(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態における燃料電池システム100の構成を示す図である。
燃料電池システム100は、燃料電池スタック110に対して外部から発電に必要な燃料ガスを供給し、負荷に応じて発電する電源システムである。本実施形態では、車両を駆動する駆動モータなどに電力を供給する。
燃料電池システム100は、燃料電池スタック110と、カソードガス給排装置120と、アノードガス給排装置130と、スタック冷却装置140と、内部抵抗測定装置150と、コントローラー160と、を備える。なお、カソードガス給排装置120、アノードガス給排装置130、及びスタック冷却装置140は、燃料電池システム100の補機である。
燃料電池スタック110は、例えば数百V(ボルト)の電圧を発電する。燃料電池スタック110は、駆動モータや補機に接続される。燃料電池スタック110は、数百枚の燃料電池(電池セル)を積層したものである。
燃料電池は、アノード電極(燃料極)と、カソード電極(酸化剤極)と、アノード電極及びカソード電力で挟まれる電解質膜と、により構成される。燃料電池は、アノード電極に水素を含有するアノードガス(燃料ガス)と、カソード電極に酸素を含有するカソードガス(酸化剤ガス)とを用いて電解質膜で電気化学反応を起こす。アノード電極及びカソード電極の両電極では、以下の電気化学反応が進行する。
アノード電極 : 2H2 → 4H+ + 4e- ・・・(1)
カソード電極 : 4H+ +4e- + O2 → 2H2O ・・・(2)
燃料電池では、上記(1)及び(2)の電気化学反応によって起電力が生じると共に水が生成される。燃料電池は互いに直列に接続されているため、燃料電池スタック110では、各燃料電池に生じるセル電圧の総和が出力電圧となる。
燃料電池スタック110は、カソードガス給排装置120からカソードガスが供給され、アノードガス給排装置130からアノードガスが供給される。
カソードガス給排装置120は、燃料電池スタック110にカソードガスを供給すると共に、燃料電池スタック110から排出されるカソードオフガスを大気に排出する装置である。
カソードガス給排装置120は、カソードガス供給通路21と、フィルター22と、カソードコンプレッサー23と、カソード圧力センサー24と、カソードガス排出通路25と、カソード調圧弁26と、を備える。
カソードガス供給通路21は、燃料電池スタック110にカソードガスを供給するための通路である。カソードガス供給通路21の一端は、外気から酸素を取り込む通路と連通し、他端はカソードガス入口孔121に接続される。
フィルター22は、カソードガス供給通路21に設けられ、カソードガスに含まれる異物を除去する。
カソードコンプレッサー23は、フィルター22よりも下流に位置するカソードガス供給通路21に設けられる。カソードコンプレッサー23は、外気からカソードガス供給通路21に酸素を取り込み、カソードガスとして燃料電池スタック110に供給する。
カソード圧力センサー24は、カソードコンプレッサー23とカソードガス入口孔121との間のカソードガス供給通路21に設けられる。カソード圧力センサー24は、カソードガスの圧力を検出する。カソード圧力センサー24は、検出した値をコントローラー160に出力する。カソード圧力センサー24の検出値は、例えばカソード調圧弁26の開度の調整に用いられる。
カソードガス排出通路25は、燃料電池スタック110からカソードオフガスを排出するための通路である。カソードガス排出通路25の一端はカソードガス出口孔122に接続され、他端は開口している。
カソード調圧弁26は、カソードガス排出通路25に設けられる。カソード調圧弁26は、コントローラー160によって開閉制御される。この開閉制御によって、カソード調圧弁26よりも上流側の通路を流れるカソードガスの圧力が所望の圧力に調節される。
アノードガス給排装置130は、燃料電池スタック110にアノードガスを供給すると共に、燃料電池スタック110から排出されるアノードオフガスに含まれる不純物を除去して燃料電池スタック110に循環させる装置である。
アノードガス給排装置130は、高圧タンク31と、アノードガス供給通路32と、アノード調圧弁33と、アノード圧力センサー34と、を備える。さらにアノードガス給排装置130は、アノードガス循環通路35と、気液分離装置36と、パージ弁37及びパージ弁38と、循環ポンプ39と、排出通路351及び排出通路352と、を備える。
高圧タンク31は、燃料電池スタック110に供給するアノードガスを高圧状態に保って貯蔵する。
アノードガス供給通路32は、高圧タンク31から燃料電池スタック110にアノードガスを供給するための通路である。アノードガス供給通路32の一端は、高圧タンク31に接続され、他端は、アノードガス入口孔131に接続される。
アノード調圧弁33は、アノードガス供給通路32に設けられる。アノード調圧弁33は、コントローラー160によって開閉制御される。この開閉制御によって、アノードガス供給通路32から燃料電池スタック110に供給するアノードガスの圧力が調節される。
