JP2016178175A - リアクトル - Google Patents

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慎太郎 南原
浩平 吉川
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浩平 吉川
崇志 高田
Takashi Takada
崇志 高田
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【課題】封止樹脂の熱劣化を抑制できるリアクトルを提供する。【解決手段】巻線を巻回してなる巻回部2a、2bを有するコイル2と、巻回部内に配置される部分を有する磁性コア3と、コイル2と磁性コア3とを有する組合体10を収納するケース4と、ケース内に充填されて、組合体10を覆う封止樹脂100とを備える。封止樹脂100の最表面から巻回部2a、2bまでの距離が最短となる巻回部2a、2bの表面上の点を含み、封止樹脂100の最表面100fに平行な平面と、封止樹脂100の最表面100fとで挟まれる表層領域の構成材料の熱伝導率が1W/m・K未満であり、表層領域の厚さが3.5mm以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される車載用DC−DCコンバータといった電力変換装置の構成部品などに利用されるリアクトルに関する。特に、封止樹脂の熱劣化を抑制できるリアクトルに関するものである。
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つに、リアクトルがある。特許文献1は、ハイブリッド自動車などの車両に載置されるコンバータに利用されるリアクトルとして、巻線を螺旋状に巻回してなる巻回部(コイル素子)を有するコイルと環状の磁性コアとの組合体が、ケースに収納され、更に封止樹脂に埋設されたものを開示している。特許文献1では、封止樹脂を備えることで、組合体の機械的保護、外部環境からの保護、外部部品との電気的絶縁の確保を図ることができる、更に、セラミックスフィラーを含有する樹脂材料で封止樹脂を構成することで放熱性を高められるとしている。
特開2014−107294号公報
封止樹脂を備えるリアクトルに対して、熱劣化を抑制できることが望まれている。
昨今、コンバータの大容量化、リアクトルの更なる小型化などに伴い、コイルへの大電流化などに起因して、リアクトルの使用時におけるコイルの温度が従来よりも高くなる傾向にある。特にコイルの巻回部の高温化によって、巻回部に接してその熱が伝えられる周囲部材、例えばコイルを覆う封止樹脂は、より高い温度になり得る。ここで、封止樹脂の最表面は、外部環境に曝されており、外部環境の雰囲気中の酸素などと接触する。封止樹脂の最表面及びその近傍が上述のように高温であると、上記雰囲気中の酸素と反応して酸化され得る。温度が高いほど、封止樹脂の最表面及びその近傍の酸化が促進されて、酸化劣化し易くなる。封止樹脂が酸化すると硬くなることがあり、封止樹脂の表面にクラックなどが生じ易くなる。このように酸化劣化といった熱劣化が生じると、封止樹脂の本来の機能、具体的には上述の保護や電気的絶縁、振動や騒音の防止などの機能を十分に果たせなくなったり、外観不良を招いたりなどする。従って、封止樹脂がより高温に加熱され得る使用環境であっても、熱劣化し難いリアクトルの開発が望まれる。
封止樹脂として、耐熱性に優れるもの、例えばシリコーン樹脂を利用すれば、熱劣化し難い。しかし、この場合、利用可能な材料が限られる。又は、封止樹脂として、熱伝導性に優れるもの、例えば、上述のセラミックスフィラーを大量に含む樹脂材料を利用することが考えられる。しかし、この場合、セラミックスフィラーの大量充填によって充填時の材料粘度が高くなり、充填時間の増大、脱気を容易にするための真空引きの実施などによって、生産性の低下を招く。生産性を考慮すると、セラミックスフィラーの充填量の増大には限界があり、セラミックスフィラー量の調整だけでは、上記封止樹脂の熱劣化を十分に抑制することは難しいと考えられる。
そこで、本発明の目的の一つは、封止樹脂の熱劣化を抑制できるリアクトルを提供することにある。
本発明の一態様に係るリアクトルは、巻線を巻回してなる巻回部を有するコイルと、前記巻回部内に配置される部分を有する磁性コアと、前記コイルと前記磁性コアとを有する組合体を収納するケースと、前記ケース内に充填されて、前記組合体を覆う封止樹脂とを備える。前記封止樹脂の最表面から前記巻回部までの距離が最短となる前記巻回部の表面上の点を含み、前記封止樹脂の最表面に平行な平面と、前記封止樹脂の最表面とで挟まれる表層領域の構成材料の熱伝導率が1W/m・K未満である。前記表層領域の厚さが3.5mm以上である。
上記のリアクトルは、封止樹脂の熱劣化を抑制できる。
実施形態1のリアクトルを示す概略斜視図である。 実施形態1のリアクトルを図1に示す(II)−(II)切断線で切断した状態を示す断面図である。 実施形態1のリアクトルに備える組合体の分解斜視図である。 実施形態2のリアクトルをコイルの軸に平行な平面で切断した縦断面図である。
[本発明の実施の形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
(1) 本発明の一態様に係るリアクトルは、巻線を巻回してなる巻回部を有するコイルと、上記巻回部内に配置される部分を有する磁性コアと、上記コイルと上記磁性コアとを有する組合体を収納するケースと、上記ケース内に充填されて、上記組合体を覆う封止樹脂とを備える。上記封止樹脂の最表面から上記巻回部までの距離が最短となる上記巻回部の表面上の点を含み、上記封止樹脂の最表面に平行な平面と、上記封止樹脂の最表面とで挟まれる表層領域の構成材料の熱伝導率が1W/m・K未満である。上記表層領域の厚さが3.5mm以上である。
上記のリアクトルは、封止樹脂のうち、少なくとも表層領域が比較的低熱伝導性の樹脂材料で構成されていること、及び上記表層領域の厚さが十分に厚いことによって封止樹脂の酸化劣化といった熱劣化を抑制できる。
