JP6176040B2 - Cr添加高耐食性鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
フェライト系ステンレス鋼は、もともと高いCr量のために加工性が低い材料であったが、更にCr量が増加するに従ってより加工が困難となるという問題がある。また、レアアースメタルの高騰にともない、Crの原料費も高くなっており、Cr量を増加させることによる原料のコスト増に伴って鋼板価格が高くなるという問題も生じてきた。
特許文献1には、母材のC量が0.25%以下の鉄合金において、表面から50〜200μmにAl及びCrの拡散層を形成することにより、バナジウム、硫黄、ナトリウムの燃焼灰分による高温腐食に有効な耐食性材料が開示されている。
特許文献2には、金属Cr、Al2O3及びNH4Clよりなる従来のCr拡散浸透処理剤粉末にFe−V粉末を1〜3wt%添加したCr拡散浸透処理剤中で各種鋼材を処理するCr拡散浸透層の皮膜厚さを増大させた高温耐食表面処理鋼材が開示されている。
これらの技術は、少ないCr量で鋼板の耐食性を向上させることができるが、加工性の悪いフェライト系ステンレス鋼などを母材とした場合の加工性の改善については何も明らかにしていない。
特許文献3では、Al濃度が6.5%未満の鋼板の表面にAlやCrなどの金属を第二層として付着させ、次いで母材鋼板を冷間圧延し、その後、鋼板を熱処理して第二層の金属を拡散させることよりなる、高い{222}面集積度を有する鋼板とその製造技術を開示している。
この技術では、鋼板板面における{222}面集積度を高めて、深絞り成形や打抜き加工における加工性を高めているが、少ないCr量の組成の母材の耐食性を向上させることについては何も明らかにしていない。
その結果、(i)鋼板の製造過程において冷間圧延の圧下率を最適化すれば、少なくとも鋼板の表層部に{222}集合組織が形成できること、(ii)表層部のCr濃度を高めてα単相組織にすることによりその領域の{222}集合組織を保存し、A3変態点を超える温度に加熱冷却する熱処理を施すことにより、鋼板全体にその集合組織を成長でき、加工性に優れた鋼板組織が得られることを見出した。また、鋼板に特定量のNiを添加することにより、更に加工性、耐食性を向上できることを見い出した。
そのような検討の結果なされた本発明の要旨は、以下のとおりである。
前記Cr濃化部は、Cr濃度が13質量%以上であり、
鋼板面に対するαFe相の{222}面集積度が60%以上99%以下であることを特徴とするCr添加高耐食性鋼板。
ここで、{222}面集積度は、試料表面に対して平行なFeのα結晶11面{110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442}の積分強度を測定し、その測定値それぞれをランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{222}強度の比率を百分率で求めたものである。
(2)前記鋼板が、更に、Niを0.1質量%以上1質量%未満で含有することを特徴とする(1)に記載のCr添加高耐食性鋼板。
(3) Crを3質量%以上13質量%未満で含有するα−γ変態成分系の組成を有し、常温でα相である鋼板の表層に、Cr濃化部が鋼板表面から深さ0.1〜50μmの範囲にわたって形成されており、
前記Cr濃化部は、Cr濃度が10.5質量%以上かつ鋼板のCr濃度超であり、更にAl、Ga、Mo、Nb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1種以上のフェライト形成元素を含んでおり、
鋼板面に対するαFe相の{222}面集積度が60%以上99%以下であることを特徴とするCr添加高耐食性鋼板。
(4)前記鋼板が、更に、Niを0.1質量%以上、1質量%未満で含有することを特徴とする(3)に記載のCr添加高耐食性鋼板。
(6) Crを3質量%以上13質量%未満、Niを0.1質量%以上1質量%未満で含有するα−γ変態成分系の組成よりなる鋼鋳片を熱延し、圧下率50%〜95%の冷間圧延を行なって鋼板とし、該鋼板の片面あるいは両面にCr皮膜を形成した後、α−γ変態点温度以上1300℃以下の温度まで加熱して冷却する熱処理を施し、該熱処理の加熱過程でCrを鋼板内部に拡散させて、鋼板表層に前記Cr濃化部を形成するとともに、該熱処理によって鋼板面に対するαFe相の{222}面集積度を60%以上99%以下としたことを特徴とする(2)に記載のCr添加高耐食性鋼板の製造方法。