アノード圧力センサー34は、アノード調圧弁33とアノードガス入口孔131との間のアノードガス供給通路32に設けられる。アノード圧力センサー34は、アノードガスの圧力を検出する。アノード圧力センサー34は、検出した値をコントローラー160に出力する。アノード圧力センサー34の検出値は、例えばアノード調圧弁33の開度の調整に用いられる。
アノードガス循環通路35は、燃料電池スタック110から排出されるアノードガスをアノードガス供給通路32に循環させる通路である。アノードガス循環通路35の一端は、燃料電池スタック110のアノードガス出口孔132に接続され、他端は、アノード調圧弁33とアノード圧力センサー34との間のアノードガス供給通路32に合流する。
循環ポンプ39は、アノードガス循環通路35に設けられる。循環ポンプ39は、気液分離装置36を通過したアノードガスを燃料電池スタック110に循環させる。
気液分離装置36は、アノードガス循環通路35に設けられる。アノードガス循環通路35には、燃料電池スタック110からアノードオフガスが排出される。アノードオフガスには、発電反応に使用されなかった余剰のアノードガスと共に、カソードガスに含まれる不活性ガスの窒素や、発電反応によって生成される水などの不純物が含まれている。
気液分離装置36は、アノードオフガスに含まれる水や窒素ガスなどの不純物を余剰のアノードガスから分離する。気液分離装置36は、例えば、アノードオフガスを一時的に蓄えるバッファタンクであり、アノードオフガス中の水蒸気を凝縮して液水にする。気液分離装置36で不純物が除去されたアノードガスは、アノードガス循環通路35を通り再び燃料電池スタック110に供給される。また、気液分離装置36の下部には排出通路351が設けられている。
排出通路351は、気液分離装置36によって分離された不純物を排出するための通路である。排出通路351の一端は、気液分離装置36の排出孔に接続され、他端は、カソード調圧弁26よりも下流のカソードガス排出通路25に合流する。
パージ弁37は、排出通路351に設けられる。パージ弁37は、コントローラー160によって開閉制御される。この開閉制御によって、窒素ガスや液水などの不純物がカソードガス排出通路25へ排出される。
排出通路352は、循環ポンプ39の下流でアノードガス循環通路35から分岐して、カソード調圧弁26よりも下流のカソードガス排出通路25と合流する。
パージ弁38は、排出通路352に設けられる。パージ弁38は、アノードガスをカソードガス排出通路25へ排出する。パージ弁38は、コントローラー160によって開閉制御される。
スタック冷却装置140は、冷媒である冷却水を用いて燃料電池スタック110を冷却して燃料電池スタック110を発電に適した温度に調整する。また、スタック冷却装置140は、燃料電池システム100が零下で起動されたときには、冷却水を加熱して燃料電池スタック110を暖機する。
さらにスタック冷却装置140は、カソード調圧弁26、パージ弁37及びパージ弁38についても冷却水を利用して暖機する。なお、カソード調圧弁26、パージ弁37及びパージ弁38のことを以下では「排出バルブ」ともいう。
スタック冷却装置140は、冷却水循環通路41と、ラジエーター42と、バイパス通路43と、サーモスタット44と、冷却水ポンプ45と、ヒーター46と、水温センサー47と、水温センサー48と、分岐通路51と、水温センサー52と、を備える。
冷却水循環通路41は、燃料電池スタック110に冷却水を循環させる通路である。
ラジエーター42は、冷却水循環通路41に設けられる。ラジエーター42は、燃料電池スタック110で温められた冷却水を冷却する。
バイパス通路43は、ラジエーター42をバイパスする通路である。バイパス通路43の一端は、冷却水循環通路41に接続され、他端は、サーモスタット44に接続される。
サーモスタット44は、バイパス通路43が冷却水循環通路41に合流する部分に設けられる。サーモスタット44は開閉弁である。サーモスタット44は、内部を流れる冷却水の温度によって自動的に開閉する。
例えば、サーモスタット44は、内部を流れる冷却水の温度が所定の開弁温度よりも低いときには閉じた状態となり、バイパス通路43を経由してきた冷却水のみを燃料電池スタック110に供給する。これにより、燃料電池スタック110には相対的に高温の冷却水が流れる。
一方、サーモスタット44は、内部を流れる冷却水の温度が開弁温度以上になると、徐々に開き始める。そしてサーモスタット44は、バイパス通路43を経由してきた冷却水と、ラジエーター42を経由してきた冷却水と、を内部で混合して燃料電池スタック110に供給する。これにより、燃料電池スタック110には相対的に低温の冷却水が流れる。
冷却水ポンプ45は、冷却水循環通路41に設けられ冷却水の流量を調整する流量調整手段である。なお、流量調整手段としては、冷却水ポンプ45に限られず、冷却水ポンプ45の代わりに、例えば吐出流量が一定のポンプの下流に調圧弁を設けて冷却水の流量を調整しても良く、三方弁を設けて冷却水の流量を調整しても良い。
