質膜が乾きすぎるほど、カソードガス中の水蒸気流量が増加するように、湿潤要求温度を高くする。
本実施形態では、目標HFRと湿潤要求温度との関係を示すスタック温度制限マップが、膜湿潤要求温度演算部342に予め記憶されている。そして膜湿潤要求温度演算部342は、目標HFRを取得すると、スタック温度制限マップを参照し、その目標HFRに対応付けられた湿潤要求温度を算出する。なお、スタック温度制限マップの詳細については図3を参照して後述する。
切替器343は、補機制限フラグの設定状態に応じて、偏差算出部215に出力される目標値を、スタック目標温度又は湿潤要求温度に切り替える。
切替器343は、補機制限フラグがOFFに設定された場合には、スタック目標温度を偏差算出部215に出力する。一方、補機制限フラグがONに設定された場合には、加湿制限フラグ又は乾燥制限フラグがONに設定されるので、切替器343は、湿潤要求温度を偏差算出部215に出力する。膜湿潤要求温度演算部342及び切替器343は、図2に示した補機消費電力制限部300に相当する。
偏差算出部215は、切替器343から出力される値を冷却水温度から減算することにより、冷却水温度の偏差を出力する。
冷却水温度としては、スタック入口水温センサ48の検出値とスタック出口水温センサ47の検出値とを平均した値が用いられる。なお、スタック入口水温センサ48の検出値、又は、スタック出口水温センサ47の検出値のみが用いられてもよい。また、燃料電池スタック1に直接、温度センサを設け、その温度センサから出力される検出信号を用いてもよい。
FB(フィードバック)制御部216は、偏差算出部215から出力された偏差に基づいて、燃料電池スタック1の温度をフィードバック制御する。例えば、FB制御部216は、偏差がプラス(正)に大きくなるほど、すなわち冷却水温度が基準温度よりも低くなるほど、冷却水温度を上昇させる。
三方弁目標開度演算部217は、FB制御部216から出力される値に基づいて、三方弁制御マップを参照し、三方弁44の目標開度を演算する。
三方弁目標開度演算部217は、偏差がプラス側に大きくなるほど、すなわち冷却水温度が目標温度よりも低くなるほど、燃料電池スタック1に供給する冷却水のうちバイパス通路43からの温かい冷却水の割合が大きくなるように、三方弁44の目標開度を小さくする。
一方、三方弁目標開度演算部217は、偏差がマイナス側に大きくなるほど、すなわち冷却水温度が基準温度よりも高くなるほど、燃料電池スタック1に供給する冷却水のうちラジエータ42からの冷たい冷却水の割合が大きくなるように、目標開度を大きくする。
このように、スタック温度制御部204は、補機制限フラグがONに設定された場合には、スタック温度の目標値を、通常のスタック目標温度から湿潤要求温度に切り替える。これにより、乾燥制御又は加湿制御を制限した場合であっても、燃料電池の電解質膜を目標とする湿潤状態に制御しつつ、補機類57の消費電力を低減することができる。
図17は、膜湿潤要求温度演算部342に記憶されるスタック温度制限マップの一例を示す図である。ここでは、横軸が燃料電池スタック1の目標HFRであり、縦軸が燃料電池スタック1の湿潤要求温度である。
スタック温度制限マップでは、目標HFRが大きくなるほど、すなわち電解質膜の湿潤度が湿りすぎているほど、カソードガス中の水蒸気量を減らして水蒸気の排出量を抑えるために、スタック温度が低く設定されている。一方、目標HFRが小さくなるほど、すなわち電解質膜の湿潤度が乾きすぎているほど、カソードガス中の水蒸気量を増やして水蒸気の排出量を多くするために、スタック温度が高くなるように設定されている。
したがって、加湿制限フラグがONに設定され、コンプレッサ下流圧力が低く制限された場合には、燃料電池スタック1の温度が高く設定されるので、電解質膜を加湿することができる。また、乾燥制限フラグがONに設定され、コンプレッサ流量が低く制限された場合には、燃料電池スタック1の温度が低く設定されるので、電解質膜を乾燥させることができる。
図18は、三方弁目標開度演算部217に記憶される三方弁制御マップの一例を示す図である。ここでは、横軸がFB制御部216の出力値を示し、縦軸が三方弁44の目標開度を示す。
三方弁制御マップでは、FB制御部216の出力値が大きくなるほど、ラジエータ42からの冷却水の割合を高くするために、三方弁44の目標開度が大きくなるように設定されている。