詳しくは、上記のリアクトルでは、封止樹脂において、コイルの巻回部のうち少なくともケースの開口部寄りの領域を覆う表層領域が低熱伝導性の樹脂材料によって構成されており、この表層領域の厚さが3.5mm以上と厚い。封止樹脂の表層領域の厚さが十分に厚いことで、この表層領域の熱容量が大きい。そのため、封止樹脂の表層領域にコイルの熱が伝わっても、表層領域全体が高温になり難く、封止樹脂の表層領域の温度上昇を抑制できる。かつ、上記のリアクトルの封止樹脂において、ケースの底部寄りの領域は、表層領域よりも相対的に熱伝導性に優れて、コイルの熱をケースの底部に伝え易い。特に、ケースの底部が金属製であると共に、このケースが取り付けられるリアクトルの設置対象が冷却構造を備えてケースを冷却可能な場合には、ケースの底部は、ケースの開口部及びその近傍に比較して低温になり易い。すると、コイルとケースの底部との温度差が大きくなり易く、コイルの熱は、上述の封止樹脂において、相対的に熱伝導性に優れるケースの底部寄りの領域を介して、ケースの底部に良好に伝えられる。コイルの熱をケース外に速やかに伝達できるため、コイルの過熱を抑制でき、コイルの温度が高くなり難くなる。つまり、コイルから封止樹脂の最表面に向かって伝わり得る熱量を小さくできる。このことからも、封止樹脂の表層領域の温度上昇を抑制できる。
以上のように、封止樹脂の表層領域を厚く、かつ低熱伝導性とすることで、コイルへの通電電流が大電流化などしても、封止樹脂の最表面及びその近傍の温度は高くなり過ぎず、表層領域の構成材料が外部環境の酸素などと反応して酸化劣化することを抑制できる。従って、上記のリアクトルは、長期に亘り、封止樹脂の熱劣化によるクラックの発生などを抑制でき、クラックに起因する特性の低下や外観不良の発生などを抑制でき、優れた特性や外観を有する。
(2) 上記のリアクトルの一例として、上記表層領域の構成材料がエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種を含む形態が挙げられる。
エポキシ樹脂やウレタン樹脂は、従来のリアクトルにおいて封止樹脂として利用されており、実績があって利用し易い。従って、上記形態は、組合体に対する機械的保護・外部環境からの保護、組合体と外部部品との電気絶縁性の確保などの種々の面で信頼性も優れる。列挙した樹脂は、シリコーン樹脂などの耐熱性樹脂として利用される樹脂に比較して、熱劣化し易いとされる。しかし、上記形態は、上述のように上記表層領域の構成樹脂を低熱伝導性のものとすると共に表層領域の厚さを十分に厚くして、コイルの熱をケースの底部に伝達し易くしていることから、アクリル樹脂のような耐熱性が低いとされる樹脂を利用できる。また、上記表層領域の構成樹脂におけるセラミックスフィラーの含有量を過度に多くすることなく放熱性にも優れる。そのため、上記形態は、使用可能な材料の選択の自由度が広いながらも、放熱性に優れる上に、製造性にも優れる。
(3) 上記のリアクトルの一例として、上記巻回部と前記ケースの内底面との間に介在され、熱伝導率が2W/m・K以上の絶縁材料を含む絶縁層を備える形態が挙げられる。
上記形態は、組合体を載置するケースの底部が金属製である場合でも、コイルの巻回部と内底面との間に絶縁材料から構成された絶縁層が介在することで、コイルの巻回部とケースの内底面との間の電気的絶縁を確保できる。特に、上記形態は、絶縁層自体が熱伝導性に優れるため、コイルの熱を、絶縁層を介してケースの底部に良好に伝達できる。従って、上記の形態は、封止樹脂の熱劣化を抑制できる上に、電気絶縁性、放熱性にも優れる。ケースの底部が金属製である場合には、放熱性に更に優れる。なお、熱伝導率の測定は、封止樹脂や絶縁層から試験片を切り出す、又は成分分析を行い、その結果に基づいて試験片を作製して行うとよい。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
[実施形態1]
図1〜図3を参照して、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。図2は、リアクトル1Aを、コイル2の巻回部2aの軸に平行な平面で切断した縦断面図である。
・全体構成
実施形態1のリアクトル1Aは、図1に示すように、巻線2wを螺旋状に巻回してなる巻回部2a,2bを有するコイル2と、巻回部2a,2b内に配置される部分を有する磁性コア3と、コイル2と磁性コア3とを有する組合体10を収納する箱状のケース4と、ケース4内に充填されて組合体10を覆う封止樹脂100とを備える。リアクトル1Aは、ケース4がコンバータケースなどの設置対象(図示せず)に取り付けられて使用される。設置対象が冷却構造を備えている場合には、リアクトル1Aの使用時に生じるコイル2の熱や磁性コア3の熱は、組合体10の周囲を覆う封止樹脂100からケース4を介してケース4外の設置対象に伝えられる。そのため、コイル2などは設置対象によって冷却される。
実施形態1のリアクトル1Aの特徴の一つは、封止樹脂100の材質及び厚さにある。詳しくは、封止樹脂100のうち、コイル2の巻回部2a,2bにおけるケース4の開口部寄りの領域(図1,図2では上方領域)を覆う樹脂材料は、その熱伝導率が比較的低い。また、この巻回部2a,2bにおけるケース4の開口部寄りの領域がこの低熱伝導性の樹脂材料によって厚く覆われている。以下、リアクトル1Aの主要部材であるコイル2、磁性コア3、ケース4の概要と、特徴点の一つである封止樹脂100の詳細とをまず説明し、次にリアクトル1Aの主要部材の詳細や変形例、その他の構成部材などを説明する。
・コイル
