JP6177713B2 - 薄膜の製造方法 - Google Patents
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Description
現在実用化されているTOS−TFTにおける活性層は、真空成膜法によって製造されたものである。
しかし、真空成膜法の場合、製造コストが高くなりやすいため、液体(溶液又は分散液)を原料として、塗布プロセスによって高い特性を示すTOSの実現を目指す研究が一方では盛んである。
例えば、液体を原料として、PbSeの量子ドットの集合体膜を作製し、集合体膜の電気伝導性等を評価した例が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、電気的性能を有する半導体デバイスを効率よく製造可能なナノ粒子分散液として、特定の金属酸化物ナノ粒子と分散媒とを含有する金属酸化物ナノ粒子分散液が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、セレン化鉛、セレン化錫、セレン化ゲルマニウム、セレン化カドミウム、セレン化亜鉛、硫化鉛、硫化錫、硫化ゲルマニウム、硫化カドミウム、硫化亜鉛、テルル化鉛、テルル化錫、テルル化ゲルマニウム、テルル化カドミウム、テルル化亜鉛等の無機半導体粒子を出発物質とし、所望の特性を有する半導体薄膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2には、無機半導体粒子分散液を基体上に塗布、乾燥して、半導体粒子層を形成した後、半導体粒子層を、ジチオール化合物を含有するアルコールに浸漬することで半導体薄膜を得る半導体薄膜の形成方法が開示されている。
また、有機分子を結合させた粒子の間隔を高精度に制御でき、これにより空隙や突出部のない膜質の良好な粒子層からなる半導体層を得ることが可能な半導体装置の製造方法として、デンドリマー分子からなる保護膜で覆われた粒子を溶媒中に分散させ、この分散溶液を基板上に塗布する第1工程と、基板上に塗布された分散溶液中の溶媒を除去することにより保護膜で覆われた粒子を最密状態で配列してなる粒子層を形成する第2工程と、を行う半導体装置の製造方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
即ち、本発明の目的は、大気雰囲気下でも製造可能であり、優れた特性(例えば、半導体特性又は導電性)を有し、光照射に対する特性の安定性に優れ、表面の平坦性に優れる薄膜及びその製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、上記薄膜を備える薄膜トランジスタ、及び、上記薄膜トランジスタを備える電子デバイスを提供することである。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものである。
即ち、上記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<3> 酸化物粒子が、酸化物ナノ粒子である<1>又は<2>に記載の薄膜の製造方法。
<4> 酸化物粒子の数平均粒径が、3nm〜30nmである<1>〜<3>のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
<5> 比誘電率20以上の有機溶媒が、エタノール、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>〜<4>のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
<6> 分散液が、非極性溶媒を含有する<1>〜<5>のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
<7> 非極性溶媒が、炭素数6〜10のアルカンである<6>に記載の薄膜の製造方法。
<8> 配位子が、一分子中に、カルボキシル基及びアミノ基の少なくとも一方を有する<1>〜<7>のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
<9> 配位子が、オレイン酸及びオレイルアミンの少なくとも一方である<1>〜<8>のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
また、本発明によれば、上記薄膜を備える薄膜トランジスタ、及び、上記薄膜トランジスタを備える電子デバイスが提供される。
なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
また、本明細書において「〜」の記号により数値範囲を示す場合、下限値及び上限値が含まれる。
本発明の薄膜の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)は、In、Zn、及びSnからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化物粒子と、一分子中に、炭素数6〜25の炭化水素基、並びに、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、リン原子、及びアンモニウム基からなる群から選択される少なくとも1種を有する配位子と、を含有する分散液を準備する準備工程と、分散液を基板上に塗布することにより、酸化物粒子及び配位子を含有する塗布膜を得る塗布工程と、塗布膜と比誘電率20以上の有機溶媒とを接触させることにより、塗布膜中の配位子の少なくとも一部を除去する除去工程と、を有し、酸化物粒子を含有する薄膜を製造する方法である。
本発明の製造方法は、必要に応じ、その他の工程を有していてもよい。
また、本発明の製造方法は、所望とする膜厚の薄膜を得やすい点で、塗布工程及び除去工程を、繰り返し行う方法であってもよい。