冷却水ポンプ45は、サーモスタット44と燃料電池スタック110の入口孔との間の冷却水循環通路41に設けられる。冷却水ポンプ45は、冷却水を燃料電池スタック110に循環させる。冷却水ポンプ45の吐出流量は、コントローラー160によって制御される。冷却水ポンプ45に対する供給電力を大きくするほど、冷却水ポンプ45の吐出流量は大きくなる。
ヒーター46は、サーモスタット44と冷却水ポンプ45との間の冷却水循環通路41に設けられる。ヒーター46は、燃料電池スタック110の暖機時に通電され、冷却水を温める。ヒーター46の発熱量は、燃料電池スタック110からの供給電力が大きくなるほど多くなる。ヒーター46としては、例えばPTCヒーターが使用される。
水温センサー47は、燃料電池スタック110の流入口近傍の冷却水循環通路41に設けられる。水温センサー47は、燃料電池スタック110に流入する冷却水の温度(以下「スタック入口水温」という。)を検出する。水温センサー47は、検出したスタック入口水温をコントローラー160に出力する。
水温センサー48は、燃料電池スタック110の流出口付近の冷却水循環通路41に設けられる。水温センサー48は、燃料電池スタック110から排出された冷却水の温度(以下「スタック出口水温」という。)を検出する。水温センサー48は、検出したスタック出口温度をコントローラー160に出力する。
分岐通路51は、冷却水ポンプ45の下流の冷却水循環通路41から分岐して、カソード調圧弁26、パージ弁37及びパージ弁38をそれぞれ通過し、冷却水ポンプ45の上流の冷却水循環通路41に合流する。カソード調圧弁26、パージ弁37及びパージ弁38は、燃料電池スタック110の発電状態を良好に維持するために用いられる部品である。
分岐通路51によってパージ弁37及びパージ弁38よりも先にカソード調圧弁26に冷却水を通過させる理由は、発電に伴う生成水はカソード側で発生するので、生成水は、カソードガス排出通路25から先に排出されやすい。そのため、ヒーター46で加熱された冷却水をカソード調圧弁26から先に通すことにより、パージ弁37及びパージ弁38よりもカソード調圧弁26の暖機を優先して行うことができる。
水温センサー52は、カソード調圧弁26、パージ弁37及びパージ弁38の下流の分岐通路51に設けられる。水温センサー52は、パージ弁38を通過した冷却水の温度(以下「パージ弁出口水温」という。)を検出する。水温センサー52は、検出したパージ弁出口水温をコントローラー160に出力する。
内部抵抗測定装置150は、燃料電池スタック110の湿潤度を推定するために、燃料電池スタック110の内部抵抗(インピーダンス)を測定する。電解質膜の湿潤度が小さいほど(電解質膜中の水分が少なく乾き気味であるほど)インピーダンスが大きくなり、電解質膜の湿潤度が大きいほど(電解質膜中の水分が多く濡れ気味であるほど)インピーダンスが小さくなる。
内部抵抗測定装置150は、例えば、燃料電池スタック110の内部抵抗(HFR:High Frequency Resistance)を測定する。内部抵抗測定装置150は、燃料電池スタック110の電圧端子119の一方に交流電流を供給し、交流電流によって電圧端子119間に生じる電圧の振幅を検出する。内部抵抗測定装置150は、検出した振幅を交流電流の振幅で除算して内部抵抗値を算出する。内部抵抗測定装置150は、内部抵抗値をコントローラー160に出力する。
コントローラー160は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピューターで構成される。
コントローラー160には、水温センサー47からスタック入口水温が入力され、水温センサー48からスタック出口水温が入力され、内部抵抗測定装置150から燃料電池スタック110の内部抵抗値が入力される。
コントローラー160は、燃料電池スタック110に対する発電要求に応じて、カソードコンプレッサー23、カソード調圧弁26、アノード調圧弁33、パージ弁37及びパージ弁38を制御する。これにより、燃料電池スタック110に供給されるカソードガス及びアノードガスが、発電に適した流量に調整される。
さらにコントローラー160は、スタック入口水温、スタック出口水温や、内部抵抗値などの測定値に基づいて、燃料電池スタック110を良好な発電状態に維持する。
例えば、燃料電池スタック110の発電効率は、電解質膜の湿潤状態によって変わるため、コントローラー160は、内部抵抗測定装置150で測定される内部抵抗値に基づいて、燃料電池スタック110を良好な湿潤状態に制御する。例えば、コントローラー160は、燃料電池スタック110が乾燥状態のときには、冷却水ポンプ45の回転数を上げて冷却水の流量を多くする。これにより、燃料電池スタック110の温度が下がりやすくなるので、電解質膜内の飽和水蒸気量が低下して電解質膜内の液水が増加し、燃料電池スタック110を良好な発電状態に近づけることができる。
