JP6176067B2 - ガラス積層体および電子デバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
(1)支持基板および上記支持基板上に配置された無機層を有する無機層付き支持基板と、上記無機層における上記支持基板側とは反対側の表面である無機層表面上に剥離可能に積層されたガラス基板と、を備え、上記無機層が、上記無機層表面の組成として、SiC1-xOx(x=0.10〜0.90)および/またはSiN1-yOy(y=0.10〜0.90)を含み、上記無機層表面の表面粗さ(Ra)が、0.20〜1.00nmである、ガラス積層体。
(2)上記無機層表面の表面粗さ(Ra)が、0.30nm以上である、上記(1)に記載のガラス積層体。
(3)上記無機層表面の表面粗さ(Ra)が、0.50nm以下である、上記(1)または2に記載のガラス積層体。
(4)上記xおよびyが、0.20以上の数である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のガラス積層体。
(5)上記xおよびyが、0.50以下の数である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のガラス積層体。
(6)上記支持基板が、ガラス基板である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のガラス積層体。
(7)600℃で1時間加熱処理を施した後も上記無機層付き支持基板と上記ガラス基板とが剥離可能である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のガラス積層体。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のガラス積層体中の上記ガラス基板の表面上に電子デバイス用部材を形成し、電子デバイス用部材付き積層体を得る部材形成工程と、上記電子デバイス用部材付き積層体から上記無機層付き支持基板を剥離し、上記ガラス基板および上記電子デバイス用部材を有する電子デバイスを得る分離工程と、を備える電子デバイスの製造方法。
図1は、本発明に係るガラス積層体の一実施形態の模式的断面図である。
図1に示すように、ガラス積層体10は、支持基板12および無機層14からなる無機層付き支持基板16と、ガラス基板18とを有する。ガラス積層体10中において、無機層付き支持基板16の無機層14の無機層表面14a(支持基板12側とは反対側の表面)と、ガラス基板18の第1主面18aとを積層面として、無機層付き支持基板16とガラス基板18とが剥離可能に積層している。つまり、無機層14は、その一方の面が支持基板12の層に固定されると共に、その他方の面がガラス基板18の第1主面18aに接し、無機層14とガラス基板18との界面は剥離可能に密着されている。言い換えると、無機層14は、ガラス基板18の第1主面18aに対して易剥離性を具備している。
また、剥離可能な密着とは、剥離可能であると同時に、固定されている面の剥離を生じさせることなく剥離可能であることも意味する。つまり、本発明のガラス積層体10において、ガラス基板18と支持基板12とを分離する操作を行った場合、密着された面(無機層14とガラス基板18との界面)で剥離し、固定された面では剥離しないことを意味する。したがって、ガラス積層体10をガラス基板18と支持基板12とに分離する操作を行うと、ガラス積層体10はガラス基板18と無機層付き支持基板16との2つに分離される。
無機層付き支持基板16は、支持基板12と、その表面上に配置(固定)される無機層14とを備える。無機層14は、後述するガラス基板18と剥離可能に密着するように、無機層付き支持基板16中の最外側に配置される。
以下に、支持基板12、および、無機層14の態様について詳述する。
支持基板12は、第1主面と第2主面とを有し、第1主面上に配置された無機層14と協働して、ガラス基板18を支持して補強し、後述する部材形成工程(電子デバイス用部材を製造する工程)において電子デバイス用部材の製造の際にガラス基板18の変形、傷付き、破損などを防止する基板である。
支持基板12としては、例えば、ガラス板、プラスチック板、SUS板などの金属板などが用いられる。支持基板12は、部材形成工程が熱処理を伴う場合、ガラス基板18との線膨張係数の差の小さい材料で形成されることが好ましく、ガラス基板18と同一材料で形成されることがより好ましく、支持基板12はガラス板であることが好ましい。特に、支持基板12は、ガラス基板18と同じガラス材料からなるガラス板であることが好ましい。
無機層14は、支持基板12の主面上に配置(固定)され、ガラス基板18の第1主面18aと接触する層である。無機層14を支持基板12上に設けることにより、高温条件下の長時間処理後においても、ガラス基板18の接着を抑制できる。