本発明において、薄膜の「特性」とは、電気的な特性を指す。「特性」としては、例えば、半導体特性、導電性(電気伝導性)、等が挙げられる。
また、本発明において、「大気雰囲気下においても製造できる」とは、言うまでもないが、雰囲気の制約(例えば不活性雰囲気といった制約)を受けずに製造できるという意味であり、大気雰囲気下でなければ製造できないという意味ではない。
即ち、本発明の製造方法では、上記酸化物粒子と上記配位子とを含有する分散液が用いられる。上記配位子は、上記酸化物粒子に配位する部分として、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、リン原子、及びアンモニウム基からなる群から選択される少なくとも1種(以下、「配位部」ともいう)と、分散液の溶媒(分散媒;特に好ましくは非極性溶媒)に対して親和性を有する炭素数6〜25の炭化水素基(以下、「疎水性部」ともいう)と、を有している。即ち、分散液中において、上記配位子は、上記酸化物粒子の分散性を向上させる分散剤として機能する。この配位子の作用により、本発明の製造方法では、分散液中における酸化物粒子同士の凝集が抑制され、かつ、基板上に形成された塗布膜中においても酸化物粒子同士の過度な凝集が抑制される。このため、本発明の製造方法によって製造された薄膜は、表面の平坦性に優れると考えられる。
除去工程では、上記分散液を塗布して得られた塗布膜と比誘電率20以上の有機溶媒とを接触させることにより、塗布膜中の配位子の少なくとも一部を除去する。塗布膜中において、配位子の少なくとも一部が除去されることにより、酸化物粒子同士が近接化又は結合した薄膜が形成されると考えられる。
即ち、得られた薄膜は、複数の酸化物粒子が近接化又は結合してなる酸化物粒子の集合体を含有すると考えられる。このため、得られた薄膜では、酸化物粒子の集合体において、酸化物粒子間の電気伝導が効果的に行われ、その結果、優れた特性が得られると考えられる。
基板上に形成された塗布膜中では、酸化物粒子の表面の少なくとも一部(より詳細には、金属原子の少なくとも一部)には、上記配位子が配位していると考えられる。このときの配位子の向きは、配位部が酸化物粒子の表面に近い側に配置され、かつ、配位子の疎水部が酸化物粒子の表面から遠い側に配置された向きとなっていると考えられる。このため、塗布膜中における酸化物粒子は、配位子の疎水部の作用により、疎水性の粒子として存在していると考えられる。
一方、除去工程で用いる、比誘電率20以上の有機溶媒は、極性溶媒(親水性溶媒)である。このため、比誘電率20以上の有機溶媒は、塗布膜中における酸化物粒子(疎水性の粒子)に対し、貧溶媒となる。
上述した前提の下、基板上の塗布膜と比誘電率20以上の有機溶媒とが接触すると、塗布膜中の酸化物粒子(疎水性の粒子)同士は、疎水性相互作用によって凝集しようとすると考えられる。この疎水性相互作用を駆動力として、酸化物粒子の表面に配位していた配位子の少なくとも一部が脱離し、その結果、塗布膜中から配位子の少なくとも一部が除去されると考えられる。
但し、本除去工程では、「酸化物粒子同士が凝集しようとする」、「複数の酸化物粒子が近接化又は結合してなる酸化物粒子の集合体を含有する」といっても、以下の理由により、薄膜の表面の平坦性が損なわれる程の過度な凝集は起こらないと考えられる。
即ち、除去工程における酸化物粒子同士の凝集は、優れた平坦性を有する塗布膜中において、酸化物粒子間に配位子が介在する状態で行われる凝集である。一方、前述の、分散液に配位子が含まれない場合における酸化物粒子同士の凝集は、酸化物粒子間に配位子が介在しない状態で行われる現象である。このため、分散液に配位子が含まれない場合には、分散液を塗布して塗布膜を形成した段階で、既に塗布膜の平坦性が悪くなっている。以上の点で、本除去工程における酸化物粒子同士の凝集と、分散液に配位子が含まれない場合における酸化物粒子同士の凝集と、は明確に異なるためである。
このため、本発明の製造方法によれば、酸化物粒子以外の粒子(例えば、PbSeの量子ドット等)を用いた製造方法と比較して、製造雰囲気の制約(例えば不活性雰囲気といった制約)を受けずに、薄膜を製造することができる。従って、大気雰囲気下でも、優れた特性を有する薄膜を製造できる。
また、本発明の製造方法によって製造された薄膜は、酸化物粒子を含有するため、透明性が高い。このため、光照射によっても特性が大きく劣化することはない。
(1)金属アルコキシドや無機金属塩等を含有する溶液原料を塗布し、何らかのエネルギーを付与することで金属と酸素とのネットワークを形成し酸化物半導体に転換する方法と、
(2)あらかじめ金属と酸素とのネットワークが形成されている酸化物半導体粒子を液体中に分散させ、得られた分散液を塗布することで粒子の集合体からなる酸化物半導体薄膜を得る方法と、
が考えられる。
上記(2)の方法では、より低温で(酸化物半導体への転換工程を必要とせず)酸化物半導体薄膜が得られることが期待できるが、粒子間の電気伝導性(導電性)が低くなりやすいこと等から、十分に高い特性が得られていない。
しかしながら、本発明の薄膜の製造方法は、上記(2)の方法に分類される方法であるにもかかわらず、上記除去工程を有することにより、高い特性(例えば、半導体特性又は導電性)を示す薄膜を形成することができる。
本発明における準備工程は、In、Zn、及びSnからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化物粒子と、一分子中に、炭素数6〜25の炭化水素基、並びに、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、リン原子、及びアンモニウム基からなる群から選択される少なくとも1種を有する配位子と、を含有する分散液を準備する工程である。
この準備工程は、便宜上の工程である。
即ち、本発明の製造方法は、予め準備しておいた分散液を用いて薄膜を製造する方法(分散液を調製する工程を有しない方法)であってもよいし、分散液を調製する工程を有し、調製された分散液を用いて薄膜を製造する方法であってもよい。
