JP6169793B2 - トリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部及びローラ要素 - Google Patents

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Description

本発明は、トリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部と、トリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部の突部上に配置する(適合させた)ローラ要素とに関連する。トリポード型等速ジョイントは、各シャフトの互いに対する軸方向の変位や偏向が(同時に)可能となるときに、特に各シャフトを用いたトルクの伝達に採用される。
この種類のトリポード型ジョイントは、例えば、特許文献1に開示されている。当該文献においては、とりわけ冠形周面を有する突部が開示され、該周面は複数の部品部分から組み立てられる表面線を有し、該突部の最大直径の領域における表面線の半径は、該表面線の隣接部分の半径よりも大きい。ここでは、該表面線は、冠形周面の外周にわたって一定となるように具現化され、すなわち、冠形周面は、各突部の長手方向軸に対して回転対称となるように具現化される。それゆえ、当該トリポード型等速ジョイントの突部は、他の既知の球形状とは異なる。
欧州特許出願公開第1008777号明細書
そこから進展するために、本発明の目的は、先行技術の状況において述べられた各課題を少なくとも部分的に解決することにある。特に、軽量かつ費用効果が高く、さらに負荷容量が非常に大きいトリポード型等速ジョイントを提供する。さらに、当該トリポード型等速ジョイントは、比較的大きな角度で偏向しながら使用することもできる。この種類のトリポード型等速ジョイントのための内側ジョイント部及びローラ要素を提案する。
前記課題は、請求項1の各特徴によるトリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部によって解決される。さらに、前記課題は、請求項9による(本発明の)内側ジョイント部用のローラ要素によっても解決される。本発明のさらに有利な設計態様及び上位の機能的グループは従属項に示されている。各請求項に個々に列挙される特徴は、技術的に有意な方法で相互に組み合わされてもよく、また、本説明からの事例の例示的な事実によって補完されてもよく、それにより本発明の更なるさまざまな実施形態が実証されうる。
そのためには、回転軸と三つの突部とを有するハブを備える、トリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部であって、該突部は、半径方向にハブから外側に延在し、ハブに隣接する移行領域と軸受け領域とを有する、内側ジョイント部を提案する。各突部は、長手方向軸と、軸受け領域において冠形周面とを有する。内側ジョイント部は第一平面を有し、第一平面は、突部の全ての長手方向軸を備え、回転軸と垂直になるように定義される。各突部の冠形周面は、第一平面にある第一表面線を形成し、長手方向軸に沿った高さにおいて突部の最大直径があり、内球半径を有する内球が予め定義され、内球の中心点は当該高さの地点で長手方向軸上にあり、内球は、第一表面線の対向する接点と接触する。各突部の第一表面線は、いずれの場合もそれぞれの接点と隣接しつつ内球の外側にある少なくとも第一角度範囲にあり、第一角度範囲は、内球の中心点から発出し、いずれの場合もそれぞれの接点の両側に最大20度の角度まで、特にいずれの場合も最大10度の角度まで延在する。各突部の冠形周面の第二表面線は第二平面にあり、第二平面は、第一平面と垂直になるように配置され、それぞれの突部の長手方向軸を含んでいる。さらに、第二表面線は、接触点において突部の最大直径の高さでのみ内球と接触し、いずれの場合もそれぞれの接触点と隣接しつつ内球内にある少なくとも第二角度範囲にわたり、各第二角度範囲は、内球の中心点から発出し、いずれの場合もそれぞれの接触点の両側に最大30度の角度まで、特にいずれの場合も最大20度の角度まで延在する。
トリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部の基本的な構成は既知であることが想定され、該構成においては、ハブは、特にシャフト(回転軸を中心に回転する)を受容できるため、供給されたトルクを外側ジョイント部に突部を介して伝達でき、又は、その逆も可能である。各突部は、当業者に容易に明らかである機能的な領域を有し、一般的には、さらに外側で軸受け領域と隣接する前に、半径方向にハブから延在する移行領域が設けられ、該軸受け領域の冠形周面は、その上に嵌合されるローラ要素のための摺接面を表す。該周面は、ほとんどの場合球形状ではなく、冠形になるように具体化される。長手方向軸と垂直になるように、或いは、端面のベクトルの曲率半径が、長手方向軸周りに配置されて開き角度が30度から60度である円錐に配されるように成形されることを特徴とする端面は、突部の径方向の末端を形成してもよい。
各突部の各長手方向軸は、内側ジョイント部の回転軸に対して垂直となるように位置する共通平面にあり、ここでは、該平面を「第一平面」とする。次に第一平面において突部を通る部分を見ると、周面の外形は、「第一表面線(surface line)」(第一平面における突部の表面線)を構成する。軸受け領域における当該第一表面線は、内側ジョイント部の周方向における力の伝達が該第一表面線を介して行われるので、機能的に重要である。それゆえ、この表面線は、明確に定められた内球半径を有する内球を画定するものともみなされる。そのためには、長手方向軸と垂直である最大直径(値という点では)を有する突部の高さは、まず軸受け領域内に特定されなければならない。ここで、当該最大高さとは、すなわち、半径方向に最も外側に位置する突部の最大直径を想定する。当該高さにおいて最大直径を画定する第一表面線の対向する部分の各点は、したがって(それぞれ仮想的又は数学的な)内球の各接点であり、内球の中心点は長手方向軸上に位置し、内球半径は、長手方向軸の高さにおける突部の最大直径の半分に相当する。突部の外形を説明するためにここで参照される内球は、本明細書で提案される実施形態に相応して異なる突部の球形状との比較に役立つ。
特に、第一平面における最大直径は、第二平面における突部の最大直径よりも若干小さく(0.01から0.1ミリメートルの範囲)なるように異なっていてもよく、それにより第三平面において突部を通る断面はわずかに楕円状に成形され、当該第三平面は、各突部の長手方向軸だけでなく第一平面とも垂直になるように配向される。