図19は、本実施形態における燃料電池システム100の制御方法の一例を示すフローチャートである。
ステップS901において補機制限判定部310は、補機類57の消費電力が制限閾値Thよりも小さいか否かを判定する。制限閾値Thは、DC/DCコンバータ56の通過可能電力の上限値に基づいて設定される。
ステップS902において補機制限判定部310は、補機類57の消費電力が制限閾値Thよりも小さい場合に、補機制限フラグをONに設定する。
ステップS903において乾燥制限判定部350及び加湿制限判定部360は、目標HFRが測定HFRよりも小さいか否かを判定する。
ステップS904において乾燥制限判定部350は、補機制限フラグがONに設定された場合において測定HFRが目標HFRよりも小さいときには、乾燥制限フラグをONに設定する。
ステップS905において排水素流量制御部202は、補機制限フラグがONに設定され場合には、パージ弁36から排出されるアノードオフガスの流量(排水素流量)を、所定の流量、例えば補機制限開度率に基づく流量に制限する。これと共にコンプレッサ流量制御部201は、カソードガスの排水素希釈要求流量を、所定の流量、例えば希釈要求制限流量に制限する。
なお、補機制限フラグがONに設定された場合には、排水素流量制御部202が排水素流量を制限した後に、コンプレッサ流量制御部201はカソードガスの排水素希釈要求流量を制限する方がより安全である。あるいは、補機制限フラグがONに設定された場合において、コンプレッサ流量制御部201がカソードガスの排水素希釈要求流量を制限した後、燃料電池システム100の排出ガス中の水素濃度をモニターし、水素濃度が規定値よりも小さな所定の閾値まで上昇した場合に排水素流量制御部202が排水素流量を制限するようにしてもよい。
ステップS906においてコンプレッサ流量制御部201は、乾燥制限フラグがONに設定された場合には、カソードガスの膜湿潤要求流量を、所定の流量、例えば湿潤要求制限流量に制限する。これと共にスタック温度制御部204は、燃料電池スタック1の温度を、所定の温度例えば、乾燥制御のための湿潤要求温度まで上昇させる。
ステップS907において加湿制限判定部360は、測定HFRが目標HFRよりも大きい場合には、加湿制限フラグをONに設定する。
ステップS908においてコンプレッサ下流圧力制御部203は、加湿制限フラグがONに設定された場合には、カソードガスの湿潤要求圧力を、所定の圧力例えば湿潤要求制限圧力に制限する。これと共にスタック温度制御部204は、燃料電池スタック1の温度を、所定の温度、例えば加湿制御のための湿潤要求温度まで低下させる。
ステップS909において補機消費電力制限部300は、補機類57の消費電力が制限閾値Thよりも大きいか否かを判断する。
ステップS910において補機消費電力制限部300は、補機類57の消費電力が制限閾値Thよりも小さい場合には、燃料電池スタック1の目標電流を所定の電流、例えばDC/DCコンバータ56の通過可能電流に制限する。燃料電池スタック1の目標電流は、駆動モータ53や補機類57などの電気負荷から要求される要求電力に基づいて算出される値である。
そして補機類57の消費電力が制限閾値Thよりも大きくなると、燃料電池システム100の制御方法を終了する。
また、ステップS901で補機類57の消費電力が制限閾値Thよりも大きい場合には、ステップS911に進む。
ステップS911において補機制限判定部310は、補機制限フラグをOFFに設定する。
ステップS912において乾燥制限判定部350は、乾燥制限フラグをOFFに設定する。
ステップS913において加湿制限判定部360は、加湿制限フラグをOFFに設定し、燃料電池システム100の制御方法を終了する。
本発明の第2実施形態によれば、図5に示した排水素希釈要求流量演算部221は、パージ弁36からパージされるアノードオフガスの流量が大きくなるほど、アノードガスを希釈するカソードガスの排水素希釈流量を大きくする。
そして、図3に示した補機制限判定部310は、補機類57の消費電力が、制限閾値を超えるか否かを判定し、補機類57の消費電力が制限閾値を超えた場合には、補機制限フラグをONに設定する。暖機制限フラグがONに設定された場合、すなわち補機類57の消費電力が制限閾値を超えた場合に、図5に示した希釈要求制限流量演算部333は、カソードガスの排水素希釈要求流量を、希釈要求制限流量に制限する。