ここで、分散液は、上記酸化物粒子を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
また、分散液は、上記配位子を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
酸化物粒子は、In、Zn、及びSnからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
酸化物粒子に含まれる全金属元素中に占めるInの比率は、50atom%以上であることが好ましく、80atom%以上であることがより好ましい。
また、酸化物粒子がZnを含む場合にも、酸化物粒子がSnを含む場合と同様に、キャリア濃度の増大及び電子移動度の増大が期待できる。
酸化物粒子がGaを含む場合には、薄膜の酸素欠損をより抑制でき、且つバンドギャップの増大によって薄膜の透明性を向上させることができる。
酸化物粒子がGaを含むことは、本発明の薄膜として半導体膜を製造する場合において特に好適である。
薄膜として導電膜を製造する場合には、薄膜のキャリア濃度を高くする必要があるため、酸化物粒子に含まれる酸化物として、In2O3、In−Sn−O、In−Zn−Oを選択することが好ましい。
ここで、ナノ粒子とは、数平均粒径が1μm未満の粒子を指す。
酸化物粒子の数平均粒径は、薄膜の表面の平坦性をより向上させる観点から、100nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。
酸化物粒子の数平均粒径が3nm以上であると、粒界によって電子の移動が制限されてしまう現象がより抑制され、かつ、量子サイズ効果によって実効的なバンドギャップが増大してしまう現象がより抑制される。このため、薄膜の電気伝導度がより向上する。
粒径の測定装置としては、例えば、FEI社製 TITAN80−300等のTEM(Transmission Electron Microscope;透過型電子顕微鏡)を用いることができる。
酸化物粒子の濃度が、1mg/mL以上であると、酸化物粒子の密度がより高くなるので、より良好な薄膜を得ることができる。
また、酸化物粒子の濃度が、100mg/mL以下であると、一回の塗布工程で得られる塗布膜の膜厚を薄くすることができるので、除去工程における配位子の除去の効果がより効果的に奏される。
本発明における配位子は、一分子中に、炭素数6〜25の炭化水素基(疎水性部)と、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、リン原子、及びアンモニウム基からなる群から選択される少なくとも1種(配位部)と、を有する。
配位子は、前述のとおり、酸化物粒子に配位して、酸化物粒子の分散性を向上させる役割を果たす。
分散液に含有される配位子は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
上記炭化水素基の炭素数は、25以下であることにより、配位子除去工程後の塗布膜中に残存する配位子の分子サイズが小さいため、結果として高い伝導性を得やすくなる。
また、上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が好ましく、アルキル基、アルケニル基がより好ましく、アルケニル基が特に好ましい。
また、炭化水素基の炭素数は、分散性をより向上させる観点から、10〜25であることが好ましい。
特に、酸化物粒子系において粒子形状を制御しやすくする観点から、分散液は、カルボキシル基を有する配位子と、アミノ基を有する配位子と、を含有することが好ましい。
中でも、酸化物粒子の分散性をより向上させ、かつ、除去工程による配位子の除去性をより向上させる観点から、配位子としては、オレイン酸、オレイルアミンが好ましい。
即ち、分散液中の配位子は、オレイン酸及びオレイルアミンの少なくとも一方を含むことが好ましい。特に、酸化物粒子系において粒子形状を制御しやすくする観点から、分散液中の配位子は、オレイン酸及びオレイルアミンの両方を含むことが特に好ましい。
また、粒子合成を行なうことで分散液を準備する場合、粒子合成時に反応容器に加える金属原料の総モル数よりも配位子の総モル数の方が多いことが望ましい。
分散液は、酸化物粒子の分散性の観点から、分散媒として、非極性溶媒を含有することが好ましい。
分散液中に含まれ得る非極性溶媒は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
非極性溶媒としては、アルカン、ベンゼン、トルエンが挙げられる。
中でも、アルカンが好ましく、炭素数6〜10のアルカンがより好ましく、ヘキサン、オクタンが特に好ましい。
比較的沸点が低い非極性溶媒であれば、最終的に半導体膜を形成した際に非極性溶媒が蒸発しやすいため、残留有機物の含有量を抑えることができる。さらに、基板への濡れ性が良いものが好ましい。
非極性溶媒として炭素数6〜10のアルカンを用いることは、以上の点からみても好適である。
分散液は、上記以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、公知の添加剤が挙げられる。
また、分散液は、本発明の効果が損なわれない範囲で、比誘電率20以上の有機溶媒(極性溶媒)を含んでいてもよい。但し、本発明における分散液の分散媒中に占める、比誘電率20以上の有機溶媒の割合は、20体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましく、5体積%以下であることが更に好ましく、1体積%以下であることが更に好ましく、0体積%であること(即ち、分散液中に比誘電率20以上の有機溶媒が含まれないこと)が最も好ましい。
本発明における塗布工程は、上述した分散液を基板上に塗布することにより、基板上に、酸化物粒子を含有する塗布膜を得る工程である。
