以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔第一実施形態〕
まず、捲回装置によって得られる捲回素子としてのリチウムイオン電池素子の構成について説明する。
図1に示すように、リチウムイオン電池素子1(以下、単に「電池素子1」という)は、2枚のセパレータ2,3を介して、正電極シート4及び負電極シート5が重ね合わされた状態で捲回されることで製造される。尚、図1においては、説明の便宜上、セパレータ2,3及び電極シート4,5(以下、これらを総称する場合は「各種シート2〜5」という)の相互の間隔をあけて示している。
セパレータ2,3は、それぞれ同一の幅を有する帯状をなしており、異なる電極シート4,5同士が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止すべく、ポリプロピレン(PP)等の絶縁体により構成されている。
電極シート4,5は、薄板状の金属シートよりなり、セパレータ2,3と略同一の幅を有している。また、電極シート4,5の表裏両面には活物質が塗布されている。正電極シート4には例えばアルミニウム箔シートが用いられ、その表裏両面に正極活物質(例えば、マンガン酸リチウム粒子等)が塗布されている。負電極シート5には例えば銅箔シートが用いられ、その表裏両面に負極活物質(例えば、活性炭等)が塗布されている。そして、活物質を介して、正電極シート4及び負電極シート5間におけるイオン交換ができるようになっている。より詳しくは、充電時には、正電極シート4側から負電極シート5側へとイオンが移動し、放電時には、負電極シート5側から正電極シート4側へとイオンが移動する。
また、本実施形態における電池素子1は、図2に示すように、軸直交断面における外周形状が長円形状や楕円形状などの回転対称形状とされている。そして、電池素子1の外周面には、セパレータ2,3の終端部の巻止めを行うための固定用テープ6が貼付されている。尚、固定用テープ6には、電池素子1ごとに図示しない所定の通し番号が付されている。
また、正電極シート4の幅方向一端縁からは図示しない複数の正極リードが延出するとともに、負電極シート5の幅方向他端縁からは図示しない複数の負極リードが延出している。
リチウムイオン電池を得るに際しては、捲回された電池素子1が金属製で筒状をなす図示しない電池容器(ケース)内に配設されるとともに、前記正極リード及び負極リードがそれぞれまとめられる。そして、まとめられた正極リードを正極端子部品(図示せず)に接続するとともに、同じくまとめられた負極リードを負極端子部品(図示せず)に接続し、両端子部品が前記電気容器の両端開口に塞ぐように設けられることで、リチウムイオン電池を得ることができる。
次に、電池素子1を製造するための捲回装置10について説明する。図3に示すように、捲回装置10は、各種シート2〜5を捲回するための捲回部11と、正電極シート4を捲回部11へ供給するための正電極シート供給機構31と、負電極シート5を捲回部11へ供給するための負電極シート供給機構41と、セパレータ2,3をそれぞれ捲回部11へ供給するためのセパレータ供給機構51,61と、制御手段及び良否判定手段としての制御装置81とを備えている。尚、上記捲回部11や各供給機構31,41,51,61など、捲回装置10内の各種機構は、制御装置81により動作制御される構成となっている。
正電極シート供給機構31は、正電極シート4がロール状に捲回されてなる正電極シート原反32を備えている。正電極シート原反32は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、正電極シート4が引き出されることとなる。
尚、正電極シート原反32を構成する正電極シート4の厚さは、活物質の塗布厚みが異なる等の理由により、正電極シート原反32のロットごとに異なる場合がある。また、1の正電極原反シート32を構成する正電極シート4においても、各部位で厚みの異なることがある。これらの点は、負電極シート5においても同様である。
また、正電極シート供給機構31は、シート挿入機構71と、シート切断カッタ72と、テンション付与機構73と、第一繰出ローラ74と、バッファ機構75と、第二繰出ローラ76と、厚さ計測手段としての厚さ計測機構77とを備えている。
シート挿入機構71は、正電極シート4を捲回部11へ供給するものであり、正電極シート4の搬送経路に沿って、捲回部11に接近する接近位置と、捲回部11から離間する離間位置とに移動可能に構成されている。シート挿入機構71は、正電極シート4を把持可能な一対のチャック71a,71bを備えている。チャック71a,71bは、図示しない駆動手段により開閉動作可能に構成されている。そして、正電極シート4を捲回部11へ供給する際には、チャック71a,71bにより正電極シート4を把持した上で、シート挿入機構71が捲回部11に対して接近するようになっている。
シート切断カッタ72は、正電極シート4を切断するためのものであり、正電極シート4の表裏両側にそれぞれ位置する一対の刃部72a,72bを備えている。シート切断カッタ72は、その一対の刃部72a,72bが正電極シート4を挟むように位置するシート切断位置と、正電極シート4の搬送経路外へ退避する退避位置との間を移動可能に構成されている。
尚、正電極シート4の切断は、前記チャック71a,71bにより正電極シート4が把持された状態で行われるようになっている。また、捲回部11へと正電極シート4を供給すべく、シート挿入機構71が捲回部11側へ接近移動する際には、一対の刃部72a,72bがそれぞれ正電極シート4の搬送経路から離間することで、シート挿入機構71の移動を阻害しないようになっている。
テンション付与機構73は、一対のローラ73a,73bと、両ローラ73a,73b間において揺動自在に設けられたダンサローラ73cとを有している。ダンサローラ73cは、トルク制御された所定のサーボモータ(図示せず)により動作し、制御装置81により前記サーボモータが制御されることで、正電極シート4に付与される張力を変更可能に構成されている。また、ダンサローラ73cは、正電極シート4に張力を付与することで、正電極シート4の弛みを防止する役割も果たす。
第一繰出ローラ74は、図示しないモータに連結された上下一対のローラ74a,74bを有し、両ローラ74a,74bにより正電極シート4を挟持しつつ、捲回部11に向けて正電極シート4を繰り出すように構成されている。
バッファ機構75は、一対の従動ローラ75a,75bと、両ローラ75a,75b間において上下方向に変位可能に設けられた昇降ローラ75cとを有し、第一繰出ローラ74による正電極シート4の繰出量と、第二繰出ローラ76による正電極シート4の繰出量との差を吸収する役割を果たす。本実施形態では、バッファ機構75を設けることにより、シート切断カッタ72から厚さ計測機構77までの間において、電池素子1ひとつ分を構成する長さの正電極シート4が貯留可能となっている。
第二繰出ローラ76は、図示しないモータに連結された上下一対のローラ76a,76bを備えており、両ローラ76a,76bにより正電極シート4を挟持しつつ、バッファ機構75側に向けて正電極シート4を繰り出すように構成されている。尚、両繰出ローラ74,76の回転量、すなわち、正電極シート4の繰出量は、図示しないエンコーダにより把握可能となっており、当該エンコーダから前記回転量(繰出量)に関する情報が制御装置81へと入力されるようになっている。
厚さ計測機構77は、一対のローラ77a,77bと、第一測長ローラ77cと、第二測長ローラ77dとを備えている。第一測長ローラ77cの外周には、両ローラ77a,77b間に位置する正電極シート4が折り返して曲げられた状態で架けられている。第二測長ローラ77dは、第一測長ローラ77cとの間で正電極シート4の折り返し部分を挟み込むようにして配置されている。
また、両測長ローラ77c,77dは、互いに同径で、かつ、それぞれ自由回転可能な従動ローラであり、正電極シート4の搬送に伴い回転する。そして、両測長ローラ77c,77dの回転量は、図示しないエンコーダにより把握可能となっており、当該エンコーダから両測長ローラ77c,77dの回転量に関する情報が制御装置81へと入力されるようになっている。
尚、両測長ローラ77c,77d及び正電極シート4の位置関係が上述のように設定されているため、正電極シート4が両測長ローラ77c,77d間を通過しているときに、正電極シート4の内周面(屈曲内側面)に接触する第一測長ローラ77cの回転量と、正電極シート4の外周面(屈曲外側面)に接触する第二測長ローラ77dの回転量とに差が生じることとなる。この回転量の差は、正電極シート4が厚いほど大きく、正電極シート4が薄いほど小さくなる。
負電極シート供給機構41は、その最上流側において、負電極シート5がロール状に捲回されてなる負電極シート原反42を備えている。負電極シート原反42は、回転可能に支持されており、ここから適宜、負電極シート5が引き出されることとなる。