ここで、xおよびyが0.10未満の数であるとガラス基板18に対する剥離性が劣り、0.90超の数であるとガラス基板18に対する積層性が劣るが、この範囲であれば、積層性および剥離性が共に優れる。
この理由は明らかではないが、元素どうしの電気陰性度の差が比較的小さい炭化ケイ素および/または窒化ケイ素が、適量の酸素を含むことで、表面平坦度が最適化されたり、加熱処理時に無機層とガラス基板との間で弱い結合から強結合への転換が行いにくくなったりするためと考えられる。
なお、無機層14における無機層表面14a以外の組成としては、無機層表面14aの組成と異なっていてもよいし、同一であってもよい。
無機層表面14aの表面粗さ(Ra)は、剥離性がより優れるという理由からは0.30nm以上が好ましく、積層性がより優れるという理由からは0.50nm以下が好ましく、積層性および剥離性が共により優れるという理由からは、0.30〜0.50nmがより好ましい。
無機層表面14aの表面粗さを制御する方法としては、例えば、無機層14の形成条件(成膜条件)を変更する方法が挙げられ、具体的には、無機層14の厚さを変更する方法などが挙げられる。
なお、Ra(算術平均粗さ)は、JIS B 0601(2001年改正)に従って測定される。
無機層14は、図1において単層として記載されているが、2層以上の積層であってもよい。2層以上の積層の場合、各層ごとが異なる組成であってもよい。
ここで、重剥離化とは、無機層14とガラス基板18との界面の剥離強度が、支持基板12と無機層14との界面の剥離強度、および、無機層14の材料自体の強度(バルク強度)のいずれかよりも大きくなることをいう。無機層14とガラス基板18との界面で重剥離化が起こると、ガラス基板18表面に無機層14の成分が付着しやすく、その表面の清浄化が困難となりやすい。ガラス基板18表面への無機層14の付着とは、無機層14全体がガラス基板18表面に付着すること、および、無機層14表面が損傷し無機層14表面の成分の一部がガラス基板18表面に付着すること、などを意味する。
無機層付き支持基板16の製造方法として、例えば、SiCターゲットまたはSiNターゲットを用いて、Ar等の不活性ガスとO2またはCO2等の酸素原子含有ガスとの混合ガスを導入しながら、蒸着法、スパッタリング法、または、CVD法などにより、支持基板12上に、上述した無機層表面14aの組成を有する無機層14を設ける方法が挙げられる。このとき、混合ガス中の酸素原子含有ガスの量を調整することで、無機層表面14aの酸素量(すなわち、xおよびyの値)を制御できる。なお、製造条件は、使用される材料等に応じて、適宜最適な条件が選択される。
ガラス基板18は、第1主面18aが無機層14と密着し、無機層14側とは反対側の第2主面18bに後述する電子デバイス用部材が設けられる。
ガラス基板18の種類は、一般的なものであってよく、例えば、LCD、OLEDといった表示装置用のガラス基板などが挙げられる。ガラス基板18は耐薬品性、耐透湿性に優れ、且つ、熱収縮率が低い。熱収縮率の指標としては、JIS R 3102(1995年改正)に規定されている線膨張係数が用いられる。
無機薄膜層がガラス基板18上に配置(固定)される場合、ガラス積層体中においては、無機層付き支持基板16の無機層14と無機薄膜層とが接触する。無機薄膜層をガラス基板18上に設けることにより、高温条件下の長時間処理後においても、ガラス基板18と無機層付き支持基板16との接着をより抑制できる。
無機薄膜層の態様は特に限定されないが、好ましくは、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物、金属珪化物および金属弗化物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。なかでも、ガラス基板18の剥離性がより優れる点で、金属酸化物を含むことが好ましく、酸化インジウムスズがより好ましい。
本発明のガラス積層体10は、上述した無機層付き支持基板16の無機層表面14aとガラス基板18の第1主面18aとを積層面として、無機層付き支持基板16とガラス基板18とを剥離可能に積層してなる積層体である。言い換えると、支持基板12とガラス基板18との間に、無機層14が介在する積層体である。
本発明のガラス積層体10の製造方法は特に限定されないが、具体的には、常圧環境下で無機層付き支持基板16とガラス基板18とを重ねた後に、例えば、ガラス基板18の自重またはガラス基板18の第2主面18bを軽く一か所押すことにより、重ね合わせ面内に密着起点を発生させ、その密着起点から密着を自然に広げる方法;ロールやプレスを用いて圧着することで、密着起点からの密着を広げる方法;等が挙げられる。ロールやプレスによる圧着により、無機層14とガラス基板18とがより密着するうえ、両者の間に混入している気泡が比較的容易に除去されるので好ましい。