上述した分散液が塗布される基板の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基板の構造は単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
基板としては、例えば、YSZ(イットリウム安定化ジルコニウム)やガラス等の無機材料、樹脂や樹脂複合材料等からなる基板を用いることができる。
中でも軽量である点、可撓性を有する点から樹脂あるいは樹脂複合材料からなる基板が好ましい。
具体的には、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンズアゾール、ポリフェニレンサルファイド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、液晶ポリマー、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、シアネート樹脂、架橋フマル酸ジエステル、環状ポリオレフィン、芳香族エーテル、マレイミドーオレフィン、セルロース、エピスルフィド化合物等の合成樹脂からなる基板; 既述の合成樹脂等と酸化珪素粒子との複合プラスチック材料からなる基板; 既述の合成樹脂等と金属ナノ粒子、無機酸化物ナノ粒子もしくは無機窒化物ナノ粒子等との複合プラスチック材料からなる基板; 既述の合成樹脂等とカーボン繊維もしくはカーボンナノチューブとの複合プラスチック材料からなる基板; 既述の合成樹脂等とガラスフレーク、ガラスファイバーもしくはガラスビーズとの複合プラスチック材料からなる基板; 既述の合成樹脂等と粘土鉱物もしくは雲母派生結晶構造を有する粒子との複合プラスチック材料からなる基板; 薄いガラスと既述のいずれかの合成樹脂との間に少なくとも1つの接合界面を有する積層プラスチック基板; 無機層と有機層(既述の合成樹脂)とを交互に積層することで、1つ以上の接合界面を有するバリア性能を有する複合材料からなる基板; ステンレス基板またはステンレスと異種金属とを積層した金属多層基板; アルミニウム基板または表面に酸化処理(例えば陽極酸化処理)を施すことで表面の絶縁性を向上させた酸化皮膜付きのアルミニウム基板; 等を用いることができる。
また、基板は、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層や、基板の平坦性や下部電極との密着性を向上するためのアンダーコート層等を備えていてもよい。
また基板上に、下部電極や、絶縁膜を備えていてもよく、その場合には基板上の下部電極や絶縁膜上に、本発明の薄膜(例えば半導体膜)を形成することが好ましい。
この乾燥は、自然乾燥であってもよいし、加熱乾燥であってもよい。
加熱乾燥とする場合の加熱の方法には特に限定されず、ホットプレート加熱、電気炉加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱等から選択することができる。
また、乾燥における雰囲気に特に制限はないが、製造コスト等の観点から大気圧下、大気中で行うことが好ましい。
塗布工程では、塗布から乾燥までの操作を複数回行ってもよい。
これにより、得られる薄膜の厚さを所望とする厚さに調整し易く、また、得られる薄膜の特性をより向上させることができる。
本発明における除去工程は、基板上に形成された塗布膜と、比誘電率20以上の有機溶媒(以下、「極性溶媒」ともいう)と、を接触させることにより、塗布膜中の配位子の少なくとも一部を除去する工程である。
本工程では、酸化物粒子の表面に配位する全ての配位子を除去することは原理上困難であり、また、全ての配位子を除去しなくても良好な特性の薄膜が得られる。
従って、酸化物粒子の表面に配位する配位子のうち、少なくとも一部の配位子が除去されていればよい。
これにより、本工程による、配位子の除去の効果が発現する。
極性溶媒の比誘電率の上限には特に制限はないが、極性溶媒の比誘電率は、例えば200以下とすることができる。
本発明の製造方法は、除去工程後の塗布膜を洗浄する洗浄工程を有することが好ましい。
かかる洗浄工程により、除去工程において塗布膜中から除去された配位子を洗い流すことができる。
洗浄工程における洗浄は、除去工程後の塗布膜に有機溶媒を付与するか、除去工程後の基板を有機溶媒中に浸漬することにより行うことができる。
洗浄工程で用いる有機溶媒としては、除去工程で用いる極性溶媒と同様のものが挙げられる。
洗浄工程で用いる有機溶媒は、除去工程で用いる極性溶媒と同一種であることが好ましい。
本発明の製造方法は、除去工程後(又は洗浄工程後)の塗布膜を加熱処理(アニール)する加熱処理(アニール)工程を有していてもよい。
加熱処理の温度(最高到達温度)は、より良質な薄膜を作製する観点から、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることが更に好ましい。加熱処理の温度(最高到達温度)の上限に関して特に制限はないが、加熱処理の温度(最高到達温度)は、プラスチック等のフレキシブル基板を用いる場合には、基板の耐熱性を考慮して300℃以下であることが好ましい。
前述のとおり、本発明の製造方法は、大気雰囲気下で加熱処理を行った場合でも、特性に優れた薄膜を得ることができる。
本発明の半導体膜の製造方法は、上記以外のその他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、塗布膜を乾燥させる乾燥工程が挙げられる。乾燥工程は、例えば、除去工程後(または洗浄工程後)に設けることができる。
かかる複数回繰り返す製造方法は、所望とする膜厚を得やすいという利点がある。
複数回繰り返す製造方法では、1サイクル終了毎に、乾燥工程を設けることが好ましい。
第1の薄膜は、上記本発明の薄膜の製造方法によって製造された薄膜である。