これにより、DC/DCコンバータ56の通過可能電力が補機類57の消費電力よりも低下した場合に、排水素希釈要求に基づくコンプレッサ流量が制限されるので、補機類57の消費電力を確実に低減することができる。
さらに本実施形態では、補機類57の消費電力が制限閾値を超えた場合には、図10に示した補機制限開度率保持部337は、パージ弁36によって燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスの流量を補機制限開度率以下に制限する。補機制限開度率は、コンプレッサ流量を希釈要求制限流量に制限したときに排出ガス中の水素濃度が規定値よりも低くなるように予め定められている。
これにより、カソードガスの排水素希釈要求流量を制限した時点でパージ弁36から排出されるアノードガスの排出量についても制限されるので、燃料電池システム100に要求される安全基準を守りつつ、補機類57の消費電力を低減することができる。
また、本実施形態では、図5に示した膜湿潤要求流量演算部222は、測定HFRが基準値よりも小さい場合、すなわち燃料電池の電解質膜が目標とする湿潤状態よりも湿っている場合には、カソードガスの湿潤要求流量を増加させる。
そして、湿潤要求制限流量演算部335は、補機類57の消費電力が制限閾値を超えた場合において、電解質膜の湿潤状態と相関のある測定HFRが基準値よりも小さくなるときには、カソードガスの湿潤要求流量を湿潤要求制限流量により制限する。湿潤要求制限流量は、乾燥制限フラグがONに設定されるときの膜湿潤要求流量よりも小さな値に設定される。
これにより、電解質膜が湿りすぎている状態、すなわち乾燥制御によって膜湿潤要求流量がコンプレッサ目標流量として設定されやすい状況で、膜湿潤要求流量が制限されるので、的確に、補機類57の消費電力を制限することができる。また、図6に示したように、コンプレッサ流量を湿潤要求流量まで増加させる制御を制限することにより、効果的に、補機類57の消費電力を低減することができる。
さらに本実施形態では、カソードガスの湿潤要求流量を制限した場合には、図16に示した膜湿潤要求温度演算部342は、燃料電池スタック1の目標温度を、図17に示したように目標HFRに応じて高くする。これにより、バイパス通路43からの冷却水の割合が大きくなるように三方弁44の開度が設定される。すなわち、燃料電池スタック1の温度を上昇させる制御が実行される。
これにより、燃料電池スタック1内の飽和水蒸気量が上昇して、カソードガスにより燃料電池スタック1から持ち出される水蒸気の排出量が増加するので、電解質膜を乾燥させることができる。
このため、カソードガスの湿潤要求流量を制限した時点でスタック温度を上昇させることにより、コンプレッサ24の消費電力を抑制しつつ、燃料電池の電解質膜が湿り過ぎた状態となってフラッディングが発生するのを防止できる。
また、本実施形態では、図13に示した膜湿潤要求圧力演算部223は、燃料電池スタック1が目標とする湿潤状態よりも乾いている場合には、コンプレッサ24よりも下流のカソードガスの湿潤要求圧力を上昇させる。
そして、湿潤要求制限圧力演算部340は、補機類57の消費電力が制限閾値を超えた場合において、燃料電池スタック1が目標とする湿潤状態よりも乾いているときには、カソードガスの湿潤要求圧力を湿潤要求制限圧力に制限する。
これにより、電解質膜が乾きすぎている状態、すなわち加湿制御によって膜湿潤要求圧力がコンプレッサ目標下流圧力として設定されやすい状況で、膜湿潤要求圧力が制限されるので、的確に、補機類57の消費電力を制限することができる。また、図6に示したように、コンプレッサ下流圧力を湿潤要求流量まで増加させる制御を制限することにより、効果的に、補機類57の消費電力を低減することができる。
さらに本実施形態では、カソードガスの湿潤要求圧力を制限した場合には、図16に示した膜湿潤要求温度演算部342は、燃料電池スタック1の目標温度を、図17に示したように目標HFRに応じて低くする。これにより、ラジエータ42からの冷却水の割合が大きくなるように三方弁44の開度が設定される。すなわち、燃料電池スタック1の温度を低下させる制御が実行される。
このため、燃料電池スタック1内の飽和水蒸気量が下降して、カソードガスにより燃料電池スタック1から持ち出される水蒸気の排出量が減少するので、電解質膜を加湿しやすくなる。
このように、カソードガスの湿潤要求圧力を制限した時点でスタック温度を低下させることにより、コンプレッサ24の消費電力を抑制しつつ、燃料電池の電解質膜が乾き過ぎて劣化するのを防止することができる。