(7) Crを3質量%以上13質量%未満で含有するα−γ変態成分系の組成よりなる鋼鋳片を熱延し、圧下率50%〜95%の冷間圧延を行なって鋼板とし、該鋼板の片面あるいは両面にCrとAl、Ga、Mo、Nb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1元素以上のフェライト形成元素からなる皮膜を形成した後、α−γ変態点温度以上1300℃以下の温度まで加熱して冷却する熱処理を施し、該熱処理の加熱過程でCrと前記フェライト形成元素を鋼板内部に拡散させて、鋼板表層に前記Cr濃化部を形成するとともに、前記熱処理によって鋼板面に対するαFe相の{222}面集積度を60%以上99%以下としたことを特徴とする(3)に記載のCr添加高耐食性鋼板の製造方法。
(8) Crを3質量%以上13質量%未満、Niを0.1質量%以上1質量%未満で含有するα−γ変態成分系の組成よりなる鋼鋳片を熱延し、圧下率50%〜95%の冷間圧延を行なって鋼板とし、該鋼板の片面あるいは両面にCrとAl、Ga、Mo、Nb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1元素以上のフェライト形成元素からなる皮膜を形成した後、α−γ変態点温度以上1300℃以下の温度まで加熱して冷却する熱処理を施し、該熱処理の加熱過程でCrと前記フェライト形成元素を鋼板内部に拡散させて、鋼板表層に前記Cr濃化部を形成するとともに、前記熱処理によって鋼板面に対するαFe相の{222}面集積度を60%以上99%以下としたことを特徴とする(4)に記載のCr添加高耐食性鋼板の製造方法。
Cr:3%〜13%未満を含有し、α−γ変態成分系で、常温ではα相となる組成を有する鋼板素材を、圧下率50〜95%の範囲で冷間圧延して、少なくとも表層部に{222}集合組織を有する母材となる鋼板を得る。(図1aの状態参照)
冷間圧延後の鋼板の片面あるいは両面に、拡散元素となるCrをめっきや蒸着などの手段によって付着させて、鋼板表面にCrよりなる被膜を形成する。(図1bの状態参照)
Cr層が形成された鋼板を、母材鋼板のA3点まで加熱して、{222}集合組織を有する鋼板の表層の領域にCrを拡散させ、Cr濃度が13%以上となるように母材表層部にCrを濃化させる。
Crが濃化した領域ではγ変態しないα単相成分となりその状態が保存される、また、鋼板の温度上昇にしたがって、{111}粒が優先成長して{222}面集積度が増加する。(図1cの状態参照)
母材鋼板をさらにA3点以上1300℃以下の温度に加熱、保持する。
α単相成分の領域はα相のままであるために、{111}結晶粒もそのまま保存され、その領域の中で{111}粒が優先成長して{222}面集積度が増加する。
また、α単相成分でない領域はα相からγ相に変態する。
保持時間を長くすると、{111}結晶粒は粒の食い合いによって優先的に粒成長する。また、Crの拡散に伴い、Crが濃化した領域ではα単相成分となりγ相からα相に変態していく。その際、変態する領域に隣接する領域ではすでに{111}に配向したα粒となっており、γ相からα相に変態する際に、隣接するα粒の結晶方位を引き継ぐかたちで変態する。これにより、保持時間が長くなるとともに{222}面集積度が増加する。(図1dの状態参照)
母材鋼板をA3点未満の温度へ冷却する。この時、Crが濃化していない内部の領域のγ相はα相へ変態する。この内部の領域は、A3点以上の温度域において既に{111}に配向したα粒となっている領域に隣接しており、γ相からα相に変態する際に、隣接するα粒の結晶方位を引き継いで変態する。このため、その領域でも{222}面集積度が増加する。この現象によって、Crが濃化していない内部の領域でも高い{222}面集積度が得られるようになる。(図1eの状態参照)
また、母材鋼板にCrに加え、更にNiを0.1質量%以上1質量%未満含有させると、更に加工性に有効な組織を得ることができ、耐食性も向上することができる。
まず、本発明の鋼板について説明する。
本発明では、基本的に耐食性の優れた鋼板を得ると同時に、高い{222}面集積度の集合組織を形成して鋼板の加工性を高めるために、Crを3%以上13%未満の範囲で含有し、α−γ変態成分系の組成を有し常温でα相である鋼板を母材として用いる。あるいは、更にNiを0.1%以上1%未満の範囲で含有させる鋼板を母材として用いる。
母材鋼板の表面に板内の{222}面集積度を高めるための芽となる{111}に配向した結晶粒を形成し、最終的には、その芽となるα粒の結晶方位を引き継ぐ形で板内にγ−α変態を進行させて、板全体の上記方位面の面集積度を高める。
Crを3%以上13%未満の範囲で含有した鋼板に、更にNiを添加する場合、0.1%未満では、加工性、耐食性に顕著な効果が得られないが、0.1%以上にすることにより、両特性ともに改善される。Niの添加量が1%を超えると加工性が劣るので、1%未満が好ましい。