また、本発明の第2の薄膜は、In、Zn、及びSnからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化物粒子と、比誘電率20以上の有機溶媒と、を含有する薄膜である。
第2の薄膜は、上記本発明の薄膜の製造方法によって製造された薄膜であることが好ましい。
以下、第1の薄膜及び第2の薄膜を総称して、「本発明の薄膜」と称することがある。
以上の観点からみて、上記酸化物粒子と比誘電率20以上の有機溶媒とを含有する第2の薄膜は、第1の薄膜と同様に、本発明の薄膜の製造方法によって容易に製造できる薄膜である。このため、第2の薄膜によっても、第1の薄膜と同様の効果が得られる。
本発明の薄膜は、電子素子に含まれる一部材として好適に用いることができる。
電子素子としては、例えば、薄膜トランジスタ、キャパシタ(コンデンサ)、ダイオード、センサー類(撮像素子など)等、半導体膜及び導電膜の少なくとも一方を備えた各種の素子が挙げられる。
本発明の薄膜において、酸化物粒子の粒子間平均最短距離は、0.80nm未満であることが好ましい。
酸化物微粒子の粒子間平均最短距離は、0.65nm未満であることがより好ましく、0.50nm未満であることがさらに好ましい。
酸化物粒子の粒子間最短距離は、酸化物粒子の集合体を有する薄膜を、微小角入射X線小角散乱法(GISAXS;grazing incidence small angle X-ray scattering)によって構造評価することにより得ることができる。かかる測定により、隣接する酸化物粒子同士の中心間距離dが得られ、得られた中心間距離dから、酸化物粒子の粒子径を差し引くことで、算出される。
GISAXSの測定装置において、薄膜の構造評価を行うと、X線が照射された全ての領域に存在する酸化物粒子についての散乱X線の平均が、測定対象の散乱X線となって検出される。検出された散乱X線に基づき、算出される粒子間最短距離が、各粒子間最短距離の平均値である「粒子間平均最短距離」である。
本発明の薄膜トランジスタは、上記本発明の薄膜を備える。
本発明の薄膜トランジスタは、本発明の薄膜が半導体膜である場合には、活性層(半導体層)として本発明の薄膜を備えることができる。
また、本発明の薄膜トランジスタは、本発明の薄膜が導電膜である場合には、ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極のうちの少なくとも1つとして、本発明の薄膜を備えることができる。
尚、実施形態としてはトップゲート型の薄膜トランジスタについて記述するが、本発明の薄膜トランジスタはトップゲート型に限定されることなく、ボトムゲート型の薄膜トランジスタであってもよい。
トップゲート型とは、TFTが形成されている基板を最下層としたときに、ゲート絶縁膜の上側にゲート電極が配置され、ゲート絶縁膜の下側に活性層が形成された形態である。ボトムゲート型とは、ゲート絶縁膜の下側にゲート電極が配置され、ゲート絶縁膜の上側に活性層が形成された形態である。また、ボトムコンタクト型とは、ソース・ドレイン電極が活性層よりも先に形成されて活性層の下面がソース・ドレイン電極に接触する形態である。トップコンタクト型とは、活性層がソース・ドレイン電極よりも先に形成されて活性層の上面がソース・ドレイン電極に接触する形態である。
本実施形態の薄膜トランジスタ10を製造する場合、まず、本発明の薄膜の製造方法により、基板12上に薄膜を形成する。
薄膜のパターニングは前述したインクジェット法、ディスペンサー法、凸版印刷法、又は凹版印刷法によって行ってもよく、薄膜の形成後にフォトリソグラフィー及びエッチングによりパターニングを行ってもよい。
フォトリソグラフィー及びエッチングによりパターン形成を行うには、薄膜を形成した後、活性層14として残存させる部分にフォトリソグラフィーによりレジストパターンを形成した後、塩酸、硝酸、希硫酸、又は、燐酸、硝酸及び酢酸の混合液等の酸溶液によりエッチングすることにより活性層14のパターンを形成する。
活性層14上にはソース・ドレイン電極16,18のエッチング時に活性層14を保護するための保護層(不図示)を形成することが好ましい。保護層の成膜方法に特に限定はなく、本発明の薄膜を形成した後、パターニングする前に形成してもよいし、本発明の薄膜のパターニング後に形成してもよい。
また、保護層としては金属酸化物層であってもよく、樹脂のような有機材料であってもよい。なお、保護層はソース電極16及びドレイン電極18(適宜「ソース・ドレイン電極」と記す)の形成後に除去しても構わない。
本発明の薄膜で形成される活性層14上にソース・ドレイン電極16,18を形成する。ソース・ドレイン電極16,18はそれぞれ電極として機能するように高い導電性を有するものを用い、Al,Mo,Cr,Ta,Ti,Au,Au等の金属、Al−Nd、Ag合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、In−Ga−Zn−O等の金属酸化物導電膜等を用いて形成することができる。
ソース・ドレイン電極16,18及び配線(不図示)を形成した後、ゲート絶縁膜20を形成する。ゲート絶縁膜20は高い絶縁性を有するものが好ましく、例えばSiO2、SiNx、SiON、Al2O3、Y2O3、Ta2O5、HfO2等の絶縁膜、又はこれらの化合物を2種以上含む絶縁膜としてもよい。
ゲート絶縁膜20は、印刷方式、インクジェット方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等の中から使用する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って成膜すればよい。
ゲート絶縁膜20を形成した後、ゲート電極22を形成する。ゲート電極22は高い導電性を有するものを用い、Al,Mo,Cr,Ta,Ti,Au,Au等の金属、Al−Nd、Ag合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、IGZO等の金属酸化物導電膜等を用いて形成することができる。ゲート電極22としてはこれらの導電膜を単層構造又は2層以上の積層構造として用いることができる。