また、負電極シート原反42から捲回部11にかけての負電極シート5の搬送路の途中には、正電極シート4の搬送路と同様に、シート挿入機構71、シート切断カッタ72、テンション付与機構73、第一繰出ローラ74、バッファ機構75、第二繰出ローラ76及び厚さ計測機構77などが設けられている。これらの各種構成は、正電極シート4の搬送路に設けられたものと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
一方、セパレータ供給機構51,61は、それぞれセパレータ2,3がロール状に捲回されてなるセパレータ原反52,62を備えている。セパレータ原反52,62は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、セパレータ2,3が引き出されることとなる。
さらに、セパレータ2,3の搬送路の途中には、電極シート4,5の搬送路と同様に、テンション付与機構73が設けられている。当該テンション付与機構73の各種構成は、電極シート4,5の搬送路に設けられたものと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
尚、各供給機構31,41,51,61のテンション付与機構73は、各種シート2〜5に付与する張力を変更可能に構成されているが、本実施形態では、テンション付与機構73によって、各種シート2〜5に対し常に一定の張力が付与されるようになっている。
また、各種シート2〜5の供給経路の途中には、各種シート2〜5をひとまとめにする一対のガイドローラ78a,78bなど、各種シート2〜5を案内するための各種ガイドローラ(符号略)が設けられている。
制御装置81は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAM、演算データ等を長期記憶するハードディスクなどを備えており、上述の通り、上記捲回部11や各供給機構31,41,51,61の動作を制御する。制御装置81によって、例えば、両繰出ローラ74,76による両電極シート4,5の繰出し開始・繰出し停止や、捲回部11に対する電極シート4,5の供給タイミングなどが制御される。
また、制御装置81は、両繰出ローラ74,76の回転量に基づき、両電極シート4,5の繰出量を把握できるようになっている。
さらに、制御装置81には、両測長ローラ77c,77cにおける回転量の差と電極シート4,5の厚さとの対応関係を示すテーブルが予め記憶されている。そして、制御装置81は、両測長ローラ77c,77dの回転量に関する情報が入力された場合、前記テーブルを参酌することで、両測長ローラ77c,77d間を通過している電極シート4,5の厚さを得ることができるようになっている。
加えて、制御装置81は、電池素子1の捲回前に、当該電池素子1を構成する両電極シート4,5の巻取量LA,LBを電池素子1ごとに決定する。詳述すると、電極シート4,5の繰出し開始から、両測長ローラ77c,77d間を通過する電極シート4,5の厚さを計測し始めるとともに、当該厚さの積算値の合計値ST(mm)を求めていく。尚、本実施形態では、負電極シート5の方が正電極シート4よりも早く繰出し開始されるようになっている。
そして、合計値STが予め設定された所定の第一閾値S1(mm)以上となったときに、繰出し開始時からの正電極シート4の繰出量を特定するとともに、この繰出量を次回捲回される正電極シート4の巻取量LA(mm)として決定する。
さらに、正電極シート4の繰出しを停止する一方、負電極シート5の繰出しを継続して負電極シート5の厚さを計測し続け、合計値STが所定の第二閾値S2(mm)以上となったときに、繰出し開始時からの負電極シート5の繰出量を特定するとともに、この繰出量を次回捲回される負電極シート5の巻取量LB(mm)として決定する。本実施形態では、正電極シート4を負電極シート5で確実に覆うべく、負電極シート5の方が正電極シート4よりも繰出し開始タイミングが早く、繰出し停止タイミングが遅くされており、巻取量LBが巻取量LAよりも大きなものとなるように構成されている。
また、決定された両電極シート4,5の巻取量LA,LBは、図4に示すように、電池素子1を特定するための通し番号n−1,n,n+1・・・(nは所定の整数)とともに制御装置81のハードディスクに記憶される。
尚、上述した巻取量LA,LBの算出手法は、次の考え方に基づく。すなわち、両電極シート4,5の厚さの積算値の合計値STは、電池素子1の断面において各電極シート4,5が占める部分の面積に相当する。ここで、例えば、正電極シート4の厚さの基準値を0.15mmとし、公差(許容値)を±0.004mmとし、負電極シート5の厚さの基準値を0.10mmとし、公差(許容値)を±0.004mmとし、正電極シート4の巻取量の基準値を13000mmとし、負電極シート5の巻取量の基準値を(13000+s)mmとしたとき、両電極シート4,5の厚さ等が基準値と同一であれば、電池素子1の断面において各電極シート4,5の占める部分の面積は、およそ(3250+0.1s)mm2〔=0.15×13000+0.10×(13000+s)〕となる。この断面積は、いわば理想値である。尚、前記値s(mm)は、正数であり、負電極シート5で正電極シート4を覆うべく、前記値sの分だけ、負電極シート5が正電極シート4よりも長くされている。
そして、電極シート4,5の厚さにバラツキが存在する場合であっても、各電池素子1の断面において各電極シート4,5の占める部分の面積が前記断面積と等しいものになるのであれば、各電池素子1における外形寸法はほぼ一定のものとなる。この点を考慮して、本実施形態では、第二閾値S2を前記断面積と等しい値とし、第一閾値S1を前記断面積よりも若干小さな値(例えば、第二閾値S2から、負電極シート5の厚さの基準値に前記値sに基づく値を乗算したものを減じた値)とした上で、前記合計値STが第一閾値S1に到達したときにおける、繰出し開始時からの正電極シート4の繰出量を正電極シート4の巻取量LAとして決定している。また、前記合計値STが第二閾値S2に到達したときにおける、繰出し開始時からの負電極シート5の繰出量を負電極シート5の巻取量LBとして決定している。
例えば、正電極シート4の全域の厚さが0.154mmであり、負電極シート5の全域の厚さが0.104mmであり、負電極シート5がs/2だけ繰出された後に正電極シート4の繰出しが開始されることとする。また、例えば、前記値sが500mmとされた場合、前記断面積は3300mm2となるため、例えば、第二閾値S2は3300mmに設定され、第一閾値S1は3275〔=3300−(0.100×s/2)〕mmに設定されることとなる。この場合、繰出し開始時からの正電極シート4の繰出量をLX(mm)とし、繰出し開始時からの負電極シート5の繰出量をLY(mm)とすると、合計値STは、0.154×LX+0.104×LYとなる。ここで、繰出量LX,LYは、捲回時における内外周差の影響により異なる増加態様を取り得るが、仮に両者の増加態様が同一であるとすると、LY=LX+s/2となり、合計値STは、26+0.258×LX〔=0.154×LX+0.104×(LX+500/2)〕となる。そして、両電極シート4,5が繰出され、繰出量LXが約12594mmとなったときに、合計値STが第一閾値S1以上となる。そのため、次回捲回される正電極シート4の巻取量LAは約12594mmに決定される。その後、正電極シート4の繰出しが停止される一方、負電極シート5の繰出しが継続され、合計値STは、0.154×12594+0.104×LYとなる。そして、繰出量LYが約13079mmとなったときに、合計値STが第二閾値S2以上となる。そのため、次回捲回される負電極シート5の巻取量LBは約13079mmに決定される。
また、制御装置81は、決定した巻取量LAに基づき、各種シート2〜5を捲回する際における捲回部11に設けられた巻芯13,14の回転数R(より詳しくは、巻取開始からセパレータ2,3の切断が行われるまでの巻芯13,14の回転数R)を決定する。回転数Rは、RAMに予め記憶された巻取量LAと回転数Rとの対応関係を示す回転数決定用テーブル(図5参照)を参酌して決定される。例えば、巻取量LAが、予め設定された値X0以上値X1未満である場合には、回転数Rとして、予め設定された最小回転数R0に0.5を加算したものが設定される。さらに、決定された回転数Rは、電池素子1を特定するための通し番号n−1,n,n+1・・・とともにハードディスクに記憶される。
尚、回転数決定用テーブルにおいて、回転数Rは、巻取量LAが大きいほど大きなものが設定されており、巻取量LAの変化に対応して半回転単位で異なるものとされている。また、回転数決定用テーブルにおいて設定されている各回転数Rは、電極シート4,5を対応する巻取量LA,LBだけ巻き取った後に、セパレータ2,3をさらに所定量だけ巻き取れる程度の数に設定されている。本実施形態では、巻取量LAや回転数Rが大きいほど、一素子分のセパレータ2,3の巻取量が大きなものとなる。つまり、電極シート4,5の厚さに基づいて、一素子分のセパレータ2,3の巻取量は変動することとなる。
さらに、制御装置81は、決定された巻取量LA,LBに基づき、実際に各種シート2〜5を捲回する前に、将来的に得られる電池素子1の良否を予め判定する。本実施形態では、巻取量LAが予め設定された所定の正常範囲から外れていること、及び、巻取量LBが予め設定された所定の正常範囲から外れていることの少なくとも一方を満たす場合、電池素子1を不良と判定する。そして、電池素子1を特定するための前記通し番号とともに、判定結果をハードディスクに記憶する(図4参照)。