洗浄の方法は特に限定されないが、例えば、無機層14またはガラス基板18の表面をアルカリ水溶液で洗浄した後、さらに水を用いて洗浄する方法が挙げられる。
さらに、良好な積層状態を得るためには、無機層14およびガラス基板18の互いに接触する側の面を洗浄後にプラズマ処理を施してから、積層することが好ましい。プラズマ処理に用いるプラズマとしては、例えば、大気プラズマ、真空プラズマ等が挙げられる。
ここで、表示装置用パネルとは、LCD、OLED、電子ペーパー、フィールドエミッションパネル、量子ドットLEDパネル、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッターパネル等が含まれる。
次に、電子デバイスおよびその製造方法の好適実施態様について詳述する。
図2は、本発明の電子デバイスの製造方法の好適実施態様における各製造工程を順に示す模式的断面図である。本発明の電子デバイスの好適実施態様は、部材形成工程および分離工程を備える。
以下に、図2を参照しながら、各工程で使用される材料およびその手順について詳述する。まず、部材形成工程について詳述する。
部材形成工程は、ガラス積層体中のガラス基板上に電子デバイス用部材を形成する工程である。
より具体的には、図2(A)に示すように、本工程において、ガラス基板18の第2主面18b上に電子デバイス用部材20が形成され、電子デバイス用部材付き積層体22が製造される。
まず、本工程で使用される電子デバイス用部材20について詳述し、その後工程の手順について詳述する。
電子デバイス用部材20は、ガラス積層体10中のガラス基板18の第2主面18b上に形成され電子デバイスの少なくとも一部を構成する部材である。より具体的には、電子デバイス用部材20としては、表示装置用パネル、太陽電池、薄膜2次電池、表面に回路が形成された半導体ウェハ等の電子部品などに用いられる部材が挙げられる。表示装置用パネルとしては、有機ELパネル、フィールドエミッションパネル等が含まれる。
また、薄膜2次電池用部材としては、リチウムイオン型では、正極および負極の金属または金属酸化物等の透明電極、電解質層のリチウム化合物、集電層の金属、封止層としての樹脂等が挙げられ、その他に、ニッケル水素型、ポリマー型、セラミックス電解質型などに対応する各種部材等を挙げることができる。
また、電子部品用部材としては、CCDやCMOSでは、導電部の金属、絶縁部の酸化ケイ素や窒化珪素等が挙げられ、その他に圧力センサ・加速度センサなど各種センサやリジッドプリント基板、フレキシブルプリント基板、リジッドフレキシブルプリント基板などに対応する各種部材等を挙げることができる。
上述した電子デバイス用部材付き積層体22の製造方法は特に限定されず、電子デバイス用部材の構成部材の種類に応じて従来公知の方法にて、ガラス積層体10のガラス基板18の第2主面表面18b上に、電子デバイス用部材20を形成する。
なお、電子デバイス用部材20は、ガラス基板18の第2主面18bに最終的に形成される部材の全部(以下、「全部材」という)ではなく、全部材の一部(以下、「部分部材」という)であってもよい。部分部材付きガラス基板を、その後の工程で全部材付きガラス基板(後述する電子デバイスに相当)とすることもできる。また、全部材付きガラス基板には、その剥離面(第1主面)に他の電子デバイス用部材が形成されてもよい。また、全部材付き積層体を組み立て、その後、全部材付き積層体から無機層付き支持基板16を剥離して、電子デバイスを製造することもできる。さらに、全部材付き積層体を2枚用いて電子デバイスを組み立て、その後、全部材付き積層体から2枚の無機層付き支持基板16を剥離して、電子デバイスを製造することもできる。
なお、TFTやCFを形成する前に、必要に応じて、ガラス基板18の第2主面18bを洗浄してもよい。洗浄方法としては、周知のドライ洗浄やウェット洗浄を用いることができる。
分離工程は、上記部材形成工程で得られた電子デバイス用部材付き積層体22から無機層付き支持基板16を剥離して、電子デバイス用部材20およびガラス基板18を含む電子デバイス24(電子デバイス用部材付きガラス基板)を得る工程である。つまり、電子デバイス用部材付き積層体22を、無機層付き支持基板16と電子デバイス用部材付きガラス基板24とに分離する工程である。
剥離時のガラス基板18上の電子デバイス用部材20が必要な全構成部材の形成の一部である場合には、分離後、残りの構成部材をガラス基板18上に形成することもできる。