ゲート電極22を形成するための金属膜の膜厚は、成膜性、エッチングやリフトオフ法によるパターニング性、導電性等を考慮すると、10nm以上1000nm以下とすることが好ましく、50nm以上200nm以下とすることがより好ましい。
成膜後、エッチング又はリフトオフ法により所定の形状にパターニングすることにより、ゲート電極22を形成してもよく、インクジェット法等により直接パターン形成してもよい。この際、ゲート電極22及びゲート配線(不図示)を同時にパターニングすることが好ましい。
本発明の電子デバイスは、上記本発明の薄膜トランジスタを備える。
上記本発明の薄膜トランジスタは、本発明の電子デバイスにおける駆動素子として好適に用いられる。
電子デバイスとしては、液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)表示装置、無機EL表示装置等の表示装置;X線センサ、イメージセンサ等の各種センサ;MEMS(Micro Electro Mechanical System);等が挙げられる。
本発明の電子デバイスの一実施形態である液晶表示装置について、図5にその一部分の概略断面図を示し、図6に電気配線の概略構成図を示す。
本発明の電子デバイスの一実施形態に係るアクティブマトリックス方式の有機EL表示装置について、図7に一部分の概略断面図を示し、図8に電気配線の概略構成図を示す。
本発明の電子デバイスの一実施形態であるX線センサについて、図9にその一部分の概略断面図を示し、図10にその電気配線の概略構成図を示す。
X線変換層304はアモルファスセレンからなる層であり、TFT10およびキャパシタ310を覆うように設けられている。
上部電極306はX線変換層304上に設けられており、X線変換層304に接している。
以下、実施例1〜9は、薄膜として半導体膜を製造した例であり、実施例101〜104は、薄膜として導電膜を製造した例である。
以下の方法により、In2O3ナノ粒子分散液を調製した。
三口フラスコ中に、30mLのオクタデセン、三酢酸インジウム(1.2mmol)、3.6mLのオレイン酸、及び4.8mLのオレイルアミンを加え、窒素フロー下、150℃で加熱攪拌を行い、原料を十分溶解させると共に1時間脱気を行った。
続いて、フラスコを270℃まで加熱し、150分間キープした。加熱中に溶液が着色し、粒子が形成している様子が確認された。得られた溶液を室温まで冷却した後、エタノールを加え、遠心分離を行い粒子を沈殿させた。上澄みを廃棄した後、ヘキサン溶媒に分散させた。
以上により、In2O3ナノ粒子分散液(ナノ粒子:In2O3ナノ粒子、配位子:オレイン酸+オレイルアミン、溶媒:ヘキサン、ナノ粒子の濃度:25mg/mL)を得た。
以下の方法により、Snが1%ドープされたIn−Sn−Oナノ粒子を含む、In−Sn−Oナノ粒子分散液を調製した。
三口フラスコ中に、30mLのオクタデセン、三酢酸インジウム(1.19mmol)、二酢酸スズ(0.012mmol)、3.6mLのオレイン酸、及び4.8mLのオレイルアミンを加え、窒素フロー下、150℃で加熱攪拌を行い、原料を十分溶解させると共に1時間脱気を行った。
続いて、フラスコを270℃まで加熱し、150分間キープした。加熱中に溶液が着色し、粒子が形成している様子が確認された。得られた溶液を室温まで冷却した後、エタノールを加え、遠心分離を行い粒子を沈殿させた。上澄みを廃棄した後、ヘキサン溶媒に分散させた。
以上により、In−Sn−Oナノ粒子分散液1(ナノ粒子:In−Sn−Oナノ粒子(Sn:1%ドープ)、配位子:オレイン酸+オレイルアミン、溶媒:ヘキサン、ナノ粒子の濃度:25mg/mL)を得た。
以下の方法により、In−Ga−Oナノ粒子分散液を調製した。
三口フラスコ中に、30mLのオクタデセン、三酢酸インジウム(1.08mmol)、ガリウム(III)アセチルアセトン(0.12mmol)、3.6mLのオレイン酸、及び4.8mLのオレイルアミンを加え、窒素フロー下、150℃で加熱攪拌を行い、原料を十分溶解させると共に1時間脱気を行った。
続いて、フラスコを270℃まで加熱し、150分間キープした。加熱中に溶液が着色し、粒子が形成している様子が確認された。得られた溶液を室温まで冷却した後、エタノールを加え、遠心分離を行い粒子を沈殿させた。上澄みを廃棄した後、ヘキサン溶媒に分散させた。
以上により、In−Ga−Oナノ粒子分散液(ナノ粒子:In−Ga−Oナノ粒子(Ga:10%ドープ)、配位子:オレイン酸+オレイルアミン、溶媒:ヘキサン、濃度:25mg/mL)を得た。
以下の方法によりInAsナノ粒子分散液を調製した。
三口フラスコ中に、トリオクチルホスフィン50ml、InCl3(1mmol)、As[Si(CH3)3]3を加え、250℃の温度で2時間加熱した。反応前にはフラスコ内を窒素で置換した。その後、生成物に対しメタノールを加え、遠心分離を実施し粒子を沈殿させた。上澄みを廃棄し、ヘキサンに再分散させることで、InAsナノ粒子分散液を得た。このInAsナノ粒子分散液の調製では、ロータリーエバポレーターを用いて所望の濃度になるまで濃縮操作を行った。
以上により、InAsナノ粒子分散液(ナノ粒子:InAsナノ粒子、配位子:トリオクチルホスフィン、溶媒:ヘキサン、InAsナノ粒子の濃度:25mg/mL)を得た。
上述した各ナノ粒子分散液に含まれるナノ粒子について、数平均粒径を測定した。
結果を下記表1及び表2に示す。
ここで、ナノ粒子の数平均粒径は、TEM(Transmission Electron Microscope;透過型電子顕微鏡)によってナノ粒子10個の粒径を測定し、得られた10個の測定結果の平均値とした。
測定装置としては、FEI社製 TITAN80−300を用いた。
<薄膜(半導体膜)の作製>