次に、捲回部11の構成について説明する。図6に示すように、捲回部11は、図示しない駆動機構により回転可能に設けられた相対向する2枚の円盤状のテーブルからなるターレット12と、当該ターレット12の回転方向に180°間隔で設けられた2つの巻芯13,14と、当該巻芯13,14に対しそれぞれターレット12の回転方向にほぼ90°ずつずれた位置に設けられた2つの支持ローラ15a,15bと、セパレータ切断手段としてのセパレータカッタ16と、捲回後の各種シート2〜5がばらけるのを押さえるための押えローラ17と、前記固定用テープ6を貼付するためのテープ貼付機構18とを備えている。
巻芯13,14は、それぞれ自身の外周側において各種シート2〜5を巻取るためのものであり、図示しない駆動機構により自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。巻芯13,14の回転量は、図示しないエンコーダにより把握可能となっており、当該エンコーダから回転量に関する情報が制御装置81へと入力されるようになっている。
また、巻芯13,14は、ターレット12の軸線方向(図6等の紙面奥行方向)に沿って、ターレット12を構成する一方のテーブルに対し出没可能に設けられている。尚、巻芯13,14は、前記一方のテーブルから突出した状態となったときに、その先端部が他方のテーブルに形成された受け用の穴に挿通され、両テーブルによって回転可能な状態で支持されるようになっている。
加えて、巻芯13,14は、それぞれ回転軸の直交方向における断面形状が長方体状となる扁平状に構成されている。つまり、本実施形態における巻芯13,14は、少なくとも外周面が前記回転軸を対称軸とする回転対称形状をなすものとされている。
さらに、巻芯13(14)は、それぞれ自身の軸線方向(図6の紙面奥行方向)に沿って延びる一対の芯片13a,13b(14a,14b)を備えており、芯片13a,13b(14a,14b)間には隙間が形成されている。
巻芯13,14は、ターレット12が回転することにより、捲回ポジションP1と、取外しポジションP2との間を旋回移動可能に構成されている。
捲回ポジションP1は、巻芯13,14に対し各種シート2〜5を捲回するポジションであり、当該捲回ポジションP1に対し上記各供給機構31,41,51,61からそれぞれ各種シート2〜5が供給されることとなる。
取外しポジションP2は、捲回後の各種シート2〜5、すなわち電池素子1の取外しを行うためのポジションである。取外しポジションP2の周辺部には、巻芯13,14から電池素子1の取外しを行うための取外装置(不図示)等が設けられている。
支持ローラ15a,15bは、取外しポジションP2へ移動した巻芯13,14と上記供給機構31,41,51,61との間で各種シート2〜5を引っ掛け、支持するためのものである。
セパレータカッタ16は、捲回ポジションP1の近傍に配置されており、ターレット12に接近しセパレータ2,3を切断する切断位置と、ターレット12から離間し巻芯13,14の移動を妨げない退避位置との間で移動可能である。
押えローラ17は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、ターレット12に接近し各種シート2〜5を押さえる近接位置と、ターレット12から離間し巻芯13,14の移動を妨げない退避位置との間で移動可能に構成されている。
テープ貼付機構18は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、捲回終了時に、ターレット12に接近し、セパレータ2,3の終端部に前記固定用テープ6を貼付する機能を備えている。尚、固定用テープ6には、その貼付対象となる電池素子1の通し番号が印刷等により予め付されている。
次に、上述の捲回装置10を用いた電池素子1の製造工程について説明する。電池素子1の製造工程は、次回捲回される予定の一素子分の電極シート4,5(捲回予定電極シートに相当する)の巻取量LA,LBが決定される工程(巻取量決定工程)、及び、一素子分の電極シート4,5が捲回される工程(捲回工程)を含む。尚、これら両工程は、同時期に実施されるが、本実施形態では、説明の便宜上、これら両工程を分けて説明する。
まず、巻取量決定工程について、図7〜11のフローチャートに従って説明する。尚、巻取量決定工程の直前において、両電極シート4,5はシート挿入機構71によって把持されるとともに、セパレータ2,3は電極シート4,5の供給対象である一方の巻芯13(14)に対し所定量巻き取られた状態となっている(図14参照)。図14〜16においては、次回捲回される予定の一素子分の電極シート4,5に対応する部分を太線にて示す。
図7に示すように、巻取量決定工程では、まず、ステップS11において、負電極シート供給機構41のシート挿入機構71により巻芯13(14)側に対し負電極シート5が供給される。具体的には、負電極シート5を把持するシート挿入機構71が捲回部11側に接近し、セパレータ2,3間に負電極シート5が挿入されることで、負電極シート5が供給される。尚、挿入後、シート挿入機構71による負電極シート5の把持が解除されるとともに、シート挿入機構71が元の位置に戻る。
負電極シート5の供給に伴い、負電極シート5が両測長ローラ77c,77d間を動き始めることとなり、ステップS12において、厚さ計測機構77による負電極シート5の厚さ計測が開始される。すなわち、厚さ計測工程が開始される。
次いで、ステップS13において、負電極シート5の供給後、一方の巻芯13(14)が所定数回転(例えば、1回転)した段階で、シート挿入機構71により一方の巻芯13(14)側に対し、正電極シート4が供給される。具体的には、正電極シート4を把持するシート挿入機構71が捲回部11側に接近し、セパレータ2,3間に正電極シート4が挿入されることで、正電極シート4が供給される。尚、挿入後、シート挿入機構71による正電極シート4の把持が解除されるとともに、シート挿入機構71が元の位置に戻る。
正電極シート4の供給に伴い、正電極シート4が両測長ローラ77c,77d間を動き始めることとなり、ステップS14にて、厚さ計測機構77による正電極シート4の厚さ計測が開始される。
そして、両電極シート4,5が供給されると、一方の巻芯13(14)及び両繰出ローラ74,76により各種シート2〜5が順次繰出されていく(図15参照)。これにより、電極シート4,5がそれぞれ両測長ローラ77c,77d間を通過していき、電極シート4,5の厚さが連続的に計測されていくとともに、電極シート4,5の厚さの積算値の合計値STが徐々に増加していく。
続くステップS15では、第一停止フラグがオンであるか否かが判定される。第一停止フラグは、正電極シート4を繰出す第一繰出ローラ74が停止しているか否かを判定するための状態識別情報である。第一停止フラグがオンであり、第一繰出ローラ74による正電極シート4の繰出しが既に停止されている場合(ステップS15:YES)には、ステップS18へ移行する。一方、第一停止フラグがオフであれば(ステップS15:NO)、ステップS16の処理を実行する。
ステップS16においては、第一繰出ローラ74による正電極シート4の繰出量が所定量XA(mm)と等しいか否かを判定することにより、一方の巻芯13(14)側に対し正電極シート4が所定量XAだけ繰出されたか否かがチェックされる。所定量XAは、現在捲回されている一素子分の正電極シート4の終端部と次回捲回される一素子分の正電極シート4の始端部との区切りとなる位置がシート切断カッタ72(刃部72a,72b)に対し位置決めされることとなる、繰出し(供給)開始時からの正電極シート4の繰出し量である。所定量XAは、例えば、現在捲回中の一素子分の正電極シート4の巻取量LA(この巻取量LAは前回の巻取量決定工程において予め決定されている)から、一方の巻芯13(14)及びシート切断カッタ72間における正電極シート4の搬送経路の長さを減じた値に設定される。
正電極シート4が所定量XAだけ繰出されている場合(ステップS16:YES)には、ステップS17に移行し、第一停止処理を実行する。
第一停止処理では、図8に示すように、まず、ステップS31において、一方の巻芯13(14)側に対する正電極シート4のこれ以上の繰出しを停止すべく、一方の巻芯13(14)の回転が一時停止されるとともに、第一繰出ローラ74による巻芯13(14)側への正電極シート4の繰出しが停止される。一方、第二繰出ローラ76は、現在の動作状態がそのまま維持される。この状態では、次回捲回される一素子分の正電極シート4の始端部は、シート切断カッタ72に対し位置決めされた状態となる。そして、繰出しが停止されると、シート挿入機構71により正電極シート4が把持された上で、シート切断カッタ72により正電極シート4が切断される。
次いで、ステップS32において、第一停止フラグがオンとされる。その後、ステップS33において、巻芯13(14)による捲回が再開され、第一停止処理が終了される。
