JP6168705B2 - 遠心式圧縮機のインペラ - Google Patents

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亮祐 齋藤
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Description

本発明は、遠心式圧縮機に用いられるインペラの羽根における後縁形状に関する。
一般に、遠心式圧縮機においては、回転軸と共に回転するインペラの遠心力を利用して、インペラの前縁側から取り込んだ流体を、インペラの後縁側から回転軸径方向外側に向けて圧送して、ディフューザ内に吐き出すようにしている。つまり、遠心式圧縮機内に取り込まれた流体は、回転するインペラの流路内を通過する過程において昇圧された後、ディフューザ内に流されて減速されることになる。そして、このような、従来の遠心式圧縮機としては、例えば、特許文献1に開示されている。
特許第3383023号公報
ここで、流体がインペラの流路内を通過する際には、その流体に、流路壁面との間で摩擦が生じてしまう。このため、流路出口を構成するインペラの後縁においては、流路壁面側を流れる流体の全圧が低下してしまい、圧力損失を招くことになる。特に、遠心式圧縮機が小流量運転を行う場合には、ディフューザの流路壁面において、流体の剥離が顕著となり、更なる圧力損失を招いてしまう。
また、遠心式圧縮機のディフューザとしては、羽根付きディフューザと、羽根なしディフューザとが、提供されている。一般に、ディフューザ内にディフューザ羽根を設けることにより、圧力損失の抑制を図ることが可能となっている。
上記特許文献1に開示された遠心式圧縮機においては、羽根付きディフューザを備えており、ディフューザ内に流入した流体がディフューザ羽根に接触した際に発生する騒音や圧力脈動を低減することを目的として、インペラの後縁形状を規定している。即ち、特許文献1に開示されたインペラの後縁形状は、羽根なしディフューザ内に生じる圧力損失に対応するものではなかった。
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、羽根なしディフューザ内に流入した流体の全圧分布を一定にすることにより、機械運転効率の向上を図ることができる遠心式圧縮機のインペラを提供することを目的とする。
上記課題を解決する第1の発明に係る遠心式圧縮機のインペラは、
回転軸を中心として放射状に設けられる複数の羽根を有し、前記回転軸と共に回転することによって発生する遠心力を利用して、前記羽根の前縁側から取り込んだ流体を、前記羽根の後縁側から回転軸径方向外側に向けて圧送した後、羽根なしディフューザ内に吐き出すようにした遠心式圧縮機のインペラであって、
前記後縁の縁前端及び縁後端を、前記後縁の縁中央部よりも回転軸径方向外側に配置し、
前記縁前端及び前記縁後端の厚さを、前記縁中央部の厚さよりも薄くする
ことを特徴とする。
上記課題を解決する第2の発明に係る遠心式圧縮機のインペラは、
前記縁前端と前記縁後端とを、回転軸径方向においてずらして配置する
ことを特徴とする。
従って、本発明に係る遠心式圧縮機のインペラによれば、羽根の後縁における縁前端及び縁後端を、羽根の後縁における縁中央部よりも回転軸径方向外側に配置することにより、縁前端及び縁後端を通過する流体に対して作用する遠心力を、縁中央部を通過する流体に対して作用する遠心力よりも、大きくすることができる。これにより、後縁を通過する流体の全圧分布を、縁中央部から縁前端及び縁後端に向かうに従って、漸次大きくすることができるので、インペラから羽根なしディフューザに吐き出された流体に対して、壁面との間で摩擦が起きて、圧力損失が生じても、そのディフューザ内を流れる流体の全圧分布を、一定(均一)にすることができる。この結果、遠心式圧縮機における運転効率の向上を図ることができる。
本発明の一実施例に係るインペラを適用した遠心式圧縮機の概略構成を示した縦断面図である。 図1の要部拡大図であって、羽根における後縁形状の一例を示した図である。 羽根における後縁形状の他の例を示した図である。 羽根の後縁高さと羽根の後縁厚さとの関係を示した図である。
以下、本発明に係る遠心式圧縮機について、図面を用いて詳細に説明する。
図1に示すように、遠心式圧縮機1は、ケーシング10、回転軸20、及び、インペラ30等から構成されている。具体的に、ケーシング10は、中空形状をなしており、その中空部内には、回転軸20が軸受を介して回転可能に支持されている。そして、回転軸20には、インペラ30が外嵌されている。