基本的には、Crを3質量%以上13質量%未満で含有し、その他原料からあるいは精錬過程で不可避的に混入する不純物元素よりなるものであるが、所定の特性を得るためにCr以外の様々な元素を含有する公知のCr鋼やフェライト系ステンレス鋼を用いることができることは言うまでもない。
本発明では、上記のように鋼板表面にCrが単独で濃化した濃化部、あるいはCrとともにフェライト形成元素が濃化した濃化部(以下、これらの濃化部をCr濃化部という。)が形成されている。フェライト形成元素としては、Al、Ga、Mo、Nb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの内の少なくとも1種以上の元素を用いることができる。
このCr濃化部は鋼板の耐食性を高めるとともに、濃化部が形成された領域をα単相成分にして、本発明の鋼板の製造過程において、冷間圧延により形成された{222}集合組織を保存する作用をする。
Cr等が濃化した領域の少なくとも一部はα単相組織となる。フェライト形成元素は、フェライト領域を拡大する作用を有するので、Crの一部を上記のフェライト形成元素に置き換えることにより、拡散させるCrの量を低減することができる。
耐食性の観点からは、濃化部のCr量が13%でも効果があるが、より高い耐食性を得るためには18〜20%にするのが好ましい。
Al:0.6〜2%、Mo:0.5〜2.5%、Ga:0.9〜3.5%、Nb:0.4〜1%、Si:0.9〜4%、Sn:0.5〜1.8%、Ti:0.7〜2%、V:0.6〜2%、W:1.2〜6%、Zn:0.8〜4%
各元素の添加量の下限は、Cr濃度が10.5%のときにCr濃化部をα単相組織とするのに必要な量であり、上限は、含有しても加工性を劣化させない量である。
距離xが0.1μm未満であると、{222}面集積度を60%以上とすることが困難であり、50μmを超えるとCr量が増加するにもかかわらず、耐食性や加工性の向上に及ぼす効果が飽和する。より好ましくは40μm以下である。
なお、表面に皮膜の一部が残留する場合のCr濃化部の深さは、元の母材鋼板の表面を基準とする。
板面に対するαFe相の{222}面集積度が60%以上99%以下とする。
{222}面集積度が60%未満の場合には、加工性が十分でなく、例えば、後述の実施例で示すように、絞り比2の円筒深絞り成形した後の耳高さが1.5mm以下となるような成形性が得られない。
また、この集積度を99%超にするには、製造が困難でかつ加工性の向上が望めないため、99%をこの集積度の上限とする。
{222}面集積度=[{i(222)/I(222)}/{Σi(hkl)/I(hkl)}]×100 ・・・ (1)
ただし、記号は以下の通りである。
i(hkl):測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl):ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ :αFe結晶11面についての和
母材鋼板の厚みは、10μm以上、3mm以下とするのが好ましい。厚みが10μm未満であると、表層に{222}集合組織の芽を付与することが非常に困難になる。また、厚みが3mm超では{222}集合組織を鋼板内部まで十分に成長させられず、加工性のよい鋼板を得ることが困難となる。
(圧延条件)
本発明では、前述のように少なくとも表層部に板内の{222}面集積度を高めるための芽となる{111}に配向した結晶粒を有する母材鋼板を出発素材として用いる。
母材の上記方位面を高集積化する方法としては、鋳片から熱間圧延及び冷間圧延によって薄肉の板体に圧延する過程で、冷間圧延の圧下率を調整する方法を用いる。
上記圧延工程によって製造された母材鋼板の片面あるいは両面に、Cr単独あるいはCrとフェライト形成元素よりなる拡散元素を第二層として層状に付着させ、その元素が拡散して合金化した領域の少なくとも一部をα単相系の成分にして、冷間圧延によって形成された板内の{222}面集積度を高めるための配向の芽として保存できるようにする。
Cr以外の拡散元素として、上述のように、Al、Ga、Mo、Nb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1種のフェライト形成元素を単独であるいは組み合わせて使用できる。
Crに加えフェライト形成元素を付着させるには、それらの元素をCrと合金化して付着させることもできるが、付着させる元素をそれぞれ単独で層状に付着させるのが簡便であり好ましい。