図7に戻り、ステップS15にて肯定判定された場合、ステップS16にて否定判定された場合、又は、ステップS17の後には、ステップS18において、第二停止フラグがオンであるか否かが判定される。第二停止フラグは、負電極シート5を繰出す第一繰出ローラ74が停止しているか否かを判定するための状態識別情報である。第二停止フラグがオンであり、第一繰出ローラ74による負電極シート5の繰出しが既に停止されている場合(ステップS18:YES)には、ステップS21へ移行する。一方、第二停止フラグがオフであれば(ステップS18:NO)、ステップS19の処理を実行する。
ステップS19においては、第一繰出ローラ74による負電極シート5の繰出量が所定量XB(mm)と等しいか否かを判定することにより、一方の巻芯13(14)に対し負電極シート5が所定量XBだけ繰出されたか否かがチェックされる。所定量XBは、現在捲回されている一素子分の負電極シート5の終端部と次回捲回される一素子分の負電極シート5の始端部との区切りとなる位置がシート切断カッタ72(刃部72a,72b)に対し位置決めされることとなる、繰出し開始からの負電極シート5の繰出し量である。所定量XBは、現在捲回中の一素子分の負電極シート5の巻取量LB(この巻取量LBは前回の巻取量決定工程において予め決定されている)から、一方の巻芯13(14)及びシート切断カッタ72間における負電極シート5の搬送経路の長さを減じた値に設定される。
負電極シート5が所定量XBだけ繰出されている場合(ステップS19:YES)には、ステップS20に移行し、第二停止処理を実行する。
第二停止処理では、図9に示すように、ステップS41において、一方の巻芯13(14)側に対する負電極シート5のこれ以上の繰出しを停止すべく、一方の巻芯13(14)の回転が一時停止されるとともに、第一繰出ローラ74による巻芯13(14)側への負電極シート5の繰出しが停止される。一方、第二繰出ローラ76は、現在の動作状態がそのまま維持される。この状態では、次回捲回される一素子分の負電極シート5の始端部は、シート切断カッタ72に対し位置決めされた状態となる。そして、繰出しが停止されると、シート挿入機構71により負電極シート5が把持された上で、シート切断カッタ72により負電極シート5が切断される。
次いで、ステップS42において、第二停止フラグがオフとされる。その後、ステップS43において、巻芯13(14)による捲回が再開され、第二停止処理が終了される。
図7に戻り、ステップS18にて肯定判定された場合、ステップS19にて否定判定された場合、又は、ステップS20の後には、ステップS21にて、第一決定フラグがオンであるか否かがチェックされる。第一決定フラグは、次回捲回される一素子分の正電極シート4の巻取量LAが決定されているか否かを示すための状態識別情報である。
ステップS21にて否定判定された場合、つまり、巻取量LAが未決定である場合には、ステップS22に移行し、合計値STが第一閾値S1に到達しているか否かがチェックされる。合計値STが第一閾値S1未満である場合(ステップS22:NO)には、ステップS15へと戻る。一方、合計値STが第一閾値S1に到達している場合(ステップS22:YES)には、ステップS23に移行し、LA決定処理が実行された上で、ステップS15に戻る。
LA決定処理では、図10に示すように、まず、ステップS51において、繰出し開始時からの第二繰出ローラ76による正電極シート4の繰出量が、巻取量LAとして決定される。また、決定された巻取量LAが、次回の捲回で得られることとなる電池素子1の通し番号とともに、制御装置81のハードディスクに記憶される。さらに、前記回転数決定用テーブルを参酌して、巻取量LAに対応する回転数Rが決定されるとともに、当該回転数Rもハードディスクへと記憶される。
続くステップS52では、第二繰出ローラ76による正電極シート4の繰出しが停止される。一方、第一繰出ローラ74は、現在の動作状態がそのまま維持される。そして、続くステップS53において、第一決定フラグがオンとされ、LA決定処理が終了される。尚、第一停止フラグ及び第一決定フラグのそれぞれがオンである場合、シート切断カッタ72及び第二繰出ローラ76間には、次回捲回される一素子分の正電極シート4が停止状態で存在していることになる(図16参照)。
図7に戻り、第一決定フラグがオンである場合、つまり、合計値STが第一閾値S1に到達した状態になると、負電極シート5の捲回がさらに進むことで、合計値STが第一閾値S1よりも大きな第二閾値S2へと到達可能になる。この点を踏まえ、第一決定フラグがオンである場合(ステップS21:YES)になって初めて、ステップS24において、第二決定フラグがオンであるか否かが判定される。第二決定フラグは、合計値STが第二閾値S2に到達したときにオンに設定されるものであり、次回捲回される一素子分の負電極シート5の巻取量LBが決定されているか否かを示すための状態識別情報である。
ステップS24にて肯定判定された場合には、ステップS27へ移行する。一方、ステップS24にて否定判定された場合、つまり、巻取量LBが未決定である場合には、ステップS25に移行し、合計値STが第二閾値S2に到達しているか否かがチェックされる。合計値STが第二閾値S2未満である場合(ステップS25:NO)には、ステップS15へと戻る。一方、合計値STが第二閾値S2に到達している場合(ステップS25:YES)には、ステップS26に移行し、LB決定処理が実行された上で、ステップS27へと移行する。
LB決定処理では、図11に示すように、まず、ステップS61において、繰出し開始時からの第二繰出ローラ76による負電極シート5の繰出し量が、巻取量LBとして決定される。また、決定された巻取量LBが、次回の捲回で得られることとなる電池素子1の通し番号とともに、制御装置81のハードディスクに記憶される。
さらに続くステップS62において、第二繰出ローラ76による負電極シート5の繰出しが停止される。第二繰出ローラ76による両電極シート4,5の繰出しが停止された時点で、厚さ計測工程は終了する。一方、第一繰出ローラ74は、現在の動作状態がそのまま維持される。そして、続くステップS63において、第二決定フラグがオンとされ、LB決定処理が終了される。第二停止フラグ及び第二決定フラグのそれぞれがオンである場合、シート切断カッタ72及び第二繰出ローラ76間には、次回捲回される一素子分の負電極シート5が停止状態で存在していることになる(図16参照)。
図7に戻り、ステップS24で肯定判定された場合、又は、ステップS26の後、ステップS27において、各フラグ(第一停止フラグ、第一決定フラグ、第二停止フラグ及び第二決定フラグ)がオンであるか否かが判定される。すなわち、巻取量LA,LBが既に決定されるとともに、各電極シート供給機構31,41において、シート切断カッタ72及び第二繰出ローラ76間に、次回捲回される一素子分の電極シート4,5が停止状態で存在しているか否かが判定される。ステップS27にて否定判定された場合には、ステップS15へと戻る。
一方、ステップS27にて肯定判定された場合には、各フラグがオフに戻されるとともに、合計値STが初期値とされる処理、及び、ステップS28の状態判定処理が行われた上で、巻取量決定工程が終了される。
ステップS28においては、決定された巻取量LA,LBに基づき、次回捲回されて得られることとなる電池素子1の良否が前もって判定される。そして、電池素子1の良否判定結果が、当該電池素子1の通し番号とともにハードディスクに記憶される。
次いで、捲回工程について、図12及び図13のフローチャートを参照して説明する。
尚、上述の通り、電極シート4,5の捲回に先立って、電極シート4,5が捲回されることとなる一方の巻芯13(14)の外周にはセパレータ2,3が所定量だけ巻き取られている(図14参照)。また、セパレータ2,3の巻取開始時における一方の巻芯13(14)の向き(角度)は常に一定となるように構成されており、本実施形態では、芯片13a,13b(14a,14b)間に形成された隙間の貫通方向が、支持ローラ15a(15b)及びガイドローラ78a,78b間に架け渡された各種シート2〜5の長手方向と平行となるように、巻取開始時における一方の巻芯13(14)の向きが設定されている。さらに、一方の巻芯13(14)に対するセパレータ2,3の捲回が開始された時点から、制御装置81により、巻芯13,14の回転量を検出するための前記エンコーダを通じて一方の巻芯13(14)の回転数の検出が開始されている。
捲回工程では、図12に示すように、まず、ステップS71において、一方の巻芯13(14)に対する負電極シート5の供給が開始される。尚、供給時におけるシート挿入機構71の移動タイミングに合わせて、繰出ローラ74,76による負電極シート5の繰出しが開始される。
次に、ステップS72において、負電極シート5の挿入後、巻芯13(14)が所定回数(例えば、1回転)した段階で、一方の巻芯13(14)に対する正電極シート4の供給が開始される。尚、供給時におけるシート挿入機構71の移動タイミングに合わせて、繰出ローラ74,76による正電極シート4の繰出しが開始される。
そして、巻芯13(14)の回転に伴い、一方の巻芯13(14)に対し各種シート2〜5が捲回されていく。