コイル2は、図3に示すように1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回して形成された一対の筒状の巻回部2a,2bと、巻線2wの一部から形成されて両巻回部2a,2bを接続する連結部2rとを備える。各巻回部2a,2bは、互いの軸が平行するように並列(横並び)に配置されている。この例の巻線2wは、平角線の導体(銅など)と、この導体の外周を覆う絶縁被覆(ポリアミドイミドなど)とを備える被覆平角線(いわゆるエナメル線)であり、巻回部2a,2bはエッジワイズコイルである。
この例の巻回部2a,2bは角部を丸めた四角筒状であり、その外形は、四つの平面と、隣り合う平面を繋ぐ湾曲面とで構成される。上記四つの平面のうち、一面(図2,図3では下面)が後述するケース4の内底面40i(図2)に平行に配置され、この一面の対向面(図2,図3では上面)がケース4の開口側に向くように配置され、残りの二面(図1,図3では左右の面)がケース4の側壁部41(図1)の内周面に平行に配置される。巻線2wの両端部はいずれも、巻回部2a,2bから適宜な方向に引き出され、その先端の絶縁被覆が剥されて、導体に端子金具(図示せず)が接続される。コイル2は、この端子金具を介して電源などの外部装置(図示せず)と電気的に接続される。
・磁性コア
磁性コア3は、図3に示すように複数の柱状のコア片31m,32mと、代表的にはコア片31m,31m間に介在される複数のギャップ材31gとを備え、環状に組み付けられる。この例では、図3の上方から見てU字状であるコア片32m,32mが、そのU字の開口部が向かい合うように配置される。これらコア片32m,32m間に、コア片31mとギャップ材31gとを積層した一対の積層物が横並び(並列)に配置される。この配置によって、磁性コア3は環状に組み付けられ、コイル2を励磁したときに閉磁路を形成する。磁性コア3におけるコア片31m及びギャップ材31gとU字状のコア片32mの一部(後述の突出部分)は、図2に示すようにコイル2の巻回部2a,2b内に配置される部分を構成し、U字状のコア片32mの残部(後述のブロック)は、巻回部2a,2bが配置されず、コイル2から突出した部分を構成する。
コア片31m,32mは、主として軟磁性材料から構成される。コア片31m,32mは、鉄や鉄合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金など)といった軟磁性金属粉末や更に絶縁被覆を備える被覆粉末などを圧縮成形した圧粉成形体、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料などが利用できる。この例では、圧粉成形体としている。ギャップ材31gは、代表的にはコア片31m,32mよりも比透磁率が小さい材料、例えばアルミナなどの非磁性材から構成される。
・ケース
ケース4は、図1,図2に示すようにコイル2と磁性コア3とを備える組合体10を収納する容器であり、組合体10の機械的保護、外部環境からの保護(腐食ガスなどからの保護など)などを図る。ケース4は、設置対象に直接取り付けられる部材でもある。ケース4が熱伝導性に優れる材料で構成される場合には、組合体10の放熱経路として利用される部材でもある。
このようなケース4は、代表的には、組合体10の載置領域が設けられる内底面40iを備える底部40と、底部40から立設されて組合体10の周囲を囲む側壁部41とを備え、底部40に対向する側(図1,図2では上側)が開口した箱体が挙げられる。この例のケース4は、矩形平板状の底部40と、矩形枠状の側壁部41とを備える。内底面40iのうち、少なくとも載置領域が図2に示すように平坦な平面であると、上述した巻回部2a,2bの一平面(下面)を内底面40iに平行に配置できる。この場合、巻回部2a,2bの一平面(下面)における内底面40iとの近接領域又は接触領域を十分に広く設けられるため、組合体10の載置の安定化、放熱性の向上などを図ることができる。
この例のケース4は、底部40と側壁部41とが一体に成形された金属製の箱である。即ち底部40は、組合体10の載置領域だけでなく、底部40全体が金属によって構成されている。金属は、一般に、樹脂と比較して熱伝導性に優れることから、金属製のケースは、その全体を放熱経路に利用できて、放熱性に優れるリアクトル1Aとすることができる。この金属製のケースは、コンバータケースに一体に設けられることがある。
金属製のケース4の構成材料は、例えば、アルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金、銅やその合金、銀やその合金、鉄やオーステナイト系ステンレス鋼などが挙げられる。アルミニウムやマグネシウム、これらの合金で形成すると、ケース4を軽量にできる。特にアルミニウムやアルミニウム合金は熱伝導率が高く、設置対象への熱伝導性に優れるケース4になって好ましい。また、一体成形された金属製のケース4は、剛性、強度に優れ、リアクトル1A全体の強度を高められる。
・封止樹脂
リアクトル1Aでは、ケース4内に収納された組合体10は、図1,図2に示すように、コイル2の巻線2wの端部を除き、その実質的に全体がケース4内に充填された封止樹脂100に埋設されている。従って、封止樹脂100は、ケース4の内底面40iから開口部に向かって連続的に存在する。封止樹脂100によって組合体10の実質的に全体は外部環境の雰囲気に曝されることが無く耐食性などに優れる。一方、封止樹脂100の最表面100f(図1,図2では上面)は、外部環境の雰囲気に曝される。
実施形態1のリアクトル1Aは、封止樹脂100の最表面100fと外部環境の雰囲気中のガス(例えば酸素)などとが反応して、最表面100f及びその近傍が酸化劣化することを防止するために、最表面100fの温度が高くなり過ぎることを抑制する構造としている。この過熱抑制構造とは、封止樹脂100のうち、最表面100f及びその近傍の領域を上述のように低熱伝導性の樹脂材料で構成すること、及びこの低熱伝導性の樹脂材料から構成される低熱伝導層を厚く存在させることとする。具体的には、封止樹脂100の最表面100fからコイル2の巻回部2a,2bまでの距離dが最短となる巻回部2a,2bの表面上の点をとり、この点を含み、封止樹脂100の最表面100fに平行な仮想平面102fと、最表面100fとで挟まれる領域を表層領域102とする。この表層領域102の構成材料の熱伝導率が1W/m・K未満である。また、表層領域102の厚さt102が3.5mm以上である。