また燃料電池システム100の起動時においては、コントローラー160は、燃料電池スタック110を発電に適した発電温度(例えば60℃)まで暖機する制御(以下「暖機促進運転」という)を実行する。
暖機促進運転では、コントローラー160は、燃料電池スタック110を補機に電気的に接続し、補機の駆動に必要な電力を燃料電池スタック110で発電させる。これにより、発電に伴う発熱によって燃料電池スタック110自体が暖機される。さらにコントローラー160は、ヒーター46で冷却水を加熱しながら、冷却水ポンプ45を駆動して燃料電池スタック110に冷却水を循環させる。
このような暖機制御によって燃料電池スタック110の温度が上昇し、これに伴いIV特性が回復してくる。そして燃料電池スタック110が駆動モータに必要最低限の電力を供給できるIV特性になると、車両に対して走行が許可される。この後も燃料電池スタック110が発電に適した温度に達するまで暖機促進運転が継続される。
一方、走行許可後は、ヒーター46の加熱によって冷却水が沸騰しないように、ヒーター46に対する供給電力がゼロに制限される。暖機促進運転中にヒーター46をオフすると、燃料電池スタック110は自己発熱によって温度が上昇する一方、冷却水はヒーター46では加熱されないので、燃料電池スタック110の方が冷却水よりも温度が高くなる。この状態で冷却水ポンプ45を駆動し続けると燃料電池スタック110の温度が下がってしまう。この対策として、ヒーター46による暖機を制限する場合には、冷却水ポンプ45の駆動も同時に停止している。
しかしながら、ヒーター46への電力供給が制限された後に、例えば燃料電池スタック110の湿潤制御によって、冷却水ポンプ45の回転数が高く設定される場合がある。この場合には、燃料電池スタック110への冷却水の流量が多くなり、燃料電池スタック110の温度が下がってしまう。特に走行許可直後はIV特性が完全に回復していないため、燃料電池スタック110の温度が下がると、IV特性が直ぐに悪くなり、燃料電池スタック110から駆動モータへの出力電力が低下することが懸念される。
そこで、本発明では、走行許可後にヒーターによる暖機促進運転が制限された場合に、冷却水の流量を制限して燃料電池スタックのIV特性の悪化を防止する。
図2は、本実施形態におけるコントローラー160の機能構成を示すブロック図である。コントローラー160は、スタック冷却装置140を制御する冷却水ポンプ制御部200を備える。
冷却水ポンプ制御部200は、流量制御部210と、暖機制御部220と、暖機制限部230と、スタック出力低下抑制部240と、冷却水ポンプ指令部250と、を備える。
流量制御部210は、燃料電池スタック110の運転状態に基づいて、冷却水の流量を制御する。
例えば、流量制御部210は、燃料電池スタック110の湿潤状態に応じて冷却水ポンプ45に対する要求流量をスタック出力低下抑制部240に設定する。あるいは、流量制御部210は、燃料電池スタック110の温度が、発電に適した所定の温度になるように冷却水ポンプ45に対する要求流量を設定する。
暖機制御部220は、零下起動時の燃料電池スタック110を暖機するときに、ヒーター46の発熱量(出力)及び冷却水の流量を、それぞれ暖機促進のための所定値に制御する。
例えば、暖機制御部220は、冷却水ポンプ45のポンプ回転数を可変範囲の上限値に設定すると共に、ヒーター46に対する供給電力を可変範囲の上限値に設定する。これにより、冷却水ポンプ45及びヒーター46で消費される発電電力が最も大きくなり、燃料電池スタック110の自己発熱量が増えるので、燃料電池システム100を起動してから暖機が完了するまでの暖機時間を短縮できる。
暖機制御部220は、燃料電池スタック110から駆動モータに電力を供給できる条件が成立しているか否かを判定し、条件が成立している場合には、駆動モータによる走行を許可する。
例えば、暖機制御部220は、所定周期ごとに、燃料電池スタック110の電流を一定の範囲で振幅させたときに、燃料電池スタック110の電流値及び電圧値を検出し、検出した電流値及び電圧値に基づいて燃料電池スタック110のIV特性を推定する。そして暖機制御部220は、そのIV特性が、車両を所定の速度まで加速できる特性か否かを判定し、IV特性が所定の特性を超えている場合には、走行を許可する。
暖機制限部230は、走行許可後に、暖機制御部220によって設定される冷却水ポンプ45及びヒーター46の設定値を、燃料電池システム100の状態に応じて制限する。
暖機制限部230は、例えば、走行許可後に冷却水の温度が所定の閾値を超えている場合には、ヒーター46に対する設定値をゼロにすると共に、ポンプ回転数の設定値をゼロにすることで、冷却水ポンプ45およびヒーター46を燃料電池システム100の状態に応じた設定値にすることができる。
燃料電池スタック110の温度上昇によって冷却水の温度が上昇している状態では、ヒーター46によって冷却水を加熱し続けるとヒーター46の近傍で冷却水が沸騰する恐れがある。そのため、暖機制限部230は、走行許可後に暖機促進運転中であってもヒーター46の設定値をゼロに制限することより、冷却水の沸騰を防止している。