第一平面における内球の外形の輪郭とこれらの接点に隣接する第一表面線の輪郭とを比較すると、それぞれ、第一表面線は湾曲が少なく、又は内球の外側に延在している(長手方向軸からの距離がより遠い)ことが分かる。この判別は、対応する各第一角度範囲(第一表面線を基準とする角度範囲)のために行われるべきであり、第一角度範囲の各値は、特に設計態様を目的として、長手方向軸の方向(半径方向)に最大直径を有する高さの上下において異なっていてもよい。このように、当該高さの下の第一角度範囲を当該高さの上の第一角度範囲より大きく、又は同等、或いはそれより小さくなるように具体化することができる。両方の第一角度範囲が最大である場合、いずれも20度ずつの角度を含むことになり、合計で40度となる。一方の第一角度範囲が最小で、他方の第一角度範囲が最大である場合、一つの第一角度範囲(一つの接点の上又は下)は、20度に亘ってのみ延在し、他方側に向かっては(相応して同じ接点の下又は上)上記の条件は満たされなくてよい。しかしながら、第一表面線は、少なくとも一方側においてさらに外側に位置し、特に、接点の両側においては角度が2度の(最小の)第一角度範囲にわたって、特に少なくとも5度の第一角度範囲にわたっていることは明らかである。
従って、第一表面線の輪郭は球状とは異なり、特に第一平面においては、第一平面における内球の断面円の輪郭よりも平坦に延在する。トリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部と外側ジョイント部との間の周方向力は、主に当該第一平面に伝達される。第一表面線が平坦であるため、軸受け領域の突部表面とローラ要素の内周面との間の接触は、より密着することになる。また、第一表面線が平坦であるため、(第一平面における)トリポード型等速ジョイントの力の第1の方向におけるヘルツ接触応力をかなり低減することができる。このように、当該トリポード型等速ジョイントによって比較的大きな力を伝達できるため、既知のトリポード型等速ジョイントにおける場合よりも最大直径の値が著しく小さい突部も具現化できる。そのため、比較的小さいローラ要素を使用することができ、その結果として外側ジョイント部の外形寸法を縮小することができる。ローラ要素と突部との間がより密着して接触することにより、特に、外側ジョイント部に対する内側ジョイント部の偏向角度が16度を超える場合、等速ジョイントのNVH(noise、 vibration、 harshness=騒音、振動、乗り心地)特性も改善される。そのように偏向角度が大きい場合、3次の周期的軸力(cyclical axial force of the 3rd order)に起因するいわゆる「横揺れ(shuddering)」又は「起動時のぐらつき(start-up wobbling)」が動作中に既知の各ジョイントに発生することは明らかである。
第一平面に対して90度オフセットする一つ/個々の突部の長手方向軸を通る部分においては、明細書中で「第二表面線」(第二平面における表面線)と称する冠形周面の対応する外形を特定できる。これにより、輪郭は、再び同じ内球と、すなわち第二平面における(特に長手方向軸の同じ高さでの)内球の断面線と比較される。ここでは、長手方向軸に関して互いに対向する二つの点で内球も第二表面線に接触し、該二つの点はここでは接触点と称される。したがって、第二表面線の各接触点及び第一表面線の各接点(だけ)は、内球の共通の円上にある。第二平面における内球の外形の輪郭と接触点に近接する第二表面線とを比較すると、第二表面線の方がより大きく湾曲し、或いは(長手方向軸からの距離がより短い)内球の内側を通ることが分かる。当該判別は、対応する第二角度範囲(第二表面線を参照する角度範囲)にとって必須であり、該第二角度範囲の各値は、特に設計態様のために、長手方向軸の方向において最大直径である高さの上及び下で異なっていてもよい。この点に関して第一角度範囲に関する対応説明を行ったが、本明細書において当該説明は第二角度範囲にも同様に適用される。
内球の内側を通る第二表面線の第二平面における輪郭により、特に小さい遊びをローラ要素と突部との間で調整できるようにするため、第二平面におけるローラ要素の中心は、ジョイントの偏向時に突部に関して変位可能となる。ジョイントが偏向し、突部に対するローラ要素の傾動が実行されるときに、この起こり得る変位によって第一表面線の領域における突部とローラ要素との間の妨害の発生を回避できる。この起こり得る妨害とは、ここでは大きな第一曲率半径によって(或いは、それぞれ直線によって)形成される第一表面線の輪郭によるものである。それゆえ、ローラ要素の内周面との複数の接点が第一表面線の領域において突部の片側に構成されることによって、妨害が起こり得る。次に第二表面線の輪郭は、確実に突部とローラ要素との間の変位を可能にし、それによって妨害を積極的に防止する。
特に、第二表面線の輪郭により、ジョイントが偏向する際に、突部の第二表面線とローラ要素との間の接触が突部の片側にだけ発生することを可能にする。これは、内球半径より小さいローラ要素との接触領域における特に突部半径にまで遡ることである。このように、偏向角度が大きい場合のローラ要素の中心(ローラ要素の中心点)は、突部の中間点に関して、また、第二平面に沿って変位することができる。それにより、大きい偏向角度において妨害が発生することなく、ローラ要素と突部との間(第一表面線の領域における)の遊びを最小限にできる。
特に、第二表面線と第一表面線との間の、突部のそれぞれの長手方向軸を中心とする周方向への移行は連続的である。ここでの連続的の意味は、表面線の外形又は周面上それぞれに急激な変化がないことである。
特に、突部は、長手方向軸を中心に回転対称である周面を有していない。第一平面における第一表面線の輪郭(力の第1の方向)は、特に内球との接点或いは接触点にそれぞれ近接する第二平面における第二表面線の輪郭とは異なる。第一表面線及び第二表面線は、いずれの場合も動作中にさまざまな応力に適応する。動作中に、第一平面の領域に配置された突部の周面のそれらの領域によって周方向力の大半は伝達される。等速ジョイントの軸方向に作用する(非常に低い)力は、第二平面に配置された突部の周面のそれらの領域を介して伝達される。こうした軸方向に作用する力により、内側ジョイント部は、外側ジョイント部に対して軸方向にずらされる。
特に、軸受け領域における第一表面線は、少なくとも接点で最大となる第一曲率半径を有する。当該最大第一曲率半径(値の点で)を用いることにより、内球に対する第一表面線の(ずれている)輪郭がここで画定される。内球は、第一表面線の第一曲率半径よりも(かなり)小さい突部の最大直径又は最大内球半径をそれぞれ有する。このことを特に少なくとも接点に近接する第一角度範囲及び/又は接点自体に適用する。
特に、接点における第一曲率半径(eKRmax)の値の内球半径(IKR)の値に対する比(V1)は、少なくとも50である(V1=eKRmax/IKR≧50)。当該比は、100から1000の範囲にあることが好ましい(100≦V1≦1000)。この場合、既に上述された接触は、特に好適に実現される。