・・構成材料
封止樹脂100の構成材料には、上述の機械的保護、外部環境からの保護、電気的絶縁などの所望の機能を奏する樹脂材料であって、かつ表層領域102を構成する樹脂材料の熱伝導率が特定の範囲を満たすものが利用できる。その他、封止樹脂100の構成材料には、コイル2の通電に起因する磁性コア3の振動、及びこの振動に起因する騒音の低減などを図ることができるものが好ましい。
・・・単層形態
例えば、単一の構成材料を用いて、封止樹脂100をケース4の底部40から開口部に向かって一様な特性を有する単層構造とすることができる。単層構造では、封止樹脂100の全体が、熱伝導率が1W/m・K未満の樹脂材料で構成される。単層構造では、樹脂材料の熱伝導率の下限は、樹脂自体の熱伝導率である。樹脂の種類にもよるが、0.01W/m・K以上が挙げられる。単層構造は、製造時、ケース4内への樹脂材料の充填、固化が1度でよく、リアクトル1Aの製造性に優れる。
単層構造の樹脂材料は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される1種の樹脂を含むことが挙げられる。封止樹脂100を実質的に上記に列挙した樹脂のみとすると、後述するフィラーの含有による粘度の増大が生じず、製造時、ケース4内に樹脂材料を容易に充填できたり、脱気し易かったりなどして、リアクトル1Aの製造性に優れる。上記に列挙した樹脂の熱伝導率は、0.1W/m・K以上0.9W/m・K以下程度が挙げられる。
又は、封止樹脂100は、上記に列挙した樹脂に加えて、熱伝導率が1W/m・K未満を満たす範囲で熱伝導性に優れるフィラーを含有することができる。高熱伝導性のフィラーを含有することで、封止樹脂100、特にケース4の底部40寄りの領域の熱伝導性を高められ、この領域の封止樹脂100を介して、コイル2の熱を底部40に伝え易くなる。上記フィラーは、非金属無機材料、例えば、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウムなどの酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ほう素などの窒化物、炭化珪素などの炭化物などセラミックスから構成されるもの、カーボンナノチューブといった非金属元素から構成されるものなどが挙げられる。
図2では、封止樹脂100が、熱伝導率が1W/m・K未満の単一の樹脂材料で構成された場合を示す。また、図2では、コイル2の巻回部2a,2bにおけるケース4の内底面40iとの対向面(図2では下面)と内底面40iとの間に、封止樹脂100の一部を介在させた場合を示す。この場合、介在する封止樹脂100によって、巻回部2a,2bと内底面40iとの間の電気絶縁性を高められる。また、この場合、巻回部2a,2bにおける上記対向面(下面)と内底面40iとの間隔をできるだけ小さくすることで(例えば、0mm超2mm以下程度)、巻回部2a,2bの熱を内底面40iに伝えられ、良好な放熱性も確保できる。なお、図2では分かり易いように上記間隔を強調して示す。又は、巻線2wが上述のように絶縁被覆を備える場合には、巻回部2a,2bにおける上記対向面(下面)と内底面40iとを直接接触させることができる。この場合、上記絶縁被覆によって、巻回部2a,2bと内底面40iとの間の絶縁を確保する。
・・・積層形態
例えば、複数の異なる構成材料を用いて、封止樹脂100をケース4の底部40から開口部に向かって多層に積層された積層構造とすることができる。積層構造では、少なくとも表層領域102を上述の単層形態で説明した1W/m・K未満の樹脂材料(特に、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂など)で構成し、その他の領域は、例えば、表層領域102を構成する樹脂材料よりも熱伝導性に優れる樹脂材料によって構成することができる。特に、ケース4の底部40寄りの領域、とりわけコイル2の巻回部2a,2bのうち、ケース4の内底面40iに近接する領域、例えば、内底面40iと上述のコア片31mを含む積層物における内底面40iとの対向面(図2では下面)とで挟まれる領域(以下、底部側領域と呼ぶ)を高熱伝導性の樹脂材料で構成することが好ましい。こうすることで、底部側領域を構成する高熱伝導性の樹脂材料を介して、巻回部2a,2bの熱を良好に底部40に伝えられ、コイル2の過熱を抑制し易い。
高熱伝導性の樹脂材料としては、熱伝導率が1W/m・K以上のものが挙げられる。熱伝導率が高いほど、コイル2の巻回部2a,2bの熱をケース4の底部40に伝達し易く、1.5W/m・K以上、更に2W/m・K以上のものが挙げられる。上限は30W/m・K程度である。このような熱伝導性の樹脂材料は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリイミド樹脂などに、上述のフィラーを含むものが挙げられる。熱伝導率の高低は、フィラーの含有量や種類などを調整することで行える。
底部側領域以外の領域を構成する樹脂材料は、表層領域102を構成する樹脂材料と同一とする形態(即ち、高熱伝導性の底部側領域との二層構造)、表層領域102を構成する樹脂材料よりも熱伝導率が高く、ケース4の底部40寄りの領域(特に、底部側領域)よりも熱伝導率が低い形態(即ち、三層構造)、高熱伝導性の底部側領域から表層領域102に向かって熱伝導率が低くなるように熱伝導率を異ならせた形態(即ち、四層以上の多層構造)などとすることができる。積層数が多いほど、封止樹脂100内の温度変化が緩やかになり、熱伸縮による変形が小さくなって割れなどが生じ難くなる。また、使用する樹脂材料の自由度が高い。積層数が少ないほど、製造時、充填工程や固化工程の数が少なく、製造性に優れる。