また、支持基板としては、同じく無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス板(幅90mm、奥行き30mm、厚さ0.5mm、線膨張係数38×10-7/℃、旭硝子社製商品名「AN100」)を使用した。
(無機層の形成)
支持基板の一方の主面をアルカリ性水溶液で洗浄して清浄化した。さらに、清浄化した面に、SiCターゲットを用いて、ArおよびO2の混合ガスを導入しながら、マグネトロンスパッタリング法により、無機層表面組成としてSiC1-xOx(x=0.50)を含む無機層(厚さ10〜200nm)を形成し、各例の無機層付き支持基板を得た。
なお、無機層表面組成は、X線光電子分光装置(XPS−7000、リガク社製)を用いてXPSにより測定した(以下、同様)。
各例の無機層を形成する際に、組成を変えずに無機層の厚さを調整することで、各例の無機層表面の表面粗さ(Ra)を異ならせた。
なお、表面粗さ(Ra)は、AFM(機種:L−trace(Nanonavi)、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、JIS B 0601(2001年改正)に準拠して、測定した(以下、同様)。
次に、各例の無機層付き支持基板の無機層の無機層表面と、ガラス基板の第1主面とに、アルカリ水溶液による洗浄および水による洗浄を施し、両面を清浄化した。
その後、無機層表面にガラス基板を重ね合わせ、無機層とガラス基板との積層性を下記基準で評価した。結果を下記第1表に示す。なお、「○」または「△」であれば、積層性が優れるものとして評価できる。
○:重ね合わせた後に、ガラス基板の自重またはガラス基板を軽く一か所押すことにより、重ね合わせ面内に密着起点が発生し、発生した密着起点から密着が自然に広がり、最終的に密着が重ね合わせ面内全体に渡った。
△:密着起点は発生するものの、密着は自然に広がらず、真空プレスを用いて圧着することで、密着が重ね合わせ面内全体に渡った。
×:真空プレスを用いて圧着しても密着起点の発生ないし密着の広がりが見られなかった、または、真空プレスを用いて圧着することで密着起点の発生ないし密着の広がりが見られたが、圧着から開放すると重ね合わせ面が容易に剥がれた。
図3は、剥離性の評価方法を示す模式的断面図である。
まず、積層性の評価と同様にして、無機層の無機層表面およびガラス基板の第1主面を清浄化した。その後、各例の無機層付き支持基板と、ガラス基板とを、奥行き方向の位置を揃えつつ、幅方向の長さが異なるため、図3に示すように一端で揃えて重ね合わせた。なお、一端を揃えたため、他端では、図3に示すように、無機層付き支持基板の一部がガラス基板から突出している。
重ね合わせた後、密着起点を発生させ、真空プレスを用いて圧着して、密着を重ね合わせ面内全体に渡らせて、各例のガラス積層体を得た。
次に、得られた各例のガラス積層体に対して、大気雰囲気にて、600℃で1時間加熱処理を施した。
次に、剥離試験を行った。具体的には、まず、ガラス積層体におけるガラス基板の第2主面を固定台(図3中符号31で示す)上に両面テープを用いて固定した。
次に、図3に示すように、ガラス基板から突出している無機層付き支持基板の無機層表面に、L字型治具(図3中符号32で示す)を引っ掛けて、固定台から離れる方向に機械を用いて10mm/minで引き上げることで、無機層とガラス基板との剥離性を下記基準で評価した。結果を下記第1表に示す。なお、「○」または「△」であれば、高温条件下の長時間処理の後であっても剥離性が優れるものとして評価できる。
○:無機層付き支持基板が割れることなく、剥離できた。
△:一部剥離できたが途中で無機層付き支持基板が割れた。
×:剥離できなかった。
なお、上記結果より、実施例においては、無機層と支持基板の層との界面の剥離強度が、無機層とガラス基板との界面の剥離強度よりも大きいことが確認された(以下、同様)。
(無機層の形成)
支持基板の一方の主面をアルカリ性水溶液で洗浄して清浄化した。さらに、清浄化した面に、SiCターゲットを用いて、ArおよびO2の混合ガスを導入しながら、マグネトロンスパッタリング法により、無機層表面組成としてSiC1-xOx(x=0.05〜0.99)を含む無機層を形成し、各例の無機層付き支持基板を得た。
このとき、各例ごとに、体積比(Ar/O2)の異なる混合ガスを用いることで、SiC1-xOxにおけるxの数を異ならせた。
各例の無機層を形成する際に、無機層の厚さを10〜200nmの範囲で調整することで、無機層表面の表面粗さ(Ra)を0.40nmに制御した。
次に、例I−1〜8と同様にして、積層性および剥離性を評価した。評価基準についても同様である。結果を下記第2表に示す。
(無機層の形成)