スタック出力低下抑制部240は、暖機制限部230によって走行許可後にヒーター46に対する設定値が制限された場合には、流量制御部210によって設定される冷却水の流量を制限する。これにより、走行許可後の燃料電池スタックの温度(以下「スタック温度」という)の低下を防止できるので、走行中に燃料電池スタック110のIV特性が悪くなって出力電力が低下することを防止できる。
具体的には、暖機制限部230によって冷却水ポンプ45及びヒーター46の設定値が共にゼロに制限された場合に、流量制御部210によって電解質膜が乾燥状態のため冷却水ポンプ45の流量が高く設定される可能性がある。この場合にスタック出力低下抑制部240は、スタック温度を維持できる所定の流量を、冷却水の流量の上限値(以下「上限流量」という)として設定する。なお、上限流量は、冷却水の流量を制限する制限値である。
スタック出力低下抑制部240は、流量制御部210によって設定された冷却水の流量が上限流量を超えないように、ポンプ回転数の目標値を設定する。
冷却水ポンプ指令部250は、冷却水ポンプ45の回転数が目標値となるように、燃料電池スタック110から冷却水ポンプ45に電力を供給する。
このように、燃料電池スタック110の暖機中において、走行が許可された後、暖機制限部230によってヒーター46の出力が制限されたときには、スタック温度を維持できる値に冷却水ポンプ45の流量を制限する。これにより、燃料電池スタック110のIV特性の悪化を抑制できるので、燃料電池スタック110から駆動モータに供給する出力電力の低下を防止できる。
次に冷却水ポンプ制御部200の構成例について図3を参照して説明する。
図3は、冷却水ポンプ制御部200の詳細構成を示すブロック図である。
流量制御部210は、湿潤状態調整部211と、消費電力調整部212と、膜透過量調整部213と、を備える。また、暖機制御部220は、スタック暖機流量設定部221と、バルブ暖機流量設定部222と、を備える。さらに、スタック出力低下抑制部240は、上限流量設定部241と、流量制限部242と、目標流量設定部243と、を備える。
湿潤状態調整部211は、燃料電池スタック110の発電状態に基づいて冷却水の流量を制御する発電状態制御部である。
湿潤状態調整部211は、電解質膜での発電効率を良好にするために、内部抵抗測定装置150で測定された内部抵抗値に基づいて冷却水の目標流量を算出する。例えば、湿潤状態調整部211には、内部抵抗値と目標流量とが互いに対応付けられたマップが予め記憶される。そして湿潤状態調整部211は、内部抵抗測定装置150から測定値を受け付けると、マップを参照し、測定値に対応付けられた目標流量を取得する。
湿潤状態調整部211は、内部抵抗値が大きいほど電解質膜が乾燥状態にあるため、冷却水の目標流量を大きくする。これにより、冷却水によって燃料電池スタック110の温度が下がるので、飽和水蒸気量が下がり、水蒸気から液水になる生成水量が増加するため、電解質膜の湿潤度を発電に適した湿潤度に近づけることができる。一方、湿潤状態調整部211は、内部抵抗値が小さいほど冷却水の目標流量を小さくして、電解質膜を乾燥させる。
消費電力調整部212は、暖機に必要な発電電力を確保するために、補機の消費電力やバッテリーの電力などの収支を調整する。例えば、消費電力調整部212は、燃料電池システム100の目標電力をカソードコンプレッサー23、冷却水ポンプ45や、ヒーター46などの補機で消費させるために、各補機に対する供給電力を調整する。目標電力は、例えば、燃料電池スタック110の自己発熱に必要な所定の発電電力からバッテリーの補充電力を減算した値である。
消費電力調整部212は、目標電力に応じて冷却水の要求流量(下限値)を設定する。消費電力調整部212は、目標電力が大きくなるほど、冷却水ポンプ45の消費電力を大きくするために、冷却水の要求流量を大きくする。一方、消費電力調整部212は、目標電力が小さくなるほど、冷却水ポンプ45の消費電力を小さくするために、冷却水の要求流量を小さくする。消費電力調整部212は、電力消費のための要求流量を目標流量設定部243に出力する。
膜透過量調整部213は、燃料電池システム100の異常を防止するように冷却水の流量を制御する異常防止制御部である。
膜透過量調整部213は、燃料電池スタック110内のカソードガス流路から電解質膜を介してアノードガス流路に透過してくる不活性ガスの透過量を減らすために、冷却水の流量を調整する。電解質膜は、温度が低くなるほど不活性ガスの透過量が少なくなる特性を有する。不活性ガスとは、カソードガスに含まれる窒素ガスのことである。