第一曲率半径を大きくすることは、ローラ要素と突部との間の接触圧を対応する方法(好適な接触)で軽減する。ここでは、50から1000の範囲の各値によって、妨害のない必要な遊びとその結果として生じる低い接触圧(ヘルツ接触応力)との間に好適な妥協が可能となる。
特に有利な一実施形態によると、各突部の第一表面線は、各接点において、また、いずれの場合も接点に隣接する第一角度範囲において直線として具体化され、第一角度範囲は、内球の中心点から発出し、少なくとも片側において2度から20度の角度で接点と隣接するように延在する。
従って、特に第一表面線は、第一角度範囲内に存在する部分にわたって直線の部分(第一曲率半径が非常に大きい)のように延在し、当該直線の部分は、必ず接点の両側に及び/又は接点の両側に均一に構成される必要はない。むしろ、角度が2度から20度の部分が含まれれば十分であり、直線の部分は、特に角度が5度から20度(特に好ましくは5度から10度)にわたって、また、接点を超えて延在することがさらに好ましい。直線の部分、或いは第一角度範囲は、それぞれここでは(大部分が又は実際に)接点の上(すなわち突部の端面に向かって)になるように構成されることがさらに好ましい。 特に、第一表面線は、第一角度範囲の外側で内球と交差でき、その後で内球の内側を進むことができる。
特に、第一表面線の領域の第三平面における各突部の周面は、第一曲率半径によって形成される。さらに、第三平面及び、突部の第一平面と各第二平面との間の第四角度範囲における各突部の周面は、連続的に変動する第二曲率半径によって形成される。
特に有利なさらなる一実施形態によると、移行領域における各突部は、突部の長手方向軸を中心に周方向に値が変動する移行半径を構成し、移行半径の値は、第一平面において最大になり、周方向において最小になり、第一平面に対して90度オフセットする。移行領域は、一般的に軸受け領域に対して幅が漸減するように構成され、移行領域の各領域ではそれぞれ事実上材料を取り外してもよいことが事前に定義され、それにより高負荷伝導及び耐久性を同時に提供しつつ、軽量化の点でより良い結果が得られる。 特に、最大値と最小値との間の移行半径(transition radius)は連続的に変化し、すなわち、周方向に急激に移行することはない。特に各突部の第二平面において最小値となる突部の外周にわたる移行半径の当該設計態様により、トリポード型等速ジョイントが偏向する場合にローラ要素の一部が入り込む突部の逃げ溝及び/又は切り欠きを設けることができ、偏向角度が大きい場合であっても、ローラ要素と内側ジョイント部との間の衝突を回避できる。そのため、トリポード型ジョイントの外径(すなわち外側ジョイント部の外径)を拡大することなく、外側ジョイント部に対する内側ジョイント部の偏向角度も比較的大きくできる。
特に、記載された切り欠きよって、同等の機能を有するトリポード型ジョイントの外径を5%まで縮小することができる。
任意に、各突部の第二平面における当該移行の外形は、移行半径によってほぼ定義されるだけである。当該移行領域における突部の外形は、任意で角張っている及び/又は複数の異なる半径を有していてもよい。当業者は、ここでは、対応する方法で当該教示を容易に適用できる。
特に、移行半径(URmax)の最大値の移行半径(URmin)の最小値に対する比(V2)は、5から10の範囲にある(V2=URmax/URmin;5≦V2≦10)。特に、この比は、8から10の範囲内にある(8≦V2≦10)。
特に、最大限に可能な移行半径は、最も高い曲げ応力が発生する点に設けられる。比較的大きい移行半径は、切欠き応力(notch stressing)を最小化する。上限は、組み立てサイズ、ジョイントの最大偏向角度、及びローラ要素の強度の最適化に起因する。
特に、移行領域の高さ、すなわち傾斜されるローラ要素のために突部上に実装される最大の機能的領域の高さを最小にするために、最小移行半径が力の導入領域と直交するように設けられる。当該導入領域とは、ここでは第二平面の領域を意味する。
接点とハブとの間の領域における各突部の第一表面線は、突部の長手方向軸から少なくとも内球半径に相当する間隔を有することがさらに提案される。すなわち、これは、特に接点とハブとの間の領域(特に少なくとも移行領域内の一部(のみ))の突部の第一表面線が、突部の長手方向軸から、内球半径に略相当する間隔を有することを意味する。 特に、接点から発出してハブに向かう第一表面線は、それゆえ突部の長手方向軸と平行に延在する直線の形で進む。
本発明のさらなる一態様によると、本明細書で検討された内側ジョイント部と任意で組み合わせ可能なトリポード型等速ジョイントのローラ要素が提案される。
トリポード型等速ジョイントのローラ要素は、中心と、外周面と、中心軸を中心に回転対称となるように構成される凸形状の内周面とを有する。さらに、ローラ要素の中心軸を含み、凸状内周面の輪郭線を画定する正中面がある。輪郭線は、中心を通って正中面と垂直になるように配置された中央面に近い中央領域において最大の値となる輪郭線半径を構成し、該輪郭線半径の値は、隣接領域において小さくなる。
そのような各ローラ要素の原則的な構成は、当業者に既知である。一般的に、そのようなローラ要素は内側軌道輪と外側軌道輪とを備え、針状のローラ要素がその間に中間配置される。ここでは、凸形状の内周面は、一般的に内側軌道輪によって形成され、外周面は、外側軌道輪によって形成される。内側軌道輪は開口を有し、該開口は、ローラ要素が関連するトリポード型等速ジョイントの突部に押し嵌められるように、また、その上に設けられた軸受面と相互に作用できるように設計される。 一般的に、ここでは、中心軸はローラ要素の回転軸を表すので、中心も当該回転軸上にある。ローラ要素と同心上で交差し、正中面に対して垂直である(中心軸を囲む)中央面は、中心を通って延在する。
特に、内周面又は輪郭線は、それぞれ、凹部又は直線部分(又はその組み合わせ)を介してこの凸状部の外側に続く。
トリポード型等速ジョイントの動作中、特に凸形状の内周面の各領域は、両方とも(すなわち、中央領域及び比較的小さい輪郭線半径を有する隣接領域)突部の周面と接触してもよい。ローラ要素の内周面の形状により、特に、一般的に偏向角度が小さい場合に頻発する高負荷を接触が良好な中央領域を経由して伝達することが可能となる。通常、偏向角度が比較的大きい場合に生じる低負荷は、隣接領域において幾分不十分な接触によって伝達される。凸状内周面のこの特別な形状により、特に、ローラ要素と突部との間の接触を個々の負荷状況に適合させることができ、同時に、ローラ要素と突部との間のわずかな遊びを実装できる。その結果、ローラ要素が突部上で引っかかる危険性は存在しなくなる。
特に、最大の輪郭線半径値(VLRmax)とそれより小さい輪郭線半径値(VLRred)との比(V3)は、少なくとも2である(V3=VLRmax/VLRred;V3≧2)。特に非常に好ましいのは、当該比が3から6の範囲(3≦V3≦6)にあることである。
