JP6179446B2 - リアクトル - Google Patents

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本発明は、リアクトルおよび注型樹脂に関し、さらに詳しくは、コイルが収容されたケースに注型樹脂が注入されたリアクトル、およびそれに用いられる注型樹脂に関する。
ハイブリッド自動車や、電気自動気車、燃料電池自動車等の車両に搭載されるDC−DCコンバータ等の電力変換装置には、コイルを備えてなるリアクトルが用いられる。リアクトルの構造は、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。特許文献1に開示されるような従来一般のリアクトルにおいては、磁心(コア)を挿通されたコイルがケースの中に収容され、ケース内部の空間には、注型樹脂(封止樹脂)が充填されている。注型樹脂は、コイルの絶縁を維持する役割に加え、通電時に発熱するコイルの放熱(冷却)を促進するという役割を有する。そこで、注型樹脂には、熱伝導性を向上させる観点から、フィラーが混合されることが多い。
特開2012−253384号公報 特開2011−181747号公報
上記のように、リアクトルを構成する注型樹脂にフィラーを混合すると、注型樹脂の熱伝導性を向上させることができるが、特許文献2にも示されるように、多量のフィラーを混合すると、注型樹脂が脆くなってしまう等、注型樹脂の機械的特性が低下しやすくなる。すると、リアクトルが、低温と高温が交互に繰り返される冷熱衝撃に晒された際に、注型樹脂に割れが生じやすくなる。
一方、リアクトルにおいて、コイルへの通電時、隣接するコイルターン間に働く相互作用により、コイルに振動が生じる。このような振動がコイルに生じると、コイルターン間に浸透した注型樹脂が、引張り方向や圧縮方向に応力を受ける。そのため、コイルの振動も、注型樹脂の割れを発生させる要因となる。このようなコイルの振動に起因する注型樹脂の割れを避けるためには、注型樹脂が圧縮に対して強度を有していることが求められる。
本発明の解決しようとする課題は、コイルの放熱性を確保することと、低温やコイルの振動による圧縮に起因して割れ等の不可逆的な変化が注型樹脂に生じるのを抑制することとが両立されたリアクトル、およびそのようなリアクトルを与える注型樹脂を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明にかかるリアクトルは、コイルと、前記コイルが収容されたケースと、前記ケースの内部に充填された注型樹脂と、を有し、前記コイルは、前記ケースの底面に一体的に固定され、前記注型樹脂は、熱機械分析法で測定したガラス転移温度が−30℃以下であり、25℃におけるJIS A硬度が20以上52以下の範囲にあることを要旨とする。
ここで、前記注型樹脂は、ウレタン系またはエポキシ系の硬化性樹脂であるとよい。
本発明にかかる注型樹脂は、熱機械分析法で測定したガラス転移温度が−30℃以下であり、25℃におけるJIS A硬度が20以上52以下の範囲にあることを要旨とする。
上記発明にかかるリアクトルにおいては、注型樹脂が、−30℃以下のガラス転移温度を有しているため、−30℃付近の低温においても、柔軟な状態を維持する。これにより、低温に起因する注型樹脂の割れを抑制することができる。また、注型樹脂のJIS A硬度が20以上52以下の範囲にあることにより、コイルの振動による圧縮応力の印加に追随して注型樹脂が可逆的に変形することで、割れることなくコイルの振動を吸収または緩和しやすくなる。
一方、ケースの底面にコイルが一体的に固定されていることにより、コイルの放熱が底板を介して効果的に行われる。上記のように、低いガラス転移温度および比較的低い硬度を有する樹脂は、熱伝導率が高くない場合が多いが、ケース底面からのコイルの放熱が効果的に行われることで、リアクトル全体として、高い放熱性が確保される。
ここで、注型樹脂が、ウレタン系またはエポキシ系の硬化性樹脂である場合には、上記硬度範囲の注型樹脂を調製しやすい。
上記発明にかかる注型樹脂を用いれば、上記のように、コイルの放熱性と低温およびコイルの振動に起因する注型樹脂の割れの抑制が両立されたリアクトルを得ることができる。
本発明の一実施形態にかかるリアクトルを示す斜視図である。注型樹脂は除いて示している。 上記リアクトルの断面図である(断面を示すハッチングは適宜省略している)。