続くステップS73では、第一捲回フラグがオンであるか否かが判定される。第一捲回フラグは、正電極シート4が所定量XAだけ捲回されたか否かを判定するための状態識別情報である。尚、当該第一捲回フラグは、第一停止フラグと兼用可能である。ステップS73で肯定判定された場合には、ステップS78に移行する。
一方、ステップS73で否定判定された場合には、ステップS74において、一方の巻芯13(14)に対し、正電極シート4が所定量XAだけ捲回されたか否かが判定される。
ステップS74にて肯定判定された場合、すなわち、現在捲回されている一素子分の正電極シート4の終端部がシート切断カッタ72に到達した場合、ステップS75において、一方の巻芯13(14)の回転動作が一時停止されるとともに、第一繰出ローラ74による正電極シート4の供給が停止される。
さらに、続くステップS76において、シート挿入機構71により正電極シート4が把持された上で、シート切断カッタ72により正電極シート4が切断される。
続くステップS77では、一方の巻芯13(14)の捲回動作が再開されるとともに、第一捲回フラグがオンとされる。
ステップS73にて肯定判定された場合、ステップS74にて否定判定された場合、又は、ステップS77の後、ステップS78において、第二捲回フラグがオンであるか否かが判定される。第二捲回フラグは、負電極シート5が所定量XBだけ捲回されたか否かを判定するための状態識別情報である。尚、当該第二捲回フラグは、第二停止フラグと兼用可能である。ステップS78で肯定判定された場合には、ステップS83に移行する。
一方、ステップS78で否定判定された場合には、ステップS79において、一方の巻芯13(14)に対し、負電極シート5が所定量XBだけ捲回されたか否かが判定される。
ステップS79にて肯定判定された場合、すなわち、現在捲回されている一素子分の負電極シート5の終端部がシート切断カッタ72に到達した場合には、ステップS80において、一方の巻芯13(14)の回転動作が一時停止されるとともに、第一繰出ローラ74による負電極シート5の供給が停止される。さらに、ステップS81において、シート挿入機構71により負電極シート5が把持された上で、シート切断カッタ72により負電極シート5が切断される。
続くステップS82では、一方の巻芯13(14)の回転動作が再開されるとともに、第二捲回フラグがオンとされる。
ステップS78にて肯定判定された場合、又は、ステップS82の後には、ステップS83において、両捲回フラグがそれぞれオンであるか否かが判定される。つまり、一方の巻芯13(14)に対し、正電極シート4が所定量XA捲回され、負電極シート5が所定量XB捲回されたか否かが判定される。ステップS83にて否定判定された場合には、ステップS73へと戻る。
一方、ステップS83にて肯定判定された場合には、ステップS84にて、一方の巻芯13(14)の回転を再開させることにより、電極シート4,5の終端部分(巻き残し部分)が巻き取られる。尚、このときの巻芯13(14)の回転数は、正電極シート4の終端部分(巻き残し部分)が最大長さ(巻取量LAから所定量XAを減算した値)であったり、負電極シート5の終端部分(巻き残し部分)が最大長さ(巻取量LBから所定量XBを減算した値)であったりしても、電極シート4,5の終端部分を完全に巻き取れるような一定の値が設定されている。
ステップS84に続いて、ステップS85において、セパレータ2,3が切断されることなく、ターレット12が回転させられる。これにより、捲回ポジションP1にあった一方の巻芯13(14)がセパレータ供給機構51,61からセパレータ2,3を引き出しつつ、取外しポジションP2側へと移動していく。一方、取外しポジションP2にあった他方の巻芯14(13)が、ターレット12の一方のテーブルに没した状態で、捲回ポジションP1側へと移動していく。
続いて、ステップS86において、ターレット12の回転に併せて、各種シート2〜5の捲回されている一方の巻芯13(14)が自身の中心軸を回転軸として回転させられる。
そして、次のステップS87において、巻終わり処理を実行することで、捲回工程が終了される。
巻終わり処理では、図13に示すように、ステップS91において、一方の巻芯13(14)の回転数が、現在捲回中の一素子分の電極シート4,5に対応して決定された回転数Rに到達したか否かが判定される。ステップS91の処理は、肯定判定されるまで繰り返し行われる。
ステップS91にて肯定判定された場合には、ステップS92において、一方の巻芯13(14)の回転が停止される。尚、一方の巻芯13(14)の回転が停止する前、停止と同時、又は、停止した後に、ターレット12の回転が停止されることとなる。
一方の巻芯13(14)及びターレット12の回転が停止されると、捲回ポジションP1にあった一方の巻芯13(14)が取外しポジションP2に位置し、取外しポジションP2にあった他方の巻芯14(13)が捲回ポジションP1に位置した状態となる。また、一方の巻芯13(14)の回転数Rは半回転単位で変動するように設定されているため、断面長方形状である一方の巻芯13(14)は、常に同じ向き(角度)で停止する。
さらに、このときには、一方の巻芯13(14)とガイドローラ78a,78b間において、セパレータ2,3が一方の支持ローラ15b(15a)に架けられた状態となっている。この状態で、ステップS93において、押えローラ17を一方の巻芯13(14)に接近させ、押えローラ17により各種シート2〜5を押えた上で、セパレータカッタ16がセパレータ2,3に接近することにより、セパレータ2,3が切断される(図17参照)。
本実施形態では、一方の巻芯13(14)は常に同じ角度(向き)で停止し、さらに、セパレータ2,3は、これを支持する支持ローラ15a(15b)とガイドローラ78a,78bとの間において常に一定の位置で切断される。そのため、セパレータ2,3の切断後におけるセパレータ2,3の終端部分(巻き残し部分)の長さは常に一定となる。
尚、セパレータ2,3の切断に先立って、他方の巻芯14(13)がターレット12の一方のテーブルから突出することで、他方の巻芯14(13)の芯片14a,14b(13a,13b)間にセパレータ2,3が挿通される。さらに、他方の巻芯14(13)が所定量だけ回転することで、他方の巻芯14(13)の外周にセパレータ2,3が所定量だけ巻き付けられる。次回の捲回工程では、このセパレータ2,3が巻き付けられた他方の巻芯14(13)へと電極シート4,5が供給されることとなる。
続くステップS94では、押えローラ17により各種シート2〜5を押えた状態のまま、一方の巻芯13(14)を回転させる。これにより、セパレータ2,3及び電極シート4,5の終端部分がばらけることなく完全に巻取られる。尚、セパレータ2,3の巻き残し部分の長さは一定であるため、巻取後におけるセパレータ2,3の終端部の位置は、電池素子1の周方向において常にほぼ一定となる。
次にステップS95において、テープ貼付機構18により、セパレータ2,3の終端部が固定用テープ6により巻止めされ、巻終わり処理が終了される。セパレータ2,3の終端部の位置がほぼ一定となるため、得られた電池素子1において、その周方向に沿った固定用テープ6の位置は常にほぼ一定となる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、電極シート4,5の実際の厚さに基づき電極シート4,5等の巻取量が制御される。そのため、電極シート4,5の厚さにバラツキがある場合であっても、得られる電池素子1の外形寸法をより確実に正常範囲に収めることができる。
また、巻取量を制御することにより電池素子1の外形寸法が調整されるため、捲回時に各種シート2〜5に加わるダメージを軽減させることができる。その結果、得られた電池素子1における品質の低下をより確実に抑制することができる。
さらに、厚さ計測機構77により、捲回される前の電極シート4,5の厚さが計測される。従って、電極シート4,5の厚さをより正確に計測することができ、ひいてはより適切な巻取量を設定することができる。その結果、電池素子1の外形寸法を一層確実に正常範囲に収めることができる。
また、本実施形態では、捲回前の一素子分の電極シート4,5(捲回予定電極シート)全域における厚さが予め計測されるとともに、捲回予定電極シートの捲回時には、予め計測されたその厚さに基づき、電極シート4,5等の巻取数が制御される。従って、巻取数を捲回される電極シート4,5の厚さに合わせた最適なものとすることができ、電池素子1の外形寸法をより一層確実に正常範囲に収めることができる。
さらに、厚さ計測機構77により計測された電極シート4,5の厚さに基づき、電池素子1の良否が判定される。従って、得られる電池素子1の外形寸法に違いがほとんどなくても、得られた各電池素子1において品質に問題があるか否かをより正確に判定することができる。
加えて、巻取開始時からセパレータ2,5の切断までの巻芯13,14の回転数Rが半回転単位で調節されること等により、停止時(セパレータ2,3の切断時)における巻芯13,14の向きを一定とすることができる。これにより、各電池素子1においてその周方向に沿った固定用テープ6の位置を揃えることができ、ひいては固定用テープ6の位置にずれが生じることに伴う不具合をより確実に防止することができる。