突部上のローラ要素の接触圧と遊びと傾き性能との好適な妥協は、ここでは上記の制限内でもたらされることを実証してきた。
さらに有利な一実施形態によると、中央領域は中心から発出する第三角度範囲を備え、第三角度範囲は、中央面を越えてその両側に最小で1度及び最大で6度の角度で延在する。第三角度範囲の非常に好適な制限は、±1.5度から±2.5度(すなわち、中央面の上下で面対称)である。全体的に見れば、第三角度範囲は、2度から12度、特に3度から5度の角度から成ることが好ましい。特に、いずれの場合もより小さい輪郭半径によって形成される内周面の輪郭線は、中心から両側に(すなわち、中央面の上下で面対称)発出するように、それぞれ(より広い)角度範囲にわたって延在し、それによって±1度から±6度、特に±1.5度から±2.5度の第三角度範囲にいずれも隣接するようにする。
第三角度範囲の前記値及び更なる角度範囲は、それぞれ、6度又は10度までのジョイント偏向角度(トリポード型等速ジョイントの耐用年数に対する負荷範囲内のヘルツ接触応力)にとって特に有利であり、同時にローラ要素の傾き性能、すなわち10度までの傾斜角度範囲(外側ジョイント部における隙間の中央面に対する角度)を考慮する。
ローラ要素は特に凸形状であり、冠形の外周面を有し、該ローラ要素は、外側ジョイント部に対して外側ジョイント部の案内軌道(隙間)内で共に傾動可能である。
本発明は、さらに、本明細書に記載の内側ジョイント部と、各突部上に回転可能に装着された本発明によるローラ要素と、いずれの場合も一つのローラ要素を軸方向に沿って案内するための軸方向に延在する隙間を有する外側ジョイント部とを少なくとも備えるトリポード型等速ジョイントに関する。ここでは、動作中にローラ要素の凸状内周面と接触する各突部の第二表面線の対向部分は、いずれも外形円の一つの線分を形成し、線分の円中心は、いずれも突部の長手方向軸から距離を空けて配置され、当該距離の内球半径に対する比は0.02から0.38の値で適用されることを提供する。
換言すると、これは、第二表面線の対向部分(特に各接点を越える部分)は円弧線分で成形されることを意味し、当該円弧線分は、ここでは特に突部の長手方向軸に対して鏡面対称となるように構成される。その上に重畳される、いわゆる外形円は第二平面に複数形成されてもよく、当該各外形円の中心は長手方向軸上に位置していないが、長手方向軸と垂直になるように幾分そこから離れており、それによって「オフセット」の一種が形成される。ここで、内球半径(IKR)からの距離(D)の比(V4)が0.02から0.38の値で(V4=D/IKR;0.02≦V4≦0.38)適用される。すなわち、特に当該比は、二つの外形円がいずれも内球の内球半径よりも小さい外形円半径を有する第二表面線に対して適用される。
下限(ここではV4=0.02)を設けることは、トリポード型等速ジョイントが偏向されて、ローラ要素と突部との間に(第一表面線の領域において)小さい遊びがあるときに、確実に妨害を発生させない役割を果たす。ローラ要素と突部との間の(第二表面線の領域における)遊びを低い値に制限する上限を設けると、トリポード型等速ジョイントが偏向されるときに、当該遊びは循環的に発生する。それにより、負荷変動中のNVH問題を回避する。
このために、いずれの場合も周方向に90度オフセットされてローラ要素の凸状内周面と接触する部分に第一表面線を形成することがさらに好ましく、それによってかなり大きい外形円半径又は(直線部分による)非常に大きい外形円の直径を有する外形円をそこに形成できる。
さらに、本明細書に記載の内側ジョイント部と、各突部の上に回転可能に装着された本発明によるローラ要素と、いずれの場合も一つのローラ要素を軸方向に沿って案内するための軸方向に延在する隙間を有する外側ジョイント部とを少なくとも備えるトリポード型等速ジョイントの実施形態が提案される。ここでは、当該隙間は、各ローラ要素が周方向に支持される一対の軸方向に延在する案内面を有し、傾動軸に対するローラ要素の傾動を制限する少なくとも一つの支持面は一対の案内面の間に配置され、ローラ要素の傾動軸は、ローラ要素の中央面と、外側ジョイント部のジョイント軸と平行である案内面の中心面との交線によって形成されることが提供される。
特に、各案内面と隣接するようにいずれも配置される二つの支持面が設けられる。特に、当該支持面は、ここでは各案内面の間で偏心するように構成される。
特に、各ローラ要素は、その冠形外周面により、外側ジョイント部の軸方向の運転隙間(running clearances)で(低摩擦)傾動を行うことができる。外側ジョイント部の各隙間における案内面は、ローラ要素の形状に適合する。このように、ローラ要素は、外側ジョイント部に対して、内側ジョイント部と連動して同一方向に傾動するので、ローラ要素に対するトリポード型等速ジョイントのそれぞれの偏向角度に必要な突部の傾斜角度を減少させることができる。傾動におけるこうした傾動角度の減少によって、特に移行半径が最小値である領域においてローラ要素と内側ジョイント部との間の接触を避けることができ、それにより内側ジョイント部と外側ジョイント部との間の偏向角度を比較的大きくすることができる。支持面によってローラ要素の傾動を制限することによって、内側ジョイント部が外側ジョイント部に対して大きく偏向する場合に、特にローラ要素が外側ジョイント部の軸方向の運転隙間内に押し込まれないようにする。
軸方向にある各支持面は、隙間の所定の深さにわたって(周方向に)延在し、またいずれの場合もトリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部に向かって半径方向内側に延在する。特に、各支持面は外側ジョイント部の材料によって形成されることにより、外側ジョイント部と一体化される。
少なくとも一つの支持面は、各ローラ要素が最大10度の傾斜角度範囲で傾動軸を中心に傾動可能となるように配置されることが好ましい。特に、当該傾斜角度範囲は、最大で±10度(正常位置を支点に)、特に傾動軸を中心に最大で±6度である。
傾斜角度範囲に対するこれらの制限は、偏向の最大角及び好適なNVH特性にとって特に有利な妥協点となる。そのようにして、3次の周期的軸力及び高周波変位力(high-frequency displacement forces)を最小限にすることができる。
以下に、定格トルクが3300N・m(ニュートン・メートル)であるトリポード型等速ジョイントのための有利な(近似)値を例示的に示す。
・外側ジョイント部の外径:82mm
・PCR(pitch circle radius:ピッチ円半径−外側ジョイント部のジョイント軸からの各案内面の正中面の間隔):24mmから25mm
・高さ:23mmから26mm
・移行半径(最大値):9mm
・移行半径(最小値):1.5mm
・接点における第一曲率半径(eKRmax):4831.40mm
・内球半径(IKR):9.59mm
・距離:2.02mm