アノードガス流路に滞留する窒素ガスは、パージ弁38からアノードガスと共に排出される。またアノードガス中の水素は、カソードガス排出通路25を流れるカソードガスによって希釈され大気に排出される。アノードガスの排出量は、安全性の観点から規定の水素濃度を超えないように制限されるため、窒素ガスの排出量も制限される。窒素ガスの排出量が制限されると、アノードガス流路に滞留する窒素ガスが増加するため、発電領域での水素濃度が下がり、燃料電池スタック110の電圧が著しく低下する。その結果、燃料電池スタック110の電圧が所定のフェール閾値よりも低くなり、システム異常と判断され、燃料電池システム100を緊急停止しなければならなくなる。
この対策として、膜透過量調整部213は、窒素ガスの排出量が制限されたときに滞留量が所定の閾値を超えている場合には、スタック温度を下げて電解質膜からアノードガス流路への窒素ガスの透過量を減らすために、冷却水の流量を高く制御する。
膜透過量調整部213は、アノードガス流路に滞留する窒素ガスの滞留量に応じて、冷却水の要求流量(下限値)を設定する。窒素ガスの滞留量は、例えば、目標電流に基づいて推定される。具体的には膜透過量調整部213は、滞留量が大きくなるほど、電解質膜の透過量を減らすために、冷却水の要求流量を小さくする。そして膜透過量調整部213は、透過抑制のための要求流量を目標流量設定部243に出力する。
スタック暖機流量設定部221は、ヒーター46で加熱した冷却水によって燃料電池スタック110を暖機するために、冷却水の要求流量を設定する。
本実施形態では、スタック暖機流量設定部221は、暖機制限信号線231から、ヒーター46のON状態を示すヒーター設定情報を受け付けると、スタック暖機のための要求流量を冷却水ポンプ45の設定範囲の上限値に設定する。
一方、スタック暖機流量設定部221は、暖機制限信号線231から、ヒーター46のOFF状態を示すヒーター設定情報を受け付けると、スタック暖機のための要求流量を冷却水ポンプ45の設定範囲の下限値であるゼロに設定する。
ヒーター設定情報は、図2に示した暖機制限部230から出力される。暖機制限部230は、走行許可後に冷却水の沸騰を防止するためにヒーター46に対する供給電力をゼロに設定し、スタック暖機のための要求流量を制限する情報としてヒーター46のOFF状態を示すヒーター設定情報を、スタック暖機流量設定部221に出力する。これにより、スタック暖機流量設定部221は、スタック暖機のための要求流量がゼロに制限される。
バルブ暖機流量設定部222は、燃料電池スタック110又はヒーター46で加熱された冷却水によって排出バルブを暖機するために、冷却水の要求流量を設定する。これにより、排出バルブの暖機が促進される。したがって、発電に伴う生成水が排出バルブに到達する前に排出バルブの温度を早期に0℃に昇温させることが可能になり、排出バルブの凍結を防止することができる。
本実施形態では、バルブ暖機流量設定部222は、暖機制限信号線231から、スタック出口水温とパージ弁出口水温とを示す冷却水温度情報を受け付ける。そしてバルブ暖機流量設定部222は、スタック出口水温とパージ弁出口水温との温度差が大きくなるほど、冷却水の循環による冷却水から排出バルブへの放熱量を大きくするために、冷却水の要求流量を大きくする。さらにバルブ暖機流量設定部222は、燃料電池スタック110の生成水量が多くなるほど、排出バルブの暖機を促進するために、冷却水の要求流量を大きくする。
例えば、バルブ暖機流量設定部222には、燃料電池スタック110の生成水量ごとに、スタック出口水温及びパージ弁出口水温の温度差と、冷却水の流量とが互いに対応付けられたマップが予め記録される。そしてバルブ暖機流量設定部222は、冷却水温度情報を受け付けると、マップを参照して、冷却水温度情報に基づく温度差と、発電に伴う生成水量とで冷却水の要求流量を特定し、その要求流量を目標流量設定部243に出力する。
また、バルブ暖機流量設定部222は、冷却水温度情報に示されたパージ弁出口水温が所定の閾値、例えば氷点温度(0℃)を超えている場合には、排出バルブの凍結対策が完了するため、バルブ暖機のための要求流量をゼロに制限する。
冷却水温度情報は、図2に示した暖機制限部230から出力される。暖機制限部230は、パージ弁出口水温が0℃を超えると、冷却水ポンプ45の消費電力を低減するためにバルブ暖機のための要求流量を制限する情報として0℃以上のパージ弁出口水温をバルブ暖機流量設定部222に出力する。これにより、バルブ暖機流量設定部222は、バルブ暖機のための要求流量がゼロに制限される。
上限流量設定部241は、暖機制限部230によるスタック暖機流量設定部221及びバルブ暖機流量設定部222の要求流量の制限に伴う、燃料電池スタック110の出力電力の低下を回避するために、冷却水の流量を制限する制限値を設定する。
上限流量設定部241は、車両に対する走行を許可してから暖機が完了するまでの間、燃料電池スタック110の発熱量に基づいて、スタック温度を維持できる流量を、冷却水の上限流量として演算する。発熱量は、燃料電池スタック110で発電した電力と電圧とを乗算した値である。
上限流量設定部241は、燃料電池スタック110の発熱量が大きくなるほど、スタック温度が下がりにくくなるので、冷却水の上限流量を高くする。一方、上限流量設定部241は、発熱量が小さくなるほど、スタック温度が下がりやすくなるので、冷却水の上限流量を低くする。