Cr等の拡散元素を付着させた母材鋼板を、母材鋼板のA3点まで加熱して、拡散元素を、母材鋼板の表層部に形成された{222}集合組織の領域の一部または全体に拡散させ、母材に合金化させる。Cr等が合金化して濃化した領域ではγ変態しないα単相成分となりその状態が保存される、また、鋼板の温度上昇にしたがって、{111}粒が優先成長して{222}面集積度が増加する。
すでにCr等が濃化してα単相成分となっている領域はα相のままであるために、{111}結晶粒もそのまま保存され、その領域の中で{111}粒が優先成長して{222}面集積度が増加する。また、α単相成分でない領域はα相からγ相に変態する。
保持時間を長くすると、{111}結晶粒は粒の食い合いによって優先的に粒成長する。また、Crの拡散に伴い、Crが濃化した領域ではα単相成分となりγ相からα相に変態していく。その際、変態する領域に隣接する領域ではすでに{111}に配向したα粒となっており、γ相からα相に変態する際に、隣接するα粒の結晶方位を引き継ぐかたちで変態する。これにより、保持時間が長くなるとともに{222}面集積度が増加する。
昇温後の保持温度は、A3点以上1300℃以下とする。A3点以上でないと前述のように、冷却時のγ相からα相への変態を利用して{222}面集積度をさらに高める作用を利用することができない。1300℃を超える温度で加熱しても効果は飽和するばかりでなく、冷却後の製品鋼板の形状が悪くなるので好ましくない。
加熱保持時間は、保持温度に到達後直ちに冷却を開始してもよい(実質的には0.01秒以上保持)、600秒以下の時間で保持して冷却を開始してもよい。600秒を超えて保持しても効果が飽和する。
加熱後、母材鋼板をA3点未満の温度へ冷却する。この時、拡散元素が濃化していない内部の領域のγ相はα相へ変態する。この内部の領域は、A3点以上の温度域において既に{111}に配向したα粒となっている領域に隣接しており、γ相からα相に変態する際に、隣接するα粒の結晶方位を引き継いで変態する。このため、その領域でも{222}面集積度が増加する。この現象によって、濃化していない内部の領域でも高い{222}面集積度が得られるようになる。
なお、拡散処理後の冷却の際、冷却速度は0.1℃/sec以上500℃/sec以下が好ましい。この温度範囲で冷却すると、{222}配向の芽の成長がより進行する。
母材となる鋼板の材質は表1、2の組成で残部はFeであり、不可避的不純物を含んでいた。この母材は、真空溶解によってインゴットを溶製し、それを熱間圧延し、その後冷間圧延によって所定の厚みに加工したものである。
熱間圧延では1000℃に加熱した厚み230mmのインゴットを所定の厚みまで薄肉化した。この熱延板から機械加工によって各種厚みの板材を切り出した後に、各種冷延率による冷間圧延で母材を得た。その結果、得られた母材の厚みは0.1mmから1.5mmの範囲であった。
得られた母材冷延板について組織を観察したところ、表1、2の成分系ではいずれも常温での主相はα−Fe相であった。α−γ変態を起こすA3点は測定の結果、成分A〜Dでは表1に示す温度となった。成分E、成分FはA3点がなく、常温から高温までα単相であった。また、成分G〜JではA3点は表2に示す温度となった。成分KはA3点がなく、常温から高温までα単相であった。
板厚の異なる各母材に皮膜を形成した後に、表2の昇温速度、保持時間、冷却速度で加熱冷却する熱処理を施した。
発錆なし、即ち、皮膜残存率が100%の場合を◎、5%未満の発錆率(95%以上、100%未満の皮膜残存率)の場合を○、5%以上、30%未満の発錆率(70%以上、95%未満の皮膜残存率)を△、30%以上の発錆率(70%未満の皮膜残存率)を×とした。ここでは、皮膜残存率が100%の場合◎、5%未満の発錆率(95%以上、100%未満の皮膜残存率)の場合○を合格とした。
比較例1〜4は、CCTの結果が合格であったが、α{222}面集積度が60%未満で、成形性の指標の耳高さが1.5mmより高かったため、十分な加工性が得られなかった。
比較例5〜7は、CCTの結果が不合格であり、α{222}面集積度が60%未満で、成形性の指標の耳高さが1.5mmより高かったため、十分な加工性も得られなかった。
実施例1〜30及び実施例37〜40は、CCTの結果が合格であり、α{222}面集積度が60%以上で、成形性の指標の耳高さが1.5mm以下であったため、十分な加工性が得られた。実施例34〜36は、実施例31〜33よりもCr濃化層深さが大きくなって、40μmを超えていたが、成形性の指標の耳高さ及び耐食性において、特性が飽和していた。
Claims (8)