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1および図2に、本発明の一実施形態にかかるリアクトル1の構成を示す。リアクトル1は、全体の物理的な構造としては、特許文献1に記載されるリアクトルと同様の構造を有し、後述する注型樹脂40の構成に主な特徴を有する。
<リアクトルの全体構成>
図1,2に示すように、リアクトル1は、コイル10と磁心20の組合体を、ケース30に収容した構造を基本としてなる。
コイル10は、導体線の外周を絶縁被覆層によって被覆した素線を、螺旋状に巻き回したものである。コイル10は、2本の直線部10a,10aを、巻き回し方向を揃えて2本並べた全体形状を有している。導体線は、例えば、銅または銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属よりなる。絶縁被覆層は、例えば、ポリアミドイミドに代表されるエナメル材よりなる。また、素線の形状としては、放熱(冷却)性を上げ、また巻き回しの密度を高める観点から、平角線であることが好ましい。そして、コイル10は、固定の容易性等の観点から、角柱の角を丸めた形状を有する角型コイルとして形成されることが好ましい。
コイル10は、各直線部10aの中空部に磁心20が挿入された組合体とされ、ケース30中に収容される。磁心20は、例えば、磁性材料よりなるコア部21と非磁性材料よりなるギャップ部22が交互に接続された構造を有する。組合体においては、さらに、コイル10と磁心20の間に適宜インシュレータが介在されてもよい(不図示)。
ケース30は、コイル10と磁心20の組合体が載置され、固定される底面31と、底面31の外周に立設された側壁面32を有し、底面31と対向する側壁面32の上部には、開口部33が設けられている。底面31は、高い熱伝導性を有し、コイル10の放熱(冷却)を促進できるように、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属よりなることが好ましい。一方、側壁面32は、絶縁性等の観点から、樹脂材料よりなることが好ましい。底面31と側壁面32の間には、注型樹脂40の漏出を防止するパッキン(不図示)が適宜設けられる。
コイル10と磁心20の組合体は、開口部33からケース30に収容され、底面31上に載置されて、底面31に対して一体的に固定される。底面31へのコイル10の固定は、接着性を有する絶縁性樹脂材料を含んでなる接合層(不図示)を介して行われる。つまり、コイル10は、接合層を介して、底面31に直接接触しており、コイル10と底面31の間に、注型樹脂40は介在しない。このように、コイル10がケース30の底面31に一体的に固定されることで、コイル10が通電によって発熱しても、ケース30の底面31を介して、効率的に放熱(冷却)が行われる。接合層は、コイル10と底面31との間の絶縁を保持しながら、コイル10を底面31に一体的に固定できるものであれば、どのような材料よりなってもよく、2層以上からなってもよい。例えば、接合層を、コイル10側に配置される接着層と底面31側に配置される放熱層から構成する形態が挙げられる。接着層は、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤等、高い絶縁性と接着性を有する樹脂材料より構成すればよく、放熱層は、金属酸化物、炭化物、窒化物等の無機化合物より構成すればよい。
コイル10と磁心20の組合体を収容したケース30の内部の空間には、注型樹脂40が充填されている。注型樹脂40は、コイル10とケース30の側壁面32の間の空間を満たすとともに、コイル10のコイルターン(螺旋の各ピッチ)の間の空間を満たしている。注型樹脂40は、コイル10の絶縁を保つ役割を果たす。ここで、コイル10の絶縁とは、コイル10全体の外部に対する絶縁のみならず、コイルターン間の絶縁も含むものである。また、注型樹脂40は、コイル10の放熱(冷却)を促進する役割も果たし、コイル10の放熱(冷却)は、上記のようにケース30の底面31を介して進行するとともに、注型樹脂40を介しても進行する。
リアクトル1は他に、端子81、各種センサ82等、運転および制御に必要な部材を適宜備える。組み上げられたリアクトル1は、ケース30の底面31にて、DC−DCコンバータ中等、所定の取付部位に固定される。底面31と接触する取付部位には、適宜、水冷機構等の冷却機構が設けられてもよい。この場合、コイル10は、底面31を介して、冷却機構によって積極的に冷却されることになる。