表層領域102についても、ケース4の底部40側から最表面100fに向かって熱伝導率が低くなるように、1W/m・K未満の範囲で熱伝導率を異ならせた多層構造の形態とすることができる。各層の構成材料は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種を含み、適宜、上述のフィラーの含有量やフィラーの種類などが異なるものが挙げられる。表層領域102を多層構造とすることで、上述のように割れなどを生じ難くできる上に、使用する樹脂材料の自由度が高い。
・・表層領域
この例では、封止樹脂100の最表面100fからコイル2の巻回部2a,2bまでの距離dが最短となる巻回部2a,2bの表面上の点は、巻回部2a,2bの表面のうち、ケース4の開口部に向かって配置される領域上に存在する一点である。この例の巻回部2a,2bは、ケース4の開口部に向かって配置される領域の一部が実質的に平面とみなせる。平面とみなす場合には、上述の最短距離をとる点は、巻回部2a,2bの四つの平面のうち、ケース4の開口部に向かって配置される平面(図2では上面)上に存在する任意の点と考えることができる。仮想平面102fは、巻回部2a,2bにおける上記平面(上面)を延長した延長面となる。表層領域102は、これら最表面100fと仮想平面102fとで挟まれる断面長方形状の領域となり、表層領域102の厚さt102は、実質的に一様である。
表層領域102の厚さt102は、厚いほど、上述の低熱伝導性の樹脂材料で構成される表層領域102の熱容量が大きくなる。すると、コイル2への通電電流が大きい場合などでも、巻回部2a,2bの熱によって表層領域102が温まり難くなり、封止樹脂100の最表面100fが過熱され難い。その結果、最表面100f及びその近傍が外部環境の雰囲気中のガスなどと反応して、熱劣化(例えば酸化劣化)することを効果的に防止できる。熱劣化の防止を考慮すると、厚さt102は、4mm以上、更に5mm以上とすることができる。一方、表層領域102の厚さt102を厚くすると、ケース4の大型化(側壁部41が高くなる)、封止樹脂100の使用量の増大、これらに伴う重量の増大、充填時間・固化時間の長大化などを招き得る。リアクトル1Aの小型化、軽量化、製造性を考慮すると、表層領域102の厚さt102は、15mm以下、更に13mm以下、10mm以下が好ましい。上述のように表層領域102を多層構造とする場合には、各層の厚さの合計が3.5mm以上15mm以下を満たすことが好ましい。最表面100fから巻回部2a,2bの表面までの最短距離の測定には、例えば、超音波厚さ計などを利用することが挙げられる。上述のように巻回部2a,2bの表面の一部が平面とみなせる場合には、簡略的な測定として、図2に示すようにリアクトル1Aの縦断面を利用することが挙げられる。いずれの場合も、最表面100fから巻回部2a,2bの表面までの距離を巻回部2a,2bの軸方向に沿って測定し、最小値を最短距離とすればよい。
・主要部材の詳細、変形例、その他の構成部材
・・コイル
この例では、一対の巻回部2a,2bを備える形態を説明したが、巻回部を一つのみ備える形態とすることができる。この場合、磁性コア3は、EEコアやEIコア、ERコアなどと呼ばれる公知の形状とすることが挙げられる。その他、巻線2wとして、丸線の導体と絶縁被覆とを備える被覆丸線などを利用できる。巻回部を円筒状などとすることができる。
・・磁性コア
この例のコア片31mは、図3に示すように角部を丸めた直方体状であり、ギャップ材31gは、角部を丸めた矩形状の平板である。この例のコア片32mは、角部を丸めた直方体状のブロックと、このブロックから突出する一対の突出部分とを有する。突出部分は、ブロックにおけるコイル2の巻回部2a,2bの端面に対向する内端面32eからコイル2側に向かって突出する。各突出部分は、コア片31mと同様に角部を丸めた直方体状である。ブロックにおける内端面32eに対向する外表面は、平坦面であるが、湾曲面などとすることができる。
更に、U字状のコア片32mにおける上記ブロックは、図2に示すようにケース4の内底面40iとの対向面(下面)が、コア片31mを含む積層物における内底面40iとの対向面(下面)よりも突出して形成されている。この例では、コイル2と磁性コア3とを組み付けたとき、上記ブロックにおける上記対向面(下面)がコイル2の巻回部2a,2bにおける内底面40iとの対向面(下面)よりも突出するように、上記ブロックが形成されている。こうすることで、上述のように巻回部2a,2bにおける上記対向面(下面)と内底面40iとの間に若干の隙間を設けられて、この隙間に封止樹脂100の一部を充填できる。また、上記ブロックにおける上記対向面(下面)が内底面40iに支持されることで、組合体10は、ケース4内での収納状態が安定する。更に、磁性コア3は、上記ブロックから内底面40iに熱を伝えられる。
コア片31m,32m及びギャップ材31gの個数、形状、大きさ、組成などは適宜変更できる。例えば、コア片32mを直方体状とし、上述の突出部分をコア片31mとすることができる。ギャップ材31gに代えてエアギャップとしたり、ギャップ材31gを省略したりすることもできる。コア片とギャップ材とは、接着剤などで固定すると、組付け易い。
・・ケース
ケース4は上述の一様な構成材料からなる一体成形品の他、底部40と側壁部41とが別体であり、組み合わせて一体となる形態とすることができる。
又は、特許文献1に記載されるように、組合体10を載置する底部40が金属板(底板部)から構成され、組合体10の周囲を囲む側壁部41が樹脂などの絶縁材料の成形品(壁枠部)から構成され、これらを組合せた形態とすることができる。この組合せのケースは、底板部と壁枠部とが着脱可能な独立部材であるため、製造過程では、壁枠部を取り外して底板部のみとし、内底面40iとなる底板部の一面(載置面)を露出した状態で組合体10の載置などを行えて作業性に優れる。ひいてはリアクトル1Aの生産性に優れる。また、壁枠部が樹脂の成形品である場合には、コイル2と側壁部41との間の絶縁性にも優れる上に、軽量なリアクトル1Aとすることができる。一方、底板部が金属製であることで熱伝導性に優れるため、底板部を介して、コイル2の巻回部2a,2bの熱をケース4外の設置対象に良好に伝えられる。