したがって、膜湿潤要求流量演算部222及び膜湿潤要求圧力演算部223は、燃料電池スタック1の湿潤状態に応じて、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量及び圧力を制御する。これにより、コンプレッサ24の消費電力を効果的に低減することができ、バッテリ55の過放電を抑制することができる。
次に、燃料電池スタック1の暖機運転中に、コンバータ温度が上昇してDC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下したときの冷却水ヒータ46の出力を制限する手法について図16を参照して説明する。
(第3実施形態)
図20は、本発明の第3実施形態におけるヒータ出力制御部205の詳細構成を示すブロック図である。
図20は、本発明の第3実施形態におけるヒータ出力制御部205の詳細構成を示すブロック図である。
本実施形態の燃料電池システムの構成は、図1に示した燃料電池システム100と基本構成は同一であるため、同一構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、ヒータ出力制御部205は、図2に示した補機類制御部200に相当する。
ヒータ出力制御部205は、冷却水ヒータ46から出力される発熱量(以下、「ヒータ出力」という。)を制御する。ヒータ出力は、ここでは、燃料電池スタック1から冷却水ヒータ46に供給される電力に相当する。
ヒータ出力制御部205は、暖機要求出力演算部218と、ヒータ目標出力設定部233と、補機消費可能電力算出部344と、積算部345と、ヒータ消費可能電力算出部346とを含む。
暖機要求出力演算部218は、燃料電池システム100の起動時に燃料電池スタック1の暖機を促進するために、冷却水温度に基づいて、ヒータ出力(以下、「暖機要求出力」という。)を演算する。
本実施形態では、暖機要求出力演算部218は、予め定められた暖機要求出力マップを参照し、冷却水温度に対応付けられた暖機要求出力を算出する。暖機要求出力演算部218は、冷却水温度が低いほど、すなわち燃料電池スタック1の温度が低いほど、暖機要求出力を大きくする。例えば、燃料電池システム100の零下起動時には、暖機要求出力は、ヒータ出力の可変範囲の最大値に設定される。暖機要求出力マップの詳細については図21で後述する。
暖機要求出力演算部218は、暖機要求出力をヒータ目標出力設定部233に出力する。なお、暖機要求出力演算部218は、図2に示したシステム要求補機操作量演算部220を構成する。
補機消費可能電力算出部344は、図3に示した制限閾値算出部311と同じ構成である。補機消費可能電力算出部344は、DC/DCコンバータ56の通過可能電力に、図4に示したバッテリ55の放電電力を加算し、その加算した値から車両補機の消費電力を減算することにより、補機類57の消費可能電力を算出する。
積算部345は、コンプレッサ24の消費電力と、冷却水ポンプ45の消費電力と、DC/DCコンバータ56の損失電力とを積算することにより、冷却水ヒータ46以外の補機類57の消費電力を算出する。
なお、コンプレッサ24の消費電力、冷却水ポンプ45の消費電力、及びDC/DCコンバータ56の損失電力は、それぞれ、図3の補機消費電力算出部312で述べたものと同じである。
ヒータ消費可能電力算出部346は、補機類57の消費可能電力から、冷却水ヒータ46を除いた補機類57の消費電力を減算することにより、冷却水ヒータ46の消費可能電力を算出する。
なお、補機消費可能電力算出部344、積算部345、及びヒータ消費可能電力算出部346は、図2に示した補機消費電力制限部300に相当する。
ヒータ目標出力設定部233は、冷却水ヒータ46の消費可能電力と暖機要求出力とのうち大きい方の値を、ヒータ目標出力として設定する。例えば、暖機要求出力が冷却水ヒータ46の消費可能電力よりも大きい場合には、ヒータ目標出力設定部233は、冷却水ヒータ46の消費可能電力を、ヒータ目標出力として補機類指令部240に出力する。
このように、ヒータ出力制御部205は、補機類57の消費可能電力を超えないように冷却水ヒータ46の暖機要求出力を制限する。これにより、DC/DCコンバータ56の通過可能電力の低下に応じてヒータ出力が低く制限されるので、暖機要求出力によってバッテリ55から過大な放電電力が取り出されるという事態を回避することができる。