支持基板の一方の主面をアルカリ性水溶液で洗浄して清浄化した。さらに、清浄化した面に、SiNターゲットを用いて、ArおよびO2の混合ガスを導入しながら、マグネトロンスパッタリング法により、無機層表面組成としてSiN1-yOy(y=0.05〜0.99)を含む無機層を形成し、各例の無機層付き支持基板を得た。
このとき、各例ごとに、体積比(Ar/O2)の異なる混合ガスを用いることで、SiN1-yOyにおけるyの数を異ならせた。
例II−1〜6と同様にして、無機層表面の表面粗さ(Ra)を0.40nmに制御した。
次に、例I−1〜8と同様にして、積層性および剥離性を評価した。評価基準についても同様である。結果を下記第3表に示す。
本例では、特許文献1で具体的に使用されている金属酸化物であるITOの無機層を形成した。具体的には、支持基板の一方の主面をアルカリ性水溶液で洗浄して清浄化した。さらに、清浄化した面に、マグネトロンスパッタリング法により、厚さ150nmのITO層(酸化インジウムスズ層)を形成し、ITO層付き支持基板を得た。ITO層の表面粗さRaは、0.85nmであった。
例I−1〜8と同様にして積層性および剥離性を評価したところ、積層性は「△」であったが剥離性は「×」であった。
本例では、例I−4で製造された、ガラス積層体を用いてOLEDを作製した。
より具体的には、ガラス積層体におけるガラス基板の第2主面上に、スパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりゲート電極を形成した。次に、プラズマCVD法により、ゲート電極を設けたガラス基板の第2主面側に、さらに窒化シリコン、真性アモルファスシリコン、n型アモルファスシリコンの順に成膜し、続いてスパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、ゲート絶縁膜、半導体素子部およびソース/ドレイン電極を形成した。次に、プラズマCVD法により、ガラス基板の第2主面側に、さらに窒化シリコンを成膜してパッシベーション層を形成した後に、スパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜して、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、画素電極を形成した。
続いて、ガラス基板の第2主面側に、さらに蒸着法により正孔注入層として4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、正孔輸送層としてビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン、発光層として8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3)に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したもの、電子輸送層としてAlq3をこの順に成膜した。次に、ガラス基板の第2主面側にスパッタリング法によりアルミニウムを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより対向電極を形成した。次に、対向電極を形成したガラス基板の第2主面上に、紫外線硬化型の接着層を介してもう一枚のガラス基板を貼り合わせて封止した。上記手順によって得られた、ガラス基板上に有機EL構造体を有するガラス積層体は、電子デバイス用部材付き積層体に該当する。
続いて、得られたガラス積層体の封止体側を定盤に真空吸着させたうえで、ガラス積層体のコーナー部の無機層とガラス基板との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ガラス積層体から無機層付き支持基板を分離して、OLEDパネル(電子デバイスに該当。以下パネルAという)を得た。作製したパネルAにICドライバを接続し、常温常圧下で駆動させたところ、駆動領域内において表示ムラは認められなかった。
本例では、例I−4で製造された、ガラス積層体を用いてLCDを作製した。
ガラス積層体を2枚用意し、まず、片方のガラス積層体におけるガラス基板の第2主面上に、スパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりゲート電極を形成した。次に、プラズマCVD法により、ゲート電極を設けたガラス基板の第2主面側に、さらに窒化シリコン、真性アモルファスシリコン、n型アモルファスシリコンの順に成膜し、続いてスパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、ゲート絶縁膜、半導体素子部およびソース/ドレイン電極を形成した。次に、プラズマCVD法により、ガラス基板の第2主面側に、さらに窒化シリコンを成膜してパッシベーション層を形成した後に、スパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、画素電極を形成した。次に、画素電極を形成したガラス基板の第2主面上に、ロールコート法によりポリイミド樹脂液を塗布し、熱硬化により配向層を形成し、ラビングを行った。得られたガラス積層体を、ガラス積層体X1と呼ぶ。