また、巻取量LA,LBや良否判定結果に関するデータと、固定用テープ6に付された通し番号とを照合することで、各電池素子1における電極シート4,5の長さや良否を容易に把握することができる。
〔第2実施形態〕
次いで、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。
上記第1実施形態では、電極シート4,5の厚さに応じて一素子分の電極シート4,5の巻取量LA,LBなどを調節することで、電池素子1の外形寸法がほぼ一定となるように構成されている。これに対し、本第2実施形態では、電極シート4,5の厚さに応じて捲回時に電極シート4,5等に加える張力を調節することで、電池素子1の外形寸法がほぼ一定となるように構成されている。
詳述すると、本第2実施形態において、制御装置81は、捲回部11に対する電極シート4,5の供給開始から、電極シート4,5の厚さを計測し始めるとともに、両電極シート4,5の厚さの積算値の合計値ST(mm)を求めていく。さらに、制御装置81は、供給開始からの電極シート4,5の繰出量も計測していく。
電極シート4,5がそれぞれ予め設定された所定量だけ繰出されると、制御装置81は、電極シート4,5の繰出しを停止する。これにより、シート切断カッタ72と厚さ計測機構77との間には、次回捲回される一素子分の電極シート4,5が存在することとなる。尚、本第2実施形態では、一素子分の正電極シート4の巻取量は、各電池素子1において常に一定となり、一素子分の負電極シート5の巻取量は、各電池素子1において常に一定となるように構成されている。また、一素子分の負電極シート5の巻取量は、一素子分の正電極シート4の巻取量よりも大きく、負電極シート5で正電極シート4の全域が覆われるようになっている。
そして、制御装置81は、計測された合計値STに基づき、各種シート2〜5を捲回する際に、テンション付与機構73により各種シート2〜5に付与する張力T(N)を決定する。張力Tは、RAMに予め記憶された合計値STと張力Tとの対応関係を示す張力決定用テーブル(図18参照)を参酌して決定される。例えば、合計値STが、値ST1以上値ST2未満である場合には、張力Tとして値T2が決定される。さらに、決定された張力Tは、電池素子1を特定するための通し番号n−1,n,n+1・・・とともにハードディスクに記憶される(図19参照)。
尚、張力決定用テーブルにおいて、張力Tは、合計値STが大きいほど大きなものが設定されており、電極シート4,5の厚さの変動に対応して、電池素子1の外形寸法をほぼ一定とできるものが、合計値STの各範囲毎に設定されている。例えば、合計値STが値ST0以上値ST1未満であるときにおいて、この範囲に対応する張力T1を各種シート2〜5に加えつつ捲回することで得られた電池素子1の外形寸法と、合計値STが値ST2以上値ST3未満であるときにおいて、この範囲に対応する張力T3を各種シート2〜5に加えつつ捲回することで得られた電池素子1の外形寸法とは、ほぼ一定となるように構成されている。尚、張力決定用テーブルに代えて、合計値STを代入することで、付与すべき張力を導出可能な数式を用いてもよい。
また、本第2実施形態において、制御装置81は、合計値STに基づき、次回捲回により得られることとなる電池素子1の良否を判定する。詳述すると、制御装置81は、合計値STが予め設定された最小許容値を下回る場合、つまり、捲回時に加える張力Tを最低限としても、得られる電池素子1の外形寸法が過度に小さくなってしまう場合には、不良と判定する。また、合計値STが予め設定された最大許容値を上回る場合、つまり、捲回時に加える張力Tを最大限としても、得られる電池素子1の外形寸法が過度に大きくなってしまう場合にも、制御装置81は不良と判定する。一方、合計値STが前記最小許容値以上最大許容値以下であれば、制御装置81は良と判定する。
次に、電池素子1の製造工程について、次回捲回時に各種シート2〜5に加えるべき張力Tを決定する工程(張力決定工程)を中心に説明する。
張力決定工程においては、図20に示すように、上記第1実施形態における巻取量決定工程と同様、まず、ステップS111〜S114において、電極シート4,5が一方の巻芯13(14)に供給されるとともに、両電極シート4,5の厚さの計測が開始される。そして、一方の巻芯13(14)に対する電極シート4,5の捲回が進んでいくことで、両電極シート4,5の繰出量及び合計値STはそれぞれ徐々に増加していく。
続くステップS115では、供給開始からの正電極シート4の繰出量が所定値に到達したか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。ステップS115で肯定判定されると、ステップS116において、一方の巻芯13(14)の回転動作が一時停止されるとともに、繰出ローラ74,76による正電極シート4の繰出しが停止される。このとき、現在捲回されている一素子分の正電極シート4の終端部と次回捲回されることとなる一素子分の正電極シート4の始端部との区切りとなる位置がシート切断カッタ72に位置決めされた状態となる。その後、シート挿入機構71により正電極シート4が把持された上で、シート切断カッタ72により正電極シート4が切断されるとともに、一方の巻芯13(14)の回転動作が再開される。
続くステップS117では、供給開始からの負電極シート5の繰出量が所定値に到達したか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。ステップS117で肯定判定されると、ステップS118において、一方の巻芯13(14)の回転動作が一時停止されるとともに、繰出ローラ74,76による負電極シート5の繰出しが停止される。このとき、現在捲回されている一素子分の負電極シート5の終端部と次回捲回されることとなる一素子分の負電極シート5の始端部との区切りとなる位置がシート切断カッタ72に位置決めされた状態となる。その後、シート挿入機構71により負電極シート5が把持された上で、シート切断カッタ72により負電極シート5が切断されるとともに、一方の巻芯13(14)の回転動作が再開される。
次いで、ステップS119において、合計値STに基づき、前記張力決定用テーブルを参酌して、張力Tが決定される。また、決定された張力Tが、次回の捲回で得られることとなる電池素子1の通し番号とともに、制御装置81のハードディスクに記憶される。
続くステップS120において、各フラグをオフに戻すとともに、合計値STを初期値とする処理、及び、状態判定処理を行った上で、張力決定工程が終了する。状態判定処理では、合計値STに基づき、次回捲回されて得られることとなる電池素子1の良否が予め判定される。そして、電池素子1の良否判定結果が、当該電池素子1の通し番号とともに、制御装置81のハードディスクに記憶される。
尚、次回捲回時には、制御装置81によりテンション付与機構73(ダンサローラ73c)が制御されることで各種シート2〜5に対し決定された張力Tが付与されつつ、各種シート2〜5の巻取りが行われることとなる。
以上、本第2実施形態によれば、基本的には上記第1実施形態と同様の作用効果が奏されることとなる。すなわち、電極シート4,5の厚さにバラツキがある場合であっても、得られる電池素子1の外形寸法をより確実に正常範囲に収めることができる。また、得られた電池素子1における品質の低下抑制等、各種有利な効果を得ることができる。
〔第3実施形態〕
次いで、第3実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。
上記第1実施形態では、電極シート供給機構31,41にバッファ機構75や繰出ローラ74,76が設けられ、シート切断カッタ72及び厚さ計測機構77間に一素子分の電極シート4,5を貯留可能となっている。これに対し、本第3実施形態では、図21に示すように、電極シート供給機構31,41にバッファ機構75や繰出ローラ74,76が設けられておらず、シート切断カッタ72及び厚さ計測機構77間に一素子分の電極シート4,5を貯留不能となっている。
そのため、上記第1実施形態では、各種シート2〜5の捲回時に、次回捲回される電極シート4,5の巻取量LA,LBが前もって決定され、捲回の直前には、一素子分の電極シート4,5がそれぞれの搬送経路に貯留されるようになっているが、本第3実施形態では、これが不可能となっている。そこで、本第3実施形態では、各種シート2〜5が捲回されている最中に、現在捲回されている電極シート4,5の巻取量LA,LBが決定されるように構成されている。
詳述すると、本第3実施形態において、制御装置81は、図22に示すように、厚さ計測機構77による計測結果に基づき、厚さ計測機構77を基準として、これよりも下流側に位置している電極シート4,5の各部位における厚さのデータを蓄積・保存している。当該データは、電極シート4,5の搬送に伴い更新されていき、シート切断カッタ72の配置位置に対応する(刃部72a,72b間を通過している)電極シート4,5の厚さも変化していく(図23,24参照)。