図21は、暖機要求出力演算部218に記憶される暖機要求出力マップの一例を示す図である。ここでは、横軸が燃料電池スタック1の冷却水温度であり、縦軸が冷却水ヒータ46の暖機要求出力である。冷却水温度は、スタック出口水温センサ47の検出値とスタック入口水温センサ48の検出値との平均値である。
暖機要求出力マップでは、冷却水温度が例えば0℃よりも低い場合には、燃料電池スタック1の暖機を促進するために、ヒータ出力は最大値に設定されている。一方、冷却水温度が高くなるほど、暖機要求出力が低くなる。これにより、冷却水ヒータ46の消費電力を低減することができる。
本発明の第3実施形態によれば、図20に示したヒータ出力制御部205は、燃料電池スタック1の温度が、所定の温度例えば60℃よりも低いときには、図21に示したように冷却水ヒータ46の暖機要求出力(発熱量)を大きくする。
そしてヒータ消費可能電力算出部346は、補機類57の消費電力が、DC/DCコンバータ56の通過可能電力に基づいて設定された制限閾値を超えた場合には、冷却水ヒータ46の暖機要求出力を制限する。
これにより、DC/DCコンバータ56の通過可能電力が低下した場合に、冷却水ヒータ46によってバッテリ55から放電可能電力を超える過大な電力が出力されることを防ぐことができる。
さらに本実施形態では、補機消費可能電力算出部344は、DC/DCコンバータ56の通過可能電力とバッテリ55の放電可能電力とに基づいて補機類57の消費可能電力を求め、補機類57の消費可能電力から補機類57の消費電力を減算した値に冷却水ヒータ46の消費電力を制限する。
これにより、冷却水ヒータ46によるバッテリ55の過放電を抑制しつつ、冷却水ヒータ46の発熱によって燃料電池スタック1の暖機を促進することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
なお、本実施形態では、補機類57としてコンプレッサ24や冷却水ポンプ45などの複数の補機で構成される例について説明したが、いずれか1つの補機のみがDC/DCコンバータ56とバッテリ55との間に接続されてもよい。
なお、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
Claims (12)
- アノードガス及びカソードガスの供給を受けて負荷に応じて発電する燃料電池と、
前記燃料電池からの電力の充電、又は、前記負荷への電力の放電を行うバッテリと、
前記燃料電池と前記バッテリとの間に接続され、前記燃料電池及び前記バッテリの少なくとも一方の電圧を変換して前記燃料電池から前記バッテリへ電力を供給する変換器と、
前記バッテリと前記変換器との間に接続され、前記燃料電池の動作を補助する補機類と、
前記補機類のうちの少なくとも一部を2つの系統により制御するコントローラと、を含み、
前記コントローラは、
前記2つの系統のうち一方の系統として、前記負荷に基づいて、前記補機類の操作量を制御する発電制御部と、
他方の系統として、前記燃料電池の性能を維持するための運転条件に応じて、前記補機類のうちの少なくとも一部の操作量を制御するシステム制御部と、
前記変換器の温度に基づいて、前記発電制御部によって制御される補機類の操作量と、前記システム制御部によって制御される補機類の操作量とのうち少なくとも一方を制限する制限部と、を含む、
燃料電池システム。 - 請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記制限部は、前記変換器の温度に基づいて定められる前記変換器の通過可能電力が、前記補機類の消費電力よりも低下した場合に、前記バッテリの放電可能電力に応じて前記補機類の操作量の制限を緩和する、
燃料電池システム。 - 請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムの運転状態は、前記燃料電池から排出されるアノードガスの流量を含み、
前記補機類は、前記燃料電池へカソードガスを供給するコンプレッサを含み、
前記システム制御部は、前記燃料電池から排出されるアノードガスの流量が大きくなるほど、前記燃料電池に供給されるカソードガスの一部をバイパスして当該アノードガスを希釈するカソードガスの流量を大きくし、
前記制限部は、前記補機類の消費電力が、前記変換器の温度に基づいて定められた閾値を超えた場合には、前記システム制御部により制御される前記カソードガスの流量を制限する、