上記底板部の構成材料には、金属製のケースの項で説明した上述の金属を利用できる。上記壁枠部の構成材料には、絶縁材料、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ウレタン樹脂、PPS樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂などの樹脂が挙げられる。この壁枠部は、上記の樹脂を射出成形するなど、公知の成形方法によって容易に製造できる。
又は、上記底板部を、組合体10の載置領域のみが金属で構成され、その他の領域が非金属で構成された複合部材とすることができる。金属部分の構成材料は、金属製のケースの項で説明した上述の金属を利用できる。非金属部分の構成材料は、上記壁枠部を構成する樹脂材料やセラミックスなどの非金属無機材料などが挙げられる。
・・その他の構成部材
・・・介在部材
この例のリアクトル1A(組合体10)は、図3に示すようにコイル2と磁性コア3との間に介在される介在部材5を備える。介在部材5は、コイル2と磁性コア3との間の電気的絶縁性を高める機能を有しており、この機能のために絶縁材料から構成される。
この例の介在部材5は、コイル2の巻回部2a,2bの軸方向に分割される一対の分割材50a,50bを組み合わせて形成される。各分割材50a,50bは、磁性コア3のうち、巻回部2a,2b内に収納される部分との間に介在される内側介在部51と、巻回部2a,2bの端面とコア片32mの内端面32eとの間に介在される端面介在部52とを備える。内側介在部51は、巻回部2a,2bにおける丸められた角部に沿って配置される複数の湾曲した板片から構成される。各分割材50a,50bの内側介在部51,51の端部はそれぞれ、係合するように形成されている。内側介在部51を板片などとすることで、製造時、封止樹脂100を構成する未固化の樹脂材料を充填し易い。端面介在部52は、コア片32mに備える一対の突出部分がそれぞれ挿通される二つの貫通孔52h,52hを有する枠状の平板部分である。介在部材5の形状は例示であり、適宜変更できる。例えば、両分割材50a,50bにおける内側介在部51の長さを異ならせた形態(この例では実質的に等しい)、内側介在部51の端部に係合箇所を有さない形態、内側介在部51と端面介在部52とが一体ではなく、それぞれが独立した別部材である形態などとすることができる。
介在部材5の構成材料は、例えば、PPS樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド(PA)樹脂、PBT樹脂などの熱可塑性樹脂などといった樹脂が挙げられる。介在部材5は、上記の樹脂を射出成形するなど、公知の成形法によって容易に作製できる。介在部材5には、公知の形状、組成の部材(ボビン、インシュレータと呼ばれることもある)を利用できる。
・・・コア被覆材
上述の介在部材5に代えて、磁性コア3のコア片31m,32mや、コア片31mとギャップ材31gとの積層物などを上述の熱可塑性樹脂などの絶縁材料で覆ったコア被覆材とすることができる。介在部材5を省略することで、組合体10の組み付け部品点数を低減でき、組立作業性に優れる。また、複数のコア片などを一体物とすることで組み付け部品を取り扱い易く、リアクトル1Aの製造性に優れる。コア被覆材や上述の介在部材5を省略してもよいが、これらを備えることで、コイル2と磁性コア3との間の絶縁性を高められる。
・・・センサ
温度センサ、電流センサ、電圧センサ、磁束センサなどのリアクトル1Aの物理量を測定するセンサ(図示せず)を備えることができる。
・・・放熱板
コイル2の外周面のうち、ケース4の内底面40iとの対向面(図2では下面)及びケース4の開口部に向かう面(同上面)を除く任意の箇所に、即ち、ケース4の側壁部41の内周面に対向する任意の箇所に放熱板(図示せず)を備えることができる。放熱板の構成材料は、金属製のケースで説明した上述の金属や、フィラーの構成材料のような熱伝導性に優れる非金属無機材料などが利用できる。放熱板は、例えば、接着剤などによって固定するとよい。
・製造方法
リアクトル1Aは、例えば、コイル2と磁性コア3と、適宜介在部材5などとを組み付けて、組合体10を形成し、組合体10をケース4に収納した後、封止樹脂100とする未固化の樹脂をケース4内に注入して固化することで製造できる。未固化の樹脂は、室温(20℃〜25℃程度)での粘度が0.1Pa・s以上20Pa・s以下程度であると、流動性に優れ、ケース4内に充填し易く、脱気も容易に行えて好ましい。
・作用効果
実施形態1のリアクトル1Aは、封止樹脂100のうち、少なくとも表層領域102が1W/m・K未満といった低熱伝導性の樹脂材料で構成され、かつ封止樹脂100の最表面100fからコイル2の巻回部2a,2bの表面までの最短距離が十分に大きい。即ち、リアクトル1Aは、上述の低熱伝導性の樹脂材料からなる表層領域102の厚さt102が十分に厚く、表層領域102の熱容量が大きい。そのため、巻回部2a,2bにおけるケース4の開口部寄りの領域から封止樹脂100の最表面100fに向かって熱が伝わり難いといえる。この例では、封止樹脂100の全体が低熱伝導性の樹脂材料で構成されているため、最表面100fにコイル2の熱などがより伝わり難いと考えられる。熱が伝わり難いことで、最表面100fが高温になり難い。いわば、表層領域102がある程度の断熱材として機能して、巻回部2a,2bの熱をケース4の底部40側に伝達し易くし、ケース4の開口部側に伝え難くする。