・外形円の半径(IKR距離):7.57mm
特に、PCRに関する各突部の最大直径の高さは、+1mmから−1mmまでオフセットされることが提案される。このオフセットにより、3次の軸力の特性も同様に影響を受けてもよい。特に、最大の位置及び最小の位置だけでなく最大高さ及び最小高さも、偏向角度に依存するように3次の軸力の特性に影響を受けてもよい(図15を参照:最大は、偏向角度が7.5度のとき、最小は、偏向角度が15度から17.5度の間のときである)。
いずれも90°である第四角度範囲は各突部の第三平面に延在し、いずれの場合も第一平面と第二平面との間にある。半径方向に沿って回転軸から発出している突部の周面の輪郭は、いずれの場合も表面線によって形成される。少なくとも第三平面と突部の周面と第四角度範囲内の角度値との交点において、当該表面線をいずれも第二曲率半径(KR)によって形成し、半径方向に沿った周面の表面線の輪郭がそれによって画定される。第一平面の領域における第一表面線の第一曲率半径から発出する第四角度範囲に沿った当該第二曲率半径の値は、連続的に変動する。それぞれの曲率半径をKRとする。いずれの場合も、第二平面においては角度値が0°である。いずれの場合も、第一平面においては角度値が90°である。これは、角度値が0°では、第二表面線の曲率半径は、半径方向に沿った突部の周面の輪郭を画定することを意味する。第二表面線の当該(第二の)曲率半径は、内球半径から距離を差し引いたものに略相当する。角度値が90°の場合は、周面の輪郭は第一表面線の第一曲率半径によって画定される。以下の(第二の)曲率半径の値は、上述のように、定格トルクが3300N・mである例示的なトリポード型等速ジョイントのものと仮定する(表1を参照)。
特に、内側ジョイント部、ローラ要素および/又はトリポード型等速ジョイントは、自動車両に適合可能であることを提案する。これらの構成要素は、特に、自動車両の駆動装置から各車輪までの接続目的及びトルクの伝達に役立つ。これは、長手方向のシャフトとの併用、又は車両軸を横断するように配置される各シャフト、すなわち各サイドシャフトとの併用により実行される。
一般的な技術分野だけでなく本発明も、各図を用いて以下により詳細に説明される。各図面は、特に好適な例示的実施形態を示すが、本発明はそれらに限定されるわけではない。特に、各図面、及び特に例示される割合は単に概略的なものであることを指摘する。各図面において、同一の参照番号は、同一の項目を示している。
図1は、自動車両を示している。 図2は、内側ジョイント部を示している。 図3は、内側ジョイント部の側面図である。 図4は、図3による内側ジョイント部の断面図である。 図5は、回転軸に沿った内側ジョイント部の図である。 図6は、図5のA部分の詳細を示している。 図7は、図5による内側ジョイント部の断面図である。 図8は ローラ要素を示している。 図9は、図8によるローラ要素の構成要素を示している。 図10は、トリポード型等速ジョイントの斜視図である。 図11は、トリポード型等速ジョイントの詳細の斜視図である。 図12は、トリポード型等速ジョイントの側断面図である。 図13は、同様に、図12によるトリポード型等速ジョイントの側断面図である。 図14は、第二曲率半径を説明するための内側ジョイント部の平面図である。 図15は、偏向角度による3次の周期的軸力の特性を説明する図表である。
図1は、駆動装置65と車輪57とを有する自動車両51を示している。駆動装置65によって発生するトルクは、各シャフト50及び各トリポード型等速ジョイント2又は他の種類のジョイントを経由して各車輪57に伝達される。特に、本明細書に記載の各トリポード型等速ジョイント2は、通常比較的大きい偏向角度が生じるサイドシャフト組立品49において利用可能である。
図2は、回転軸4と三つの突部5を有するハブ3を備える、トリポード型等速ジョイント2の内側ジョイント部1を示し、該突部5は、半径方向6にハブ3から外側に延在し、最初に移行領域58、次に軸受け領域59、最後に端面32が構成されている。各突部5は、長手方向軸7と、軸受け領域59において冠形周面9とを有する。長手方向軸7は、回転軸4に対して垂直である第一平面8を集合的に画定する。第二平面16は、第一平面8と垂直になるように配置され、いずれの場合も一つの突部5の長手方向軸7を備える。第三平面18は第一平面8及び第二平面16に対して垂直に延在し、突部5の最大直径12は、この第三平面18に設けられる。
図3は、内側ジョイント部1の側面図であり、ハブ3から発生する三つの突部5が半径方向6に外側に延在している。第二平面16(ここでは図示の平面と平行である)の突部5の冠形周面9は、第二表面線15によって形成される。突部5は、回転軸4から半径方向6に発出する最大直径12を有し、該最大直径12は、高さ11に設けられる。第二平面16において最小値で具体化される移行半径25は、突部5とハブ3との間に設けられる。第二平面16において、最大直径12から(第二表面線15に沿って)発出する突部5は、さらにハブ3に向かって幅が漸減することが分かる。移行領域58は、このハブ3に向かう漸減に隣接する。突部5上に配置されるローラ要素28(ここでは図示せず)が傾動する場合に内側ジョイント部1と接触することなくローラ要素28が入り込める逃げ溝は、内側ジョイント部1の回転軸4の方向において移行半径25の下に構成される。
図4は、図3による内側ジョイント部1の断面図である。突部5は、高さ11において最大直径12を有し、該最大直径12は、内球13(点線で示す)の直径に相当する。ここで示される第二平面16において、突部5の周面9は、第二表面線15によって形成される。高さ11において最大直径12から発出するこの第二表面線15は、内球13内を半径方向6に外側に延在する。第二表面線15の輪郭は、二つの外形円42(破線で示す)の線分40によって近似されてもよく、それらの円中心43は、高さ11において設けられ、いずれの場合も長手方向軸7から距離39のところにある。従って、円中心43は、内球13の中心点14から距離39のところにある。内球13は最大直径12を有し、それにより内球半径19を有するとともに、第二表面線15は、比較的小さい半径となるように各外形円42の各線分40によって少なくとも部分的に生成され、該半径は、内球半径19から距離39を引いたものに相当する。
特に、第二表面線15は、少なくとも部分的に内球13内にあり、高さ11とハブ3との間の領域にも延在する。