<注型樹脂の構成>
本実施形態にかかるリアクトル1において用いられる注型樹脂40は、樹脂成分(有機高分子成分)に、必要に応じてフィラー等の添加剤が混合されてなり、絶縁性を有する。
注型樹脂40は、熱機械分析(TMA)によって変曲点の温度として得られるガラス転移温度が、−30℃以下である。樹脂材料は、ガラス転移温度以上の温度域では、高い柔軟性を示すが、ガラス転移温度よりも低い温度域では、ガラス状態となり、脆くなりやすい。本リアクトル1の注型樹脂40は、−30℃以下のガラス転移温度を有するので、−30℃程度の低温に至るまで、高い柔軟性を有する状態を維持する。−30℃との温度は、車両に搭載されたリアクトル1が使用される環境として想定されるものである。注型樹脂40のガラス転移温度は、好ましくは−40℃以下であるとよい。
注型樹脂40のガラス転移温度は、低いほど好ましく、下限値は特に定められない。ガラス転移温度の評価方法として、TMA法以外に、動的機械分析(DMA)法、示差走査熱量測定(DSC)法等、他の方法も用いられるが、ここでは、これらのうち、TMA法による計測値として、注型樹脂40のガラス転移温度を規定している。TMA法は、機械的特性値の直接的変化を確認できる簡便な手法だからである。
注型樹脂40がこのように低いガラス転移温度を有していることにより、リアクトル1の使用環境として想定される−30℃程度の低温に晒された際、また低温と高温が繰り返される冷熱衝撃に晒された際にも、注型樹脂40に割れが生じにくい。注型樹脂40の割れが抑制されることにより、コイル10の絶縁性の保持、コイル10の放熱等、注型樹脂40の機能が保持されやすい。また、注型樹脂40の割れによるリアクトル1の外観の悪化も抑制することができる。
また、本リアクトル1の注型樹脂40は、25℃において、20以上52以下の範囲のJIS A硬度を有している。注型樹脂40がこのような硬度を有していることで、コイル10に振動が生じた際に、注型樹脂40がコイル10の振動によって圧縮を受けても、高い強度を保ったまま、コイル10に追随して変形やすく、振動に起因する割れが抑制されるとともに、振動を抑制する効果に優れる。
つまり、リアクトル1において、コイル10に交流が入力されると、コイルターン間に相互作用が生じることで、コイル10全体や、コイルターン相互の間に、振動が生じる。コイル10がこのような振動を起こすと、コイル10の素線に接触している注型樹脂40が、圧縮方向や引張方向に応力を受ける。しかし、注型樹脂40の硬度が高すぎると、注型樹脂40が脆くなってしまい、特に圧縮を受けた際に、割れを生じてしまう可能性がある。こうした割れは、低温環境や冷熱衝撃に晒された際に、特に発生しやすい。一方、注型樹脂40の硬度が低くなると、圧縮に対する強度が低下してしまい、不可逆的な圧縮変形(つぶれ)を生じたり、裂けたりしてしまう。また、コイル10の振動に注型樹脂40の変形が追随しにくくなるので、素線から注型樹脂40が剥離する可能性が生じるとともに、コイル10の振動を吸収・緩和する効果やコイル10で発生する熱を放出する効果が発揮されにくくなる。これに対し、注型樹脂40の硬度が上記の範囲内にあると、コイル10に振動が生じた際に、コイルターン間に配置された注型樹脂40が、特に圧縮応力の印加によく追随して、圧縮に対する強度を維持したまま変形する。これにより、コイル10が振動した際にコイルターン間の注型樹脂40が圧縮応力を受けても、注型樹脂40に割れや圧縮変形、剥離等の不可逆的な変化が生じるのが抑制される。また、注型樹脂40がコイル10の振動をよく吸収・緩和する。
注型樹脂40のJIS A硬度は、JIS K7215に準拠して測定することができる。樹脂材料の硬度は、温度に依存する物性であるが、ガラス転移温度よりも高温では、温度が変化しても緩やかにしか変化しないのに対し、ガラス転移点を境に、低温側では急激に上昇することが多い。よって、注型樹脂40が−30℃以下のガラス転移温度を有することで、おおむね−30℃程度の低温領域に至るまで、硬度は、25℃で測定された値から著しくは変化しない。よって、リアクトル1の使用環境として想定される−30℃程度の低温に至るまで、注型樹脂40は、圧縮に対して高い強度を示してコイル10の振動によく追随し、コイル10の振動に起因する注型樹脂40の割れが抑制された状態を維持する。また、注型樹脂40の25℃におけるJIS A硬度は、25以上40以下の範囲にあることが、さらに好ましい。