インペラ30は、ハブ31、前側シュラウド32、及び、複数の羽根33から構成されている。ハブ31は、外径が回転軸方向前方側から後方側に向かうに従って漸次拡径するような、円環状に形成されており、その中心孔に回転軸20が嵌入されている。また、前側シュラウド32は、ハブ31の径方向外側に配置されており、内径が回転軸方向前方側から後方側に向かうに従って漸次拡径するような、円環状に形成されている。
更に、羽根33は、ハブ31の外周面と前側シュラウド32の内周面との間において、回転軸20を中心として、放射状に介在されており、回転軸方向前方側から後方側に向かうに従って、回転軸径方向外側に向けて漸次湾曲するように形成されている。
即ち、インペラ30には、ハブ31の外周面、前側シュラウド32の内周面、及び、回転軸周方向に隣接する2つの羽根33によって囲まれる複数の空間が、回転軸20を中心として、放射状に形成されており、これらの空間は、流体Gが通過する流路34となっている。そして、流路34の前壁面34a及び後壁面34bは、前側シュラウド32の内周面及びハブ31の外周面によって形成されており、流路34全体としては、回転軸方向前方側から後方側に向かうに従って、回転軸径方向外側に向けて漸次湾曲するように形成されている。
以上より、インペラ30は、回転軸20と共に回転することによって発生する遠心力を利用して、流体Gを、流路34の入口を構成する羽根33の前縁33a側から取り込んだ後、流路34の出口を構成する羽根33の後縁33b側から回転軸径方向外側に向けて吐出可能となっている。このとき、インペラ30内に取り込まれた流体Gは、流路34を通過する過程において昇圧される。
これに対して、ケーシング10には、吸入通路11と、排出通路となるディフューザ12とが形成されている。
吸入通路11は、インペラ30の回転軸方向前方側(流体流れ方向上流側)に配置されており、ケーシング10の外部から吸い込んだ流体Gを、回転軸方向に沿って、インペラ30における羽根33の前縁33a側に案内する環状通路となっている。
また、ディフューザ12は、インペラ30の回転軸径方向外側(流体流れ方向下流側)に配置されており、回転軸径方向に延びる環状通路となっている。つまり、ディフューザ12には、環状の前壁面12a及び後壁面12bが形成されている。そして、ディフューザ12の環状入口12cは、前壁面12aの径方向内側端(流体流れ方向上流端)と後壁面12bの径方向内側端(流体流れ方向上流端)とによって形成されており、インペラ30における流路34の出口(羽根33の後縁33b)と、回転軸径方向において対向している。
以上より、ディフューザ12は、インペラ30の流路34内で圧縮された流体Gを、前壁面12aと後壁面12bとの間に取り込んだ後、その取り込んだ流体Gを減速させながら、回転軸径方向外側に向けて排出するようになっている。
なお、ディフューザ12は、所謂、羽根なしディフューザとなっており、ディフューザ内における圧力損失の抑制を図るためのディフューザ羽根を、有してはいない。
従って、遠心式圧縮機1を運転させると、回転軸20が回転し、この回転軸20と共にインペラ30も回転する。これにより、ケーシング10の吸入通路11に吸い込まれた流体Gは、回転するインペラ30の流路34内に取り込まれることによって圧縮された後、当該流路34内から吐き出される。次いで、インペラ30から吐き出された流体Gは、ディフューザ12内に取り込まれることによって、減速及び整流化された後、当該ディフューザ12内から排出される。
ここで、図2に示すように、インペラ30においては、流路34の出口を構成する羽根33の後縁33bを、回転軸径方向内側に向けて円弧状に窪ませている。
具体的に、後縁33bは、縁前端41及び縁後端42から縁中央部43に向かうに従って、回転軸径方向内側に向けて漸次湾曲するように形成されている。即ち、縁前端41及び縁後端42を、回転軸径方向において同じ位置に配置すると共に、縁中央部43よりも回転軸径方向外側に配置している。
なお、縁前端41は、後縁33bにおいて最も前側シュラウド32側に位置して、当該前側シュラウド32における内周面の下流端(流路34における前壁面34aの下流端)と接合されている。また、縁後端42は、後縁33bにおいて最もハブ31側に位置して、当該ハブ31における外周面の下流端(流路34における後壁面34bの下流端)と接合されている。そして、縁中央部43は、縁前端41と縁後端42との間の中間部に位置して、流路34を流れる流体Gの主流れが通過する部位となっている。