図5は、回転軸4に沿った内側ジョイント部1の平面図である。ハブ3から発出する三つの突部5は、いずれの場合も長手方向軸7に沿って半径方向6に延在する。第一平面8(図示の平面と平行)では、各突部5の周面9は、第一表面線10によって形成される。半径方向6に突部5のそれぞれの長手方向軸7に沿って回転軸4から発出している軸受け領域59では、高さ11において突部5が最大直径12を有する。この最大直径12から発出して、突部5は半径方向6に第一表面線10に沿って外側に幅が漸減する。最大移行半径25は、移行領域58において突部5とハブ3との間に設けられる。ここでは、高さ11からハブ3の方向に発出する第一表面線10は、長手方向軸7から略一定の間隔27を有し、該間隔27は、実質的に内球半径19(ここでは図示せず)に相当するため、最大直径12の半分であることが分かる。この間隔27から発出すると、突部5だけは移行領域58及びハブ3にまで広がる。図2及び図3において第二平面16に示した逃げ溝または切り欠きは、ここでは実装されていない。当該第一平面8において行われる突部5に対するローラ要素28(ここでは図示せず)の傾動は、第二平面16における傾動と比べてかなり小さい。最大移行半径25を有する移行領域58は、この第一平面8においてハブ3と高さ11との間で突部5の幅が漸減しないように(或いは漸減しても非常に少しだけに)できる。このようにして、高い周方向の力及びそれによる高トルクを伝達でき、また、以前の通常のものよりも小さい構成サイズのトリポード型等速ジョイント2を採用でき、さらに長寿命化を実現する。
図6は、図5のA部分の詳細を示している。突部5は、第一平面8(図示の面)において示される。第一平面8における第一表面線10は、示された内球13の外側を延在し、接点52の領域において内球半径19を介して当該内球13と接触する。突部5は、当該接点52において最大直径12を有する。第三平面18は、第一平面8を横断し、接点52を通って最大直径12にわたるように延在する。内球13の中心点14は、第三平面18上にあり、また、第一平面8との交点だけでなく第二平面16との交点にもある。接点52の領域における第一表面線10は、第一角度範囲20内に存在する最大第一曲率半径17を有し、該第一角度範囲20は、接点52に隣接して両側にある。
図7は、図5による内側ジョイント部1の断面図である。第一平面8(図示の面)における突部5は、第一表面線10によって制限される。最大直径12の領域における第一表面線10は、第一角度範囲20にわたって延在する直線21を有する。角度範囲20は、接点52を含む。トリポード型等速ジョイント2の動作中にローラ要素28の内周面29と接触する第一表面線10の各領域は、ここでは各直線の対向部分(半径が非常に大きい外形円)によって形成される。上部突部5の破線は、直線の部分が互いに対向していることを強調し、また、第一表面線10に沿って直線21が延在することを強調する。
移行領域58は、接点5とハブとの間に配置される。次に第一表面線10は、(一定の)間隔27でハブ3に向かって接点52の間を進むことによって長手方向軸7と略平行になる。移行領域58は、最大移行半径25によって形成され、特に、ここでは突部5の幅の漸減はない。
図8は、突部5(ここでは図示せず)の一つに配置されるローラ要素28を示す。ここで、ローラ要素28は、複数の個々の構成要素によって形成され、該ローラ要素28は、外周面38と内周面29とを有する。外周面38は外側ジョイント部(ここでは図示せず)と接触し、内周面29は、突部5の冠形周面9と接触する。中心に配置される中央面22と同様に、中心軸30を取り囲む正中面31(図示の平面)は、ローラ要素28に対して固定されてもよく、中心軸30と中央面22とからなる交点35は、ローラ要素28の中心61を形成する。ローラ要素28は、中心軸30に対して回転対称である形状であり、中央面22に対して略鏡面対称となるように具現化される。
図9は、図8によるローラ要素28の一構成要素の正中面31(図示の平面)における断面図であり、ここでは、内周面29の詳細を示す。凸形状の内周面29は、中心軸30を中心に回転対称となるように構成され、ローラ要素28は、中心軸30に対して垂直である中央面22に関して略面対称となるように構成される。凸形状の内周面29の輪郭線33は、可変的な輪郭半径23を有し、中央面22(中央領域26)の領域、及び中心61から発出し、中央面22を越えて両側に延在する第三角度範囲41内においては、最大輪郭線半径63によって形成され、また、それに続く領域では(隣接領域62においては)、値という点では比較的小さい少なくとも一つの輪郭線半径64によってそれぞれ形成される。それぞれの比較的小さい輪郭線半径64に続いて、凸形状部分が再び隣接する内周面29の凹形状の輪郭線33を有する部分がここでは見られる。
トリポード型等速ジョイント2の動作中に内側ジョイント部1(本発明による)の突部5と接触する内周面29の部分は、最大輪郭線半径63及びそれぞれが隣接している比較的小さい輪郭線半径64を有する凸状内周面29によって形成される。
最大輪郭線半径63によって形成される内周面29は、±1度から±6度の角度、特に1.5度から±2.5度の角度によって中央面22を越えて中心61から発出する第三角度範囲41にわたって延在する。特に、第三角度範囲41は、2度から12度、特に3度から5度の角度範囲でもある。さらに、内周面29の輪郭線33は、いずれも比較的小さい輪郭半径64を有して形成され、中心61から両側に(すなわち中央面22の上下に対称に)生じ、それぞれの場合において第三角度範囲41と隣接し、それぞれ±1度から±6度の角度、特に±1.5度から±2.5度の角度による一つの(さらなる)角度範囲にわたって延在する。
図10は、トリポード型等速ジョイント2の斜視図である。外側ジョイント部36は三つの隙間37を有し、該各隙間は、軸方向56(図示の面に入る方向)に延在し、各隙間には、ローラ要素28が軸方向56に取り外し可能に配置される。ローラ要素28は、それぞれ内側ジョイント部1の各突部5上に配置される。トリポード型等速ジョイント2が伸長した(偏向していない)状態では、高さ11、第三平面18、最大直径12、及び中央面22は、互いに略一直線である。ここで、例えば外側ジョイント部36から発出する場合、トルクは、ローラ要素28の各案内面44及び外周面38を介して、さらにローラ要素28の内周面29を介して各突部5の冠形周面9に周方向24に伝達され、それにより内側ジョイント部1は、外側ジョイント部36と連帯して周方向24に回転する。外側ジョイント部36において各案内面44に対して中心となるように配置されることによってローラ要素28の傾動46を制限する支持面45は、それぞれの隙間37に設けられる。
図11は、外側ジョイント部36の設計のさらなるさまざまな実施形態を示しており、ここでは、ローラ要素28のための二つの支持面45が隙間37に設けられる。当該各支持面44は識別可能に偏心するように配置され、また、いずれの場合も各案内面44と隣接するように配置される。