本実施形態では、燃料電池スタック110の発熱量と、発熱量によって定まる上限流量とが互いに対応付けられた制限マップが上限流量設定部241に予め記録される。上限流量設定部241は、燃料電池スタック110の発熱量を取得すると、制限マップを参照し、その発熱量によって特定される冷却水の上限流量を算出し、その冷却水の上限流量を流量制限部242に出力する。なお、制限マップについては図4を参照して説明する。
流量制限部242は、上限流量設定部241で設定される上限流量と、湿潤状態調整部211で設定される要求流量とのうち小さい方の流量を、冷却水の上限流量として目標流量設定部243に設定する。これにより、流量制限部242の上限流量によって湿潤状態調整部211の要求流量が制限されるので、スタック温度の低下を抑制することができる。
目標流量設定部243は、流量制限部242で設定された上限流量と、消費電力調整部212、膜透過量調整部213、スタック暖機流量設定部221及びバルブ暖機流量で設定された各要求流量とのうち、最も大きな流量を冷却水の目標流量に設定する。そして目標流量設定部243は、冷却水の目標流量を、図3で示した冷却水ポンプ指令部250に出力する。
本実施形態では、燃料電池スタック110の暖機中において、走行許可後に湿潤状態調整部211の要求流量が、上限流量設定部241の上限流量よりも大きくなる場合がある。このため、湿潤状態調整部211の要求流量を流量制限部242に設定することにより、湿潤状態調整部211の要求流量は、上限流量設定部241の上限流量に制限される。
これにより、暖機制限部230によってヒーター46がOFFに設定された状態で、湿潤状態調整部211によって冷却水の流量を高くしてスタック温度を下げてしまうことを防ぐことができる。したがって、燃料電池スタック110の出力電力の低下を抑制することができる。
また、消費電力調整部212及び膜透過量調整部213は、燃料電池システム100の異常を回避するために冷却水の流量を制御するものである。したがって、消費電力調整部212及び膜透過量調整部213の各要求流量は、流量制限部242による要求流量の制限を禁止するために、目標流量設定部243に設定される。
これにより、消費電力調整部212及び膜透過量調整部213は、上限流量設定部241の上限流量で制限されないので、システム異常を回避しつつ、燃料電池スタック110の出力低下を抑制することができる。
図4は、上限流量設定部241に保持される制限マップを示す図である。図4では、縦軸が冷却水の上限流量であり、横軸が燃料電池スタック110の発熱量である。
制限マップでは、スタック出口水温ごとに、燃料電池スタック110の発熱量と、冷却水の上限流量とが互いに対応付けられている。冷却水の上限流量は、スタック温度の低下による燃料電池スタック110の出力低下を回避できる流量に設定されている。本実施形態ではスタック温度を維持できる所定の流量に設定されている。この冷却水の上限流量は、例えば、実験データに基づいて決められる。
冷却水の上限流量は、燃料電池スタック110の発熱量が小さいほど、小さくなる。このため、燃料電池スタック110の発熱量が低いときには、スタック温度の低下を抑制するので、暖機を優先させることができる。
また、冷却水の上限流量は、燃料電池スタック110の発熱量が大きくなるほど、大きくなる。このため、燃料電池スタック110が乾燥状態であり、スタック温度を低くしたいときには、スタック温度を維持しつつ、湿潤状態の悪化を抑えることができる。したがって、燃料電池スタック110の出力電力の低下を抑制しつつ、発電効率の低下を抑制することができる。
また制限マップでは、同一の発熱量において、スタック入口水温が低いほど、冷却水の上限流量が小さくなる。これにより、冷却水の温度が低く、燃料電池スタック110の温度が低いほど、燃料電池スタック110の暖機を優先させることができる。
次に冷却水ポンプ制御部200の動作例について図5を参照して説明する。
図5は、スタック出力低下抑制部240によってポンプ回転数を制限したときの燃料電池システム100の状態を示すタイミングチャートである。
図5(A)は、燃料電池スタック110の内部抵抗値を示す図である。図5(A)には、内部抵抗測定装置150の測定値が実線で示され、湿潤状態を良好に維持するための目標値が破線で示されている。
図5(B)は、冷却水ポンプ45のポンプ回転数を示す図である。図5(B)には、上限流量設定部241の上限流量に基づくポンプ回転数が実線で示され、湿潤状態調整部211の要求流量に基づくポンプ回転数が破線で示され、暖機制御部220の要求流量が暖機制限部230によって制限されたときのポンプ回転数が一点鎖線で示されている。
図5(C)は、冷却水の温度を示す図である。図5(C)には、冷却水の温度としてスタック入口水温が実線で示され、湿潤状態調整部211の要求流量が目標流量に設定されたときのスタック入口水温が破線で示されている。図5(D)は、ヒーター46に対する供給電力を示す図である。また、図5(A)から図5(D)は、共通の時間軸で示されている。