次に、もう片方のガラス積層体におけるガラス基板の第2主面上に、スパッタリング法によりクロムを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより遮光層を形成した。次に、遮光層を設けたガラス基板の第2主面側に、さらにダイコート法によりカラーレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法および熱硬化によりカラーフィルタ層を形成した。次に、ガラス基板の第2主面側に、さらにスパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜し、対向電極を形成した。次に、対向電極を設けたガラス基板の第2主面上に、ダイコート法により紫外線硬化樹脂液を塗布し、フォトリソグラフィ法および熱硬化により柱状スペーサを形成した。次に、柱状スペーサを形成したガラス基板の第2主面上に、ロールコート法によりポリイミド樹脂液を塗布し、熱硬化により配向層を形成し、ラビングを行った。次に、ガラス基板の第2主面側に、ディスペンサ法によりシール用樹脂液を枠状に描画し、枠内にディスペンサ法により液晶を滴下した後に、上述したガラス積層体X1を用いて、2枚のガラス積層体のガラス基板の第2主面側同士を貼り合わせ、紫外線硬化および熱硬化によりLCDパネルを有する積層体を得た。ここでのLCDパネルを有する積層体を以下、パネル付き積層体X2という。
次に、パネル付き積層体X2から両面の無機層付き支持基板を剥離し、TFTアレイを形成した基板およびカラーフィルタを形成した基板からなるLCDパネルB(電子デバイスに該当)を得た。
作製したLCDパネルBにICドライバを接続し、常温常圧下で駆動させたところ、駆動領域内において表示ムラは認められなかった。
12 支持基板
14 無機層
14a 無機層表面(無機層における支持基板側とは反対側の表面)
16 無機層付き支持基板
18 ガラス基板
18a ガラス基板の第1主面
18b ガラス基板の第2主面
20 電子デバイス用部材
22 電子デバイス用部材付き積層体
24 電子デバイス
31 固定台
32 L字型治具
Claims (8)
- 支持基板および前記支持基板上に配置された無機層を有する無機層付き支持基板と、
前記無機層における前記支持基板側とは反対側の表面である無機層表面上に剥離可能に積層されたガラス基板と、を備え、
前記無機層が、前記無機層表面の組成として、SiC1-xOx(x=0.10〜0.90)および/またはSiN1-yOy(y=0.10〜0.90)を含み、
前記無機層表面の表面粗さ(Ra)が、0.20〜1.00nmである、ガラス積層体。 - 前記無機層表面の表面粗さ(Ra)が、0.30nm以上である、請求項1に記載のガラス積層体。
- 前記無機層表面の表面粗さ(Ra)が、0.50nm以下である、請求項1または2に記載のガラス積層体。
- 前記xおよびyが、0.20以上の数である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス積層体。
- 前記xおよびyが、0.50以下の数である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス積層体。
- 前記支持基板が、ガラス基板である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス積層体。
- 600℃で1時間加熱処理を施した後も、前記無機層と前記支持基板との界面の剥離強度が前記無機層と前記ガラス基板との界面の剥離強度よりも大きく、前記無機層付き支持基板と前記ガラス基板とが剥離可能である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス積層体。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス積層体中の前記ガラス基板の表面上に電子デバイス用部材を形成し、電子デバイス用部材付き積層体を得る部材形成工程と、
前記電子デバイス用部材付き積層体から前記無機層付き支持基板を剥離し、前記ガラス基板および前記電子デバイス用部材を有する電子デバイスを得る分離工程と、を備える電子デバイスの製造方法。
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