図12は、トリポード型等速ジョイント2の側断面図であり、隙間37と、該隙間37に配置された案内面44とを有する外側ジョイント部36は、軸方向56に取り外し可能なように配置されるローラ要素28を受容する。ローラ要素28は、それぞれ各突部5に配置され、そこで内側ジョイント部1は、外側ジョイント部36に対して約偏向角度55の分偏向していることが分かる。したがって、偏向角度55は、回転軸4とジョイント軸54との間に構成される。案内面44は、外側ジョイント部36のジョイント軸54と平行となるように延在する中心面66を有する。ローラ要素28が最小移行半径25を有する移行58の領域において切り欠き/逃げ溝内に入り込み、それによって偏向角度55が最大限に拡大する(図13も参照)ことが分かる。
図13は、トリポード型等速ジョイント2の側断面図であり、内側ジョイント部1は、外側ジョイント部36に対して約偏向角度55の分偏向するように配置される(図12を参照)。各ローラ要素28は突部5上に配置され、ローラ要素28は、ジョイント軸54に対して、また、突部5の第三平面18に対して傾斜するように配置される。その特別な形状かつ冠形の外周面38及びそれに対応する形状の各案内面44により、ローラ要素28は傾動軸47を中心に傾動46を実行できる。ローラ要素28の当該傾動軸47は、外側ジョイント部36のジョイント軸54と平行である案内面44の中心面66を有するローラ要素28の中央面22の断面線である。
傾動軸47は、突部5の第三平面18によって、また、突部の長手方向軸7によって形成される軸53と平行である。ローラ要素28は、隙間37の中心面66に対して約傾斜角度48の分傾斜することが分かる。
傾動軸47を中心とした傾動46により、内側ジョイント部1と外側ジョイント部66との間の偏向角度55をさらに拡大することができ、内側ジョイント部1とともにローラ要素28が傾斜角度48まで傾斜するので、偏向角度55が非常に大きい場合においては、内側ジョイント部1上のローラ要素28の衝撃による偏向角度55の制限が発生するだけである。
ローラ要素28の傾動46は、外側ジョイント部36の隙間37において各支持面45によって制限される。このようにして、隙間37の各案内面44にローラ要素28が押し込まれるのを防ぐ。
図14は、第二曲率半径67を説明するために、内側ジョイント部1を平面図で示している。第四角度範囲68は、各突部5の第三平面18に延在し、いずれの場合においても第一平面8と第二平面16との間にある。半径方向6に沿った突部5の周面9の輪郭は、回転軸4(ここでは図示せず)から発出しており、何れの場合においても表面線によって形成される。第三平面と、突部5の周面9と、第四角度範囲68内における角度値69との間の交点におけるこの表面線は、いずれの場合も第二曲率半径67によって形成される。この第二曲率半径67の値は、第一平面8の領域(KR(角度値69=90°)=eKRmax)における第一表面線10の第一曲率半径17から第二平面16の領域(KR(角度値69=0°=IKR−距離)における第二表面線15の(第二の)曲率半径まで発出し、第四角度範囲68に沿って継続的に変化する。図4の説明による、第二表面線15のこの(第二の)曲率半径は、内球半径19−距離39に相当する。角度値69が45°の場合、第二曲率半径67は、内球半径19(KR(角度値69=45°)=IKR)に相当する。
図15は、トリポード型等速ジョイント2の偏向角度55による、3次の周期的軸力70の特性を説明するための図表である。3次の周期的軸力70は、NVH(noise, vibration, harshness=騒音、振動、乗り心地)挙動を決定するトリポード型等速ジョイント2の変数のことである。突部5及びローラ要素28の特定の実施形態は、偏向角度55が比較的大きい場合であっても、3次の周期的軸力70の値はわずかであるという効果を有する。従来技術72(例えば、独国登録特許第10106727号明細書、又は欧州特許出願公開第1505308号)のジョイントと比較して、トリポード型等速ジョイント2の有利な点は、とりわけ偏向角度55が比較的大きい場合に明らかとなる。3次の周期的軸力70の特性は、そのようなジョイントに対して定義される許容範囲をかなり下回っている。それゆえ、動作中に主に比較的大きい偏向角度55が存在する場合に、本明細書で提案されているトリポード型等速ジョイント2を採用することが特に好ましい。
先制法においては、最終的に、各図面に示されるような技術的特徴の組み合わせは、一般的に義務的なものではないことを指摘しておきたい。このように、各特徴の組み合わせが特定の実例において明記されない限り、及び/又は、当業者が装置の基本機能はもはや提供されないことを理解しない限り、一つの図面の技術的特徴は、更なる図面の他の技術的特徴及び/又は概説の技術的特徴と組み合わせることができる。
1 内側ジョイント部
2 トリポード型等速ジョイント
3 ハブ
4 回転軸
5 突部
6 半径方向
7 長手方向軸
8 第一平面
9 周面
10 第一表面線
11 高さ
12 最大直径
13 内球
14 中心点
15 第二表面線
16 第二平面
17 第一曲率半径
18 第三平面
19 内球半径
20 第一角度範囲
21 直線
22 中央面
23 輪郭線半径
24 周方向
25 移行半径
26 中央領域
27 間隔
28 ローラ要素
29 内周面
30 中心軸
31 正中面
32 端面
33 輪郭線
34 第二角度範囲
35 交点
36 外側ジョイント部
37 隙間
38 外周面
39 距離
40 線分
41 第三角度範囲
42 外形円
43 円中心
44 案内面
45 支持面
46 傾動
47 傾動軸
48 傾動角度
49 サイドシャフト組立品
50 シャフト
51 自動車両
52 接点
53 軸
54 ジョイント軸
55 偏向角度
56 軸方向
57 車輪
58 移行領域
59 軸受け領域
60 接触点
61 中心
62 隣接領域
63 最大輪郭線半径
64 より小さい輪郭線半径
65 駆動装置
66 中心面
67 第二曲率半径
68 第四角度範囲
69 角度値
70 3次の周期的軸力
71 許容範囲
72 従来技術のジョイント

Claims (16)

  1. トリポード型等速ジョイント(2)の内側ジョイント部(1)であって、前記内側ジョイント部(1)は、
    回転軸(4)と三つの突部(5)とを有するハブ(3)を備え、
    前記突部(5)は、半径方向(6)に前記ハブ(3)から外側に延在し、前記ハブ(3)に隣接する移行領域(58)と、軸受け領域(59)とを有し、
    各前記突部(5)は、長手方向軸(7)と、前記軸受け領域(59)において冠形周面(9)とを有し、
    前記内側ジョイント部(1)は第一平面(8)を有し、前記第一平面(8)は、前記突部(5)の全ての長手方向軸(7)を備え、前記回転軸(4)と垂直になるように定義され、
    各前記突部(5)の前記冠形周面(9)は、前記第一平面(8)にある第一表面線(10)を形成し、前記長手方向軸(7)に沿った高さ(11)において前記突部(5)の最大直径(12)があり、内球半径(19)を有する内球(13)が予め定義され、前記内球(13)の中心点(14)は前記高さ(11)の地点で前記長手方向軸(7)上にあり、前記内球(13)は、前記第一表面線(10)の対向する接点(52)と接触し、