基板として、1インチ角の100nmの熱酸化膜が形成された高濃度ドープp−Si基板を用意した。
−塗布工程−
上記基板の熱酸化膜上に、In2O3ナノ粒子分散液を、回転数1500rpmの条件でスピンコートし、塗布膜を得た。
−除去工程−
塗布工程後、塗布膜上に有機溶媒(極性溶媒)としてメタノールを滴下し、5分間静置した。この5分間で、塗布膜中から配位子(オレイン酸及びオレイルアミン)の一部が除去される。即ち、塗布膜中の酸化物粒子に配位していた配位子の一部が脱離する。
−第1洗浄工程−
除去工程後、塗布膜上に、除去工程で用いた有機溶媒と同じ有機溶媒(実施例1ではメタノール)を滴下し、スピン乾燥した。この第1洗浄工程は、除去工程で除去された(脱離した)配位子の洗浄を目的とした工程である。
−第2洗浄工程−
第1洗浄工程後、塗布膜上にヘキサンを滴下し、スピン乾燥した。この第2洗浄工程も、除去工程で除去された(脱離した)配位子の洗浄を目的とした工程である。
第2洗浄工程後、大気雰囲気下、200℃で1時間アニール処理を行なった。
これにより、膜厚60nm程度の薄膜を得た。
上記アニール処理後の薄膜に対してFTIR解析を行い、配位子であるオレイン酸およびオレイルアミンが除去されたことを確認した。
詳細には、除去工程を行わない場合(後述の比較例1の場合)、2960cm−1付近に炭化水素基由来の吸収ピークが強く観測されるが、これはオレイン基由来の吸収ピークである。
これに対し、本実施例1の薄膜(アニール処理後の薄膜)では、2960cm−1付近の吸収ピーク強度が減少している様子が確認された。すなわち、除去工程により、配位子であるオレイン酸およびオレイルアミンが除去されることを確認した。
なお、後述する実施例2〜9の薄膜(アニール処理後の薄膜)でも、実施例1の薄膜と同様に、2960cm−1付近の吸収ピーク強度が減少している様子が確認された。
上記アニール処理後の薄膜に対し、断面SEM(Scanning Electron Microscope)によって薄膜の形状を観察することで、薄膜の平坦性の評価を行った。評価基準は以下のとおりとした。
評価結果を下記表1に示す。
A: SEMの走査範囲(10μm)において、平均膜厚に対し±30nm以上の凹凸が見られなかった。
B :SEMの走査範囲(10μm)において、平均膜厚に対し±30nm以上の凹凸 が見られた。
上記アニール処理後の薄膜上に、シャドウマスクを用い、真空蒸着法により、Ti30nm(上層)/Au40nm(下層)の積層構造を有する、ソース電極及びドレイン電極を形成した。このとき、ソース電極及びドレイン電極の電極幅(W)はそれぞれ1000μmとし、両電極間の距離(L)は180μmとした。
以上により、薄膜トランジスタ(TFT)を得た。
上記で得られたTFTについて、半導体パラメータアナライザー(アジレントテクノロジーズ社製)を用いてTFT特性の評価を行った。
詳細には、ドレイン電圧を10V印加した状態でゲート電圧を−50〜50Vの間で掃引することによって、TFT特性(Vg−Id特性)を測定した。測定結果に基づき、電界効果移動度を算出した。
得られた電界効果移動度(TFTの移動度)を、下記表1に示す。
上記で得られたTFTについて、光照射に対するTFT特性の安定性(光安定性)を評価した。
詳細には、特性評価用ステージにTFTを置き、乾燥大気を2時間以上流した後、この乾燥大気の雰囲気下にて、上記<TFT特性の測定>と同様にしてTFT特性(Vg−Id特性)を測定し、閾値(Vth)を求めた。以上のTFT特性の測定は、光照射時及び光非照射時のそれぞれについて行った。光照射時の光としては、波長700nmのモノクロ光(照射強度10μW/cm2)を用いた。
光照射時及び光非照射時のTFT特性の測定結果に基づき、光照射に対する閾値のシフト量(ΔVth;絶対値)を求め、下記評価基準に従って評価した。
評価結果を下記表1に示す。
A: 光照射に対する閾値のシフト量ΔVthが、1V以下であった。
B: 光照射に対する閾値のシフト量ΔVthが、1Vを超えていた。
実施例1において、ナノ粒子と除去工程の有機溶媒との組み合わせを、下記表1に示す組み合わせに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を下記表1に示す。
ここで、ナノ粒子としてIn2O3ナノ粒子を用いた例では、分散液として、前述のIn2O3ナノ粒子分散液を用いた。ナノ粒子としてIn−Sn−Oナノ粒子を用いた例では、分散液として、前述のIn−Sn−Oナノ粒子分散液1を用いた。ナノ粒子としてInAsナノ粒子を用いた例では、分散液として、前述のInAsナノ粒子分散液を用いた。
実施例1において、除去工程及び第1洗浄工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を下記表1に示す。
比較例1において、In2O3ナノ粒子分散液を、下記の比較例4用In−Sn−Oナノ粒子分散液に変更したこと以外は比較例1と同様の操作を行った。
結果を下記表1に示す。
配位子(分散剤)が配位していない、市販品のIn−Sn−Oナノ粒子(三菱マテリアル電子化成社製E−ITO)を準備した。
この市販品のIn−Sn−Oナノ粒子を、分散剤(配位子)を用いることなく2−プロピルアルコール中に分散させ、比較例4用In−Sn−Oナノ粒子分散液を得た。比較例4用In−Sn−Oナノ粒子分散液中のIn−Sn−Oナノ粒子の濃度は、25mg/mLとした。
即ち、実施例1〜9では、半導体特性、光照射に対する半導体特性の安定性、及び表面の平坦性に優れた薄膜を、大気雰囲気下で製造できることが確認された。
一方、除去工程を設けなかった比較例1では、TFTの移動度が低下した。
また、除去工程における有機溶媒として、トルエン(比誘電率20未満の有機溶媒)を用いた比較例2では、TFTが駆動しなかった。
また、ナノ粒子として、酸化物粒子ではないInAsナノ粒子を用いた比較例3では、TFT特性の光安定性が低下した。また、この比較例3では、TFTの移動度が低かった。