以上より、縁前端41及び縁後端42における回転軸20の回転中心を中心とする半径は、縁中央部43における回転軸20の回転中心を中心とする半径よりも、長くなる。これにより、流路34の前壁面34aに沿って流れて縁前端41を通過する流体G、及び、流路34の後壁面34bに沿って流れて縁後端42を通過する流体Gは、流路34の中央部を流れて縁中央部43を通過する流体Gよりも、大きな遠心力が作用する。
従って、後縁33bを通過する流体Gの全圧分布Pを、縁中央部43から縁前端41及び縁後端42に向かうに従って、漸次大きくすることができるので、インペラ30からディフューザ12内に吐き出された流体Gに対して、前壁面12a及び後壁面12bとの間で摩擦が起きて、圧力損失が生じても、そのディフューザ12内を流れる流体Gの全圧分布を、一定(均一)にすることができる。この結果、遠心式圧縮機1における運転効率の向上を図ることができる。
なお、上述した実施形態においては、後縁33bの凹形状を円弧形状としているが、後縁33bの凹形状は、縁前端41及び縁後端42が縁中央部43よりも回転軸径方向外側に配置されていればよく、例えば、後縁33bの凹形状を、図3(a)乃至(d)に示すような、凹形状としても構わない。
具体的に、図3(a)に示した凹形状では、羽根33の後縁33bを、回転軸径方向内側に向けて円弧状に窪ませているものの、縁前端41と縁後端42とを、回転軸径方向においてずらして配置している。即ち、縁前端41及び縁後端42を、縁中央部43よりも回転軸径方向外側に配置するだけでなく、更に、縁前端41を縁後端42よりも回転軸径方向外側に配置させている。なお、その逆であっても良く、縁後端42を縁前端41よりも径方向外側に配置させても構わない。
また、図3(b)に示した凹形状では、羽根33の後縁33bを、回転軸径方向内側に向けて円弧状に窪ませているものの、縁中央部43のみを回転軸径方向内側に向けて窪ませている。即ち、縁前端41及び縁後端42を、回転軸径方向において同じ位置に配置すると共に、縁中央部43よりも回転軸径方向外側に配置している。
このように、縁中央部43のみを回転軸径方向内側に向けて窪ませる場合には、図3(c),(d)に示すように、縁中央部43を、矩形状やくさび状に切り欠いても構わない。
更に、上述した実施形態においては、羽根33の後縁33bを凹形状とすることにより、縁前端41及び縁後端42を通過する流体Gの全圧を、縁中央部43を通過する流体Gの全圧よりも高くするようにしているが、これに加えて、後縁33bの厚さを、縁前端41側及び縁後端42側と、縁中央部43側とにおいて変えることにより、更なる全圧差を発生させても構わない。
即ち、図4に示すように、後縁33bの厚さを、縁中央部43から縁前端41及び縁後端42に向かうに従って、漸次薄くする。これにより、羽根33の後縁33bにおいては、厚さが薄くなるに従って、圧力損失が抑制されるため、縁前端41及び縁後端42を通過する流体Gの全圧を、縁中央部43を通過する流体Gの全圧よりも、より高くすることができる。
従って、ディフューザ12内に吐き出された流体Gに対して、前壁面12a及び後壁面12bとの間で摩擦が起きて、大きな圧力損失が生じても、そのディフューザ12内を流れる流体Gの全圧分布を、一定(均一)にすることができる。
本発明に係る遠心式圧縮機のインペラは、後縁における流体の全圧分布の改善を図ることができるため、機械運転効率の向上において、極めて有益に利用することができる。
1 遠心式圧縮機
10 ケーシング
11 吸入通路
12 ディフューザ
12a 前壁面
12b 後壁面
12c 環状入口
20 回転軸
30 インペラ
31 ハブ
32 前側シュラウド
33 羽根
33a 前縁
33b 後縁
34 流路
34a 前壁面
34b 後壁面
41 縁前端
42 縁後端
43 縁中央部
G 流体

Claims (2)

  1. 回転軸を中心として放射状に設けられる複数の羽根を有し、前記回転軸と共に回転することによって発生する遠心力を利用して、前記羽根の前縁側から取り込んだ流体を、前記羽根の後縁側から回転軸径方向外側に向けて圧送した後、羽根なしディフューザ内に吐き出すようにした遠心式圧縮機のインペラであって、
    前記後縁の縁前端及び縁後端を、前記後縁の縁中央部よりも回転軸径方向外側に配置し、
    前記縁前端及び前記縁後端の厚さを、前記縁中央部の厚さよりも薄くする
    ことを特徴とする遠心式圧縮機のインペラ。
  2. 請求項1に記載の遠心式圧縮機のインペラにおいて、
    前記縁前端と前記縁後端とを、回転軸径方向においてずらして配置する
    ことを特徴とする遠心式圧縮機のインペラ。
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