    各前記突部(5)の前記第一表面線(10)は、いずれの場合もそれぞれの前記接点(52)と隣接しつつ前記内球(13)の外側にある少なくとも第一角度範囲(20)にあり、各前記第一角度範囲(20)は、前記内球(13)の前記中心点(14)から発出し、いずれの場合もそれぞれの前記接点(52)の両側に最大20度の角度まで延在し、
    各前記突部(5)の前記冠形周面(9)の第二表面線(15)は第二平面(16)にあり、前記第二平面(16)は、前記第一平面(8)と垂直になるように配置され、それぞれの前記突部(5)の前記長手方向軸(7)を含み、
    前記第二表面線(15)は、接触点(60)において前記突部(5)の前記最大直径(12)の前記高さ(11)でのみ前記内球(13)と接触し、いずれの場合もそれぞれの前記接触点(60)と隣接しつつ前記内球(13)内にある少なくとも第二角度範囲(34)にわたり、各前記第二角度範囲(34)は、前記内球(13)の前記中心点(14)から発出し、いずれの場合もそれぞれの前記接触点(60)の両側に最大35度の角度まで延在する、内側ジョイント部(1)。
  2. 前記軸受け領域(59)における前記第一表面線(10)は、少なくとも前記接点(52)で最大となる第一曲率半径(17)を有する、請求項1に記載の内側ジョイント部(1)。
  3. 前記接点(52)における前記第一曲率半径(17)の値の前記内球半径(19)の値に対する比は、少なくとも50である、請求項2に記載の前記内側ジョイント部(1)。
  4. 前記比は、100から1000の範囲にある、請求項3に記載の前記内側ジョイント部(1)。
  5. 各前記突部(5)の前記第一表面線(10)は、各前記接点(52)において、また、いずれの場合も前記接点(52)に隣接する前記第一角度範囲(20)において、直線(21)として具体化され、前記第一角度範囲(20)は、前記内球(13)の前記中心点(14)から発出し、少なくとも片側において2度から20度の角度で前記接点(52)と隣接するように延在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の内側ジョイント部(1)。
  6. 前記移行領域(58)における各前記突部(5)は、前記突部(5)の前記長手方向軸(7)を中心に周方向(24)に値が変動する移行半径(25)を構成し、前記移行半径(25)の前記値は前記第一平面(8)において最大になり、前記周方向(24)において最小になり、前記第一平面(8)に対して90度オフセットする、請求項1から5のいずれか一項に記載の内側ジョイント部(1)。
  7. 前記移行半径(25)の前記最大値の前記移行半径(25)の前記最小値に対する比は、5から10の範囲にある、請求項6に記載の内側ジョイント部(1)。
  8. 前記接点(52)と前記ハブ(3)との間の領域における各前記突部(5)の前記第一表面線(10)は、前記突部(5)の前記長手方向軸(7)から少なくとも前記内球半径(19)に相当する間隔(27)を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の内側ジョイント部(1)。
  9. 中心(61)と、外周面(38)と、中心軸(30)を中心に回転対称となるように構成される凸状内周面(29)とを有するトリポード型等速ジョイント(2)のローラ要素(28)であって、
    前記ローラ要素(28)の中心軸(30)を含み、前記凸状内周面(29)の輪郭線(33)を画定する正中面(31)があり、前記輪郭線(33)は、前記中心(61)を通って前記正中面(31)と垂直になるように配置された中央面(22)に近い中央領域(26)において最大の値となる輪郭線半径(23)を構成し、前記輪郭線半径(23)の値は、隣接領域(62)において小さくなる、ローラ要素(28)。
  10. 前記輪郭線半径(23)の最大値とそれより小さい前記輪郭線半径(23)の値との比は、少なくとも2である、請求項9に記載ローラ要素(28)。
  11. 前記比は3から6の範囲にある、請求項10に記載のローラ要素(28)。
  12. 前記中央領域(26)は前記中心(61)から発出する第三角度範囲(41)を備え、前記第三角度範囲(41)は、前記中央面(22)を越えてその両側に最小で1度及び最大で6度の角度で延在する、請求項9から11のいずれかに記載のローラ要素(28)。
  13. 請求項1から8のいずれか一項に記載の内側ジョイント部(1)と、
    各突部(5)上に回転可能に装着された、請求項9から12のいずれか一項に記載のローラ要素(28)と、
    いずれの場合も一つの前記ローラ要素(28)を案内するための軸方向に延在する隙間(37)を有する外側ジョイント部(36)と
    を少なくとも備えるトリポード型等速ジョイント(2)であって、
    動作中に前記ローラ要素(28)の前記凸状内周面(29)と接触する、各前記突部(5)の前記第二表面線(15)の対向部分は、いずれも外形円(42)の一つの線分(40)を形成し、前記線分(40)の円中心(43)は、いずれも前記突部(5)の前記長手方向軸(7)から距離(39)を空けて配置され、前記距離(39)の前記内球半径(19)に対する比は0.02から0.38の値で適用される、トリポード型等速ジョイント(2)。
  14. 請求項1から8のいずれか一項に記載の内側ジョイント部(1)と、
    各突部(5)の上に回転可能に装着された、請求項9から12のいずれか一項に記載のローラ要素(28)と、
    いずれの場合も一つの前記ローラ要素(28)を案内するための軸方向に延在する隙間(37)を
    有する外側ジョイント部(36)と
    を少なくとも備えるトリポード型等速ジョイント(2)であって、
    前記隙間(37)は、各前記ローラ要素(28)が周方向(24)に支持される一対の軸方向に延在する案内面(44)を有し、
    傾動軸(47)に対する前記ローラ要素(28)の傾動(46)を制限する少なくとも一つの支持面(45)は前記一対の案内面(44)の間に配置され、前記ローラ要素(28)の前記傾動軸(47)は、前記ローラ要素(28)の前記中央面(22)と、前記外側ジョイント部(36)のジョイント軸(54)と平行である前記案内面(44)の中心面(66)との交線によって形成される、トリポード型等速ジョイント(2)。
  15. 各前記案内面(44)と隣接するようにいずれも配置される二つの支持面(45)が設けられる、請求項14に記載のトリポード型等速ジョイント(2)。
  16. 少なくとも一つの前記支持面(45)は、各前記ローラ要素(28)が最大10度の傾斜角度範囲(48)で前記傾動軸(47)を中心に傾動可能となるように配置される、請求項14又は15に記載のトリポード型等速ジョイント(2)。
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