このように、本リアクトル1の注型樹脂40においては、低いガラス転移温度と所定範囲の硬度を有することで、低温や圧縮に起因する割れを抑制しているが、樹脂材料にフィラーを多量に混合するほど、ガラス転移温度が上昇し、また硬度が高くなる傾向がある。上記のように、注型樹脂40において、−30℃以下のガラス転移温度や52以下のJIS A硬度を実現するためには、注型樹脂40におけるフィラーの含有量を、従来一般のリアクトルの場合よりも少なくする必要がある。しかし、フィラーの含有量を少なくすると、注型樹脂40の熱伝導率が小さくなり、コイル10が発熱した際に、注型樹脂40を介した放熱(冷却)が起こりにくくなる。つまり、本リアクトル1の注型樹脂40においては、比較的低いガラス転移温度と硬度を有することが規定されており、フィラーの添加によって、注型樹脂40を介したコイル10の放熱(冷却)が十分に起こるほど高い熱伝導率を付与することが難しい。しかし、本リアクトル1においては、上記のように、コイル10が、ケース30の底面31に一体的に固定され、ケース30の底面31を介して、コイル10の放熱(冷却)が高い効率で行われる。よって、注型樹脂40が高い熱伝導率を有していなくても、リアクトル1全体として、コイル10の放熱(冷却)性を確保することができる。
リアクトル1において、通電時にコイル10が発熱した際に、放熱(冷却)が効果的に行われなければ、コイル10や磁心20が加熱され、リアクトル1の出力特性が低下する。また、コイル10からの発熱により、はんだ部の溶断や接着部の剥離等、コイル10周辺に配置された他の部材にも影響を及ぼし、走行中の車両の停止や、部材の不可逆的な損傷等にもつながる可能性がある。しかも、導体抵抗の温度特性によりコイル10の発熱は、加速度的に進む。しかし、本リアクトル1においては、全体として、十分な放熱(冷却)性が確保されることで、このような事態を回避し、安定な出力を得ることができる。
注型樹脂40を構成する樹脂成分の具体的な種類は、−30℃以下のガラス転移温度と、25℃での測定値で20〜52の範囲のJIS A硬度が、注型樹脂40において実現できるものであれば、特に制限されない。
しかし、注型樹脂40を構成する樹脂成分としては、流動性の高い状態で、コイル10とケース30の側壁面32の間の空間や、コイルターン間の空間に、隙間なく浸透させて充填してから、固化させられる点において、硬化性樹脂を用いることが好ましい。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、二液反応硬化性樹脂等を挙げることができる。特に、ケース30中に充填した注型樹脂40を容易に硬化させられる点において、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂種としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂(軟エポキシ樹脂および硬エポキシ樹脂)、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレア樹脂などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。上記樹脂の中で、特に上記範囲の硬度を実現しやすいという点において、ウレタン樹脂またはエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
注型樹脂40は、樹脂成分に加え、フィラー以外にも、着色用顔料、粘度調整剤、老化防止剤、保存安定剤、分散剤などの添加剤を適宜添加されてもよい。なお、注型樹脂40にこれらの添加剤が添加される場合に、上記で規定されるガラス転移温度および硬度は、添加剤を添加した状態で得られる値である。
以下に本発明の実施例、比較例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
<試験試料の作製>
図1のような構造を有するリアクトルを作製した。そして、注型樹脂をケース内に注入し、硬化させて、実施例1〜5および比較例1〜4にかかるリアクトルとした。用いた注型樹脂の種類とガラス転移温度およびJIS A硬度を、下記表1にまとめて示す。ガラス転移温度は、TMA法による変曲点を利用して測定したものである。また、JIS A硬度は、JIS K7215に準拠して測定したものである。