かつ、リアクトル1Aは、金属製のケース4の底部40が設置対象に取り付けられることで、コイル2の巻回部2a,2bは底部40を介して設置対象によって冷却されるといえる。この例では、巻回部2a,2bを底部40に近接させていることからも、底部40を介して設置対象によって十分に冷却されると考えられる。コイル2が冷却されて巻回部2a,2bの過熱を抑制できる結果、巻回部2a,2bから封止樹脂100の最表面100fに伝わり得る熱量が小さくなるため、最表面100fが高温になり難い。
以上のことから、リアクトル1Aは、封止樹脂100の最表面100f及びその近傍に生じ得る熱劣化を抑制できる。そのため、リアクトル1Aは、封止樹脂100の信頼性、耐久性を高められ、長期に亘り、封止樹脂100の機能、即ち上述の保護や電気的絶縁、振動、騒音の防止などの機能を良好に奏することができる。また、リアクトル1Aは、封止樹脂100に使用可能な材料の自由度を高められ、耐熱性に劣る樹脂材料(例えば、アクリル樹脂など)などを利用できる。
[実施形態2]
図4を参照して、実施形態2のリアクトル1Bを説明する。図4は、リアクトル1Bを、コイル2の巻回部2aの軸に平行な平面で切断した縦断面図である。
・全体構成
実施形態2のリアクトル1Bの基本的構成は実施形態1のリアクトル1Aと同様である。概略を述べると、リアクトル1Bは、図4に示すように、巻線2wを螺旋状に巻回してなる巻回部2a,2b(2bは不図示)を有するコイル2と、巻回部2a,2b内に配置される部分を有する磁性コア3と、コイル2と磁性コア3とを有する組合体10を収納する箱状のケース4と、ケース4内に充填されて組合体10を覆う封止樹脂100とを備える。封止樹脂100のうち、表層領域102の構成材料の熱伝導率が1W/m・K未満であり、表層領域102の厚さt102が3.5mm以上である。実施形態2のリアクトル1Bにおける実施形態1との相違点は、巻回部2a,2bとケース4の内底面40iとの間に絶縁材料から構成される絶縁層6を備える点にある。絶縁層6は、特に、高熱伝導性の絶縁材料を含む。以下、相違点である絶縁層6を詳細に説明し、その他の構成及び効果は実施形態1を参照すればよく、省略する。
・・組合体
この例では、磁性コア3のうち、U字状のコア片32mにおける上述のブロックは、図4に示すようにケース4の内底面40iとの対向面(下面)が、コイル2と磁性コア3とを組み付けたとき、コイル2の巻回部2a,2bにおける内底面40iとの対向面(下面)と面一になるように形成されている。即ち、組合体10におけるケース4の内底面40iとの対向面(下面)は、巻回部2a,2bの一面(下面)と、磁性コア3のコア片32mの一面(主としてブロックの下面)とによって構成される。この形状によって、組合体10における上記対向面は、後述の絶縁層6との接触面積を広く確保できて、底部40に安定して支持される上に、組合体10における底部40との近接領域を増大できて、放熱性を高められる。その結果、コイル2の過熱をより抑制し易い。
・・絶縁層
リアクトル1Bの組合体10に備えるコイル2の巻回部2a,2bと、ケース4の内底面40iとの間には、内底面40iに形成された絶縁層6が介在される。内底面40iが上述のように平坦な平面であれば、絶縁層6を容易に形成できる。
・・・絶縁特性
絶縁層6は、コイル2の巻回部2a,2bとケース4の内底面40iとの間を電気的に絶縁する目的から、耐電圧が高いほど好ましい。具体的には、耐電圧が3kV/mm以上が好ましく、5kV/mm以上、7kV/mm以上がより好ましい。耐電圧が上記範囲を満たすように、絶縁層6の構成材料を調整することができる。
・・・厚さ
絶縁層6の厚さは薄いほど、コイル2の巻回部2a,2bからケース4の内底面40iに熱を伝え易く、更にはコイル2から設置対象への放熱経路を短くでき、放熱性に優れて好ましい。具体的な厚さは2mm以下が好ましく、更に1mm以下、0.8mm以下、0.5mm以下、0.1mm(100μm)以下がより好ましい。一方、絶縁層6の厚さが厚いほど、上述の電気的絶縁を十分に確保できる。そのため、絶縁層6の厚さは30μm(0.03mm)以上、更に50μm以上、70μm以上が好ましい。絶縁層6の厚さが所望の値となるように、製造時、未固化層の厚さ、組合体10の押付力などを調整するとよい。
・・・存在領域
絶縁層6は、コイル2の巻回部2a,2bとケース4の内底面40iとの間を絶縁できるように、巻回部2a,2bにおける内底面40iとの対向面(図4では下面)と同等以上の大きさを有することが好ましい。図4に示すように、コイル2に加えて磁性コア3(コア片32mにおける内底面40iとの対向面)と内底面40iとの間にも絶縁層6が介在するように、絶縁層6の大きさを調整することができる。
・・・構成材料
絶縁層6を構成する絶縁材料は、リアクトル1Aの使用時の最高到達温度に対して軟化しない程度の耐熱性を有し、上述の耐電圧が高いといった電気絶縁性に優れる樹脂を含むことが好ましい。特に、実施形態2のリアクトル1Bに備える絶縁層6の構成材料は、熱伝導率が2W/m・K以上の樹脂材料を含むことが好ましい。このような高熱伝導性の絶縁材料は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、湿気硬化性樹脂、常温硬化性樹脂などの種々の樹脂と、上述した放熱性に優れるフィラーとを含む樹脂材料が挙げられる。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。熱可塑性樹脂は、PPS樹脂、LCP、PA樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミドなどが挙げられる。絶縁体であるセラミックスなどの非金属無機材料から構成されるフィラーを含有すると、上述の耐電圧性にも優れて好ましい。銅や銀、アルミニウム、その合金といった金属のフィラーを含有することができるが、この場合、絶縁性を高めるために、上記絶縁体からなるフィラーも含有することが好ましい。セラミックスフィラーを含有すると、高い放熱性と高い絶縁性とを両立し易い。