時刻t0では、図5(A)に示すように、内部抵抗値が目標値よりも高く、燃料電池スタック110が乾燥状態にあるので、図5(B)に示すように、スタック温度を下げるために湿潤状態調整部211の要求流量が、上限値MAX近くに設定される。また、図5(B)及び図5(C)に示すように、スタック暖機流量設定部221によって、ヒーター46が設定範囲の上限値MAXに設定されると共に、冷却水ポンプ45の流量が設定範囲の上限値MAXに設定される。
このとき、スタック暖機流量設定部221の要求流量は、上限値MAXであり、湿潤状態調整部211の要求流量よりも大きい。そのため、図5(B)に示すように、スタック暖機流量設定部221の要求流量が目標流量として選択される。
時刻t1では、IV特性の推定処理によって燃料電池スタック110が所定のIV特性を超えていると判定され、燃料電池スタック110から駆動モータに電力が供給可能となり、車両の走行が許可される。
そして冷却水の沸騰を防止するため、図5(D)及び図5(C)に示すように、暖機制限部230によってヒーター46に対する供給電力がゼロに制限されると共に、ポンプ回転数もゼロに制限される。このため、スタック暖機流量設定部221の要求流量は、湿潤状態調整部211の要求流量よりも小さくなる。
このとき、図5(B)に示すように、上限流量設定部241によって冷却水の上限流量が設定される。このため、冷却水ポンプ45の目標流量が、湿潤状態調整部211の要求流量よりも低い上限流量に制限されるので、図5(C)に示すように冷却水の温度の低下が防止される。これにより、燃料電池スタック110の温度低下による出力低下が回避される。
その後、図5(B)に示すように、燃料電池スタック110の発電に伴う発熱量の増加によって上限流量設定部241の上限電流が徐々に大きくなる。その結果、図5(A)に示すように、内部抵抗値が目標値よりもさらに大きくならずに一定に維持されている。
本発明の形態によれば、暖機制限部230によって走行許可後にヒーター46及冷却水ポンプ45による暖機が制限された場合には、流量制御部210によって設定される冷却水の流量を制限する。
これにより、例えばヒーター46がOFFされた状態で流量制御部210によって湿潤状態を維持するために冷却水の流量が高く設定されるような状況でも、冷却水の流量が低く制限されるので、スタック温度の低下を抑制できる。
したがって、燃料電池スタック110の暖機中において、車両が走行しているときに、スタック温度の低下による燃料電池スタック110の出力電力の低下を防止することができる。
また、本実施形態では、冷却水の流量を制限するための上限流量(制限値)は、図4に示すように、燃料電池スタック110の発熱量に基づいて設定される。例えば、上限流量設定部241は、燃料電池スタック110の発熱量が小さいほど、冷却水の上限流量を低くする。
これにより、燃料電池スタック110の自己発熱量が比較的少ないときは、湿潤状態調整部211による流量制御よりも、燃料電池スタック110の暖機を優先させることができる。
さらに、冷却水の上限流量は、燃料電池スタック110の湿潤状態に基づいて設定される。すなわち、上限流量設定部241は、燃料電池スタック110の発熱量が大きくなるほど、冷却水の上限流量を高くする。
これにより、燃料電池スタック110が乾燥状態のときは、スタック温度を維持しつつ、電解質膜を湿潤状態に近づけることができる。したがって、燃料電池スタック110の暖機を確保しつつ、発電効率を改善することができる。
また、本実施形態では、湿潤状態調整部211は、燃料電池スタック110の発電状態に基づいて冷却水の流量を制御する。また、膜透過量調整部213は、燃料電池システム100の異常を防止するように冷却水の流量を制御する。
そして、冷却水ポンプ45が湿潤状態調整部211で制御されているときに暖機制限部230がヒーター46に対する供給電力を制限した場合には、流量制限部242は、冷却水の流量を上限流量設定部241の上限流量で制限する。
一方、流量制限部242は、冷却水ポンプ45が膜透過量調整部213で制御されているときには、上限流量設定部241の上限流量で冷却水の流量を制限しない。
これにより、湿潤状態調整部211の要求流量は上限流量設定部241の上限流量で制限されるので、スタック温度の低下に伴う燃料電池スタック110の出力電力の低下を抑制できる。一方、膜透過量調整部213の要求流量は、上限流量設定部241の上限流量で制限されないので、スタック温度を下げて窒素ガスの滞留量の増加を抑制できる。このため、発電領域での窒素濃度の増加に伴う燃料電池スタック110の電圧低下によるシステム異常を確実に防止することができる。
したがって、燃料電池システム100の異常を回避しつつ、燃料電池スタック110の出力電力の維持を図ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
なお、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。