<試験方法>
[冷熱衝撃による割れの評価]
各リアクトルについて、−30℃と150℃にて、各1.5時間の通電を行うサイクルを500回繰り返した。その後、目視にて、注型樹脂に割れ(亀裂)が発生しているかどうかを確認した。割れの有無は、注型樹脂の表面および、切断面において確認した。表面にも切断面にも割れが発生していなかったものを合格「○」とし、表面または切断面のいずれか少なくとも一方に割れが発生していたものを不合格「×」とした。
[断面における剥離の評価]
各リアクトルをコイル部分で切断し、断面を目視にて観察した。コイルと注型樹脂の間に剥離が見られないものを合格「○」とし、剥離が見られたものを「×」とした。
[出力特性]
リアクトルに通電を行い、通電に伴う昇温によって、出力特性が低下するかどうかを評価した。
<試験結果>
各実施例および比較例にかかるリアクトルについて、冷熱衝撃による割れおよび断面における剥離の評価の結果を、注型樹脂の種類および物性とともに、表1に示す。出力特性の評価については、いずれのリアクトルにおいても、昇温に伴う出力特性の低下は認められず、十分な放熱が行われていることが確認された。
Figure 0006179446
試験結果によると、実施例1〜5にかかるリアクトルにおいては、冷熱衝撃によって、注型樹脂に割れが発生しなかった。この結果は、注型樹脂が、−30℃以下のガラス転移温度を有し、25℃での測定値で20〜52の範囲のJIS A硬度を有していることにより、低温領域でも高い柔軟性を有し、かつコイルの振動による圧縮に追随して変形しやすいことに起因して、注型樹脂の割れが防止されたと解釈される。この結果と、リアクトルの出力特性評価において、コイルの発熱による特性の低下が見られなかったという結果を合わせると、実施例1〜5にかかるリアクトルにおいては、低温および圧縮に起因する割れの防止とコイルの放熱性が両立されていることが分かる。また、注型樹脂がコイルから剥離することもなかった。
一方、比較例1〜3においては、冷熱衝撃によって、注型樹脂に割れが生じている。比較例1〜3で用いた注型樹脂は、ガラス転移温度が−30℃を超えており、また、25℃でのJIS A硬度が52を超えている。これにより、低温での柔軟性が不十分となるとともに、コイルの振動による圧縮に対して脆くなり、割れを生じたものと解釈される。
一方、比較例4においては、注型樹脂が−30℃以下の低いガラス転移温度を有し、25℃で20未満の低いJIS A硬度を有しているのに対応し、低温でも高い柔軟性を維持し、低温衝撃によって割れを生じていない。しかし、断面観察において、コイルと注型樹脂の間に剥離が見られ、このように低すぎる硬度を有する注型樹脂が、実施例1〜5の適度に高い硬度を有する注型樹脂に比べて、圧縮に対する強度の点で劣っていることが分かった。
以上、本発明の実施形態および実施例について詳細に説明したが、本発明は、これらの実施形態および実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
10 コイル
20 磁心
30 ケース
31 底面
32 側壁面
40 注型樹脂

Claims (3)

  1. コイルと、前記コイルが収容されたケースと、前記ケースの内部に充填された注型樹脂と、を有し、
    前記コイルは、前記ケースの底面に一体的に固定され、
    前記注型樹脂は、熱機械分析法で測定したガラス転移温度が−30℃以下であり、25℃におけるJIS A硬度が20以上52以下の範囲にあり、
    前記注型樹脂は、前記コイルと前記ケースの側壁面の間の空間と、前記コイルのコイルターンの間の空間とを満たして充填され、前記コイルに交流が入力された際に、前記コイルターンの間の空間を満たす前記注型樹脂は、圧縮方向および引張方向に応力を受けることを特徴とするリアクトル。
  2. 前記注型樹脂は、ウレタン系またはエポキシ系の硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
  3. 前記注型樹脂の25℃におけるJIS A硬度は、25以上40以下の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載のリアクトル。
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