その上で、制御装置81は、捲回部11に対して電極シート4,5の供給が開始されてから、シート切断カッタ72を通過している電極シート4,5の厚さの積算値を合計した値(合計値)SUを算出する。
そして、合計値SUが前記第一閾値S1(mm)以上となったときに、供給開始からの正電極シート4の繰出量を特定するとともに、この繰出量を現在捲回されている正電極シート4の巻取量LA(mm)として決定する。
巻取量LAが決定されると、正電極シート4の繰出しを停止する一方、負電極シート5の繰出しを継続し、合計値SUが前記第二閾値S2(mm)以上となったときに、供給開始からの負電極シート5の繰出量を特定するとともに、この繰出量を現在捲回されている負電極シート5の巻取量LB(mm)として決定する。
尚、決定された両電極シート4,5の巻取量LA,LBは、上記第1実施形態と同様に、電池素子1を特定するための通し番号とともにハードディスクに記憶される。さらに、上記第1実施形態と同様に、繰出量LAに基づき回転数Rが決定されるとともに、当該回転数Rがハードディスクに記憶される。
次いで、本第3実施形態において、一方の巻芯13(14)に対する電極シート4,5の供給が開始されてから、一方の巻芯13(14)に対する各種シート2〜5の捲回が終了するまでの工程(捲回工程)を中心に説明する。
捲回工程においては、図25に示すように、上記第1実施形態と同様、まず、ステップS131〜S134において、一方の巻芯13(14)に対し電極シート4,5が供給されるとともに、電極シート4,5の厚さ計測が開始される。これにより、合計値SUの算出が開始され、一方の巻芯13(14)に対し各種シート2〜5が捲回されていくことで、合計値SUが徐々に増加していく。
続くステップS135では、合計値SUが第一閾値S1に到達しているか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し判定される。合計値SUが第一閾値S1に到達した場合には、ステップS136に移行し、供給開始からの正電極シート4の繰出量が巻取量LAとして決定されるとともに、一方の巻芯13(14)の回転動作が一時停止され、正電極シート4の繰出しが停止される。併せて、前記回転数決定用テーブルに基づき、決定された巻取量LAに対応する回転数Rが決定される。尚、このとき、現在捲回されている一素子分の正電極シート4の終端部がシート切断カッタ72に対し位置決めされた状態となる。
次いで、ステップS137において、シート挿入機構71により正電極シート4が把持された上で、シート切断カッタ72により正電極シート4が切断される。その後、一方の巻芯13(14)の捲回動作が再開される。
続くステップS138では、合計値SUが第二閾値S2に到達しているか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し判定される。合計値SUが第二閾値S2に到達した場合には、ステップS139において、供給開始からの負電極シート5の繰出量が巻取量LBとして決定されるとともに、一方の巻芯13(14)の回転動作が一時停止され、負電極シート5の繰出しが停止される。尚、このとき、現在捲回されている一素子分の負電極シート5の終端部がシート切断カッタ72に対し位置決めされた状態となる。
続くステップS140では、シート挿入機構71により負電極シート5が把持された上で、シート切断カッタ72により負電極シート5が切断される。その後、ステップS141にて、一方の巻芯13(14)の回転動作が再開され、電極シート4,5の終端部分(巻き残し部分)が巻き取られる。これにより、一方の巻芯13(14)に対し、正電極シート4が巻取量LAだけ巻き取られ、負電極シート5が巻取量LBだけ巻き取られることとなる。
続くステップS142〜S144では、上記第1実施形態におけるS85〜S87と同様の処理が行われる。すなわち、ターレット12を回転させるとともに、一方の巻芯13(14)が決定された回転数Rと同数だけ回転した時点で、一方の巻芯13(14)の回転を停止させる。そして、セパレータカッタ16によりセパレータ2,3が切断されるとともに、セパレータ2,3の終端部分が巻き取られ、さらに、固定用テープ6により巻き止めがなされる。
次いで、ステップS145において、状態判定処理が実行され、捲回工程が終了される。状態判定処理では、合計値SUに基づき、現在捲回して得られた電池素子1の良否が判定される。具体的には、合計値SUが予め設定された最小許容値を下回る場合、又は、合計値SUが予め設定された最大許容値を上回る場合には、電池素子1は不良であると判定される。得られた判定結果は、電池素子1の通し番号と関連付けられた上で、制御装置81のハードディスクに記憶される。また、状態判定処理の終了後、次の捲回工程が始まる前に、合計値SUが初期値(0)に再設定される。
以上、本第3実施形態によれば、基本的には上記第1実施形態と同様の作用効果が奏されることとなる。
また、本第3実施形態では、捲回前に一素子分の電極シート4,5を搬送経路に貯留する必要がないため、搬送経路を比較的短くすることができる。その結果、捲回装置10の小型化を図ることができる。
〔第4実施形態〕
次いで、第4実施形態について、上記第2実施形態との相違点を中心に説明する。
上記第2実施形態では、各種シート2〜5の捲回時に、次回捲回される各種シート2〜5に付与される張力Tが前もって決定されるように構成されている。これに対し、本第4実施形態では、各種シート2〜5が捲回されている最中に、一方の巻芯13(14)に対し、ちょうど捲回されようとしている電極シート4,5の厚さの合計値SVに基づき、張力Tがリアルタイムに変更されるように構成されている。
詳述すると、制御装置81は、上記第3実施形態と同様に、図26に示すように、厚さ計測機構77による計測結果に基づき、厚さ計測機構77を基準として、これよりも下流側に位置している電極シート4,5の各部位における厚さのデータを蓄積・保存している。当該データは、電極シート4,5の搬送に伴い更新されていき、一方の巻芯13(14)に到達し、電極シート4,5のうち一方の巻芯13(14)によりちょうど巻き取られようとしている部位(被巻取部)の厚さも変化していく(図27,28参照)。
その上で、制御装置81は、捲回部11に対して両電極シート4,5の双方の供給が開始されてから、両電極シート4,5の被巻取部における厚さの合計値SVを得る。
そして、制御装置81は、被巻取部における厚さの合計値SVに応じて、被巻取部がちょうど巻き取られようとしているときに各種シート2〜5に加えるべき張力Tを決定する。張力Tは、RAMに予め設定された、合計値SVと張力Tとの対応関係を示す張力決定用数式(図29参照)を参酌して、得られた合計値SVに対応するものが決定される。尚、本実施形態では、捲回初期や捲回後期において、両電極シート4,5のうち負電極シート5のみが一方の巻芯13(14)に供給されている場合、セパレータ2,3及び負電極シート5に対し予め設定された一定の張力が付与されるように構成されている。
さらに、制御装置81は、被巻取部が巻き取られる際に、この被巻取部に対応して決定された張力Tを各種シート2〜5に印加するようにテンション付与機構73を制御する。
また、制御装置81は、合計値SVに基づき、電池素子1の良否を判定する。詳述すると、制御装置81は、合計値SVが予め設定された最小厚さを下回ることが所定回数以上あった場合には、電池素子1を不良と判定する。また、合計値SVが予め設定された最大厚さを上回ることが所定回数以上あった場合にも、制御装置81は電池素子1を不良と判定する。一方、合計値SVが前記最小厚さを下回ったり、前記最大厚さを上回ったりすることがそれぞれ所定回数未満であった場合には、制御装置81は電池素子1を良と判定する。
次いで、本第4実施形態において、一方の巻芯13(14)に対する電極シート4,5の供給が開始されてから、一方の巻芯13(14)に対する各種シート2〜5の捲回が終了するまでの工程(捲回工程)を中心に説明する。
捲回工程においては、図30に示すように、上記第1実施形態と同様、まず、ステップS151において、一方の巻芯13(14)に対し負電極シート5及び正電極シート4がこの順序で供給される。尚、上述の通り、両電極シート4,5のうち負電極シート5のみが供給されているとき、セパレータ2,3及び負電極シート5に付与される張力Tは一定とされている。
続くステップS152では、電極シート4,5のうちちょうど巻き取られようとしている部位(被巻取部)の合計値SVが取得される。
次いで、ステップS153において、ステップS152において得られた合計値SVと前記張力決定用の数式から、張力Tが決定される。そして、ステップS154において、決定された張力Tが各種シート2〜5に加わるように各テンション付与機構73が制御される。
次に、ステップS155において、正電極シート4が所定量繰出されたか否かが判定される。ステップS155において否定判定された場合、つまり、正電極シート4が一素子分繰出されていない場合には、ステップS152に戻る。従って、ステップS152〜S154の処理は、正電極シート4が所定量繰出されるまでの間、つまり、各種シート2〜5が捲回されている間に繰り返し実行され、各種シート2〜5の捲回中、合計値SVの変化に応じて各種シート2〜5に付与される張力Tが変動することとなる。