- Crを3質量%以上13質量%未満で含有するα−γ変態成分系の組成を有し、常温でα相である鋼板の表層に、Cr濃化部が鋼板表面から深さ0.1〜50μmの範囲にわたって形成されており、
前記Cr濃化部は、Cr濃度が13質量%以上であり、
鋼板面に対するαFe相の{222}面集積度が60%以上99%以下であることを特徴とするCr添加高耐食性鋼板。
ここで、{222}面集積度は、試料表面に対して平行なFeのα結晶11面{110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442}の積分強度を測定し、その測定値それぞれをランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{222}強度の比率を百分率で求めたものである。 - 前記鋼板が、更に、Niを0.1質量%以上1質量%未満で含有することを特徴とする請求項1に記載のCr添加高耐食性鋼板。
- Crを3質量%以上13質量%未満で含有するα−γ変態成分系の組成を有し、常温でα相である鋼板の表層に、Cr濃化部が鋼板表面から深さ0.1〜50μmの範囲にわたって形成されており、
前記Cr濃化部は、Cr濃度が10.5質量%以上かつ鋼板のCr濃度超であり、更にAl、Ga、Mo、Nb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1種以上のフェライト形成元素を含んでおり、
鋼板面に対するαFe相の{222}面集積度が60%以上99%以下であることを特徴とするCr添加高耐食性鋼板。 - 前記鋼板が、更に、Niを0.1質量%以上1質量%未満で含有することを特徴とする請求項3に記載のCr添加高耐食性鋼板。
- Crを3質量%以上13質量%未満で含有するα−γ変態成分系の組成よりなる鋼鋳片を熱間圧延し、圧下率50%〜95%の冷間圧延を行なって鋼板とし、該鋼板の片面あるいは両面にCr皮膜を形成した後、α−γ変態点温度以上1300℃以下の温度まで加熱して冷却する熱処理を施し、該熱処理の加熱過程でCrを鋼板内部に拡散させて、鋼板表層に前記Cr濃化部を形成するとともに、該熱処理によって鋼板面に対するαFe相の{222}面集積度を60%以上99%以下としたことを特徴とする請求項1に記載のCr添加高耐食性鋼板の製造方法。
- Crを3質量%以上13質量%未満、Niを0.1質量%以上1質量%未満で含有するα−γ変態成分系の組成よりなる鋼鋳片を熱間圧延し、圧下率50%〜95%の冷間圧延を行なって鋼板とし、該鋼板の片面あるいは両面にCr皮膜を形成した後、α−γ変態点温度以上1300℃以下の温度まで加熱して冷却する熱処理を施し、該熱処理の加熱過程でCrを鋼板内部に拡散させて、鋼板表層に前記Cr濃化部を形成するとともに、該熱処理によって鋼板面に対するαFe相の{222}面集積度を60%以上99%以下としたことを特徴とする請求項2に記載のCr添加高耐食性鋼板の製造方法。
- Crを3質量%以上13質量%未満で含有するα−γ変態成分系の組成よりなる鋼鋳片を熱間圧延し、圧下率50%〜95%の冷間圧延を行なって鋼板とし、該鋼板の片面あるいは両面にCrとAl、Ga、Mo、Nb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1元素以上のフェライト形成元素からなる皮膜を形成した後、α−γ変態点温度以上1300℃以下の温度まで加熱して冷却する熱処理を施し、該熱処理の加熱過程でCrと前記フェライト形成元素を鋼板内部に拡散させて、鋼板表層に前記Cr濃化部を形成するとともに、前記熱処理によって鋼板面に対するαFe相の{222}面集積度を60%以上99%以下としたことを特徴とする請求項3に記載のCr添加高耐食性鋼板の製造方法。
- Crを3質量%以上13質量%未満、Niを0.1質量%以上1質量%未満で含有するα−γ変態成分系の組成よりなる鋼鋳片を熱間圧延し、圧下率50%〜95%の冷間圧延を行なって鋼板とし、該鋼板の片面あるいは両面にCrとAl、Ga、Mo、Nb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1元素以上のフェライト形成元素からなる皮膜を形成した後、α−γ変態点温度以上1300℃以下の温度まで加熱して冷却する熱処理を施し、該熱処理の加熱過程でCrと前記フェライト形成元素を鋼板内部に拡散させて、鋼板表層に前記Cr濃化部を形成するとともに、前記熱処理によって鋼板面に対するαFe相の{222}面集積度を60%以上99%以下としたことを特徴とする請求項4に記載のCr添加高耐食性鋼板の製造方法。
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