燃料電池システム。 - 請求項3に記載の燃料電池システムであって、
前記制限部は、前記補機類の消費電力が前記閾値を超えた場合には、前記燃料電池から排出されるアノードガスの流量を制限する、
燃料電池システム。 - 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムの運転状態は、前記燃料電池の湿潤状態を含み、
前記補機類は、前記燃料電池にカソードガスを供給するコンプレッサを含み、
前記システム制御部は、前記燃料電池の湿潤状態に応じて、前記燃料電池に供給されるカソードガスの流量及び圧力を制御し、
前記制限部は、前記補機類の消費電力が、前記変換器の温度に基づいて定められた閾値を超えた場合には、前記燃料電池の湿潤状態に応じて前記システム制御部により制御される前記カソードガスの流量又は圧力を制限する、
燃料電池システム。 - 請求項5に記載の燃料電池システムであって、
前記システム制御部は、前記燃料電池が目標とする湿潤状態よりも湿っている場合には、前記カソードガスの流量を増加させ、
前記制限部は、前記補機類の消費電力が前記閾値を超えた場合において、前記燃料電池が目標とする湿潤状態よりも湿っているときには、前記システム制御部により制御される前記カソードガスの流量を制限する、
燃料電池システム。 - 請求項6に記載の燃料電池システムであって、
前記制限部は、前記カソードガスの流量を制限した場合には、前記燃料電池の温度を上昇させる制御を実行する、
燃料電池システム。 - 請求項5に記載の燃料電池システムであって、
前記システム制御部は、前記燃料電池が目標とする湿潤状態よりも乾いている場合には、前記カソードガスの圧力を上昇させ、
前記制限部は、前記補機類の消費電力が前記閾値を超えた場合において、前記燃料電池が目標とする湿潤状態よりも乾いているときには、前記システム制御部により制御される前記カソードガスの圧力を制限する、
燃料電池システム。 - 請求項8に記載の燃料電池システムであって、
前記制限部は、前記カソードガスの圧力を制限した場合には、前記燃料電池の温度を低下させる制御を実行する、
燃料電池システム。 - 請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムの運転状態は、前記燃料電池の温度を含み、
前記補機類は、前記燃料電池に供給される冷却水を加熱するヒータを含み、
前記システム制御部は、前記燃料電池の温度が所定の温度よりも低いときには、前記ヒータから発熱される発熱量を大きくし、
前記制限部は、前記補機類の消費電力が、前記変換器の温度に基づいて定められた閾値を超えた場合には、前記システム制御部により制御される前記ヒータの発熱量を制限する、
燃料電池システム。 - 請求項10に記載の燃料電池システムであって、
前記制限部は、前記変換器の通過可能電力と前記バッテリの放電可能電力とに基づいて前記補機類の消費可能電力を求め、当該消費可能電力から前記ヒータを除く前記補機類の消費電力を減算した値に前記ヒータの消費電力を制限する、
燃料電池システム。 - アノードガス及びカソードガスの供給を受けて負荷に応じて発電する燃料電池と、前記燃料電池からの電力の充電、又は、前記負荷への電力の放電を行うバッテリと、前記燃料電池と前記バッテリとの間に接続される変換器と、前記バッテリと前記変換器との間に接続される補機類と、前記補機類のうちの少なくとも一部を2つの系統により制御するコントローラと、を備える燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池及び前記バッテリの少なくとも一方の電圧を変換する変換ステップと、
前記2つの系統のうち一方の系統により、前記燃料電池の負荷に基づいて、前記補機類の操作量を制御する発電制御ステップと、
他方の系統により、前記燃料電池の性能を維持するための運転条件に応じて、前記補機類のうちの少なくとも一部の操作量を制御するシステム制御ステップと、
前記変換器の温度に基づいて、前記発電制御ステップによって制御される補機類の操作量と、前記システム制御ステップによって制御される補機類の操作量とのうち少なくとも一方を制限する制限ステップと、
を含む燃料電池システムの制御方法。
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