また、分散液中に配位子が含まれない比較例4では、薄膜の平坦性が悪化した。また、この比較例4では、TFTの評価において、十分な電界効果が観測されなかった。
<薄膜(導電膜)の作製>
基板として、1インチ角の石英ガラス基板(トータルファインガラス社製T−4040)を用意した。
−塗布工程−
上記基板上に、In2O3ナノ粒子分散液を、回転数1500rpmの条件でスピンコートし、塗布膜を得た。
−除去工程−
塗布工程後、塗布膜上に有機溶媒(極性溶媒)としてメタノールを滴下し、5分間静置した。この5分間で、塗布膜中から配位子(オレイン酸及びオレイルアミン)の一部が除去される。即ち、塗布膜中の酸化物粒子に配位していた配位子の一部が脱離する。
−第1洗浄工程−
除去工程後、塗布膜上に、除去工程で用いた有機溶媒と同じ有機溶媒(実施例1ではメタノール)を滴下し、スピン乾燥した。この第1洗浄工程は、除去工程で除去された(脱離した)配位子の洗浄を目的とした工程である。
−第2洗浄工程−
第1洗浄工程後、塗布膜上にヘキサンを滴下し、スピン乾燥した。この第2洗浄工程も、除去工程で除去された(脱離した)配位子の洗浄を目的とした工程である。
これにより、膜厚120nm程度の薄膜を得た。
上記アニール処理後の薄膜のシート抵抗を、ハイレスタまたはロレスタ(三菱アナリテック社製)によって測定した。
結果を下記表2に示す。
上記アニール処理後の薄膜の平坦性を、実施例1と同様にして評価した。
結果を下記表2に示す。
実施例101において、ナノ粒子と除去工程の有機溶媒との組み合わせを、下記表2に示す組み合わせに変更したこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を下記表2に示す。
ここで、ナノ粒子としてIn2O3ナノ粒子を用いた例では、分散液として、前述のIn2O3ナノ粒子分散液を用いた。ナノ粒子としてIn−Sn−Oナノ粒子を用いた例では、分散液として、下記のIn−Sn−Oナノ粒子分散液2を用いた。
以下の方法により、Snが10%ドープされたIn−Sn−Oナノ粒子を含有する、In−Sn−Oナノ粒子分散液2を調製した。
三口フラスコ中に、30mLのオクタデセン、三酢酸インジウム(1.08mmol)、二酢酸スズ(0.12mmol)、3.6mLのオレイン酸、及び4.8mLのオレイルアミンを加え、窒素フロー下、150℃で加熱攪拌を行い、原料を十分溶解させると共に1時間脱気を行った。
続いて、フラスコを270℃まで加熱し、150分間キープした。加熱中に溶液が着色し、粒子が形成している様子が確認された。得られた溶液を室温まで冷却した後、エタノールを加え、遠心分離を行い粒子を沈殿させた。上澄みを廃棄した後、ヘキサン溶媒に分散させた。
以上により、In−Sn−Oナノ粒子分散液2(酸化物粒子:In−Sn−Oナノ粒子2(Sn:10%ドープ)、配位子:オレイン酸+オレイルアミン、溶媒:ヘキサン、酸化物粒子の濃度:25mg/mL)を得た。
実施例101において、除去工程及び第1洗浄工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を下記表2に示す。
一方、除去工程を設けなかった比較例101では、実施例101〜104と比べて、1桁以上のシート抵抗の増大が認められた。
また、除去工程における有機溶媒として、トルエン(比誘電率20未満の有機溶媒)を用いた比較例102では、実施例101〜104と比べて、2桁以上のシート抵抗の増大が認められた。
12 基板
14 活性層
16 ソース電極
18 ドレイン電極
20 ゲート絶縁膜
22 ゲート電極
100 液晶表示装置
200 有機EL表示装置
300 X線センサ
Claims (9)
- In、Zn、及びSnからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化物粒子と、一分子中に、炭素数6〜25の炭化水素基、並びに、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、リン原子、及びアンモニウム基からなる群から選択される少なくとも1種を有する配位子と、を含有する分散液を準備する準備工程と、
前記分散液を基板上に塗布することにより、前記酸化物粒子及び前記配位子を含有する塗布膜を得る塗布工程と、
前記塗布膜と比誘電率20以上の有機溶媒とを接触させることにより、前記塗布膜中の前記配位子の少なくとも一部を除去する除去工程と、
を有し、
前記酸化物粒子を含有する薄膜を製造する薄膜の製造方法。 - 前記酸化物粒子が、Inと、Sn、Ga、及びZnから選択される少なくとも1種と、を含む請求項1に記載の薄膜の製造方法。
- 前記酸化物粒子が、酸化物ナノ粒子である請求項1又は請求項2に記載の薄膜の製造方法。
- 前記酸化物粒子の数平均粒径が、3nm〜30nmである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
- 前記比誘電率20以上の有機溶媒が、エタノール、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
- 前記分散液が、非極性溶媒を含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
- 前記非極性溶媒が、炭素数6〜10のアルカンである請求項6に記載の薄膜の製造方法。
- 前記配位子が、一分子中に、カルボキシル基及びアミノ基の少なくとも一方を有する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
- 前記配位子が、オレイン酸及びオレイルアミンの少なくとも一方である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
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