上述の絶縁材料は、接着剤を含むことが好ましい。絶縁層6の構成材料に接着剤を含むことで、ケース4の内底面40iに組合体10を強固に固定できる。具体的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などを主体とする硬化性接着剤が挙げられる。
絶縁層6は、例えばシート状のものを用いたり、底部40の内底面40iに原料の樹脂材料などを塗布やスプレーしたりして形成することができる。
・作用効果
実施形態2のリアクトル1Bは、封止樹脂100のうち、少なくとも表層領域102が1W/m・K未満といった低熱伝導性の樹脂材料で構成され、かつ封止樹脂100の最表面100fからコイル2の巻回部2a,2bの表面までの最短距離が十分に大きい。従って、実施形態1と同様に、リアクトル1Bは、封止樹脂100の最表面100f及びその近傍に生じ得る熱劣化を抑制でき、長期に亘り、封止樹脂100の機能を良好に奏することができる。
特に、リアクトル1Bは、熱伝導性に優れる絶縁層6をコイル2の巻回部2a,2bとケース4の内底面40iとの間に備えることで、巻回部2a,2bの熱を、絶縁層6を介して、ケース4の底部40iに良好に伝達できて、放熱性により優れる。即ち、リアクトル1Bは、巻回部2a,2bの過熱をより効果的に抑制できて、巻回部2a,2bから封止樹脂100の最表面100fに伝わり得る熱量をより小さくできる。そのため、リアクトル1Bは、最表面100fがより高温になり難く、最表面100f及びその近傍に生じ得る熱劣化をより抑制できる。
更に、リアクトル1Bは、組合体10を載置するケース4の底部40が金属製であるものの、コイル2の巻回部2a,2bと内底面40iとの間に絶縁層6が介在するため、巻回部2a,2bと内底面40iと間の電気的絶縁性を高められる。
[試験例1]
封止樹脂の材質や表層領域の厚さが異なる複数のリアクトルを作製して、コイルに通電し、封止樹脂の最表面の割れ発生状態を調べた。
この試験で作製した各リアクトルはいずれも、実施形態1で説明した構成、即ち一対の巻回部を有するコイルと、環状に組み付けられる磁性コアと、矩形箱状のケースと、以下の封止樹脂とを備えるものである。コイルはエッジワイズコイル、コア片は圧粉成形体、ケースは、アルミニウム合金製である。表層領域の厚さが最も厚い試料No.1−4を形成できるように、各試料のケースはいずれも同じ高さ(深さ)のものを用いる。
この試験では、コイルへの通電電流値は、通電に伴うジュール熱によってコイルが加熱されてコイルの温度が150℃となるように設定する。コイルの温度は、温度センサによって測定し、コイルの温度が150℃になってから所定時間(ここでは500時間)保持した後の割れの発生状態を目視確認する。樹脂材料の組成、及び試験結果を表1に示す。
Figure 2016178175
表1に示すように、封止樹脂のうち、表層領域の構成材料が1W/m・K未満であり、かつ表層領域の厚さ(最表面から巻回部までの最短距離)が3.5mm以上である試料No.1−1〜1−4はいずれも、コイルの通電電流値が大きいといったリアクトル使用時にコイルの温度が高くなり得る場合でも、封止樹脂の最表面及びその近傍に割れが生じ難いことが分かる。一方、表層領域の構成材料が1W/m・K以上で表層領域が3.5mm以上である試料No.1−101、表層領域の構成材料が1W/m・K未満かつ表層領域の厚さが3.5mm未満である試料No.1−102〜1−104はいずれも、上述のようにコイルの温度が高くなり得る場合には、封止樹脂の最表面及びその近傍に割れが生じる恐れがあることが分かる。特に、表層領域の構成材料の熱伝導率が高い場合には、表層領域の厚さを十分に厚くする方が好ましい、と考えられる。
この試験結果から、封止樹脂のうち、表層領域の構成材料の熱伝導率を低めにすると共に、表層領域を厚くすることは、封止樹脂の最表面及びその近傍に熱劣化を生じ難くすることに効果があることが裏付けられる。
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明のリアクトルは、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの車両に搭載される車載用コンバータ(代表的にはDC−DCコンバータ)や空調機のコンバータなどの種々のコンバータ、電力変換装置の構成部品に利用することができる。
1A,1B リアクトル 10 組合体
2 コイル 2a,2b 巻回部 2r 連結部 2w 巻線
3 磁性コア 31m,32m コア片 31g ギャップ材 32e 内端面
4 ケース 40 底部 40i 内底面 41 側壁部
5 介在部材 50a,50b 分割材 51 内側介在部 52 端面介在部
52h 貫通孔
6 絶縁層
100 封止樹脂 100f 最表面 102 表層領域 102f 仮想平面

Claims (3)

  1. 巻線を巻回してなる巻回部を有するコイルと、
    前記巻回部内に配置される部分を有する磁性コアと、
    前記コイルと前記磁性コアとを有する組合体を収納するケースと、
    前記ケース内に充填されて、前記組合体を覆う封止樹脂とを備え、
    前記封止樹脂の最表面から前記巻回部までの距離が最短となる前記巻回部の表面上の点を含み、前記封止樹脂の最表面に平行な平面と、前記封止樹脂の最表面とで挟まれる表層領域の構成材料の熱伝導率が1W/m・K未満であり、
    前記表層領域の厚さが3.5mm以上であるリアクトル。
  2. 前記表層領域の構成材料は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載のリアクトル。
  3. 前記巻回部と前記ケースの内底面との間に介在され、熱伝導率が2W/m・K以上の絶縁材料を含む絶縁層を備える請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
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