一方、ステップS155において肯定判定された場合、つまり、正電極シート4が所定量繰出された場合には、ステップS156において、正電極シート4の繰出しが停止されるとともに、一方の巻芯13(14)の回転が一時停止される。そして、シート挿入機構71により正電極シート4が把持された状態で、シート切断カッタ72により正電極シート4が切断される。続くステップS157では、セパレータ2,3及び負電極シート5に付与される張力Tが予め設定された一定値に設定される。
次いで、ステップS158において、負電極シート5が所定量繰出されたか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。負電極シート5が所定量繰出された場合(ステップS158:YES)には、ステップS159において、負電極シート5の繰出しが停止されるとともに、一方の巻芯13(14)の回転が一時停止される。そして、シート挿入機構71により負電極シート5が把持された上で、シート切断カッタ72により負電極シート5が切断される。
その後、ステップS160にて、一方の巻芯13(14)の回転動作が再開され、電極シート4,5の終端部分(巻き残し部分)が巻き取られる。続くステップS161では、ターレット12を回転させ、さらに、次のステップS162において、一方の巻芯13(14)が予め設定された所定の回転数だけ回転した時点で、一方の巻芯13(14)の回転が停止される。そして、ステップS163において、セパレータカッタ16によりセパレータ2,3が切断されるとともに、セパレータ2,3の終端部分が巻き取られ、さらに、固定用テープ6により巻き止めがなされる。
次いで、ステップS164において、状態判定処理が実行され、捲回工程が終了される。状態判定処理では、合計値SVに基づき、現在捲回して得られた電池素子1の良否が判定されるとともに、判定結果が制御装置81のハードディスクに記憶される。尚、状態判定処理の終了後、次の捲回工程の始まる前に、合計値SVは初期値(0)に再設定される。
以上、本第4実施形態によれば、基本的には上記第2実施形態と同様の作用効果が奏されることとなる。また、捲回前に一素子分の電極シート4,5を搬送経路に貯留する必要がないため、搬送経路を比較的短くすることができ、捲回装置10の小型化を図ることができる。
〔第5実施形態〕
次に、第5実施形態について上記実施形態との相違点を中心に説明する。
上記実施形態では、電極シート4,5の厚さに基づき、電極シート4,5の巻取量LA,LB等及び各種シート2〜5に付与される張力Tのいずれかが調節されるように構成されている。これに対し、本第5実施形態では、電極シート4,5の厚さに基づき、巻取量LA,LB等及び張力Tの双方が調節可能に構成されている。
詳述すると、上記第1実施形態と同様に、制御装置81は、電池素子1の捲回前に、当該電池素子1を構成する両電極シート4,5の巻取量LA,LBを各電池素子1ごとに決定する。その上で、制御装置81は、決定された巻取量LAに基づき、実際に各種シート2〜5を捲回する前に、各種シート2〜5に付与する張力Tを決定する。具体的には、予めROM等に記憶された、巻取量LA及び張力Tとの関係を示す張力決定用数式(図31参照)を参酌し、決定された巻取量LAに対応する張力を張力Tとして決定する。さらに、決定された巻取量LA,LB及び張力Tを、電池素子1を特定するための通し番号とともにハードディスクに記憶する。
尚、張力決定用数式における張力としては、電極シート4,5の厚さの変動に対応して、電池素子1の外形寸法をほぼ一定とできるものが、巻取量LAの各範囲毎に設定されている。本実施形態では、張力決定用数式における張力は、巻取量LAが予め設定された所定の正常範囲内である場合に所定の一定値とされ、巻取量LAが前記正常範囲を下回るものの、その外れ量が所定値Z1以下である場合に巻取量LAが小さいほど小さな値とされ、巻取量LAが前記正常範囲を上回るものの、その外れ量が所定値Z2以下である場合に巻取量LAが大きいほど大きな値とされている。
また、本第5実施形態における巻取量LA,LB及び張力Tの決定工程は、上記第1実施形態における巻取量決定工程と多くの部分で共通しており、巻取量LAの決定処理(図7のステップS23)の後に、その巻取量LAに基づき張力Tを決定する処理が付随されている点のみが相違することとなる。
さらに、各種シート2〜5の捲回にあたっては、決定された張力T1が各種シート2〜5に付与された状態で、決定された巻取量LA,LBだけ電極シート4,5が巻き取られることとなる。
以上、本第5実施形態によれば、巻取量LA,LB及び張力Tの双方を調節できるため、外形寸法が正常範囲にある電池素子1をより多く得ることができる。例えば、上記第1実施形態では、巻取量LAが前記正常範囲から外れている場合、得られる電池素子1の外形寸法が過大又は過小となってしまうが、本第5実施形態によれば、巻取量LAが前記正常範囲から外れているものの、その外れ量が比較的小さい場合には、張力Tを一定値に対し増減させることで、得られる電池素子1の外形寸法を正常範囲に収めることができる。従って、外形寸法の面で不良が発生してしまうことをより確実に防止でき、ひいては歩留まりの向上を図ることができる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態では、捲回前の電極シート4,5の厚さに基づき、巻取量LA,LBや張力Tが決定されているが、捲回後の電極シート4,5の厚さ(得られた電池素子1における電極シート4,5の厚さ)に基づき、次回以降に捲回される電極シート4,5の巻取量LA,LBや捲回時の張力Tを決定するように構成してもよい。すなわち、得られた電池素子1における電極シート4,5の厚さに基づき、次回以降の捲回時における巻取量LA,LBや張力Tがフィードバック制御されるように構成してもよい。尚、捲回後の電極シート4,5の厚さは、電池素子1の端面の撮像画像などを解析すること等により得ることができる。
また、例えば、シート原反32,42を構成する電極シート4,5の厚さを予め計測しておき、その予め計測した厚さに基づいて巻取量等を決定してもよい。
(b)巻取量や捲回時の張力は、電極シート4,5の厚さに基づき決定されるものであればよく、電極シート4,5の厚さを用いた決定手法であれば、上記実施形態で挙げた手法以外のものであってもよい。従って、例えば、一定時間又は一定の搬送量ごとに計測された電極シート4,5の厚さに基づき、巻取量などを決定してもよい。また、必ずしも上記実施形態のように両電極シート4,5の厚さ等を合計した値に基づいて巻取量等を決定する必要はなく、各電極シート4,5の個々の厚さに基づいて巻取量等を決定してもよい。
(c)上記実施形態では、固定用テープ6に通し番号が付されており、この通し番号を基に各電池素子1における電極シート4,5の長さ等を把握できるように構成されているが、固定用テープ6に対し電極シート4,5の長さ等に関する情報を付し、固定用テープ6に付された情報から、電極シート4,5の長さ等を直接把握できるように構成してもよい。
(d)上記実施形態では、各種シート2〜5の巻取開始時に、芯片13a,13b(14a,14b)間にセパレータ2,3が配置された状態で巻芯13(14)を回転させることにより、巻芯13(14)に対しセパレータ2,3が所定量巻き取られるように構成されている。これに対し、セパレータ2,3を把持可能な把持手段を巻芯13(14)に設け、各種シート2〜5の巻取開始時に、前記把持手段によりセパレータ2,3を把持した状態で巻芯13(14)を回転させることにより、セパレータ2,3を所定量巻取ることとしてもよい。また、前記把持手段によりセパレータ2,3とともに両電極シート4,5を把持した上で、巻取を開始するように構成してもよい。
(e)上記実施形態では、巻芯13(14)の外周に対し各種シート2〜5が直接捲回されるように構成されているが、巻芯13(14)の外周に筒状の巻芯コア(図示せず)を配置し、当該巻芯コアに対し各種シート2〜5が捲回されるように構成してもよい。
(f)上記実施形態においては、捲回部11が、2つの巻芯13,14を備えた構成となっているが、巻芯の数はこれに限定されるものではなく、1つ又は3つ以上の巻芯を備えた構成としてもよい。
(g)上記実施形態では、捲回装置10によって、リチウムイオン電池の電池素子1が製造されているが、捲回装置10によって製造される捲回素子はこれに限定されるものではなく、例えば、電解コンデンサの捲回素子等を製造することとしてもよい。
(h)上記実施形態では、巻芯13,14として、各種シート2〜5の捲回される外周形状が断面長方形状に構成された巻芯を採用しているが、巻芯13,14の形状はこれに限定されるものではなく、例えば外周形状が円形状、楕円形状、長円形状等となる巻芯を採用してもよい。
(i)セパレータ2,3や電極シート4,5の材質は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、セパレータ2,3をPPにより形成することとしているが、他の絶縁性材料によってセパレータ2,3を形成することとしてもよい。また、例えば、電極シート4,5に塗布される活物質を適宜変更してもよい。